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特許7433273溶接システム、溶接方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】溶接システム、溶接方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/12 20060101AFI20240209BHJP
   B23K 9/10 20060101ALI20240209BHJP
   B23K 9/095 20060101ALI20240209BHJP
   B23K 9/00 20060101ALI20240209BHJP
   B23K 37/02 20060101ALI20240209BHJP
   B23K 37/04 20060101ALI20240209BHJP
【FI】
B23K9/12 331B
B23K9/10 Z
B23K9/095 515Z
B23K9/00 501B
B23K37/02 B
B23K37/04 X
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021095291
(22)【出願日】2021-06-07
(65)【公開番号】P2022187316
(43)【公開日】2022-12-19
【審査請求日】2021-06-07
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】302040135
【氏名又は名称】日鉄溶接工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217249
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221279
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100207686
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 恭宏
(74)【代理人】
【識別番号】100224812
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】三木 聡史
(72)【発明者】
【氏名】後藤 憲一
(72)【発明者】
【氏名】田代 裕一朗
(72)【発明者】
【氏名】池内 圭
(72)【発明者】
【氏名】脇田 直弥
(72)【発明者】
【氏名】井上 浩良
(72)【発明者】
【氏名】田中 良一
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 慎司
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-069620(JP,A)
【文献】特開平08-229676(JP,A)
【文献】特開2018-053626(JP,A)
【文献】特開2020-157362(JP,A)
【文献】特開2019-155409(JP,A)
【文献】特開2020-062675(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/12
B23K 9/10
B23K 9/095
B23K 9/00
B23K 37/02
B23K 37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼材に沿って配置されたガイドレールを移動しつつ、前記移動中に前記鋼材を溶接する溶接ロボット、を制御するための溶接システムであって、
前記鋼材の直線部に取り付けられた建方治具の位置に関する位置情報を取得する取得部と、
前記位置を取得するためのセンシング処理を行うセンシング処理部と、
を備え、
前記取得部は、前記センシング処理部のセンシング処理結果に基づき、前記位置情報を取得し、
前記ガイドレールは、前記鋼材を周方向に囲み、
前記鋼材は、鋼管であり、
前記鋼材は、鉛直方向に並べて配置される、ことを特徴とする溶接システム。
【請求項2】
前記センシング処理部は、前記溶接ロボットに取り付けられる撮影装置を含み、
前記取得部は、前記撮影装置が取得した撮影結果に基づき、前記位置情報を取得することを特徴とする請求項1に記載の溶接システム。
【請求項3】
前記建方治具の幅方向における中央の位置に付されたマーカ、
を更に備え、
前記取得部は、前記撮影装置が前記マーカを撮影して取得した前記撮影結果に基づき、前記位置情報を取得することを特徴とする請求項2に記載の溶接システム。
【請求項4】
鋼材に沿って配置されたガイドレールを移動しつつ、前記移動中に前記鋼材を溶接する溶接ロボット、を制御するための溶接システムであって、
前記鋼材の直線部に取り付けられた建方治具の位置に関する位置情報を取得する取得部、
を備え、
前記位置情報は、前記建方治具の幅方向における、前記建方治具の位置を示し、
前記ガイドレールは、前記鋼材を周方向に囲み、
前記鋼材は、鋼管であり、
前記鋼材は、鉛直方向に並べて配置される、ことを特徴とする溶接システム。
【請求項5】
鋼材に沿って配置されたガイドレールを移動しつつ、前記移動中に前記鋼材を溶接する溶接ロボット、を制御するための溶接システムであって、
前記鋼材の直線部に取り付けられた建方治具の位置に関する位置情報を取得する取得部と、
前記位置をユーザに入力させる入力部と、
を備え、
前記取得部は、前記入力部の入力結果に基づき、前記位置情報を取得し、
前記ガイドレールは、前記鋼材を周方向に囲み、
前記鋼材は、鋼管であり、
前記鋼材は、鉛直方向に並べて配置される、ことを特徴とする溶接システム。
【請求項6】
鋼材に沿って配置されたガイドレールを移動しつつ、前記移動中に前記鋼材を溶接する溶接ロボット、を制御するための溶接システムであって、
前記鋼材の直線部に取り付けられた建方治具の位置に関する位置情報を取得する取得部、
を備え、
前記位置情報は、前記建方治具の幅方向における中央の位置であり、
前記ガイドレールは、前記鋼材を周方向に囲み、
前記鋼材は、鋼管であり、
前記鋼材は、鉛直方向に並べて配置される、ことを特徴とする溶接システム。
【請求項7】
鋼材に沿って配置されたガイドレールを移動しつつ、前記移動中に前記鋼材を溶接する溶接ロボット、を制御するための溶接システムであって、
前記鋼材の直線部に取り付けられた建方治具の位置に関する位置情報を取得する取得部、
を備え、
前記位置情報は、前記溶接ロボットの幅方向における中央の位置と前記建方治具の幅方向における中央の位置とが前記溶接ロボットが前記ガイドレールを移動する方向と垂直な方向に沿って見て一致する場合における、前記溶接ロボットの位置であり、
前記ガイドレールは、前記鋼材を周方向に囲み、
前記鋼材は、鋼管であり、
前記鋼材は、鉛直方向に並べて配置される、ことを特徴とする溶接システム。
【請求項8】
鋼材に沿って配置されたガイドレールを移動しつつ、前記移動中に前記鋼材を溶接する溶接ロボット、を制御するための溶接システムであって、
前記鋼材の直線部に取り付けられた建方治具の位置に関する位置情報を取得する取得部、
を備え、
前記取得部は、前記位置情報とともに、前記建方治具の幅を示す幅情報を取得し、
前記ガイドレールは、前記鋼材を周方向に囲み、
前記鋼材は、鋼管であり、
前記鋼材は、鉛直方向に並べて配置される、ことを特徴とする溶接システム。
【請求項9】
前記取得部により取得された前記位置情報及び前記幅情報に基づき、前記溶接ロボットの溶接トーチを傾斜させて、前記鋼材のうち前記建方治具で覆われる部分の溶接を行う制御部、
を更に備えることを特徴とする請求項8に記載の溶接システム。
【請求項10】
前記溶接トーチが前記建方治具と干渉しない退避位置に前記溶接トーチを退避させているか否か、又は、前記覆われる部分の溶接が行われているか否か、を判別可能に出力部に出力させる出力制御部、
を更に備えることを特徴とする請求項9に記載の溶接システム。
【請求項11】
前記取得部は、前記位置情報とともに前記建方治具の幅を示す幅情報を取得することを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の溶接システム。
【請求項12】
前記溶接ロボットは溶接トーチ
を更に備え、
前記溶接トーチは、前記位置情報及び前記幅情報に基づいて傾斜されることを特徴とする請求項11に記載の溶接システム。
【請求項13】
前記鋼材の前記建方治具により覆われた部分は、前記鋼材の前記建方治具により覆われていない部分と連続して溶接されることを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の溶接システム。
【請求項14】
鋼材に沿って配置されたガイドレールを移動しつつ、前記移動中に前記鋼材を溶接する溶接ロボットを制御するための溶接システムが実行する溶接方法であって、
前記鋼材の直線部に取り付けられた建方治具の位置に関する位置情報を取得する取得ステップと、
前記位置を取得するためのセンシング処理を行うセンシング処理ステップと、
を備え、
前記取得ステップでは、前記センシング処理ステップでのセンシング処理結果に基づき、前記位置情報を取得し、
前記ガイドレールは、前記鋼材を周方向に囲み、
前記鋼材は、鋼管であり、
前記鋼材は、鉛直方向に並べて配置される、ことを特徴とする溶接方法。
【請求項15】
鋼材に沿って配置されたガイドレールを移動しつつ、前記移動中に前記鋼材を溶接する溶接ロボットを制御するための溶接システムが実行する溶接方法であって、
前記鋼材の直線部に取り付けられた建方治具の位置に関する位置情報を取得する取得ステップ、
を備え、
前記位置情報は、前記建方治具の幅方向における、前記建方治具の位置を示し、
前記ガイドレールは、前記鋼材を周方向に囲み、
前記鋼材は、鋼管であり、
前記鋼材は、鉛直方向に並べて配置される、ことを特徴とする溶接方法。
【請求項16】
鋼材に沿って配置されたガイドレールを移動しつつ、前記移動中に前記鋼材を溶接する溶接ロボットを制御するための溶接システムが実行する溶接方法であって、
前記鋼材の直線部に取り付けられた建方治具の位置に関する位置情報を取得する取得ステップと、
前記位置をユーザに入力させる入力ステップと、
を備え、
前記取得ステップでは、前記入力ステップでの入力結果に基づき、前記位置情報を取得し、
前記ガイドレールは、前記鋼材を周方向に囲み、
前記鋼材は、鋼管であり、
前記鋼材は、鉛直方向に並べて配置される、ことを特徴とする溶接方法。
【請求項17】
前記取得ステップでは、前記位置情報とともに前記建方治具の幅を示す幅情報を取得する、ことを特徴とする請求項14から16のいずれか一項に記載の溶接方法。
【請求項18】
前記溶接ロボットは溶接トーチ
を更に備え、
前記溶接トーチは、前記位置情報及び前記幅情報に基づいて傾斜されることを特徴とする請求項17に記載の溶接方法。
【請求項19】
前記鋼材の前記建方治具により覆われた部分は、前記鋼材の前記建方治具により覆われていない部分と連続して溶接されることを特徴とする請求項14から18のいずれか一項に記載の溶接方法。
【請求項20】
請求項1から13のいずれか一項に記載の溶接システムとしてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接システム、溶接方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
高層ビルなどの大型建築物には、角形の鋼管を溶接により継ぎ足して形成された鋼管柱が用いられている。角形の鋼管の継ぎ足しには、ガイドレールに沿って鋼管の周囲を巡回可能な溶接ロボットが利用される。具体的には、まず、鋼管同士を建方治具によって仮止めした状態で、溶接ロボットにより鋼管の初期溶接を行う。その後、建方治具を鋼管から取り外し、溶接ロボットにより鋼管の本溶接を行う。
【0003】
初期溶接の際には、溶接ロボットと建方治具との接触を防止する必要がある。特許文献1においては、建方治具を鋼管の角部に取り付け、溶接ロボットが鋼管の角部に到達した際に、溶接ロボットの溶接トーチを建方治具と接触しない位置に移動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-229676号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1においては、建方治具の取り付け位置が鋼管の角部に限定される。しかしながら、鋼管の角部は冷間曲げ加工により形成されるため、鋼管の他の部分よりも強度が弱くなる。建方治具を鋼管の角部に取り付けた場合、初期溶接後に建方治具を鋼管から取り外すことにより、鋼管の角部の強度がさらに低下する可能性がある。
上記の理由から、建方治具は鋼管の直線部に取り付けることが望ましい。しかしながら、建方治具を鋼管の直線部に取り付けた場合、建方治具の位置を把握することが難しく、溶接ロボットと建方治具との接触を防止するための機構が煩雑となる。したがって、このような場合であっても、溶接ロボットを容易且つ精度よく制御することが求められる。
【0006】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、建方治具を鋼管の任意の部分に取り付けた場合であっても、溶接ロボットを容易かつ精度よく制御することが可能な溶接システム、溶接方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明の一態様に係る溶接システムは、鋼材に沿って配置されたガイドレールを移動しつつ、前記移動中に前記鋼材を溶接する溶接ロボット、を制御するための溶接システムであって、前記鋼材に取り付けられた建方治具の位置に関する位置情報を取得する取得部と、前記位置を取得するためのセンシング処理を行うセンシング処理部と、を備え、前記取得部は、前記センシング処理部のセンシング処理結果に基づき、前記位置情報を取得する、ことを特徴とする。
【0008】
本発明においては、建方治具を、例えば鋼管の直線部を含む、鋼管の任意の部分に取り付けた場合であっても、取得部により建方治具の位置に関する位置情報を取得するため、この位置情報に基づき、溶接ロボットを容易かつ精度よく制御することが可能となる。
【0009】
また、本発明の他の一態様に係る溶接システムは、鋼材に沿って配置されたガイドレールを移動しつつ、前記移動中に前記鋼材を溶接する溶接ロボット、を制御するための溶接システムであって、前記鋼材に取り付けられた建方治具の位置に関する位置情報を取得する取得部、を備え、前記位置情報は、前記建方治具の幅方向における、前記建方治具の位置を示す、ことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の他の一態様に係る溶接システムは、鋼材に沿って配置されたガイドレールを移動しつつ、前記移動中に前記鋼材を溶接する溶接ロボット、を制御するための溶接システムであって、前記鋼材に取り付けられた建方治具の位置に関する位置情報を取得する取得部と、前記位置をユーザに入力させる入力部と、を備え、前記取得部は、前記入力部の入力結果に基づき、前記位置情報を取得する、ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の他の一態様に係る溶接システムは、鋼材に沿って配置されたガイドレールを移動しつつ、前記移動中に前記鋼材を溶接する溶接ロボット、を制御するための溶接システムであって、前記鋼材に取り付けられた建方治具の位置に関する位置情報を取得する取得部、を備え、前記位置情報は、前記建方治具の幅方向における中央の位置である、ことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の他の一態様に係る溶接システムは、鋼材に沿って配置されたガイドレールを移動しつつ、前記移動中に前記鋼材を溶接する溶接ロボット、を制御するための溶接システムであって、前記鋼材に取り付けられた建方治具の位置に関する位置情報を取得する取得部、を備え、前記位置情報は、前記溶接ロボットの幅方向における中央の位置と前記建方治具の幅方向における中央の位置とが前記溶接ロボットが前記ガイドレールを移動する方向と垂直な方向に沿って見て一致する場合における、前記溶接ロボットの位置である、ことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の他の一態様に係る溶接システムは、鋼材に沿って配置されたガイドレールを移動しつつ、前記移動中に前記鋼材を溶接する溶接ロボット、を制御するための溶接システムであって、前記鋼材に取り付けられた建方治具の位置に関する位置情報を取得する取得部、を備え、前記取得部は、前記位置情報とともに、前記建方治具の幅を示す幅情報を取得する、ことを特徴とする。
【0014】
また、上記溶接システムにおいて、前記取得部により取得された前記位置情報及び前記幅情報に基づき、前記溶接ロボットの溶接トーチを傾斜させて、前記鋼材のうち前記建方治具で覆われる部分の溶接を行う制御部、を更に備えていてもよい。
【0015】
また、上記溶接システムにおいて、前記溶接トーチが前記建方治具と干渉しない退避位置に前記溶接トーチを退避させているか否か、又は、前記覆われる部分の溶接が行われているか否か、を判別可能に出力部に出力させる出力制御部、を更に備えていてもよい。
【0016】
また、上記溶接システムにおいて、前記溶接ロボットに取り付けられる撮影装置をさらに備え、前記取得部は、前記撮影装置が取得した撮影結果に基づき、前記位置情報を取得してもよい。
【0017】
また、上記溶接システムにおいて、前記建方治具の幅方向における中央の位置に付されたマーカ、を更に備え、前記取得部は、前記撮影装置が前記マーカを撮影して取得した前記撮影結果に基づき、前記位置情報を取得してもよい。
【0018】
本発明の一態様に係る溶接方法は、鋼材に沿って配置されたガイドレールを移動しつつ、前記移動中に前記鋼材を溶接する溶接ロボットを制御するための溶接システムが実行する溶接方法であって、前記鋼材に取り付けられた建方治具の位置に関する位置情報を取得する取得ステップと、前記位置を取得するためのセンシング処理を行うセンシング処理ステップと、を備え、前記取得ステップでは、前記センシング処理ステップでのセンシング処理結果に基づき、前記位置情報を取得する、ことを特徴とする。
また、本発明の他の一態様に係る溶接方法は、鋼材に沿って配置されたガイドレールを移動しつつ、前記移動中に前記鋼材を溶接する溶接ロボットを制御するための溶接システムが実行する溶接方法であって、前記鋼材に取り付けられた建方治具の位置に関する位置情報を取得する取得ステップ、を備え、前記位置情報は、前記建方治具の幅方向における、前記建方治具の位置を示す、ことを特徴とする。
また、本発明の他の一態様に係る溶接方法は、鋼材に沿って配置されたガイドレールを移動しつつ、前記移動中に前記鋼材を溶接する溶接ロボットを制御するための溶接システムが実行する溶接方法であって、前記鋼材に取り付けられた建方治具の位置に関する位置情報を取得する取得ステップと、前記位置をユーザに入力させる入力ステップと、を備え、前記取得ステップでは、前記入力ステップでの入力結果に基づき、前記位置情報を取得する、ことを特徴とする。
【0019】
本発明の一態様に係るプログラムは、上記溶接システムとしてコンピュータを機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、建方治具を鋼管の任意の部分に取り付けた場合であっても、溶接ロボットを容易かつ精度よく制御することが可能な溶接システム、溶接方法、及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1実施形態に係る溶接システムを示す全体図である。
図2】第1実施形態に係る溶接システムの概要を説明するブロック図である。
図3】第1実施形態に係る溶接ロボット及び撮影装置を示す斜視図である。
図4】第1実施形態に係る溶接ロボットにおいて、溶接トーチが溶接位置にある状態を説明する側面図である。
図5】第1実施形態に係る溶接ロボットにおいて、溶接トーチが退避位置にある状態を説明する側面図である。
図6】第1実施形態に係る溶接ロボットにおいて、溶接トーチが正立溶接位置にある状態を示す正面図である。
図7】第1実施形態に係る溶接ロボットにおいて、溶接トーチが傾斜溶接位置にある状態を示す正面図である。
図8】第1実施形態に係る溶接ロボット及び撮影装置を示す斜視図である。
図9】第1実施形態に係る溶接ロボット及び撮影装置を示す斜視図である。
図10】第1実施形態に係るシステム制御装置のシステムブロック図である。
図11】第1実施形態に係るシステム制御装置の制御部のシステムブロック図である。
図12】第1実施形態に係る溶接トーチの動作を説明する図である。
図13】第1実施形態におけるシステム制御装置が実行する処理の全体の流れの一例を示す第1のフローチャートである。
図14】第1実施形態におけるシステム制御装置が実行する初期溶接処理の全体の流れの一例を示す第2のフローチャートである。
図15】第1実施形態におけるシステム制御装置が実行する退避処理の流れの一例を示す第3のフローチャートである。
図16】第1実施形態におけるセンシング処理を説明する図である。
図17】第1実施形態における初期溶接処理を説明する図である。
図18】第1実施形態における本溶接処理を説明する図である。
図19】第2実施形態におけるセンシング処理を説明する図である。
図20】第2実施形態における初期溶接処理を説明する図である。
図21】第2実施形態における本溶接処理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
〔第1実施形態〕
以下、図1~18を参照し、本発明の第1実施形態に係る溶接システム100を説明する。
図1に示されるように、溶接システム100は、鉛直方向Dvに並べて配置された鋼管8の端部同士を溶接するために用いられる。
鋼管8は、4つの円弧状の角部と、角部同士をそれぞれ接続する4つの直線部とを有する角形鋼管である。鋼管8は、鉛直方向Dvに延びる。初期状態では、鋼管8は、建方治具9により仮止めされている。建方治具9は、鋼管8の直線部に取り付けられている。4つの建方治具9が、4つの直線部にそれぞれ取り付けられている。
【0023】
〔溶接システムの概要〕
まず、図1及び図2を参照して、溶接システム100の概要を説明する。溶接システム100は、溶接ロボット1と、ガイドレール2と、撮影装置3と、溶接電源4と、ワイヤ送給装置5と、システム制御装置6と、を備える。
【0024】
溶接ロボット1は、制御部31と、複数のモータ32と、溶接トーチ13とを備える。制御部31は、溶接ロボット1の動作を制御する。制御部31は、システム制御装置6と通信可能に接続されており、システム制御装置6による制御を受けて溶接ロボット1の動作を制御する。なお、制御部31は、システム制御装置6に設けられていても良い。
モータ32は、溶接ロボット1を駆動させるモータである。モータ32は、溶接ロボット1をガイドレール2に沿って移動させるサーボモータを含む。
【0025】
溶接トーチ13は、鋼管8の端部同士の溶接に用いられる。溶接トーチ13による溶接は、例えばアーク溶接によって行われる。溶接トーチ13内には、溶接ワイヤ113が配置されている。
【0026】
図1に示されるように、ガイドレール2は、鋼管8に沿って配置される。ガイドレール2は、鋼管8の周方向に環状に、鋼管8を囲むように配置される。溶接ロボット1は、ガイドレール2に沿って移動可能である。
以下、溶接ロボット1がガイドレール2に沿って移動する方向を、走行方向Drと称する。すなわち、走行方向Drは、ガイドレール2が延びる方向である。また、鉛直方向Dv及び走行方向Drに直交する方向を、近接隔離方向Dhと称する。例えば、鋼管8の直線部においては、近接隔離方向Dhは、鋼管8の面に直交する方向である。
【0027】
撮影装置3は、溶接ロボット1に取り付けられる。撮影装置3は、溶接前のセンシング処理において鋼管8の溶接部位、及び建方治具9を撮影する。また、撮影装置3は、溶接処理において溶接ロボット1による溶接の様子を撮影する。撮影装置3は、例えばカメラである。撮影装置3はシステム制御装置6と通信可能に接続されており、撮影装置3が取得した画像又は動画(以下、撮影結果と言う)はシステム制御装置6に送信される。
【0028】
溶接電源4は、ワイヤ送給装置5へ電力を供給する。溶接電源4は、鋼管8と溶接トーチ13との間に電圧を印加する。ワイヤ送給装置5は、溶接トーチ13へ溶接ワイヤ113を供給する。溶接トーチ13は、溶接トーチ用ケーブル80を介して、ワイヤ送給装置5と接続される。
【0029】
システム制御装置6は、溶接システム100の動作を制御する。システム制御装置6は、具体的には、溶接ロボット1、溶接電源4及びワイヤ送給装置5の動作を制御する。
溶接ロボット1は、制御ケーブル70を介して、システム制御装置6と接続される。制御ケーブル70は、システム制御装置6が送信した信号であって溶接ロボット1を制御する制御信号を溶接ロボット1に伝送する。
【0030】
〔溶接ロボットの構成〕
次に、図1及び図3を参照して、溶接ロボット1の構成を説明する。
溶接ロボット1は、本体部11と、溶接トーチ13と、支持部14と、を備える。
本体部11は、溶接ロボット1の基台である。本体部11は、制御部31及びモータ32を備える。本体部11は、ガイドレール2に取り付けられるスライド部12を備える。溶接ロボット1は、スライド部12がガイドレール2の上を摺動することで、走行方向Drに移動する。スライド部12は、モータ32(サーボモータ)が駆動することでガイドレール2の上を摺動する。
【0031】
支持部14は、本体部11と溶接トーチ13との間に設けられ、溶接トーチ13を支持する。支持部14は、ケース21と、ブラケット22と、パネル23と、ホルダ24と、を有する。
ケース21は、本体部11の外側を覆うように設けられる。ケース21は、例えばケース21の内部に構成された送り機構により、本体部11に対して、近接隔離方向Dhへ移動可能とされている。ケース21とブラケット22とにより、移動部33が構成される。移動部33は、ケース21を本体部11に対して近接隔離方向Dhへ移動させることで、溶接トーチ13を鋼管8に対して近接離隔させることができる。
【0032】
ブラケット22は、ケース21に接続される。ブラケット22は、ケース21の下端から、鉛直方向Dvの下方へ延びる。パネル23は、ブラケット22の下端に接続される。ホルダ24は、パネル23の下面に接続される。ホルダ24に、溶接トーチ13が支持されている。
【0033】
パネル23は、ブラケット22に対して、走行方向Drに平行な軸線341回りに回動可能とされている。ブラケット22とパネル23とにより、第1の角度調整部34が構成される。
ホルダ24は、パネル23に対して、パネル23の表面と直交する軸線351回りに回動可能とされている。パネル23とホルダ24とにより、第2の角度調整部35が構成される。
【0034】
図4及び図5を参照して、第1の角度調整部34について詳述する。
図4に示されるように、第1の角度調整部34は、パネル23のブラケット22に対する角度を調整することで、溶接トーチ13のねらい角Awを調整する。ねらい角Awは、溶接トーチ13の先端に支持された溶接ワイヤ113の鉛直方向Dvの向きである。ねらい角Awは、鋼管8の溶接部位の状態に応じて適切に調整される。
なお、図4においては、溶接トーチ13のねらい角Awは調整されるものの、溶接トーチ13の先端の溶接ワイヤ113は鋼管8の溶接部位に接触又は近接しており、溶接トーチ13による鋼管8の溶接が可能となっている。溶接トーチ13による溶接が可能な範囲内における溶接トーチ13の位置を、溶接位置Pwと称する。
【0035】
また、本実施形態においては、図5に示されるように、第1の角度調整部34は、溶接トーチ13を、溶接位置Pwから、溶接トーチ13が建方治具9と干渉しない退避位置Prまで退避させる退避機構を兼ねている。すなわち、第1の角度調整部34は、溶接トーチ13を軸線341回りに大きく回動させることにより、溶接ワイヤ113を鋼管8の溶接部位から離間させ、退避位置Prまで移動させる。退避位置Prは、溶接ワイヤ113及びこれを支持する溶接トーチ13の先端部が建方治具9と干渉しないときの溶接トーチ13の位置である。
【0036】
図6及び図7を参照して、第2の角度調整部35について詳述する。
図6に示されるように、第2の角度調整部35は、ホルダ24のパネル23に対する角度を調整することで、溶接トーチ13のトーチ角Atを調整する。トーチ角Atは、溶接トーチ13の先端に支持された溶接ワイヤ113の走行方向Drの向きである。トーチ角Atは、鋼管8の溶接部位の状態、及び溶接ロボット1と建方治具9との相対位置に応じて適切に調整される。
図6においては、溶接トーチ13のトーチ角Atは0となっている。このときの溶接トーチ13の位置を、正立溶接位置Pw0とする。すなわち、溶接トーチ13が正立溶接位置Pw0に位置するとき、溶接トーチ13は、溶接方向(走行方向Dr)に対して直角に正立し、溶接方向が双方向いずれであっても同条件で溶接を行うことができる。
【0037】
また、図7に示されるように、第2の角度調整部35は、溶接トーチ13のトーチ角Atを変更し、溶接トーチ13を傾斜させて、溶接トーチ13の先端を鋼管8と建方治具9との間に潜り込ませる。これにより、鋼管8のうち建方治具9に覆われる部分の溶接を行うことができる。このときの溶接トーチ13の位置を、傾斜溶接位置Pw1とする。
なお、これらの角度調整部34、35は、いずれもモータ32の駆動により動作する。
【0038】
図8及び図9に示されるように、撮影装置3は、姿勢調整機構40を介して溶接ロボット1に取り付けられる。撮影装置3は、溶接トーチ13の姿勢に影響されない状態で溶接ロボット1に取り付けられている。姿勢調整機構40及び撮影装置3は、溶接ロボット1の走行の際にも建方治具9と干渉しない位置に設けられる。
【0039】
一対の撮影装置3及び一対の姿勢調整機構40が、溶接ロボット1の幅方向の両側に設置される。なお、溶接ロボット1の幅方向とは、走行方向Drと平行な方向である。一対の撮影装置3を設けることにより、溶接ロボット1が走行方向Drの双方向いずれに向かって走行しても、一方の撮影装置3により溶接ロボット1の前方の溶接部位、すなわちこれから溶接する部位を撮影し、他方の撮影装置3により溶接ロボット1の後方の溶接部位、すなわち溶接された部位を撮影することができる。
【0040】
図9に示されるように、姿勢調整機構40は、レール401と、スライダ402と、アーム403と、マウント404とを有する。
レール401は、ケース21に取り付けられる。レール401は、鉛直方向Dvに沿って延びる。スライダ402は、レール401に、レール401に沿って移動可能に取り付けられる。スライダ402は、レール401の任意の位置で停止可能である。これにより、撮影装置3を、溶接ロボット1に対して鉛直方向Dvの任意の位置へ移動させることができる。
アーム403は、スライダ402から延びる。アーム403の先端には、マウント404が取り付けられる。マウント404には、撮影装置3が支持される。撮影装置3は、マウント404に対して鉛直方向Dvの軸線まわりに回動可能に取り付けられる。これにより、撮影装置3を、鉛直方向Dvに沿った軸線回りの任意の角度に回動させることができる。
このように、撮影装置3は、溶接ロボット1に対して鉛直方向Dvの任意の位置へ移動可能であり、かつ鉛直方向Dvに沿った軸線回りの任意の角度に回動可能である。これにより、撮影装置3の撮影アングルの自由度を高めることができる。
【0041】
また、スライダ402は、レール401の上方へ抜き出すことができる。これにより、撮影装置3は、溶接ロボット1から着脱可能である。
【0042】
〔溶接システムの制御系〕
次に、図10及び図11を参照して、溶接システム100の制御系について説明する。
図10は、実施形態におけるシステム制御装置6のハードウェア構成の一例を示す図である。システム制御装置6は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ91とメモリ92とを備え、プログラムを実行する。システム制御装置6は、プログラムの実行によって制御部61、通信部62、入力部63、記憶部64及び出力部65を備える装置として機能する。
【0043】
より具体的には、システム制御装置6は、プロセッサ91が記憶部64に記憶されているプログラムを読み出し、読み出したプログラムをメモリ92に記憶させる。プロセッサ91が、メモリ92に記憶させたプログラムを実行することによって、システム制御装置6は、制御部61、通信部62、入力部63、記憶部64及び出力部65を備える装置として機能する。
【0044】
制御部61は、システム制御装置6が備える各種機能部の動作を制御する。制御部61は、例えば溶接ロボット1の動作を制御する。制御部61は、例えば溶接ロボット1に溶接を実行させる。制御部61は、例えば溶接ロボット1の動作の制御に際して、溶接電源4の動作やワイヤ送給装置5の動作を制御することで溶接ロボット1の動作を制御することもある。制御部61の他の機能については後述する。
【0045】
通信部62は、システム制御装置6を外部装置に接続するための通信インタフェースを含んで構成される。通信部62は、有線又は無線を介して外部装置と通信する。外部装置は、例えば溶接ロボット1である。通信部62は、例えば制御ケーブル70を介して溶接ロボット1と通信する。通信部62は、例えば溶接ロボット1に制御信号を送信する。外部装置は、例えば撮影装置3である。通信部62は、撮影装置3との通信によって、撮影結果を取得する。外部装置は、例えば溶接電源4である。外部装置は、例えばワイヤ送給装置5である。
【0046】
通信部62は、例えば制御ケーブル70を介して溶接ロボット1の位置に関する情報(以下、溶接ロボット位置情報と言う)を取得する。溶接ロボット位置情報は、例えば溶接ロボット1の移動に関するサーボモータ(モータ32)の制御の目標値(以下、単に目標値とも言う)である。
【0047】
入力部63は、マウスやキーボード、タッチパネル等の入力装置を含んで構成される。入力部63は、これらの入力装置をシステム制御装置6に接続するインタフェースとして構成されてもよい。入力部63は、システム制御装置6に対する各種情報の入力を受け付ける。入力部63には、例えば溶接の開始の指示が入力される。
【0048】
記憶部64は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などのコンピュータ読み出し可能な記憶媒体装置を用いて構成される。記憶部64は、システム制御装置6自体を含む溶接システム100に関する各種情報を記憶する。記憶部64は、例えば通信部62又は入力部63を介して入力された情報を記憶する。記憶部64は、例えば制御部61による処理の実行により生じた各種情報を記憶する。記憶部64は、例えば撮影装置3が取得した撮影結果を記憶する。
記憶部64は、例えば前記目標値(溶接ロボット位置情報)を記憶する。
記憶部64は、予め建方治具9の形状を示す建方治具形状情報を記憶する。建方治具形状情報は、建方治具9の幅を示す幅情報を含む。建方治具形状情報は、建方治具9の側面であって鋼管8とは反対側の側面の高さ(以下、建方治具9の高さとも称する)、及び建方治具9の側面であって鋼管8側の側面の高さ(以下、建方治具9の底面の鋼管8からの高さとも称する)を示す高さ情報を含む。
記憶部64は、予め、第2の角度調整部35による軸線351回りの溶接トーチ13の回動可能範囲(以下、トーチ角Atの可動範囲とも称する)、及び溶接トーチ13の先端の溶接ワイヤ113の可動な長さの範囲(以下、溶接トーチ13の可動半径とも称する)を記憶する。
記憶部64は、予め、溶接トーチ13を溶接位置Pwから退避位置Prへ移動させるための動作に関する退避動作情報を記憶する。退避動作情報は、例えば、溶接位置Pwから退避位置Prへの溶接トーチ13の回動量を含む。
【0049】
出力部65は、各種情報を出力する。出力部65は、例えばCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイや液晶ディスプレイ、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等の表示装置を含んで構成される。出力部65は、これらの表示装置をシステム制御装置6に接続するインタフェースとして構成されてもよい。出力部65は、例えば入力部63に入力された情報を出力する。
出力部65は、例えば制御部61による処理の実行の結果を表示してもよい。例えば、出力部65は、溶接トーチ13が建方治具9と干渉しない退避位置Prに溶接トーチ13を退避させているか否かとともに、溶接ロボット1により鋼管8のうち建方治具9に覆われる部分の溶接が行われているか否か、等を判別可能に表示してもよい。例えば、溶接ロボット1の各軸の現在位置をユーザインタフェースに表示しており、この表示の結果、ユーザは、溶接トーチ13が退避位置Prに退避していることや、溶接ロボット1が鋼管8のうち建方治具9に覆われる部分の溶接を行っていることを判別できる。
また、出力部65は、音声により、溶接トーチ13が建方治具9と干渉しない退避位置Prに溶接トーチ13を退避させているか否かとともに、溶接ロボット1により鋼管8のうち建方治具9に覆われる部分の溶接が行われているか否か、等を判別可能に出力してもよい。
【0050】
図11は、本実施形態における制御部61の機能構成の一例を示す図である。制御部61は、データ取得部610、溶接ロボット制御部620、記憶制御部630、入力制御部640及び出力制御部650を備える。
【0051】
データ取得部610は、記憶部64に記憶された撮影装置3の撮影結果を取得する。データ取得部610は、記憶部64に記憶された溶接ロボット位置情報を取得する。データ取得部610は、記憶部64に予め記憶されている建方治具形状情報を取得する。データ取得部610は、記憶部64に予め記憶されているトーチ角Atの可動範囲、及び溶接トーチ13の可動半径を取得する。データ取得部610は、記憶部64に予め記憶されている退避動作情報を取得する。
【0052】
溶接ロボット制御部620は、溶接ロボット1の動作を制御する。溶接ロボット制御部620は、溶接実行制御部621、位置情報取得部622(取得部)、接触判定部623(判定部)、退避処理実行制御部624(制御部)及び溶接終了判定部625を備える。
【0053】
溶接実行制御部621は、溶接ロボット1の動作を制御して溶接ロボット1に溶接を実行させる。溶接実行制御部621の制御により、溶接ロボット1はガイドレール2上を移動しつつ鋼管8の溶接を行う。
【0054】
位置情報取得部622は、建方治具9の位置に関する情報である建方治具位置情報を取得する。
【0055】
建方治具位置情報の取得について詳述する。
例えば、建方治具9の幅方向の中央の位置にマーカを付しておく。マーカの一例は、QRコード(登録商標)(Quick Response Code)である。なお、建方治具9の幅方向とは、走行方向Drと平行な方向である。溶接前のセンシング処理において、溶接ロボット1をガイドレール2に沿って移動させながら、撮影装置3により建方治具9に付されたマーカを撮影する。撮影装置3が取得した撮影結果は、通信部62を介して記憶部64に記憶される。なお、例えば、撮影装置3による撮影の開始時に、走行方向Drに沿う軸(1次元の座標)の原点を設定する。軸の原点は、任意に設定可能であり、記憶部64に記憶されている。例えば、軸の原点は、入力部63に撮影の開始の指示が入力された時における溶接ロボット1の位置とすることができる。
位置情報取得部622は、記憶部64及びデータ取得部610を介して撮影装置3から撮影結果を取得する。位置情報取得部622は、撮影装置3が取得した撮影結果に対して画像認識処理を行うことによって、マーカの位置を特定する。マーカの位置は、上記1次元の座標で示される。位置情報取得部622は、このマーカの位置を、建方治具位置情報として取得する。すなわち、この場合、建方治具位置情報は、建方治具9の幅方向の中央の位置である。建方治具9の幅方向の中央の位置は、上記1次元の座標で示される。
【0056】
また、位置情報取得部622は、記憶部64及びデータ取得部610を介して、溶接ロボット位置情報を取得する。
また、位置情報取得部622は、記憶部64及びデータ取得部610を介して、建方治具形状情報を取得する。
【0057】
位置情報取得部622は、溶接トーチ13が建方治具9に接触するときの溶接ロボット1の位置(以下、接触位置とも称する)に関する情報である接触位置情報を取得する。具体的には、位置情報取得部622は、建方治具位置情報(上記においては建方治具9の幅方向の中央の位置)と、建方治具形状情報に含まれる幅情報とに基づき、溶接ロボット1の接触位置を算出する。溶接ロボット1の接触位置は、上記1次元の座標で示される。
【0058】
位置情報取得部622は、溶接トーチ13を傾斜させて鋼管8のうち建方治具9で覆われる部分の溶接を開始するときの溶接ロボット1の位置(以下、傾斜溶接開始位置とも称する)に関する情報である傾斜溶接開始位置情報を取得する。具体的には、位置情報取得部622は、溶接ロボット1の接触位置から、上記1次元の座標において所定の余裕代αだけ手前の位置を、溶接ロボット1の傾斜溶接開始位置として算出する。溶接ロボット1の傾斜溶接開始位置は、上記1次元の座標で示される。なお、所定の余裕代αは、予め記憶部64に記憶されている。
【0059】
なお、位置情報取得部622は、建方治具位置情報、接触位置情報、及び傾斜溶接開始位置情報を、後述する初期溶接処理の開始前に取得してもよい。
【0060】
接触判定部623は、接触位置情報又は傾斜溶接開始位置情報と、溶接ロボット位置情報とに基づき、溶接を続けると溶接トーチ13が建方治具9に接触するか否かを判定する接触判定処理を実行する。
【0061】
接触判定処理について詳述する。
例えば、接触判定部623は、位置情報取得部622に接触位置情報又は傾斜溶接開始位置情報を取得させる。接触判定部623は、位置情報取得部622に溶接ロボット位置情報を取得させ、取得された溶接ロボット位置情報に基づいて、走行中の溶接ロボット1の位置(以下、走行位置とも言う)を推定する。走行位置は、上記1次元の座標で示される。接触判定部623は、推定される走行位置と、接触位置情報又は傾斜溶接開始位置情報とに基づき、溶接を続けると溶接トーチ13が建方治具9に接触するか否かを判定する。例えば、接触判定部623は、溶接ロボット1の走行位置が傾斜溶接開始位置に到達したか否かを判定することで、溶接を続けると溶接トーチ13が建方治具9に接触するか否かを判定する。接触判定部623は、溶接ロボット1の走行位置が接触位置に到達したか否かを判定することで、溶接を続けると溶接トーチ13が建方治具9に接触するか否かを判定してもよい。
【0062】
退避処理実行制御部624は、退避処理を実行する。退避処理は、溶接トーチ13を、溶接位置Pwから、溶接トーチ13が建方治具9と干渉しない退避位置Prに退避させる処理を含む。退避処理は、溶接トーチ13を傾斜させて、鋼管8のうち建方治具9で覆われる部分の溶接を行う処理を含む。
【0063】
退避処理について、図12を参照して詳述する。
退避処理実行制御部624は、溶接ロボット1の走行位置が傾斜溶接開始位置に到達したと判定されると、第2の角度調整部35により溶接トーチ13のトーチ角Atを変更させながら(溶接位置Pw1)、鋼管8のうち建方治具9で覆われる部分の前半分の溶接を行う。なお、このとき、溶接ロボット1の移動は中断しない。具体的には、退避処理実行制御部624は、記憶部64及びデータ取得部610を介して、建方治具形状情報を取得する。退避処理実行制御部624は、記憶部64及びデータ取得部610を介して、トーチ角Atの可動範囲及び溶接トーチ13の可動半径を取得する。退避処理実行制御部624は、建方治具形状情報に含まれる幅情報及び高さ情報と、トーチ角Atの可動範囲と、溶接トーチ13の可動半径とに基づき、鋼管8のうち建方治具9で覆われる部分の前半分の溶接を行うよう制御する。
【0064】
上記前半分の溶接が終了すると、退避処理実行制御部624は、溶接ロボット1を停止させるとともに、溶接ロボット1による溶接を中断する。退避処理実行制御部624は、第2の角度調整部35により溶接トーチ13のトーチ角Atを0まで戻し、第1の角度調整部34により溶接トーチ13を溶接位置Pw(Pw1)から退避位置Prに退避させる。具体的には、退避処理実行制御部624は、記憶部64及びデータ取得部610を介して、退避動作情報を取得する。退避処理実行制御部624は、退避動作情報に基づき、溶接トーチ13を溶接位置Pwから退避位置Prへ移動させる。
その後、退避処理実行制御部624は、溶接ロボット1を走行方向Drに所定距離だけ移動させ、建方治具9を跨いで通過させる。すなわち、退避処理実行制御部624は、位置情報取得部622により取得された建方治具形状情報に含まれる幅情報に基づき、溶接トーチ13が建方治具9に接触しない位置まで溶接ロボット1を走行方向Drに移動させる。
【0065】
溶接ロボット1を所定距離だけ移動させると、退避処理実行制御部624は、溶接ロボット1の移動を停止させ、第1の角度調整部34により溶接トーチ13を退避位置Prから溶接位置Pw(Pw2)まで、鋼管8に接近させる。退避処理実行制御部624は、溶接ロボット1の移動を再開させ、第2の角度調整部35により溶接トーチ13のトーチ角Atを変更させながら(溶接位置Pw2)、鋼管8のうち建方治具9で覆われる部分の溶接を行う。退避処理実行制御部624は、建方治具形状情報に含まれる幅情報及び高さ情報と、トーチ角Atの可動範囲と、溶接トーチ13の可動半径とに基づき、鋼管8のうち建方治具9で覆われる部分の後半分の溶接を行うよう制御する。
【0066】
溶接終了判定部625は、初期溶接終了条件が満たされるか否かを判定する。初期溶接終了条件は、溶接ロボット1による初期溶接を終了する条件である。初期溶接終了条件は、例えば、溶接ロボット1が予め定められた位置(以下、溶接終了位置とも言う)に到達した、という条件である。この場合、溶接終了判定部625は、例えば位置情報取得部622に溶接ロボット位置情報を取得させ、取得された溶接ロボット位置情報に基づいて、走行中の溶接ロボット1の位置(走行位置)を推定する。溶接終了判定部625は、推定される走行位置が溶接終了位置か否かを判定することで、初期溶接終了条件が満たされたか否かを判定する。
なお、初期溶接終了条件は、例えば溶接ロボット1による溶接が開始されてから所定の時間経過した、という条件であってもよい。
【0067】
記憶制御部630は、各種情報を記憶部64に記録する。記憶制御部630は、例えば制御部61の動作によって生じた各種情報を記憶部64に記録する。制御部61の動作によって生じた情報は、例えば溶接ロボット制御部620による溶接ロボット1の制御の内容を示す情報である。
【0068】
入力制御部640は、入力部63の動作を制御する。
出力制御部650は、出力部65の動作を制御する。例えば、出力制御部650は、溶接トーチ13が建方治具9と干渉しない退避位置Prに溶接トーチ13を退避させているか否かとともに、溶接ロボット1により鋼管8のうち建方治具9に覆われる部分の溶接が行われているか否か、等を判別可能に出力部65に表示させる。出力制御部650は、出力部65に、音声により、溶接トーチ13が建方治具9と干渉しない退避位置Prに溶接トーチ13を退避させているか否かとともに、溶接ロボット1により鋼管8のうち建方治具9に覆われる部分の溶接が行われているか否か、等を判別可能に出力させてもよい。
【0069】
〔溶接システムが実行する制御例〕
図13~18を参照して、溶接システムが実行する制御例について説明する。
図13は、本実施形態におけるシステム制御装置6が実行する処理の全体の流れの一例を示す第1のフローチャートである。
【0070】
まず、溶接の事前準備として、溶接部位の形状及び状態や、建方治具9の位置を把握するためのセンシング処理S1が行われる。
まず、溶接ロボット1をガイドレール2に沿って移動させながら、撮影装置3により、鋼管8の溶接部位の全周を連続して撮影する(ステップS101)。例えば、撮影装置3による撮影の開始時に、走行方向Drに沿う軸(1次元の座標)の所定位置を原点として登録し、原点位置から溶接ロボット1を一周させる。撮影装置3で撮影した溶接部位の画像に対して画像処理を行って、溶接部位の形状(例えば、鋼管8の角部の情報)や状態(例えば、開先情報)を判別する。
また、位置情報取得部622は、撮影装置3による撮影結果を用いて、建方治具位置情報を取得する(ステップS102)。
【0071】
図16に示されるように、鋼管8の溶接部位は、建方治具9により4つの区画Rn(R1~R4)に分割されている。センシング処理S1は、溶接部位の全周、すなわち区画R1からR4までの全周を連続して行われる。
【0072】
センシング処理S1が終了すると、建方治具9により鋼管8を仮止めした状態で、鋼管8の端部同士を溶接する初期溶接処理S2が行われる。初期溶接処理S2においては、建方治具9の位置で退避処理が実行される。これにより、建方治具9が鋼管8に取り付けられていても、溶接ロボット1を、建方治具9との接触を防止しつつ建方治具9を跨いで通過させることができ、建方治具9を跨いだ連続的な溶接を行うことができる。
【0073】
具体的には、従来は、区画R1~R4毎に初期溶接が行われていた。すなわち、例えば、区画R1について初期溶接を行い、その後、建方治具9を避けるために溶接トーチ13を一旦取り外して溶接ロボット1を次の区画R2に移動させ、溶接トーチ13を再度取り付け、区画R2について初期溶接を行う、という作業が繰り返されていた。
本実施形態においては、建方治具9の位置で退避処理を実行することにより、図17に示されるように、例えば、区画R2、R1、R4、R3の順に、鋼管8の溶接部位の全周の初期溶接を連続して行うことができる(溶接W1~溶接W4)。
【0074】
なお、鋼管8の全周溶接は、基本的に、複数回繰り返される。例えば、鋼管8の溶接部位の一周分の溶接W1~溶接W4を連続して行った後、溶接ロボット1の走行方向を反転させて、区画R3、R4、R1、R2の順に、鋼管8の溶接部位の一周分の溶接W5~溶接W8を連続して行うことが好ましい。このように、溶接ロボット1の走行方向を一周毎に反転させることにより、制御ケーブル70や溶接トーチ用ケーブル80の鋼管8への巻き付きを防止できる。
なお、初期溶接処理S2の詳細は後述する。
【0075】
初期溶接処理S2により鋼管8の溶接に所定の強度が得られると、初期溶接処理S2は終了する。初期溶接処理S2は、例えば、鋼管8の溶接部位の全周溶接が予め決められた回数行われたときに、終了すると判断される。
【0076】
初期溶接処理S2が終了すると、建方治具9を鋼管8から取り外し、この状態で鋼管8の端部同士を溶接する本溶接処理S3が行われる。
図18に示されるように、本溶接処理S3は、鋼管8の溶接部位の全周を連続して行われる。本溶接処理S3においては、退避処理を実施しない。また、鋼管8の全周溶接は、基本的に、複数回繰り返される。初期溶接処理S2と同様に、本溶接処理S3においても、制御ケーブル70や溶接トーチ用ケーブル80の鋼管8への巻き付きを防止するために、溶接ロボット1の走行方向を一周毎に反転させて溶接(溶接W1~W3)を行うことが好ましい。
【0077】
初期溶接処理S2について、図14を参照して詳述する。
図14は、本実施形態におけるシステム制御装置6が実行する初期溶接処理S2の全体の流れの一例を示す第2のフローチャートである。
【0078】
まず、入力部63に初期溶接の開始の指示が入力される(ステップS201)。初期溶接の開始の指示は、例えばユーザによって入力部63に入力される。次に、溶接実行制御部621が溶接ロボット1の動作を制御して溶接ロボット1に溶接を開始させる(ステップS202)。溶接ロボット1は、ガイドレール2に沿って移動しながら鋼管8の溶接を行う。このとき、溶接トーチ13は溶接位置Pwとなっている。
【0079】
次に、位置情報取得部622は、溶接ロボット位置情報を取得する(ステップS203)。接触判定部623は、建方治具位置情報と、溶接ロボット位置情報と、幅情報とを用いて、溶接を続けると溶接トーチ13が建方治具9に接触するか否かを判定する(ステップS204)。
溶接を続けても溶接トーチ13が建方治具9に接触しないと判定される場合(ステップS204:NO)、溶接終了判定部625は初期溶接終了条件が満たされたか否かを判定する(ステップS205)。初期溶接終了条件が満たされた場合(ステップS205:YES)、溶接実行制御部621は、溶接ロボット1に溶接の中止を指示し、初期溶接処理S2が終了する(ステップS206)。
一方、初期溶接終了条件が満たされない場合(ステップS205:NO)、ステップS203の処理に戻る。この場合、溶接ロボット1による溶接は継続される。
【0080】
一方、溶接を続けると溶接トーチ13が建方治具9に接触すると判定される場合(ステップS204:YES)、退避処理実行制御部624に退避処理の実行の指示が入力され、退避処理実行制御部624は、退避処理を実行する(ステップS207)。退避処理が終了すると、ステップS203の処理に戻る。
【0081】
退避処理(ステップS207)について、図15を参照して詳述する。
図15は、本実施形態におけるシステム制御装置6が実行する退避処理の流れの一例を示す第3のフローチャートである。
【0082】
まず、退避処理実行制御部624は、退避処理の実行の指示を受けると、溶接トーチ13のトーチ角Atを変更させながら、鋼管8のうち建方治具9に覆われる部分の前半分を溶接する(ステップS211)。その後、退避処理実行制御部624は、溶接ロボット1を停止し、溶接を中断する。また、退避処理実行制御部624は、溶接トーチ13のトーチ角Atを0に戻し、溶接トーチ13を溶接位置Pwから退避位置Prに移動させる(ステップS212)。その後、退避処理実行制御部624は、溶接ロボット1を走行方向Drに所定距離だけ移動させ、建方治具9を跨いで通過させる(ステップS213)。その後、退避処理実行制御部624は、溶接ロボット1を再度停止させ、溶接トーチ13を退避位置Prから溶接位置Pwに戻す(ステップS214)。その後、退避処理実行制御部624は、溶接ロボット1の移動を再開させ、溶接トーチ13のトーチ角Atを変更させながら、鋼管8のうち建方治具9に覆われる部分の後半分を溶接する(ステップS215)。これにより、退避処理が終了する。
【0083】
本実施形態に係る溶接システム100は、鋼管8に沿って配置されたガイドレール2を移動しつつ鋼管8を溶接する溶接ロボット1、を制御するための溶接システム100であって、鋼管8に取り付けられた建方治具9の位置に関する建方治具位置情報を取得する位置情報取得部622を備える。
したがって、建方治具9を、例えば鋼管8の直線部を含む、鋼管8の任意の部分に取り付けた場合であっても、位置情報取得部622により建方治具9の位置に関する建方治具位置情報を取得し、この建方治具位置情報に基づき溶接ロボット1を容易かつ精度よく制御することが可能となる。
【0084】
また、溶接システム100は、位置情報取得部622により取得された建方治具位置情報を用い、溶接を続けると溶接トーチ13が建方治具9に接触するか否かを判定する接触判定部623を備える。
これにより、溶接ロボット1による鋼管8の溶接中における、建方治具9と溶接トーチ13との接触の可能性を自動的に判定することができる。
【0085】
また、溶接システム100は、接触判定部623が溶接を続けると溶接トーチ13が建方治具9に接触すると判定した場合に、溶接トーチ13が建方治具9と干渉しない退避位置Prに溶接トーチ13を退避させる退避処理実行制御部624を備える。
建方治具9の位置では溶接トーチ13を一時的に退避位置Prとすることで、溶接ロボット1を、建方治具9との接触を防止しつつ建方治具9を跨いで通過させることができる。したがって、建方治具9を跨いだ連続的な溶接を行うことができ、作業効率を向上させることができる。
【0086】
また、位置情報取得部622は、建方治具位置情報とともに、建方治具9の幅を示す幅情報を取得する。
幅情報の取得により、建方治具9の配置をより正確に把握することができるため、建方治具9と溶接ロボット1との接触をより確実に防止することができる。
【0087】
また、溶接システム100は、位置情報取得部622により取得された建方治具位置情報及び幅情報に基づき、溶接トーチ13を傾斜させて、鋼管8のうち建方治具9で覆われる部分の溶接を行う退避処理実行制御部624を備える。
これにより、鋼管8のうち建方治具9で覆われる部分の溶接を、通常の鋼管8の溶接(すなわち、鋼管8のうち建方治具9で覆われていない部分の溶接)と連続して行うことができる。したがって、鋼管8のうち建方治具9で覆われる部分を個別に溶接する作業が不要となり、作業効率を向上させることができる。
【0088】
また、溶接システム100は、溶接トーチ13が建方治具9と干渉しない退避位置Prに溶接トーチ13を退避させているか否か、又は、鋼管8のうち建方治具9で覆われる部分の溶接が行われているか否か、を判別可能に出力部65に表示させる出力制御部650、を備える。
これにより、ユーザは、溶接トーチ13が退避位置Prに退避していることや、溶接ロボット1が鋼管8のうち建方治具9に覆われる部分の溶接を行っていることを容易に判別できる。
【0089】
また、溶接システム100は、溶接ロボット1に取り付けられる撮影装置3をさらに備え、位置情報取得部622は、撮影装置3が取得した撮影結果に基づき、建方治具位置情報を取得する。
また、溶接システム100は、建方治具9の幅方向における中央の位置に付されたマーカ、を備え、位置情報取得部622は、撮影装置3がマーカを撮影して取得した撮影結果に基づき、建方治具位置情報を取得する。
これにより、撮影装置3が取得した撮影結果を用いて、建方治具位置情報を自動的に取得することができる。
【0090】
〔第2実施形態〕
以下、図19~21を参照し、本発明の第2実施形態に係る溶接システム100を説明する。
本実施形態においては、溶接システム100は2台の溶接ロボット1を備える。1つのガイドレール2に2台の溶接ロボット1を設置し、鋼管8の溶接を半周ずつ分担させる。すなわち、1台の溶接ロボット1は鋼管8の半周の溶接を行う。なお、本実施形態の溶接システム100の構成及び作用は、2台の溶接ロボット1を備える点を除き、第1実施形態の溶接システム100と同様であるため、重複する説明は省略する。
【0091】
第1実施形態と同様に、初期状態では、鋼管8は建方治具9により仮止めされている。鋼管8の溶接部位は、建方治具9により区画R1~R4に分割されている。
図19に示されるように、本実施形態では、区画R3および区画R2を領域Aとし、区画R4および区画R1を領域Bとする。溶接ロボット1を、領域A、Bにそれぞれ配置する。ただし、2台の溶接ロボット1は、同じガイドレール2を共用している。
【0092】
センシング処理S1においては、2台の溶接ロボット1が領域A、Bのそれぞれを走行し、2台の溶接ロボット1により、鋼管8の溶接部位の半周のセンシングが並行して行われる。
【0093】
図20に示されるように、初期溶接処理S2においては、2台の溶接ロボット1が領域A、Bのそれぞれを走行し、2台の溶接ロボット1により、鋼管8の溶接部位の半周の初期溶接が並行して行われる。
すなわち、領域Aでは、例えば、一方の溶接ロボット1により、区画R3の溶接W1と、区画R2の溶接W2とが連続して行われる。その後、溶接ロボット1の走行方向を反転させて、区画R2の溶接W3と、区画R3の溶接W4とが連続して行われる。
領域Bでは、例えば、他方の溶接ロボット1により、区画R1の溶接W1と、区画R4の溶接W2とが連続して行われる。その後、溶接ロボット1の走行方向を反転させて、区画R4の溶接W3と、区画R1の溶接W4とが連続して行われる。
領域A、領域Bのいずれにおいても、初期溶接処理S2においては、建方治具9の位置で退避処理が実行される。
【0094】
図21に示されるように、初期溶接処理S2により鋼管8の溶接に所定の強度が得られたら、建方治具9を鋼管8から取り外し、本溶接処理S3が行われる。本溶接処理S3においては、2台の溶接ロボット1が領域A、Bのそれぞれを走行し、2台の溶接ロボット1により、鋼管8の溶接部位の半周の本溶接が並行して行われる。本溶接処理S3においては、退避処理を実施しない。
【0095】
本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
すなわち、建方治具9を、例えば鋼管8の直線部を含む、鋼管8の任意の部分に取り付けた場合であっても、建方治具9の位置に関する建方治具位置情報を取得し、この建方治具位置情報に基づき溶接ロボット1を容易かつ精度よく制御することが可能となる。
また、本実施形態においては、2台の溶接ロボット1で鋼管8の溶接を半周ずつ分担するため、作業時間を半減させることが可能であり、作業効率をさらに向上することができる。
【0096】
なお、本発明は、図面を参照して説明した上記実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
【0097】
上記実施形態においては、建方治具9にマーカを付しておき、撮影装置3により建方治具9に付されたマーカを撮影することにより、建方治具位置情報を取得する形態を説明したが、本発明はこれに限られない。
例えば、建方治具9にマーカを付さずに、撮影装置3からの距離が鋼管8と建方治具9とで異なることを利用して、撮影装置3が取得した撮影結果から距離情報を取得することにより、建方治具位置情報を取得してもよい。
【0098】
また、上記実施形態においては、位置情報取得部622は、建方治具9の幅方向の中央の位置を建方治具位置情報として取得したが、本発明はこれに限られない。
例えば、位置情報取得部622は、溶接ロボット1の幅方向の中央の位置と建方治具9の幅方向の中央の位置とが鉛直方向Dvに沿って見て一致する場合における、溶接ロボット1の位置を、建方治具位置情報として取得してもよい。
【0099】
また、上記実施形態においては、位置情報取得部622は、撮影装置3が取得した撮影結果に対して画像認識処理を行うことによって、建方治具位置情報を取得したが、本発明はこれに限られない。
例えば、ユーザが、入力部63を介して、建方治具9の位置を手動で登録してもよい。この場合、位置情報取得部622は、入力部63及びデータ取得部610を介して、ユーザが入力した登録位置を建方治具位置情報として取得する。
【0100】
また、上記実施形態においては、第1の角度調整部34が溶接トーチ13を軸線341回りに大きく回動させることにより、溶接トーチ13を溶接位置Pwから退避位置Prまで移動させる。しかしながら、第1の角度調整部34による溶接トーチ13の回動に加えて、移動部33によりケース21を本体部11に対して鋼管8から離れる方向へ移動させることにより、溶接トーチ13をさらに退避させてもよい。
【0101】
また、上記実施形態において、移動部33、第1の角度調整部34、第2の角度調整部35、及び姿勢調整機構40は、手動またはモータ駆動のいずれでもよい。モータ駆動であれば自動化に好適であるが、手動とすれば構造の簡素化が可能である。
【0102】
なお、溶接システム100の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0103】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0104】
100 溶接システム
1 溶接ロボット
2 ガイドレール
3 撮影装置
6 システム制御装置
8 鋼管
9 建方治具
13 溶接トーチ
33 移動部
34 第1の角度調整部
35 第2の角度調整部
61 制御部
62 通信部
63 入力部
64 記憶部
65 出力部
610 データ取得部
620 溶接ロボット制御部
621 溶接実行制御部
622 位置情報取得部(取得部)
623 接触判定部(判定部)
624 退避処理実行制御部(制御部)
625 溶接終了判定部
630 記憶制御部
640 入力制御部
650 出力制御部
Pw 溶接位置
Pr 退避位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図16
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図20
図21