(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】管内凹凸測定装置および管内凹凸測定方法
(51)【国際特許分類】
G01B 5/28 20060101AFI20240209BHJP
G01B 5/00 20060101ALI20240209BHJP
【FI】
G01B5/28 102
G01B5/00 B
(21)【出願番号】P 2020058511
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000117135
【氏名又は名称】芦森工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】392008884
【氏名又は名称】芦森エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】石塚 靖
【審査官】仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-58056(JP,A)
【文献】特開2000-74609(JP,A)
【文献】特開2008-58043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00-5/30
G01B 21/00-21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管の内面の凹凸部の高さを測定する管内凹凸測定装置であって、
本体部中心軸を有する本体部と、
前記本体部に対して本体部軸直交方向に拡縮し、前記本体部中心軸を前記管の中心軸に近づけるセンタリング部と、
前記本体部中心軸を中心に回転可能に前記本体部に取り付けられた測定部と、
前記本体部に対して前記測定部を回転駆動させる回転部と、
を備え、
前記測定部は、
前記本体部に回転可能に取り付けられたベース部と、
本体部軸直交方向に移動可能に前記ベース部に取り付けられた測定子と、
前記ベース部に対する前記測定子の移動方向であって本体部軸直交方向である測定子移動方向に前記測定子を駆動させる測定子駆動部と、
を備え、
前記測定部は、前記測定子が前記管の内面に接触したときの前記ベース部に対する前記測定子の測定子移動方向における位置を測定するように構成され、
前記測定子は、
前記ベース部に取り付けられた測定子基部と、
前記測定子基部に対して固定され、前記管の内面に接触可能な接触部と、
を備え、
前記接触部は、前記測定子基部から、測定子移動方向かつ本体部軸直交方向外側に延び、
前記接触部の長手方向は、測定子移動方向であり、
測定子移動方向に直交する方向における前記接触部の最大幅は、測定子移動方向に直交する方向における前記測定子基部の最大幅よりも狭
く、
前記接触部は、測定子移動方向に沿うように長く延び、測定子移動方向における長さに対して測定子移動方向に直交する方向における幅が狭い、細長形状を有し、
測定子移動方向に直交する方向における前記接触部の幅は、前記接触部の先端部に向かって徐々に狭くなっている、
管内凹凸測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の管内凹凸測定装置であって、
前記センタリング部は、前記ベース部に対して前記測定子が最も後退された状態のとき
の前記測定子の先端部
の本体部軸直交方向における位置から
、本体部軸直交方向に、10mm以上拡大可能に構成される、
管内凹凸測定装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の管内凹凸測定装置であって
、
前記センタリング部の先端部から前記本体部中心軸までの本体部軸直交方向における長さの2倍を
センタリング幅としたとき、
前記センタリング部は、前記センタリング幅が300mm以下
になることが可能に構成され、かつ、前記ベース部に対する前記測定子の測定子移動方向における移動可能量は、6mm以上であ
る、
または、
前記センタリング部は、前記センタリング幅が300mmを超える
所定幅になることが可能に構成され、かつ、前記ベース部に対する前記測定子の測定子移動方向における移動可能量は、前記
所定幅の2%以上である、
管内凹凸測定装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1に記載の管内凹凸測定装置を用いた管内凹凸測定方法であって、
前記ベース部に対する前記測定子の測定子移動方向における位置を示す値である指示値を、前記凹凸部の両端部と、前記凹凸部の両端部の間の所定部と、のそれぞれで測定する測定ステップと、
前記凹凸部の両端部での前記指示値の平均値と、前記凹凸部の前記所定部での前記指示値と、の差を、前記凹凸部の高さとして算出する算出ステップと、
を備え、
前記所定部は、前記凹凸部が凸部の場合は頂部であり、前記凹凸部が凹部の場合は底部である、
管内凹凸測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管の内面の凹凸部の高さを測定する管内凹凸測定装置および管内凹凸測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に、管の内径を測定する装置が記載されている。この装置では、管の内面に測定子が接触することで、管の内径が測定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
管の内面には凹凸部(例えば内張り材のしわなど)が存在する場合がある。このような管の内面の凹凸部の高さを測定できる装置が望まれている。同文献に記載の接触子は、先端部が太く、凹凸部の高さを測定するのに適していない。
【0005】
そこで、本発明は、管の内面の凹凸部の高さを容易に測定することができる、管内凹凸測定装置および管内凹凸測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
管内凹凸測定装置は、管の内面の凹凸部の高さを測定する。管内凹凸測定装置は、本体部中心軸を有する本体部と、センタリング部と、測定部と、回転部と、を備える。前記センタリング部は、前記本体部に対して本体部軸直交方向に拡縮し、前記本体部中心軸を前記管の中心軸に近づける。前記測定部は、前記本体部中心軸を中心に回転可能に前記本体部に取り付けられたものである。前記回転部は、前記本体部に対して前記測定部を回転駆動させる。前記測定部は、ベース部と、測定子と、測定子駆動部と、を備える。前記ベース部は、前記本体部に回転可能に取り付けられたものである。前記測定子は、本体部軸直交方向に移動可能に前記ベース部に取り付けられたものである。前記測定子駆動部は、前記ベース部に対する前記測定子の移動方向であって本体部軸直交方向である測定子移動方向に前記測定子を駆動させる。前記測定部は、前記測定子が前記管の内面に接触したときの前記ベース部に対する前記測定子の測定子移動方向における位置を測定するように構成される。前記測定子は、測定子基部と、接触部と、を備える。前記測定子基部は、前記ベース部に取り付けられたものである。前記接触部は、前記測定子基部に対して固定され、前記管の内面に接触可能である。前記接触部は、前記測定子基部から、測定子移動方向かつ本体部軸直交方向外側に延びる。前記接触部の長手方向は、測定子移動方向である。測定子移動方向に直交する方向における前記接触部の最大幅は、測定子移動方向に直交する方向における前記測定子基部の最大幅よりも狭い。
【発明の効果】
【0007】
上記構成により、管の内面の凹凸部の高さを容易に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態の管内凹凸測定装置20が管10の内部に配置された状態を示す図である。
【
図2】
図1に示す管内凹凸測定装置20のセンタリング部30が軸直交方向Rに縮小された状態を示す図である。
【
図3】
図2に示すセンタリング部30が軸直交方向Rに拡大された状態を示す
図2相当図である。
【
図4】
図1に示す管内凹凸測定装置20を軸方向後側Zrから見た図である。
【
図5】
図4に示す測定子60が内面10aに接触した状態を示す
図4相当図である。
【
図6】
図5に示す管10に偏心部15がある場合の
図5相当図である。
【
図7】
図1に示す測定部50の測定子60が収納状態のときの図である。
【
図8】
図7に示す測定子60が進出側Saに進出した状態を示す
図7相当図である。
【
図10】
図8に示す測定部50のF10矢視図である。
【
図11】
図7に示す測定部50のF11矢視図である。
【
図12】
図4に示す管10の内面10aなどを模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1~
図12を参照して、第1実施形態の管内凹凸測定装置20、管内凹凸測定装置20の測定対象である管10、および測定に用いられるカメラ19について説明する。
【0010】
管10は、
図1に示すように、管内凹凸測定装置20による測定対象物である。管10の内部には、カメラ19と、管内凹凸測定装置20と、が配置される。管10は、例えば水道管であり、例えば下水道管である。例えば、
図6に示すように、管10は、既設管10pの内周面に更生材10l(内張り材)が貼りつけられたものなどである。なお、管10は、更生材10lを有さなくてもよい。管10の内径(直径)は、管10の中に作業者が入ることができない程度に小さい。
図4に示すように、管10の内面10aは、円弧状部11と、凹凸部13と、を備える。管10は、偏心部15(
図6参照)を備えてもよい。
【0011】
円弧状部11は、管10の軸方向から見て円弧状である。管10の内面10aには凹凸があるため、「管10の中心軸」は、円弧状部11の中心軸であり、例えば「管10の内径」は、円弧状部11の内径である。凹凸部13は、凸部13aおよび凹部13bの少なくともいずれかを含む。凸部13aは、円弧状部11に対して突出する部分である。
図1に示すように、凸部13aは、例えば更生材10l(
図6参照)のしわであり、管10の軸方向に延びるしわ(縦じわ)でもよく、管10の周方向に延びるしわ(横じわ)でもよい。凸部13aは、しわ以外の突出した部分でもよい。このしわは、例えば、
図6に示す既設管10pの内面にホース状の更生材10l(内張り材)をライニングした際に、更生材10lの内面に生じる。
図4に示すように、凹部13bは、円弧状部11に対して凹んだ(陥没した)部分である。例えば、凹部13bは、管10の少なくとも一部がコンクリート製の場合に、バクテリアによって生成された硫酸によりコンクリートが削れることで形成された部分などである。
図6に示す凹凸部13は、連結された既設管10pどうしの段差でもよく、隙間でもよい。偏心部15は、円弧状部11の円弧よりも、管10の中心軸側に配置される。例えば、偏心部15は、更生材10lが重ね合わされた部分(ラップ部分)などである。
【0012】
カメラ19(管内テレビカメラ)は、
図1に示すように、内面10aおよび管内凹凸測定装置20を撮影する。カメラ19は、後述する測定子60の指示値を撮影する。カメラ19は、二次元画像を取得する。カメラ19は、可視光カメラでもよく、赤外線カメラなどでもよい。カメラ19は、管内凹凸測定装置20よりも軸方向後側Zr(方向については後述)に配置される。カメラ19(カメラ車)は、管10内を走行可能であり、例えば自走可能である。
【0013】
管内凹凸測定装置20は、管10の内面10aの凹凸部13の高さを測定する装置である。例えば、管内凹凸測定装置20は、更生材10l(
図6参照)のしわの高さを測定する装置である。管内凹凸測定装置20は、管10の内部に配置される。管内凹凸測定装置20は、本体部21と、センタリング部30と、回転部40(
図2参照)と、測定部50と、を備える。
【0014】
本体部21(装置本体)は、
図3に示すように、管内凹凸測定装置20の中央部分に設けられる。本体部21は、長手方向を有する形状を有し、例えば軸方向Zから見て多角形状でもよく、例えば円筒状でもよい。本体部21は、本体部中心軸21aを有する。軸方向Z(本体部軸方向)は、本体部中心軸21aが延びる方向である。軸方向Zは、本体部21の長手方向である。軸方向Zは、管10(
図1参照)の中心軸が延びる方向と一致または略一致する。軸方向Zにおいて、後述する測定部50から本体部21に向かう側(または向き)を軸方向前側Zfとし、その逆側を軸方向後側Zrとする。
図4に示す軸直交方向R(本体部軸直交方向)は、本体部中心軸21aに直交する仮想円であって本体部中心軸21aを中心とする仮想円の半径方向である。軸直交方向Rは、管10の径方向(さらに詳しくは円弧状部11の径方向)と一致または略一致する。軸直交方向Rにおいて、本体部中心軸21aに近づく側を軸直交方向内側Riとし、本体部中心軸21aから遠ざかる側を軸直交方向外側Roとする。周方向C(本体部周方向)は、上記の仮想円の円周方向である。周方向Cは、管10の周方向(さらに詳しくは円弧状部11の周方向)と一致または略一致する。
【0015】
センタリング部30は、本体部中心軸21aを管10の中心軸に近づける(できるだけ近づける)ための部分である。センタリング部30は、本体部21に対する測定部50の回転中心を、管10の中心軸に近づける。
図3に示すように、センタリング部30は、本体部21に取り付けられ、本体部21に対して軸直交方向Rに拡縮(拡大、縮小)する。センタリング部30は、センタリング駆動部31と、連結部材32と、ガイド部材33と、リンク機構35と、アウトリガ37と、を備える。
【0016】
センタリング駆動部31は、アウトリガ37を駆動させる。センタリング駆動部31は、本体部21に固定され、例えば本体部21に内蔵される。センタリング駆動部31は、流体圧により駆動してもよく、電力により駆動してもよい(後述する回転駆動部41および測定子駆動部53も同様)。センタリング駆動部31は、例えば、軸方向Zに伸縮する伸縮シリンダであり、例えば、空気圧により(圧縮空気により)駆動するエアシリンダなどである。以下では、センタリング駆動部31が伸縮シリンダである場合について説明する。センタリング駆動部31は、本体部21に固定される固定部31aと、ロッド31bと、を備える。ロッド31bは、固定部31aよりも軸方向前側Zfに突出する。ロッド31bは、本体部21よりも軸方向前側Zfに突出する。ロッド31bは、固定部31aに対して軸方向Zに移動する。ロッド31bには、
図1に示すワイヤWが取り付けられてもよい。ワイヤWは、管内凹凸測定装置20を軸方向前側Zfに引っ張るためのものである。なお、管内凹凸測定装置20へのワイヤWの取り付け位置は、
図3に示すロッド31bでなくてもよく、例えば連結部材32でもよく、例えば本体部21でもよい。
【0017】
連結部材32は、センタリング駆動部31とリンク機構35とを連結する。連結部材32は、ロッド31bに取り付けられる。連結部材32は、ロッド31bの軸方向Zへの移動に伴って、本体部21に対して軸方向Zに移動する。
【0018】
ガイド部材33は、軸方向Zに摺動可能に本体部21に取り付けられる。ガイド部材33は、連結部材32に取り付けられる。ガイド部材33は、複数設けられ、
図3に示す例では2つ設けられる。ガイド部材33は、例えば筒状であり、例えば本体部21に差し込まれる。ガイド部材33は、本体部21に対する連結部材32の軸方向Zへの移動に伴って、本体部21に対して軸方向Zに移動する。
【0019】
リンク機構35は、センタリング駆動部31による軸方向Zの動きや力を、アウトリガ37の軸直交方向Rへの動きや力に変換する。リンク機構35は、ガイド部材33および連結部材32を介して、センタリング駆動部31に取り付けられる。リンク機構35は、本体部21から軸直交方向外側Roに突出する。リンク機構35は、複数設けられ、
図3および
図4に示す例では16か所に設けられる。なお、
図4に示す8か所のリンク機構35が、
図3に示すように軸方向Zに並ぶように2か所に設けられるので、リンク機構35は合計16か所に設けられる。リンク機構35の数は様々に変更されてもよい(アウトリガ37も同様)。ここでは、1か所のリンク機構35について説明する。
図3に示すように、リンク機構35は、第1リンク部材35aと、第2リンク部材35bと、を備える。
【0020】
第1リンク部材35aの軸直交方向内側Ri部分は、本体部21に回転可能(回転運動可能、回転運動自在)に取り付けられる。第1リンク部材35aの軸直交方向外側Ro部分は、アウトリガ37に回転可能に取り付けられる。第2リンク部材35bの軸直交方向内側Ri部分は、ガイド部材33に回転可能に取り付けられる。第2リンク部材35bの軸直交方向外側Ro部分は、アウトリガ37に回転可能に取り付けられ、第1リンク部材35aの軸直交方向外側Ro部分に回転可能に取り付けられる。
【0021】
アウトリガ37は、管10の内面10a(
図4参照)に接触可能である。アウトリガ37は、センタリング部30の軸直交方向外側Ro部分(外周部分)に配置される。アウトリガ37は、複数設けられ、
図4に示す例では8つ設けられる。
図3に示すように、各アウトリガ37は、例えば軸方向Zに長い部材である。アウトリガ37は、軸直交方向Rに移動(拡縮)可能である(
図2および
図3参照)。すべてのアウトリガ37は、互いに連動する。なお、複数のアウトリガ37の一部が、他のアウトリガ37に対して、独立して動いてもよい。例えば、すべてのアウトリガ37は、個別に動いてもよい。
【0022】
回転部40は、本体部21に対して測定部50を回転駆動させる。回転部40は、本体部中心軸21aを中心に、測定部50を回転駆動させる。回転部40は、本体部21に取り付けられる。回転部40は、回転駆動部41と、回転軸43と、を備える。回転駆動部41は、本体部21に取り付けられ、例えば本体部21に内蔵される。回転駆動部41は、例えば電動モータなどである。回転軸43は、回転駆動部41と測定部50とにつながれる。なお、回転駆動部41と測定部50との間に、図示しない歯車などが設けられてもよい。
【0023】
測定部50(測定ユニット)は、
図5に示すように、凹凸部13の高さ(軸直交方向Rにおける長さ)を測定する。測定部50は、後述するように、測定子60が管10の内面10aに接触したときの、ベース部51に対する測定子60の、軸直交方向Rにおける位置(相対位置、移動距離)を測定するように構成される。
図3に示すように、測定部50は、本体部21に取り付けられる。測定部50は、本体部中心軸21aを中心に回転可能に(すなわち周方向Cに回転可能に)本体部21に取り付けられる。測定部50は、本体部21に対して回転する、いわばヘッドである。
図8に示すように、測定部50は、ベース部51と、測定子駆動部53と、
図10に示す測定子60と、寸法指示部71と、を備える。
【0024】
ベース部51は、
図3に示す本体部21に回転可能に取り付けられる。
図10に示すように、ベース部51は、突出部51aを備えてもよい。突出部51aは、本体部21に対してベース部51を測定子幅方向T(後述)に移動させる駆動部(例えば伸縮シリンダなど)が内蔵される部分である。ベース部51は(測定部50は)、本体部21に対して、測定子幅方向Tに移動可能でもよい。
【0025】
測定子駆動部53は、
図8に示すように、ベース部51に対して測定子移動方向S(後述)に測定子60を駆動させる。測定子駆動部53は、ベース部51に取り付けられ、ベース部51に固定される。測定子駆動部53は、例えば流体圧による駆動を行い、例えば空圧による駆動を行い(空圧式であり)、例えばエアシリンダである。測定子駆動部53は、
図5に示すように測定子60が管10の内面10aに接触したときに、測定子60が破損しない程度に小さい力で、駆動を行う。測定子駆動部53が空圧式である場合、測定子駆動部53は、測定子60が内面10aに接触したときに、測定子60が破損しない程度に低い圧力で、駆動を行う。
図8に示す測定子駆動部53が空圧式であり、かつ、センタリング駆動部31(
図3参照)および回転駆動部41(
図3参照)の少なくともいずれかが空圧式の場合は、圧縮空気の圧源が共用されてもよい。なお、上記のように、測定子駆動部53は、電気により駆動を行ってもよい(電動でもよい)。この場合、測定子駆動部53は、モータを有してもよく、ラック・アンド・ピニオン機構を有してもよい。測定子駆動部53は、測定子駆動部本体53aと、ガイド部53b(
図10参照)と、出力部53cと、を備える。
【0026】
測定子駆動部本体53aは、測定子駆動部53の本体部分であり、例えば直方体状などである。
図10に示すように、ガイド部53bは、出力部53cの移動をガイドする部分であり、例えばレールなどである。ガイド部53bは、
図8に示す測定子駆動部本体53aに固定される。出力部53cは、測定子移動方向S(後述)に駆動される部分である。出力部53cは、ガイド部53b(
図10参照)に沿って移動する。
【0027】
測定子60は、凹凸部13(
図5参照)の高さを測定する。測定子60は、ベース部51に移動可能に取り付けられる。軸直交方向Rであって、ベース部51に対する測定子60の移動方向を、測定子移動方向Sとする。測定子60は、測定子駆動部53を介してベース部51に取り付けられる。測定子60は、測定子移動方向Sに長い(測定子移動方向Sは、測定子60の長手方向である)。測定子移動方向Sにおける軸直交方向外側Roを、進出側Saとする。進出側Saの逆側を後退側Sbとする。測定子移動方向Sに直交する方向かつ軸直交方向Rを、
図10に示すように、測定子幅方向Tとする。
【0028】
この測定子60は、ベース部51に着脱可能に取り付けられる。測定子60は、測定子駆動部53に(さらに詳しくは出力部53cに)着脱可能に取り付けられる(測定子60は、アタッチメント型である)。具体的には例えば、測定子60は、締結部材60a(例えばねじ部材)により出力部53cに取り付けられ、固定される。測定子60が測定子駆動部53に着脱可能である場合、測定子駆動部53を、測定子60の駆動とは異なる用途に用いやすい。測定子60が測定子駆動部53に着脱可能である場合、
図5に示す管内凹凸測定装置20のうち測定子60以外の部分を、凹凸部13の高さの測定以外の用途に使用しやすい。上記「凹凸部13の高さの測定以外の用途」は、例えば、管10の内径の測定などである。
図10に示すように、測定子60は、測定子基部61と、接触部63と、を備える。
【0029】
測定子基部61は、ベース部51に取り付けられる。測定子基部61は、測定子60のうちベース部51に取り付けられる側の部分である。例えば、測定子基部61は、板状部61aと、測長部61bと、を備える。板状部61aは、板状であり、例えば長方形状である。板状部61aの厚さ方向は、軸方向Zである。板状部61aの長手方向は、測定子移動方向Sである。測長部61bは、ベース部51に対する測定子60の位置を測るための部分である。測長部61bは、板状部61aに取り付けられ(例えば貼り付けられ)、固定される。測長部61bは、例えば板状であり、例えば板状部61aよりも小さい。測長部61bは、具体的には、目盛りを有するスケール(ものさし)である。
【0030】
接触部63は、
図5に示すように、管10の内面10aに接触可能である。
図10に示すように、接触部63は、測定子基部61から軸直交方向外側Roに延びる。接触部63は、測定子基部61に固定され、測定子基部61と一体的に移動する。接触部63は、測定子基部61と一体的かつ連続的に設けられても、測定子基部61と別体でもよい(
図14の接触部363を参照)。
【0031】
この接触部63は、接触部63の先端部(最も進出側Saの部分)を凹凸部13(
図5参照)に容易に沿わせることが可能となるような形状を有する。接触部63は、測定子移動方向Sに長く、測定子移動方向Sに直交する方向に細い、細長形状を有する。さらに詳しくは、接触部63の長手方向は、測定子移動方向Sである。接触部63は、測定子移動方向Sに沿うように長く延びる。接触部63の測定子移動方向Sにおける長さは、接触部63の測定子幅方向Tにおける幅に対して十分長い。具体的には、
図10に示す例では、接触部63の測定子移動方向Sにおける長さは、接触部63の測定子幅方向Tにおける幅の10倍以上である。なお、測定子移動方向Sにおける接触部63の長さは、測定する管10(
図5参照)の内径に応じて様々に設定される。
【0032】
この接触部63は、測定子移動方向Sに直交する方向に細い。さらに詳しくは、測定子移動方向Sに直交する方向における接触部63の最大幅は、測定子移動方向Sに直交する方向における測定子基部61の最大幅よりも狭い。例えば、測定子幅方向Tにおける接触部63の幅は、測定子幅方向Tにおける測定子基部61の幅よりも狭い。具体的には、
図10に示す例では、接触部63の測定子幅方向Tにおける幅は、測定子基部61の測定子幅方向Tにおける幅の約1/5である。
【0033】
この接触部63の幅(具体的には、測定子幅方向Tにおける幅)は、接触部63の先端部に向かって徐々に狭く(細く)なる。接触部63の先端部は、軸方向Zから見たときに、例えば弧状であり、例えば円弧状などである。この場合、
図5に示す管10の内面10aに接触部63が接触した状態で、内面10aに対して接触部63が周方向Cに移動しやすい。なお、接触部63の先端部に、ボールやローラなど(回転部材)が設けられてもよい。
【0034】
この接触部63の先端部を通る直線であって測定子移動方向Sに延びる直線は、本体部中心軸21aを通る。例えば、軸方向Zから見たとき、接触部63の中心軸であって測定子移動方向Sに延びる中心軸は、本体部中心軸21aを通る。
【0035】
寸法指示部71は、
図10に示すように、ベース部51に対する測定部50の位置を示す部分である。具体的には、寸法指示部71は、測長部61bの目盛りを指し示す。寸法指示部71は、ベース部51に取り付けられ、固定される。寸法指示部71は、例えば板状部材(寸法指示板)である。寸法指示部71は、ベース部51に着脱可能に取り付けられる(寸法指示部71は、アタッチメント型である)。具体的には例えば、
図8に示すように、寸法指示部71は、締結部材71a(例えばねじ部材)によりベース部51に取り付けられる。寸法指示部71がベース部51に着脱可能である場合、
図5に示す管内凹凸測定装置20のうち寸法指示部71以外の部分を、凹凸部13の高さ測定以外の用途に使用しやすい(測定子60と同様)。なお、
図10に示す測長部61bおよび寸法指示部71は、ベース部51に対する測定子60の位置を示すことが可能であれば、どのように構成されてもよい。例えば、測長部61bがベース部51に設けられ、寸法指示部71が測定子60に設けられてもよい。
【0036】
(作動)
図1に示す管内凹凸測定装置20などは、以下のように作動するように構成される。
【0037】
管内凹凸測定装置20およびカメラ19が、管10の内部に入れられる。管内凹凸測定装置20が、ワイヤWで引っ張られると、軸方向前側Zfに移動する。カメラ19が、管内凹凸測定装置20の移動に応じて走行する。
【0038】
(センタリング部30の作動)
図2に、センタリング部30が最も縮小した状態を示す。このとき、センタリング駆動部31は、伸長した状態である。
【0039】
センタリング部30が拡大される作動は、次のように行われる。センタリング駆動部31が、縮小される。具体的には、ロッド31bが、固定部31aに対して軸方向後側Zrに駆動させられる。すると、連結部材32およびガイド部材33が、本体部21に対して軸方向後側Zrに移動する。その結果、第2リンク部材35bの基端部が、本体部21に対して軸方向後側Zrに移動する。一方、第1リンク部材35aの基端部は、本体部21に対して軸方向Zには移動しない。その結果、
図3に示すように、第1リンク部材35aと第2リンク部材35bとが、折り畳まれる。すると、アウトリガ37が、軸直交方向外側Roに移動(拡大)する。すると、
図4に示す本体部中心軸21aが、管10の中心軸に近づく。
【0040】
アウトリガ37が管10の内面10aに接触すると、アウトリガ37の拡大が停止させられる。このとき、本体部中心軸21aは、管10の中心軸に略一致した状態である。また、本体部21は、管10に固定(または略固定)された状態である。なお、上記のセンタリング部30が(アウトリガ37が)拡大する作動とは逆の作動により、センタリング部30が(アウトリガ37が)縮小する。
【0041】
(回転部40の作動)
例えば作業者が、カメラ19(
図1参照)で撮影された画像を見ながら、凹凸部13の位置を確認する。そして、接触部63が測定対象位置(凹凸部13およびその周辺部)に近づくように、作業者が、測定部50を回転駆動させる操作(遠隔操作、指令)を行う。この操作により、
図3に示す回転駆動部41が、本体部21に対して測定部50を回転駆動させる。
【0042】
(測定子60の収納状態)
図4に示すように、ベース部51に対して測定子60が最も後退された状態(最も後退側Sbに配置された状態)を、測定子60の「収納状態」とする。測定子60が収納状態のとき、測定子60は、内面10aに接触しない。この場合、管内凹凸測定装置20が、管10の内部を適切に軸方向Zに移動できる(挿通性を確保できる)。
【0043】
さらに詳しくは、測定子60が収納状態のとき、接触部63が、円弧状部11に接触しない。測定子60が収納状態のとき、接触部63が凸部13aに向けられても(接触部63と凸部13aとが軸直交方向Rに対向しても)、接触部63が凸部13aに接触せず、接触部63と凸部13aとの間に十分な間隔があることが好ましい。なお、接触部63が凸部13aに向けられたときに、接触部63と凸部13aとの間に十分な間隔がなくても、接触部63が凸部13aから周方向Cに離れるように、本体部21に対して測定部50を回転させれば、上記間隔を確保することができる。
【0044】
具体的には例えば、測定子60が収納状態のとき、円弧状部11と接触部63との間隔(離反距離)が、10mm以上であることが好ましく、20mm以上であることがより好ましい。ここで、本体部中心軸21aから円弧状部11までの長さは、管10の内面10aに接触したセンタリング部30の先端部(アウトリガ37の先端部、軸直交方向外側Ro端部)から本体部中心軸21aまでの軸直交方向Rにおける長さAと等しい、または略等しい。また、測定子60が収納状態のときの、測定子60の先端部(さらに詳しくは接触部63の先端部、軸直交方向外側Ro端部)から本体部中心軸21aまでの軸直交方向Rにおける長さをBとする。このとき、AからBを引いた値(A-B)は、10mm以上であることが好ましく、20mm以上であることがより好ましい。
【0045】
なお、複数のアウトリガ37が連動しない場合などには、アウトリガ37によって長さAが異なる場合がある。この場合は、軸方向Zから見て接触部63に最も近いアウトリガ37の先端部から本体部中心軸21aまでの軸直交方向Rにおける長さを、上記「A-B」における長さAとしてもよい(後述する幅L(
図5参照)についても同様)。また、長さAが最大となるアウトリガ37における長さAを、上記「A-B」における長さAとしてもよい(幅L(
図5参照)についても同様)。
【0046】
(測定子60の作動)
測定子60の進出側Saへの作動は、次のように行われる。
図9に示す測定子駆動部53が、出力部53cを進出側Saに駆動させる。このとき、出力部53cは、ガイド部53bにガイドされながら、進出側Saに移動する。その結果、測定子60が、進出側Saに移動する。そして、接触部63の先端部が、管10の内面10a(
図5を参照)に接触する。このとき、測定子60の進出側Saへの移動が、停止される。測定子60の停止は、自動または手動により行われる。例えば、作業者が、カメラ19(
図1参照)が撮影した画像を見ながら、
図5に示す接触部63が内面10aに接触したことを画像で確認したときに、測定子60を停止させる操作を行ってもよい。例えば、接触部63が内面10aに接触したときに生じる荷重を、図示しないセンサが検出してもよい。そして、センサに検出された荷重が所定値を超えたときに、測定子60が、自動または手動で停止させられてもよい。このセンサは、例えば、
図10に示す測定子駆動部53が流体圧により駆動する場合は流体の圧力を検出するものでもよく、測定子駆動部53が電動である場合は電流などを検出するものでもよい。なお、測定子60の後退側Sbへの移動は、測定子60の進出側Saへの作動とは逆の作動により行われる。
【0047】
測定子駆動部53は、測定子60を空圧により駆動することが好ましい。この場合、例えば電力や油圧などにより測定子駆動部53が駆動される場合に比べ、
図5に示す測定子60が内面10aに接触したときに測定子60が受ける衝撃を小さくしやすい。よって、測定子60の破損を抑制することができる。
【0048】
(指示値の取得)
図10に示すように、接触部63の先端部が管10の内面10a(
図5参照)に接触した状態のときに、ベース部51に対する測定子60の測定子移動方向Sにおける位置を示す値(指示値)が取得される。例えば、カメラ19(
図1参照)が撮影した画像から、測長部61bの目盛りの値(
図10に示す例では60mm)を、作業者が目視で読み取ることで、指示値が取得されてもよい。また、ベース部51に対する測定子60の位置を検出するセンサ(図示なし)が設けられ、このセンサの検出値から指示値が取得されてもよい。
図5に示すように、接触部63の先端部が端部13a1(後述)に接触したときの指示値を、「端部13a1での指示値」などという(他の部分に接触する場合も同様)。
【0049】
必要な指示値が得られるように、測定子60が移動させられる。さらに詳しくは、必要な指示値が得られるように、本体部21に対して測定部50が回転させられ、ベース部51に対して測定子60が測定子移動方向Sに移動させられる。例えば、作業者が、カメラ19(
図1参照)で撮影された画像を見ながら、接触部63の先端部が測定対象位置に接触するように、測定子60を操作してもよい。
【0050】
凹凸部13が軸方向Zに延びている場合(例えば凸部13aが縦じわの場合)、接触部63の先端部を内面10aに接触させたまま測定部50を回転させ、内面10aの凹凸に沿わせるように接触部63を周方向Cおよび測定子移動方向Sに移動させてもよい。凹凸部13が周方向Cに延びる場合(例えば凸部13aが横じわの場合など)(
図1における右側の凸部13aを参照)は、必要な指示値が得られるように、管内凹凸測定装置20が軸方向Zに移動させられる。
【0051】
(測定子60の移動可能量)
図5に示すベース部51に対する測定子60の測定子移動方向Sへの移動可能な量(駆動可能な変位量)は、凹凸部13の高さを適切に測定できるように設定されることが好ましい。
【0052】
[設定例1]具体的には例えば、管10の内径が300mm以下の場合に、高さ6mm以下の凸部13aの高さを測定する必要がある場合がある。この場合、ベース部51に対する測定子60の移動可能量は6mm以上である必要がある。ここで、管10の内径は、上記の長さAの2倍である幅Lと等しい、または略等しい。そこで、幅Lが300mm以下の場合、ベース部51に対する測定子60の測定子移動方向Sにおける(軸直交方向Rにおける)移動可能量は、6mm以上に設定される。
【0053】
[設定例2]例えば、管10の内径が300mmを超える場合に、管10の内径の2%以下の高さの凸部13aの高さを測定する必要がある場合がある。この場合、ベース部51に対する測定子60の移動可能量は、管10の内径の2%以上である必要がある。そこで、幅Lが300mmを超える場合、ベース部51に対する測定子60の測定子移動方向Sにおける移動可能量は、幅Lの2%以上に設定される。
【0054】
(測定対象位置、算出方法)
凹凸部13の高さの測定および算出は、様々に行うことが可能である。凹凸部13が凸部13aの場合、凸部13aの両端部13a1・13a2の少なくともいずれかと、凸部13aの頂部13a3(所定部)と、で指示値が測定される。好ましくは、凸部13aの両端部13a1・13a2のそれぞれと、凸部13aの頂部13a3と、で指示値が測定される。凹凸部13の高さの算出は、管内凹凸測定装置20の外部の計算機により行われてもよく、管内凹凸測定装置20に搭載された計算機により行われてもよく、作業者が行ってもよい。なお、接触部63の形状および凸部13aの形状によっては、凸部13aの両端部13a1・13a2に接触部63の先端部を接触させることができない場合がある。この場合は、両端部13a1・13a2の近傍の円弧状部11での指示値を、両端部13a1・13a2での指示値としてもよい。
【0055】
凸部13aの高さの算出方法の具体例は、次のとおりである。[例A1]両端部13a1・13a2のうちいずれか一方での指示値と、頂部13a3での指示値と、の差を、凸部13aの高さとしてもよい。[例A2]好ましくは、両端部13a1・13a2での指示値の平均値と、頂部13a3での指示値と、の差を、凸部13aの高さとする。
【0056】
凹凸部13が凹部13bの場合は、凹部13bの両端部13b1・13b2の少なくともいずれかと、凹部13bの底部13b3(所定部)と、で指示値が測定される。好ましくは、凹部13bの両端部13b1・13b2のそれぞれと、凹部13bの底部13b3と、で指示値が測定される。
【0057】
凹部13bの高さの算出方法の具体例は、次のとおりである。[例B1]両端部13b1・13b2のうちいずれか一方での指示値と、底部13b3での指示値と、の差を、凹部13bの高さ(深さ)としてもよい。[例B2]好ましくは、両端部13b1・13b2での指示値の平均値と、底部13b3での指示値と、の差を、凹部13bの高さとする。
【0058】
(本体部中心軸21aが管10の中心軸と一致する場合)
上記[例A2]や[例B2]が好ましい理由は次のとおりである。例えば、
図6に示す偏心部15が無い場合や、偏心部15の高さが無視できる程度に低い場合など、軸方向Zから見て内面10aが真円に近い場合には、本体部中心軸21aは、管10の中心軸と一致または略一致する。この場合、理論的には、周方向Cのどの位置でも(測定部50の回転角度がどのような角度でも)、凹凸部13の高さを誤差なく測定することができる。
【0059】
具体例を、
図12を参照して説明する。例えば、管10の中心軸に対する本体部中心軸21aのずれaを0mm、管10の内径d(直径)を300mm、凸部13aの高さhを20mmとする。このとき、本体部中心軸21aから、凸部13aの両端部13a1・13a2までの長さr1、r2は、いずれも150mm(すなわち内径dの1/2)である。本体部中心軸21aから、凸部13aの頂部13a3までの長さiは、130mmである。すると、長さr1と長さiとの差(r1-i)の大きさは、20mmであり、凸部13aの高さhと一致する(長さr2と長さiとの差(r2-i)の大きさも同様)。
【0060】
なお、
図9に示す例では、測長部61bの目盛り(指示値の一例)は、測定子60が最も後退側Sbに配置された状態で0である。そのため、測長部61bの目盛りの値は、
図12に示す本体部中心軸21aを基準とした長さr1、r2、およびiの値と一致しない。一方で、
図9に示す測長部61bの指示値の差、例えば
図5に示す端部13a1での指示値と頂部13a3での指示値との差は、
図12に示す本体部中心軸21aを基準とした長さの差、例えば長さr1と長さiとの差と一致する。
【0061】
(本体部中心軸21aが管10の中心軸に対してずれる場合)
図6に示すように、偏心部15の高さが無視できない程度に高い場合など、軸方向Zから見て内面10aが真円でない場合には、本体部中心軸21aは、管10の中心軸に対してずれる。例えば、複数のアウトリガ37のうちの一部が、偏心部15に接触することにより、本体部中心軸21aが、管10の中心軸に対してずれる。すると、上記[例A1]のような算出方法では、凹凸部13の高さに誤差が生じる。一方、上記[例A2]や[例B2]では、誤差を小さくすることができる。
【0062】
具体例を、
図12を参照して説明する。例えば、ずれaを20mm、内径dを300mm、高さhを20mmとする。このとき、長さr1は、153.94mmであり、長さr2は、148.67mmである。長さiは、131.53mmである。すると、r1-iは、22.41mmであり、凸部13aの高さh(=20mm)に対して+2.4mmの誤差が生じる。また、r2-iは、17.14mmであり、凸部13aの高さh(=20mm)に対して-2.9mmの誤差が生じる。
【0063】
一方、長さr1とr2との平均値を用いることで、上記誤差を小さくすることができる。具体的には、(r1+r2)÷2-iは、19.78mmであり、凸部13aの高さh(=20mm)に対して-0.22mmの誤差である。同様に、ずれaが10mmであれば、上記誤差は-0.05mmとなる。ずれaが30mmであれば、上記誤差は-0.50mmとなる。ずれaが40mmであれば、上記誤差は-0.87mmとなる。カメラ19(
図1参照)が撮影した画像から、
図9に示す測長部61bの1mm間隔の目盛りを読み取ることで指示値を取得する場合には、1mm未満の誤差は、許容範囲内といえる。
【0064】
(効果)
図1に示す管内凹凸測定装置20による効果は次の通りである。
【0065】
(第1の発明の効果)
管内凹凸測定装置20は、管10の内面10aの凹凸部13の高さを測定するものである。管内凹凸測定装置20は、本体部21と、センタリング部30と、測定部50と、
図3に示す回転部40と、を備える。本体部21は、本体部中心軸21aを有する。センタリング部30は、本体部21に対して軸直交方向R(本体部軸直交方向)に拡縮し、本体部中心軸21aを管10(
図1参照)の中心軸に近づける。測定部50は、本体部中心軸21aを中心に回転可能に本体部21に取り付けられる。回転部40は、本体部21に対して測定部50を回転駆動させる。
図8に示すように、測定部50は、ベース部51と、測定子60と、測定子駆動部53と、を備える。ベース部51は、本体部21に回転可能に取り付けられる。測定子60は、軸直交方向Rに移動可能にベース部51に取り付けられる。測定子駆動部53は、測定子移動方向Sに、測定子60を駆動させる。測定子移動方向Sは、ベース部51に対する測定子60の移動方向であって、軸直交方向Rである。
図5に示すように、測定部50は、測定子60が管10の内面10aに接触したときのベース部51部に対する測定子60の測定子移動方向Sにおける位置を測定するように構成される。
図10に示すように、測定子60は、測定子基部61と、接触部63と、を備える。測定子基部61は、ベース部51に取り付けられる。接触部63は、測定子基部61に対して固定され、管10の内面10a(
図5参照)に接触可能である。
【0066】
[構成1]接触部63は、測定子基部61から、測定子移動方向Sかつ軸直交方向外側Roに延びる。接触部63の長手方向は、測定子移動方向Sである。測定子移動方向Sに直交する方向における接触部63の最大幅は、測定子移動方向Sに直交する方向における測定子基部61の最大幅よりも狭い。
【0067】
上記[構成1]では、
図5に示す管10の内面10aに接触する接触部63は、細長形状を有している。よって、接触部63が、上記[構成1]のような細長形状を有していない場合に比べ、接触部63の先端部を、管10の内面10aの凹凸部13およびその周辺部に容易に接触させることができる。よって、管10の内面10aの凹凸部13の高さを、容易に測定することができる。
【0068】
(第2の発明の効果)
[構成2]
図4に示すように、管10の内面10aに接触したセンタリング部30の先端部から、本体部中心軸21aまでの軸直交方向Rにおける長さをAとする。ベース部51に対して測定子60が最も後退された状態(収納状態)のときの、測定子60の先端部から本体部中心軸21aまでの軸直交方向Rにおける長さをBとする。このとき、A-Bは、10mm以上である。
【0069】
上記[構成2]では、測定子60が収納状態のとき、センタリング部30の先端部よりも10mm以上軸直交方向内側Riの位置(軸直交方向Rにおける位置)に、測定子60の先端部が配置される。ここで、長さAは、管10の内面10aの半径(さらに詳しくは円弧状部11の半径)に略等しい。よって、管10の内面10aの円弧状部11よりも約10mm以上軸直交方向内側Riの軸直交方向R位置に、測定子60の先端部が配置される。よって、内面10aへの測定子60の干渉を抑制することができる。
【0070】
(第3の発明の効果)
図5に示すように、管10の内面10aに接触したセンタリング部30の先端部から本体部中心軸21aまでの軸直交方向Rにおける長さAの2倍を幅Lとする。
【0071】
[構成3-1]幅Lが300mm以下の場合、ベース部51に対する測定子60の測定子移動方向Sにおける移動可能量は、6mm以上である。
【0072】
[構成3-2]幅Lが300mmを超える場合、ベース部51に対する測定子60の測定子移動方向Sにおける移動可能量は、幅Lの2%以上である。
【0073】
上記[構成3-1]により、幅Lが300mm以下の場合に、高さ6mm以下の凸部13aの高さを測定できる。上記[構成3-2]により、幅Lが300mm超える場合に、幅Lの2%以下の高さの凸部13aの高さを測定できる。
【0074】
(第4の発明の効果)
管内凹凸測定装置20を用いた管内凹凸測定方法による効果は、次のとおりである。管内凹凸測定方法は、測定ステップと、算出ステップと、を備える。測定ステップは、
図5に示すベース部51に対する測定子60の測定子移動方向Sにおける位置を示す値である指示値を、凹凸部13の両端部13a1・13a2と、凹凸部13の両端部13a1・13a2の間の所定部(頂部13a3)と、のそれぞれで測定する。
【0075】
[構成4]算出ステップは、凹凸部13の両端部13a1・13a2での指示値の平均値と、凹凸部13の所定部での指示値と、の差を、凹凸部13の高さとして算出する。
【0076】
上記「所定部」は、凹凸部13が凸部13aの場合は頂部13a3であり、凹凸部13が凹部13bの場合は底部13b3である。
【0077】
上記[構成4]により、管10の中心軸に対して本体部中心軸21aが多少ずれていても、凹凸部13の高さを精度よく算出できる。
【0078】
(第2実施形態)
図13を参照して、第2実施形態の管内凹凸測定装置220について、第1実施形態との相違点を説明する。なお、管内凹凸測定装置220のうち、第1実施形態との共通点については、説明を省略する。管内凹凸測定装置220のうち、第1実施形態と同一の符号を付した部分は、第1実施形態との共通点である。共通点の説明を省略する点については、後述する他の実施形態の説明も同様である。管内凹凸測定装置220は、駆動部273と、反力受け部275と、を備える。
【0079】
駆動部273は、ベース部51に対して反力受け部275を駆動させる。駆動部273は、例えば測定子駆動部53と略同様に構成される。
【0080】
反力受け部275は、測定部50が管10の内面10aに接触したときの反力を受ける。反力受け部275は、管10に対する本体部21のずれ(後述)を抑制するための部分である。反力受け部275は、駆動部273により、測定子移動方向Sに駆動される。反力受け部275は、駆動部273により、ベース部51に対して後退側Sb(測定子60の後退側Sb)に突出するように駆動される。ベース部51に対して測定子60が進出側Saに駆動されたとき、反力受け部275は、例えば、ベース部51に対して後退側Sbに駆動される(測定子60と連動する)。なお、反力受け部275は、測定子60と連動しなくてもよい。反力受け部275は、駆動部273に対して着脱可能でもよい(測定子駆動部53に対する測定子60の取り付けと同様)。反力受け部275は、クッション部275aを備える。クッション部275aは、管10の内面10aに接触可能である。クッション部275aは、例えば弾性部材であり、例えばエラストマーであり、例えばゴムなどである。
【0081】
(作動)
軸方向Zから見て内面10aが真円でない場合であって、複数のアウトリガ37の軸直交方向Rにおける位置が連動する場合は、複数のアウトリガ37の一部のみが内面10aに接触する場合がある。また、測定子60が内面10aを押す向き(進出側Sa)とは逆向きの力(後退側Sbの反力)が、測定部50を介して本体部21に作用する。すると、管10に対して本体部21が後退側Sbにずれる場合がある。このずれは、軸方向Zから見て内面10aに接触しているアウトリガ37が延びる方向(
図13では上下方向)と、測定子移動方向Sと、のなす角度が大きいほど(90°に近いほど)生じやすい。そこで、反力受け部275が、内面10aのうち、接触部63が接触した部分の軸直交方向R反対側の部分に接触する。これにより、反力受け部275が、後退側Sbの反力を支持する。よって、管10に対する本体部21の軸直交方向Rへのずれが抑制される。
【0082】
なお、管10に対する本体部21のずれが生じた場合でも、凸部13aの両端部13a1・13a2および頂部13a3を測定する際に、管10に対する本体部21の位置が一定または略一定であれば、凸部13aの高さの測定結果に支障は生じない。凹部13bの場合も同様である。そのため、反力受け部275は、設けられなくても構わない。
【0083】
(第3実施形態)
図14~
図15を参照して、第3実施形態の管内凹凸測定装置320について、第1実施形態との相違点を説明する。相違点は、測定子基部361、接触部363、および中継部材365などにある。
【0084】
図8に示す例では、測定子基部61は、1枚の板状であった。一方、
図14に示すように、本実施形態では、測定子基部361は、L字状の板状である。測定子基部361は、測長部61b(第1実施形態と同様)と、測定子移動方向Sに延びる部分361aと、部分361aの進出側Sa端部から軸方向前側Zfに延びる部分361cと、を備える。
【0085】
図10に示す接触部63の構成(部品数、長さ、形状など)は、管10(
図4参照)の内径に応じて様々に変更されてもよい。
図8に示す例では、接触部63の軸方向Zの厚さは、接触部63の基端部から先端部にわたって一定であった。一方、
図14に示すように、本実施形態では、先端部材363cの軸方向Zの幅(厚さ)は、先端部材363cの先端部に向かって小さく(細く)なる。
【0086】
図10に示す例では、接触部63は、測定子基部61と一体的に構成された。一方、
図15に示すように、本実施形態では、接触部363は、測定子基部361とは別体である。接触部363は、中継部材365を介して、測定子基部361に固定される。
【0087】
中継部材365は、測定子基部361の部分361cに固定され、部分361cから進出側Saに突出する。中継部材365は、例えばねじにより、測定子基部61に着脱可能である。接触部363は、中継部材365から進出側Saに延びる。接触部363は、例えばねじにより、中継部材365に着脱可能である。なお、管10(
図5参照)の内径に応じて、中継部材365が複数設けられてもよく、中継部材365が設けられなくてもよい。接触部363は、例えばねじにより、部分361cに着脱可能でもよい。
【0088】
(第4実施形態)
図16~
図17を参照して第4実施形態の管内凹凸測定装置420について、第3実施形態との相違点を説明する。相違点は、ベース部451および出力部453cなどにある。
【0089】
図10に示すベース部51の形状は、様々に変形されてもよい。
図10に示す例では、ベース部51は、突出部51aを備えたが、
図17に示す本実施形態のベース部451は、突出部51a(
図10参照)を備えない。
【0090】
図8に示す測定子駆動部53の構成(例えば形状)は、測定子60を駆動可能であればどのような構成でもよい。例えば、
図8に示す例では、出力部53cは、測定子幅方向Tから見てL字状であり、測定子駆動部本体53aに対して軸方向後側Zrおよび進出側Saに配置された。一方、
図16に示すように、本実施形態では、出力部453cは、測定子幅方向Tから見てI字状であり、測定子駆動部本体53aに対して進出側Saに配置され、軸方向後側Zrには配置されない。
【0091】
(変形例)
上記の各実施形態は様々に変形されてもよい。例えば、互いに異なる実施形態の構成要素どうしが組み合わされてもよい。例えば、各構成要素の配置や形状が変更されてもよい。例えば、構成要素の数が変更されてもよく、構成要素の一部が設けられなくてもよい。例えば、構成要素どうしの固定や連結などは、直接的でも間接的でもよい。例えば、互いに異なる複数の部材や部分として説明したものが、一つの部材や部分とされてもよい。例えば、一つの部材や部分として説明したものが、互いに異なる複数の部材や部分に分けて設けられてもよい。
【符号の説明】
【0092】
10 管
10a 内面
13 凹凸部
13a3 頂部
13b3 底部
20、220、320、420 管内凹凸測定装置
21 本体部
21a 本体部中心軸
30 センタリング部
40 回転部
50 測定部
51、451 ベース部
53 測定子駆動部
60 測定子
61、361 測定子基部
63、363 接触部
R 軸直交方向(本体部軸直交方向)
Ro 軸直交方向外側(本体部軸直交方向外側)
S 測定子移動方向