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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】くもり除去装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 31/00 20060101AFI20240209BHJP
   B66B 25/00 20060101ALN20240209BHJP
【FI】
B66B31/00 C
B66B25/00 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020024900
(22)【出願日】2020-02-18
(65)【公開番号】P2021130513
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2023-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三原 直人
【審査官】長尾 裕貴
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-097969(JP,U)
【文献】特開2014-112542(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 31/00
B66B 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客コンベアの自動運転システムを構成する光電装置の投光又は受光を透過する透過窓の内側のくもりを除去するくもり除去装置であって、
前記光電装置を構成する筐体の内部であって前記透過窓の上方から該透過窓に向けて温風を吹き出す温風送風部と、
前記温風送風部の作動を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記光電装置の投光が遮られた時間が所定時間超過した場合には、前記温風送風部の作動を開始する、
くもり除去装置。
【請求項2】
請求項1に記載のくもり除去装置であって、
記筐体の内部の湿度を検出する湿度検出器さらに備え、
前記制御部は、前記光電装置の投光が遮られた時間が前記所定時間超過し、前記湿度検出器による前記筐体の内部の湿度が所定湿度以上の場合には、前記温風送風部の作動を開始する、
くもり除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗客コンベアの自動運転システムを構成する光電装置の投光又は受光を透過する透過窓の内側のくもりを除去するくもり除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗客コンベアの一例であるエスカレーターの自動運転システムがよく知られている(例えば、特許文献1)。自動運転システムは、エスカレーターの乗降口の手前に設置される光電装置によってエスカレーターの利用者を検知して、エスカレーターの運転を自動的に開始又は停止するシステムである。光電装置は、対向して配置される一方の投光部から他方の受光部への光路が利用者に遮断されることによってエスカレーターの利用者の存在を検知している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-330063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記光電装置の機器を収めるケースには、投光又は受光を透過する透過窓が設けられる。屋外に設けられた光電装置において、雨が降った後に気温が上昇した場合には、上記透過窓の内側が水蒸気によってくもる場合がある。光電装置の透過窓がくもった場合には、投光部から受光部への光路が遮断され、自動運転装置は利用者が存在すると誤検知する。現状、上記透過窓の内側のくもりを除去するには、ケースを開き透過窓の内側をふき取る作業が行われるものの、当該作業は効率が悪い。
【0005】
本発明の目的は、乗客コンベアの自動運転システムを構成する光電装置の透過窓の内側のくもりを自動的に除去することができるくもり除去装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るくもり除去装置は、乗客コンベアの自動運転システムを構成する光電装置の投光又は受光を透過する透過窓の内側のくもりを除去するくもり除去装置であって、光電装置を構成する筐体の内部であって透過窓の上方から透過窓に向けて温風を吹き出す温風送風部を備える。
【0007】
本発明に係るくもり除去装置において、温風送風部の作動を制御する制御部をさらに備え、制御部は、光電装置の投光が遮られた時間が所定時間超過した場合には、温風送風部の作動を開始することが好ましい。
【0008】
本発明に係るくもり除去装置において、温風送風部の作動を制御する制御部と、筐体の内部の湿度を検出する湿度検出器と、をさらに備え、制御部は、光電装置の投光が遮られた時間が所定時間超過し、湿度検出器による筐体の内部の湿度が所定湿度以上の場合には、温風送風部の作動を開始することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るくもり除去装置によれば、乗客コンベアの自動運転システムを構成する光電装置の透過窓の内側のくもりを自動的に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係わるエスカレーターを示す模式図である。
図2】実施形態に係わる光電装置の内部を示す断面図である。
図3】実施形態の一例であるくもり除去装置を説明するための光電装置の内部を示す断面図である。
図4】実施形態の一例であるくもり除去装置の制御構成を示すブロック図である。
図5】実施形態の一例であるくもり除去装置の作用を説明するための光電装置の内部を示す断面図である。
図6】実施形態の一例であるくもり除去装置のくもり除去制御の流れを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態の一例について詳細に説明する。以下の説明において、具体的な形状、材料、方向、数値等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等に合わせて適宜変更することができる。
【0012】
図1を用いて、エスカレーター10について説明する。図1は、エスカレーター10を示す模式図である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態に係わる乗客コンベアの一例であるエスカレーター10は、建物の上部階又は下部階に移動する階段状の昇降路11を有する。昇降路11は、無端状に連結され、循環移動して乗客を載せる複数のステップ14を有する。昇降路11の両端部には、下部階に設けられる下部乗降口12と、上部階に設けられる上部乗降口13とがそれぞれ設けられる。
【0014】
エスカレーター10の下部乗降口12において昇降路11に向かって手前側には、詳細は後述する自動運転システム20を構成する光電装置30が設けられる。同様に、エスカレーター10の上部乗降口13において昇降路11に向かって手前側には、同じく自動運転システム20を構成する光電装置30が設けられる。
【0015】
エスカレーター10は、エスカレーター10の運転を制御するエスカレーター制御部15を有する。エスカレーター制御部15は、例えば、エスカレーター10の保守用ピット内に設けられている。エスカレーター制御部15には、制御を実行する演算処理装置としてのCPUと、CPUに接続される記憶装置としてのROM、RAM、ハードディスクドライブ(HDD)と、情報の送受信を行う通信装置とが搭載される。
【0016】
本実施形態では、乗客コンベアとしてエスカレーター10を例としているが、これに限定されない。乗客コンベアは、例えば動く歩道であってもよい。また、本実施形態のエスカレーター10は、屋外に設置されているが、これに限定されない。エスカレーター10は、屋内に設置されてもよい。
【0017】
自動運転システム20は、上述した光電装置30によってエスカレーター10の利用者を検知して、エスカレーター10の運転を自動的に開始又は停止させるシステムである。自動運転システム20は、比較的に利用者の少ないエスカレーターに適用される。自動運転システム20によれば、利用者を検知した場合にのみエスカレーター10を運転し、それ以外はエスカレーター10を停止させることによってエスカレーター10の省エネを実現することができる。
【0018】
自動運転システム20は、光電装置30と、光電装置30の後述する光電装置制御部35と接続されるエスカレーター制御部15とによって構成される。自動運転システム20では、光電装置制御部35から運転開始の信号がエスカレーター制御部15に送信された場合には、エスカレーター制御部15によってエスカレーター10の運転が開始される。また、自動運転システム20では、エスカレーター10の運転が開始されて例えば所定時間が経過した後には、エスカレーター制御部15によってエスカレーター10の運転が停止される。
【0019】
図2を用いて、光電装置30について説明する。図2は、光電装置30の内部を示す断面図である。
【0020】
光電装置30は、対向して配置される一方の投光部32から他方の受光部33への光路が利用者に遮断されたことによってエスカレーター10の利用者の存在を検知する装置である。光電装置30によれば、光電装置30を通過するエスカレーター10の利用者の存在を自動で検知することができる。
【0021】
図2に示すように、光電装置30は、投光側の光電装置30Aと、受光側の光電装置30Bとを有する。本実施形態では、エスカレーター10の昇降路11に向かって左側に投光側の光電装置30Aが立設され、右側に受光側の光電装置30Bが立設される。
【0022】
投光側の光電装置30Aは、光電装置30Aの機器を収める筐体としてのケース31と、光束を受光部33に向かって投光する投光部32と、ケース31に設けられる透過窓34と、詳細は後述するくもり除去装置40の温風送風部41とを有する。
【0023】
ケース31は、例えばアルミ製の長尺状の筐体で構成される。また、ケース31は、人の腰の高さ程度の高さを有する。ケース31の受光側の光電装置30Bと対向する内側面部31Fであって投光部32からの光路が通過する部分には、後述する透過窓34が設けられる開口部が形成される。また、ケース31の外側面部31Rの下端部には、スリット状に開口された換気口36が形成される。
【0024】
投光部32は、可視光線又は赤外線等の光を発射する発光素子を含む。透過窓34は、上述したケース31の開口部を覆うと共に上述した投光部32からの光を透過させる窓である。透過窓34は、例えばアクリル板で形成され、ケース31に固定具によって固定される。
【0025】
受光側の光電装置30Bは、光電装置30Bの機器を収める筐体としてのケース31と、投光部32から投光された光を受光する受光部33と、ケース31に設けられる透過窓34と、光路が遮られたことを検知する光電装置制御部35と、温風送風部41とを有する。
【0026】
ケース31、透過窓34及びくもり除去装置40は、上述した投光側の光電装置30Aと同様の構成であるため説明を省略する。受光部33は、光の強度を検出すると共に光の強度を電気信号に変換する受光素子を含む。
【0027】
光電装置制御部35は、投光部32から受光部33への光路がエスカレーター10の利用者に遮断されることによってエスカレーター10の利用者の存在を検知すると共に、エスカレーター10の利用者の存在を検知した場合には運転開始の信号をエスカレーター制御部15に送信する機器である。光電装置制御部35には、制御を実行する演算処理装置としてのCPUと、CPUに接続される記憶装置としてのROM、RAM、ハードディスクドライブ(HDD)と、情報の送受信を行う通信装置とが搭載される。
【0028】
図3及び図4を用いて、くもり除去装置40について説明する。図3は、くもり除去装置40を説明するための光電装置30の内部を示す断面図である。図4は、くもり除去装置の制御構成を示すブロック図である。
【0029】
くもり除去装置40は、エスカレーター10の自動運転システム20を構成する光電装置30の投光又は受光を透過する透過窓34の内側のくもりを除去する装置である。くもり除去装置40によれば、例えば屋外に設けられた光電装置30において、雨が降った後に気温が上昇して透過窓34の内側が水蒸気によってくもった場合でも、自動的にくもりを除去することができる。なお、透過窓34の外側については内側と比較してくもることが少なく、くもった場合には外気変化又は風雨によってくもりが除去される。
【0030】
くもり除去装置40は、上述した投光側の光電装置30Aと受光側の光電装置30Bとにそれぞれ設けられる。以下では、投光側の光電装置30Aに設けられるくもり除去装置40について説明する。受光側の光電装置30Bに設けられるくもり除去装置40ついては、投光側の光電装置30Aに設けられるくもり除去装置40と同様であるため説明を省略する。
【0031】
図3に示すように、くもり除去装置40は、ケース31の内部に設けられる。くもり除去装置40は、透過窓34の上方から透過窓34に向けて温風を吹き出す温風送風部41と、後述するくもり除去制御の流れS10に基づいて温風送風部41の作動を制御するくもり除去制御部42と、ケース31の内部の湿度を検出する湿度検出器としての湿度センサー43と、温風送風部41を強制的に作動する確認スイッチ44を有する。
【0032】
温風送風部41は、ケース31の内側面部31Fの内側であって透過窓34の上方に設けられる。温風送風部41は、くもり除去制御部42に接続されている。温風送風部41は、通過する空気を加熱するヒータ45と、ヒータ45に向かって風を吹き出す送風部46と、ヒータ45を介して送風部46から吹き出される温風を透過窓34に向けて導くダクト47とを有する。
【0033】
ヒータ45は、空気を加熱する発熱体であって、電熱線から構成される電気ヒータが好適に用いられる。ヒータ45は、熱が外部(ケース31の内部)に逃げないように断熱性の高い樹脂の筐体で覆われていることが好ましい。送風部46は、例えばシロッコファンとモータとから構成されるファンモータが好適に用いられる。送風部46は、ヒータ45の上流側に設けられる。
【0034】
ダクト47は、例えば断熱性の高い樹脂製であって断面形状が円形状から当該円形状の断面積より小さい細長い長方形状となる略筒状に形成される部材である。ダクト47は、ヒータ45の下流側に設けられる。ダクト47は、例えば、ケース31の内側面に対して略30°傾斜した状態でケース31の内部に固定される。
【0035】
図3及び図4に示すように、くもり除去制御部42には、制御を実行する演算処理装置としてのCPUと、CPUに接続される記憶装置としてのROM、RAM、ハードディスクドライブ(HDD)と、情報の送受信を行う通信装置とが搭載される。くもり除去制御部42は、光電装置制御部35と接続されている。上述したように、光電装置制御部35は、エスカレーター制御部15と接続されている。くもり除去制御部42と光電装置制御部35とは、共用化されて一つの制御部として構成されてもよい。
【0036】
湿度センサー43は、上述したようにケース31の内部の湿度を検出するセンサーであって、例えば空間の相対湿度を計測するセンサーが好適に用いられる。湿度センサー43は、例えば透過窓34の近傍であって透過窓34の下方に設けられる。湿度センサー43は、くもり除去制御部42に接続される。
【0037】
確認スイッチ44は、上述したように温風送風部41を強制的に作動するスイッチであって、例えば温風送風部41のON/OFFのみを切り替えるスイッチが好適に用いられる。確認スイッチ44によれば、温風送風部41の作動を手動によって確認することができる。確認スイッチ44は、例えばケース31の外側に露出するようにくもり除去制御部42に設けられる。
【0038】
図5を用いて、くもり除去装置40の作用について説明する。図5は、くもり除去装置40の作用を説明するための光電装置30の内部を示す断面図である。
【0039】
例えば、屋外に設けられた光電装置30において、雨が降った後に気温が上昇して透過窓34の内側が水蒸気によってくもった場合には、投光部32から受光部33への光路が遮断されて自動運転システム20は利用者が存在すると誤検知する。本実施形態では、このような場合に後述するくもり除去制御S10によって、くもり除去装置40の温風送風部41が作動する。
【0040】
温風送風部41から吹き出された温風は、透過窓34の表面に向かって透過窓34の表面をなぞるようにケース31の内側面に沿って通過し、ケース31の下端部においてケース31の外側面部31Rに形成される換気口36から外部へ排出される。透過窓34の表面を温風が通過することによって、透過窓34の表面に付着した水滴が吹き飛ばされる。同時に、透過窓34の表面が温風によって温められることによって、ケース31内部の水蒸気が透過窓34の表面に結露することを防止することができる。
【0041】
図6を用いて、くもり除去制御の流れS10について説明する。
【0042】
くもり除去制御の流れS10は、くもり除去制御部42によって温風送風部41の作動するタイミングを決定する制御である。くもり除去制御の流れS10によれば、光電装置30の透過窓34の内側がくもったと予測される場合にのみ温風送風部41を作動することができる。
【0043】
ステップS11において、くもり除去制御部42は、光電装置制御部35によって投光部32から受光部33への光路が所定時間連続して遮断されているかどうかを確認する。本実施形態では、例えば所定時間を5分とする。自動運転システム20が設けられるエスカレーター10では、比較的に利用者が少ないため、光路が連続して5分以上遮断されている場合には透過窓34がくもっている可能性が高い。そのため、光路が連続して5分以上遮断されている場合にはステップS12に移行する。
【0044】
ステップS12において、くもり除去制御部42は、光電装置制御部35によって湿度センサー43によって検出されるケース31の内部の湿度が所定湿度以上であるかどうかを確認する。本実施形態では、例えば所定湿度を80%とする。ケース31の内部の湿度が80%以上であれば、ケース31の内部に水蒸気が充満して透過窓34がくもっている可能性が高い。そのため、ケース31の内部の湿度が例えば80%以上の場合にはステップS13に移行する。
【0045】
ステップS13において、くもり除去制御部42は、所定時間だけ温風送風部41を作動する。本実施形態では、例えば所定時間を2分とする。なお、本実施形態において透過窓34のくもりを検出するステップS11,S12はそれぞれ単独で作動してもよい。
【0046】
くもり除去装置40の効果について説明する。くもり除去装置40によれば、エスカレーター10の自動運転システム20を構成する光電装置30の透過窓34の内側のくもりを自動的に除去することができる。
【0047】
なお、本発明は上述した実施形態及びその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項の範囲内において種々の変更や改良が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0048】
10 エスカレーター、11 昇降路、12 下部乗降口、13 上部乗降口、14 ステップ、15 エスカレーター制御部、20 自動運転システム、30 光電装置、30A 光電装置(投光側)、30B 光電装置(受光側)、31 ケース(筐体)、32 投光部、33 受光部、34 透過窓、35 光電装置制御部、40 くもり除去装置、41 温風送風部、42 くもり除去制御部(制御部)、43 湿度センサー(湿度検出器)、44 確認スイッチ、45 ヒータ、46 送風部、47 ダクト。
図1
図2
図3
図4
図5
図6