(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】蒸気タービン排気室及び蒸気タービン
(51)【国際特許分類】
F01D 25/30 20060101AFI20240209BHJP
【FI】
F01D25/30 A
(21)【出願番号】P 2020137367
(22)【出願日】2020-08-17
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】谷口 直
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 亮
(72)【発明者】
【氏名】田畑 創一朗
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-106003(JP,A)
【文献】米国特許第6261055(US,B1)
【文献】特開2018-131934(JP,A)
【文献】国際公開第2018/181855(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/066891(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 25/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気タービンの最終段の動翼を通過した蒸気を前記蒸気タービンの外部に導くための蒸気タービン排気室であって、
ケーシングと、
前記ケーシング内において前記蒸気タービンのロータの周方向に沿って設けられたベアリングコーンと、
前記ケーシング内において前記ベアリングコーンの外周側に前記周方向に沿って設けられ、前記ベアリングコーンとの間にディフューザ流路を形成するフローガイドと、
を備え、
前記ケーシングの内面は、前記フローガイドの外周側に前記ロータの軸方向に沿って延在する内周面と、前記内周面と前記ベアリングコーンとを接続する側壁面と、を含み、
前記側壁面には、前記ロータの回転軸線を含む水平面よりも上方において、前記ロータの径方向における外側に向けて突出する第1突出部が前記周方向に沿って形成され、
前記第1突出部は、前記周方向における少なくとも一部の範囲において、前記フローガイドの内周面の下流端よりも前記径方向における外側に位置
し、
前記第1突出部の基端から先端までの長さは、前記周方向の位置によって異なる、蒸気タービン排気室。
【請求項2】
前記第1突出部の先端部は、前記軸方向における前記側壁面側に曲がっている、請求項1に記載の蒸気タービン排気室。
【請求項3】
前記第1突出部の先端部は、前記軸方向における前記フローガイド側に曲がっている、請求項1に記載の蒸気タービン排気室。
【請求項4】
前記第1突出部の前記長さは、前記周方向における少なくとも一部の範囲において、前記周方向に沿って上方に向かうにつれて減少する、請求項
1乃至3の何れか1項に記載の蒸気タービン排気室。
【請求項5】
前記第1突出部の基端と前記回転軸線との距離は、前記周方向の位置によって異なる、請求項1乃至
4の何れか1項に記載の蒸気タービン排気室。
【請求項6】
前記第1突出部の基端と前記回転軸線との距離は、前記周方向における少なくとも一部の範囲において、前記周方向に沿って上方に向かうにつれて減少する、請求項
5に記載の蒸気タービン排気室。
【請求項7】
前記周方向の位置について、前記回転軸線と直交する水平線の示す方向のうちの一方を0度、前記回転軸線の鉛直上方の位置を90度と定義すると、
前記第1突出部は、前記周方向において、0度から180度までの範囲のうちの一部の範囲にのみ設けられた、請求項1乃至
6の何れか1項に記載の蒸気タービン排気室。
【請求項8】
前記第1突出部の少なくとも一部は、前記周方向において、30度から150度までの範囲内に設けられた、請求項
7に記載の蒸気タービン排気室。
【請求項9】
前記側壁面には、前記ロータの回転軸線を含む水平面よりも上方において、前記フローガイドの内周面の下流端よりも前記ロータの径方向における外側の位置に、前記径方向における外側に向けて突出する複数の突出部が設けられ、
前記複数の突出部は、前記周方向に間隔を空けて配置され、
前記複数の突出部は、前記第1突出部を含む、請求項1乃至
8の何れか1項に記載の蒸気タービン排気室。
【請求項10】
前記複数の突出部は、前記第1突出部よりも高い位置に配置された第2突出部を含み、
前記第2突出部の基端から先端までの長さは、前記第1突出部の基端から先端までの長さよりも長い、請求項
9に記載の蒸気タービン排気室。
【請求項11】
前記第1突出部の上端に凹部が形成された、請求項
9に記載の蒸気タービン排気室。
【請求項12】
前記複数の突出部は、前記回転軸線を含む鉛直面を挟んで前記第1突出部と反対側に設けられた第2突出部を含み、
前記第2突出部の上端に凹部が形成された、請求項
11に記載の蒸気タービン排気室。
【請求項13】
前記ベアリングコーンの外周面にキャビティが形成された、請求項1乃至
12の何れか1項に記載の蒸気タービン排気室。
【請求項14】
前記キャビティの開口端の前記軸方向の幅は、前記キャビティの底面の前記軸方向の幅よりも小さい、請求項
13に記載の蒸気タービン排気室。
【請求項15】
前記キャビティの底面における前記動翼に最も近い位置は、前記底面における前記動翼から最も遠い位置よりも前記径方向における内側に位置する、請求項
13又は
14に記載の蒸気タービン排気室。
【請求項16】
請求項1乃至
15の何れか1項に記載の蒸気タービン排気室と、
前記ロータと、を備えた、蒸気タービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蒸気タービン排気室及び蒸気タービンに関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービン排気室の排気流路において、ベアリングコーンとフローガイドとの間に形成されるディフューザ流路でベアリングコーンに沿って蒸気流れが逆流すると、ディフューザ流路の有効流路面積(ディフューザ流路においてロータ側へ逆流せず出口方向へ流れる蒸気の流路面積)が減少するとともに圧力損失が増大し、蒸気タービン排気室の性能が低下する。
【0003】
特許文献1には、蒸気タービン排気室の壁面から径方向の内側に突出する構造物(案内板)を設けて、蒸気流れのベアリングコーンに沿った逆流を抑制することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明者の鋭意検討の結果、ベアリングコーンとフローガイドとの間のディフューザ流路におけるベアリングコーンに沿った蒸気流れの逆流は、蒸気タービン排気室の上部より流下する縦渦が発生要因となっている見込みが得られた。このため、排気室性能向上のためにはこの縦渦のディフューザ流路への侵入を抑制することが肝要と考えられる。
【0006】
特許文献1に記載される逆流抑制のための構造物では、上記縦渦のディフューザ流路への侵入を効果的に抑制することはできず、ディフューザ流路における圧力損失の増大を抑制する効果が限定的であった。
【0007】
上述の事情に鑑みて、本開示は、ベアリングコーンとフローガイドとの間のディフューザ流路における圧力損失の増大を抑制可能な蒸気タービン排気室及び蒸気タービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本開示の少なくとも一実施形態に係る蒸気タービン排気室は、
蒸気タービンの最終段の動翼を通過した蒸気を前記蒸気タービンの外部に導くための蒸気タービン排気室であって、
ケーシングと、
前記ケーシング内において前記蒸気タービンのロータの周方向に沿って設けられたベアリングコーンと、
前記ケーシング内において前記ベアリングコーンの外周側に前記周方向に沿って設けられ、前記ベアリングコーンとの間にディフューザ流路を形成するフローガイドと、
を備え、
前記ケーシングの内面は、前記フローガイドの外周側に前記ロータの軸方向に沿って延在する内周面と、前記内周面と前記ベアリングコーンとを接続する側壁面と、を含み、
前記側壁面には、前記ロータの回転軸線を含む水平面よりも上方において、前記径方向における外側に向けて突出する第1突出部が前記周方向に沿って形成され、
前記第1突出部は、前記周方向における少なくとも一部の範囲において、前記フローガイドの内周面の下流端よりも前記ロータの径方向における外側に位置する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、ベアリングコーンとフローガイドとの間のディフューザ流路における圧力損失の増大を抑制可能な蒸気タービン排気室及び蒸気タービンが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係る蒸気タービン2の軸方向に沿った断面を模式的に示す概略図である。
【
図2】突出部26の作用効果等を説明するための図である。
【
図3】周方向の位置θと突出部26の長さLとの関係の一例(突出部26の長さLの周方向分布の一例)を示す図である。
【
図4】周方向の位置θの定義を説明するための図である。
【
図5】距離R、距離r及び流路幅Wを説明するための図である。
【
図6】周方向の位置θと、突出部26の基端26aと回転軸線Cとの距離rとの関係の一例(距離rの周方向分布の一例)を示す図である。
【
図7】複数の突出部26(26A~26D)の配置の一例を模式的に示す図である。
【
図8】複数の突出部26(2EB~26F)の配置の一例を模式的に示す図である。
【
図9】他の実施形態に係る排気室8蒸気タービン2の軸方向に沿った断面を模式的に示す概略図である。
【
図10】
図9に示す構成の作用効果を説明するための図である。
【
図11】他の実施形態に係る蒸気タービン2の軸方向に沿った断面を模式的に示す概略図である。
【
図12】突出部26の形状の他の一例を示す図である。
【
図13】突出部26の形状の他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0012】
図1は、一実施形態に係る蒸気タービン2の軸方向に沿った断面を模式的に示す概略図である。図示する蒸気タービン2は、軸流タービンである。蒸気タービン2は、ロータ4(タービンロータ)と、ロータ4の最終段の動翼6(タービン動翼)を通過した蒸気を蒸気タービン2の外部に導くための排気室8(蒸気タービン排気室)とを備える。
【0013】
最終段の動翼6を通過した蒸気は、排気室入口7から排気室8に流入し、排気室8の内部を通り、排気室8の下方側に設けられた排気室出口9から蒸気タービン2の外部に排出される。排気室8の下方には、復水器27が設けられており、蒸気タービン2で動翼6に対して仕事をし終えた蒸気は、排気室8から排気室出口9を介して復水器27に流入するようになっている。
【0014】
以下、ロータ4の軸方向を単に「軸方向」といい、ロータ4の周方向を単に「周方向」といい、ロータ4の径方向を単に「径方向」ということとする。また、蒸気の流れ方向における上流及び下流をそれぞれ単に「上流」及び「下流」ということとする。
【0015】
排気室8は、ケーシング10、ベアリングコーン12及びフローガイド14を含む。
【0016】
ケーシング10は、ロータ4の一部を収容するように構成されており、ケーシング10の内面16は、内周面18、側壁面20及び突出部26(構造体)を含む。
【0017】
内周面18は、ロータ4の回転軸線Cを含む水平面よりも上方において(すなわち排気室8の上半部8uにおいて)、フローガイド14の外周側に軸方向及び周方向に沿って延在している。また、内周面18は、回転軸線Cを含む水平面よりも上方において、軸方向に直交する断面形状が略半円形に構成されている。
【0018】
側壁面20は、内周面18とベアリングコーン12の下流端12aとを接続するように径方向に沿って延在する側壁面20とを含む。図示する例示的形態では、側壁面20は、軸方向と直交する平面に沿って形成されている。
【0019】
ベアリングコーン12は、ロータ4を回転可能に支持する軸受13を包囲している。ベアリングコーン12は、ケーシング10内において周方向に沿って環状に形成されている。ベアリングコーン12の内径及び外径の各々は、軸方向における下流側に向かうにつれて拡大する。
【0020】
フローガイド14は、ケーシング10内においてベアリングコーン12の外周側に周方向に沿って形成されている。フローガイド14は、ベアリングコーン12との間に環状のディフューザ流路22を形成する。フローガイド14の内径及び外径の各々は、軸方向における下流側に向かうにつれて拡大する。図示する形態では、軸方向の蒸気流れにおけるフローガイド14の下流端28aには、下流端28aから径方向における外側に向かって延在する整流板15が接続しており、整流板15は、軸方向に直交する平面に沿って形成されている。
【0021】
また、排気室8の内部において、フローガイド14を挟んでディフューザ流路22の反対側には、外周側空間24が形成されている。外周側空間24は、フローガイド14の外周側に位置している。
【0022】
ディフューザ流路22は、軸方向における下流側に向かうにつれて流路断面積が徐々に拡大する形状を有し、最終段の動翼6を通過した高速の蒸気流れがディフューザ流路22に流入すると、蒸気流れが減速されて、その運動エネルギーが圧力へと変換(静圧回復)されるようになっている。
【0023】
突出部26は、回転軸線Cを含む水平面よりも上方において(すなわち排気室8の上半部8uにおいて)、側壁面20から径方向における外側に向けて突出するように設けられている。突出部26は、側壁面20から離れるにつれて径方向における外側に向かうように突出している。突出部26は、回転軸線Cを含む水平面よりも下方には設けられていない。突出部26は、周方向に沿って形成されており、周方向における少なくとも一部の範囲において、フローガイド14の内周面28の下流端28aよりも径方向における外側に位置する。幾つかの実施形態では、突出部26の全体が、フローガイド14の内周面28の下流端28aよりも径方向における外側に位置してもよい。
【0024】
上記構成によれば、
図2に示すように、排気室8の上部(内周面18近傍)から流下する縦渦Fvが突出部26によって受け止められるため、当該縦渦がフローガイド14とベアリングコーン12との間のディフューザ流路22に侵入することを抑制することができる。このため、ディフューザ流路22の有効流路面積(ディフューザ流路22の流路面積のうち蒸気が径方向の外側に向けて流れる流路面積)の縮小による排気室性能の低下を抑制することができる。
【0025】
また、周方向における少なくとも一部の範囲において、突出部26がフローガイド14の内周面28の下流端28aよりも径方向における外側に位置するため、突出部26自体によるディフューザ流路22の蒸気流れの阻害を抑制することができ、ディフューザ流路22における圧力損失の増大を抑制することができる。
【0026】
図3は、周方向の位置θと突出部26の長さLとの関係の一例(突出部26の長さLの周方向分布の一例)を示す図である。なお、突出部26の長さLとは、
図2に示すように、突出部26の基端26aから先端26bまでの長さを意味する。また、本明細書では、
図4に示すように、周方向の位置θについて、回転軸線Cと直交する水平線Hの示す方向を0度及び180度、回転軸線Cの鉛直上方の位置を90度と定義する。排気室8の各構成は、回転軸線Cを含む鉛直面を中心として対称形状を有しており、回転軸線Cと直交する水平線の示す2方向のうち何れを0度としてもよい。
【0027】
幾つかの実施形態では、例えば
図3に示すように、突出部26の長さLは、周方向の位置によって異なっていてもよい。
図3に示す例では、突出部26の長さLは、周方向における少なくとも一部の範囲において、周方向に沿って上方に向かうにつれて減少する。
図3に示す例では、周方向における0度から180度までの範囲において、周方向に沿って90度の位置に近づくにつれて突出部26の長さLが滑らかに減少する。
【0028】
ケーシング10の内周面18は、ロータ4の回転軸線Cを含む水平面よりも上方において、軸方向に直交する断面形状が略半円形に構成されているが、厳密には、内周面18と回転軸線Cとの距離R(
図5参照)は、周方向において90度位置に近づくにつれて小さくなる。また、内周面18と下流端28aの距離は、周方向において90度位置に近づくにつれて小さくなる。このため、仮に、突出部26の長さLを周方向に一様にすると、排気室8の上部(周方向における90度位置近傍)において内周面18と突出部26の先端16bとの間の流路幅W(
図5参照)が周方向の他の位置と比較して小さくなり、突出部26を設けたことによる上述の効果が限定的になる場合がある。
【0029】
そこで、上記のように、突出部26の長さLを、周方向における少なくとも一部の範囲において、周方向に沿って上方に向かうにつれて減少させることにより、内周面18と突出部26の先端26bとの間の流路幅Wが周方向に不均一になることを抑制し、突出部26と側壁面20との間に上述の縦渦を効果的に誘引することができる。これにより、ディフューザ流路22の有効流路面積の縮小による排気室性能の低下を効果的に抑制することができる。
【0030】
幾つかの実施形態では、例えば
図6に示すように、突出部26の基端26aと回転軸線Cとの距離rは、周方向の位置θによって異なっていてもよい。
図6に示す例では、突出部26の基端26aと回転軸線Cとの距離rは、周方向における少なくとも一部の範囲において、周方向に沿って上方に向かうにつれて減少する。
図6に示す例では、周方向における0度から180度までの範囲において、周方向に沿って90度の位置に近づくにつれて距離rが滑らかに減少する。
【0031】
これにより、内周面18と突出部26の先端26bとの間の流路幅Wが周方向に不均一になることを抑制し、突出部26と側壁面20との間に上述の縦渦を効果的に誘引することができる。これにより、ディフューザ流路22の有効流路面積の縮小による排気室性能の低下を効果的に抑制することができる。
【0032】
幾つかの実施形態では、例えば
図7に示すように、ケーシング10の側壁面20には、複数の突出部26(26A~26D)が設けられていてもよい。
【0033】
図7に示す例では、側壁面20には、ロータ4の回転軸線Cを含む水平面(0度位置と180度位置と含む水平面)よりも上方に、複数の突出部26(26A~26D)が設けられている。複数の突出部26(26A~26D)は、周方向に間隔を空けて配置された4つの突出部26A~26Dからなる。複数の突出部26(26A~26D)は、周方向において、0度から180度までの範囲のうちの縦渦が支配的な一部の範囲(部分的な範囲)にのみ設けられている。複数の突出部26(26A~26D)のうち突出部26B,26Cは、突出部26A,26Dよりも高い位置に配置されている。突出部26Bは突出部26Aと90度位置との間に配置されており、突出部26Cは突出部26Dと90度位置との間に配置されている。
【0034】
複数の突出部26(26A~26D)の各々は、周方向に沿って形成され、
図1に例示したように、径方向における外側に向けて突出している。複数の突出部26(26A~26D)の各々は、側壁面20から離れるにつれて径方向における外側に向かうように突出している。また、複数の突出部26(26A~26D)の各々は、周方向における少なくとも一部の範囲において、
図1に例示したように、フローガイド14の内周面28の下流端28aよりも径方向における外側に位置する。幾つかの実施形態では、複数の突出部26(26A~26D)の全体が、フローガイド14の内周面28の下流端28aよりも径方向における外側に位置してもよい。
【0035】
図7に例示したように、0度から180度までの範囲のうちの縦渦が支配的な一部の範囲にのみ突出部26(26A~26D)を設けることにより、0度から180度までの範囲全体に亘って突出部26を設ける場合と比較して、突出部26により付加される圧力損失の増大を抑制しつつ、ディフューザ流路22への縦渦の侵入を抑制して排気室性能を向上することができる。また、0度から180度までの範囲全体に亘って突出部26を設ける場合と比較して、複数の突出部26(26A~26D)に分割されているため、各突出部26を側壁面20に溶接等により容易に固定することができる。
【0036】
図7に示す例では、複数の突出部26(26A~26D)のうち少なくとも一部は、周方向において、30度から150度までの範囲内に設けられている。また、4つの突出部26(26A~26D)のうち、2つの突出部26(26B,26C)が、30度から150度までの範囲内に設けられている。このように、突出部26の少なくとも一部を30度から150度までの範囲内に設けることにより、ディフューザ流路22への縦渦の侵入を効果的に抑制して排気室性能を向上することができる。
【0037】
幾つかの実施形態では、
図7に示す複数の突出部26(26A~26D)の基端26aから先端26bまでの長さL(
図2参照)を互いに異ならせてもよい。例えば突出部26A,26Dよりも高い位置に配置された突出部26B,26Cの長さLを、突出部26A,26Dの長さLよりも長くしてもよい。
【0038】
排気室8の上部(上述の90度位置近傍)では水平位置(上述の0度及び180度近傍)よりも縦渦の影響が大きいため、上記のように相対的に高い位置に配置された突出部26B,26Cの長さLを、相対的に低い位置に配置された突出部26A,26Dの長さLよりも長くすることにより、ディフューザ流路22への縦渦の侵入を効果的に抑制して排気室性能を向上することができる。
【0039】
幾つかの実施形態では、例えば
図8に示すように、ケーシング10の側壁面20には、複数の突出部26(26E,26F)が設けられていてもよい。
【0040】
図8に示す例では、側壁面20には、ロータ4の回転軸線Cを含む水平面(0度位置と180度位置と含む水平面)よりも上方に、複数の突出部26(26E,26F)が設けられている。複数の突出部26(26E,26F)は、周方向に間隔を空けて配置された2つの突出部26E,26Fからなる。図示する例では、複数の突出部26(26E,26F)は、突出部26Eと、回転軸線Cを含む鉛直面を挟んで突出部26Eと反対側に設けられた突出部26Fと、からなる。突出部26Eは、周方向において0度から略90度までの範囲に亘って形成されており、突出部26Fは、周方向において、略90度から180度までの範囲に亘って形成されている。
【0041】
複数の突出部26(26E,26F)の各々は、周方向に沿って形成され、
図1に例示したように、径方向における外側に向けて突出している。複数の突出部26(26E,F)の各々は、側壁面20から離れるにつれて径方向における外側に向かうように突出している。また、複数の突出部26(26E,F)の各々は、周方向における少なくとも一部の範囲において、
図1に例示したように、フローガイド14の内周面28の下流端28aよりも径方向における外側の位置に位置する。幾つかの実施形態では、複数の突出部26(26E,F)の全体がフローガイド14の内周面28の下流端28aよりも径方向における外側の位置に位置してもよい。
【0042】
図8に示す例では、突出部26(26E,26F)の各々の上端26uには、径方向における内側に向かって凹んだ凹部30が形成されている。突出部26(26E,26F)の各々の凹部30は、突出部26(26E,26F)における周方向の端部に形成されており、突出部26Eの凹部30と突出部26Fの凹部30とは互いに対向する位置に形成されている。
【0043】
突出部26(26E,26F)の各々の上端26uでは、内周面18と突出部26の先端26bとの間の流路幅W(
図5参照)が狭くなりやすいため、上記のように凹部30を設けることにより流路幅Wを確保して突出部26と側壁面20との間に縦渦を誘引することができる。これにより、ディフューザ流路22への縦渦の侵入を効果的に抑制して排気室性能を向上することができる。また、複数の突出部26(26E,26F)に分割されているため、各突出部26を側壁面20に溶接等により容易に固定することができる。
【0044】
幾つかの実施形態では、例えば
図9に示すように、ベアリングコーン12の外周面33に、径方向における内側に向かって凹んだキャビティ32が形成されていてもよい。
図9に示す形態では、キャビティ32は、ベアリングコーン12の下流端12aの位置に周方向における全範囲に亘って形成されており、環状に形成されている。ただし、他の実施形態では、キャビティ32は、周方向の一部の範囲のみに設けられていてもよく、例えば回転軸線Cを含む水平面よりも上方(ベアリングコーン12の上半部)にのみ設けられていてもよい。
【0045】
図9に示す構成によれば、
図10に示すように、側壁面20に衝突した蒸気流れの一部Fsがキャビティ32に導かれるため、ベアリングコーン12に沿った蒸気流れの逆流を抑制することができ、低マッハ作動時における2次元的なはく離要因の流動を抑制することができ、低マッハ側の性能を向上することができる。また、突出部26で縦渦Fvを受け止めることにより高マッハ作動時における3次元的なはく離も抑制することができるため、運用条件に対して性能に関する高いロバスト性を実現することができる。
【0046】
幾つかの実施形態では、例えば
図11に示すように、キャビティ32の開口端32aの軸方向の幅d1は、キャビティ32の底面32bの軸方向の幅d2よりも小さくなっていてもよい。キャビティ32は、周方向における全範囲に亘って形成されており、環状に形成されている。
【0047】
また、
図11に示す形態では、キャビティ32は、軸方向に沿った断面において、キャビティ32の開口端32aから径方向における内側に延在する径方向キャビティ部34と、径方向キャビティ部34の内周端34aに接続する傾斜キャビティ部36とを含む。傾斜キャビティ部36は、径方向キャビティ部34の内周端34aから動翼6側に向かうにつれて径方向における内側に向かうように、軸方向に対して傾斜した傾斜方向に延在している。また、キャビティ32の底面32bにおける動翼6に最も近い位置P1は、底面32bにおける動翼6から最も遠い位置P2よりも径方向における内側に位置する。
【0048】
図11に示す構成によれば、キャビティ32の開口端32aの軸方向の幅d1が、キャビティ32の底面32bの軸方向の幅d2よりも小さくなっているため、キャビティ32へ流入した蒸気がキャビティ32から再流出することを抑制でき、はく離抑制の効果を高めることができる。
【0049】
また、キャビティ32の底面32bにおける動翼6に最も近い位置P1が、底面32bにおける動翼6から最も遠い位置P2よりも径方向における内側に位置するため、キャビティ32へ流入した蒸気が動翼6側に再流出することを抑制でき、はく離抑制の効果を高めることができる。
【0050】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0051】
幾つかの実施形態では、例えば
図12に示すように、突出部26の先端部26cは、側壁面20側に曲がっていてもよい。
図12に示す構成では、突出部26は、軸方向において側壁面20から離れるにつれて径方向における外側に向かう傾斜部40と、傾斜部40の先端から軸方向に沿って側壁面20側に延在する先端部26cとを含む。
【0052】
かかる構成によれば、
図12に示すように、突出部26と側壁面20との間に侵入した縦渦Fvが主流側(ディフューザ流路22側)へ流出することを抑制することができる。突出部26の先端部26cは、
図12に示すように側壁面20側に屈曲してもよいし、側壁面20側に滑らかに湾曲していてもよい。
【0053】
幾つかの実施形態では、例えば
図13に示すように、突出部26の先端部26cは、フローガイド14側に曲がっていてもよい。
図13に示す構成では、突出部26は、軸方向において側壁面20から離れるにつれて径方向における外側に向かう傾斜部40と、傾斜部40の先端側から径方向に沿って内周面18側に延在する径方向部42と、径方向部42の先端側から軸方向におけるフローガイド14側に湾曲して延在する先端部26cとを含む。
【0054】
かかる構成によれば、突出部26の先端部26cが軸方向におけるフローガイド14側に曲がっているため、ディフューザ流路22より流出した蒸気流れFgが突出部26に衝突して、側壁面20から離れる方向に案内されるため、蒸気流れFgがディフューザ流路22へ再び流入することを抑制することができる。したがって、ディフューザ流路22における圧力損失の増大を抑制することができる。
【0055】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0056】
(1)本開示に係る蒸気タービン排気室(例えば上述の排気室8)は、
蒸気タービン(例えば上述の蒸気タービン2)の最終段の動翼(例えば上述の動翼6)を通過した蒸気を前記蒸気タービンの外部に導くための蒸気タービン排気室であって、
ケーシング(例えば上述のケーシング10)と、
前記ケーシング内において前記蒸気タービンのロータ(例えば上述のロータ4)の周方向に沿って設けられたベアリングコーン(例えば上述のベアリングコーン12)と、
前記ケーシング内において前記ベアリングコーンの外周側に前記周方向に沿って設けられ、前記ベアリングコーンとの間にディフューザ流路(例えば上述のディフューザ流路22)を形成するフローガイド(例えば上述のフローガイド14)と、
を備え、
前記ケーシングの内面は、前記フローガイドの外周側に前記ロータの軸方向に沿って延在する内周面(例えば上述の内周面18)と、前記内周面と前記ベアリングコーンとを接続する側壁面(例えば上述の側壁面20)と、を含み、
前記側壁面には、前記ロータの回転軸線を含む水平面よりも上方において、前記ロータの径方向における外側に向けて突出する第1突出部(例えば上述の突出部26)が前記周方向に沿って形成され、
前記第1突出部は、前記周方向における少なくとも一部の範囲において、前記フローガイドの内周面(例えば上述の内周面28)の下流端(例えば上述の下流端28a)よりも前記径方向における外側に位置する。
【0057】
上記(1)に記載の蒸気タービン排気室によれば、蒸気タービン排気室の上部(内周面近傍)から流下する縦渦が第1突出部によって受け止められるため、当該縦渦がフローガイドとベアリングコーンとの間のディフューザ流路に侵入することを抑制することができる。このため、ディフューザ流路の有効流路面積の縮小による排気室性能の低下を抑制することができる。
【0058】
また、周方向における少なくとも一部の範囲において、第1突出部がフローガイドの内周面の下流端よりも径方向における外側に位置するため、第1突出部自体によるディフューザ流路の蒸気流れの阻害を抑制することができ、ディフューザ流路における圧力損失の増大を抑制することができる。
【0059】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の蒸気タービン排気室において、
前記第1突出部の先端部(例えば上述の先端部26c)は、前記軸方向における前記側壁面側に曲がっている。
【0060】
上記(2)に記載の蒸気タービン排気室によれば、第1突出部と側壁面との間に侵入した縦渦が主流側へ流出することを抑制することができる。
【0061】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の蒸気タービン排気室において、
前記第1突出部の先端部(例えば上述の先端部26c)は、前記軸方向における前記フローガイド側に曲がっている。
【0062】
上記(3)に記載の蒸気タービン排気室によれば、第1突出部の先端部が軸方向におけるフローガイド側に曲がっているため、ディフューザ流路より流出した蒸気流れが突出部に衝突して、側壁面から離れる方向に案内されるため、蒸気流れがディフューザ流路へ再び流入することを抑制することができる。したがって、ディフューザ流路における圧力損失の増大を抑制することができる。
【0063】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかに記載の蒸気タービン排気室において、
前記第1突出部の基端(例えば上述の基端26a)から先端(例えば上述の先端26b)までの長さ(例えば上述の長さL)は、前記周方向の位置によって異なる。
【0064】
上記(4)に記載の蒸気タービン排気室によれば、第1突出部の長さを周方向の位置に応じて適切に設定することにより、内周面と第1突出部の先端との間の流路幅が周方向に不均一になることを抑制し、第1突出部と側壁面との間に上述の縦渦を効果的に誘引することができる。これにより、ディフューザ流路の有効流路面積の縮小による排気室性能の低下を効果的に抑制することができる。
【0065】
(5)幾つかの実施形態では、上記(4)に記載の蒸気タービン排気室において、
前記第1突出部の前記長さは、前記周方向における少なくとも一部の範囲において、前記周方向に沿って上方に向かうにつれて減少する。
【0066】
上記(5)に記載の蒸気タービン排気室によれば、内周面と第1突出部の先端との間の流路幅が周方向に不均一になることを抑制し、第1突出部と側壁面との間に上述の縦渦を効果的に誘引することができる。これにより、ディフューザ流路の有効流路面積の縮小による排気室性能の低下を効果的に抑制することができる。
【0067】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(5)の何れかに記載の蒸気タービン排気室において、
前記第1突出部の基端と前記回転軸線との距離(例えば上述の距離r)は、前記周方向の位置によって異なる。
【0068】
上記(6)に記載の蒸気タービン排気室によれば、第1突出部の基端と前記回転軸線との距離を周方向の位置に応じて適切に設定することにより、内周面と第1突出部の先端との間の流路幅が周方向に不均一になることを抑制し、突出部と側壁面との間に上述の縦渦を効果的に誘引することができる。これにより、ディフューザ流路の有効流路面積の縮小による排気室性能の低下を効果的に抑制することができる。
【0069】
(7)幾つかの実施形態では、上記(6)に記載の蒸気タービン排気室において、
前記第1突出部の基端と前記回転軸線との距離は、前記周方向における少なくとも一部の範囲において、前記周方向に沿って上方に向かうにつれて減少する。
【0070】
上記(7)に記載の蒸気タービン排気室によれば、内周面と第1突出部の先端との間の流路幅が周方向に不均一になることを抑制し、突出部と側壁面との間に上述の縦渦を効果的に誘引することができる。これにより、ディフューザ流路の有効流路面積の縮小による排気室性能の低下を効果的に抑制することができる。
【0071】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(7)の何れかに記載の蒸気タービン排気室において、
前記周方向の位置について、前記回転軸線と直交する水平線の示す方向のうちの一方を0度、前記回転軸線の鉛直上方の位置を90度と定義すると、
前記第1突出部は、前記周方向において、0度から180度までの範囲のうちの一部の範囲にのみ設けられる。
【0072】
上記(8)に記載の蒸気タービン排気室によれば、0度から180度までの範囲のうちの縦渦が支配的な一部の範囲に第1突出部を設けることにより、0度から180度までの範囲全体に亘って突出部を設ける場合と比較して、第1突出部により付加される圧力損失の増大を抑制しつつ、ディフューザ流路への縦渦の侵入を抑制して排気室性能を向上することができる。
【0073】
(9)幾つかの実施形態では、上記(8)に記載の蒸気タービン排気室において、
前記第1突出部の少なくとも一部は、前記周方向において、30度から150度までの範囲内に設けられる。
【0074】
上記(9)に記載の蒸気タービン排気室によれば、ディフューザ流路への縦渦の侵入を効果的に抑制して排気室性能を向上することができる。
【0075】
(10)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(9)の何れかに記載の蒸気タービン排気室において、
前記側壁面には、前記ロータの回転軸線を含む水平面よりも上方において、前記フローガイドの内周面の下流端よりも前記ロータの径方向における外側の位置に、前記径方向における外側に向けて突出する複数の突出部(例えば上述の突出部26A~26D、又は、上述の突出部26E及び26F)が設けられ、
前記複数の突出部は、前記周方向に間隔を空けて配置され、
前記複数の突出部は、前記第1突出部を含む。
【0076】
上記(10)に記載の蒸気タービン排気室によれば、複数の突出部が周方向に間隔を空けて配置されているため、各突出部が周方向に連続して形成されている場合と比較して、各突出部を側壁面に溶接等により容易に固定することができる。また、縦渦が支配的な位置に各突出部を設けることにより、各突出部により付加される圧力損失の増大を抑制しつつ、ディフューザ流路への縦渦の侵入を抑制して排気室性能を向上することができる。
【0077】
(11)幾つかの実施形態では、上記(10)に記載の蒸気タービン排気室において、
前記複数の突出部は、前記第1突出部(例えば上述の突出部26A又は26D)よりも高い位置に配置された第2突出部(例えば上述の突出部26B又は26C)を含み、
前記第2突出部の基端から先端までの長さ(例えば上述の長さL)は、前記第1突出部の基端から先端までの長さ(例えば上述の長さL)よりも長い。
【0078】
上記(11)に記載の蒸気タービン排気室によれば、上記のように相対的に高い位置に配置された突出部の長さを、相対的に低い位置に配置された突出部の長さよりも長くすることにより、ディフューザ流路への縦渦の侵入を効果的に抑制して排気室性能を向上することができる。
【0079】
(12)幾つかの実施形態では、上記(10)に記載の蒸気タービン排気室において、
前記第1突出部の上端に凹部(例えば上述の凹部30)が形成される。
【0080】
上記(12)に記載の蒸気タービン排気室によれば、第1突出部の上端では、内周面と第1突出部の先端との間の流路幅が狭くなりやすいため、上記のように凹部を設けることにより流路幅を確保して第1突出部と側壁面との間に縦渦を誘引することができる。これにより、ディフューザ流路への縦渦の侵入を効果的に抑制して排気室性能を向上することができる。
【0081】
(13)幾つかの実施形態では、上記(12)に記載の蒸気タービン排気室において、
前記複数の突出部は、前記回転軸線を含む鉛直面を挟んで前記第1突出部(例えば上述の突出部26E)と反対側に設けられた第2突出部(例えば上述の突出部26F)を含み、
前記第2突出部の上端に凹部(例えば上述の凹部30)が形成される。
【0082】
上記(13)に記載の蒸気タービン排気室によれば、第1突出部と第2突出部の各々の上端では、内周面と各突出部の先端との間の流路幅が狭くなりやすいため、上記のように凹部を設けることにより流路幅を確保して突出部と側壁面との間に縦渦を誘引することができる。これにより、ディフューザ流路への縦渦の侵入を効果的に抑制して排気室性能を向上することができる。また、第1突出部と第2突出部とが回転軸線を含む鉛直面を挟んで反対側に設けられているため、各突出部を側壁面に溶接等により容易に固定することができる。
【0083】
(14)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(13)の何れかに記載の蒸気タービン排気室において、
前記ベアリングコーンの外周面(例えば上述の外周面33)にキャビティ(例えば上述のキャビティ32)が形成される。
【0084】
上記(14)に記載の蒸気タービン排気室によれば、側壁面に衝突した蒸気流れの一部がキャビティに導かれるため、ベアリングコーンに沿った蒸気流れの逆流を抑制することができ、低マッハ作動時における2次元的なはく離要因の流動を抑制することができ、低マッハ側の性能を向上することができる。また、突出部を設けたことによる高マッハ作動時における3次元的なはく離も抑制することができるため、運用条件に対して性能に関する高いロバスト性を実現することができる。
【0085】
(15)幾つかの実施形態では、上記(14)に記載の蒸気タービン排気室において、
前記キャビティの開口端(例えば上述の開口端32a)の前記軸方向の幅(例えば上述の幅d1)は、前記キャビティの底面(例えば上述の底面32b)の前記軸方向の幅(例えば上述の幅d2)よりも小さい。
【0086】
上記(15)に記載の蒸気タービン排気室によれば、キャビティの開口端の軸方向の幅が、キャビティの底面の軸方向の幅よりも小さくなっているため、キャビティへ流入した蒸気がキャビティから再流出することを抑制でき、はく離抑制の効果を高めることができる。
【0087】
(16)幾つかの実施形態では、上記(14)又は(15)に記載の蒸気タービン排気室において、
前記キャビティの底面における前記動翼に最も近い位置(例えば上述の位置P1)は、前記底面における前記動翼から最も遠い位置(例えば上述の位置P2)よりも前記径方向における内側に位置する。
【0088】
上記(16)に記載の蒸気タービン排気室によれば、キャビティの底面における動翼に最も近い位置が、底面における動翼から最も遠い位置よりも径方向における内側に位置するため、キャビティへ流入した蒸気が動翼側に再流出することを抑制でき、はく離抑制の効果を高めることができる。
【0089】
(17)本開示の少なくとも一実施形態に係る蒸気タービンは、
上記(1)乃至(16)の何れかに記載の蒸気タービン排気室と、
前記ロータと、を備える。
【0090】
上記(17)に記載の蒸気タービンによれば、上記(1)乃至(16)の何れかに記載の蒸気タービン排気室を備えるため、ディフューザ流路の有効流路面積の縮小による圧力損失の増大を抑制し、排気室性能の低下を抑制することができる。
【符号の説明】
【0091】
2 蒸気タービン
4 ロータ
6 動翼
7 排気室入口
8 排気室(蒸気タービン排気室)
9 排気室出口
10 ケーシング
12 ベアリングコーン
12a 下流端
13 軸受
14 フローガイド
15 整流板
16 内面
18 内周面
20 側壁面
22 ディフューザ流路
24 外周側空間
26(26A,26B,26C,26D,26E,26F) 突出部(第1突出部、第2突出部)
26a 基端
26b 先端
26u 上端
27 復水器
28 内周面
28a 下流端
30 凹部
32 キャビティ
32a 開口端
32b 底面
33 外周面
34 径方向キャビティ部
34a 内周端
36 傾斜キャビティ部
40 傾斜部
42 径方向部