(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】手動式注入装置
(51)【国際特許分類】
A61M 5/315 20060101AFI20240209BHJP
【FI】
A61M5/315 500
(21)【出願番号】P 2020521558
(86)(22)【出願日】2018-10-16
(86)【国際出願番号】 EP2018078287
(87)【国際公開番号】W WO2019076921
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2021-09-21
(32)【優先日】2017-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519094341
【氏名又は名称】エディックス エスエー
【氏名又は名称原語表記】EDIX SA
【住所又は居所原語表記】5, Boulevard de La Petrusse, L-2320 Luxembourg,Luxembourg
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【氏名又は名称】冨田 雅己
(74)【代理人】
【識別番号】100213849
【氏名又は名称】澄川 広司
(72)【発明者】
【氏名】シェリフ-シェイク,ローランド
(72)【発明者】
【氏名】ブルゴア,タバサ
(72)【発明者】
【氏名】パレタ ベルトラン,ルイス
(72)【発明者】
【氏名】ラコンブ,フレデリク
(72)【発明者】
【氏名】ラシャン,ローレンス
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/073174(WO,A1)
【文献】特表2009-502273(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0152822(US,A1)
【文献】特表2012-500679(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/315
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注入物を含むリザーバ(5)を囲む円筒体(3)と、送出量を制御する手段とを備える注入装置であって、前記リザーバは、一方の端で、カニューレ(7a)を有する注入ニードル(7)により開口し、他方の端で、制御部材(13、13'、53)を有するプラジャロッド(11、51)の制御下に前記リザーバ内を並進移動可能に取り付けられたプランジャ(9)により閉口し、前記制御部材は前記プ
ラジャロッドの並進移動を制御し、前記送出量を制御する手段が、円筒体(3)のハンドグリップ領域の外側の領域に位置すること、及び前記プラジャロッド(11)が、調整ホイール(15)により螺合されるネジ部(11a)を備え、前記円筒体(3)が、2つの端部ストッパ、すなわち、遠位ストッパ(17a)及び近位ストッパ(17b)を備え、該両ストッパ間に調整ホイール(15)が位置し得ることを特徴とする注入装置。
【請求項2】
調整ホイール(15)が、周縁領域に、円筒体(3)の近位端側から視認できる目盛(18)を備え、円筒体が少なくとも1つの指標(20)を備え、該指標は目盛(18)と協働して、調整ホイール(15)の回転角、したがってネジ部(11a)に関する長手方向の変位を決定することができることを特徴とする請求項1に記載の注入装置。
【請求項3】
目盛(18)を備える調整ホイール(15)の領域が、少なくとも1つの領域において、円筒体(3)から側方へ突出していることを特徴とする請求項2に記載の注入装置。
【請求項4】
円筒体(3)の近位部が、調整ホイール(15)を少なくとも部分的に覆い、少なくとも1つの透明領域を備え、該透明領域を通じて目盛(18)の少なくとも1つを視認できることを特徴とする請求項2に記載の注入装置。
【請求項5】
円筒体(3)の近位部が、円筒状ハウジング(32)、特に一方の端で開口する円筒状ハウジングを構成し、該円筒状ハウジングにはプラジャロッド(11)のネジ部(11a)が貫入し、調整ホイール(15')が、ネジ部(11a)に対するねじ込み又はねじ戻しにより、近位ストッパ(17b)から遠位ストッパ(17a)まで移動可能であり、前記両ストッパが円筒状ハウジング(32)の2つの端壁でそれぞれ構成されていることを特徴とする請求項1に記載の注入装置。
【請求項6】
調整ホイール(15')の端(20')が指標を構成し、目盛(18)がハウジング(32)の胴体部に設けられていることを特徴とする請求項5に記載の注入装置。
【請求項7】
リザーバ(5)が、標準の注入カートリッジ又はシリンジから構成されることを特徴とする
請求項1~6のいずれか1項に記載の注入装置。
【請求項8】
プラジャロッド(11)が、リザーバ(5)の内壁と摩擦する摩擦要素、例えば特にO-リング(22)を備えることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の注入装置。
【請求項9】
円筒体(3)の遠位部が延長要素(28)を備え、注入ニードル(7)のカニューレ(7a)が、該延長要素を横断し、該延長要素の遠位部を超えて、該カニューレの所望する挿入長に等しい長さ(l)伸びていることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の注入装置。
【請求項10】
延長要素(28)の遠位部がテーパ部(30)を有することを特徴とする請求項9に記載の注入装置。
【請求項11】
注入物を含むリザーバ(5)を囲む円筒体(3)と、送出量を制御する手段とを備える注入装置であって、前記リザーバは、一方の端で、カニューレ(7a)を有する注入ニードル(7)により開口し、他方の端で、制御部材(13、13'、53)を有するプラジャロッド(11、51)の制御下に前記リザーバ内を並進移動可能に取り付けられたプランジャ(9)により閉口し、前記制御部材は前記プ
ラジャロッドの並進移動を制御し、前記送出量を制御する手段が、円筒体(3)のハンドグリップ領域の外側の領域に位置すること、及び前記プ
ラジャロッドが、前記円筒体(3)と一体化したナット(14)と係合する少なくとも1つのネジ部(11a)を備え、制御部材(13')が、円筒体の遠位端に向かって伸びて該円筒体を一部覆うことができるベル形状であることを特徴とする注入装置。
【請求項12】
円筒体(3)の遠位部が、注入ニードル(7)を受容可能である内部空洞を有する取外し可能なキャップ(34)を備えることを特徴とする請求項11に記載の注入装置。
【請求項13】
キャップ(34)の内部空洞が、ニードル(7)の端に接して該端を閉鎖できる挿入体(35)を備
えることを特徴とする請求項12に記載の注入装置。
【請求項14】
挿入体がゴム又はブチルから作製されていることを特徴とする請求項13に記載の注入装置。
【請求項15】
注入物を含むリザーバ(5)を囲む円筒体(3)と、送出量を制御する手段とを備える注入装置であって、前記リザーバは、一方の端で、カニューレ(7a)を有する注入ニードル(7)により開口し、他方の端で、制御部材(13、13'、53)を有するプラジャロッド(11、51)の制御下に前記リザーバ内を並進移動可能に取り付けられたプランジャ(9)により閉口し、前記制御部材は前記プ
ラジャロッドの並進移動を制御し、前記送出量を制御する手段が、円筒体(3)のハンドグリップ領域の外側の領域に位置すること、前記円筒体(3)が、リザーバ(5)を保持する手段(47、49)であって、取り外し可能であってもよい手段を備え、前記円筒体(3)の長さは、カニューレ(7a)が、所望する挿入長に等しい長さ(l、l')で突出できる長さであること、及び前記プラジャロッド(51)が、前記円筒体(3)と一体化したナット(14)と係合する少なくとも1つのネジ部を備え、前記制御部材(53)が、前記円筒体の遠位端に向かって伸びて該円筒体を一部覆うことができるベル形状であることを特徴とする注入装置。
【請求項16】
注入物を含むリザーバ(5)を囲む円筒体(3)と、送出量を制御する手段とを備える注入装置であって、前記リザーバは、一方の端で、カニューレ(7a)を有する注入ニードル(7)によ り開口し、他方の端で、制御部材(13、13'、53)を有するプラジャロッド(11、51)の制御下に前記リザーバ内を並進移動可能に取り付けられたプランジャ(9)により閉口し、前記制御部材は前記プ
ラジャロッドの並進移動を制御し、前記送出量を制御する手段が、前記円筒体(3)のハンドグリップ領域の外側の領域に位置すること、及び、リザーバ(5)、具体的にはカートリッジ又はシリンジと、その遠位端に注入ニードルとを備え、リザーバ(5)のプランジャ(9)が、制御ヘッド(88,90)の操作に応じて前記プラジャロッド(11)によって動かされ、プラジャロッド(11)の近位端が、圧力プランジャ制御ヘッド(88)及び回転プランジャ制御ヘッド(90)と逐次に協働可能である手段を取り外し可能に備えることを特徴とする注入装置。
【請求項17】
プラジャロッド(11)が円形断面を有する請求項16に記載の注入装置であって、リザーバ(5)の近位部に固定可能であるナット(82)を備え、該ナットのネジ穴の直径は、プラジャロッドの直径より大きく、リザーバ(5)の内径より小さいことを特徴とする注入装置。
【請求項18】
圧力プランジャ制御ヘッド(88)が円筒状要素(89)により構成され、該円筒状要素は、リザーバ(5)内に収容可能であるように、その直径がナット(82)のネジ穴の直径より小さく、プラジャロッド(11)の近位端(86)に固定可能であることを特徴とする請求項17に記載の注入装置。
【請求項19】
回転プランジャ制御ヘッド(90)が、ナット(82)のネジ穴内にねじ込み可能なネジ(98)を備え、プラジャロッド(11)の近位部に位置し、ネジ(98)がねじ込まれると、プラジャロッドをリザーバ(5)の遠位端に向かって押すことができることを特徴とする請求項17に記載
の注入装置。
【請求項20】
ネジ(98)がキャップ(96)の底部に固定されていることを特徴とする請求項19に記載の注入装置。
【請求項21】
流路が貫通したカニューレ(7a)を有する注入ニードル(7)を備える請求項1~20のいずれか1項に記載の注入装置であって、カニューレ(7a)は基部(36)に固定され、該基部は、円板(36a)及びこれに隣接した円筒状ボス(36b)を同軸(xx')で備え、該円筒状ボスは、ニードルの流路と連通する空洞(36c)が設けられた中空であり、該空洞はその近位部から遠位部へ先細の導路を構成することを特徴とする請求項1~20のいずれか1項に記載の注入装置。
【請求項22】
請求項21に規定されるニードルの基部(36)の円板(36a)が、連結手段、具体的にはクリンピング手段(39)により、前記リザーバ(5)、具体的にはカートリッジの遠位面に設けられていることを特徴とする請求項21に記載の注入装置。
【請求項23】
基部(36)とリザーバ(5)の遠位面との連結が非密封様式であることを特徴とする請求項22に記載の注入装置。
【請求項24】
流路が貫通したカニューレ(7a)を有する注入ニードル(7)を備える請求項1~23のいずれか1項に記載の注入装置であって、カニューレ(7a)は、該カニューレの流路と一線で配置される流路(7")を有する管状要素により構成される円筒状基部(37)と一体化し、流路(7")の内径(d2)はカニューレ(7a)の内径(d1)より大きいことを特徴とする注入装置。
【請求項25】
基部(37)の外径がカニューレ(7a)の外径より大きいことを特徴とする請求項24に記載の注入装置。
【請求項26】
リザーバ(5)がセプタム(6)により閉口し、前記ニードルの後方部材(37)の長さ(m)が該セプタムの厚さより僅かに長いことを特徴とする請求項24又は25に記載の注入装置。
【請求項27】
ハンドグリップ領域が注入装置の遠位領域(16)に位置することを特徴とする請求項1~26のいずれか1項に記載の注入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に使用の容易性及び精度の両方の向上を目的とする手動式注入装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
以下では、手動式注入装置は、医学的処置、例えば皮内、皮下、筋肉内、静脈内、局所に、経皮的に、又はその他の公知の経路により送達されるものの施術のためのシリンジ又は等価物のような注入装置であると理解されるものとする。
多くの処置は、注入による物の投与を必要とすることが知られている。これらは、主に、治療的処置又は予防的処置であるが、或る種の審美的、美容的、皮膚科学的、歯科的又は整形外科的処置などの別の適応も含む。ヒトでの使用の他に、注入は、獣医学的処置の分野で適用が増えている。
一般に、医療分野は注入可能な処置に対する必要性の増大傾向に直面している。同様に、近い将来、ユーザの快適性を向上させ、(特に、高粘度、高濃度又は注入前若しくは注入の間の安定性の問題に起因して、複雑性が増し投与が容易でなくなった製品の注入によりたらされる)新たな問題に対応するため、このような注入を行うための革新的解決策に対する需要の増大が予測される。
【0003】
更に、ますます多くの処置が継続され、有利なことには、多くのものが病院外で、患者の自宅でさえも行われており、又はそのようになる可能性があることが知られている。したがって、処置コンプライアンスを確保するためには、患者の3体験の向上が重要である。なぜならば、とりわけ、相当な割合の患者は、注射針への恐怖、注射痛又は毎日の注射のための健康な部位の不足などの理由から、処方を完全には順守していないことが、医療専門家に知られているからである。
注射の分野で可能な改善案及びその改善が役立つ特定領域を見出すために患者の期待値を分析する数多くの研究が実施された。
【0004】
これらの研究から基本的ニーズは下記のように要約される:
- 高粘度又は糊状の製品についてでさえ、より強い力で注入でき、注入力及び注入速度をより良好に制御できる手動注射、したがって、シリンジ型又は他の注入装置に用いられる型の通常の手動注入に要求されるものより細い針を使用できること
- 特に、小さすぎるか、又はシリンジ型装置のような現行の手動式注入装置では制御することがより困難である注入量及び速度について、手動式注入装置の正確性及び制御性の向上
- より長い挿入時間及び/又はシリンジ型の手動注入とは異なる注入機構を用いた場合でさえ、注射部位をより良好に特定でき、挿入した針が安定であること
- これらのことを、手動式注入装置(例えばシリンジ型のもの)に用いられる従来の容器及び通常の製造プロセスで達成できること。
【0005】
これらの基本的ニーズを満たすため、操作性の向上、針サイズの減少、投与速度の制御又は注入力の制御を目指した多くの装置が提案されているが、これらの一部は注入ポンプ、自動インジェクタ、ペン-インジェクタのようなシリンジの代替品である。
可動プランジャにより閉鎖されたリザーバからの注入を実行又は制御するために、米国特許第2 283 915号の記載のような回転式注入機構を用いる手段が広く試みられ、試験されていることも知られている。
加えて、ネジ付きプラジャロッドを使用する回転式注入機構が米国特許第4 189 065号において提案されており、シリンジと一体化したナットに、ネジ付きプラジャロッドの回転させて押し込むと、プランジャがシリンジ内で長手方向に移動する。
【0006】
医師及び看護師は、注射を並進により行うが、一般の人々にとって、この行為は、回転と比べて一般的でなく、自然でもなく、単純でもないことに留意すべきである。実際、並進の注射は、日常生活では決して行わない変則的な行為である。この行為には3本の指の正確な位置決めが必要となる。この並進は、皮膚に圧力がかかっている状況下での親指の動きによって、患者に対して、身体に何かが導入されているという印象を与えることがある。このような固定支持体無しに行われる行為は、挿入されたニードルの動きをもたらす安定性の問題を引き起こし、
投与の精度を妨げる。この行為は、次々に受ける(変動していると知覚され得る)圧力に敏感であるため、開始から終了まで一定の速度での実行を困難にする。最後に、このような不安定な保持位置では、注射中に、感じた痛みに応じて注射を休止することは困難である。
回転式注射は、正確な位置決めをすることなく、種々の指により又は手でさえ行うことができる、日常生活で常用される行為である。この回転は、身体に何かが導入される印象を防ぎ、皮膚にかかる圧力を大幅に低下させる。この行為は、装置及びニードルを安定させる固定支持体を用いて行われ、圧力に敏感でなく、一定速度で自然に行われる。この安定的な保持位置においては、知覚に応じて注射を休止することが容易である。
【0007】
注射(特に、非専門家が行い、粘性品又は糊状品が関与する注射)に関連する別の制約は、いつ全量を注射し終わったのかを知ることである。この不確かさのため、注射の終時に強く押してしまい、その圧力及び組織中でのニードルの動きにより痛みが引き起こされる傾向がある。
並進の注射では、注射点に非常に近いシリンジリザーバ下部のプランジャは、見ることが困難である一方、本発明の装置を用いて実施されるような回転式注射によれば、圧力で強引に押すことはできず、注射の終わりを知らせる回転の正確で目視できる停止点を設けることが可能である。加えて、目盛が、皮膚に接している基部より遥かに読み易い装置本体の高位に配置される。
並進で動作する圧力オートインジェクタの場合、装置は、皮膚に、患者(特に、子供や高齢者)が容認して我慢することが困難である強い圧力を加える。患者にとって、この圧力は、本当に突かれたか又は打たれたような感じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、自動インジェクタ及びペン-インジェクタの有用な特性を保持する一方、簡便、小型、軽量及び頑丈であり、したがって従来のシリンジ型注入装置と同様に容易に携帯可能である新たな注入装置を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の新たな注入装置は、例えば局所的メソセラピー様又は(獣医学における)乳房内投与などの注入以外の投与の実行にも用い得る。
したがって、本発明は、注入すべき物を含むリザーバを囲む円筒体と、注入物の送出量を制御する手段とを備える注入装置であって、前記リザーバは、一方の端で、注入ニードル(7)により開口し、他方の端で、制御部材を備えるプラジャロッドの制御下に前記リザーバ内を並進移動可能に取り付けられたプランジャにより閉口し、前記制御手段が、円筒体のハンドグリップ領域の外側の領域に配置されていることを特徴とする注入装置に関する。前記ハンドグリップ領域は、好ましくは、円筒体の遠位領域に位置する
【0010】
プラジャロッドは、調整ホイールが螺合されるネジ部を備えていてもよく、円筒体は、2つの端部ストッパ、すなわち、遠位ストッパ及び近位ストッパを備えていてもよく、調整ホイールは該両ストッパ間に位置することができる。
この調整ホイールは、周縁領域に、円筒体の近位端から視認できる目盛を備えていてもよく、円筒体は少なくとも1つの指標を備えていてもよく、指標は目盛と協働して、調整ホイールの回転角、従ってネジ部に関する長手方向の変位の決定を可能としてもよい。目盛を備える調整ホイールの領域は、少なくとも1つの領域において、円筒体から側方へ突出していてもよい。
加えて、円筒体の近位部は、調整ホイールを少なくとも部分的に覆っていてもよく、少なくとも1つの透明領域を備えていてもよく、透明領域を通じて目盛の少なくとも1つを視認できてもよい。
【0011】
円筒体の近位部は、円筒状ハウジング、特に一方の端で開口する円筒状ハウジングを構成していてもよく、円筒状ハウジングにはプラジャロッドのネジ部が貫入し、調整ホイールが、ネジ部に対するねじ込み又はねじ戻しにより、近位ストッパから遠位ストッパまで移動可能であり、両ストッパが円筒状ハウジングの2つの端壁でそれぞれ構成されていてもよい。
最後に、調整ホイールの端は指標を構成していてもよく、指標が円筒体上の目盛と協働して、調整ホイールの回転角、したがってネジ部に関する長手方向の変位の決定を可能としてもよい。
本発明の装置のリザーバは、標準の単室又は二室型のカートリッジ又はシリンジにより構成されてもよく、カートリッジ又はシリンジのプラジャロッドは、回転防止要素(例えば、長手方向の溝)、円筒体又はハウジングの相補部に接触してネジ部に平坦領域、又はリザーバの内壁と摩擦する摩擦要素(例えば、特に、O-リング)を備えていてもよい。
【0012】
一実施態様において、注入装置の円筒体の遠位部は、注入ニードルのカニューレが横断する(テーパ部で終わってもよい)延長要素を備えていてもよく、カニューレは、延長要素の遠位部を超えて、該カニューレの所望の挿入可能な長さに等しい長さ伸びていてもよい。
本発明によれば、注入装置のプラジャロッドは、円筒体と一体化したナットと係合する少なくとも1つのネジ部を備えていてもよく、制御部材は、円筒体の遠位端に向かって伸びるベル(鐘)形状であり、円筒体の一部を覆うことができる。
【0013】
本発明はまた、基部に固定されたカニューレを備える注入ニードルに関し、この基部は、円板と、隣接する円筒状ボス(36b)とを同軸(xx')で備えることができ、円筒状ボスは、ニードルの流路と連通する空洞によって中空であり、空洞はその近位部から遠位部へ先細の導路を構成する。
1つの変形において、注入ニードルは円筒状基部に固定されたカニューレを備え、円筒状基部は、カニューレの流路と一列に配置される流路を備える管状要素により構成され、後者の流路の内径は、カニューレの内径より大きく、基部の外径はカニューレの外径より大きくてもよい。
一実施態様において、ニードル基部の円板は、連結手段、特にクリンピング手段により、単室又は二室型のリザーバ(特にカートリッジ)の遠位面に設けられる。特に有益には、基部とリザーバの遠位面との連結が非密封様式で確立され、その結果、注入ニードルが静脈に挿入されたとき、血圧により、空気が逃げ、血液がリザーバの遠位部に上昇する。
【0014】
本注入装置は、注入物を含むリザーバ(特に、単室又は二室型のカートリッジ又はシリンジにより構成されるリザーバ)を囲む円筒体を備えていてもよく、リザーバは、一方の端で注入ニードルにより開口し、他方の端で、制御部材を備えるプラジャロッドの制御下にリザーバ内を並進移動可能に取り付けられたプランジャにより閉口し、円筒体は、リザーバを保持する(場合により取り外し可能な)手段を備え、円筒体の長さは、カニューレが、所望する挿入長さに等しい長さで突出することを可能にする長さである。プラジャロッドは、円筒体と一体化したナットと係合す少なくとも1つのネジ部を備えていてもよく、制御部材は、円筒体の遠位端に向かって伸びるベル形状であり、円筒体の一部を覆うことができる。
【0015】
本発明はまた、注入物を単室又は二室型のリザーバ(特に、カートリッジ又はシリンジ)に充填する装置であって、リザーバのネックの内側への挿入に適した充填ノズルを備える注入物用の貯蔵容器を有する充填装置に関する。封止手段は、ネックとノズルの間に設けられ、リザーバのネックとノズルの間の環状溝に配置されたO-リングからなることができる。
【0016】
本発明はまた、プランジャを備え、遠位端にネックを有する単室又は二室型リザーバ(特に、カートリッジ又はシリンジ)に、治療用製品を充填する方法に関し、この方法は、
- リザーバの遠位端にプランジャを配置するステップ、
- 注入する製品を含む貯蔵容器のノズルを、リザーバのネックに導入するステップ、
- 注入物を貯蔵容器からリザーバに移動させるステップ、このとき、リザーバのプランジャは、注入物により押される
からなるステップを含む。
【0017】
本発明はまた、リザーバネック及びプランジャを備え、注入物を含む単室又は二室型のリザーバ(特に、カートリッジ又はシリンジ)に関し、注入物は、リザーバ内で、ネックとプランジャとの間に隙間なく拡がる。
本発明はまた、プランジャと遠位端に注入ニードルとを備える単室又は二室型のリザーバ(特に、カートリッジ又はシリンジ)に注入物を充填する装置であって、円筒形状の受容ハウジングを有し、更に、処置用製品を推進させる手段と停止手段とを備え、受容ハウジングは、各端で、縦長円筒状レセプタクル、すなわち、近位部に形成され、リザーバを受容することができるレセプタクルと、遠位部に形成され、セプタムにより塞がれた充填容器を受容することができるレセプタクルとを有し、停止手段は、ハウジング内でニードルがセプタムを穿孔して充填容器に貫入する位置にリザーバを不動化するために設けられる、装置に関する。好ましくは、受容ハウジングは、リザーバプランジャがレセプタクル内で正しい位置にあるとき、その位置が見えるようにする手段及びプランジャの変位を測定することができる手段を備える。
【0018】
本発明の注入装置は、制御ヘッドの作用下にプラジャロッドにより駆動されるプランジャと、その遠位端に注入ニードルを備えていてもよく、プラジャロッドの近位端は、一方で圧力プランジャ制御ヘッドと、他方で回転プランジャ制御ヘッドと逐次に協働することができる手段を取り外し可能に備えるていてもよい。好ましくは、プラジャロッドは円形断面であり、注入装置は、リザーバの近位部に固定可能であるナットを備え、ナットのネジ穴の直径は、プラジャロッドの直径より大きく、リザーバの内径より小さい。
この注入装置において、圧力プランジャ制御ヘッドは円筒状要素からなり、その直径はナットのネジ穴の直径より小さいので、円筒状要素はリザーバ内に収容されることができ、円筒状要素はプラジャロッドの近位端に固定可能である。
【0019】
本注入装置において、回転プランジャ制御ヘッドは、ナットのネジ穴内にねじ込み可能なネジを備え、プラジャロッドの近位部に位置し、ネジがねじ込まれたとき、プランジャロッドをリザーバの遠位端に向かって押すことができる。好ましくは、このネジは、キャップの底部と一体化されている。
本発明はまた、1セットの単室又は二室型リザーバ(特に、カートリッジ又はシリンジ)を充填及び包装する装置に関し、この装置は、複数のレザーバを垂直位に保持できる手段を備えた収容槽(receiving tub)と、リザーバを閉じるためのカバーを備え、更に
- リザーバに関して同じ側方位置にカバーを維持できる整列手段
- カバーを開放位置に押し返し可能な弾性手段
- リザーバへの収容に適したプランジャを各リザーバ上に保持する手段であって、収容槽のカバーの内面に備えられた手段
を備える。
【0020】
本発明はまた、複数のレザーバを垂直位に保持できる手段を備えた収容槽と、リザーバを閉じるためのカバーを備え、更に、下面に、リザーバと一直線に保持されるプランジャを備える装置内で、1セットの単室又は二室型リザーバ(特に、カートリッジ又はシリンジ)に注入物である製品を充填して該リザーバを包装する方法に関し、この方法は、
- 収容槽に含まれるリザーバに注入物を充填するステップ
- 製品の可能な処理を行うステップ
- 収容槽内を減圧するステップ
- 蓋を閉じることによりプランジャをリザーバ内に押し込むステップ
- 減圧を停止してリザーバ内にプランジャを維持するステップ
- 蓋を開放するステップ
からなるステップを含む。
下記にて、本発明の幾つかの実施態様を、添付図面を参照しながら、非限定的実施例により説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明の注入装置の第1の実施態様の縦断面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す注入装置の線AAでの断面図である。
【
図5】
図5は、
図1~4に示す注入装置を手で把持したときの透視図である。
【
図6】
図6は、
図1~5に示す注入装置の変形の縦断面図である。
【
図6a】
図6aは、
図6及び7に示す注入装置に実装された指標手段の概略図である。
【
図8】
図8は、本発明の注入装置の第2の実施態様の縦断面図である。
【
図8a】
図8aは、本発明の注入ニードルの実施態様を、拡大縦断面図である。
【
図10】
図10は、本発明の注入装置の変形の縦断面図である。
【
図11】
図11は、注入前の、回転式の注入制御部材を有する注入装置の縦断面図である。
【
図12】
図12は、注入後の、回転式の注入制御部材を有する注入装置の縦断面図である。
【
図13】
図13は、単室又は二室型のカートリッジ又はシリンジを充填する装置の部分断面図である。
【
図14】
図14は、単室又は二室型カートリッジ又はシリンジを充填する別の装置の縦断面図である。
【
図15】
図15は、単室又は二室型カートリッジ又はシリンジを充填する別の装置の上面図である。
【
図16】
図16a~16cは、2つの可能な注入モード、すなわち圧力及び回転による注入を行うことができるシリンジの近位端の部分図である。
【
図17】
図17は、一連の単室又は二室型カートリッジ又はシリンジをパッケージする装置の断面図である。
【
図20】
図20は、静止位置又は注入前位置で示す、本発明の注入装置の一実施態様の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1~5は、皮内投与又は皮下投与の実行を主目的にした、本発明の注入装置の第1の実施態様を示す。
シリンジと同様に具体化される注入装置1は管状体3を有し、この管状体の内部には、注入物を含むリザーバ5が配置され、管状体は、カニューレ7aを備えた注入ニードル7で終端する。公知のように、プランジャ9は、リザーバ5内に、プラジャロッド11の作用下にスライド可能に取り付けられており、プラジャロッドの外側端(本明細書において、近位端と呼ぶ)は、注入制御ヘッド13を備える。
プランジャ9とリザーバ5との良好な接触を確実にするため及び投与量の正確性を達成するため並びに例えば高粘度又は糊状品を注入するときに働く圧力に耐えるためには、例えば歯科カートリッジ又は或る種のペン-インジェクタに用いられる従来型のタイプの中実プランジャを本発明に従って使用することが有利である。
【0023】
プラジャロッド11はネジ部11aを備え、このネジ部に、調整ホイール15を構成する厚さeのナットが螺合される。このナットは、管状体(円筒体)3の2つのストッパ、すなわち遠位ストッパ17aと近位ストッパ17bの間で長手方向への変位可能である。2つのストッパは、後述するように、注入可能であることが望ましい最大量に依存する距離dで離間している。
本発明の具体的実施態様において、プラジャロッド11は、その外縁に、プラジャロッドの溝に配置されたO-リング22で構成される摩擦要素が設けられており、この摩擦要素が、リザーバ5の壁に当接する結果、注入中、装置の未使用時又は調整ホイール15の操作時にプラジャロッド11の回転を防止する摩擦力が生じる。
溝内に(図示されていない)開口部を設けることにより、O-リング22は、摩擦力を、密封障壁を形成することなく提供することができる。このようにして、プラジャロッド11は、その遠位端とプランジャとの間に空気を閉じ込めることなく、リザーバ5内にプランジャ9に接触するまで挿入することができる。
【0024】
図18及び19に示す本発明の別の実施態様において、プラジャロッド11は、長手方向に伸びる平坦領域12を備え、この平坦領域は、注入中の長手方向の変位の間にプラジャロッドが回転することを防止するために機能する。この目的のため、2つのストッパ17a及び17bの少なくとも一方が平面部を備え、この平面部に対して、プラジャロッド11の平坦領域12が接触する。このように、注入中、プラジャロッド11は回転できず、並進移動のみできる。
図3及び4に示すように、この例示的な実施態様において、調整ホイール15は、ホイール15におけるユーザのグリップを改善するための湾入部19を外縁に備えるディスク形状である。調整ホイール15の近位面はその外縁に目盛18を有し、この目盛は、外縁部にわたって(特に均等に)分布し、円筒体3の近位ストッパ17bに形成された指標20と同時に用いることが意図される。例示的な実施態様の変形において、近位ストッパ17bは、透明材料で作製してもよく、その結果、ユーザが、この透明材料を通して目盛18を読み取ることができる。
【0025】
この条件下、ユーザが「プライミング」(すなわち、注入装置のリザーバ5に含まれる空気を抜く、注入前の準備操作)を行った後、ホイール15は、遠位ストッパ17aと接触している。次に、ユーザがこのホイールを回転させて、選択した目盛に合わせて位置させると、
図1に示すように、ホイールは、所望量の注入物の押し出しに必要な距離を後退する。
例として、ネジ部11aのピッチがpに等しく、ホイール15がN個の目盛を備え、リザーバ5の直径がDmmである場合、ホイールを目盛n個分回転させたときの注入量は
(p×n)/N × π × D
2/4
であると理解される。
【0026】
このことから、ネジのピッチp = 0.2mm、目盛の数N = 20、リザーバの直径D = 8mmの場合、1目盛は0.5mm
3の注入量に相当する。
図18及び19に示すように、本発明の注入装置は、リセットリング16を備えることもできる。このリングにより、ユーザは、所望であれば、投与ごとに注入物の異なる投与量を異なって選択することができる。この目的のため、リセットリング16は、円筒体3に回転可能に装着され、投与量選択の開始点として働く指標マーカー21を有する。
実際、第1の投与量が選択されて投与されると、ユーザは、第2の投与量、第3の投与量などを選択するためのリセットを行う参照点を必要とする。各投与量は異なり得るので、調整ホイール15のゼロ点(指標15aで表される)は、各投与後に異なる位置となる。本発明によれば、新たな投与量を設定するため、ユーザは、リセットリング16の指標マーカー21を調整ホイール15の指標15aの前に位置させた後、指標マーカー21に関して、新たな所望の投与量に対応する角度でホイールを回転させれば十分である。
【0027】
本発明は、第一に、ユーザが、患者への注入量を事前に選択することができる結果、注入中に注入量の制御を心配する必要が無いという点で特に有益である。
加えて、従来技術の装置では注入が困難であった、極端に少ない量を特に正確に注入することが可能であることが判明した。また、微小量(例えば0.05mL未満)の注入は、患者に痛みを伴うものではないこと、そのため、例えば、反復注入が可能となることにも留意すべきである。
この微小投与量(数マイクロリットル)は、多くの治療分野、例えば小児科、獣医学(小動物)、皮膚科(にきび、疣その他の皮膚病に対する治療薬の皮内注射)、ワクチン又は特定のボツリヌス毒素の用途において、又は美容分野、「メソセラピー」タイプの用途において特に有用である。美容用途の場合、本装置は、1以上の極細ニードル(例えば直径0.1mm、長さ0.2mm)を備えていてもよいし、又はニードルを備えず、分注チップを備えることさえもあり得る。更に、本発明の本注入装置は、2本の指と親指の間に保持される(すなわち、横並びの指間に把持する)従来タイプのシリンジとしてではない、指と手掌による把持(digito-palmar grip)(すなわち、
図5に示すように、手で円筒体3を掴み、親指はプラジャロッド11のヘッド13に位置する把持)での使用が可能である。
【0028】
このようなハンドグリップにより、特に、制御された量での自己投与に関して簡便な使用が可能になる。このようなタイプのハンドグリップ領域により、例えばメソセラピーでの使用又は充填剤タイプの製品の適用において、注入部位を変えての制御量の反復注入を可能とする多回投与デザインが容易となる。
本出願人はまた、このハンドグリップ領域により、プランジャ9に対して、従来型の注入装置によって働く力より遥かに大きい注入力を、容易に痛み無く、投与量の高い正確性で、しかも従来の注入に伴う動きを経験することなく、働かせることができることを見出した。結果として、この把持により、同じ注入物に関して、従前に用いられたものより遥かに細いカニューレを有するニードルの使用が可能になる。
【0029】
実際、本発明は、今までは混同されていた2つの機能、すなわち、一方は把持機能、他方は注入機能の分離を可能にする。よって、本発明によれば、本注入装置の把持は、「手全体」、すなわち親指を除く4本の手指で行われるので、注入の全期間にわたって固定され、注入は親指で行われる。従来型の注入装置では、対照的に、人差し指と中指で確保され、親指で補助される把持は、自由に動く親指が注入装置を適所に保持する要素の1つを構成しているので、注入の間に変動する。
しかし、本出願人は、この機能分離がより大きな注入力の発揮を容易にし(この大きな注入力が、より高粘度の製品、例えば生体高分子充填剤(例えば、ヒアルロン酸、コラーゲン又はエラスチン、ポリ乳酸(PLA)でさえも)の注入を可能にする)、又は所与の製品の注入に用いられるニードルのサイズを縮小させ、他方で、注入中に患者皮膚表面に過剰な圧力が働かないことを見出した。
【0030】
上記のことから、ハンドグリップは、投与量の制御が、注入装置のハンドグリップ領域の外側、すなわちこの例では、注入装置の遠位領域で行われることによって、可能になると理解される。
本発明により可能とされるハンドグリップの有効性は、本発明の特定の実施態様において、注入深度を調節できる延長要素28(
図1、1a及び2に示すようなもの、これは、円筒体3の遠位端への(例えバネじ込み又はクリッピングによる)結合に適切である)を注入装置の遠位部に備えることで更に向上する。
この延長要素28は、先細りのテーパ部30で終端し、ペン-インジェクタ用の既存で公知の市販タイプのものである。このテーパ部を、ニードル7のカニューレ7aが横断する。この延長要素28は、ユーザが注入点を正確に狙える一方、ニードルカニューレの挿入を所望の深度に制御できるように縮小された長さ及び直径のものであり、直径は円筒体3の直径より遥かに小さい。このため、ユーザが、注入の間、テーパ部30の端を患者皮膚に接触させると、ニードル7のカニューレ7aが挿入される長さは、カニューレがテーパ部30から突出している距離lと等しくなる。
【0031】
挿入長さを調整するため、テーパ部30の長さf又はニードル7のカニューレの長さlのいずれかを変化させることが可能である。
このことから、本発明によれば、ユーザは、そのテーパ部30の長さfが異なる一連の延長要素28を使用して、所望の注入深さに応じて、カニューレ7aの挿入可能長さlを調整することができる。
例えば、美容用途では、挿入長さは、ニードルカニューレさえ真皮に貫入しないほど短く、ベベル部/先端面取り部(bevel)(例えば、厚さ0.10mm)のみが皮膚表面又は角質層に貫入するように延長要素の長さを調整することができる。この特別なケースでは、皮膚への美容用製品の浸透は、ニードルのカニューレの先端が作製する微小損傷により、例えばメソセラピー処置の間、向上するが、美容用製品は注入されず、むしろ微小損傷の表面に堆積する。
【0032】
本発明の別の実施態様において、ニードルは、一体構造を形成するように延長要素28に直接固定できる。これにより、ユーザは、異なるカニューレ長lの種々の延長要素を所持することができ、所望の注入深度に応じて選択することができる。
よって、この延長要素28は3つの機能を行うこと:すなわち、患者身体に挿入されるニードルカニューレ長を調節する機能、テーパ部30の遠位基部が患者身体に接触し続けて、注入操作中に装置を安定させる機能、及びニードル先端を所望位置に正確に配置させる注入点の精密な照準機能に留意すべきである。実際、本装置は、非常に微細なニードル(29G以上)を用いて使用することも意図されており、露出しているニードルが非常に細くてよく見えないため、注入部位に照準を合わせるのは困難である。
よって、本発明の注入装置により、正確に、例えば、皺において、定めた最大深度で再現可能に、皮内注射を行うことが可能となる。この長さは、他の対象物又は注入部位、例えば、ワクチン、又はペプチド及びタンパク質、糖尿病治療用製品、例えばインスリン又はGLP-1アナログ、より具体的には(皮内注射時に作用速度が速い)摂食前インスリンの皮内注射のための対象物又は注入部位にも適応できる。
【0033】
本発明の注入装置は、治療用製品の投与量が特に少量であるため容量も小さい小児科における投与に関して特に適切である。例えば、本発明の注入装置により、市販の製品を濃度の変更なく単純に用いて、少ない用量を非常に正確に投与することが可能である。このように、単に本発明の注入装置を用いることにより、既に承認された製品について、(時間及び費用がかかる)処方変更の全工程及び臨床試験の特定の段階を経ることなく、治療領域の変更が可能となる。
本発明の特別の実施態様において、ニードル7を完全に覆い、異なる形状及び寸法を採り得るテーパ部30は、製品、特に眼科分野において有用な製品の局所投与用装置を構成するために用いられる。なぜならば、このようなテーパ部により、投与中の安定性が良好となり、目の表面に触れることがないからである。
本発明の変形においては、
図1に示すように、リザーバは、1ml~3mlの標準容積を有する標準型カートリッジ、例えば歯科用カートリッジ又は即席再構成用二室カートリッジからなってもよく、その製造、充填、及びリングにより封止されるセプタム型閉鎖要素による閉鎖は、適正コストで既存の生産ラインにおいて実施できるという利点を有する。
【0034】
本発明は、多回投与タイプの注入装置、すなわちリザーバ又はカートリッジ(二室のものであっても)から、調整ホイール15の逐次位置決めによって、各処置の間に製品を再充填する必要なく、調整可能な量の複数回の注入を送達することができる注入装置の提供が可能である。この多回投与装置は、皮内注入の場合のような極少量の正確な注入に特に適切である。加えて、ニードルの小サイズ及び注入量(例えば0.05mL以下)に起因して、無痛注入が可能であり、よって同一の投与領域で複数部位に注入できる。このタイプの本発明の装置は、例えば、手掌又は足底の多汗症に対する製品、例えばボツリヌス毒素の投与(患者真皮に少用量の注入を多数回反復する必要がある)に特に適切である。本発明の装置は、脱毛症を患う患者の頭部皮膚への皮下注射にも使用でき、このタイプの毒素が効果的である皮内領域を標的する場合、従来の注入に比べて効率が改善する。
このような注入装置は、特にリザーバが(円筒体3内で密封される)標準タイプの単室又は二室カートリッジで構成されるとき、特に使い捨て装置の提供に役立つ。
【0035】
本発明の注入装置は、注入物を予め搭載していてもよい。本装置は、空であり、例えばプランジャ9がカートリッジネックに接触していてもよいし、使用時に、例えば(本発明の別の例示的な実施態様に対応する)シリンジを充填するための下記充填装置により、搭載されてもよい。よって、本装置は、初期形態から事前に再構成されるボツリヌス毒素と共に使用することができる。その後、充填装置の内容物は、装置内に、例えばシリンジにより移される。
この装置はまた、凍結乾燥品及びその再構成媒体を含む二室カートリッジを、本発明の注入装置内で直接再構成するためのバイパス領域に設けられる中間プランジャと共に用いてもよい。この実施態様において、プラジャロッド11は、再構成のための滑らかな遠位部と、続いて、投与のための近位ネジ部とを備える。回転の可能性を回避するため、プラジャロッドはまた、再構成を導く平坦領域を含んでいてもよい。
【0036】
次に、側方バイパス領域における第1の(遠位)プランジャの位置に対応してプランジャロッドの滑部の(例えば、鍵システムによる)ロッキング機構を提供することも可能である。ユーザは、再構成品を投与するためには、ロックキング機構を外して、第2の(近位)プランジャを第1のプランジャとの接触まで並進させなければならない。ロックキング機構を外さなければならないということは、ユーザにプランジャの動きを停止させるので、2つが接触した後に適切な水和の時間をもたらす。ロックキング機構の別の変形は、ネジが平坦領域を備えているとき通過する複数のストッパにより構成される:プランジャが動き始めるための第1のストッパ、及び、上記のように、再構成品の投与を進める前に遠位プランジャがバイパス領域を通過するための第2のストッパ。
【0037】
最後に、本装置は、レザーバ内に残る量より多い量を選択できないシステムを備えることができ、ネジ頭は、カートリッジが空になると、上部のハウジングより下で留まり、頂部(crown)と接触する。このとき、頂部を回転させて投与量を選択することができず、本装置は空のときロックされる。ハウジングに配置されたピン又は止め具の形態により、頂部の回転を正確に停止させることも可能である。これにより、調整ホイール15が、リザーバ内に含まれる投与可能な製品の最大量に対応するプランジャの特定の長さを超えて回転するのを防止する。このピンは、頂部上面の溝の端まで移動できる。これが最大値を固定する。次に、選択量が投与され頂部が再度下がったときだけ、解放される。
図6及び
図7は、より大量の注入又は多回注入に特に適切である本発明のこの実施態様の変形を示す。
【0038】
本装置において、円筒体3の近位部は、円筒状ハウジングを構成し、例えば、円筒状ハウジングは、一側で開口しており、プラジャロッド11のネジ部11aが円筒状ハウジングに貫入している。この変形において、調整ホイール15'は、
図1~5に示す例と同様に、ディスク形状を有し、調整ホイールは、ネジ部11aに対するねじ込み又はねじ戻しにより、近位ストッパ17aから遠位ストッパ17bまで移動可能であり、両ストッパはハウジング32の2つの端壁でそれぞれ構成され得る。
指標は、調整ホイール15'の端20'により構成され、目盛18はハウジング32の胴体部にある。
加えて、遠位端は、円筒体3にスナップフィットする円筒リングにより構成される延長要素28'が設けられており、その長さgは、ニードル7のカニューレ7aが所望の挿入長に等しい長さlで突出する長さである。
図6aに概説するように、図中で右から左へホイール15'を位置1、2及び3に配置することにより、位置1でV1の量、位置2でV3-V1の量、位置3でV6-V3の量の注入を行うことができると理解される。
【0039】
本注入装置は、患者身体の特定領域に行うべき正確な投与量の注入を予め設定でき、したがって皮内又は皮下注射を容易とするので、経験の浅いユーザ若しくは器用でないユーザでさえ、又は自己注射として患者自身が皮内又は皮下注射を行うことができる。
図8~9は、本発明の注入装置の別の実施態様を示す。この実施態様は、基本的には、管状体3を有し、その内側にリザーバ5が収容され、リザーバ内に上記タイプのプランジャ9が、ネジにより構成されるプラジャロッド11aの作用により長手方向に移動可能であるように取り付けられている。プラジャロッド11aは、遠位端で、プランジャ9に固定され、円筒体3と一体化したナット14を通って伸びて、近位端で、ベル状ヘッド13'でもって終端する。ベル状ヘッドは、プラジャロッド11a及び円筒体3の一部を覆う。
この条件で、ヘッド13'の回転により、リザーバ5内のプランジャ9の長手方向の変位及び注入ニードル7による所与の量の治療用製品の押出しが制御されると理解される。
【0040】
図9に示すように、注入量は、円筒体3に配置された目盛18'により制御され、指標は、この場合、ヘッド13'の遠位縁13'aにより構成され得る。この実施態様は、円筒体3の後方又は近位部での読み取りを可能とする(円筒体3の前方又は遠位部は、下記で「遠位保持領域と呼ぶ)領域16で、ハンドグリップに割り当てられている)点で、特に有益である。
当然のことながら、本発明によれば、ユーザが手で円筒体3を把持する領域、すなわち、遠位保持領域16の外側に位置する限り、他の任意の測定システムを用いてよい。このような測定システムは、円筒体3及びヘッド13'に配置された細長い指標により構成され、ヘッド13'は、与えられる各回転がネジ11'と一致する。
この例示的な実施態様において、及び、
図8、8a及び8bに示すように、注入ニードル7は、カニューレ7aが(例えば、接着、プレスフィット、溶接(例えば電子ビーム溶接)により)取り付けられている基部36を備える。この基部36は、先ず、(特に、標準型カートリッジにより構成される)リザーバを通常閉鎖するセプタムの形状及び寸法を有するカラー(フランジ)により構成される。このカラーの近位面は、ボス36bとして、カートリッジのネック5aの内側に伸びる。ボスは、
図8、8a及び8bに示すように、近位側から遠位側へ先細りである切形円錐形状の空洞36cを有する。
【0041】
ボス36bは、カートリッジのネック5a内に収容され得る直径であり、基部36aは、従来のカートリッジにおけるセプタムのように、カートリッジのネック5aにクリンピング手段(例えば、リング39)により固定される。
この実施態様は、先行技術には見られない2つの機能を提供することが理解される。
第1に、カニューレ7aの近位端をカートリッジ5の排出ネック5aのレベルにほぼ合わせることにより、カニューレ7aの不要な長さを縮小させることができる。
第2に、空洞36cにより形成される先細デザインは、注入物の流れに好適である。
よって、この実施態様により生じる2つの機能は、協働して、注入操作の間に注入物にかかる圧力の低下を減少させる。このことにより、カニューレ7aの所与の内径について、注入物を注入するに必要な力が低減し、又は所与の注入力について、カニューレ7aの内径を減少させることができる。
当然のことながら、本発明によれば、同じ機能は、ガラス、プラスチックその他の材料で作製された標準型のカートリッジ以外のリザーバ、例えば、シリンジその他の従来型の容器でも実現し得、更に容量にかかわりなく実現し得る。
【0042】
本装置は、従来型の容器を使いつつ、多くの市販の装置と比べて遥かに高粘度の注入物、糊状のものでさえ注入可能である。このような高粘度品又は半固体品の注入は、例えばモノクローナル抗体を用いる腫瘍学において、高治療容量を必要とする特定の患者に対する投与量を減少させることができる。高粘度により、活性成分の濃度を高めることができ、例えば、皮下用溶液に対する溶解度を超えることができる。該溶液中では、例えば、投与中に付されるせん断応力が低下することにより、活性成分の分子は、濃度、安定性及び注入性に寄与する特定の配置を有し得る。よって、本装置は、特定の注入、例えば関節内若しくは硝子体内注入又は皺のための生体接着剤若しくは生体充填剤の注入を、より細いニードルを用いてより高い力及び正確性で容易にし、更に、より長い作用持続時間を有するより高い粘度の製品についてさえも容易にする。
本発明の注入装置は、患者の感覚(疼痛)に応じて投与速度を制御でき、投与の間に休止を入れることができる。注入の間、注入部位での高い安定性のため、挿入されたニードルの(寄生性の)動きが生じることなく、投与の継続を少しの間待つことができる。このことは、並進移動で操作する現行の注入装置では現時点で困難である。
【0043】
図8に示す操作モードにおいて、円筒体3は、該円筒体にフィットしニードル7を覆えるキャップ34が設けられている。このキャップは内部挿入体35を有し、この内部挿入体は具体的にはゴム又はブチル製であり、閉鎖位置では、ニードル7のカニューレ7aのベベルに接して位置し、カートリッジ5を封止する。
当然のことながら、キャップ34は、例えば、注入物が、圧力なしではカニューレを通って流れ出ない粘度である場合、ニードル7のカニューレ7aと接触するシステムを備えなくてもよい。このことにより、挿入前には如何なるものとも接触していない、レザーバ上に予め組み立てられたニードルを得ることができる。
人間工学に基づく設計の本キャップにより、本発明の装置に片手でキャップをして、テーブルに置くことができ、よってニードルによる刺し傷のリスクを回避することができる。また、子供が、本装置を使用可能な状態とすることはできない。
【0044】
本発明の別の実施態様において、リザーバは、標準カートリッジの直径より小さい直径を有する標準の予め充填されたシリンジ、例えば0.5mLのHypakタイプのシリンジであってもよく、標準のブチルストッパにより閉鎖される遠位ルアー端及び近位端に保持フィン備え得る。
これらは、粘性製品の投与により適切である標準カートリッジより小さい内径を有するが、0.5mLシリンジは、遠位端でルアーロックされず、又は粘性製品を注入する間の特定の保持方法が無いという欠点がある。
本発明の装置によれば、従来型であるが、ニードルの回転又は分離の危険の無いより抵抗性のルアーロック組立体を得ることができ、このデザインは粘性製品により適している。
【0045】
シリンジは、円筒体3内に挿入され、円筒体が注入中に皮膚と接触する。この特定の実施態様において、円筒体3の遠位部は、ルアーコーンを有さない雄型ルアーロックタイプチップにより終端し、0.5mLシリンジのルアーコーン及び特定のブチルストッパが遠位端を通って突出する。シリンジの近位端のガラスフィンは、円筒体3の近位部の両側に設けられた2つのノッチ内を、最大限或る特定の距離lまで移動でき、フィンは、使用前には、ノッチ内の低位ロック位置の遠位ストッパにある。この時点で、ニードルのルアーコーンは、円筒体3の遠位部を通して曝されており、ブチルストッパは取り外されて、標準ニードルと取り替えることができる。ルアーロックに回転ニードルを取り付けることにより、シリンジは、円筒体3内側でノッチ内を高位ロック位置まで並進移動するようになり、ここで、フィンは近位ストッパにある。円筒体3内でのフィンの移動は、ニードルの組立を確実する目視検査の機能を果たす。この新たな編成(arrangement)では、ガラスシリンジの脆いフィンは、注入中の全圧力(ガラスシリンジの遠位部にわたって、ルアーコーンの外面から、遠位領域のプラスチック製基部及びプラスチック製本体のルアーロック部を通って、円筒体3の近位端まで分布する)にもはや耐えられない。ルアーロック端周囲のこのより強靭な新たな組立体は、より高い注入力を働かせることができる。近位端が標準のフィンガーレストで終端する本体及びプラジャロッドを用いる従来版のシリンジにおいてこの新たなルアーロック組立体を用いることもできる。
【0046】
本発明の注入装置(約0.5mLシリンジ)の別の実施態様において、本装置は、上記のものと同じ機能を有してもよいが、この特別の場合では、本装置は、好ましくは、予め充填されたシリンジに、側方クリッピングにより接続される;このことにより、ニードル基部のコーンにクリップすることができる特定の部材を追加して、シリンジの正確な挿入及びそのルアー端への保持を制御し、確実にすることが可能となる。円筒体3のこのクリップされる部材は、上記機能(例えば、遠位端で皮膚に配置されること又は粘着保護システムを有し得ること)を有する本発明に従う他の要素を含んでもよい。
基部に側方でクリップするこの特定部材は、シリンジとニードルとの間の十分な接続を確実にして粘性製品の注入を可能とする。幾つかの応用において、本発明の装置はまた、近位端が、プランジャロッドに連結されたフィンガーレストにより延長されて、従来型シリンジとして用いられてもよい。
【0047】
また、約0.5mLの予め充填されたシリンジリザーバにより、カートリッジについ企図されるものに匹敵する固定型のニードルを提供することができる。この特別な場合では、金属製基部を有するニードルが、リザーバの近位開口部を通して挿入することができる。この基部は、リザーバの内径に適合する形状を有し、ルアー端部側で、シリンジ内のストッパとなる。次に、このニードルのカニューレは、端部の開口部から突出する;カニューレを適切なブチルストッパで封止して、投与する製品を注入まで保護することが可能である。この編成の主要な利点は、プラスチックと接触していない、所望の直径であり取付済みのニードルを有する装置を提供することである。
同様に、プラスチックコーンが取り付けられた標準ニードルを用いる上記バージョンと比較して、この装置はまた、デッドボリューム及び同じ製品の投与に必要な注入力を低下させることができる。この装置は、カニューレと注入物との間に、(その直径が、粘性製品が流れるには小さく、空気が通り血液を上昇させるには十分に大きい)開口部又は空気漏出部を提供することにより、脈管試験装置と組み合わせることも可能である。
【0048】
この固定ニードル装置は、本発明による上記ネジシステム及び従来のプラジャロッドを用いる標準型シリンジタイプ編成の両方に適応可能である。
図10は、円筒体3が標準型カートリッジ5を受容し、カートリッジ5が円筒体3に挿入されると、カートリッジのセプタム6が穿孔されるように意図されている注入装置を示す。この例において、及び、
図10aに示すように、ニードル7は、2つの部材、すなわち、従来タイプのものであり、注入物及び行われる操作に依存する内径d1を有する外側前方部材7a、及び、より大きい内径d2を有する内側後方部材37により構成される。ニードル7の前方部材7a及び後方部材37の2つの部材は、例えば接着又は溶接により、結合される。
図10及び10aで示すように、ニードルの前方部材7aは円筒体3の遠位壁を通過し、より大きい直径を有する後方部材37は、前記遠位壁の内面に接触する。後方部材37の自由端は、円筒体3内に配置されたとき、セプタム6に穿孔する能力を向上させるベベルが付される。
【0049】
より大きい直径を有する後方部材37の長さmは、可能な限り短く維持すべきであり、すなわち、円筒体3に受容されるカートリッジのセプタムの厚さより僅かに大きくして、カートリッジが適所に配置されたとき、セプタムを通過するだけの長さとするべきである。
したがって、より大きい直径の後方部材37は、幾つかの機能を発揮すると理解される。
第1に、内側部材37が一種の肩部を構成するので、ニードル7が、円筒体3の遠位部に関して良好に保持される。
第2に、内側導路の直径d2が前方部材7aの導路の直径d1より大きいので、注入中の注入物により受けた圧力降下は、後方部材37が外側部材と同じ直径を有するとき、従来技術による圧力降下より低下する。
【0050】
最後に、後方部材37を、セプタム6を通過するだけの長さとすることにより、注入中に注入物が受ける圧力降下は更に低下するので、必要な注入力が低下する。上記で説明したように、このことにより、ニードルの内径の縮小若しくは長さの縮小が可能となり、又は現在使用されているものより小さいニードル直径を通して、低流動性の製品を注入することが可能となる。
上記では、本発明の装置を、注入物を含むリザーバがカートリッジにより構成される例に関して説明したが、当然のことながら、本装置は、標準型又は非標準型のシリンジにより構成されるリザーバを用いても使用できる。
図11、11a及び12は、固定ニードルで終端する標準型シリンジ4が挿入され、固定ニードルのカニューレ7aがタイトキャップ34'(特にブチル製のもの)で保護された円筒体3を備える注入装置1を示す。このシリンジの近位端47は、ハウジング53内で、円筒体3の近位端に固定されているナット49により保持される。ナット49は、ネジ付きロッド51が螺合貫通し、ネジ付きロッドの遠位端は、シリンジ4のプランジャ9に取り付けられている。
ネジ付きロッド51の他端は、ベル状キャップ53の底部との一体部であり、その寸法は、プランジャから抜かれた位置で(
図11)、円筒体3を僅かに覆う寸法である。この条件下で、注入は、円筒体3に対してキャップ53を単純に回転させることにより行われる。
【0051】
図11及び12に示すように、円筒体の長さは、その遠位端がニードルカニューレ7aの挿入可能端に達し、ニードルの所与の長さlを露出する長さであるべきである。
更に、
図11aに示すように、本発明によれば、円筒体3の長さを調整することにより、所与の長さのカニューレ7aを有するニードルを備える所与のシリンジについて、カニューレ7aの挿入可能部の長さl'を調整することができると理解される。
よって、本発明の装置は、一方でカニューレ7aの挿入可能な長さを制御することができ、他方で、特に皮膚上に円筒体3を支持する面及びユーザによる把持に起因する、注入中の患者皮膚における安定的な位置決めを確実にできる。
本発明はまた、注入システム用の充填方法及び充填装置に関する。
第1の実施態様において、注入システム1又はそのリザーバ5を、リザーバのネック5aから、すなわち、従来技術によって通常用いられる充填方向とは逆方向に、確実に充填しパッケージする手段を
図13に示す。この充填方法は、リザーバ5に充填される製品が高粘度のものであるとき、特に有益である。
【0052】
この充填装置は、充填ヘッド41が設けられた貯蔵容器40を備える。充填ヘッドは、ネック5aに挿入できる直径の接続ノズル42を備え、供給導路44が貫通している。
ノズル42と注入装置のネック5aとの密着は、封止部材、例えば(ノズル42の環状溝にはめ込む)O-リングタイプの封止部材45により確保することができる。
図13に示すように、充填前に、注入装置1のプランジャ9は、ネック5aの注入口と接触する。処置用製品が充填中に供給ライン44を通じて注入されると、プランジャ9は押され、その結果、プランジャと処置用製品との間に空気層が閉じ込められることなく、所望量の製品が充填される。
第2の実施態様において、
図14及び15は、シリンジを遠位端から、すなわちニードルのカニューレ7aを通して充填させる標準型のシリンジ4の充填装置を示す。
この充填装置は円筒状収容ハウジング3aにより構成され、円筒状収容ハウジングは、各端で、細長円筒状レセプタクルが貫通している。細長円筒状レセプタクルは、収容ハウジングの近位端に設けられ、シリンジ4を受容できるレセプタクル60と、遠位端に設けられ、充填リザーバ64を受容できるレセプタクル62であり、充填リザーバ64は、
図10で示したものと同じタイプのセプタム6により従来様式で閉鎖されている。
【0053】
この充填リザーバ64は、レセプタクル62内の適所にナット66により保持され、ナット66は、ハウジング3aに螺合され、ネジ付きロッド68が螺合貫通し、ネジ付きロッドの遠位端はプランジャ70に固定される。
ネジ付きロッド68の他端は、ベル状キャップ72の底部との一体部あり、その寸法は、プランジャ70から抜かれた位置で、ハウジング3aを僅かに覆う寸法である。
シリンジ4を受容するレセプタクル60の遠位部は、シリンジがレセプタクル60内へ挿入されたときに接触するストッパを構成するボス74で終端する。このボス74は、シリンジ4がボスに接触したとき、カニューレ7aが充填リザーバ64のセプタム6を穿孔して貫通するように配置される。
この条件下、下記のように、シリンジに所定量の処置用製品が充填される。先ず、シリンジ4のプラジャロッド11を押して、プランジャ9をシリンジの底部に押し当てる。次に、キャップ72を回転させてプランジャ70を押し、所与の量の処置用製品を、カニューレ7aを通じてシリンジ4内に吐出させ、シリンジ4のプランジャ9を押し戻す。
【0054】
この充填方法は、シリンジのプランジャ9と処置用製品との間に空気層が生じることを回避できるという第1の利点があると理解される。
加えて、シリンジ4に注入される処置用製品の量は、ハウジング3aに関するキャップ72の長手方向の変位を制御する手段を用いてモニターすることができ、この手段は、
図9に示す装置に用いられるタイプの手段であり得る。
図15に示すように、ハウジング3aに沿って細長の窓76を作製し、この窓を通してシリンジ4、特にプランジャ9の位置が見えるようにすることが好ましい。また、ハウジング3aには、窓76の端部に、注入すべき製品の量に対応する目盛78を付する。このことにより、このシリンジのユーザは、シリンジのプランジャ9の遠位部9aが、注入しようとする量に対応した目盛78(例えば
図15の20単位)に重なる位置になるまで、キャップ72をねじ込む。
所望量がシリンジに搭載されると、ユーザは、充填装置2からシリンジを外して注入を行うことができる。ユーザは、充填装置2のレセプタクル60に挿入して上記の手順を行うことにより、別のシリンジを簡単に充填することができる。
【0055】
シリンジ(特に標準のシリンジ)を充填する方法と、該方法を実施するために用いる充填装置は、使用の容易性のために、処置用製品(例えば、インスリン又は成長ホルモン)を反復注入するか又は投与量を日毎に変化させるとき、特に有益であり、患者自身による使用に適したものとなる。
更に、この編成が、従来のペン-インジェクタによるものに匹敵する精度を提供し、従来のペン-インジェクタの投与量の制限及び注入時間の制約を受けずに、大量の処置用製品の注入を更に容易にすることが試験で立証された。このことにより、回転式制御手段により充填される注入装置からの手動注入が行えるようになる。ここで、この注入装置は、単純な標準シリンジを用いる従来のペン-インジェクタの全ての機能を行うことができ、より小さく、より単純でより軽く頑丈であり、したがってより安価である。
幾つかの注入可能製品について、即席調製(例えば、特定の化合物製剤の再構成)の場合には特に、注入前に2つの基本製品を混合する必要があり得ることが知られている。処置用製品の全部又は一部を当初の包装体から(後に注入に用いられる)リザーバまで移すことも必要であり得る。
【0056】
最も一般的な方法は、各々が混合すべき2つの製品の1つを含み、コネクターにより連結された2つのシリンジを用いる方法である。次に、これら製品を、一方のシリンジから他方へ行き来させることにより、均一混合物を得る。その後、混合された全ての製品を、注入シリンジに用いる2つのシリンジの1つに移す。
一方のシリンジから他方への基本製品の複数回の移動は、シリンジのプラジャロッドを圧力で動かすときには、容易で迅速に達成できる一方、例えば
図8、9、11及び14に例示した装置のように、プラジャロッドを回転で動かすときには、そうでないと理解される。
本発明は、
図16a、16b及び16cに示すとおり、この欠点を克服することができ、プラジャロッドの回転により注入を可能としつつ、2つの基本製品の注入前混合を容易に確実にすることができる。
この注入装置は、この場合、シリンジ4から構成され、ここで、該シリンジの近位端は、円形フランジ80と該円形フランジに任意の手段(図示せず)により固定された保持板82との間に保持され、該保持板は、シリンジのプラジャロッド11の直径より僅かに大きい直径のネジ穴84が貫通している。プラジャロッド11の近位端は、プラジャロッド11の直径より小さい直径の円筒状ピン86で終端する。よって、この注入装置は、シリンジ4に加えて、2つの制御ヘッド、すなわち圧力制御ヘッド88及び回転制御ヘッド90を備える。
【0057】
圧力制御ヘッド88は、
図16bに示すように、ネジ穴84より小さく、プラジャロッド11のものに近い直径の円筒状ロッド89により構成され、この円筒状ロッドは、遠位端が、ピン86を収容可能な軸方向リセスによって中空であり、近位端は平板94により構成される。よって、このような構成である注入装置は、圧力で制御されるシリンジとして機能することができ、このことにより、上記のようなシリンジからシリンジへの移動を容易で迅速におこなうことができると理解される。
回転制御ヘッド90は、上記で言及した図に示した前記の実施態様と同様に、
図16cに示すように、ベル状キャップ96を有し、ベル状キャップは、その底部にネジ穴84に螺合可能な軸ネジ部98を有し、軸ネジ部は、ピン86を受容可能な軸方向リセス100によって中空である。本注入装置は、このように構成されるとき、回転により制御されるシリンジとして機能することができると理解される。なぜならば、キャップ96のねじ込み方向の回転は、プラジャロッド11を押して、シリンジ4に含まれる処置用製品の注入を引き起こすからである。
【0058】
本実施態様は、制御ヘッドの単純な交換により、回転により制御される注入装置を用いて、処置用製品を混合及び注入のためにシリンジ間で容易・迅速に行き来させることができる点で有益である。
単室か二室かに関らず、従来の注入装置(例えば、シリンジ又はカートリッジ)を用いて筋肉内注射を行うときには、静脈に投与されないことを確実とする必要があることが知られている。この理由から、医師は、ニードルを挿入すると、シリンジのプランジャで吸引する「静脈試験」として知られる検査を行う。シリンジに血液の逆流による血液の戻りがある場合、医師は静脈にニードルがありその結果、注入を行えないことを確認する。
注入が圧力によらず回転による注入装置では、プランジャの後退による吸引は達成がより困難であり、注入物が粘性又は高粘性である場合には特にそうである。
【0059】
しかし、本出願人は、例えばガラスカートリッジの場合、圧着リングがリザーバのネックに封着されているとき、これら2つの成分間の接触は、金属-オン-ガラス(metal-on-glass)組成のため、液体又は半固体の通過は防止するが、完全に気密ではないことを見出した。この条件下では、ニードルが血管に挿入されると、血圧により血液がニードル内に押し上げられ、空気は、リザーバと圧着リングとの接合部を通って漏れる。次に、空気に代わって血液がリザーバ内に入り、遠位部が医師により視認可能に染まる。シリンジタイプの標準型注入装置と同様に、リザーバ内での血液の存在は、この特定位置で注入を行えないことを示す。
この条件下で、本発明の回転式注入モードにより、静脈試験を自動的に行うことが可能になると理解される。
シリンジ又はカートリッジのパッケージング装置(一般に「ネスト(nest)」と呼ばれる)を、
図17に示すが、これは、典型的には、液状の製品又は低粘度の製品の充填に使用される。
本発明によれば、この装置は、一連のシリンジ又はカートリッジ、特に、後に第2の製品と混合されると意図される(具体的には、乾燥又は凍結乾燥形態で提供され得る)第1の基本製品を含む一連のシリンジ又はカートリッジのパッケージングを確実にするために用いられる。
【0060】
よって、パッケージング装置はネストを備え、このネストは、公知の様式で、蓋104により閉鎖されるタブ型容器102を備え、1セットの(充填しパッケージングしようとするカートリッジ又はシリンジ4からなる)レザーバを垂直に保持できる手段を備える。蓋104は位置合わせ手段を備え、該手段は、蓋の下面の四隅に固定される4つの雄型止め具106により構成され、4つの雄型止め具は、タブ型容器102に該雄型止め具に対向して配置される4つの雌型止め具108内に収容可能である。雄型及び雌型止め具を圧縮コイルバネ110が取り囲み、これらが、非圧縮位置(
図17)にあるとき、蓋104は開位置に確実に維持される。
本発明によれば、蓋104の下面は、各シリンジ4と一致して、蓋下面に対して垂直な突起体112を備え、この突起体は、後にシリンジ4のプランジャ9を構成するピストンを摩擦により収容することを意図される。
【0061】
本発明のパッケージング方法は下記のように実施される。最初に、シリンジを、任意の公知の従来装置を用いて充填した後、任意の乾燥又は凍結乾燥操作を行う。この作業中、バネ110は蓋104を正しい位置に保持する。乾燥又は凍結乾燥操作の終時に、バネ110による力に対抗して、圧力Pを蓋104の外面に付して、各プランジャ9を対向するシリンジ4のリザーバ内に挿入する。この乾燥又は凍結乾燥操作は、空気又は不活性ガスの計算された減圧下に維持されるチャンバ又は凍結乾燥機内で行なってもよい。次に、減圧を停止して周囲圧に戻して、周囲圧による力を各プランジャ9に付することができる。この周囲圧による力は、蓋104への圧力Pの印加を停止し、各バネ110が蓋を持ち上げるように作用するとき、プランジャが各リザーバに保持されように働く。次に、製品をシリンジ4にパッケージする。製品は液体画分と混合し、好ましくは
図16a、16b及び16cに関して上記したとおりの本発明の装置を用いて注入することができる。
本発明はまた、注入中の位置安定性の増大及び注入前、中及び後の注入ニードルの保護を目的としたパッシブセーフティ注入装置に関する。
このセーフティ装置は、一方で、その操作がユーザによる注入方法から完全に独立し、他方で、ユーザは、例えば、ニードルを抜き取る前に注入を完了しないなど、その作動を妨げる操作又はエラーを行うことができないので、パッシブと言われる。
【0062】
この注入装置の特定の実施態様を
図20~23aに示す。
注入装置121は、軸方向の円筒導路125を有して中空である円筒体123を備え、円筒導路は、直径がより大きい円筒状遠位チャンバ127に開口する。導路125は、注入物を含み注入ニードル131で終端する(この実施態様において、シリンジ129により構成される)リザーバを受容する。シリンジ129の遠位端は、円筒体123内の座部(カップ)130に嵌め込まれるO-リングシール132を備える。チャンバ127の長さaは、
図20に示す静置位置又は注入前位置で、注入ニードル131がチャンバ127内に収容される長さである。
円筒体123の近位端123bは、円周上真反対に設けられた2つの掛止用ツメ134で終端する。掛止用ツメは、高さHの外側ボス134aと、それに続くベベル134bとで終端し、内部空間135の存在によって変形可能とされている。
【0063】
プランジャ136は、ネジ付きプラジャロッド137によりスライド可能に、シリンジ129内に取り付けられる。このプランジャの近位端は、円筒状キャップ139からなる作動部材(アクチュエータ)の底部と一体化し、円筒状キャップの内径Dは、円筒体123の外径dと2つのボス(ストッパ)134aの高さとの合計より僅かに大きく、キャップ139は円筒体上をスライド可能である。よって、D=d+2×Hである。停止位(
図1参照)において、キャップ139の遠位端は、円筒体123に僅かに係合している。
投与後にニードルを身体123から抜く際に円筒体123をキャップ139にロック状態で維持するため、キャップ139の内側に、断面が矩形である高さhの第1の環状遠位ストッパ146が存在する。最後に、キャップの内面は、高さhの第2の環状近位ストッパ145を有する。近位ストッパの近位面145aは、好ましくは傾斜し、遠位面145bは半径方向に伸びる。近位ストッパは、第1のストッパ146から、ボス134aの幅に等しい距離で隔てられており、これにより、以下で説明するように、注入完了後にニードル131が再度突出することを防止する。
【0064】
ストッパを構成する厚さeの円筒状ナット141は、プラジャロッド137に螺合され、シリンジ129の近位端が固定される座部(カップ)140を備える。ナット141の遠位面の周縁部には、変形可能なツメ134のベベル134bの形状に相補的な形状である環状溝143が設けられている。このナット141の直径bは、キャップ139の内径Dから2つのボス134aの高さHを減算した値より僅かに小さい。よって、b=D-2×Hである。
図20に示すように、注入装置が停止状態にあるとき、円筒体123の近端123bとナット141の遠位面との間の距離cにより、以下に説明するとおり、注入中に円筒体123の遠位面123aから露出する注入ニードルの長さが制御される。
円筒体123の遠位面123aは、円筒体123の環状面により構成されるか、又は
図21に示す実施態様のように、この面の寸法を大きくする拡張部123cを備えていてもよい。
この面は、処置される患者の皮膚124への付着を可能にする粘着性物質で被覆されている。例えば、包帯剤、ストーマバッグ、電気外科用電極及びプレート、パッチ又は医療用かつらのような医療用器具用の表面接着組成物に使用されるシリコーン、アクリレート、ポリアクリレートその他の公知のコポリマーベースの粘着性表面を用いることができる。粘着面側は、覆い又はフイルム147で保護する。
【0065】
この条件で、本発明の注入装置の操作は、下記に説明するとおりである。
保護フイルム147を取り外した後、注入装置の粘着性遠位端を、注入しようとする患者身体の領域に接触させる。そうすると、注入装置のこの端は、注入部位への粘着により安定する。
次いで、
図20に示すように、ナット141が円筒体123の近位面123bと接触するまで、キャップ139を矢印Fの方向に直線的に押す。これにより、先ず、注入ニードルが注入装置から押し出されて患者124の身体に導入される。他方、この並進移動の終時に、ツメ134のベベル134bは、ナットの溝143に嵌まり込み、その結果、ツメ134は内側に変形し、円筒体123とナット141との回転可能な結合が確立する。加えて、ツメは、内側に変形するため、注入中に環状ストッパ145及び146に到達すると、自由になってキャップの動きを妨げることができなくなる。
この時点で、注入装置は、処置用製品を注入する準備の容易ができる。
注入のため、キャップ139を回転させる。この回転は、円筒体123の遠位部123aと患者124の身体とが粘着性物質により接着しているため、片手で行うことができる。キャップ139を回転させると、プランジャロッド137はナット141にねじ込まれ、ナット141が円筒体123に関して回転できなくなると、プランジャ136はシリンジ129内に移動し、プランジャがシリンジ129のネックに達するか又はユーザが注入を停止するまで、処置用製品を患者身体に送達する。
【0066】
注入完了後、キャップ139を矢印Fの反対方向へ引くと、遠位面123aは患者皮膚に付着したままで、シリンジ129及びナット141が引き戻され、ツメ134は開放されて初期位置に戻る。したがって、後退移動は、ツメ134のボス134aの近位面がストッパ145に接触して、
図23及び23aに示すように、2つのストッパ145及び146の間隙に落ち込むまで行う。
すなわち、矢印Fの方向への円筒体123に関するキャップ139の相対的な移動もその逆ももはや不可能であり、注入装置はロックされて、更なる使用に対して安全が確保される。
円筒体123が遠位ストッパ146でキャップ139にロックされる結果、後退移動の継続により、注入装置の遠位側が確実に患者の皮膚面から脱離する。
本注入装置に備わる安全手段は、現行のシステム、例えばバネによるトリガ機構に基づくシステムより単純であり、したがって製造がより容易で安価であるという利点を有することに留意すべきである。
【0067】
当然のことながら、そして上記実施例は小容量のシリンジ(例えばインスリン用シリンジ)に関して説明しているが、前記安全手段は、標準又は非標準のシリンジ又はカートリッジを用いる他の任意の装置に、(上記実施例で説明したような)スクリュー注入モード又は(平滑プラジャロッド及びフィンガーレストを用いる従来のシリンジを使用する)従来の並進注入モードのいずれであっても適応可能である。
並進で作動する平滑プラジャロッドを用いる形態の装置では、キャップ139は、プラジャロッドと一体化した2つのアームに置き換えられる。これら2つのアームは、フィンガーレスト内側の2つの窓を移動できる。スクリュー式のものと同様に、2つのアームを矢印Fの方向に押すことにより、ニードルが挿入される。
加えて、本注入装置に用いられる安全手段はまた、注入ニードルを通常覆うキャップと取り替え可能であるという利点を有する。このことにより、危険なキャップ取り外し操作をなくすことができる。キャップ取り外し操作は、ユーザが鋭利なベベルに曝され、注入ニードルを損傷させる可能性があり、最後に、注入前にニードルが汚染されるリスクがあるという理由から危険である。
【0068】
本発明の変形において、円筒体123は、シリンジの長さに沿って延びる窓を備えてもよく、この窓により、使用前の内容物の検査が可能になる。
加えて、そして本発明によれば、注入前に円筒体123及びキャップ139の相対的保定を確保するように、これら2つのパーツがラベルにより接続されていてもよい。また、このラベルにより、使用前に、注入装置のシーリングの完全性が検証可能になる。このラベルは、注入中の切断を容易にする所定のカッティングラインを備える。