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特許7433237水素化触媒組成物及びニトリルゴムの水素化のためのその使用
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  • 特許-水素化触媒組成物及びニトリルゴムの水素化のためのその使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】水素化触媒組成物及びニトリルゴムの水素化のためのその使用
(51)【国際特許分類】
   B01J 31/22 20060101AFI20240209BHJP
   B01J 31/02 20060101ALI20240209BHJP
   B01J 31/24 20060101ALI20240209BHJP
   C08F 8/04 20060101ALI20240209BHJP
   C07F 15/00 20060101ALN20240209BHJP
【FI】
B01J31/22 Z
B01J31/02
B01J31/24 Z
C08F8/04
C07F15/00 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020552327
(86)(22)【出願日】2019-04-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-12
(86)【国際出願番号】 EP2019059228
(87)【国際公開番号】W WO2019201730
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2022-04-08
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2018/083913
(32)【優先日】2018-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516112462
【氏名又は名称】アランセオ・ドイチュランド・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】キンチュン・リウ
(72)【発明者】
【氏名】ジェンリ・ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ニェン・ガオ
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-530754(JP,A)
【文献】特表2016-527194(JP,A)
【文献】国際公開第2013/153988(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
C08F 8/04
C07F 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニトリルゴムを水素化するための方法であって、
a)一般式(IA)又は(IB)
【化1】
〔式中、
Mは、ルテニウムであり;
zは、酸素であり;
II 及び III は、一緒になってアリール若しくはヘテロアリール基を形成し、前記 II 及び III はそれぞれ、(水素と異なる場合には)、ハロゲン原子、C1~6アルキル、C1~6アルコキシ、アリール、アルキルスルホネート、アリールスルホネート、アルキルホスホネート、アリールホスホネート、C1~6アルキル-C1~6アルコキシシリル、C1~6アルキル-アリールオキシシリル、C1~6アルキル-C3~10シクロアルコキシシリル、アルキルアンモニウム及びアリールアンモニウムからなる群からそれぞれ独立して選択される1つ以上の置換基Rで任意選択的に置換されていてよく;
は、前記一般式(IA)を有する化合物に含まれる場合、メチル、フェニル若しくは置換フェニル(例えば、ジメチルブロモフェニル若しくはジイソプロピルフェニル)であるか、又は前記一般式(IB)を有する化合物に含まれる場合、メチレン若しくはベンジリデンであるかのいずれかであり;
は、一般式(IIa)又は(IIb)
【化4】
(式中、
8、、R10及びR11は、同一であるか又は異なり、且つ水素、直鎖状又は分岐状のC~C30-アルキル、C~C20-シクロアルキル、C~C20-アルケニル、C~C20-アルキニル、C~C24-アリール、C~C25-アルカリール、C~C20ヘテロアリール、C~C20ヘテロシクリル、C~C20-アルコキシ、C~C20-アルケニルオキシ、C~C20-アルキニルオキシ、C~C20-アリールオキシ、C~C20-アルコキシカルボニル、C~C20-アルキルチオ、C~C20-アリールチオ、-Si(R)、-O-Si(R)、-O-C(=O)R、C(=O)R、-C(=O)N(R)、-NR-C(=O)-N(R)、-SON(R)、-S(=O)R、-S(=O)R、-O-S(=O)R、ハロゲン、ニトロ又はシアノを表し;ここで、R、R、R10及びR11の意義に関連する前記場合の全てにおいて、基Rは、同一であるか又は異なり、且つ水素、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はヘテロアリールを表す)
に相当する構造を有する、電子供与性の錯体配位子であり;
は、水素、ハロゲン、擬ハロゲン、直鎖状又は分岐状のC~C30-アルキル、C~C24-アリール、C~C20-アルコキシ、C~C24-アリールオキシ、C~C20-アルキルジケトネート、C~C24-アリールジケトネート、C~C20-カルボキシレ-ト、C~C20-アルキルスルホネート、C~C24-アリールスルホネート、C~C20-アルキルチオール、C~C24-アリールチオール、C~C20-アルキルスルホニル又はC~C20-アルキルスルフィニルからなる群から選択される、アニオン性配位子であり;
及びRは、それぞれ、水素、又はC1~20アルキル、C2~20アルケニル、C2~20アルキニル、C1~20カルボキシレ-ト、C1~20アルコキシ、C2~20アルケニルオキシ、C2~20アルキニルオキシ、アリール、アリールオキシ、C1~20アルコキシカルボニル、C1~8アルキルチオ、C1~20アルキルスルホニル、C1~20アルキルスルフィニル、C1~20アルキルスルホネート、アリールスルホネート、C1~20アルキルホスホネート、アリールホスホネート、C1~20アルキルアンモニウム及びアリールアンモニウムからなる群から選択される基であるか;又は
及びRは、一緒になって、式(VI)
【化2】
を有する縮合芳香族環系を形成し;及び
yは、0である〕
の錯体水素化触媒を、一般式(1)
CH=CRR’ (1)
[式中、Rは、水素であり、R’は、OR
〔式中、
は、C~C-アルキル、C~C-シクロアルキル、C~C-アルケニル、C~C-アルキニル、フェニル、イミダゾリル、トリアゾリル若しくはピリジニル、-C(=O)(R)、-C(=O)N(R、-[(CHO]、-[(CHO]-CH=CH又は-(CH-C(R
(式中
は、同一であるか又は異なり、且つH、C~C-アルキル、C~C-シクロアルキル、C~C-アルケニル、C~C-アルキニル、フェニル、イミダゾリル、トリアゾリル又はピリジニルを表し、
は、同一であるか又は異なり、且つメチル、エチル又は-(CH-O-CH=CHを表し、
は、-(CH-O-CH=CHを表し、
nは、1又は2であり、
mは、1、2又は3であり、及び
pは、0、1又は3である)
を意味する〕
を表す]
の少なくとも1つの助触媒と、1:(20~550)の範囲の前記錯体水素化触媒対前記助触媒のモル比で接触させることによって、水素化触媒組成物を調製する工程と、その後、
b)工程a)において形成された前記水素化触媒組成物の存在下で、水素で前記ニトリルゴムを水素化する工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記助触媒が、式(助触媒-1)~(助触媒-7)及び(助触媒-10)~(助触媒-12)
【化3】
からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
及びRは、一緒になって、式(VI)
【化5】
を有する縮合芳香族環系を形成する、請求項1又は2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
工程a)において、
(i)[1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン]-[2-[[(4-メチルフェニル)イミノ]メチル]-4-ニトロ-フェノールイル]クロロ-[3-フェニル-インデニリデン]ルテニウム(II)、又は
(ii)[1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン]-[2-[[(2-メチルフェニル)イミノ]メチル]-フェノールイル]-[3-フェニル-1H-インデン-1-イリデン](クロロ)ルテニウム(II)
が、錯体水素化触媒として使用される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程a)が、-20℃~160℃の範囲の温度で行われる、請求項1~4のいずれか一項に記載のニトリルゴムを水素化するための方法。
【請求項6】
工程a)における錯体水素化触媒対助触媒の前記モル比が、1:(20~500)である、請求項1~5のいずれか一項に記載のニトリルゴムを水素化するための方法。
【請求項7】
工程b)における前記水素化が、60℃~200℃の範囲の温度、及び0.5MPa~35MPaの範囲の水素圧力で実施される、請求項1~6のいずれか一項に記載のニトリルゴムを水素化するための方法。
【請求項8】
前記ニトリルゴムが、まず、前記ニトリルゴムをコオレフィンの不在又は存在下で前記一般式(IA)又は(IB)の錯体水素化触媒と接触させることを含む、メタセシス反応における分子量低下にかけられ、次いで、
a)前記メタセシス反応後に得られた反応混合物中に存在する前記錯体水素化触媒を、前記一般式(1)の少なくとも1つの助触媒と、1:(20~550)の範囲の前記錯体水素化触媒対前記助触媒のモル比で接触させて、水素化触媒組成物を形成する工程と、その後、
b)工程a)で形成された前記水素化触媒組成物の存在下において水素で前記ニトリルゴムを水素化する工程と
にかけられる、請求項1~7のいずれか一項に記載のニトリルゴムを水素化するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ベースの錯体水素化触媒を特定の助触媒と反応させることから得ることができる新規な水素化触媒組成物と、そのような新規な水素化触媒組成物の存在下でニトリルゴムを選択的に水素化するための方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
「アクリロニトリル-ブタジエンゴム」又は「ニトリルゴム」(略して「NBR」とも呼ばれる)という用語は、広く解釈されるべきであり、少なくとも1つのα,β-不飽和ニトリル、少なくとも1つの共役ジエン及び必要に応じて1つ又は複数のさらなる共重合性モノマーのコポリマー又はターポリマーであるゴムを指す。
【0003】
水素化NBR(略して「HNBR」とも呼ばれる)は、NBRを水素化することによって商業的に製造される。したがって、ジエンベースのポリマー中の炭素-炭素二重結合の選択的水素化は、そのポリマー鎖中のニトリル基及び他の官能基(例えば、そのポリマー鎖中に他の共重合性モノマーが導入された場合のカルボキシル基)に悪影響が出ないように実施されなければならない。
【0004】
HNBRは、特殊ゴムであり、極めて良好な耐熱性、優れた耐オゾン性及び耐薬品性、さらに優れた耐油性を有する。上述のHNBRの物理的及び化学的性質は、極めて良好な機械的性質、特に高い耐摩耗性と組み合わされている。この理由から、HNBRは、各種の用途において幅広く使用されてきた。HNBRは、例えば、自動車分野におけるシーリング材、ホース、ベルト及び緩衝要素、さらに原油探索分野におけるステーター、油井シール材及びバルブシール材並びに飛行機産業、電子産業、機械工学及び造船における多くの部品に使用されている。水素化の転化率が95%を超える、すなわち残存二重結合(RDB)含量が5%未満であり、水素化反応中に架橋することなく、且つ得られるHNBR中のゲルレベルが約2.5%未満であることは、これらの領域においてHNBRが高性能な応用を確保し、最終製品の優れた加工性を保証するための限界値である。
【0005】
HNBR中の共重合されたジエン単位の水素化度は、50~100%の範囲で変化させることができるが、しかし、望まれる水素化度は、約80~約100%、好ましくは約90~約99.9%である。HNBRの市販グレードは、典型的には、18%未満の不飽和度が残り、アクリロニトリルの含量がおよそ約50%までである。
【0006】
均一系又は不均一系いずれかの水素化触媒を使用して、NBRの水素化を実施することができる。使用される触媒は、通常、ロジウム、ルテニウム又はパラジウムをベースとするものであるが、白金、イリジウム、レニウム、オスミウム、コバルト若しくは銅を金属として又は好ましくは金属化合物の形態として使用することも可能である(例えば、(特許文献1)を参照されたい)。均一相における水素化のために好適な触媒及び溶媒も公知である。
【0007】
また、商業的な目的では、NBRの水素化によるHNBRの製造は、多くの場合、ロジウム又はパラジウムをベースとする不均一系又は均一系のいずれかの遷移金属触媒を使用することにより、有機溶媒中で実施される。そのようなプロセスでは、例えば、触媒金属が高価であり、且つ触媒金属の除去/リサイクルに含まれるコストがかかるといった欠点がある。この理由から、より安価な貴金属、例えばオスミウム及びルテニウムをベースとする代替触媒の研究開発が行われてきた。
【0008】
Ruベースの錯体は、ポリマー溶液水素化のための良好な触媒でもあり、且つRu金属の価格は、さらにより安価である。Ru-PPh錯体及びRuHCl(CO)L(Lは、嵩高いホスフィンである)触媒系は、(非特許文献1)に開示されているようにNBRの定量的な水素化をもたらす。そのような水素化の間、触媒活性を維持するために遊離ホスフィン配位子を添加することは、必要ではない。しかしながら、それらは、ゲル形成の傾向があり、水素化の間にある程度の架橋を引き起こし得る。
【0009】
しかしながら、これらの上述のRu又はOs触媒は、水素化のみに対して活性な触媒であり、メタセシス反応に対して活性でない。そのため、これらのタイプのRu又はOs触媒は、低下した分子量のNBRを製造するためのNBRメタセシス/分解のために使用することができない。
【0010】
HNBR製造の別の問題は、市販されているNBRの直接水素化によって低いムーニー粘度のHNBRを製造するのが困難であることである。比較的高いムーニー粘度は、HNBRの加工性に制限を加える。多くの用途は、理想的には、より低い分子量及びより低いムーニー粘度のHNBR銘柄を使用するであろう。これは、加工性の決定的な改善を与えるであろう。
【0011】
長い間、確立された直接NBR水素化プロセスにより、55未満の範囲のムーニー粘度(ML1+4@100℃)に対応する低いモル質量を有するか、又は約200,000g/mol未満の重量平均分子量MwのHNBRを大規模に製造することは、主として2つの理由で可能でなかった:まず、実質的に増加したムーニー粘度のHNBRポリマーが得られることを意味するムーニー粘度の激増がNBRの水素化中に起こる。ムーニー増加率(MIR)は、一般に、NBR銘柄、水素化レベル及びNBR供給原料の性質に依存して約2であるか又はさらにそれを超える。このように、市販のHNBRのムーニー粘度範囲は、NBR出発原料のムーニー粘度の下限によって制限される。第二に、ゴムが余りにも粘着性になるため、利用可能なNBR工業プラントでの他のワークアップがもはや可能ではないことから、水素化のために使用されるNBR供給原料のモル質量は、意図的に低下させることができない。確立された工業プラントで困難なくワークアップすることができるNBR供給原料の最低のムーニー粘度は、約30ムーニー単位(ML1+4@100℃)の範囲である。そのようなNBR供給原料を使用して得られる水素化ニトリルゴムのムーニー粘度は、55ムーニー粘度(ML1+4@100℃)ほどである。ムーニー粘度は、ASTM標準D 1646に従って測定される。
【0012】
より最近の先行技術において、この問題は、30ムーニー単位未満のムーニー粘度(ML1+4@100℃)又は200,000g/mol未満の重量平均分子量Mwまで分解によって水素化前のニトリルゴムの分子量を低下させることによって解決されている。この分子量の低下は、メタセシス触媒の存在下でのNBRのメタセシスによって達成される。例えば、(特許文献2)及び(特許文献3)は、オレフィンメタセシスによるニトリルゴム出発ポリマーの分解及びその後の水素化を含むプロセスを記載している。ニトリルゴムは、コオレフィン及びオスミウム、ルテニウム、モリブデン又はタングステン錯体をベースとする特定の触媒の存在下で、第1の工程において反応され、第2の工程において水素化される。得られた水素化ニトリルゴムは、30,000~250,000g/molの範囲の重量平均分子量(Mw)、3~50MUの範囲のムーニー粘度(ML1+4@100℃)及び2.5未満の多分散指数PDIを有し得る。このメタセシス反応は、有利には、分解反応が完了した後、分解されたニトリルゴムが溶媒から必ずしも単離される必要がないように、その後の水素化と同じ溶媒中で実施される。例えば、Grubbs I(ベンジリデンビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジクロロルテニウム)、Grubbs II(ベンジリデン[1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン]トリシクロヘキシルホスフィンジクロロルテニウム)、Grubbs III(ベンジリデン[1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン]ジクロロ-ビス(3-ブロモピリジン)ルテニウム)、Hoveyda-Grubbs II([1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン]ジクロロ(o-イソプロポキシフェニルメチレン)ルテニウム)などの多数のRuベースのメタセシス触媒(例えば、(特許文献4)を参照されたい)及び多数のフルオレニリデンベースの錯体触媒(例えば、(特許文献5)を参照されたい)がニトリルゴムのメタセシスに関して周知である。
【0013】
さらなる参考文献には、ビニル化合物を用いるメタセシス反応のクエンチングが記載されている:多数の特許出願、例えば(特許文献6)及び(特許文献7)は、メタセシス反応によるニトリルゴムの分子量低下について言及しており、メタセシス触媒を破壊するためにメタセシス反応後にエチルビニルエーテルで反応混合物が処理される実験を含んでいる。エチルビニルエーテル対使用されたメタセシス触媒のモル比は、触媒の失活によってメタセシス反応を効率的に停止させるために非常に高い。前述の出願において、そのようなモル比は、567:1~17,000超:1の範囲である。それらの特許出願のいずれも、失活試薬対メタセシス触媒のより低い比を選択することにより、選択的水素化、すなわちメタセシス分解を触媒し続けることがない選択的水素化に非常に適した触媒組成物が得られるといういかなる開示も示唆も提供していない。
【0014】
(非特許文献2)には、オレフィンメタセシスに関するルテニウムベースの触媒の機構が開示されている。さらに、ルテニウムカルベンとエチルビニルエーテルとの反応が開環メタセシス重合をクエンチするための方法として利用できることが記載されている。以下のスキームに示されるように、いわゆるフィッシャー-カルベン錯体が構築されると報告されている。
【化1】
こうして、触媒の触媒活性は、エチルビニルエーテルで停止される。錯体触媒対助触媒のモル比は、1:(15~60)であった。
【0015】
いくつかのルテニウムベースのメタセシス触媒は、不飽和基質の水素化のためにも使用できることが知られている(非特許文献3)。しかしながら、NBRがこれらのタイプの触媒を使用して水素化される場合、最終HNBRの分子量は、ポリブタジエン単位の極端な鎖分解のために劇的に低下する。したがって、このプロセス後、低い分子量のHNBRのみを得ることができる。一方、このプロセスでは水素化速度が遅い。
【0016】
ルテニウムベースのメタセシス触媒がNBR水素化のために直接使用される場合、通常、触媒のメタセシス活性のために低い分子量のHNBRのみを得ることができる。高い分子量のHNBRを得るために、触媒のメタセシス活性を抑えるか又は停止させ、且つそれらの水素化活性を高めるための方法を探索することが望ましい。エチルビニルエーテル(EVE)は、周知のメタセシス停止剤である。メタセシス停止工程後の水素化は、追加の水素化触媒(Pd、Rh又はRuベース、例えば(特許文献8))の添加によって実現されていた。
【0017】
(特許文献9)は、オレフィンメタセシス反応における触媒成分として有用である金属錯体を開示している。しかしながら、水素化のための錯体触媒の使用又はメタセシス反応の抑制のための助触媒の使用は、開示されていない。
【0018】
(特許文献10)及び(特許文献11)は、Grubbs I、Grubbs II、Grubbs III、Hoveyda-Grubbs又はZhan-IBなどのルテニウム又はオスミウムベースの錯体触媒と、エチルビニルエーテルなどの特定の助触媒とをベースとする触媒組成物及びそのような触媒組成物の存在下でニトリルゴムを選択的に水素化するための方法を開示している。実施例は、メタセシス触媒を特定の助触媒と接触させることによって得られる触媒組成物であって、助触媒との触媒のそのような接触又は前処理が、水素の添加前の反応混合物において、メタセシス反応から切り離して又はメタセシス反応後にその場でのいずれかで行われる触媒組成物の存在下でのNBRの水素化によって、HNBRが調製できることを示している。触媒のメタセシス活性は、触媒を助触媒と接触させ、それにより、その発明による触媒組成物を調製することによって制御される。こうして、その発明による触媒組成物を使用する水素化によって得られるHNBRの分子量は、元のNBR供給原料に匹敵する。
【0019】
しかしながら、このコンセプトが、異なる配位子構造を有する他の錯体触媒に当てはまるかどうかは、未知である。
【0020】
典型的な商業生産プロセスでは、別個の水素化触媒がNBRメタセシス工程後のNBR水素化のための反応系に添加される。このようにして、制御された分子量のHNBRを製造することができるが、2つの触媒(メタセシスのための1つ及び水素化のための1つ)が高い反応効率を達成するために必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【文献】米国特許出願公開第A-3,700,637号明細書
【文献】国際公開第A-02/100905号パンフレット
【文献】国際公開第A-02/100941号パンフレット
【文献】米国特許出願公開第A-2008/0064882号明細書
【文献】米国特許出願公開第A-2009/0076226号明細書
【文献】欧州特許第2670782号明細書
【文献】欧州特許第2603533号明細書
【文献】米国特許第7,470,750号明細書
【文献】国際公開第A-03/062253号パンフレット
【文献】国際公開第A-13057289号パンフレット
【文献】国際公開第A-13057295号パンフレット
【非特許文献】
【0022】
【文献】Journal of Molecular Catalysis A:Chemical,1997,126(2-3),115-131
【文献】J.Am.Chem.Soc.2001,123,6543-54
【文献】Organometallic,2001,20(26),5495-5497
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
したがって、低い触媒濃度及び短い水素化時間でニトリルゴムの選択的な水素化を可能にする改良された水素化触媒組成物を提供することが本発明の目的であった。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、錯体水素化触媒を少なくとも1つの助触媒と1:(20~550)の範囲の錯体水素化触媒対助触媒のモル比で接触させることによって得ることができる新規な水素化触媒組成物に関する。
【0025】
本発明は、さらにまた、ニトリルゴムを水素化する方法であって、
a)本発明による水素化触媒組成物を、錯体水素化触媒を少なくとも1つの助触媒と1:(20~550)の範囲の錯体水素化触媒対助触媒のモル比で接触させることによって調製する工程と、その後、
b)新規な前記水素化触媒組成物の存在下において水素でニトリルゴムを水素化する工程と
を含む方法に関する。
【0026】
本発明の特定の実施形態は、最初に、コオレフィンの不在又は存在下でニトリルゴムを錯体水素化触媒と接触させることによるメタセシス反応における分子量低下に、ニトリルゴムをかける工程と、その後、
a)本発明による水素化触媒組成物を、メタセシス反応後の反応混合物中に存在する錯体水素化触媒を少なくとも1つの助触媒と1:(20~550)の範囲の錯体水素化触媒対助触媒のモル比で接触させることによって形成する工程と、その後、
b)新規な前記水素化触媒組成物の存在下において水素でニトリルゴムを水素化する工程と
を含む代替的な方法に関する。
【0027】
本方法は、有利には、最初に、メタセシス錯体水素化触媒を助触媒で処理することによって得られた水素化触媒組成物が使用される場合、ニトリルゴムの同時メタセシス分解なしにニトリルゴムの水素化を行うことが可能になる。そのため、本方法により、制御された方法、すなわち商業的に魅力的な方法で注文通りの分子量の水素化ニトリルゴムの形成下でのニトリルゴムの水素化が可能になる。水素化中にニトリルゴムの分子量を一定に保つことが可能である。代替的に、新規な水素化触媒組成物を調製するときに、メタセシス活性錯体水素化触媒と助触媒との間のモル比を制御及び選択することによって、所望の方法でニトリルゴムの分子量を調節及び調整することも可能である。特に、本方法は、特定の実施形態では、第1の工程においてメタセシス反応のために1つの及び同じ触媒を使用し、次いでこのメタセシス反応の反応混合物に助触媒を添加し、それによって新規な水素化触媒組成物を調製し、その後、第2の工程においてメタセシス化ニトリルゴムを水素化することが利用可能になる。助触媒は、メタセシス錯体水素化触媒を含有する反応混合物にメタセシスの任意の程度で添加することができ、そのため、商業的に魅力的な方法で注文通りの水素化ニトリルゴムを調製することが可能になる。さらに、本発明の水素化プロセスにより、非常に低い濃度で錯体水素化触媒を使用することが可能になり、その結果、遷移金属ベースの触媒を水素化後に除去又はリサイクルする必要がない。
【0028】
本発明に従って調製及び使用される水素化触媒組成物は、その高い水素化活性で特徴付けられる。高い水素化度を短い反応時間で達成することができる。特に、本水素化触媒組成物の水素化活性は、NBR水素化のためにそれ自体使用されるにすぎない対応する錯体水素化触媒の水素化活性よりも高い。
【0029】
本発明の上記及び他の態様、特徴及び利点は、以下を示す添付の図面と併せて以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】実施例1、2及び5における水素化プロセス中の(H)NBRサンプルの水素化度である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本特許出願の目的で使用される「置換される」という用語は、指示された基又は原子の上の水素原子が、それぞれの場合において指示された基の1つによって置き換えられていることを意味するが、ただし、指示された原子の原子価が高すぎることがなく、その置換で安定な化合物が生じる必要がある。
【0032】
本特許出願及び本発明の目的のために、上記及び下記において、一般的な項目又は好ましい範囲として与えられた残基、パラメーター又は説明は、いかなる方法でも、すなわちそれぞれの範囲と好ましい範囲との組合せを含めて相互に組み合わされ得る。
【0033】
錯体水素化触媒
錯体組成物及び水素化プロセスにおいて使用される錯体水素化触媒は、一般式(IA)及び(IB)
【化2】
(式中、
Mは、周期表の4、5、6、7、8、9、10、11及び12族からなる群から選択される金属、好ましくはルテニウム、オスミウム、鉄、モリブデン、タングステン、チタン、レニウム、銅、クロム、マンガン、ロジウム、バナジウム、亜鉛、金、銀、ニッケル及びコバルトから選択される金属であり;
zは、酸素、硫黄、セレン、NR’’’’、PR’’’’、AsR’’’’及びSbR’’’’からなる群から選択され;R’’、R’’’及びR’’’’は、それぞれ水素、C1~6アルキル、C3~8シクロアルキル、C1~6アルキル-C1~6アルコキシシリル、C1~6アルキル-アリールオキシシリル、C1~6アルキル-C3~10シクロアルコキシシリル、アリール及びヘテロアリールからなる群から独立して選択される基であるか、又はR’’及びR’’’は、一緒になってアリール若しくはヘテロアリール基を形成し、それぞれの前記基は、(水素と異なる場合)、ハロゲン原子、C1~6アルキル、C1~6アルコキシ、アリール、アルキルスルホネート、アリールスルホネート、アルキルホスホネート、アリールホスホネート、C1~6アルキル-C1~6アルコキシシリル、C1~6アルキル-アリールオキシシリル、C1~6アルキル-C3~10シクロアルコキシシリル、アルキルアンモニウム及びアリールアンモニウムからなる群からそれぞれ独立して選択される1つ以上、好ましくは1~3つの置換基Rで任意選択的に置換されており;
R’は、一般式(IA)を有する化合物に含まれる場合、R’’、R’’’及びR’’’’について定義された通りであるか、又は一般式(IB)を有する化合物に含まれる場合、C1~6アルキレン及びC3~8シクロアルキレンからなる群から選択されるかのいずれかであり、前記アルキレン又はシクロアルキレン基は、1つ以上の置換基Rで任意選択的に置換されており;
は、Rと結合されて環状構造を形成することができるか又は結合されることができない電子供与性の錯体配位子であり;
は、アニオン性配位子であり;
及びRは、それぞれ水素又はC1~20アルキル、C2~20アルケニル、C2~20アルキニル、C1~20カルボキシレ-ト、C1~20アルコキシ、C2~20アルケニルオキシ、C2~20アルキニルオキシ、アリール、アリールオキシ、C1~20アルコキシカルボニル、C1~8アルキルチオ、C1~20アルキルスルホニル、C1~20アルキルスルフィニル、C1~20アルキルスルホネート、アリールスルホネート、C1~20アルキルホスホネート、アリールホスホネート、C1~20アルキルアンモニウム及びアリールアンモニウムからなる群から選択される基であり;
R’と、R及びRの1つとは、互いに結合されて二座配位子を形成し得;
R’’’及びR’’’’は、互いに結合されて、窒素、リン、ヒ素及びアンチモンからなる群から選択されるヘテロ原子を含む脂肪族環系を形成し得;
及びRは、一緒になって縮合芳香族環系を形成し得;及び
yは、Mと、R及びRを有する炭素原子との間のsp炭素原子の数を表し、且つ両端値を含めて0~3の整数である)
の錯体水素化触媒、それらの塩、溶媒和物及びエナンチオマーに関する。
【0034】
一般式(IA)及び(IB)の触媒は、原則として公知である。このクラスの化合物の代表は、例えば、国際公開第03/062253号パンフレットに記載されている触媒である。これらの触媒は、市販されているか、又は引用される参考文献に記載されているように調製することができるかのいずれかである。
【0035】
の定義:
一般式(IA)及び(IB)において、Rは、Rと結合されて環状構造を形成することができるか又は結合されることができない電子供与性の錯体配位子である。一般式(IA)及び(IB)の触媒の1つの実施形態では、Rは、ホスフィン、スルホン化ホスフィン、ホスフェート、ホスフィナイト、ホスホナイト、アルシン、スチビン、エーテル、アミン、アミド、スルホネート、スルホキシド、カルボキシル、ニトロシル、ピリジン、チオエーテル、イミダゾリン又はイミダゾリジン配位子(後者の2つは、合わせて「Im」配位子とも言われる)である。
【0036】
「ホスフィナイト」という用語には、例えば、フェニルジフェニルホスフィナイト、シクロヘキシルジシクロヘキシルホスフィナイト、イソプロピルジイソプロピルホスフィナイト及びメチルジフェニルホスフィナイトが含まれる。
【0037】
「ホスファイト」という用語には、例えば、トリフェニルホスファイト、トリシクロヘキシルホスファイト、トリ-tert-ブチルホスファイト、トリイソプロピルホスファイト及びメチルジフェニルホスファイトが含まれる。
【0038】
「スチビン」という用語には、例えば、トリフェニルスチビン、トリシクロヘキシルスチビン及びトリメチルスチビンが含まれる。
【0039】
「スルホネート」という用語には、例えば、トリフルオロメタンスルホネート、トシレート及びメシレートが含まれる。
【0040】
「スルホキシド」という用語には、例えば、(CHS(=O)及び(CS=Oが含まれる。
【0041】
「チオエーテル」という用語には、例えば、CHSCH、CSCH、CHOCHCHSCH及びテトラヒドロチオフェンが含まれる。
【0042】
本出願の目的のために、「ピリジン」という用語は、例えば、国際公開第A-03/011455号パンフレットにおいてGrubbsによって述べられているようなすべての窒素含有配位子のための集合名として使用される。例は、ピリジン、ピコリン類(α-、β-及びγ-ピコリンなど)、ルチジン類(2,3-、2,4-、2,5-、2,6-、3,4-及び3,5-ルチジンなど)、コリジン(2,4,6-トリメチルピリジン)、トリフルオロメチルピリジン、フェニルピリジン、4-(ジメチルアミノ)ピリジン、クロロピリジン、ブロモピリジン、ニトロピリジン、キノリン、ピリミジン、ピロール、イミダゾール並びにフェニルイミダゾールである。
【0043】
がイミダゾリン又はイミダゾリジン配位子(特に明記しない限り、本出願では合わせて「Im」とも言われる)である場合、これは、通常、一般式(IIa)又は(IIb)
【化3】
(式中、
、R、R10及びR11は、同一であるか又は異なり、且つ水素、直鎖状又は分岐状のC~C30-アルキル、C~C20-シクロアルキル、C~C20-アルケニル、C~C20-アルキニル、C~C24-アリール、C~C25-アルカリール、C~C20ヘテロアリール、C~C20ヘテロシクリル、C~C20-アルコキシ、C~C20-アルケニルオキシ、C~C20-アルキニルオキシ、C~C20-アリールオキシ、C~C20-アルコキシカルボニル、C~C20-アルキルチオ、C~C20-アリールチオ、-Si(R)、-O-Si(R)、-O-C(=O)R、C(=O)R、-C(=O)N(R)、-NR-C(=O)-N(R)、-SON(R)、-S(=O)R、-S(=O)R、-O-S(=O)R、ハロゲン、ニトロ又はシアノを表し;ここで、R、R、R10及びR11の意味に関連するすべての上記の場合において、基Rは、同一であるか又は異なり、且つ水素、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はヘテロアリールを表す)
に対応する構造を有する。
【0044】
適切な場合、R、R、R10及びR11の1つ又は複数は、互いに独立して、1つ又は複数の置換基、好ましくは直鎖状又は分岐状のC~C10-アルキル、C~C-シクロアルキル、C~C10-アルコキシ又はC~C24-アリール、C~C20ヘテロアリール、C~C20ヘテロシクリック並びにヒドロキシ、チオール、チオエーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、エーテル、アミン、イミン、アミド、ニトロ、カルボン酸、ジスルフィド、カーボネート、イソシアネート、カルボジイミド、カルボアルコキシ、カルバメート及びハロゲンからなる群から選択される官能基によって置換され得、ここで、これらの上述の置換基は、化学的に可能である限り、好ましくはハロゲン、特に塩素又は臭素、C~C-アルキル、C~C-アルコキシ及びフェニルからなる群から選択される1つ又は複数の置換基によってさらに置換され得る。
【0045】
単に明瞭にするためにのみ付け加えれば、本特許出願における一般式(IIa)及び(IIb)で示されるイミダゾリン及びイミダゾリジン配位子の構造は、それぞれこのミダゾリン及びイミダゾリジン配位子について文献においても多くの場合に見いだされる構造(IIa’)及び(IIb’)と均等であり、ミダゾリン及びイミダゾリジンのカルベン的特性を強調している。これは、以下に示される関連する好ましい構造(IIIa)~(IIIu)
【化4】
にも同様に当てはまる。
【0046】
が一般式(IA)又は(IB)の触媒におけるイミダゾリン又はイミダゾリジン配位子である場合、R及びRは、同一であるか又は異なり、且つ好ましくは水素、C~C24-アリール、直鎖状若しくは分岐状のC~C10-アルキルを表すか、又はそれらが結合されている炭素原子と一緒になってシクロアルキル若しくはアリール構造を形成する。
【0047】
より好ましくは、R及びRは、同一であり、且つ水素、メチル、プロピル、ブチル及びフェニルからなる群から選択される。
【0048】
及びRの好ましい意味及びより好ましい意味は、直鎖状又は分岐状のC~C10-アルキル又はC~C10-アルコキシ、C~C-シクロアルキル、C~C24-アリールからなる群から選択される1つ又は複数のさらなる置換基並びにヒドロキシ、チオール、チオエーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、エーテル、アミン、イミン、アミド、ニトロ、カルボン酸、ジスルフィド、カーボネート、イソシアネート、カルボジイミド、カルボアルコキシ、カルバメート及びハロゲンからなる群から選択される官能基によって置換され得、ここで、それらの置換基のすべては、好ましくは、ハロゲン、特に塩素又は臭素、C~C-アルキル、C~C-アルコキシ及びフェニルからなる群から選択される1つ又は複数の置換基によってさらに置換され得る。
【0049】
が一般式(IA)又は(IB)の触媒におけるイミダゾリン又はイミダゾリジン配位子である場合、R10及びR11は、同一であるか又は異なり、且つ好ましくは直鎖状又は分岐状のC~C10-アルキル、C~C10-シクロアルキル、C~C24-アリール、特に好ましくはフェニル、C~C10-アルキルスルホネート、C~C10-アリールスルホネートを表す。
【0050】
より好ましくは、R10及びR11は、同一であり、且つi-プロピル、ネオペンチル、アダマンチル、フェニル、2,6-ジイソプロピルフェニル、2,6-ジメチルフェニル又は2,4,6-トリメチルフェニルからなる群から選択される。
【0051】
10及びR11のこれらの好ましい意義は、直鎖状又は分岐状のC~C10-アルキル又はC~C10-アルコキシ、C~C-シクロアルキル、C~C24-アリールからなる群から選択される1つ又は複数のさらなる置換基並びにヒドロキシ、チオール、チオエーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、エーテル、アミン、イミン、アミド、ニトロ、カルボン酸、ジスルフィド、カーボネート、イソシアネート、カルボジイミド、カルボアルコキシ、カルバメート及びハロゲンからなる群から選択される官能基によって置換され得、ここで、それらの置換基のすべては、好ましくは、ハロゲン、特に塩素又は臭素、C~C-アルキル、C~C-アルコキシ及びフェニルからなる群から選択される1つ又は複数の置換基によってさらに置換され得る。
【0052】
特に好ましいイミダゾリン及びイミダゾリジン配位子は、以下の構造(IIIa)~(IIIu)
【化5】
を有し、ここで、「Ph」は、それぞれの場合においてフェニルを意味し、「Bu」はcブチルを意味し、「Mes」は、それぞれの場合において2,4,6-トリメチルフェニルを意味し、「Dipp」は、すべての場合において2,6-ジイソプロピルフェニルを意味し、「Dimp」は、2,6-ジメチルフェニルを意味する。
【0053】
さらに好ましい実施形態では、Rは、一般式(IIc)及び(IId)
【化6】
(式中、
、R及びR10は、一般式(IIa)及び(IIb)に関して上記で定義されたようなすべての一般的な、好ましい、より好ましい及び最も好ましい意味を有することができ、
12、R13及びR14は、同一であるか又は異なり、且つアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ又はヘテロシクリック基を表すことができる)
を有するができる。
【0054】
一般式(IIc)及び(IId)において、R、R、R10、R12、R13及びR14は、直鎖状又は分岐状のC~C-アルキル、特にメチル、C~C-アルコキシ、アリール並びにヒドロキシ、チオール、チオエーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、エーテル、アミン、イミン、アミド、ニトロ、カルボン酸、ジスルフィド、カーボネート、イソシアネート、カルボジイミド、カルボアルコキシ、カルバメート及びハロゲンからなる群から選択される官能基からなる群から選択される1つ以上のさらなる置換基でも置換され得る。
【0055】
より好ましい実施形態では、配位子Rは、一般式(IId)(式中、R12、R13及びR14は、同一であるか又は異なり、さらにより好ましくは同一であり、且つC~C20アルキル、C~C-シクロアルキル、C~C20アルコキシ、C~C20アリール、C~C20アリールオキシ、C~C20ヘテロアリール又はC~C20ヘテロシクリック基を表すことができる)を有する。
【0056】
さらにより好ましい実施形態では、配位子Rは、一般式(IId)(式中、R12、R13及びR14は、同一であり、且つそれぞれメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、ネオペンチル、1-エチルプロピル、n-ヘキシル、ネオフェニル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、フェニル、ビフェニル、ナフチル、フェナントレニル、アントラセニル、トリル、2,6-ジメチルフェニル及びトリフルオロメチルからなる群から選択される)を有する。
【0057】
配位子Rが一般式(IId)を有する場合、それは、最も好ましくは、PPh、P(p-Tol)、P(o-Tol)、PPh(CH、P(CF、P(p-FC、P(p-CF、P(C-SONa)、P(CH-SONa)、P(イソプロピル)、P(CHCH(CHCH))、P(シクロペンチル)、P(シクロヘキシル)、P(ネオペンチル)又はP(ネオフェニル)を表す。
【0058】
の定義
一般式(IA)又は(IB)の触媒において、Rは、アニオン性配位子である。配位子Rについてのアニオン性配位子という用語の意味は、当技術分野で慣習的であり、好ましくは米国特許第5,977,393号明細書に与えられている定義と一致する。
【0059】
一般式(IA)又は(IB)の触媒の1つの実施形態では、Rは、水素、ハロゲン、プソイドハロゲン、直鎖状又は分岐状のC~C30-アルキル、C~C24-アリール、C~C20-アルコキシ、C~C24-アリールオキシ、C~C20-アルキルジケトネート、C~C24-アリールジケトネート、C~C20-カルボキシレート、C~C20-アルキルスルホネート、C~C24-アリールスルホネート、C~C20-アルキルチオール、C~C24-アリールチオール、C~C20-アルキルスルホニル又はC~C20-アルキルスルフィニルを表す。
【0060】
を意味するとして上で列挙した残基は、1つ又は複数のさらなる置換基、例えばハロゲン、好ましくはフッ素、C~C10-アルキル、C~C10-アルコキシ又はC~C24-アリールによって置換され得、それらの基は、ハロゲン、好ましくはフッ素、C~C-アルキル、C~C-アルコキシ及びフェニルからなる群から選択される1つ又は複数の置換基によってさらに置換され得る。
【0061】
好ましい実施形態では、Rは、ハロゲン、特にフッ素、塩素、臭素若しくはヨウ素、ベンゾエート、C~C-カルボキシレート、C~C-アルキル、フェノキシ、C~C-アルコキシ、C~C-アルキルチオール、C~C24-アリールチオール、C~C24-アリール又はC~C-アルキルスルホネートである。
【0062】
特に好ましい実施形態では、Rは、ハロゲン、特に塩素、CFCOO、CHCOO、CFHCOO、(CHCO、(CF(CH)CO、(CF)(CHCO、PhO(フェノキシ)、MeO(メトキシ)、EtO(エトキシ)、トシレート(p-CH-C-SO)、メシレート(CHSO)又はトリフルオロメタンスルホネート(CFSO)を表す。
【0063】
代替的な実施形態は、フェニル基であるR及びRのそれぞれからなる。
【0064】
代替的な実施形態では、R及びRは、一緒になって、式(VI)
【化7】
を有する縮合芳香族環系を形成する。
【0065】
好ましくは、錯体組成物及び水素化プロセスにおいて使用される錯体水素化触媒は、一般式(IA)又は(IB)
【化8】
(式中、
Mは、ルテニウム又はオスミウム、最も好ましくはルテニウムであり;
zは、酸素、硫黄、セレン、NR’’’’、PR’’’’、AsR’’’’及びSbR’’’’からなる群から選択され;R’’、R’’’及びR’’’’は、それぞれ水素、C1~6アルキル、C3~8シクロアルキル、C1~6アルキル-C1~6アルコキシシリル、C1~6アルキル-アリールオキシシリル、C1~6アルキル-C3~10シクロアルコキシシリル、アリール及びヘテロアリールからなる群から独立して選択される基であるか、又はR’’及びR’’’は、一緒になってアリール若しくはヘテロアリール基を形成し、それぞれの前記基は、(水素と異なる場合)、ハロゲン原子、C1~6アルキル、C1~6アルコキシ、アリール、アルキルスルホネート、アリールスルホネート、アルキルホスホネート、アリールホスホネート、C1~6アルキル-C1~6アルコキシシリル、C1~6アルキル-アリールオキシシリル、C1~6アルキル-C3~10シクロアルコキシシリル、アルキルアンモニウム及びアリールアンモニウムからなる群からそれぞれ独立して選択される1つ以上、好ましくは1~3つの置換基Rで任意選択的に置換されており;
R’は、一般式(IA)を有する化合物に含まれる場合、メチル、フェニル若しくは置換フェニル(例えば、ジメチルブロモフェニル若しくはジイソプロピルフェニル)であるか、又は一般式(IB)を有する化合物に含まれる場合、メチレン若しくはベンジリエンであるかのいずれかであり;
は、Rと結合されて環状構造を形成することができるか又は結合されることができない電子供与性の錯体配位子であり;
は、アニオン性配位子であり;
及びRは、それぞれ水素又はC1~20アルキル、C2~20アルケニル、C2~20アルキニル、C1~20カルボキシレ-ト、C1~20アルコキシ、C2~20アルケニルオキシ、C2~20アルキニルオキシ、アリール、アリールオキシ、C1~20アルコキシカルボニル、C1~8アルキルチオ、C1~20アルキルスルホニル、C1~20アルキルスルフィニル、C1~20アルキルスルホネート、アリールスルホネート、C1~20アルキルホスホネート、アリールホスホネート、C1~20アルキルアンモニウム及びアリールアンモニウムからなる群から選択される基であり;
R’と、R及びRの1つとは、互いに結合されて二座配位子を形成し得;
R’’’及びR’’’’は、互いに結合されて、窒素、リン、ヒ素及びアンチモンからなる群から選択されるヘテロ原子を含む脂肪族環系を形成し得;
及びRは、一緒になって式(VI)
【化9】
を有するものを形成し得、及び
yは、Mと、R及びRを有する炭素原子との間のsp炭素原子の数を表し、且つ0又は1である)
の錯体水素化触媒に関連する。
【0066】
最も好ましくは、水素化触媒組成物の錯体水素化触媒は、
i)[1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン]-[2-[[(4-メチルフェニル)イミノ]メチル]-4-ニトロ-フェノールイル]クロロ-[3-フェニル-インデニリデン]ルテニウム(II)、又は
ii)[1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン]-[2-[[(2-メチルフェニル)イミノ]メチル]-フェノールイル]-[3-フェニル-1H-インデン-1-イリデン](クロロ)ルテニウム(II)
である。
【0067】
錯体水素化触媒i)及びii)は、Umicoreにおいて市販されている。
【0068】
助触媒:
好ましい実施形態では、助触媒は、一般式(1)
CH=CRR’ (1)
[式中、R及びR’は、同一であるか又は異なり、且つ
水素、
OR
〔式中、Rは、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール若しくはヘテロアリール、C(=O)(R)、-C(=O)N(R、-[(CH-X]、-[(CH-X]-CH=CH又は-(CH-C(R
(式中、
Xは、同一であるか又は異なり、且つ酸素(O)又はNRを意味し、
は、同一であるか又は異なり、且つH、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はヘテロアリールを表し、
は、同一であるか又は異なり、且つC~Cアルキル又は-(CH-O-CH=CHを表し、
は、(CH-O-CH=CHを表し、
nは、1~5の範囲であり、
mは、1~10の範囲であり、
pは、0~5の範囲である)
を意味するか、又は
代替的に、R及びR’が両方とも基ORを表す場合、両方のRは、互いに結合され、一緒になって、二価基-(C(R-(式中、qは、2、3又は4であり、Rは、同一であるか又は異なり、且つ上記で定義された意味を有する)を表すことができる〕、
SR、SOR、SO
(式中、Rは、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はヘテロアリールを表す)、
N(R)、P(R
〔式中、
及びRは、同一であるか又は異なり、且つアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、-C(=O)(R)を意味するか、又は
代替的に、R及びRは、それらが両方とも同時に結合されているN又はP原子と一緒になって、環状構造中に4~7つの炭素原子を有する飽和、不飽和又は芳香族の環状構造を形成し得、ここで、前記炭素原子の1、2又は3つは、酸素、硫黄、窒素、N-R又はP-R(式中、Rは、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はヘテロアリールを意味するものとする)から選択される部分で置き換えられ得る〕、又は
P(=O)(OR
(式中、Rは、同一であるか又は異なり、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリールを意味するものとする)
を意味し、
但し、R及びR’は、両方とも同時に水素を表してはならないことを条件とする]
を有する。
【0069】
一般式(1)に従う助触媒において、R、R、R、R、R、R、R、R又はRにおけるすべてのアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はヘテロアリール部分は、1つ以上のアルキル、ハロゲン、アルコキシ、アルケニルオキシ、アリール又はヘテロアリール置換基で任意選択的にさらに置換され得る。すべての前述の部分、特にアルキル、アルケニル及び/又はアルキニル部分は、化学的に可能な程度まで直鎖状又は分岐状のいずれかであり得る。当然のことながら、指示された原子の原子価が超過されず、置換が安定した化合物をもたらすという上記の条件が満たされているものとする。
【0070】
R及びR’がORを表す場合、両方のそのようなRは、互いに結合され得、且つ一緒になって、二価基-C(R-(式中、qは、2、3、4又は5であり、及びRは、同一であるか又は異なり、且つ上記の式(1)に関して定義された意味を有する)を表す。そのような場合、環状構造は、二価基が結合されている2つの酸素原子及び隣接するビニル炭素原子と一緒に二価基によって形成される。
【0071】
本発明の別の実施形態では、水素化触媒組成物は、一般式(1)
CH=CRR’ (1)
[式中、Rは、水素であり、及びR’は、
OR
〔式中、Rは、C~C16-アルキル、C~C10-シクロアルキル、C~C16-アルケニル、C~C20-アルキニル、C~C24-アリール、C~C24-ヘテロアリール、-C(=O)(R)、-C(=O)N(R、-[(CHX]、-[(CHX]-CH=CH又は-(CH-C(R
〔式中、
Xは、同一であるか又は異なり、且つ酸素(O)又はNRであり、
は、同一であるか又は異なり、且つH、C~C16-アルキル、C~C10-シクロアルキル、C~C16-アルケニル、C~C20-アルキニル、C~C24-アリール又はC~C20-ヘテロアリールを表し、
は、同一であるか又は異なり、且つC~Cアルキル又は-(CH-O-CH=CHを表し、
は、(CH-O-CH=CHを表し、
nは、1~4の範囲であり、
mは、1~5の範囲であり、
pは、0~5の範囲である〕
を意味する)、
SR、SOR、SO
(式中、Rは、C~C16-アルキル、C~C10-シクロアルキル、C~C16-アルケニル、C~C20-アルキニル、C~C24-アリール又はC~C24-ヘテロアリールを表す)、
N(R)、P(R
〔式中、
及びRは、同一であるか又は異なり、且つC~C16-アルキル、C~C10-シクロアルキル、C~C16-アルケニル、C~C20-アルキニル、C~C24-アリール又はC~C24-ヘテロアリール、-C(=O)(R)を意味するものとするか、又は
代替的に、R及びRは、それらが両方とも同時に結合されているそのようなN又はP原子と一緒になって、環状構造中に4~7つの炭素原子を有する飽和、不飽和又は芳香族の環状構造を形成し得、ここで、前記炭素原子の1、2又は3つは、酸素、硫黄、窒素、N-R又はP-R(式中、Rは、C~C16-アルキル、C~C10-シクロアルキル、C~C16-アルケニル、C~C20-アルキニル、C~C24-アリール又はC~C24-ヘテロアリールを意味するものとする)から選択される部分で置き換えられ得る〕、又は
P(=O)(OR
(式中、Rは、同一であるか又は異なり、且つC~C16-アルキル、C~C10-シクロアルキル、C~C16-アルケニル、C~C20-アルキニル、C~C24-アリール又はC~C24-ヘテロアリールを意味するものとする)
を意味する]
を有する少なくとも1つ、好ましくは1つの助触媒を使用して得られる。
【0072】
本発明の別の実施形態では、水素化触媒組成物は、一般式(1)
CH=CRR’ (1)
[式中、R及びR’は、同一であるか又は異なり、且つ
OR
〔式中、Rは、C~C16-アルキル、C~C10-シクロアルキル、C~C16-アルケニル、C~C20-アルキニル、C~C24-アリール、C~C24-ヘテロアリール、-C(=O)(R)、-C(=O)N(R、-[(CHX]、-[(CHX]-CH=CH又は-(CH-C(R
(式中、
Xは、同一であるか又は異なり、且つ酸素(O)又はNRであり、
は、同一であるか又は異なり、且つH、C~C16-アルキル、C~C10-シクロアルキル、C~C16-アルケニル、C~C20-アルキニル、C~C24-アリール又はC~C20-ヘテロアリールを表し、
は、同一であるか又は異なり、且つC~Cアルキル又は-(CH-O-CH=CHを表し、
は、(CH-O-CH=CHを表し、
nは、1~4の範囲であり、
mは、1~5の範囲であり、
pは、0~5の範囲である)
を意味するか、又は
代替的に、R及びR’が両方とも基ORを表す場合、両方のRは、互いに結合され、且つ一緒になって、二価基-(C(R
(式中、qは、2、3又は4であり、及びRは、同一であるか又は異なり、且つ上記で定義された意味を有する)を表すことができる)、
SR、SOR、SO
(式中、Rは、C~C16-アルキル、C~C10-シクロアルキル、C~C16-アルケニル、C~C20-アルキニル、C~C24-アリール又はC~C24-ヘテロアリールを表す)、
N(R)、P(R
(式中、
及びRは、同一であるか又は異なり、且つC~C16-アルキル、C~C10-シクロアルキル、C~C16-アルケニル、C~C20-アルキニル、C~C24-アリール又はC~C24-ヘテロアリール、-C(=O)(R)を意味するものとするか、又は
代替的に、R及びRは、それらが両方とも同時に結合されているそのようなN又はP原子と一緒になって、環状構造中に4~7つの炭素原子を有する飽和、不飽和又は芳香族の環状構造を形成し得、ここで、前記炭素原子の1、2又は3つは、酸素、硫黄、窒素、N-R又はP-R(式中、Rは、C~C16-アルキル、C~C10-シクロアルキル、C~C16-アルケニル、C~C20-アルキニル、C~C24-アリール又はC~C24-ヘテロアリールを意味するものとする)から選択される部分で置き換えられ得る)、又は
P(=O)(OR
(式中、Rは、同一であるか又は異なり、且つC~C16-アルキル、C~C10-シクロアルキル、C~C16-アルケニル、C~C20-アルキニル、C~C24-アリール又はC~C24-ヘテロアリールを意味するものとする〕
を意味するものとする]
を有する少なくとも1つ、好ましくは1つの助触媒を使用して得られる。
【0073】
本発明の別の好ましい実施形態では、水素化触媒組成物は、上で示された一般式(1)
CH=CRR’ (1)
[式中、Rは、水素であり、及びR’は、
OR
〔式中、Rは、C~C12-アルキル、C~C-シクロアルキル、C~C12-アルケニル、C~C12-アルキニル、C~C14-アリール、C~C14-ヘテロアリール、-C(=O)(R)、-C(=O)N(R、-[(CHX]、-[(CHX]-CH=CH又は-(CH-C(R
(式中、
Xは、同一であるか又は異なり、且つ酸素(O)又はNRであり、
は、同一であるか又は異なり、且つH、C~C12-アルキル、C~C-シクロアルキル、C~C12-アルケニル、C~C12-アルキニル、C~C14-アリール又はC~C14-ヘテロアリールを表し、
は、同一であるか又は異なり、且つメチル、エチル又は-(CH-O-CH=CHを表し、
は、(CH-O-CH=CHを表し、
nは、1、2又は3であり、
mは、1、2、3又は4であり、
pは、0、1、2、3又は4である)
を意味する)、
SR、SOR、SO
(式中、Rは、C~C12-アルキル、C~C-シクロアルキル、C~C12-アルケニル、C~C12-アルキニル、C~C14-アリール又はC~C14-ヘテロアリールを表す)、
N(R)、P(R
〔式中、
及びRは、同一であるか又は異なり、且つC~C12-アルキル、C~C-シクロアルキル、C~C12-アルケニル、C~C12-アルキニル、C~C14-アリール又はC~C14-ヘテロアリール、-C(=O)(R)を意味するものとするか、又は
代替的に、R及びRは、それらが両方とも同時に結合されているそのようなN又はP原子と一緒になって、環状構造中に4~5つの炭素原子を有する飽和、不飽和又は芳香族の環状構造を形成し得、ここで、前記炭素原子の1又は2つは、酸素、硫黄、窒素、N-R又はP-R(式中、Rは、C~C12-アルキル、C~C-シクロアルキル、C~C12-アルケニル、C~C12-アルキニル、C~C14-アリール又はC~C14-ヘテロアリールを意味するものとする)から選択される部分で置き換えられ得る〕、
P(=O)(OR
(式中、Rは、同一であるか又は異なり、且つC~C12-アルキル、C~C-シクロアルキル、C~C12-アルケニル、C~C12-アルキニル、C~C14-アリール又はC~C14-ヘテロアリールを意味するものとする)
を意味するものとする]
を有する少なくとも1つ、好ましくは1つの助触媒を使用して得られる。
【0074】
本発明の別の好ましい実施形態では、水素化触媒組成物は、上で示された一般式(1)
CH=CRR’ (1)
[式中、R及びR’は、同一であるか又は異なり、
OR
〔式中、Rは、C~C12-アルキル、C~C-シクロアルキル、C~C12-アルケニル、C~C12-アルキニル、C~C14-アリール、C~C14-ヘテロアリール、-C(=O)(R)、-C(=O)N(R、-[(CHX]、-[(CHX]-CH=CH又は-(CH-C(R
(式中、
Xは、同一であるか又は異なり、且つ酸素(O)又はNRであり、
は、同一であるか又は異なり、且つH、C~C12-アルキル、C~C-シクロアルキル、C~C12-アルケニル、C~C12-アルキニル、C~C14-アリール又はC~C14-ヘテロアリールを表し、
は、同一であるか又は異なり、且つメチル、エチル又は-(CH-O-CH=CHを表し、
は、(CH-O-CH=CHを表し、
nは、1、2又は3であり、
mは、1、2、3又は4であり、
pは、0、1、2、3又は4である)
を意味するか、又は
代替において、R及びR’が両方とも基ORを表す場合、両方のRは、互いに結合され、且つ一緒になって、二価基-(C(R
(式中、qは、2又は3であり、及びRは、同一であるか又は異なり、且つ水素又はC~Cアルキルを表す)を表すことができる)、
SR、SOR、SO
(式中、Rは、C~C12-アルキル、C~C-シクロアルキル、C~C12-アルケニル、C~C12-アルキニル、C~C14-アリール又はC~C14-ヘテロアリールを表す)、
N(R)、P(R
〔式中、
及びRは、同一であるか又は異なり、且つC~C12-アルキル、C~C-シクロアルキル、C~C12-アルケニル、C~C12-アルキニル、C~C14-アリール又はC~C14-ヘテロアリール、-C(=O)(R)を意味するものとするか、又は
代替的に、R及びRは、それらが両方とも同時に結合されているそのようなN又はP原子と一緒になって、環状構造中に4~5つの炭素原子を有する飽和、不飽和又は芳香族の環状構造を形成し得、ここで、前記炭素原子の1又は2つは、酸素、硫黄、窒素、N-R又はP-R(式中、Rは、C~C12-アルキル、C~C-シクロアルキル、C~C12-アルケニル、C~C12-アルキニル、C~C14-アリール又はC~C14-ヘテロアリールを意味するものとする)から選択される部分で置き換えられ得る〕、
P(=O)(OR
(式中、Rは、同一であるか又は異なり、且つC~C12-アルキル、C~C-シクロアルキル、C~C12-アルケニル、C~C12-アルキニル、C~C14-アリール又はC~C14-ヘテロアリールを意味するものとする)
を意味するものとする]
を有する少なくとも1つ、好ましくは1つの助触媒を使用して得られる。
【0075】
本発明の別のより好ましい実施形態では、水素化触媒組成物は、上で示された一般式(1)
CH=CRR’ (1)
[式中、Rは、水素であり、及びR’は、
OR
〔式中、Rは、C~C-アルキル、C~C-シクロアルキル、C~C-アルケニル、C~C-アルキニル、フェニル、イミダゾリル、トリアゾリル若しくはピリジニル、-C(=O)(R)、-C(=O)N(R、-[(CHO]、-[(CHO]-CH=CH又は-(CH-C(R
(式中、
は、同一であるか又は異なり、且つH、C~C-アルキル、C~C-シクロアルキル、C~C-アルケニル、C~C-アルキニル、フェニル、イミダゾリル、トリアゾリル又はピリジニルを表し、
は、同一であるか又は異なり、且つメチル、エチル又は-(CH-O-CH=CHを表し、
は、(CH-O-CH=CHを表し、
nは、1又は2であり,
mは、1、2又は3であり、
pは、0、1又は3である)
を意味する〕
を表す]
を有する1つの助触媒を使用して得られる。
【0076】
一般式(1)に従う助触媒の上述の好ましい、より好ましい及び最も好ましい実施形態のすべてにおいて、R、R、R、R、R、R、R、R又はRにおけるアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はヘテロアリール部分は、1つ以上のC~C-アルキル、C~C-シクロアルキル、C~C-アルケニル、C~C-アルキニル、フェニル、イミダゾリル、トリアゾリル又はピリジニル部分で任意選択的にさらに置換され得る。すべての前述の置換基、特にアルキル、アルケニル及び/又はアルキニル部分は、化学的に可能な程度まで直鎖状又は分岐状のいずれかであり得る。
【0077】
本発明のさらにより好ましい実施形態では、以下の式:
【化10A】
【化10B】
を有する1つ以上の助触媒が新規な水素化触媒の調製のために使用される。
【0078】
本発明の別の同様に好ましい実施形態において、R及びR’が両方ともOR(ここで、そのようなRは、一緒になって、上記で定義されたような二価基を形成する)を表す助触媒が新規な水素化触媒組成物の調製のために使用され、ここで、そのような特定の助触媒は、Rが、一般式(1)について概要を示されたのと同じ意味を有する以下の式
【化11】
を有する。
【0079】
代替的な例において、水素化触媒組成物は、1:(20~550)の範囲で錯体水素化触媒及び助触媒を水素と接触させることによって得られる。
【0080】
ニトリルゴムを水素化するための方法
本発明による方法の工程a):
本方法の工程a)における新規な水素化触媒組成物の調製は、適切な温度で行われる。温度の選択は、助触媒の性質及びその沸点によって影響を受ける。典型的には、この調製工程a)は、-20℃~160℃の範囲、好ましくは10℃~80℃の範囲の温度で行われる。ビニル含有物質を使用する触媒前処理のための好適な時間は、約1分~48時間の範囲である。
【0081】
錯体水素化触媒対助触媒の比は、1:(20~550)、好ましくは1:(20~500)、より好ましくは1:(25~475)、さらにより好ましくは1:(25~450)、最も好ましくは1:(30~450)である。
【0082】
水素化触媒組成物の調製は、使用される触媒を失活させず、且つまた決して水素化に悪影響を及ぼさない好適な溶媒の存在又は不在下で実施することができる。好ましくは、有機溶媒は、錯体水素化触媒を溶解させるために使用される。より好ましい溶媒には、ジクロロメタン、ベンゼン、トルエン、メチルエチルケトン、アセトン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、シクロヘキサン及びクロロベンゼンが含まれるが、それらに限定されない。特に好ましい溶媒は、クロロベンゼン及びメチルエチルケトンである。典型的には、ビニル化合物は、錯体水素化触媒の溶液に添加される。
【0083】
新規な水素化触媒組成物の形成は、水素を反応系に持ち込む前に行われる。
【0084】
本発明による方法の工程b):
その後、ニトリルゴムの水素化は、ニトリルゴムを、水素及び本方法の工程a)において形成された水素化触媒組成物と接触させることによって実施される。
【0085】
水素化は、60℃~200℃、好ましくは80℃~180℃、最も好ましくは100℃~160℃の範囲の温度及び0.5MPa~35MPa、より好ましくは3.0MPa~10MPaの範囲の水素圧力で実施することが好ましい。
【0086】
好ましくは、ニトリルゴムの水素化時間は、10分間~24時間、好ましくは15分間~20時間、より好ましくは30分間~12時間、さらにより好ましくは1時間~8時間、最も好ましくは1時間~4時間である。
【0087】
ニトリルゴムを基準とした、水素化工程b)において存在する水素化触媒組成物の量は、幅広い範囲、好ましくは使用されるニトリルゴムを基準として1~1,000ppm、好ましくは2~500ppm、特に5~250ppmのルテニウム又はオスミウムが存在するように選択することができる。
【0088】
本方法の代替的な実施形態では、新規な水素化触媒組成物の調製及びその後の水素化前にメタセシス反応を行うことが可能である。そのような代替的な方法(本明細書では、以下で「タンデム方法」とも言う)は、上に記載された工程a)及びb)前にメタセシス工程を行うことを含む。
【0089】
これは、そのような代替的な方法が、まず、中心金属としてのルテニウム又はオスミウムをベースとし、且つカルベン様にルテニウム又はオスミウム中心金属に結合されている少なくとも1つの配位子を有する錯体水素化触媒と、ニトリルゴムとをコオレフィンの不在又は存在下で接触させることを含む、メタセシス反応における分子量低下に、ニトリルゴムをかける工程と、その後、
a)メタセシス反応後に得られた反応混合物中に存在する錯体水素化触媒を、少なくとも1つのビニル基を有する少なくとも1つの助触媒と、1:(20~550)の範囲の錯体水素化触媒対助触媒のモル比で接触させて、水素化触媒組成物を形成する工程と、その後、
b)水素化触媒組成物の存在下、水素で前記ニトリルゴムを水素化する工程と
を含むことを意味する。
【0090】
タンデム方法のメタセシス工程:
タンデム方法の第1の工程としてのNBRメタセシスは、コオレフィンの不在又は存在下で実施することができる。
【0091】
このコオレフィンは、好ましくは、直鎖状又は分岐状のC~C16-オレフィンである。好適なコオレフィンは、例えば、エチレン、プロピレン、イソブテン、スチレン、1-ヘキセン及び1-オクテンである。1-ヘキセン又は1-オクテンを使用することが特に好ましい。
【0092】
代替において、以下の官能化コオレフィン:
【化12】
を使用することができる。
【0093】
コオレフィンが液体である場合、コオレフィンの量は、好ましくは、使用されるニトリルゴムを基準として0.2~20重量%の範囲である。例えば、エチレンの場合のように、コオレフィンがガスである場合、コオレフィンの量は、1×10Pa~1×10Paの範囲の圧力、好ましくは5.2×10Pa~4×10Paの範囲の圧力が室温で反応容器において確立されるように選択される。
【0094】
メタセシス反応は、使用される触媒を失活させず、且つまた決して反応に悪影響を及ぼさない好適な溶媒中で実施することができる。好ましい溶媒には、ジクロロメタン、ベンゼン、トルエン、メチルエチルケトン、アセトン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、シクロヘキサン及びクロロベンゼンが含まれるが、それらに限定されない。特に好ましい溶媒は、クロロベンゼンである。コオレフィン自体が溶媒として機能することができるいくつかの場合、例えば1-ヘキセンの場合、さらなる追加の溶媒の添加は、なしですますことができる。
【0095】
本発明によるタンデム方法のメタセシス工程において使用されるニトリルゴムを基準とする触媒の量は、具体的な錯体水素化触媒の性質及び触媒活性に依存する。使用される触媒の量は、通常、使用されるニトリルゴムを基準として1~1,000ppm、好ましくは2~500ppm、特に5~250ppmの貴金属である。
【0096】
材料の反応混合物で使用されるニトリルゴムの濃度は、厳密なものではないが、当然のことながら、その反応に、反応混合物の粘度が過度に高く、それに伴って混合の問題が起きることによって悪影響を与えないようにするべきである。反応混合物中のNBRの濃度は、全反応混合物を基準にして好ましくは1~25重量%の範囲、特に好ましくは5~20重量%の範囲である。
【0097】
メタセシス分解は、通常、10℃~150℃の範囲の温度、好ましくは20℃~80℃の範囲の温度で実施される。
【0098】
メタセシス反応時間は、多数の因子、例えば使用されるNBRのタイプ、触媒のタイプ、触媒濃度及びコオレフィン濃度並びに反応温度に依存する。クロスメタセシスの進行は、標準的な分析方法により、例えばGPC測定又は粘度の測定によりモニターすることができる。反応は、典型的には、標準条件下で約15分~6時間行われることを許容される。触媒の失活によって反応が止まるまでメタセシス反応を行うことも可能である。
【0099】
そのようなメタセシス工程後、メタセシス触媒を含有する反応混合物が取り出され、一般式(1)又は(2)を有する助触媒と接触される。典型的には、助触媒は、好ましくは、メタセシスが行われた同じ溶媒中で反応混合物に単に添加される。
【0100】
タンデム方法におけるメタセシス後の新規な水素化触媒組成物の調製のための適切な温度は、-20℃~160℃の範囲、好ましくは10℃~80℃の範囲でも選択することができる。ビニル基含有助触媒を使用するそのようなタンデム反応におけるその後の水素化反応のための水素化触媒組成物の調製のための好適な時間は、約5分~48時間の範囲である。好ましい時間は、10分~12時間の範囲である。
【0101】
ニトリルゴムのその後の水素化は、水素化反応について上に記載されたものと同じ方法で実施することができる。
【0102】
本発明の1つの大きい利点は、使用する水素化触媒組成物が極めて高活性であることであり、そのため、最終的なHNBR製品中に残存する触媒が十分に低く、触媒金属を除去又はリサイクルする工程を軽減するか又はさらに必要としないようにすることができる。しかしながら、所望の程度により、本発明の方法において使用した触媒を除去し得る。そのような除去は、例えば、欧州特許出願公開第A-2 072 532A1号明細書及び欧州特許出願公開第A-2 072 533A1号明細書に記載されているように、イオン交換樹脂を使用することによって実施することができる。水素化反応の完了後に得られた反応混合物を取り出し、窒素下で48時間、例えば100℃においてイオン交換樹脂で処理し、次いで冷メタノール中で沈殿させることができる。
【0103】
ニトリルゴム:
本発明の方法において使用されるニトリルゴムは、少なくとも1つのα,β-不飽和ニトリル、少なくとも1つの共役ジエン及び必要に応じて1つ又は複数のさらなる共重合性モノマーのコポリマー又はターポリマーである。
【0104】
共役ジエンは、いかなる性質のものでもあり得る。(C~C)共役ジエンを使用することが好ましい。1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチルブタジエン、ピペリレン又はそれらの混合物が特に好ましい。1,3-ブタジエン及びイソプレン又はそれらの混合物が非常に特に好ましい。1,3-ブタジエンがとりわけ好ましい。
【0105】
α,β-不飽和ニトリルとしては、公知のα,β-不飽和ニトリル、好ましくは(C~C)α,β-不飽和ニトリル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル又はそれらの混合物などを使用することができる。特に好ましいのは、アクリロニトリルである。
【0106】
したがって、本発明の方法において使用される特に好ましいニトリルゴムは、アクリロニトリル及び1,3-ブタジエンから誘導される繰り返し単位を有するコポリマーである。
【0107】
共役ジエン及びα,β-不飽和ニトリルとは別に、水素化ニトリルゴムは、当技術分野で公知の1つ又は複数のさらなる共重合性モノマーの繰り返し単位を含み得、そのようなものとしては、例えば、α,β-不飽和(好ましくはモノ不飽和)モノカルボン酸、それらのエステル及びアミド、α,β-不飽和(好ましくはモノ不飽和)ジカルボン酸、それらのモノエステル又はジエステル、さらに前記α,β-不飽和ジカルボン酸に対応する無水物又はアミドなどが挙げられる。
【0108】
α,β-不飽和モノカルボン酸としては、アクリル酸及びメタクリル酸を使用することが好ましい。
【0109】
α,β-不飽和モノカルボン酸のエステル、特にアルキルエステル、アルコキシアルキルエステル、アリールエステル、シクロアルキルエステル、シアノアルキルエステル、ヒドロキシアルキルエステル及びフルオロアルキルエステルを使用することもできる。
【0110】
アルキルエステルとしては、好ましくはα,β-不飽和モノカルボン酸のC~C18アルキルエステル、より好ましくはアクリル酸又はメタクリル酸のC~C18アルキルエステル、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、tert.-ブチルアクリレート、2-エチル-ヘキシルアクリレート、n-ドデシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、tert.-ブチルメタクリレート及び2-エチルヘキシル-メタクリレートが使用される。
【0111】
アルコキシアルキルエステルとしては、好ましくはα,β-不飽和モノカルボン酸のC~C18アルコキシアルキルエステル、より好ましくはアクリル酸又はメタクリル酸のアルコキシアルキルエステル、例えばメトキシメチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート及びメトキシエチル(メタ)アクリレートが使用される。
【0112】
アリールエステル、好ましくはC~C14-アリールエステル、より好ましくはC~C10-アリールエステル、最も好ましくは上述のアクリレート及びメタクリレートのアリールエステルを使用することも可能である。
【0113】
また別の実施形態では、シクロアルキルエステル、好ましくはC~C12-、より好ましくはC~C12-シクロアルキル、最も好ましくは上述のシクロアルキルアクリレート及びメタクリレートが使用される。
【0114】
シアノアルキルエステル、シアノアルキル基中に2~12のC原子を有する特にアクリル酸シアノアルキル又はメタクリル酸シアノアルキル、好ましくはアクリル酸α-シアノエチル、アクリル酸β-シアノエチル又はメタクリル酸シアノブチルを使用することも可能である。
【0115】
別の実施形態では、ヒドロキシアルキルエステル、特にヒドロキシルアルキル基中に1~12のC原子を有するアクリル酸ヒドロキシアルキル及びメタクリル酸ヒドロキシアルキル、好ましくはアクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル又はアクリル酸3-ヒドロキシプロピルも使用される。
【0116】
フルオロベンジルエステル、特にアクリル酸フルオロベンジル又はメタクリル酸フルオロベンジル、好ましくはアクリル酸トリフルオロエチル及びメタクリル酸テトラフルオロプロピルを使用することも可能である。例えば、アクリル酸ジメチルアミノメチル及びアクリル酸ジエチルアミノエチルのような、置換されたアミノ基を含むアクリレート及びメタクリレートを使用し得る。
【0117】
α,β-不飽和カルボン酸の他の各種のエステルを使用することもでき、そのようなものとしては、例えば、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシメチル)アクリルアミド又はウレタン(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0118】
上述のα,β-不飽和カルボン酸のエステルのすべての混合物も使用することができる。
【0119】
さらに、α,β-不飽和ジカルボン酸、好ましくはマレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸及びメサコン酸を使用し得る。
【0120】
また別の実施形態では、α,β-不飽和ジカルボン酸の無水物、好ましくは無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸及び無水メサコン酸が使用される。
【0121】
さらなる実施形態では、α,β-不飽和ジカルボン酸のモノエステル又はジエステルを使用することもできる。好適なアルキルエステルは、例えば、C~C10-アルキル、好ましくはエチル-、n-プロピル-、iso-プロピル、n-ブチル-、tert.-ブチル、n-ペンチル-又はn-ヘキシルのモノエステル又はジエステルである。好適なアルコキシアルキルエステルは、例えば、C~C12アルコキシアルキル、好ましくはC~C-アルコキシアルキルのモノエステル又はジエステルである。好適なヒドロキシアルキルエステルは、例えば、C~C12ヒドロキシアルキル、好ましくはC~C-ヒドロキシアルキルのモノエステル又はジエステルである。好適なシクロアルキルエステルは、例えば、C~C12-シクロアルキル、好ましくはC~C12-シクロアルキルのモノエステル又はジエステルである。好適なアルキルシクロアルキルエステルは、例えば、C~C12-アルキルシクロアルキル、好ましくはC~C10-アルキルシクロアルキルのモノエステル又はジエステルである。好適なアリールエステルは、例えば、C~C14-アリール、好ましくはC~C10-アリールのモノエステル又はジエステルである。
【0122】
α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルモノマーの明白な例としては、以下のものが挙げられる:
・マレイン酸モノアルキルエステル、好ましくはマレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノプロピル及びマレイン酸モノ-n-ブチル;
・マレイン酸モノシクロアルキルエステル、好ましくはマレイン酸モノシクロペンチル、マレイン酸モノシクロヘキシル及びマレイン酸モノシクロヘプチル;
・マレイン酸モノアルキルシクロアルキルエステル、好ましくはマレイン酸モノメチルシクロペンチル及びマレイン酸モノエチルシクロヘキシル;
・マレイン酸モノアリールエステル、好ましくはマレイン酸モノフェニル;
・マレイン酸モノベンジルエステル、好ましくはマレイン酸モノベンジル;
・フマル酸モノアルキルエステル、好ましくはフマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノプロピル及びフマル酸モノ-n-ブチル;
・フマル酸モノシクロアルキルエステル、好ましくはフマル酸モノシクロペンチル、フマル酸モノシクロヘキシル及びフマル酸モノシクロヘプチル;
・フマル酸モノアルキルシクロアルキルエステル、好ましくはフマル酸モノメチルシクロペンチル及びフマル酸モノエチルシクロヘキシル;
・フマル酸モノアリールエステル、好ましくはフマル酸モノフェニル;
・フマル酸モノベンジルエステル、好ましくはフマル酸モノベンジル;
・シトラコン酸モノアルキルエステル、好ましくはシトラコン酸モノメチル、シトラコン酸モノエチル、シトラコン酸モノプロピル及びシトラコン酸モノ-n-ブチル;
・シトラコン酸モノシクロアルキルエステル、好ましくはシトラコン酸モノシクロペンチル、シトラコン酸モノシクロヘキシル及びシトラコン酸モノシクロヘプチル;
・シトラコン酸モノアルキルシクロアルキルエステル、好ましくはシトラコン酸モノメチルシクロペンチル及びシトラコン酸モノエチルシクロヘキシル;
・シトラコン酸モノアリールエステル、好ましくはシトラコン酸モノフェニル;
・シトラコン酸モノベンジルエステル、好ましくはシトラコン酸モノベンジル;
・イタコン酸モノアルキルエステル、好ましくはイタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノプロピル及びイタコン酸モノ-n-ブチル;
・イタコン酸モノシクロアルキルエステル、好ましくはイタコン酸モノシクロペンチル、イタコン酸モノシクロヘキシル及びイタコン酸モノシクロヘプチル;
・イタコン酸モノアルキルシクロアルキルエステル、好ましくはイタコン酸モノメチルシクロペンチル及びイタコン酸モノエチルシクロヘキシル;
・イタコン酸モノアリールエステル、好ましくはイタコン酸モノフェニル;
・イタコン酸モノベンジルエステル、好ましくはイタコン酸モノベンジル。
【0123】
α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステルモノマーとしては、上に明記したモノエステルモノマーをベースとした類似のジエステルを使用し得るが、しかしながら、酸素原子を介してC=O基に結合される2つの有機基は、同一であるか又は異なり得る。
【0124】
さらなるターモノマーとしては、ビニル芳香族モノマー、例えばスチロール、α-メチルスチロール及びビニルピリジン、さらに非共役ジエン、例えば4-シアノシクロヘキセン及び4-ビニルシクロヘキセン、さらにアルキン、例えば1-若しくは2-ブチンを使用し得る。
【0125】
さらなるターモノマーとして、一般式(I)
【化13】
(式中、Rは、水素又は分岐若しくは非分岐のC~C20-アルキル、好ましくはメチル、エチル、ブチル又はエチルヘキシルであり、nは、1~8、好ましくは2~8、より好ましくは2~5、最も好ましくは3であり、Rは、水素又はCH-である)
のPEGアクリレートに由来するPEGアクリレートモノマーを使用することができる。
【0126】
本発明に関連して、「(メタ)アクリレート」という用語は、「アクリレート」及び「メタクリレート」を表す。一般式(I)中のR基がCH-である場合、この分子は、メタクリレートである。「ポリエチレングリコール」という用語又は「PEG」という略語は、1つの繰り返しエチレングリコール単位を有するモノエチレングリコールセクション(PEG-1;n=1)及び2~8つの繰り返しエチレングリコール単位を有するポリエチレングリコールセクション(PEG-2~PEG-8;n=2~8)の両方を表す。「PEGアクリレート」という用語は、PEG-X-(M)A(ここで、「X」は、繰り返しエチレングリコール単位の数を表し、「MA」は、メタクリレートを表し、「A」は、アクリレートを表す)とも略記される。一般式(I)のPEGアクリレートに由来するアクリレートモノマーは、「PEGアクリレートモノマー」と言われる。
【0127】
好ましいPEGアクリレートモノマーは、以下の式番号1~番号10(ここで、nは、1、2、3、4、5、6、7又は8、好ましくは2、3、4、5、6、7又は8、より好ましくは3、4、5、6、7又は8、最も好ましくは3である)から選択される。
【0128】
【表1】
【0129】
メトキシポリエチレングリコールアクリレート(式番号3)についての他の一般に使用される名前は、例えば、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルアクリレート、アクリロイル-PEG、メトキシ-PEGアクリレート、メトキシポリ(エチレングリコール)モノアクリレート、ポリ(エチレングリコール)モノメチルエーテルモノアクリレート又はmPEGアクリレートである。
【0130】
特に好ましいのは、以下に示す式:
【化14】
(式中、
は、水素又はメチル基であり、及び
、R、R、Rは、同一であるか又は異なり、且つH、C~C12アルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルキル、エポキシアルキル、アリール、ヘテロアリールを表し得る)
から選択されるターモノマーである。
【0131】
使用されるNBRポリマー中での共役ジエンとα,β-不飽和ニトリルとの比率は、広い範囲で変化させることができる。単一の共役ジエン又は共役ジエンを合計したものの比率は、全ポリマーを基準にして、通常、40~90重量%の範囲、好ましくは60~85重量%の範囲である。単一のα,β-不飽和ニトリル又はα,β-不飽和ニトリルを合計したものの比率は、全ポリマーを基準にして、通常、10~60重量%、好ましくは15~40重量%である。いずれの場合にも、モノマーの比率を合計したものが100重量%となる。追加のモノマーは、全ポリマーを基準にして0~40重量%、好ましくは0.1~40重量%、特に好ましくは1~30重量%の量で存在し得る。この場合、単一若しくは複数の共役ジエン及び/又は単一若しくは複数のα,β-不飽和ニトリルの相当する比率を追加のモノマーの比率で置き換え、それぞれの場合において全部のモノマーの比率を合計して100重量%とする。
【0132】
上述のモノマーの重合によるニトリルゴムの調製は、当業者に十分に公知であり、文献に包括的に記載されている。本発明の目的のために使用することができるニトリルゴムは、例えば、ARLANXEO Deutschland GmbHのPerbunan(登録商標)及びKrynac(登録商標)銘柄の製品範囲からの製品としても市販されている。
【0133】
水素化されるニトリルゴムは、1~75、好ましくは5~50の範囲の、ASTM標準D 1646に従って測定されるムーニー粘度(ML1+4@100℃)を有する。重量平均分子量Mwは、範囲2,000~500,000g/mol、好ましくは範囲20,000~400,000g/molである。ニトリルゴムは、範囲1~5の多分散性PDI=Mw/Mn(ここで、Mwは、重量平均分子量であり、Mnは、数平均分子量である)を有する。
【0134】
本発明による水素化触媒組成物を調製するために使用されるルテニウム又はオスミウムベースの触媒のメタセシス活性は、本発明の水素化触媒組成物に存在しないため、水素化後に得られた水素化ニトリルゴムの分子量は、元のNBR供給原料に匹敵し、水素化中にさらに低下しない。
【0135】
そのため、範囲2,000~500,000g/mol、好ましくは範囲20,000~400,000g/molの重量平均分子量の水素化ニトリルゴムが得られる。水素化ニトリルゴムの、ASTM標準D 1646に従って測定されるムーニー粘度(ML1+4@100℃)は、1~150、好ましくは10~100の範囲である。多分散性PDI=Mw/Mn(ここで、Mwは、重量平均分子量であり、Mnは、数平均分子量である)は、範囲1~5、好ましくは範囲1.5~4である。
【0136】
本発明の目的のために、水素化は、少なくとも50%、好ましくは70~100%、より好ましくは80~100%;さらにより好ましくは90~100%の程度までの、出発ニトリルゴム中に存在する二重結合の反応である。
【0137】
タンデム方法において、ニトリルゴムは、まず、コオレフィンの不在下又は存在下で少なくとも1つのルテニウム又はオスミウムベースの触媒を使用して分解される。一般式(1)のビニル化合物は、メタセシス反応が止まったか若しくは完了したときに添加されるか、又はある一定の程度でメタセシスを停止させるために以前に添加されるかのいずれかである。その後、水素ガスを導入することによって水素化を実施して水素化ニトリルゴムを得ることができる。一連のメタセシス、水素化触媒組成物形成及び水素化において、メタセシス度は、完全に制御することができ、最終水素化ニトリルゴムの分子量は、必要に応じて調節できる。タンデム方法においてメタセシスにかけられるニトリルゴムは、典型的には、30~75、好ましくは30~50の範囲の、ASTM標準D 1646に従って測定されるムーニー粘度(ML1+4@100℃)を有することができる。重量平均分子量は、範囲150,000~500,000g/mol、好ましくは範囲180,000~400,000g/molである。これらのニトリルゴムは、範囲2~6の多分散性PDI=Mw/Mn(ここで、Mwは、重量平均分子量であり、Mnは、数平均分子量である)を有する。
【0138】
以下の実施例により、本発明をさらに説明するが、本発明は、それらによって限定されることを意図されておらず、実施例におけるすべての部及びパーセントは、特に断らない限り、重量基準である。
【実施例
【0139】
実施例において使用される触媒:
触媒(1)~(3)は、Umicore AG&Co.KGから購入した。
【0140】
触媒(1)「M41」:[1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン]-[2-[[(4-メチルフェニル)イミノ]メチル]-4-ニトロ-フェノールイル]クロロ-[3-フェニル-インデニリデン]ルテニウム(II);分子量:888.46g/mol
【化15】
【0141】
触媒(2)「M42」:[1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン]-[2-[[(2-メチルフェニル)イミノ]メチル]フェノールイル]-[3-フェニル-1H-インデン-1-イリデン](クロロ)ルテニウム(II);分子量:843.47g/mol
【化16】
【0142】
触媒(3):「ウィルキンソン(Wilkinson)触媒」:ロジウム(I)トリス(トリフェニルホスフィン)クロリド;分子量:925.22g/mol
【化17】
【0143】
実施例において使用されるニトリルブタジエンゴム:
実施例において使用されるニトリルブタジエンゴムは、表1に概要を示される特性を有する。
【0144】
【表2】
【0145】
エチルビニルエーテル(EVE)は、Sigma-Aldrichから購入した。
【0146】
分析試験:
GPC試験:見かけの分子量M及びMは、Waters 1515高性能液体クロマトグラフィーポンプ、Waters 717plus オートサンプラー、PLゲル10μm混合Bカラム及びWaters 2414RI検出器を備えたWaters GPCシステムによって求めた。GPC試験は、40℃において、溶出液として流速1mL/分のTHFを用いて実施し、GPCカラムは、狭い分子量分布の標準PSを用いて較正した。
【0147】
FT-IR試験:水素化反応前、その間及びその後のニトリルゴムのスペクトルをPerkin Elmer spectrum 100 FT-IR分光計に記録した。ニトリルブタジエンゴムのMCB中溶液をKBrディスクの上にキャストして、乾燥させ、試験のための膜を形成させた。水素化変換は、ASTM D5670-95法に従ってFT-IR分析により求めた。
【0148】
略語:
phr:100ゴム当たり(重量)
rpm:1分当たりの回転
Mn:数平均分子量
Mw:重量平均分子量
PDI:Mw/Mnと定義される多分散指数
PPh:トリフェニルホスフィン
MCB:モノクロロベンゼン
EVE:エチルビニルエーテル
RT:室温(22±2℃)
【0149】
実施例1:(EVE前処理なしの触媒(1)を使用する比較例)
触媒(1)(10.8mg)をフラスコ中で15mLの脱ガスMCBに溶解させた。247.5gのMCB中の36gのPerbunan(登録商標)3431 Fの溶液(15重量%のPerbunan(登録商標)3431 F濃度)に30分間600mLのParrオートクレーブ中で窒素をバブリングさせ、次いで138℃に加熱した。フラスコ中の触媒溶液を注射器によって反応器中に移した。水素化を8.27MPaの水素圧力及び800rpmの撹拌速度下で行った。サンプルを、FT-IR分析のために間隔を置いて反応器から採取して水素化度を測定した。5時間の水素化後、水素化度は、85.0%に達した。最終分子量及びPDIは、Mn=59,471g/mol、Mw=178,552g/mol、PDI=3であった。
【0150】
実施例2:(発明実施例;助触媒としてのEVEと共に触媒(1)を使用する)
触媒(1)(10.8mg)をフラスコ中で15gの脱ガスMCBに溶解させた。エチルビニルエーテル(0.375mL)をフラスコ中に注入し、溶液を20℃で12時間撹拌した。247.5gのMCB中の36gのPerbunan(登録商標)3431 Fの溶液(15重量%のPerbunan(登録商標)3431 F濃度)に30分間600mLのParrオートクレーブ中で窒素をバブリングさせ、次いで138℃に加熱した。フラスコ中の触媒溶液を注射器によって反応器中に移した。水素化を8.27MPaの水素圧力及び800rpmの撹拌速度下で行った。サンプルを、FT-IR分析のために間隔を置いて反応器から採取して水素化度を測定した。5時間の水素化後、水素化度は、98.1%に達した。最終分子量及びPDIは、Mn=64,283g/mol、Mw=186,381g/mol、PDI=2.9であった。
【0151】
実施例3:(発明実施例;助触媒としてのEVEと共に触媒(2)を使用する)
触媒(2)(10.8mg)をフラスコ中で15gの脱ガスMCBに溶解させた。エチルビニルエーテル(0.375mL)をフラスコ中に注入し、溶液を12時間撹拌した。247.5gのMCB中の36gのPerbunan(登録商標)3431 Fの溶液(15重量%のPerbunan(登録商標)3431 F濃度)に30分間600mLのParrオートクレーブ中で窒素をバブリングさせ、次いで138℃に加熱した。フラスコ中の触媒溶液を注射器によって反応器中に移した。水素化を8.27MPaの水素圧力及び800rpmの撹拌速度下で行った。サンプルを、FT-IR分析のために間隔を置いて反応器から採取して水素化度を測定した。3時間の水素化後、水素化度は、98.9%に達した。最終分子量及びPDIは、Mn=57,556g/mol、Mw=170,413g/mol、PDI=2.95であった。
【0152】
実施例4:(本発明;メタセシス後、水素化反応前に助触媒としてのEVEを添加された触媒(1)を使用する)
触媒(1)(10.8mg)をフラスコ中で15mLの脱ガスMCBに溶解させた。247.5gのMCB中の36gのPerbunan(登録商標)3431 Fの溶液(15重量%のPerbunan(登録商標)3431 F濃度)に30分間600mLのParrオートクレーブ中で窒素をバブリングさせ、フラスコ中の触媒溶液を注射器によって反応器中に移した。30分後、EVE(0.375mL)を注入し、溶液を0.5時間撹拌した。その後、反応器を138℃に加熱した。水素化を8.27MPaの水素圧力及び800rpmの撹拌速度下で行った。サンプルを、FT-IR分析のために間隔を置いて反応器から採取して水素化度を測定した。5時間の水素化後、水素化度は、96.6%に達した。最終分子量及びPDIは、Mn=63,095g/mol、Mw=161,141g/mol、PDI=2.76であった。
【0153】
実施例5:(比較例;触媒(3)を使用する)
247.5gのMCB中の36gのPerbunan(登録商標)3431 Fの溶液(15重量%のPerbunan(登録商標)3431 F濃度)に30分間600mLのParrオートクレーブ中で窒素をバブリングさせ、次いで138℃に加熱した。ウィルキンソン触媒(21.6mg)及びPPh(0.36g)を別の15gの脱ガスMCBに溶解させ、次いで反応器中に添加した。水素化を8.27MPaの水素圧力及び800rpmの撹拌速度下で行った。サンプルを、FT-IR分析のために間隔を置いて反応器から採取して水素化度を測定した。5時間の水素化後、水素化度は96.6%に達し、反応器を室温に冷却し、圧力を解いた。
【0154】
【表3】
【0155】
発明実施例2及び3は、助触媒EVEでの前処理後の水素化度が、助触媒EVEでの前処理なしの比較例1と比べてより高いことを示す。HNBRの分子量及びPDIは、匹敵する範囲内にある。
【0156】
発明実施例4は、まず、低下した分子量及び低下したPDIをもたらす、前処理なしの触媒(1)で処理した。反応をEVEの添加によって停止させ、次いでNBRを比較例1よりも高い程度で水素化した。
【0157】
比較例5は、比較のためのメタセシス活性なしの周知の水素化触媒を使用する水素化を示す。本発明実施例2、3及び4は、すべてこの標準ウィルキンソン水素化触媒よりも5時間後に高い水素化度を示す。
図1