(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】スライダー
(51)【国際特許分類】
A44B 19/28 20060101AFI20240209BHJP
【FI】
A44B19/28
(21)【出願番号】P 2020021045
(22)【出願日】2020-02-11
【審査請求日】2023-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006828
【氏名又は名称】YKK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002712
【氏名又は名称】弁理士法人みなみ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥山 光
(72)【発明者】
【氏名】湊 強志
(72)【発明者】
【氏名】中瀬 麻理子
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 恭平
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】実開昭48-110105(JP,U)
【文献】登録実用新案第3162237(JP,U)
【文献】実開昭55-13818(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44B 19/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に間隔をあけて対向する上翼板(6)および下翼板(7)、前記上翼板(6)と前記下翼板(7)とを両者の前部同士の間で連結する連結柱(8)、前記連結柱(8)に対して左右において前記上翼板(6)と前記下翼板(7)との少なくとも一方から前記上翼板(6)と前記下翼板(7)との上下間隔を狭める方向に突出する左右のフランジ(9,9)、前記上翼板(6)と前記下翼板(7)との間に形成されるエレメント路(12)を備え、
前記エレメント路(12)は左右の前記フランジ(9,9)の間に形成されると共に前記連結柱(8)から後方に延びる本路(12a)と、前記連結柱(8)に対して左右に前記本路(12a)から分岐する左右の分岐路(12b,12b)とを備え、
前記連結柱(8)は前記エレメント路(12)に対面する部分の少なくとも一部に連結柱用補強部材(8a,8c)を備え、
前記連結柱用補強部材(8a,8c)は、その上下方向の中間部が前記上翼板(6)と前記下翼板(7)との間に配置され、当該中間部に対して上下両側の部分が前記上翼板(6)と前記下翼板(7)に埋設されており、
前記フランジ(9)は前記エレメント路(12)に対面する部分の少なくとも一部にフランジ用補強部材(9a,9c)を備え、
前記連結柱用補強部材(8a,8c)と前記フランジ用補強部材(9a,9c)の材質は、前記上翼板(6)と前記下翼板(7)よりも比重が重く且つ耐摩耗性に優れたものであることを特徴とするスライダー。
【請求項2】
前記連結柱用補強部材(8a,8c)と前記フランジ用補強部材(9a)は、上下に延びる柱状であ
り、
前記連結柱用補強部材(8a,8c)は、その上端面を前記上翼板(6)の上面に露出させると共に、その下端面を前記下翼板(7)の下面に露出させることを特徴とする請求項1に記載のスライダー。
【請求項3】
前記連結柱(8)は、前記連結柱用補強部材(8a)に対して前方に隣り合う前柱(8b)を備え、
前記前柱(8b)の材質は、前記連結柱用補強部材(8a)よりも比重が軽く且つ耐摩耗性に劣るもので、
前記フランジ(9)は、前記フランジ用補強部材(9a)に対して後方に隣り合う後フランジ(9b)を備え、
前記後フランジ(9b)の材質は、前記フランジ用補強部材(9a)よりも比重が軽く且つ耐摩耗性に劣るものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のスライダー。
【請求項4】
前記上翼板(6)、前記下翼板(7)、前記前柱(8b)および前記後フランジ(9b)は、その全体を一体成形品としてあることを特徴とする請求項3に記載のスライダー。
【請求項5】
前記連結柱(8)は、前記連結柱用補強部材(8c)のみで構成され、
前記フランジ(9)は、前記フランジ用補強部材(9c)のみで構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載のスライダー。
【請求項6】
前記上翼板(6)と前記下翼板(7)の材質は樹脂であり、前記連結柱用補強部材(8a,8c)と前記フランジ用補強部材(9a,9c)の材質はステンレスであることを特徴とする請求項1~5の何れかに記載のスライダー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスライドファスナーのスライダーに関する。
【背景技術】
【0002】
スライダーの一例として、上下に対向する上翼板と下翼板、上翼板と下翼板とを連結する連結柱、上翼板と下翼板の少なくとも一方の左右から上翼板と下翼板との間隔を狭める方向に突出する左右のフランジとを備えるものが存在する。この例のスライダーは、全体の材質を亜鉛や樹脂としたものが周知となっているが、その他に樹脂製スライダーでありながらその一部を金属製芯材にしたものが存在する(特許文献1)。
【0003】
特許文献1に開示されたスライダーは、樹脂製のスライダーの変形を防ぐことを目的とし、金属製芯材を樹脂製スライダーの各部全てに連続して配置するものである。より詳しく言えば、このスライダーの金属製芯材は、上翼板・下翼板・連結柱の少なくとも3つの部位に連続したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところでスライドファスナーはスライダーを前後に移動させることによって一対のエレメント列を開閉する。この開閉操作時に一対のエレメント列は、スライダーの連結柱やフランジに衝突しながら、スライダーの内部を通過するので、衝突箇所が摩耗し易い。
【0006】
そこで本発明者は耐摩耗性に優れたスライダーの開発に着手した。また耐摩耗性だけではなく、できる限り軽量化を図ることができるスライダーの開発に着手した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した周知のスライダーは全体を樹脂や金属といった同一の材質から構成するという技術的思想に基づくものである。耐摩耗性と軽量化を両立するスライダーを開発するに際して、この周知のスライダーの技術的思想を採用した場合、耐摩耗性と軽量化に優れた材質でスライダーを形成することになるが、そのような材質は見当たらない。
【0008】
また特許文献1のスライダーは、樹脂製スライダーの各部に連続する形で金属を配置するという技術的思想に基づくものである。耐摩耗性と軽量化を両立するスライダーを開発するに際して、この特許文献1のスライダーの技術的思想を採用した場合、金属を一対のエレメント列の衝突箇所に配置するという技術的思想を付加することになる。
この技術的思想に基づくスライダーの場合、一対のエレメント列が衝突する部位(連結柱やフランジ)だけでなく、上翼板・下翼板にも金属製芯材が配置されるので、スライダーが重くなる。
【0009】
以上とは相違する構成を採用したのが以下の本発明である。
本発明のスライダーは、上下に間隔をあけて対向する上翼板および下翼板、上翼板と下翼板とを両者の前部同士の間で連結する連結柱、連結柱に対して左右において上翼板と下翼板との少なくとも一方から上翼板と下翼板との上下間隔を狭める方向に突出する左右のフランジ、上翼板と下翼板との間に形成されるエレメント路を備える。そしてエレメント路は左右のフランジの間に形成されると共に連結柱から後方に延びる本路と、連結柱に対して左右に本路から分岐する左右の分岐路とを備える。以上を本発明のスライダーは前提とする。そのうえで連結柱はエレメント路に対面する部分の少なくとも一部に連結柱用補強部材を備え、連結柱用補強部材は、その上下方向の中間部が上翼板と下翼板との間に配置され、当該中間部に対して上下両側の部分が上翼板と下翼板に埋設されており、フランジはエレメント路に対面する部分の少なくとも一部にフランジ用補強部材を備えるものとする。そして連結柱用補強部材とフランジ用補強部材の材質は、上翼板と下翼板よりも比重が重く且つ耐摩耗性に優れたものである。
【0010】
連結柱用補強部材とフランジ用補強部材はどのような形状であるかを問わないが、耐摩耗性を向上させるには次のようにすることが望ましい。
すなわち連結柱用補強部材とフランジ用補強部材は上下に延びる柱状であり、連結柱用補強部材は、その上端面を上翼板の上面に露出させると共に、その下端面を前記下翼板の下面に露出させることである。
【0011】
連結柱が連結柱用補強部材以外の部分を備えるか否かは問わない。またフランジがフランジ用補強部材以外の部分を備えるか否かは問わない。そして連結柱が連結柱用補強部材以外の部分を備える場合で且つフランジがフランジ用補強部材以外の部分を備える場合に、耐摩耗性と軽量化を両立するには次のようにすることが望ましい。
すなわち連結柱は、連結柱用補強部材に対して前方に隣り合う前柱を備えることにする。前柱の材質は、連結柱用補強部材よりも比重が軽く且つ耐摩耗性に劣るものとする。フランジは、フランジ用補強部材に対して後方に隣り合う後フランジを備えるものとする。後フランジの材質は、フランジ用補強部材よりも比重が軽く且つ耐摩耗性に劣るものとする。
【0012】
連結柱が前柱を備える場合で且つフランジが後フランジを備える場合、前柱と後フランジを上翼板や下翼板等に対してどのように一体化するかは、問わないが、一体化するための工程を削減するには以下のようにすることが望ましい。
すなわち上翼板、下翼板、前柱および後フランジは、その全体を一体成形品とすることである。
【0013】
連結柱とフランジの耐摩耗性をより向上させるには次のようにすることが望ましい。
すなわち連結柱は連結柱用補強部材のみで構成することとし、フランジはフランジ用補強部材のみで構成することである。
【0014】
上翼板・下翼板・連結柱用補強部材・フランジ用補強部材の材質は比重と耐摩耗性の条件を満たせば、それ以外の条件を問わないが、軽量化と耐摩耗性をより高い品質で両立させるには、次のようにすることが望ましい。
すなわち上翼板と下翼板の材質は樹脂にすることであり、連結柱用補強部材とフランジ用補強部材の材質はステンレスにすることである。
【発明の効果】
【0015】
本発明のスライダーは、連結柱用補強部材やフランジ用補強部材の材質に上翼板や下翼板よりも比重が重く且つ耐摩耗性に優れた材質を用いるので、例えば連結柱とフランジの材質を上翼板や下翼板と同じ材質にしたスライダーと比べると、耐摩耗性が向上し、且つ例えば連結柱用補強部材やフランジ用補強部材の材質と同じ材質で全体が形成されたスライダーと比べると、軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】(A)(B)図は本発明の第一実施形態のスライダーを示す分解斜視図、組立斜視図である。
【
図2】(C)(D)(E)図は第一実施形態のスライダーの側面図、D-D線断面図、E-E線断面図である。
【
図3】スライドファスナーの一例を示す平面図である。
【
図4】(F)(G)(H)図は第二実施形態のスライダーの側面図、G-G線断面図、H-H線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
スライドファスナー1の一例は
図3に示すように、平面上において対向して配置された一対のファスナーストリンガー2,2と、一対のファスナーストリンガー2,2の対向する側縁部を開閉すると共に当該対向する側縁部に沿って移動可能な本発明の第一実施形態のスライダー3とを備える。ちなみにスライドファスナー1の用途の一例としては、衣服や、水中用のダイビングスーツや、自動車の座席をスライドさせるレールを覆うためのカバーが挙げられる。
【0018】
以下の説明では、次のように方向を定める。
「左右方向」とは、一対のファスナーストリンガー2,2の対向する方向である。左方向・右方向は
図3での左方向・右方向に一致する。「前後方向」とはスライダー3を移動させる二方向である。「前方向」とは一対のファスナーストリンガー2,2が閉じるようにスライダー3を移動させる方向であり、
図3の上方向である。「後方向」とは一対のファスナーストリンガー2,2が開くようにスライダー3を移動させる方向であり、
図3の下方向である。「上下方向」とは、
図3の紙面に対して直交する方向である。「上方向」とは、
図3の紙面に対して直交する方向のうち手前を向く方向である。「下方向」とは、
図3の紙面に対して直交する方向のうち奥側を向く方向である。
【0019】
ファスナーストリンガー2は、前後方向に延びるテープ4と、テープ4の左右のうち一方の端部に沿って固定されたエレメント列5とを備える。
【0020】
一対のエレメント列5,5は、噛合および分離するもので、その噛合および分離する単位となるエレメント5aが他のエレメント5aと独立しているもの、又はエレメント5aが連続しているものである。例えば複数のエレメント5aがそれぞれ独立しているエレメント列5は
図3に示すように、テープ4の対向する側縁部に沿って間隔をあけて一列に配置された多数のエレメント5aによって形成される。また図示しないが、複数のエレメント5aが連続しているエレメント列5は、テープ4の対向する側縁部に沿って連続するモノフィラメントによって形成される。ちなみにモノフィラメントは例えばコイル状に湾曲したもので、コイルの一巻き分がエレメント5aになる。
【0021】
本発明の第一実施形態のスライダー3は
図1,2に示すように有体物として、上翼板6と、上翼板6に対し下方に間隔を開けて対向する下翼板7と、上翼板6の前部と下翼板7の前部との間において両者を連結する連結柱8と、連結柱8に対して左右において下翼板7から上翼板6と下翼板7との上下間隔を狭める方向(上方)に突出する左右のフランジ9,9と、上翼板6の上面から突出する引手取付部11とを備える。また第一実施形態のスライダー3は無体物(空間)として、上翼板6と下翼板7との間に形成されると共に一対のエレメント列5,5が通過するエレメント路12と、エレメント路12に対して左右両側からスライダー3の外部に通じると共に一対のテープ4,4が通過する左右のテープ路13,13とを備える。
【0022】
エレメント路12は、上下方向に関しては上翼板6と下翼板7によって区画され、左右方向に関しては左右のフランジ9,9によって区画され、前後方向に関しては前方向を連結柱8によって区画される。またエレメント路12は、噛合した一対のエレメント列5,5が通過する本路12aと、連結柱8を中心にして本路12aから左右に分岐すると共に左右のエレメント列5が別々に通過する左右の分岐路12b,12bとを備える。
【0023】
本路12aは左右のフランジ9,9の間において連結柱8から後方に向かって延びる。また左右の分岐路12b,12bは連結柱8に対して左右両側に配置され、本路12aのうち連結柱8側の端部(前端部)における左右から前方に向かって延びる。
【0024】
テープ路13は、スライダー3の内部空間のうちフランジ9の位置においてスライダー3の外部空間とエレメント路12とを繋げる空間である。
【0025】
連結柱8は、連結柱用補強部材8aと、連結柱用補強部材8aに対して前方に隣り合う前柱8bとを備える。したがって連結柱8は、エレメント路12に対面する部分のうち前後方向の全長における後部に連結柱用補強部材8aを備える。
【0026】
連結柱用補強部材8aは、上下方向に延びる柱状であり、より詳しく言えば本実施形態では連結柱用補強部材8aは円柱状となっている。また連結柱用補強部材8aは、その上下方向の中間部が上翼板6と下翼板7との間に配置され、当該中間部に対して上下両側の部分を上翼板6と下翼板7に埋設してある。
【0027】
前柱8bは上翼板6と下翼板7との間に挟まれ、その上下両端面が上翼板6と下翼板7に接着や溶着等によって一体化される。ちなみに前柱8bは前方に向かうにつれて左右の幅が広くなる形状をしている。また前柱8bの後面は連結柱用補強部材8aに対して隣接している。そして前柱8bの後面は連結柱用補強部材8aの前面に一致する湾曲面となっている。
【0028】
フランジ9は、フランジ用補強部材9aと、フランジ用補強部材9aに対して後方に隣り合う後フランジ9bを備える。したがってフランジ9はエレメント路12に対面する部分のうち前後方向の全長における前部にフランジ用補強部材9aを備える。
【0029】
フランジ用補強部材9aは、上下方向に延びる柱状であり、より詳しく言えば本実施形態ではフランジ用補強部材9aは円柱状となっている。またフランジ用補強部材9aは、その下部が下翼板7に埋設され、その上部が上翼板6に向かって突出する。
【0030】
後フランジ9bは、下翼板7の上に載せられ、その下端面が下翼板7に接着や溶着等によって一体化される。ちなみに後フランジ9bは下翼板7の側面に沿って延びる形状をしている。
【0031】
連結柱用補強部材8aとフランジ用補強部材9a(以下、「補強部材」と総称することもある。)の材質は、上翼板6と下翼板7(以下、「翼板」と総称することもある。)よりも比重が重く且つ耐摩耗性に優れたものである。ここで耐摩耗性に優れるとは、例えばビッカース硬度等の硬度がより大きいことを示す。スライダー3の各部を構成する具体的な材質の一例としては、ステンレス・亜鉛・樹脂(一例としてはポリエステル)が挙げられる。ステンレスの比重は7.6~8.1g/cm3である。亜鉛の比重は7.13~7.21 g/cm3である。樹脂の比重はステンレスや亜鉛等の金属に比べて遥かに小さい。また耐摩耗性の優れた材質を順に並べると、ステンレス>亜鉛>樹脂となる。
従って翼板と補強部材との材質の組み合わせは、翼板を樹脂にすると共に補強部材をステンレスまたは亜鉛にする場合、翼板を亜鉛にすると共に補強部材をステンレスにする場合がある。そして一番望ましい例は、翼板を樹脂にし、補強部材をステンレスにするものである。
【0032】
ちなみに前柱8bの材質は連結柱用補強部材8aよりも比重が軽く且つ耐摩耗性に劣ったものである。また後フランジ9bの材質はフランジ用補強部材9aよりも比重が軽く且つ耐摩耗性に劣ったものである。そして本実施形態では前柱8bと後フランジ9bの材質は翼板と同じとする。
【0033】
上翼板6と下翼板7は何れも上下方向を厚み方向とする板である。また上翼板6と下翼板7は連結柱用補強部材8aが埋設された穴8hを備える。また下翼板7はフランジ用補強部材9aが埋設された穴9hを備える。
引手取付部11は図示の例では細長いもので、その一端が上翼板6に接合し、その他端(先端)が上翼板6に接近している。また引手取付部11には図示しない引手が取り付けられる。
【0034】
上記した本発明の第一実施形態のスライダー3は組立によって形成される。また第一実施形態のスライダー3は、連結柱用補強部材8aやフランジ用補強部材9aの材質に上翼板6や下翼板7よりも比重が重く且つ耐摩耗性に優れた材質を用いるので、例えば連結柱8とフランジ9の材質に上翼板6や下翼板7と同じ材質を用いたスライダー3と比べると、耐摩耗性が向上し、且つ例えば連結柱用補強部材8aやフランジ用補強部材9aの材質で全体が形成されたスライダー3と比べると、軽量化を図ることができる。なお第一実施形態のスライダー3は、前柱8bや後フランジ9bを備えるので、前柱8bや後フランジ9bが無いスライダーと比べると、スライダー3の内部に一対のエレメント列5,5を案内し易くなる。
【0035】
本発明の第二実施形態のスライダー3Aは
図4に示すように連結柱8とフランジ9を第一実施形態のスライダー3とは相違させたものである。
【0036】
連結柱8は連結柱用補強部材8cであり、連結柱用補強部材8cのみから構成される。連結柱用補強部材8cは第一実施形態のスライダー3の連結柱用補強部材8aよりも直径の大きな円柱状となっている。
フランジ9はフランジ用補強部材9cであり、フランジ用補強部材9cのみから構成される。フランジ用補強部材9cは第一実施形態のスライダー3のフランジ用補強部材9aよりも直径の大きな円柱状となっている。
【0037】
本発明の第二実施形態のスライダー3Aも、第一実施形態のスライダー3と同様の理由で、耐摩耗性と軽量化の両立を図ることができる。
【0038】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
例えば第一実施形態のスライダー3は、接着や溶着や圧入を用いて組み立てて形成するものであったが、本発明のスライダー3はこれに限らず、インサート成形によって形成するもの(樹脂のインサート成形品)であっても良い。ちなみにインサート成形する場合には、連結柱用補強部材8aおよびフランジ用補強部材9aは金属部品(インサート部品)として金型内に予め設置しておけばいい。
【0039】
また本発明のスライダーは、上翼板6、下翼板7、前柱8bおよび後フランジ9bに関してはその全体を樹脂による一体成形品(射出成形品)としても良い。その場合、一体成形品には予め埋設用の穴が射出成形時に形成されるようにしておくことが望ましい。そして連結柱用補強部材8aおよびフランジ用補強部材9aを、射出成型品に形成された埋設用の穴に後から埋設することによって、スライダーを形成しても良い。
【0040】
またフランジ9は上記実施形態では下翼板7から突出するものであったが、本発明ではこれに限らず、上翼板6から突出するものであっても良いし、上翼板6と下翼板7の双方から別々に突出するものであっても良い。この場合、フランジ用補強部材9a,9cのうち突出端とは反対側の部分は、突出する基となる上翼板6又は下翼板7に埋設される。
【符号の説明】
【0041】
1 スライドファスナー
2 ファスナーストリンガー
3,3A スライダー
4 テープ
5 エレメント列
5a エレメント
6 上翼板
7 下翼板
8 連結柱
8a,8c 連結柱用補強部材
8b 前柱
8h 穴
9 フランジ
9a,9c フランジ用補強部材
9b 後フランジ
9h 穴
11 引手取付部
12 エレメント路
12a 本路
12b 分岐路
13 テープ路