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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】風車翼、風車、及び、風車翼の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F03D 1/06 20060101AFI20240209BHJP
   F03D 80/30 20160101ALI20240209BHJP
【FI】
F03D1/06 A
F03D80/30
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020089416
(22)【出願日】2020-05-22
(65)【公開番号】P2021183827
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2023-01-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】藤田 健
(72)【発明者】
【氏名】新藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】竹内 博晃
(72)【発明者】
【氏名】平野 敏行
(72)【発明者】
【氏名】湯下 篤
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-156325(JP,A)
【文献】特開2013-155723(JP,A)
【文献】国際公開第2018/219524(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 1/00-80/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空空間を囲み、繊維強化プラスチックで構成された外皮を有する翼本体と、
前記翼本体の前縁部に設けられた前縁プロテクタと、
前記外皮の内表面に固定され、前記前縁プロテクタに対して前記中空空間側から接触するように配置された第1固定部材と、
前記中空空間の内側から前記第1固定部材とともに前記前縁プロテクタを固定する第2固定部材と、
を備え、
前記前縁プロテクタは、前記中空空間の内側から前記外皮に対して固定される、風車翼。
【請求項2】
前記第2固定部材は、
前記第1固定部材を貫通し、一端が前記前縁プロテクタに固定されるボルト部材と、
前記中空空間側から前記ボルト部材の他端に係合されるナット部材と、
を含む、請求項に記載の風車翼。
【請求項3】
前記第1固定部材は、
前記前縁プロテクタに接触する本体部と、
前記本体部に接続され、前記外皮の内表面に沿って延在する延在部と、
を備える、請求項又はに記載の風車翼。
【請求項4】
前記第1固定部材は、前記外皮のうち互いに対向する一対の内表面の間に固定され、
前記一対の内表面の間隔は、前記前縁部に向けて減少するように構成される、請求項からのいずれか一項に記載の風車翼。
【請求項5】
前記前縁プロテクタは、前記翼本体の翼長方向に沿って配列された複数のプロテクタ部材を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の風車翼。
【請求項6】
前記複数のプロテクタ部材は、前記翼長方向に沿って延在する支持ワイヤによって互いに連結される、請求項に記載の風車翼。
【請求項7】
前記複数のプロテクタ部材の一部が前記外皮に固定される、請求項又はに記載の風車翼。
【請求項8】
前記前縁プロテクタは導電性材料からなる、請求項1からのいずれか一項に記載の風車翼。
【請求項9】
前記前縁プロテクタは、前記外皮の外表面に沿って設けられた導電メッシュ部材に電気的に接続される、請求項に記載の風車翼。
【請求項10】
前記前縁プロテクタは、前記中空空間に配置されたダウンコンダクタに電気的に接続される、請求項又はに記載の風車翼。
【請求項11】
前記前縁プロテクタはセラミックスからなる、請求項1からのいずれか一項に記載の風車翼。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の風車翼を備える、風車。
【請求項13】
中空空間を囲む外皮を有する翼本体と、
前記翼本体の前縁部に設けられた前縁プロテクタと、
を備え、
前記前縁プロテクタは、前記中空空間の内側から前記外皮に対して固定され、
前記前縁プロテクタは、前記翼本体の翼長方向に沿って配列された複数のプロテクタ部材を含み、
前記複数のプロテクタ部材は、前記翼長方向に沿って延在する支持ワイヤによって互いに連結される、風車翼。
【請求項14】
中空空間を囲む外皮を有する翼本体と、
前記翼本体の前縁部に設けられた前縁プロテクタと、
を備え、
前記前縁プロテクタは、前記中空空間の内側から前記外皮に対して固定され、
前記前縁プロテクタは導電性材料からなり、
前記前縁プロテクタは、前記外皮の外表面に沿って設けられた導電メッシュ部材に電気的に接続される、風車翼。
【請求項15】
中空空間を囲む外皮を有する翼本体と、
前記翼本体の前縁部に設けられた前縁プロテクタと、
を備え、
前記前縁プロテクタは、前記中空空間の内側から前記外皮に対して固定され、
前記前縁プロテクタはセラミックスからなる、風車翼。
【請求項16】
中空空間を囲み、繊維強化プラスチックで構成された外皮を有する翼本体と、
前記翼本体の前縁部に設けられた前縁プロテクタと、
前記外皮の内表面に固定され、前記前縁プロテクタに対して前記中空空間側から接触するように配置された第1固定部材と、
前記中空空間の内側から前記第1固定部材とともに前記前縁プロテクタを固定する第2固定部材と、
を備え、
前記前縁プロテクタは、前記中空空間の内側から前記外皮に対して固定される、風車翼の製造方法であって、
成型用の型材に、後縁側面にボルト部材の一端が取り付けられた前縁プロテクタを配置するステップと、
前記ボルト部材が露出するように、前記前縁プロテクタ上に前記外皮の構成材料を積層するステップと、
成型物を前記型から取り出し、前記ボルト部材の他端にナットを係合するステップと、
を備える、風車翼の製造方法。
【請求項17】
前記構成材料を積層するステップでは、前記ボルト部材の前記他端に、先端が鋭利な補助部材が脱着可能に取り付けられる、請求項16に記載の風車翼の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、風車翼、風車、及び、風車翼の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば風力発電装置等に利用される風車では、回転する風車翼の前縁部に対して、雨滴や砂塵等が繰り返し衝突することによってエロージョン損傷が生じる。近年、風車の大型化に伴って風車翼の翼先端部における周速が増加しており、風車の寿命に対するエロージョン損傷の影響が大きくなっている。
【0003】
このようなエロージョン損傷を抑制することを目的として、エロージョン損傷が発生しやすい風車翼の前縁部に対して前縁プロテクタ(LEP:Leading Edge Protector)が配置されることがある。例えば特許文献1では、風車翼の周速が大きくなる翼先端側において、風車翼の前縁部をシールド部材で覆うことにより、エロージョン損傷を抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2018/219524号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のシールド部材のような前縁プロテクタは、従来、風車翼の表面に薄いテープ状の形態が用いられていたが、より優れた耐エロージョン性能を有する風車翼が求められている。また風車翼に設けられる前縁プロテクタが、このような薄い形態であったとしても、翼表面との間に少なからず凹凸が生じる。このような凹凸は、エロージョン損傷が進展する起点となる可能性があり、また風車翼の空力性能を低下させるおそれがある。
【0006】
本開示の少なくとも一態様は上述の事情を鑑みなされたものであり、空力性能を維持しながら、良好な耐エロージョン性能を獲得可能な風車翼、風車、及び、風車翼の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の少なくとも一態様に係る風車翼は、上記課題を解決するために、
中空空間を囲む外皮を有する翼本体と、
前記翼本体の前縁部に設けられた前縁プロテクタと、
を備え、
前記前縁プロテクタは、前記中空空間の内側から前記外皮に対して固定される。
【0008】
本開示の少なくとも一態様に係る風車は、上記課題を解決するために、
少なくとも一態様に係る風車翼を備える。
【0009】
本開示の少なくとも一態様に係る風車翼の製造方法は、上記課題を解決するために、
中空空間を囲む外皮を有する翼本体と、
前記翼本体の前縁部に設けられた前縁プロテクタと、
を備え、
前記前縁プロテクタは、前記中空空間の内側から前記外皮に対して固定される、風車翼の製造方法であって、
成型用の型材に、後縁側面にボルト部材の一端が取り付けられた前縁プロテクタを配置するステップと、
前記ボルト部材が露出するように、前記前縁プロテクタ上に前記外皮の構成材料を積層するステップと、
成型物を前記型から取り出し、前記ボルト部材の他端にナットを係合するステップと、
を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示の少なくとも一態様によれば、空力性能を維持しながら、良好な耐エロージョン性能を獲得可能な風車翼、風車、及び、風車翼の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係る風車を概略的に示す全体構成図である。
図2】一実施形態に係る風車翼の翼先端部側を示す模式図である。
図3】一実施形態に係る図2のA-A線断面図である。
図4図3の風車翼の製造方法を工程毎に示すフローチャートである。
図5A図4に対応する説明断面図である。
図5B図4に対応する説明断面図である。
図5C図4に対応する説明断面図である。
図6図3の他の実施形態を示す断面図である。
図7図6のB視図である。
図8図6及び図7の風車翼の製造方法を工程毎に示すフローチャートである。
図9A図8に対応する説明図である。
図9B図8に対応する説明図である。
図9C図8に対応する説明図である。
図10図8のステップS200の詳細工程の一例を示すサブフローチャートである。
図11】前縁プロテクタを構成する複数のプロテクタ部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0013】
まず本開示の少なくとも一実施形態に係る風車1の構成について説明する。図1は一実施形態に係る風車1を概略的に示す全体構成図である。
【0014】
風車1は、少なくとも1枚の風車翼2を備える。風車翼2は、ハブ4に対して取り付けられることによって、回転軸の周りに回転可能な風車ロータ6をハブ4とともに構成する。図1に示す風車1の風車ロータ6では、ハブ4に対して回転軸の周りに等間隔で3枚の風車翼2が取り付けられている。各風車翼2は、ハブ4に連結される翼根部12と、翼長方向において翼根部12と反対側にある翼先端部14と、を有する。風車ロータ6は、タワー10上に旋回可能に設けられたナセル8に対して、回転可能に取り付けられる。このような構成を有する風車1は、風が風車翼2に当たると、風車翼2及びハブ4を含む風車ロータ6が、回転軸の周りで回転する。
【0015】
尚、風車1は例えば風力発電装置として構成されてもよい。この場合、ナセル8には、発電機と、風車ロータ6の回転を発電機に伝達するための動力伝達機構とが収容される。風車1では、風車ロータ6から動力伝達機構により発電機に伝達された回転エネルギーが、発電機によって電気エネルギーに変換される。
図2は一実施形態に係る風車翼2の翼先端部14側を示す模式図であり、図3は一実施形態に係る図2のA-A線断面図である。
【0016】
風車翼2は、翼本体18を有する。翼本体18は、翼長方向に沿って翼根部12(図1を参照)から翼先端部14に向けて延在し、翼コード方向の前方側に設けられた前縁部20と、翼コード方向の後方側に設けられた後縁部22と、を有する。
【0017】
翼本体18は、繊維強化プラスチックを含む外皮を有する。外皮を構成する繊維強化プラスチックは、例えば、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP:Grass Fiber Reinforced Plastics)やカーボン繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)を用いることができる。
【0018】
本実施形態では、翼本体18は、互いに対向するように配置された背側外皮24及び腹側外皮26を含む。背側外皮24及び腹側外皮26は、翼本体18の前縁部20及び後縁部22において、互いに接続されることで、翼本体18の内部に、外皮によって囲まれる中空空間16が形成されている。
【0019】
尚、前縁部20及び後縁部22において、背側外皮24及び腹側外皮26は、例えば接着剤等によって接着されることで互いに固定される。
【0020】
中空空間16には、ダウンコンダクタ15が配置される。ダウンコンダクタ15は、導電性材料を含んで構成されており、風車1が落雷を受けた際に、風車翼2に生じる雷電流が流れる電路の少なくとも一部を構成する。ダウンコンダクタ15は、翼先端部14に設けられたチップレセプタ17から、中空空間16の内部を翼長方向に沿って延在し、翼根部12側に設けられた不図示のアース線に電気的に接続される。
【0021】
風車翼2は、前縁プロテクタ30を備える。前縁プロテクタ30は、前縁部20を覆うように設けられることで、風車1の運用時に、前縁部20を雨滴や砂塵等から保護することで、翼本体18をエロージョン損傷から保護する。
【0022】
前縁プロテクタ30は、図3に示すように、中空空間16の内側から背側外皮24及び腹側外皮26に対して固定される。本実施形態では、このような前縁プロテクタ30の外皮に対する固定は、第1固定部材32及び第2固定部材34によって行われる。
【0023】
第1固定部材32は、背側外皮24及び腹側外皮26の内表面24a、26aに固定されるとともに、前縁プロテクタ30に対して中空空間16側から接触するように配置される。より具体的には、第1固定部材32は、前縁プロテクタ30に接触する本体部32aと、本体部32aに接続されるとともに外皮の内表面24a、26aに沿って延在する延在部32bとを有する。延在部32bは、背側外皮24及び腹側外皮26に対応するように、本体部32aから両側に2つ設けられている。これらの延在部32bは、接着剤が固化されてなる接着層33を介して、それぞれ背側外皮24及び腹側外皮26の内表面24a、26aに固定されており、内表面24a、26aに沿った形状を有することで外皮に対する接触面積を増やす。これにより、第1固定部材32は、背側外皮24及び腹側外皮26に対してより強固に固定される。
【0024】
第2固定部材34は、中空空間16の内側から第1固定部材32とともに前縁プロテクタ30を固定する。より具体的には、第2固定部材34は、ボルト部材34aとナット部材34bとを備える。ボルト部材34aは、第1固定部材32の本体部32aを貫通し、その一端が前縁プロテクタ30に固定される。ナット部材34bは、中空空間16側からボルト部材34aの他端に係合される。ボルト部材34a及びナット部材34bからなる第2固定部材34によって、外皮の内表面に固定された第1固定部材32とともに前縁プロテクタ30を外皮に対して、効率的なレイアウトで固定できる。
【0025】
このように前縁プロテクタ30が中空空間16の内側から翼本体18を構成する外皮に固定されることにより、前縁プロテクタ30を外皮に固定するための各種部材が翼本体18の外部に露出しない。そのため、風車翼2の空力性能を低下することなく、風車翼2のエロージョン損傷を効果的に抑制できる。
【0026】
また第1固定部材32は、翼本体18を構成する背側外皮24及び腹側外皮26のうち互いに対向する一対の内表面24a、26aの間に固定される。一対の内表面24a、26aの間隔は前縁部20に向けて減少するように構成されており、それらの間に挟持される第1固定部材32が外部(図3において左方向)に抜け出ることが構造的に防止される。これにより、前縁プロテクタ30の翼本体18からの脱落リスクをより低減できる。
【0027】
前縁プロテクタ30は、導電性材料から構成されていてもよい。この場合、導電性材料として、例えばステンレス、アルミニウム、銅等の金属材料を用いることができる。これにより、風車翼2が落雷を受けた際に、導電性材料からなる前縁プロテクタ30が雷電流の伝達経路の少なくとも一部を形成することで、良好な耐雷性能が得られる。
【0028】
本実施形態では、前縁プロテクタ30に加えて、前述の第1固定部材32及び第2固定部材34もまた導電性材料から構成されている。そして、前縁プロテクタ30、第1固定部材32及び第2固定部材34は互いに接触するように組み立てられた状態で、ダウンコンダクタ15に対して電気的に接続される。これにより、前縁プロテクタ30に生じた雷電流は、第1固定部材32及び第2固定部材34を介してダウンコンダクタ15に導かれることで、風車翼2は良好な耐雷性能が得られる。
【0029】
また背側外皮24及び腹側外皮26の外表面近傍には、翼コード方向に沿って導電メッシュ部材40a、40bが設けられている。導電メッシュ部材40a、40bは、外皮の厚さ方向に沿って複数の穴部が形成されたメッシュ状の導電部材であって、外皮内に埋め込まれるように構成されている。導電メッシュ部材40a、40bは、前縁側において、それぞれ前縁プロテクタ30に電気的に接続される。これにより、前縁プロテクタ30に生じた雷電流は、導電メッシュ部材40a、40bに導かれることで、風車翼2は良好な耐雷性能が得られる。
尚、導電メッシュ部材40a、40bはダウンコンダクタ15に電気的に接続されていてもよい。
【0030】
尚、前縁プロテクタ30は、非導電性材料から構成されてもよい。この場合、非導電性材料として、例えば硬質なセラミックスを用いることで、耐エロージョン性能を確保しながらも、風車翼の軽量化を図ることができる。
【0031】
尚、前縁プロテクタ30は、図3に示すように、隣接する背側外皮24及び腹側外皮26の前縁側との間で外表面が連続するように(滑らかに)構成される。これにより、前縁プロテクタ30と背側外皮24及び腹側外皮26との境界部に凹凸が生じないため(または、境界部に凹凸が生じたとしてもその大きさを小さく抑えることができるため)、境界部を起点としてエロージョン損傷が進展することを効果的に防止できる。また前縁プロテクタ30の設置による風車翼2の空力性能への影響も抑えることができる。
【0032】
続いて図3の構成を有する風車翼2の製造方法について説明する。図4図3の風車翼2の製造方法を工程毎に示すフローチャートであり、図5A図5Cは、図4に対応する説明断面図である。
【0033】
まず風車翼2の翼本体18を構成する背側外皮24及び腹側外皮26をそれぞれ成形する(ステップS100)。背側外皮24及び腹側外皮26の成形は、例えば、外皮形状に対応する型材に対して繊維材(GFRPの場合にはガラス繊維材、CFRPの場合にはカーボン繊維材)を積層し、液状樹脂を注入・含浸させ、硬化させることにより行われる(例えば、真空含浸成形(VaTRM工法)を用いることができる)。
【0034】
続いて前縁プロテクタ30に対して第1固定部材32及び第2固定部材34を取り付けることにより、前縁構造体35を用意する(ステップS101)。前縁構造体35は、図5Aに示すように、前縁プロテクタ30に対して第1固定部材32及び第2固定部材34を取り付けることで用意される。尚、前縁プロテクタ30、第1固定部材32及び第2固定部材34の各々は、例えば三次元造形や削り出し等の一般的なプロセスで製作可能である。
【0035】
続いてステップS101で用意された前縁構造体35を、ステップS100で成形された腹側外皮26に対して固定する(ステップS102)。ステップS102の固定作業は、図5Bに示すように、前縁構造体35のうち第1固定部材32の延在部32bと腹側外皮26の内表面26aとの間に接着層33を形成することにより行われる。
【0036】
続いて、図5Cに示すように、腹側外皮26に固定された前縁構造体35に対して中空空間16に配置されたダウンコンダクタ15を電気的に接続する(ステップS103)。より具体的には、前縁構造体35のうち第1固定部材32の延在部32bに対してダウンコンダクタ15が電気的に接続される。このとき、製造中の風車翼2では背側外皮24が設けられていないため、作業者は、中空空間16に容易にアクセスして作業可能である。
【0037】
続いて前縁構造体35に対して背側外皮24を固定する(ステップS104)。ステップS104の固定作業は、風車翼2のうち前縁構造体35がある範囲では、図5Cに示すように、前縁構造体35のうち第1固定部材32の延在部32bと背側外皮24の内表面24aとの間に接着層33を形成することにより行われ、風車翼2のうち前縁構造体35がない範囲では、背側外皮24は腹側外皮26に対して直接固定される。これにより、腹側外皮26及び背側外皮24の間に中空空間16が形成され、風車翼2が完成する。
【0038】
次に他の実施形態に係る風車翼2について説明する。図6図3の他の実施形態を示す断面図であり、図7図6のB視図である。
【0039】
翼本体18を構成する外皮は、前縁プロテクタ30と中空空間16との間に介在するように延在する第1外皮延在部29を有する。本実施形態では、腹側外皮26の前縁側には、背側外皮24に向けて延びることで、前縁プロテクタ30と中空空間16との間に介在するように、第1外皮延在部29が設けられている。
【0040】
前縁プロテクタ30は、第1外皮延在部29に対して固定される。より具体的には、第1外皮延在部29を貫通するように設けられたボルト部材34aの一端が前縁プロテクタ30に固定されており、ボルト部材34aの他端側にはナット部材34bが係合されることにより、第1外皮延在部29に対して前縁プロテクタ30が固定されている。このように前縁プロテクタ30を外皮の一部である第1外皮延在部29に対して、接着層33の接着力に頼ることなく、直接固定することができる。このような固定構造を用いることで、前縁プロテクタ30を外皮に固定するための各種部材が翼本体の外部に露出することなく、より信頼性の高い固定構造で翼本体18に対して前縁プロテクタ30を設けることができる。
【0041】
また第1外皮延在部29を有する腹側外皮26に対向する背側外皮24には、第2外皮延在部42が設けられる。第2外皮延在部42は、背側外皮24の前縁側から腹側外皮26に向けて、第1外皮延在部29に対向するように延在する。そして、第1外皮延在部29及び第2外皮延在部42は、互いに接着層33を介して接着されている。第1外皮延在部29及び第2外皮延在部42は互いに対向するように配置されるため、接着層33を介した広い接着面積が得られ、前縁プロテクタ30を外皮に対して良好な強度で固定しながら、背側外皮24及び腹側外皮26同士も良好な強度で固定し、より信頼性の高い構造を有する風車翼2を実現できる。
【0042】
また腹側外皮26に設けられる導電メッシュ部材40bは、第1外皮延在部29に至るまで延びている。そして第1外皮延在部29において、導電メッシュ部材40bは、第1外皮延在部29を貫通するボルト部材34aに接続されることにより、前縁プロテクタ30に電気的に接続される。これにより、前縁プロテクタ30と導電メッシュ部材40bとの間の電気抵抗値を低減することができ、風車翼2の耐雷性能を向上できる。
【0043】
また背側外皮24に設けられる導電メッシュ部材40aは、第2外皮延在部42に至るまで延びている。
【0044】
また図7に示すように、翼長方向において前縁プロテクタ30を固定するためのボルト部材34a及びナット部材34bが存在しない範囲Cにおける第2外皮延在部42の翼長方向に対して垂直方向における寸法L1が、ボルト部材34a及びナット部材34bが存在する範囲Dにおける寸法L2に比べて大きくなるように構成される。これにより、第1外皮延在部29及び第2外皮延在部42間の接合面積を広く確保でき、背側外皮24及び腹側外皮26をより強固に接合することができる。
【0045】
続いて図6及び図7の構成を有する風車翼2の製造方法について説明する。図8図6及び図7の風車翼2の製造方法を工程毎に示すフローチャートであり、図9A図9C図8に対応する説明図である。
【0046】
まず前縁プロテクタ30を腹側外皮26と一体成形する(ステップS200)。図10図8のステップS200の詳細工程の一例を示すサブフローチャートである。ステップS200では、まず、成型用の型材に、図9Aに示すように、後縁側面43にボルト部材34aの一端が取り付けられた前縁プロテクタ30を配置する(ステップS200-1)。そして型材に配置された前縁プロテクタ30上に、ボルト部材34aが露出するように、外皮の構成材料(GFRPの場合にはガラス繊維材、CFRPの場合にはカーボン繊維材)を積層する(ステップS200-2)。そして、外皮の構成材料が十分固化した後、成型物を型材から取り出すことで、腹側外皮26と前縁プロテクタ30との一体成形物が完成する(ステップS200-3)。
【0047】
またステップS200-2において外皮の構成材料を積層する際に、図9Aに示すように、ボルト部材34aの他端に、先端が鋭利な補助部材37が脱着可能に取り付けられてもよい。これによりボルト部材34aに対して、例えばシート形状を有する繊維材料を貫通させ、ステップS200-2において、ボルト部材34aを露出させながらの構成材料の積層作業を容易化できる。
尚、補助部材37は、ステップS200-2における積層作業が完了した後、取り外される。
【0048】
図8に戻って、続いて、ステップS200で作製された一体成形物に対して、図9Bに示すように、ボルト部材34aの他端にナット部材34bを係合し(ステップS201)、中空空間16に配置されたダウンコンダクタ15をボルト部材34aに対して電気的に接続する(ステップS202)。
【0049】
尚、ダウンコンダクタ15はボルト部材34aに代えてナット部材34bに電気的に接続されてもよい。この場合、ステップS201でナット部材34bをボルト部材34aの他端に係合する前に、予めナット部材34bに対してダウンコンダクタ15を電気的に接続してもよい。
【0050】
続いて上記作業が行われた腹側外皮26に対して、背側外皮24を固定する(ステップS203)。ステップS203では、腹側外皮26及び背側外皮24が接着層33を介して接続されることにより、腹側外皮26及び背側外皮24で囲まれる中空空間16が形成される。より具体的には、第1外皮延在部29及び第2外皮延在部42の間を接着剤を用いて接合することにより、接着層33が形成される。
【0051】
尚、前述の各実施形態における前縁プロテクタ30は、翼本体18の翼長方向に沿って配列された複数のプロテクタ部材30a、30b、30c、・・・、・・・を含んで構成されてもよい。図11は、前縁プロテクタ30を構成する複数のプロテクタ部材30a、30b、30c、・・・、・・・の斜視図である。このように前縁プロテクタ30を複数のプロテクタ部材30a、30b、30c、・・・、・・・から構成することにより、風車1の運用時に前縁プロテクタ30に生じるひずみを効果的に軽減することができる。また、翼本体18の翼長方向に沿ったサイズが大きい風車翼2においても、広範囲にわたって前縁部20をエロージョン損傷から保護することができる。
【0052】
また複数のプロテクタ部材30a、30b、30c、・・・、・・・は、図11に示すように、翼長方向に沿って延在する支持ワイヤ44によって互いに連結されてもよい。複数のプロテクタ部材30a、30b、30c、・・・、・・・は、それぞれ翼長方向に沿って同軸に設けられた穴部49を有しており、当該穴部49に支持ワイヤ44が挿入されることによって互いに連結される。このように前縁プロテクタ30を構成する複数のプロテクタ部材30a、30b、30c、・・・、・・・を支持ワイヤ44によって連結することで、各プロテクタ部材30a、30b、30c、・・・、・・・の脱落を防止できる。
【0053】
尚、支持ワイヤ44が挿入された穴部49には、接着剤が充填されていてもよい。これにより、穴部49の内部において支持ワイヤ44が固定されるため、支持ワイヤ44が摩擦等によって切断されるリスクを低減できる。
【0054】
このような構成を有する前縁プロテクタ30では、複数のプロテクタ部材30a、30b、30c、・・・、・・・の一部が翼本体18を構成する外皮に固定されてもよい。この場合、全てのプロテクタ部材30a、30b、30c、・・・をそれぞれ外皮に固定する場合に比べて、簡易的な構成で前縁プロテクタ30の固定が可能となる。
【0055】
以上説明したように、上記各実施形態によれば、空力性能を維持しながら、良好な耐エロージョン性能を獲得可能な風車翼2が得られる。そして、このような風車翼2を備える風車1では、前縁プロテクタ30によって風車翼2のエロージョン損傷を防止することで寿命が延びるとともに、前縁プロテクタ30の設置による空力性能の低下を抑えた、効率的な運転が可能となる。
【0056】
その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【0057】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0058】
(1)一態様に係る風車翼は、
中空空間(例えば上記実施形態の中空空間16)を囲む外皮(例えば上記実施形態の背側外皮24又は腹側外皮26)を有する翼本体(例えば上記実施形態の翼本体18)と、
前記翼本体の前縁部(例えば上記実施形態の前縁部20)に設けられた前縁プロテクタ(例えば上記実施形態の前縁プロテクタ30)と、
を備え、
前記前縁プロテクタは、前記中空空間の内側から前記外皮に対して固定される。
【0059】
上記(1)の態様によれば、風車翼の前縁側に設けられる前縁プロテクタが、翼本体に設けられる中空空間の内側から、翼本体を構成する外皮に固定される。前縁プロテクタを外皮に固定するための各種部材が翼本体の外部に露出しないため、風車翼の空力的性能を低下することなく、風車翼のエロージョン損傷を効果的に抑制できる。
【0060】
(2)他の態様では、上記(1)の態様において、
前記外皮の内表面に固定され、前記前縁プロテクタに対して前記中空空間側から接触するように配置された第1固定部材(例えば上記実施形態の第1固定部材32)と、
前記中空空間の内側から前記第1固定部材とともに前記前縁プロテクタを固定する第2固定部材(例えば上記実施形態の第2固定部材34)と、
を備える。
【0061】
上記(2)の態様によれば、外皮の内表面に固定された第1固定部材とともに前縁プロテクタが第2固定部材によって固定される。これにより、前縁プロテクタを外皮に固定するための各種部材が翼本体の外部に露出しない前縁プロテクタの固定構造を効率的なレイアウトで構成できる。
【0062】
(3)他の態様では、上記(2)の態様において、
前記第2固定部材は、
前記第1固定部材を貫通し、一端が前記前縁プロテクタに固定されるボルト部材(例えば上記実施形態のボルト部材34a)と、
前記中空空間側から前記ボルト部材の他端に係合されるナット部材(例えば上記実施形態のナット部材34b)と、
を含む。
【0063】
上記(3)の態様によれば、第2固定部材をボルト部材及びナット部材によって構成することで、外皮の内表面に固定された第1固定部材とともに前縁プロテクタを外皮に対して、効率的なレイアウトで固定できる。
【0064】
(4)他の態様では、上記(2)又は(3)の態様において、
前記第1固定部材は、
前記前縁プロテクタに接触する本体部(例えば上記実施形態の本体部32a)と、
前記本体部に接続され、前記外皮の内表面に沿って延在する延在部(例えば上記実施形態の延在部32b)と、
を備える。
【0065】
上記(4)の態様によれば、外皮の内表面に固定される第1固定部材は、前縁プロテクタに接触する本体部に対して、延在部が設けられた構成を有する。延在部は、外皮の内表面に沿って延在することで、第1固定部材の外皮に対する接触面積を増やす。これにより、第1固定部材を外皮に対してより強固に固定でき、前縁プロテクタの翼本体からの脱落リスクがより少なく、信頼性の高い構成を実現できる。
【0066】
(5)他の態様では、上記(2)から(4)のいずれか一態様において、
前記第1固定部材は、前記外皮のうち互いに対向する一対の内表面の間に固定され、
前記一対の内表面の間隔は、前記前縁部に向けて減少するように構成される。
【0067】
上記(5)の態様によれば、外皮のうち互いに対向する一対の内表面の間に、第1固定部材が固定される。一対の内表面は、前縁部に向けて減少するように構成されることで、それら間に挟持される第1固定部材が外部に抜け出ることが構造的に防止される。これにより、前縁プロテクタの翼本体からの脱落リスクをより低減できる。
【0068】
(6)他の態様では、上記(1)の態様において、
前記外皮は、前記前縁プロテクタと前記中空空間との間に介在するように延在する第1外皮延在部(例えば上記実施形態の第1外皮延在部29)を有し、
前記前縁プロテクタは、前記第1外皮延在部に対して固定される。
【0069】
上記(6)の態様によれば、翼本体を構成する外皮の一部が、前縁プロテクタと中空空間との間に介在するように延在した第1外皮延在部が設けられる。前縁プロテクタは、このような第1外皮延在部に対して固定されることで、前縁プロテクタを外皮に固定するための各種部材が翼本体の外部に露出しない前縁プロテクタの固定構造を効率的なレイアウトで構成できる。
【0070】
(7)他の態様では、上記(6)の態様において、
前記第1外皮延在部を貫通し、一端が前記前縁プロテクタに固定されるボルト部材(例えば上記実施形態のボルト部材34a)と、
前記中空空間側から前記ボルト部材の他端に係合されるナット部材(例えば上記実施形態のナット部材34b)と、
を更に備える。
【0071】
上記(7)の態様によれば、第1外皮延在部を貫通するボルト部材をナット部材で固定することにより第1外皮延在部に対して前縁プロテクタが固定される。このように前縁プロテクタを外皮の一部に対して直接固定することで、前縁プロテクタを外皮に対してより強固に固定できる。
【0072】
(8)他の態様では、上記(6)又は(7)の態様において、
前記外皮は、互いに対向する背側外皮(例えば上記実施形態の背側外皮24)及び腹側外皮(例えば上記実施形態の腹側外皮26)を含み、
前記第1外皮延在部は、前記背側外皮又は前記腹側外皮の一方に設けられ、
前記背側外皮又は前記腹側外皮の他方は、前記第1外皮延在部に対向するように延在する第2外皮延在部(例えば上記実施形態の第2外皮延在部42)を有し、
前記第1外皮延在部及び前記第2外皮延在部は互いに接着されている。
【0073】
上記(8)の態様によれば、前縁プロテクタが固定される外皮は、互いに対向する背側外皮及び腹側外皮によって構成される。背側外皮又は腹側外皮の一方には、前述の第1外皮延在部が設けられており、他方の外皮には第2外皮延在部が設けられる。第1外皮延在部及び第2外皮延在部は互いに接着されることで、前縁プロテクタは、第1外皮延在部及び第2外皮延在部の両方を介して翼本体に固定される。これにより、前縁プロテクタを外皮に対してより強固に固定でき、より信頼性の高い風車翼を構成できる。
【0074】
(9)他の態様では、上記(1)から(8)のいずれか一態様において、
前記前縁プロテクタは、前記翼本体の翼長方向に沿って配列された複数のプロテクタ部材(例えば上記実施形態の複数のプロテクタ部材30a、30b、30c、・・・、・・
・)を含む。
【0075】
上記(9)の態様によれば、
前縁プロテクタが、翼長方向に沿って配置される複数のプロテクタ部材から構成される。これにより、風車の運用時に前縁プロテクタに生じるひずみを効果的に軽減することができる。また、翼本体の翼長方向に沿ったサイズが大きい風車翼においても、広範囲にわたって前縁部をエロージョン損傷から保護することができる。
【0076】
(10)他の態様では、上記(9)の態様において、
前記複数のプロテクタ部材は、前記翼長方向に沿って延在する支持ワイヤ(例えば上記実施形態の支持ワイヤ44)によって互いに連結される。
【0077】
上記(10)の態様によれば、前縁プロテクタを構成する複数のプロテクタ部材を支持ワイヤによって連結することで、各プロテクタ部材の脱落を防止できる。
【0078】
(11)他の態様では、上記(9)又は(10)の態様において、
前記複数のプロテクタ部材の一部が前記外皮に固定される。
【0079】
上記(11)の態様によれば、前縁プロテクタを構成する複数のプロテクタ部材の一部が外皮に対して固定される。これにより、全てのプロテクタ部材をそれぞれ外皮に固定する場合に比べて、簡易的な構成で済む。
【0080】
(12)他の態様では、上記(1)から(11)の一態様において、
前記前縁プロテクタは導電性材料からなる。
【0081】
上記(12)の態様によれば、風車翼が落雷を受けた際に、導電性材料からなる前縁プロテクタが雷電流の伝達経路の少なくとも一部を形成することで、良好な耐雷性能が得られる。
【0082】
(13)他の態様では、上記(12)の態様において、
前記前縁プロテクタは、前記外皮の外表面に沿って設けられた導電メッシュ部材(例えば上記実施形態の導電メッシュ部材40a、40b)に電気的に接続される。
【0083】
上記(13)の態様によれば、導電性材料からなる前縁プロテクタが、風車翼を構成する外皮の外表面に沿って設けられた導電メッシュ部材に電気的に接続される。これにより、風車翼が落雷を受けた際に雷電流の伝達経路における電気抵抗値をより低減し、良好な耐雷性能が得られる。
【0084】
(14)他の態様では、上記(12)又は(13)の態様において、
前記前縁プロテクタは、前記中空空間に配置されたダウンコンダクタに電気的に接続される。
【0085】
上記(14)の態様によれば、導電性材料からなる前縁プロテクタが、中空空間に配置されたダウンコンダクタに電気的に接続される。これにより、風車翼が落雷を受けた際に雷電流の伝達経路における電気抵抗値をより低減し、良好な耐雷性能が得られる。
【0086】
(15)他の態様では、上記(1)から(11)のいずれか一態様において、
前記前縁プロテクタはセラミックスからなる。
【0087】
上記(15)の態様によれば、前縁プロテクタを硬質なセラミックスから構成することで、耐エロージョン性能を確保しながらも、風車翼の軽量化を図ることができる。
【0088】
(16)一態様に係る風車は、
上記(1)から(15)のいずれか一態様の風車翼を備える。
【0089】
上記(16)の態様によれば、上記各態様の風車翼を備えることで、前縁プロテクタによる風車翼のエロージョン損傷を防止しながらも、前縁プロテクタの設置による空力性能の低下を抑えることができる。
【0090】
(17)一態様に係る風車翼の製造方法は、
中空空間を囲む外皮を有する翼本体と、
前記翼本体の前縁部に設けられた前縁プロテクタと、
を備え、
前記前縁プロテクタは、前記中空空間の内側から前記外皮に対して固定される、風車翼の製造方法であって、
成型用の型材に、後縁側面にボルト部材の一端が取り付けられた前縁プロテクタを配置するステップ(例えば上記実施形態のステップS200-1)と、
前記ボルト部材が露出するように、前記前縁プロテクタ上に前記外皮の構成材料を積層するステップ(例えば上記実施形態のステップS200-2)と、
成型物を前記型から取り出し、前記ボルト部材の他端にナットを係合するステップ(例えば上記実施形態のステップS200-3)と、
を備える。
【0091】
上記(17)の態様によれば、翼本体を構成する外皮に対して前縁プロテクタが中空空間の内側から固定された風車翼を効率的に製造できる。
尚、後縁側面は、風車翼の完成品において前縁プロテクタのうち後縁側に対向する面である。
【0092】
(18)他の態様では、上記(17)の態様において、
前記構成材料を積層するステップでは、前記ボルト部材の前記他端に、先端が鋭利な補助部材(例えば上記実施形態の補助部材37)が脱着可能に取り付けられる。
【0093】
上記(18)の態様によれば、構成材料の積層を行う際に、ボルト部材に先端が鋭利な補助部材を取り付けることで、ボルト部材に対して構成部材を貫通させ、ボルト部材を露出させながらの構成材料の積層作業を容易化できる。
【符号の説明】
【0094】
1 風車
2 風車翼
4 ハブ
6 風車ロータ
8 ナセル
10 タワー
12 翼根部
14 翼先端部
15 ダウンコンダクタ
16 中空空間
17 チップレセプタ
18 翼本体
20 前縁部
22 後縁部
24 背側外皮
26 腹側外皮
29 第1外皮延在部
30 前縁プロテクタ
32 第1固定部材
32a 本体部
32b 延在部
33 接着層
34 第2固定部材
34a ボルト部材
34b ナット部材
35 前縁構造体
37 補助部材
40a,40b 導電メッシュ部材
42 第2外皮延在部
43 後縁側面
44 支持ワイヤ
49 穴部
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11