特許 7433158 消火用ホース及び該消火用ホースを備えた消火栓装置

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2024-02-08

(45)【発行日】2024-02-19

(54)【発明の名称】消火用ホース及び該消火用ホースを備えた消火栓装置

(51)【国際特許分類】

   A62C 35/20 20060101AFI20240209BHJP

   F16L 11/12 20060101ALI20240209BHJP

【ＦＩ】

A62C35/20

F16L11/12 K

【請求項の数】 4

(21)【出願番号】P 2020127881

(22)【出願日】2020-07-29

(65)【公開番号】P2022025206

(43)【公開日】2022-02-10

【審査請求日】2023-02-08

(73)【特許権者】

【識別番号】000233826

【氏名又は名称】能美防災株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100127845

【弁理士】

【氏名又は名称】石川 壽彦

(72)【発明者】

【氏名】米山 顕司

【審査官】田邉 学

(56)【参考文献】

【文献】特開２０１２－１６１４５２（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１２－２１３４１４（ＪＰ，Ａ）

【文献】英国特許出願公開第０２５７０６８４（ＧＢ，Ａ）

【文献】特開２０００－０８３８５５（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２００８－０５５０７０（ＪＰ，Ａ）

【文献】登録実用新案第３０４５５２８（ＪＰ，Ｕ）

【文献】実開平０４－０６２１８６（ＪＰ，Ｕ）

【文献】特開２０００－３２５２４９（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ａ６２Ｃ ３５／２０

Ｆ１６Ｌ １１／１２

Ａ６２Ｃ ３３／００

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

消火栓装置の筐体内に設けられたホース収容部に、内巻きして収容される消火用ホースであって、
前記消火用ホースは、その周壁に設けられた水抜き穴と、前記消火用ホース内に通水したときの水圧によって前記水抜き穴を閉止する弁体とを有し、前記水抜き穴はホース軸線方向で隣り合うもの同士がホース周方向の位置をずらして設けられていることを特徴とする消火用ホース。

【請求項2】

前記消火用ホースの外周面に、前記水抜き穴の位置を示す目印を設けたことを特徴とする請求項１記載の消火用ホース。

【請求項3】

前記水抜き穴及び弁体が、内巻きされた状態の前記消火用ホースの一巻きの範囲に、少なくとも１個設けられていることを特徴とする請求項１又は２に記載の消火用ホース。

【請求項4】

請求項１乃至３のいずれかに記載の消火用ホースを備えたことを特徴とする消火栓装置。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、消火栓装置の筐体内に設けられたホース収容部に内巻きして収容される消火用ホース及び該消火用ホースを備えた消火栓装置に関する。

【背景技術】

【0002】

トンネル内に設置される消火栓装置は、その筐体内に設けられたホース収容部に内巻きして収容される消火用ホースを備えている（例えば、特許文献１参照）。
このような消火栓装置は、一般的に半年に１度放水試験を行うことになっている。この放水試験は、通常、内巻きされている消火用ホースに通水することなく、筐体内に設けられたメンテナンス弁に放水試験用のノズルを取り付けて行われる。
しかしながら、抜き取りや１年に１度といったトンネル毎に定めた規定により消火栓装置内に内巻きされた消火用ホース及びノズルから放水する試験が行われる場合がある。

【0003】

このような放水試験や実際の消火で通水した消火用ホース内に残存水があると、残存水が消火用ホース内で腐ったり、消火用ホースに対してダメージを与えたり等の悪影響が懸念される。
そのため、放水試験や消火に使用した消火用ホースの残存水を抜く作業が必要となる。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0004】

【文献】特開２０１６－８７０５９号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0005】

トンネル内に設置される消火栓装置の消火用ホースは保形ホースであるため、放水試験自体は、消火用ホースを引き出すことなく消火栓装置内に残し、ノズルを少し引き出すだけで行うことができる。
しかし、残存水を排水するためには消火用ホースをほぼ全長に亘って引き出して行う必要があり、非常に手間がかかっている。

【0006】

本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、ホースを引き出すことなく、巻いた状態で残存水を抜くことができる消火用ホース、該消火用ホースを備えた消火栓装置を提供することを目的としている。

【課題を解決するための手段】

【0007】

（１）本発明に係る消火用ホースは、消火栓装置の筐体内に設けられたホース収容部に、内巻きして収容されるものであって、
前記消火用ホースは、その周壁に設けられた水抜き穴と、前記消火用ホース内に通水したときの水圧によって前記水抜き穴を閉止する弁体とを有することを特徴とするものである。

【0008】

（２）また、上記（１）に記載のものにおいて、前記消火用ホースの外周面に、前記水抜き穴の位置を示す目印を設けたことを特徴とするものである。

【0009】

（３）また、上記（１）又は（２）に記載のものにおいて、前記水抜き穴及び弁体が、内巻きされた状態の前記消火用ホースの一巻きの範囲に、少なくとも１個設けられていることを特徴とするものである。

【0010】

（４）本発明に係る消火栓装置は、上記（１）乃至３のいずれかに記載の消火用ホースを備えたことを特徴とするものである。

【発明の効果】

【0011】

本発明に係る消火用ホースは、その周壁に設けられた水抜き穴と、消火用ホース内に通水したときの水圧によって前記水抜き穴を閉止する弁体とを有することにより、消火用ホースを筐体内のホース収容部に内巻きした状態で、ホース内の残存水を抜くことができ、残存水の水抜き作業の労力を軽減することができる。

【図面の簡単な説明】

【0012】

【図1】本発明の一実施の形態に係る消火用ホースを説明する説明図である。

【図2】図１の破線の四角で示したＡ部の拡大図である。

【図3】図２の矢視Ａ－Ａ断面図である。

【図4】本実施の形態に係る消火用ホースにおける弁体の作用の説明図である（その１）。

【図5】本実施の形態に係る消火用ホースにおける弁体の作用の説明図である（その２）。

【図6】本発明の実施の形態に係る消火栓装置の全体構成の説明図である。

【図7】消火栓装置に収容されるホースの収納状態を説明する説明図である。

【発明を実施するための形態】

【0013】

本実施の形態に係る消火用ホースは、消火栓装置の筐体内に設けられたホース収容部に、内巻きして収容されるものである。
そこで、消火栓装置の全体構成を概説し、その後で、消火用ホースについて詳細に説明する。

【0014】

＜消火栓装置の全体構成＞
消火栓装置１は、図６に示すように、箱状の筺体３と、筐体３の前面に設けられた開口部５ａを有する前面パネル５と、前面パネル５の開口部５ａに開閉可能に設けられた前傾式扉７とを備えている。
なお、本明細書において、消火栓装置１における位置を示す用語としての「前」とは、図６における前面パネル５側をいい、「奥」とは背面パネル９（図７参照）側をいう。
以下、各構成を詳細に説明する。

【0015】

筐体３は、図６に示すように、矩形の箱状からなり、筐体３内には内巻きに巻き回され、先端にノズル１０が設けられた消火用ホース１１を収納するホース収容部１２が設けられ（図７参照）、またホース収容部１２の右側に、メンテナンス弁等を有する配管系統１３が設けられている。配管系統１３は、その先端側がホース収容部１２の側部に位置し、該先端に消火用ホース１１の基端側が接続され、配管系統１３の基端側は図示しない給水源に接続されており、筐体３外に図示しない消火栓弁や自動調圧弁を備えている。

【0016】

ホース収容部１２は、所定間隔を離して立設された一対の縦辺部１５と、一対の縦辺部１５の上端同士及び下端同士を連結するように設けられた一対の横辺部１７を備え、この枠体における一対の縦辺部１５に平面視で略L字状の帯板部１９が一対設けられている。
消火用ホース１１は、この一対の帯板部１９と背面パネル９との空間において内巻きされている（図１、７参照）。

【0017】

＜消火用ホース＞
次に、本実施の形態の消火用ホース１１について図１～図５に基づいて説明する。
本実施の形態に係る消火用ホース１１は、その周壁に設けられた例えば円形の水抜き穴２１と、消火用ホース１１内に通水したときの水圧によって水抜き穴２１を閉止する弁体２３とを有している。
そして、消火用ホース１１の外周面に、水抜き穴２１の位置を示す目印２５として色付き丸印が設けられている（図２参照）。

【0018】

水抜き穴２１は、消火用ホース１１の周壁を貫通して設けられている。また、水抜き穴２１は、消火用ホース１１の軸線方向に所定の間隔を離して設けられるが、隣り合う水抜き穴２１とは、ホース周方向でずれるようにするのが好ましい。なぜなら、後述するように水抜きの際には、弁体２３をホース外側から押す動作をする場合もあり、この場合において、いずれかの弁体２３が前面側から見えるようにするためである。

【0019】

弁体２３は、消火用ホース１１の内面側に水抜き穴２１を閉止するように設けられる。つまり、弁体２３は、図４に示すように、水抜き穴２１の穴径よりも外径が大きく設定され、その一側辺が消火用ホース１１の壁面に固定される固定部２７となっている。そして、固定部２７を支点として、ホース内側に動くことで開弁し、ホース内壁に押圧されることで閉弁する。
なお、弁体２３の材質は、可撓性を有するものが好ましく、例えば保形ホースである消火用ホース１１も可撓性を有するのでこれと同じ材質としてもよい。さらには、消火用ホース１１よりも弾性のある材質（例えばゴム等）とすれば、消火用ホース１１の内面への密着性が増すのでより好ましい。

【0020】

水抜き穴２１及び弁体２３の数は、特に限定されるものではないが、図１に示すように、内巻きされた状態の消火用ホース１１の一巻きの範囲に、少なくとも１個設けられていることが好ましい。これによって、内巻きされた状態での各一巻き部分の残存水を効果的に抜くことができる。
また、図１に示すように、内巻きされた状態で、少なくとも底辺側に水抜き穴２１及び弁体２３が配置されるようにするのが、より好ましい。これによって、より確実に残存水の排水を行うことができる。

【0021】

上記のように構成された本実施の形態の消火用ホース１１の作用について、図４、図５に基づいて説明する。
放水試験等の際には、前述したように、消火用ホース１１を引き出すことなく消火栓装置１内に残し、ノズル１０を少し引き出すだけで行う。
消火用ホース１１内に消火水が通水されると、図４に示すように、水圧によって、弁体２３がホース内壁に押し付けられる。そのため、水抜き穴２１が弁体２３によって閉止されて消火水が漏水しない、もしくは微量の漏水に留めることができる。

【0022】

通水試験が終了すると、消火用ホース１１内の水圧が低下し、弁体２３のホース内壁への押圧力が低下し、弁体２３と水抜き穴２１との間に隙間が生ずる。このため、ホース内の水はこの隙間から徐々に排出される。
もっとも、図５に示すように、弁体２３を外側からホース内側に押すことで、水抜き穴２１と弁体２３の隙間を大きくすることで、積極的な排水を行ってもよい。このとき目印２５が消防用ホース１１の外周面に設けられているので、消火栓装置３内に格納された消防用ホース１１でも水抜き穴２１の位置を容易に認識することができる。なお、消防用ホース１１の外周面に目印２５を設ける代わりに弁体２３の外周面側に消防用ホース１１と異なる色を着色するようにしてもよい。例えば消防用ホース１１の外周面が黒色のとき、弁体２３の外周面側に蛍光色を施してもよい。

【0023】

以上のように、本実施の形態の消火用ホース１１においては、通水試験後の残存水を排水するために、消火用ホース１１を引き出す必要がなく、それゆえホース巻き直しの手間もなく、通水試験後の処理を簡便化できる。

【符号の説明】

【0024】

１ 消火栓装置
３ 筐体
５ 前面パネル
５ａ 開口部
７ 前傾式扉
９ 背面パネル
１０ ノズル
１１ 消火用ホース
１２ ホース収容部
１３ 配管系統
１５ 縦辺部
１７ 横辺部
１９ 帯板部
２１ 水抜き穴
２３ 弁体
２５ 目印
２７ 固定部

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】