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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】運動案内装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 29/06 20060101AFI20240209BHJP
   F16C 33/66 20060101ALI20240209BHJP
   F16N 7/00 20060101ALI20240209BHJP
   F16N 11/00 20060101ALI20240209BHJP
【FI】
F16C29/06
F16C33/66 Z
F16N7/00
F16N11/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020118184
(22)【出願日】2020-07-09
(65)【公開番号】P2022015387
(43)【公開日】2022-01-21
【審査請求日】2023-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】390029805
【氏名又は名称】THK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安武 寛正
(72)【発明者】
【氏名】古澤 竜二
(72)【発明者】
【氏名】大関 隆之介
(72)【発明者】
【氏名】丸木 諒祐
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-241753(JP,A)
【文献】特開平7-317761(JP,A)
【文献】特開2015-218882(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 29/06
F16C 33/66
F16N 7/00
F16N 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿って延在する軌道部材と、該軌道部材の長手方向に沿って相対的に移動可能な移動部材と、を備え、
前記軌道部材および前記移動部材のそれぞれに形成された転動面が互いに対向し、且つ両部材の転動面の間に複数の転動体を転動可能な状態で挟み込んで該移動部材が該軌道部材に対して係合され、
前記軌道部材の長手方向に沿って前記移動部材が移動する際に、該軌道部材の転動面と該移動部材の転動面とによって画定される負荷転走路と前記移動部材の内部に設けられた循環路とによって形成される転動体経路を通って前記複数の転動体が循環する案内装置であって、
前記移動部材において、前記循環路に潤滑剤を供給するための潤滑経路が形成されており、
前記潤滑経路が、
前記移動部材の外壁面に開口し潤滑剤の供給口となる入口部を含む共通経路と、
前記共通経路に連通する第1連通部、および、前記循環路の壁面に開口する第1開口部を含み、潤滑剤としてグリースが使用されるときにグリースが流れる第1経路と、
前記共通経路に連通する第2連通部、および、前記循環路の壁面に開口する第2開口部を含み、潤滑剤として潤滑油が使用されるときに潤滑油が流れる第2経路と、を有し、
前記第2経路の断面積が前記第1経路の断面積よりも小さく、且つ、前記共通経路において前記第2経路の前記第2連通部が前記第1経路の前記第1連通部よりも前記入口部側に位置しており、
前記案内装置が、前記潤滑経路における前記共通経路の前記入口部を塞ぐ栓部材であって、取り外し可能であり、且つ、該共通経路を塞いだ状態で該共通経路内を移動させることが可能な栓部材を備える、
案内装置。
【請求項2】
潤滑剤としてグリースが使用されるときに前記栓部材が取り外され、
潤滑剤として潤滑油が使用されるときに、前記栓部材が、前記共通経路における、前記第1経路の前記第1連通部が連通された位置、または、前記第1経路の前記第1連通部と前記第2経路の前記第2連通部との間の位置に配置される、
請求項1に記載の案内装置。
【請求項3】
前記移動部材において、前記共通経路が、前記第1経路の前記第1連通部よりも奥まで延びるように形成されており、
潤滑剤としてグリースが使用されるときに、前記栓部材が、取り外されるか、または、前記共通経路における前記第1経路の前記第1連通部よりも奥の位置に配置される、
請求項2に記載の案内装置。
【請求項4】
前記潤滑経路が前記共通経路を複数有し、
各共通経路の前記入口部が前記移動部材における異なる位置に形成されており、
各共通経路に前記第1経路および前記第2経路が連通されており、
各共通経路に対応する複数の前記栓部材を備える、
請求項1に記載の案内装置。
【請求項5】
前記移動部材が、前記転動面が形成された移動部材本体と、前記移動部材の移動方向の両端に配置される一対の端部部材と、を備え、
前記循環路が、前記移動部材本体に前記負荷転走路と平行に形成された戻し路と、各端部部材に前記負荷転走路と前記戻し路とを繋ぐようにU字状に形成された方向転換路と、によって構成され、
前記潤滑経路が各端部部材に形成されている、
請求項1から4の何れか一項に記載の案内装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道部材に対して移動部材が相対的に移動する案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、長手方向に沿って延在する軌道部材と、該軌道部材の該長手方向に沿って相対的に移動可能な移動部材と、を備える案内装置が知られている。このような案内装置においては、軌道部材および移動部材のそれぞれに形成され、互いに対向する転動面の間に複数の転動体を転動可能な状態で挟み込んで該移動部材が該軌道部材に対して係合されている。これにより、軌道部材の転動面と移動部材の転動面との間において複数の転動体が転動する負荷転走路が画定される。さらに、移動部材の内部には、負荷転走路と連通し、複数の転動体を循環させるための循環路が設けられている。軌道部材の長手方向に沿って移動部材が移動する際には、負荷転走路および循環路を通って複数の転動体が循環する。以下、負荷転走路と循環路とによって形成される、複数の転動体が循環する経路を「転動体経路」と称する。
【0003】
ここで、上記のような構成を有する案内装置においては、転動体が転動体経路を循環する際の、該転動体経路の壁面(すなわち、転動面または循環路の壁面)および転動体の摩耗を抑制するために、転動体経路に対して潤滑剤を供給する必要がある。案内装置において使用される潤滑剤としては、一般に、グリース(半固体状潤滑剤)と潤滑油(液体潤滑剤)とが知られている。グリースと潤滑油とは案内装置の使用環境に応じて使い分けられる。
【0004】
また、特許文献1には、潤滑経路を備える運動案内装置が開示されている。潤滑経路は、転動体循環経路に供給される潤滑剤が流れる経路である。この特許文献1では、運動案内装置が、潤滑経路を構成する潤滑経路溝が形成される潤滑経路部品と、潤滑経路部品が嵌められる嵌合溝が形成される蓋部材本体と、を備えている。そして、潤滑剤として潤滑油を使用するときには、蓋部材本体の嵌合溝に潤滑経路部品を嵌めて潤滑経路を狭くする。一方、潤滑剤としてグリースを使用するときには、蓋部材本体の嵌合溝に潤滑経路部品を嵌めないで、蓋部材本体の嵌合溝を潤滑経路として利用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5160239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のとおり、案内装置においては、潤滑剤として、グリースが使用される場合と、潤滑油が使用される場合とがある。ただし、グリースと潤滑油とでは粘性が大きく異なる。具体的には、グリースの粘性は潤滑油の粘性よりも高い。そのため、潤滑剤が流れる経路である潤滑経路を通して潤滑剤を転動体経路に供給する構成において、グリースを供給するのに適した潤滑経路と、潤滑油を供給するのに適した潤滑経路とでは、その断面積が大きく異なる。つまり、粘性が高いグリースを潤滑剤として使用する場合は、粘性が低い潤滑油を潤滑剤として使用する場合に比べて、潤滑経路の断面積を大きくする必要がある。
【0007】
したがって、仮に、グリースを供給するのに適した潤滑経路に潤滑油を流し込んだ場合、潤滑経路の容積が大きすぎるために該潤滑経路内に潤滑油が充満せず、その結果、転動体経路の全体に潤滑油が行き渡らない虞がある。一方で、仮に、潤滑油を供給するのに適
した潤滑経路にグリースを流し込もうとしても、潤滑経路の断面積が小さすぎるために該潤滑経路内にグリースが入り込まず、その結果、転動体経路にグリースが供給されない虞がある。
【0008】
このように、案内装置において、潤滑剤として、グリースが使用される場合と、潤滑油が使用される場合とで、共通の循環経路を使用することは困難である。そこで、上記の特許文献1では、運動案内装置において、潤滑剤として潤滑油を使用するときは嵌合溝に潤滑経路部品はめ込み、その一方で、潤滑剤としてグリースを使用するときは嵌合溝に潤滑経路部材を嵌めないようにすることで、使用する潤滑剤に応じて潤滑経路の構造を異なるものとする。しかしながら、この特許文献1に記載の技術では、潤滑剤に応じて運動案内装置の構造を変更することになる。そのため、運動案内装置が設備として設置された後において、使用される潤滑油の変更に対応することは困難である。
【0009】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであって、軌道部材に対して移動部材が相対的に移動する案内装置において、使用される潤滑油の変更に対応することが可能となる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る案内装置は、長手方向に沿って延在する軌道部材と、該軌道部材の長手方向に沿って相対的に移動可能な移動部材と、を備え、前記軌道部材および前記移動部材のそれぞれに形成された転動面が互いに対向し、且つ両部材の転動面の間に複数の転動体を転動可能な状態で挟み込んで該移動部材が該軌道部材に対して係合され、前記軌道部材の長手方向に沿って前記移動部材が移動する際に、該軌道部材の転動面と該移動部材の転動面とによって画定される負荷転走路と前記移動部材の内部に設けられた循環路とによって形成される転動体経路を通って前記複数の転動体が循環する案内装置であって、前記移動部材において、前記循環路に潤滑剤を供給するための潤滑経路が形成されており、前記潤滑経路が、前記移動部材の外壁面に開口し潤滑剤の供給口となる入口部を含む共通経路と、前記共通経路に連通する第1連通部、および、前記循環路の壁面に開口する第1開口部を含み、潤滑剤としてグリースが使用されるときにグリースが流れる第1経路と、前記共通経路に連通する第2連通部、および、前記循環路の壁面に開口する第2開口部を含み、潤滑剤として潤滑油が使用されるときに潤滑油が流れる第2経路と、を有し、前記第2経路の断面積が前記第1経路の断面積よりも小さく、且つ、前記共通経路において前記第2経路の前記第2連通部が前記第1経路の前記第1連通部よりも前記入口部側に位置しており、前記案内装置が、前記潤滑経路における前記共通経路の前記入口部を塞ぐ栓部材であって、取り外し可能であり、且つ、該共通経路を塞いだ状態で該共通経路内を移動させることが可能な栓部材を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、軌道部材に対して移動部材が相対的に移動する案内装置において、使用される潤滑油の変更に対応することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係る案内装置の外観を示す図である。
図2】案内装置の転動体の動きを説明するための図である。
図3】レール延在方向に直交する面での、案内装置の断面を示す図である。
図4】エンドプレートの内部構造を概略的に示す第1の図である。
図5】エンドプレートの内部構造を概略的に示す第2の図である。
図6】エンドプレートの内部構造を概略的に示す第3の図である。
図7】エンドプレートの内部構造を概略的に示す第4の図である。
図8】エンドプレートの潤滑経路でのグリースの流れを説明するための図である。
図9】エンドプレートの潤滑経路での潤滑油の流れを説明するための図である。
図10】変形例における、エンドプレートの潤滑経路でのグリースの流れを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る案内装置においては、複数の転動体が循環する転動体経路が、負荷転走路と、移動部材の内部に設けられた循環路とによって形成されている。そして、移動部材には、循環路に対して潤滑剤を供給するための潤滑経路が形成されている。この潤滑経路には外部から潤滑剤が供給される。
【0014】
潤滑経路は、共通経路、第1経路、および第2経路を有している。共通経路は、移動部材の外壁面に開口し潤滑剤の供給口となる入口部を含んでいる。潤滑剤としてグリースが使用される場合、および、潤滑剤として潤滑油が使用される場合のいずれにおいても、潤滑剤は外部から共通経路の入口部を介して該共通経路内へ流し込まれる。
【0015】
第1経路は、潤滑剤としてグリースが使用されるときにグリースが流れる経路である。第2経路は、潤滑剤として潤滑油が使用されるときに潤滑油が流れる経路である。第1経路の第1連通部および第2経路の第2連通部はそれぞれ共通経路に連通されている。また、第1経路の第1開口部および第2経路の第2開口部はそれぞれ循環路の壁面に開口している。そのため、共通経路内へ流し込まれたグリースは、該共通経路から第1連通部を通って第1経路に流れ込み、さらに第1開口部を通って循環路に供給される。また、共通経路内へ流し込まれた潤滑油は、該共通経路から第2連通部を通って第2経路に流れ込み、さらに第2開口部を通って循環路に供給される。
【0016】
そして、潤滑経路において、第2経路の断面積は第1経路の断面積よりも小さく形成されている。つまり、第1経路の断面積は、グリースが流れるのに適した大きさに形成されている。一方で、第2経路の断面積は、潤滑油が流れるのに適した大きさに形成されている。また、共通経路において、第2経路の第2連通部は第1経路の第1連通部よりも入口部側(すなわち、潤滑剤が流れる方向に沿って上流側)に位置している。
【0017】
さらに、案内装置は、潤滑経路における共通経路の入口部を塞ぐ栓部材を備えている。この栓部材は、取り外し可能であり、且つ、該共通経路を塞いだ状態で該共通経路内を移動させることが可能に構成されている。そのため、共通経路の入口部から栓部材が取り外されると、該入口部から該共通経路内に潤滑剤を流し込むことが可能となる。また、共通経路内に栓部材が移動されると、共通経路内における栓部材の位置よりも入口部側の部分にのみ潤滑剤を流し込むことが可能となる。換言すれば、共通経路内における栓部材の位置よりも奥の部分に潤滑剤が流れ込むことを抑制することが可能となる。
【0018】
上記のような構成の案内装置においては、共通経路の入口部から栓部材を取り外すか、または、栓部材を共通経路内に移動させるかによって、使用する潤滑剤の変更に対応することができる。つまり、潤滑剤としてグリースが使用されるときは第1経路を介して循環路にグリースを供給し、且つ、潤滑剤として潤滑油が使用されるときは第2経路を介して循環路に潤滑油を供給することが可能となる。
【0019】
例えば、潤滑剤としてグリースが使用されるときには、栓部材が共通経路の入口部から取り外される。これにより、入口部から共通経路内にグリースを流し込むことが可能となる。そして、共通経路に流し込まれたグリースが第1経路を介して循環路に供給される。このとき、共通経路において、グリースは第2経路の第2連通部が連通されている部分を通過することになる。しかしながら、第2経路の断面積は、第1経路の断面積よりも小さく、潤滑油が流れるのに適した大きさに形成されている。そのため、グリースが第2連通
部を通って第2経路内に流れ込むことを抑制することができる。なお、移動部材において、共通経路が、第1経路の第1連通部よりも奥まで延びるように形成されている場合がある。このような場合は、潤滑剤としてグリースが使用されるときに、栓部材が、共通経路における第1経路の第1連通部よりも奥の位置に配置されてもよい。
【0020】
一方で、潤滑剤として潤滑油が使用されるときには、栓部材が、共通経路における、第1経路の第1連通部が連通された位置、または、第1経路の第1連通部と第2経路の第2連通部との間の位置に配置される。これにより、入口部から共通経路内に潤滑油を流し込むことが可能となる。そして、共通経路に流し込まれた潤滑油が第2経路を介して循環路に供給される。このとき、共通経路は、第2経路の連通部分よりも下流側である、第1経路の第1連通部が連通された位置、または、第1経路の連通部と第2経路の連通部との間の位置において栓部材によって塞がれている。そのため、潤滑油が第1連通部を通って第1経路内に流れ込むことを抑制することができる。
【0021】
また、上記のとおり、案内装置において、潤滑剤としてグリースが使用される場合、および、潤滑剤として潤滑油が使用される場合のいずれにおいても、共通の供給口である共通経路の入口部から潤滑剤を供給することができる。そのため、移動部材の外壁面に、グリース供給用の入口部と潤滑油供給用の入口部とを別々に設ける場合に比べて、潤滑剤の供給口を設けるためのスペースを縮小することができる。
【0022】
以下、本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。本実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、および、その相対配置等は、特に記載がない限りは発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0023】
<案内装置の構成>
図1に、案内装置1の外観を示す。案内装置1は、レール11(本願でいう「軌道部材」に相当する)と、レール11の長手方向沿いに相対移動可能に組み付けられるキャリッジ12(本願でいう「移動部材」に相当する)と、を備える。レール11は、例えば工作機械等のユーザ設備のベースに取り付けられ、キャリッジ12に当該ユーザ設備のテーブルが取り付けられる。この場合、テーブルを含む可動部の運動は、案内装置1によって案内される。なお、案内装置1を上下反転し、キャリッジ12をユーザ設備のベースに取り付け、レール11をテーブルに取り付けることもできる。また、案内装置1は、レール11の長手方向が水平でなく、水平面に対して傾斜し或いは直交する状態で用いられてもよい。
【0024】
なお、本願においては、説明の便宜上、レール11を水平面に配置し、レール11の長手方向から見たときの方向、すなわち図1に示すx軸を前後方向、y軸を上下方向、z軸を左右方向として案内装置1の構成を説明する。もちろん、案内装置1の配置は、このような配置に限られることはない。また、図2は、案内装置1における複数のころ15(本願でいう「転動体」に相当する)の動きを表している。図3は、レール11の延在方向に直交する面(図1におけるyz平面)での、案内装置1の断面を表している。
【0025】
図3に示すように、レール11の左右のレール側面11bのそれぞれには、上下二条の転動面16bが形成されている。つまり、レール11には四条の転動面16bが形成されている。また、図1に示すように、レール11の上方のレール上面11aには、レール11を上記ユーザ設備のベースに締結するための締結部材が通される通し孔11cが長手方向沿いに適当なピッチで設けられる。
【0026】
キャリッジ12は、レール11のレール上面11aに対向する中央部と、レール11の側面に対向する一対の側方部と、を有し、断面コの字状である。詳細には、図1に示すよ
うに、キャリッジ12は、移動方向の中央のキャリッジ本体13(本願でいう「移動部材本体」に相当する)と、キャリッジ本体13の移動方向の両端に配置される一対のエンドプレート14(本願でいう「端部部材」に相当する)と、を備える。そして、図3に示すように、キャリッジ本体13は、レール11のレール上面11aに対向する中央部13aと、レール11のレール側面11bに対向する一対の側方部13bと、を有し、断面コの字状である。更に、エンドプレート14も、キャリッジ本体13と同様に、レール11のレール上面11aに対向する中央部と、レール11のレール側面11bに対向する一対の側方部と、を有し、断面コの字状である。各エンドプレート14は、ボルト等の締結部材によってキャリッジ本体13に締結される。なお、エンドプレート14の構成の詳細については後述する。
【0027】
そして、図3に示すように、キャリッジ本体13には、レール11の四条の転動面16bそれぞれに対向する四条の転動面16aが形成されている。そして、レール11に形成された転動面16bとキャリッジ本体13に形成された転動面16aとの間に複数のころ15を転動可能な状態で挟み込んで、該キャリッジ本体13がレール11に係合されている。そして、互いに対向する、レール11の転動面16aとキャリッジ本体13の転動面16bとによって、負荷転走路16が画定される。また、図2に示すように、キャリッジ本体13の内部には、負荷転走路16と平行に戻し路17が形成されている。また、各エンドプレート14には、負荷転走路16と戻し路17とを繋げるU字状の方向転換路18が形成されている。方向転換路18の内周側は、キャリッジ本体13と一体の断面半円状の内周部19によって構成される。なお、戻し路17と一対の方向転換路18とによって、本願でいう「循環路」が構成される。そして、レール11の転動面16bとキャリッジ本体13の転動面16aとの間の負荷転走路16、一対の方向転換路18、戻し路17によってトラック状の転動体経路20が形成される。この転動体経路20に複数のころ15が収容される。そして、案内装置1においては、図2に示すように、レール11に対してキャリッジ12が白抜き矢印の方向に相対的に移動する際に、転動体経路20を通って複数のころ15が矢印の方向に循環する。つまり、互いに対向する転動面16a、16bの間に存在するころ15が負荷転走路16を転がる。また、負荷転走路16の一端まで転がったころ15は、一方の方向転換路18に導入され、戻し路17、および他方の方向転換路18を経由して、負荷転走路16の他端に戻る。
【0028】
<潤滑経路の構成>
上記のように、案内装置1においては、レール11に対してキャリッジ12が相対的に移動する際に、転動体経路20を通って複数のころ15が循環する。このときに転動体経路20の壁面(すなわち、転動面16a、16b、並びに方向転換路18および戻し路17の壁面)およびころ15の摩耗を抑制するために、転動体経路20に対して潤滑剤が供給される。この潤滑剤の供給は、エンドプレート14に形成された潤滑経路を介して方向転換路18に対して行われる。
【0029】
以下、エンドプレート14における潤滑経路の構成について、図4図7に基づいて説明する。図4図7はエンドプレート14の内部構造を概略的に示す図である。ここで、案内装置1においては、潤滑剤として、グリース(例えば、リチウム系グリース、またはウレア系グリース)と、潤滑油(例えば、摺動面油、またはタービン油)と、が選択的に使用される。そのため、エンドプレート14における潤滑経路30は、潤滑剤としてグリースが使用されるときにグリースが流れる第1経路32と、潤滑剤として潤滑油が使用されるときに潤滑油が流れる第2経路33と、を有している。さらに、潤滑経路30は、潤滑剤としてグリースまたは潤滑油のどちらが使用される場合においても潤滑剤の供給口となる入口部31aを含む共通経路31を有している。
【0030】
なお、図4は、主に共通経路31および第1経路32の概略構成を示している。また、
図5は、主に共通経路31および第2経路33の概略構成を示している。ただし、図4に示される共通経路31と図5に示される共通経路31とは同一のものである。また、図6および図7は、共通経路31における第1経路32の連通部分および第2経路33の連通部分の概略構成を示す拡大図である。
【0031】
上記のように、エンドプレート14は、レール11のレール上面11aに対向する中央部14aと、レール11のレール側面11bに対向する一対の側方部14bと、を有する断面コの字状である。そして、図4および図5に示すように、エンドプレート14においては、中央部14aおよび両側方部14bのそれぞれに潤滑経路30の共通経路31が形成されている(なお、図4および図5においては、便宜上、各共通経路31を破線で表している。)。中央部14aに形成された共通経路31はエンドプレート14の正面の外壁面(すなわち、キャリッジ本体13と接する壁面とは反対側の壁面)に開口する入口部31aを含んでいる。また、各側方部14bに形成された共通経路31はエンドプレート14の側面の外壁面に開口する入口部31aを含んでいる。つまり、エンドプレート14においては入口部31aが三箇所に設けられている。なお、各入口部31aに、グリースを
供給するためのグリースガンや、潤滑油を供給するための給油ポンプを接続するためのニップルが取り付けられる。
【0032】
また、エンドプレート14の各共通経路31には、各入口部31aを塞ぐ止めねじ40(本願でいう「栓部材」に相当する)が設けられている。各止めねじ40は、入口部31aから取り外し可能であり、且つ、共通経路31を塞いだ状態で該共通経路31内の奥の方向にねじ込んで移動させることが可能に構成されている。
【0033】
また、エンドプレート14においては、互いに前後方向(x軸方向)にずれた位置に第1経路32と第2経路33とが形成されている。そして、第1経路32と第2経路33とがそれぞれ各共通経路31に連通されている。
【0034】
図4に示すように、第1経路32は、エンドプレート14の両側方部14bに形成された共通経路31それぞれに連通している。なお、図4および図5では、両側方部14bに形成された共通経路31それぞれに連通する第1経路32の連通部を第1連通部32aとして表している。そして、エンドプレート14において、第1経路32は、第1連通部32aが形成された両側方部14bから中央部14aに向かって延び、該中央部14aの略中央において、該中央部14aに形成された共通経路31に連通されている。さらに、第1経路32は、エンドプレートの14の中央部14aに形成された共通経路31に連通された第1連通部(図示略)から、エンドプレート14の両側方部14bに形成された方向転換路18に向かって延びている。ここで、エンドプレート14の両側方部14bにはそれぞれ二条の方向転換路18が形成されている。そのため、エンドプレート14の両側方部14bに向かって延びた第1経路32は、各側方部14bにおいて二股に分かれている。そして、各側方部14bにおける二条の方向転換路18それぞれに、二股に分かれた第1経路32の各端部が連通している。つまり、各側方部14bにおける二条の方向転換路18それぞれの壁面に第1経路32が開口している。なお、図4では、各方向転換路18の壁面に開口する第1経路32の開口部を第1開口部32bとして表している。
【0035】
また、図5に示すように、第2経路33は、第1経路32と同様に、エンドプレート14の両側方部14bに形成された共通経路31それぞれに連通している。なお、図4および図5では、両側方部14bに形成された共通経路31それぞれに連通する第2経路33の連通部を第2連通部33aとして表している。そして、エンドプレート14において、第2経路33は、第2連通部33aが形成された両側方部14bから中央部14aに向か
って延び、該中央部14aの略中央において、該中央部14aに形成された共通経路31に連通されている。さらに、第2経路33は、第1経路32と同様に、エンドプレート1
4の中央部14aに形成された共通経路31に連通された部分から、エンドプレート14の両側方部14bに形成された方向転換路18に向かって延びている。また、エンドプレート14の両側方部14bに向かって延びた第2経路33は、各側方部14bにおいて二股に分かれている。そして、各側方部14bにおける二条の方向転換路18それぞれに、二股に分かれた第2経路33の各端部が連通している。つまり、各側方部14bにおける二条の方向転換路18それぞれの壁面に第2経路33が開口している。なお、図5では、各方向転換路18の壁面に開口する第2経路33の開口部を第2開口部33bとして表している。
【0036】
また、第1経路32と第2経路33とはその断面積(経路の軸方向に直交する方向の断面積)が異なっている。つまり、第1経路32の断面積は、グリースが流れるのに適した大きさに形成されている。一方で、第2経路33の断面積は、潤滑油が流れるのに適した大きさに形成されている。そのため、第2経路33の断面積は第1経路32の断面積よりも小さく形成されている。
【0037】
ここで、共通経路31における第1経路32の連通部32aと第2経路33の連通部33aとの位置関係について図6および図7に基づいて説明する。図6は、エンドプレート14の中央部14aに形成された共通経路31と、第1経路32の連通部32aおよび第2経路33の連通部33aを示している。図7は、エンドプレート14の側方部14bに形成された共通経路31と、第1経路32の連通部32aおよび第2経路33の連通部33aを示している。図6においては、上方がエンドプレート14の上面の方向である。図7においては、上方がエンドプレート14の正面の方向である。また、図6および図7は、共通経路31の入口部31aが止めねじ40によって塞がれている状態を示している。図6および図7に示すように、エンドプレート14の中央部14aおよび側方部14bのいずれにおいても、第2経路33は共通経路31の途中部分に連通されている。また、エンドプレート14の中央部14aにおいては、図6に示すように、第1経路32が共通経路31の最奥部に連通されている。一方で、エンドプレート14の側方部14bにおいては、図7に示すように、第1経路32が、共通経路31の最奥部近傍において側方から(エンドプレート14の正面側から)連通されている。そして、図6および図7に示すように、エンドプレート14の中央部14aおよび側方部14bのいずれにおいても、共通経路31において、第2経路33の第2連通部33aは第1経路32の第1連通部32aよりも入口部31a側(すなわち、潤滑剤が流れる方向に沿って上流側)に位置している。
【0038】
<潤滑剤の流れ>
次に、案内装置1において、潤滑剤として、グリースが使用されるときと、潤滑油が使用されるときの、エンドプレート14の潤滑経路30での潤滑剤の流れについて図8および図9に基づいて説明する。なお、ここでは、エンドプレート14の側方部14bにおける潤滑経路30での潤滑剤の流れを例に挙げて説明する。
【0039】
図8は、案内装置1において、潤滑剤としてグリースが使用されるときの、エンドプレート14の潤滑経路30でのグリースの流れを説明するための図である。図8においては、矢印がグリースの流れを表している。図8に示すように、案内装置1において潤滑剤としてグリースが使用されるときは、共通経路31の入口部31aから止めねじ40が取り外される。そして、共通経路31の入口部31aから該共通経路31内にグリースが流し込まれる。共通経路31に流し込まれたグリースは第1連通部32aを通って第1経路32に流入する。第1経路32を流れたグリースが、第1開口部32bを通って方向転換路18に供給される。
【0040】
このとき、共通経路31において、グリースは第2経路33の第2連通部33aが連通されている部分を通過することになる。しかしながら、第2経路33の断面積は、第1経
路32の断面積よりも小さく、潤滑油が流れるのに適した大きさに形成されている。そのため、グリースが第2連通部33aを通って第2経路33内に流れ込むことを抑制することができる。
【0041】
また、図9は、案内装置1において、潤滑剤として潤滑油が使用されるときの、エンドプレート14の潤滑経路30での潤滑油の流れを説明するための図である。図9においては、矢印が潤滑油の流れを表している。図9に示すように、案内装置1において潤滑剤として潤滑油が使用されるときは、止めねじ40が共通経路31の奥にねじ込まれる。そして、共通経路31における第1経路32の第1連通部32aが連通された位置に止めねじ40が配置される。そして、共通経路31の入口部31aから該共通経路31内に潤滑油が流し込まれる。共通経路31に流し込まれた潤滑油は第2連通部33aを通って第2経路33に流入する。第2経路33を流れた潤滑油が、第2開口部33bを通って方向転換路18に供給される。
【0042】
このとき、共通経路31は、第2経路33の連通部33aよりも下流側である、第1経路32の第1連通部32aが連通された位置において止めねじ40によって塞がれている。つまり、第1経路32の第1連通部32aが止めねじ40によって塞がれている。そのため、潤滑油が第1連通部32aを通って第1経路32内に流れ込むことを抑制することができる。なお、案内装置1において潤滑剤として潤滑油が使用されるときに共通経路31において止めねじ40が配置される位置は、第1経路32の第1連通部32aが連通された位置に限られるものではなく、第1経路32の連通部32aと第2経路33の連通部33aとの間の位置であってもよい。このような位置において止めねじ40よって共通経路31が塞がれている場合においても、潤滑油が第1連通部32aを通って第1経路32内に流れ込むことを抑制することができる。なお、エンドプレート14の中央部14aにおいても、共通経路31の入口部31aから止めねじ40を取り外すことによって、図8と同様、共通経路31から第1経路32にグリースを流入させることができる。また、エンドプレート14の中央部14aにおいても、止めねじ40を共通経路31内にねじ込んで移動させ第2経路33の連通部33aよりも奥に配置することによって、図9と同様、共通経路31から第2経路33に潤滑油を流入させることができる。
【0043】
<案内装置の本構成による効果>
上記のように、案内装置1においては、共通経路31の入口部31aから止めねじ40を取り外すか、または、止めねじ40を共通経路31内にねじ込んで移動させるかによって、使用する潤滑剤の変更に対応することができる。つまり、潤滑剤としてグリースが使用されるときは第1経路32を介して方向転換路18にグリースを供給し、且つ、潤滑剤として潤滑油が使用されるときは第2経路33を介して方向転換路18に潤滑油を供給することが可能となる。したがって、案内装置1のユーザは、該案内装置1が設備として設置された後においても、使用する潤滑油を変更することができる。
【0044】
また、上記のとおり、案内装置1において、潤滑剤としてグリースが使用される場合、および、潤滑剤として潤滑油が使用される場合のいずれにおいても、共通の供給口である共通経路31の入口部31aから潤滑剤を供給することができる。そのため、エンドプレート14の外壁面に、グリース供給用の入口部と潤滑油供給用の入口部とを別々に設ける場合に比べて、潤滑剤の供給口を設けるためのスペースを縮小することができる。
【0045】
また、上記のとおり、エンドプレート14においては、共通経路31が三箇所に設けられている。そして、共通経路31の入口部31aが、エンドプレート14における中央部14aおよび両側方部14bに形成されている。つまり、エンドプレート14における異なる三箇所の位置に入口部31aが形成されている。また、案内装置1は、各入口部31aに対応する三つの止めねじ40を備えている。そのため、案内装置1のユーザは、該案
内装置1の設置場所に応じて、三箇所の入口部31aから潤滑剤の供給口として用いる入口部31aを選択することができる。なお、エンドプレート14における三箇所の入口部31aのうち潤滑剤の供給口として選択されなった入口部31aは、止めねじ40によって塞がれた状態となる。これにより、潤滑剤の供給口として選択されなった入口部31aから潤滑剤が外部に漏れることが抑制される。
【0046】
また、当然のことながら、エンドプレート14において入口部31aを設ける位置は三箇所に限られるものではない。例えば、エンドプレート14において、図4および図5に示す三箇所に加えて、中央部14aの上面に開口する入口部を含む共通通路を設けてもよい。また、エンドプレート14において、入口部を含む共通通路が設けられる位置が一箇所のみであってもよい。
【0047】
(変形例)
図10は、本実施形態の変形例に係る、共通経路31における第1経路32の連通部分および第2経路33の連通部分の概略構成を示す拡大図である。また、図10においては、矢印がグリースの流れを表している。図10に示すように、本変形例では、エンドプレート14において、共通経路31が、第1経路32の第1連通部32aよりも奥まで延びるように形成されている。
【0048】
そして、本変形例のような構成の場合、案内装置1において潤滑剤としてグリースが使用されるときには、止めねじ40が、取り外されずに、共通経路31における第1経路32の第1連通部32aよりも奥の位置までねじ込まれてもよい。つまり、図10に示すように、共通経路31における第1経路32の第1連通部32aよりも奥の位置に止めねじ40が配置されてもよい。この場合でも、共通経路31に流し込まれたグリースが第1連通部32aを通って第1経路32に流入することが可能となる。そして、第1経路32を流れたグリースが、第1開口部32bを通って方向転換路18に供給される。なお、この場合でも、グリースが第2連通部33aを通って第2経路33内に流れ込むことは抑制される。
【符号の説明】
【0049】
1・・・案内装置、11・・・レール、11a・・・レール上面、11b・・・レール側面、12・・・キャリッジ、13・・・キャリッジ本体、13a・・・中央部、13b・・・側方部、14・・・エンドプレート、14a・・・中央部、14b・・・側方部、15・・・ころ、16・・・負荷転走路、16a・・・転動面、16b・・・転動面、17・・・戻し路、18・・・方向転換路、20・・・転動体経路、30・・・潤滑経路、31・・・共通経路、31a・・・入口部、32・・・第1経路、32a・・・第1連通部、32b・・第1開口部、33・・・第2経路、33a・・・第2連通部、33b・・・第2開口部、40・・・止めねじ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10