(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】フォトンカウンティングCT装置、および、物質弁別マップの補正方法
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20240209BHJP
A61B 6/42 20240101ALI20240209BHJP
A61B 6/58 20240101ALI20240209BHJP
G01T 1/17 20060101ALI20240209BHJP
【FI】
A61B6/03 350H
A61B6/03 320Q
A61B6/03 373
A61B6/03 F
G01T1/17 A
G01T1/17 E
(21)【出願番号】P 2021001124
(22)【出願日】2021-01-06
【審査請求日】2023-07-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】弁理士法人山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 進一
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-037550(JP,A)
【文献】特表2019-532699(JP,A)
【文献】国際公開第2014/163187(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/14 、
G01T 1/161- 1/166
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトンカウンティングCT装置であって、
撮像空間にX線を照射するX線管と、前記撮像空間を通過した複数のX線フォトンをそのエネルギーレベルに応じて複数のエネルギー帯域ごとに計数するX線検出器と、
2種以上の
所定の物質のそれぞれの厚さを複数種類に異ならせ
、それら
の組み合わせ
について予め求めておいた、複数のエネルギー帯域の計数値を示す物質弁別マップを格納するマップ格納部と、
前記撮像空間に被写体が配置された状態で前記X線検出器が複数の前記エネルギー帯域について計数した計数値に対応する2種以上の
前記物質の厚さの組み合わせを、前記物質弁別マップを参照して求める物質弁別部と、
前記物質弁別マップを
予め定めた補正タイミングで補正するマップ補正部とを有し、
前記補正タイミングは、前記被写体の撮像前、撮影中、撮像後、および、当該フォトンカウンティングCT装置のスイッチを入れたタイミングのいずれかであり、
前記マップ格納部には、前記物質弁別マップの2種以上の前記物質とは異なる2種以上の所定の補正用物質の、それぞれの厚さを複数種類に異ならせ、それらの組み合わせごとに、複数のエネルギー帯域の計数値を予め求めて事前生成しておいた補正用物質マップが、予め格納されており、
前記マップ補正部は、
前記予め定めたタイミングにおいて、前記X線管から照射されたX線が通過する位置に被写体を配置しない
空の状態、および/または、前記X線管から照射されたX線が通過する位置に
2種以上の前記補正用物質のうちの1種類以上の
前記補正用物質を配置した状態で、前記X線管からX線を照射
し、上記各状態で前記複数のエネルギー帯域ごとにX線フォトンを計数して計数値を実測
することにより、前記補正用物質マップ内の少なくとも2か所の、2種以上の前記補正用物質の厚さの組み合わせについて、複数のエネルギー帯域の計数値を実測して、現時点の前記補正用物質マップを生成し、
前記マップ補正部は、事前生成の前記補正用物質マップの計数値と、現時点の前記補正用物質マップの計数値とを比較し、比較結果に応じて、前記物質弁別マップの計数値を補正する
ことを特徴とするフォトンカウンティングCT装置。
【請求項2】
請求項1に記載のフォトンカウンティングCT装置であって、前記マップ補正部は、前記X線検出器を用いて、前記被写体の撮像前、または、撮像後のタイミングで、
前記補正用物質マップの現時点の計数値を実測することを特徴とするフォトンカウンティングCT装置。
【請求項3】
請求項1に記載のフォトンカウンティングCT装置であって、前記マップ補正部は、前記
X線管から照射され、前記
撮像空間の外側を通過するX線が到達する位置に配置された、X線フォトンを計数する参照用検出器を有し、前記被写体の撮像前、撮影中および撮像後のいずれかのタイミングで、
前記補正用物質マップの現時点の計数値を実測することを特徴とするフォトンカウンティングCT装置。
【請求項4】
請求項1に記載のフォトンカウンティングCT装置であって、前記
2種以上の補正用物質
は、元素または組成が異なる2種類以上の物質であるか、または、前記2種以上の補正用物質は、形状が2種類以上に異なる物質である、ことを特徴とするフォトンカウンティングCT装置。
【請求項5】
請求項1に記載のフォトンカウンティングCT装置であって、前記マップ補正部は、前記撮像空間に被写体を配置しない空の状態と、前記X線管と前記X線検出器との間に所定の厚さの第1の補正用物質を配置した状態と、前記X線管と前記X線検出器との間に所定の厚さの第2の補正用物質を配置した状態の3条件においてそれぞれ、前記X線管からX線を照射して前記複数のエネルギー帯域ごとに計数して
前記補正用物質マップの現時点計数値を実測し、前記3条件においてそれぞれ実測した
前記補正用物質マップの現時点計数値を用いて、
現時点の前記補正用物質マップを生成することを特徴とするフォトンカウンティングCT装置。
【請求項6】
請求項1に記載のフォトンカウンティングCT装置であって、前記物質弁別マップは、前記撮像空間に被写体を配置しない空の状態で前記X線管からX線を照射して前記複数のエネルギー帯域ごとに計数した計数値と、2種以上の前記物質のそれぞれの厚さを複数種類に異ならせてその組み合わせを前記X線管と前記X線検出器との間に配置した状態でそれぞれ前記X線管からX線を照射して前記複数のエネルギー帯域ごとに計数した計数値と、を用いて生成されたものであることを特徴とするフォトンカウンティングCT装置。
【請求項7】
請求項1に記載のフォトンカウンティングCT装置であって、前記物質弁別マップの前記2種以上の物質の厚さには、厚さゼロが含まれていることを特徴とするフォトンカウンティングCT装置。
【請求項8】
請求項1に記載のフォトンカウンティングCT装置であって、前記マップ補正部は、前記撮像空間に被写体を配置しない空の状態、および、1種以上の補正用物質をX線が通過する位置に配置した状態で、それぞれ実測した計数値データを、2種以上の補正用物質の厚さを異ならせて組み合わせたマップの計数値データとして用い、計数値データがない厚さの組み合わせについては、補間および/または外挿により計測値データを求め
、現時点の前記補正用物質マップを生成することを特徴とするフォトンカウンティングCT装置。
【請求項9】
請求項1に記載のフォトンカウンティングCT装置であって、前記マップ補正部は、
前記補正用物質として、円筒状の樹脂製ファントムを用いることを特徴とするフォトンカウンティングCT装置。
【請求項10】
請求項1に記載のフォトンカウンティングCT装置であって、前記マップ補正部は、学習済みの学習モデルを含み、
前記補正用物質マップの現時点の計数値を入力データとして前記学習モデルに入力し、補正後の前記物質弁別マップを出力データとして取得することを特徴とするフォトンカウンティングCT装置。
【請求項11】
所定の2種以上の物質のそれぞれの厚さを複数種類に異ならせ、それらの組み合わせについて、予め求めておいた、フォトンカウンティングCT装置の複数のエネルギー帯域の計数値を示す物質弁別マップ、の前記計数値を予め定めた補正タイミングで補正する方法であって、
前記予め定めたタイミングにおいて、前記フォトンカウンティングCT装置の撮像空間に被写体を配置しない空の状態、および/または、X線管から照射されたX線が通過する位置に、
前記物質弁別マップの2種以上の前記物質とは異なる2種以上の所定の補正用物質のうちの1種以上の
前記補正用物質を配置した状態で、X線管からX線を照射して
、上記各状態で複数のエネルギー帯域ごとX線フォトンを計数して補正用計数値を実測
することにより、2種以上の前記補正用物質の、それぞれの厚さを複数種類に異ならせ、それらを組み合わせた補正用物質マップ内の少なくとも2か所について、複数のエネルギー帯域の計数値を実測して、前記補正用物質マップを現時点で生成するステップと、
事前に生成しておいた前記補正用物質マップの計数値と、現時点の前記補正用物質マップの計数値とを比較し、比較結果に応じて、前記物質弁別マップの計数値を補正するステップと有し、
前記補正タイミングは、前記被写体の撮像前、撮影中、撮像後、および、前記フォトンカウンティングCT装置のスイッチを入れたタイミングのいずれかであることを特徴とするフォトンカウンティングCT装置の物質弁別マップの補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトンカウンティング(photon counting)モードを有するX線CT(Computed Tomography)装置(以下、PCCT装置と呼ぶ。)に係り、特に、PCCT装置における低エネルギー側の統計ノイズ抑制のための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT装置は、被写体を挟んで対向配置されたX線管とX線検出器の対の位置関係を保った状態で被写体の周囲を回転させながら、被写体のX線透過データを得、その断層画像(以下、CT画像とする)を計算により再構成する装置であり、工業用およびセキュリティ用の検査装置や医療用の画像診断装置等として用いられる。
【0003】
医療用のX線CT装置には、フォトンカウンティングモードを搭載したPCCT装置が研究・開発中である。PCCT装置では、フォトンカウンティング方式の検出器により、被写体を透過したX線の光子(X線フォトン)を検出素子毎にカウントする。これにより、例えば、X線が透過した被写体の内部組織を構成する元素を推定可能なスペクトラムを得、被写体の組織の物質弁別を行ったX線CT画像を得ることができる(特許文献1参照)。
【0004】
また、PCCT装置では、カウントした個々のX線フォトンをエネルギー値で弁別することにより、エネルギー帯域(エネルギービン(bin))毎の、X線強度を得ることができる。これを利用し、PCCT装置では、特定のエネルギー範囲のX線のみを抽出して画像化し、診断に用いることがある。
【0005】
一方、特許文献2には、PCCT装置における物質弁別の精度を向上させるために、フォトンを検出する検出器の非線形な応答に起因する検出データを演算により算出する発明が開示されている。そして、算出した非線形応答のデータを、検出器が実際に検出したデータから差し引き、差し引いた後の検出データを用いて物質弁別を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-176988号公報
【文献】特開2016-193174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
PCCT装置では、X線検出素子がカウントしたエネルギー帯域ごとのデータに対して、補正処理を実施する。例えば、リファレンス補正回路のリニアリティ補正、対数変換処理の補正、オフセット処理の補正、感度補正、ビームハードニング補正、水ファントムキャリブレーション、CT値補正などを行う。この補正のために用いる補正データは、被写体を配置せず、空気に対してX線を照射し、検出素子によりエネルギー帯域ごとにカウントされたデータ(Airデータ)を得て、このデータに基づいて算出される。通常は、PCCT装置を出荷する前やメンテナンスの際に、Airデータを得て、補正データを決定している。
【0008】
しかしながら、上記Airデータは、補正データ算出時と、実際の被検体の撮影時とで、ずれが生じ、ずれが生じているAirデータに基づき算出された補正データを用いて、被検体撮影時に得たカウントデータを補正すると、物質弁別の精度が低下するという問題がある。発明者らは、撮像日によってAirデータにずれが生じる原因は、X線管の発生するX線のスペクトルが、X線管の発生する熱や気温や経年変化等によって変化することにあることに気づいた。
【0009】
特許文献2は、非線形応答のデータを演算により求めて、検出データから差し引いているが、熱等によるX線のスペクトルの変化は、PCCT装置の設置場所の気温や電源を入れてからの時間等によりも影響を受けるため、演算により精度よく算出することは容易ではない。
【0010】
本発明の目的は、PCCT装置においてX線スペクトルの変化が生じても、精度よく物質弁別を行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明では、以下のようなフォトンカウンティング装置を提供する。すなわち、本フォトンカウンティング装置は、撮撮像空間にX線を照射するX線管と、撮像空間を通過した複数のX線フォトンをそのエネルギーレベルに応じて複数のエネルギー帯域ごとに計数するX線検出器と、2種以上の物質のそれぞれの厚さを複数種類に異ならせてそれらを組み合わせたものについて予め求めておいた、複数のエネルギー帯域の計数値を示す物質弁別マップを格納するマップ格納部と、撮像空間に被写体が配置された状態でX線検出器が複数のエネルギー帯域について計数した計数値に対応する2種以上の物質の厚さの組み合わせを、物質弁別マップを参照して求める物質弁別部と、物質弁別マップを補正するマップ補正部とを有する。マップ補正部は、撮像空間に被写体を配置しない状態、および/または、X線管から照射されたX線が通過する位置に1種以上の補正用物質を配置した状態で、X線管からX線を照射して複数のエネルギー帯域ごとX線フォトンを計数して補正用計数値を実測し、補正用計数値に基づいて物質弁別マップの計数値を補正する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、PCCT装置においてX線スペクトルの変化が生じても、マップ補正部が補正用計数値を取得して、マップの計数値を補正するため、精度よく物質弁別を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態1のフォトンカウンティングCT装置の構成を示すブロック図。
【
図2】実施形態1のフォトンカウンティングCT装置において、検出素子(チャンネル)ごとに、複数のエネルギー帯域について計数値が計測されることを説明する図。
【
図3】実施形態1のフォトンカウンティングCT装置において、物質弁別マップ(テーブル)の一例を示す図。
【
図4】実施形態1のフォトンカウンティングCT装置において、(a)物質弁別マップの補正のために、撮像範囲103に被写体101を配置せず、X線検出器321がX線フォトンを実測することを示す説明図、(b)物質弁別マップの補正のために、補正用物質104を配置して、X線検出器321がX線フォトンを実測することを示す説明図、(c)被写体を撮像し、補正された物質弁別マップを用いて、物質弁別を行うことを示す説明図。
【
図5】実施形態1のフォトンカウンティングCT装置の(a)事前生成の補正用物質マップ、(b)現時点の補正用物質マップ、(c)現時点の全点補正用物質マップ、をそれぞれ示す説明図。
【
図6】実施形態1のフォトンカウンティングCT装置の(a)事前生成の補正用物質マップ、(b)現時点の補正用物質マップ、(c)物質弁別マップ、(d)補正後の物質弁別マップ、をそれぞれ示す説明図。
【
図7】実施形態1のフォトンカウンティングCT装置の演算部400の機能ブロック図。
【
図8】実施形態1の撮像処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】実施形態1の撮像処理の流れを示すフローチャートである。
【
図10】(a)および(b)実施形態3のフォトンカウンティングCT装置の一部の構成を示す説明図。
【
図11】(a)および(b)実施形態3の別の構成のフォトンカウンティングCT装置の一部の構成を示す説明図。
【
図12】実施形態4のフォトンカウンティングCT装置の一部の構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態のフォトンカウンティングCT装置の例を以下説明する。以下、本発明の実施形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0015】
<<実施形態1>>
以下、本実施形態1のPCCT装置の概要について、
図1を用いて説明する。
【0016】
本実施形態では、被写体101の撮像時点のX線による計数値を、所定の条件下で実測し、実測した計数を用いて、物質弁別に用いるマップ(ここではテーブル)410を補正する。これにより、X線管311や周囲の構成物が、X線管311の温度上昇の影響等を受けて、X線のスペクトルに変化が生じている場合も、精度よく物質弁別できる。
【0017】
本実施形態のPCCT装置は、
図1にその全体構成を示したように、撮像空間103にX線を照射するX線管311と、X線検出器321と、回転部(回転板)332と、マップ格納部409と、物質弁別部408と、マップ補正部404とを有する。
【0018】
X線管311は、陰極と陽極とを、真空の管内に配置した構成である。陰極から発生した熱電子が、回転する陽極に衝突し、X線を発生する。
【0019】
X線検出器321は、配列された複数の検出素子(チャンネルCh1~n)と計数回路とを含み、撮像空間103を通過した複数のX線フォトンをそのエネルギーレベルに応じて、複数のエネルギー帯域(bin1~k)ごとに
図2のように計数する。
【0020】
回転部332は、X線管311とX線検出器321とを撮像空間103の周囲で回転させる。
【0021】
マップ格納部409には、物質弁別処理に用いられる物質弁別マップ410が格納されている。物質弁別マップ410は、その一例を
図3に示すように、弁別したい2種以上の物質(ここでは、骨と脂肪)のそれぞれの厚さ(X線が通過する長さ)を複数種類用意して、それらを組み合わせたものを、X線管311とX線検出器321との間に配置した場合に、X線検出器321が複数のエネルギー帯域(bin1~k)について計数する計数値を、実測または計算により、予め求めたマップである。マップ410として、ここでは
図3に示すようにテーブルを用いるが、グラフや数式等でマップ410を表すことも可能である。
【0022】
物質弁別部408は、撮像空間103に被写体101が配置された状態で、X線検出器321が複数のエネルギー帯域について計数した計数値に対応する、2種以上の物質の厚さ(透過距離)の組み合わせを、マップ410を参照して求める。
【0023】
マップ補正部404は、被写体101の撮像前、撮像後または装置のスイッチを入れたタイミング等所望のタイミングにおいて、撮像空間103に被写体101を配置しない空の状態(
図4(a))、および/または、X線管311とX線検出器321との間に1種以上の補正用物質104を配置した状態(
図4(b))で、X線管311からX線を照射して複数のエネルギー帯域ごとに計数して補正用計数値412(
図5(b))を取得する。マップ補正部404は、取得した補正用計数値412に基づいて、物質弁別マップ410の計数値を補正する。
【0024】
ここでいう1種以上の補正用物質104とは、元素または組成が異なる1種類以上の物質、または、形状が異なる1以上の物体をいう。
【0025】
補正用物質104の元素または組成は、物質弁別マップ410の物質(例えば骨と脂肪)と同じ物質であってもよいし、異なる物質でもよい。なお、補正用物質104の元素または組成が、物質弁別マップ410の物質とは異なる場合、補正用物質104について複数のエネルギー帯域ごとに計数される補正用計数値411(
図5(a)、
図6(a))と、物質弁別マップ410の物質について複数のエネルギー帯域ごと計数される計数値(物質弁別マップ410の計数値)(
図3、
図6(c))との関係61を予め同じX線スペクトルにより計測しておく。マップ補正部404は、この関係61を用いて、補正用計数値412又は412-1(
図5(b)または
図6(b))に基づいて、物質弁別マップ410(
図3,
図6(c))の計数値を補正し、補正後の物質弁別マップ410-1(
図6(d))を作成することができる。
【0026】
例えば、
図5(a)、(b)および
図6(a),(b)のように、アルミ(Al)とアクリルの板のうちの少なくとも一方を補正用物質104として用いることができる。
【0027】
また、補正用物質104の元素または組成が、物質弁別マップ410の物質とは異なる場合、マップ格納部409には、物質弁別マップ410を作成した時点と同時点で作成された事前生成補正用物質マップ411(
図5(a)、
図6(a))が格納されていることが望ましい。事前生成補正用物質マップ411は、
図5(a)、
図6(a)に示すように、2種類以上の補正用物質(Alとアクリル)104のそれぞれの厚さを複数種類に異ならせて、それらを組み合わせたものを、X線管311とX線検出器321との間に配置した場合に、X線検出器321が複数のエネルギー帯域(bin1~k:
図5(a)、
図6(a)ではk=3)について計数する計数値を、実測または計算により、予め求めたマップである。事前生成補正用物質マップ411は、PCCT装置の出荷前や、X線管311やX線検出器321の交換時に、サービスマンによって生成され、マップ格納部409に格納される。
【0028】
マップ補正部404は、現時点において補正用計数値412(
図5(b))を実測することにより、例えばマップ(以下、現時点の補正用物質マップ412と呼ぶ)を生成することが望ましい。現時点の補正用物質マップ412は、事前生成の補正用物質マップ411と同様に、2種類以上の補正用物質(Alとアクリル)104の厚さを複数種類に変えてそれらを組み合わせたものについて得られるエネルギー帯域ごとの計数値のマップであり、現時点において少なくとも一部の計数値を実測することによって生成するため、現時点のX線スペクトルを計数値に反映することができる。
【0029】
例えば、現時点の補正用物質マップ412の少なくとも2か所の組み合わせ(テーブルの2か所の欄)についてエネルギー帯域ごとの補正用計数値を実測する。具体的には例えば、撮像空間103に被写体101を配置しない空の状態(
図4(a))で実測したエネルギー帯域ごとの補正用計数値を、
図5(b)のマップ412の2種類の補正用物質(Alとアクリル)104の厚さがいずれも0cmの欄の補正用計数値として用いる。また、補正用物質104である厚さ10cmのアクリルのみを配置した状態(
図4(b))で実測したエネルギー帯域ごとの補正用計数値を、
図5(b)のマップ412において、アクリルの厚さ10cmとAlの厚さ0cmの組み合わせの欄の補正用計数値として用いる。
【0030】
このようにマップ補正部404は、
図5(b)の現時点の補正用物質マップ412の少なくとも2か所(
図5(b)では3か所を計測)について補正用計数値を実測により得た後、
図5(a)のように事前生成の補正用物質マップ411(
図5(a))を参照することにより、
図5(b)の現時点の補正用物質マップ412の残りの空欄の計数値を、補間または外挿により算出する。
【0031】
マップ補正部404での計算の一例を示す。
図5(a)のマップの欄の値を Ak_ac#x_al#y と表す。kは、bin番号(図では1-3)、ac#xのxは、アクリルのX線通過方向の長さ(mm)、al#yのyは、アルミニウムのX線通過方向の長さ(mm)である。また、
図5(b)のマップの欄の値を同様にBk_ac#x_al#y と示す。さらに
図5(b)のマップで未計測の欄の値をCk_ac#x_al#yとする。例として
図5(b)のアクリル50mm、アルミニウム0mmの位置の値Cは、下記の式(1)により求めることができる。
Ck_ac#50_al#0 =Ak_ac#50_al#0×
(Bk_ac#100_al#0/Ak_ac#100_al#0+Bk_ac#0_al#0/Ak_ac#0_al#0)/2 …式(1)
【0032】
このように現時点で計測した位置の情報から内挿で演算可能な位置は内挿で求め、そうでない場合は外挿してAとBの比率を計算し、その結果を、Aのもともとの値に乗じることで補正する。
【0033】
これにより、現時点の全点補正用物質マップ410(
図5(c))を生成することができる。得られた
図5(c)の現時点の全点補正用物質マップ412-1は、現時点のX線スペクトルを反映している。
【0034】
よって、
図6(a)、(b)に示すように、現時点の補正用物質マップ412-1(
図6(b))と、事前生成の補正用物質マップ411(
図6(a))とを比較することで、その間のX線スペクトルの変化を計数値の変化として把握することができる。このX線スペクトルの変化に応じて、
図6(c)の物質弁別マップ410の計数値を補正することにより、X線スペクトルの変化に対応した物質弁別マップ410-1(
図6(d))を得ることができる。
【0035】
物質弁別マップ410の計数値を補正して、補正後の物質弁別マップ410-1を生成する方法を
図6を用いて説明する。
【0036】
まず、
図6(c)の物質弁別マップ410のそれぞれの位置(例えば脂肪50mm,骨2mm)が、
図6(a)の事前生成の補正用物質マップ411においてどの位置(アクリルとアルミニウムの割合)になるかを計算により求める。計算方法は、
図6(c)の物質弁別マップ410から脂肪50mm、骨2mmを透過したそれぞれの信号の各binの減弱結果が得られているので、その減弱結果の比を求め、その比と一致する減弱結果が得られる点を、
図6(a)の事前生成の補正用物質マップ411において探す。ただし、完全に一致することは無いため、誤差を含むことになるが、その誤差が最小となる点を求める。最小の誤差は、例えばそれぞれのbinのカウントの差を2乗して足した2乗和が最小となる場所という定義を用いる。それにより求めた
図6(a)の事前生成の補正用物質マップ411上の位置について補正値を、
補正値=(
図6(b)の現時点の全点補正用物質マップ412-1の対応する位置の計数値)/(
図6(a)の事前生成の補正用物質マップ411のその位置の計数値)
を計算することにより求める。その補正値を、
図6(c)の物質弁別マップ410の該当位置の値に乗算する。これを繰り返し、異なる物質の場合の補正後の物質弁別マップ410-1(
図6(d))を作成する。
【0037】
物質弁別部408は、補正後の物質弁別マップ413を用いて、被写体の計数値に対して物質弁別を行う。
【0038】
したがって、本実施形態のPCCT装置では、X線管311の温度上昇等により、照射するX線スペクトルの変化が生じても、マップ補正部404が補正用計数値を取得して、物質弁別マップ410の計数値を補正するため、物質弁別部408は、精度よく物質弁別を行うことができる。
【0039】
なお、マップ補正部404は、現時点の補正用物質マップ412を生成するために、撮像空間103に被写体101を配置しない空(Air)の状態と、X線管311とX線検出器321との間に所定の厚さの第1の補正用物質(例えばAl)を配置した状態と、X線管とX線検出器との間に所定の厚さの第2の補正用物質(アクリル)を配置した状態の3つの状態においてそれぞれ、X線管311からX線を照射して、複数のエネルギー帯域ごとに計数して補正用計数値を実測してもよい。マップ補正部404は、3つの状態においてそれぞれ実測した補正用計数値を用いて、物質弁別マップ410の計数値を補正する。
【0040】
<詳細な構成>
以下、本実施形態のPCCT装置100についてさらに詳しく説明する。
図1に示すように、本実施形態のPCCT装置100は、計測部300と、演算部400と、UI部200とを備えている。
【0041】
計測部300は、演算部400による制御に従って、被写体101にX線を照射し、被写体101を透過したX線フォトンを計測する。計測部300は、X線管311とX線検出部320の他に、ガントリ330と、制御部340と、被写体101を載置するテーブル102とを備えている。制御部340は、照射制御器341、ガントリ制御器342、テーブル制御器343および検出制御器344を含む。
【0042】
ガントリ330の中央には、開口331が設けられ、開口331内に被写体101とテーブル102が配置される。ガントリ330の内部には、X線管311およびX線検出器321を搭載した回転板332と、回転板332を回転させるための駆動機構(不図示)が配置されている。回転板332が所定角度回転すると、ガントリ制御器342は検出制御器344に信号を出力し、検出制御器344はX線検出部320に信号を出力し、X線検出器321の計数回路が計数データを1角度分のデータとして出力する。なお、一例としてガントリ330の開口部331の直径は、700mmである。X線管311のX線発生点と、X線検出器321のX線入射面との距離は、例えば1000mmである。
【0043】
回転板332の1回転の所要時間は、ユーザがUI部200を介して入力したパラメータによって設定される。例えば、1.0s/回転とし、1回転における撮像回数を900回に設定することができる。なお、本明細書において、開口部331の周方向をx方向、径方向をy方向とする。z方向(被写体101の体軸方向)はx方向、径方向をy方向に直交する方向である。
【0044】
X線管311と撮像空間103との間に、X線スペクトルを調節するX線フィルタ312と、周辺部の被ばく量を抑えるボウタイ(bowtie)フィルタ313が配置され、X線照射部310を構成している。X線管311には、照射制御器341の制御下で高電圧が供給される。
【0045】
X線検出器321は、複数の検出素子を配列した構成である。複数のX線検出器321を円弧状に配置し、X線検出部320が構成されている。
図4(a)~(c)のように、X線検出器321の入射面側には、X線の入射射方向を制限するコリメータ323が立設されている。X線検出器321を構成する検出素子は、半導体素子を用いる。なお、検出素子のx方向のサイズは、例えば、1mmである。
【0046】
演算部400は、PCCT装置100の動作全体を制御し、計測部300で取得したデータを処理することにより、撮像を実行する。演算部400は、中央処理装置(CPU)401と、メモリ402と、HDD(Hard disk drive)装置403と、を備える。演算部400は、
図7にその機能ブロック図を示したように、マップ補正部404と、撮像部405と、計数データ補正部406と、物質弁別部408と、画像生成部407の機能を有する。
【0047】
CPU401は、HDD装置403に予め格納しておいたプログラムをメモリ402にロードして実行することにより、上記各機能をソフトウエアにより実現する。なお、演算部400の全部または一部の機能は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路などにより実現してもよい。
【0048】
撮像部405は、CT撮像やスキャノグラム等の撮像を実行させる。計数値データ補正部406は、エネルギー帯域ごとに収集した計数値データに対し、補正処理を実施する。ここで行う補正処理は、例えば、リファレンス補正回路のリニアリティ補正、対数変換処理、オフセット処理、感度補正、ビームハードニング補正、水ファントムキャリブレーション、CT値補正などである。
【0049】
物質弁別部408は、計数値データ補正部406による補正後の計数値データから被写体102を構成する物質の透過距離(例えば、骨1cmと脂肪5cm)に変換する。
【0050】
画像生成部407は、物質弁別部408の変換結果を用いて、骨だけを抽出した画像や、脂肪だけを抽出した画像や、特定のエネルギー帯域のX線を照射したCT画像を仮想的に再構成する。
【0051】
HDD装置403には、処理に用いるデータや、処理の結果のデータ等が保存される。
【0052】
UI部200は、キーボード、マウス等の入力装置210と、表示装置等の出力装置220とを備え、ユーザから物質弁別マップ410を補正するタイミングや、出力したい画像の種類や、撮像条件等を受け付けて演算部400に出力する。撮像条件は、例えば、X線管311の管電流、管電圧、被写体101の撮像範囲等である。
【0053】
次に、演算部400による撮像処理について
図8のフローを用いて説明する。
【0054】
<ステップS1101>
まず、マップ補正部404は、現在時点が、予め定められた物質弁別マップ410の補正を行うタイミングであるかどうかを判断し、マップ補正のタイミングである場合、ステップ1102に進む(ステップS1101)。マップ補正のタイミングでない場合、ステップS1104に進む。
【0055】
ここで、予め定められたマップ補正のタイミングとは、ユーザが設定したタイミングであり、撮像前、撮像の途中、撮像後、および、朝スイッチを入れたタイミング等が設定可能である。
【0056】
<ステップS1102>
物質弁別マップ410の補正を行うタイミングである場合、マップ補正部404は、現時点で2種類の補正用物質(Alとアクリル)104について計数値を実測し補正用物質マップ412を生成する。
【0057】
具体的なステップS1102を
図9のフローを用いてさらに説明する。
【0058】
(ステップS2001)
マップ補正部404は、撮像空間103に被写体101を配置しない空の状態(Air)で、
図4(a)のようにX線管311からX線を照射し、複数のエネルギー帯域ごとの補正用計数値を検出器321で実測する。
【0059】
(ステップS2002)
マップ補正部404は、X線管311と撮像空間103との間に、補正用物質104である10cmのアクリル板のみを配置するようユーザに促す表示を出力装置(表示装置)220に表示させ、ユーザがアクリル板を配置したならば、その状態(
図4(b))でX線管311からX線を照射し、複数のエネルギー帯域ごとの補正用計数値412を検出器321で実測する。
【0060】
(ステップS2003)
ステップS2001、S2002で得た計数値を、補正用物質(Alとアクリル)104の現時点の補正用物質マップ412の、厚さがいずれも0cmの欄と、アクリルの厚さ10cmとAlの厚さ0cmの組み合わせの欄の補正用計数値として用い、残りの空欄の計数値を、補間および外挿により算出する。これにより、現時点の補正用物質マップ412が生成される(
図5(b))。
【0061】
<ステップS1103>
マップ補正部404は、生成した現時点の補正用物質マップ412(
図5(b))と、事前生成の補正用物質マップ411(
図5(a))とを比較し、比較結果に応じて、物質弁別マップ410(
図3、
図6(c))の計数値を補正する。
【0062】
<ステップS1104、S1105>
撮像部405は、ユーザから撮像開始の指示を、UI部200を介して受け取ったならば、ステップS1105に進み、
図4(c)に示すように、撮像範囲103に配置されている被写体101にX線管311からX線を照射し、X線検出器321により複数のエネルギー帯域について計数値を計測する。
【0063】
<ステップS1106>
物質弁別部408は、ステップS1105において取得した被写体101についての係数に対応する、2種以上の物質の厚さ(透過距離)の組み合わせを、ステップS1103で補正された物質弁別マップ410を参照して求める。
【0064】
<ステップS1106、S1107>
画像生成部407は、ステップS1106で物質弁別部408が求めた物質の透過距離に基づいて、所望の物質(例えば骨だけ、脂肪だけ)を抽出した画像や、特定のエネルギー(例えば60eV)のX線を照射した場合のX線CT画像を演算により生成する。画像生成部407は、生成した画像を出力部220に表示させる。
【0065】
本実施形態では、X線スペクトルがX線管311の温度上昇等に起因して変化した場合であっても、現時点の計数値の変化を実測し、物質弁別マップを補正するため、物質弁別の精度を向上させることができる。よって、医師は、精度よく物質弁別された画像を見て診断を行うことができる。
【0066】
<<実施形態2>>
実施形態2のPCCT装置について説明する。
【0067】
実施形態2では、補正用物質104として、被写体101と減弱がほぼ同じとなる円筒状の樹脂製ファントムを用いる。例えば、ポリエチレン製の円筒状のファントムを用いる。
【0068】
マップ補正部404は、実施形態1の
図9のフローのステップS2001で、撮像範囲103に被写体101を配置しない空の状態(Air)で計数値を実測した後、ステップS2002で撮像範囲103に円筒状のファントムを配置して、計数値を実測する。マップ補正部404は、ステップS2003において、被写体101を配置しない空の状態で実測した計数値データと、円筒状の樹脂製ファントムを配置して実測した計数値データの2つを要素とする現時点の補正用物質マップ412を生成する。
【0069】
事前生成の補正用物質マップ411も、同様に、空の状態(Air)と、円筒状のファントムを配置した状態の計数値を実測したものの2つを要素とするマップを生成しておく。
【0070】
図8のステップS1102において、マップ補正部404は、現時点の補正用物質マップ412と事前生成の補正用物質マップ411の差に基づいて、物質弁別マップ410を補正し、補正後の物質弁別マップ413を得る。
【0071】
他の構成、処理動作および効果は、実施形態1と同様である。
【0072】
<<実施形態3>>
実施形態3のPCCT装置について
図10(a),(b)を用いて説明する。
【0073】
実施形態1および2のPCCT装置では、X線検出器321によって、補正用計数値を実測する構成であったが、実施形態3では、マップ補正部404は、X線検出器321とは別に参照用検出器902をさらに備え、参照用検出器902により補正用計数値を実測する。
【0074】
参照用検出器902は、
図10(a)に示すように、X線源311から照射されX線であって、撮像範囲103の外側を通過するX線が到達する位置に配置されている。したがって、参照用検出器902により、補正用計測値を実測することにより、被写体の撮像中であっても、補正用計測を実測することができ、リアルタイムで物質弁別マップ410(
図3、
図6(c))を補正することが可能になる。
【0075】
また、参照用検出器902は、撮像範囲103の外側にあるため、参照用検出器902とX線源311との間に何も配置しなければ、Airの状態での計数値が得られ、参照用検出器902の前に所定の厚さの補正用物質104を配置すれば、その補正用物質104の計数値が得られる。よって、
図10(b)のように、複数の検出素子902-1~902-3を備える参照用検出器902を用い、検出素子902-1の前に何も配置せず、検出素子902-1,902-3の前には予め厚さまたは物質が異なる補正用物質104-1,104-2をそれぞれ配置しておくことにより、一度にAirと、2種類の補正用物質についての補正用計数値を得ることができる。よって、現時点の補正用物質マップ412を素早く生成することができる。
【0076】
また、参照用検出器902は、撮像範囲103の外側に配置されているため、配置したまま被写体101撮像ができるため、ユーザに補正用物質104をX線源311が通過する位置に着脱してもらう必要がなく、自動で、物質弁別マップ410の補正を行うことができるというメリットもある。
【0077】
さらに、参照用検出器902は被写体外に位置するため被写体101の影響を受けない。それを利用し、
図11(a)、(b)に示すように被写体を透過したX線を検出する検出器321の端部を参照用検出器902として用いることも可能である。この場合、検出器321と検出器902を一体化できるというメリットがある。
【0078】
なお、本実施形態においては、事前生成の補正用物質マップ411も、その計数値が参照用検出器902によって検出されたものを用いることが望ましい。
【0079】
他の構成は、実施形態1と同様であるので、説明を省略する。
【0080】
<<実施形態4>>
実施形態4のPCCT装置について
図12を用いて説明する。
【0081】
実施形態1~3のPCC装置では、マップ補正部404は、補正用計数値を実測した後、演算により現時点の補正用物質マップ412を生成し、さらに物質弁別マップ410を補正する構成であったが、実施形態4では、マップ補正部404は、学習済みの学習モデル920を用い、実測した補正用計数値を学習モデル920に入力し、直接補正後の物質弁別マップ413を出力として得る。学習モデル920は公知のものを用いることが可能であり、例えばニューラルネットワークを用いることができる。
【0082】
学習モデル920の学習には、実施形態1,2の方法でそれぞれ求めた補正用計数値を入力データとして、補正後の物質弁別マップ413を正解データとして用い、機械学習やディープラーニングにより事前に十分学習させればよい。
【0083】
これにより、マップ補正部404は、補正用計数値を実測して、学習モデル920に入力するのみで、補正後の物質弁別マップ413を得ることができるため、短時間に精度よく、物質弁別マップ410の補正を行うことができる。
【0084】
マップ補正部404が学習モデル920に入力する補正用計数値は、1以上であればよく、例えば、撮像範囲103の被写体を配置しない空の状態(Air)で実測した、複数のエネルギー帯域の計数値のみでもよいし、さらに1種以上の補正用物質104を配置して実測した計数値を入力してもよい。
【0085】
なお、学習済み学習モデルの出力させるデータを、物質弁別マップ410ではなく、現時点の補正用物質マップ412にすることも可能である。この場合、マップ補正部404は、得られた補正用物質マップ412を用いて、実施形態1と同様の処理により物質弁別マップ410を補正し、補正後の物質弁別マップ413を得ればよい。
【0086】
実施形態3において、マップ補正部404が補正後の物質弁別マップ413を得る処理以外の構成、処理動作および効果は、実施形態1および2と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【符号の説明】
【0087】
100:PCCT装置、101:被写体、102:テーブル、200:UI部、210:入力装置、220:出力装置、300:計測部、310:X線照射部、311:X線管、312:X線フィルタ、313:ボウタイフィルタ、320:X線検出部、321:X線検出器、322:検出素子、330:ガントリ、331:開口部、332:回転板、340:制御部、341:照射制御器、342:ガントリ制御器、343:テーブル制御器、344:検出制御器、400:演算部、401:中央処理装置、402:メモリ、403:HDD装置、404:マップ補正部、405:撮像部、406:補正部、407:画像生成部、408:物質弁別部、409:マップ格納部、410:物質弁別マップ