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特許7433229液晶移相器及びその操作方法、液晶アンテナ及び通信装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】液晶移相器及びその操作方法、液晶アンテナ及び通信装置
(51)【国際特許分類】
   H01P 1/18 20060101AFI20240209BHJP
【FI】
H01P1/18
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020530340
(86)(22)【出願日】2019-08-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 CN2019099798
(87)【国際公開番号】W WO2020030046
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-08-03
(31)【優先権主張番号】201810910040.8
(32)【優先日】2018-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】510280589
【氏名又は名称】京東方科技集團股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BOE TECHNOLOGY GROUP CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.10 Jiuxianqiao Rd.,Chaoyang District,Beijing 100015,CHINA
(73)【特許権者】
【識別番号】520177079
【氏名又は名称】北京京▲東▼方▲伝▼感技▲術▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BEIJING BOE SENSOR TECHNOLOGY CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Room C-301,C-302,Floor3,Area C,Building 2, No.8 Xihuanzhong Rd.,BDA,Beijing 100176, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】王 瑛
(72)【発明者】
【氏名】丁 ▲天▼▲倫▼
(72)【発明者】
【氏名】武 杰
(72)【発明者】
【氏名】曹 雪
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲亮▼
(72)【発明者】
【氏名】▲賈▼ 皓程
(72)【発明者】
【氏名】蔡 佩芝
(72)【発明者】
【氏名】▲車▼ 春城
【審査官】赤穂 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-298306(JP,A)
【文献】Anne-Laure Franc et al.,Compact and Broadband Millimeter-Wave Electrically Tunable Phase Shifter Combining Slow-Wave Effect With Liquid Crystal Technology,IEEE Transactions on Microwave Theory and Techniques,米国,IEEE,2013年09月30日,vol. 61, no.11,3905-3915
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置されたマイクロ波伝送構造と位相調整構造と、前記マイクロ波伝送構造と前記位相調整構造との間に位置する液晶層と、を備え、
前記位相調整構造は、複数の位相調整ユニットを含み、
前記複数の位相調整ユニットは、その上に印加される電圧と前記マイクロ波伝送構造に印加される電圧に応じて前記液晶層の誘電率を変化させることにより、マイクロ波信号の位相を調整し、
前記複数の位相調整ユニットが調整する位相シフト量は互いに異なり
前記マイクロ波伝送構造は、
第1の基板と、
前記第1の基板の、前記液晶層に近い側面に位置するマイクロストリップラインと、
前記第1の基板の、前記液晶層とは反対の側面に位置する接地電極と、を備え、
前記複数の位相調整ユニットは、その上に印加される電圧と前記マイクロストリップラインに印加される電圧に応じて前記液晶層の誘電率を変化させることにより、前記マイクロ波信号の前記位相を調整し、
前記位相調整構造は第2の基板を備え、
前記複数の位相調整ユニットは、前記第2の基板の、前記液晶層に近い側面に設けられており、
前記複数の位相調整ユニットの各々は、前記第2の基板の、前記液晶層に近い側面に間隔を置いて配置された複数の電極ストリップを含み、各前記電極ストリップと前記マイクロストリップラインは前記第1の基板上における正射影が少なくとも部分的に重なり、前記複数の位相調整ユニットにおける電極ストリップの数が異なる、
ことを特徴とする液晶移相器。
【請求項2】
各前記電極ストリップの長手方向と前記マイクロストリップラインの長手方向は互いに垂直である、
請求項に記載の液晶移相器。
【請求項3】
対向配置されたマイクロ波伝送構造と位相調整構造と、前記マイクロ波伝送構造と前記位相調整構造との間に位置する液晶層と、を備え、
前記位相調整構造は、複数の位相調整ユニットを含み、
前記複数の位相調整ユニットは、その上に印加される電圧と前記マイクロ波伝送構造に印加される電圧に応じて前記液晶層の誘電率を変化させることにより、マイクロ波信号の位相を調整し、
前記複数の位相調整ユニットが調整する位相シフト量は互いに異なり、
前記マイクロ波伝送構造は、
第1の基板と、
前記第1の基板の、前記液晶層に近い側面に位置するコプレーナ導波路層と、を備え、
前記コプレーナ導波路層は、
前記第1の基板の、前記液晶層に近い側面に位置する中心バンドと、
前記中心バンドの両側にそれぞれ設けられた2本の接地バンドと、を備え、
前記複数の位相調整ユニットは、その上に印加される電圧と前記中心バンドに印加される電圧に応じて前記液晶層の誘電率を変化させることにより、マイクロ波信号の位相を調整し、
前記位相調整構造は第2の基板を備え、
前記複数の位相調整ユニットは、前記第2の基板の、前記液晶層に近い側面に設けられており、
前記複数の位相調整ユニットの各々は、前記第2の基板の、前記液晶層に近い側面に間隔を置いて配置された複数の電極ストリップを含み、各前記電極ストリップと前記中心バンドは前記第1の基板上における正射影が少なくとも部分的に重なり、前記複数の位相調整ユニットにおける電極ストリップの数が異なる、
ことを特徴とする液晶移相器。
【請求項4】
各前記電極ストリップの長手方向と前記中心バンドの長手方向は互いに垂直である、
請求項に記載の液晶移相器。
【請求項5】
前記第2の基板の、前記液晶層に近い側面の周辺領域には、前記複数の位相調整ユニットに一対一で対応する複数のオフセット線が設けられており、各前記オフセット線は、対応する前記位相調整ユニットにおける各電極ストリップに接続されている、
請求項またはに記載の液晶移相器。
【請求項6】
任意の隣接する2つの前記電極ストリップの間の間隔は一定である、
請求項1~4のいずれか1項に記載の液晶移相器。
【請求項7】
前記電極ストリップの材料は、アルミニウム、銀、金、クロム、モリブデン、ニッケル、鉄のいずれか一種類を含む、
請求項1~4のいずれか1項に記載の液晶移相器。
【請求項8】
前記2本の接地バンドの各々は前記中心バンドから互いに離隔されており、前記2本の接地バンドの各々の長手方向と前記中心バンドの長手方向は互いに平行である、
請求項に記載の液晶移相器。
【請求項9】
前記第1の基板は、ガラス、セラミックス、及び高純度石英ガラスのうちの少なくとも1つで作製される、
請求項1~のいずれか1項に記載の液晶移相器。
【請求項10】
前記液晶層はポジ型液晶分子を含み、各前記ポジ型液晶分子の長軸方向と前記第1の基板が位置する平面との間の角度は0度より大きく45度以下である、
請求項1~のいずれか1項に記載の液晶移相器。
【請求項11】
前記液晶層はネガ型液晶分子を含み、各前記ネガ型液晶分子の長軸方向と前記第1の基板が位置する平面との間の角度は45度より大きく90度未満である、
請求項1~のいずれか1項に記載の液晶移相器。
【請求項12】
前記液晶移相器は、ビット数Nが前記複数の位相調整ユニットの数に等しいデジタル移相器であり、前記デジタル移相器は2個の異なる位相シフト量を実現するように構成される、
請求項1~11のいずれか1項に記載の液晶移相器。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の液晶移相器を含む、液晶アンテナ。
【請求項14】
請求項13に記載の液晶アンテナを含む、通信装置。
【請求項15】
請求項1~12のいずれか1項に記載の液晶移相器を操作する方法であって、
前記マイクロ波伝送構造に第1の電圧を印加するステップと、
位相シフト量に応じて前記複数の位相調整ユニットのうち少なくとも1つの位相調整ユニットに前記第1の電圧とは異なる第2の電圧を印加して、前記マイクロ波伝送構造と前記少なくとも1つの位相調整ユニットとの間に電界を発生させることにより、前記液晶層の液晶分子の長軸が前記電界の方向に実質的に平行又は実質的に垂直になるようにするステップと、を含む、
液晶移相器の操作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2018年8月10日に提出された中国特許出願No.201810910040.8の優先権を主張し、当該特許出願のすべての内容を参照により援用する。
【0002】
本開示は、通信技術の分野に属し、具体的に液晶移相器、液晶アンテナ、通信装置及び液晶移相器の操作方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
移相器は電磁波信号の位相を変化させるためのデバイスである。理想的な移相器は、挿入損失が小さく、かつ、振幅バランスをとるために、異なる位相状態において損失がほぼ同一である。移相器には、電気制御、光制御、磁気制御、機械制御など、いくつかのタイプがある。移相器の基本的な機能は、バイアス電圧を制御することによってマイクロ波信号の送信位相を変化させることである。移相器は、位相シフト量が離散的に調整可能なデジタル移相器と、位相シフト量が連続的に調整可能なアナログ移相器とに分けられる。デジタル移相器は、フェーズドアレイアンテナにおける重要な部品であり、アンテナアレイにおける各パスの信号の位相を制御して、放射ビームを電気的に走査する。デジタル通信システムにおいても、位相変調器としてデジタル移相器が用いられることが多い。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の実施例は、液晶移相器、液晶アンテナ、通信装置、及び液晶移相器の操作方法を提供する。
【0005】
本開示の第1の態様は、
対向配置されたマイクロ波伝送構造と位相調整構造と、マイクロ波伝送構造と位相調整構造との間に位置する液晶層と、を備え、
位相調整構造は複数の位相調整ユニットを含み、
複数の位相調整ユニットは、その上に印加される電圧とマイクロ波伝送構造に印加される電圧に応じて液晶層の誘電率を変化させることにより、マイクロ波信号の位相を調整し、
複数の位相調整ユニットが調整する位相シフト量は互いに異なる
ことを特徴とする液晶移相器を提供する。
【0006】
一実施例において、マイクロ波伝送構造は、
第1の基板と、
第1の基板の、液晶層に近い側面に位置するマイクロストリップラインと、
第1の基板の、液晶層とは反対の側面に位置する接地電極と、を備え、
複数の位相調整ユニットは、その上に印加される電圧とマイクロストリップラインに印加される電圧に応じて液晶層の誘電率を変化させることにより、マイクロ波信号の位相を調整する。
【0007】
一実施例において、位相調整構造は第2の基板を備え、
複数の位相調整ユニットは、第2の基板の、液晶層に近い側面に設けられており、
複数の位相調整ユニットの各々は、第2の基板の、液晶層に近い側面に間隔を置いて配置された複数の電極ストリップを含み、各電極ストリップとマイクロストリップラインは第1の基板上における正射影が少なくとも部分的に重なり、複数の位相調整ユニットにおける電極ストリップの数が異なる。
一実施例において、各電極ストリップの長手方向とマイクロストリップラインの長手方向は互いに垂直である。
【0008】
一実施例において、マイクロ波伝送構造は、
第1の基板と、
第1の基板の、液晶層に近い側面に位置するコプレーナ導波路層と、を備える。
一実施例において、コプレーナ導波路層は、
第1の基板の、液晶層に近い側面に位置する中心バンドと、
中心バンドの両側にそれぞれ設けられた2本の接地バンドと、を備え、
複数の位相調整ユニットは、その上に印加される電圧と中心バンドに印加される電圧に応じて液晶層の誘電率を変化させることにより、マイクロ波信号の位相を調整する。
一実施例において、位相調整構造は第2の基板を備え、
複数の位相調整ユニットは、第2の基板の、液晶層に近い側面に設けられており、
複数の位相調整ユニットの各々は、第2の基板の、液晶層に近い側面に間隔を置いて配置された複数の電極ストリップを含み、各電極ストリップと中心バンドは第1の基板上における正射影が少なくとも部分的に重なり、複数の位相調整ユニットにおける電極ストリップの数が異なる。
【0009】
一実施例において、各電極ストリップの長手方向と中心バンドの長手方向は互いに垂直である。
【0010】
一実施例において、第2の基板の、液晶層に近い側面の周辺領域には、複数の位相調整ユニットに一対一で対応する複数のオフセット線が設けられており、各オフセット線は、対応する位相調整ユニットにおける各電極ストリップに接続されている。
【0011】
一実施例において、任意の隣接する2つの電極ストリップの間の間隔は一定である。
【0012】
一実施例において、電極ストリップの材料は、アルミニウム、銀、金、クロム、モリブデン、ニッケル、鉄のいずれか一種類を含む。
【0013】
一実施例において、2本の接地バンドの各々は中心バンドから互いに離隔されており、2本の接地バンドの各々の長手方向と中心バンドの長手方向は互いに平行である。
【0014】
一実施例において、複数の位相調整ユニットは互いに直列に接続されている。
【0015】
一実施例において、第1の基板は、ガラス、セラミックス、及び高純度石英ガラスのうちの少なくとも1つで作製される。
【0016】
一実施例において、液晶層はポジ型液晶分子を含み、各ポジ型液晶分子の長軸方向と第1の基板が位置する平面との間の角度は0度より大きく45度以下である。
【0017】
一実施例において、液晶層はネガ型液晶分子を含み、各ネガ型液晶分子の長軸方向と第1の基板が位置する平面との間の角度は45度より大きく90度未満である。
【0018】
一実施例において、液晶移相器は、ビット数Nが複数の位相調整ユニットの数に等しいデジタル移相器であり、デジタル移相器は2個の異なる位相シフト量を実現するように構成される。
【0019】
本開示の第2の態様は、本開示の上述の実施例のいずれか1つによる液晶移相器を含む液晶アンテナを提供する。
【0020】
本開示の第3の態様は、本開示の上述の実施例に記載の液晶アンテナを含む通信装置を提供する。
【0021】
本開示の第4の態様は、本開示の上述の実施例のいずれか1つに記載の液晶移相器を操作する方法を提供し、方法は、
マイクロ波伝送構造に第1の電圧を印加するステップと、
位相シフト量に応じて複数の位相調整ユニットのうち少なくとも1つの位相調整ユニットに第1の電圧とは異なる第2の電圧を印加して、マイクロ波伝送構造と少なくとも1つの位相調整ユニットとの間に電界を発生させることにより、液晶層の液晶分子の長軸が電界の方向に実質的に平行又は実質的に垂直になるようにするステップと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本開示の実施例による液晶移相器の断面図である。
図2】本開示の実施例による液晶移相器の上面透視図である。
図3図2に示す液晶移相器の部分Aの拡大図である。
図4】本開示の実施例による液晶移相器の断面図である。
図5】本開示の実施例による液晶移相器の上面透視図である。
図6図5に示す液晶移相器の部分Bの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
当業者が本開示の技術案をよりよく理解できるように、以下では図面及び例示的な実施形態を組み合わせて本開示についてさらに詳細に説明する。
【0024】
特に定義されていない限り、本開示の実施例と請求項で使用される技術用語又は科学用語は、本開示が属する技術分野における通常の技能を有する者によって理解される通常の意味である。本開示で使用される「第1の」、「第2の」及び類似の単語は、いかなる順序、数、又は重要性を示すものでもなく、異なる構成要素を区別するために使用されるものであるにすぎない。「備える」又は「含む」などの類似の単語は、当該単語の前に存在する要素又は物品が、当該単語の後に列挙される要素又は物品及びその均等物を包含することを意味し、他の要素又は物品を排除するものではない。「接続」又は「連結」などの類似の単語は、物理的接続又は機械的接続に限定されず、直接的又は間接的のいずれであっても、電気的接続を含んでもよい。「上」、「下」、「左」、「右」などは、図面における相対的な位置関係を示すものであり、記載された対象の絶対的な位置が変化する場合、当該相対的な位置関係もそれに応じて変化する可能性がある。
【0025】
層、膜、領域、または基板などの要素が別の要素の「上」又は「下」に位置すると称されるとき、当該要素は別の要素の「上」又は「下」に「直接」位置してもよく、中間要素が存在してもよい。
【0026】
本開示の実施例は、対向配置されたマイクロ波伝送構造と位相調整構造と、マイクロ波伝送構造と位相調整構造との間に位置する液晶層と、を備えるデジタル液晶移相器を提供する。位相調整構造は複数の位相調整ユニットを含み、複数の位相調整ユニットは、その上に印加される電圧とマイクロ波伝送構造に印加される電圧に応じて液晶層の誘電率を変化させることにより、マイクロ波信号の位相を調整する。複数の位相調整ユニットが調整する位相シフト量は互いに異なる。
【0027】
なお、移相器のビット数は、位相調整ユニットの数を決定するか、または位相調整ユニットの数に依存する。即ち、移相器のビット数がNであれば、位相調整ユニットの数はNであると確定でき、その逆も同様である。この場合、移相器は、2個の異なる位相シフト量(または位相状態と称する)を実現することができる。一実施例において、移相器が実現可能な最小位相シフト量は360°/2であってもよい。
【0028】
本実施例の液晶移相器において、位相調整構造は複数の位相調整ユニットを含み、各位相調整ユニット及びマイクロ波伝送構造が電圧印加されて電界を形成した後、液晶層を偏向させるように駆動して、液晶層の誘電率を変化させるため、マイクロ波信号の位相を変化させることができ、異なる位相調整ユニット及びマイクロ波伝送構造が電圧印加された後、調整する位相シフト量は互いに異なる。即ち、各位相調整ユニットは、対応する1つの位相シフト量を調整する。よって、位相シフト量の調整時に、全ての位相調整ユニットに電圧を印加する必要はなく、調整しようとする位相シフト量の大きさに応じて対応する位相調整ユニットに電圧を印加することができることから、本実施例における移相器は制御が容易であり、消費電力が小さい。
【0029】
図1は、本開示の実施例による液晶移相器の断面図であり、図2は、当該液晶移相器の上面透視図である。例えば、図1は、図2に示すI-I’線に沿った当該液晶移相器の断面図である。図1に示すように、本開示の実施例は、対向配置されたマイクロ波伝送構造1と位相調整構造2と、マイクロ波伝送構造1と位相調整構造2との間に位置する液晶層3と、を備えるデジタル液晶移相器を提供する。当該液晶移相器におけるマイクロ波伝送構造1は、第1の基板10と、第1の基板10の、液晶層3に近い側面に設けられたマイクロストリップライン11と、第1の基板10の、液晶層3とは反対の側面に位置する接地電極12と、を備える。位相調整構造2における複数の位相調整ユニット21の各々は、第2の基板20の、液晶層3に近い側面に設けられた複数の電極ストリップ211(図2及び図3を参照)を含み、異なる位相調整ユニット21における電極ストリップ211の数は異なっている。例えば、マイクロストリップライン11と各電極ストリップ211は基板上における正射影が少なくとも部分的に重なる。一実施例において、図1に示すように、マイクロストリップライン11は第1の基板10の、液晶層3に近い側面の中央部に設けられ、接地電極12は第1の基板10の、液晶層3とは反対の側面を完全に覆うことができる。一実施例において、複数の位相調整ユニット21は互いに直列に接続されている。
【0030】
例えば、このような移相器においてマイクロストリップライン11はマイクロ波伝送構造1における一部の構造とされながら、さらに位相調整構造2における一部の構造とされる。即ち、マイクロストリップライン11は電圧が印加されてもよく、マイクロ波信号を送受信してもよい。例えば、図1に示す実施例では、マイクロストリップライン11と接地電極12を用いてマイクロ波伝送構造1を形成し、このとき、マイクロ波信号の大部分は、マイクロストリップライン11と接地電極12との間の第1の基板10内で伝送される。マイクロ波の損失を効果的に低減するために、第1の基板10はガラスやセラミックス等の材料を用いて作製することができる。これにより、第1の基板10内で伝送されるマイクロ波信号は吸収されることがないため、マイクロ波の損失を効果的に低減することができる。
【0031】
例えば、制御及び配線の簡素化の便宜上、各位相調整ユニット21における全ての電極ストリップ211は同一のオフセット線22によって制御することができる。
【0032】
例えば、図2及び図3に示すように、6ビット液晶デジタル型の液晶移相器を例に挙げて説明する。当該移相器は、6つの位相調整ユニット21を有し、異なる位相調整ユニット21における電極ストリップ211の数が異なり、各位相調整ユニット21は1本のオフセット線22によって独立制御され、64個の異なる位相量の位相シフトを実現する。図2において、6つの位相調整ユニット21と6本のオフセット線22は一対一で対応してもよい。例えば、一実施例において、図2に示す6つの位相調整ユニット21が上から下に実現する位相シフト量はそれぞれ0.9°、1.5°、3.1°、6.1°、11.5°、23.1°であってもよい。しかし、本開示はこれに限定されない。例えば、各位相調整ユニット21(又は各電極ストリップ211)が実現可能な位相シフト量は、位相調整ユニット21(又は当該電極ストリップ211)の材料及び寸法に関連し、実験又はシミュレーションによって確定することができる。例えば、一実施例において、図2に示す6つの位相調整ユニット21は、上から順にそれぞれ第1の位相調整ユニット21~第6の位相調整ユニット21である。第1の位相調整ユニット21が実現する位相シフト量は、360°/2=5.625°、1.5°であってもよく、第2の位相調整ユニット21が実現する位相シフト量は第1の位相調整ユニット21の位相シフト量の2倍、即ち5.625°×2=11.25°であってもよく、第3の位相調整ユニット21が実現する位相シフト量は第2の位相調整ユニット21の位相シフト量の2倍、即ち11.25°×2=22.5°であってもよく、第4の位相調整ユニット21が実現する位相シフト量は第3の位相調整ユニット21の位相シフト量の2倍、即ち22.5°×2=45°であってもよく、第5の位相調整ユニット21が実現する位相シフト量は第4の位相調整ユニット21の位相シフト量の2倍、即ち45°×2=90°であってもよく、第6の位相調整ユニット21が実現する位相シフト量は第5の位相調整ユニット21の位相シフト量の2倍、即ち90°×2=180°であってもよい。あるいは、各位相調整ユニット21(又は各電極ストリップ211)が実現可能な位相シフト量は、他の位相シフト量を実現するように実際の用途に応じて設計することができる。
【0033】
仮に、マイクロ波信号が0.9°の位相シフト量を実現するようにする場合、当該位相シフト量に対応する第1の位相調整ユニット21(例えば、図2における一番上の位相調整ユニット21)が接続されたオフセット線22に第2の電圧を印加して、オフセット線22が、それと接続された電極ストリップ211に当該第2の電圧を出力するとともに、マイクロストリップライン11に第2の電圧とは異なる第1の電圧を印加すればよい。このとき、マイクロストリップライン11と、電圧が印加された電極ストリップ211との間に電界が発生して、液晶層3の液晶分子31を偏向させるように駆動して、液晶層3の誘電率を変化させることにより、マイクロ波信号の位相が0.9°の位相シフトを発生する。また、仮にマイクロ波信号が2.4°(=0.9°+1.5°)の位相シフト量を実現するようにする場合、第1の位相調整ユニット21と第2の位相調整ユニット21(例えば、図2における一番上の位相調整ユニット21とそれに隣接する位相調整ユニット21)がそれぞれ接続されたオフセット線22に第2の電圧を印加するように制御して、この2つの位相調整ユニット21における電極ストリップ211に第2の電圧を印加するように制御するとともに、マイクロストリップライン11に第1の電圧を印加する必要がある。このとき、マイクロストリップライン11と、電圧が印加された電極ストリップ211との間に電界が発生して、液晶層3の液晶分子31を偏向させるように駆動して、液晶層3の誘電率を変化させることにより、マイクロ波信号の位相が2.4°の位相シフトを発生する。同様に、他の位相シフト量(例えば、上記6つの位相シフト量0.9°、1.5°、3.1°、6.1°、11.5°および23.1°のうちの少なくとも1つにおける、0.9°および2.4°以外の位相シフト量)を実現する場合、個別または組み合わせによって当該位相シフト量を実現できる位相調整ユニット21を制御して、上記の方法で動作させてマイクロ波信号の位相を変化させる必要がある。
【0034】
例えば、このような移相器において、第2の基板20上における全ての電極ストリップ211は周期的に分布するように配置してもよい。具体的には、任意の隣接する2つの電極ストリップ211の間の間隔は同一に(即ち、一定に)設定してもよい。あるいは、各電極ストリップ211は、任意の隣接する2つの電極ストリップ211の間の間隔が一定の規則に従って分布するように配置してもよい。このように配置するのは、電極ストリップ211の制御を容易にするためである。
【0035】
例えば、電極ストリップ211の長手方向(例えば、図2における水平方向)とマイクロストリップライン11の長手方向(例えば、図2における上下方向)は互いに垂直である。なお、電極ストリップ211の長手方向とマイクロストリップライン11の長手方向とは、いずれもそれぞれの長軸方向を意味する。このように配置するのは、各位相調整ユニット21における電極ストリップ211に電圧を印加したときに、当該位相調整ユニット21における電極ストリップ211とマイクロストリップライン11との間に形成される電界が十分に大きくなるように、各電極ストリップ211とマイクロストリップライン11との交差面積を十分に大きくして、それらの間の液晶分子31を偏向させるように駆動し、液晶層3の誘電率を変化させて所望の位相シフト量を実現するためである。
【0036】
例えば、第1の基板10及び第2の基板20としては、厚さ100~1000μmのガラス基板、サファイア基板、厚さ10~500μmのポリエチレンテレフタレート基板、トリアリルシアヌレート基板及びポリイミド透明可撓性基板を用いることができる。例えば、第1の基板10及び第2の基板20としては、誘電損失が極めて低い高純度石英ガラスを用いることができる。通常のガラス基板に比べて、第1の基板10及び第2の基板20は高純度石英ガラスを用いることにより、マイクロ波に対する損失を効果的に低減し、消費電力が低くかつ信号対雑音比が高い移相器を実現することができる。例えば、高純度石英ガラスとは、SiOの重量比が99.9%以上である石英ガラスを指す。
【0037】
例えば、マイクロストリップライン11、接地電極12、各電極ストリップ211の材料としては、アルミニウム、銀、金、クロム、モリブデン、ニッケル又は鉄等の金属を用いることができる。あるいは、マイクロストリップライン11は透明導電性酸化物で作製してもよい。
【0038】
例えば、液晶層3における液晶分子31はポジ型液晶分子又はネガ型液晶分子であってもよい。なお、液晶分子31がポジ型液晶分子である場合、各液晶分子31の長軸方向と第1の基板10が位置する平面との間の角度は0度より大きく45度以下である。液晶分子31がネガ型液晶分子である場合、各液晶分子31の長軸方向と第1の基板10が位置する平面との間の角度は45度より大きく90度未満である。これにより、液晶分子31が偏向した後、液晶層3の誘電率を変化させて移相という目的を達成することが保証される。
【0039】
本実施例による液晶移相器において、位相調整構造2は複数の位相調整ユニット21を含み、各位相調整ユニット21とマイクロストリップライン11は、異なる電圧が印加されて電界を形成した後、液晶層3の液晶分子31を偏向させるように駆動して、液晶層3の誘電率を変化させる。従って、マイクロ波信号の位相を変化させることができ、異なる位相調整ユニット21における電極ストリップ211とマイクロストリップライン11は、異なる電圧が印加された後、調整する位相シフト量は互いに異なる。即ち、各位相調整ユニット21は、対応する1つの位相シフト量を調整するため、位相シフト量の調整時に、全ての位相調整ユニット21に電圧を印加する必要はなく、調整しようとする位相シフト量の大きさに応じて対応する位相調整ユニット21に電圧を印加することができることから、本実施例における移相器は制御が容易であり、消費電力が小さい。また、マイクロストリップライン11と接地電極12をマイクロ波伝送構造1とし、このとき、マイクロ波信号の大部分は、マイクロストリップライン11と接地電極12との間の第1の基板10内で伝送される。第1の基板10はガラス、セラミックス又は高純度石英ガラスを用いて作製することができ、第1の基板10内で伝送されるマイクロ波信号は吸収されることがないため、マイクロ波の損失を効果的に低減することができる。
【0040】
図4は、本開示の別の実施例による液晶移相器の断面図であり、図5は、当該液晶移相器の上面透視図である。例えば、図4は、図5に示すII-II’線に沿った当該液晶移相器の断面図である。図4に示すように、本実施例は、対向配置されたマイクロ波伝送構造1と位相調整構造2と、マイクロ波伝送構造1と位相調整構造2との間に位置する液晶層3と、を備える別のデジタル液晶移相器を提供する。当該移相器におけるマイクロ波伝送構造1は、第1の基板10と、第1の基板10の、液晶層3に近い側面に位置するコプレーナ導波路層と、を備える。例えば、当該コプレーナ導波路層は、第1の基板10上に、例えば第1の基板10の、液晶層3に近い側面の中央部に位置する中心バンド13と、中心バンド13の両側にそれぞれ設けられた2本の接地バンド14とを備えてもよい。一実施例において、図5及び図6に示すように、2本の接地バンド14の各々は中心バンドから互いに離隔されており、2本の接地バンド14の各々の長手方向と中心バンド13の長手方向は互いに平行である。一実施例において、中心バンド13は上記実施例におけるマイクロストリップライン11と同一であってもよい。位相調整構造2は、第2の基板20と、第2の基板20の、液晶層3に近い側面に位置する複数の位相調整ユニット21と、を備える。例えば、各位相調整ユニット21は、第2の基板20の、液晶層3に近い側面に間隔を置いて配置された複数の電極ストリップ211を含み、各電極ストリップ211と中心バンド13は第1の基板10上における正射影が少なくとも部分的に重なり、複数の位相調整ユニット21における電極ストリップ211の数が異なる。例えば、複数の位相調整ユニット21は互いに直列に接続されていてもよい。
【0041】
例えば、このような移相器においてマイクロ波信号はコプレーナ導波路層における中心バンド13と接地バンド14との間で限定される領域で伝送され、コプレーナ導波路層を移相器に適用する場合、液晶層3の厚さは比較的薄く、4~5μm程度に設計されるため、マイクロ波信号は液晶層3内で伝送されるが、その損失も相対的に比較的少ない。
【0042】
例えば、制御及び配線の簡素化の便宜上、各位相調整ユニット21における各電極ストリップ211は同一のオフセット線22によって制御することができる。
【0043】
例えば、図5及び図6に示すように、6ビット液晶デジタル型の液晶移相器を例に挙げて説明する。当該移相器は、6つの位相調整ユニット21を有し、異なる位相調整ユニット21における電極ストリップ211の数が異なり、各位相調整ユニット21は1本のオフセット線22によって独立制御され、64個の異なる位相量の位相シフトを実現する。図5において、6つの位相調整ユニット21と6本のオフセット線22は一対一で対応してもよい。例えば、一実施例において、図5に示す6つの位相調整ユニット21が上から下に実現する位相シフト量はそれぞれ0.9°、1.5°、3.1°、6.1°、11.5°、23.1°であってもよい。
【0044】
仮に、マイクロ波信号が0.9°の位相シフト量を実現するようにする場合、当該位相シフト量に対応する第1の位相調整ユニット21(例えば、図5における一番上の位相調整ユニット21)が接続されたオフセット線22に第2の電圧を印加して、オフセット線22が、それと接続された電極ストリップ211に当該第2の電圧を出力するとともに、中心バンド13に当該第2の電圧とは異なる第1の電圧を印加すればよい。このとき、中心バンド13と、電圧が印加された電極ストリップ211との間に電界が発生して、液晶層3の液晶分子31を偏向させるように駆動して、液晶層3の誘電率を変化させることにより、マイクロ波信号の位相が0.9°の位相シフトを発生する。また、仮にマイクロ波信号が2.4°(=0.9°+1.5°)の位相シフト量を実現するようにする場合、第1の位相調整ユニット21と第2の位相調整ユニット21(例えば、図5における一番上の位相調整ユニット21とそれに隣接する位相調整ユニット21)がそれぞれ接続されたオフセット線22に第2の電圧を印加するように制御して、この2つの位相調整ユニット21における電極ストリップ211に第2の電圧を印加するように制御するとともに、中心バンド13に第2の電圧とは異なる第1の電圧を印加する必要がある。このとき、中心バンド13と、電圧が印加された電極ストリップ211との間に電界が発生して、液晶層3の液晶分子31を偏向させるように駆動して、液晶層3の誘電率を変化させることにより、マイクロ波信号の位相が2.4°の位相シフトを発生する。同様に、他の位相シフト量(例えば、上記6つの位相シフト量0.9°、1.5°、3.1°、6.1°、11.5°および23.1°のうちの少なくとも1つにおける、0.9°および2.4°以外の位相シフト量)を実現する場合、個別または組み合わせによって当該位相シフト量を実現できる位相調整ユニット21を制御して、上記の方法で動作させてマイクロ波信号の位相を変化させる必要がある。
【0045】
例えば、このような移相器において、第2の基板20上における全ての電極ストリップ211は周期的に分布するように配置してもよい。具体的には、任意の隣接する2つの電極ストリップ211の間の間隔は同一に(即ち、一定に)設定してもよい。当然ながら、各電極ストリップ211は、任意の隣接する2つの電極ストリップ211の間の間隔が一定の規則に従って分布するように配置してもよい。このように配置するのは、電極ストリップ211の制御を容易にするためである。
【0046】
例えば、各電極ストリップ211の長手方向(例えば、図5における水平方向)と中心バンド13の長手方向(例えば、図5における上下方向)は互いに垂直である。なお、各電極ストリップ211の長手方向と中心バンド13の長手方向とは、いずれもそれぞれの長軸方向を意味する。このように配置するのは、各位相調整ユニット21における電極ストリップ211に電圧を印加したときに、当該位相調整ユニット21における電極ストリップ211と中心バンド13との間に形成される電界が十分に大きくなるように、各電極ストリップ211と中心バンド13との交差面積を十分に大きくして、液晶分子31を偏向させるように駆動し、液晶層3の誘電率を変化させて所望の位相シフト量を実現するためである。
【0047】
例えば、第1の基板10及び第2の基板20としては、厚さ100~1000μmのガラス基板、サファイア基板、厚さ10~500μmのポリエチレンテレフタレート基板、トリアリルシアヌレート基板及びポリイミド透明可撓性基板を用いることができる。例えば、第1の基板10及び第2の基板20としては、誘電損失が極めて低い高純度石英ガラスを用いることができる。通常のガラス基板に比べて、第1の基板10及び第2の基板20は高純度石英ガラスを用いることにより、マイクロ波に対する損失を効果的に低減し、消費電力が低くかつ信号対雑音比が高い移相器を実現することができる。
【0048】
例えば、中心バンド13、接地バンド14及び各電極ストリップ211の材料としては、アルミニウム、銀、金、クロム、モリブデン、ニッケル又は鉄等の金属を用いることができる。
【0049】
例えば、液晶層3における液晶分子31はポジ型液晶分子又はネガ型液晶分子であってもよい。なお、液晶分子31がポジ型液晶分子である場合、各液晶分子31の長軸方向と第1の基板10が位置する平面との間の角度は0度より大きく45度以下である。液晶分子31がネガ型液晶分子である場合、各液晶分子31の長軸方向と第1の基板10が位置する平面との間の角度は45度より大きく90度未満である。これにより、液晶分子31が偏向した後、液晶層3の誘電率を変化させて移相という目的を達成することが保証される。
【0050】
本実施例における移相器のその他の点は、図1図3に対応する実施例における移相器と同一であってもよく、ここではその説明を省略する。
【0051】
本実施例による液晶移相器において、位相調整構造2は複数の位相調整ユニット21を含み、各位相調整ユニット21と中心バンド13は、異なる電圧が印加されて電界を形成した後、液晶層3の液晶分子31を偏向させるように駆動して、液晶層3の誘電率を変化させる。従って、マイクロ波信号の位相を変化させることができ、異なる位相調整ユニット21における電極ストリップ211と中心バンド13は、異なる電圧が印加された後、調整する位相シフト量が互いに異なる。即ち、各位相調整ユニット21は、対応する1つの位相シフト量を調整するため、位相シフト量の調整時に、全ての位相調整ユニット21に電圧を印加する必要はなく、調整しようとする位相シフト量の大きさに応じて対応する位相調整ユニット21に電圧を印加することができることから、本実施例による移相器は制御が容易であり、消費電力が小さい。
【0052】
本実施例は、上記各実施例による液晶移相器のいずれか1つを含む液晶アンテナを提供する。例えば、第2の基板20の、液晶層3とは反対の側に、少なくとも2つのパッチユニット(図示せず)を設けていてもよい。例えば、隣接する2つのパッチユニット毎の間の隙間が、電極ストリップ間の隙間に対応して配置される。これにより、上記実施例における移相器により位相調整されたマイクロ波信号を、パッチユニットの間の隙間から放射させることができる。
【0053】
また、液晶アンテナには、ケーブル内のマイクロ波信号をマイクロ波伝送構造1(例えば、図1に示すマイクロストリップライン11又は図4に示す中心バンド13)に供給するための給電インターフェース(図示せず)がさらに含まれている。
【0054】
本実施例における液晶アンテナは本開示の上記各実施例による液晶移相器のいずれか1つを含み、当該液晶移相器において位相調整構造は複数の位相調整ユニットを含み、各位相調整ユニットとマイクロ波伝送構造は、異なる電圧が印加されて電界を形成した後、液晶層の液晶分子を偏向させるように駆動して、液晶層の誘電率を変化させる。従って、マイクロ波信号の位相を変化させることができ、異なる位相調整ユニットとマイクロ波伝送構造は、異なる電圧が印加された後、調整する位相シフト量が互いに異なる。即ち、各位相調整ユニットは、対応する1つの位相シフト量を調整するため、位相シフト量の調整時に、全ての位相調整ユニットに電圧を印加する必要はなく、調整しようとする位相シフト量の大きさに応じて対応する位相調整ユニットに電圧を印加することができることから、本実施例における液晶アンテナは制御が容易であり、消費電力が小さい。
【0055】
本開示の実施例は、本開示の上記実施例による液晶アンテナを含んでもよい通信装置を提供する。当該通信装置は低消費電力化を図ることができる。
【0056】
本開示の実施例は、図1図6に示す実施例のいずれか1つに記載の液晶移相器を操作する方法を提供し、方法は、マイクロ波伝送構造1(例えば、図1に示すマイクロストリップライン11又は図4に示す中心バンド13)に第1の電圧を印加するステップと、所望の位相シフト量に応じて複数の位相調整ユニット21のうち少なくとも1つの位相調整ユニット21に第1の電圧とは異なる第2の電圧を印加して、マイクロ波伝送構造1と少なくとも1つの位相調整ユニット21との間に電界を発生させることにより、液晶層3の液晶分子31の長軸が電界の方向に実質的に平行(ポジ型液晶分子の場合)又は実質的に垂直(ネガ型液晶分子の場合)になるようにするステップと、を含んでもよい。
【0057】
以上の実施形態は、本開示の原理を説明するために用いた例示的な実施形態にすぎず、本開示はそれらに限定されないと理解されたい。当業者にとって、本開示の精神と実質的な状況を逸脱しない範囲で種々の変形と改良が可能であり、それらの変形と改良も本開示の請求範囲と見なされる。
【符号の説明】
【0058】
1 マイクロ波伝送構造
2 位相調整構造
3 液晶層
10 第1の基板
11 マイクロストリップライン
12 接地電極
13 中心バンド
14 接地バンド
20 第2の基板
21 位相調整ユニット
211 電極ストリップ
22 オフセット線
31 液晶分子
図1
図2
図3
図4
図5
図6