(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】作業機械の油圧駆動装置
(51)【国際特許分類】
F15B 20/00 20060101AFI20240209BHJP
F15B 11/08 20060101ALI20240209BHJP
E02F 9/22 20060101ALN20240209BHJP
【FI】
F15B20/00 D
F15B11/08 A
E02F9/22 E
(21)【出願番号】P 2020051498
(22)【出願日】2020-03-23
【審査請求日】2023-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】503032946
【氏名又は名称】住友重機械建機クレーン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上谷 礼輔
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-308073(JP,A)
【文献】特開2018-169015(JP,A)
【文献】特開2003-322112(JP,A)
【文献】特開2020-002625(JP,A)
【文献】特開平07-019207(JP,A)
【文献】特開2011-190072(JP,A)
【文献】特開2012-237423(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/00-11/22
F15B 20/00-21/12
F15B 21/14
E02F 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧アクチュエータと、
一対のパイロットポートを有し、前記一対のパイロットポートのうち一方または他方に出力されたパイロット圧により、前記油圧アクチュエータの動作を制御する制御弁と、
前記パイロット圧の出力先を
当該パイロット圧に基づいて検出する出力先検出手段と、
前記制御弁の動作不良を判定する判定手段と、を備え、
前記判定手段は、前記出力先検出手段により前記パイロット圧の出力先が一方の前記パイロットポートであることが検出されて所定時間が経過した後に、他方の前記パイロットポートに作用する圧力に基づいて、前記制御弁の動作不良を判定する
ことを特徴とする作業機械の油圧駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械の油圧駆動装置において、
前記出力先検出手段は、一方の前記パイロットポートに作用する前記パイロット圧が第1閾値以上である場合に、前記パイロット圧の出力先が一方の前記パイロットポートであることを検出することを特徴とする作業機械の油圧駆動装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の作業機械の油圧駆動装置において、
前記判定手段は、他方の前記パイロットポートに作用する圧力が第2閾値以上である場合に、前記制御弁が動作不良であると判定することを特徴とする作業機械の油圧駆動装置。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の作業機械の油圧駆動装置において、
前記判定手段により前記制御弁が動作不良であると判定された場合であっても、前記油圧アクチュエータの動作を継続することを特徴とする作業機械の油圧駆動装置。
【請求項5】
第1油圧アクチュエータと、
一対の第1パイロットポートを有し、前記一対の第1パイロットポートのうち一方または他方に出力された第1パイロット圧により、前記第1油圧アクチュエータの動作を制御する第1制御弁と、
第2油圧アクチュエータと、
一対の第2パイロットポートを有し、前記一対の第2パイロットポートのうち一方または他方に出力された第2パイロット圧により、前記第2油圧アクチュエータの動作を制御する第2制御弁と、
前記第1パイロット圧および前記第2パイロット圧の出力先を
当該第1パイロット圧および前記第2パイロット圧に基づいて検出する出力先検出手段と、
前記第1制御弁および前記第2制御弁の動作不良を判定する判定手段と、を備え、
前記判定手段は、前記出力先検出手段により前記第1パイロット圧の出力先が一方の前記第1パイロットポートであることが検出されて所定時間が経過した後に、前記第2パイロットポートのうち一方または他方に作用する圧力に基づいて、前記第2制御弁の動作不良を判定することを特徴とする作業機械の油圧駆動装置。
【請求項6】
請求項5に記載の作業機械の油圧駆動装置において、
前記判定手段は、前記所定時間が経過した後に、他方の前記第1パイロットポートに作用する圧力に基づいて、前記第1制御弁の動作不良を判定することを特徴とする作業機械の油圧駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械の油圧駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の従来技術として、例えば特許文献1には、制御弁に作用するパイロット圧をそれぞれ圧力センサで検出すると共に、操作レバーの操作量に応じた制御圧を演算し、圧力検出値と制御圧とを比較して、パイロット圧を減圧する電磁比例減圧弁の異常を判定する構成が記載されている。この特許文献1では、電磁比例減圧弁が異常と判定されると、油圧アクチュエータの作動が停止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、操作レバーを操作すると、制御弁に設けられた一対のパイロットポートのうち、パイロット圧が作用している側と反対側のパイロットポートに、サージ圧が生じることがある。このサージ圧は、制御弁が正常に動作した場合であっても、操作レバーの操作次第で生じ得る。しかしながら、特許文献1では、制御弁の動作が正常であるにも関わらず、制御弁に作用するサージ圧を検出して、制御弁が動作不良であると誤判定される可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、制御弁の動作不良を正しく検出できる作業機械の油圧駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る作業機械の油圧駆動装置の一態様は、油圧アクチュエータと、一対のパイロットポートを有し、前記一対のパイロットポートのうち一方または他方に出力されたパイロット圧により、前記油圧アクチュエータの動作を制御する制御弁と、前記パイロット圧の出力先を当該パイロット圧に基づいて検出する出力先検出手段と、前記制御弁の動作不良を判定する判定手段と、を備え、前記判定手段は、前記出力先検出手段により前記パイロット圧の出力先が一方の前記パイロットポートであることが検出されて所定時間が経過した後に、他方の前記パイロットポートに作用する圧力に基づいて、前記制御弁の動作不良を判定することを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、制御弁の動作不良を正しく検出できる。なお、上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明が適用されるクレーンの側面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る油圧駆動装置の油圧回路図である。
【
図3】第1実施形態に係る方向制御弁の動作不良の判定処理の手順を示すフローチャートである。
【
図4】第1実施形態の変形例に係る方向制御弁の動作不良の判定処理の手順を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る油圧駆動装置の油圧回路図である。
【
図6】第2実施形態に係る方向制御弁の動作不良の判定処理の手順を示すフローチャートである。
【
図7】第2実施形態に係る方向制御弁の動作不良の判定処理の手順を示すフローチャートである。
【
図8】第2実施形態に係る方向制御弁の動作不良の判定処理の手順を示すフローチャートである。
【
図9】第2実施形態に係る方向制御弁の動作不良の判定処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明に係る油圧駆動装置の実施形態について説明する。まず、本発明が適用される作業機械の代表例であるクレーンについて説明する。
図1は、クレーンの側面図である。
図1に示すように、クレーンは、走行体101と、旋回装置102を介して走行体101上に旋回可能に搭載された旋回体103と、旋回体103の先端部に起伏可能に取り付けられたブーム104と、運転室108と、を有する。
【0010】
旋回体103には巻上ドラム3が搭載され、巻上ドラム3の駆動により巻上ロープ106が巻き取りまたは繰り出され、ブーム104の先端から吊り下げられたフック107を介して吊り荷が昇降する。運転室108には、操作装置として、オペレータが巻上ドラム3を操作するための巻上操作レバー13、旋回操作レバー(不図示)、走行操作レバー53(
図5参照)、クレーンの制御を行うコントローラ20、モニタ30等が設けられている(
図2参照)。巻上操作レバー13や走行操作レバー53は、例えば油圧式レバーであるが、電気式レバーであっても良い。
【0011】
(第1実施形態)
次に、本発明の第1実施形態に係る油圧駆動装置について説明する。
図2は、本発明の第1実施形態に係る油圧駆動装置の油圧回路図である。
図2に示す油圧駆動装置は、巻上ドラム3を駆動するウインチ装置110と、ウインチ装置110を制御するコントローラ20と、モニタ30と、を含む。なお、
図2では、圧油の流れを実線で示し、電気信号を点線で示している。
【0012】
ウインチ装置110は、巻上ドラム3と、巻上ドラム3を駆動する油圧モータ(油圧アクチュエータ)1と、油圧モータ1に圧油を供給するメインポンプ12と、メインポンプ12から油圧モータ1への圧油の流れを制御する方向制御弁(制御弁)11と、油圧モータ1の駆動力を巻上ドラム3に伝達する遊星減速機2と、巻上ドラム3を制動する制動装置4とを有する。
【0013】
方向制御弁11は、巻上操作レバー13の操作方向、操作量に応じて制御される。すなわち、パイロット弁13a,13bは、巻上操作レバー13の操作方向、操作量に応じて操作される。なお、
図2において、「U」は巻上方向、「D」は巻下方向である。方向制御弁11は、その左右に一対のパイロットポート11a,11bを有する。そして、パイロットポンプ9からのパイロット圧油が、パイロット弁13aまたはパイロット弁13bを介してパイロットポート11a,11bに供給されることにより、方向制御弁11が制御される。
【0014】
方向制御弁11は、常態では中立位置Oにある。そして、巻上操作レバー13が巻上方向(U)に操作され、パイロットポート11aにパイロット圧油が供給されると、パイロット圧油の圧力であるパイロット圧Paがスプール(不図示)を図中の右側に移動させるように作用する。そして、方向制御弁11は左位置Aに切り換わる。
【0015】
一方、巻上操作レバー13が巻下方向(D)に操作され、パイロットポート11bにパイロット圧油が供給されると、パイロット圧Pbがスプールを図中の左側に移動させるよう作用する。そして、方向制御弁11は右位置Bに切り換わる。
【0016】
方向制御弁11が中立位置Oにある場合は、メインポンプ12から吐出された圧油は作動油タンク10へ戻る。方向制御弁11が左位置Aに切り換わると、メインポンプ12から吐出された圧油により油圧モータ1が正転し、方向制御弁11が右位置Bに切り換わると、油圧モータ1は逆転する。
【0017】
なお、メインポンプ12およびパイロットポンプ9は、エンジン(不図示)により駆動される。メインポンプ12は、可変容量型の油圧ポンプである。一方、パイロットポンプ9は、固定容量型の油圧ポンプである。
【0018】
また、ウインチ装置110は、ブレーキ切換弁5と、ポジティブブレーキ制御弁6と、モータブレーキ切換弁7と、モータブレーキシリンダ8と、作動油タンク10と、高圧選択弁14と、圧力センサ15a,15bと、を有する。
【0019】
油圧モータ1の出力軸は遊星減速機2に連結されており、油圧モータ1の出力軸が正転すると、遊星減速機2にて減速された回転数で巻上ドラム3が巻上方向に回転する。油圧モータ1の出力軸が逆転すると、巻上ドラム3が巻下方向に回転する。制動装置4は湿式多板ブレーキであり、巻上ドラム3の回転にブレーキをかける。
【0020】
ブレーキ切換弁5は、コントローラ20からの励磁信号によってソレノイドが励磁されると、パイロットポンプ9からのパイロット圧油を制動装置4に導く。ポジティブブレーキ制御弁6は、ブレーキペダル6aにより操作される制御弁であり、ブレーキペダル6aの操作量に応じた圧力のパイロット圧油を制動装置4に導く。
【0021】
モータブレーキ切換弁7は、モータブレーキシリンダ8に供給するパイロットポンプ9からのパイロット圧油の流通を許可または禁止する切換弁である。モータブレーキ切換弁7は、常態ではパイロット圧油の流通を禁止しており、巻上操作レバー13の操作によってパイロット弁13aまたはパイロット弁13bと、高圧選択弁14とを介してスプール駆動用のパイロット圧油が供給されると、モータブレーキシリンダ8に供給するパイロットポンプ9からのパイロット圧油の流通を許可する。
【0022】
モータブレーキシリンダ8は、油圧モータ1の回転を許可または禁止するブレーキ装置である。モータブレーキシリンダ8は、常態では油圧モータ1の回転を禁止しており、モータブレーキ切換弁7を介してパイロットポンプ9からのパイロット圧油が供給されるとブレーキを解除して油圧モータ1の回転を許可する。
【0023】
圧力センサ15a,15bは、巻上操作レバー13の操作の有無を判定するために、油路L1または油路L2内を流れるパイロット圧油の圧力(すなわち、パイロット圧Pa,Pb)を検出する。別言すれば、圧力センサ15a,15bは、巻上操作レバー13の操作に応じたパイロット圧Pa,Pbの出力先を検出している。このことは、圧力センサ15a,15bが、巻上操作レバー13の操作方向が巻上方向(U)と巻下方向(D)の何れであるかを検出していることと同義である。
【0024】
コントローラ20は、図示しないが、各種演算等を行うCPU、CPUによる演算を実行するためのプログラムを格納するROMやHDD等の記憶装置、CPUがプログラムを実行する際の作業領域となるRAM、および他の機器とデータを送受信する際のインタフェースである通信インタフェースを含むハードウェアと、記憶装置に記憶され、CPUにより実行されるソフトウェアとから構成される。コントローラ20の各機能は、CPUが、記憶装置に格納された各種プログラムをRAMにロードして実行することにより、実現される。
【0025】
コントローラ20には、圧力センサ15a,15bからセンサデータ(パイロット圧Pa,Pb)が入力される。コントローラ20は、圧力センサ15a,15bにて検出されたパイロット圧Pa,Pbに基づいて巻上操作レバー13の操作方向(パイロット圧の出力先)を検出すると共に、方向制御弁11の動作不良の有無を判定している。よって、コントローラ20は、本発明の出力先検出手段および判定手段として機能する。
【0026】
モニタ30は、コントローラ20と電気的に接続されており、コントローラ20から出力される信号に基づいて、例えばクレーンの運転状態や異常等の情報を画面に表示する。なお、モニタ30による報知のほか、スピーカ等により音声でオペレータに報知しても良い。さらに、異常等の情報をモニタ30以外の装置、例えば、管理室に設置された警報装置等に出力し、管理室にいる管理者に対して方向制御弁11の動作不良を報知しても良い。また、運転室108の外部に向けて音声による報知を行っても良い。
【0027】
次に、コントローラ20が実行する処理について説明する。
図3は、方向制御弁11の動作不良の判定処理の手順を示すフローチャートである。コントローラ20は、エンジンの始動(キースイッチON)により
図3に示す処理を開始し、この処理を所定の周期(例えば0.1秒毎)で繰り返し実行する。なお、コントローラ20は、
図3の処理により方向制御弁11が動作不良であることを判定した場合であっても、エンジンを停止せず、巻上操作レバー13の操作に応じた巻上ドラム3の回転を継続する。
【0028】
処理が開始されると、まず、コントローラ20は、圧力センサ15aから入力されたパイロット圧Paが閾値Pi1以上であるか否かを判定し(ステップS1)、パイロット圧Paが閾値Pi1以上である場合(ステップS1/Yes)、巻上操作レバー13の操作方向が巻上方向(U)であると判定する(ステップS2)。
【0029】
ここで、閾値Pi1(第1閾値)は、巻上操作レバー13の操作方向を判定するための閾値であり、本実施形態では、閾値Pi1を例えば0.5MPaに設定している。その理由は次の通りである。本実施形態では、パイロットポート11a,11bに、例えば0.5MPa~3.5MPaのパイロット圧が作用すると、方向制御弁11のスプールがパイロット圧に応じて移動するようになっている。方向制御弁11のスプール位置を切り換えるためには、パイロット圧Pa,Pbが、スプールが移動するための最低パイロット圧以上(すなわち、本実施形態では0.5MPa以上)になっている必要がある。言い換えると、パイロット圧Pa,Pbが最低パイロット圧以上であれば、巻上操作レバー13が巻上方向(U)または巻下方向(D)に操作されたとみなせる。
【0030】
そこで、ステップS1において、パイロット圧Paが閾値Pi1(=0.5MPa)以上である場合(ステップS1/Yes)には、コントローラ20は、巻上操作レバー13の操作方向が巻上方向(U)であると判定している(ステップS2)。
【0031】
ステップS2において、巻上操作レバー13の操作方向が巻上方向(U)であると判定されると、コントローラ20は、タイマーを作動させ(ステップS3)、所定時間Tが経過するまで待機する(ステップS4)。巻上操作レバー13を操作すると油路L1,L2にサージ圧が発生するため、巻上操作レバー13の操作直後は、パイロットポート11a,11bに作用するパイロット圧Pa,Pbは変動が大きい。そこで、サージ圧の影響が小さくなる程度の時間に設定された所定時間T(例えば1秒)が経過するまで、ステップS5の処理を実行しないようにしている。すなわち、巻上操作レバー13の操作から所定時間Tが経過するまで、方向制御弁11の動作不良の判定を遅延させるようにしている。
【0032】
所定時間Tが経過した場合(ステップS4/Yes)、コントローラ20は、パイロット圧Paの出力先であるパイロットポート11aと反対側のパイロットポート11bの圧力、すなわちパイロット圧Pbが閾値Pi2以上であるか否かを判定する(ステップS5)。
【0033】
ここで、閾値Pi2(第2閾値)は、方向制御弁11の動作不良の有無を判定するための閾値であり、本実施形態では、例えば0.3MPaに設定している。その理由は次の通りである。例えば、巻上操作レバー13を巻上方向(U)に操作した場合、パイロット圧Paの値は巻上操作レバー13の操作量に応じて上昇するが、パイロット圧Pbの値はほぼゼロである(巻下方向(D)に操作した場合には、その逆となる)。
【0034】
そのため、巻上操作レバー13を巻上方向(U)に操作しているにも関わらず、パイロット圧Pbの値がある程度上昇した場合には、パイロット圧油が何らかの原因によりパイロットポート11bに回り込んだ状態である可能性が高い。この状態は方向制御弁11の動作不良であり、早期に発見されることが望ましい。そこで、本実施形態では、方向制御弁11が作動するための最低パイロット圧未満であって、圧力センサ15a,15bの検出精度も考慮して、閾値Pi2=0.3MPaとしている。
【0035】
そして、パイロット圧Pbが閾値Pi2以上である場合(ステップS5/Yes)、コントローラ20は、方向制御弁11が動作不良であると判定し(ステップS6)、モニタ30に方向制御弁11が動作不良である旨を出力する。その結果、モニタ30によりオペレータに方向制御弁11の初期異常が報知される(ステップS7)。なお、パイロット圧Pbが閾値Pi2未満である場合(ステップS5/No)、コントローラ20は、処理を終了する。
【0036】
一方、ステップS1において、パイロット圧Paが閾値Pi1未満である場合(ステップS1/No)、コントローラ20は、パイロット圧Pbが閾値Pi1以上であるか否かを判定する(ステップS8)。パイロット圧Pbが閾値Pi1以上である場合(ステップS8/Yes)、巻上操作レバー13の操作方向が巻下方向(D)であると判定し(ステップS9)、タイマーを作動する(ステップS10)。
【0037】
所定時間Tが経過した場合(ステップS11/Yes)、コントローラ20は、パイロット圧Pbの出力先であるパイロットポート11bと反対側のパイロットポート11aの圧力、すなわちパイロット圧Paが閾値Pi2以上であるか否かを判定する(ステップS12)。パイロット圧Paが閾値Pi2以上である場合、コントローラ20は、ステップS6に進んで、上記したステップS6,S7の処理を実行する。なお、パイロット圧Paが閾値Pi2未満である場合(ステップS12/No)、コントローラ20は、処理を終了する。
【0038】
(効果)
以上説明したように、第1実施形態によれば、一対のパイロットポート11a,11bのうち、巻上操作レバー13の操作方向に対応するパイロットポートと反対側のパイロットポートに作用するパイロット圧(圧力)を検出し、所定時間Tの経過後にそのパイロット圧が閾値Pi2以上であるか否かを判定する構成としたので、方向制御弁11の動作不良の有無を正しく検出できる。
【0039】
より詳細には、方向制御弁11の動作が正常である場合、巻上操作レバー13を巻上方向(U)に操作すると、パイロット圧の出力先であるパイロットポート11aには所定のパイロット圧がかかるが、パイロット圧の出力先と反対側のパイロットポート11bにはパイロット圧がかからない。巻上操作レバー13を巻上方向(U)に操作したにも関わらず、パイロットポート11bにパイロット圧がかかる場合、何らかの影響でパイロットポンプ9からのパイロット圧油がパイロットポート11bに回り込んできた可能性が高い。例えば、高圧選択弁14が損傷した場合、パイロットポート11aに送られるべき圧油の一部が高圧選択弁14を介してパイロットポート11bに流入する場合が考えられる。
【0040】
しかし、このような現象が起きたとしても、オペレータは気付かない場合が多い。そのため、作業効率が低下していることに気付かずに、オペレータは作業を続けることになる。このような状況にあって、本実施形態では、
図3に示す処理によって、方向制御弁11の動作不良を正しくかつ早期に発見してメンテナンスを行うことで、作業効率の低下を防ぐことができる。
【0041】
加えて、巻上操作レバー13の操作が行われてから所定時間Tが経過するまで、コントローラ20は、パイロット圧と閾値Pi2との比較判定を行わないため、巻上操作レバー13の操作より生じるサージ圧により、誤って方向制御弁11が動作不良であると判定することがない。
【0042】
また、モニタ30により方向制御弁11が動作不良である旨が報知されるため、オペレータは後日、クレーンの運転前に方向制御弁11の周りの機器類や弁類を点検、交換することで、正常にクレーンを運転できる。よって、クレーンの作業効率の低下を防ぐことができる。
【0043】
例えば、上記の通りパイロット圧油が回り込んだ場合、巻上ドラム3の巻上スピードが定格速度に比べて低下する。その結果、メンテナンスを行わない場合、作業効率が低下することとなる。その点、本実施形態では方向制御弁11の動作不良を初期段階で正しく発見できるため、適宜メンテナンスを行うことで、作業効率の低下を防止できる。また、仮に方向制御弁11の動作不良が発見されたとしても、クレーンの運転自体は可能であるため、クレーン作業を妨げることもなく、使い勝手は良い。
【0044】
しかも、既存のクレーンに備えられているコントローラ20に、上記した判定処理のプログラムを追加するだけで良いので、改良のための追加コストを低減できる利点もある。また、上述したように、管理室等に方向制御弁11の動作不良を報知する構成にすれば、作業現場の管理者が容易にクレーンの状態を把握でき、メンテナンス等の計画を迅速に立てることもできる。
【0045】
(変形例)
ところで、巻上操作レバー13として電気式レバーを用いた場合、巻上操作レバー13の操作方向は、巻上操作レバー13の操作に応じて出力される操作信号(電気信号)から直接判定することができる。また、巻上操作レバー13にリミットスイッチ等を設けた場合は、巻上操作レバー13の操作方向はリミットスイッチの信号の有無で判定することができる。このような場合には、方向制御弁11の動作不良の有無を判定する処理を、
図4に示すように簡略化できる。
【0046】
図4は、第1実施形態の変形例に係る方向制御弁11の動作不良の判定処理を示すフローチャートである。
図4に示すように、処理が開始されると、まず、コントローラ20は、巻上操作レバー13の操作信号が入力されたか否かを判定する(ステップS1-1)。巻上操作レバー13の操作信号が入力された場合(ステップS1-1/Yes)、コントローラ20は、タイマーを作動させ(ステップS1-2)、所定時間T(例えば30秒)が経過するまで待機する(ステップS1-3)。所定時間Tが経過した場合(ステップS1-3/Yes)、コントローラ20は、巻上操作レバー13の操作方向を判定する(ステップS1-4)。操作方向が巻上方向(U)である場合(ステップS1-4/Yes)、パイロット圧Paの出力先であるパイロットポート11aと反対側のパイロットポート11bの圧力、すなわちパイロット圧Pbが閾値Pi2以上であるか否かを判定する(ステップS1-5)。別言すれば、コントローラ20は、操作方向に対応するパイロットポートと反対側のパイロットポートの圧力を閾値Pi2と比較する。
【0047】
パイロット圧Pbが閾値Pi2以上である場合(ステップS1-5/Yes)、コントローラ20は、方向制御弁11が動作不良であると判定し(ステップS1-6)、モニタ30に方向制御弁11の動作不良である旨を出力する。その結果、モニタ30によりオペレータに方向制御弁11の初期異常が報知される(ステップS1-7)。なお、パイロット圧Pbが閾値Pi2未満である場合(ステップS1-5/No)、コントローラ20は、処理を終了する。
【0048】
一方、ステップS1-4において、操作方向が巻下方向(D)である場合(ステップS1-4/No)、パイロット圧Pbの出力先であるパイロットポート11bと反対側のパイロットポート11aの圧力、すなわちパイロット圧Paが閾値Pi2以上であるか否かを判定する(ステップS1-8)。
【0049】
パイロット圧Paが閾値Pi2以上である場合、コントローラ20は、ステップS1-6進んで、上記したステップS1-6,1-7の処理を実行する。なお、パイロット圧Paが閾値Pi2未満である場合(ステップS1-8/No)、コントローラ20は、処理を終了する。
【0050】
この変形例に係る判定処理によっても、上記した第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。しかも、
図3と
図4を比較して明らかなとおり、変形例によれば、制御処理を簡素化できる利点もある。
【0051】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る油圧駆動装置について説明する。
図5は、本発明の第2実施形態に係る油圧駆動装置の油圧回路図である。
図5に示す油圧駆動装置は、巻上ドラム3を駆動するウインチ装置110と、走行体101を駆動する走行装置210と、ウインチ装置110および走行装置210を制御するコントローラ20と、モニタ30と、を含む。なお、
図5において、
図2に示すウインチ装置110の構成の一部は省略している。また、第2実施形態におけるウインチ装置110は、第1実施形態と同一であるため、ここでの説明は省略する。
【0052】
図5に示す油圧駆動装置は、ウインチ装置110と走行装置210とが直列に接続されている。そのため、メインポンプ12から吐出された圧油は、ウインチ装置110に供給された後、走行装置210に供給される。
【0053】
走行装置210は、走行体101の車輪(駆動輪)を駆動する走行モータ41と、メインポンプ12からウインチ装置110を介して走行モータ41へ供給される圧油の流れを制御する方向制御弁51と、含む。
【0054】
方向制御弁51は、走行操作レバー53の操作方向、操作量に応じて制御される。すなわち、パイロット弁53a,53bは、走行操作レバー53の操作方向、操作量に応じて操作される。なお、
図5において、「F」は前進方向(Forward)、「B」は後進方向(Backward)である。方向制御弁51は、その左右に一対のパイロットポート51a,51bを有する。そして、パイロットポンプ9からのパイロット圧油が、パイロット弁53aまたはパイロット弁53bを介してパイロットポート51a,51bに供給されることにより、方向制御弁51が制御される。
【0055】
方向制御弁51は、方向制御弁11と同様に、走行操作レバー53の操作に応じて中立位置Oから左位置Aまたは右位置Bに切り換わる。そして、走行操作レバー53の操作方向に応じて、走行モータ41が正転または逆転する。
【0056】
また、油路L3には、パイロットポート51aに作用するパイロット圧Pcの値を検出するための圧力センサ55aが設けられ、油路L4には、パイロットポート51bに作用するパイロット圧Pdの値を検出するための圧力センサ55bが設けられる。これら圧力センサ55a,55bで検出されたセンサデータ(パイロット圧Pc,Pd)はコントローラ20に入力される。コントローラ20は、圧力センサ15a,15bにて検出されたパイロット圧Pa,Pbおよび圧力センサ55a,55bにて検出されたパイロット圧Pc,Pdに基づいて、方向制御弁11および方向制御弁51の動作不良の有無を判定している。コントローラ20は、本発明の出力先検出手段および判定手段として機能する。
【0057】
なお、油路L1,L2で構成されるパイロット回路と、油路L3,L4で構成されるパイロット回路とは、作動油タンク10に戻るタンクラインL5が共通なので、両者は連通する可能性がある。別言すれば、予期せぬパイロット圧油が、タンクラインL5からパイロット回路内に回り込んで、パイロットポート11a,11b,51a,51bの何れかに供給される事態が起こり得る。
【0058】
そこで、第2実施形態では、以下に説明するように、巻上操作レバー13と走行操作レバー53の一方の操作を行った場合であっても、他方のレバーに対応する方向制御弁のパイロットポートにパイロット圧がかかっているかを判定し、方向制御弁11と方向制御弁51の両方の動作不良の有無を判定できるようにしている。
【0059】
ここで、本発明と第2実施形態との対応関係について言及すると、第1油圧アクチュエータが油圧モータ1に、第2油圧アクチュエータが走行モータ41に、第1制御弁が方向制御弁11に、第1パイロットポートがパイロットポート11a,11bに、第2制御弁が方向制御弁51に、第2パイロットポートがパイロットポート51a,51bに、出力先検出手段および判定手段がコントローラ20に、第1パイロット圧がパイロット圧Pa,Pbに、第2パイロット圧がパイロット圧Pc,Pdに、それぞれ対応している。
【0060】
次に、コントローラ20が実行する処理について説明する。
図6~
図9は、第2実施形態に係る方向制御弁11,51の動作不良の判定処理の手順を示すフローチャートである。コントローラ20は、エンジンの始動(キースイッチON)により
図6~
図9に示す処理を開始し、この処理を所定の周期(例えば0.1秒毎)で繰り返し実行する。なお、図中のステップS1~S12の処理は、
図3に示す第1実施形態と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0061】
コントローラ20は、ステップS5において、パイロット圧Pbが閾値Pi2未満の場合(ステップS5/No)には、ステップS13に進み、パイロット圧Pc,Pdが閾値Pi2以上であるか否かを判定する。すなわち、コントローラ20は、方向制御弁11が正常であると判断すると、方向制御弁51の動作不良の有無を判定する。
【0062】
ステップS2において巻上操作レバー13が巻上方向(U)に操作されたと判定されたにも関わらず、パイロット圧Pc,Pdが閾値Pi2以上となった場合(ステップS13/Yes)には、例えば、タンクラインL5からパイロット圧油が回り込んだ可能性が高いため、方向制御弁51が動作不良であると判定し(ステップS14)、モニタ30による報知を行う(ステップS7)。一方、パイロット圧Pc,Pdが閾値Pi2未満である場合(ステップS13/No)、コントローラ20は、処理を終了する。
【0063】
ステップS1において、パイロット圧Paが閾値Pi1未満であり(ステップS1/No)、
図7のステップS8において、パイロット圧Pbが閾値Pi1以上の場合(ステップS8/Yes)には、ステップS9~S12の処理が行われる。ステップS12において、パイロット圧Pbが閾値Pi2未満の場合(ステップS12/No)には、ステップS15に進み、コントローラ20は、パイロット圧Pc,Pdが閾値Pi2以上であるか否かを判定する。
【0064】
ステップS9において巻上操作レバー13が巻下方向(D)に操作されたと判定されたにも関わらず、パイロット圧Pc,Pdが閾値Pi2以上となった場合(ステップS15/Yes)には、例えば、タンクラインL5からパイロット圧油が回り込んだ可能性が高いため、方向制御弁51が動作不良であると判定し(ステップS14)、モニタ30による報知を行う(ステップS7)。一方、パイロット圧Pc,Pdが閾値Pi2未満である場合(ステップS15/No)、コントローラ20は、処理を終了する。
【0065】
一方、ステップS8において、パイロット圧Pbが閾値Pi1未満である場合(ステップS8/No)、コントローラ20は、ステップS16に進み、パイロット圧Pcが閾値Pi1以上であるか否かを判定する。パイロット圧Pcが閾値Pi1以上である場合(ステップS16/Yes)、走行操作レバー53の操作方向が前進方向(F)であると判定する(ステップS17)。
【0066】
ステップS17にて走行操作レバー53の操作方向が前進方向(F)であると判定されると、コントローラ20は、タイマーを作動させ(ステップS18)、サージ圧の影響がなくなる程度の時間(例えば30秒)に設定された所定時間Tが経過するまで待機する(ステップS19)。
【0067】
所定時間Tが経過した場合(ステップS19/Yes)、コントローラ20は、パイロット圧Pcの出力先であるパイロットポート51aと反対側のパイロットポート51bの圧力、すなわちパイロット圧Pdが閾値Pi2以上であるか否かを判定する(ステップS20)。
【0068】
そして、パイロット圧Pdが閾値Pi2以上である場合(ステップS20/Yes)、コントローラ20は、方向制御弁51が動作不良であると判定し(ステップS14)、モニタ30による報知が行われる(ステップS7)。ステップS20において、パイロット圧Pdが閾値Pi2未満の場合(ステップS20/No)には、ステップS21に進み、コントローラ20は、パイロット圧Pa,Pbが閾値Pi2以上であるか否かを判定する。
【0069】
ステップS17において走行操作レバー53が前進方向(F)に操作されたと判定されたにも関わらず、パイロット圧Pa,Pbが閾値Pi2以上となった場合(ステップS21/Yes)には、例えば、タンクラインL5からパイロット圧油が回り込んだ可能性が高いため、方向制御弁11が動作不良であると判定し(ステップS6)、モニタ30による報知を行う(ステップS7)。一方、パイロット圧Pa,Pbが閾値Pi2未満である場合(ステップS21/No)、コントローラ20は、処理を終了する。
【0070】
ステップS16において、パイロット圧Pcが閾値Pi1未満である場合(ステップS16/No)、コントローラ20は、ステップS22に進み、パイロット圧Pdが閾値Pi1以上であるか否かを判定する。パイロット圧Pdが閾値Pi1以上である場合(ステップS22/Yes)、走行操作レバー53の操作方向が後進方向(B)であると判定する(ステップS23)。
【0071】
ステップS23にて走行操作レバー53の操作方向が後進方向(B)であると判定されると、コントローラ20は、タイマーを作動させ(ステップS24)、サージ圧の影響がなくなる程度の時間(例えば30秒)に設定された所定時間Tが経過するまで待機する(ステップS25)。
【0072】
所定時間Tが経過した場合(ステップS25/Yes)、コントローラ20は、パイロット圧Pdの出力先であるパイロットポート51bと反対側のパイロットポート51aの圧力、すなわちパイロット圧Pcが閾値Pi2以上であるか否かを判定する(ステップS26)。
【0073】
そして、パイロット圧Pcが閾値Pi2以上である場合(ステップS26/Yes)、コントローラ20は、方向制御弁51が動作不良であると判定し(ステップS14)、モニタ30による報知が行われる(ステップS7)。ステップS26において、パイロット圧Pcが閾値Pi2未満の場合(ステップS26/No)には、ステップS27に進み、コントローラ20は、パイロット圧Pa,Pbが閾値Pi2以上であるか否かを判定する。
【0074】
ステップS23において走行操作レバー53が後進方向(B)に操作されたと判定されたにも関わらず、パイロット圧Pa,Pbが閾値Pi2以上となった場合(ステップS27/Yes)には、例えば、タンクラインL5からパイロット圧油が回り込んだ可能性が高いため、方向制御弁11が動作不良であると判定し(ステップS6)、モニタ30による報知を行う(ステップS7)。一方、パイロット圧Pa,Pbが閾値Pi2未満である場合(ステップS27/No)、コントローラ20は、処理を終了する。
【0075】
(効果)
以上説明したように、第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。しかも、巻上操作レバー13を操作したにも関わらず、走行操作レバー53の操作に対応する方向制御弁51の動作不良も判定できるため、方向制御弁11の動作不良だけでなく方向制御弁51の動作不良も早期に発見できる。走行操作レバー53を操作した場合についても同様の効果を得ることができる。その結果、クレーンの作業効率の低下をより一層防止できる。
【0076】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。前記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者ならば、本明細書に開示の内容から、各種の代替例、修正例、変形例あるいは改良例を実現することができ、これらは添付の特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【0077】
上記した実施形態では、巻上操作レバー13の操作方向に対応するパイロットポートと反対側のパイロットポートに作用するパイロット圧(圧力)を検出し、そのパイロット圧が閾値Pi2以上であるか否かにより、方向制御弁11の動作不良の有無を検出する構成を例示したが、この構成に代えて、例えば、パイロット圧の挙動(変動)をコントローラ20が監視し、その挙動が所定の状態(例えば、所定の圧力変動幅)を逸脱した場合に、方向制御弁11が動作不良であると判定する構成を採用することもできる。この構成によれば、パイロット圧が瞬間的に閾値Pi2以上になるような使用環境下であっても、適切に方向制御弁11の動作不良の有無を判定できる。
【0078】
また、例えば、閾値Pi2より大きい閾値Pi3(第3閾値)を設定しておき、コントローラ20は、巻上操作レバー13の操作方向に対応するパイロットポートと反対側のパイロットポートに作用するパイロット圧が閾値Pi3を超えた場合に、巻上ドラム3の駆動を停止する構成としても良い。別言すれば、かかるパイロット圧が閾値Pi3を超えると、クレーンの動作を停止させても良い。この場合、油圧機器類が破損するような深刻なダメージを回避することができる。
【0079】
また、第2実施形態として2つの油圧回路が接続された構成を例示したが、3つ以上の油圧回路から成る油圧駆動装置に本発明を適用できることは言うまでもない。
【0080】
なお、クレーンの一例として、クローラクレーンを例示したが、本発明は、これに限らず、ホイールクレーン、トラッククレーン、ラフテレーンクレーン、オールテレーンクレーン等の他の移動式クレーンに加えて、タワークレーン、天井クレーン、ジブクレーン、引込みクレーン、スタッカークレーン、門型クレーン、アンローダ等のあらゆるクレーンに適用可能である。また、吊荷フックを備えるクレーンに限らず、マグネット、アースドリルバケット等のアタッチメントを吊下するクレーンも本発明の適用の対象である。勿論、クレーンに限らず、油圧ショベルやフォークリフト等の作業機械も本発明の適用の対象と成り得る。
【符号の説明】
【0081】
1 油圧モータ(油圧アクチュエータ、第1油圧アクチュエータ)
9 パイロットポンプ
11 方向制御弁(制御弁、第1制御弁)
11a,11b パイロットポート(第1パイロットポート)
12 メインポンプ
13 巻上操作レバー
15a,15b 圧力センサ
20 コントローラ(出力先検出手段、判定手段)
30 モニタ
41 走行モータ(油圧アクチュエータ、第2油圧アクチュエータ)
51 方向制御弁(制御弁、第2制御弁)
51a,51b パイロットポート(第2パイロットポート)
53 走行操作レバー
55a,55b 圧力センサ
110 ウインチ装置(油圧駆動装置)
210 走行装置(油圧駆動装置)
Pa,Pb パイロット圧(第1パイロット圧)
Pc,Pd パイロット圧(第2パイロット圧)
Pi1 閾値(第1閾値)
Pi2 閾値(第2閾値)