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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】正極活物質及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20240209BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240209BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240209BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/36 C
H01M4/505
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020130334
(22)【出願日】2020-07-31
(62)【分割の表示】P 2017533201の分割
【原出願日】2015-07-24
(65)【公開番号】P2020184549
(43)【公開日】2020-11-12
【審査請求日】2020-08-28
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-30
(31)【優先権主張番号】10-2014-0195504
(32)【優先日】2014-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517113750
【氏名又は名称】エコプロ ビーエム カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ECOPRO BM CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】チョイ, モンホウ
(72)【発明者】
【氏名】キム, ジクスー
(72)【発明者】
【氏名】ユン ジンキョン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン, スクヨン
(72)【発明者】
【氏名】ジュン, ジェヨン
(72)【発明者】
【氏名】リ, スクファン
【合議体】
【審判長】山田 正文
【審判官】岩間 直純
【審判官】須原 宏光
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102832389(CN,A)
【文献】特開2013-065468(JP,A)
【文献】特開2009-076383(JP,A)
【文献】特開2013-182757(JP,A)
【文献】特開2013-182782(JP,A)
【文献】特開2011-023121(JP,A)
【文献】特開2010-129471(JP,A)
【文献】特開2004-319129(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M4/525
H01M4/36
C01G53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シェル層の表面にLiAlOを含むことを特徴とする、正極活物質であって、
正極活物質の総含有量に対する、正極活物質の表面にLiOH及びLiCOの形態で存在する残留リチウム含有量が、0.0141wt%以下であり、
前記正極活物質の粒子強度が150MPa以上であり、
前記正極活物質は、コア層、遷移金属の少なくとも1種の連続的な濃度勾配を有する濃度勾配部分、及びシェル層を有する濃度勾配型であり、
前記正極活物質は、ニッケル、コバルト、マンガンを含むか、またはニッケル、コバルト、アルミニウムを含み、
前記正極活物質は、以下の<化学式1>で表示されることを特徴とする、正極活物質。
<化学式1>Li 1+a Ni M1 M2
(前記<化学式1>で0≦a≦0.02、0.75≦b≦0.95であり、b+c+d=1であり、
M1はCo、B、Ba、Cr、F、Li、Mo、P、Sr、Ti、及びZrからなるグループから選択されるいずれか一つ以上であり、
M2はMn、Al、B、Ba、Cr、F、Li、Mo、P、Sr、Ti、及びZrからなるグループから選択されるいずれか一つ以上である)。
【請求項2】
XRDで2θが45~46でピークを示すLiAlOを含むことを特徴とする、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項3】
正極活物質を準備する工程と、
Alを含む化合物と前記正極活物質とを混合して撹拌する工程と、
Alを含む化合物と混合して撹拌された正極活物質を熱処理する工程と、
を含み、
前記Alを含む化合物は、Al(OH)、Al、Al(NO、Al(SO、AlCl、AlH、AlF、及びAlPOからなる群から選択される、
請求項1に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項4】
前記正極活物質を準備する工程と、前記Alを含む化合物と前記正極活物質とを混合して撹拌する工程との間に
水洗溶液を温度を一定に維持しながら準備する工程と、
前記水洗溶液に正極活物質を入れて撹拌する工程と、
水洗された正極活物質を乾燥させる工程と、
をさらに含むことを特徴とする、請求項に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項5】
前記水洗溶液は蒸溜水またはアルカリ水溶液であることを特徴とする、請求項に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項6】
前記水洗された正極活物質を乾燥させる工程では、
乾燥温度80~200℃、乾燥時間5~20時間で真空乾燥されることを特徴とする、請求項に記載の正極活物質の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は正極活物質及びその製造方法に関し、より詳しくは、表面にAl化合物と残留リチウムが反応して生成されるLiAlOを含む正極活物質及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム複合酸化物を製造する方法は、一般的に遷移金属前駆体を製造し、前記遷移金属前駆体とリチウム化合物とを混合した後、前記混合物を焼成するステップを含む。
【0003】
この際、前記リチウム化合物には、LiOH及び/又はLiCOが使われる。一般的に、正極活物質のNi含量が65%以下の場合にはLiCOを使用し、Ni含量が65%以上の場合には、低温反応であるのでLiOHを使用することが好ましい。しかしながら、Ni含量が65%以上であるニッケルリッチシステム(Ni rich system)は低温反応であるので正極活物質の表面にLiOH、LiCO形態に存在する残留リチウム量が高いという問題点がある。このような残留リチウム、即ち、未反応LiOH及びLiCOは電池内で電解液などと反応してガス発生及びスウェリング(swelling)現象を誘発することによって、高温安全性が深刻に低下する問題を引き起こす。また、未反応LiOHは極板製造前のスラリーミキシング時、粘度が高くてゲル化を引き起こすこともある。
【0004】
このような未反応Liを除去するために、一般的に水洗工程を導入するが、この場合、水洗時、正極活物質の表面の損傷が発生して容量及び率特性が低下し、また高温貯蔵時、抵抗が増加する更に他の問題を引き起こす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は未反応Liを除去し、かつ寿命特性、高温貯蔵特性、及び粒子強度を向上させることができる新たな正極活物質及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前記のような課題を解決するために、表面にLiAlOを含む正極活物質を提供する。
【0007】
本発明による正極活物質はXRDで2θが45~46でピークを示すLiAlOを含むことを特徴とする。
【0008】
本発明による正極活物質は、以下の<化学式1>で表示されることを特徴とする。
<化学式1>Li1+aNiM1M2
(前記<化学式1>で0.95≧b≧0.75であり、a+b+c=1であり、
M1はCo、B、Ba、Cr、F、Li、Mo、P、Sr、Ti、及びZrからなるグループから選択されるいずれか一つ以上であり、
M2はMn、Al、B、Ba、Cr、F、Li、Mo、P、Sr、Ti、及びZrからなるグループから選択されるいずれか一つ以上である)
本発明による正極活物質の残留リチウムが0.6wt%以下であることを特徴とする。
【0009】
本発明による正極活物質は、粒子強度が150MPa以上であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、
正極活物質を準備する第1ステップ;
Alを含む化合物と前記正極活物質とを混合して熱処理する第2ステップを含む本発明による正極活物質の製造方法を提供する。
本発明による正極活物質の製造方法において、前記Alを含む化合物はAl(OH)、Al、Al(NO、Al(SO、AlCl、AlH、AlF、及びAlPOなどからなるグループから選択されることを特徴とする。
【0011】
本発明による正極活物質の製造方法は
前記第1ステップ後、第2ステップの間に
水洗溶液を温度を一定に維持しながら準備する第1-1ステップ;
前記水洗溶液に正極活物質を入れて撹拌する第1-2ステップ;
水洗された正極活物質を乾燥させる第1-3ステップ;をさらに含むことを特徴とする。
【0012】
本発明による正極活物質の製造方法において、前記水洗溶液は蒸溜水またはアルカリ水溶液であることを特徴とする。
【0013】
本発明による正極活物質の製造方法において、前記乾燥させるステップでは、乾燥温度80~200℃、乾燥時間5~20時間で真空乾燥されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明による正極活物質は、アルミニウムでドーピングして表面に存在する残留リチウムがアルミニウムと反応してLiAlOとして存在することによって、残留リチウムを減少させるだけでなく、粒子強度を増加させる効果を示す。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施例及び比較例で製造された活物質のXRDを測定した結果を示す。
図2】本発明の一実施例及び比較例で製造された活物質の粒子強度を測定した結果を示す。
図3】本発明の一実施例及び比較例で製造された活物質の残留リチウム量を測定した結果を示す。
図4】本発明の一実施例及び比較例で製造された活物質の残留リチウム量を測定した結果を示す。
図5】本発明の一実施例及び比較例で製造された活物質を含む高温貯蔵特性を測定した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施例に従ってより詳細に説明する。しかしながら、本発明が以下の実施例により限定されるものではない。
【0017】
<実施例>濃度勾配正極活物質コーティング
回分式反応器(batch reactor)(容量70L、回転モーターの出力80W以上)に蒸溜水20リットルとキレーティング剤としてアンモニアを840gを入れた後、反応器内の温度を50℃に維持しながらモータを400rpmで撹拌した。
第2ステップとして、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、及び硫酸マンガンのモル比が9:1:0の割合で混合された2.5M濃度の第1前駆体水溶液を2.2リットル/時間で、28%濃度のアンモニア水溶液を0.15リットル/時間で反応器に連続投入した。また、pHの調整のために25%濃度の水酸化ナトリウム水溶液を供給して、pHが11に維持されるようにした。インペラ速度は400rpmに調節した。作られた第1前駆体水溶液とアンモニア、水酸化ナトリウム溶液を反応器内に連続して27L投入した。
次に、第3ステップとして、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、及び硫酸マンガンのモル比が65:15:20の割合で混合された2.5M濃度の濃度勾配層形成用水溶液を作って前記回分式反応器(batch reactor)の他の別途の撹拌機で前記第2ステップで製造された硫酸ニッケル、硫酸コバルト、及び硫酸マンガンのモル比が9:1:0の割合で混合された2.5M濃度の第1前駆体水溶液の容量を10Lに固定させた後、2.2リットル/時間の速度で投入しながら撹拌して、第2前駆体水溶液を作って、同時に前記回分式反応器(batch reactor)に導入した。前記第2前駆体水溶液のうちの硫酸ニッケル、硫酸コバルト、及び硫酸マンガンのモル比がシェル層の濃度である4:2:4になるまで前記濃度勾配層形成用水溶液を混合しながら回分式反応器(batch reactor)に導入し、28%濃
度のアンモニア水溶液は0.08L/時間の速度で投入し、水酸化ナトリウム溶液はpHが11になるように維持した。この際、投入された第2前駆体水溶液とアンモニア、水酸化ナトリウム溶液は17Lである。
【0018】
次に、第4ステップとして、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、及び硫酸マンガンのモル比が4:2:4の割合で混合された第3前駆体水溶液を回分式反応器(batch reactor)に5L体積を占めるまで投入し、反応が終結された後、回分式反応器(batch reactor)から球形のニッケルマンガンコバルト複合水酸化物沈殿物を得た。
【0019】
前記沈殿された複合金属水酸化物を濾過し、水洗浄した後、110℃の温風乾燥器で12時間乾燥させて、内部コア層は(Ni0.9Co0.1)(OH)に、外部シェル層は(Ni0.9Co0.1)(OH)から(Ni0.4Co0.2Mn0.4)(OH)まで連続的な濃度勾配を有する金属複合酸化物形態の前駆体粉末を得た。
【0020】
前記金属複合水酸化物と水酸化リチウム(LiOH)を1:1.02のモル比で混合した後、2℃/minの昇温速度で加熱した後、790℃で20時間焼成させて内部コア層はLi(Ni0.9Co0.1)Oに、外部シェル層はLi(Ni0.9Co0.1)OからLi(Ni0.4Co0.2Mn0.4)Oまで連続的な濃度勾配を有する正極活物質粉末を得た。
正極活物質粒子をAl化合物と乾式または湿式コーティング後、720℃で熱処理を実施した。
【0021】
<実施例>NCA粒子合成
NCA系列の正極活物質を製造するために、先に公沈反応によりNiCo(OH)前駆体を製造した。前記金属複合水酸化物と水酸化リチウムを1:1.02のモル比で混合した後、2℃/minの昇温速度で加熱した後、750℃で20時間焼成させて正極活物質粉末を得た。
正極活物質粒子をAl化合物と乾式または湿式コーティング後、720℃で熱処理を実施した。
【表1】
【0022】
<実験例>XRD特性測定
前記実施例2及び比較例6で製造された活物質のXRDを測定し、その結果を図1に示した。
図1で、本発明の実施例2で製造された粒子の場合、比較例とは異なり、45゜~46゜でピークが観察されることが分かる。
【0023】
<実験例>粒子強度測定
前記実施例10及び比較例6で製造された活物質の粒子強度を測定し、その結果を図2に示した。
図2で、本発明の実施例2で製造された粒子の場合、比較例の粒子より粒子強度が20%位改善されることが分かる。
【0024】
<実験例>未反応リチウム測定
未反応リチウムの測定はpH適正によりpH4になるまで使われた0.1M HClの量で測定する。先に、正極活物質5gをDIW 100mlに入れて15分間撹拌した後、フィルタリングし、フィルタリングされた溶液50mlを取った後、ここに0.1M HClを加えて、pH変化に従うHCl消耗量を測定してQ1、Q2を決定し、以下の計算式に従って未反応LiOH及びLi2CO3を計算した。
M1 = 23.94 (LiOH Molecular weight)
M2 = 73.89 (Li2CO3 Molecular weight)
SPL Size = (Sample weight × Solution Weight) / Water Weight
LiOH(wt %) = [(Q1-Q2)×C×M1×100]/(SPL Size ×1000)
Li2CO3 (wt%)=[2×Q2×C×M2/2×100]/(SPL Size×1000)
このような方法を適用して前記実施例及び比較例で製造されたNCA系列リチウム複合酸化物において未反応LiOH及びLiCOの濃度を測定した結果は、次の<表2>及び図3の通りである。
【表2】
【0025】
図3で、比較例4は洗浄または表面処理を進行しなくて残留リチウムが高く測定されたし、アルミニウム化合物をコーティング後、熱処理を実施した実施例7は比較例4に比べて残留リチウムが減少した。
【0026】
また、図3で、濃度勾配型NCM正極活物質でアルミニウム化合物をコーティング後、熱処理を実施した実施例3は後処理を実施していない比較例2に比べて残留リチウムが改善された。
【0027】
<実験例>充放電特性評価
前記実施例及び比較例で製造された正極活物質を正極に使用し、リチウム金属を負極に使用して、各々のコインセルを製造し、C/10充電及びC/10放電速度(1C=150mA/g)で3~4.3Vの間で充放電実験を遂行した結果を図5及び前記<表2>及び図4に示した。
【0028】
図4で、水洗後、Alコーティングを実施した実施例の場合、寿命特性に優れることが分かる。図4で、比較例3と比較例5は各々水洗を実施した濃度勾配型NCMとNCA正極活物質である。水洗後、アルミニウムコーティングを実施した濃度勾配型NCMである実施例5とNCAである実施例8は寿命特性が向上した。
【0029】
<実験例>高温貯蔵前・後のインピーダンス測定結果
連続的な濃度勾配を有するNCM系正極活物質である実施例3の高温貯蔵前・後のインピーダンスを測定し、その結果を<表2>及び図5に示した。
図5で、洗浄及び表面処理を実施しない比較例2に比べてAl化合物コーティング後、熱処理を実施した実施例3の貯蔵前・後のインピーダンスが減少したことを確認することができる。
【0030】
<産業上の利用可能性>
本発明は、表面にLiAlO2を含む正極活物質及びその製造方法に関するものであって、正極活物質はアルミニウムでドーピングして表面に存在する残留リチウムがアルミニウムと反応してLiAlO2として存在することによって、残留リチウムを減少させるだけでなく、粒子強度を増加させる効果を示す点で非常に有用であるということができる。
図1
図2
図3
図4
図5