(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】制振用熱可塑性エラストマー組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 53/02 20060101AFI20240209BHJP
C08L 23/02 20060101ALI20240209BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20240209BHJP
C08L 71/12 20060101ALI20240209BHJP
C08L 57/02 20060101ALI20240209BHJP
F16F 15/08 20060101ALI20240209BHJP
【FI】
C08L53/02
C08L23/02
C08K3/34
C08L71/12
C08L57/02
F16F15/08 D
(21)【出願番号】P 2020029351
(22)【出願日】2020-02-25
【審査請求日】2023-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000000505
【氏名又は名称】アロン化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【氏名又は名称】細田 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100187850
【氏名又は名称】細田 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】伊達 憲昭
(72)【発明者】
【氏名】早川 祐生
【審査官】久保田 葵
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-024275(JP,A)
【文献】特開2005-255856(JP,A)
【文献】特開2004-300408(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 53/02
C08L 23/02
C08K 3/34
C08L 71/12
C08L 57/02
F16F 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を含む少なくとも1個の重合体ブロックaと、共役ジエン化合物に由来する構造単位を含む少なくとも1個の重合体ブロックbとからなる、重量平均分子量が50,000~500,000のブロック共重合体Aと、該ブロック共重合体A 100質量部に対して、ポリオレフィン樹脂を10~100質量部、ゴム用軟化剤を50~300質量部、及びタルクを10~250質量部含有する制振用熱可塑性エラストマー組成物であって、
前記ブロック共重合体Aが、重合体ブロックbにおける1,2-ビニル結合単位及び3,4-ビニル結合単位の合計が50モル%以上であるブロック共重合体
の水素添加物A1と、重合体ブロックbにおける1,2-ビニル結合単位及び3,4-ビニル結合単位の合計が50モル%未満であるブロック共重合体
の水素添加物A2とを、25/75~75/25の質量比(ブロック共重合体
の水素添加物A1/ブロック共重合体
の水素添加物A2)で含有し、
前記タルクの吸油量と体積基準のメジアン径の比(吸油量/体積基準のメジアン径)が1~12であ
り、
ポリフェニレンエーテルを含有しないか、含有する場合は、前記ブロック共重合体A 100質量部に対して、15質量部以下である、
制振用熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項2】
さらに、ブロック共重合体A 100質量部に対して、水添石油樹脂を5~55質量部含有する、請求項1記載の制振用熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項3】
A硬度が50以下である、請求項1又は2記載の制振用熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項4】
ポリオレフィン樹脂が、メルトマスフローレイトが10g/10min以上、かつ、曲げ弾性率が1000MPa以下であるランダムポリプロピレンを含む、請求項1~3いずれか記載の制振用熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項5】
請求項1~
4いずれか記載の制振用熱可塑性エラストマー組成物を成形してなる、制振部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家電製品、電気機器、医療用具、自動車、航空機、スポーツ用品、建材等の騒音・振動対策に好適な制振用熱可塑性エラストマー組成物及び該熱可塑性エラストマー組成物を用いた制振部材に関する。
【背景技術】
【0002】
ビニル芳香族化合物を主体とするモノマーユニットからなる重合体ブロックと、共役ジエン化合物を主体とするモノマーユニットからなる重合体ブロックとからなるブロック共重合体やその水素添加物に代表される熱可塑性エラストマー組成物は、成形性や柔軟性に優れるため、家電製品や自動車部品、スポーツ用品等のグリップやシール等各種部材として用いられるが、特定の組成を選択することにより振動や音を吸収して熱に変える制振性を持たせることができ、静粛性の追求や、有害な振動や衝撃に由来する機器の故障を防ぐという効果を得ることができる。また、引っ張り破断伸びは、例えば自動車材料として用いた場合、バンパーや、衝突時に人間に直接ぶつかる可能性のある内装材、特にインパネ、A,Bピラー等に要求されている物性であり、万一の事故の際に、大きな変形を加えられた場合でも破断による鋭い破断面によって人間に大怪我をさせることのないように、変形を加えられても破断しにくいことが求められる。
【0003】
特許文献1には、ビニル芳香族モノマーから成るブロック(A)と、イソプレンまたはイソプレン-ブタジエン混合物から成り、3.4結合及び1.2結合含有量が40%以上であり、少なくとも一部が水素添加されたブロック(B)を含む特定のブロック共重合体が制振性能を発揮することが開示されているが、ブロック(B)がブタジエン単独構成される場合、3.4結合及び1.2結合含有量を増やしても、実際に使用される温度での制振性能は得られず、実用上の意義は少ないことが開示されている。
【0004】
特許文献2には、スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体と、鱗片状のフィラーを石油樹脂でコーティングしたものとを含有した制振用組成物が開示されており、フィラーのアスペクト比(フィラー平均直径/フィラー厚み)が大きいものほど高い制振性を発揮することができ、鱗片状のフィラーとしてマイカを含有させることで、組成物の制振性を大きく向上させることが開示されているが、フィラーとしてタルクは例示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平2-300218号公報
【文献】特開2011-46937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
柔軟性と制振性に優れたスチレン系熱可塑性エラストマー組成物が知られているが、ベタツキがあるため用途が制限される。また、フィラーとしてマイカを用いると制振性が向上することも知られているが、機械的特性、特に引張破断伸び特性が十分ではないため、改善が求められる。
【0007】
本発明の課題は、ベタツキがなく、柔軟性と制振性に優れ、かつ高い機械的特性を有する制振用熱可塑性エラストマー組成物及び該熱可塑性エラストマー組成物を用いた制振部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが前記課題に対し鋭意検討した結果、特定の組成の熱可塑性エラストマーに特定のタルクを併用することにより、柔軟性や制振性を損なわずに、機械的特性に優れた熱可塑性エラストマー組成物を実現できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、
〔1〕 芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を含む少なくとも1個の重合体ブロックaと、共役ジエン化合物に由来する構造単位を含む少なくとも1個の重合体ブロックbとからなる、重量平均分子量が50,000~500,000のブロック共重合体Aと、該ブロック共重合体A 100質量部に対して、ポリオレフィン樹脂を10~100質量部、ゴム用軟化剤を50~300質量部、及びタルクを10~250質量部含有する制振用熱可塑性エラストマー組成物であって、
前記ブロック共重合体Aが、重合体ブロックbにおける1,2-ビニル結合単位及び3,4-ビニル結合単位の合計が50モル%以上であるブロック共重合体A1と、重合体ブロックbにおける1,2-ビニル結合単位及び3,4-ビニル結合単位の合計が50モル%未満であるブロック共重合体A2とを、25/75~75/25の質量比(ブロック共重合体A1/ブロック共重合体A2)で含有し、
前記タルクの吸油量と体積基準のメジアン径の比(吸油量/体積基準のメジアン径)が1~12である、
制振用熱可塑性エラストマー組成物、
〔2〕 さらに、ブロック共重合体A 100質量部に対して、水添石油樹脂を5~55質量部含有する、前記〔1〕記載の制振用熱可塑性エラストマー組成物、
〔3〕 A硬度が50以下である、前記〔1〕又は〔2〕記載の制振用熱可塑性エラストマー組成物、
〔4〕 ポリオレフィン樹脂が、メルトマスフローレイトが10g/10min以上、かつ、曲げ弾性率が1000MPa以下であるランダムポリプロピレンを含む、前記〔1〕~〔3〕いずれか記載の制振用熱可塑性エラストマー組成物、
〔5〕 さらに、ポリフェニレンエーテルを含有する、前記〔1〕~〔4〕いずれか記載の制振用熱可塑性エラストマー組成物、並びに
〔6〕 前記〔1〕~〔5〕いずれか記載の制振用熱可塑性エラストマー組成物を成形してなる、制振部材
に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の制振用熱可塑性エラストマー組成物は、ベタツキがなく、柔軟性と制振性に優れ、かつ機械的特性においても優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の制振用熱可塑性エラストマー組成物は、特定の組成を有するブロック共重合体、ポリオレフィン樹脂、ゴム用軟化剤、及びタルクを有するものである。
【0012】
ブロック共重合体は、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位(以下、芳香族ビニル化合物単位ともいう)を含む少なくとも1個の重合体ブロックaと、共役ジエン化合物に由来する構造単位(以下、共役ジエン化合物単位ともいう)を含む少なくとも1個の重合体ブロックbとからなるブロック共重合体Aであり、該ブロック共重合体Aは、重合体ブロックbにおける1,2-ビニル結合単位及び3,4-ビニル結合単位の合計が50モル%以上であるブロック共重合体A1と、重合体ブロックbにおける1,2-ビニル結合単位及び3,4-ビニル結合単位の合計が50モル%未満であるブロック共重合体A2とを含有する。
【0013】
芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、1,3-ジメチルスチレン、ビニルナフタレン等が挙げられ、これらの2種類以上が併用されてもよい。これらの中では、入手が容易なスチレンが好ましい。
【0014】
重合体ブロックaは、本発明の効果を損なわない範囲で芳香族ビニル化合物単位を含有してもよい。他の単量体としては、1-ブテン、ペンテン、ヘキセン、ブタジエン、イソプレン、メチルビニルエーテル等のイオン重合し得る共重合性単量体等が挙げられる。重合体ブロックaを構成する全構造単位中の、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位の割合は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
【0015】
共役ジエン化合物としては、ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン等が挙げられる。
【0016】
共役ジエン化合物単位には、両側の構造単位と結合する炭素の違いにより、1,2-ビニル結合単位、3,4-ビニル結合単位、及び1,4-ビニル結合単位が存在する。これらのうち、1,2-ビニル結合単位及び3,4-ビニル結合単位は、側鎖の炭素鎖が二重結合を含むため、水素添加により、側鎖に1,4-ビニル結合単位に比べて嵩高いアルキル基を有することになる。ブタジエンに由来する構造単位の場合は、下記に示すように、1,2-ビニル結合単位と3,4-ビニル結合単位は、実質同一の構造単位となる。本発明では、水素添加により側鎖が嵩高くなる1,2-ビニル結合単位及び3,4-ビニル結合単位を割合が多いブロック共重合体A1と1,2-ビニル結合単位及び3,4-ビニル結合単位の割合が少ないブロック共重合体A2を含む。
【0017】
【0018】
ブロック共重合体A1における1,2-ビニル結合単位及び3,4-ビニル結合単位の合計は、重合体ブロックbを構成する全構造単位中、制振性の観点から、50モル%以上であり、好ましくは55~95モル%、より好ましくは58~85モル%、さらに好ましくは60~80モル%である。
【0019】
一方、ブロック共重合体A2における1,2-ビニル結合単位及び3,4-ビニル結合単位の合計は、重合体ブロックbを構成する全構造単位中、ベタツキ防止の観点から、50モル%未満であり、好ましくは20~45モル%、より好ましくは30~42モル%、さらに好ましくは35~40モル%である。
【0020】
ブロック共重合体Aにおけるブロック共重合体A1とブロック共重合体A2の質量比(ブロック共重合体A1/ブロック共重合体A2)は、25/75~75/25であり、好ましくは30/70~70/30である。
【0021】
また、ブロック共重合体Aにおけるブロック共重合体A1とブロック共重合体A2の総量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。
【0022】
重合体ブロックbは、本発明の効果を損なわない範囲で共役ジエン化合物単位を含有してもよい。他の単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、1,3-ジメチルスチレン、ジフェニルエチレン、1-ビニルナフタレン、4-プロピルスチレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-ドデシルスチレン、2-エチル-4-ベンジルスチレン、4-(フェニルブチル)スチレン等の芳香族ビニル化合物等のアニオン重合可能な共重合性単量体等が挙げられる。重合体ブロックbを構成する全構造単位中、共役ジエン化合物単位の割合は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
【0023】
ブロック共重合体Aは、重合体ブロックa及び重合体ブロックbをそれぞれ少なくとも1個含むブロック共重合体であり、好ましくは、重合体ブロックaを2個以上及び重合体ブロックbを1個以上含むブロック共重合体である。重合体ブロックaと重合体ブロックbの結合形態は特に制限されず、直鎖状、分岐状、放射状、又はそれらの2つ以上が組み合わさった結合形態のいずれであってもよいが、直線状に結合した形態が好ましく、重合体ブロックaを「A」、重合体ブロックbを「B」で表したときに、(A-B)l、A-(B-A)m、B-(A-B)n(式中、l、m及びnはそれぞれ独立して1以上の整数を表す)の結合形態であることが好ましく、ゴム弾性、力学的特性、取り扱い性等の観点から、(A-B)l及びA-(B-A)mで表される結合形態であることがより好ましく、A-Bで表されるジブロック構造又はA-B-Aで表されるトリブロック構造の結合形態であることがさらに好ましい。
【0024】
また、ブロック共重合体Aが重合体ブロックaを2個以上又は重合体ブロックbを2個以上有する場合には、それぞれの重合体ブロックaと重合体ブロックbは互いに同じ構成のブロックであっても異なる構成のブロックであってもよい。例えば、〔A-B-A〕で表されるトリブロック構造における2個の重合体ブロックaは、それらを構成する芳香族ビニル化合物の種類が、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【0025】
ブロック共重合体Aにおける重合体ブロックaの含有量は、柔軟性及び圧縮永久歪の観点から、好ましくは5~70質量%、より好ましくは15~50質量%、さらに好ましくは15~35質量%である。
【0026】
ブロック共重合体Aにおいて、重合体ブロックaと重合体ブロックbの質量比(重合体ブロックa/重合体ブロックb)は、柔軟性及び制振性の観点から、好ましくは5/95~70/30、より好ましくは15/85~50/50、さらに好ましくは15/85~35/65である。
【0027】
本発明において、ブロック共重合体Aは、耐熱老化性の観点から、水素添加物であることが好ましい。水素添加されたブロック共重合体A(以下、水添ブロック共重合体Aともいう)は、実質的には、重合体ブロックbにおける不飽和二重結合(炭素-炭素二重結合)の一部又は全部が水素添加されたものである。重合体ブロックbの水素添加率は、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上である。本発明において、水素添加率は、ブロック共重合体中の共役ジエン化合物に由来する炭素-炭素二重結合の含有量を、水素添加の前後において、1H-NMRスペクトルによって測定し、該測定値から求めることができる。
【0028】
水添ブロック共重合体Aは、本発明の効果を損なわない範囲で、場合により、分子鎖中及び/又は分子末端に、カルボキシル基、水酸基、酸無水物基、アミノ基、エポキシ基等の官能基の1種又は2種以上を有していてもよい。
【0029】
水添ブロック共重合体Aの具体例としては、スチレン-エチレン・ブチレンブロック共重合体(SEB)、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン・プロピレンブロック共重合体(SEP)、スチレン-エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-エチレン-エチレン・プロピレンブロック共重合体(SEEP)、スチレン-(エチレン-エチレン・プロピレン)-スチレンブロック共重合体(SEEPS)、(α-メチルスチレン)-エチレン・ブチレンブロック共重合体、(α-メチルスチレン)-エチレン・ブチレン-(α-メチルスチレン)ブロック共重合体等が挙げられる。これらは、単独であっても、2種以上の混合物であってもよいが、原料調製及び作業性の観点から、SEBS、SEPS、及びSEEPSが好ましく、SEBSがより好ましい。
【0030】
ブロック共重合体Aの重量平均分子量は、耐圧縮永久歪性の観点から、50,000以上、成形性の観点から、500,000以下であり、これらの観点から、50,000~500,000であり、好ましくは100,000~400,000、より好ましくは150,000~350,000、さらに好ましくは200,000~300,000である。ブロック共重合体Aを構成するブロック共重合体A1及びA2それぞれの重量平均分子量も同様に、上記範囲内であることが好ましい。
【0031】
ブロック共重合体Aの含有量は、本発明の熱可塑性エラストマー組成物中、好ましくは10~70質量%、より好ましくは15~60質量%、さらに好ましくは20~50質量%である。
【0032】
ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、その他のα-オレフィンのポリマー等が挙げられ、これらの中では、耐熱性及び相溶性の観点から、ポリプロピレン樹脂が好ましい。
【0033】
ポリオレフィン樹脂は、ホモポリマーのみならず、他のオレフィンとの共重合体であってよい。例えば、エチレン-プロピレン共重合体が挙げられるが、この場合、共重合体中のエチレンの含有量は、20質量%以下が好ましい。
【0034】
エチレン-プロピレン共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体及びグラフト共重合体のいずれであってもよいが、これらの中では、組成物の機械的特性の観点から、ランダム共重合体(ランダムポリプロピレン)を含むことが好ましく、ランダムポリプロピレンのうち、JIS K6921-2に準拠した230℃,荷重21.2Nにおけるメルトマスフローレイトが10g/10min以上、かつ、曲げ弾性率が1000MPa以下であるポリプロピレン共重合体が特に好ましい。このような物性を示すポリプロピレン共重合体は市販のランダムポリプロピレンから選択することができ、より好ましいメルトマスフローレイトは15~80g/10minであり、より好ましい曲げ弾性率は100~800MPaである。
【0035】
ポリオレフィン樹脂の含有量は、ブロック共重合体A 100質量部に対して、成形性の観点から、10質量部以上、柔軟性の観点から、100質量部以下であり、これらの観点から、10~100質量部、好ましくは13~80質量部、より好ましくは15~70質量部、さらに好ましくは20~60質量部である。ポリオレフィン樹脂がランダムポリプロピレンを含む場合に、ポリオレフィン樹脂中での含有量に限定はないが、ランダムポリオレフィンがポリオレフィン樹脂中に5質量%以上含まれると効果が表れやすく、ランダムポリオレフィンの含有量は、ポリオレフィン樹脂中、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。
【0036】
ポリオレフィン樹脂の含有量は、本発明の熱可塑性エラストマー組成物中、好ましくは1~50質量%、より好ましくは2~30質量%、さらに好ましくは5~20質量%である。
【0037】
なお、ポリオレフィン樹脂は、1種からなるものであっても、2種以上が併用されていてもあってもよく、後述のゴム用軟化剤及びタルクについても同様である。
【0038】
ゴム用軟化剤としては、例えば、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、アスファルト系オイル等の鉱物油系軟化剤、脂肪油系、松根油系、トールオイル、ファクチス等の植物油系軟化剤、タール類、クマロンインデン樹脂等のコールタール系軟化剤、フェノール樹脂低縮合物、低融点スチレン樹脂、ポリブテン、ターシャリィブチルフェノールアセチレン縮合物等の液状もしくは低分子量合成樹脂等が挙げられるが、これらのなかでは、ブロック共重合体Aとの親和性が良好で、ブリードが起きにくいという観点から、パラフィン系オイル及びナフテン系オイルから選択される少なくとも1種が好ましく、パラフィン系オイルがより好ましい。
【0039】
ゴム用軟化剤の40℃での動粘度は、高い方が加熱溶融時の揮発を防ぎ、耐ブリード性も良くなることから、好ましくは30mm2/s以上、低い方が取扱いが容易であることから、好ましくは500mm2/s以下であり、これらの観点から、好ましくは30~500mm2/s、より好ましくは60~450mm2/s、さらに好ましくは80~430mm2/sである。
【0040】
ゴム用軟化剤の含有量は、ブロック共重合体A 100質量部に対して、柔軟性の観点から、50質量部以上、ベタツキ防止の観点から、300質量部以下であり、これらの観点から、50~300質量部、好ましくは70~280質量部、より好ましくは100~250質量部、さらに好ましくは150~200質量部である。
【0041】
ゴム用軟化剤の含有量は、本発明の熱可塑性エラストマー組成物中、好ましくは10~70質量%、より好ましくは20~60質量%、さらに好ましくは30~50質量%である。
【0042】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、フィラーとして、吸油量と粒径の比が、所定の範囲内にあるタルクを含有している点に1つの特徴を有する。タルクは鱗片状の粒子形状を有することが知られており、従来、電子顕微鏡で観察して、粒子ごとの最長径と最短径との比率(アスペクト比)を計測することによって粒子形状を数値化し、フィラー性能と関連付ける試みがなされているが、無数の粒子からなるフィラー粉末のごく一部について顕微鏡観察によってアスペクト比を測定して集計する方法では効率が悪いうえに、サンプリングの時点ですでに偏った粒子が拾い出されている可能性があるため、組成物に現れるフィラー性能を予測することが困難である。その点、吸油量の測定は多量の粉末を用いて測定することによって、組成物の中での平均値的なフィラー特性を表すことができるため、本発明においてフィラーとして用いるタルクを特定する目的には特に適する。
【0043】
吸油量は、JIS K5101-13-1「吸油量-第1節:精製あまに油法」により、フィラー粉末に精製あまに油を練り込んで測定し、吸油量(ml/100g)を算出することができる。一般的に、シリカゲルのようにフィラー粒子が多孔質の場合に大きな吸油量となるのは当然であるが、無孔質の粒子の場合、粒子形状や粒度分布の他、粒子の化学組成や結晶構造に基づいても吸油量は大きく異なる。例えば、同じく鱗片状のフィラーとして知られるマイカとタルクでは、一般的にマイカの方がタルクの2倍程度の大きな吸油量を示すが、その理由としてタルクは粒子同士が整列して粒子間の間隙が小さくなり易いので吸油量は小さくなるのに対し、マイカは単独粒子のアスペクト比は大きい一方で、整列し難いために粒子間の間隙容量が大きくなり、吸油量が大きくなることが推測されている。この整列し難いマイカの性質が、フィラーとして用いた場合に引張破断の破断開始点を生み出しやすく、破断伸びの値が小さくなるという作用機構を推測することができる。
【0044】
一方、本発明では、タルクの粒径の代表値として、体積基準のメジアン径を用いる。粒度分布の測定方法は、コールターカウンター等の流通法や遠心沈降法など種々知られているが、本発明では、現在最も一般的測定方法であるレーザー回折式の粒度分布計を用いる方法を採用し、凝集粒子の影響を避けるために、流動媒体、例えば水中に粒子を分散させて測定する方法を用いる。粒度分布の代表値としては、体積基準、面積基準、粒径基準などで算出することができ、いずれの方法を用いた場合でも、演算処理によって本発明のパラメータに関連付けて本発明を実施することができるが、粒子が鱗片状の場合、三次元で測定した粒子形状がそれぞれ異なるので、粒子全体の大きさを余すところなく反映させる観点から、本発明では、体積基準のメジアン径を用いる。
【0045】
吸油量と粒径の関係については、粒度分布を持った粒子を分級して粗大粒子と微細粒子を取り出した場合、例えば酸化クロムでは分級前に比べて粗大粒子の吸油量の方が大きく、微細粒子では小さくなる一方、カドミウムイエローでは逆の傾向が表れること等が知られており、粒子径と吸油量の間に画一的な関係式は存在しないと言われている。
タルクは天然物である滑石の粉砕物であり、粉砕すると鱗片状になり易いことは知られているものの、滑石の原産地や粉砕方法によって粒度分布や形状が異なり、例えば同じメジアン径であって吸油量の異なるタルクはいくらも入手できる。この中でも、吸油量と体積基準のメジアン径との比が一定範囲にあるタルクを用いると、柔軟性や制振性を損ねることなく、機械的特性に優れた熱可塑性エラストマー組成物を実現できることを見出した。
【0046】
タルクの吸油量と体積基準のメジアン径の比(吸油量/体積基準のメジアン径)は、制振性の観点から、1以上、破断伸びの観点から、12以下であり、これらの観点から、1~12であり、好ましくは1.5~10、より好ましくは2~8、さらに好ましくは2~4である。タルクが複数種からなる場合は、それらの混合物の吸油量及び体積基準のメジアン径を測定し、両者の比が所定の範囲内であればよい。
【0047】
タルクの体積基準のメジアン径は、制振性の観点から、好ましくは3μm以上、成形性の観点から、好ましくは20μm以下であり、これらの観点から、好ましくは3~20μm、より好ましくは5~15μm、さらに好ましくは10~15μmである。
【0048】
タルクの含有量は、ブロック共重合体A 100質量部に対して、制振性と耐圧縮永久歪性の観点から、10質量部以上、柔軟性と成形性の観点から、250質量部以下であり、これらの観点から、10~250質量部、好ましくは30~230質量部、より好ましくは50~200質量部、さらに好ましくは70~150質量部である。
【0049】
タルクの含有量は、本発明の熱可塑性エラストマー組成物中、好ましくは5~50質量%、より好ましくは10~40質量%、さらに好ましくは15~35質量%である。
【0050】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、制振性の観点から、さらに、水添石油樹脂を含有することが好ましい。
【0051】
水添石油樹脂としては、tanδのピークが高い温度にあるため組成物の常温域での制振性が向上する観点から、軟化点が90℃以上、好ましくは100~150℃の水添石油樹脂が好ましい。また、かかる水添石油樹脂の溶解性パラメーター(SP値)は、熱可塑性樹脂に近く、例えば、該水添石油樹脂のSP値は8.3、ブロック共重合体AのSP値は8.2~8.5であり、相溶性に優れる。さらに、水添石油樹脂は、水添された脂環族系石油樹脂であるので、耐熱性及び耐候性に優れている。
【0052】
水添石油樹脂の含有量は、ブロック共重合体A 100質量部に対して、制振性の観点から、好ましくは5質量部以上、ベタツキ防止の観点から、好ましくは55質量部以下であり、これらの観点から、好ましくは5~55質量部、より好ましくは7~40質量部、さらに好ましくは10~30質量部である。
【0053】
水添石油樹脂の含有量は、本発明の熱可塑性エラストマー組成物中、好ましくは1~15質量%、より好ましくは1.5~12質量%、さらに好ましくは2~10質量%である。
【0054】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、圧縮永久歪みの改良の観点から、さらに、ポリフェニレンエーテルを含有することが好ましい。
【0055】
ポリフェニレンエーテルは、その芳香環構造により、ブロック共重合体Aの重合体ブロックa相互の会合を補強する効果があるため、エラストマー組成物に耐熱性、すなわち高温下(例えば70~140℃程度)での引張強度を向上させる作用や、圧縮永久歪みの低下を付与するものである。ポリフェニレンエーテルは、スチレン系の樹脂がブレンド又はグラフト化された変性ポリフェニレンエーテル等であってもよい。
【0056】
ポリフェニレンエーテルの含有量は、ブロック共重合体A 100質量部に対して、圧縮永久歪みの改良する観点から、好ましくは3質量部以上、エラストマー組成物のゴム弾性の低下に伴う永久伸びの増大を防止する観点から、好ましくは30質量部以下であり、これらの観点から、ポリフェニレンエーテルの含有量は、ブロック共重合体A 100質量部に対して、好ましくは3~30質量部、より好ましくは5~20質量部である。
【0057】
ポリフェニレンエーテルの含有量は、本発明の熱可塑性エラストマー組成物中、好ましくは0.5~20質量%、より好ましくは1~10質量%、さらに好ましくは2~7質量%である。
【0058】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、カーボンブラック、シリカ、炭素繊維、ガラス繊維等の補強剤、無機充填剤、絶縁性熱伝導性フィラー、顔料、水和金属化合物、赤燐、ポリリン酸アンモニウム、アンチモン、シリコーン等の難燃剤、帯電防止剤、増粘剤、粘着付与剤、架橋剤、架橋助剤、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、ブロッキング防止剤、シール性改良剤、離型剤、着色剤、香料等の各種添加剤を含有していてもよい。
【0059】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、ブロック共重合体Aと、ポリオレフィン樹脂と、ゴム用軟化剤と、タルクと、必要に応じて酸化防止剤等の添加剤を適宜混合し、冷却により固化させて得られる。
【0060】
本発明でいう「混合」とは、各種原料が良好に混合される方法であれば特に限定されず、各種原料を溶解可能な有機溶媒中に溶解させて混合してもよいし、溶融混練によって混合してもよいが、原料の混合は、各原料が溶融する条件下で行うことが好ましい。
【0061】
溶融混練する場合には、一般的な押出機を用いることができ、混練状態の向上のため、二軸の押出機を使用することが好ましい。押出機への供給は、予めヘンシェルミキサー等の混合装置を用いて各種成分を混合したものを一つのホッパーから供してもよいし、二つのホッパーにそれぞれの成分を仕込みホッパー下のスクリュー等で定量しながら供してもよい。
【0062】
熱可塑性エラストマー組成物を構成する原料を混合して得られる生成物は、用途に応じて、ペレット、粉体、シート等の形状とすることができる。例えば、押出機によって溶融混練してストランドに押出し、冷水中で冷却しつつカッターによって円柱状や米粒状等のペレットに切断される。得られたペレットは、通常、射出成形、押出成形によって所定のシート状成形品や金型成形品とする。また、溶融混練物をルーダー等でペレットにして成形加工原料とすることもできる。シート状の熱可塑性エラストマー組成物に、台紙等を貼付した中間製品としてもよい。
【0063】
熱可塑性エラストマー組成物のA硬度は、柔軟性の観点から、好ましくは50以下、より好ましくは25~45、さらに好ましくは30~42である。
【0064】
熱可塑性エラストマー組成物の、230℃、荷重5kgの条件下におけるメルトマスフローレイト(MFR)は、好ましくは0.1g/10min以上、より好ましくは0.5~20g/10min、さらに好ましくは1.0~10g/10minである。
【0065】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、特に限定されることなく、一般的なスチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、アクリル系エラストマーやポリエステル系エラストマー等が用いられる分野に用いることができる。
【0066】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物を、常法に従って、適宜加熱成形することにより、制振部材等の成形体として得られる。
【0067】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物を用いた成形体の製造に用いられる装置は、成形材料を溶融できる任意の成形機を用いることができる。例えば、ニーダー、押出成形機、射出成形機、プレス成形機、ブロー成形機、ミキシングロール等が挙げられる。
【0068】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物を用いた制振部材は、家電製品や自動車部品、スポーツ用品等の騒音・振動対策に用いることができ、柔軟で制振性と共に機械的特性に優れているため、例えば、機器の筐体や保持部品に用いると、静粛性と安全性を兼ね備えることができる。
【実施例】
【0069】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。実施例及び比較例で使用した原料の各種物性は、以下の方法により測定した。
【0070】
<成分A:ブロック共重合体>
〔ブロック共重合体の組成〕
核磁気共鳴装置(ドイツ国BRUKER社製、DPX-400)によって、プロトンNMR測定を行い、例えば、スチレンの特性基の定量を行うことによってスチレン及び/又はスチレン誘導体に由来する構造単位の含有量を決定する。他の単量体単位の含有量もプロトンNMR測定により求めることができる。
【0071】
〔重合体ブロックbにおける1,2-ビニル結合単位及び3,4-ビニル結合単位の合計含有量〕
水素添加前のブロック共重合体をCDCl3に溶解して1H-NMRスペクトルを測定[装置:JNM-Lambda 500(日本電子(株)製)、測定温度:50℃]し、共役ジエン化合物単位の全ピーク面積と、共役ジエン化合物単位における1,2-ビニル結合単位及び3,4-ビニル結合単位に対応するピーク面積の比から、3,4-ビニル結合単位と1,2-ビニル結合単位の含有量の合計を算出する。
【0072】
〔重量平均分子量(Mw)〕
以下の測定条件で、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより、ポリスチレン換算で分子量を測定し、重量平均分子量を求める。
測定装置
・ポンプ:JASCO(日本分光(株))製、PU-980
・カラムオーブン:昭和電工(株)製、AO-50
・検出器:日立製、RI(示差屈折計)検出器 L-3300
・カラム種類:昭和電工(株)製「K-805L(8.0×300mm)」及び「K-804L(8.0×300mm)」各1本を直列使用
・カラム温度:40℃
・ガードカラム:K-G(4.6×10mm)
・溶離液:クロロホルム
・溶離液流量:1.0ml/min
・試料濃度:約1mg/ml
・試料溶液ろ過:ポリテトラフルオロエチレン製0.45μm孔径ディスポーザブルフィルタ
・検量線用標準試料:昭和電工(株)製ポリスチレン
【0073】
<成分B:ポリオレフィン樹脂>
〔メルトマスフローレイト(MFR)〕
JIS K6921-2に準拠した方法により、230℃、荷重21.2Nの条件で測定する。
【0074】
〔曲げ弾性率〕
JIS K6921-2(2010)に準拠した方法により測定する。
【0075】
<成分C:ゴム用軟化剤>
〔動粘度〕
JIS Z 8803に従って、40℃の温度で測定する。
【0076】
<成分D:タルク等>
〔吸油量〕
JIS K5101-13-1「吸油量-第1節:精製あまに油法」により、フィラー粉末に精製あまに油を練り込んで測定し、吸油量(ml/100g)を算出する。
【0077】
〔体積基準のメジアン径〕
粒径は、JIS M8511に定めるレーザー回折・散乱法により、水中に粒子を分散させて測定し、体積基準の積算分率における50%値を体積基準メジアン径として用いる。
【0078】
<その他の成分>
〔水添石油樹脂の軟化点〕
JIS K2207に準拠した方法により測定する。
【0079】
実施例1~20及び比較例1~7
(1) 熱可塑性エラストマー組成物(ペレット)の作製
成分C以外の表6~8に示す原料をドライブレンドした後、これに成分Cを含浸させて混合物を作製した。その後、混合物を下記の条件で、押出機で溶融混練して、ストランドに押出し、冷水中で冷却しつつカッターによって、直径3mm程度、厚さ3mm程度に切断し、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを製造した。
【0080】
〔溶融混練条件〕
押出機:KZW32TW-60MG-NH(商品名、(株)テクノベル製)
シリンダー温度:180~220℃
スクリュー回転数:300r/min
【0081】
実施例及び比較例で使用した表6~8に記載の原料の詳細は以下の通り。
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
(2) 熱可塑性エラストマー組成物の成形体の作製
ペレットを、下記の条件で射出成形し、厚さ2mm×幅125mm×長さ125mmのプレートを作製した。
【0088】
〔射出成条件〕
射出成形機:100MSIII-10E(商品名、三菱重工業(株)製)
射出成形温度:200℃
射出圧力:30%
射出時間:3sec
金型温度:40℃
【0089】
実施例及び比較例で得られた熱可塑性エラストマー組成物について、下記の評価を行った。結果を表6~8に示す。
【0090】
〔A硬度〕
JIS K 6253-3 タイプAにて測定する。
【0091】
〔メルトマスフローレイト(MFR)〕
ASTM D1238に準拠して、230℃、荷重5kgの条件で測定する。
【0092】
〔ベタツキ〕
触感により、以下の評価基準に従って評価した。
<評価基準>
◎:全くベタツキがない。
○:ほとんどベタツキがない。
△:若干のベタツキがある。
×:顕著なベタツキがある。
【0093】
〔機械的特性〕
JIS K 6251に準じた方法により、破壊点伸び率を測定した。試験片はダンベル3号形を使用し、試験室温度23℃、引張速度500mm/minで、試験片を切断するまで引っ張ったときに記録される試験片が切断したときの伸びを、初期に対する比率(%)で表したものを破壊点伸び率とした。
【0094】
〔制振性〕
以下の条件でtanδを測定した。
測定機:ARES-RDS(ティー・エイ・インスツルメント製)
昇温速度:10℃/min
振動周波数:30Hz
試験片:パラレルプレート(肉厚2mm、直径21mm)
試験温度:-50℃~80℃まで前記昇温速度で測定を行い、25℃の値を算出する。
【0095】
〔圧縮永久歪み〕
JIS K 6252に準拠した方法により、70℃、24時間で測定した。
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
以上の結果より、実施例1~20の熱可塑性エラストマー組成物は、ベタツキがなく、柔軟性と制振性に優れ、かつ高い機械的特性(破壊点伸び率)を有することが分かる。なかでも、実施例1と実施例14、15の対比から、ポリオレフィン樹脂として、特定のランダムポリプロピレンを配合することにより、破壊点伸び率が向上することが分かる。
これに対し、吸油量と体積基準のメジアン径の比が所定の範囲外である比較例1、2及びタルクの含有量が多すぎる比較例3では、特に破壊点伸び率が不十分である。1,2-ビニル結合単位及び3,4-ビニル結合単位が異なる2種のブロック共重合体を含有してない比較例4、5では、制振性の低下又はベタツキが顕著である。また、タルクの代わりにマイカを含有した比較例6では、ベタツキ及び破壊点伸び率の低下が顕著であり、タルクを含有していない比較例7は、ベタツキが生じている。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明の制振用熱可塑性エラストマー組成物は、家電製品、電気機器、医療用具、自動車、航空機、スポーツ用品、建材等の騒音・振動対策に好適に用いることができる。