(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】取付け装置および連結金具
(51)【国際特許分類】
E04B 1/58 20060101AFI20240209BHJP
E04B 2/82 20060101ALI20240209BHJP
【FI】
E04B1/58 506F
E04B2/82 501Z
(21)【出願番号】P 2020101238
(22)【出願日】2020-06-10
【審査請求日】2023-05-02
(73)【特許権者】
【識別番号】311000188
【氏名又は名称】株式会社サンユー
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【氏名又は名称】神崎 真
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 士朗
【審査官】小澤 尚由
(56)【参考文献】
【文献】実開平5-14314(JP,U)
【文献】特開2019-19649(JP,A)
【文献】特開2005-325633(JP,A)
【文献】実公昭9-1915(JP,Y1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0138634(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/58
E04B 2/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェブの両端を折り曲げて成る第1および第2フランジを有するC型鋼を、H型鋼に交差させ、かつ突出した状態で、前記第1フランジを前記H型鋼のフランジ外面に密着させて固定する取付け装置であって、
前記H型鋼のフランジに取付けられる固定金具と、
前記第1フランジを前記H型鋼のフランジ外面に密着させるための連結金具とを備え、
前記連結金具は、前記第2フランジに密着する第1水平板部と、前記第1水平板部の両端から垂直方向に延びて、C型鋼のウェブまたはリップ部に係合する一対の垂直板部と、前記一対の垂直板部から水平方向に延び、前記H型鋼のフランジ外面に対向または当接する第2水平板部と、前記一対の垂直板部から前記C型鋼の突出方向に膨出し、前記C型鋼のウェブまたはリップ部に係合する一対の膨出部とを有し、前記一対の膨出部には、前記C型鋼のウェブまたはリップ部に対応した箇所にビス孔が形成され、
前記固定金具は、前記H型鋼のフランジ外面と前記第2水平板部とを密着させる方向に押圧することを特徴とする取付け装置。
【請求項2】
前記膨出部に、前記H型鋼のフランジの端面に当接する当接部が形成されることを特徴とする請求項1に記載の取付け装置。
【請求項3】
前記一対の膨出部にそれぞれ形成されたビス孔において、前記H型鋼のフランジの端面からの距離が相互に異なることを特徴とする請求項2に記載の取付け装置。
【請求項4】
ウェブの両端を折り曲げて成る第1および第2フランジを有するC型鋼を、H型鋼に交差させ、かつ突出した状態で、前記第1フランジを前記H型鋼のフランジ外面に密着させて固定する取付け装置の一部を構成する連結金具であって、
前記第2フランジに密着する第1水平板部と、
前記第1水平板部の両端から垂直方向に延びて、C型鋼のウェブまたはリップ部に係合する一対の垂直板部と、
前記一対の垂直板部から水平方向に延び、前記H型鋼のフランジ外面に対向または当接する第2水平板部と、
前記一対の垂直板部から前記C型鋼の突出方向に膨出し、前記C型鋼のウェブまたはリップ部に係合する一対の膨出部とを有し、前記一対の膨出部には、前記C型鋼のウェブまたはリップ部に対応した箇所にビス孔が形成されることを特徴とする連結金具。
【請求項5】
前記膨出部に、前記H型鋼のフランジの端面に当接する当接部が形成されることを特徴とする請求項4に記載の連結金具。
【請求項6】
前記一対の膨出部にそれぞれ形成されたビス孔において、前記H型鋼のフランジの端面からの距離が相互に異なることを特徴とする請求項5に記載の連結金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、H型鋼の下側に例えば間仕切壁を設置する工事において、H型鋼に、先行ピースとしてC型鋼を取付けるために用いられる取付け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、H型鋼の下側に間仕切壁を設置する場合、施工は例えば次のようにして行われる。まずH型鋼の下側において、複数本のC型鋼をH型鋼に直交する方向に等間隔に配置し、H型鋼のフランジに取付ける。次にC型鋼の下面に、H型鋼に平行に延びるランナーを固定するとともに、ランナーの下面に、鉛直下方に延びる複数本のスタッドを設け、これらのスタッドに石膏ボードを貼り付ける。H型鋼へのC型鋼の取付けは通常、取付け箇所ごとに複数の金具を用いて行われる。すなわち各取付け箇所において、連結金具によってH型鋼のフランジにC型鋼を取付けた後、固定金具によってH型鋼の下側フランジと連結金具を密着させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし上述した従来の取付け装置では、特に、C型鋼がH型鋼から突出した状態で固定される、所謂はね出し梁の場合、H型鋼とC型鋼の連結部分におけるモーメントが相対的に大きくなるため、間仕切壁の面内方向の外力、すなわちC型鋼の長手方向に直交する方向に対する強度性能が不十分であるという問題があった。
【0004】
本発明は、C型鋼がH型鋼から突出した状態であっても、C型鋼の長手方向に直交する方向に対して十分な強度性能を発揮する取付け装置および連結金具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明は、ウェブの両端を折り曲げて成る第1および第2フランジを有するC型鋼を、H型鋼に交差させ、かつ突出した状態で、第1フランジをH型鋼のフランジ外面に密着させて固定する取付け装置である。この取付け装置は、H型鋼のフランジに取付けられる固定金具と、第1フランジをH型鋼のフランジ外面に密着させるための連結金具とを備え、連結金具は、第2フランジに密着する第1水平板部と、第1水平板部の両端から垂直方向に延びて、C型鋼のウェブまたはリップ部に係合する一対の垂直板部と、一対の垂直板部から水平方向に延び、H型鋼のフランジ外面に対向または当接する第2水平板部と、一対の垂直板部からC型鋼の突出方向に膨出し、C型鋼のウェブまたはリップ部に係合する一対の膨出部とを有し、一対の膨出部には、C型鋼のウェブまたはリップ部に対応した箇所にビス孔が形成され、固定金具は、H型鋼のフランジ外面と第2水平板部とを密着させる方向に押圧することを特徴としている。
【0006】
膨出部には、H型鋼のフランジの端面に当接する当接部が形成されることが好ましい。また、一対の膨出部にそれぞれ形成されたビス孔において、H型鋼のフランジの端面からの距離が相互に異なっていてもよい。
【0007】
第2の発明は、ウェブの両端を折り曲げて成る第1および第2フランジを有するC型鋼を、H型鋼に交差させ、かつ突出した状態で、第1フランジをH型鋼のフランジ外面に密着させて固定する取付け装置の一部を構成する連結金具である。この連結金具は、第2フランジに密着する第1水平板部と、第1水平板部の両端から垂直方向に延びて、C型鋼のウェブまたはリップ部に係合する一対の垂直板部と、一対の垂直板部から水平方向に延び、H型鋼のフランジ外面に対向または当接する第2水平板部と、一対の垂直板部からC型鋼の突出方向に膨出し、C型鋼のウェブまたはリップ部に係合する一対の膨出部とを有し、一対の膨出部には、C型鋼のウェブまたはリップ部に対応した箇所にビス孔が形成されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、C型鋼がH型鋼から突出した状態であっても、C型鋼の長手方向に直交する方向に対して十分な強度性能を発揮する取付け装置および連結金具を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態である取付け装置を用いた組立て体を示す斜視図である。
【
図2】第1固定金具をC型鋼へ取付ける第1工程を示す斜視図である。
【
図3】第1固定金具によりC型鋼をH型鋼に仮止めする第2工程を示す斜視図である。
【
図4】連結金具をC型鋼とH型鋼の間に装着する第3工程を示す斜視図である。
【
図5】連結金具と第2固定金具によりC型鋼をH型鋼に仮止めする第4工程を示す斜視図である。
【
図6】第1固定金具と第2固定金具を固定する第5工程を示す斜視図である。
【
図8】連結金具と一対の第2固定金具を組み合わせた構造を示す斜視図である。
【
図9】連結金具と一対の第2固定金具によりC型鋼をH型鋼に固定した状態を示し、H型鋼の下方から見た底面図である。
【
図10】H型鋼とC型鋼と壁を有する組立て体に作用する力を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明の一実施形態である取付け装置を用いた組立て体10を示す斜視図である。この組立て体10は、C型鋼30を介して、壁20をH型鋼11に固定したものである。H型鋼11は例えば、建屋の天井に平行に設置され、建屋の躯体の一部である。H型鋼11の下側フランジ12には複数のC型鋼30が固定され、これらのC型鋼30は、H型鋼11に交差し、下側フランジ12から突出した状態で固定される。すなわちC型鋼30ははね出し梁(片持ち梁)であり、その先端部分の下面には、H型鋼11に平行に延びるランナー21が固定される。ランナー21は壁20の上縁部である。
【0011】
ランナー21は溝型鋼であり、溝を下方に向けて配置され、そのウェブはC型鋼30のフランジに固定される。ランナー21の溝内には複数のスタッド22の上端が嵌め込まれて固定される。スタッド22は所定間隔を空けて配置され、ランナー21とスタッド22から構成される枠体の両面には、石膏ボード23が貼り付けされ、壁20が構成される。
【0012】
C型鋼30は通常の構成を有し、ウェブ31の上下両端を折り曲げて成る第1および第2フランジ32、33を備え、これらのフランジ32、33の先端には、ウェブ31に平行に折り曲げられたリップ部34、35が形成される。C型鋼30の長手方向の一方の端部は、第1固定金具40によってH型鋼11のフランジ12の幅方向の一方の端部に固定される。C型鋼30の長手方向の他方の端部はフランジ12の幅方向の他方の端部から突出し、ビスにより、ランナー21のウェブの上面が固定される。C型鋼30の中間部分は2つの第2固定金具50と連結金具60によってH型鋼11のフランジ12の幅方向の他方の端部に固定される。第2固定金具50と連結金具60は本発明の一実施形態である取付け装置を構成する。
【0013】
第1および第2固定金具40、50は共にH型鋼11のフランジ12に取付けられるが、その機能と構造は異なる。すなわち第1固定金具40は単体でC型鋼30をH型鋼11に固定し、第2固定金具50は連結金具60と協働してC型鋼30をH型鋼11に固定する。
【0014】
図2、3を参照して第1固定金具40の構成を説明する。第1固定金具40は金属板をZ形に折り曲げて成形され、第1水平板部41はビス42によってC型鋼30の第1フランジ32に固定される。第1水平板部41から垂直方向に延びる垂直板部43はH型鋼11の下側フランジ12の端面に当接し、垂直板部43から水平方向に延びる第2水平板部44はボルト45とナット46によって、下側フランジ12の上面に固定される。
【0015】
図4、7、8を参照して第2固定金具50と連結金具60の構成を説明する。第2固定金具50は金属板を折り曲げて成形され、H型鋼11の下側フランジ12に取付けられる。第2固定金具50は、第1水平板部51と、第1水平板部51から垂直下方に延びる第1垂直板部52と、第1垂直板部52に対して垂直に折り曲げられた第2および第3垂直板部53、54とを有する。第1水平板部51は、下側フランジ12の上面に対向し、ボルト55とナット56により下側フランジ12に固定される。第1垂直板部52には、第2固定金具50と連結金具60をC型鋼30に固定するためのビスが貫通するビス孔57が穿設される。第2および第3垂直板部53、54は連結金具60に当接する。
【0016】
連結金具60は金属板を折り曲げて成形され、C型鋼30の第1フランジ32をH型鋼11の下側フランジ12の外面(下面)に密着させるために用いられる。連結金具60は、第1水平板部61と、第1水平板部61の両端から垂直上方に延びる一対の垂直板部62と、垂直板部62から水平方向に延びる第2水平板部63と、一対の垂直板部62に連設された一対の膨出部64とを有する。
【0017】
第1水平板部61はC型鋼30の第2フランジ33に密着し、第2フランジ33に固定するためのビスが貫通するビス孔67が穿設される。垂直板部62はC型鋼30のウェブ31またはリップ部34に係合する。第2水平板部63は、H型鋼11の下側フランジ12の外面に対向または当接する。一対の膨出部64は垂直板部62からC型鋼30の突出方向(はね出し方向)に膨出し、膨出部64には、C型鋼30のウェブ31またはリップ部34に対応した箇所にビス孔65が形成される。このビス孔65は第2固定金具50のビス孔57の位置に対応している。また、膨出部64の第2水平板部63側の端面はH型鋼11の下側フランジ12の端面に当接する当接部66である。
【0018】
次に
図2から6を参照して、H型鋼11にC型鋼30を取付けて固定する作業工程を説明する。この例では、C型鋼30はH型鋼11に交差させ、かつH型鋼11から突出した状態で固定される。
【0019】
第1工程(
図2)では、C型鋼30の第1フランジ32の一端の上面に、第1固定金具40がビス42により取付けられる。第2工程(
図3)では、第1固定金具40の第2水平板部44とC型鋼30の第1フランジ32との間にH型鋼11の下側フランジ12が挟まれるようにして、C型鋼30がH型鋼11に対して位置決めされる。そしてボルト45が回されて所定の押圧力で下側フランジ12の上面に固定され、C型鋼30が第1固定金具40によってH型鋼11に仮止めされる。
【0020】
第3工程(
図4)では連結金具60がC型鋼30とH型鋼11の下側フランジ12の間に装着される。連結金具60は、第1水平板部61がC型鋼30の第2フランジ33の下面に当接するようにして、C型鋼30に嵌合され、当接部66が下側フランジ12の端面に当接した位置に定められる。
【0021】
第4工程(
図5)では、一対の第2固定金具50が下側フランジ12に取付けられる。このとき第2固体金具50は、第1水平板部51の下面が下側フランジ12の上面に対向し、第3垂直板部54の上端が連結金具60の第2水平板部63の下面に当接するように取付けられる。また、この状態において、一方の第2固定金具50の第2垂直板部53が連結金具60の膨出部64に当接し、他方の第2固定金具50の第3垂直板部54が連結金具60の垂直板部62に当接する。ここで連結金具60のビス孔67(
図4参照)にビス68が挿通され、連結金具60はC型鋼30の第2フランジ33に固定される。そしてボルト55が回されて所定の押圧力で下側フランジ12の上面に固定され、C型鋼30が第2固定金具50と連結金具60によってH型鋼11に仮止めされる。
【0022】
第5工程(
図6)では本締めが行われ、C型鋼30がH型鋼11に強固に固定される。まず第1固定金具40において、ナット46を回すことによりボルト45が第2水平板部44に対して回動不能になり、C型鋼30は第1固定金具40によってH型鋼11の下側フランジ12に強固に固定される。
【0023】
第2固定金具50でも同様に、ナット56を回すことによりボルト55が下側フランジ12に対して回動不能になり、第2固定金具50は、H型鋼11の下側フランジ12の外面と連結金具60の第2水平板部63とを密着させる方向に押圧し、C型鋼30はH型鋼11に強固に固定される。また第2固定金具50のビス孔57と連結金具60のビス孔65にビス58が通され、ビス58はC型鋼30のウェブ31とリップ部34に螺着される。これによりC型鋼30は下側フランジ12にさらに強固に固定される。
【0024】
図8、9は連結金具60と一対の第2固定金具50を組み合わせた構造を示している。これらの図において、右側に示される第2固定金具50では、第1垂直板部52と第2垂直板部53の間の角部が連結金具60の膨出部64に当接し、左側に示される第2固定金具50では、第2垂直板部53が膨出部64に当接している。また右側に示される第2固定金具50では、第3垂直板部54が連結金具60の垂直板部62に当接し、左側に示される第2固定金具50では、第1垂直板部52と第3垂直板部54の間の角部が連結金具60の垂直板部62に当接している。
【0025】
上述したように、左右の第2固定金具50では、連結金具60に当接する部位が異なり、また第2垂直板部53と第3垂直板部54の幅も異なるため、第2垂直板部52と連結金属60の垂直板部52との成す角が異なる。したがって、ビス58により第2固定金具50を連結金具60とC型鋼30に固定した状態において、ビス58がC型鋼30の長手軸に対して成す角は左右の第2固定金具50で異なり、図示例では、右側の角度Aは75.7°、左側の角度Bは62.6°である。すなわち連結金具60においてビス58が取付けられる位置が相対的に異なり、
図7に示されるように、一対の膨出部64にそれぞれ形成されたビス孔65において、当接部66すなわちH型鋼11のフランジ12の端面からの距離が相互に異なる。
【0026】
図9、10を参照して本実施形態の効果を説明する。なお
図10(a)は組立て体10を上方から見た平面図であり、
図10(b)は組立て体10をH型鋼11の長手方向から見た側面図である。上述したように、本実施形態では連結金具60に膨出部64を設け、膨出部64には、C型鋼30のウェブ31またはリップ部34に対応した箇所にビス孔65を形成した。したがって連結金具60は、C型鋼30に対して所望の位置に、高精度かつ強固に固定され、C型鋼30のH型鋼11に対する連結強度が向上する。このため、C型鋼30がH型鋼11からはね出した構造であっても、壁20に作用する面内方向(水平方向および鉛直方向)に対する十分な強度性能が発揮される。
【符号の説明】
【0027】
11 H型鋼
12 フランジ
30 C型鋼
31 ウェブ
32 第1フランジ
33 第2フランジ
34 リップ部
50 固定金具
60 連結金具
61 第1水平板部
62 垂直板部
63 第2水平板部
64 膨出部
65 ビス孔