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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】難燃性セルロース人造繊維
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/00 20060101AFI20240209BHJP
   B01F 25/00 20220101ALI20240209BHJP
   D01F 1/07 20060101ALI20240209BHJP
   D01F 2/00 20060101ALI20240209BHJP
   D06M 13/322 20060101ALI20240209BHJP
【FI】
C08G73/00
B01F25/00
D01F1/07
D01F2/00 Z
D06M13/322
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2020523351
(86)(22)【出願日】2018-10-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-07
(86)【国際出願番号】 EP2018079227
(87)【国際公開番号】W WO2019081617
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2021-10-20
(31)【優先権主張番号】17198949.4
(32)【優先日】2017-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507127314
【氏名又は名称】レンチング アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(72)【発明者】
【氏名】フィルゴ,ハインリヒ
(72)【発明者】
【氏名】ビスジャ,クレメンス
【審査官】古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-504337(JP,A)
【文献】特表2002-540930(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73/00
B01F 25/00
D01F 1/07
D01F 2/00
D06M 13/322
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
NH、あるいは少なくとも1つのNHもしくは少なくとも2つのNH基またはNHを含む少なくとも1種の窒素化合物を含む酸化ポリマーの、テトラキスヒドロキシアルキルホスホニウム化合物からの製造方法であって、
(a)初期縮合物を得るために、少なくとも1種のテトラキスヒドロキシアルキルホスホニウム化合物を、NHまたは少なくとも1種の窒素化合物と反応させるステップであって、テトラキスヒドロキシアルキルホスホニウム化合物と窒素化合物のモル比が、1:(0.05~2.0)の範囲である、ステップと、
(b)プロセスステップ(a)で得られた初期縮合物を、アンモニアの助けにより架橋させて、架橋ポリマーを形成するステップと、
(c)酸化剤を添加することによって、ステップ(b)で得られた架橋ポリマーを酸化させて、酸化ポリマーを得るステップと
を含み、
ステップ(b)において、ステップ(a)からの初期縮合物およびアンモニアを、反応器ハウジングによって包囲された反応器空間内の共通衝突地点上に、ノズルによってそれぞれ噴射することを特徴とする、方法。
【請求項2】
ステップ(b)で、ステップ(a)からの初期縮合物およびアンモニアが、反応器ハウジングによって包囲された反応器空間内の共通衝突地点上に、ノズルによってそれぞれ噴射され、結果として得られる生成物が、生成物およびガス出口側の陰圧によって、開口部(2)を通して反応器ハウジングから除去されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(b)で、ステップ(a)からの初期縮合物およびアンモニアが、反応器ハウジングによって包囲された反応器空間内の共通衝突地点上に、ノズルによってそれぞれ噴射され、ガス、蒸発液体、冷却液または冷却ガスが、反応器の内部、特に液体ジェットの衝突地点でのガス雰囲気を維持するために、または、それぞれ、結果として得られる生成物を冷却するために、開口部(1)を介して反応器空間内へ導入され、結果として得られる生成物および過剰ガスが、ガス入口側の過剰圧によって、別の開口部(2)を通して反応器ハウジングから除去されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
窒素化合物が、尿素、チオ尿素、ビウレット、メラミン、エチレン尿素、グアニジンおよびジシアンジアミドの群から選択されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(b)で、一方では初期縮合物、他方ではアンモニアが、液体媒体として提供され、衝突地点上に噴霧されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
初期縮合物の場合には液体媒体が水溶液であり、アンモニアの場合には液体媒体が水溶液であることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(c)による酸化の後に、可溶性反応生成物が、分離されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
テトラキスヒドロキシアルキルホスホニウム化合物のアルキルラジカルが、メチル、エチル、プロピルまたはブチルの群から選択されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
テトラキスヒドロキシアルキルホスホニウム化合物と窒素化合物のモル比が、1:(0.5~1.5)の範囲であることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
テトラキスヒドロキシアルキルホスホニウム化合物と窒素化合物のモル比が、1:(0.65~1.2)の範囲であることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(c)による酸化の後に、可溶性反応生成物が、接線流濾過によって分離されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
紡糸ドープからの難燃性セルロース人造製品の製造方法であって、
請求項1から11のいずれか一項の記載により生成された、テトラキスヒドロキシアルキルホスホニウム化合物からのポリマーを提供するステップと、
それをセルロース系紡糸ドープと混合するステップであって、ポリマーは水性分散系の形態のテトラキスヒドロキシアルキルホスホニウム化合物を、セルロースに対して5重量%~50重量%の量で含む、ステップと、
紡糸ドープを紡糸口金を通して紡糸浴の中へ紡糸するステップと
を含む、方法。
【請求項13】
人造製品が、人造繊維であって、フィラメントが、紡糸ドープを紡糸口金を通して紡糸浴の中へ紡糸されているときに形成され、フィラメントが延伸され、沈殿させられ、続いて洗浄、漂白、仕上げによる後処理が提供されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
紡糸ドープが、水性第三級アミンオキシド中のセルロース溶液であることを特徴とする、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
紡糸ドープが、キサントゲン酸セルロースの形態にあるセルロース溶液であることを特徴とする、請求項12または13に記載の方法。
【請求項16】
紡糸ドープが、テトラアミン銅(II)水酸化物中の、セルロースのアンモニア性溶液であることを特徴とする、請求項12または13に記載の方法。
【請求項17】
紡糸ドープが、イオン性液体中のセルロース溶液であることを特徴とする、請求項12または13に記載の方法。
【請求項18】
1.8μm未満の粒径d 99 を有する、少なくとも1つのNHもしくは少なくとも2つのNH基またはNHを含む少なくとも1種の窒素化合物を有する、テトラキスヒドロキシアルキルホスホニウム化合物からの酸化ポリマーを含難燃剤を含む、セルロース人造製品。
【請求項19】
0.9dtex以上から3dtex以下までの繊度を有する紡織繊維であることを特徴とする、請求項18に記載のセルロース人造製品。
【請求項20】
難燃剤の割合が、5重量%~50重量%の間であることを特徴とする、請求項18または19に記載のセルロース人造製品。
【請求項21】
強度が18cN/テックス~50cN/テックスの範囲であることを特徴とする、請求項18から20のいずれか一項に記載のセルロース人造製品。
【請求項22】
薄膜、粉末、不織布またはフィブリドであることを特徴とする、請求項18から21のいずれか一項に記載のセルロース人造製品。
【請求項23】
少なくとも1つのNH もしくは少なくとも2つのNH基またはNH を含む少なくとも1種の窒素化合物が、1.7μm未満の粒径d 99 を有する、請求項18に記載のセルロース人造製品。
【請求項24】
少なくとも1つのNH もしくは少なくとも2つのNH基またはNH を含む少なくとも1種の窒素化合物が、1μm未満の粒径d 99 を有する難燃剤を含む、請求項23に記載のセルロース人造製品。
【請求項25】
難燃剤の割合が、10重量%~30重量%の間であることを特徴とする、請求項20に記載のセルロース人造製品。
【請求項26】
難燃剤の割合が、15重量%~25重量%の間であることを特徴とする、請求項25に記載のセルロース人造製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種の窒素化合物を含む酸化ポリマーの、テトラキスヒドロキシアルキルホスホニウム化合物からの製造方法であって、初期縮合物(precondensate)を得るために、少なくとも1種のテトラキスヒドロキシアルキルホスホニウム化合物を少なくとも1種の窒素化合物と反応させるステップであり、テトラキスヒドロキシアルキルホスホニウム化合物と窒素化合物のモル比が、1:(0.05~2.0)の範囲、好ましくは1:(0.5~1.5)の範囲、特に好ましくは1:(0.65~1.2)の範囲である、ステップと;前で得られた初期縮合物を、アンモニアの助けにより架橋させて、架橋ポリマーを形成するステップと;酸化剤を添加することによって、前で得られた架橋ポリマーを酸化させて、酸化ポリマーを得るステップとを含む、方法に関する。さらに、本発明は、紡糸ドープからの難燃性セルロース人造製品の製造方法であって、テトラキスヒドロキシアルキルホスホニウム化合物からのポリマーを提供するステップと、それをセルロース系紡糸ドープと混合するステップとを含む、方法に関する。最後的に、本発明は、難燃性セルロース人造製品に関する。
【背景技術】
【0002】
人造繊維ビスコース、モダル、キュプラまたはリヨセルを含む、再生セルロースから製造される繊維は、時には難燃性が提供される。様々な公知の方法がこの目的のために存在し、一方では、難燃性適用のタイプ-難燃性物質の繊維表面への適用、または湿式紡糸プロセス中での難燃性化合物の繊維内への導入-によって、他方では、難燃性を担う化合物によって区別される。
【0003】
リン化合物は、難燃性を担う化合物として頻繁に使用される。
【0004】
ビスコースプロセスによって製造されるセルロース人造繊維の場合、多数のそうした物質が、繊維製造中に繊維内へ組み込むための難燃性添加剤として提案されてきた。
【0005】
米国特許第3,266,918号では、トリス(2,3-ブロモプロピル)リン酸塩が、難燃剤として提案されている。こうした繊維は、しばらくの間工業的に製造されたが、難燃剤の毒性に起因して製造が中止された。
【0006】
置換ホスファゼンの物質クラスは、難燃剤として使用されるものである。それらの物質に基づいて、難燃性ビスコース繊維も、工業的に製造された(米国特許第3,455,713号)。しかしながら、難燃剤は液体であり、ビスコース繊維内へ低収率でしか紡糸することができず(およそ、75重量%)、繊維から外へ移動する傾向があり、それによって繊維に望ましくない粘着性を与える。
【0007】
類似した化合物は特許に記述されているが、ビスコース繊維に対して工業規模で試験されていない(英国特許第1,521,404号;米国特許第2,909,446号;米国特許第3,986,882号;特開昭50-046920号;独国特許第2,429,254号;英国特許第1,464,545号;米国特許第3,985,834号;米国特許第4,083,833号;米国特許第4,040,843号;米国特許第4,111,701号;米国特許第3,990,900号;米国特許第3,994,996号;米国特許第3,845,167号;米国特許第3,532,526号;米国特許第3,505,087号;米国特許第3,957,927号)。それらの物質はすべて液体であり、米国特許第3,455,713号に記述の欠点を同様に示す。
【0008】
上述のトリス(2,3-ブロモプロピル)リン酸塩に加えて、いくつかの他のリン酸およびホスホン酸のエステル、ならびにそれぞれアミドが、ビスコース繊維用の難燃剤として記述されてきた(独国特許第2451802号;独国特許第2622569号;米国特許第4,193,805号;米国特許第4,242,138号;特開昭51-136914号;独国特許第4128638号)。
【0009】
この物質クラスから、ビスコース紡糸プロセスでの定量的収率、有効性(EN ISO15025:2002に合格するために必要な紡糸量)および工業的洗浄(欧州特許第2473657号)に関して、これまで、化合物2,2’-オキシビス[5,5-ジメチル-1,3,2-ジオキサホスホリナン]2,2’-ジスルフィドだけが要件を満たした。前記難燃剤とビスコース紡糸プロセスとの組合せから製造された難燃性繊維は、したがって商業的に最も好結果の難燃性セルロース人造製品を構成する。
【0010】
難燃性セルロース人造繊維の製造用に、リヨセルプロセスで2,2’-オキシビス[5,5-ジメチル-1,3,2-ジオキサホスホリナン]2,2’-ジスルフィドを使用することは、高い収率ロスを有し、これは経済的に悪影響を有するばかりでなく、とりわけ、このプロセスに特徴的である閉ループ系と相容れないという事実に起因して、失敗する。
【0011】
リヨセルプロセスによって製造されたセルロース繊維にも、難燃性を付与することが可能な方法が、いくつかの特許出願に記述されてきた。
【0012】
国際公開第93/12173号は、合成材料、特にウレタンフォームに対する難燃剤として、リン含有トリアジン化合物について記述している。請求項18で、第三級アミンオキシド中の溶液から紡糸されたセルロースに、セルロースに対する難燃剤としての化合物の実際の適合性に関して実施例を挙げることなく、言及している。
【0013】
欧州特許第0836634号は、再生セルロース繊維、特にリヨセル繊維に対する難燃剤として、リン含有化合物の組み込みを記述している。実施例として、1,4-ジイソブチル-2,3,5,6-テトラヒドロキシ-1,4-ジオキソホスホリナンに言及している。この方法は、難燃剤の組み込み収率がわずか90%であるという欠点を有し、したがって、それはリヨセルプロセスに適さない。
【0014】
国際公開第96/05356号では、リヨセル繊維をリン酸および尿素で処理し、150℃で45分間保持する。しかしながら、繊維レベルでの縮合反応は、それらが繊維材料の脆化を引き起こすので、繊維特性を大幅に損なう。
【0015】
国際公開第94/26962号は、乾燥、アンモニア処理、縮合、酸化、および別の洗浄後の乾燥の前の、湿った繊維へのテトラキスヒドロキシメチルホスホニウムクロライド(THPC)尿素初期縮合物の添加について記述している。記述されている方法も、繊維の機械特性をひどく損なう。
【0016】
オーストリア特許出願公開第510909号には、恒久的な難燃性を有するセルロース人造繊維が記述されており、難燃性は、アミノ基またはそれぞれNHを有する、THPの塩からのを紡糸ドープに添加して得られる。得られた繊維は、条件付き状況で18cN/テックスを超える最大引張力を有し、99%を超える組み込み収率が達成される。オーストリア特許出願公開第510909号による製造方法は、アミノ基またはそれぞれNHを有する、THPの塩からの酸化縮合物を調製する3段階法を含む。最初に、テトラキスヒドロキシアルキルホスホニウム化合物を窒素化合物と反応させ、初期縮合物を得る。これに続いて、前で得られた初期縮合物をアンモニアの助けにより架橋させ、最後に、難燃剤を得るために酸化剤を添加することによって、架橋ポリマー中に含有されるリンの酸化が達成される。
【0017】
オーストリア特許出願公開第510909号によれば、難燃剤は最初に粗粒の形態で生じる。繊維製造のための紡糸プロセスへ組み込むことができる粒径を達成するために、ポリマーを湿式粉砕に供せねばならない。一般に、安定した紡糸プロセスを確保し、許容できる機械特性を有する紡織繊維(textile fibre)をそれから得るために、およそ2μm(d99)の粒径が必要である。ポリマーの柔軟性に起因して、この湿式粉砕ステップは非常に時間およびエネルギーを消費し、したがって非経済的である。結局、粉砕コストは原料費を超える。このため、前記難燃剤の組み込みに起因する本来的に難燃性なリヨセル繊維の順調な商業化は、今日まで回避されてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
オーストリア特許出願公開第510909号による湿式粉砕難燃剤を有する紡織繊維の製造のコストは非常に高く、しかもそれら繊維の機械特性は最適ではない。このため、本発明の目的は、THと、NHラジカルもしくはNHラジカルを含むまたはNHを含む化合物との酸化縮合物であり、所望の粒径の生成にそれほど費用がかからず、繊維により良好な機械特性をもたらす、酸化縮合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記目的は、
(a)初期縮合物を得るために、少なくとも1種のテトラキスヒドロキシアルキルホスホニウム化合物を、NHと、または少なくとも1つのNHもしくは少なくとも2つのNH基を含み、好ましくは尿素、チオ尿素、ビウレット、メラミン、エチレン尿素、グアニジンおよびジシアンジアミドの群から選択される少なくとも1種の窒素化合物と反応させるステップであって、テトラキスヒドロキシアルキルホスホニウム化合物と窒素化合物のモル比が、1:(0.05~2.0)の範囲、好ましくは1:(0.5~1.5)の範囲、特に好ましくは1:(0.65~1.2)の範囲である、ステップと、
(b)プロセスステップ(a)で得られた初期縮合物を、アンモニアの助けにより架橋させるステップと、
(c)酸化剤を添加することによって、ステップ(b)で得られた架橋ポリマーを酸化させて、難燃剤を得るステップと
を含む方法であって、
ステップ(b)において、ステップ(a)からの初期縮合物およびアンモニアを、反応器ハウジングによって包囲された反応器空間内の共通衝突地点上に、ノズルによってそれぞれ噴射することを特徴とする、方法によって、達成される。
【0020】
一実施形態では、ステップ(b)で、ステップ(a)からの初期縮合物およびアンモニアを、反応器ハウジングによって包囲された反応器空間内の共通衝突地点上に、ノズルによってそれぞれ噴射し、結果として得られる生成物を、生成物およびガス出口側の陰圧によって、別の開口部(2)を通して反応器ハウジングから除去すると規定される。
【0021】
それの代替実施形態では、ステップ(b)で、ステップ(a)からの初期縮合物およびアンモニアを、反応器ハウジングによって包囲された反応器空間内の共通衝突地点上にノズルによってそれぞれ噴射し、ガス、蒸発液体、冷却液体または冷却ガスを、反応器の内部、特に液体ジェットの衝突地点でのガス雰囲気を維持するためにまたはそれぞれ、結果として得られる生成物を冷却するために、開口部を介して反応器空間内へ導入し、結果として得られる生成物および過剰ガスを、ガス入口側の過剰圧によってまたは生成物およびガス出口側の陰圧によって、別の開口部を通して反応器ハウジングから除去する(図1も参照)と規定される。
【0022】
驚くべきことに、マイクロジェットリアクター技術の適用によって、一方では初期縮合物、他方ではアンモニアを含有しているマイクロジェットの衝突地点で、架橋した反応生成物の沈殿がすでに生じるほど、初期縮合物とアンモニアとの反応を強く加速することができることが見出された。マイクロジェットの高速に起因して、2つの遊離体は衝突地点で非常に強く混合され、固体形態のナノ/マイクロ分散系として難燃性ポリマーが直接生じるほど、架橋の反応速度が強く加速される。複雑で、そのため非常に費用のかかる湿式粉砕はしたがって回避することができる。こうした反応器の正確な記述およびさらに詳細に関して、欧州特許第1165224号を指摘することができる。
【0023】
テトラキスヒドロキシアルキルホスホニウム化合物のヒドロキシアルキル基は、好ましくはヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピルまたはヒドロキシブチル基であり、そのため、この場合、テトラキスヒドロキシアルキルホスホニウム化合物のアルキルラジカルは、メチル、エチル、プロピルまたはブチルの群から選択される。そのうえ、テトラキスヒドロキシアルキルホスホニウム化合物は、好ましくは塩である。
【0024】
少なくとも1種のテトラキスヒドロキシアルキルホスホニウム化合物は、特に好ましくは、一般式(P(CHOH)[式中、Xはアニオンであり、tは前記アニオンの原子価を表示する]を有するテトラキスヒドロキシメチルホスホニウム化合物(THP)、またはさもなければこうした化合物の混合物である。この場合、tは、1~3の整数を表示することができる。好適なアニオンXは、例えば、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、リン酸一水素もしくは二水素塩、酢酸塩、またはハロゲンのアニオン、例えば、フッ化物、塩化物および臭化物である。
【0025】
プロセスステップ(a)および(b)でテトラキスヒドロキシアルキルホスホニウム化合物と反応する少なくとも1種の窒素化合物は、一般に、アンモニア、尿素、チオ尿素、ビウレット、メラミン、エチレン尿素、グアニジンおよびジシアンジアミドの群から選択される、1種の化合物、2種の化合物、3種の化合物またはいくつかの化合物を構成する。本発明の好ましい実施形態によれば、窒素化合物は尿素である。本発明の特に好ましい実施形態によれば、プロセスステップ(a)で、尿素、チオ尿素、ビウレット、メラミン、エチレン尿素、グアニジンおよびジシアンジアミドの群から選択される少なくとも1種の窒素化合物が反応し、続くプロセスステップ(b)でアンモニアによって架橋する。
【0026】
本発明の好ましい実施形態によれば、プロセスステップ(a)での反応は溶媒中で実施される。好ましく使用される溶媒は、水である。プロセスステップ(a)で反応する化合物の含量は、広い範囲にわたって変動することができ、一般にプロセスステップ(a)で使用される反応バッチの全質量に対して、10重量%~90重量%、好ましくは20重量%~40重量%の量になり、反応バッチは、反応する少なくとも2種の化合物および溶媒を含有する。
【0027】
テトラキスヒドロキシアルキルホスホニウム化合物と窒素化合物のモル比は、広い範囲にわたって変動することができ、一般に1:(0.05~2.0)、好ましくは1:(0.5~1.5)、特に好ましくは1:(0.65~1.2)の範囲である。前記モル比を限定的に選択することによって、本発明によって製造する難燃剤は、耐炎保護セルロース繊維の製造に使用される溶媒中に、溶解しないまたは少しの程度しか溶解しないように確実になる。
【0028】
プロセスステップ(a)は、一般に、40~120℃の範囲の温度、好ましくは80~100℃の範囲の温度で、1~10時間の期間、好ましくは2~6時間の期間実行される。
【0029】
本発明の有利な実施形態によれば、プロセスステップ(a)が実行された後で、しかもプロセスステップ(b)が実施される前、したがってアンモニアによって架橋が達成される前に、1種または複数の分散剤がポリマーに添加される。それらの分散剤は、好ましくは、ポリビニルピロリドン、C14~C17スルホン酸アルキル、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、およびポリエチレングリコール(PEG)、変性ポリカルボキシレート、例えば、エーテル化またはエステル化ポリカルボキシレート、特にポリカルボキシレートエーテル(PCE)の群から選択される。そうすることで、分散剤は組成物の成分を安定させる役目をし、続くプロセスステップ(b)の架橋反応で、沈殿するポリマーが凝集することを防ぐ。そのうえ、非常に微細な粒子状固体、例えば、ナノ結晶性セルロースまたはナノ粒子状硫酸バリウムを、凝集抑制剤として添加することも同様に可能である。通常、分散剤、またはスペーサーは、反応バッチに対して、それぞれ0.01重量%~3重量%の濃度範囲、例えば、1重量%~2重量%の範囲で使用される。驚くべきことに、例えば、ポリカルボキシレートエーテルは、例えば、ポリビニルピロリドンより少ない量で十分であることが見出された。
【0030】
ステップ(b)で提供される、架橋ポリマーを形成するための、プロセスステップ(a)で得られた初期縮合物のアンモニアの助けによる架橋は、一方では初期縮合物(初期縮合物流れ)、他方ではアンモニア(アンモニア流れ)が、液体媒体として提供され、衝突地点上に噴霧されるというような方法で行われる(図1)。初期縮合物の場合、液体媒体は、好ましくは初期縮合物の水溶液である。任意選択で、懸濁液またはコロイドも提供されてもよい。アンモニアに好ましく使用される溶媒は、水である。プロセスステップ(b)での初期縮合物流れ中の初期縮合物の含量は、広い範囲にわたって変動することができ、水溶液の全質量に対して、一般に、5重量%~50重量%、好ましくは8重量%~30重量%、特に好ましくは9重量%~20%の量である。アンモニア流れ:初期縮合物流れの比は、アンモニアが、テトラキスヒドロキシメチルホスホニウム化合物に対して、(1.0~4.0):1の範囲、好ましくは(1.2~3.5):1の範囲、特に好ましくは(1.2~2.5):1の範囲のモル比で計量供給されるように制御される。本発明の好ましい実施形態によれば、この場合、アンモニアは、出口で得られる分散系が、7~10、好ましくは8~9の範囲のpHを有するような方法で計量供給される。
【0031】
例えば、初期縮合物およびアンモニアは、ステップ(b)で、10バール以上、例えば50バールを超えるが、いかなる場合も4,000バール以下の圧力で、反応器空間内に噴射され得る。
【0032】
ステップ(c)は、ステップ(b)の反応空間で、または別の反応器空間で実行することができる。
【0033】
好ましくは、ステップ(b)で得られた架橋ポリマーの酸化は、ステップ(b)の反応空間の外部で行うと規定される。例えば、反応は、従来の反応器で酸化剤の助けにより行われてもよい。
【0034】
選択された場合では、酸化は、上述のように、ステップ(b)の反応空間で行われてもよい。この場合、例えば、酸化は、反応器空間内の衝突地点上に押し込められるガス流を介して、例えば、O(オゾン)またはOを導入することによって、架橋するステップと組み合わせることが提供され得る。
【0035】
プロセスステップ(c)での酸化は、従来の酸化剤、例えば、過酸化水素、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、酸素、空気(酸素)または過塩素酸の助けにより実行することができる。難燃剤の前駆体と酸化剤のモル比は、一般に約1:1~1:1.2である。
【0036】
そのうえ、ステップ(c)による酸化の後に可溶性反応生成物が分離される、プロセスステップ(d)が提供されてもよい。このように、難燃剤は、当業者に公知の方法を使用して、例えば、濾過によって、好ましくは接線流濾過(クロスフロー濾過)またはダイアフィルトレーションによって、透過液の流れを介して溶解した不純物から分離し、保持液流れを介して濃縮することができる(図2)。
【0037】
一実施形態によれば、望ましくない副産物、例えば、オリゴマーおよび塩基性化合物をさらにより選択的に除去するために、酸を、プロセスステップ(d)で追加的に使用してもよい。使用される酸は一般に、HCl、HSO、HPOおよび酢酸の群から選択される。酸は、一般に、水、メタノール、エタノールもしくは当業者に公知の他の溶媒、またはこれらの混合物の群から選択される溶媒中で、約1~75%の濃度、好ましくは約1~20%の濃度、特に好ましくは約1~9%の濃度に希釈されて使用される。酸を希釈するのに好ましく使用される溶媒は、水である。プロセスステップ(c)で得られる難燃剤を精製するのに使用される酸の量は、広い範囲にわたって変動し得る。一般に、1の体積分率の難燃剤は、1の体積分率の酸とともに使用され、好ましい実施形態によれば、2倍の体積分率の酸が使用され、特に好ましい実施形態によれば、3倍の体積が使用される。
【0038】
続いて、プロセスステップ(d)で得られた難燃剤は、溶媒で1回または数回洗浄することができ、洗浄で酸が含まれないように、洗浄のために、難燃剤の体積に対して、1倍から2倍までの体積の溶媒が使用される。これは、プロセスステップ(d)で得られた難燃剤を溶媒と混合し、続いて、接線流濾過(クロスフロー濾過)またはダイアフィルトレーションを実施することによって行われる。好ましくは、洗浄のために水が使用される。任意選択で、洗浄は、最初に水でpH7まで、最後にN-メチルモルホリン-N-オキシドで実施される。
【0039】
任意選択で、水をN-メチルモルホリン-N-オキシドと交換する前に、濃厚化ステップを実行してもよく、これは、当業者に公知な機械的プロセス(例えば、遠心分離)または熱的プロセス(例えば、蒸発)によって達成される。
【0040】
続いて、濃縮難燃剤の繊維またはそれぞれ繊維材料への組み込みは、例えば、リヨセルプロセスもしくはビスコースプロセスもしくはキュプラプロセスの過程で、またはセルロースの溶解媒体としてイオン性液体が使用される方法によって、行われる。
【0041】
このため、本発明はさらに、紡糸ドープからの難燃性セルロース人造繊維の製造方法であって、
- 前述のようにして製造したテトラキスヒドロキシアルキルホスホニウム化合物からのポリマーを提供するステップと、
- それをセルロース系紡糸ドープと混合するステップであり、水性分散系の形態にあるテトラキスヒドロキシアルキルホスホニウム化合物からのポリマーが、セルロースに対して5重量%~50重量%の量で存在する、ステップと、
- 紡糸ドープを紡糸口金を通して紡糸浴中へ紡糸し、フィラメントを形成するステップと、
- フィラメントを延伸するステップと、
- フィラメントを沈殿させるステップと、
- 洗浄、漂白および仕上げによって後処理するステップと
を含む、方法に関する。
【0042】
フィラメントは、連続マルチフィラメントまたはステープルファイバーであり得る。ステープルファイバーの場合は、フィラメントをステープルファイバーへ切断するステップが、フィラメントの沈殿の後に提供される。
【0043】
そのうえ、本発明の1つの態様は、少なくとも1つのNHもしくは少なくとも2つのNH基を含む少なくとも1種の窒素化合物、またはNHを有する、テトラキスヒドロキシアルキルホスホニウム化合物からの酸化ポリマーを含み、1.8μm未満、好ましくは1.7μm未満、特に好ましくは1μm未満の粒径d99を有する難燃剤を含む、セルロース人造製品に関する。0.9μmまでの粒径d99が考えられる。好ましくは、これは0.9dtex以上から3以下までの繊度を有する紡織繊維であると規定される。
【0044】
セルロース人造製品は、例えば、薄膜、粉末、不織布またはフィブリドであり得る。例えば、不織布は、リヨセルまたはキュプラプロセスによる、メルトブローン不織布であり得る。
【0045】
本発明者らは、本発明によって、1.8μm未満、好ましくは1.7μm未満、最も好ましくは1μm未満の粒径d99は、上述の方法により達成することができることを発見した。湿式粉砕プロセスでは、こうした粒径は商業的許容可能なコストでは達成できず、これに対する限界は2μm以上のd99である。
【0046】
好ましくは、紡糸ドープは水性第三級アミンオキシド中のセルロース溶液である。
【0047】
以下のスキームIでは、テトラキスヒドロキシアルキルホスホニウム化合物と尿素からの酸化ポリマーの合成の例が、説明されている。当業者は、これが、最終架橋初期縮合物のいくつかの化学量論的に可能な組成物のうちの1つにすぎないことを知っている。
【0048】
【化1】
【0049】
第1のステップでは、ステップ(a)でテトラキスヒドロキシメチルホスホニウムクロライドは尿素と反応して、初期縮合物を形成する。続いて、ステップ(b)は、アンモニアの助けにより初期縮合物を反応させて、架橋ポリマーを形成することによって、マイクロジェットリアクターの中で実行される。そうすることで、アンモニアおよび初期縮合物がそれぞれ、互いに別個に、反応器ハウジングによって包囲された反応器空間内の水溶液中の共通衝突地点上に、ノズルによって噴射される。変形の一実施形態では、反応器の内部でガス雰囲気を維持するために、冷却ガスが、開口部を介して反応器空間内へ導入される。結果として得られる生成物および過剰ガスは、ガス入口側の過剰圧によってまたはガス出口側の陰圧によって、もう1つの開口部を通して反応器ハウジングから除去される。別の実施形態では、冷却ガスは反応器空間内へ導入されず、結果として得られる生成物は、ガス出口側の陰圧によって、開口部を通して反応器ハウジングから除去されることが提供される。
【0050】
好ましい実施形態によれば、ステップ(c)は、酸化剤としてHを酸化ポリマーに添加して、マイクロジェットリアクターの外部で行われる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】反応器での方法のステップ(b)を模式的に示す図である。
図2】方法のステップ(d)を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図1では、反応器空間を有する反応器ハウジングが示され、ステップ(a)からの初期縮合物R1は、反応器空間内へ横から導入される。アンモニアR2も反応器空間内へ導入され、初期縮合物R1およびアンモニアR2は衝突地点で出会う。反応生成物の放出のために、開口部1を介してガスを導入することができ、ガスは反応生成物とともにガス出口側2から出る。初期縮合物R1およびアンモニアR2が、開口部1を介して導入されるキャリヤーガスなしで衝突地点へもたらされることも示している。こうした構造では、反応器ハウジングは、ガスにとって反応器空間および閉じた開口部1を有して運転することができる。次に、反応生成物は、ガス出口側2を介して陰圧によって除去することができる。
【0053】
図2は精製ステップ(d)を示し、最初に、ステップ(c)からの反応生成物は、供給原料11として貯蔵タンク12の中へ導入される。ポンプ16を介して、それは膜14を横切って、例えば接線流濾過によって精製される。保持液13は、貯蔵タンク12へ戻される。透過液15は、放出される。
【実施例1】
【0054】
マイクロジェットリアクター(MJR)を使用する難燃剤分散系の生成、および続くビスコースプロセスによる難燃性繊維の紡糸
初期縮合物の生成は、オーストリア特許出願公開第510909号と同様に実施され、テトラキスヒドロキシメチルホスホニウムクロライド(THPC)が、尿素との反応のための出発成分として、テトラキスヒドロキシメチルホスホニウム硫酸塩の代わりに使用される。
【0055】
得られた初期縮合物のアンモニアによる架橋は、マイクロジェットリアクター中で続いて実行される。この目的のために、10wt%溶液として得られた初期縮合物は、ポリビニルピロリドン(Duralkan INK30)が初期縮合物に対して12重量%添加される際に、11バールの圧力で、初期縮合物流れとしてMJRの位置R1上に連続的に計量供給される。アンモニア流れとして、1.5重量%のアンモニア溶液は、11バールの圧力で位置R2に連続的に計量供給される。生成物またはガス出口側2でそれぞれ発生する反応生成物を収集し、Hと混合し、40℃より低い温度で30分撹拌する。難燃剤の前駆体(初期縮合物)と酸化剤のモル比は、1:1である。4.9%の、酸化し架橋した初期縮合物の固形分を有する、懸濁液が得られる。粒径d99は、1.79μmである。
【0056】
酸化し架橋した初期縮合物を、続いて接線流濾過によって精製し(図2)、濃縮する。この目的のために、12.3kgの懸濁液を貯蔵タンクに満たし、2バールの圧力で、ポリエーテルスルホン膜(150kDaおよび0.6m濾過面積)を横切って4サイクル処理する。サイクル1~3の後、各場合、貯蔵タンク中の初期重量が12.3kgであるように、脱イオン水で希釈する。2.5時間の全期間にわたる4サイクルの後、14.7%の固形分を有する4.3kgの懸濁液が得られる。
【0057】
生成した懸濁液は、難燃剤セルロース成形体の生成に特に好適である。
【0058】
ビスコースまたはリヨセル繊維の形態にあるセルロース人造繊維中の難燃剤の割合は、繊維に対して、5重量%~50重量%の間、好ましくは10重量%~30重量%の間、特に好ましくは15重量%~25重量%の間であり得る。割合が低すぎる場合、難燃剤効果は不十分になり、割合が推奨限度を超える場合、繊維の機械特性は過度に下がるであろう。それらの割合によって、条件付き状況での強度が18cN/テックス~50cN/テックスの範囲であることを特徴とする、難燃性セルロース人造繊維を得ることができる。
【0059】
ブナパルプ(R18=97.5%)から、6.0%セルロース/6.5%NaOHの組成を有するビスコースを生成し、40%のCS2を使用した。改質剤(2%のジメチルアミンおよび1%のポリエチレングリコール2000、各場合セルロースに対する)、および14.7%の分散系の形態にある、セルロースに対して22%の難燃剤を、62の紡糸ガンマ値(spinning gamma value)および120落下球秒(falling ball second)の粘度を有するビスコースに添加した。混合されたビスコースを、72g/lの硫酸、120g/lの硫酸ナトリウムおよび60g/lの硫酸亜鉛の組成を有する紡糸浴の中へ、38℃の温度で、60μmノズルを用いて紡糸し、第2の浴(95℃の水)中で120%に延伸し、42m/分で引き取った。後処理(高温の希釈HSO/水/脱硫/水/脱色/水/仕上げ)を公知の方法によって実施した。2.19dtexのタイター、21.2cN/テックスの強度(条件付き)および12.4%の最大引張伸び(条件付き)を有する繊維を得た。
【実施例2】
【0060】
マイクロジェットリアクター(MJR)を使用する難燃剤分散系の生成、および続くリヨセルプロセスによる難燃性繊維の紡糸
初期縮合物の生成は、オーストリア特許出願公開第510909号と同様に実施され、テトラキスヒドロキシメチルホスホニウムクロライド(THPC)が、尿素との反応のための出発成分として、テトラキスヒドロキシメチルホスホニウム硫酸塩の代わりに使用される。
【0061】
得られた初期縮合物のアンモニアによる架橋は、マイクロジェットリアクター中で続いて実行される。この目的のために、10wt%溶液として得られた初期縮合物は、エステル化ポリカルボキシレート(Viscocrete P-510)が初期縮合物に対して5重量%添加される際に、11バールの圧力で、初期縮合物流れとしてMJRの位置R1の上に連続的に計量供給される。アンモニア流れとして、1.5重量%のアンモニア溶液は、11バールの圧力で位置R2に連続的に計量供給される。生成物またはガス出口側2でそれぞれ発生する反応生成物を、収集し、Hと混合し、40℃より低い温度で30分撹拌する。難燃剤の前駆体(初期縮合物)と酸化剤のモル比は、1:1である。5.3%の、酸化し架橋した初期縮合物の固形分を有する、懸濁液が得られる。粒径d99は、1.71μmである。
【0062】
酸化し架橋した初期縮合物を、続いて接線流濾過によって精製し(図2)、濃縮する。この目的のために、12.3kgの懸濁液を貯蔵タンクに満たし、2バールの圧力で、ポリエーテルスルホン膜(150kDaおよび0.6m濾過面積)を横切って4サイクル処理する。サイクル1~3の後、各場合、貯蔵タンク中の初期重量が12.3kgであるように、脱イオン水で希釈する。2.5時間の全期間にわたる4サイクルの後、16%の固形分を有する4.3kgの懸濁液が得られる。
【0063】
生成した懸濁液は、難燃剤セルロース成形体の生成に特に好適である。
【0064】
ビスコースまたはリヨセル繊維の形態にあるセルロース人造繊維中の難燃剤の割合は、繊維に対して、5重量%~50重量%の間、好ましくは10重量%~30重量%の間、特に好ましくは15重量%~25重量%の間であり得る。割合が低すぎる場合、難燃剤効果は不十分になり、割合が推奨限度を超える場合、繊維の機械特性は過度に下がるであろう。それらの割合によって、条件付き状況での強度が18cN/テックス~50cN/テックスの範囲であることを特徴とする、難燃性セルロース人造繊維を得ることができる。
【0065】
16%分散系の形態にある、セルロースに対して22%の難燃剤を、スラリー(パルプ/水性NMMOの混合物)に添加し、水を蒸発させて、12%セルロース/77%NMMO/11%水の組成を有する、繊維を含まない紡糸液を生成させた。硫酸塩高アルファパルプ(sulphate high-alpha pulp)をパルプとして使用した。
【0066】
確立している湿乾式紡糸(wet-dry spinning)プロセスによって、紡糸ドープを、20℃の温度を有し、25%のNMMOを含有している紡糸浴の中へ、110℃の紡糸温度で100μmノズルの助けにより紡糸して、2.2dtexの繊維を形成した。35.0cN/テックスの強度(条件付き)および13.3%の最大引張伸び(条件付き)を有する繊維を得た。
図1
図2