(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】テイルシッター
(51)【国際特許分類】
B64C 29/02 20060101AFI20240209BHJP
B64D 27/40 20240101ALI20240209BHJP
B64C 1/26 20060101ALI20240209BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20240209BHJP
B64C 11/30 20060101ALI20240209BHJP
【FI】
B64C29/02
B64D27/26
B64C1/26
B64C39/02
B64C11/30 A
(21)【出願番号】P 2020572754
(86)(22)【出願日】2019-06-28
(86)【国際出願番号】 IB2019055517
(87)【国際公開番号】W WO2020003240
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-06-01
(32)【優先日】2018-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518160436
【氏名又は名称】レオナルド・エッセ・ピ・ア
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】リッカルド・ビアンコ・メンゴッティ
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/005954(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0044011(US,A1)
【文献】米国特許第3350035(US,A)
【文献】欧州特許出願公開第3243750(EP,A1)
【文献】欧州特許出願公開第3263445(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0042510(US,A1)
【文献】中国実用新案第206327567(CN,U)
【文献】国際公開第2018/152258(WO,A1)
【文献】Vikram Hrishikeshavan and Inderjit Chopra,“High-Speed Quad-Rotor Biplane Micro Air Vehicle for Multiple-Role Missions”,Proceedings of the 4th Asian-Australian Rotorcraft Forum,IN,2015年11月
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64U 10/00-101/75,
B64C 1/26, 11/30,27/00-39/12,
B64D 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テイルシッター航空機(1')であって、
使用時に前記テイルシッター航空機(1')の離着陸位置において垂直に配置される機体(2)と、
単一の翼(4)と、
使用時に、前記テイルシッター航空機(1')に対してそれぞれの第1の軸(A)に沿った方向のそれぞれの第1の推力(S1、S5、S3; S2、S5、S4)を加えるように構成された2つの第1のエンジン(15a、15b)と、
巡航位置に対して前記第1のエンジン(15a、15b)の前記第1の軸(A)よりも上方に配置されたそれぞれの第2の軸(A)の周りを回転する2つの第2のエンジン(15c、15d)であって、使用時に、前記テイルシッター航空機(1')に対してそれぞれの第2の軸(A)に沿った方向のそれぞれの第2の推力(S2、S6、S3; S1、S6、S4)を加えるように構成された2つの第2のエンジン(15c、15d)とを備え、
前記第1および第2のエンジン(15a、15b; 15c、15d)が、前記単一の翼(4)によって保持され、
前記単一の翼(4)が、相互にずらされた第1の部分(5)と第2の部分(6)とを備え、
前記第2の部分(6)が、使用時に、前記テイルシッター航空機(1')の前記巡航位置に対して前記第1の部分(5)よりも上方に配置され、
前記第1の部分(5)が、前記機体(2)の向かい合う側面から延びる2つの半翼(5)を備え、
前記機体(2)が、使用時に、前記テイルシッター航空機(1')の巡航位置において垂直方向に対して横向きに配置され、
前記翼(4)が、使用時に、前記テイルシッター航空機(1')の前記巡航位置に対して前記第1の部分(5)よりも下方に配置される第3の部分(30)をさらに備えるテイルシッター航空機において、
前記単一の翼(4)は、
前記第1の部分(5)と前記第2の部分(6)のそれぞれの端部(8、9)間に介在する第1および第2の接続部(7)を備え、
前記第1の部分(5)と前記第2の部分(6)と前記第3の部分(30)とは互いに平行であり、かつ、前記第1および第2の接続部(7)は、前記第1の部分(5)、前記第2の部分(6)および前記第3の部分(30)と直交することを特徴とするテイルシッター航空機。
【請求項2】
前記翼(4)は、環状前部(C)を有し、
前記翼(4)は、自由端を有さない非平面翼であることを特徴とする、請求項1に記載のテイルシッター航空機。
【請求項3】
前記第3の部分(30)と前記第1の部分(5)は、それぞれの端部(32、8)において、互いに平行に配置された2つの第1の部材(31)によって接続されることを特徴とする、請求項2に記載のテイルシッター航空機。
【請求項4】
前記第3の部分(30)の中央は、前記第2の部分(6)および前記第3の部分(30)の一方の延長方向に実質的に平行な第4の軸(X)に沿って前記第1の部材(31)同士の間に位置する第2の部材(33)によって、前記機体(2)に接続され、前記第1および第2の部材(31、33)は、前記第4の軸(X)に直交する第5の軸(Z)に平行に延びることを特徴とする、請求項3に記載のテイルシッター航空機。
【請求項5】
前記テイルシッター航空機はドローンであること、または、前記機体(2)は、乗組員を収容するように構成されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のテイルシッター航空機。
【請求項6】
前記第1のエンジン(15a、15b)の各々は、相対的な前記第1の軸(A)の周りを回転する相対的なハブ(16)と、前記ハブ(16)からカンチレバー式に延び、それぞれのピッチ角を有する複数のブレード(17)とを備え、
前記第2のエンジン(15c、15d)の各々は、相対的な前記第2の軸(A)の周りを回転する相対的なハブ(16)と、前記ハブ(16)からカンチレバー式に延び、それぞれのピッチ角を有する複数のブレード(17)とを備え、
前記テイルシッター航空機(1')は、各々の第1および第2のエンジン(15a、15b; 15c、15d)の前記ハブ(16)の角速度および前記ブレード(17)の前記ピッチ角を、残りの前記第1および第2のエンジン(15a、15b; 15c、15d)の前記ブレード(17)のピッチ角および前記ハブ(16)の回転速度とは無関係に調整するようにプログラムされた制御ユニット(19)をさらに備え、前記第1および第2のエンジン(15a、15b; 15c、15d)のすべての、前記ブレード(17)のサイクリックピッチは一定であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のテイルシッター航空機。
【請求項7】
テイルシッター航空機(1')であって、
使用時に前記テイルシッター航空機(1')の離着陸位置において垂直に配置される機体(2)と、
単一の翼(4)と、
使用時に、前記テイルシッター航空機(1')に対してそれぞれの第1の軸(A)に沿った方向のそれぞれの第1の推力(S1、S5、S3; S2、S5、S4)を加えるように構成された少なくとも2つの第1のエンジン(15a、15b)と、
巡航位置に対して前記第1のエンジン(15a、15b)の前記第1の軸(A)よりも上方に配置されたそれぞれの第2の軸(A)の周りを回転する少なくとも2つのエンジン(15c、15d)であって、使用時に、前記テイルシッター航空機(1')に対してそれぞれの第2の軸(A)に沿った方向のそれぞれの第2の推力(S2、S6、S3; S1、S6、S4)を加えるように構成された少なくとも2つの第2のエンジン(15c、15d)とを備え、
前記第1および第2のエンジン(15a、15b; 15c、15d)が、前記単一の翼(4)によって保持され、
前記単一の翼(4)が、相互にずらされた第1の部分(5)と第2の部分(6)とを備え、
前記第2の部分(6)が、使用時に、前記テイルシッター航空機(1')の前記巡航位置に対して前記第1の部分(5)よりも上方に配置され、
前記第1の部分(5)が、前記機体(2)の向かい合う側面から延びる2つの半翼(5)を備え、
前記機体(2)が、使用時に、前記テイルシッター航空機(1')の巡航位置において垂直方向に対して横向きに配置され、
前記翼(4)が、使用時に、前記テイルシッター航空機(1')の前記巡航位置に対して前記第1の部分(5)よりも下方に配置される第3の部分(30)をさらに備えるテイルシッター航空機において、
前記第1の部分(5)と前記第2の部分(6)と前記第3の部分(30)とは互いに平行であり、
前記翼(4)は、環状前部(C)を有し、
前記翼(4)は、自由端を有さない非平面翼であることを特徴とするテイルシッター航空機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、開示全体が参照により本明細書に組み込まれている、2018年6月28日に出願された欧州特許出願第18180590.4号からの優先権を主張する。
【0002】
本発明は、テイルシッターに関する。
【背景技術】
【0003】
20世紀半ば以来、航空産業では、垂直離着陸が可能であり、中/長距離路線を迅速にカバーできるほど高い巡航速度を有する航空機が必要であることが認識されている。
【0004】
この必要性の部分的な解決手段は、ヘリコプターおよび転換式航空機によって構成されるが、これらに欠点がないわけではない。
【0005】
ヘリコプターは実際には最高速度が約350km/hである。転換式航空機は、ヘリコプター構成と航空機構成との間の回転翼によってナセルを回転させる必要があり、それによって構成の観点から特に複雑である。
【0006】
この必要性を満たすために提案されたさらなる解決手段は、VTOL(垂直離着陸)航空機によって構成される。これらは、機体水平部分と、推力を離着陸時に垂直方向に向け、または、水平並進飛行時には水平方向に向けることができるエンジンとを含む離着陸構成を有する。
【0007】
VTOL航空機が広く使用されておりかつ効率が良いにもかかわらず、VTOL航空機の組立て構成は特に複雑である。このことは、航空機の離陸/着陸/飛行条件に応じてエンジンの推力の方向を選択的に定める必要があることに起因する。
【0008】
前述の必要性を満たすために提案されたさらなる解決手段は、20世紀の40年代と60年代の間に開発されており、テイルシッターによって構成される。
【0009】
このような航空機は基本的に、機体と、一対の半翼と、通常機体によって保持される1つまたは複数の駆動部材と、航空機を制御するために可動表面を備える尾翼とを備える。
【0010】
テイルシッターの飛行プロファイルでは、垂直に配置された航空機の機体による離陸と、航空機が巡航位置をとるために90度回転する第1の遷移局面と、航空機が着陸を行うために機体が垂直に配置される状態に戻る第2の遷移局面とが考えられる。
【0011】
離陸および着陸局面の間、テイルシッターは、一般に航空機の尾翼によって保持される着陸部材によって地面上に位置する。
【0012】
その後、モータの推力が、離着陸条件ではテイルシッターの重量に対抗し、飛行条件では空気の空力抵抗に対抗する。
【0013】
これらの解決手段のプロトタイプは、ロッキードXFV-1航空機、コンベアXFY-1ポゴ航空機、およびリアンX-13ベルティジェット航空機によって代表される。
【0014】
特許文献1~6に公知のテイルシッター解決手段が記載されている。
【0015】
テイルシッターは、航空機と実質的に同様の構成を有するので特に有利であり、したがって、転換式航空機およびVTOL航空機と比較して特に単純に作製される。
【0016】
さらに、ヘリコプターとは異なり、テイルシッターは、最高巡航速度に関して特定の限界を有さず、従来の航空機と同等である。
【0017】
それにもかかわらず、テイルシッターの垂直離着陸位置は、特にテイルシッターの重量があるしきい値を超えるときには半翼の形状に幾何学的な制約および動作面の制約を課す。たとえば、離着陸局面の間の突風に対する感度を最低限に抑えるように風にさらされる半翼の表面を最小限に抑える必要がある。
【0018】
したがって、巡航位置におけるテイルシッターの性能は、このような半翼の構成の影響を受ける。
【0019】
このため、テイルシッターを効果的に使用することは実質的に妨げられている。すなわち、前述のプロトタイプのほとんどは、実際に航空機として利用されることはなかった。したがって、テイルシッターの使用は過去50年にわたって実質的に断念され、主としてVTOL航空機が使用された。
【0020】
巡航条件におけるテイルシッターの空力効率を高めるために特許文献4に記載された航空機が提案されている。この航空機は基本的に、
- 機体と、
- 機体よりも上方に配置された一対の第1のエンジンと、
- 機体よりも下方に配置された一対の第2のエンジンとを備える。
【0021】
特許文献4に記載された航空機の第1の実施形態では、航空機は、機体の相互に向かい合う側面から突き出る一対の平坦な半翼を備える。
【0022】
この第1の実施形態では、第1のエンジンは、半翼よりも上方においてカンチレバー式に突き出るそれぞれの第1の支持構造を介して半翼のそれぞれの上面に固定され、第2のエンジンは、半翼よりも下方においてカンチレバー式に突き出るそれぞれの第2の支持構造を介して半翼のそれぞれの下面に固定される。
【0023】
より詳細には、半翼は、有限長を有し、平坦である。第1および第2のエンジンの軸は、外形半翼に対してずらされ、それぞれこの形状よりも上方および下方に配置される。
【0024】
第2の実施形態では、特許文献4に記載された航空機は、
- 下反角であって、機体のそれぞれの相互に向かい合う側面からカンチレバー式に突き出る第1の半翼と、
- 上反角であって、第1の半翼よりも短く、機体のそれぞれの相互に向かい合う側面からカンチレバー式に突き出る第2の半翼とを備える。
【0025】
第1のエンジンは、機体の下方に配置され、それぞれの第3の支持構造を介してそれぞれの第1の半翼の下面に固定される。
【0026】
第2のエンジンは、第2の半翼の自由端の所に配置される。
【0027】
より具体的には、第1および第2の半翼は、有限長を有し、平坦である。第1および第2のエンジンの軸は、それぞれの第1の半翼の形状に対してずらされ、それぞれこの形状よりも上方および下方に配置される。
【0028】
第1および第2のエンジンの軸が半翼に対してずらされるので、特許文献4に記載された航空機はRBW(ロータブローンウイング)構成を実現し、この場合、第1および第2のエンジンによって生成される空気流が半翼にぶつかる。
【0029】
この構成は、空気流を半翼の方へそらすことによって半翼の揚力を高めるのを可能にし、半翼の胴部に対する過圧を生成し、半翼の頂面を減圧し、したがって、半翼によって生じる揚力を増大させる。
【0030】
支持構造が存在し、かつ第2の実施形態のみを参照すると、機体からカンチレバー式に突き出る第1および第2の半翼が存在するので、特許文献4に記載された航空機の構成は組立てが特に複雑である。
【0031】
航空産業では、巡航条件での性能を向上させるように空力効率の高い翼構造を備え、同時に最も単純な可能な構成を有するテイルシッターを有する必要があることが認識されている。
【0032】
特許文献7は、請求項1のプリアンブルによるテイルシッターを開示している。
【0033】
特許文献8は、効率的な垂直離着陸機能を実現する翼板アセンブリを含むUAVを開示している。
【0034】
特許文献9は、無人航空機であって、本体と、本体の両側に固定された固定翼と、それぞれの回転翼支持部材によって固定翼の両側に接続された複数の回転翼と、航空機の飛行データを収集するための空中センサーシステムと、飛行データに基づいて固定翼および/または回転翼の状態ならびに航空機のさらなる飛行状態を調整するために空中センサーシステムに結合された飛行制御システムとを備える無人航空機を開示している。
【0035】
特許文献10は、積荷を輸送するための超軽量航空機であって、四角形の機体と、機体上に配置された複数の個々に制御可能な回転翼と、ボックス型翼とを備える航空機を開示している。
【0036】
特許文献11は、高速多重回転翼垂直離着陸航空機を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0037】
【文献】米国特許第1,665,114号明細書
【文献】米国特許出願公開第2017/0297699号明細書
【文献】中国特許出願公開第106938701号明細書
【文献】米国特許出願公開第2017/0166305号明細書
【文献】国際公開第2016/209350号パンフレット
【文献】米国特許第5,114,096号明細書
【文献】欧州特許出願公開第3263445号明細書
【文献】米国特許出願公開第2017/0158327号明細書
【文献】独国実用新案出願第202017104421号明細書
【文献】独国特許出願公開第102011012503号明細書
【文献】米国特許出願公開第2016/0144957号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0038】
本発明の目的は、前述の必要性を簡単にかつ安価に満たすのを可能にするテイルシッターを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0039】
前述の目的は、請求項1で請求される本発明によって実現される。
【0040】
本発明をよりよく理解するために、以下に、参考例及び好ましい一実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】離着陸位置における、例示的な目的のみのために図示されたテイルシッターの
参考例の斜視図である。
【
図2】巡航位置における、
図1のテイルシッターの斜視図である。
【
図3】離着陸位置における、第1の操作の実行時における
図1および
図2のテイルシッターの斜視図である。
【
図4】巡航位置における、第1の操作の実行時における
図1および
図2のテイルシッターの斜視図である。
【
図5】離着陸位置における、第2の操作の実行時における
図1および
図2のテイルシッターの斜視図である。
【
図6】巡航位置における、第2の操作の実行時における
図1および
図2のテイルシッターの斜視図である。
【
図7】離着陸位置における、第3の操作の実行時における
図1および
図2のテイルシッターの斜視図である。
【
図8】巡航位置における、第3の操作の実行時における
図1および
図2のテイルシッターの斜視図である。
【
図9】本発明の教示によって作られたテイルシッターの一実施形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1および
図2を参照すると、参照符号1は、例示的な目的のみのために図示されたテイルシッターを示す。航空機1は機体2を備える。
【0043】
航空機1の重心に原点を有し、
- 機体2の延長方向に平行な軸Y
- Y軸に直交する軸X、および
- X-Y軸に直交する軸Zによって形成される、航空機1と一体の3つの軸の組を識別することが可能である。
【0044】
航空機1は、公知の方法で(
図2に示す)巡航位置をとることができる。この巡航位置では、Y軸は垂直方向に対して傾斜している。特に、一定高度前進飛行の場合、Y軸は水平に配置される。
【0045】
「巡航位置」という表現は、この説明では、少なくとも水平飛行成分を有する速度で航空機1が進行する飛行構成を示すために使用される。
【0046】
航空機1のこの巡航位置では、X-Y-Z軸の周りの航空機1の回転は、以下の操作に関連付けられる。
- ロール、すなわち、Y軸の周りの回転(
図6)、
- ピッチ、すなわち、X軸の周りの回転(
図4)、
- ヨー、すなわち、Z軸の周りの回転(
図8)。
【0047】
航空機1は、
図1に示す離着陸位置をとることもでき、この場合、Y軸は垂直に配置される。
【0048】
この離着陸位置では、X-Y-Z軸の周りの航空機1の回転は、以下の操作に関連付けられる。
- ロール、すなわち、Z軸の周りの回転(
図5)、
- ピッチ、すなわち、X軸の周りの回転(
図3)、および
- ヨー、すなわち、Y軸の周りの回転(
図7)。
【0049】
航空機1の飛行プロファイルは、離陸位置から巡航位置までの第1の遷移、巡航位置の維持、および巡航位置から着陸位置までの第2の遷移を実現する。
【0050】
航空機1は、機体2から延びる閉鎖された前部Cを有する翼4を備える。
【0051】
この説明では、「閉鎖された前部を有する翼」という用語は、翼自体が閉鎖され自由端を有さない非平面翼を意味する。
【0052】
閉鎖された前部Cは、Y軸に直交する平面上に翼4が突出することによって画定される。
【0053】
詳細には、翼4は基本的に、
- 機体2のそれぞれの相互に向かい合う側面からカンチレバー式に突き出る一対の半翼5と、
- 航空機1の一定高度飛行位置において半翼5よりも上方に配置される部分6と、
- 各接続部が、半翼5のそれぞれの自由端8と部分6のそれぞれの自由端9の間を延びる一対の接続部7とを備える。
【0054】
図示の場合、部分6と半翼5は互いに平行である。
【0055】
半翼5と部分6は主としてX軸に沿った延長方向を有する。
【0056】
図示の例では、X軸に沿った半翼5の全長はX軸に沿った部分6の長さに等しい。
【0057】
図示の例では、半翼5と部分6はまた直線であり、一定の翼弦、ゼロ後退翼、およびゼロ上反角を有する。
【0058】
部分7同士は、互いに平行であり、X-Y軸に直交するZ軸に沿って延びる。
【0059】
航空機1はまた、機体2と部分6の中心部18との間を延びるさらなる接続部14を備える。
【0060】
具体的には、部分14は、部分7に平行な方向Zに沿って、部分7間の中央を延びている。
【0061】
図示の場合、航空機1の巡航位置を参照すると、部分6は半翼5よりも上方に配置される。
【0062】
機体2はまた、機体2のテイル12上に配置された一対の着陸部材11を備える。
【0063】
翼4はまた、
- 翼4によって保持される複数、図示の場合は4つのエンジン15a、15b、15c、および15dと、
- 航空機1が離着陸位置にあるときに地面上に位置する複数の着陸部材20とを支持する。
【0064】
各エンジン15a、15b、15c、および15dは、具体的には、
- Y軸に平行なそれぞれの軸Aの周りを回転し、図示していない駆動部材によって回転駆動されるハブ16(
図1および
図2にのみ示されている)と、
- それぞれの軸Bに沿ってハブ16からカンチレバー式に突き出る複数のブレード17とを備える。
【0065】
具体的には、ブレード17は、それぞれの軸Aの周りをハブ16と一体的に回転する。
【0066】
エンジン15a、15b、15c、および15dのハブ16は、それぞれの軸Aの周りを互いに異なる回転方向に回転する。
【0067】
エンジン15a、15b、15c、および15dのハブ16の軸Aは、翼4の前部Cに入射する。
【0068】
言い換えれば、軸Aは、翼4の前部Cに沿って配置される。
【0069】
エンジン15aおよび15bのハブ16の軸Aは、それぞれの半翼5上の前部Cに入射する。
【0070】
エンジン15cおよび15dのハブ16の軸Aは、翼4の部分6上の前部Cに入射する。
【0071】
より具体的には、エンジン15a、15b、15c、および15dのハブ16の軸Aは、半翼5と部分7との間、および部分7と部分6との間の隅角部上に配置される。
【0072】
具体的には、エンジン15aおよび15bのハブ16の軸Aは、半翼5と部分7との間の隅角部上、すなわち、それぞれの半翼5の端部8上に配置される。
【0073】
エンジン15cおよび15dのハブ16の軸Aは、部分7と部分6との間の隅角部上、すなわち、部分6の端部9上に配置される。
【0074】
エンジン15aおよび15cならびにエンジン15bおよび15dは、Y-Z軸に平行でX軸に直交する機体2の中心面に対してそれぞれの相互に向かい合う側面上に配置される。
【0075】
航空機1の巡航状態(
図1)に対して、エンジン15cは、エンジン15aよりも上方に配置され、エンジン15dは、エンジン15bよりも上方に配置される。
【0076】
具体的には、エンジン15aおよび15dは、第1の回転方向、たとえば時計回り(反時計回り)に回転することができる。エンジン15bおよび15cは、第2の回転方向、たとえば反時計回り(時計回り)に回転することができる。
【0077】
図示の例では、航空機1は、エンジン15a、15b、15c、および15dのそれぞれの回転軸Aの周りの角速度および空気流に対するブレード17のコレクティブピッチ角度を互いに独立に制御するようにプログラムされた制御ユニット19(
図1、
図3、
図5、および
図7には概略的にのみ示されている)を備える。
【0078】
このようにして、制御ユニット19は、それぞれのエンジン15a、15b、15c、および15dによって互いに独立に生成される推力を制御するようにプログラムされる。
【0079】
ブレード17は、側面上の翼4から機体2の機首10の方へカンチレバー式に突き出る。
【0080】
各エンジン15a、15b、15c、および15dのブレード17のサイクリックピッチは一定である。
【0081】
着陸部材20は、半翼5と部分7との間および部分7と部分6との間の隅角部上に配置される。
【0082】
着陸部材20は、側面上の翼4から機体2のテイル12の方へ突き出る。
【0083】
図示の場合、4つの着陸部材20がある。
【0084】
航空機1は、尾翼または翼4以外のさらなる可動翼構造を有さない。
【0085】
言い換えれば、航空機1のロール、ピッチ、およびヨー運動は、エンジン15a、15b、15c、および15dの推力および補助翼21の動作を調整することによって排他的に制御される。
【0086】
航空機1は、機体2上に適切な機器を備えるドローンとすることができる。
【0087】
代替として、機体2は乗組員を収容することができる。
【0088】
図示していないさらなる実施形態では、航空機1は、機体を備えなくてもよく、翼4と、必要に応じて翼4上に配置されたセンサー、たとえばアンテナのみによって形成されてもよい。
【0089】
航空機1の動作は、この説明では、離陸状態(
図1)から始まり、この場合、機体2のY軸が垂直に配置され、着陸部材11および20が航空機1を地面上に支持している。
【0090】
エンジン15a、15b、15c、および15dを動作させると、航空機1が離昇する。この局面では、エンジン15a、15b、15c、および15dは航空機1の重量の作用に対抗し打ち勝ち、地面からの離昇を可能にする。
【0091】
次いで、航空機1は、第1の遷移を実施し、その終了時に、機体2のY軸が垂直方向に対して傾斜し、一定高度飛行の場合は実質的に水平である巡航位置を達成する。
【0092】
この局面では、エンジン15a、15b、15c、および15dは、空気抵抗に対抗し、翼4は、航空機1を飛行状態に維持するのに必要な揚力を発生させる。
【0093】
その後、航空機1は第2の遷移を実施し、その終了時に、離陸位置と全体的に同様の着陸位置を達成する。この着陸位置では、機体2のY軸が垂直方向に平行であり、エンジン15a、15b、15c、および15dは、航空機1の重量の作用に対抗し、地面に徐々に接近するのを可能にする。
【0094】
航空機1の高度は、着陸部材20が地上に位置し、それによって着陸操作が完了するまで徐々に下がる。
【0095】
前述の飛行局面の間、航空機1は以下のように制御される。
【0096】
Y軸の周りの傾斜は、航空機1に作用するY軸に平行なトルクが得られるようにエンジン15aおよび15dに対する第1の推力値S1およびエンジン15bおよび15cに対する、S1とは異なる第2の推力値S2を設定することによって得られ制御される(
図6および
図7)。
【0097】
Y軸の周りの航空機1の回転は、巡航位置(
図6)におけるロール操作および離着陸位置(
図7)におけるヨー操作に相当する。
【0098】
回転翼15aおよび15dの推力S1が増大すると、エンジン15bおよび15cの推力S2が同じ値だけ弱まることに留意することが重要である。このようにして、航空機1に対する得られる全体的な推力は変化せず、一方、航空機1をY軸の周りで回転させるトルクがY軸の周りで発生する。
【0099】
さらに、Z軸の周りの傾斜は、航空機1に作用するZ軸に平行なトルクが得られるようにエンジン15aおよび15cに対する第1の推力値S3およびエンジン15bおよび15dに対する、S3とは異なる第2の推力値S4を設定することによって得られ制御される(
図5および
図8)。
【0100】
Z軸の周りの航空機1の回転は、巡航位置(
図8)におけるヨー操作および離着陸位置(
図5)におけるロール操作に相当する。
【0101】
X軸の周りの 航空機1の傾斜は、航空機1に作用するX軸に平行なトルクが得られるようにエンジン15aおよび15bに対する第1の推力値S5およびエンジン15cおよび15dに対する、S5とは異なる第2の推力値S6を設定することによって得られ制御される(
図3および
図4)。
【0102】
X軸の周りの航空機1の回転は、巡航位置(
図4)と離着陸位置(
図3)の両方におけるピッチ操作に相当する。
【0103】
図9を参照すると、参照符号1'は、本発明の一実施形態によるテイルシッターを示す。
【0104】
航空機1'は、航空機1と同様であり、以下では違いに関してのみ説明し、可能であれば、航空機1'と航空機1の同一で対応する部品は、同じ参照符号で示される。
【0105】
具体的には、航空機1'は、翼4が航空機1の巡航位置に対して半翼5よりも下方に配置されたさらなる部分30を備えるという点が航空機1とは異なる。
【0106】
部分30および半翼5は、それぞれの自由端32および8の所で部分31によって接続される。さらに、部分30の中央部分は、X軸に沿って部分31同士の間に介在する部分33によって機体2に接続される。部分31および33はZ軸に平行に延びる。
【0107】
部分30は、さらなる着陸部材20を備える。
【0108】
航空機1'の動作は航空機1の動作と同様であり、したがって、これについて詳細には説明しない。
【0109】
テイルシッター1'の特性の検査から、テイルシッター1'によって得ることのできる利点は明白である。
【0110】
具体的には、エンジン15cおよび15dは、Z軸に平行にエンジン15aおよび15bに対してずらされ、エンジン15a、15b、15c、および15dの軸Aは翼4の前部Cに入射する。
【0111】
このことは、一方では、Z軸に沿ってエンジン15aおよび15bに対してずれた位置にエンジン15cおよび15dを支持するように構成された翼4の形状の空力効率が高くなることに起因して巡航位置における航空機1'の空力効率を高めることが可能であることを意味する。
【0112】
他方では、軸Aが前部Cに入射するので、公知の解決手段に存在し、この説明の導入部で説明した支持構造およびさらなる半翼を回避することが可能である。
【0113】
このようにして、この説明の導入部で説明した公知の解決手段に対して得ることが特に簡単である航空機1'の構成によって巡航条件において高性能を実現することが可能である。
【0114】
すなわち、上述の公知の解決手段とは異なり、翼4の空力効率の向上は、翼上で追加の圧力勾配を発生させることによって空気流をそらすように翼4の前部Cからエンジンの軸をずらしても実現されない。
【0115】
これに対して、翼4の空力効率の向上は、翼4を2次元レイアウトまたは場合によっては閉鎖レイアウトを有するように形作ることによって実現される。
【0116】
さらに、航空機1'は、長手方向の安定性を確保するうえで尾翼を存在させる必要がない。実際、航空機1'は、場合によっては先尾翼表面または尾翼表面を存在させる必要がなく、半翼5および部分6の相対的な配置および翼形状によって長手方向安定性を確保することが可能になる。これによって、航空機1'の複雑さおよび重量をさらに低減させることが可能になる。
【0117】
巡航位置および離着陸位置におけるX-Y-Z軸の周りの回転の制御は、単にエンジン15a、15b、15c、および15dの推力S5、S6、S1、S2、S3、およびS4を異なる方式で制御することによって実現される。
【0118】
エンジン15a、15b、15c、および15dならびに着陸部材20は、翼4によって保持される。このことは、航空機1'が無人である場合、機体2を最小限に抑えるか、または場合によってはなくすことが可能であり、複雑さが低減した特に軽量の航空機1'が得られることを意味する。
【0119】
最後に、航空機1'が無人である場合、場合によっては、機体2を備えなくてもよい。このような状況では、航空機1'は、実質的に翼4および任意の機器、たとえば、翼4上に搭載されたアンテナまたはセンサーまたは積荷によって形成される。
【0120】
エンジン15a、15b、15c、および15dはすべて翼4によって保持される。したがって、機体2は、直接機体2上に搭載されるさらなるエンジンによって発生する振動を直接受けることはない。
【0121】
機体2が、乗組員を収容する場合、これによって乗組員の快適さを向上させることができる。逆に、機体2がセンサーまたは機器のみを収容する場合、これによって、センサーおよび機器の位置を長時間にわたってより安定させることが可能になる。
【0122】
上記に示したことの結果として、航空機1'は、テイルシッター設計解決手段を使用可能にすることができ、航空機1'の開発を妨げている多数の欠点を解消する。
【0123】
このことは、航空機1'が無人である場合にさらに有利である。すなわち、このような状況では、航空機1'は場合によっては、離着陸操作時に特に不快な乗組員位置を必要とするテイルシッターの避けられない欠点を有さない。
【0124】
最後に、添付の特許請求の範囲に定義された範囲から逸脱せずに本明細書で説明し例示するテイルシッター1'に修正および変形を施すことができることは明らかである。
【0125】
具体的には、翼4をリング状、ダイヤモンド状、または多角形状にすることができる。
【0126】
さらに、単一の翼4は、開放された二次元前部C、たとえば、C字状前部を有することができる。
【符号の説明】
【0127】
1、1' 航空機、テイルシッター
2 機体
4 翼
5 半翼
6 部分
7 接続部、部分
8 自由端、端部
9 自由端、端部
10 機首
11 着陸部材
12 テイル
14 接続部、部分
15a エンジン、回転翼
15b、15c エンジン
15d エンジン、回転翼
16 ハブ
17 ブレード
18 中心部
19 制御ユニット
20 着陸部材
21 補助翼
30 部分
31 部分
32 自由端
33 部分
S1、S2、S3、S4、S5、S6 推力値、推力