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特許7433202天井墨出し用レーザ装置及び天井墨出し方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】天井墨出し用レーザ装置及び天井墨出し方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/00 20060101AFI20240209BHJP
【FI】
G01C15/00 103C
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020204702
(22)【出願日】2020-12-10
(65)【公開番号】P2022092116
(43)【公開日】2022-06-22
【審査請求日】2023-06-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 拓弥
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】実開昭48-73650(JP,U)
【文献】登録実用新案第3182702(JP,U)
【文献】特開2003-254752(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井の開口又は前記天井に取付けられた機器の両側端に両端が取付けられたロープと、
前記ロープが巻き掛けられるプーリと線状にレーザ光を照射するレーザ照射器とを備えるレーザ照射装置と、を含む天井墨出し用レーザ装置であって、
前記レーザ照射装置の前記プーリに前記ロープの中央部を巻き掛けて前記レーザ照射装置を前記天井から吊り下げ、前記天井の開口又は前記天井に取付けられた前記機器を基準にして前記レーザ照射器から天井面に線状のレーザ光を照射すること、
を特徴とする天井墨出し用レーザ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の天井墨出し用レーザ装置であって、
前記レーザ照射器が前記天井面に照射する線状のレーザ光は、前記天井の開口又は前記天井に取付けられた前記機器の前記両側端の中央を通り、前記両側端を結ぶ仮想線に対して直交方向に延びる中心線レーザ光を含むこと、
を特徴とする天井墨出し用レーザ装置。
【請求項3】
請求項2に記載の天井墨出し用レーザ装置であって、
前記レーザ照射器が前記天井面に照射する線状のレーザ光は、前記天井の開口又は前記天井に取付けられた前記機器の前記両側端を結ぶ前記仮想線に平行で前記中心線レーザ光と交差する少なくとも1つの横線レーザ光を更に含むこと、
を特徴とする天井墨出し用レーザ装置。
【請求項4】
請求項3に記載の天井墨出し用レーザ装置であって、
前記レーザ照射装置は、前記レーザ照射器のレーザ光の放射角度を変化させる駆動機構と、
前記駆動機構の動作を制御する制御部と、を含み、
前記制御部は、
前記ロープの前記プーリへの巻き掛け角度に基づいて前記レーザ照射器と前記天井面との垂直距離を算出し、
算出した前記レーザ照射器と前記天井面との前記垂直距離と、前記レーザ照射器のレーザ光の放射口から前記横線レーザ光までの前記中心線レーザ光に沿った水平距離と、に基づいて、前記中心線レーザ光を含む垂直仮想面内における前記レーザ照射装置の垂直方向に対する前記横線レーザ光の照射角度を算出し、
前記駆動機構によって前記レーザ照射器のレーザ光の放射角度を前記照射角度に調整して前記横線レーザ光を前記天井面に照射すること、
を特徴とする天井墨出し用レーザ装置。
【請求項5】
請求項4に記載の天井墨出し用レーザ装置であって、
前記レーザ照射装置は、
前記プーリを回転駆動するプーリ駆動部を含み、
前記制御部は、
前記レーザ照射器が前記天井の開口又は前記天井に取付けられた前記機器の前記両側端の中央となるように、前記プーリ駆動部によって前記プーリを回転させて前記ロープに対する前記プーリの巻き掛け位置を調整すること、
を特徴とする天井墨出し用レーザ装置。
【請求項6】
天井墨出し方法であって、
ロープと、前記ロープが巻き掛けられるプーリと線状にレーザ光を照射するレーザ照射器とを備えるレーザ照射装置と、を準備する準備工程と、
天井の開口又は前記天井に取付けられた機器の両側端に前記ロープの両端を取付けるロープ取付け工程と、
前記レーザ照射装置の前記プーリに前記ロープの中央部を巻き掛けて前記レーザ照射装置を前記天井から吊り下げる吊り下げ工程と、
前記天井の開口又は前記天井に取付けられた前記機器を基準にして前記レーザ照射器から天井面に線状のレーザ光を照射するレーザ照射工程と、を含むこと、
を特徴とする天井墨出し方法。
【請求項7】
請求項6に記載の天井墨出し方法であって、
前記レーザ照射工程は、前記天井の開口又は前記天井に取付けられた前記機器の前記両側端の中央を通り、前記両側端を結ぶ仮想線に対して直交方向に延びる中心線レーザ光を前記レーザ照射器から前記天井面に照射すること、
を特徴とする天井墨出し方法。
【請求項8】
請求項7に記載の天井墨出し方法であって、
前記レーザ照射工程は、更に、前記天井の開口又は前記天井に取付けられた前記機器の前記両側端を結ぶ前記仮想線に平行で前記中心線レーザ光と交差する少なくとも1つの横線レーザ光を前記レーザ照射器から前記天井面に照射すること、
を特徴とする天井墨出し方法。
【請求項9】
請求項8に記載の天井墨出し方法であって、
前記ロープの前記プーリへの巻き掛け角度に基づいて前記レーザ照射器と前記天井面との垂直距離を算出し、
算出した前記レーザ照射器と前記天井面との前記垂直距離と、前記レーザ照射器のレーザ光の放射口から前記横線レーザ光までの前記中心線レーザ光に沿った水平距離と、に基づいて、前記中心線レーザ光を含む垂直仮想面内における前記レーザ照射装置の垂直方向に対する前記横線レーザ光の照射角度を算出し、
前記レーザ照射器のレーザ光の放射角度を前記照射角度に調整して前記横線レーザ光を前記天井面に照射すること、
を特徴とする天井墨出し方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井に墨出用のレーザ光を照射する天井墨出し用レーザ装置並びに天井に墨出しを行う方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天井に開口等の設置工事を行う場合には、天井面に開口の位置を墨出しする必要がある。この天井への墨出しを容易に行う装置として、床面に配置したレーザ装置によって天井面の開口に対応した矩形形状にレーザを照射する天井墨出し装置が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-58153号公報
【文献】特開2000-91254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ビルの改修工事等で、空調装置を交換する場合がある。この場合、天井に室内機を交換し、室内機の近くに室内機の検口を行う開口を追加で設ける場合がある。この際、開口の位置に墨出しが必要となるが、室内に机や椅子、キャビネ等が配置されており、特許文献1、2に記載されているように床面にレーザ装置を配置する墨出し装置を使えない場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、床面にレーザ装置を配置せず天井面に墨出用のレーザ光を照射することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の天井墨出し用レーザ装置は、天井の開口又は前記天井に取付けられた機器の両側端に両端が取付けられたロープと、前記ロープが巻き掛けられるプーリと線状にレーザ光を照射するレーザ照射器とを備えるレーザ照射装置と、を含む天井墨出し用レーザ装置であって、前記レーザ照射装置の前記プーリに前記ロープの中央部を巻き掛けて前記レーザ照射装置を前記天井から吊り下げ、前記天井の開口又は前記天井に取付けられた前記機器を基準にして前記レーザ照射器から前記天井面に線状のレーザ光を照射すること、を特徴とする。
【0007】
このように、天井の開口又は天井に取付けられた機器の両側端に両端が取付けられたロープによって天井からレーザ照射装置を吊り下げるので、重力によりレーザ照射装置を開口又は機器の中心線上に位置させ、開口又は機器を基準にした線状のレーザ光を天井面に照射することができる。また、レーザ照射装置を床面に配置することなく天井面に墨出用のレーザ光を照射することができる。
【0008】
本発明の天井墨出し用レーザ装置において、前記レーザ照射器が前記天井面に照射する線状のレーザ光は、前記天井の開口又は前記天井に取付けられた前記機器の前記両側端の中央を通り、前記両側端を結ぶ仮想線に対して直交方向に延びる中心線レーザ光を含んでもよい。
【0009】
これにより、開口又は機器の中心線と重なるように中心線レーザ光を天井面に照射することができ、容易に天井面に開口の中心線の墨出しを行うことができる。
【0010】
本発明の天井墨出し用レーザ装置において、前記レーザ照射器が前記天井面に照射する線状のレーザ光は、前記天井の開口又は前記天井に取付けられた前記機器の前記両側端を結ぶ前記仮想線に平行で前記中心線レーザ光と交差する少なくとも1つの横線レーザ光を更に含んでもよい。
【0011】
これにより、開口の中心線と開口の端部との墨出し用のレーザ光を容易に照射することができる。
【0012】
本発明の天井墨出し用レーザ装置において、前記レーザ照射装置は、前記レーザ照射器のレーザ光の放射角度を変化させる駆動機構と、前記駆動機構の動作を制御する制御部と、を含み、前記制御部は、前記ロープの前記プーリへの巻き掛け角度に基づいて前記レーザ照射器と前記天井面との垂直距離を算出し、算出した前記レーザ照射器と前記天井面との前記垂直距離と、前記レーザ照射器のレーザ光の放射口から前記横線レーザ光までの前記中心線レーザ光に沿った水平距離と、に基づいて、前記中心線レーザ光を含む垂直仮想面内における前記レーザ照射装置の垂直方向に対する前記横線レーザ光の照射角度を算出し、前記駆動機構によって前記レーザ照射器のレーザ光の放射角度を前記照射角度に調整して前記横線レーザ光を前記天井面に照射してもよい。
【0013】
これにより、容易に開口の端部の墨出し用のレーザ光の照射を行うことができる。
【0014】
本発明の天井墨出し用レーザ装置において、前記レーザ照射装置は、前記プーリを回転駆動するプーリ駆動部を含み、前記制御部は、前記レーザ照射器が前記天井の開口又は前記天井に取付けられた前記機器の前記両側端の中央となるように、前記プーリ駆動部によって前記プーリを回転させて前記ロープに対する前記プーリの巻き掛け位置を調整してもよい。
【0015】
これにより、より正確にレーザ照射器の位置を開口又は機器の両側端の中央に配置し、容易に天井面に開口の中心線の墨出し用のレーザ光を照射することができる。
【0016】
本発明の天井墨出し方法は、ロープと、前記ロープが巻き掛けられるプーリと線状にレーザ光を照射するレーザ照射器とを備えるレーザ照射装置と、を準備する準備工程と、天井の開口又は前記天井に取付けられた機器の両側端に前記ロープの両端を取付けるロープ取付け工程と、前記レーザ照射装置の前記プーリに前記ロープの中央部を巻き掛けて前記レーザ照射装置を前記天井から吊り下げる吊り下げ工程と、前記天井の開口又は前記天井に取付けられた前記機器を基準にして前記レーザ照射器から天井面に線状のレーザ光を照射するレーザ照射工程と、を含むこと、を特徴とする。
【0017】
本発明の天井墨出し方法において、前記レーザ照射工程は、前記天井の開口又は前記天井に取付けられた前記機器の前記両側端の中央を通り、前記両側端を結ぶ仮想線に対して直交方向に延びる中心線レーザ光を前記レーザ照射器から前記天井面に照射してもよい。
【0018】
本発明の天井墨出し方法において、前記レーザ照射工程は、更に、前記天井の開口又は前記天井に取付けられた前記機器の前記両側端を結ぶ前記仮想線に平行で前記中心線レーザ光と交差する少なくとも1つの横線レーザ光を前記レーザ照射器から前記天井面に照射してもよい。
【0019】
本発明の天井墨出し方法において、前記ロープの前記プーリへの巻き掛け角度に基づいて前記レーザ照射器と前記天井面との垂直距離を算出し、算出した前記レーザ照射器と前記天井面との前記垂直距離と、前記レーザ照射器のレーザ光の放射口から前記横線レーザ光までの前記中心線レーザ光に沿った水平距離と、に基づいて、前記中心線レーザ光を含む垂直仮想面内における前記レーザ照射装置の垂直方向に対する前記横線レーザ光の照射角度を算出し、前記レーザ照射器のレーザ光の放射角度を前記照射角度に調整して前記横線レーザ光を前記天井面に照射してもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、床面にレーザ装置を配置せず天井面に墨出用のレーザ光を照射できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態の天井墨出し用レーザ装置の構成を示す斜視図である。
図2】実施形態の天井墨出し用レーザ装置を図1の矢印Aから見た立面図である。
図3】実施形態の天井墨出し用レーザ装置を図1の矢印Bから見た立面図である。
図4】実施形態の天井墨出し用レーザ装置を用いて天井面に新設開口の墨出しを行う際に使用する墨出し用治具の斜視図である。
図5】実施形態の天井墨出し用レーザ装置を用いて天井面に新設開口の墨出しを行う手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら実施形態の天井墨出し用レーザ装置100の構成について説明する。図1に示す様に、天井墨出し用レーザ装置100は、ロープ20と、レーザ照射装置10とで構成される。尚、以下の説明では、天井墨出し用レーザ装置100は、天井パネル40に設けられた既設の空調装置(図示せず)を取付けるための既設開口50の両側端58、59から吊り下げられて、既設開口50に隣接する新設開口60の設置の為の墨出しを行うために用いられるとして説明する。また、図1図3において、天井面41の上で既設開口50と新設開口60の並ぶ方向をY方向、Y方向と直交する方向をX方向、上下方向をZ方向として説明する。
【0023】
図1に示す様に、レーザ照射装置10は、プーリ13が回転自在に取付けられたケーシング11の内部にレーザ照射器12と、レーザ照射器12のレーザ光の放射角度を変化させる駆動機構15と、プーリ13を回転駆動するプーリ駆動部14と、制御部16とを格納したものである。プーリ13は、ケーシング11の内部に回転自在に取付けられている。また、レーザ照射装置10の重心位置19は、プーリ13のZ方向下側となっている。
【0024】
レーザ照射器12は、レーザ光の放射口12aから天井パネル40の天井面41に線状のレーザ光を照射する。線状のレーザ光は、例えば、光ファイバやプリズム、レンズ等の光学素子によって線状のレーザ光を天井面41に照射するように構成しても良いし、レーザポインタを高速でスキャンして天井面41に線状のレーザ光が照射されているように見えるよう構成してもよい。レーザ照射器12のレーザ光の放射口12aは、レーザ照射装置10の中心位置に配置されており、重心位置19と同様、プーリ13のZ方向下側の位置となっている。また、レーザ光の放射口12aは、プーリ13よりも距離DだけY方向プラス側となっている。
【0025】
ロープ20は、レーザ照射装置10のプーリ13に巻き掛けられるような太さであればよい。ロープ20の一端21と他端22とはそれぞれ既設開口50の一の側端58と他の側端59とに接続されて、両側端58、59からV字状に垂れ下がるように天井パネル40に取付けられている。従って、ロープ20のV字型に垂れ下がった中央部23は、両側端58、59の中央に位置している。
【0026】
既設開口50は、Y方向マイナス側の端面51と、Y方向プラス側の端面52と、X方向マイナス側の端面54と、X方向プラス側の端面55との4つの端面51,52,54,55で構成される四角い開口である。両側端58、59は、Y方向プラス側の端面52のX方向プラス側端とX方向マイナス側端に位置している。また、既設開口50のY方向の中心線56は、両側端58、59の中央でY方向に延びる仮想線となる。また、両側端58、59を結ぶ仮想線52aは、Y方向に直交するX方向に延びる仮想線であるから、既設開口のY方向の中心線56は、両側端58、59の中央を通り、両側端58、59を結ぶ仮想線52aに対して直交する方向に延びる線となる。
【0027】
また、既設開口50のX方向の中央でZ方向に延びるY方向プラス側の端面52の中心線57は、両側端58、59の中央でZ方向に延びる仮想線となる。また、中心線57は、ロープ20のV型に垂れ下がったロープ20の中央部23を通る線となる。
【0028】
以上、説明したように、既設開口50に対してロープ20を取付け、レーザ照射装置10のプーリ13の回転軸13aがY軸に平行で、中心線57と交差するようにロープ20をプーリ13に巻きかけるとロープ20の中央部23の近傍にレーザ照射装置10の荷重が加わる。レーザ照射装置10の重心位置19は、プーリ13のZ方向下側に位置しているので、自重によりプーリ13が回転してレーザ照射装置10の重心位置19はロープ20の中央部23に移動する。これにより、レーザ照射装置10の中心位置は両側端58、59の中央となる。
【0029】
また、レーザ照射装置10の重心位置19は、プーリ13のZ方向下側に位置しているので、レーザ照射装置10は、プーリ13の回転軸13aが水平となるようにロープ20を介して天井パネル40から吊り下げられる。このように、レーザ照射装置10の中心位置に配置されているレーザ照射器12のレーザ光の放射口12aは、両側端58、59の中央で、天井面41から垂直距離Hだけ下方向の位置で、中心線57から距離DだけY方向プラス側に位置し、放射口12aの方向は中心線56の延びる方向に向くように天井パネル40から吊り下げられる。
【0030】
また、プーリ13の回転によりレーザ照射装置10の重心位置19、レーザ照射器12のレーザ光の放射口12aが両側端58、59の中央とならない場合には、レーザ照射装置10の制御部16は、プーリ駆動部14によって図2に示すプーリ13を回転駆動して、レーザ照射装置10の重心位置19、レーザ照射器12のレーザ光の放射口12aが両側端58、59の中央となるようにプーリ13の巻き掛け位置を調整してもよい。
【0031】
以上の様に天井パネル40からロープ20を介して吊り下げたレーザ照射装置10のレーザ照射器12のレーザ光の放射口12aから天井面41に向かって線状にレーザ光を照射すると、天井面41には、既設開口50のY方向の中心線56に沿ってY方向に延びる中心線レーザ光31が照射される。
【0032】
この中心線レーザ光31は、既設開口50のY方向の中心線56と同様、両側端58、59の中央を通り、両側端58、59を結ぶ仮想線52aに対して直交する方向に延びる線となる。つまり、中心線レーザ光31は、天井パネル40の既設開口50の中心線56を基準として天井面41に照射された線状のレーザ光である。
【0033】
次に、レーザ照射装置10で天井面41の所定の位置に中心線レーザ光31と交差する横線レーザ光32、33を照射する場合について説明する。ここで、横線レーザ光32、33は、それぞれ新設開口60のY方向マイナス側の端面62、Y方向プラス側の端面63のY方向位置でX方向に線状に延びるレーザ光である。
【0034】
図2に示すように、ロープ20の中央部23をプーリ13に巻きかけると、ロープ20は中央部23を下端としたV字状に張り渡され、ロープ20のプーリ13に巻きかけられている巻き掛け角度は2αとなる。レーザ照射装置10は、内部にロープ20の巻き掛け角度を検出する巻き掛け角度検出手段を備えている(図示せず)。巻き掛け角度検出手段は、例えば、プーリ13とロープ20の中央部23の近傍とをY軸方向から撮像するカメラと、カメラで撮像した画像を処理してロープ20の巻き掛け角度を算出する算出手段とで構成されていてもよい。また、巻き掛け角度検出手段は、プーリ13とロープ20との接触位置を検出し、この接触位置に巻き掛け角度を算出する算出手段とで構成されてもよい。
【0035】
ここで、図2、3を参照しながら、巻き掛け角度検出手段で検出したロープ20の巻き掛け角度(図2に示す例では、角度2α)に基づいて、図3に示すレーザ光の放射口12aから横線レーザ光32、33に向かう方向と天井面41に対して垂直方向とのなす角度θ1、θ2を算出する方法について説明する。ここで、角度θ1、θ2は、レーザ照射装置10の垂直方向に対する横線レーザ光32、33の照射角度である。
【0036】
最初に、巻き掛け角度検出手段で検出したロープ20の巻き掛け角度(図2に示す例では、角度2α)に基づいて、下記の式1により、天井面41とプーリ13の回転軸13aまでの第1の垂直距離h1を算出する。ここで、L0は、ロープ20の長さであり、既知の値である。
h1=L0/2*cos(α) --- (式1)
【0037】
図2に示すように、プーリ13の回転軸13aとレーザ照射器12の中心との垂直距離はh2(既知の値)であるから、天井面41とレーザ照射器12の中心までの垂直距離Hは、下記の式2で表される。
H=h1+h2
=L0/2*cos(α)+h2 --- (式2)
【0038】
横線レーザ光32、33のY方向位置は、新設開口60のY方向マイナス側の端面62、Y方向プラス側の端面63のY方向位置にあり、図3に示すように、既設開口50のY方向プラス側の端面52からのY方向の水平距離がそれぞれL1、L2の位置となる。ここで、既設開口50のY方向プラス側の端面52は、中心線57が通る面であり、レーザ照射器12のレーザ光の放射口12aの位置は、中心線57からY方向プラス側に距離Dだけ離れている。従って、中心線57が位置する垂直仮想面39、つまり、既設開口50の両側端58、59の中央の中心線レーザ光31を含む垂直仮想面39の面内におけるレーザ光の放射口12aから横線レーザ光32に向かう方向と天井面41に対して垂直方向とのなす角度θ1は、下記の式3で計算される。
θ1=tan-1((L1-D)/H) --- (式3)
【0039】
また、同様に、垂直仮想面39の面内におけるレーザ光の放射口12aから横線レーザ光33に向かう方向と天井面41に対して垂直方向とのなす角度θ2は、下記の式4で計算される。
θ2=tan-1((L2-D)/H) --- (式4)
式3、式4において、距離L1、L2、Dは既知の値である。
【0040】
式3、式4に先の式1、式2を代入すると、ロープ20の巻き掛け角度に基づいて、図3に示すレーザ光の放射口12aから横線レーザ光32、33に向かう方向と天井面41に対して垂直方向とのなす角度θ1、θ2を算出する式5、式6は以下のようになる。
θ1=tan-1((L1-D)/(L0/2*cos(α)+h2)) - (式5)
θ2=tan-1((L2-D)/(L0/2*cos(α)+h2)) - (式6)
【0041】
そこで、レーザ照射装置10の制御部16は、先に説明した巻き掛け角度検出手段でロープ20の巻き掛け角度2αを検出し、検出した巻き掛け角度2αに基づいて、式5、式6によって角度θ1、θ2を算出する。そして、制御部16は、駆動機構15によって垂直仮想面39の面内におけるレーザ光の放射口12aから横線レーザ光32、33に向かう方向と天井面41に対して垂直方向とのなす角度をθ1、或いはθ2に調整する。これにより、レーザ照射器12から中心線レーザ光31に直交する方向に延びる横線レーザ光32、33が天井面41に照射される。
【0042】
これにより、天井墨出し用レーザ装置100は、既設開口50のY方向プラス側の端面52を基準としてY方向にL1、L2だけ離れた位置の天井面41に線状の横線レーザ光32、33を照射することができる。
【0043】
以上説明したように、天井墨出し用レーザ装置100は、既設開口50のY方向の中心線56に沿って中心線レーザ光31を天井面41に照射すると共に、既設開口50のY方向プラス側の端面52を基準としてY方向にL1、L2だけ離れた位置に横線レーザ光32、33を照射する。中心線レーザ光31は、新設開口60の中心線61の位置であり、横線レーザ光32、33は、それぞれ新設開口60のY方向マイナス側の端面62、Y方向プラス側の端面63の位置である。
【0044】
そこで、天井面41に新設開口60の位置を墨出しする際には、図4に示すような墨出し治具70を用いて天井面41に新設開口60の開口位置をマークする。
【0045】
図4に示す墨出し治具70は、新設開口60と外形寸法が同一の四角枠状の本体71と、本体71の上に取付けられた取手76と、本体71の2つの対向する端面に取付けられたピン77とで構成されている。ピン77の幅方向の中心にはマーク78が付されている。
【0046】
新設開口60の開口位置をマーキングする際には、ピン77のマーク78を中心線レーザ光31の方向にセットし、本体71の一方の端面72を横線レーザ光32の位置に合わせ、対向する他方の端面73を横線レーザ光33の位置に合わせる。そして、4つの端面72から75に沿って鉛筆等のマーキング手段を移動させて天井面41に新設開口60の墨出しを行う。
【0047】
以上説明した実施形態の天井墨出し用レーザ装置100は、天井パネル40の既設開口50の両側端58、59に両端21、22が取付けられたロープ20によって天井パネル40からレーザ照射装置10を吊り下げるので、重力によりレーザ照射装置10を既設開口50の中心線56、57上に位置させ、既設開口50を基準にした線状の中心線レーザ光31、横線レーザ光32、33を天井面41に照射することができる。
【0048】
また、天井墨出し用レーザ装置100は、レーザ照射装置10を床面に配置することなく天井面41に中心線レーザ光31と横線レーザ光32、33を照射するので、床面に机や椅子等の機器が置かれている状態で空調装置の改修工事を行う場合でも、容易に天井面41に新設開口60の墨出しを行うことができる。
【0049】
以上の説明では、既設開口50の両側端58、59にロープ20の両端21、22を取付けてレーザ照射装置10を吊り下げることとして説明したが、これに限らない。新設開口60の位置に対する基準位置とすることができるものであれば、既設開口50に限らず、天井パネル40に取れつけられている空調機器、照明機器の両側端にロープ20の両端21、22を取付けてレーザ照射装置10を吊り下げてもよい。
【0050】
以上、天井墨出し用レーザ装置100の構成と動作について説明したが、ロープ20によりレーザ照射装置10を天井パネル40から吊り下げて、天井面41に線状のレーザを照射させて新設開口60の墨出しを行う工程を手動で行ってもよい。この場合、各墨出しを行う手順は、図5に示すフローチャートの様になる。
【0051】
最初に、図5のステップS101に示すように、ロープ20と、ロープ20が巻き掛けられるプーリ13と線状にレーザ光を照射するレーザ照射器12とを備えるレーザ照射装置10とを準備する(準備工程)。
【0052】
次に図5のステップS102に示すように、天井パネル40の既設開口50の両側端58、59にロープ20の両端21、22を取付ける(ロープ取付け工程)。
【0053】
その次に、図5のステップS103に示すように、レーザ照射装置10のプーリ13にロープ20の中央部23を巻き掛けてレーザ照射装置10を天井パネル40から吊り下げる(吊り下げ工程)。
【0054】
そして、図5のステップS104に示すように、天井パネル40の既設開口50を基準にしてレーザ照射器12から天井面41に線状のレーザ光を照射する(レーザ照射工程)。レーザ照射工程においては、天井パネル40の既設開口50の両側端58、59の中央を通り、両側端58、59を結ぶ仮想線52aに対して直交方向に延びる中心線レーザ光31と、天井パネル40の既設開口50の両側端58、59を結ぶ仮想線52aに平行で中心線レーザ光31と交差する横線レーザ光32、33をレーザ照射器12から天井面に照射するようにしてもよい。
【0055】
そして、図5のステップS105に示すように、天井面41に照射された中心線レーザ光31、横線レーザ光32、33に図4を参照して説明した墨出し治具70を合わせて天井面41に新設開口60の墨出しを行う。
【0056】
このように、手動で天井面41に新設開口60の墨出しを行う場合でも、レーザ照射装置10を床面に配置することなく天井面41に中心線レーザ光31と横線レーザ光32、33を照射できるので、床面に机や椅子等の機器が置かれている状態で空調装置の改修工事を行う場合でも、容易に天井面41に新設開口60の墨出しを行うことができる。
【符号の説明】
【0057】
10 レーザ照射装置、11 ケーシング、12 レーザ照射器、12a 放射口、13 プーリ、13a 回転軸、14 プーリ駆動部、15 駆動機構、16 制御部、19 重心位置、20 ロープ、21 一端、22 他端、23 中央部、31 中心線レーザ光、32、33 横線レーザ光、39 垂直仮想面、40 天井パネル、41 天井面、50 既設開口、51、52、54、55、62、63、72~75 端面、52a 仮想線、56、57、61 中心線、58、59 側端、60 新設開口、70 墨出し用治具、71 本体、76 取手、77 ピン、78 マーク、100 墨出し用レーザ装置。
図1
図2
図3
図4
図5