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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】廃グリス回収装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 7/12 20060101AFI20240209BHJP
   B66B 7/06 20060101ALI20240209BHJP
【FI】
B66B7/12 Z
B66B7/06 L
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020026199
(22)【出願日】2020-02-19
(65)【公開番号】P2021130539
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2023-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 一樹
【審査官】長尾 裕貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-037032(JP,A)
【文献】特開2020-007073(JP,A)
【文献】特開2011-037606(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 7/12
B66B 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベーターの従動シーブの軸受から排出される廃グリスを回収する廃グリス回収装置であって、
前記廃グリスを回収する回収箱と、
前記回収箱に接続され、前記従動シーブの側面及び前記従動シーブの軸の周面に先端部を近接させて前記廃グリスをそぎ落とし、前記先端部よりも低い位置にある前記回収箱に向けて前記廃グリスを搬送するスライドレールと、
前記スライドレールに設けられ、前記スライドレールを加熱することによって該スライドレールによってそぎ落とされた前記廃グリスを融解する加熱部と、
を備え
前記回収箱は、前記従動シーブの前記軸を支持する支持部材に取り付けられる、
廃グリス回収装置。
【請求項2】
請求項に記載の廃グリス回収装置であって、
前記スライドレールは、相互に回動可能に接続された複数のスライドレールから構成され、
前記スライドレールを折り曲げることによって回収状態と待機状態とに位置を変更される、
廃グリス回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーターの従動シーブの軸受から排出される廃グリスを回収する廃グリス回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベーターの保守点検作業では、例えばグリースガンによって従動シーブの軸受に新しいグリスが供給される。新しいグリスが供給されるに伴って古いグリスを含む余剰なグリスの一部(以下、廃グリス)が軸受から排出される。軸受から排出された廃グリスは、従動シーブの側面に付着する。
【0003】
従動シーブの側面に付着した廃グリスが制御盤又は巻き上げ機等に落下した場合には、機器の故障の原因となる。そのため、エレベーターの保守点検作業では、従動シーブの側面に付着した廃グリスが回収される。例えば、特許文献1には、廃グリスをヘラ等の清掃部でそぎ落とし、そぎ落した廃グリスをシート部材で回収する清掃用治具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6529708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示される清掃用治具では、廃グリスをシート部材で回収する際に廃グリスがシート部材に散らばってしまう。そのため、廃グリスを廃棄する際にはシート部材に散らばった廃グリスを拭き取る等して一か所にまとめる必要があり、廃グリスを効率良く回収することができない。
【0006】
本発明の目的は、従動シーブの軸受から排出される廃グリスを効率良く回収することができる廃グリス回収装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る廃グリス回収装置は、エレベーターの従動シーブの軸受から排出される廃グリスを回収する廃グリス回収装置であって、廃グリスを回収する回収箱と、回収箱に接続され、従動シーブの側面及び従動シーブの軸の周面に先端部を近接させて廃グリスをそぎ落とし、先端部よりも低い位置にある回収箱に向けて廃グリスを搬送するスライドレールと、スライドレールに設けられ、スライドレールを加熱することによってスライドレールによってそぎ落とされた廃グリスを融解する加熱部と、を備える。
【0008】
本発明に係る廃グリス回収装置において、回収箱は、従動シーブの軸を支持する支持部材に取り付けられることが好ましい。
【0009】
本発明に係る廃グリス回収装置において、スライドレールは、相互に回動可能に接続された複数のスライドレールから構成され、スライドレールを折り曲げることによって回収状態と待機状態とに位置を変更されることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る廃グリス回収装置によれば、従動シーブの軸受から排出される廃グリスを効率良く回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係わるエレベーターを示す模式図である。
図2】実施形態の一例である廃グリス回収装置を支持部材に取り付けた状態を示す側面図である。
図3】実施形態の一例である廃グリス回収装置を支持部材に取り付けた状態を示す平面図である。
図4図2及び図3のAA断面図である。
図5】実施形態の一例である廃グリス回収装置を示す平面図である。
図6】実施形態の一例である廃グリス回収装置を示す側面図である。
図7】実施形態の一例である廃グリス回収装置の待機状態を示す平面図である。
図8】実施形態の一例である廃グリス回収装置の待機状態を示す側面図である。
図9】実施形態の一例である廃グリス回収装置による廃グリスの回収手順の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態の一例について詳細に説明する。以下の説明において、具体的な形状、材料、方向、数値等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等に合わせて適宜変更することができる。
【0013】
図1を用いて、エレベーター10について説明する。図1は、エレベーター10を示す模式図である。
【0014】
図1に示すように、実施形態に係わるエレベーター10は、例えば機械室レスエレベーターであって、乗りかご11に乗客を乗せ、乗客の要求に応じて乗りかご11を昇降させる。エレベーター10は、建物内を高さ方向に延在する昇降路12と、昇降路12の下部に位置するピット13とを有する。なお、エレベーター10は、昇降路12の上部に機械室を有し、後述する巻上機が機械室に設置される構成であってもよい。
【0015】
昇降路12には、一端部が乗りかご11の上部に固定され、他端部が昇降路12の天井に固定されるワイヤーロープ14と、乗りかご11との間でバランスを取るように重さが設定される釣合錘15と、が収容される。また、昇降路12には、昇降路12の天井部に間隔を設けて回動自在に吊り下げ固定される従動シーブとしての返し車21、返し車22及び返し車23と、従動シーブとしての釣合錘15の吊り車24とが収容される。ワイヤーロープ14は、乗りかご11から返し車21、返し車22、後述する巻上機16、返し車23、吊り車24の順に巻回される。
【0016】
ピット13には、ワイヤーロープ14を巻き上げ又は繰り出して乗りかご11を昇降させる巻上機16と、巻上機16のモータ16Aの回転方向及び速度を制御する制御盤17とが収容される。制御盤17は、各階の乗場18に設けられて乗りかご11を呼ぶカゴ呼釦(図示なし)又は乗りかご11内に設けられて行先階を指定する行先階釦(図示なし)から信号を受け、当該信号に基づいてモータ16Aの回転方向及び速度を制御する。
【0017】
図2から図4を用いて、返し車21(従動シーブ)及び廃グリス回収装置30について説明する。図2は、廃グリス回収装置30が返し車21の軸25を支持する支持部材26に取り付けられた状態を示す側面図である。図3は、当該状態を示す平面図である。図4は、図2及び図3のAA断面図である。
【0018】
以下では、説明を分かり易くするため、鉛直方向を高さ方向とし、返し車21の軸25の軸方向を幅方向とし、高さ方向及び幅方向と直交する方向を奥行き方向とする。奥行き方向において返し車21の軸25に対し廃グリス回収装置30が設けられる側を前側とし、前側から見て左右側を幅方向の左右側として、返し車21及び廃グリス回収装置30を説明する。
【0019】
また、以下では、返し車21に廃グリス回収装置30が取り付けられる構成について説明するが、返し車22、23又は吊り車24(図1参照)に廃グリス回収装置30が取り付けられてもよい。
【0020】
図1に示すように、返し車21には、ワイヤーロープ14が掛け渡され、返し車21の回転中央部には軸受21Aが圧入固定されている。軸受21Aは、支持部材26の軸固定側板26A,26Bに両端が固定された返し車21を軸25に対して回転自在に支持される。支持部材26は、昇降路12の天井に固定されている。
【0021】
支持部材26は、返し車21の軸25を支持し、返し車21の荷重を支える部材である。支持部材26は、天面部、底面部及び後側面が開口された中空の筐体として形成される。支持部材26は、所定間隔を設けて返し車21の左側面と対向し、軸25の左端部を固定する軸固定側板26Aと、所定間隔を設けて返し車21の右側面と対向し、軸25の右端部を固定する軸固定側板26Bとを有する。
【0022】
返し車21には、軸受21Aに潤滑剤としてのグリスを供給するためのグリス供給口(図示なし)が設けられる。エレベーター10の保守点検作業では、例えばグリースガンによって上記グリス供給口に新しいグリスが供給され、これに伴って古いグリスを含む余剰なグリス(以下、廃グリスG)が軸受21Aから排出される。排出された廃グリスGは、返し車21の側面に付着する。付着した廃グリスGをそのまま放置すると、廃グリスGが巻上機16又は制御盤17等に落下して機器の故障の原因となる。
【0023】
図2から図4に示すように、実施形態の一例である廃グリス回収装置30は、支持部材26に取り付けられ、返し車21の軸受21Aから排出される廃グリスGを回収する装置である。廃グリス回収装置30によれば、詳細は後述するが、廃グリスGを回収箱40に効率良く回収することができる。
【0024】
以下では、返し車21の左側に排出される廃グリスGを回収する場合を想定して、軸固定側板26Aの下端部に後述する固定具41(図5参照)によって回収箱40が固定される。一方、返し車21の右側に排出される廃グリスGを回収する場合には、軸固定側板26Bの下端部に固定具41によって回収箱40が固定される。
【0025】
図5及び図6を用いて、廃グリス回収装置30について詳細に説明する。図5は、廃グリス回収装置30を示す平面図である。図6は、廃グリス回収装置30を示す側面図である。
【0026】
図5及び図6に示すように、実施形態の一例である廃グリス回収装置30は、返し車21の軸受21Aから排出される廃グリスGを回収する装置である。廃グリス回収装置30は、廃グリスGを回収する回収箱40と、排出された廃グリスGをそぎ落として回収箱40まで搬送するスライドレール50と、スライドレール50の第1スライドレール51を加熱して廃グリスGを融解する加熱部60と、を備える。
【0027】
回収箱40は、底面部の周囲に側壁部が立設して形成された筐体として形成され、スライドレール50によって搬送される廃グリスGを回収する容器である。回収箱40によれば、スライドレール50によって流れ落とされる液状の廃グリスGをまとめて回収することができる。回収箱40には、上記の側壁部が切り欠かれて後述する第3スライドレール53と連通する連通部40Aが形成される。
【0028】
回収箱40は、例えば軸固定側板26Aに固定するための固定具41を有する。固定具41は、回収箱40の幅方向の例えば左側において奥行き方向の両端部に設けられる。固定具41は、奥行方向から見て略L字状の固定板41Aと、固定板41Aに螺合されるネジ部41Bとを含む。
【0029】
固定板41Aは、回収箱40の側壁部に沿って所定の間隔を設け対向する鉛直部と、回収箱40の側壁部に固定され、回収箱40の左側に延出される水平部とを有する。ネジ部41Bは、幅方向に沿って固定板41Aの鉛直部に螺合される。ネジ部41Bの左端側には、つまみ部が設けられる。ネジ部41Bの右端側には、例えばゴム製の当接部が設けられる。
【0030】
固定具41によれば、固定板41Aの鉛直部と回収箱40の側壁部との間に軸固定側板26Aの下端部を挟み、ネジ部41Bを螺合して軸固定側板26Aに当接部を押圧することによって、回収箱40を軸固定側板26Aに固定することができる。
【0031】
スライドレール50は、回収箱40に接続され、返し車21の側面及び返し車21の軸25の周面に先端部としての後述する第1スライドレール51の外縁がテーパ上に尖ったヘラ部51Cを近接させて廃グリスGをそぎ落とし、ヘラ部51Cよりも低い位置にある回収箱40に向けて廃グリスGを搬送するレールである。
【0032】
スライドレール50によれば、ヘラ部51Cによって廃グリスGをそぎ落とし、そぎ落とした廃グリスGを回収箱40に向けて搬送することができる。また、スライドレール50によれば、詳細は後述する加熱部60によって回収した廃グリスGを融解し、液状となった廃グリスGを回収箱40に向けて流し落とすことによって廃グリスGを搬送することができる。
【0033】
スライドレール50は、スライドレール50の先端側に設けられる第1スライドレール51と、スライドレール50の基端側に設けられ、回収箱40と連通する第3スライドレール53と、第1スライドレール51と第3スライドレール53とを連結する第2スライドレール52とを有する。これにより、スライドレール50は、直線状に延びた「待機状態」と、折れ曲がった「回収状態」に位置を変更可能である。
【0034】
第1スライドレール51は、返し車21の側面及び返し車21の軸25の周面にヘラ部51Cを近接して配置される。また、第1スライドレール51は、基端側が下方に傾斜して配置される。さらに、第1スライドレール51は、詳細は後述する加熱部60によって加熱される。
【0035】
第1スライドレール51は、長尺状の搬送部51Aと、搬送部51Aの両端において長尺方向に沿ってそれぞれ形成される側壁部51Bと、搬送部51Aの先端面かつ右端面(返し車21の側面と対向する端面)とに設けられるヘラ部51Cとを含む。また、第1スライドレール51の搬送部51Aの裏面部には、後述する加熱部60が設けられる。
【0036】
ヘラ部51Cは、例えばゴム製であって、上述したように搬送部51Aの先端面と右端面とに設けられる。先端面に設けられるヘラ部51Cの幅方向の大きさは、例えば搬送部51Aの幅方向の大きさと略同一の大きさとする。右端面に設けられるヘラ部51Cの奥行き方向の大きさは、例えば搬送部51Aの奥行き方向(長尺方向)の大きさの略半分の大きさとする。
【0037】
第1スライドレール51の右端部(返し車21の側面と対向する側)に形成される側壁部51Bは、ヘラ部51Cが設けられる搬送部51Aには形成されない。換言すれば、第1スライドレール51の右端部では、基端部から略中央部まで側壁部51Bが形成され、略中央部から先端部までヘラ部51Cが設けられる。また、それぞれの側壁部51Bの先端側かつ上側の角部は、R形状に形成されることが好ましい。
【0038】
第1スライドレール51の基端側には、第2スライドレール52が接続される。第1スライドレール51の基端側では、第1スライドレール51の搬送部51Aと第2スライドレール52の搬送部52Aとが互いに同一平面になるように接続され、当該平面上において搬送部51Aの支点A1において搬送部52Aが回動可能に接続される。支点A1は、搬送部51Aの右端部かつ基端部であって、搬送部52Aの右端部かつ先端部に設けられる。
【0039】
第2スライドレール52は、スライドレール50の途中に設けられ、第1スライドレール51と第3スライドレール53とを連結する。また、第2スライドレール52は、基端側が下方へ傾斜して配置される。第2スライドレール52は、長尺状の搬送部52Aと、搬送部52Aの両端において長尺方向に沿って形成される側壁部52Bと、第1スライドレール51の搬送部51Aと重なる延出部52Dとを含む。延出部52Dは、詳細は後述するが加熱部60の切換スイッチを構成する。
【0040】
第2スライドレール52の基端側には、第3スライドレール53が接続される。第2スライドレール52の基端側では、第2スライドレール52の搬送部52Aと第3スライドレール53の搬送部53Aとが同一平面になるように接続され、当該平面上において搬送部52Aの支点A2において搬送部53Aが回動可能に接続される。支点A2は、搬送部52Aの左端部かつ基端部であって、搬送部51Aの左端部かつ先端部に設けられる。
【0041】
第3スライドレール53は、スライドレール50の基端側に設けられ、回収箱40に接続される。また、第3スライドレール53は、基端側が下方に傾斜して配置される。第3スライドレール53は、長尺状の搬送部53Aと、搬送部53Aの両端において長尺方向に沿って形成される側壁部53Bとを含む。第3スライドレール53の基端側では、搬送部53Aと回収箱40の連通部40Aとが連通する。また、第3スライドレール53は、回収箱40に対して水平面から所定の角度の状態で支持される。
【0042】
加熱部60は、第1スライドレール51に設けられ、第1スライドレール51を加熱することによって第1スライドレール51のヘラ部51Cによってそぎ落とされた廃グリスGを融解するものである。加熱部60によれば、第1スライドレール51を加熱することによって第1スライドレール51に回収された廃グリスGを融解して液状としスライドレール50上にて流れ落とすことができる。
【0043】
本実施形態の廃グリス回収装置では、第1スライドレール51を加熱部60によって加熱して廃グリスGを融解する構成としたがこれに限定されない。例えば、第2スライドレール52又は第3スライドレール53を加熱部60によって加熱して廃グリスGを融解する構成としてもよい。
【0044】
加熱部60は、第1スライドレール51を加熱するヒータと、ヒータに電力を供給する電源と、ヒータへの電力の供給をON又はOFFする切換スイッチとを有する。ヒータは、例えば金属箔ヒータ又は電熱線ヒータ等が好適に用いられる。電源は、例えば乾電池等が好適に用いられる。
【0045】
切換スイッチは、例えば第1スライドレール51の搬送部51Aと第2スライドレール52の延出部52Dとに設けられ、第1スライドレールの搬送部51Aと第2スライドレール52とが折れ曲がって(廃グリス回収装置30が後述する回収状態)、搬送部51Aと延出部52Dとが接触したときにONとなる構成であってもよい。また、第1スライドレールの搬送部51Aと第2スライドレール52とが直線状となって(廃グリス回収装置30が後述する待機状態)、搬送部51Aと延出部52Dとが離間したときにOFFとなる構成であってもよい。
【0046】
図7及び図8を用いて、廃グリス回収装置30の待機状態について詳細に説明する。図7は、廃グリス回収装置30の待機状態を示す平面図である。図8は、廃グリス回収装置30の待機状態を示す側面図である。
【0047】
廃グリス回収装置30は、エレベーター10の保守点検作業時に廃グリスGを回収するための「回収状態」と、エレベーター10の通常運転時にスライドレール50を待機させるための「待機状態」とに位置を変更可能に構成される。本実施形態の廃グリス回収装置30は、作業者が手動によって「回収状態」から「待機状態」に、又は「待機状態」から「回収状態」に変更される。
【0048】
図5および図6に示すように、「回収状態」では、スライドレール50が返し車21に向かって折り曲げられ、軸25に向かって傾斜して、スライドレール50の後述する第1スライドレール51のヘラ部51Cが返し車21の側面及び返し車21の軸25の周面に近接される。図7および図8に示すように、「待機状態」では、スライドレール50の第1スライドレール51が返し車21の側面及び返し車21の軸25の周面から離間され、スライドレール50が直線状に伸ばされて支持部材26の下端部に沿って配置される。
【0049】
図7に示すように、廃グリス回収装置30の待機状態では、第1スライドレール51と第2スライドレール52とが支点A1周りに回動して直線状となり、第2スライドレール52と第3スライドレール53とが支点A2周りに回動して直線状となり、スライドレール50が直線状となる。また、図8に示すように、廃グリス回収装置30の待機状態では、スライドレール50が水平方向と平行になって、軸固定側板26Aの下端部に沿って配置される。
【0050】
本実施形態の廃グリス回収装置30では、「待機状態」からスライドレール50を折り曲げて「回収状態」に変更する構成としたがこれに限定されない。例えば、「回収状態」からスライドレール50を伸縮して「待機状態」に変更する構成としてもよい。
【0051】
図9(A)から図9(C)を用いて、廃グリス回収装置30による廃グリスGの回収手順について説明する。図9(A)から図9(C)は、廃グリス回収装置30による廃グリスGの回収手順の流れを示す図である。
【0052】
図9(A)に示すように、エレベーター10の通常運転では、廃グリス回収装置30は待機状態とされ、返し車21の支持部材26の下端部に沿ってスライドレール50が配置される。なお、エレベーター10の通常運転では、廃グリス回収装置30が取り外されてもよい。
【0053】
図9(B)に示すように、エレベーター10の保守点検作業では、返し車21が停止し、グリースガンによって返し車21のグリス供給口に新しいグリスが供給され、廃グリスGが軸受21Aから排出される。排出された廃グリスGは、返し車21の側面に付着する。このとき、廃グリス回収装置30は回収状態とされ、スライドレール50の第1スライドレール51のヘラ部51Cを返し車21の側面及び返し車21の軸25の周面に近接させる(図5参照)。さらに、加熱部60の切換スイッチがONとなって、第1スライドレール51が加熱される。
【0054】
図9(C)に示すように、次にエレベーター10の試運転を実施する。このとき、返し車21が回転し、返し車21の側面に付着した廃グリスGが第1スライドレール51のヘラ部51Cによってそぎ落とされる。第1スライドレール51に回収された廃グリスは、加熱部60によって加熱された第1スライドレール51の熱によって融解する。液状となった廃グリスGは、スライドレール50を流れ落ちて回収箱40に回収される。回収箱40に回収された廃グリスGは、廃グリス回収装置30が取り外された際に廃棄物として廃棄される。
【0055】
廃グリス回収装置30の効果について説明する。廃グリス回収装置30によれば、スライドレール50の先端部によってそぎ落とした廃グリスGを加熱して融解し、液状の廃グリスGを傾斜したスライドレール50で搬送して回収箱40に回収することによって、効率良く廃グリスGを回収することができる。
【0056】
なお、本発明は上述した実施形態及びその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項の範囲内において種々の変更や改良が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0057】
10 エレベーター、11 乗りかご、12 昇降路、13 ピット、14 ワイヤーロープ、15 釣合錘、16 巻上機、16A モータ、17 制御盤、18 乗場、21 返し車(従動シーブ)、21A 軸受、22 返し車(従動シーブ)、23 返し車(従動シーブ)、24 吊り車(従動シーブ)、25 軸、26 支持部材、26A 軸固定側板、26B 軸固定側板、30 廃グリス回収装置、40 回収箱、40A 連通部、41 固定具、41A 固定板、41B ネジ部、50 スライドレール、51 第1スライドレール、51A 搬送部、51B 側壁部、51C ヘラ部、52 第2スライドレール、52A 搬送部、52B 側壁部、52D 延出部、53 第3スライドレール、53A 搬送部、53B 側壁部、60 加熱部、A1 支点、A2 支点、G 廃グリス。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9