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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】炊飯器
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/00 20060101AFI20240209BHJP
【FI】
A47J27/00 109R
A47J27/00 103M
A47J27/00 109G
A47J27/00 103H
A47J27/00 103L
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020042864
(22)【出願日】2020-03-12
(65)【公開番号】P2021142120
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000176866
【氏名又は名称】三菱電機ホーム機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小池 成彦
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】逸見 憲一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 ちひろ
(72)【発明者】
【氏名】内田 毅
【審査官】西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-144320(JP,A)
【文献】特開2013-081590(JP,A)
【文献】特開2016-067830(JP,A)
【文献】特開2003-259973(JP,A)
【文献】特開2009-285110(JP,A)
【文献】特開2016-043125(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00-36/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物を収容する容器と、
前記容器の側面を加熱する側面コイルと、
前記容器の底面を加熱する底面コイルと、
前記容器の前記側面の温度を検出する側面温度センサと、
前記容器の前記底面の温度を検出する底面温度センサと、
前記側面温度センサと前記底面温度センサの出力から、前記容器内の炊飯量を判定する制御部と、を備え、
前記側面温度センサは、前記側面コイルの下端よりも上側に配置され
前記制御部は、
前記底面の温度が上昇して第1温度に達した場合、前記底面コイルへの電力を停止し、前記底面の温度が前記第1温度よりも低い第2温度まで低下した場合、前記底面コイルへ電力を投入し、前記側面の温度が上昇して前記第1温度に達した場合、前記側面コイルへの電力を停止し、前記側面の温度が前記第2温度まで低下した場合、前記側面コイルへ電力を投入する予熱工程を実行し、
前記底面コイルへの電力が停止された1区間の底面加熱停止時間と、前記側面コイルへの電力が停止された1区間の側面加熱停止時間と、を計測し、
前記底面加熱停止時間および前記側面加熱停止時間に基づき、前記炊飯量の判定を行う炊飯器。
【請求項2】
前記側面温度センサは、前記側面コイルの上端より下側に配置される請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
前記側面温度センサは、前記側面コイルの上端と下端との中間よりも上側に配置される請求項2に記載の炊飯器。
【請求項4】
前記制御部は、前記炊飯量が中量または多量であると判定された場合、前記側面温度センサによって検出される前記側面の温度の変化に応じて、前記側面コイルへの投入電力を変更する請求項1~の何れか一項に記載の炊飯器。
【請求項5】
前記容器の前記側面は、高さ方向が大きくなるにつれて内径が広がる傾斜部を有する請求項1~の何れか一項に記載の炊飯器。
【請求項6】
前記側面コイルは、2つ以上に分割されている請求項1~の何れか一項に記載の炊飯器。
【請求項7】
前記底面コイルを駆動する第1インバータと、前記側面コイルを駆動する第2インバータとをさらに備える請求項1~の何れか一項に記載の炊飯器。
【請求項8】
前記側面コイルは、前記側面コイルの中心軸と、前記容器の中心軸とが交差するよう配置される請求項1~の何れか一項に記載の炊飯器。
【請求項9】
前記底面コイルは、2つ以上に分割されている請求項1~の何れか一項に記載の炊飯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、炊飯器に関するものであり、より詳しくは容器の底面と側面との加熱を行う炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の炊飯器において、被加熱物が収容される鍋状容器の底面と側面に加熱コイルを設け、容器の底面と側面とを加熱する構成が知られている。例えば、特許文献1には、容器の底面を加熱する底面コイルと、側面を加熱する側面コイルと、底面温度および側面温度を検出する複数の温度センサとを備える炊飯器が開示されている。特許文献1の炊飯器は、温度センサで検出された底面および側面の温度から炊飯量の合数判定を行い、判定結果に基づき、底面と側面の加熱コイルを個別に駆動制御する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平09-294675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の炊飯器では、底面コイルと側面コイルとを駆動させ、そのときの底面温度および側面温度に基づき炊飯合数の判定を行う構成となっている。しかしながら、特許文献1の側面温度を検出する温度センサは、側面コイルと底面コイルの中間位置に配置されているため、検出される温度は、側面コイルと底面コイルの両方による加熱の影響を受けた温度となる。そのため、側面コイルにより加熱される側面温度を正確に検出できず、炊飯量によっては判定精度が低下してしまう。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するためのものであり、炊飯量の判定精度を向上させることができる炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る炊飯器は、被加熱物を収容する容器と、容器の側面を加熱する側面コイルと、容器の底面を加熱する底面コイルと、容器の側面の温度を検出する側面温度センサと、容器の底面の温度を検出する底面温度センサと、側面温度センサと底面温度センサの出力から、容器内の炊飯量を判定する制御部と、を備え、側面温度センサは、側面コイルの下端よりも上側に配置され、制御部は、底面の温度が上昇して第1温度に達した場合、底面コイルへの電力を停止し、底面の温度が第1温度よりも低い第2温度まで低下した場合、底面コイルへ電力を投入し、側面の温度が上昇して第1温度に達した場合、側面コイルへの電力を停止し、側面の温度が第2温度まで低下した場合、側面コイルへ電力を投入する予熱工程を実行し、底面コイルへの電力が停止された1区間の底面加熱停止時間と、側面コイルへの電力が停止された1区間の側面加熱停止時間と、を計測し、底面加熱停止時間および側面加熱停止時間に基づき、炊飯量の判定を行う
【発明の効果】
【0007】
本開示における炊飯器によれば、側面コイルの近傍に配置された側面温度センサにより、容器の側面温度を迅速にかつ正確に検出することができ、側面温度センサの検出結果を用いた炊飯量判定の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る炊飯器の概略構成を示す断面模式図である。
図2】実施の形態1に係る制御部の機能ブロック図である。
図3】炊飯量が少量の場合の予熱工程における容器の温度の推移を示す図である。
図4】炊飯量が中量または多量の場合の予熱工程における容器の温度の推移を示す図である。
図5】実施の形態1に係る炊飯器の炊飯工程と、容器の温度との関係を概略的に示す図である。
図6】実施の形態1に係る炊飯器の加熱制御を示すフローチャートである。
図7】炊飯量が少量の場合の予熱工程における側面コイルと側面温度センサの入出力を示す図である。
図8】炊飯量が中量または多量の場合の予熱工程における側面コイルと側面温度センサの入出力を示す図である。
図9】側面温度の変化を説明する図である。
図10】実施の形態1に係る炊飯器における側面温度センサの配置を説明する図である。
図11】変形例1-1に係る炊飯器の容器の断面模式図である。
図12】変形例1-2に係る炊飯器における側面コイルの配置を説明する図である。
図13】被加熱物が中量である場合の予熱工程における加熱状態の遷移を示す図である。
図14】被加熱物が多量である場合の予熱工程における加熱状態の遷移を示す図である。
図15】実施の形態2に係る炊飯量判定に用いられるパラメータをまとめた表である。
図16】実施の形態2において判定タイミングを複数設ける場合の例を説明する図である。
図17】実施の形態3に係る側面コイルの配置を説明する図である。
図18】実施の形態3に係る側面コイルの配置を説明する図である。
図19】実施の形態3に係る側面温度センサが配置される領域を示す図である。
図20】実施の形態3に係る底面コイルの配置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、炊飯器の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、図面に示す炊飯器は一例であり、図面に示された炊飯器によって適用機器が限定されるものではない。また、以下の説明において、理解を容易にするために方向を表す用語(例えば「上」、「下」、「右」、「左」、「前」、「後」など)を適宜用いるが、これらは説明のためのものであって、実施の形態を限定するものではない。また、各図において、同一の符号を付したものは、同一のまたはこれに相当するものであり、これは明細書の全文において共通している。なお、各図面では、各構成部材の相対的な寸法関係または形状等が実際のものとは異なる場合がある。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る炊飯器100の概略構成を示す断面模式図である。炊飯器100は、食材を入れた鍋状の容器5を加熱コイルで誘導加熱することで食材を加熱調理するものである。図1に示すように、炊飯器100は、外観が有底筒状の本体1と、本体1に取り付けられ、本体1の上部開口を開閉する蓋体10と、本体1の内部に収容される容器5と、を備えている。
【0011】
(炊飯器の構成)
本体1は、容器カバー2と、底面コイル31と、側面コイル32と、底面温度センサ41と、側面温度センサ42と、ヒンジ部6と、時間計測部7と、制御部8と、第1インバータ85と、第2インバータ86とを備える。
【0012】
容器カバー2は、有底筒状に形成され、その内部に容器5が着脱自在に収容される。容器カバー2の底面中央には、底面温度センサ41が挿入される孔部2aが設けられており、容器カバー2の側面には側面温度センサ42が挿入される孔部2bが設けられている。また、容器カバー2の側面の上部には肩部2cが設けられ、容器5の鍔部5aを容器カバー2の肩部2cに置くことで、容器5が容器カバー2内に収容される。
【0013】
底面コイル31は、容器5の下方に配置され、第1インバータ85から供給される高周波電流により、容器5の底面5bを誘導加熱する。底面コイル31は、銅線またはアルミ線などの導線が巻回してなる円形の加熱コイルである。
【0014】
側面コイル32は、容器5の外周を囲むように配置され、第2インバータ86から供給される高周波電流により、容器5の側面5cを誘導加熱する。側面コイル32は、銅線またはアルミ線などの導線が巻回してなる円形の加熱コイルである。
【0015】
底面温度センサ41は、例えばサーミスタで構成され、容器5の温度を検出する。本実施の形態の底面温度センサ41は、バネ等の弾性手段(図示せず)によって上方に付勢されており、容器カバー2に収容された容器5の底面5bに接して容器5の底面温度Tbを検出する。底面温度センサ41が検出した底面温度Tbは、制御部8に出力される。
【0016】
側面温度センサ42は、例えばサーミスタで構成され、容器5の温度を検出する。本実施の形態の側面温度センサ42は、容器カバー2の側面から内側に突出して配置され、容器カバー2に収容された容器5の側面5cに接して容器5の側面温度Tsを検出する。側面温度センサ42が検出した側面温度Tsは、制御部8に出力される。
【0017】
なお、底面温度センサ41および側面温度センサ42の具体的構成はサーミスタに限定されず、容器5に接触して温度を検出する接触式温度センサのほか、例えば赤外線センサ等の容器5の温度を非接触で検出する非接触式温度センサを採用してもよい。
【0018】
ヒンジ部6は、本体1の上部の一端側(図1の紙面左側)に設けられ、蓋体10を開閉自在に支持する。なお、本体1に、炊飯器100を運搬するためのハンドル(図示せず)を設けておいてもよい。ハンドルを設ける場合には、ハンドルを本体1の側面上部の略前後中央に軸支し、ハンドルの回転方向を蓋体10の回動方向と一致させるとよい。この構成により、炊飯器100を運搬する際には、使用者はハンドルの軸支点のほぼ直上に位置するようにハンドルを回転させて持ち上げ、ハンドルのみを持って炊飯器100を運搬することが可能となる。
【0019】
時間計測部7は、制御部8からの指示信号に基づいて経過時間をカウントする。時間計測部7がカウントした経過時間は、制御部8に出力される。なお、時間計測部7を制御部8の機能部として設けてもよい。
【0020】
第1インバータ85および第2インバータ86は、商用電源(図示せず)の交流電源を高周波電流に変換して、底面コイル31および側面コイル32へ供給する駆動回路である。底面コイル31および側面コイル32を個別のインバータで駆動することで、底面コイル31と側面コイル32の両方を最大発熱量(例えば1200W)で加熱することができる。
【0021】
制御部8は、炊飯器100全体を制御し、炊飯工程を実行する。制御部8は、マイクロコンピュータと、その上で実行されるソフトウェアとにより構成される。または、制御部8を、その機能を実現する回路デバイスなどのハードウェアで構成してもよい。
【0022】
蓋体10は、外蓋11と、内蓋12とを有する。外蓋11には、着脱できるカートリッジ14が設けられ、外蓋11の上面には操作表示部15が設けられている。
【0023】
外蓋11は、蓋体10の上部および側部を構成し、外蓋11の下面(容器5に対向する面)には、内蓋12が着脱自在に取り付けられている。内蓋12は、例えばステンレスなどの金属で構成されており、外蓋11の本体1側の面に係止材13を介して取り付けられている。内蓋12の周縁部には、容器5の上端部外周との密閉性を確保するシール材である蓋パッキン9が取り付けられている。また、内蓋12には、内部温度センサ16を挿入させる孔部12aが形成され、外蓋11には、内蓋12の孔部12aに挿入された内部温度センサ16の外周の隙間を塞ぐパッキン11aが取り付けられている。さらに、内蓋12には、容器5内で発生した蒸気が通る蒸気口12bが設けられ、後述するカートリッジ14の蒸気取入口14aと通じている。
【0024】
カートリッジ14には、炊飯中に発生する蒸気圧に応じて上下動する弁(図示せず)を備えた蒸気取入口14aと、蒸気取入口14aの弁を通過した蒸気を外部へ排出する蒸気排出口14bとが設けられている。蒸気取入口14aは、蒸気口12bに通じており、容器5内で発生した蒸気は、蒸気口12bを通過して蒸気取入口14aからカートリッジ14内に入ってカートリッジ14内を流れ、蒸気排出口14bからカートリッジ14の外へ流出する。
【0025】
操作表示部15は、外蓋11の上面に設けられている。この操作表示部15は、使用者からの操作入力を受け付けるとともに、操作入力に関する情報および炊飯器100の動作状態を表示する。操作表示部15に対して設定可能な項目としては、例えば、炊飯の開始、取り消し、炊飯予約、炊飯メニューがある。炊飯メニューの具体例としては、白米炊飯または玄米炊飯等の米の種類に関するもの、標準炊飯または早炊き炊飯等の炊飯時間に関するもの、かためまたはやわらかめ等の炊き上がりの米飯のかたさに関するもの等が挙げられる。操作表示部15が表示する項目としては、例えば、炊飯中または予約待機中等の炊飯器100の状態、設定されている炊飯メニューの内容、炊き上がりの予定時刻、現在時刻、炊飯する米200の量等が挙げられる。なお、ここで示した操作表示部15の具体的構成は一例であり、その他の項目を設定または表示してもよい。
【0026】
内部温度センサ16は、例えばサーミスタで構成され、容器5の内部の温度を検出する。内部温度センサ16は、外蓋11に取り付けられ、一部が内蓋12の孔部12aに挿入される。内部温度センサ16は、孔部12aを介して容器5内の温度を検出する。内部温度センサ16が検出した容器5内の温度は、制御部8に出力される。なお、内部温度センサ16の具体的構成はサーミスタに限定されず、その他の接触式温度センサのほか、例えば赤外線センサ等の容器5内の温度を非接触で検出する非接触式温度センサを採用してもよい。
【0027】
容器5は、有底の筒状を有し、誘導加熱により発熱する磁性体金属を含む材料で構成される。容器5の内部には、被加熱物である米200および水201が収容される。また、本実施の形態の容器5は羽釜形状を有し、側面5cには、外側へ突出する鍔部5aが全周にわたって設けられる。容器カバー2の肩部2cに容器5の鍔部5aを置くことで、容器カバー2と容器5との間は閉ざされた空間となる。この状態で容器5を加熱すると、閉ざされた空間によって断熱されるため、容器5の鍔部5aより下方に位置する部分と、その中に収容されている米200の温度が冷めにくくなり効率的に加熱することができる。
【0028】
図2は、実施の形態1に係る制御部8の機能ブロック図である。制御部8は、プログラムを実行することによって実現される機能部として、加熱制御部81と、表示制御部82と、炊飯量判定部83と、を有する。また、制御部8は、RAM、ROMまたはフラッシュメモリなどの不揮発性または揮発性のメモリからなり、各機能部に用いられる各種プログラムおよび各種データを記憶する記憶部84を有する。なお、記憶部84を制御部8とは別に設ける構成としてもよい。
【0029】
加熱制御部81は、底面温度センサ41、側面温度センサ42、操作表示部15および内部温度センサ16からの出力に基づいて、第1インバータ85および第2インバータ86を制御し、底面コイル31および側面コイル32を駆動させて炊飯工程を実施する。このとき、加熱制御部81は、炊飯量判定部83により判定された炊飯量に基づいて、底面コイル31および側面コイル32の加熱を制御する。
【0030】
表示制御部82は、操作表示部15における操作入力に関する情報および炊飯器100の動作状態などを操作表示部15に表示させる。また、操作表示部15を介した使用者からの操作入力を受け付け、加熱制御部81に出力する。
【0031】
炊飯量判定部83は、底面温度センサ41および側面温度センサ42からの出力に基づいて、容器5内の炊飯量を判定する。具体的には、炊飯量判定部83は、容器5の加熱と停止とを繰り返す予熱工程における容器5の側面5cの温度と、底面5bが予熱温度Tpに達するまでの時間とに基づき、炊飯量を判定する。
【0032】
図3は、炊飯量が少量の場合の予熱工程における容器5の温度の推移を示す図であり、図4は、炊飯量が中量または多量の場合の予熱工程における容器5の温度の推移を示す図である。図3および図4において、破線が側面温度センサ42で検出された容器5の側面温度Tsの推移を示し、実線が底面温度センサ41で検出された容器5の底面温度Tbの推移を示し、一点鎖線が内部温度センサ16で検出された空間温度Taの推移を示す。
【0033】
図3に示すように、炊飯量が少量である場合、側面コイル32が配置される位置には水201などの被加熱物が存在しないため、側面5cが空焚き状態となり、側面温度Tsが短時間で一気に上昇し、閾値温度Th以上となる。そこで、炊飯量判定部83は、予熱工程における最初の側面コイル32の駆動後の側面温度Tsが、予め設定された閾値温度Th以上となった場合に、炊飯量が少量であると判定し、閾値温度Th未満である場合は中量または多量であると判定する。閾値温度Thは、実験等により予め設定され、記憶部84に記憶される。
【0034】
また、図4に示すように、炊飯量が中量または多量である場合、側面コイル32が配置される位置には水201などの被加熱物が存在するため、側面温度Tsは底面温度Tbと同じように徐々に上昇する。ここで、炊飯量が多いほど、予熱温度Tp(例えば52℃)に達するまでの時間tは長くなる。そこで、炊飯量判定部83は、予熱工程において底面温度Tbが予熱温度Tpに達するまでの時間tを計測し、時間tが閾値時間t以下の場合は、炊飯量が中量であると判定し、閾値時間tより長い場合は多量であると判定する。なお、炊飯器100が5.5合炊きの場合、少量は、例えば1合~2合であり、中量は、例えば2合~4合であり、多量は例えば4合~5.5合である。炊飯量判定部83における判定結果は、加熱制御部81に出力される。
【0035】
(炊飯器の動作)
続いて、本実施の形態における炊飯器100の炊飯工程について説明する。本実施の形態では、操作表示部15に対する使用者の操作入力に応じて、制御部8が記憶部84に記憶された炊飯プログラムに従って、底面コイル31および側面コイル32を駆動させ、炊飯工程を実行する。図5は、実施の形態1に係る炊飯器100の炊飯工程と、容器5の温度との関係を概略的に示す図である。
【0036】
図5に示すように、炊飯工程は、予熱工程、昇温工程、沸騰維持工程および蒸らし工程からなる。予熱工程は、米200と水201の温度を、米200のデンプンの糊化が始まらない50~60度の一定の温度に保ち、容器5内の米200の内部にまで吸水を促す工程である。次の昇温工程は、予熱工程終了後から容器5内の水201が沸騰するまでの工程である。容器5内の水201が沸騰すると、制御部8は次の沸騰維持工程に移行する。この沸騰維持工程では、容器5内の温度が沸騰温度を保持するように加熱し、米200のデンプンの糊化を促進する。最後の蒸らし工程は、容器5内の米200を蒸らすことにより、米粒中心部まで糊化を進行させ、さらに、米粒内の水分の分布を均一にする工程である。炊飯工程が終了すると、容器5内を予め定められた温度に保持する保温工程に移行する。
【0037】
炊飯工程において、加熱制御部81は、底面コイル31および側面コイル32を同じタイミングで駆動させてもよいし、任意の時間間隔で交互に駆動させてもよい。または、加熱制御部81は、底面コイル31および側面コイル32の同じタイミングでの駆動と、交互の駆動とを切替えてもよい。底面コイル31および側面コイル32を同じタイミングで駆動させることで、かまどのような激しい沸騰を容器5全体から起こすことができ、米200全体を強く加熱することができる。また、底面コイル31および側面コイル32を交互に駆動させることで、容器5内に対流を起こすことができ、被加熱物全体を均一に加熱させることができる。ただし、同じタイミングで底面コイル31および側面コイル32を駆動させる場合は、最大の消費電力が定格電力を超えないように、発熱量を調節する。
【0038】
炊飯工程における底面コイル31および側面コイル32の加熱制御の一例について説明する。なお、以下は標準的な炊飯工程を例にとって説明するが、その他のモードでの炊飯であっても炊飯工程ごとの加熱制御を行うことで、同様の効果が得られる。図6は、実施の形態1に係る炊飯器100の加熱制御を示すフローチャートである。図6に示す制御は、制御部8により実行される。
【0039】
炊飯が開始されると、まず予熱工程が実施される。予熱工程においては、加熱制御部81により、底面コイル31と側面コイル32とが駆動される(S1)。そして、炊飯量判定部83による炊飯量判定が行われる。具体的には、側面コイル32の最初の駆動時に側面温度センサ42により検出された側面温度Tsが閾値温度Th以上であるか否かが判断される(S2)。そして、側面温度センサ42により検出された側面温度Tsが閾値温度Th以上である場合(S2:YES)は、炊飯量が少量であると判定され(S3)、側面コイル32への投入電力が低減される(S4)。
【0040】
図7は、炊飯量が少量の場合の予熱工程における側面コイル32と側面温度センサ42の入出力を示す図である。図7において、下のグラフは側面コイル32への投入電力を示し、上のグラフは側面温度センサ42の出力信号の電圧を示す。側面温度センサ42の出力信号の電圧は、側面温度Tsに比例する。図7に示すように、炊飯量が少量である場合、側面コイル32に電力が投入されると、側面温度センサ42の出力信号の電圧は、短時間で一気に上昇する。そのため、加熱制御部81は、炊飯量判定部83により炊飯量が少量と判定された場合、すなわち、側面温度Tsが閾値温度Thに到達した場合は、図7に示すように側面コイル32への投入電力を低減させることで、側面5cの空焚きを防止する。なお、炊飯量を判定するために、側面コイル32の最初の駆動時のオン時間を以降のオン時間よりも長くしてもよい。加熱制御部81は、側面温度Tsが予熱温度Tpを維持するように、側面コイル32への投入電力を設定する。側面温度Tsは、底面温度Tbと一致しなくてもよいが、なるべく近い方が、容器5の上下の温度ムラが小さくなり、食味が向上する。
【0041】
炊飯量が少量の場合も、側面コイル32を低電力で駆動させることで、発生した蒸気が容器5の側面5cで冷え、露となって側面5cに沿って落ちることによる、被加熱物上面の温度低下を防ぐことができる。これにより、容器5内の空間温度Taも素早く予熱温度Tpまで上昇し、被加熱物全体の温度ムラをなくすことができ、被加熱物と空間含めた容器5全体を均一に加熱することが可能となる。
【0042】
なお、加熱制御部81は、炊飯量が少量と判定された場合、側面コイル32への投入電力を低減させることに替えて、側面コイル32による加熱を停止させてもよい。この場合は、側面温度Tsは予熱温度Tp以下に低下する。そして、側面温度Tsが予熱温度Tp以下に低下した場合に、低電力で側面コイル32を駆動し、側面温度Tsが予熱温度Tpとなるよう制御してもよい(図3)。
【0043】
図6に戻って、ステップS4以降は、予熱工程、昇温工程、沸騰維持工程、および蒸らし工程が実行され、炊飯工程の終了により(S5:YES)、本制御が終了する。昇温工程、沸騰維持工程および蒸らし工程においては、炊飯量が少量の場合に対応した加熱制御が行われる。詳しくは、各工程における底面コイル31および側面コイル32の投入電力、および各工程の時間などが、炊飯量が少量の場合の設定とされ、例えば側面コイル32は、最大火力での加熱は行わないよう制御される。
【0044】
一方で、側面コイル32の最初の駆動時に検出された側面温度Tsが閾値温度Th未満である場合(S2:NO)は、炊飯量が中量または多量であると判定される。そして、底面温度センサ41で検出された底面温度Tbが予熱温度Tpに達するまでの時間tが閾値時間t以下であるか否かが判断される(S6)。時間tが閾値時間t以下の場合(S6:YES)、炊飯量が中量であると判定され(S7)、時間tが閾値時間t以下でない場合(S6:NO)、炊飯量が多量であると判定される(S8)。
【0045】
図8は、炊飯量が中量または多量の場合の予熱工程における側面コイル32と側面温度センサ42の入出力を示す図である。図8において、下のグラフは側面コイル32への投入電力を示し、上のグラフは側面温度センサ42の出力信号の電圧を示す。図8に示すように、炊飯量が中量または多量である場合、側面コイル32に電力が投入されると、側面温度センサ42の出力信号の電圧は徐々に上昇する。加熱制御部81は、炊飯量判定部83により炊飯量が中量または多量と判定された場合、図8に示すように側面コイル32への投入電力を低減させることなく、予熱工程を継続する。ここでは、加熱制御部81は、側面温度Tsが予熱温度Tpを維持するように、底面コイル31と側面コイル32とをオンオフ制御する(図4)。
【0046】
図6に戻って、ステップS7およびS8以降は、予熱工程、昇温工程、沸騰維持工程および蒸らし工程が実行される。また、本実施の形態の加熱制御部81は、炊飯量が中量または多量の場合、以降の工程で、側面温度Tsの変化に応じて(S9)、側面コイル32への投入電力を変更する(S10)。
【0047】
図9は、側面温度Tsの変化を説明する図である。図9の実線は、容器5の底面温度Tbの理想的な温度推移を示し、被加熱物の量によって異なる。図9に破線で示すように、炊飯工程において側面温度Tsが変化する場合がある。例えば、予熱工程時に米200が吸水することで、被加熱物の上面の位置が下がることがある。また、昇温工程時には、米200の糊化が急速に進むため、米200の吸水が進み、被加熱物の上面の位置が下がることがある。沸騰維持工程時も同様に、余分な水の蒸発により被加熱物の上面の位置が下がる。ここで、炊飯量が少量に近い中量である場合、何れかの工程の途中で側面コイル32の位置に被加熱物がなくなり、中量に対応する加熱制御を続けると、側面温度Tsが上昇し、側面5cに空焚きが発生し、容器5が損傷してしまう。または、何らかの要因で、炊飯量が少量にもかかわらず中量と誤判定された場合も、中量に対応する加熱制御が行われることで、側面5cに空焚きが発生してしまう。
【0048】
また、昇温工程および沸騰維持工程において、被加熱物の上面の位置は変化しなくとも、おねばが発生することで、容器5の側面5cと接する被加熱物が水201から米200またはおねばなどの他の物質に変わる。この場合、被加熱物の熱伝達率に変化が起こり、側面温度Tsが低下することがある。この場合は、容器5の上下の加熱ムラにより糊化が不均一となり、食味が低下する。なお、側面温度Tsの温度変化が起こるタイミングは、図9に示す例に限らず、炊飯工程の中のどのタイミングでも起こりうる。
【0049】
そこで、加熱制御部81は、側面温度Tsが、容器5の理想的な温度推移から変化した場合(S9:YES)、側面コイル32への投入電力を変更する(S10)。具体的には、側面温度Tsが各工程の理想温度を超える場合は、側面コイル32への投入電力を低減させることで、側面5cの空焚きを防止する。ここでは、加熱制御部81は、側面温度Tsが各工程の理想温度となるように、側面コイル32への投入電力を設定する。また、側面温度Tsが各工程の理想温度を下回る場合は、側面コイル32への投入電力を増加させることで、均一な加熱を実現する。
【0050】
なお、加熱制御部81は、側面温度Tsの温度が変化した場合、側面コイル32への投入電力を低減または増加させることに替えて、加熱制御の設定を切替えてもよい。例えば、側面温度Tsの温度が上昇した場合であって、炊飯量が中量の場合は、少量に対応する加熱制御に切替え、側面温度Tsの温度が低下した場合であって、炊飯量が多量の場合は、中量に対応する加熱制御に切替えてもよい。このように、被加熱物の上面の位置または状態の変化に対応する側面温度Tsの変化に応じて、側面コイル32への投入電力を増減させることで、側面温度Tsの急激な上昇を防ぐとともに、炊飯による変化に合わせた均一な加熱を実施することが可能となる。
【0051】
図6に戻って、炊飯工程が終了するまで(S11:NO)、各工程においてステップS9~ステップS11が繰り返され、炊飯工程が終了すると(S11:YES)、本制御を終了する。このように、炊飯工程の各工程において、側面温度Tsに応じて側面コイル32への投入電力を変化させることで、均一な加熱に加えて、工程に応じた最適な加熱を実施することができ、より食味の良い米飯とすることができる。
【0052】
図10は、実施の形態1に係る炊飯器100における側面温度センサ42の配置を説明する図である。図10に示すように、側面温度センサ42は、側面コイル32の下端よりも上方に配置される。より詳しくは、側面温度センサ42は、側面コイル32の下端よりも上方であって、側面コイル32の上端よりも下方に配置される。このように、側面温度センサ42を側面コイル32の近傍に配置することで、側面5cの温度を迅速にかつ正確に検出することができる。
【0053】
より好ましくは、側面温度センサ42は、側面コイル32の中央よりも上側であって、かつ側面コイル32の上端より下側の領域420に配置されるとよい。側面温度センサ42を側面コイル32の中央よりも下側に配置すると、側面コイル32の上部の容器5の温度を正確に検出できない。そのため、側面温度Tsに基づいた加熱制御を行った場合に、容器5の上部の温度が高くなりすぎることがある。この場合、側面コイル32の上端まで被加熱物がない場合は、側面コイル32の上部に対応する側面5cにおいて空焚きが発生する恐れがある。また、側面コイル32の上端まで被加熱物があったとしても、容器5の上部の被加熱物が加熱されすぎることにより、その部分の米200の糊化が進んでしまい、炊飯物の食味の低下などの影響が生じる。
【0054】
側面温度センサ42を図10に示す領域420に配置することで、被加熱物の量に関わらず、空焚きの防止と、容器5全体の均一加熱と最大加熱により、食味の向上が可能となる。より正確に側面温度Tsを検出するためには、側面温度センサ42を側面コイル32の略中央に配置することが望ましい。側面温度センサ42が側面コイル32の上端に配置された場合、空焚きに関しては正確に検出できるが、被加熱物の上面の位置が側面コイル32の中央より下であった際に、実際は起こらなくとも空焚きが発生すると判断してしまう。これにより、側面コイル32への投入電力を低下させてしまい、効率よく加熱ができなくなる。そのため、領域420の中でも、なるべく中央に近い位置に側面温度センサ42を配置することが望ましく、中央が最も望ましい。なお、側面温度センサ42を配置できる場所は、側面コイル32が配置されてない場所になるため、側面コイル32のターン数または配置の仕方によって、最適な位置に配置するものとする。
【0055】
以上のように、本実施の形態の炊飯器100では、側面コイル32の近傍に配置された側面温度センサ42により、容器5の側面5cの温度を迅速にかつ正確に検出することができる。その結果、側面温度センサ42の検出結果を用いた炊飯量判定の精度を向上させることができる。また、側面温度Tsに応じて側面コイル32の出力を変更することで、側面コイル32の位置に被加熱物がない場合に、側面コイル32の駆動によって一気に容器5が加熱され、側面5cが空焚きとなることを抑制できる。また、炊飯量が多量の場合は、被加熱物全体を強く加熱するために、底面コイル31だけでなく側面コイル32からも最大火力を投入することができる。その結果、底面5bと側面5cの全体加熱により、容器5内の被加熱物全体を加熱することで、かまどのような美味しいご飯を炊くことが可能となる。すなわち、本実施の形態では、空焚きの防止と、側面5cからの最大加熱量の増加を両立することができる。
【0056】
(変形例1-1)
なお、容器5の形状は図1に示すものに限定されず、変形可能である。図11は、変形例1-1に係る炊飯器100の容器5Aの断面模式図である。図11に示すように、容器5Aの側面5cは高さ方向が大きくなるにつれて内径が広がる傾斜部52を有していてもよい。このような形状である場合、容器5Aの底面5bの面積が小さくなるため、底面コイル31による底面5bの発熱密度が上昇する。さらに、側面コイル32においても、容器5Aに対する側面コイル32の投影面積を広く取ることができるため、側面5cの発熱密度が上昇する。すなわち、本変形例のように側面5cに傾斜部52を設けることで、容器5A全体に大きな火力を投入することができる。さらに、傾斜部52を設けることで、底面5bおよび側面5cから発生する沸騰気泡の発生量が多くなり、発生した気泡が水面まで上昇する間に多くの米200の間を通ることで、容器5Aの中心まで全体を均一に加熱できる。
【0057】
(変形例1-2)
また、底面コイル31と、側面コイル32は、それぞれ1つの加熱コイルで構成されてもよいし、2つ以上の複数のコイルに分割されてもよい。図12は、変形例1-2に係る炊飯器100における側面コイル32Aの配置を説明する図である。図12に示すように、変形例1-2の側面コイル32Aは、2つに分割された第1側面コイル32aと、第2側面コイル32bとからなる。第1側面コイル32aおよび第2側面コイル32bは、個別に駆動制御される。本変形例のように、側面コイル32Aを複数に分割することで、炊飯量に応じて側面コイル32Aをより細かく駆動することができ、容器5の最適な領域のみを加熱することができる。これにより、側面5cの空焚きの防止と、炊飯量に応じた最大加熱量の投入を両立することができる。
【0058】
例えば、実施の形態1のように側面コイル32が1つの場合、すなわち分割されていない場合、炊飯量が側面コイル32の中間の位置にある場合、空焚き防止のために側面コイル32を最大火力で加熱することができない。これに対し、本変形例の側面コイル32Aのように、複数に分割されていれば、局所的に側面5cを最大火力で加熱することが可能となる。また、側面コイル32を3つ以上に分割することで、より細かな加熱が可能となる。
【0059】
また、図12に示すように、側面温度センサ42は、第1側面コイル32aおよび第2側面コイル32bのそれぞれに設けられてもよい。これにより、第1側面コイル32aおよび第2側面コイル32bの駆動による温度変化を正確に検出することができる。なお、側面コイル32Aの分割数に関わらず、側面温度センサ42は1つであってもよい。これにより、側面温度センサ42の数が増えることによる組立性の悪化、コイル形状の制限またはコスト上昇などを抑制することができる。側面温度センサ42が1つの場合、下側に配置される第2側面コイル32bの下端より上側であって、上側に配置される第1側面コイル32aの上端より下側に設けられるとよい。より好ましくは、領域420Aに設けられるとよく、側面コイル32Aの略中央が最も望ましい。
【0060】
また、側面コイル32が2つ以上に分割されている場合、コイルの分割数に合わせて、第2インバータ86を2つ以上備えてもよい。これにより、炊飯量に応じて駆動させる底面コイル31および側面コイル32の全てに、最大加熱量を投入することができる。
【0061】
(変形例1-3)
また、容器5の底面5bの形状は、平面視で円形、楕円形または多角形の何れであってもよい。容器5の底面5bの形状が楕円形の場合、側面温度センサ42は、長辺側の側面5cに設けられるとよい。または、側面温度センサ42を、長辺側および短辺側の両方に設けてもよい。容器5の底面5bの形状が楕円形の場合は、円形の場合よりも容器5内を均一に加熱することが難しい。そこで、側面温度センサ42により検出された側面温度Tsを用いて側面コイル32の制御を行うことで、均一な加熱を実現することができる。
【0062】
実施の形態2.
実施の形態2について説明する。実施の形態2では、炊飯量判定部83における炊飯量の判定方法が実施の形態1と相違する。実施の形態2における炊飯器100の構成およびその他の制御は、実施の形態1と同じである。
【0063】
本実施の形態の予熱工程では、まず、底面コイル31が駆動され、容器5の底面温度Tbが上昇して第1温度に達した場合、底面コイル31への電力を停止(オフ)する。そして、底面温度Tbが第1温度よりも低い第2温度まで低下した場合、底面コイル31へ電力を投入(オン)する。このように、底面温度Tbに応じて、底面コイル31のオンオフ制御が繰り返され、容器5の温度が第1温度と第1温度よりも低い第2温度との間に維持される。
【0064】
底面コイル31の加熱が停止される時間は、容器5に投入された被加熱物の炊飯量によって異なり、炊飯量が多いほど停止時間は短くなる。そこで、炊飯量判定部83は、底面コイル31への電力の投入が停止している1区間の加熱停止時間を時間計測部7にて計測し、判定閾値より大きい場合に、炊飯量が少量であると判定する。判定閾値は、予め炊飯量が少量のときの1区間の加熱停止時間を実験またはシミュレーションによって求めて設定されたものであり、記憶部84に記憶される。なお、判定閾値を2つ設け、少量または極少量といったように2段階で判別してもよいし、3つ以上の判定閾値を設け、3段階以上に炊飯量を判定してもよい。
【0065】
被加熱物が少量でない場合、以降の予熱工程において、底面コイル31と側面コイル32とが駆動される。そして、容器5の底面温度Tbが上昇して第1温度に達した場合、底面コイル31への電力を停止(オフ)し、底面温度Tbが第1温度よりも低い第2温度まで低下した場合、底面コイル31へ電力を投入(オン)する。同様に、容器5の側面温度Tsが上昇して第1温度に達した場合、側面コイル32への電力を停止(オフ)し、側面温度Tsが第2温度まで低下した場合、側面コイル32へ電力を投入(オン)する。このように、底面温度Tbおよび側面温度Tsに応じて、底面コイル31および側面コイル32のオンオフ制御が繰り返され、容器5の温度が第1温度と第1温度よりも低い第2温度との間に維持される。
【0066】
この場合、側面コイル32によって容器5の側面5c、すなわち被加熱物の上部が加熱されるため、底面コイル31のみで加熱した場合と、容器5の温度変化に差が生じる。底面コイル31の1区間の加熱停止時間のみを用いて判定を行った場合、中量か多量かといった大きな差を判定することは可能である。しかしながら、より細かい炊飯量の判定を行おうとした場合、底面温度センサ41の誤差等の様々な要因が重なることにより、判定のための差を見出すことは困難である。そこで、本実施の形態の炊飯量判定部83は、より精度よく炊飯量を判定するために、底面コイル31の1区間の加熱停止時間tbと、側面コイル32の1区間の加熱停止時間tsijとを組み合わせて炊飯量を判定する。なお、以下の説明において底面コイル31の1区間の加熱停止時間tbを「底面加熱停止時間tb」と称し、側面コイル32の1区間の加熱停止時間tsijを「側面加熱停止時間tsij」と称する。
【0067】
図13は、被加熱物が中量である場合の予熱工程における加熱状態の遷移を示す図であり、図14は、被加熱物が多量である場合の予熱工程の加熱状態の遷移を示す図である。図13および図14において、下のグラフの実線は底面コイル31の投入電力Vbを示し、破線は側面コイル32への投入電力Vsを示す。また、上のグラフの実線は底面温度Tbを示し、破線は側面温度Tsを示す。
【0068】
図13および図14に示すように、容器5の側面5cは周囲から熱を奪われやすく、底面5bよりも冷えるのが早いため、側面加熱停止時間tsijは、底面加熱停止時間tbよりも短くなる。また、側面5cの加熱により、わずかだが底面5bの温度も上昇する。そのため、底面加熱停止時間tbの間に、複数の側面加熱停止時間tsijが存在する。炊飯量が多くなるにつれ、側面5cに位置する被加熱物の量が多くなるため、側面温度Tsは低下しやすくなる。従って、側面加熱停止時間tsijは炊飯量が多くなるにつれて短くなる。一方、底面5bは、側面5cの加熱によってわずかに温度が上昇するが、側面コイル32による熱は、そのほとんどが側面5cの加熱に使用されるため、炊飯量が多くなるにつれて底面温度Tbも低下しやすくなる。すなわち、底面加熱停止時間tbも炊飯量が多くなるにつれて短くなる。
【0069】
さらに、1つの底面加熱停止時間tbに含まれる複数の側面加熱停止時間tsijを足し合わせた時間(Σtsij)についても、炊飯量が多くなるにつれて短くなる。反対に、1つの底面加熱停止時間tbにオンされる側面コイル32のオン時間(tb-Σtsij)は長くなる。さらに、1つの底面加熱停止時間tbに、側面コイル32がオンする回数は、経過時間が同じ場合、炊飯量が多いほど多くなる。図13および図14に示す例の場合、1つの底面加熱停止時間tbにおける側面コイル32のオンの回数は、炊飯量が中量のときは3回、多量のときは4回である。
【0070】
そこで、炊飯量判定部83は、炊飯量によって変化する上記のパラメータ(tb、tsij、Σtsij、(tb-Σtsij)、側面コイル32のオン回数)に基づき、炊飯量を判定する。図15は、実施の形態2に係る炊飯量判定に用いられるパラメータをまとめた表である。炊飯量判定部83は、パラメータごとに判定閾値を設け、判定閾値と比較することで炊飯量を判定する。この場合、中量か多量かといった2段階で判別してもよいし、より細かく3段階以上に炊飯量を判定してもよい。また、パラメータごとに、どのくらいの細かさで判定するかを分けてもよい。例えば、側面加熱停止時間tsijは炊飯量によって大きく差が出ないため、2段階で判別してもよい。各判定閾値の値は、実験データまたはシミュレーションによって設けることができる。
【0071】
一例として、炊飯量判定部83は、全てのパラメータに対して、判定閾値との比較を行ない、中量かまたは多量かを判定する。そして、パラメータごとに判定結果に差が生じた場合は、最も判定結果が多いものを炊飯量として判定する。または、空焚き発生の可能性を防ぐため、炊飯量判定部83は、少ない合数側の判定結果を炊飯量として判定してもよい。また、2段階以上判定結果に差が生じた場合は、その中間の判定結果を炊飯量として判定してもよい。炊飯量判定部83は、判定結果の割合に基づいて、パラメータに重みづけを行ってもよい。このように、複数のパラメータを組み合わせて炊飯量の判定を行うことにより、炊飯量を精度よく安定して判定することができる。
【0072】
また、炊飯量判定部83は、炊飯量判定を実施する場合、炊飯開始から一定の時間が経過したタイミングである判定タイミングtaにおける、各パラメータの値を使用する。または、炊飯量判定部83は、一定の時間が経過した時点ですでに確定している各パラメータの値、すなわち判定タイミングtaが含まれる一つ前の区間における各パラメータの値を使用してもよい。
【0073】
どのタイミングの値を使用するかは、パラメータごとに決定してもよい。例えば、底面加熱停止時間tbの間に計測される側面加熱停止時間tsijの総時間(Σtsij)、および底面加熱停止時間tbの間に側面コイル32がオンする回数などは、底面コイル31の加熱停止区間の途中では取得できない。そのため、判定タイミングtaが底面コイル31の加熱停止区間の途中である場合、これらの値を得るためにしばらく時間がかかってしまい、その他のパラメータとの差が生じてしまう恐れがある。そこで、これらのパラメータについては、判定タイミングtaが含まれる一つ前の区間における値を使用してもよい。または、判定タイミングtaにおける値を使用するために、底面加熱停止時間tbおよび側面加熱停止時間tsijの値を、判定タイミングtaよりも後の値にずらしてもよい。これにより、全てのパラメータにおいて、同じタイミングの値で炊飯量を判定でき、パラメータごとの判定結果の差が出にくくなる。
【0074】
また、予熱工程の初期段階では、炊飯量の差による各パラメータの差が出にくいため、判定タイミングtaを経過時間ごとに複数回設けてもよい。図16は、実施の形態2において判定タイミングを複数設ける場合の例を説明する図である。図16に示すように、炊飯量判定部83は、第1判定、第2判定および第3判定の3回の判定を行い、炊飯量を判定してもよい。このとき、第1判定と第2判定とで、判定結果に2段階以上の差が生じた場合、炊飯量判定部83は、その中間の判定結果を炊飯量とする。第1判定と第2判定との差が1段階の差であれば、側面5cの空焚き発生の可能性を抑制するために、炊飯量判定部83は、少ない方の合数を炊飯量として判定する。
【0075】
炊飯の開始直後であって、底面コイル31および側面コイル32の駆動を開始する前に、底面温度センサ41で検出される温度は被加熱物(水201)の温度を表し、蓋体10に設けた内部温度センサ16で検出される温度は空間温度(室温)を表す。季節または部屋の温度状態、もしくは冷蔵室などで冷えた水を使うこと等によって、水温および室温が変化すると、底面加熱停止時間tbおよび側面加熱停止時間tsijが変化する場合がある。そのため、炊飯量判定部83は、底面コイル31および側面コイル32の駆動を開始する前に、底面温度センサ41で検出される温度(水温)および内部温度センサ16で検出される温度(室温)に応じて、各パラメータの判定閾値を補正してもよい。
【0076】
補正は、判定閾値に係数をかけることで行う。または、予めプログラムされたテーブルを用いて、水温および室温に対応した判定閾値が選択されるようにしてもよい。例えば冬季で水温が低く、室温も低い状態の時には、一般的に底面加熱停止時間tbおよび側面加熱停止時間tsijは短くなる傾向にあるため、判定閾値を短く補正する。また、例えば夏季で水温が高く、室温も高い状態の時には、一般的に底面加熱停止時間tbおよび側面加熱停止時間tsijは長くなるため、判定閾値を長く補正する。これにより、周囲環境に関わらず、正確な炊飯量の判定が可能となる。
【0077】
実施の形態3.
実施の形態3について説明する。実施の形態3では、側面コイル32Bおよび底面コイル31Aの形状において実施の形態1と相違する。実施の形態3における炊飯器100の構成およびその他の制御は、実施の形態1と同じである。
【0078】
図17および図18は、実施の形態3に係る側面コイル32Bの配置を説明する図である。図17は、容器5を側面視した図であり、図18は、容器5を図17のA-A断面で切断した縦断面模式図である。実施の形態1の側面コイル32は、容器5の外周に沿って円形に巻かれており、容器5の中心軸と側面コイル32の中心軸は一致していた。実施の形態1では、容器5全体を加熱することが可能であるものの、加熱量を強くすることは難しかった。
【0079】
図18に示すように、本実施の形態の側面コイル32Bは、2つに分割された第1側面コイル32B1と第2側面コイル32B2とからなる。図17および図18に示すように、第1側面コイル32B1は、第1側面コイル32B1の中心軸CL1と容器5の中心軸CL2とが交差するように配置される。言い換えると、第1側面コイル32B1は、側面5cと平行な面上で巻かれて構成される。第2側面コイル32B2は、第1側面コイル32B1と対向して配置され、第1側面コイル32B1と同様に、中心軸(図示なし)が容器5の中心軸CL2と交差するように配置される。このような構成とすることで、容器5の局所的な加熱量を増やすことができる。また、第1側面コイル32B1と第2側面コイル32B2とを切替えて駆動させることで、平均的に全体の最大加熱量を増やすことができる。
【0080】
図19は、実施の形態3に係る側面温度センサ42が配置される領域420Bを示す図である。側面温度センサ42は、第1側面コイル32B1の下端よりも上方に配置される。より詳しくは、側面温度センサ42は、第1側面コイル32B1の下端よりも上方であって、第1側面コイル32B1の上端よりも下方に配置される。このように、側面温度センサ42を第1側面コイル32B1の近傍に配置することで、側面5cの温度を迅速にかつ正確に検出することができる。
【0081】
また、より好ましくは、側面温度センサ42は、第1側面コイル32B1の中心軸よりも上側であって、かつ第1側面コイル32B1の上端より下側の領域420Bに配置されるとよい。また、空焚きの防止と、容器5の側面5cの最大加熱を実現させるためには、領域420Bの中でも、なるべく第1側面コイル32B1の中心軸CL1に近い位置に側面温度センサ42を配置することが望ましい。また、図17および図18に示すように側面温度センサ42を第1側面コイル32B1の中心軸CL1上に配置することが最も望ましい。側面温度センサ42を第1側面コイル32B1の中心軸CL1上に配置することで、より正確に側面温度Tsを検出でき、炊飯量の判定精度の向上、および細やかな温度制御の実現を図ることができる。
【0082】
側面温度センサ42を配置できる場所は、第1側面コイル32B1が配置されてない場所になるため、第1側面コイル32B1のターン数、配置の仕方、または形状によって、最適な位置に配置するものとする。また、第2側面コイル32B2にも側面温度センサ42を設けてもよい。この場合の側面温度センサ42の配置は、第1側面コイル32B1に対する配置と同じである。第1側面コイル32B1および第2側面コイル32B2のそれぞれに側面温度センサ42を設けることで、正確に側面5cの空焚きを防止することができる。第2側面コイル32B2に側面温度センサ42を設けない場合、加熱制御部81は、第1側面コイル32B1の駆動によって得られる側面温度Tsから炊飯量を判定し、第2側面コイル32B2の駆動を制御する。
【0083】
また、図17および図18では、側面コイル32Bの形状を楕円形としたが、これに限定されるものではなく、円形、四角形または三角形などであってもよい。ただし、容器5の側面5cと側面コイル32Bとの距離を全体で一定にした方が、側面5cの加熱ムラが起きにくい。そのため、側面5cと側面コイル32Bとの距離を一定に保ちやすく、コイルの形状として加工がしやすい楕円形もしくは円形とすることが望ましい。
【0084】
図20は、実施の形態3に係る底面コイル31Aの配置を説明する図である。図20は、容器5の底面図である。図20に示すように、本実施の形態の底面コイル31Aは、第1底面コイル31aと第2底面コイル31bとの2つに分割される。第1底面コイル31aと第2底面コイル31bは、それぞれ同時にまたは交互に駆動される。
【0085】
本実施の形態では、2つに分割された底面コイル31Aと、側面コイル32Bとを切替えて制御することで、昇温工程において、容器5の内部に上下の対流および周方向の対流を発生させることができ、対流による米200への加熱と糊化を促進できる。このとき、対角にある第1底面コイル31aと第2側面コイル32B2、または第2底面コイル31bと第1側面コイル32B1とを同時に駆動させることで、対流をより活発にさせることが可能である。また、底面コイル31Aと、側面コイル32Bとの間の距離があるために、音鳴りが発生することなく、底面5bと側面5cを同時に最大加熱することが可能となる。
【0086】
以上が実施の形態の説明であるが、上記の実施の形態は、種々に変形することが可能である。また、各実施の形態に示す構成のうち、組合せ可能な構成を任意に組合せることも可能である。例えば、実施の形態1の炊飯量判定においては、側面温度Tsと底面温度Tbの両方を使用するものとしたが、側面温度Tsのみの情報を使用してもよい。また炊飯工程において、どの情報を使用するかを変化させてもよい。例えば、炊飯量が少量の場合は、炊飯工程において側面温度Tsを加熱制御に用いなくてもよい。ただし、この場合の側面温度Tsの監視は行うものとする。
【符号の説明】
【0087】
1 本体、2 容器カバー、2a、2b 孔部、2c 肩部、5、5A 容器、5a 鍔部、5b 底面、5c 側面、6 ヒンジ部、7 時間計測部、8 制御部、9 蓋パッキン、10 蓋体、11 外蓋、11a パッキン、12 内蓋、12a 孔部、12b 蒸気口、13 係止材、14 カートリッジ、14a 蒸気取入口、14b 蒸気排出口、15 操作表示部、16 内部温度センサ、31、31A 底面コイル、31a 第1底面コイル、31b 第2底面コイル、32、32A、32B 側面コイル、32a、32B1 第1側面コイル、32b、32B2 第2側面コイル、41 底面温度センサ、42 側面温度センサ、52 傾斜部、81 加熱制御部、82 表示制御部、83 炊飯量判定部、84 記憶部、85 第1インバータ、86 第2インバータ、100 炊飯器、200 米、201 水、420、420A、420B 領域。
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