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特許7433071センサ制御用無線タグ、移動体および点検システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】センサ制御用無線タグ、移動体および点検システム
(51)【国際特許分類】
   G08C 17/00 20060101AFI20240209BHJP
   G08C 19/00 20060101ALI20240209BHJP
   H04B 5/48 20240101ALI20240209BHJP
   H04B 1/59 20060101ALI20240209BHJP
   G06K 19/07 20060101ALI20240209BHJP
   H02J 50/10 20160101ALI20240209BHJP
   H02J 50/20 20160101ALI20240209BHJP
   H02J 50/80 20160101ALI20240209BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240209BHJP
【FI】
G08C17/00 Z
G08C19/00 T
G08C19/00 G
H04B5/02
H04B1/59
G06K19/07 020
G06K19/07 090
G06K19/07 160
G06K19/07 230
H02J50/10
H02J50/20
H02J50/80
H02J7/00 301D
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020022013
(22)【出願日】2020-02-13
(65)【公開番号】P2021128480
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】吉田 茂
(72)【発明者】
【氏名】本田 雅幹
(72)【発明者】
【氏名】坂下 元
(72)【発明者】
【氏名】橋本 龍
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-306188(JP,A)
【文献】特表2008-529120(JP,A)
【文献】国際公開第2007/009475(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08C 13/00 - 25/04
H04B 1/59
H04B 5/02
G06K 19/07
H02J 7/00
H02J 50/10
H02J 50/20
H02J 50/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサに接続され、前記センサを用いた計測の実行を制御するように構成されたセンサ制御用無線タグであって、
外部無線器から送信された電波または磁界を受信するためのアンテナと、
前記アンテナで受信した前記電波または前記磁界に基づいて電力を発生させるよう構成された電力生成部と、
前記電力生成部から供給される電力である発生電力を用いて、受信した前記電波または前記磁界に基づいて得られる制御信号に応じた処理を実行することで前記センサを制御するよう構成された制御部と、を備え、
前記制御信号は、受信確認の返信を要求する生存確認信号を含み、
前記制御部は、
前記発生電力の一部を用いて、前記センサに対する電力供給を実行するよう構成された電源制御部と、
前記電力供給の実行によって作動した前記センサの検出結果が入力されるよう構成された取得部と、
前記検出結果を含む通信情報を外部に送信するよう構成された送信処理部と、を有し、
前記制御部は、受信した前記制御信号が前記生存確認信号である場合に、前記アンテナを用いて前記受信確認を前記外部無線器に送信するよう構成されているセンサ制御用無線タグ。
【請求項2】
前記送信処理部は、前記通信情報を、前記アンテナを用いて前記外部無線器に送信するよう構成されている請求項1に記載のセンサ制御用無線タグ。
【請求項3】
前記センサは、該センサに対する電力供給の有無を切り替え可能なスイッチを介してバッテリに接続されており、
前記電源制御部は、前記バッテリの電力を前記センサに供給するために、前記スイッチをオンに切り替えるよう構成されている請求項1または2に記載のセンサ制御用無線タグ。
【請求項4】
前記制御信号は、前記センサへの電力供給の開始を指示する開始信号を含み、
前記電源制御部は、前記制御信号が前記開始信号である場合に、前記スイッチを前記オンに切り替えるよう構成されている請求項に記載のセンサ制御用無線タグ。
【請求項5】
前記制御信号は、前記センサへの電力供給の停止を指示する完了信号を含み、
前記電源制御部は、前記制御信号が前記完了信号である場合に、前記スイッチをオフに切り替えるよう構成されている請求項3または4に記載のセンサ制御用無線タグ。
【請求項6】
前記制御信号は、前記バッテリへの電力供給を指示する指示する充電実行信号を含み、
前記電源制御部は、受信した前記制御信号が前記充電実行信号である場合に、前記発生電力の一部を前記バッテリに供給するよう構成されている請求項3~5のいずれか1項に記載のセンサ制御用無線タグ。
【請求項7】
前記通信情報は、前記センサの設置位置を識別するのに用いる位置識別情報をさらに含む請求項1~6のいずれか1項に記載のセンサ制御用無線タグ。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の1以上のセンサ制御用無線タグと、
前記1以上のセンサ制御用無線タグに対する電波または磁界の送信、および前記1以上のセンサ制御用無線タグから送信される通信情報を受信するための外部無線器と、
前記外部無線器を搭載する移動体と、を備える点検システム。
【請求項9】
電源装置と、
前記電源装置から供給される電力によって作動する1以上の補助基地局と、
前記電源装置から前記1以上の補助基地局への電源供給の有無を制御する電源制御装置と、をさらに備え、
前記電源制御装置は、前記移動体と前記1以上の補助基地局との距離に基づいて、前記電源装置から前記補助基地局への前記電源供給の有無を制御するよう構成されている請求項に記載の点検システム。
【請求項10】
前記外部無線器は、前記電波または前記磁界の送信後、規定時間を経過しても前記通信情報を受信しない場合には、前記電波または前記磁界を再送出するよう構成されている請求項8または9に記載の点検システム。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載のセンサ制御用無線タグに対する電波または磁界の送信、および前記センサ制御用無線タグから送信される通信情報を受信するための外部無線器を搭載している移動体。
【請求項12】
センサに接続され、前記センサを用いた計測の実行を制御するように構成されたセンサ制御用無線タグと、
前記1以上のセンサ制御用無線タグに対する電波または磁界の送信、および前記1以上のセンサ制御用無線タグから送信される通信情報を受信するための外部無線器と、
前記外部無線器を搭載する移動体と、
電源装置と、
前記電源装置から供給される電力によって作動する1以上の補助基地局と、
前記電源装置から前記1以上の補助基地局への電源供給の有無を制御する電源制御装置と、を備える点検システムであって、
前記センサ制御用無線タグは、
前記外部無線器から送信された電波または磁界を受信するためのアンテナと、
前記アンテナで受信した前記電波または前記磁界に基づいて電力を発生させるよう構成された電力生成部と、
前記電力生成部から供給される電力である発生電力を用いて、前記センサを制御するよう構成された制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記発生電力の一部を用いて、前記センサに対する電力供給を実行するよう構成された電源制御部と、
前記電力供給の実行によって作動した前記センサの検出結果が入力されるよう構成された取得部と、
前記検出結果を含む通信情報を外部に送信するよう構成された送信処理部と、を有し、
前記電源制御装置は、前記移動体と前記1以上の補助基地局との距離に基づいて、前記電源装置から前記補助基地局への前記電源供給の有無を制御するよう構成されている点検システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、センサを用いた計測の実行制御に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば火力プラント等のプラントの巡回点検には、触診作業や、アナログメータなどのメータの読み取り作業、異音検知、蒸気漏洩確認などの様々な作業がある。これらの作業は日々数回交代シフトで行う必要がある場合があり、巡回員(人)が行う場合には、点検コストの増大や成り手不足等の課題がある。このため、従来から、巡回員の代わりに、点検や監視用のセンサを搭載した遠隔操作型の移動台車などを用いて、プラント設備の異常有無を点検する手法が提案されている。例えば特許文献1には、複数種類の点検・監視用のセンサや、バッテリ、無線伝送機を搭載し、遠隔制御により点検対象物まで移動して点検を行う移動ロボットが開示されている。また、特許文献2には、プラントの保守点検作業ルートに沿って配置されたICタグの情報を読み込み、これにより得られる作業指示に従って行動する2足歩行型ないしビークル型の保守点検ロボットが開示されている。そして、近年では、巡回点検ロボットの開発が進んでおり、ロボットによる巡回点検が実現しつつある。
【0003】
また、特許文献3には、工場など固定して設置され、温度、湿度、照度などの環境情報を計測する固定センサ端末と、空間内を移動して上記の環境情報や固定センサ端末の計測できない環境の環境情報を計測する自走センサ端末と、を備えるシステムが開示されている。これによって、他の計測点より高い時間周期で計測することが求められる位置に固定センサ端末を設置し、高い時間周期が必要とされない計測点を自走センサ端末により計測することで、すべての位置に固定のセンサを設置することなく、少ない端末数で効率的に環境計測を行うことが可能になるとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-198586号公報
【文献】特許第3764713号公報
【文献】特開2010-169422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば特許文献1~2のような地上走行型のロボットで巡回点検を代替する場合には、次のような課題が存在する。すなわち、例えば高所や配管の上面等、地上走行ロボットでは届かない、あるいは死角になるような位置の点検は困難である。触診作業をロボットで代替する場合、高性能のマニュピレータの搭載が必要となるためロボットのコストが高額になると共に、マニュピレータで点検できる範囲には限りがある。メータ読み取り作業をロボットで代替する場合、ロボットに搭載したカメラでメータを撮影する必要があるが、ロボット及びカメラの正確な位置合わせが必要であり、これらの制御は容易ではない。また、ロボットの位置情報に基づいて点検ポイントを識別し、点検ポイントと点検結果とを紐づけて管理する場合、複数の点検ポイントが近接(図1参照)していると、ロボットの位置推定精度によっては、点検結果に対する点検ポイントを誤識別するリスクがある。
【0006】
このような課題に対して、特許文献3のように無線通信技術を適用することが考えらえるが、固定型のセンサについては、電源ケーブルの敷設などの電源設備の設置が必要となり、コストが大幅に増大する。この電源ケーブルに代えてバッテリ(例えば内蔵電池など)を用いることで固定型のセンサを駆動することも考えられるが、バッテリが消耗すると交換が必要となり、メンテナンスコストが増大する。
【0007】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、プラントなどの対象エリア内の点検を効率良く、低コストで行うことが可能なセンサ制御用無線タグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の少なくとも一実施形態に係るセンサ制御用無線タグは、
センサに接続され、前記センサを用いた計測の実行を制御するように構成されたセンサ制御用無線タグであって、
外部無線器から送信された電波または磁界を受信するためのアンテナと、
前記アンテナで受信した前記電波または前記磁界に基づいて電力を発生させるよう構成された電力生成部と、
前記電力生成部から供給される電力である発生電力を用いて、前記センサを制御するよう構成された制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記発生電力の一部を用いて、前記センサに対する電力供給を実行するよう構成された電源制御部と、
前記電力供給の実行によって作動した前記センサの検出結果が入力されるよう構成された取得部と、
前記検出結果を含む通信情報を外部に送信するよう構成された送信処理部と、を有する。
【0009】
本発明の少なくとも一実施形態に係る点検システムは、
1以上の上記のセンサ制御用無線タグと、
前記1以上のセンサ制御用無線タグに対する電波または磁界の送信、および前記1以上のセンサ制御用無線タグから送信される通信情報を受信するための外部無線器と、
前記外部無線器を搭載する移動体と、を備える。
【0010】
また、本発明の少なくとも一実施形態に係る移動体は、
上記の記載のセンサ制御用無線タグに対する電波または磁界の送信、および前記センサ制御用無線タグから送信される通信情報を受信するための外部無線器を搭載している。
【発明の効果】
【0011】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、プラントなどの対象エリア内の点検を効率良く、低コストで行うことが可能なセンサ制御用無線タグが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る点検システムの構成を概略的に示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係るセンサ制御用無線タグの機能を概略的に示すブロック図である。
図3】本発明の一実施形態に係るセンサ制御用無線タグの機能を概略的に示すブロック図であり、センサ駆動用のバッテリを備える。
図4】本発明の一実施形態に係るセンサ制御用無線タグの機能を概略的に示すブロック図であり、制御信号受信部を備える。
図5】本発明の一実施形態に係る電源制御装置を備える点検システムを概略的に示す図であり、電源制御装置は制御装置である。
図6】本発明の一実施形態に係る電源制御装置を備える点検システムを概略的に示す図であり、電源制御装置は無線タグである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0014】
(点検システムの説明)
図1は、本発明の一実施形態に係る点検システム7の構成を概略的に示す図である。
図1に示すように、点検システム7は、例えばプラントなどの保守点検の対象として定められた任意のエリア(以下、対象エリア)内の点検(巡回点検)などを行うためのシステムである。そして、点検システム7は、対象エリア内の少なくとも一か所に設置される1以上のセンサ制御用無線タグと、この対象エリア内を移動しつつセンサ制御用無線タグと通信することが可能な移動体8と、例えばWiFi(無線LAN)や移動体通信システム(4G、5Gなど)などの基地局9bに無線接続された上記の移動体8と通信するよう構成された制御装置7cと、を備える。
【0015】
上記のセンサ制御用無線タグ(以下、単に、無線タグ1)は、対象エリア内に設置されたセンサ9に接続され、センサ9を用いた計測の実行を制御するよう構成された機器である。上記のセンサ9は所望の物理量を検出(計測)可能な各種の計測器であり、例えばアナログメータなどのメータやカメラであっても良い。そして、各センサ9は、例えば配管などの対象設備の温度や振動、流量、異音などの物理量を得るために、プラント内の必要な場所に設置される。このセンサ9は、例えばアナログメータ(図1参照)であれば検出したアナログ値に対応した値を出力可能な変換器92がセンサ本体部91に接続されているなど、センサ9は、その検出結果V(計測結果)をデジタル情報として外部に出力可能になっている。なお、アナログメータのメータ部を撮影するためカメラ(センサ9)を付近に設置しても良い。通常、プラント内には複数のセンサ9が設置されており、無線タグ1は、これらのセンサ9の筐体あるいはその付近の設備に例えば貼り付けられるなどして、センサ9毎に設けられる。無線タグ1の詳細は後述する。
【0016】
また、上記の移動体8は、上記の各センサ9の設置場所を点検ポイントPとして、対象エリア内に存在する1以上の点検ポイントP(センサ9)を順番に辿る(巡回する)ように決定された巡回ルートRに沿って移動するように構成される。移動体8は、図1に示すような例えば無人走行車(AGV:Automatic Guided Vehicle)などの地上走行型の保守点検ロボットでも良いし、例えばドローンといった無人航空機(UAV:Unmanned Aerial Vehicle)などの飛行型の保守点検ロボットであっても良い。あるいは、移動体8は人や、人を運ぶ車両であっても良い。
【0017】
具体的には、幾つかの実施形態では、移動体8は、巡回ルートRが把握可能な地図情報と、移動体8に搭載された自己位置推定手段を用いて得られる移動体8の現在位置とに基づいて、巡回ルートRに沿って自動で移動するように構成されても良い。この自己位置推定手段は周知な手段で良い。例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)、移動体8に搭載したセンサで検出した方位および距離に基づく自律航法装置、あるいは、LiDAR(Light Detecting And Ranging)などであっても良い。他の幾つかの実施形態では、移動体8は、操作員などに遠隔操作されるように構成されても良い。この場合には、移動体8にはカメラやLiDARが搭載されることで、周囲の状況を制御装置7cなどに送信するようになっており、操作員は遠隔地でモニタを通してこの周囲の状況を見ながら、上記の現在位置や地図情報を参照しつつ、移動体8の進行方向や速度などを指令するなど移動体8を手動で操縦しても良い。その他の幾つかの実施形態では、上述した実施形態を組み合せも良く、その切替えが可能であっても良い。なお、上記の地図情報は、LiDARなどを利用したSALM(Simultaneous Localization and Mapping)により、対象エリア内で移動体8を移動させることで生成しても良い。
【0018】
そして、移動体8は、このような巡回ルートRに沿って移動しつつ、センサ9の付近に到着すると、点検動作を行う。具体的には、移動体8は、自動または手動により、後述するように無線タグ1との無線通信を行うことでセンサ9を起動させると共に、センサ9の検出結果Vを移動体8あるいは制御装置7cなどの外部に対して無線送信させる。
【0019】
他方、制御装置7cは、移動体8の点検動作などにより得られた点検結果などの情報の管理や、移動体8の移動制御を行うためのコンピュータ装置である。この移動制御は、上述したように自動で行っても良いし、操作員の操縦により入力された移動操作の内容命令を移動体8に送信するものであっても良い。
【0020】
図1に示す実施形態では、移動体8は、車載バッテリの電力により走行するAGVであり、現在位置を周期的に制御装置7cに送信するようになっている。また、制御装置7cは上記の地図情報を備えており、受信した現在位置が巡回ルートRに沿っているかをチェックしながら、移動体8の移動を制御するようになっている。具体的には、制御装置7cは次の移動先を移動体8に送信(命令)した後、送信した移動先に向かって移動する移動体8の現在位置を追跡しても良い。これを繰り返すことで、巡回ルートRに沿った移動体8の移動が可能となる。また、移動体8は、各点検ポイントPで取得した点検結果を制御装置7cに送信するようになっており、制御装置7cは受信した点検結果を蓄積するようになっている。
【0021】
ただし、本実施形態に本発明は限定されない。他の幾つかの実施形態では、移動体8が、移動体8に搭載された記憶装置に地図情報を記憶しているなど、移動体8側に地図情報が配置されることで、移動体8が自律的に移動しても良い。この場合、制御装置7cは、受信する移動体8の現在位置を監視し、必要な場合に遠隔操作に切替えることが可能になっていても良い。その他の幾つかの実施形態では、点検システム7は、制御装置7cを備えていなくても良い。この場合には、移動体8は自律的に移動すると共に、移動体8が全ての点検結果を蓄積(記憶)し、格納庫(不図示)などの所定の場所で蓄積した点検結果を点検員などに回収されるようになっていても良い。
【0022】
上述したような点検システム7において、図1に示すように、移動体8は、巡回ルートRにおける1以上の点検ポイントP毎に設置される無線タグ1に対して、電波または磁界(以下、電波等)の送信と、この送信に応じて、各無線タグ1からされる通信情報I(点検結果など)の受信とを実行するための外部無線器81を備える(搭載する)。具体的には、この外部無線器81は、RFID(Radio Frequency Idntifier)の通信原理を用いて無線タグ1と無線通信を行う機器である。
【0023】
すなわち、外部無線器81はRFIDリーダライタであり、電波等を無線タグ1に送出(出力)するよう構成される。他方、この外部無線器81とRFIDによる無線通信を実行する無線タグ1は例えばICタグなどのRFIDタグ(以下、無線タグ)であり、アンテナ1aで受信した外部無線器81からの電波等に基づいて電力を発生させ、発生した電力(以下、発生電力E)により動作する。そして、無線タグ1は、この動作の結果として得られた情報を、例えばアンテナ1aから外部無線器81に返信するなど、外部への送信が可能に構成される。よって、このように構成される点検システム7においては、移動体8と共に移動する外部無線器81からの電波等が無線タグ1で受信可能な範囲内に移動体8に入っている時だけ、無線タグ1は起動(作動。以下同様)することになる。
【0024】
以下、無線タグ1について、図2図4を用いて詳細に説明する。
図2図4は、本発明の一実施形態に係る無線タグ1の機能を概略的に示すブロック図である。なお、図2図4に示す無線タグ1は無線タグであり、基板(プリント板)上に設置された回路部により構成されている。
【0025】
図2図4に示すように、無線タグ1は、上記の外部無線器81から送信された電波等を受信するためのアンテナ1aと、このアンテナ1aで受信した電波等に基づいて電力を発生させるよう構成された電力生成部2と、この電力生成部2から供給される電力である発生電力Eを用いて、この無線タグ1が接続されたセンサ9を制御するよう構成された制御部3と、を備える。
【0026】
なお、制御部3は、コンピュータで構成されても良い。すなわち、図示しないプロセッサ(例えばMPU)や、ROMやRAMなどの記憶部3mを備えており、メモリ(主記憶装置)にロードされたファームウェアなどのプログラム(制御プログラム)の命令に従ってプロセッサが動作(演算など)することで、上記の各機能部を実現する。換言すれば、上記のプログラムは、コンピュータに後述する各機能部を実現させるためのソフトウェアであり、コンピュータによる読み込みが可能な記憶媒体に記憶されても良い。
【0027】
より詳細には、制御部3は、上記の電力生成部2から供給された発生電力Eの一部を用いて、センサ9に対する電力供給を実行するよう構成された電源制御部31と、この電力供給の実行により電源がオンとなって起動(作動)したセンサ9の検出結果Vが入力されるよう構成された取得部32と、入力された検出結果Vを含む通信情報Iを外部に送信するよう構成された送信処理部33と、を有する。
【0028】
上記のセンサ9の検出結果Vは、センサ9の計測値であり、例えば温度や圧力、振動などの物理量の測定値の瞬間値のデータであっても良いし、この測定値の複数で構成される熱画像などの画像データや、所定の期間の測定値の集合データであっても良い。
【0029】
また、上記の通信情報Iは、幾つかの実施形態では、図2図4に示すように、センサ9の設置位置を識別するのに用いる位置識別情報Piをさらに含んでも良い。この位置識別情報Piは、複数の無線タグ1が巡回ルートRに設置されていたとしても、これらを一意に識別することが可能なタグIDなどであっても良い。あるいは、位置識別情報Piは、緯度および経度や、対象エリア内に任意に定めた基準位置からの相対的な位置などの座標情報であっても良い。この位置識別情報Piは、無線タグ1が備える記憶部3mに予め記憶しておくことで、送信処理部33がセンサ9の検出結果Vを外部に送信する際に一緒に送信される。このため、移動体8などの受信側では、各センサ9の検出結果Vおよびそのセンサ9の位置識別情報Piをセットで受信するので、検出結果Vに対する位置識別情報Piが紐づけられた形で受信でき、受信した検出結果Vがどのセンサ9のものであるかの識別が容易となる。
【0030】
すなわち、制御部3は、電力生成部2から供給された電力(発生電力E)により起動(電源がオンの状態)し、この発生電力Eの一部を用いて作動する。また、センサ9は、発生電力Eの供給により作動している制御部3から、その作動に用いていない発生電力Eの他の一部の電力供給を受けることで起動する。そして、起動したセンサ9は、検出すべき物理量の検出を実行し、その検出結果Vを取得部32に入力する。このようにして、センサ9を用いた計測の実行の有無が制御される。
【0031】
図2図4に示す実施形態では、無線タグ1は例えば内蔵電池や外部設置のバッテリ5b(図3図4参照)を備えることなく、外部無線器81から受信した電波等の発生電力Eのみで動作可能なパッシブ型の無線タグで構成されている。また、送信処理部33は、上記の通信情報Iを、上記のアンテナ1aを用いてRFIDにより上述した外部無線器81に送信するようになっている。この際、送信処理部33は、記憶部3mに格納されているタグIDを通信情報Iに含めた上で、外部無線器81に送信するようになっている。
【0032】
また、図2図4に示す実施形態では、無線タグ1は、電力生成部2から入力される発生電力Eを、制御部3の各機能部(回路部)に分配するよう構成された電力分配部34(回路部)をさらに備えている。そして、上述した電源制御部31、取得部32および送信処理部33は、電力分配部34から供給される電力を用いて動作するようになっている。
【0033】
ただし、本実施形態に本発明は限定されない。他の幾つかの実施形態では、無線タグ1は、バッテリ5bを備えたアクティブ型の無線タグであっても良い。また、その他の幾つかの実施形態では、送信処理部33は、通信情報Iの送信を、RFIDによる無線通信を行うことなく外部に送信しても良い。例えば、無線タグ1は、例えばWiFiや動体通信システムなどの基地局9bとの無線通信が可能な無線器(不図示)に有線あるいは無線(例えばRFIDや近距離無線)などで接続されており、送信処理部33はこの無線器(不図示)に対して通信情報Iを出力しても良く、通信情報Iは、上述した制御装置7cに直接通信されても良い。
【0034】
なお、上述した制御部3は、MCU(Micro Controller Unit)などで実現しても良い。また、例えば電力生成部2および制御部3は例えばSoC(System on Chip)など1つの集積回路(チップ)に実装しても良い。制御部3は複数のICなど複数の回路に機能分散されても良く、その上でSoCとして実装しても良い。
【0035】
上記の構成によれば、無線タグ1は、例えばRFIDタグリーダライタなどとなる外部無線器81から電波等を受信することで電力を発生させ、その電力の一部を用いて例えばプラントなどに設置されたセンサ9への電力供給を実行する。また、この電力供給によってセンサ9が作動することで得られる検出結果Vを取得し、例えば上記の外部無線器81あるいは無線LANや移動体通信システムの基地局9bを介して、上位装置(図1では制御装置7cなど)に対して通信情報Iを通信する。つまり、RFIDを利用してセンサ9に対する電力供給を行い、センサ9の電源をオンにして起動(作動)させると共に、センサ9の検出結果Vを無線により外部へ送信する。
【0036】
例えば、このような無線タグ1を、外部無線器81を有する移動体8と共に用いれば、移動体8と共に移動する外部無線器81からの電波等が無線タグ1で受信可能な範囲内に移動体8に入っている時だけ、上記の動作が行われる。
【0037】
このように、RFIDなどを利用して無線タグ1およびセンサ9の電源をオンにすることで、無線タグ1やセンサ9への電力供給を、バッテリ5bや電源設備(ケーブルの敷設など)を設置することなく行うことができる。よって、これらの設置コストや、バッテリ5bの交換等のメンテナンスコストを削減することができる。
【0038】
また、センサ9の検出結果Vを無線タグ1から外部へ無線通信することにより、例えば高所や配管の上面等、地上走行ロボットでは届かない、あるいは死角になるような位置の点検を容易に行うことができる。また、予め設置したセンサ9の検出結果Vを無線通信により取得することで、高性能のマニュピレータなどの高価な設備や、カメラの位置合わせなどの高度な制御を用いることなく、点検作業を行うことができる。また、無線タグ1から外部へ送信される通信情報Iにセンサ9の検出結果Vと共に位置識別情報Piを含めるようにすれば、点検ポイントPとセンサ9の検出結果Vとの紐づけをより確実に行うことができる。
【0039】
次に、上述した無線タグ1に関する幾つかの実施形態について、図3図4を用いて、説明する。
図3は、本発明の一実施形態に係る無線タグ1の機能を概略的に示すブロック図であり、センサ駆動用のバッテリ5bを備える。図4は、本発明の一実施形態に係る無線タグ1の機能を概略的に示すブロック図であり、制御信号受信部35を備える。
【0040】
上述した図2を用いて説明した実施形態では、無線タグ1はパッシブ型の無線タグであり、無線タグ1およびセンサ9は、バッテリ5bや電源設備からの電力供給なしに、動作が可能である。しかしながら、次のような課題が考えられる。すなわち、無線タグ1が電波等に基づいて発生させる発生電力Eはそこまで大きくないのが通常である。よって、発生電力Eを超えるような電力を消費するセンサ9や外部回路を駆動することは困難である。また、低消費電力のセンサ9であっても、高サンプリング頻度での計測は困難な場合が考えられる。よって、振動(加速度)、歪、熱画像などの画像等のデータの計測や送信は、電力が不足する可能性がある。このような課題に対して、例えばセンサ9の駆動のためにバッテリ5bを追設すれば、これらの計測や外部への送信は可能になるかもしれないが、この場合には、高サンプリング頻度であるほどバッテリ5bの消耗が早くなり、定期的なバッテリ5b交換が必要となる。
【0041】
そこで、幾つかの実施形態では、図3図4に示すように、上記のセンサ9は、このセンサ9に対する電力供給の有無を切り替え可能なスイッチ5s(リレースイッチ)を介してバッテリ5bに接続されており、上述した電源制御部31は、このバッテリ5bの電力をセンサ9に供給するために、上記のスイッチ5sをオンに切り替えるよう構成されても良い。
【0042】
すなわち、センサ9とバッテリ5bとを接続する電力線5Lにはスイッチ5sが設けられている。このスイッチ5sは、オン状態になると電力線5Lを電気が流れることで、バッテリ5bからセンサ9に電力が供給され、オフ状態になると電気が流れないようになることによりバッテリ5bからセンサ9への電力の供給が停止される。つまり、自然放電を除き、スイッチ5sがオン状態の時だけ、バッテリ5bからの電力の放電がなされる。
【0043】
なお、図3に示す実施形態では、バッテリ5bはセンサ9に対してのみ接続されているが、バッテリ5bが無線タグ1(電力分配部34)にも接続されることで、無線タグ1もバッテリ5bの電力により動作するように構成されても良い。この場合には、無線タグ1は、後述する制御信号S(開始信号Ss、完了信号Seなど)に応じた動作をすることで、センサ9への電力供給を制御する。また、図3に示す実施形態では、バッテリ5bは、無線タグ1の外部に設置されているが、他の幾つかの実施形態では、無線タグ1がバッテリ5bおよびスイッチ5sを内蔵していても良い。すなわち、無線タグ1が、アクティブ型の無線タグであり、バッテリ5bと、スイッチ5sとをさらに備えても良い。
【0044】
上記の構成によれば、センサ9は、バッテリ5bの電力を用いて起動するようになっている。そして、電源制御部31は、外部無線器81から受信した電波等に基づいて発生した電力の一部を用いて、このセンサ9とバッテリ5bとを接続する電力線5Lに設けられたスイッチ5sをオンにする。これによって、無線タグ1が外部無線器81から受信した電波等を受信したのを契機に、センサ9への電力供給を、バッテリ5bを用いて実行することができる。これによって、センサ9の消費電力が大きい場合や、高サンプリング頻度による検出(計測)が必要な場合であっても、センサ9による計測を適切に実行することができる。
【0045】
また、外部無線器81から電波等を受信した時だけバッテリ5bに蓄積された電力を使用するため、バッテリ5bの電力の消耗を抑制することができ、バッテリ5bの稼働時間を延伸させることができる。この際、無線タグ1を完全パッシブ駆動にすれば、待機電力が不要となるので、バッテリ5bの電力を使用することなく作動することができる。よって、バッテリ5bの稼働時間をさらに延伸させることができる。
【0046】
また、幾つかの実施形態では、図4に示すように、上述した制御部3は、移動体8などから受信した電波または磁界に基づいて得られる制御信号Sに応じた処理を実行するように構成されても良い。具体的には、外部無線器81は、電波等を送出する際に、無線タグ1に対する指示(命令)を行うための制御信号Sの内容(コマンド)に応じて電波等を変調して送出することにより、電波等(キャリア)に制御信号Sを重畳しても良い。ただし、他の手法であっても良く、外部無線器81から送出される電波等で制御信号Sを無線タグ1に対して通信できれば良い。これによって、無線タグ1を外部からの命令に応じて動作させることが可能となる。なお、図4に示す実施形態では、点検システム7は、上述したバッテリ5bおよびスイッチ5sを備えているが、これらを備えていなくても良い。
【0047】
具体的には、幾つかの実施形態では、上記の制御信号Sは、センサ9への電力供給の開始を指示する開始信号Ssであっても良い。例えば、図4に示すように、点検システム7が上記のバッテリ5bを備える場合には、電源制御部31は、受信した制御信号Sが開始信号Ssである場合には、上記のスイッチ5sをオンに切り替えるよう構成されても良い。これによって、センサ9への電力供給の実行を外部からの命令に応じて行うことができる。
【0048】
他の幾つかの実施形態では、上記の制御信号Sは、センサ9への電力供給の停止(測定を完了)を指示する完了信号Seであっても良い。例えば、図4に示すように、点検システム7が上記のバッテリ5bを備える場合には、電源制御部31は、受信した制御信号Sが完了信号Seである場合には、上記のスイッチ5sをオフに切り替えるよう構成されても良い。これによって、センサ9への電力供給の停止を外部からの命令に応じて行うことができ、無線タグ1が動作を継続しつつ、センサ9への電力供給が不要な場合に、バッテリ5bの電力が不必要に消費されるのを防止することができる。
【0049】
その他の幾つかの実施形態では、上記の制御信号Sは、バッテリ5bへの電力供給を指示する充電実行信号Sbであっても良い。この場合、点検システム7が上記のバッテリ5bを備えており、電源制御部31は、受信した制御信号Sが充電実行信号Sbである場合には、上述したセンサ9への電力供給に代えて、上記の発生電力Eの一部をバッテリ5bに供給するよう構成される。これによって、バッテリ5bの稼動時間を延長させることができ、点検員がバッテリの交換のために現地に出向く頻度をさらに少なくすることができる。
【0050】
また、その他の幾つかの実施形態では、制御信号Sは、受信確認の返信を要求する生存確認信号Srであっても良い。この場合、制御部3は、受信した制御信号Sが生存確認信号Srである場合には、上述したアンテナ1aを用いて受信確認を外部無線器81に送信するよう構成される。これによって、無線タグ1の診断を外部無線器81から行うことができ、例えば無線タグ1からセンサ9の検出結果Vが受信されない場合に、その原因の一時的な切り分けを遠隔地で行うことなどが可能となる。
【0051】
図4に示す実施形態では、無線タグ1は、受信した電波等から制御信号Sを取り出す(読み込む)よう構成された制御信号受信部35をさらに備えている。例えば、変調により電波等に重畳された制御信号Sのビット列を、変調方式に応じて取り出しても良い。そして、この制御信号受信部35は、アンテナ1aと電源制御部31とにそれぞれ接続されており、アンテナ1aで受信された電波が電力生成部2で整流などされる前の電波等から制御信号Sを取り出す。そして、制御信号受信部35は取り出した制御信号Sに応じて、電源制御部31に指令(信号)を出ようになっている。また、制御信号Sが生存確認信号Srである場合には、送信処理部33に返信を要求するトリガ信号を出力する。この場合には、送信処理部33は、位置識別情報Piのみを含む通信情報Iを送信しても良い。
【0052】
上述した制御信号Sに応じてセンサ9への電力供給を制御する場合の一例を、外部無線器81から電波を送出する場合を例に説明する。なお、移動体8は、巡回ルートRの移動中は所定の周期で電波を送出するように構成されても良いし、点検ポイントPに到着あるいは所定の距離まで近づいた場合のみ電波を送出しても良い。また、移動体8は、点検ポイントPでセンサ9の検出結果Vを取得できれば、点検ポイントPで一時停止しても良いし、そのままの速度あるいは速度を調整するなどして点検ポイントPを通過するように構成しても良い。
【0053】
移動体8は、点検ポイントPに到着すると、外部無線器81を用いて開始信号Ssを含む電波を送出する。無線タグ1は、移動体8から送出された電波を受信すると、この電波で搬送された制御信号Sを読み込み、これに応じた動作を実行する。ここでは、制御信号Sが開始信号Ssであるため、制御信号受信部35は、発生電力Eの一部を消費して、開始信号Ssに応じた開始トリガ信号を電源制御部31に出力した後、待機状態に移行する。なお、この待機状態において、取得部32は、センサ9からの検出結果Vの入力は待ち受けている。
【0054】
電源制御部31は、開始トリガ信号を受信すると、スイッチ5sをオン(回路を閉にする)にする。これによって、バッテリ5bからのセンサ9への給電が開始する。そして、電源を供給されたセンサ9は計測動作を開始し、所定の条件で検出結果Vを無線タグ1へ出力する。なお、センサ9は、例えば高速フーリエ変換(FFT)等の前処理を行ったものを検出結果Vとして無線タグ1に出力しても良い。無線タグ1では、センサ9の検出結果Vを取得部32で受けたのち、送信処理部33から通信情報Iを生成し、外部無線器81からの電波の反射波を利用するなどして、アンテナ1aから移動体8へ通信情報Iを送信する。
【0055】
その後、移動体8は、通信情報Iを取得できた場合には完了信号Seを電波に乗せて送信し、制御信号受信部35はこれを受信すると、完了信号Seに応じた完了トリガ信号を電源制御部31に出力する。このように、電源制御部31は制御信号Sの受信を契機に待機状態から復帰しても良いし、通信情報Iを送信すると待機状態から復帰しても良い。電源制御部31は、完了トリガ信号を受信すると、スイッチ5sをオフに切替える。これによって、バッテリ5bからのセンサ9への給電が停止する。なお、移動体8は、開始信号Ssの送信後、所定時間内に通信情報Iを受信しない場合は、後述するように開始信号Ssの送信を再度行っても良い。また、移動体8は、生存確認信号Srを無線タグ1に送信しても良い。他方、移動体8は、通信情報Iの受信に成功した場合は、次の点検ポイントP(センサ9)へと移動する。
【0056】
ただし、上述した実施形態に本発明は限定されない。他の幾つかの実施形態では、制御信号Sは、開始信号Ssおよび完了信号Seの少なくとも一方を含んでいなくても良く、電波等の受信や、電波等に基づく発生電力Eを使いきることで、センサ9への電力供給の開始や停止を行っても良い。
【0057】
上記の構成によれば、制御部3は、受信した電波等に基づいて得られる制御信号Sに応じた処理を実行するように構成されている。これによって、無線タグを外部からの命令に応じて動作させることができる。
【0058】
また、他の幾つかの実施形態では、電源制御部31は、所定の終了条件が成立した場合に、スイッチ5sをオフに切り替えるなど、センサ9への電力供給を停止しても良い。そして、この終了条件は、無線タグ1が上述した完了信号Seを受信した場合や、例えばスイッチ5sがオンに切り替えられた時など電力供給が開始された時からの経過時間が規定時間を超えた場合の少なくとも一方の条件を含んでも良い。
【0059】
上記の構成によれば、電源制御部31は、所定の終了条件が満たされた場合にセンサ9への電力供給を停止する。これによって、センサ9への電力供給が不必要に行われることを防止することができ、バッテリ5bを備える場合にはその稼働時間を延長させることができる。
【0060】
その他、幾つかの実施形態では、上述した外部無線器81は、電波または磁界の送信後、規定時間を経過しても通信情報を受信しない場合には、電波または磁界を再送出するよう構成されても良い。
【0061】
上記の構成によれば、外部無線器81は、同一の無線タグ1に対する電波等の送信を、無線タグからの通信情報が受信されない場合に繰返し実行するように構成される。これによって、一時的な通信環境の悪化によって検出結果が得られないようなことがないようにすることで、センサの検出結果をより確実に回収できるように図ることができる。
【0062】
次に、上述した点検システム7に関する幾つかの実施形態について、図5を用いて説明する。
図5は、本発明の一実施形態に係る電源制御装置75を備える点検システム7を概略的に示す図であり、電源制御装置75は制御装置7cである。図6は、本発明の一実施形態に係る電源制御装置75を備える点検システム7を概略的に示す図であり、電源制御装置75は電源制御用の無線タグである。
【0063】
例えばプラントなど対象エリア内には、1以上の位置に基地局9bが設置されており、巡回ルートRに沿って移動する移動体8が制御装置7cと通信するのに利用される。このような基地局9b(無線APなど)は、電源設備に接続されることで例えば常に電源がオンの状態で運用される、また、他の様々な用途の通信に使用可能になっていたりする。
【0064】
しかしながら、上記の対象エリア内には、例えば基地局9bのサービスエリアに入っていない場所など、基地局9bから送出される電波が届きにくく、基地局9bとの無線通信ができない場所(以下、通信圏外エリアA)が存在し得る。そして、巡回ルートRが通信圏外エリアAを通過するように設定されている場合には、移動体8が通信圏外エリアAの移動時に制御装置7cとの通信ができない。このような場合には、巡回ルートR上に通信圏外エリアAが生じないように新たな基地局9bを追設すれば良いが、電源設備が近くにない場合などには容易ではない。バッテリを用いることも考えられるが、複数の基地局9bの追設が必要である場合には導入コストや保守コストが増大する。また、電源設備との間に電源ケーブルを敷設したとしても、そのような通信圏外エリアAは、移動体8と制御装置7cとの間の通信以外には無線通信の必要性がないような場所である場合などには、基地局9bの電源を常時オンにしておくと、エネルギーの浪費となる。
【0065】
そこで、幾つかの実施形態では、図5に示すように、点検システム7は、バッテリあるいは電源設備などの電源装置73と、この電源装置73から供給される電力によって作動する1以上の基地局9b(以下、補助基地局9c)と、電源装置73から1以上の補助基地局9cへの電力供給の有無を制御する電源制御装置75と、をさらに備えても良い。そして、この電源制御装置75は、移動体8と1以上の補助基地局9cとの距離に基づいて、電源装置73から補助基地局9cへの電源供給の有無を制御するよう構成される。なお、補助基地局9cの数は、1つの通信圏外エリアAの広さに応じて定めれば良く、複数の補助基地局9cを設置する場合には、無線マルチホップにより、移動体8と制御装置7cとの間の通信を伝送しても良い。
【0066】
具体的には、幾つかの実施形態では、上述した地図情報には通信圏外エリアAの情報が含まれており、図5に示すように、電源制御装置75は、対象エリアに関する地図情報および移動体8の現在位置に基づいて、電源装置73を制御し、補助基地局9cに対する電力供給の有無を制御しても良い。この場合には、電源制御装置75は、上した制御装置7cであっても良い。換言すれば、制御装置7cが、電源制御装置75の機能を備えても良い。
【0067】
すなわち、電源制御装置75(制御装置7c)は、移動体8の現在位置を把握可能である。よって、電源制御装置75は、地図情報に通信圏外エリアAの情報が含まれているのを前提に、移動体8の現在位置が通信圏外エリアAに入る前あるいは入った後の所定のタイミングに、電源装置73を制御することで、補助基地局9cに対する電力供給を実行しても良い。これによって、移動体8が通過する際に巡回ルートR上の通信圏外エリアAをなくすことができる。また、移動体8が、地図情報における通信圏外エリアAを出る際には、電源装置73を制御することで、補助基地局9cに対する電力供給を停止しても良い。これによって、移動体8がいない場合に、電力を浪費するのを防止することができる。
【0068】
他の幾つかの実施形態では、電源制御装置75は、移動体8の移動時間に基づいて、電源装置73を制御し、補助基地局9cに対する電力供給の有無を制御しても良い(図5参照)。例えば、移動体8が規定の格納庫などの基準位置から出発して巡回ルートRを巡回する場合には、移動体8が移動を開始してから通信圏外エリアAに到達するまでの経過時間(到達時間)や、通信圏外エリアAから出るまでの経過時間(通過時間)が予想できる。よって、この予想した到達時間あるいは通過時間に応じて予め補助基地局9cの電源をオンにする経過時間(オン時間)やオフにする経過時間(オフ時間)を定めておく。そして、電源制御装置75は、上記のオン時間になると電源装置73からの補助基地局9cに対する電力供給を開始し、上記のオフ時間まで電力供給を継続した後に電源装置73からの補助基地局9cに対する電力供給を停止しても良い。この実施形態の場合には、電源制御装置75は、上記の制御装置7cであっても良いが、移動体8が格納庫を出る時刻が決まっている場合などには、電源装置73に設置した電源制御装置75をタイマーで作動するようにしても良い。
【0069】
その他の幾つかの実施形態では、図6に示すように、電源制御装置75は、上述したアンテナ1aと、電力生成部2と、制御部3とを備えても良い。すなわち、本実施形態の電源制御装置75は、電源制御用の無線タグである。この場合、制御部3は、電源制御部31を備えていれば良く、電力生成部2から供給される電力である発生電力Eを用いて、電源装置73を制御するよう構成される。また、電源制御装置75は、通信圏外エリアAの入口側や出口側に設置される。そして、電源制御装置75は、移動体8が、電波等の受信可能な範囲まで近づくと、電源装置73からの補助基地局9cへの電力供給を開始し、上述した終了条件が満たされると、その電力供給を停止する。また、制御部3は、上述した制御信号受信部35をさらに備えても良く、開始信号Ssや完了信号Seの受信に応じて、電源装置73を制御しても良い。これによって、RFIDなどを利用して電源制御装置75および補助基地局9cの電源をオンにすることができる。また、移動体8が通信圏外エリアAの内側やその付近にいるときだけ、補助基地局9cの電源をオンにすることができる。
【0070】
なお、図5図6に示すように、複数の補助基地局9cが存在する場合には、そのうちの2以上の補助基地局9cに対して1つの電源装置73が電力を供給するように構成されても良い。この場合には、その1つの電源装置73を起動することで、複数の補助基地局9cが起動するので、無線マルチホップによる伝送がスムーズに開始することが可能となる。
【0071】
図5に示す実施形態では、走行路Lに沿って巡回ルートRが設定されており、移動体8が通信圏外エリアAの付近まで移動してきている場合を示している。この通信圏外エリアAには、複数の補助基地局9c(図5では5台)が設置されており、ある補助基地局9cが受信した通信データを、通信ネットワークNに接続された補助基地局9cまで無線マルチホップで伝送し、そこから制御装置7cに伝送するようになっている。また、制御装置7cから送られた通信データを、1以上の補助基地局9cを介して、移動体8に伝送可能になっている。
【0072】
そして、電源装置73は、この通信圏外エリアAに設置された複数の補助基地局9cの全てに接続されており、電力供給が可能になっている。また、電源装置73は、通信ネットワークに接続されることで、電源制御装置75との通信が可能になっている。そして、電源装置73は、電源制御装置75(図5では制御装置7c)から補助基地局9cへの電力供給を開始する命令を受信すると補助基地局9cへの電力供給を開始し、電力供給を停止する命令を受信すると補助基地局9cへの電力供給を停止するようになっている。
【0073】
また、図6に示す実施形態では、通信圏外エリアAの入口付近であって、巡回ルートRの所定の位置からRFIDによる無線通信が可能な範囲内に、RFIDを利用した電源制御装置75を設置しても良い。この場合には、電源制御装置75は、RFIDによる通信を移動体8と行うと、電源装置73に例えば開始トリガ信号を出力しても良い。電源装置73は、開始トリガ信号の受信時などから、移動体8が通信圏外エリアAを出るのに必要な時間などの所定時間の経過後に、補助基地局9cへの電力供給を停止しても良い。あるいは、通信圏外エリアAの出口側にもRFIDを利用した電源制御装置75を設置しても良く、移動体8から完了信号Seを受信すると、電源装置73に対して完了トリガ信号を送信しても良い。電源装置73は、完了トリガ信号を受信すると、補助基地局9cへの電力供給を停止する。
【0074】
上記の構成によれば、通信圏外エリアAには例えば無線AP(アクセスポイント)などとなる補助基地局9cが設置されており、この補助基地局9cへの電力供給の有無を、移動体8と補助基地局9cとの距離に基づいて制御する。これによって、移動体8が通信圏外エリアA内やその付近などに存在する時だけ補助基地局9cへの電力供給を実行することができ、補助基地局9cでの電力消費を低減することができる。
【0075】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
(付記)
【0076】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係るセンサ制御用無線タグ(1)は、
センサ(9)に接続され、前記センサ(9)を用いた計測の実行を制御する構成されたセンサ制御用無線タグ(1)であって、
外部無線器(81)から送信された電波または磁界を受信するためのアンテナ(1a)と、
前記アンテナ(1a)で受信した前記電波または前記磁界に基づいて電力を発生させるよう構成された電力生成部(2)と、
前記電力生成部(2)から供給される電力である発生電力(E)を用いて、前記センサ(9)を制御するよう構成された制御部(3)と、を備え、
前記制御部(3)は、
前記発生電力(E)の一部を用いて、前記センサ(9)に対する電力供給を実行するよう構成された電源制御部(31)と、
前記電力供給の実行によって作動した前記センサ(9)の検出結果(V)が入力されるよう構成された取得部(32)と、
前記検出結果(V)を含む通信情報(I)を外部に送信するよう構成された送信処理部(33)と、を有する。
【0077】
上記(1)の構成によれば、センサ制御用無線タグ(1)は、例えばRFIDタグリーダライタなどとなる外部無線器(81)から電波等を受信することで電力を発生させ、その電力の一部を用いて例えばプラントなどに設置されたセンサ(9)への電力供給を実行する。また、この電力供給によってセンサ(9)が作動することで得られる検出結果(V)を取得し、例えば上記の外部無線器(81)あるいは無線LANや移動体(8)通信システムの基地局(9b)を介して、上位装置(図1では制御装置(7c)など)に対して通信情報(I)を通信する。つまり、RFIDを利用してセンサ(9)に対する電力供給を行い、センサ(9)の電源をオンにして起動(作動)させると共に、センサ(9)の検出結果(V)を無線により外部へ送信する。
【0078】
このように、RFIDなどを利用してセンサ制御用無線タグ(1)およびセンサ(9)の電源をオンにすることで、センサ制御用無線タグ(1)やセンサ(9)への電力供給を、バッテリ(5b)や電源設備(ケーブルの敷設など)を設置することなく行うことができる。よって、これらの設置コストや、バッテリ(5b)の交換等のメンテナンスコストを削減することができる。
【0079】
また、センサ(9)の検出結果(V)をセンサ制御用無線タグ(1)から外部へ無線通信することにより、例えば高所や配管の上面等、地上走行ロボットでは届かない、あるいは死角になるような位置の点検を容易に行うことができる。また、予め設置したセンサ(9)の検出結果(V)を無線通信により取得することで、高性能のマニュピレータなどの高価な設備や、カメラの位置合わせなどの高度な制御を用いることなく、点検作業を行うことができる。また、センサ制御用無線タグ(1)から外部へ送信される通信情報(I)にセンサ(9)の検出結果(V)と共に位置識別情報(Pi)を含めるようにすれば、点検ポイント(P)とセンサ(9)の検出結果(V)との紐づけをより確実に行うことができる。
【0080】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記送信処理部(33)は、前記通信情報(I)を、前記アンテナ(1a)を用いて前記外部無線器(81)に送信するよう構成されている。
【0081】
上記(2)の構成によれば、センサ制御用無線タグ(1)は、外部無線器(81)に対してセンサ(9)の検出結果(V)を送信する。これによって、RFIDを利用して、センサ(9)による検出の実行から外部無線器(81)による検出結果(V)の取得までを行うことができる。例えば、センサ制御用無線タグ(1)から、基地局(9b)などの他のネットワークを介して収集装置に検出結果(V)を送信する場合には、センサ制御用無線タグ(1)は基地局(9b)などと通信する機能やその機能を動作させるための電源などが必要になる場合があり得るが、このような機能や電源などを準備することなく、検出結果(V)を外部(外部無線器(81))に送信することができる。
【0082】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)~(2)の構成において、
前記制御部(3)は、受信した前記電波または前記磁界に基づいて得られる制御信号(S)に応じた処理を実行するように構成されている。
上記(3)の構成によれば、センサ制御用無線タグ(1)は、受信した制御信号(S)に応じた処理を実行する。これによって、センサ制御用無線タグ(1)を外部からの命令に応じて動作させることができ、様々な要求に柔軟に対応することが可能なセンサ制御用無線タグ(1)を提供することができる。
【0083】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)の構成において、
前記センサ(9)は、該センサ(9)に対する電力供給の有無を切り替え可能なスイッチ(5s)を介してバッテリ(5b)に接続されており、
前記電源制御部(31)は、前記バッテリ(5b)の電力を前記センサ(9)に供給するために、前記スイッチ(5s)をオンに切り替えるよう構成されている。
【0084】
例えばパッシブ型のRFIDタグ(無線タグ(1))を用いて発生可能な電力は大きくなく、その電力の一部をセンサ(9)に対して直接供給するような構成では、電力消費が大きなセンサ(9)を駆動することができない場合がある。また、低消費電力のセンサ(9)であっても、小さな電力では、例えば振動(加速度)や歪などの計測や、画像データの送信など高サンプリング頻度での検出を行うことは難しい場合がある。
【0085】
上記(4)の構成によれば、センサ(9)は、バッテリ(5b)の電力を用いて起動するようになっている。そして、電源制御部(31)は、外部無線器(81)から受信した電波等に基づいて発生した電力の一部を用いて、このセンサ(9)とバッテリ(5b)とを接続する電力線(5L)に設けられたスイッチ(5s)をオンにする。これによって、センサ制御用無線タグ(1)が外部無線器(81)から受信した電波等を受信したのを契機に、センサ(9)への電力供給を、バッテリ(5b)を用いて実行することができる。これによって、センサ(9)の消費電力が大きい場合や、高サンプリング頻度による検出(計測)が必要な場合であっても、センサ(9)による計測を適切に実行することができる。
【0086】
また、外部無線器(81)から電波等を受信した時だけバッテリ(5b)に蓄積された電力を使用するため、バッテリ(5b)の電力の消耗を抑制することができ、バッテリ(5b)の稼働時間を延伸させることができる。この際、センサ制御用無線タグ(1)を完全パッシブ駆動にすれば、待機電力が不要となるので、バッテリ(5b)の電力を使用することなく作動することができる。よって、バッテリ(5b)の稼働時間をさらに延伸させることができる。
【0087】
(5)幾つかの実施形態では、上記(4)の構成において、
前記制御信号(S)は、前記センサ(9)への電力供給の開始を指示する開始信号(Ss)を含み、
前記電源制御部(31)は、前記制御信号(S)が前記開始信号(Ss)である場合に、前記スイッチ(5s)を前記オンに切り替えるよう構成されている。
【0088】
上記(5)の構成によれば、センサ制御用無線タグ(1)は、外部無線器(81)から送信された開始信号(Ss)の受信に応じてセンサ(9)への電力供給を実行(開始)するように構成される。これによって、センサ(9)への電力供給の実行を外部からの命令に応じて行うことができる。
【0089】
(6)幾つかの実施形態では、上記(4)~(5)の構成において、
前記制御信号(S)は、前記センサ(9)への電力供給の停止を指示する完了信号(Se)を含み、
前記電源制御部(31)は、前記制御信号(S)が前記完了信号(Se)である場合に、前記スイッチ(5s)を前記オフに切り替えるよう構成されている。
【0090】
上記(6)の構成によれば、センサ制御用無線タグ(1)は、外部無線器(81)から送信された完了信号(Se)の受信に応じてセンサ(9)への電力供給を停止するように構成される。これによって、センサ(9)への電力供給の停止を外部からの命令に応じて行うことができ、センサ制御用無線タグ(1)が動作を継続しつつ、センサ(9)への電力供給が不要な場合に、バッテリ(5b)の電力が不必要に消費されるのを防止することができる。
【0091】
(7)幾つかの実施形態では、上記(4)~(6)の構成において、
前記制御信号(S)は、前記バッテリ(5b)への電力供給を指示する指示する充電実行信号(Sb)を含み、
前記電源制御部(31)は、受信した前記制御信号(S)が前記充電実行信号(Sb)である場合に、前記発生電力(E)の一部を前記バッテリ(5b)に供給するよう構成されている。
【0092】
上記(7)の構成によれば、センサ制御用無線タグ(1)は、外部無線器(81)から送信された充電実行信号(Sb)の受信に応じて、生成電力でバッテリ(5b)を充電するように構成される。これによって、バッテリ(5b)の稼動時間を延長させることができ、点検員がバッテリ(5b)の交換のために現地に出向く頻度をさらに少なくすることができる。
【0093】
(8)幾つかの実施形態では、上記(4)~(7)の構成において、
前記制御信号(S)は、受信確認の返信を要求する生存確認信号(Sr)を含み、
前記制御部(3)は、受信した前記制御信号(S)が前記生存確認信号(Sr)である場合に、前記アンテナ(1a)を用いて前記受信確認を前記外部無線器(81)に送信するよう構成されている。
【0094】
上記(8)の構成によれば、センサ制御用無線タグ(1)は、外部無線器(81)から送信された生存確認信号(Sr)の受信に応じて、受信確認(応答信号)を送信するように構成される。これによって、センサ制御用無線タグ(1)の診断を外部無線器(81)から行うことができ、例えばセンサ制御用無線タグ(1)からセンサ(9)の検出結果(V)が受信されない場合に、その原因の一時的な切り分けを遠隔地で行うことなどが可能となる。
【0095】
(9)幾つかの実施形態では、上記(1)~(8)の構成において、
前記通信情報(I)は、前記センサ(9)の設置位置を識別するのに用いる位置識別情報(Pi)をさらに含む。
【0096】
例えばプラントには多数のセンサ(9)が設置されており、2以上のセンサ(9)の設置位置が近接している場合に、例えば外部無線器(81)を搭載する移動体(8)の位置情報に基づいて、センサ(9)とその検出結果(V)とを紐づけると、位置推定精度(10cm~数m)によっては、センサ(9)とそのセンサ(9)の検出結果(V)との紐づけが正しくできないリスクがある。
上記(9)の構成によれば、センサ制御用無線タグ(1)からは、センサ(9)の検出結果(V)とセンサ(9)の位置識別情報(Pi)とが紐づけられた状態で送信される。これによって、センサ(9)とセンサ(9)の検出結果(V)との紐づけを適切に行うことができる。
【0097】
(10)本発明の少なくとも一実施形態に係る点検システム(7)は、
上記(1)~(9)のいずれか1項に記載の1以上のセンサ制御用無線タグ(1)と、
前記1以上のセンサ制御用無線タグ(1)に対する電波または磁界の送信、および前記1以上のセンサ制御用無線タグ(1)から送信される通信情報(I)を受信するための外部無線器(81)と、
前記外部無線器(81)を搭載する移動体(8)と、を備える。
【0098】
上記(10)の構成によれば、移動体(8)が備える外部無線器(81)からの電波等がセンサ制御用無線タグ(1)で受信可能な範囲内にまで移動体(8)が近づいた時だけ、センサ(9)への電力供給およびセンサ(9)の検出結果(V)の外部送信が行われる。これによって、プラント内などの対象エリアに設置された各種のセンサ(9)の付近などの点検ポイント(P)に移動体(8)を移動させることで、センサ(9)に対する電源装置(73)がなくても、センサ(9)による電力供給およびセンサ(9)の検出結果(V)の回収を行うことができる。また、点検ポイント(P)が数百か所に及ぶ場合でも、1箇所~数か所ずつの計測を順番に実施するため、混線やデータ欠落のリスクが低い。また、上記(1)~(9)と同様の効果を奏する。
【0099】
(11)幾つかの実施形態では、上記(10)の構成において、
電源装置(73)と、
前記電源装置(73)から供給される電力によって作動する1以上の補助基地局(9c)と、
前記電源装置(73)から前記1以上の補助基地局(9c)への電源供給の有無を制御する電源制御装置(75)と、をさらに備え、
前記電源制御装置(75)は、前記移動体(8)と前記1以上の補助基地局(9c)との距離に基づいて、前記電源装置(73)から前記補助基地局(9c)への前記電源供給の有無を制御するよう構成されている。
【0100】
上記(11)の構成によれば、例えば無線AP(アクセスポイント)などとなる補助基地局(9c)への電力供給の有無を、移動体(8)と補助基地局(9c)との距離に基づいて制御する。これによって、移動体(8)が近づいた時だけ補助基地局(9c)への電力供給を実行することにより、補助基地局(9c)での電力消費を低減することができる。
【0101】
例えば、移動体(8)が取集したセンサ(9)の検出結果(V)を、移動体(8)から上位システム(収集装置など)に対してWiFiや移動体(8)通信網などの無線ネットワークを用いて送信する場合、センサ制御用無線タグ(1)が設置されている位置によっては、これらの無線ネットワークの補助基地局(9c)とは通信できない場合があり得る。このような通信環境が悪いエリア向けに補助的な補助基地局(9c)を設置する場合において、この補助基地局(9c)への例えばバッテリ(5b)などの電源装置(73)からの電力供給を移動体(8)の距離に応じて行うことで、補助基地局(9c)での電力消費を低減することができる。また、補助基地局(9c)がバッテリ(5b)によって駆動する場合には、バッテリ(5b)の消耗を抑制することができるので、交換無しに長期間駆動することができる。よって、補助的な補助基地局(9c)のために電源設備を敷設することなく、補助的な補助基地局(9c)の運用を可能にできる。
【0102】
(12)幾つかの実施形態では、上記(10)~(11)の構成において、
前記外部無線器(81)は、前記電波または前記磁界の送信後、規定時間を経過しても前記通信情報(I)を受信しない場合には、前記電波または前記磁界を再送出するよう構成されている。
【0103】
上記(12)の構成によれば、外部無線器(81)は、同一のセンサ制御用無線タグ(1)に対する電波等の送出を、センサ制御用無線タグ(1)からの通信情報(I)が受信されない場合に繰返し実行するように構成される。これによって、一時的な通信環境の悪化によって検出結果(V)が得られないようなことがないようにすることで、センサ(9)の検出結果(V)をより確実に回収できるように図ることができる。
【0104】
(13)本発明の少なくとも一実施形態に係る移動体(8)は、
上記(1)~(9)のいずれか1項に記載のセンサ制御用無線タグ(1)に対する電波または磁界の送信、および前記センサ制御用無線タグ(1)から送信される通信情報(I)を受信するための外部無線器(81)を搭載している。
上記(13)の構成によれば、上記(1)~(9)と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0105】
1 無線タグ(センサ制御用無線タグ)
1a アンテナ
2 電力生成部
3 制御部
31 電源制御部
32 取得部
33 送信処理部
34 電力分配部
35 制御信号受信部
3m 記憶部
5L 電力線
5b バッテリ
5s スイッチ
7 点検システム
7c 制御装置
73 電源装置
75 電源制御装置
8 移動体
81 外部無線器
9 センサ
9b 基地局
9c 補助基地局
91 センサ本体部
92 変換器
R 巡回ルート
L 走行路
P 点検ポイント
E 発生電力
V 検出結果
I 通信情報
Pi 位置識別情報
N 通信ネットワーク
A 通信圏外エリア
S 制御信号
Ss 開始信号
Se 完了信号
Sb 充電実行信号
Sr 生存確認信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6