(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】壁体構造及び建物
(51)【国際特許分類】
E04D 11/00 20060101AFI20240209BHJP
E04H 1/02 20060101ALI20240209BHJP
E04B 2/56 20060101ALI20240209BHJP
【FI】
E04D11/00 Q
E04H1/02
E04B2/56 601A
E04B2/56 602D
E04B2/56 644F
E04B2/56 644B
(21)【出願番号】P 2020103899
(22)【出願日】2020-06-16
【審査請求日】2023-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】303046244
【氏名又は名称】旭化成ホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100211395
【氏名又は名称】鈴木 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】工藤 智勇
(72)【発明者】
【氏名】松本 淳
(72)【発明者】
【氏名】前田 洋介
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-146509(JP,A)
【文献】特開2009-079400(JP,A)
【文献】特開2014-031709(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 5/00 - 12/00
E04D 1/00 - 3/40
E04D 13/00 - 15/07
E04B 1/00
E04B 1/66
E04B 2/56
E04H 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の内外を区画するとともに前記建物の外部床面から上方に突出した壁パネルと、
前記壁パネルのパネル上面を覆う笠木部材と、
を備える壁体構造であって、
前記笠木部材は、前記パネル上面を覆うとともに屋外側に向かって下る傾斜面を有する上片、前記上片の屋外側の端部から垂下した側片、及び前記側片の下端から屈曲して屋内側に延びる下片を有し、
前記笠木部材の前記下片は、前記パネル上面よりも上方に位置し、
前記笠木部材の前記下片の少なくとも一部は、前記パネル上面の少なくとも一部と対向する位置に配置されており、
前記笠木部材の前記下片の前記少なくとも一部と前記パネル上面の前記少なくとも一部との間には、空間が区画されて
おり、
前記パネル上面の前記空間に露出する部分は、屋外側に向かって下る傾斜面を有する、壁体構造。
【請求項2】
前記壁パネルの屋外側の表面には、前記パネル上面に開口を有する縦化粧溝が形成されており、
前記壁体構造の厚さ方向において、前記縦化粧溝の深さは、前記パネル上面の前記空間に露出する部分の長さと略等しい、請求項
1に記載の壁体構造。
【請求項3】
前記壁パネルのパネル上面を覆う下地部材、前記下地部材を覆う防水部材、及び前記防水部材と前記パネル上面との間を止水するシール材を含む防水構造と、
貫通部材により前記防水構造に固定され、前記笠木部材が取り付けられる笠木受けブラケットと、を更に備え、
前記笠木受けブラケットには、
前記笠木受けブラケット及び前記防水構造に挟まれ、前記貫通部材により貫通される第1止水部材と、
前記笠木受けブラケットの、前記笠木部材と対向する面において、前記貫通部材により貫通される第2止水部材と、が配置されている、請求項
1又は2に記載の壁体構造。
【請求項4】
前記壁パネルのパネル上面を覆う下地部材、前記下地部材を覆う防水部材、及び前記防水部材と前記パネル上面との間を止水するシール材を含む防水構造と、
貫通部材により前記防水構造に固定され、前記笠木部材が取り付けられる笠木受けブラケットと、を更に備え、
前記笠木受けブラケットには、
前記笠木受けブラケット及び前記防水構造に挟まれ、前記貫通部材により貫通される第1止水部材と、
前記笠木受けブラケット及び前記防水構造に挟まれ、前記第1止水部材の周囲の少なくとも一部を囲む第3止水部材と、が配置されている、請求項1から
3のいずれか一項に記載の壁体構造。
【請求項5】
前記第3止水部材は、湿式のシール材である、請求項
4に記載の壁体構造。
【請求項6】
前記壁パネルの屋外側の表面には、所定の幅且つ所定の間隔で複数の横化粧溝が形成されており、
前記笠木部材の前記下片と前記パネル上面との間の幅は、前記所定の幅と略等しく、
前記壁パネルの上端と前記複数の横化粧溝のうち最上段の横化粧溝との間の間隔は、前記所定の間隔と略等しい、請求項1から
5のいずれか一項に記載の壁体構造。
【請求項7】
前記笠木部材は、前記下片の屋内側の端部から屈曲して上方に延びる起立片を更に有する、請求項1から
6のいずれか一項に記載の壁体構造。
【請求項8】
請求項1から
7のいずれか一項に記載の壁体構造を含む建物であって、
前記壁パネルと隣接する他の壁パネルを備え、
前記笠木部材の前記下片と前記パネル上面との間の前記空間は、前記他の壁パネルに形成された横化粧溝と直線状になるように配置されている、建物。
【請求項9】
前記笠木部材の前記下片と前記パネル上面との間の幅は、前記他の壁パネルに形成された前記横化粧溝の幅と略等しい、請求項
8に記載の建物。
【請求項10】
前記壁体構造の、前記空間に露出する表面には、前記他の壁パネルに形成された前記横化粧溝と略同一の仕上げがなされている、請求項
8又は9に記載の建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁体構造及び建物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、建物の屋上又はベランダ等に設けられた腰壁手摺又はパラペット等の壁体構造には、建物の意匠性向上の観点から、壁体構造の上部を覆う笠木部材が設けられる。例えば、特許文献1には、笠木部材を備えるパラペットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、建物の外壁の汚染抑制の観点では、特許文献1に記載されているような笠木部材を備える壁体構造においても、依然として改良の余地がある。
【0005】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、建物の外壁の汚染の抑制を可能にする壁体構造及び建物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る壁体構造は、建物の内外を区画するとともに前記建物の外部床面から上方に突出した壁パネルと、前記壁パネルのパネル上面を覆う笠木部材と、を備える壁体構造であって、前記笠木部材は、前記パネル上面を覆うとともに屋外側に向かって下る傾斜面を有する上片、前記上片の屋外側の端部から垂下した側片、及び前記側片の下端から屈曲して屋内側に延びる下片を有し、前記笠木部材の前記下片は、前記パネル上面よりも上方に位置し、前記笠木部材の前記下片の少なくとも一部は、前記パネル上面の少なくとも一部と対向する位置に配置されており、前記笠木部材の前記下片の前記少なくとも一部と前記パネル上面の前記少なくとも一部との間には、空間が区画されている。
【0007】
本発明に係る壁体構造では、前記パネル上面の前記空間に露出する部分は、屋外側に向かって下る傾斜面を有することが好ましい。
【0008】
本発明に係る壁体構造では、前記壁パネルの屋外側の表面には、前記パネル上面に開口を有する縦化粧溝が形成されており、前記壁体構造の厚さ方向において、前記縦化粧溝の深さは、前記パネル上面の前記空間に露出する部分の長さと略等しいことが好ましい。
【0009】
本発明に係る壁体構造は、前記壁パネルのパネル上面を覆う下地部材、前記下地部材を覆う防水部材、及び前記防水部材と前記パネル上面との間を止水するシール材を含む防水構造と、貫通部材により前記防水構造に固定され、前記笠木部材が取り付けられる笠木受けブラケットと、を更に備え、前記笠木受けブラケットには、前記笠木受けブラケット及び前記防水構造に挟まれ、前記貫通部材により貫通される第1止水部材と、前記笠木受けブラケットの、前記笠木部材対向する面において、前記貫通部材により貫通される第2止水部材と、が配置されていることが好ましい。
【0010】
本発明に係る壁体構造は、前記壁パネルのパネル上面を覆う下地部材、前記下地部材を覆う防水部材、及び前記防水部材と前記パネル上面との間を止水するシール材を含む防水構造と、貫通部材により前記防水構造に固定され、前記笠木部材が取り付けられる笠木受けブラケットと、を更に備え、前記笠木受けブラケットには、前記笠木受けブラケット及び前記防水構造に挟まれ、前記貫通部材により貫通される第1止水部材と、前記笠木受けブラケット及び前記防水構造に挟まれ、前記第1止水部材の周囲の少なくとも一部を囲む第3止水部材と、が配置されていることが好ましい。
【0011】
本発明に係る壁体構造では、前記第3止水部材は、湿式のシール材であることが好ましい。
【0012】
本発明に係る壁体構造では、前記壁パネルの屋外側の表面には、所定の幅且つ所定の間隔で複数の横化粧溝が形成されており、前記笠木部材の前記下片と前記パネル上面との間の幅は、前記所定の幅と略等しく、前記壁パネルの上端と前記複数の横化粧溝のうち最上段の横化粧溝との間の間隔は、前記所定の間隔と略等しいことが好ましい。
【0013】
本発明に係る壁体構造では、前記笠木部材は、前記下片の屋内側の端部から屈曲して上方に延びる起立片を更に有することが好ましい。
【0014】
本発明に係る建物は、上述した壁体構造を含む建物であって、前記壁パネルと隣接する他の壁パネルを備え、前記笠木部材の前記下片と前記パネル上面との間の前記空間は、前記他の壁パネルに形成された横化粧溝と直線状になるように配置されている。
【0015】
本発明に係る建物では、前記笠木部材の前記下片と前記パネル上面との間の幅は、前記他の壁パネルに形成された前記横化粧溝の幅と略等しいことが好ましい。
【0016】
本発明に係る建物では、前記壁体構造の、前記空間に露出する表面には、前記他の壁パネルに形成された前記横化粧溝と略同一の仕上げがなされていることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、建物の外壁の汚染の抑制を可能にする壁体構造及び建物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る壁体構造を示す、厚さ方向断面図である。
【
図2】
図1の壁体構造を屋外側から示した、正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態に係る壁体構造及び建物について、図面を参照して説明する。各図面の記載において、同一又は類似の部品又は部分には、同一又は類似の符号を付している。
【0020】
本発明の一実施形態に係る壁体構造は、建物の外部床面から上方に突出する壁体構造である。壁体構造は、例えば、建物の屋根又はバルコニーなどに設けられる腰壁手摺又はパラペットである。
【0021】
図1及び
図2を参照して、本発明の一実施形態に係る壁体構造1の構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る壁体構造1を示す、厚さ方向断面図である。
図2は、壁体構造1を屋外側から示した、正面図である。
【0022】
本明細書では、壁体構造1を含む建物において、建物の高さ方向と平行な方向を「高さ方向」と称し、壁体構造1に用いられる壁パネル2の表面において、高さ方向と直交する方向を「幅方向」と称し、壁パネル2の表面に垂直な方向を「厚さ方向」と称する。さらに、壁体構造1の厚さ方向において、平面視で建物の屋外側を「屋外側」と称し、反対に平面視で建物の屋内側を「屋内側」と称する。なお、本明細書において、「平行」、「直交」、又は「垂直」という記載は、それぞれ実質的に平行、直交、又は垂直である状態をも含むものとする。
【0023】
本実施形態に係る壁体構造1は、腰壁手摺である。壁体構造1は、建物の内外を区画するとともに建物の外部床面から上方に突出した壁パネル2と、壁パネル2のパネル上面2Aを覆う防水構造3と、パネル上面2Aを防水構造3よりも上方から覆う笠木部材5と、を備えている。壁パネル2のパネル上面2Aは、壁パネル2の、高さ方向上側に位置する小口面である。
【0024】
防水構造3は、壁パネル2のパネル上面2Aの少なくとも一部を覆う下地部材31、下地部材31を覆う防水部材32、及び防水部材32とパネル上面2Aとの間を止水するシール材33を含む。
【0025】
下地部材31は、壁パネル2のパネル上面2Aの少なくとも一部を覆うように構成されている。下地部材31は、後述する笠木部材5を取り付ける笠木受けブラケット4を固定するための下地である。本実施形態では、下地部材31は、壁パネル2のパネル上面2Aの少なくとも一部を覆うように延在する略矩形板状の上片31Aと、上片31Aの屋内側の端部から垂下して壁パネル2の屋内側表面の少なくとも一部を覆う略矩形板状の側片31Bとを含む、壁体構造1の厚さ方向断面がL字型の部材である。本実施形態では、下地部材31は、1枚の長尺な板状の部材が折り曲げられて形成されている。しかしながら、下地部材31は、例えば、溶接、接着、又は締結等、複数の部材を任意の方法により接合をすることで形成されていてもよい。また、下地部材31は、複数の部材を層状に重ねて構成されていてもよい。
【0026】
下地部材31の側片31Bにはボルト穴が設けられている。ボルト31Cが側片31Bのボルト穴から壁パネル2を屋外側まで貫通しており、下地部材31が壁パネル2に締結されている。下地部材31が、上片31Aではなく側片31Bにおいて、ボルト31Cにより壁パネル2に固定されることによって、下地部材31を覆う笠木部材5の高さ方向の寸法を短くすることができる。これにより、笠木部材5が目立ちにくくなる。下地部材31が壁パネル2に取り付けられた状態において、下地部材31の上片31Aと壁パネル2のパネル上面2Aとの間には、空間が区画されている。これにより、笠木受けブラケット4を下地部材31に固定するために用いられる貫通部材41の先端が壁パネル2のパネル上面2Aを傷つける恐れを低減させることができる。
【0027】
防水部材32は、下地部材31を覆うように構成されている。防水部材32は、例えば、防水塗料を施された鋼板などの、防水性を有する板状の部材である。防水部材32は、下地部材31の上片31Aを覆うように延在する略矩形板状の上片32Aと、上片31Aの屋内側の端部から垂下して下地部材31の側片31Bを覆う略矩形板状の側片32Bとを含む、壁体構造1の厚さ方向断面がL字型の部材である。防水部材32は、さらに、上片32Aの屋外側の端部から屋内側に折り返され、且つ、壁パネル2のパネル上面2Aに向かって垂下する、屋外側折り返し片32Cと、側片32Bの高さ方向下側の端部から壁パネル2の屋内側表面に向かって折り返された、屋内側折り返し片32Dとを有している。詳細は後述するが、屋外側折り返し片32C及び屋内側折り返し片32Dのそれぞれと、壁パネル2と、の間には、シール材33が充填されている。本実施形態では、防水部材32は、1枚の長尺な板状の部材が折り曲げられて形成されている。しかしながら、防水部材32は、例えば、溶接、接着、又は締結等、複数の部材を任意の方法により接合をすることで形成されていてもよい。
【0028】
さらに、防水部材32の屋外側折り返し片32Cは、下地部材31の上片31Aの屋外側の端部に屋外側から接していてもよい。同様に、防水部材32の屋内側折り返し片32Dは、下地部材31の側片31Bの高さ方向下側の端部に高さ方向下側から接していてもよい。これによって、シール材33が充填される際に、下地部材31が屋外側折り返し片32C又は屋内側折り返し片32Dから防水部材32を支えるため、シール材33の充填圧により防水部材32が移動しにくい。これによって、シール材33の充填作業が容易になる。
【0029】
シール材33は、例えば、モルタルなどの、湿式シール材であるが、止水可能な任意の材料とされてもよい。シール材33は、防水部材32の屋外側折り返し片32Cと壁パネル2の表面との間の隙間に充填されたシール材33Aと、防水部材32の屋内側折り返し片32Dと壁パネル2の表面との間の隙間に充填されたシール材33Bとを含む。これによって、シール材33Aは、防水部材32とパネル上面2Aとの間を屋外側から止水する。シール材33Bは、防水部材32と壁パネル2の屋内側表面との間を壁体構造1の高さ方向下側から止水する。
【0030】
防水構造3の屋外側の端部は、壁パネル2のパネル上面2Aの屋外側の端部よりも屋内側に位置している。即ち、防水構造3は、壁パネル2のパネル上面2Aの屋外側の少なくとも一部が露出するように壁パネル2に取り付けられている。かかる構成を有することによって、防水構造3を覆って化粧する笠木部材5をより屋内側に配置することが可能となる。なお、本実施形態では、シール材33Aの屋外側の端部が、防水構造3の屋外側の端部である。
【0031】
笠木受けブラケット4は、笠木部材5を取り付け可能に構成されている。笠木受けブラケット4は、壁体構造1の厚さ方向断面がL字型の部材であって、防水構造3を高さ方向上側及び屋内側から覆うように、防水構造3に取り付けられている。ただし、笠木受けブラケット4は、取り付けられる笠木部材5に応じて、任意の形状及び寸法とされてもよい。笠木受けブラケット4は、貫通部材41により、防水構造3に固定されている。本実施形態では、笠木受けブラケット4の防水構造3を高さ方向上側を覆う部分には挿通穴が開けられている。この挿通穴にタッピングネジ等の貫通部材41を貫通させ、さらに貫通部材41を防水構造3の下地部材31及び防水部材32に貫通させることで、笠木受けブラケット4が防水構造3の下地部材31に締結されている。笠木受けブラケット4の貫通部材41の周囲に止水部材42が配置されている。かかる構成を有することによって、貫通部材41が防水部材32を貫通して締結されることによる、防水構造3の防水効果の低減を抑制できる。
【0032】
本実施形態では、止水部材42には、第1止水部材42A、第2止水部材42B、及び第3止水部材42Cが含まれる。第1止水部材42Aは、笠木受けブラケット4及び防水部材32の間に挟まれ、貫通部材41により貫通されている。第1止水部材42Aは、雨水が防水部材32と貫通部材41との隙間から防水部材32の内部に流れ込むことを防ぐ。第2止水部材42Bは、笠木受けブラケット4の笠木部材5と対向する面上に配置され、貫通部材41により貫通されている。第2止水部材42Bは、笠木受けブラケット4と、貫通部材41の鍔部(例えばビスの頭部)と、の間で挟み込まれている。第2止水部材42Bは、雨水が、笠木受けブラケット4の高さ方向上側から貫通部材41を伝って、第1止水部材42Aまで流れ込むことを防ぐ。第3止水部材42Cは、笠木受けブラケット4及び防水部材32に挟まれ、第1止水部材42Aの周囲の少なくとも一部を囲むように(本実施例では第1止水部材42Aの少なくとも屋外側に)配置されている。第3止水部材42Cは、雨水が、笠木受けブラケット4及び防水部材32の間から、第1止水部材42Aまで流れ込むことを防ぐ。
【0033】
第3止水部材42Cは、第1止水部材42Aよりも、軟質、低密度、又は高粘着であってもよい。或いは、第3止水部材42Cは、第1止水部材42Aよりも壁体構造1への取り付け前での厚さが厚く、笠木受けブラケット4及び防水部材32の間に挟まれることで、第1止水部材42Aと略同一の厚みにまで圧縮されてもよい。これによって、第1止水部材42Aを、貫通部材41と防水部材32との間から雨水が流れ込みにくくするするために、より硬質又は密実とした場合に、第1止水部材42Aと笠木受けブラケット4又は防水部材32との間に隙間が生じやすくなってしまうことを、第3止水部材42Cが、笠木受けブラケット4及び防水部材32の表面の凹凸になじむことで、補うことができる。本実施形態の止水部材42は、パッキン材(乾式)であるが、湿式のシール材であってもよく、特に第3止水部材42Cについては、湿式のシール材とすることで、上述の軟質、低密度、高粘着の性質を得られ易くなる。また、第1止水部材42A、第2止水部材42B、及び第3止水部材42Cは、それぞれ同一の材料であってもよく、異なる材料であってもよい。
【0034】
第1止水部材42Aは、第2止水部材42B及び第3止水部材42Cそれぞれの二次止水部を構成している。つまり、笠木受けブラケット4の上面から流入する雨水に対して、第2止水部材42Bが一次止水部となる。また、笠木受けブラケット4と防水部材32との間に屋外側から流入する雨水に対して、第3止水部材42Cが一次止水部となる。万が一、一次止水部としての第2止水部材42B及び第3止水部材42Cを超えて雨水が浸入した場合であっても、二次止水部としての第1止水部材42Aが更に配置されている。そのため、雨水の防水部材32の内側への浸入を、より確実に抑制できる。なお、第1止水部材42A、第2止水部材42B、及び第3止水部材42Cは、互いに接触しないように配置されている。これによって、いずれかの止水部材42が吸収した雨水が他の止水部材42に伝わることを防ぎ、壁体構造1の止水性が向上する。ただし、第1止水部材42A、第2止水部材42B、及び第3止水部材42Cは、互いに接触するように配置されてもよく、或いは1つの部材として構成されてもよい。
【0035】
笠木部材5は、笠木受けブラケット4を高さ方向上側及び屋内側から覆うようにして、笠木受けブラケット4に固定されている。これによって、笠木部材5は、壁パネル2のパネル上面2A及び防水構造3を覆っている。具体的に、本実施形態では、笠木部材5は、壁パネル2のパネル上面2Aを防水構造3よりも上方から覆う略矩形板状の上片5Aと、上片5Aの屋内側の端部から垂下して防水構造3の屋内側を覆う略矩形板状の第1側片5Bと、を備える。また、笠木部材5は、壁パネル2のパネル上面2Aの幅方向において、全体に亘って設けられている。
【0036】
笠木部材5の上片5Aは、屋外側に向かって下る傾斜面を有している。上片5Aに傾斜面を有していることで、笠木部材5の上片5Aに塵埃が堆積しにくくなり、壁体構造1が汚れにくくなる。さらに、上片5Aの傾斜面が屋外側に向かって下っていることで、雨水を壁体構造1の屋外側に向かって流すことができる。本実施形態では、笠木部材5の上片5Aは、さらに、屋内側に向かって下る傾斜面も有しているが、有していなくてもよい。また、笠木部材5の第1側片5Bが、防水構造3の屋内側を覆っている。これにより、壁パネル2のパネル上面2A及び防水構造3に対する屋内側からの視認性が低下して、壁体構造1の意匠性が向上する。
【0037】
さらに、笠木部材5は、上片5Aの屋外側の端部から垂下した第2側片5C、及び第2側片5Cの下端から屈曲して屋内側に延びる下片5Dを有している。笠木部材5の下片5Dは、壁パネル2のパネル上面2Aよりも上方に位置している。そして、笠木部材5の下片5Dの少なくとも一部は、壁パネル2のパネル上面2Aの少なくとも一部と対向する位置に配置されている。これによって、笠木部材5の下片5Dの少なくとも一部と壁パネル2のパネル上面2Aの少なくとも一部との間には、空間6が区画されている。かかる構成を有することによって、笠木部材5は、上片5A等から流れてきた雨水を、下片5Dから壁パネル2のパネル上面2Aに落とすことができる。これによって、防水構造3の屋外側の端部を、壁パネル2のパネル上面2Aの屋外側の端部よりも屋内側に配置した場合であっても、壁パネル2のパネル上面2Aに塵埃が堆積しにくくなり、壁体構造1が汚れにくくなる。なお、本実施形態のように、笠木部材5の下片5Dの最下端(本実施形態では下片5Dの下面全域)の少なくとも一部が、壁パネル2のパネル上面2Aと対向する位置に配置されていることが好ましい。かかる構成を有することによって、上片5A等から流れてきた雨水は、下片5Dから壁パネル2のパネル上面2A上に、より落下し易くなる。
【0038】
笠木部材5は、下片5Dの屋内側の端部から屈曲して上方に延びる起立片5Eを更に有している。かかる構成を有することによって、笠木部材5を笠木受けブラケット4に取り付ける際に、笠木部材5が防水構造3を傷つける恐れを低減させることができる。
【0039】
笠木部材5は、
図1に示されるように、笠木受けブラケット4に、下片5D及び起立片5Eにおいて屋外側から嵌め込まれた状態で、第1側片5Bにおいて高さ方向下側からネジで締結されている。このように、屋外側における笠木部材5と笠木受けブラケット4との取り付け部材を減らすことで、笠木部材5の壁体構造1における屋外側への突出が軽減可能となり、壁体構造1の意匠性を向上させることができる。しかしながら、笠木部材5は、笠木受けブラケット4に任意の方法で固定されていてもよい。
【0040】
壁パネル2は、例えば、軽量気泡コンクリート(ALC)等、鉄筋コンクリート製のパネルである。しかしながら、壁パネル2は、ALCに限られず、木製のパネル等、任意の材料で構成されたパネルであってもよい。壁パネル2の形状は、例えば、略矩形であるが、これに限られない。本実施形態では、壁パネル2の幅方向の寸法は略610mmであり、厚さ方向の寸法は略75mmであるが、これに限られず、任意の幅及び厚さとされていてもよい。また、壁パネル2の高さ方向の寸法は、特に限定されないが、例えば、建物の1階分の階層の高さ(階高)の寸法のもの、或いは腰壁手摺又はパラペットとしての高さの寸法のものがある。本実施形態の壁パネル2は、取付金具を介して、下階の基礎又は梁、及び、基礎又は梁から上方に突出して取り付けられた支柱、に対して取り付けられている。さらに、複数の壁パネル2が、支柱を挟むように、幅方向に並んで連接されていてもよい。
【0041】
壁パネル2のパネル上面2Aの空間6に露出する部分は、屋外側に向かって下る傾斜面を有している。これによって、笠木部材5の下片5Dからパネル上面2Aに落とされた雨水を壁体構造1の屋外側に向かって流すことができる。このため、壁パネル2のパネル上面2Aに塵埃が堆積しにくくなり、壁体構造1が汚れにくくなる。また、壁パネル2のパネル上面2Aの空間6が屋外側に行くほど広くなるため、シール材33を充填する位置の屋外側からの視認性が良くなり、シール材33の充填作業及び充填量管理が容易になる。
【0042】
図2に示されるように、壁パネル2の屋外側の表面には、パネル上面2Aに開口を有する縦化粧溝21が形成されている。かかる構成を有することによって、壁パネル2は、縦化粧溝21を介して、笠木部材5から壁パネル2のパネル上面2Aに落とされた雨水を下方向に流すことができる。このため、壁パネル2の屋外側の表面にパネル上面2Aに付着した塵埃を含む雨水が流れにくくなり、壁パネル2の表面が汚れにくくなる。本実施形態では、壁パネル2において、複数の縦化粧溝21が所定の幅且つ所定の間隔で幅方向に並んで形成されている。しかしながら、縦化粧溝21の間隔は等しくなくてもよく、また、壁パネル2に形成される縦化粧溝21の数は1本以上の任意の数とされてもよい。
【0043】
再び
図1を参照すると、壁パネル2の縦化粧溝21の溝底は、壁体構造1の厚さ方向において、防水構造3の屋外側の端部と略等しい位置に位置している。すなわち、壁体構造1の厚さ方向において、壁パネル2の縦化粧溝21の深さは、パネル上面2Aの空間6に露出する部分の長さと略等しい。かかる構成を有することによって、厚さ方向における、シール材33を充填する位置が縦化粧溝21の底に揃うため、防水構造3のシール材33の収まりが良くなり、シール材33の充填作業及び充填量管理が容易になる。ただし、壁パネル2の縦化粧溝21の溝底は、防水構造3の屋外側の端部よりも屋外側の任意の位置とされていてもよい。
【0044】
また、
図2に示されるように、壁パネル2の屋外側の表面には、所定の幅W1且つ所定の間隔D1で複数の横化粧溝22が形成されている。すなわち、壁パネル2の横化粧溝22の延在方向に直交する幅がW1とされており、壁パネル2の高さ方向に隣り合う2つの横化粧溝22の間の間隔がD1とされている。なお、本明細書では、横化粧溝22の延在方向に直交する幅を、単に横化粧溝22の幅ともいう。
図2において斜線の網掛けで示されるように、笠木部材5の下片5Dと壁パネル2のパネル上面2Aとの間には、空間6が区画されている。空間6の延在方向に直交する幅、即ち笠木部材5の下片5Dと壁パネル2のパネル上面2Aとの間の幅W2は、横化粧溝22の幅W1と略等しい。壁パネル2の上端と複数の横化粧溝22のうち最上段の横化粧溝22との間の間隔D2は、横化粧溝22の間の間隔D1と略等しい。かかる構成を有することによって、笠木部材5の下片5Dと壁パネル2のパネル上面2Aとの間の空間6と、壁パネル2の横化粧溝22との調和性が向上し、壁体構造1の意匠性が向上する。
【0045】
笠木部材5の下片5Dと壁パネル2のパネル上面2Aとの間の、屋外側から視認可能な部分には、壁パネル2の横化粧溝22と略同一の仕上げがなされている。本明細書では、略同一は、好ましくは同一であることを意味する。しかしながら、略同一には、建物の意匠性を損なわない程度に類似していることが含まれてもよい。本実施形態では、屋外側から視認可能な部分には、笠木部材5の下片5D、壁パネル2のパネル上面2Aの空間6に露出する部分、及び防水構造3のシール材33Aの屋外側の表面が含まれる。例えば、屋外側から視認可能な部分に、壁パネル2の横化粧溝22と同一又は類似する塗料による吹き付け塗装が行われてもよい。かかる構成を有することによって、笠木部材5の下片5Dと壁パネル2のパネル上面2Aとの間の空間6と、壁パネル2の横化粧溝22との調和性が向上する。
【0046】
図2に示されるように、建物は、壁体構造1に含まれる壁パネル2と隣接する他の壁パネル2’を備える。笠木部材5の下片5Dと壁パネル2のパネル上面2Aとの間の空間6は、壁パネル2と隣接する他の壁パネル2’に形成された横化粧溝22と直線状になるように配置されている。本実施形態では、笠木部材5の下片5Dと壁パネル2のパネル上面2Aとの間の空間6は、他の壁パネル2’の横化粧溝22と連続して配置されているが、連続せずに配置されていてもよい。さらに、笠木部材5の下片5Dと壁パネル2のパネル上面2Aとの間の幅W2は、壁パネル2と隣接する他の壁パネル2’に形成された横化粧溝22’の幅W1’と略等しい。壁体構造1の、笠木部材5の下片5Dと壁パネル2のパネル上面2Aとの間の空間6に露出する表面には、他の壁パネル2’に形成された横化粧溝22’と略同一の仕上げがなされている。かかる構成を有することによって、笠木部材5の下片5Dと壁パネル2のパネル上面2Aとの間の空間6と、壁パネル2’の横化粧溝22’との調和性がさらに向上する。
【0047】
以上述べたように、上述の実施形態に係る壁体構造1は、建物の内外を区画するとともに建物の外部床面から上方に突出した壁パネル2と、壁パネル2のパネル上面2Aを覆う笠木部材5と、を備える壁体構造1であって、笠木部材5は、パネル上面2Aを覆うとともに屋外側に向かって下る傾斜面を有する上片5A、上片5Aの屋外側の端部から垂下した側片(第2側片5C)、及び側片(第2側片5C)の下端から屈曲して屋内側に延びる下片5Dを有し、笠木部材5の下片5Dは、パネル上面2Aよりも上方に位置し、笠木部材5の下片5Dの少なくとも一部は、パネル上面2Aの少なくとも一部と対向する位置に配置されており、笠木部材5の下片5Dの少なくとも一部とパネル上面2Aの少なくとも一部との間には、空間6が区画されている。かかる構成によれば、笠木部材5の上に振り落ちた雨水を、笠木部材5の下片5Dから、壁パネル2のパネル上面2Aに落とすことができ、パネル上面2Aに堆積した塵埃を雨水で洗い流すことができる。したがって、壁体構造1の外壁を構成する壁パネル2の汚染を抑制できる。
【0048】
上述の実施形態に係る壁体構造1では、壁パネル2のパネル上面2Aの空間6に露出する部分は、屋外側に向かって下る傾斜面を有することが好ましい。かかる構成によれば、パネル上面2Aの空間6に露出する部分に傾斜面を有していることで、パネル上面2Aに塵埃が堆積しにくくなり、壁体構造1が汚れにくくなる。さらに、この空間6を通じてシール材33を充填する場合であっても、シール材33を充填する位置の屋外側からの視認性が良くなるため、シール材33の充填作業及び充填量管理が容易になる。
【0049】
上述の実施形態に係る壁体構造1では、壁パネル2の屋外側の表面には、パネル上面2Aに開口を有する縦化粧溝21が形成されており、壁体構造1の厚さ方向において、縦化粧溝21の深さは、パネル上面2Aの空間6に露出する部分の長さと略等しいことが好ましい。かかる構成によれば、壁パネル2は、縦化粧溝21を介して、笠木部材5から壁パネル2のパネル上面2Aに落とされた雨水を下方向に流すことができる。このため、壁パネル2の屋外側の表面にパネル上面2Aに付着した塵埃を含む雨水が流れにくくなり、壁パネル2の表面が汚れにくくなる。
【0050】
上述の実施形態に係る壁体構造1は、壁パネル2のパネル上面2Aを覆う下地部材31、下地部材31を覆う防水部材32、及び防水部材32とパネル上面2Aとの間を止水するシール材33を含む防水構造3と、貫通部材41により防水構造3に固定され、笠木部材5が取り付けられる笠木受けブラケット4と、を更に備え、笠木受けブラケット4には、笠木受けブラケット4及び防水構造3に挟まれ、貫通部材41により貫通される第1止水部材42Aと、笠木受けブラケット4の、笠木部材5と対向する面において、貫通部材41により貫通される第2止水部材42Bと、が配置されていることが好ましい。かかる構成によれば、第2止水部材42Bが、雨水が、笠木受けブラケット4の高さ方向上側から貫通部材41を伝って、第1止水部材42Aまで流れ込むことを防ぐ一次的な止水層の役割を果たすとともに、第1止水部材42Aが、雨水が防水部材32と貫通部材41との隙間から防水部材32の内部に流れ込むことを防ぐ二次的な止水層の役割を果たすことができる。したがって、貫通部材41が防水部材32を貫通して締結されることによる、防水構造3の防水効果の低減を抑制できる。これによって、笠木部材5の下片5Dの位置を高くした場合でも、壁体構造1の止水性を維持することができる。さらに、笠木部材5と防水構造3との間に直接的に止水構造を設けるのではなく、笠木受けブラケット4と防水構造3との間に止水構造を設けることで、笠木部材5の交換時の施工作業が容易になる。
【0051】
上述の実施形態に係る壁体構造1は、壁パネル2のパネル上面2Aを覆う下地部材31、下地部材31を覆う防水部材32、及び防水部材32とパネル上面2Aとの間を止水するシール材33を含む防水構造3と、貫通部材41により防水構造3に固定され、笠木部材5が取り付けられる笠木受けブラケット4と、を更に備え、笠木受けブラケット4には、笠木受けブラケット4及び防水構造3に挟まれ、貫通部材41により貫通される第1止水部材42Aと、笠木受けブラケット4及び防水構造3に挟まれ、第1止水部材42Aの周囲の少なくとも一部を囲む第3止水部材42Cと、が配置されていることが好ましい。かかる構成によれば、第3止水部材42Cが、笠木受けブラケット4及び防水部材32の間から第1止水部材42Aまで雨水が流れ込むことを防ぐ一次的な止水層の役割を果たすとともに、第1止水部材42Aが、雨水が防水部材32と貫通部材41との隙間から防水部材32の内部に流れ込むことを防ぐ二次的な止水層の役割を果たすことができる。したがって、貫通部材41が防水部材32を貫通して締結されることによる、防水構造3の防水効果の低減を抑制できる。
【0052】
上述の実施形態に係る壁体構造1では、第3止水部材42Cは、湿式のシール材であることが好ましい。かかる構成によれば、建物に壁体構造1を設置した際に、笠木受けブラケット4及び防水部材32の取り付け具合に応じて、第3止水部材42Cとして充填するシール材の量を調整することができ、貫通部材41が防水部材32を貫通して締結されることによる、防水構造3の防水効果の低減を抑制できる。
【0053】
上述の実施形態に係る壁体構造1では、壁パネル2の屋外側の表面には、所定の幅W1且つ所定の間隔D1で複数の横化粧溝22が形成されており、笠木部材5の下片5Dとパネル上面2Aとの間の幅W2は、所定の幅W1と略等しく、壁パネル2の上端と複数の横化粧溝22のうち最上段の横化粧溝22との間の間隔D2は、所定の間隔D1と略等しいことが好ましい。かかる構成によれば、笠木部材5の下片5Dと壁パネル2のパネル上面2Aとの間の空間6と、壁パネル2の横化粧溝22との調和性が向上し、壁体構造1の意匠性が向上する。
【0054】
上述の実施形態に係る壁体構造1Bでは、笠木部材5は、下片5Dの屋内側の端部から屈曲して上方に延びる起立片5Eを更に有することが好ましい。かかる構成によれば、壁体構造1Bは、笠木部材5を笠木受けブラケット4に取り付ける際に、笠木部材5が防水構造3を傷つける恐れを低減させることができる。
【0055】
上述の実施形態に係る建物は、壁体構造1を含む建物であって、壁パネル2と隣接する他の壁パネル2’を備え、笠木部材5の下片5Dとパネル上面2Aとの間の空間6は、他の壁パネル2’に形成された横化粧溝22’と直線状になるように配置されている。かかる構成によれば、笠木部材5の下片5Dと壁パネル2のパネル上面2Aとの間の空間6と、壁パネル2’の横化粧溝22’との調和性が向上する。したがって、建物の意匠性が向上し得る。
【0056】
上述の実施形態に係る建物では、笠木部材5の下片5Dとパネル上面2Aとの間の幅W2は、壁パネル2と隣接する他の壁パネル2’に形成された横化粧溝22’の幅W1’と略等しいことが好ましい。かかる構成によれば、笠木部材5の下片5Dと壁パネル2のパネル上面2Aとの間の空間6と、壁パネル2’の横化粧溝22’との調和性がさらに向上する。
【0057】
上述の実施形態に係る建物では、壁体構造1の、空間6に露出する表面には、他の壁パネル2’に形成された横化粧溝22’と略同一の仕上げがなされていることが好ましい。かかる構成によれば、笠木部材5の下片5Dと壁パネル2のパネル上面2Aとの間の空間6と、他の壁パネル2’の横化粧溝22’との調和性がさらに向上する。
【0058】
本発明は、上述した実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲で記載された内容を逸脱しない範囲で、様々な構成により実現することが可能である。
【0059】
例えば、上記の各実施形態では、笠木部材5は、壁パネル2のパネル上面2Aの幅方向において、全体に亘って設けられているものとして説明した。しかしながら、笠木部材5は、壁パネル2のパネル上面2Aの幅方向において、全体に亘って設けられていなくてもよい。例えば、建物のベランダの横幅が壁パネル2の横幅より短い場合には、笠木部材5の横幅もベランダの横幅と同じ長さとされてもよい。
【0060】
また例えば、上記の各実施形態では、壁体構造1は、1枚の壁パネル2を含むものとして説明した。しかしながら、壁体構造1は、高さ方向又は幅方向に並ぶ2枚以上の壁パネル2を含んでいてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 壁体構造
2 壁パネル
2A パネル上面
21 縦化粧溝
22 横化粧溝
2’ 他の壁パネル
22’ パネル上面
3 防水構造
31 下地部材
31A 上片
31B 側片
31C ボルト
32 防水部材
32A 上片
32B 側片
32C 屋外側折り返し片
32D 屋内側折り返し片
33(33A、33B) シール材
4 笠木受けブラケット
41 貫通部材
42 止水部材
42A 第1止水部材
42B 第2止水部材
42C 第3止水部材
5 笠木部材
5A 上片
5B 第1側片
5C 第2側片
5D 下片
5E 起立片
6 空間
W1、W2、W1’ 幅
D1、D2 間隔