(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 67/00 20060101AFI20240209BHJP
C08L 67/03 20060101ALI20240209BHJP
C08K 3/00 20180101ALI20240209BHJP
【FI】
C08L67/00
C08L67/03
C08K3/00
(21)【出願番号】P 2020067451
(22)【出願日】2020-04-03
【審査請求日】2022-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000214272
【氏名又は名称】長瀬産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100186185
【氏名又は名称】高階 勝也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 英樹
(72)【発明者】
【氏名】谷本 裕亮
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-008243(JP,A)
【文献】特開2014-028920(JP,A)
【文献】特開2002-338709(JP,A)
【文献】国際公開第2019/146807(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 - 101/16
C08K 3/00 - 13/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成分として、結晶性ポリエステル系樹脂と、非晶性コポリエステル系樹脂とを含
む、樹脂組成物であって、
該非晶性コポリエステル系樹脂が、テレフタル酸系モノマー由来の構成単位と、1,4-シクロヘキサンジメタノール由来の構成単位を含み、
該結晶性ポリエステル系樹脂の含有割合が、該樹脂成分100重量部に対して、50重量部~90重量部であり、
該非晶性コポリエステル系樹脂の含有割合が、該樹脂成分100重量部に対して、10重量部~50重量部であ
り、
該非晶性コポリエステル系樹脂のガラス転移温度(Tg)が、100℃~140℃であり、
該樹脂組成物の280℃、2.16kgfにおけるメルトフローレートが、10g/10min~65g/10minである、
樹脂組成物。
【請求項2】
前記結晶性ポリエステル系樹脂が、ポリエチレンテレフタレートおよび/またはポリブチレンテレフタレートである、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
フィラーをさらに含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記フィラーが、タル
クである、請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記フィラーの含有割合が、前記樹脂成分100重量部に対して、80重量部以下である、請求項3または4に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
溶融混練により調製された、請求項1から5のいずれかに記載の樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物に関する。より詳細には、ポリエステル系樹脂を含む樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ポリエステル系樹脂は、容器をはじめとした多種多様な用途に適用されている。例えば、耐熱性、機械的特性等に優れたポリエステル系樹脂としてビスフェノールを原料とする樹脂(例えば、ポリカーボネート)が知られている。このような樹脂は、優れた上記特性を有する一方、ビスフェノールを含むことで、例えば、食品容器として当該樹脂を用いた場合の人体への影響、環境適性に関する問題を有している。このような事情を要因のひとつとして、ビスフェノールを原料とする樹脂(例えば、ポリカーボネート)を含む樹脂組成物を代替するような樹脂組成物が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、ポリエステル系樹脂を含み、耐熱性および機械的特性に優れた成形体を形成し得る樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の樹脂組成物は、樹脂成分として、結晶性ポリエステル系樹脂と、非晶性コポリエステル系樹脂とを含み、該非晶性コポリエステル系樹脂が、テレフタル酸系モノマー由来の構成単位と、1,4-シクロヘキサンジメタノール由来の構成単位を含み、該結晶性ポリエステル系樹脂の含有割合が、該樹脂成分100重量部に対して、50重量部~90重量部であり、該非晶性コポリエステル系樹脂の含有割合が、該樹脂成分100重量部に対して、10重量部~50重量部である。
1つの実施形態においては、上記結晶性ポリエステル系樹脂が、ポリエチレンテレフタレートおよび/またはポリブチレンテレフタレートである。
1つの実施形態においては、上記樹脂組成物は、フィラーをさらに含む。
1つの実施形態においては、上記フィラーが、タルク、硫酸マグネシウム繊維またはガラス繊維である。
1つの実施形態においては、上記フィラーの含有割合が、上記樹脂成分100重量部に対して、80重量部以下である。
1つの実施形態においては、上記樹脂組成物は、溶融混練により調製される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ポリエステル系樹脂を含み、耐熱性および機械的特性(特に、寸法安定性)にすぐれた成形体を形成し得る樹脂組成物を提供することができる。本発明の樹脂組成物は、ビスフェノールAを原料とする樹脂を含有することなく、耐熱性および機械的特性の向上を実現できる点で有用である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
A.樹脂組成物
本発明の樹脂組成物は、樹脂成分として、結晶性ポリエステル系樹脂と、非晶性コポリエステル系樹脂を含む。非晶性コポリエステル系樹脂は、テレフタル酸系モノマー由来の構成単位と、1,4-シクロヘキサンジメタノール由来の構成単位を含む。結晶性ポリエステル系樹脂の含有割合は、樹脂成分100重量部に対して、50重量部~90重量部である。また、非晶性コポリエステル系樹脂の含有割合は、樹脂成分100重量部に対して、10重量部~50重量部である。
【0008】
本発明においては、結晶性ポリエステル系樹脂(好ましくは、ポリエチレンテレフタレートおよび/またはポリブチレンテレフタレート)と、上記特定の非晶性コポリエステル系樹脂とを併用することにより、耐熱性および機械的特性(特に、寸法安定性)に優れる成形体を形成し得る樹脂組成物を得ることができる。より詳細には、従来、ポリエステル系樹脂(ビスフェノールAを原料としない樹脂)においては、耐熱性および機械的特性を両立することは困難であったが、本発明よれば、結晶性ポリエステル系樹脂と、上記特定の非晶性コポリエステル系樹脂とを併用し、これらの含有比率を最適化することにより、耐熱性および機械的特性(特に、寸法安定性)の両方ともがバランスよく調整された成形体を形成し得る樹脂組成物を得ることができる。
【0009】
1つの実施形態においては、上記樹脂組成物は、フィラーをさらに含み得る。フィラーを含有することにより、機械的特性に顕著に優れる成形体を形成し得る樹脂組成物を得ることができる。
【0010】
上記樹脂組成物の280℃、2.16kgfにおけるメルトフローレートは、好ましくは0.1g/10min~150g/10minであり、より好ましくは5g/10min~80g/10minであり、さらに好ましくは10g/10min~65g/minである。このような範囲であれば、成形加工性に特に優れる樹脂組成物を得ることができる。
【0011】
A-1.樹脂成分
上記樹脂組成物中、樹脂成分の含有割合は、好ましくは樹脂組成物100重量部に対して、55重量部以上であり、より好ましくは80重量部以上である。
【0012】
(結晶性ポリエステル系樹脂)
上記結晶性ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート等が挙げられる。なかでも好ましくは、ポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートであり、より好ましくはポリブチレンテレフタレートである。本発明においては、結晶性ポリエステル系樹脂(好ましくは、ポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレート、より好ましくはポリブチレンテレフタレート)を含有させることにより、耐熱性に優れる成形体を成形し得る樹脂組成物を得ることができる。なお、本明細書において、結晶性または非晶性であるかはDSC測定により判断することができる。具体的には、以下の方法で判断することができる。樹脂試料を示差走査型熱量計(DSC)を用いてJIS K 7121に準拠して10℃/分の昇温速度で-100℃から300℃まで加熱溶融させ、300℃にて10分間に亘って保持し、次に、試料を10℃/分の降温速度で-100℃まで降温する。次に、試料を10℃/分の昇温速度にて-100から300℃まで加熱溶融させ、この二回目の昇温工程において、融解ピークを示さないものを非晶性とし、溶融ピークを示すものを結晶性とする。
【0013】
上記のとおり、結晶性ポリエステル系樹脂の含有割合は、樹脂成分100重量部に対して、50重量部~90重量部である。結晶性ポリエステル系樹脂の含有割合は、樹脂成分100重量部に対して、好ましくは55重量部~85重量部であり、より好ましくは60重量部~80重量部である。このような範囲であれば、本発明の効果は顕著となる。
【0014】
1つの実施形態においては、結晶性ポリエステル系樹脂として、ポリブチレンテレフタレート(PBT)とその他の結晶性ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET))とが併用される。この場合、結晶性ポリエステル系樹脂100重量部に対するPBTの含有割合は、好ましくは50重量部以上であり、より好ましくは70重量部以上であり、さらに好ましくは90重量部以上である。ポリブチレンテレフタレート(PBT)を多く用いれば、本発明に効果は顕著となり、耐熱性に顕著に優れる成形体を成形し得る樹脂組成物を得ることができる。別の実施形態においては、結晶性ポリエステル系樹脂として、PBTのみが用いられる。
【0015】
結晶性ポリエステル系樹脂の融点(Tm)は、好ましくは160℃~300℃であり、より好ましくは200℃~280℃である。このような範囲であれば、耐熱性に優れる成形体を型性し得る樹脂組成物を得ることができる。融点(Tm)は、JIS K7121:1987に準じて測定され得る。
【0016】
(コポリエステル系樹脂)
上記のとおり、コポリエステル系樹脂は、テレフタル酸系モノマー由来の構成単位と、1,4-シクロヘキサンジメタノール由来の構成単位を含む。すなわち、コポリエステル系樹脂は、ジカルボン酸成分としてのテレフタル酸系モノマーと、ジオール成分としての1,4-シクロヘキサンジメタノールを含むモノマー組成物から得られた樹脂である。このような特定のコポリエステル系樹脂を添加することにより、耐熱性の低下を抑制しつつ、機械的特性(特に寸法安定性)に優れる成形体を形成することが可能となる。コポリエステル系樹脂は、非晶性であることが好ましい。
【0017】
上記テレフタル酸系モノマーは、テレフタル酸またはテレフタル酸の誘導体であり得る。すなわち、コポリエステル系樹脂は、テレフタル酸由来の構成単位および/またはテレフタル酸の誘導体由来の構成単位を含み得る。
【0018】
テレフタル酸の誘導体としては、例えば、テレフタル酸のハロゲン化物、エステル、半エステル、塩、半塩、無水物、混合無水物、これらの混合物当該挙げられる。テレフタル酸の誘導体としては、例えば、テレフタル酸のジアルキルエステル、ジアリールエステル等が挙げられ、その具体例としては、ジメチルテレフタレート(DMT)、ジエチルテレフタレート等が挙げられる。
【0019】
上記コポリエステル系樹脂は、その他のモノマー由来の構成単位をさらに含んでいてもよい。1つの実施形態においては、テレフタル酸系モノマー以外のジカルボン酸(その他のジカルボン酸)由来の構成単位をさらに含む。その他のジカルボン酸としては、例えば、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、スチルベンジカルボン酸等が挙げられる。シクロヘキサンジカルボン酸としては、1,3-および/または1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。コポリエステル系樹脂がその他のジカルボン酸由来の構成単位を含む場合、テレフタル酸系モノマー由来の構成単位の含有割合は、ジカルボン酸全量(テレフタル酸系モノマー由来の構成単位およびその他のジカルボン酸由来の構成単位の合計量)に対して、好ましくは40モル%以上であり、より好ましくは40モル%~90モル%であり、さらに好ましくは50モル%~85モル%である。
【0020】
上記コポリエステル系樹脂は、1,4-シクロヘキサンジメタノール以外のジオール(その他のジオール)由来の構成単位をさらに含んでいてもよい。その他のジオールとしては、例えば、脂肪族または脂環式グリコール(好ましくは、炭素数2~20)が挙げられる。その他のジオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2,4,4-テトラメチルシクロブタンジオール等が挙げられる。
【0021】
1つの実施形態において、上記コポリエステル系樹脂は、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール由来の構成単位をさらに含む。当該構成単位を含むコポリエステル系樹脂を用いれば、機械的特性により優れる成形体を形成し得る樹脂組成物を得ることができる。コポリエステル系樹脂が、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール(TMCD)由来の構成単位を含む場合、1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHDM)由来の構成単位の含有割合は、TMCD由来の構成単位およびCHDM由来の構成単位の合計に対して、好ましくは10モル%~90モル%であり、より好ましくは20モル%~85モル%であり、さらに好ましくは30モル%~80モル%である。また、TMCD由来の構成単位の含有割合は、TMCD由来の構成単位およびCHDM由来の構成単位の合計に対して、好ましくは10モル%~90モル%であり、より好ましくは15モル%~80モル%であり、さらに好ましくは20モル%~70モル%である。
【0022】
上記コポリエステル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは90℃~200℃であり、より好ましくは100℃~180℃であり、さらに好ましくは100℃~160℃であり、特に好ましくは100℃~140℃である。このような範囲であれば、耐熱性に優れる成形体を形成し得る樹脂組成物を得ることができる。
【0023】
上記コポリエステル系樹脂は、任意の適切な方法により製造され得る。また、上記コポリエステル系樹脂は市販品を用いてもよい。コポリエステル系樹脂の市販品としては、例えば、イーストマンケミカル社製のトライタンシリーズが挙げられる。
【0024】
(その他の樹脂)
上記樹脂組成物は、樹脂成分として、その他の樹脂をさらに含んでいてもよい。その他の樹脂としては、熱可塑性樹脂が好ましく用いられる。その他の樹脂としては、例えば、上記結晶性ポリエステル系樹脂および上記コポリエステル系樹脂以外のポリエステル系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリメタクリレート系樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等が挙げられる。好ましくは、その他の樹脂として、ビスフェノールA由来の構成単位を含まない樹脂が用いられ得る。すなわち、本発明の樹脂組成物は、ビスフェノールA由来の構成単位を含む樹脂を、含まないことが好ましい。
【0025】
その他の樹脂の含有割合は、樹脂成分100重量部に対して、好ましくは50重量部以下であり、より好ましくは40重量部以下であり、さらに好ましくは30重量部以下であり、さらに好ましくは20重量部以下であり、さらに好ましくは10重量部以下であり、特に好ましくは5重量部以下である。
【0026】
A-2.フィラー
上記フィラーの含有割合は、樹脂成分100重量部に対して、好ましくは80重量部以下であり、より好ましくは5重量部~70重量部であり、さらに好ましくは8重量部~60重量部であり、特に好ましくは10重量部~40重量部であり、最も好ましくは12重量部~30重量部である。このような範囲であれば、機械的特性に優れる成形体を形成し得る樹脂組成物を得ることができる。
【0027】
上記フィラーとしては、無機フィラーが好ましく、成形体の機械的特性を向上させ得るフィラーが好ましい。
【0028】
上記フィラーとしては、例えば、タルク、硫酸マグネシウム繊維、ガラス繊維、炭素繊維、マイカ、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、リン酸アンモニウム塩、珪酸塩類、炭酸塩類、カーボンブラック等が挙げられる。中でも、タルク、硫酸マグネシウム繊維、ガラス繊維が好ましく用いられ得る。これらのフィラーは、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
(タルク)
タルクは、含水ケイ酸マグネシウムを粉砕したものである。含水ケイ酸マグネシウムの結晶構造は、パイロフィライト型三層構造であり、タルクはこの構造が積み重なったものである。タルクとしては、含水ケイ酸マグネシウムの結晶を単位層程度にまで微粉砕した平板状のものが好ましい。タルクは、無処理のまま使用してもよく、各種シランカップリング剤、チタンカップリング剤、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸塩類、または、他の界面活性剤により表面を処理したものを使用してもよい。
【0030】
上記タルクの平均粒子径は、好ましくは8μm以下である。本明細書において、タルクの平均粒子径とは、遠心沈降式粒度分布測定装置を用いて、水中にタルクを懸濁させて測定した篩下法の積分分布曲線から求めた50%相当粒子径D50を意味する。
【0031】
(硫酸マグネシウム繊維)
硫酸マグネシウム繊維の平均繊維長は、好ましくは5μm~50μmであり、より好ましくは10μm~30μmである。また、硫酸マグネシウム繊維の平均繊維径は、好ましくは0.3μm~2μmであり、より好ましくは0.5μm~1μmである。製品としては、宇部興産(株)製、商品名「モスハイジ」などが挙げられる。
【0032】
(ガラス繊維)
ガラス繊維としては、Eガラス(Electrical glass)、Cガラス(Chemical glass)、Aガラス(Alkali glass)、Sガラス(High strength glass)および耐アルカリガラスなどのガラスを溶融紡糸して、フィラメント状の繊維にしたものを挙げることができる。
【0033】
A-3.その他の成分
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、任意の適切な添加剤をさらに含み得る。添加剤としては、例えば、流動改質剤、メヤニ防止剤、熱安定剤、耐候剤等の安定剤、顔料、染料等の着色剤、滑剤、架橋剤、架橋助剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、溶剤等が挙げられる。
【0034】
A-4.樹脂組成物の製造方法
本発明の樹脂組成物は、任意の適切な方法により製造され得る。該製造方法としては、例えば、樹脂成分(結晶性ポリエステル系樹脂、非晶性コポリエステル系樹脂、必要に応じて用いられるその他の樹脂)と、必要に応じて用いられる上記フィラーおよび/またはその他の成分を含む樹脂組成物を溶融混練する方法(メルトブレンド法)が挙げられる。溶融混練の方法としては、例えば、単軸押出機、多軸押出機、タンデム式押出機、バンバリーミキサー等を用いた方法が挙げられる。溶融混練により、樹脂組成物を製造することにより、剛性に優れる成形体を形成し得る樹脂組成物を得ることができる。
【0035】
上記溶融混練における加工温度は、樹脂組成物に含有される樹脂が溶融し得る温度であることが好ましい。該温度は、例えば、150℃~330℃である。
【0036】
B.成形体
本発明によれば、上記樹脂組成物を用いて形成された成形体が提供され得る。該成形体を成形する方法としては、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、異形押出成形法、発泡成形法、ラム押出成形法、固化押出法、パイプ成形法、チューブ成形法、異種成形体の被覆成形法、インジェクションブロー成形法、ダイレクトブロー成形法、Tダイシートまたはフィルム成形法、延伸成形法、インフレーション成形法、カレンダー成形法、プレス成形法、回転成形法、真空成形法、圧空成形法、溶融紡糸等が挙げられる。
【0037】
上記成形体は、耐熱性および機械的特性(特に、寸法安定性)に優れる。
【実施例】
【0038】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。実施例における評価方法は以下のとおりである。なお、部および%は特に断りのない限り重量基準に基づく。
【0039】
<樹脂試料片の作成>
実施例および比較例で得た樹脂組成物を、それぞれ、射出成形機(日本製鋼所社製:J110AD-110H)を用いて、シリンダ温度270℃、金型温度80℃の条件で射出成形することによって樹脂試料片を作製した。各樹脂試料片は、多目的試験片JISK7139タイプA1、および幅100mm、長さ100mm、厚み2mmの板状成形品とした。
【0040】
(1)荷重たわみ温度
上記樹脂試料片について、JISK7191-1、-2に準拠し、測定を行った。荷重は、0.45MPaおよび1.80MPaとした。
【0041】
(2)ヒートサグ試験
上記樹脂試料片について、JIS K 7195に準拠し、測定を行った。試験片寸法は幅10mm、長さ125mm、厚み4mmとした。試験温度は120℃、試験時間は1時間とした。
【0042】
(3)熱縮率測定
上記樹脂試料片を140℃の熱風循環式乾燥機で1h処理する。処理前後の成形品の各辺の長さを測定し、{([処理後の長さ]-([処理前の長さ])/[処理前の長さ]}×100を算出した。射出成型時の流動方向に平行な方向をMD方向、垂直な方向をTD方向とし、各方向について収縮率を測定した。さらに、([MD方向の収縮率]―[TD方向の収縮率])算出し、収縮率の異方性とした。収縮率の異方性の値は0に近いほど成形品の反りが起こりにくくなるため好ましく、好ましい範囲は+0.20~―0.20であり、より好ましい範囲は+0.15~―0.15であり、最も好ましい範囲は+0.10~―0.10である。
【0043】
(4)比重
上記樹脂試料片について、JIS7112記載のA法に準拠し、水上置換法で測定を行った。
【0044】
(5)メルトマスフローレート(MFR)
実施例および比較例で得た樹脂組成物について、JISK7210に準拠し、東洋精機製作所社製の「メルトインデクサー」を用いてメルトマスフローレート(MFR)を測定し、流動性を評価した。樹脂組成物のMFR試験における試験条件は、温度:280℃、荷重:2.16kgfとした。
【0045】
(6)引張強度、破断伸び
上記樹脂試料片について、JISK7161-1、-2に準拠し、測定を行った(測定温度:23℃、引張速度50mm/min)。
【0046】
(7)曲げ強度、弾性率
上記樹脂試料片について、JISK7171に準拠し、測定を行った(測定温度:23℃)。
【0047】
(8)シャルピー衝撃強度
上記樹脂試料片について、JISK7111-1/1eAに準拠し、測定を行った。
(測定条件)
振り子エネルギー:4J
衝撃速度 :2.9m/s(±5%)
ノッチ付
【0048】
(9)外観
射出成形機(日本製鋼所社製:J110AD-110H)を用いて、シリンダ温度270℃、金型温度80℃の条件で射出成形することによって得た幅100mm、長さ100mm、厚み2mmの板状成形品表面を目視観察によって◎~×の4段階で判定した。
◎:成形品表面に光沢感があり、成形品表面が平滑な状態
〇:成形品表面に光沢感があるが、やや凹凸が見える状態
△:成形品表面に光沢感がない状態
×:成形品表面に光沢感がなく、フィラー浮きによって荒れている状態
【0049】
[実施例1]
非晶性コポリエステル系樹脂(イーストマンケミカル社製、商品名「Tritan TX2001」)32重量部と、結晶性ポリエステル(ポリブチレンテレフタレート(PBT)、三菱エンジニアリングプラスチックス社製、商品名「Novaduran5010L」)48重量部と、タルク(林化成社製、商品名「FU-51」)20重量部とを二軸押出機(東芝機械社製TEM26SS、スクリュ径26mm)を用いて、溶融温度270℃で溶融混練を行った。溶融物を二軸押出機からストランド状に押出して冷却固化した後、ペレット状に切断し樹脂組成物を得た。
【0050】
[実施例2~16、比較例1~15]
樹脂成分およびフィラーを表1に示すとおりとしたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。なお、実施例10および11においては、添加剤(ADEKA社製、商品名「AX-71」)0.27重量部をさらに含有させた。
表1中に記載の「Tritan TX1001」、「ULTRADUR B2550FC」、「ULTRADUR B4500FC」、「硫酸マグネシウム繊維」、「ガラス繊維」の内容は以下のとおりである。
<非晶性コポリエステル系樹脂>
「Tritan TX2001」:イーストマンケミカル社製、商品名「Tritan TX1001」
<結晶性ポリエステル>
「PBT(A)」:PBT、BASF社製、MFR(280℃、2.16kg):40g/10分)
「PBT(B)」:PBT、BASF社製、MFR(280℃、2.16kg):19g/10分)
<フィラー>
「硫酸マグネシウム繊維」:宇部マテリアルズ社製、商品名「モスハイジ」
「ガラス繊維」:日東紡社製、商品名「CS3PE-941S」
【0051】
【0052】
【0053】
表1から明らかなように、本発明の樹脂組成物は、耐熱性および機械的特性に優れる成形体を形成し得る。また、表2に示すように、本発明においては、非結晶コポリエステル系樹脂に特定量の結晶性ポリエステルを添加することにより、耐熱性が向上する。なお、比較例3および4は、ヒートザグ試験の結果は良好であるが、表1に示すように荷重たわみ温度で評価される耐熱性に劣る。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の樹脂組成物は、主にホース・チューブ、ベルト、電線、ケーブル、パイプ、履物、自動車部品、接着剤、シール材、スキー靴のアウターブーツ、食器、防振・防音部品、スノーチェイン、ローラー、時計バンド、各種成形体の材料として好適に用いられ得る。