(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】心臓伝導パターンを識別するためのシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/367 20210101AFI20240209BHJP
A61B 5/287 20210101ALI20240209BHJP
A61B 5/361 20210101ALI20240209BHJP
A61B 5/363 20210101ALI20240209BHJP
A61B 5/364 20210101ALI20240209BHJP
A61B 8/12 20060101ALI20240209BHJP
A61B 18/12 20060101ALI20240209BHJP
A61B 18/18 20060101ALI20240209BHJP
A61N 7/00 20060101ALI20240209BHJP
A61B 18/02 20060101ALI20240209BHJP
A61B 18/20 20060101ALI20240209BHJP
【FI】
A61B5/367
A61B5/287 200
A61B5/361
A61B5/363
A61B5/364
A61B8/12
A61B18/12
A61B18/18 100
A61N7/00
A61B18/02
A61B18/20
(21)【出願番号】P 2020540418
(86)(22)【出願日】2019-01-22
(86)【国際出願番号】 US2019014498
(87)【国際公開番号】W WO2019144103
(87)【国際公開日】2019-07-25
【審査請求日】2022-01-19
(32)【優先日】2018-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513228661
【氏名又は名称】アクタス メディカル インク
【氏名又は名称原語表記】Acutus Medical,Inc.
【住所又は居所原語表記】2210 Faraday Ave,Suite 100 Carlsbad CA U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョウ デリック レン-ユ
(72)【発明者】
【氏名】ベティー グレイドン アーネスト
(72)【発明者】
【氏名】エンジェル ネイサン
(72)【発明者】
【氏名】フラハーティ アール マクスウェル
(72)【発明者】
【氏名】フラハーティ ジェイ クリストファー
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0259266(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0156616(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0224238(US,A1)
【文献】国際公開第2013/123549(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0281216(US,A1)
【文献】特表2009-505737(JP,A)
【文献】特表2017-514553(JP,A)
【文献】特表2014-514031(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0338611(US,A1)
【文献】国際公開第2017/040581(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/24-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓の診断システムであって、
患者の前記心臓の中に挿入するように構成された診断用カテーテルであって、複数の記録位置で前記患者の電気的活動データを記録するように構成された診断用カテーテルと、
アルゴリズムを含む少なくとも1つの処理ユニットであって、前記アルゴリズムは、前記電気的活動データを前記心臓の位置と関連付けることと、前記電気的活動データを使用して複雑性の評価を実行して基質媒介の複雑性を識別するとともに、前記複雑性の評価に基づいて心臓の状態に関連する診断結果を生成すること、を実行可能である、処理ユニットと、
を備え、
前記複雑性の評価は、時間、空間、大きさ、及び/又は状態が変化する、心臓の電気的、機械的、機能的、及び/又は生理学的特性の心臓の1以上の特性の変動を
示し、
前記アルゴリズムは、前記診断結果を処理して、複雑な活性化パターン間の時間及び空間にわたる複雑性の変動の評価をするように構成されている、
システム。
【請求項2】
心臓の診断システムであって、
患者の前記心臓の中に挿入するように構成された診断用カテーテルであって、複数の記録位置で前記患者の電気的活動データを記録するように構成された診断用カテーテルと、
アルゴリズムを含む少なくとも1つの処理ユニットであって、前記アルゴリズムは、前記電気的活動データを前記心臓の位置と関連付けることと、前記電気的活動データを使用して複雑性の評価を実行して基質媒介の複雑性を識別するとともに、前記複雑性の評価に基づいて心臓の状態に関連する診断結果を生成すること、を実行可能である、処理ユニットと、
を備え、
前記複雑性の評価は、時間、空間、大きさ、及び/又は状態が変化する、心臓の電気的、機械的、機能的、及び/又は生理学的特性の心臓の1以上の特性の変動を示し、
前記アルゴリズムは、複雑な活性化パターンが、前記複雑性の評価はマクロレベルの複雑な活性化パターンの一部であるかどうかを決定するようにさらに構成されている、
システム。
【請求項3】
前記複雑性の評価が心腔の一部分の評価を表し、ここで前記複数の記録位置が前記心腔内の少なくとも3か所の記録位置を含み、前記少なくとも1つの処理ユニットは、前記心臓壁上の少なくとも3つの頂点に対して電気的活動データを計算するように構成されており、前記計算は前記少なくとも3か所の記録位置で記録された電気的活動データに基づく、請求項1
又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記心腔の前記部分は、前記心臓壁の表面の7cm
2以下、4cm
2以下、又は1cm
2以下を含む、請求項
3に記載のシステム。
【請求項5】
前記複雑性の評価は心腔の一部分の評価を表し、ここで前記複数の記録位置は前記心腔内の少なくとも24か所の記録位置を含み、前記少なくとも1つの処理ユニットは前記心臓壁上の少なくとも64個の頂点に対して計算された電気的活動データを計算するように構成されており、前記計算は前記少なくとも24か所の記録位置で記録された電気的活動データに基づく、請求項1
又は2に記載のシステム。
【請求項6】
前記少なくとも64個の頂点は少なくとも500個の頂点を含む、請求項
5に記載のシステム。
【請求項7】
前記心腔の前記一部分は前記心臓壁の表面の少なくとも1cm
2、少なくとも4cm
2
、又は少なくとも7cm
2を含む、請求項
5に記載のシステム。
【請求項8】
前記少なくとも1つの処理ユニットは前記心臓壁上の複数の頂点について計算された電気的活動データを計算するように構成されており、前記計算は前記少なくとも3か所の記録位置で記録された電気的活動データに基づく、請求項1
又は2に記載のシステム。
【請求項9】
前記少なくとも1つの処理ユニットは第2のアルゴリズムを更に含み、
ここで前記記録された電気的活動データは記録された電圧データを含み、
ここで前記第2のアルゴリズムは前記記録された電圧データに基づき、前記複数の頂点のそれぞれについて表面電荷データ及び/又は双極子密度データを計算することを実行可能であり、
複雑性の評価は前記表面電荷データ及び/又は前記双極子密度データに基づく、
請求項
8に記載のシステム。
【請求項10】
前記少なくとも1つの処理ユニットは第3のアルゴリズムを更に含み、ここで前記第3のアルゴリズムは前記表面電荷データ及び/又は双極子密度データを表面電圧データに変換することを実行可能であり、ここで前記複雑性の評価は前記表面電圧データに基づく、請求項
9に記載のシステム。
【請求項11】
前記複雑性の評価は3~3000個の活性化を含む電気的活動データに基づく、請求項1
又は2に記載のシステム。
【請求項12】
前記複雑性の評価は0.3秒~500秒の期間にわたって記録された電気的活動データに基づく、請求項1
又は2に記載のシステム。
【請求項13】
前記複雑性の評価は5分~8時間の期間にわたって記録された電気的活動データに基づく、請求項1
又は2に記載のシステム。
【請求項14】
前記診断結果は単一の心臓壁位置における複雑性の評価を含む、請求項1
又は2に記載のシステム。
【請求項15】
ディスプレイを更に備えるシステムであって、前記システムは前記ディスプレイに前記患者の解剖学的構造の画像に関連する前記診断結果を生成するように構成されている、請求項1
4に記載のシステム。
【請求項16】
前記診断結果は複数の心臓壁位置における複雑性の評価を含む、請求項1
又は2に記載のシステム。
【請求項17】
ディスプレイを更に備えるシステムであって、前記システムは前記ディスプレイに前記患者の解剖学的構造の画像に関連する前記診断結果を生成するように構成されている、請求1
6に記載のシステム。
【請求項18】
前記診断用カテーテルは少なくとも1つの電極を含む、請求項1
又は2に記載のシステム。
【請求項19】
前記診断用カテーテルは少なくとも1つの超音波トランスデューサを含む、請求項1
又は2に記載のシステム。
【請求項20】
前記診断用カテーテルは複数のスプラインを含み、ここで各スプラインは少なくとも1つの電極及び少なくとも1つの超音波トランスデューサを含む、請求項1
又は2に記載のシステム。
【請求項21】
前記心臓の状態は、心房細動、心房粗動、心房頻脈、心房徐脈、心室頻拍、心室徐脈、異所性、うっ血性心不全、狭心症、動脈狭窄、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される状態を含む、請求項1
又は2に記載のシステム。
【請求項22】
前記心臓の状態は、時間、空間、大きさ、及び/又は状態が変化する不均一な活性化、伝導、脱分極、及び/又は再分極、不規則性パターンであって、限局性、リエントリ、回転性、旋回、方向の不規則性、速度の不規則性である不規則性パターン、機能的ブロック、永久的ブロック、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される状態を含む、請求項1
又は2に記載のシステム。
【請求項23】
前記システムは、
前記患者の前記心臓に挿入するためのアブレーションカテーテルであって、アブレーションエネルギーを前記心臓壁の少なくとも1つの位置に送達するように構成されたアブレーションカテーテルを更に含む、
請求項1
又は2に記載のシステム。
【請求項24】
前記アルゴリズムが少なくとも1か所のアブレーション位置を決定するように構成され、ここで前記少なくとも1か所のアブレーション位置は前記アブレーションカテーテルから前記アブレーションエネルギーを受け取るための1か所以上の心臓壁位置を含み、前記少なくとも1か所のアブレーション位置は前記複雑性の評価及び/又は前記診断結果に基づき決定される、請求項2
3に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国特許法第119条(e)の下で、2018年1月21日に出願された「System for Recognizing Cardiac Conduction Patterns」と題する米国仮特許出願第62/619,897号、及び2018年5月8日に出願された「System for Identifying Cardiac Conduction Patterns」と題する米国仮特許出願第62/668,647号に対する優先権を主張するものであり、それぞれはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本願は、優先権を主張するものではないが、2018年11月9日に出願された「Systems and Methods for Calculating Patient Information」と題された米国仮特許出願第62/757,961号に関連する場合があり、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本出願は、優先権を主張するものではないが、2018年5月8日に出願された「Cardiac Information Processing System」と題する米国仮特許出願第62/668,659号に関連する場合があり、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0004】
本出願は、優先権を主張するものではないが、2018年10月31日に出願された「Cardiac Mapping System with Efficiency Algorithm」と題する米国特許出願第16/097,959号に関連する場合があり、それは2017年5月3日に出願された「Cardiac Mapping System with Efficiency Algorithm」と題する特許協力条約出願番号PCT/US2017/030922号の米国特許法371条に基づく国内段階移行出願であり、それは2016年10月26日に出願された「Cardiac Mapping System with Efficiency Algorithm」と題する米国仮特許出願第62/413,104号、及び2016年5月3日に出願された「Cardiac Mapping System with Efficiency Algorithm」と題する米国仮特許出願第62/331,364号に対する優先権を主張するものであり、これらはそれぞれ、参照により本明細書に組み込まれる。
【0005】
本出願は、優先権を主張するものではないが、2018年10月31日に出願された「Cardiac Information Dynamic Display System and Method」と題する米国特許出願第16/097,955号に関連する場合があり、これは2017年5月3日に出願された「Cardiac Information Dynamic Display System and Method」と題する特許協力条約出願番号PCT/US2017/030915号の米国特許法371条に基づく国内段階移行出願であり、これは、2016年5月3日に出願された「Cardiac Information Dynamic Display System and Method」と題する米国仮特許出願第62/331,351号に対する優先権を主張するものであり、それぞれは参照により本明細書に組み込まれる。
【0006】
本出願は、優先権を主張するものではないが、2017年10月11日に出願された「Ablation System with Force Control」と題する特許協力条約出願番号PCT/US2017/056064号に関連する場合があり、これは、2016年10月11日に出願された「Ablation System with Force Control」と題する米国仮特許出願第62/406,748号、及び2017年5月20日に出願された「Ablation System with Force Control」と題する米国仮特許出願第62/504,139号に対する優先権を主張するものであり、それぞれは参照により本明細書に組み込まれる。
【0007】
本出願は、優先権を主張するものではないが、2017年10月26日に出願された「Localization System and Method Useful in the Acquisition and Analysis of Cardiac Information」と題する米国特許出願第15/569,457号に関連する場合があり、これは、2016年5月13日に出願された「Localization System and Method Useful in the Acquisition and Analysis of Cardiac Information」と題する特許協力条約出願番号PCT/US2016/032420号の米国特許法371条に基づく国内段階移行出願であり、これは、2015年5月13日に出願された「Localization System and Method Useful in the Acquisition and Analysis of Cardiac Information」と題する米国仮特許出願第62/161,213号に対する優先権を主張するものであり、それぞれは参照により本明細書に組み込まれる。
【0008】
本出願は、優先権を主張するものではないが、2017年10月25日に出願された「Cardiac Virtualization Test Tank and Testing System and Method」と題する米国特許出願第15/569,231号に関連する場合があり、これは2016年5月11日に出願された「Cardiac Virtualization Test Tank and Testing System and Method」と題する特許協力条約出願番号PCT/US2016/031823号の米国特許法371条に基づく国内段階移行出願であり、これは、2015年5月12日に出願された「Cardiac Virtualization Test Tank and Testing System and Method」と題する米国仮特許出願第62/160,501号に対する優先権を主張するものであり、それぞれは参照により本明細書に組み込まれる。
【0009】
本出願は、優先権を主張するものではないが、2017年10月25日に出願された「Ultrasound Sequencing System and Method」と題する米国特許出願第15/569,185号に関連する場合があり、これは、2016年5月12日に出願された「Ultrasound Sequencing System and Method」と題する特許協力条約出願番号PCT/US2016/032017号の米国特許法371条に基づく国内段階移行出願であり、これは、2015年5月12日に出願された「Ultrasound Sequencing System and Method」と題する米国仮特許出願第62/160,529号に対する優先権を主張するものであり、それぞれは参照により本明細書に組み込まれる。
【0010】
本出願は、優先権を主張するものではないが、2014年9月10日に出願された「Devices and Methods for Determination of Electrical Dipole Densities on a Cardiac Surface」と題する米国特許出願第14/916,056号に関連する場合があり、これは、2014年9月10日に出願された「Devices and Methods for Determination of Electrical Dipole Densities on a Cardiac Surface」と題する特許協力条約出願番号PCT/US2014/54942号の米国特許法371条に基づく国内段階移行出願であり、これは2013年9月13日に出願された「Devices and Methods for Determination of Electrical Dipole Densities on a Cardiac Surface」と題する米国仮特許出願第61/877,617号に対する優先権を主張するものであり、それぞれは参照により本明細書に組み込まれる。
【0011】
本出願は、優先権を主張するものではないが、2016年9月23日に出願された「Cardiac Analysis User Interface System and Method」と題する米国特許出願第15/128,563号に関連する場合があり、これは、2015年3月24日に出願された「Cardiac Analysis User Interface System and Method」と題する特許協力条約出願番号PCT/US2015/22187号の米国特許法371条に基づく国内段階移行出願であり、これは、2014年3月28日に出願された「Cardiac Analysis User Interface System and Method」と題する米国特許仮出願第61/970,027号に対する優先権を主張するものであり、それぞれは参照により本明細書に組み込まれる。
【0012】
本出願は、優先権を主張するものではないが、2018年8月24日に出願された「Gas-Elimination Patient Access Device」と題する米国特許出願第16/111,538号に関連する場合があり、これは、2015年1月14日に出願された「Gas-Elimination Patient Access Device」と題する米国特許第10,071,227号の継続出願であり、これは、2015年1月14日に出願された「Gas-Elimination Patient Access Device」と題する特許協力条約出願番号PCT/US2015/011312号の米国特許法371条に基づく国内段階移行出願であり、これは、2014年1月17日に出願された「Gas-Elimination Patient Access Device」と題する米国仮特許出願第61/928,704号に対する優先権を主張するものであり、それぞれは参照により本明細書に組み込まれる。
【0013】
本出願は、優先権を主張するものではないが、2019年1月8日に出願された「Expandable Catheter Assembly with Flexible Printed Circuit Board(PCB)Electrical Pathways」と題する米国特許出願第16/242,810号に関連する場合があり、これは、2015年7月23日に出願された「Expandable Catheter Assembly with Flexible Printed Circuit Board(PCB)Electrical Pathways」と題する特許出願第14/762,944号の継続出願であり、これは、2014年2月7日に出願された「Expandable Catheter Assembly with Flexible Printed Circuit Board(PCB)Electrical Pathways」と題する特許協力条約出願番号PCT/US2014/15261号の米国特許法371条に基づく国内段階移行出願であり、これは2013年2月8日に出願された「Expandable Catheter Assembly with Flexible Printed Circuit Board(PCB)Electrical Pathways」と題する米国仮特許出願第61/762,363号に対する優先権を主張するものであり、それぞれは参照により本明細書に組み込まれる。
【0014】
本出願は、優先権を主張するものではないが、2018年6月19日に出願された「Catheter,System and Methods of Medical Uses of Same,Including Diagnostic and Treatment Uses for the Heart」と題する米国特許出願第16/012,051号に関連する場合があり、これは、2015年2月20日に出願された「Catheter,System and Methods of Medical Uses of Same,Including Diagnostic and Treatment Uses for the Heart」と題する米国特許第10,004,459号の継続出願であり、これは、2013年8月30日に出願された「Catheter,System and Methods of Medical Uses of Same,Including Diagnostic and Treatment Uses for the Heart」と題する特許協力条約出願番号PCT/US2013/057579号の米国特許法371条に基づく国内段階移行出願であり、国際公開第2014/036439号パンフレットとして公開され、これは、2012年8月31日に出願された「System and Method for Diagnosing and Treating Heart Tissue」と題する米国仮特許出願第61/695,535号に対する優先権を主張するものであり、それぞれは参照により本明細書に組み込まれる。
【0015】
本出願は、優先権を主張するものではないが、2017年2月6日に出願された「Set of Transducer-Electrode Pairs for a Catheter」と題する米国意匠特許出願第29/593,043号に関連する場合があり、これは、2013年12月2日に出願された「Transducer Electrode Arrangement」と題する米国意匠特許第D782686号の分割出願であり、これは、2013年8月30日に出願された「Catheter System and Methods of Medical Uses of Same,Including Diagnostic and Treatment Uses for the Heart」と題する特許協力条約出願番号PCT/US2013/057579号の一部継続出願であり、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0016】
本出願は、優先権を主張するものではないが、2018年3月20日に出願された「Device and Method for the Geometric Determination of Electrical Dipole Densities on the Cardiac Wall」と題する米国特許出願第15/926,187号に関連する場合があり、これは、「Device and Method for the Geometric Determination of Electrical Dipole Densities on the Cardiac Wall」と題する米国特許第9,968,268号の継続特許であり、これは、「Device and Method for the Geometric Determination of Electrical Dipole Densities on the Cardiac Wall」と題する米国特許第9,757,044号の継続特許であり、これは、2012年3月9日に出願された「Device and Method for the Geometric Determination of Electrical Dipole Densities on the Cardiac Wall」と題する特許協力条約出願番号PCT/US2012/028593号の米国特許法371条に基づく国内段階移行出願であり、これは、2011年3月10日に出願された「Device and Method for the Geometric Determination of Electrical Dipole Densities on the Cardiac Wall」と題する米国仮特許出願第61/451,357号に対する優先権を主張するものであり、それぞれは参照により本明細書に組み込まれる。
【0017】
本願は、優先権を主張するものではないが、2018年1月29日に出願された「Device and Method for the Geometric Determination of Electrical Dipole Densities on the Cardiac Wall」と題する米国特許出願第15/882,097号に関連する場合があり、これは、2016年10月25日に出願された「Device and Method for the Geometric Determination of Electrical Dipole Densities on the Cardiac Wall」と題する米国特許第9,913,589号の継続出願であり、これは、2015年10月19日に出願された「Device and Method for the Geometric Determination of Electrical Dipole Densities on the Cardiac Wall」と題する米国特許第9,504,395号の継続出願であり、これは、2013年7月19日に出願された「Device and Method for the Geometric Determination of Electrical Dipole Densities on the Cardiac Wall」と題する米国特許第9,192,318号の継続出願であり、これは、2013年8月20日に発行された「Device and Method for the Geometric Determination of Electrical Dipole Densities on the Cardiac Wall」と題する米国特許第8,512,255号の継続出願であり、これは、2009年1月16日に出願された「A Device and Method for the Geometric Determination of Electrical Dipole Densities on the Cardiac Wall」と題する特許協力条約出願番号PCT/IB09/00071号の米国特許法371条に基づく国内段階移行出願であって、これは、2008年1月17日に出願されたスイス特許出願第00068/08号に対する優先権を主張するものであり、それぞれは参照により本明細書に組み込まれる。
【0018】
本出願は、優先権を主張するものではないが、2018年6月21日に出願された「Method and Device for Determining and Presenting Surface Charge and Dipole Densities on Cardiac Walls」と題する米国特許出願第16/014,370号に関連する場合があり、これは、2017年2月17日に出願された「Method and Device for Determining and Presenting Surface Charge and Dipole Densities on Cardiac Walls」と題する米国特許出願第15/435,763号の継続出願であり、これは、2015年9月25日に出願された「Method and Device for Determining and Presenting Surface Charge and Dipole Densities on Cardiac Walls」と題する米国特許第9,610,024号の継続出願であり、これは、2014年11月19日に出願された「Method and Device for Determining and Presenting Surface Charge and Dipole Densities on Cardiac Walls」と題する米国特許第9,167,982号の継続出願であり、これは、2014年12月23日に発行された「Method and Device for Determining and Presenting Surface Charge and Dipole Densities on Cardiac Walls」と題する米国特許第8,918,158号の継続出願であり、これは、2014年4月15日に発行された「Method and Device for Determining and Presenting Surface Charge and Dipole Densities on Cardiac Walls」と題する米国特許第8,700,119号の継続出願であり、これは、2013年4月9日に発行された「Method and Device for Determining and Presenting Surface Charge and Dipole Densities on Cardiac Walls」と題する米国特許第8,417,313号の継続出願であり、これは、2007年8月3日に出願された「Method and Device for Determining and Presenting Surface Charge and Dipole Densities on Cardiac Walls」と題するPCT出願番号CH2007/000380号の米国特許法371条に基づく国内段階移行出願であって、これは、2006年8月3日に出願されたスイス特許出願第1251/06号に対する優先権を主張するものであり、それぞれは参照により本明細書に組み込まれる。
【0019】
本発明は、一般に、心不整脈又は他の異常の診断及び治療に有用であり得るシステム及び方法に関し、特に、本発明は、そのような不整脈又は他の異常の診断及び治療に関連する心臓活動を表示するのに有用なシステム、デバイス、及び方法に関する。
【背景技術】
【0020】
心臓信号(例えば、電荷密度、双極子密度、電圧等)は、心内膜表面にわたって大きさが変化する。これらの信号の大きさは、いくつかの要因に依存し、局所組織特性(例えば、健康対疾患/瘢痕/線維症/病変)及び領域活性化(activation:アクティベーション)特性(例えば、局所細胞の活性化前の活性組織の「電気質量」)が挙げられる。一般的な方法は、表面にわたって常にすべての信号に単一の閾値を割り当てることである。単一の閾値の使用により、低振幅の活性化の消失が引き起こされ、又は高振幅の活性化が優位を占めること/飽和することが引き起こされ、マップの解釈の混乱につながる場合がある。活性化を適切に検出し損なうと、治療送達のための関心のある領域の不正確な識別、又はアブレーション効果の不完全な特性化(ブロックの過剰又は欠如)につながる場合がある。
【0021】
心房細動の連続的で全体的なマッピングにより、時間的及び空間的に可変な活性化パターンの多大な量を生じる。マップデータの限られた個別のサンプリングでは、不整脈のドライバ、メカニズム、及び支持基質の総合的な画像を提供するには不十分な場合がある。AFの長期にわたる臨床医のレビューは、思い出して継ぎ合わせ、「全体像」を完成させるために努力を要する場合がある。
【0022】
これら及び他の理由により、伝導パターンの客観的分析をアルゴリズム的に提供する一般的な必要性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本明細書で説明されるシステム、デバイス、及び方法の実施形態は、患者の不整脈を診断するためのシステム、デバイス、及び方法を対象とし得る。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明の概念の一態様によれば、患者の不整脈を診断するためのシステムは、患者の心臓の中に挿入するための診断用カテーテルと、処理ユニットとを備える。診断用カテーテルは、患者の解剖学的及び電気的活動データを記録するように構成される。処理ユニットは、記録された電気的活動データを受け取り、電気的活動データを解剖学的データに関連付けるように構成される。処理ユニットは、解剖学的データに関連付けられた位置での脱分極伝導波の伝導速度を決定するように構成されたアルゴリズムを含む。
【0025】
本発明の概念の一態様によれば、患者の不整脈を診断するためのシステムは、患者の心臓の中に挿入するための診断用カテーテルと、処理ユニットとを備える。診断用カテーテルは、患者の解剖学的及び電気的活動データを記録するように構成される。処理ユニットは、記録された電気的活動データを受け取り、電気的活動データを解剖学的データに関連付けるように構成される。処理ユニットは、解剖学的データに関連付けられた位置での回転性(rotational)伝導を識別するように構成されたアルゴリズムを含む。
【0026】
本発明の概念の一態様によれば、患者の不整脈を診断するためのシステムは、患者の心臓の中に挿入するための診断用カテーテルと、処理ユニットとを備える。診断用カテーテルは、患者の解剖学的及び電気的活動データを記録するように構成される。処理ユニットは、記録された電気的活動データを受け取り、電気的活動データを解剖学的データに関連付けるように構成される。処理ユニットは、解剖学的データに関連付けられた位置での不規則性(irregular)伝導を識別するように構成されたアルゴリズムを含む。
【0027】
本発明の概念の一態様によれば、患者の不整脈を診断するためのシステムは、患者の心臓の中に挿入するための診断用カテーテルと、処理ユニットとを備える。診断用カテーテルは、患者の解剖学的及び電気的活動データを記録するように構成される。処理ユニットは、記録された電気的活動データを受け取り、電気的活動データを解剖学的データに関連付けるように構成される。処理ユニットは、解剖学的データに関連付けられた位置での限局性(focal)活性化を識別するように構成されたアルゴリズムを含む。
【0028】
本発明の概念の一態様によれば、患者の心臓の状態に関連する診断結果を生成するためのシステムは、患者の心臓の中に挿入するための診断用カテーテルであって、患者の電気的活動データを複数の記録位置で記録するように構成された診断用カテーテルと、記録された電気的活動データを受け取るための処理ユニットとを備える。システムは更に、記録された電気的活動データを使用して複雑性(complexity:コンプレクシティ)の評価を実行し、複雑性の評価に基づいて診断結果を生成するように構成されたアルゴリズムを含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、診断結果は、複雑性の評価、或いは時間及び/又は空間にわたる複雑性の変動の評価を含む。診断結果には、時間と空間にわたる複雑性の変動を含み得る。
【0030】
いくつかの実施形態では、複雑性の評価は、マクロレベルの複雑性の評価を含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、複雑性の評価は心腔の一部分の評価を表し、複数の記録位置は心腔内の少なくとも3か所の記録位置を含み、システムは心臓壁の少なくとも3つの頂点に対して計算された電気的活動データを決定し、計算は少なくとも3か所の記録位置で記録された電気的活動データに基づく。少なくとも3か所の記録位置は、心臓壁上の少なくとも3か所の位置を含み得る。心腔の一部分は、心臓壁の表面の7cm2以下、4cm2以下、及び/又は1cm2以下を含み得る。少なくとも3か所の記録位置は、心臓壁からオフセットされた少なくとも1か所の位置を含むことができる。
【0032】
いくつかの実施形態では、複雑性の評価は心腔の一部分の評価を表し、複数の記録位置は心腔内の少なくとも24か所の記録位置を含み、システムは心臓壁の少なくとも64個の頂点に対して計算された電気的活動データを決定し、計算は少なくとも24か所の記録位置で記録された電気的活動データに基づく。少なくとも24か所の記録位置は、少なくとも24か所の心臓壁位置を含むことができる。少なくとも24か所の記録位置は、少なくとも48か所の心臓壁位置を含むことができる。少なくとも24か所の記録位置は、少なくとも48か所の心臓壁位置を含むことができる。少なくとも24か所の記録位置は、心腔内に少なくとも48か所の位置を含むことができる。少なくとも24か所の記録位置は、心腔内に少なくとも64か所の位置を含むことができる。少なくとも64個の頂点は少なくとも100個の頂点を含むことができる。少なくとも64個の頂点は少なくとも500個の頂点を含むことができる。少なくとも64個の頂点は少なくとも3000個の頂点を含むことができる。少なくとも64個の頂点は少なくとも5000個の頂点を含むことができる。心腔の一部分は、心臓壁の表面の少なくとも1cm2、少なくとも4cm2、及び/又は少なくとも7cm2を含むことができる。心腔の一部分は心房の一部分を含むことができる。
【0033】
いくつかの実施形態では、システムは、心臓壁上の複数の頂点に対して計算された電気的活動データを決定し、計算は、少なくとも3か所の記録位置で記録された電気的活動データに基づく。記録された電気的活動データは、患者の心腔内の複数の位置で記録された電圧データを含むことができ、複数の位置は、心臓壁からオフセットされた少なくとも1か所の位置を含み得る。記録された電気的活動データは、患者の心腔内の複数の位置で記録された電圧データを含むことができ、複数の位置は、心臓壁上の少なくとも1か所の位置を含み得る。記録された電気的活動データは、患者の心腔内の複数の位置で記録された電圧データを含むことができ、複数の位置は、心臓壁上の少なくとも1か所の位置と心臓壁からオフセットされた少なくとも1か所の位置を含むことができる。処理ユニットは、更に第2のアルゴリズムを含むことができ、記録された電気的活動データは記録された電圧データを含むことができ、第2のアルゴリズムは、記録された電圧データに基づいて複数の頂点のそれぞれに対して表面電荷データ及び/又は双極子密度データを計算するように構成され得て、複雑性の評価は、表面電荷データ及び/又は双極子密度データに基づくことができる。処理ユニットは、更に第3のアルゴリズムを含むことができ、第3のアルゴリズムは、表面電荷データ及び/又は双極子密度データを表面電圧データに変換するように構成され得て、複雑性の評価は表面電圧データに基づくことができる。
【0034】
いくつかの実施形態では、複雑性の評価は、1~10の活性化を含む電気的活動データに基づく。
【0035】
いくつかの実施形態では、複雑性の評価は、0.3ミリ秒~2000ミリ秒の期間にわたって記録された電気的活動データに基づく。複雑性の評価は、約150ミリ秒の期間にわたって記録された電気的活動データに基づくことができる。
【0036】
いくつかの実施形態では、複雑性の評価は、3~3000の活性化を含む電気的活動データに基づく。複雑性の評価は、10~600の活性化を含む電気的活動データに基づくことができる。複雑性の評価は、25~300の活性化を含む電気的活動データに基づくことができる。
【0037】
いくつかの実施形態では、複雑性の評価は、0.3秒~500秒の期間にわたって記録された電気的活動データに基づく。複雑性の評価は、1秒~90秒の期間にわたって記録された電気的活動データに基づくことができる。複雑性の評価は、4秒~30秒の期間にわたって記録された電気的活動データに基づくことができる。
【0038】
いくつかの実施形態では、複雑性の評価は、2,000~300,000の活性化を含む電気的活動データに基づく。複雑性の評価は、6,000~40,000の活性化を含む電気的活動データに基づくことができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、複雑性の評価は、5分~8時間の期間にわたって記録された電気的活動データに基づく。複雑性の評価は、15分~50分の期間にわたって記録された電気活動データに基づくことができる。
【0040】
いくつかの実施形態では、診断結果は、単一の心臓壁位置での複雑性の評価を含む。システムは更にディスプレイを備えることができ、システムはディスプレイ上に患者の解剖学的構造の画像に関連する診断結果を供給し得る。
【0041】
いくつかの実施形態では、診断結果は、複数の心臓壁位置での複雑性の評価を含む。システムは更にディスプレイを備えることができ、システムはディスプレイ上に患者の解剖学的構造の画像に関連する診断結果を供給し得る。
【0042】
いくつかの実施形態では、診断結果は、経時的な複雑性の評価を含む。診断結果は、所定の持続時間にわたる複雑性の評価を含むことができる。
【0043】
いくつかの実施形態では、診断用カテーテルは少なくとも1つの電極を含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、診断用カテーテルは少なくとも3つの電極を含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、診断用カテーテルは少なくとも1つの超音波トランスデューサを含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、診断用カテーテルは複数のスプラインを含み、各スプラインは少なくとも1つの電極及び少なくとも1つの超音波トランスデューサを含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、心臓の状態は不整脈を含む。心臓の状態は、心房細動を含み得る。
【0048】
いくつかの実施形態では、心臓の状態は、心房細動、心房粗動、心房頻脈(頻拍)、心房徐脈、心室頻拍、心室徐脈、異所性、うっ血性心不全、狭心症、動脈狭窄、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される状態を含む。
【0049】
いくつかの実施形態では、心臓の状態は、時間、空間、大きさ、及び/又は状態が変化する不均一な活性化、伝導、脱分極、及び/又は再分極、不規則性パターンであって例えば限局性、リエントリ、回転性、旋回、方向の不規則性、及び速度の不規則性の不規則性パターン、機能的ブロック、永久的ブロック、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される状態を含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、システムは、追加の患者データを収集するように更に構成され、複雑性の評価は、追加の患者データに更に基づく。診断用カテーテルは、追加の患者データを記録するように構成され得る。診断用カテーテルは、追加の患者データを記録するように構成された少なくとも1つのセンサを含み得る。システムは、追加の患者データを記録するように構成された少なくとも1つのセンサを含み得る。少なくとも1つのセンサは、追加の患者データを記録するときに患者に挿入されるように構成され得る。少なくとも1つのセンサは、追加の患者データを記録するときに患者の体外に配置されるように構成され得る。センサは、電気的活動を記録するための電極又は他のセンサ、力センサ、圧力センサ、磁気センサ、動きセンサ、速度センサ、加速度計、歪みゲージ、生理学的センサ、グルコースセンサ、pHセンサ、血液センサ、血液ガスセンサ、血圧センサ、フローセンサ、光学センサ、分光計、干渉計、例えばサイズ、距離、及び/又は厚さを測定するための測定センサ、組織評価センサ、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択されるセンサを含むことができる。追加の患者データは、患者の機械的情報、生理学的情報、及び/又は機能的情報を含み得る。追加の患者データは、心臓壁の動き、心臓壁の速度、心臓組織の歪み、心臓血流の大きさ及び/又は方向、血液の渦度、心臓弁力学、血圧、組織性質であって例えば密度、組織特性、及び/又は、代謝活動若しくは薬剤摂取等の組織特性のバイオマーカである組織性質、組織構成(例えばコラーゲン、心筋、脂肪、結合組織)、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択されるパラメータに関連するデータを含むことができる。複雑性の評価は、組織の電気機械的遅延、電気的特性と機械的特性の大きさの比、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された特性の評価を含めることができる。
【0051】
いくつかの実施形態では、システムは、不整脈を治療するように更に構成され、システムは、患者の心臓の中に挿入するためのアブレーションカテーテルを更に含み、アブレーションカテーテルは、心臓壁上の様々な位置にアブレーションエネルギーを送達するように構成される。アルゴリズムは、少なくとも1か所のアブレーション位置を決定するように構成され得て、少なくとも1か所のアブレーション位置は、アブレーションカテーテルからアブレーションエネルギーを受け取るための1か所以上の心臓壁位置を含むことができ、少なくとも1か所のアブレーション位置は、複雑性の評価及び/又は診断結果に基づいて決定され得る。少なくとも1か所のアブレーション位置は、複雑性が閾値を超える1か所以上の心臓位置を含むことができる。少なくとも1か所のアブレーション位置は、複数の決定された複雑性の領域内で最も複雑性の高い位置を含むことができる。アブレーションカテーテルは、電磁エネルギー、RFエネルギー、マイクロ波エネルギー、熱エネルギー、ヒートエネルギー、極低温エネルギー、光エネルギー、レーザ光エネルギー、化学エネルギー、音響エネルギー、超音波エネルギー、機械的エネルギー、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上のアブレーションエネルギーを送達するように構成され得る。システムは、アブレーションエネルギーをアブレーションカテーテルに供給するように構成されたエネルギー送達ユニットを更に備えることができる。エネルギー送達ユニットは、電磁エネルギー、RFエネルギー、マイクロ波エネルギー、熱エネルギー、ヒートエネルギー、極低温エネルギー、光エネルギー、レーザ光エネルギー、化学エネルギー、音響エネルギー、超音波エネルギー、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上のアブレーションエネルギーを送達するように構成され得る。
【0052】
本明細書で説明される技術は、その属性及び付随する有益性とともに、代表的な実施形態が例として説明される添付の図面と併せて以下の詳細な説明を考慮すると、最もよく認識及び理解される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】本発明の概念と一致する、心臓情報処理システムのブロック図を示す。
【
図2A】本発明の概念と一致する、心臓情報処理システムのデータ構造の視覚的表現を示す。
【
図2B】本発明の概念と一致する、心臓情報処理システムのデータ構造の一部分の視覚的表現を示す。
【
図3】本発明の概念と一致する、複雑性の評価を実行するためのアルゴリズムの概略図を示す。
【
図3A】本発明の概念と一致する、複雑性の評価を実行するためのアルゴリズムの概略図を示す。
【
図4】本発明の概念と一致する、伝導速度データを決定するためのアルゴリズムの概略図を示す。
【
図5】本発明の概念と一致する、局所的な回転性活動を決定するためのアルゴリズムの概略図を示す。
【
図5A】本発明の概念と一致する、頂点の外側リングによって定義される頂点の近傍を含む解剖学的データのグラフィック図を示す。
【
図5B】本発明の概念と一致する、中央の頂点の周りに配置された頂点の外側リングを含む近傍の簡略化された図を示す。
【
図5C】本発明の概念と一致する、近傍の周りを回転する伝播波を示す代表的な解剖学的構造を示す。
【
図5D】本発明の概念と一致する、
図5Cの頂点の外側リングにおける活性化時間のプロットを示す。
【
図5E】本発明の概念と一致する、
図5Cの伝導速度ベクトルのグラフを示す。
【
図6】本発明の概念と一致する、局所的な不規則性活動を決定するためのアルゴリズムの概略図を示す。
【
図6A】本発明の概念と一致する、不規則性活動を示す伝播波の一例を示す。
【
図7】本発明の概念と一致する、限局性活性化を決定するためのアルゴリズムの概略図を示す。
【
図7A】本発明の概念と一致する、限局性活性化を示す代表的な解剖学的構造を示す。
【
図7B】本発明の概念と一致する、限局性活性化を示す代表的な解剖学的構造を示す。
【
図8】本発明の概念と一致する、心臓データがレンダリングされ得るディスプレイを示す。
【
図9】本発明の概念と一致する、マッピングカテーテルの概略図を示す。
【
図9A】本発明の概念と一致する、マッピングカテーテルが心腔内に挿入された心腔の斜視解剖図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0054】
ここで、本技術の現在の実施形態を詳細に参照し、その例が添付の図面に示される。同様の参照番号を用いて、同様の構成要素を指す場合がある。しかしながら、説明は、本開示を特定の実施形態に限定することを意図するものではなく、本明細書に記載される実施形態の様々な変更、等価、及び/又は代替を含むものとして解釈されるべきである。
【0055】
用語「備えている (comprising)」(及び「備える (comprise)」と「備える (comprises)」等の任意の形式の備える)、「有している (having)」(及び「有する (have)」と「有する(has)」等の任意の形式の有する)、「含んでいる(including)」(及び「含む(includes)」と「含む(include)」等の任意の形式の含む)、又は「含有している(containing)」(及び「含有する(contains)」と「含有する(contain)」等の任意の形式の含有する)は、本明細書で使用される場合、明記された特徴、整数、工程、動作、要素、及び/又は構成要素の存在を指定するが、1つ以上の他の特徴、整数、工程、動作、要素、構成要素、及び/又はそれらの群の存在又は追加を排除しないことが理解される。
【0056】
第1、第2、第3等の用語は、本明細書において様々な制限、要素、構成要素、領域、層及び/又はセクションを説明するために使用され得るが、これらの制限、要素、構成要素、領域、層及び/又はセクションがこれらの用語によって限定されるべきではないことが更に理解される。これらの用語は、1つの制限、要素、構成要素、領域、層、又はセクションを別の制限、要素、構成要素、領域、層、又はセクションと区別するためにのみ使用される。したがって、以下で論じられる第1の制限、要素、構成要素、領域、層、又はセクションは、本出願の開示から逸脱することなく、第2の制限、要素、構成要素、領域、層、又はセクションと言える。
【0057】
要素が別の要素に対して「上に」、「取り付けられて」、「接続されて」又は「結合されて」いると言われる場合、それは別の要素の直接上に又は上に、或いは接続又は結合され得るか、1つ以上の介在要素が存在できることが更に理解される。対照的に、要素が別の要素に対して「直接上に」、「直接取り付けられて」、「直接接続されて」、又は「直接結合されて」いると言われる場合、介在要素は存在しない。要素間の関係を説明するために使用される他の単語は、同様の方法で解釈されるべきである(例えば、「間に」対「直接間に」、「隣接して」対「直接隣接して」等)。
【0058】
第1の要素は第2の要素の「中」、「上」、及び/又は「内」であると言われる場合、第1の要素は、第2の要素の内部空間内、第2の要素の一部分内(例えば、第2の要素の壁内)に配置され得る、第2の要素の外面及び/又は内面に配置され得る、かつこれらの1つ以上の組み合わせであり得ることを更に理解する。
【0059】
本明細書で使用される場合、用語「近接」は、第1の構成要素又は位置の第2の構成要素又は位置への近接性を説明するのに使用されるとき、第2の構成要素又は位置に近い1か所以上の位置と、同様に第2の構成要素又は位置の中、上、及び/又は内の位置を含むものと解釈されるべきである。例えば、解剖学的部位(例えば、標的組織位置)に近接して配置された構成要素は、解剖学的部位の近くに配置された構成要素と、同様に解剖学的部位の中、上、及び/又は内に配置された構成要素を含むものとする。
【0060】
「下(beneath)」、「下の方(below)」、「下の方の(lower)」、「上の方(above)」、「上の方の(upper)」等の空間的に相対的な用語は、例えば、図面に示すように要素及び/又は特徴の、別の要素(複数可)及び/又は特徴(複数可)との関係を説明するために用いられ得る。空間的に相対的な用語は、図面に示される向きに加えて、使用中及び/又は動作中のデバイスの異なる向きを包含することを意図することが更に理解される。例えば、図面中のデバイスがひっくり返された場合、別の要素又は特徴の「下の方」及び/又は「下」として説明される要素は、別の要素又は特徴の「上の方」に配向される。デバイスは、他の状態に配向され得て(例えば、90°又は他の方向に回転され得て)、本明細書で使用される空間的に相対的な記述子はそれに応じて解釈される。
【0061】
本明細書で使用される場合、「減少する」、「減少している」、「減少」等の用語は、量の減少を含むことであり、ゼロへの減少を含む。発生の可能性を減らすことは、発生の防止を含むものとする。同様に、用語「防止する」、「防止している」及び「防止」は、それぞれに「減少する」、「減少している」及び「減少」の作用を含むものとする。
【0062】
本明細書で使用される用語「及び/又は」は、他の有無を問わず、2つの指定された特徴又は構成要素のそれぞれの具体的な開示として解釈されるべきである。例えば、「A及び/又はB」は、それぞれが本明細書で個別に述べられているかのように、(i)A、(ii)B、並びに(iii)A及びBのそれぞれの具体的な開示と解釈されるべきである。
【0063】
本明細書では、別段の定めがない限り、「及び」は「又は」を意味することができ、「又は」は「及び」を意味することができる。例えば、特徴にはA、B、又はCがあると説明される場合、その特徴はA、B、及びC、又はA、B、及びCの任意の組み合わせを有し得る。同様に、特徴にはA、B、及びCがあると説明される場合、その特徴はA、B、又はCのうちの1つ又は2つのみ有することができる。
【0064】
本開示で使用される表現「構成(又は設定)された」は、例えば、状況に応じて、表現「適する」、「能力を有する」、「設計された」、「適合された」、「作製された」及び「可能である」と交換可能に使用され得る。表現「構成(又は設定)された」は、ハードウェアで「特別に設計された」のみを意味するものではない。代替的に、いくつかの状況では、表現「構成されたデバイス」は、デバイスが別のデバイス又は構成要素と一緒に動作「できる」ことを意味してもよい。
【0065】
本明細書で使用される場合、用語「閾値」は、所望の状態又は望ましくない状態に関連付けられた値の最大レベル、最小レベル、及び/又は範囲を指す。いくつかの実施形態では、システムパラメータは、最小閾値より上、最大閾値より下、値の閾値範囲内及び/又は値の閾値範囲外に維持され、所望の効果(例えば、有効な治療)を引き起こし、及び/又は望ましくない事象(例えば、デバイス及び/又は臨床的な有害事象)を防止するか、又は減少(以下、「防止」)する。いくつかの実施形態では、システムパラメータは、第1の閾値より上に(例えば、組織に所望の治療効果をもたらすため第1の温度閾値より上に)、及び第2の閾値より下に(例えば、望ましくない組織損傷を防止するため第2の温度閾値より下に)維持される。いくつかの実施形態では、閾値は、安全余裕を含むように決定され、例えば患者の変動性、システムの変動性、許容差等を説明する。本明細書で使用される場合、「閾値を超える」は、最大閾値を上回る、最小閾値を下回る、閾値の範囲内、及び/又は閾値の範囲外のパラメータに関する。閾値は、ユーザ(例えば、患者の臨床医)によって定義され得て、及び/又はシステムで定義された(例えば、システムの製造において)ものであり得る。
【0066】
用語「直径」は本明細書で非円形の幾何学を説明するために使用される場合、説明される幾何学を近似する仮想的な円の直径として解釈される。例えば、構成要素の断面等の断面を説明する場合、用語「直径」は、説明されている構成要素の断面と同じ断面積を備える仮想的な円の直径を表すと解釈するものとする。
【0067】
本明細書で使用される構成要素の「長軸」及び「短軸」という用語は、構成要素を完全に取り囲むことができる最小体積の仮想円筒のそれぞれ長さ及び直径である。
【0068】
本明細書で使用される場合、用語「機能的要素」は、機能を実行するように構築され配置された1つ以上の要素を含むと解釈される。機能的要素は、センサ及び/又はトランスデューサを含み得る。いくつかの実施形態では、機能的要素は、エネルギーを送達し、及び/又はそうでなければ組織を治療するように構成される(例えば、治療要素として構成された機能的要素)。代替的又は追加的に、機能的要素(例えば、センサを含む機能的要素)は、患者の生理学的パラメータ、患者の解剖学的パラメータ(例えば組織形状パラメータ)、患者環境パラメータ、及び/又はシステムパラメータ等の1つ以上のパラメータを記録するように構成され得る。いくつかの実施形態では、センサ又は他の機能的要素は、診断機能を実行するように(例えば、診断を実行するために使用されるデータを記録するように)構成される。いくつかの実施形態では、機能的要素は、治療機能を実行するように(例えば、治療エネルギー及び/又は治療剤を送達するように)構成される。いくつかの実施形態では、機能的要素は、エネルギーの送達、エネルギーの抽出(例えば、構成要素を冷却するため)、薬物又は他の薬剤の送達、システム構成要素又は患者の組織の操作、患者の生理学的パラメータ又はシステムパラメータ等のパラメータの記録又は感知、及びこれらの1つ以上の組み合わせからなる群から選択される機能を実行するように構築され配置される1つ以上の要素を含む。機能的要素は、流体及び/又は流体送達システムを含むことができる。機能的要素は、拡張可能なバルーン又は他の流体維持リザーバ等のリザーバを含むことができる。「機能的アセンブリ」は、診断及び/又は治療機能等の機能を実行するように構築され配置されたアセンブリを含むことができる。機能的アセンブリは、拡張可能なアセンブリを含み得る。機能的アセンブリは、1つ以上の機能的要素を含むことができる。
【0069】
本明細書で使用される用語「トランスデューサ」は、エネルギー又は任意の入力を受け取り、出力を生成する任意の構成要素又は構成要素の組み合わせを含むと解釈される。例えば、トランスデューサは、電気エネルギーを受け取り、電気エネルギーを(例えば、電極のサイズに基づいて)組織に分配する電極を含み得る。いくつかの構成では、トランスデューサは電気信号を任意の出力に変換し、例えば、光(例えば、発光ダイオード又は電球を含むトランスデューサ)、音(例えば、超音波エネルギーを伝達するように構成された圧電結晶を含むトランスデューサ)、圧力、ヒートエネルギー、極低温エネルギー、化学エネルギー、機械的エネルギー(例えば、モータ又はソレノイドを含むトランスデューサ)、磁気エネルギー、及び/又は異なる電気信号(例えば、ブルートゥース又は他の無線通信要素)に変換する。代替的又は追加的に、トランスデューサは、物理量(例えば、物理量の変動)を電気信号に変換することができる。トランスデューサは、エネルギー及び/又は薬剤を組織に送達する任意の構成要素を含むことができ、例えば、トランスデューサは、電気エネルギーを組織に(例えば、1つ以上の電極を含むトランスデューサ)、光エネルギーを組織に(例えば、レーザ、発光ダイオード及び/又はレンズ若しくはプリズム等の光学構成要素を含むトランスデューサ)、機械的エネルギーを組織に(例えば、組織操作要素を含むトランスデューサ)、音響エネルギーを組織に(例えば、圧電結晶を含むトランスデューサ)、化学エネルギー、電磁エネルギー、磁気エネルギー、及びこれらの1つ以上の組み合わせのうちの1つ以上を送達するように構成される。
【0070】
本明細書で使用される場合、用語「流体」は、液体、気体、ゲル、又は、管腔及び/又は開口部を通って推進され得る材料等の任意の流動性材料を指すことができる。
【0071】
本発明の特定の特徴は、明確にするため別個の実施形態の文脈で説明され、単一の実施形態に組み合わせて提供されてもよいことが理解される。反対に、本発明の様々な特徴は、簡潔にするために単一の実施形態の文脈で説明され、別個に又は任意の適切なサブコンビネーションで提供されてもよい。例えば、請求項のいずれかに記載されたすべての特徴は、(独立又は従属に関わらず)任意の所与の方法で組み合わせられ得ることが理解される。
【0072】
本発明の少なくともいくつかの図及び説明は、本発明の明確な理解に関連する要素に焦点を合わせるために簡略化されるが、明確にするために、当業者が理解するであろう他の要素を排除することも、本発明の一部分を構成し得ることを理解する。しかしながら、そのような要素は当技術分野でよく知られており、それらは必ずしも本発明のより良い理解を容易にするわけではないため、そのような要素の説明は本明細書では提供されない。
【0073】
本開示で定義される用語は、本開示の特定の実施形態を説明するためにのみ使用され、本開示の範囲を限定することは意図されない。単数形で提供される用語は、文脈で明確に示されない限り、複数形も含むことが意図される。本明細書で使用されるすべての用語は、技術用語又は科学用語を含め、本明細書で別段の定義がない限り、関連技術の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。一般的に使用される辞書で定義される用語は、関連する技術の文脈上の意味と同じ又は類似の意味を持つものとして解釈されるべきであり、本明細書で明確に定義されない限り、理想的又は誇張された意味を有するものとして解釈されるべきではない。場合によっては、本開示で定義される用語は、本開示の実施形態を除外するように解釈されるべきではない。
【0074】
本明細書では、患者の心臓の状態に関連する診断結果を生成するための心臓情報システムが提供される。システムは、患者の診断、予後、及び/又は治療処置等の、患者の医療処置を実行するために使用することができる。システムは、不整脈患者等の患者の心臓伝導パターンを識別することができる。システムは、患者の心臓の中に挿入するための診断用カテーテルを含む。診断用カテーテルは、カテーテルが電圧を測定するための1つ以上の電極を含む場合等、患者の電気的活動データを記録するように構成され得る。システムは更に、記録された電気的活動データを受け取る処理ユニットを含むことができる。処理ユニットは、1つ以上の機能を実行するように構成されたアルゴリズムを含むことができ、例えば、計算された電気的活動データ、複雑性の評価、及び/又は診断結果を生成する。いくつかの実施形態では、アルゴリズムは複雑性の評価を実行して診断結果を生成する。いくつかの実施形態では、複雑性の評価は、本明細書で説明される1つ以上のアルゴリズムによって実行され、これは、単独で、又は別のアルゴリズムと組み合わせて、複雑性の評価を実行する。いくつかの実施形態では、システムは、心臓アブレーションデバイス及び/又は医薬品等の治療デバイスを更に含む。
【0075】
ここで
図1を参照すると、本発明の概念と一致する、心臓情報処理システムの実施形態のブロック図が示される。心臓情報処理システムは、システム100で示され、心臓マッピング、診断、予後、及び/又は治療を実行するように構成されたシステムであるか、又はそれを含み、例えば、本明細書で説明されるような不整脈若しくは他の心臓の状態等の患者の疾患若しくは障害を治療するためである。追加的又は代替的に、システム100は、患者Pの心臓異常又は疾患を診断及び/又は治療するデバイス及び方法を教示及び/又は検証するように構成されたシステムであり得る。システム100は更に、心臓活動の表示を生成するために使用することができ、例えば、心臓の表面にわたって伝播する活動波面の動的表示である。いくつかの実施形態では、システム100は診断結果1100を生成する。診断結果1100は、患者の心臓の状態に関連する診断データを表し、例えば本明細書に記載の複雑性の評価に基づく診断結果である。
【0076】
システム100は、カテーテル10、心臓情報コンソール20、及び患者インタフェースモジュール50を含み、協働(例えば、集合的に協働)してシステム100の様々な機能を達成するように構成され得る。システム100は、単一電源(PWR)を含み得て、単一電源はコンソール20と患者インタフェースモジュール50により共有され得る。このように単一電源の使用は、漏れ電流が患者インタフェースモジュール50に伝播して、定位(例えば、患者Pの体内の1つ以上の電極の位置を決定するプロセス)に誤差を生じる可能性を大幅に減じる。コンソール20は、
図1に示されるように、コンソール20の様々な構成要素を互いに電気的及び/又は他の方法で動作可能に接続するバス21を含む。
【0077】
カテーテル10は、経皮的に心腔(HC)に送達され得る電極アレイ12を含む。この実施形態では、電極12のアレイは、3次元(3D)空間において既知の空間構成を有する。例えば、拡張状態では、電極アレイ12の物理的関係は既知であり、又は確実に想定され得る。電極アレイ12は、少なくとも1つの電極12a、又は少なくとも3つの電極12aを含み得る。診断用カテーテル10はまた、ハンドル14と、ハンドル14から延びる細長い可撓性シャフト16とを含む。シャフト16の遠位端部には、半径方向に拡張可能及び/又はコンパクト化可能なアセンブリ等の電極アレイ12が取り付けられる。この実施形態では、電極アレイ12はバスケットアレイとして示されるが、電極アレイ12は他の実施形態では他の形態を取ることができる。いくつかの実施形態では、拡張可能な電極アレイ12は、2013年8月30日に出願された「SYSTEM AND METHOD FOR DIAGNOSING AND TREATING HEART TISSUE」と題する出願人の国際出願PCT特許出願番号第PCT/US2013/057579号、及び2014年2月7日に出願された「EXPANDABLE CATHETER ASSEMBLY WITH FLEXIBLE PRINTED CIRCUIT BOARD」と題する国際出願PCT特許出願番号第PCT/US2014/015261号を参照して説明されるように構築され配置され得て、各々の内容はすべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。他の実施形態では、拡張可能な電極アレイ12は、バルーン、半径方向に展開可能なアーム、スパイラルアレイ、及び/又は他の拡張可能でコンパクトな構造(例えば、弾性的に付勢された構造)を含むことができる。
【0078】
シャフト16及び拡張可能な電極アレイ12は、体内(例えば、動物の体内又は患者Pの体内等の人体内)に挿入され、大腿静脈及び/又は他の血管等の体内血管を通って前進されるように構築及び配置される。シャフト16及び電極アレイ12は、導入具(図示せず、経中隔シース等)を通して挿入されるように構築及び配置され得て、例えば、電極アレイ12が圧縮された状態にあるとき、導入具の管腔を通って、例えば、右心房又は左心房等の心腔(HC)等の体腔の中に摺動自在に前進され得る。
【0079】
拡張可能な電極アレイ12は、複数のスプライン(例えば、
図1に示されたバスケット形状に弾性的に付勢される複数のスプライン)を含むことができ、各スプラインは、複数の電極12a及び/又は複数の超音波(US)トランスデューサ12bを有する。3つのスプラインは
図1で見ることができるが、バスケットアレイは3つのスプラインに限定されず、より多い又はより少ないスプラインをバスケットアレイに含めることができる。各電極12aは、心臓の表面上の位置及び/又は心腔HC内の位置における電圧レベル等の生体電位(本明細書では「電気的活動」とも呼ばれる)を記録(例えば、本明細書では記録、測定、及び/又は感知)するように構成され得る。記録された電気的活動は、システム100によって電気的活動データ120aとして記憶される。システム100は、記録された電気的活動データ120aに対して1つ以上の計算を実行し、計算された電気的活動データ120bを生成することができる。電気的活動データ120は、記録された電気的活動データ120a及び/又は計算された電気的活動データ120bを含み得る。計算された電気的活動データ120bは、以下からなる群から選択されたデータを含むことができ、群は、電圧データ、数学的に処理された電圧データ(例えば、平均化されたデータ、統合されたデータ、分類されたデータ、最小値及び/又は最大値が決定されたデータ、及び/又はその他の方法で数学的に処理されたデータ)、表面電荷データ、双極子密度データ、電気的事象のタイミングデータ、フィルタリングされた電気データ、電気パターン及び/又はテンプレートデータ、複数の位置の電気値によって形成された画像、及びこれらの1つ、2つ、又はそれ以上の組み合わせからなる。本明細書で使用する場合、双極子密度、表面電荷、及び表面電荷密度という用語は、互換的に使用されるものとする。
【0080】
計算された電気的活動データ120bは、心臓組織の電気的活性化(本明細書では「活性化(activation:アクティベーション)」とも呼ばれる)の事実を表すデータ、活性化タイミングデータ121を含み得る。いくつかの実施形態では、計算された電気的活動データ120bは、伝導速度を表すデータである伝導速度データ122、及び/又は伝導発散を表すデータである伝導発散データ123を含み、それぞれ以下で説明される。計算された電気的活動データ120bは、本明細書では頂点(単一の位置)及び頂点(複数の位置)と呼ばれる心臓の1か所以上の位置に関連付けられ得る。いくつかの実施形態では、計算された電気的活動データは、以下からなる群から選択されたデータを含み、群は電気的差異(例えば、デルタ)、平均、加重平均、パターン及び/又はテンプレート、1つ以上のパターン又はテンプレートへの適合度(例えばベストフィット)、複数の位置の電気的値によって形成された2つ以上の画像間の「フロー」(例えばHorn-Schunck及び/又はLucas-Kanadeアルゴリズム等の1つ、2つ、又はそれ以上のオプティカルフローアルゴリズムによって計算される)、トレーニングデータセット(例えば、履歴データ等の個別に取得したデータ)を使用した、電気的活動の分類又はカテゴリ化等のデータ分析及び/又は統計手法、計算的に最適化されたフィット(例えば、ニューラルネットワーク若しくは深層学習、クラスタ分析等による、機械学習又は予測分析)、及びこれらの1つ、2つ、又はそれ以上の組み合わせからなる。計算された電気的活動データは、前述の方法の1つ以上を入力として使用する確率モデルを含むことができる。
【0081】
いくつか実施形態では、活性化は、アルゴリズム(例えば、活性化検出アルゴリズム)によって決定され、アルゴリズムは電気的データと閾値との比較、電気的データの勾配及び/又は最大及び/又は最小の測定、1か所の位置の電気的データと1つ以上の近くの位置の電気的データとの比較(例えば重み付け比較)、及びこれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、活性化検出アルゴリズムは、2017年5月3日に出願された「CARDIAC INFORMATION DYNAMIC DISPLAY SYSTEM AND METHOD」と題する、出願人の国際出願PCT特許出願番号第PCT/US2017/030915号、及び2017年5月3日に出願された「CARDIAC MAPPING SYSTEM WITH EFFICIENCY ALGORITHM」と題する、国際出願PCT特許出願番号第PCT/US2017/030922号を参照して説明されたものと同様の構築及び配置であり得て、そのそれぞれの内容は、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。伝播履歴マップの空間的な連続性を促進するために、活性化検出アルゴリズムは、生信号(双極子密度データ及び/又は電圧データなど)と空間ラプラシアン信号の両方を考慮した2つの平行線を含み得る。いくつかの実施形態では、活性化検出アルゴリズムは、潜在的な活動タイミング間の選択、並びに勾配、空間ラプラシアン、ピーク振幅、及び/又は他のそのような特徴等の複数の特徴に対する投票方式の展開の1つの考慮事項として、伝導速度を更に含む。
【0082】
伝導速度の、活性化検出への追加による拡張で、問題は伝導速度の正則化、又は伝導速度の不等式制約としてのいずれかを伴うコスト関数として表すことができる。いくつかの実施形態では、活性化検出アルゴリズムは、検出された各活性化の周囲にガウス確率分布関数を作成し、最も高い確率が現在検出された活性化にある。制約がない場合、すべてのチャネルについて活性化の確率を最大化することで、伝播履歴を出力できる。代替的に、少なくとも1つの制約を含めることで、生理学的に妥当な伝導(例えば、2m/s未満)を含むように解を制限することができ、現在選択されている活性化時間から活性化を僅かにシフトするように構成できる。以下は、伝導速度が制約された状態でコスト関数がどのように記述されるかの例を示す。
【数1】
【0083】
式中、Pは、特定の頂点i、時間τで活性化が発生する確率である。伝導速度の計算はτに依存する。
【0084】
いくつかの実施形態では、活性化検出アルゴリズムは、活性化間の最小分離が時間閾値(例えば、50~150ミリ秒の間)に設定された単極電位図の時間微分の極小値を含む。
【0085】
いくつかの実施形態では、活性化検出アルゴリズムは、活性化間の最小分離が時間閾値(例えば、50~150ミリ秒の間)に設定された双極電位図又はラプラシアン電位図の極小値又は極大値を含む。
【0086】
いくつかの実施形態では、活性化検出アルゴリズムは、(0.5~1Hz)~(100~300Hz)の帯域通過を伴う、又は(10~30Hz)~(100~300Hz)のアグレッシブな帯域通過後の標準フィルタリングを含む。
【0087】
いくつかの実施形態では、活性化検出アルゴリズムは、活性化間の最小分離が時間閾値(例えば、50~150ミリ秒の間)に設定された双極電位図又はラプラシアン電位図の時間微分の極小値及び/又は極大値を含む。活性化検出アルゴリズムは、(0.5~1Hz)~(100~300Hz)の帯域通過を伴う、又は(10~30Hz)~(100~300Hz)のアグレッシブな帯域通過後の標準フィルタリングを更に含むことができる。
【0088】
いくつかの実施形態では、活性化検出アルゴリズムは、活性化間の最小分離が時間閾値(例えば、50~150ミリ秒の間)に設定された陰性振れ後のラプラシアン電位図のゼロクロッシングを含む。
【0089】
いくつかの実施形態では、活性化間の最小分離が時間閾値(例えば、50~150ミリ秒)に設定されたヒルベルト変換電位図(位相マッピング)の極大値を含む。
【0090】
いくつかの実施形態では、活性化検出アルゴリズムは、機械学習(例えば、ニューラルネットワーク、サポートベクターマシン、及び/又は深層学習)を利用する教師あり学習問題として表現されるアルゴリズムを含み得る。これらの実施形態では、アルゴリズムは、履歴データ及び/又はシミュレートされたデータを含むデータセット等のトレーニングデータセットを使用することができる。
【0091】
各USトランスデューサ12bは、超音波信号を送信し、超音波反射を受けて、心腔(HC)の表面上の点等の反射標的までの範囲を決定し、解剖学のデジタルモデル作成で使用される解剖学的データを提供するように構成され得る。記録された超音波データ及び/又は他の解剖学的データは、解剖学的データ110としてシステム100によって記憶され得る。電気的活動データ120(例えば、活性化タイミングデータ121、伝導速度データ122、及び/又は伝導発散データ123を含む)及び/又は解剖学的データ110は、システム100のメモリ、例えば、以下で説明される記憶デバイス25に記憶され得る。
【0092】
非限定的な例として、この実施形態では、3つの電極12a及び3つのUSトランスデューサ12bは各スプライン上に示される。しかしながら、他の実施形態では、バスケットアレイは、より多いかより少ない電極及び/又はより多いかより少ないUSトランスデューサを含み得る。更に、電極12a及びトランスデューサ12bは、対で配置され得る。ここで、1つの電極12aは、1つのトランスデューサ12bと対にされ、スプラインごとに複数の電極-トランスデューサの対を備える。しかしながら、本発明の概念は、この特定の電極-トランスデューサ配置に限定されない。他の実施形態では、すべての電極12a及びトランスデューサ12bが対で配置される必要はなく、いくつかは対で配置され得て、他は対で配置されない。また、いくつかの実施形態では、すべてのスプラインが電極12a及びトランスデューサ12bの同じ配置を含むとは限らない。加えて、いくつかの実施形態では、電極12aはスプラインの第1のセットに配置され、トランスデューサ12bはスプラインの第2のセットに配置される。アレイ12は、少なくとも4つの電極12a、例えば少なくとも24個の電極12a、例えば少なくとも48個の電極を含むことができる。アレイ12は、少なくとも3つのスプライン、例えば少なくとも4つのスプライン、例えば少なくとも6つのスプラインを含むことができる。
【0093】
いくつかの実施形態では、第2のカテーテルであるカテーテル10’は、カテーテル10と組み合わせて使用され、例えば、カテーテル10’のバスケット又は他の電極アレイを別個の心腔内に配置して、複数の心腔を同時にマッピングすることができる。カテーテル10’は、本明細書に記載されたカテーテル10と同様又は異なる構築のものであり得る。カテーテル10’の電極アレイは、カテーテル10の電極アレイ12とは異なる構成で配置され得る。例えば、カテーテル10’のアレイは24個の電極のみを有することができ、USトランスデューサがなく、一方、カテーテル10のアレイ12は48個の電極と48個のUSトランスデューサを所有する。カテーテル10及び/又は10’は、図示のアレイ12等の2つ以上の電極アレイ、及びアレイ12の近位に(例えば、カテーテル10又は10’のシャフト16上に)配置された第2のアレイを含み得る。
【0094】
カテーテル10は、ケーブル18等のケーブル又は他の導管を含み得て、それはカテーテル10がコンソール20にコネクタ18a及び20aをそれぞれ介して電気的、光学的、及び/又は電気光学的に接続するように構成される。いくつかの実施形態では、ケーブル18は、操縦ケーブル等のケーブル、機械式リンケージ、油圧チューブ、空気圧チューブ、及びこれらの1つ以上の組み合わせからなる群から選択された機構を含む。
【0095】
患者インタフェースモジュール50は、コンソール20の1つ以上の構成要素を患者Pから電気的に絶縁するように構成され得る(例えば、ショック又は他の望ましくない電気エネルギーの患者Pへの望ましくない送達を防止するため)。患者インタフェースモジュール50は、図示されるように、コンソール20と一体とすることができ、及び/又はそれは、別個の分離する構成要素(例えば、別個のハウジング)を含み得る。コンソール20は、1つ以上のコネクタ20bを含み、各コネクタは、ジャック、プラグ、端子、ポート、或いは他のカスタム若しくは標準の電気的、光学的、及び/又は機械的コネクタを含む。いくつかの実施形態では、コネクタ20bは終了され、10キロヘルツ~20メガヘルツ等のRF周波数にわたって望ましい入力インピーダンスを維持する。いくつかの実施形態では、終了は、ケーブルシールドをフィルタで終了することによって達成される。いくつかの実施形態では、終了フィルタは、ある周波数範囲で高い入力インピーダンスを供給して、例えば定位周波数での漏れを最小限にし、また異なる周波数範囲で低い入力インピーダンスを供給して、例えば超音波周波数で最大のシグナルインテグリティを達成する。同様に、患者インタフェースモジュール50は、1つ以上のコネクタ50bを含む。少なくとも1つのケーブル52は、コネクタ20b及び50bを介して患者インタフェースモジュール50をコンソール20に接続する。
【0096】
この実施形態では、患者インタフェースモジュール50は、単離された定位駆動システム54、パッチ電極56のセット、及び1つ以上の基準電極58を含む。単離された定位駆動システム54は、システム100の残りの部分から定位信号を分離して、性能の低下をもたらす電流の漏出(例えば、信号損失)を防止する。いくつかの実施形態では、システムの残りの部分からの定位信号の分離は、定位周波数で約500キロオーム等、100キロオームを超えるインピーダンスの範囲を含む。定位駆動システム54の分離は、定位位置のドリフトを最小限に抑え、軸間の高度の分離を維持し得る(以下で説明するように)。定位駆動システム54は、電流、電圧、磁気、音響、又は他のタイプのエネルギーモダリティ駆動として動作し得る。パッチ電極56及び/又は1つ以上の基準電極58のセットは、導電性電極、磁気コイル、音響トランスデューサ、及び/又は定位駆動システム54によって使用されるエネルギーモダリティに基づく他のタイプのトランスデューサ若しくはセンサからなり得る。更に、単離された定位駆動システム54は、すべての軸で同時出力を維持する(例えば、定位信号が各軸電極対に存在する一方で、各電極位置での有効なサンプリングレートも増加させる)。いくつかの実施形態では、定位サンプリングレートは、10kHz~20MHzの間の速度を含み、例えば約625kHzのサンプリングレートである。
【0097】
いくつかの実施形態では、パッチ電極56のセットは、3対のパッチ電極を含み、肋骨(X1、X2)の両側に配置された2つのパッチ電極を有する「X」対、腰部(Y1)に配置された1つのパッチ電極と上部胸部(Y2)に配置された1つのパッチ電極を有する「Y」対と、上部背面(Z1)に配置された1つのパッチ電極と下腹部(Z2)に配置された1つのパッチ電極を有する「Z」対である。パッチ電極56の対は、任意の直交及び/又は非直交の軸のセットに配置され得る。
図1の実施形態では、電極の配置は患者Pに示され、背面の電極は破線で示される。
【0098】
基準パッチ電極58は、腰部/臀部に配置され得る。加えて、又は代替的に、基準カテーテルは、腰部/臀部の中、及び/又は近位の血管等の体内血管内に配置され得る。
【0099】
電極56の配置は、3つの軸から作られる座標系を定義し、パッチ電極56の対ごとに1つの軸である。いくつかの実施形態では、軸は、身体の自然軸に対して非直交であり、すなわち、頭からつま先、胸部から背面、及び横から横(例えば、肋骨から肋骨)に対して非直交である。電極は、心臓に位置する起始部等の原点で軸が交差するように配置され得る。例えば、3つの交差する軸の原点は心房ボリュームの中心に置くことができる。システム100は、心臓の外側に配置される「電気的ゼロ」を提供するように構成することができ、例えば、基準電極58を、結果として生じる電気的ゼロが心臓の外側にあるように配置する(例えば、局所化されている1か所以上の位置で正電圧から負電圧への交差を回避する)。
【0100】
上記のように、パッチの対は差動的に動作することができ、例えば、対のどちらのパッチ56も基準電極として動作せず、両方がシステム100によって駆動されて2つの間に電界を生成する場合である。代替的又は追加的に、パッチ電極56のうちの1つ以上は、基準電極58として機能することができ、その結果、それらは片線接地モードで動作する。パッチ電極56の任意の対の1つは、そのパッチの対の基準電極58として機能し、片線接地パッチの対を形成することができる。1つ以上のパッチの対は、無関係に片線接地になるように構成され得る。1つ以上のパッチの対は、片線接地基準としてパッチを共有でき、又は電気的に接続された複数のパッチの対の基準パッチを有し得る。
【0101】
コンソール20によって実行される処理を介して、軸は、第1の方向(例えば、電極56の配置に基づく非生理学的方向)から第2の方向に変換(例えば、回転)され得る。第2の方向は、標準の左部-後部-上部(LPS)の解剖学的方向を含むことができ、例えば、「x」軸が患者の右部から左部に向けられる場合、「y」軸は患者の前部から後部に向けられ、「z」軸は患者の尾側から頭側に向けられる。パッチ電極56の配置とそれによって定義された非標準の軸は、正常生理学的方向をもたらす結果の軸におけるパッチ電極配置に比較した場合に、改善された空間分解能を提供するように選択できる(例えば、非標準の方向における電極56間の好ましい組織特性による)。例えば、非標準の電極56の配置は、定位フィールドに対する肺の低インピーダンスボリュームの負の影響を低減する結果となり得る。更に、電極56の配置は、同等又は少なくとも同様の長さの経路に沿って患者の身体を通過する軸を作成するように選択され得る。同様の長さの軸は、体内の単位距離あたりの、より同様のエネルギー密度を占有し、そのような軸に沿ってより均一な空間分解能が得られる。非標準の軸を標準の方向に変換すると、ユーザにとってより簡単な表示環境を提供できる。望ましい回転が達成されると、各軸はスケーリングされ得て、例えば、必要に応じて、延長又は短縮される。回転及びスケーリングは、所定の(例えば、予想又は既知の)電極アレイ12の形状及び相対寸法を、パッチ電極が確立された座標系における電極アレイの形状及び相対寸法に対応する測定値と比較することに基づいて実行される。例えば、回転及びスケーリングを実行して、比較的不正確な(例えば、未較正の)表現をより正確な表現に変換し得る。電極アレイ12の表現をシェーピング及びスケーリングすることにより、はるかに正確な定位のために軸の方向と相対サイズを調整、整列、及び/又は他の方法で改善することができる。
【0102】
電気的基準電極(複数可)58は、パッチ電極及び/又は電気的基準カテーテルとすることができ、又は少なくとも含むことができ、それは患者の「アナログ接地」基準として機能し得る。パッチ電極58は、皮膚に配置し得て、除細動のための電流の戻りとして機能することができる(例えば、二次的な目的を提供する)。電気的基準カテーテルは、単極基準電極を含み得て、それを用いて同相信号除去を増強する。単極基準電極、又は基準カテーテル上の他の電極を用いて、心臓信号の生理学的、機械的、電気的、及び/又は計算上のアーチファクトを測定、追跡、修正、及び/又は較正し得る。いくつかの実施形態では、これらのアーチファクトは、呼吸、心臓の動き、及び/又はフィルタなどの付加された信号処理によって誘発されるアーチファクトによるものである。電気的基準カテーテルの別の形態は、内部アナログ基準電極であり得て、これは、すべての内部カテーテル電極の低ノイズ「アナログ接地」として機能し得る。これらのタイプの基準電極の各々は、比較的類似した位置に配置され得て、例えば(カテーテルとして)内部血管の腰部の近く及び/又は(パッチとしての)腰部の上である。いくつかの実施形態では、システム100は、固定機構(例えば、ユーザが作動させる固定機構)を含む基準カテーテル58を含み、これは、基準カテーテル58の1つ以上の電極の変位(例えば、偶発的又はそうでなければ意図されない移動)を低減するように構築及び配置され得る。固定機構は、螺旋状エキスパンダ、球状エキスパンダ、円周方向エキスパンダ、軸方向に作動するエキスパンダ、回転作動するエキスパンダ、及びこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される機構を含み得る。
【0103】
いくつかの実施形態では、コンソール20は、コネクタ20aに接続された除細動(DFIB)保護モジュール22を含み、これは、カテーテル10から心臓の情報を受信するように構成される。DFIB保護モジュール22は、正確なクランプ電圧と、低減された(例えば、最小)キャパシタンスを有するように構成される。機能的には、DFIB保護モジュール22は、サージプロテクタとして機能し、コンソール20の回路を、患者への高エネルギーの印加中、例えば、(標準的な除細動デバイスを使用している等の)患者の除細動中に保護するように構成される。
【0104】
DFIB保護モジュール22は、3つの信号経路、生体電位(BIO)信号経路30、定位(LOC)信号経路40、及び超音波(US)信号経路60に結合され得る。一般に、BIO信号経路30はノイズをフィルタリングし、記録された生体電位データを保存し、更に生体電位信号を読み取る(例えば、正常に記録する)のと同時に、アブレーション(例えば、組織へのRFエネルギーの送達)を可能にし、これは他のシステムではそうではない。一般に、LOC信号経路40は、高電圧入力を可能にする一方で、受信された定位データからノイズをフィルタリングする。一般に、US信号経路60は、超音波トランスデューサ12bを用いて解剖学的構造の物理的構造から距離データを取得して、心腔HCの2D又は3Dデジタルモデルを生成し、これはメモリに記憶され得る。
【0105】
BIO信号経路30は、DFIB保護モジュール22に結合されたRFフィルタ31を含む。この実施形態では、RFフィルタ31は、高い入力インピーダンスを有するローパスフィルタとして動作する。高い入力インピーダンスは、この実施形態では好ましく、それはソース(例えば、カテーテル10)からの電圧の損失を最小にし、それにより、(例えば、RFアブレーション中に)受信した信号をより良く保存するためである。RFフィルタ31は、カテーテル10上の電極12aからの生体電位信号が、RFフィルタ31(例えば、500Hz未満の周波数を通す)を通過することを可能にするように構成され、例えば0.5Hz~500Hzの範囲の周波数である。しかしながら、RFアブレーションで使用される高電圧信号などの高周波数は、生体電位信号経路30から除去される。RFフィルタ31は、10kHz~50kHzの間の折点周波数を含み得る。
【0106】
BIO増幅器32は、RFフィルタリングされた信号を増幅する低ノイズの片線接地された入力増幅器を含み得る。BIOフィルタ33(例えば、ローパスフィルタ)は、増幅された信号からノイズをフィルタリングする。BIOフィルタ33は、約3kHzのフィルタを含み得る。いくつかの実施形態では、BIOフィルタ33は、システム100が心臓のペーシングに対応するように構成される場合等、約7.5kHzのフィルタを含む(例えば、心臓のペーシング中の著しい信号損失及び/又は低下を回避するため)。
【0107】
BIOフィルタ33は、差動増幅器ステージを含むことができ、それを用いて生体電位データから同相モード電力線信号を除去する。この差動増幅器は、ベースライン回復機能を実装でき、それは生体電位信号からDCオフセット及び/又は低周波アーチファクトを除去する。いくつかの実施形態では、このベースライン回復機能は、1つ以上のフィルタステージを含み得るプログラム可能なフィルタを含む。いくつかの実施形態では、フィルタは状態依存フィルタを含む。状態依存フィルタの特性は、閾値及び/又はパラメータ(例えば、電圧)の他のレベルに基づくことができ、フィルタレートはフィルタの状態に基づいて変化する。ベースライン回復機能の構成要素には、ベースライン回復電圧のデザリング及び/又はパルス幅変調等のノイズ低減技術を組み込むことができる。ベースライン回復機能は更に、測定、フィードバック、及び/又は特性化によって、1つ以上のステージのフィルタ応答を決定し得る。ベースライン回復機能は更に、生理学的信号形態を表す信号の部分をフィルタ応答のアーチファクトから決定及び/又は識別し、元の形態又はその一部分を計算により回復し得る。いくつかの実施形態では、元の形態の回復は、フィルタ応答の直接的な減算、及び/又はフィルタ応答の追加の信号処理、例えば静的、時間依存、及び/又は空間依存の重み付けの後のフィルタ応答の減算、乗算、フィルタリング、反転、及びこれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、ベースライン回復機能は、BIOフィルタ33、BIOプロセッサ36、又はその両方で実装される。
【0108】
LOC信号経路40は、DFIB保護モジュール22に結合された高電圧バッファ41を含む。この実施形態では、高電圧バッファ41は、RFアブレーション電圧などの治療技術で使用される比較的高電圧に対応するように構成される。例えば、高電圧バッファは、±100Vの電源レールを有し得る。いくつかの実施形態では、各高電圧バッファ41は、高い入力インピーダンスを有し、例えば定位周波数で100キロオーム~10メガオームのインピーダンスである。いくつかの実施形態では、すべての高電圧バッファ41は、合計並列電気的等価物として一緒にすると、高い入力インピーダンスも有し、例えば定位周波数で100キロオーム~10メガオームのインピーダンスである。いくつかの実施形態では、高電圧バッファ41は、高周波数の範囲にわたって良好な性能を維持する帯域幅を有し、例えば100キロヘルツ~10メガヘルツの間の周波数、例えば約2メガヘルツの周波数である。いくつかの実施形態では、高電圧バッファ41は、受動的RFフィルタ入力ステージを含まず、例えば高電圧バッファ41が±100Vの電源を有する場合である。高周波帯域通過フィルタ42は、高電圧バッファ41に結合され得て、定位に使用するために約20kHz~80kHzの通過帯域周波数範囲を有することができる。いくつかの実施形態では、フィルタ42は、ユニティゲイン(例えば、1又は約1のゲイン)で低ノイズを有する。
【0109】
US信号経路60は、US分離マルチプレクサであるMUX61、Tx/Rxスイッチを備えたUS変圧器であるUS変圧器62、US生成及び検出モジュール63、並びにUS信号プロセッサ66を含む。US分離MUX61は、DFIB保護モジュール22に接続され、USトランスデューサ12bを所定の順序又はパターン等でオン/オフするために使用される。US分離MUX61は、高い入力インピーダンススイッチのセットであり得て、開いているとき、USシステムと残りのUS信号経路要素を分離し、インピーダンスをグラウンドへ(トランスデューサとUS信号経路60を介して)LOC及びBIO経路の入力からデカップリングする。US分離MUX61はまた、1つの送信/受信回路を、カテーテル10上の1つ以上の複数のトランスデューサ12bに多重化する。US変圧器62は、US分離MUX61とUS生成及び検出モジュール63との間で両方向に動作する。US変圧器62は、超音波送信及びUSトランスデューサ12bによる受信中に、モジュール63のUS送信及び受信回路によって生成される電流から患者を隔離する。US変圧器62は、例えば送信/受信スイッチを使用することにより、トランスデューサ12bの動作のモードに基づいてモジュール63の送信及び/又は受信電子機器を選択的に係合するように構成され得る。すなわち、送信モードでは、モジュール63は、(データプロセッサ26内の)USプロセッサ66から制御信号を受信し、それはUS信号生成を作動し、Tx増幅器の出力をUS変圧器62に接続する。US変圧器62は信号をUS分離MUX61に結合し、これはUSトランスデューサ12bを選択的に作動する。受信モードでは、US分離MUX61は、1つ以上のトランスデューサ12bから反射信号を受信し、これは、US変圧器62に渡される。US変圧器62は、信号をUS生成及び検出モジュール63の受信電子機器に結合し、これは、次に、反射データ信号をUSプロセッサ66に転送し、ユーザインタフェース27及びディスプレイ27aによって処理され使用される。いくつかの実施形態では、プロセッサ66は、MUX61及びUS変圧器62に命令し、超音波の送信及び受信を可能にして、関連するトランスデューサ12bの1つ以上を所定の順序又はパターン等で作動させる。USプロセッサ66は、例として、単一の第1の反射の検出、複数の標的からの複数の反射の検出と識別、ドップラ法及び/又は後続のパルスからの速度情報の決定、反射信号の振幅、周波数、及び/又は位相特性からの組織密度情報の決定、そしてこれらの1つ以上の組み合わせを含み得る。
【0110】
アナログデジタル変換器(ADC)24は、BIO信号経路30のBIOフィルタ33及びLOC信号経路40の高周波フィルタ42に結合される。ADC24によって、個々の時変アナログ生体電位電圧信号のセットが各電極12aに対して1つずつ受信される。これらの生体電位信号は、BIO信号経路30を介して、個々のチャネルごとに、単極電極を差動的に基準にして同相信号除去を強化され、フィルタリングされ、及びゲイン較正される。更にADCにより、個々の時変アナログ定位電圧信号のセットが、LOC信号経路40を介して、各パッチ電極56の各軸に対して受信され、これは電極12aに対して単一時間で測定された48個(この実施形態では)の定位電圧の集合としてADC24に出力される。ADC24は、ノイズシェーピング及びフィルタリングを可能にするための高いオーバーサンプリングを有し、例えば、約625kHzのオーバーサンプリングレートを有する。いくつかの実施形態では、サンプリングは、システム100のナイキスト周波数以上で実行される。ADC24は、マルチチャネル回路であり、BIO信号とLOC信号を組み合わせるか、それらを別々に保つことができる。一実施形態では、マルチチャネル回路として、ADC24は、合計80チャネルに対して、(例えば、アブレーション又は他のプロセスのための)48個の定位電極12a及び32個の補助電極を収容するように構成され得る。他の実施形態では、より多いかより少ないチャネルが設けられ得る。
図1では、例えば、コンソール20のほとんどすべての要素は、(例えば、UIシステム27を除いて)各チャネルに対して重複され得る。例えば、コンソール20は、各チャネルに対して別個のADC、又は80チャネルのADCを含み得る。この実施形態では、BIO信号経路30及びLOC信号経路40からの信号情報は、ADC24の様々なチャネルに入力され、チャネルから出力される。ADC24のチャネルからの出力は、BIO信号処理モジュール34又はLOC信号処理モジュール44のいずれかに結合され、これらは、以下で説明するように、後続の処理のためにそれぞれの信号を前処理する。いずれの場合も、前処理は、以下で説明するそれぞれの専用プロセッサによる処理のために受信信号を準備する。いくつかの実施形態では、BIO信号処理モジュール34及びLOC信号処理モジュール44は、全体的又は部分的に、ファームウェアで実装され得る。
【0111】
生体電位信号処理モジュール34は、ゲインとオフセット調整及び/又は非分散ローパスフィルタと中間周波数帯域とを有するデジタルRFフィルタリングを配設し得る。中間周波数帯域は、アブレーション信号と定位信号を排除できる。生体電位信号処理モジュール34はまた、デジタル生体電位フィルタリングを含むことができ、それは出力サンプルレートを最適化し得る。
【0112】
加えて、生体電位信号処理モジュール34はまた、「ペースブランキング」を含むことができ、それは、例えば、医師が心臓を「ペーシング」している時間枠の間に受信された情報のブランキングである。一時的な心臓ペーシングは、例として、心臓内、食道内、及び/又は経皮的ペーシングリードの挿入又は適用を介して実装され得る。一時的な心臓ペーシングの目標は、心調律及び/又は血行動態を対話式にテストし、及び/又は改善することであり得る。上記を達成するために、能動的及び受動的ペーシングトリガ並びに入力アルゴリズム的トリガ決定が(システム100などによって)実行され得る。アルゴリズム的トリガ決定は、チャネルのサブセット、エッジ検出、及び/又はパルス幅検出を使用して、患者のペーシングが発生したかどうかを決定できる。必要に応じて、ペースブランキングは、検出が行われなかったチャネルを含む、すべてのチャネル又はチャネルのサブセットにシステム100によって適用され得る。
【0113】
追加的に、生体電位信号処理モジュール34はまた、超音波信号及び/又は他の不要な信号(例えば、生体電位データからのアーチファクト)を除去する特殊なフィルタを含み得る。いくつかの実施形態では、このフィルタリングを実行するために、エッジ検出、閾値検出及び/又はタイミング相関が使用される。
【0114】
定位信号処理モジュール44は、個々のチャネル/周波数ゲイン較正、調整された復調位相を伴うIQ復調、同期及び連続復調(MUXなし)、狭帯域Rフィルタリング、及び/又は時間フィルタリング(例えば、インタリーブ、ブランキング等)を供給でき、以下で説明する。定位信号処理モジュール44は更に、デジタル定位フィルタリングを含み得て、出力サンプルレート及び/又は周波数応答を最適化する。
【0115】
この実施形態では、BIO信号経路30、LOC信号経路40、及びUS信号経路60のアルゴリズム的計算は、コンソール20で実行される。これらのアルゴリズム的計算には、限定するものではないが、一度に複数のチャネルを処理すること、チャネル間の伝播遅延を測定すること、x、y、zデータを電極位置の空間分布に変えることを含むことができ、位置の集合への補正を計算して適用し、個々の超音波距離と電極位置を組み合わせて、検出された心内膜表面点を計算し、表面点から表面メッシュを構築することを含んでいる。コンソール20によって処理されるチャネルの数は、1~500の間、例えば24~256の間、例えば48、80、又は96チャネルとすることができる。
【0116】
データプロセッサ26は、複数のタイプの処理回路(例えば、マイクロプロセッサ)及びメモリ回路のうちの1つ以上を含むことができ、BIO信号処理モジュール34、定位信号処理モジュール44、及びUSTX/RXMUX61からの前処理された信号の処理を実行するために必要なコンピュータ命令を実行する。データプロセッサ26は、システム100の機能を実行するために必要な計算を実行し、データ記憶及び検索を実行するように構成され得る。
【0117】
この実施形態では、データプロセッサ26は、生体電位(BIO)プロセッサ36、定位(LOC)プロセッサ46、及び超音波(US)プロセッサ66を含み得る。生体電位プロセッサ36は、(例えば、電極12aからの)記録、測定、又は感知された生体電位の処理を実行し得る。LOCプロセッサ46は、定位信号の処理を実行することができる。USプロセッサ66は、(例えばトランスデューサ12bからの)反射されたUS信号の画像処理を実行し得る。
【0118】
生体電位プロセッサ36は、様々な計算を実行するように構成され得る。例えば、BIOプロセッサ36は、強化された同相信号除去フィルタを含むことができ、これは双方向性であって歪みを最小化でき、同相モード信号でシードされ得る。BIOプロセッサ36はまた、最適化された超音波除去フィルタを含み、選択可能な帯域幅フィルタリングのために構成され得る。US信号経路60のためのデータの処理ステップは、生体信号プロセッサ34及び/又は生体プロセッサ36によって実行され得る。
【0119】
定位プロセッサ46は、様々な計算を実行するように構成され得る。以下でより詳細に説明するように、LOCプロセッサ46は、電極アレイ12の既知の形状に基づいて軸に対して電子的に補正(計算)を行い、電極アレイ12の既知の形状に基づいて1つ以上の軸のスケーリング又はスキューに補正を行い、「フィッティング」を実行して、測定された電極の位置を既知の可能な構成に整列することができ、これは、1つ以上の制約(例えば、物理的制約であり、単一のスプライン上の2つの電極12a間の距離、2つの異なるスプライン上の2つの電極12a間の距離、2つの電極12a間の最大距離、2つの電極12a間の最小距離、及び/又は、スプラインの最小及び/又は最大曲率等)で最適化され得る。
【0120】
USプロセッサ66は、USトランスデューサ12bを介したUS信号の生成及びUSトランスデューサ12bによって受信されたUS信号反射の処理に関連する様々な計算を実行するように構成され得る。USプロセッサ66は、US信号経路60と相互作用して、USトランスデューサ12bとの間でUS信号を選択的に送信及び受信するように構成され得る。USトランスデューサ12bは各々、USプロセッサ66の制御下で送信モード及び/又は受信モードにすることができる。USプロセッサ66は、電極アレイ12が配置される心腔(HC)の2D及び/又は3D画像を、USトランスデューサ12bからUS経路60を介して受信される反射US信号を使用して構築するように構成され得る。
【0121】
コンソール20はまた、定位駆動回路を含むことができ、定位信号生成器28及び定位駆動電流監視回路29が含まれる。定位駆動回路は、高周波定位駆動信号(例えば、10kHz~100kHz等の10kHz~1MHz)を供給する。これらの高周波数で駆動信号を用いる定位は、定位データに対する(例えば、血球の変形からの)細胞応答の影響が減少し、及び/又はより高い駆動電流が可能になる(例えば、より良い信号対雑音比を達成する)。信号生成器28は、超低位相ノイズタイミングで、駆動信号(例えば、正弦波)の高分解能デジタル合成を生成する。駆動電流監視回路は、高電圧、広帯域幅電流源を供給し、これは監視されて患者Pのインピーダンスを測定する。
【0122】
コンソール20はまた、少なくとも1つのデータ記憶デバイス25を含み得て、様々なタイプの記録、測定、感知、及び/又は計算された情報とデータ、並びにコンソール20から利用可能な機能を具現化するプログラムコードを記憶する。
【0123】
コンソール20はまた、定位、生体電位、及びUS処理の結果を出力するように構成されたユーザインタフェース(UI)システム27を含むことができる。UIシステム27は、少なくとも1つのディスプレイ27aを含むことができ、そのような結果を2D、3D、又はそれらの組み合わせでグラフィカルにレンダリングする。いくつかの実施形態では、ディスプレイ27aは、ビュー方向、ズームレベル、パン位置等の独立的に構成可能なビュー/カメラプロパティ、及び色、透明度、明るさ、輝度等のオブジェクトプロパティを伴う3D結果の2つの同時ビューを含む。UIシステム27は、1つ以上のユーザ入力構成要素を含むことができ、例えばタッチスクリーン、キーボード、ジョイスティック、及び/又はマウスである。
【0124】
コンソール20、又はシステム100の別の構成要素は、示される複雑性のアルゴリズム600等の1つ以上のアルゴリズムを含み得る。複雑性のアルゴリズム600は、
図3を参照して以下で説明されるようなアルゴリズムを含むことができる。複雑性のアルゴリズム600は、1つ以上のアルゴリズムを含み得て、例えば、CVアルゴリズム200、LRAアルゴリズム300、LIAアルゴリズム400、FAアルゴリズム500、及び/又は複雑性のアルゴリズム600の1つ以上であり、以下で説明される。複雑性のアルゴリズム600は、心臓伝導パターン又は特性を識別、定量化、カテゴリ化、及び/又は他の方法で評価することができ、本明細書では診断情報、診断結果1100を生成する。複雑性のアルゴリズム600は、複雑性の、時間及び/又は空間にわたる評価、及び/又は、経時的な複雑性の変動の評価を生成し得る。いくつかの実施形態では、複雑性のアルゴリズム600、及び/又はシステム100の別のアルゴリズムは、バイアスを含む。いくつかの実施形態では、アルゴリズムは、偽陽性へのバイアス(例えば、複雑な領域を複雑であると分類しないことに対して、複雑でない領域を複雑であると誤って識別しがちなバイアス)を含む。いくつかの実施形態では、アルゴリズムは、偽陰性へのバイアスを含む。いくつかの実施形態では、システム100のアルゴリズムは、臨床医によって設定及び/又は調整(本明細書では「設定」)されたバイアスを含み、例えばシステム100を臨床医の特定の好みに向けてバイアスをかける。
【0125】
本発明の概念のアルゴリズムによって決定される複雑性は、そうでなければ単純で繰り返し的で一貫した電気的活動のパターンである、予想される動き又は正常な動きからの逸脱を含む。心臓の電気的活動では、心腔の予想される動き又は正常な動きは、洞調律と呼ばれる組織の一貫した繰り返しで協調された活性化であり、ある位置(洞房結節等)から始まり、心腔に沿って滑らかに伝播する。複雑性には、任意の偏位が含まれ、一貫性(例えば、活性化の時間、振幅、方向、及び/又は繰り返し率)、及び/又は協調/順序(例えば、活性化の時間及び/又は方向)を妨害する。組織の領域は、電気的活性化を自己開始し(自動性)、そうでなければ協調された活性化を中断する場合がある。易感染性、瘢痕化、疾患、及び/又はその他の不均一特性(例えば、線維症、様々な線維配向、様々な心内膜から心外膜への経路)を有する可能性のある組織の領域は、上述のように、心臓活動の複雑性を生じる。複雑性を生じる領域は、一貫した方法で予想される伝導を妨害する場合がある。例えば、伝導は異なる方向にリダイレクトされ、振幅の減少を伴うが、活性化ごとに同じようにリダイレクトされる場合がある。或いは、複雑性を示す領域(例えば、システム100のアルゴリズムによって識別される)は、予想される伝導を確率論的又は確率的な方法で(例えば、ランダム変動のように)妨害する場合があるが、その方法では伝導を妨害する方法で認識可能な統計的動きを扱う。例えば、修正された伝導は、X%の時間に対してはある特徴的な方法で、Y%の時間に対しては第2の異なる特徴的な方法で、領域を通じて識別され得る。いくつかの実施形態では、Z%(ここでZ<100)の時間に対しては、活性化は正常な伝導を示すが、その領域は、システム100によって、ある部分の時間に対して、1つ以上の形での修正された伝導のため、依然として複雑であると識別される。
【0126】
本発明の概念のアルゴリズムは、複雑性の複数の領域が相互作用し、又はそうでなければ結合して、心腔全体に更なる複雑性を生じ、それによって心腔にわたる全体的な複雑性の程度を増す場合を識別するように構成され得て、
図3Aを参照して以下で説明する。心臓組織には不応期(非活動)の伝播特性があるため、活性化の順序とタイミングに影響を与える複雑性は、後の活性化に時間的に、広い空間領域にわたって持続的/永続的な影響を与える場合がある。したがって、自動性又は不均一性の唯一又は個別のゾーンの数が増えると(組織媒介の複雑性)、結果として生じる電気的活性化はますます複雑になり(例えば、組織媒介の複雑性と結合に関連する複雑性の増強)、時間及び空間的に心臓組織の伝播性質に結び付き、先行する伝導の変化によって確立され、続く伝導の変化に影響を与える。複雑性が増すにつれ、単純な電気測定に基づく、結合に関連する複雑性から組織媒介の複雑性を識別する機能がより困難になる。システム100は、経時的かつ空間全体にわたって(例えば、同時に)より多くの情報を収集するように構成され得て、収集された追加情報は、心腔にわたって局所的、領域的、及び全体的に複雑性を解読する1つ以上のアルゴリズムを支援する。
【0127】
複雑性のアルゴリズム600は、複数の頂点を表す計算された電気的活動データ120bに基づいて複雑性の評価を行うことができ、例えば、関連する記録された電気的活動データ120aが心腔内の少なくとも3か所の記録位置(例えば、心臓壁の上及び/又は心臓壁からオフセットされる)から記録されたデータを含む。いくつかの実施形態では、記録された電気的活動データ120aは、心臓の壁からオフセットされた少なくとも1か所の位置(例えば、少なくとも1つの非接触記録)を含む。いくつかの実施形態では、記録された電気的活動データ120aは、心臓の壁上の少なくとも1か所の位置(例えば、少なくとも1つの接触記録)を含む。いくつかの実施形態では、記録された電気的活動データ120aは、心臓の壁からオフセットされた少なくとも1か所の位置、及び心臓の壁上の少なくとも1か所の位置(例えば、少なくとも1つの接触記録及び1つの非接触記録、「混成」)を含む。いくつかの実施形態では、接触に基づく測定が行われる心臓壁上の各位置について、システム100は、その位置を頂点としてカテゴリ化するようにバイアスされる。
【0128】
いくつかの実施形態では、アルゴリズム600は第2のアルゴリズムを含み、これは、例えば複雑性の分析が表面電荷データ及び/又は双極子密度データに基づく場合、記録された電気的活動データ120a(例えば、記録された電圧)に基づいて、複数の頂点の各々に対して表面電荷データ及び/又は双極子密度データを計算するように構成される。表面電荷データ及び/又は双極子密度データは、2013年4月9日に発行された、「METHOD AND DEVICE FOR DETERMINING AND PRESENTING SURFACE CHARGE AND DIPOLE DENSITIES ON CARDIAC WALLS」と題する、出願人の米国特許第8,417,313号、及び2013年8月20日に発行された「DEVICE AND METHOD FOR THE GEOMETRIC DETERMINATION OF ELECTRICAL DIPOLE DENSITIES ON THE CARDIAC WALL」と題する、米国特許第8,512,255号に記載されるように計算され得て、各々の内容は、その全体がすべての目的のために参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、アルゴリズム600は、第3のアルゴリズムを含み、これは複雑性の分析が表面電圧データに基づくような場合に、表面電荷データ及び/又は双極子密度データを表面電圧データに変換する。
【0129】
いくつかの実施形態では、アルゴリズム600は、患者の心臓の比較的小さな部分(例えば、患者の心腔の比較的小さな部分)にわたって複雑性の評価を実行し、例えば心臓壁の7cm
2以下を表す部分、例えば4cm
2以下を表す部分、例えば1cm
2以下を表す部分である。これらの実施形態では、電気的活動は少なくとも3か所の記録位置から(例えば電極12aによって)記録され得て、計算された電気的活動データ120bは(本明細書で説明するように)少なくとも3つの頂点に対して決定され得る。いくつかの実施形態では、少なくとも3か所の記録位置は、(例えば、接触ベースの記録を介して)心臓壁上の少なくとも3か所の位置を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1か所の記録位置は、心臓壁からオフセットされる(例えば、非接触マッピング)。いくつかの実施形態では、アルゴリズム600は、電圧データ及び/又は双極子密度データを使用して、小さな部分の複雑性の評価を実行する。いくつかの実施形態では、患者の心臓の小さな部分の分析は、システム100と、
図9及び9Aを参照して以下に説明される関連方法とを用いて実行される。
【0130】
いくつかの実施形態では、アルゴリズム600は、患者の心臓の中程度又は大きな部分にわたる複雑性の評価を実行し、例えば心臓壁組織(例えば、心臓の心房の壁組織)の少なくとも7cm2を表す患者の心臓の一部分、例えば最小表面積が1cm2、例えば4cm2、例えば7cm2である。これらの実施形態では、電気的活動は、心臓内(例えば単一の心腔内)の少なくとも24か所の位置から(例えば電極12aにより)記録され得て、計算された電気的活動データ120bは少なくとも64個の頂点に対して決定され得る。いくつかの実施形態では、電気的活動は、心臓壁からオフセットして(例えば、非接触ベースの記録を介して流れる血液において)なされた追加の記録の有無にかかわらず、少なくとも24か所の心臓壁の位置から(例えば、接触ベースの記録を介して)記録され得る。これらの実施形態では、電気的活動は、少なくとも48か所の心臓壁の位置、又は少なくとも64か所の心臓の位置から記録され得る。いくつかの実施形態では、電気的活動は、心臓壁上の位置と、心臓壁からオフセットされた位置との両方から記録され、例えばデータは心腔内の少なくとも24か所、少なくとも48か所、又は少なくとも54か所の接触及び非接触位置から記録される場合である。これらの実施形態では、計算された電気的活動データ120bは、少なくとも100個の頂点、例えば少なくとも500個、少なくとも3000個、及び/又は少なくとも5000個の頂点に対して決定され得る。
【0131】
いくつかの実施形態では、複雑性のアルゴリズム600は、組織の様々な深さ(例えば、層)を介してデータを組み込む。より厚い組織では、電気伝導は厚さを通して変化し得る。組織の伸長及び/又は歪みはまた、組織の伝導性質に影響を及ぼし得る。組織の深さを通る電気的データ又は生体力学的データの測定、記録、及び/又は計算を使用して、複雑性のアルゴリズム600の精度及び/又は特異性を改善することができる。いくつかの実施形態では、表面電荷密度及び/又は双極子密度は、心腔の組織の厚さを通して計算され、計算されたデータは、複雑性のアルゴリズム600への入力として使用される。いくつかの実施形態では、表面電荷密度及び/又は双極子密度は、2018年3月20日に出題された、「DEVICE AND METHOD FOR THE GEOMETRIC DETERMINATION OF ELECTRICAL DIPOLE DENSITIES ON THE CARDIAC WALL」と題する、出願人の同時係属中の米国特許出願第15/926,187号に記載されるように決定され、その内容はその全体がすべての目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0132】
複雑性のアルゴリズム600は、1つ以上の特性、例えば、時間、空間、大きさ、及び/又は状態が変化する心臓の電気的、機械的、機能的、及び/又は生理学的特性の変動を評価することができる。過去数十年にわたる心臓の動き、機能、及びその他の特性の研究により、「標準」と見なされるものについて実質的な理解が得られている。心不整脈等の心臓の状態は、多くの方法で標準からの変動を示し、これらの変動は、複雑性のアルゴリズム600によって定量化、認定、及び/又は評価され得る
【0133】
いくつかの実施形態では、時間又は時間的繰り返し及び/又は安定性の変動(例えば、時間的規則性及び/又は不規則性の測定)は、心不整脈の存在を示す。電気的特性(例えば、周期長、卓越周波数、ハーモニック器質化、波形「エネルギー」の分割又は測定、シャノンエントロピ、時間ウィンドウ内の波形の偏り、時間的波形再発、規則性、及び/又は尖度等の電気的データの高次統計)は、システム100によって測定又は他の方法で決定され得て、これらの特性は、複雑性のアルゴリズム600によって実行される評価に含まれ得る。システム100は、ツールを使用してこれらの変数を決定することができ、ツールはインターバル分析、フーリエ変換、ヒルベルト変換又は他の変換、ウェーブレット分析、及びこれらの組み合わせ等である。
【0134】
アルゴリズム600によって評価される機械的及び/又は機能的(本明細書では「機械的」)特性は、経時的な心臓壁の偏向タイミングを含み得る。いくつかの実施形態では、システム100は決定し、アルゴリズム600は、電気的及び/又は機械的データの組み合わせ、例えば電気機械的遅延(例えば、時間の関数としても変化し得る)を評価する。
【0135】
いくつかの実施形態では、アルゴリズム600は、システム100によって決定された特性の大きさ及び/又は状態の変動を評価する。例えば、評価された電気的特性は、心臓表面での電気的活動の評価を含むことができ、例えば、rms振幅、頂点間振幅、頂点陰性(peak-negative)振幅、及びこれらの組み合わせの評価である。評価された機械的特性は、心周期の1つ以上の位相を通した心臓壁の全体又は平均の偏向を含み得る。いくつかの実施形態では、電気的及び機械的データの組み合わせは、電気的大きさの、機械的大きさ及び/又は機能的効率に対する比を含む。
【0136】
いくつかの実施形態では、アルゴリズム600は、空間にわたる、又は1つ以上の特性の方向における変動を評価する。例えば、評価される電気的特性は、(例えば、単極電極によって記録されたデータから決定される)異なる方向に形成された指向性双極子、伝導速度方向、空間波形分析、及びこれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、ラプラシアン演算子を、多極及び/又は全極性カテーテルから記録された電気的活動データ120aに適用して、アルゴリズム600が評価するための計算データを提供し得る。
【0137】
いくつかの実施形態では、アルゴリズム600は、時間、空間、大きさ、及び/又は状態のうちの2つ以上に関して、1つ以上の特性の変動を評価する。いくつかの実施形態では、アルゴリズム600は、時間空間的な変動等、同時に変化するこれらの2つ以上を評価する。これらの実施形態では、アルゴリズム600は、電気的特性を評価して、関心のあるパターン(例えば、限局性パターン、回転性パターン、不規則性パターン、方向性パターン、及び/又はタイミングパターン)が発生するかどうかを決定し得る。アルゴリズム600は、次の特性の1つ以上を示す活性化シーケンス又は伝導パターン等の時間空間的特徴又はパターンを評価でき、特性は、制限された「ギャップ」又は開口部を介して「発生」する伝播、領域的に制約された旋回リエントリ、及び他の不規則性伝導パターン(例えば、時間と空間が変化するパターン)、中央のコア又は障害を中心とした回転性、及び/又は単一の位置から広がる限局性活性化である。アルゴリズム600は、伝導速度の変化(例えば、大きさ及び/又は方向)の評価を含むことができる。アルゴリズム600は、これらの特性の1つ以上の定性的及び/又は定量的分析を実行し、複雑性の評価を提供することができる。
【0138】
アルゴリズム600によって提供される複雑性の評価は、評価される各位置(例えば、各頂点)で複雑性が1回以上発生したかどうかの2値(binary)測定を含み得る。アルゴリズム600によって提供される複雑性の評価は、ある期間にわたる静的レベルの複雑性(例えば、合計、平均、中央値、分散、標準偏差、及び/又は百分位数レベル)を含むことができる。決定された静的レベルは、静的データのサブセット範囲を計算及び/又は表示するために閾値処理される。アルゴリズム600によって提供される複雑性の評価は、経時的な(例えば、1つ以上の期間にわたる)複雑性の変動の評価を含み得て、例えば、速度、頻度、程度、百分位数及び/又は確率の変化の評価である。複雑性のアルゴリズム600は、複数の複雑性の評価を順番に、例えば、
図8を参照して以下で説明する「ローリングウィンドウ」を用いて実行され得る。複数の複雑性の評価には、経時的な静的量の複雑性の評価を含めることができる。
【0139】
複雑性のアルゴリズム600は、複雑性(例えば、複雑性の変化)を評価し、複数の目的で使用される結果(例えば、診断結果1100)を生成し得る。例えば、アルゴリズム600は、複雑性の安定性及び/若しくは一貫性、及び/又は他の不整脈発生状態の評価を、数分以下の分析された記録持続時間(例えば、10分未満の持続時間)に基づいて提供することができる。評価は、一貫した複雑性の領域と一時的又は断続的な複雑性の領域を区別できる。一貫性のある領域は、特定の組織基質の特性と関係付けられ得る。心臓系では、組織基質が異方性、異質、異常、又は疾患のある領域は、その組織位置での電気的活動に一貫して変動及び/又は複雑性を生じる場合がある。しかしながら、正常組織の領域はまた、組織基質の異方性領域によって生じる複雑な伝播波面の下流相互作用に起因する変動又は他の複雑性(波の衝突、干渉、融合、機能的ブロック等)を見る場合がある。この複雑性は「機能的」影響であり、伝播する波の電気生理学的相互作用により、これらの波が複雑な方法で、しばしば断続的に干渉又は相互作用を生じる場合がある。心臓組織は各活性化後の一定期間、不応性(再活動できない)状態に留まるため、活性化の波が通過する瞬間のみでなく、それが経過した後の長期間にわたって機能的影響が発生する。最終的な結果は、心臓組織の活性化の複雑性が、複雑性のアルゴリズム600によって識別されるため、組織自体が異常でも疾患でもない領域で発生する可能性もあるが、他の組織の位置で発生した以前の複雑な相互作用による、ということである。固定された、基質媒介の複雑性(又は機械的)は同じ位置で確率的に再発する。機能的な複雑性は、位置及び所与の位置での発生頻度において変化し得る。複雑性のアルゴリズム600は、
図3Aを参照して以下で説明するように、一貫性、安定性、再現性、及び/又は複雑性のパターンを評価して、固定された基質媒介の複雑性と機能的複雑性を区別するように構成され得る。
【0140】
複雑性のアルゴリズム600を用いて、送達された治療(例えば、以下に記載されるように、治療サブシステム800によって提供される治療等のRF又は他の心臓アブレーション)から生じる電気的変化を決定する。治療的活動の前後又は間隔の複雑性及び/又は複雑性の一貫性(本明細書では「複雑性」)の比較を使用して、送達された治療の電気生理学的影響を示し得る。アルゴリズム600は、平均差プロットの形で比較を提供することができる。治療的事象は、数秒の短時間(単一又は少数の位置で)又は最大数分(アブレーションライン、ループ、コア、ボックス等のより広範な操作の場合)であってもよい。治療的活動又は間隔が長いほど、比較においてより大きな変化が存在する場合がある。いくつかの実施形態では、システム100は、原因(治療)及び効果(治療以前及び治療後の複雑性の変動等の複雑性の評価)のリアルタイム(例えば治療中)フィードバックループを提供する。システム100は、複雑性の評価(例えば、記録された電気的活動データ120a及びアルゴリズム600を介した複雑性の計算)を比較的短時間(例えば、10分未満、又は5分未満)で提供するように構成され得て、その結果、臨床医は、治療的間隔時間を減らして、各間隔の後の複雑性を評価するようになる。これらの実施形態では、不必要なアブレーションを回避することができ、及び/又は全体的な処置時間を短縮することができる。
【0141】
複雑性のアルゴリズム600は、リアルタイムで複雑性のデータ(例えば、複雑性の評価の出力)を生成するように構成され得て、その結果、複雑性のデータ(例えば、診断結果1100)もまた動的に、リアルタイムで示され得る。例えば、システム100は、電気的活動データ120aを記録して処理することができ、アルゴリズム600は、記録された活動を、例えばローリングウィンドウを用いて(例えば、
図8を参照して以下で説明するように)、5秒~60秒の持続時間を備える時間ウィンドウ等で分析し得る。アルゴリズム600は、評価された総持続時間にわたって記録された電気的活動データ120aを連続的に分析することによって複数の複雑性の評価を提供し、電気的活動データ120aの記録が続くにつれて、新しいデータが追加され、最も古いデータが除外される。複雑性の評価(例えば、ビデオ形式で提供される複数の複雑性の評価)は、リアルタイムで(例えば、短い処理遅延を伴って)提供され得て、例えば、治療中(アブレーション等)に、治療が望ましい結果を達成したとき(電気ブロック等の望ましい効果を引き起こすのに十分なエネルギーが供給されたとき)、及び/又は治療を変更して治療目標を達成する、若しくはその他の効率を改善する方法を動的に決定する。代替的又は追加的に、提供された複雑性の評価は、電気的活動データ120aの関連する記録が停止した後、1回以上、可視化され得て(例えば、再生モードで)、追加の治療を実行し、及び/又は治療を変更する。
【0142】
複雑性のアルゴリズム600は、2つの別個の臨床的処置(例えば、第1の臨床的処置とその後の第2の臨床的処置)中に記録された電気的活動データ120(及び/又は以下で説明する追加の患者データ150)に基づいて複雑性の評価を提供し得る。アルゴリズム600は、各臨床的処置について1つ以上の複雑性の評価を提供することができ、例えば、2つの異なる処置からの評価(例えば、アルゴリズム600によって行われた評価)の間で比較を行うことを可能にする。第2の臨床的処置は、第1の臨床的処置から数日、数週間、数か月、又は数年、隔てることができる。アルゴリズム600によって行われる比較の評価は、第1の処置の治療効果と、処置の合間の心臓組織の回復(例えば、治癒)又は心臓組織の適応を評価し得る。心臓組織は、変更された電気的特性(例えば、電気的リモデリング等からの変更されたパターン、リズム等)、及び/又は組織の変更された機械的特性(例えば、機能)に応答して適応され得て、各々、前述の治療処置によって引き起こされる。第2の臨床的処置で使用される手法は、アルゴリズム600によって提供される上記の評価(例えば、診断結果1100の形態)に基づくことができ、第1の処置で提供される治療に対する組織反応(例えば、上記の電気的及び機械的反応)等である。
【0143】
アルゴリズム600は、電気的活動データ120を分析するものとして上記で説明されているが、いくつかの実施形態では、アルゴリズム600は、その評価に、システム100によって記録される「追加の患者データ」の分析を更に含む(例えば、複雑性の評価は、システム100によって記録された追加の患者データ150と、上記の電気的活動データ120及び解剖学的データ110に基づく)。例えば、システム100は、センサとして構成された1つ以上の機能的要素を含み得て、例えば、カテーテル10の機能的要素99、以下に記載される治療用カテーテル800の機能的要素899、及び/又はシステム100の機能的要素199である。カテーテル10の機能的要素99は、電極アレイ12の拡張可能なスプライン(図示)及び/又はシャフト16に配置された1つ以上のセンサを含むことができる。システム100の機能的要素199は、患者に近接して(例えば、患者の皮膚上に、又は比較的患者の近くに)配置されるセンサ及び/又は患者内に配置される(例えば、一時的又は慢性的に患者の皮膚の下に配置される)センサを含み得る。いくつかの実施形態では、1つ以上の電極12a及び/又は超音波トランスデューサ12bは、追加の患者データ150を記録するように構成される。
【0144】
いくつかの実施形態では、センサベースの機能的要素99、199、及び/又は899は、電気的活動を記録するための電極又は他のセンサ、力センサ、圧力センサ、磁気センサ、動きセンサ、速度センサ、加速度計、歪みゲージ、生理学的センサ、グルコースセンサ、pHセンサ、血液センサ、血液ガスセンサ、血圧センサ、フローセンサ、光学センサ、分光計、干渉計、例えばサイズ、距離、及び/又は厚さを測定するための測定センサ、組織評価センサ、そしてこれらの1つ、2つ、又はそれ以上の組み合わせからなる群から選択されるセンサを含む。
【0145】
システム100によって(例えば、カテーテル10、機能的要素199、機能的要素899、及び/又はシステム100の他のセンサを介して)記録された追加の患者データは、患者の機械的情報、患者の生理学的情報、及び/又は患者の機能的情報を含み得る。システム100によって記録される追加のデータは、以下からなる群から選択された患者パラメータに関するデータを含み得て、群は、心臓壁の動き、心臓壁の速度、心臓組織の歪み、心臓血流の大きさ及び/又は方向、血液の渦度、心臓弁力学、血圧、組織性質であって例えば密度、組織特性、及び/又は、代謝活動若しくは薬剤摂取等の組織特性のバイオマーカである組織性質、組織構成(例えばコラーゲン、心筋、脂肪、結合組織)、及びこれらの1つ、2つ、又はそれ以上の組み合わせからなる。
【0146】
上記で説明したように、アルゴリズム600によって実行される1つ以上の複雑性の評価は、電気的活動データ120と追加の患者データ150の両方が実行される分析に含まれる場合等、この追加の患者データに基づくことができる。いくつかの実施形態では、アルゴリズム600によって実行される複雑性の評価は、組織の電気機械的遅延、電気的特性と機械的特性の大きさの比、及びこれらの組み合わせのうちの1つ以上の評価を含む。
【0147】
追加の患者データ150はまた、同じ患者からの以前のデータ(例えば、以前の処置中に収集されたデータ)又は診断若しくは治療されている患者以外の履歴パターンのセットからの以前のデータを含み得る。データを使用して計算モデルを形成することができ、計算モデルにおいて既存の患者のデータはフィッティングされ、分類され、ランク付けされ、優先順位付けされ、最適化され、及び/又は上記のように評価される。
【0148】
診断結果1100は、測定されたデータ及び/又は測定されたデータの分析(例えば、記録された電気的活動データ120a及び/又は解剖学的データ110の分析)から生じるデータを含むことができる。診断結果1100は、1つ以上の形態で提供され得て(例えば、患者の臨床医に提供される)、例えばディスプレイ27aに表示される場合、(例えばシステム100のスピーカによって)可聴で提供され、及び/又は(例えば、システム100のプリンタによって)印刷されたレポートで提供され得る。診断結果1100は、臨床医によって使用されて、患者の治療をカスタマイズすることができ、例えば、心臓アブレーション処置において組織を切除する位置を決定することができ、例えば、「CATHETER,SYSTEM AND METHODS OF MEDICAL USES OF SAME,INCLUDING DIAGNOSTIC AND TREATMENT USES FOR THE HEART」と題して、2015年2月20日に出願された、出願人の同時係属中の米国特許出願第14/422,941号に記載され、その内容はその全体がすべての目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0149】
いくつかの実施形態では、診断結果1100は、単一の心臓壁の位置又は複数の心臓壁の位置に対して複雑性のアルゴリズム600によって実行される複雑性の評価に基づく。単一及び/又は複数の位置の診断結果1100は、(例えば、ディスプレイ27aを介して)患者の解剖学的構造の画像を参照して、ユーザ(例えば、患者の臨床医)に提示され得る。診断結果1100は、経時的な複雑性の評価、例えば所定の期間にわたる複雑性の評価を含むことができる。
【0150】
上記のように、システム100は、患者の不整脈又は他の心臓の状態に関連する医療処置(例えば、診断、予後、及び/又は治療処置)を実行するように構成され得る。システム100は、以下からなる群から選択される心臓の状態を有する患者に医療処置を実行するように構成され得て、群は、心房細動、心房粗動、心房頻脈、心房徐脈、心室頻拍、心室徐脈、異所性、うっ血性心不全、狭心症、動脈狭窄、及びこれらの1つ、2つ、又はそれ以上の組み合わせからなる。いくつかの実施形態では、システム100は、時間、空間、大きさ、及び/又は状態(例えば、速度等の組み合わせ)が変化する不均一な活性化、伝導、脱分極、及び/又は再分極を示す患者に医療処置を実行する。患者の心臓の電気的活動は、システム100によって検出又はマッピングされ得るパターンを含んでもよく、例えば、パターンは、限局性、リエントリ、回転性、旋回、不規則性(例えば、方向及び/又は速度に関して)、機能的ブロック、永久的ブロック、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0151】
システム100は、患者を治療する(例えば、患者の1つ以上の心臓の状態を治療する)ためのデバイス又は薬剤(例えば、医薬品)、治療サブシステム800を含み得る。
図1に示す実施形態では、治療サブシステム800は、シャフト860を含む治療カテーテル850を含み、これは、標準的な介入手法を使用して、患者の血管系を通って1つ以上の患者の心腔に前進するように構成され得る。いくつかの実施形態では、シャフト860の遠位部分は、図示されていないが、左心房アブレーション処置で使用される標準的なデバイスなどの経中隔シースを介して患者の左心房内に進められる。治療用カテーテル850は、遠位端部(図示)又は少なくともシャフト860の遠位部分に治療要素870を含む。治療要素870は、1つ以上の治療要素を含み得て、例えば、エネルギーを送達して心臓組織を切除する(例えば、心臓壁に送達される切除エネルギー)ように構成された1つ以上のエネルギー送達要素である。治療要素870は、治療要素のアレイ(例えば、線形又は他のアレイ)を含み得る。治療要素870は、無線周波数(RF)又は他の電磁エネルギーを組織に送達するように構成された1つ以上の電極を含むことができる。いくつかの実施形態では、治療要素870は、以下からなる群から選択される形態でエネルギーを送達するように構成された1つ以上のエネルギー送達要素を含み、群は、RFエネルギー及び/又はマイクロ波エネルギー等の電磁エネルギー、ヒートエネルギー及び/又は極低温エネルギー等の熱エネルギー、レーザ光エネルギー等の光エネルギー、超音波エネルギー等の音響エネルギー、化学エネルギー、機械的エネルギー、及びこれらの組み合わせからなる。いくつかの実施形態では、治療要素870は、患者の心臓組織又は他の組織に薬剤(例えば、医薬品)を送達するように構成された1つ以上の薬剤送達要素(例えば、1つ以上の針、イオン導入要素、及び/又は流体ジェット)を含む。
【0152】
治療サブシステム800は更に、エネルギー送達ユニットであるEDU810を含み得て、1つ以上の治療要素870にエネルギーを供給する。EDU810は、以下からなる群から選択される1つ以上の形態のエネルギーを供給することができ、群は、RFエネルギー及び/又はマイクロ波エネルギー等の電磁エネルギー、ヒートエネルギー及び/又は極低温エネルギー等の熱エネルギー、レーザ光エネルギー等の光エネルギー、超音波エネルギー等の音響エネルギー、化学エネルギー、機械的エネルギー、及びこれらの組み合わせからなる。代替的又は追加的に、EDU810は、1つ以上の治療要素870に薬剤を提供することができ、例えば、治療要素870が上記のような薬剤送達要素を含む場合などである。
【0153】
いくつかの実施形態では、治療サブシステム800、治療カテーテル850、及び/又はEDU810は、2015年2月20日に提出された「CATHETER,SYSTEM AND METHODS OF MEDICAL USES OF SAME,INCLUDING DIAGNOSTIC AND TREATMENT USES FOR THE HEART」と題する、出願人の同時係属中の米国特許出願第14/422,941号に記載された同様の構成要素に類似の構築及び配置であり、その内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0154】
いくつかの実施形態では、治療サブシステム800を用いて、診断結果1100(例えば、アルゴリズム600によって提供される複雑性の評価に基づく結果)に基づき患者を治療する。例えば、アブレーションエネルギーは、1か所以上の位置(例えば、上記の1つ以上の頂点)で心臓壁に送達され、そこで複雑性の評価は、位置に対する複雑性のレベルが閾値を超える(例えば、それを上回る)かどうかを決定し、治療は、閾値を超えたすべての位置に送達される。いくつかの実施形態では、複数の頂点の領域において、アブレーション用に1つの頂点が選択され、そこでシステム100は(例えば、アルゴリズム600を介して)存在する最大複雑性のレベルを決定し(例えば、「局所的最大」は切除される)、最大複雑性のレベルは、絶対最大又は相対最大であり得る。
【0155】
いくつかの実施形態では、システム100によって提供される治療(例えば、1つ以上の頂点に送達されるアブレーションエネルギー)は、例えば手動(臨床医駆動)、自動(例えば、システム100駆動)、及び/又は半自動(例えば、臨床医とシステム100の駆動の組み合わせ)モードにおいて、閉ループ方式で送達される。閉ループ動作は、治療される位置への治療要素870の操作(例えば、臨床医操作及び/又はシステム100によるロボット的操作される治療装置850を介して)、及び/又は供給されるエネルギーレベルの設定を含み得る。
【0156】
ここで
図2A及び2Bを参照すると、本発明の概念と一致する、データ構造及びデータ構造の一部分の視覚的表現をそれぞれに示す。上述のように、システム100は、心腔HCのサイズ及び形状を測定及び記録して、例えば、拡張期における心腔HCの形状の近似を提供し得る。いくつかの実施形態では、システム100は、カテーテル10の超音波トランスデューサ12bを介して心腔HCを測定し、次に測定情報は、プロセッサ26によって処理され、以下で説明するデータ構造によって定義される情報のセットとして記録され得る。代替的又は追加的に、システム100は、他の撮像要素及び/又はデバイスを含み、心臓の解剖学的情報をプロセッサ26に提供し得る。プロセッサ26によって提供される処理された情報(例えば、解剖学的データ110)は、ノードのセットとして格納され得て、各ノードは、解剖学的形状の幾何学的表現の頂点V、例えば、メッシュ80で図示された心腔HCを表す三角形メッシュを含む。メッシュ80の各頂点Vは、メッシュ80を定義する多角形(例えば、三角形)のエッジであるエッジEによって、隣接する頂点Vに接続される。
【0157】
任意の頂点Vは中央の頂点CVとして定義され得る。中央の頂点CVに対して、頂点Vを取り囲む「近傍」が定義され得る(本明細書では「近傍」又は「頂点の近傍」)。例えば、第1の隣の近傍は、中央の頂点CV、及び単一のエッジEによって中央の頂点CVに接続されたすべての頂点Vを含み得る。更に、第2の隣の近傍は、単一のエッジEによって中央の頂点CVの第1の隣のいずれかに接続されたすべての頂点Vを含み得る。2つのエッジで接続された近傍を
図2Bに示す。複数のエッジで接続された近傍は、中央の頂点CVからのエッジの数によって定義され得る(例えば、5つのエッジで接続された近傍では、含まれる各頂点Vは中央の頂点CVの5つのエッジ内にある)。本明細書で使用される場合、「境界線の頂点(border vertex)」は、近傍内に含まれる頂点Vとして定義され得て、中央の頂点から特定の数のエッジ(すなわち、近傍のサイズを定義するエッジの数)に位置する。「境界の頂点(boundary vertex)」は、境界線の頂点に1エッジ接続されるが、近傍内には含まれない頂点Vとして定義され得る(境界線の頂点の1つのエッジ接続内にあるが近傍内にない頂点)。
【0158】
各頂点Vに対して、その解剖学的位置に対応する情報は、システム100によって記録され記憶され得る。例えば、ある時点に対して、システム100によって測定された生体電位データは、値のセットとして処理され記録され得て、各々はその時点の頂点Vに対応する(データの「フレーム」)。システム100は、複数の連続フレームによって表される長期間(例えば、100ミリ秒~500ミリ秒)の生体電位又は他のデータを記録するように構成され得て、各々はメッシュ80の頂点Vに関連付けられた時間関連情報を含む。
【0159】
いくつかの実施形態では、各フレームは、各頂点Vに対応する生体電位データのみでなく、各頂点Vに対応する他の計算された及び/又は測定された情報も含む。例えば、システム100は、1つ以上のアルゴリズムを含み得て、以下で説明するように、各フレームに対して各頂点Vを分類する(例えば、分類情報は各フレームに記憶される)。追加的又は代替的に、システム100は、記録された生体電位データを「前処理」し、各フレームに対して処理の結果を保存し得る。例えば、各フレームの各頂点Vについて、BIOプロセッサ36は、その瞬間において、頂点が(例えば、心臓組織を通って伝播する脱分極伝導波の前縁に沿って)「活動的」かどうかを決定できる。いくつかの実施形態では、2値活動又は非活動「フラグ」(すなわち、2値はい/いいえデータ点)は、アルゴリズムの処理時間を短縮する。追加的又は代替的に、各フレームの各頂点Vについて、現在の活性化ステータスと活性化履歴を保存できる(例えば、履歴は、頂点が活動的であるか、又は以前の100ミリ秒以内等の所定の期間内に活動的であったかを表す)。これらの実施形態において、各頂点について記録された履歴の長さ、及び/又はその記録の分解能は、システム100の1つ以上のアルゴリズムの速度と、結果として得られる計算の全体的な分解能とのバランスをとるために選択され得る(例えば、システム100の製造業者によって事前選択され、及び/又はオペレータによって選択される)。本明細書で使用されるように、近傍「内」の活性化は、すべてのフレーム(例えば、記録の長さ)に対しての近傍内の各頂点Vについて記録されたすべての活性化を含むか、又は近傍の中央の頂点CVの活性化の時間ウィンドウ(例えば、
図8を参照して以下で説明するローリング時間ウィンドウ)内の、例えば、中央の頂点CVの活性化から+/-100ミリ秒以内の活性化のみを含み得る。いくつかの実施形態では、
図4を参照して以下で説明するように、活性化が「最小及び最大速度推定」内であると見なされる場合、活性化は近傍活性化のセットにのみ含まれる。例えば、境界線の頂点の活性化が中央の頂点CVの活性化の100ミリ秒以内に発生するが、2つの頂点によって表される組織上の点の間の物理的な距離が「長すぎる又は短すぎる」ことで、計算された速度が最大速度又は最小速度(例えば、組織の生理学的伝導の推定範囲)内にない場合、活性化は除外される。
【0160】
いくつかの実施形態では、システム100は、本明細書で説明される1つ以上のアルゴリズムをメッシュ80の一部分に対して実行するように構築され配置される。例えば、肺静脈に近接する組織を表すメッシュ80の一部分を分析して(例えば、以下で説明するFAアルゴリズム500によって)、限局性活動を識別することができ、これは肺静脈の近くの限局性活動がAF等の不整脈を有する患者に関連付けられているためである。追加的又は代替的に、システム100の1つ以上のアルゴリズムは、バイアスを含むことができ、及び/又はアルゴリズムの1つ以上の閾値は、分析されている解剖学的組織に基づいて調整(例えば、バイアス)され得る。例えば、FAアルゴリズム500は、肺静脈の近くの限局性活動を識別するようにバイアスをかけることができる。
【0161】
次に
図3を参照すると、本発明の概念と一致する、複雑性の評価を実行するためのアルゴリズムの概略図が示される。示されるアルゴリズム600は、上記のシステム100の1つ以上の部分に含めることができ、例えばコンソール20がアルゴリズム600を含む場合である。アルゴリズム600は、記録された生体電位データ、例えばカテーテル10の電極12aによって記録された生体電位データに基づいて複雑性の評価を実行するように構成される。アルゴリズム600は、
図3に示されるように、電気的活動データ120(例えば、活性化タイミングデータ121)及び/又は解剖学的データ110に基づいて、複雑性の評価を実行し得る。
【0162】
ステップ610では、(上記で説明したように)各フレームについて、解剖学的データ110の(上記で定義した)活動的頂点が決定され、活性化伝播データが計算される。ステップ610は、オプティカルフローアルゴリズム(例えば、Horn-Schunck)又は他の2D若しくは3D画像ベースの分析アルゴリズムを使用して、各位置での活性化伝播データを計算し得る。
【0163】
ステップ620では、フレームからフレームへの活性化伝播データの分析が実行される。この分析では、回転性パターン、局所的な不規則性パターン、限局性活性化パターン、及び/又は他の正常若しくは異常な電気的活動パターン等のパターンを識別できる。パターンは、1つ以上のパターン検出アルゴリズム、例えば以下で説明するアルゴリズム300、400、及び/又は500を使用して識別し得る。
【0164】
ステップ630では、複雑性の評価が実行され、例えば、診断結果1100を生成する。診断結果1100は、臨床医に提供され、例えば、患者に投与される治療を(心臓アブレーション処置を行うための1つ以上の心臓組織位置等を、例えば
図1を参照して上記された治療サブシステム800を用いて)決定する。いくつかの実施形態では、アルゴリズム600は、
図3Aを参照して以下で説明するように、診断結果1100を処理及び/又は評価するように構成された複雑性のアルゴリズム650を更に含む。
【0165】
診断結果1100は、スカラ値を含むことができ、例えば、スカラ値は、評価された各頂点に割り当てられ、ある期間(例えば、以下で説明される期間TP)にわたって計算された、複雑性の「レベル」を表す。追加的又は代替的に、診断結果1100は、時変値を含むことができ、例えば、2値は評価された各頂点に割り当てられ、時間内(例えば、以下で説明する期間TP1)のいくつかの時点について計算された、「複雑」又は「非(not)」を表す。いくつかの実施形態では、2値の時変値は合計されるか、そうでなければ組み合わされて、より長い期間TP(例えば、以下で説明される期間TP2、TP3、又はTP4)にわたる複雑性のレベルのスカラ値を決定する。いくつかの実施形態では、2値及び/又はスカラ値は、後続のデータのフレームの頂点に「永続的に」割り当てられ、例えば、2値「はい」は、2つ、3つ、又はそれ以上の後続フレームの頂点に永続的に割り当てられ得て、計算結果からの2値「いいえ」を無効にする可能性がある。加えて、繰り返し陽性インジケータは、より長い永続性を割り当てられ得て、例えば、3つの2値「はい」フレーム(単一の頂点に対して)は5つの追加「はい」値を割り当てられ得て(合計8つ、関連する後続のすべての値が「いいえ」であると想定する)、一方、単一の2値「はい」フレームは、2つの追加「はい」値のみを割り当てられ得る(合計3つ)。
【0166】
いくつかの実施形態において、電気的活動データ120aは、(例えば、接触マッピング処置において)少なくとも10か所、又は少なくとも48か所、又は少なくとも64か所の心臓壁の位置から記録される(例えば、電極12aによって記録される)。これらの実施形態では、システム100によって決定された頂点は、記録位置及び/又は他の心臓壁の位置を含み得る。これらの実施形態では、電気的活動データは、同時に又は順次に記録することができる。
【0167】
いくつかの実施形態において、電気的活動データ120aは、心腔内の少なくとも10か所、又は少なくとも48か所、又は少なくとも64か所の位置(例えば、心臓壁に接触及び/又は非接触)から記録される(例えば、電極12aによって記録される)。これらの実施形態では、システム100によって決定された頂点は、心臓壁ベースの記録位置、及び/又は他の心臓壁の位置を含み得る。これらの実施形態では、電気的活動データ120は、同時に又は順次に記録することができる。
【0168】
加えて
図3Aを参照すると、
図3を参照して上述したように、複雑性のアルゴリズム650は、ステップ630で生成された診断結果1100を処理及び/又は評価するように構成され得る。ステップ6510では、アルゴリズム650は、診断結果1100で識別された各複雑な活性化パターンのタイプ及び一貫性を評価することができる。ステップ6520とステップ6530では、アルゴリズム650は、各複雑な活性化パターン間の近接性(例えば、空間的)及び/又は関係(例えば、時間的)を評価することができ、次に、識別された複雑な活性化パターンが「マクロレベル」の複雑な活性化パターンの一部であるかどうかを決定し得る。ステップ6540では、アルゴリズム650は、計算方法を適用して、マクロレベルの複雑な活性化パターンの位置に治療を送達することの確率的結果を評価及び/又は予測することができる。いくつかの実施形態では、計算方法は、トレーニングデータセット(例えば、履歴データ等の別個に取得されたデータ)及び/又は計算的に最適化されたフィット(例えば、ニューラルネットワーク若しくは深層学習、クラスタ分析等による、機械学習又は予測分析)を使用した電気的活動のデータ分析/統計手法、例えば分類又はカテゴリ化を含む。
【0169】
ステップ6540は、図示のように更新された診断結果1100’を提供するように構され得て、マクロレベルの複雑性の識別、治療標的の優先順位付け、確率的及び/又は予測的な治療的戦略、診断結果1100に対する1つ以上の変更、及びこれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、治療を送達する確率的結果は、機械学習の使用を介して決定又は提供され、2018年5月8日に出願された、「CARDIAC INFORMATION PROCESSING SYSTEM」と題する、出願人の同時係属中の米国特許仮出願第62/668,659号に記載され、その内容はすべての目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、予測的な治療的戦略は、現在のリズムを複雑さの少ないリズムに移行させる(例えば、心房細動から心房頻脈に移行させる)ことであり得て、例えば、状態分析を使用して決定される戦略である。現在のリズムの状態は、1つ以上の複雑性の指標(例えば、周期長、心臓波の数、シャノンエントロピ、及び/又は卓越周波数)によって定義され得る。状態の変化は、様々な治療的戦略(例えば、様々なアブレーションの位置及び/又は持続時間)に対して推定され得る。次に、リズムを最も複雑でない状態に変化させると推定される治療的戦略を実施することができる。複雑性のアルゴリズム650は、他の患者データ(例えば、MRI/CTデータ、患者の健康履歴データ、及び/又は以前のアブレーション履歴データ)を入力とすることができる。
【0170】
複雑性のアルゴリズム600は、記録された電気的活動データ120aの分析を含むことができ、それは類似又は異なる長さの時間を含み得る期間TPにわたって記録される。各期間TPは、その期間TPの連続記録のすべて又は一部分、或いは期間TPを累積的に表す複数の記録のすべて又は一部分を表し得る。いくつかの実施形態では、期間TPは、電気的活動を記録する2つ以上の期間と、記録間の時間を表す。いくつかの実施形態では、ある期間にわたって記録されたデータは、複数の期間TP(例えば、同じ持続時間の複数の期間)にセグメント化され、複雑性の評価は、各期間TPにわたって計算される。次に、複雑性の評価は、(例えば、
図8を参照して以下で説明するように、ディスプレイ27aに表示される)ビデオのような形式でユーザに表示され得る。いくつかの実施形態では、各期間TP(例えば、以下で説明される期間TP2)は、十分に長い期間TPを含み、その結果、ユーザは表示された情報を「リアルレート」の方法で合理的に知覚し得る(例えば、情報は発生したのと同じ速度で表示される)。これらの実施形態では、表示された情報は、「リアルタイム」の方法で提示され得る(例えば、情報は、発生時に表示され、システム100による処理のため遅延は最小限である)。代替的又は追加的に、期間TPは、十分に短い期間(例えば、以下で説明される期間TP1)を含み得て、その結果、ユーザは、リアルレート方式で表示される場合、表示された情報を合理的に知覚できない。これらの実施形態では、データのローリング「平均」はリアルレートで表示され得て、及び/又はデータはフレームごと又はその他のスローモーション方式で再生され得て、ユーザが合理的にデータを知覚できる。追加的又は代替的に、累積、合計、平均、又は永続的なデータを表示する様々な方法が実装され得て、計算されたデータの知覚可能な時間依存表現をユーザに提供する。更に、各期間TP(例えば、以下で説明されるTP3及び/又はTP4)は、延長された期間、及び/又は2つ以上の別個の記録にわたる期間を含むことができ、時間圧縮された(タイムラプス等)データセットをユーザに表示し得る。再生及び他のデータ表示モードは、
図8を参照して以下で詳細に説明する。
【0171】
いくつかの実施形態では、期間TP1は比較的短い時間を含み、(例えば、本明細書に記載されるような頂点のセットによって表されるように)評価される心臓組織において1~10の活性化が生じる期間等である。同様に、TP1は、0.3ミリ秒~2000ミリ秒の持続時間、例えば約150ミリ秒の期間を含むことができる。いくつかの実施形態では、カテーテル10は、接触マッピングカテーテル(例えば、「ロービング(roving)」接触マッピングカテーテルであり、一度に心腔の単一の別個の部分からのみ電極12aを介して電気的活動データ120aを記録するように構成される)を含む。これらの実施形態では、期間TP1は、心腔の単一の別個の部分での総記録時間である、「診察(visit)」を概算し得る。後続の期間TP1は、心腔の同じ個別の部分又は異なる部分への後続の診察を概算できる。これらの実施形態では、各々がTP1にほぼ等しい期間を含む2つ、3つ、又はそれ以上の記録を組み合わせて、記録された電気的活動のより完全なデータセットを作成することができる。2つ、3つ、又はそれ以上の記録は、接触心臓マッピングの分野で既知のように、記録された心腔の部分に基づいて空間的に、また心周期情報に基づいて時間的に組み合わせることができる。いくつかの実施形態では、カテーテル10は、マッピングカテーテル(例えばバスケットカテーテル)を含み、それは心腔の全周囲の位置の分散されたセットから電極12aを介して電気的活動データ120aを記録するように構成され、電極位置は心臓壁と接触する、又は近接するように意図されている。いくつかの実施形態では、カテーテル10は、マッピングカテーテル(例えばバスケットカテーテル)を含み、それは心臓壁でオフセットされた位置の分散セットから電極12aを介して電気活動データ120aを記録するように構成される。
【0172】
いくつかの実施形態では、複雑性のアルゴリズム600は、期間TP2に対して記録される電気的活動データ120aの分析を含み、中程度の数の電気的活性化、例えば3~3000の活性化、例えば10~600の活性化、又は25~300の活性化を含む。相当して、TP2は、0.3秒~500秒の持続時間、例えば1秒~90秒、又は4秒~30秒の期間を含み得る。いくつかの実施形態では、期間TP2は、単一のデータ記録、例えば心腔内の電気的活動データ120aの接触及び/又は非接触記録の長さを表す。
【0173】
いくつかの実施形態では、複雑性のアルゴリズム600は、期間TP3に対して記録される電気的活動データ120aを分析するように構成され、多数の電気的活性化、例えば2,000~300,000の活性化、例えば6,000~40,000の活性化を含む。相当して、TP3は、5分~8時間、例えば15分~60分の持続時間を含み得る。いくつかの実施形態では、期間TP3は、急性電気的活動のいくつかの記録、例えば、診断と治療(例えば、
図1を参照して上述した治療サブシステム800によって提供される治療)のループ繰り返しの前、後、及び/又は合間に得られるいくつかの記録の長さを表す。
【0174】
いくつかの実施形態では、複雑性のアルゴリズム600は、局所焦点(regional focus)で行われた測定からの活性化及び/又は電気的データを分析するように構成される。局所焦点は、心腔表面の約5%~50%(例えば、心房又は心室の心内膜表面の5%~50%)を含む組織の領域を含み得る。測定は、リズムを表す複雑な伝導の特性をキャプチャするのに十分な時間で測定を行うことができ、例えば、約3~3000の活性化をキャプチャする。いくつかの実施形態では、電極アレイ12は、異なる位置に順次操作されて、各位置からのデータを含む集合マップを形成する。
【0175】
いくつかの実施形態では、複雑性のアルゴリズム600は、期間TP4に対して記録される電気的活動データ120aの分析を含み、数日、数週間、数ヶ月、及び/又は数年(例えば、患者に実行される複数の臨床的診断処置にわたる)の期間を含む。いくつかの実施形態では、期間TP4は、例えば、数日、数週間、数ヶ月、又は数年にわたる、複数の臨床的処置にわたるいくつかの電気的活動の記録の長さを表す。
【0176】
いくつかの実施形態では、複雑性のアルゴリズム600は、追加の患者データ150を受信し、例えば、
図1を参照して上述したように、複雑性の分析において電気的活動データ120と患者データ150の両方を含む。いくつかの実施形態では、複雑性のアルゴリズム600は、以下で説明されるアルゴリズム200、300、400、及び/又は500のうちの1つ以上を含み、それらの各々は、電気的活動データ120、解剖学的データ110、及び/又は追加の患者データ150に基づく複雑性の評価を含み得る。
【0177】
次に
図4を参照すると、本発明の概念と一致する、伝導速度データを決定するためのアルゴリズムの概略図が示される。システム100は、伝導速度アルゴリズムであるCVアルゴリズム200を含み得て、データ110で示される解剖学的データ、及びデータ121で示される活性化タイミングデータを分析する。上記の複雑性のアルゴリズム600は、CVアルゴリズム200を含むことができる。CVアルゴリズム200は、システム100のプロセッサ、例えばコンソール20のプロセッサ26によって実行される1つ以上の命令を含み得る。CVアルゴリズム200は、本明細書に記載されるように、関連付けられた頂点の各活性化に対して、解剖学的データ110及び電気的活動データ120(例えば、活性化タイミングデータ121)を処理して、解剖学的データ110の各頂点における伝導速度を決定することができる。
【0178】
いくつかの実施形態では、CVアルゴリズム200は、脱分極伝導波が頂点を通過する際に、解剖学的データ110の各頂点における速度(方向及び/又は大きさ)の1つ以上の成分を計算する。伝導速度(例えば、脱分極伝導波が頂点を通過する際の各頂点での速度)は、次の式を使用して活性化時間(τ)の空間勾配を決定することによって求めることができる。
【数2】
【0179】
処理された各頂点は「中央の頂点」と見なすことができ、各中央の頂点に近接する頂点と活性化時間で構成される小さな「近傍」を使用して、空間勾配を推定し、中央の頂点での伝導速度を求めることができる。いくつかの実施形態では、小さな近傍が与えられた頂点に対する活性化時間の空間勾配と、小さな近傍の頂点の位置とを推定する方法は、近傍の活性化時間を頂点の位置の関数(例えば、多項式関数)にフィッティングすることを含む。いくつかの実施形態では、多項式表面フィッティングが使用される。
【0180】
CVアルゴリズム200は、システム100によって記録された解剖学的データ110及び電気的活動データ120aの各フレームを処理し得る。以下に説明するステップ210~ステップ250では、単一フレームのデータの処理が実行される。複数のフレームは、ステップ210~ステップ250を後続のフレームで繰り返すことにより処理され得る。
【0181】
ステップ210では、活動的頂点のセットが解剖学的データ110及び電気的活動データ120(例えば、活性化タイミングデータ121)を使用して決定される。
【0182】
ステップ220では、(現在のフレームについて)解剖学的構造の活動的な各頂点に対して、頂点の近傍は、その頂点(例えば、その近傍の中央の頂点)の周りに定義され得る。いくつかの実施形態では、複数のエッジで接続された(例えば5つの)近傍を使用して、解剖学的表面の約200mm
2~315mm
2を覆う近傍を定義し、近傍(例えば、
図2Bを参照して上記で説明されたような近傍)には60~120個の頂点が含まれる。複数のエッジで接続された近傍によって定義された近傍内では、すべての活性化時間τは特定の最小速度推定(例えば、約0.3m/sの最小速度推定)内であることが求められ、速度は次のように推定される。
【数3】
ここで、Pは頂点の位置である。
【0183】
次に、この近傍の主成分は、平均を除去した近隣のすべての頂点位置のマトリックスを作成することによって決定される。頂点位置のマトリックスの特異値分解(SVD)を使用して、近傍の主成分に対応する局所的近傍の3つの特異ベクトルを決定できる。近傍の頂点の位置は、特異ベクトルに近傍Poriginalの各頂点の位置を乗算することにより、近傍の主成分によって定義されるバイアスに変換され、ここで、
Poriginal×特異ベクトル=Pprinipalとなる。
【0184】
変換後、近傍は空間変数(u
i,v
i,k
i)で記述でき、ここで、(u
i,v
i,k
i)はそれぞれ、第1、第2、及び第3の主成分の量であり、以下に示すようにi番目(i
th)の頂点の位置を説明するのに用いられる。
【数4】
【0185】
いくつかの実施形態では、オプションのステップ230が実行される。ステップ230では、P
prinipalで最小の特異値を有する特異ベクトルが除去され、3次元ドメインから2次元平面ドメインへの変換が生じ、次の関数を使用して実行される。
【数5】
【0186】
結果として生じた平面は、2次元平面に変換された頂点の3次元位置のベストフィット平面である。3次元から2次元への変換が実行されて、計算された伝導速度が表面の解剖学的構造に正接することを確実にし、及び/又は、後続のステップで実行される多項式表面フィッティングの次元を減らすことができ、以下で説明する。
【0187】
ステップ240において、関数(例えば、ベストフィット3次多項式表面関数、T)を使用して、位置の関数(u
i,v
i)として近傍の局所活性化時間τ
iを記述し、例えば、以下のようにT(u
i,v
i)≒τ
iになる。
【数6】
【0188】
セット[u,v]=τが与えられると、以下のマトリックスが係数Aを解くために構築され得る。
【数7】
【0189】
上記は最小二乗解析で解くことができる。特異値分解はマトリックスA:A=USV
Tに適用され得て、それによりAの疑似逆マトリックスが計算でき、これを使用して係数を計算し得る。
【数8】
【0190】
ステップ250では、伝導速度を、表面(たとえば、多項式表面T)の導関数を分析的に求めることにより解くことができ、以下に示す。
【数9】
【0191】
次に、伝導速度を正規化して、単位ベクトルを作成でき、例えば、以下の方程式を使用する。
【数10】
【0192】
前のステップを介して、アルゴリズム200は、データ122で示される伝導速度データのセットを生成し、これは、解剖学的データ110と活性化タイミングデータ121に基づく。
【0193】
いくつかの実施形態では、伝導速度データ122は、結果として生じた伝導速度単位ベクトルを元の座標系(例えば、解剖学的データ110の座標系)に戻すことにより、(例えば、システム100のディスプレイ27aを介して)解剖学的表面上に表すことができ、例えば、次の方程式を使用する。
【数11】
【0194】
各活性化(例えば、各フレームの各中央の頂点の各活性化)について、伝導速度は2次元及び/又は3次元で表され得て、例えば、次の方程式を使用する。
【数12】
【0195】
次に
図5を参照すると、本発明の概念と一致する、局所的な回転性活動を決定するためのアルゴリズムの概略図が示される。システム100は、局所化された回転性活動を決定するためのアルゴリズムであるLRAアルゴリズム300を含み得る。上述された複雑性のアルゴリズム600は、LRAアルゴリズム300を含むことができる。LRAアルゴリズム300は、中央の頂点に対する伝導速度の角度変化を決定するように構成され得る。心房細動(AF)及びその他の不整脈患者では、心臓の電気的活動がローターとして現れる可能性がある(例えば、中央障害物の周りの回転性電気的活動)。このような回転性活動は、AFなどの心不整脈の持続に大きな役割を果たすと長い間考えられている(例えば、回転性活動は、これらの望ましくない状態を引き起こし、及び/又は、永続させることに関連する)。
【0196】
いくつかの実施形態では、LRAアルゴリズム300を使用して、システム100によって収集された解剖学的データ110及び電気的活動データ120(例えば、活性化タイミングデータ121)の各フレームを処理する。以下に説明するステップ310~ステップ360では、単一フレームのデータの処理が実行される。複数のフレームは、後続のフレームでステップ310~ステップ360を繰り返すことによって処理され得る。いくつかの実施形態では、LRAアルゴリズム300は更に、その分析に伝導速度データ122を含む。代替的又は追加的に、LRAアルゴリズム300は、例えばLRAアルゴリズム300がCVアルゴリズム200と同様に構成される場合に、伝導速度データ122を決定するように構成され得る。
【0197】
ステップ310では、活動的頂点のセットは、解剖学的データ110及び電気的活性化データ120(例えば、活性化タイミングデータ121)を使用して決定される。
【0198】
ステップ320で、(現在のフレームの)解剖学的構造の活動的な各頂点に対して、頂点の近傍は、その頂点(例えば、その近傍の中央の頂点)の周りに定義され得る。各近傍に対して、中央の頂点の周りの頂点のリングは、
図5Aと
図5Bに示すように、近傍の境界の頂点によって定義され得る。
【0199】
ステップ330では、各近傍について、近傍内の頂点の活性化時間及び伝導速度をグループ化(例えば、ビニング)することができる。各近傍について、特定の最大速度推定(例えば、最大速度推定約0.05m/s)内にあるすべての活性化時間は、グループ化される活性化のセットを定義(たとえば制限)できる。いくつかの実施形態では、所与の最大速度(例えば、0.05m/s)でグループの中央の頂点活性化から到達可能な活性化時間のみが、グループ内に含まれる。各近傍の活性化は、
図5Bに示すようにグループ化され得る。いくつかの実施形態では、グループ内のすべての活性化についての平均活性化タイミングデータ121及び/又は平均伝導速度データ122もまた、
図5Bに示されるように、境界の頂点に割り当てられる。
【0200】
ステップ340では、頂点の外側リングの周りの活性化時間の線形傾向(例えば、増加又は減少傾向)を伴う頂点が識別される。例えば、R2≧0.7の線形フィットは傾向として識別され得る。
図5Dは活性化時間の傾向線を示す。
【0201】
ステップ350では、ステップ340で識別された線形傾向の最初と最後の頂点に割り当てられた平均伝導速度間の総角度変化が決定される。
図5Eは、原点0,0に変換された、識別された線形傾向の伝導速度を示す。
図5Eは、上述したような平均伝導速度間の総角度変化をグラフで示す。
【0202】
ステップ360では、LRAアルゴリズム300は、ステップ340で識別された線形傾向が閾値(例えば、オペレータ定義の閾値)を超える場合、及び/又はステップ350で識別された総角度変化が閾値を超える場合、中央の頂点を「回転性」として分類する。
【0203】
LRAアルゴリズム300は、データのセットを生成し(例えば、新しいデータを作成し、及び/又は既存のデータを変更し)、それは分類された活性化データ140(例えば、フィルタリング、カテゴリ化、識別、及び/又は分類されて活性化を本質的に回転性として識別するデータ)である。
【0204】
次に
図5Aを参照すると、解剖学的データ110のグラフィック表現が示され、頂点の外側リングによって定義された頂点の近傍を含んでいる。
【0205】
次に
図5Bを参照すると、頂点の近傍の簡略化された表現が示され、中央の頂点の周りに配置された頂点の外側リングを含んでいる。いくつかの実施形態では、近傍内の活性化は、セグメント化又はビニングされ、その後平均化される。平均値は、単一の頂点、例えばセグメント内の境界線の頂点に割り当てられ得る。例えば、影付き部分S1によって表される近傍のエリア内のすべての活性化は、平均化され、頂点V1に「割り当てられる」ことができる。いくつかの実施形態では、ビニングが実行されて、データに対して実行される後続の計算に対するノイズの影響を制限する。いくつかの実施形態では、セグメントS1のサイズは選択され、システム100の分解能を増加させる(例えば、より小さいセグメント)か、又は後続の計算時間を減少させる(例えば、より大きいセグメント)。
【0206】
ここで
図5Cを参照すると、近傍の周りを回転する例示的な伝播波を示す代表的な解剖学的構造が示され、近傍は、中央の頂点の周りに配置された頂点の外側リングによって定義される。平均伝導ベクトルもまた、リングの各境界の頂点から示される。
【0207】
次に
図5Dを参照すると、
図5Cの頂点の外側リングにおける活性化時間のプロットが示され、活性化時間は中央の頂点の周りの度数に対してプロットされる。上記のように、プロット上の点は、線形傾向を備えるリング内の頂点のセットを示す。
図5Dに示されるデータにおいて、傾向は、約200°~約375°に広がり、心臓波が中央の頂点の周りを175°伝播したことを示す。
【0208】
次に
図5Eを参照すると、
図5Cに関連する伝導速度ベクトルのグラフが示され、ベクトルは点0,0に変換される。中央の頂点の周りの伝導速度の変化は、連続する伝導速度ベクトル間の角度を合計することによって決定され得る。この例では、角度αで表される、図示されたデータの伝導速度ベクトルは、合計で155°になる。
【0209】
次に
図6を参照すると、本発明の概念と一致する、局所的な不規則性活動を決定するためのアルゴリズムの概略図が示される。システム100は、局所的な不規則性活動を決定するためのアルゴリズムであるLIAアルゴリズム400を含み得る。上記の複雑性のアルゴリズム600は、LIAアルゴリズム400を含むことができる。LIAアルゴリズム400は、中央の頂点に近づく伝導の方向と中央の頂点を離れる伝導の方向との間の角度を決定するように構成され得る。不規則性活動、例えば、顕著な分裂、不規則性リエントラント型活動、及び/又は無秩序な伝導は、AFを含む心不整脈の持続に大きな役割を果たすと長い間考えられている。
【0210】
いくつかの実施形態では、LIAアルゴリズム400を用いて、システム100によって収集された解剖学的データ110及び電気的活動データ120(例えば、活性化タイミングデータ121)の各フレームを処理する。以下に説明するステップ410~ステップ460では、データの単一のフレームの処理が実行される。複数のフレームは、後続のフレームでステップ410~ステップ460を繰り返すことにより処理され得る。いくつかの実施形態では、LIAアルゴリズム400はまた、その分析において伝導速度データ122を含む。代替的又は追加的に、LIAアルゴリズム400は、例えば、LIAアルゴリズム400がCVアルゴリズム200と同様に構成される場合に、伝導速度データ122を決定するように構成され得る。
【0211】
ステップ410では、活動的頂点のセットは、解剖学的データ110及び活性化タイミングデータ121を使用して決定される。
【0212】
ステップ420では、(現在のフレームの)解剖学的構造の活動的な各頂点に対して、頂点の近傍は、その頂点(例えば、その近傍の中央の頂点)の周りに定義され得る。
図5Aに示すように、各近傍について、中央の頂点の周りの頂点のリングは、近傍の境界の頂点によって定義され得る。
【0213】
ステップ430において、各近傍に対して、LIAアルゴリズム400は、中央の頂点の活性化時間よりも早い活性化時間(最大伝導速度内、例えば0.3m/s~3m/s)を有し、中央の頂点に向かう伝導速度方向を有する近傍内のすべての活性化についての平均伝導速度方向を決定するように構成され得る。いくつかの実施形態では、これらの活性化のサブセットのみが、平均伝導速度方向の計算に含まれる。
【0214】
ステップ440において、各近傍に対して、LIAアルゴリズム400は、中央の頂点の活性化時間よりも遅い活性化時間(最大伝導速度内、例えば0.3m/s~3m/s)を有し、中央の頂点から離れる伝導速度方向を有する近傍内のすべての活性化についての平均伝導速度方向を決定するように構成され得る。いくつかの実施形態では、これらの活性化のサブセットのみが、平均伝導速度方向の計算に含まれる。
【0215】
ステップ450において、LIAアルゴリズム400は、近傍に入る平均伝導速度方向と近傍を出る平均伝導速度方向との間の角度を決定する。
【0216】
ステップ460において、LIAアルゴリズム400は、ステップ450で決定された角度が閾値(例えば、オペレータが定義した閾値)を超える場合、中央の頂点を「不規則性」として分類する。LIAアルゴリズム400は、データのセットを生成し(例えば、新しいデータを作成し、及び/又は既存のデータを変更し)、それは分類された活性化データ140(例えば、フィルタリング、カテゴリ化、識別、及び/又は分類されて活性化を本質的に不規則性として識別するデータ)である。いくつかの実施形態では、頂点は前もって回転性として分類される場合があり(例えば、LRAアルゴリズム300が前もって実行された場合)、LIAアルゴリズム400は頂点を不規則性として再分類、又は追加的に分類しない。代替的又は追加的に、分類された活性化データ140は、各頂点について複数の分類を可能にし得る。これらの実施形態では、システム100は、重み付け係数を付加するか、又は特定の分類を優先するように構成され得て、例えば、回転性分類は不規則性分類よりも重要であると考えられ得る。
【0217】
次に
図6Aを参照すると、本発明の概念と一致する、不規則性の活性化を示す伝播波の例を示す。
図6Aは、小さな領域であるドットCVに入る伝播波PW1を示す。PW1からの伝導速度を平均して、領域CVに入る平均伝導速度方向を決定し得る。
図6Aはまた、領域CVを出る伝播波PW2を示す。PW2からの伝導速度を平均して、領域CVを離れる平均伝導速度方向を決定し得る。LIAアルゴリズム400は、CVに接近する伝導の方向とCVを離れる伝導の方向との間の角度βを決定するように構成することができる(上述通り)。LIAアルゴリズム400は、角度が閾値(例えば、これも上述したように、ユーザ定義の閾値)を超える場合、その活性化時間の中央の頂点を不規則性として分類し得る。
【0218】
次に
図7を参照すると、本発明の概念と一致する、限局性活性化を決定するためのアルゴリズムの概略図を示す。システム100は、限局性活性化(限局性活動とも呼ばれる)を決定するためのアルゴリズムである、FAアルゴリズム500を含み得る。上記の複雑性のアルゴリズム600は、FAアルゴリズム500を含むことができる。FAアルゴリズム500は、頂点での活性化が以前の心臓波面に由来するか、又は活性化が頂点から自発的に開始したか(限局性活性化として知られる)を決定するように構成され得る。限局性活性化は、その活性化が近傍の頂点の活性化よりも早い場合、頂点で検出され、伝導は頂点から外側に広がる。肺静脈からの限局性活動は、発作性AFの持続に中心的な役割を有することが示されている。より一般的には、限局性活動は、AFを含む心不整脈の持続においても大きな役割を果たすと考えられる。
【0219】
いくつかの実施形態では、FAアルゴリズム500を用いて、システム100によって収集された解剖学的データ110及び電気的活動データ120(例えば、活性化タイミングデータ121)の各フレームを処理する。以下に説明するステップ510~ステップ560では、データの単一のフレームの処理が実行される。複数のフレームは、後続のフレームでステップ510~ステップ560を繰り返すことにより処理され得る。いくつかの実施形態では、FAアルゴリズム500はまた、その分析に伝導速度データ122を含む。追加的又は代替的に、FAアルゴリズム500は、例えばFAアルゴリズム500がCVアルゴリズム200と同様に構成される場合に、伝導速度データ122を決定するように構成され得る。いくつかの実施形態では、FAアルゴリズム500は、以下で定義されるように、その分析に伝導発散データ123を含む。伝導発散データ123は、FAアルゴリズム500及び/又はシステム100の別のアルゴリズム(例えば、FAアルゴリズム500の適用前に生成された)によって生成され得る。
【0220】
いくつかの実施形態では、伝導発散データ123は、解剖学的データ110の各頂点からの伝導速度の発散を含む。伝導速度場の発散は、以下のように定義され得る。
【数13】
ここで、ベクトルVは正規化された伝導速度である。伝導速度の推定と同様に、伝導速度の発散は、小さな領域のV
u及びV
vを位置の関数(例えば、3次多項式)にフィッティングすることで推定され得て、その結果は、
V
u=F(u,v)及びV
v=G(u,v)である。
ベクトル場の発散は、次のように計算され得る。
【数14】
【0221】
すべての頂点のすべての活性化に対して、伝導速度の発散が閾値を超える正の値を有すると決定された場合、頂点は伝導発散データ123で「明確に定義された」に分類される。いくつかの実施形態では、複数のエッジで接続された(例えば5つの)近傍内の頂点の半分が最小伝導速度範囲内の伝導速度を有する場合、発散は明確に定義されたと分類される。0.05の正の発散閾値が使用され得る。
【0222】
ステップ510では、活動的頂点のセットは、解剖学的データ110及び活性化タイミングデータ121を使用して決定される。
【0223】
ステップ520では、発散する活動的頂点のセットは、ステップ510で決定された活動的頂点のセットから識別される。
【0224】
ステップ530において、各発散する活動的頂点に対して、頂点の近傍はその頂点(例えば、その近傍の中央の頂点)の周りに定義される。各近傍について、中央の頂点の周りの頂点のリングは、
図5Aに示すように、近傍の境界の頂点によって定義され得る。
【0225】
ステップ540では、「境界線の頂点」のセットが定義され、セットには、近傍の各境界の頂点に1つのエッジで接続された近傍を含む。
【0226】
ステップ550では、ステップ540で定義された各境界線の頂点の活性化時間が決定される。
【0227】
ステップ560で、FAアルゴリズム500は、その境界線の頂点のそれぞれの活性化時間が中央の頂点のそれぞれの活性化時間よりも遅い場合、中央の頂点を「限局性」として分類する。FAアルゴリズム500は、データのセットを生成し(例えば、新しいデータを作成し、及び/又は既存のデータを変更し)、それは分類された活性化データ140(例えば、フィルタリング、カテゴリ化、識別、及び/又は分類されて活性化を本質的に限局性として識別するデータ)である。いくつかの実施形態では、頂点は、前もって回転性及び/又は不規則性として分類される場合があり(例えば、LRAアルゴリズム300及び/又はLIAアルゴリズム400が前もって実行された場合)、FAアルゴリズム500は頂点を限局性として再分類、又は追加的に分類しない。代替的又は追加的に、分類された活性化データ140は、各頂点について複数の分類を可能にし得る。これらの実施形態では、システム100は、重み付け係数を付加するか、又は特定の分類を優先するように構成され得て(上述のように)、例えば、回転性分類は不規則性及び/又は限局性分類よりも重要であると考えられ得る。
【0228】
ここで
図7Aと7Bを参照すると、本発明の概念と一致する、限局性活性化を示す代表的な解剖学的構造と、限局性及び受動的活性化を示す代表的な解剖学的構造がそれぞれ示される。
図7Aに示すように、ドットCVは現在評価されている頂点を示す。境界線の頂点BVは、ドットCVから延びる伝播波面PW3を囲んで示される。
図7Bに示すように、ドットCV1は第1の頂点を示し、ドットCV2は第2の頂点を示す。
図7Bのズームウィンドウ(i)は、CV1の周りの頂点の近傍を示し、
図7Bのズームウィンドウ(ii)は、CV2の周りの頂点の近傍を示す。
図7Bのズームウィンドウでは、近傍は平面に投影され、標準グリッドに補間されて示される。上述のように、複雑性のアルゴリズム600は、教師あり学習アルゴリズム、例えば、適切にラベル付けされたトレーニングセットでトレーニングされた学習アルゴリズムを含み得る。中央の領域(例えば、頂点CVの周りの領域)の近傍は、nxmの標準グリッドに補間され得て、グリッド点の各値には活性化時間が含まれ、
図7Bのズームウィンドウ(i)及び(ii)に示す。時間情報は、複数の画像を連結することにより追加され得る。活性化時間が標準グリッドになると、学習アルゴリズム(フィードフォワードニューラルネットワーク、畳み込みニューラルネットワーク、サポートベクターマシン等)を大規模な患者セットでトレーニングして、伝導パターンの画像が与えられた関心のある伝導パターンを識別できる。活性化時間データが関心のある伝導パターンについて評価され、同時に画像空間に変換された後、ラベル付けされた出力は元に戻され表示され得る(例えば、3D解剖学的空間において)。いくつかの実施形態では、複雑性のアルゴリズム600は、以下からなる群から選択される電気的パターンを識別するように構成され得て、群はLIA、LRA、限局性、遅延伝導速度、峡部のような伝導、8字形伝導、例えばダブル、トリプル、又はマルチループ伝導のループ伝導、旋回リエントリ、及びこれらの組み合わせからなる。例えば、
図7Bのズーム(i)に示されるように、限局性伝導は、例えばアルゴリズム600によって関心ある領域として識別された限局性伝導が示される。
図7Bのズーム(ii)に示すように、受動的伝導は、例えばアルゴリズム600によって「非関心」の領域として識別された受動的伝導が示される。
【0229】
次に
図8を参照すると、本発明の概念と一致する、心臓データ(例えば、活性化及び/又は他の生体電位及び/又は解剖学的データ)をレンダリングし得るディスプレイの実施形態を示す。心臓データは、時間の関数として動的に表示され得る一連のデータのフレームで構成できる。
図8のディスプレイ1400は、上記と同じプロセッサ、モジュール、及びデータベースを使用して生成され得て、他のディスプレイ、例えば
図1のディスプレイ27aをレンダリングする。いくつかの実施形態では、システム100及び/又はディスプレイ1400は、「CARDIAC INFORMATION DYNAMIC DISPLAY SYSTEM AND METHOD」と題して2017年5月3日に出願された、出願人の同時係属中の国際PCT特許出願番号第PCT/US2017/030915号に記載されたディスプレイと同様の構築及び配置であり得て、その内容はすべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0230】
メイン心臓情報ディスプレイウィンドウ又は領域内であるウィンドウ1405(例えば、ディスプレイ1400の一部分)内で、心臓の解剖学的構造1402のデジタルモデルは、心臓活性化データをその上に重畳されるか、又は重ね合わされて示される。この実施形態では、心臓活性化データはレンダリングされ、活性化状態は、デジタル心臓モデル1402に重畳された一連の色によって示される。
【0231】
ディスプレイ1400は、表示されているデジタル心臓モデル1402によって表されるように、心臓の1つ以上の部分の異なる生理学的パラメータを表す2つ以上の固有のグラフィック表示を同時に表示し得る。これらの生理学的パラメータを表すために使用される様々なグラフィック表示は、次の群から選択され得て、群は、色、色の範囲、パターン、シンボル、形状、不透明度レベル、点描、色相、2D又は3Dオブジェクトの幾何学的形状、及びこれらの組み合わせからなる。生理学的特性を表すために使用されるグラフィック表示は、静的及び/又は動的であり得る。
【0232】
複数の生理学的特性の同時表示(例えば、様々なグラフィック表示を介して区別される)は、心臓解剖学的構造の1つ以上のデジタルモデルに1つ以上の組み合わせで重ね合わせられ得る。様々な生理学的パラメータ、例えば、最小再活性化時間、伝導速度、渦度閾値が期間中に超えた発生回数、及び/又は他の生理学的パラメータは、それぞれ固有のグラフィック表示で表すことができる。離散レベルのハッチ密度及び/又は線の太さを備えるクロスハッチパターンは、デジタルモデルに重ね合わせられ、異なる伝導速度のカテゴリに分類されている領域を識別し得る。表面スフェロイドは、渦度が閾値よりも大きいノードを中心に重ね合わせられ得て、スフェロイドの直径は、渦度閾値が心臓活動の持続時間中に超えた発生回数に比例して表示される。ハッチパターン及びスフェロイドは、グラフィック表示の非限定的な例として本明細書に提供される。
【0233】
いくつかの実施形態では、心電図であるEGM1410の表示は、再構築された心臓1402を表示するメイン心臓情報表示ウィンドウ1405の下の補助心臓情報表示ウィンドウ1415に提示される。
【0234】
ユーザ対話型コントロールのセットであるコントロール1420は、メイン心臓情報表示ウィンドウ1405に、ユーザが表示の持続時間(例えば、表示される計算データが表す持続時間)を設定できるように構成されたウィンドウ幅コントロール1422を含むことができ、ここでは30ミリ秒に設定されて示される。ウィンドウ幅(持続時間)は、半透明のスライディングウィンドウであるウィンドウ1412で示され、EGM1410に重畳される。ユーザ選択可能及び/又は設定可能な表示スケールであるスケール1424が更に設けられ、それを用いて時間スケールであるtSCALEが設定され得る。ここでは、tSCALEは3ミリ秒に設定される。したがって、EGM1410の水平軸は3ミリ秒の増分を含む。再生、巻き戻し、及び早送りのコントロールであるコントロール1426も図示のように含まれる。
【0235】
いくつかの実施形態では、診断結果1100は、メイン心臓情報表示ウィンドウ1405に表示され、例えば、複雑性の評価のグラフィック表現は、再構築された心臓1402に重畳して表示され得る(例えば、再構築された心臓1402の各頂点の複雑性の計算値を含む複雑性の評価)。これらの実施形態では、ウィンドウ1412のウィンドウ幅は、示された複雑性の評価で分析された記録データの部分(例えば、表示された複雑性の評価が表す期間)を示し得る。例えば、表示される複雑性の評価は、いくつかの複雑性の評価の平均を含むことができる(ウィンドウ1412内よりも短い2つ以上の期間にわたって計算される)。様々な複雑性の評価の計算は、上述される。ウィンドウ1412の幅は、ユーザ選択可能及び/又は調整可能であり得て、より長い又はより短い期間からのデータを含む複雑性の評価を生成する。2つ以上の複雑性の評価は、フレームごとの方式で表示され得て(例えば、映画)、ウィンドウ1412はEGM1410を横切って「ロール」し(例えば、「ローリングウィンドウ」)、各フレームについて分析されたデータのセグメントを示す。代替的又は追加的に、ユーザはウィンドウ1412を手動で配置又は調整でき、記録されたデータの所望のセグメントの複雑性の評価を生成する。
【0236】
半透明のスライディングウィンドウ1412は、再構築された心臓1402に重ね合わして示された心臓活性化データと同期する。したがって、半透明のスライディングウィンドウ1412及び再構築された心臓1402に重ね合わせられた心臓活性化データは、共通の時間スケールに関して動的に変化し得る。表示は時間的にリンクされ、それらの出力は同じ時間依存データに基づくため、一緒に変化する。
【0237】
表示モード又はレイヤコントロールのセットであるコントロール1428は、ユーザがメインウィンドウ1405の表示の少なくとも一部を制御できるように、特に再構築された心臓1402の心臓活性化データの表示の少なくとも一部分を制御できるように提供され得る。この実施形態では、別個の「ボタン」(例えば、電気機械スイッチ、タッチスクリーンアイコン、及び/又は他のユーザ対話型コントロール)が、「カラーマップ」、「テクスチャマップ」、「シェードマップ」、及び「パターンマップ」グラフィカルオプションを選択するコントロール1428として設けられる。いくつかの実施形態では、そのようなコントロールの1つ以上が設けられる。そのような制御のすべてが、すべての実施形態で配設される必要はない。いくつかの実施形態では、コントロール1428のいずれも配設する必要がない。
【0238】
図8では、再構築された心腔1402は、変化する色(例えば、カラーマップボタンに応答する変化するグレースケール)として表される心臓活性化データと共に示される。例示の目的で、再構築された心腔1402の一部分は、テクスチャマップボタンに応答するテクスチャマップ1404、シェードマップボタンに応答するシェードマップ1406、及びパターンマップボタンに応答するパターンマップ1408と共に示される。すなわち、いくつかの実施形態では、そのようなボタン(又は同様のコントロール)を用いて、それぞれのマップを選択的にオンにする。
【0239】
例えば、均一であり得る大きさを示すグラフィック(例えば、粗さ、テクスチャ等を示すグラフィック)、及び/又は方向を示すグラフィック(例えば、木目、線分、スパイク等の粒子)は、方向性である場合があり、表面の解剖学的構造に重ねて、伝導又は基質特性を視覚化し得る。大きさを示すグラフィックのzの高さの「粗さ」は、表示される特性の程度(例えば、特性の大きさ)に比例して増減できる。また、ブロックの方向は、方向を示すグラフィック(例えば、
図8のテクスチャマップ1404に示されるスパイク)で示すことができる。
【0240】
上記の例を続けると、シェーディング及び/又は明確な固定カラーパレット若しくはグラデーション(使用される他のカラーパレットとは異なる)、例えばグレースケールを用いて、固定ブロック、方向性ブロック、及び/又は機能ブロックの条件等、様々なブロックの程度を識別できる。
【0241】
活性化の多方向領域は、パターンマップ1408に示すように、異なる単方向テクスチャ又は線を重ね合わせて表示することができ、「ハッチ」パターンを生成する。線維症の指標及び/又は表面/基質を特徴付ける他の生理学的状態指標の計算は、均一のテクスチャ、例えば、セメントに似た外観のパターン等の細かいパターン、又は小石に似た外観のパターン等の粗いパターンで表示され得る。伝導パターンに障害物又は障害を提示する線維症又は他の生理学的状態の指標は、速度、方向の均一性、及び/又は他の伝導パターン特性の組み合わせによって決定され得る。
【0242】
心腔1402の表面にテクスチャ、パターン、シェーディング等を組み込むことにより、他のタイプの心臓活動情報と連携してより多くの情報を供給する(例えば視覚的に供給する)方法が提供される。この構成は、マップディスプレイの視覚的な「レイヤ(layer)」の拡張実装であり、個別に又は任意に組み合わせて使用でき、ユーザ対話型コントロール1420の使用等を介して複数の変数に関連する情報を同時に提供する。
【0243】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明される頂点の分類のうちの1つ以上は、再構築された心腔1402上に示される。これらの実施形態では、分類は、カラーオーバーレイ及び/又は他のグラフィック表示等を用いて、上述したように示し得る。いくつかの実施形態では、色付き又はそうでなければ区別可能な「ドット」を用いて、特定の性質を有するものとして分類されている(本明細書では「分類された」)頂点を示す。重複するドット及び/又は他のインジケータを使用して、複数の分類(例えば、複数の類似及び/又は異なる分類)を示すことができる。重複するインジケータは、異なる半径、解剖学的構造の表面からの高さ、及び/又は異なる方向での解剖学的構造の表面に沿ったオフセットを使用して同じ位置に表示され得る。いくつかの実施形態では、グラフィックインジケータは「持続的に」表示され、例えば、頂点が第1のフレームに分類される場合、分類のインジケータは1つ以上の後続のフレーム用のディスプレイ上に持続され得る。追加的又は代替的に、分類のインジケータは複数の頂点に対して、例えば、分類された頂点の2つのエッジで接続された頂点に対して表示され得る。
【0244】
ここで
図9及び
図9Aを参照すると、マッピングカテーテルの概略図、及びマッピングカテーテルが心腔内に挿入されている心腔の斜視解剖図が、それぞれ本発明の概念と一致して示される。カテーテル10’は、1つ、2つ、3つ、又はそれ以上の電極12aを含む電極アレイ12’を含む。いくつかの実施形態では、電極アレイ12’は、24個未満の電極、例えば、10個、8個、6個、4個、又は3個の電極などの12個未満の電極を含む。電極アレイ12’は、電極12aが取り付けられる拡張可能なスプラインのアレイを含み得る。カテーテル10’は経皮的に患者に挿入されて、電極アレイ12’を心腔(HC)に経皮的に送達でき、
図1を参照して上述したカテーテル10と同様の構築及び配置とすることができる。
図9Aは、心腔(HC)に経皮的に挿入された電極アレイ12’を示す。電極12aは、心臓壁の一部分と接触して配置され、その結果、電気的活動データ120aを記録することができ、例えば、本明細書に記載のシステム100によって記録し得る。分析の領域は、電極12aの接触位置に近接する組織を取り囲んで示される。いくつかの実施形態では、記録された電気的活動データ120aはシステム100によって、例えば、
図3を参照して上述したアルゴリズム600を使用して複雑性の分析を実行することによって処理され、生成された診断結果1100は、分析の領域に「割り当てる」ことができる(例えば、診断結果は、分析の領域内で表される解剖学的モデルの頂点に関連して記録される)。いくつかの実施形態では、分析の領域に対する診断結果1100は、分析の領域で(例えば、心腔の他の領域からのデータの収集及び/又は分析と共に、又は無しで)、介入(例えば、組織の切除)からの潜在的な治療効果を示す。いくつかの実施形態では、いくつかの分析の領域は、例えば、電極アレイ12’が心腔(HC)の異なる部分に対して再配置され、追加のデータが記録及び分析される場合、カテーテル10’によって調べられる。
【0245】
上述の実施形態は、例示的な例としてのみ役立つと理解されるべきであり、更なる実施形態が想定される。任意の1つの実施形態に関して本明細書で説明される任意の特徴は、単独で、又は説明される他の特徴と組み合わせて使用され得て、また、任意の他の実施形態の1つ以上の特徴、又は任意の他の実施形態の任意の組み合わせと組み合わせて使用され得る。更に、上記に記載されていない同等物及び変更もまた、本発明の範囲から逸脱することなく使用されてもよく、添付の特許請求の範囲に定義される。