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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】X線管装置及びX線CT装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 35/10 20060101AFI20240209BHJP
   F16C 19/18 20060101ALI20240209BHJP
   F16C 35/077 20060101ALI20240209BHJP
【FI】
H01J35/10 N
F16C19/18
F16C35/077
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021105268
(22)【出願日】2021-06-25
(65)【公開番号】P2023003899
(43)【公開日】2023-01-17
【審査請求日】2023-10-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】田邊 雄太郎
(72)【発明者】
【氏名】中山 公博
(72)【発明者】
【氏名】園田 蓮
(72)【発明者】
【氏名】関 善隆
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-037872(JP,U)
【文献】実開平06-058547(JP,U)
【文献】特開2006-179231(JP,A)
【文献】特開2013-174303(JP,A)
【文献】特開2014-086163(JP,A)
【文献】特開2014-154497(JP,A)
【文献】特開2017-091881(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 35/10
F16C 19/18
F16C 35/077
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子線を発生する陰極と、前記電子線が照射されることでX 線を発生する陽極と、前記陽極を支持して回転する回転部と、前記回転部の回転軸の方向に所定の距離を隔てて配置され、転動体を挟む外輪と内輪を有する回転軸受と、前記外輪を保持する保持部を備えるX線管装置であって、
前記保持部の内壁は、前記外輪の角から離間させられ
前記保持部の内壁には、前記保持部と前記外輪との接触面から発生する異物を回収する異物回収部が設けられ、
前記異物回収部は、前記回転軸の方向において前記接触面のほぼ中央に位置する溝であることを特徴とするX線管装置。
【請求項2】
請求項1に記載のX線管装置であって、
前記保持部の端部の角が丸められたR部が設けられることを特徴とするX線管装置。
【請求項3】
請求項1に記載のX線管装置であって、
前記保持部の端部の角が面取りされた面取り部が設けられることを特徴とするX線管装置。
【請求項4】
請求項1に記載のX線管装置であって、
前記保持部の端部よりも、前記回転軸の方向において、前記外輪が突出することを特徴とするX線管装置。
【請求項5】
請求項1に記載のX線管装置であって、
前記回転軸の方向において、前記保持部と前記外輪との接触面の長さが前記外輪の長さよりも短いことを特徴とするX線管装置。
【請求項6】
請求項1に記載のX線管装置であって、
前記保持部の内壁には、前記外輪の角が摺動する範囲にわたって溝が設けられることを特徴とするX線管装置。
【請求項7】
請求項1に記載のX線管装置を備えることを特徴とするX線CT装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線管装置及びX線CT(Computed Tomography)装置に係り、特に回転陽極型X線管装置に用いられる回転軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT装置は、被検体にX線を照射するX線管装置と、被検体を透過したX線を検出するX線検出器とを、被検体の周囲で回転させ、多方向から得られる投影データを用いて、被検体の断層画像を生成する。生成された断層画像は、被検体の中の臓器形状を描写し、画像診断に使用される。
【0003】
X線CT装置には、陽極を回転させる回転陽極型X線管装置が用いられ、陽極を支持して回転する回転部の回転軸の方向に所定の距離を隔てて回転軸受が配置される。X線発生時に電子線が照射される陽極からの伝熱によって、回転部は温度変化して熱膨張と熱収縮を繰り返す。回転部の熱膨張と熱収縮にともなって回転軸の方向に摺動する回転軸受は、回転軸受を保持する保持部に引っ掛かることがある。
【0004】
特許文献1には、回転軸受が保持部に対して円滑に摺動できるようにするために、回転軸受の外周面にダイヤモンドライクカーボンや鉛の薄膜がコーティングされたX線管装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-208078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1では、回転軸受が摺動を繰り返すことにより保持部を傷つけることに対する配慮が不十分である。耐久性を必要とされる回転軸受には高硬度な材質が用いられるため、純鉄等の比較的軟らかい材質の保持部を回転軸受の角が損傷させることがある。保持部の損傷は、回転軸受の摺動を妨げるとともに、回転軸受の機能を損なわせる要因になる。特に近年では、X線CT装置で必要とされるX線量が増大しているため、陽極の重量化が進み、回転軸受の摺動による保持部の損傷が大きくなりつつある。
【0007】
そこで本発明は、回転軸受を保持する保持部の損傷を防止できるX線管装置とそれを備えるX線CT装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、電子線を発生する陰極と、前記電子線が照射されることでX線を発生する陽極と、前記陽極を支持して回転する回転部と、前記回転部の回転軸の方向に所定の距離を隔てて配置され、転動体を挟む外輪と内輪を有する回転軸受と、前記外輪を保持する保持部を備えるX線管装置であって、前記保持部の内壁は、前記外輪の角から離間させられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、回転軸受を保持する保持部の損傷を防止できるX線管装置とそれを備えるX線CT装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】X線CT装置の全体構成を示す図である。
図2】X線管装置の全体構成を示す図である。
図3】陽極周辺の構造を示す図である。
図4A】回転支持部の構造の一例を示す図である。
図4B】回転支持部の構造の一例を示す図である。
図5A】第一実施形態の外輪周辺の構造の一例を示す図である。
図5B】第一実施形態の外輪周辺の構造の一例を示す図である。
図5C】第一実施形態の外輪周辺の構造の一例を示す図である。
図6A】第一実施形態の固定部の内壁構造の一例を示す図である。
図6B】第一実施形態の固定部の内壁構造の一例を示す図である。
図7】第二実施形態の回転円筒部の内壁構造の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第一実施形態]
以下、添付図面に従って本発明に係るX線管装置及びX線CT装置の好ましい実施形態について説明する。なお、以下の説明及び添付図面において、同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略することにする。
【0012】
図1を用いてX線CT装置1の全体構成について説明する。X線CT装置1は、スキャンガントリ部100と操作ユニット120を備える。
スキャンガントリ部100は、X線管装置101、回転円盤102、コリメータ103、X線検出器106、データ収集装置107、寝台装置105、ガントリ制御装置108、寝台制御装置109、X線制御装置110を備える。X線管装置101は寝台装置105に載置された被検体10にX線を照射する装置である。コリメータ103はX線の照射範囲を制限する装置である。回転円盤102は、寝台装置105に載置された被検体10が入る開口部104を備えるとともに、X線管装置101とX線検出器106を搭載し、X線管装置101とX線検出器106を被検体10の周囲で回転させる。
【0013】
X線検出器106は、X線管装置101と対向配置され、被検体10を透過したX線を検出することにより透過X線の空間的な分布を計測する装置である。X線検出器106の検出素子は、回転円盤102の回転方向と回転軸方向との2次元に配列される。データ収集装置107は、X線検出器106で検出されたX線量をデジタルデータとして収集する装置である。ガントリ制御装置108は回転円盤102の回転及び傾斜を制御する装置である。
【0014】
寝台制御装置109は、寝台装置105の上下前後左右動を制御する装置である。X線制御装置110は、X線管装置101に入力される電力を制御する装置である。
【0015】
操作ユニット120は、入力装置121、画像処理装置122、表示装置125、記憶装置123、システム制御装置124を備える。入力装置121は、被検体10の氏名、検査日時、撮影条件等を入力するための装置であり、具体的にはキーボードやポインティングデバイス、タッチパネル等である。画像処理装置122は、データ収集装置107から送出される計測データを演算処理してCT画像を再構成したり、CT画像に様々な画像処理をしたりする装置である。表示装置125は、画像処理装置122で生成されたCT画像等を表示する装置であり、具体的には液晶ディスプレイやタッチパネル等である。記憶装置123は、データ収集装置107で収集されたデータや画像処理装置122で生成されたCT画像等を記憶する装置であり、具体的にはHDD(Hard Disk Drive)等である。システム制御装置124は、各部を制御する装置である。
【0016】
入力装置121から入力された撮影条件、特にX線管電圧やX線管電流などに基づきX線制御装置110がX線管装置101に入力される電力を制御することにより、X線管装置101は撮影条件に応じたX線を被検体10に照射する。X線検出器106は、X線管装置101から照射され被検体10を透過したX線を、二次元配列された検出素子で検出し、透過X線の分布を計測する。回転円盤102はガントリ制御装置108により制御され、入力装置121から入力された撮影条件、特に回転速度等に基づいて回転する。寝台装置105は寝台制御装置109によって制御され、入力装置121から入力された撮影条件、特にらせんピッチ等に基づいて動作する。
【0017】
X線管装置101からのX線照射とX線検出器106によるX線計測が回転円盤102の回転とともに繰り返されることにより、様々な角度からの投影データが取得され、取得された投影データは画像処理装置122に送信される。画像処理装置122は送信された様々な角度からの投影データを逆投影処理することによりCT画像を再構成する。再構成されたCT画像は表示装置125に表示される。
【0018】
図2を用いて、X線管装置101の構成について説明する。X線管装置101は、X線を発生するX線管210と、X線管210を収納する容器220を備える。
【0019】
X線管210は、電子線を発生する陰極211と、陰極211に対し正の電位が印加される陽極212と、陰極211と陽極212を真空雰囲気中に保持する外囲器213を備える。
【0020】
陰極211はフィラメントもしくは冷陰極と、集束電極を備える。フィラメントはタングステンなどの高融点材料をコイル状に巻いたものであり、電流が流されることにより加熱され、電子を放出する。冷陰極はニッケルやモリブデンなどの金属材料を鋭利に尖らせたもので、陰極表面に電界が集中することで電界放出により電子を放出する。集束電極は、放出された電子を陽極212上のX線焦点へ向けて集束させるための集束電界を形成する。フィラメントもしくは冷陰極と、集束電極とは同電位である。
【0021】
陽極212は円板形状であって、ターゲットと陽極母材とを備える。ターゲットはタングステンなどの高融点で原子番号の大きい材質で構成される。ターゲット上のX線焦点に陰極211から放出された電子が衝突することにより、X線焦点からX線217が放射される。陽極母材は、銅などの熱伝導率の高い材質からなり、ターゲットを保持する。ターゲットと陽極母材とは同電位である。
【0022】
外囲器213は陰極211と陽極212の間を電気的に絶縁するために、陰極211と陽極212を真空雰囲気中に保持する。外囲器213の電位は接地電位である。
【0023】
陰極211から放出された電子は、陰極と陽極との間に印加される電圧により加速され電子線216となる。電子線216が集束電界により集束されてターゲット上のX線焦点に衝突すると、X線焦点からX線217が発生する。発生するX線217のエネルギーは、陰極と陽極との間に印加される電圧、いわゆる管電圧によって決まる。発生するX線217の線量は、陰極から放出される電子の量いわゆる管電流と、管電圧によって決まる。
【0024】
電子線216のエネルギーの内、X線に変換される割合は1%程度に過ぎず、残りのほとんどのエネルギーは熱となる。医療用のX線CT装置1に搭載されるX線管装置101では、管電圧は百数十kV、管電流は数百mAであるので、陽極212は数十kWの熱量で加熱される。このような加熱により陽極212が過熱溶融することを防止するため、陽極212は回転体支持部215に接続されており、回転体支持部215の駆動により、図2に1点鎖線で示される回転軸219の周りを回転する。回転体支持部215は、励磁コイル214が発生した磁界を回転駆動力として駆動する。陽極212を回転させることで、電子線216が衝突する部分であるX線焦点が常に移動するので、X線焦点の温度をターゲットの融点より低く保つことができ、陽極212が過熱溶融することを防止できる。
【0025】
X線管210と励磁コイル214とは、容器220の中に収納される。容器220の中には、X線管210を電気的に絶縁するとともに冷却媒体となる絶縁油が充填される。容器220内に充填された絶縁油は、X線管装置101の容器220に接続された配管を通じて冷却器に導かれ、冷却器にて熱を放散した後、配管を通じて容器220内に戻される。
【0026】
X線焦点で発生した熱により陽極212は平均温度1000℃程度となる。発生した熱の大半は陽極212の表面からの輻射により外囲器213へ放熱され、残りの熱は熱伝導により回転体支持部215を通じて外囲器213へ流れる。容器220にはX線217をX線管装置101の外へ放射するための放射窓218が備えられる。放射窓218は、X線透過率が高いベリリウムなどの原子番号の小さい材質で構成される。
【0027】
図3を用いて、陽極212に接続される回転体支持部215について説明する。図3は陽極212周辺の構造を示す図であり、回転軸219に沿った断面図である。回転体支持部215は、陽極212が陰極211と対向する面の裏側に接続され、固定部300、回転軸受304、回転部302、回転円筒部301、締結部303を備える。
【0028】
固定部300は、円筒の一端に底面が設けられた形状を有し、固定部300の底面側の端部が外囲器213に支持される。固定部300の円筒の内側には回転軸受304が配置される。
【0029】
回転軸受304は、回転部302を固定部300に対して回転可能に支持する部材であって、回転軸219の方向に所定の距離を隔てて配置される。回転軸受304の詳細構造については、図4A図4Bを用いて後述される。
【0030】
回転部302は、段付き円柱形状を有しており、固定部300の円筒の内側に配置され、回転軸受304によって固定部300に対して回転可能に支持される。回転部302には回転円筒部301が締結部303を介して接続され、回転円筒部301には陽極212が接続される。すなわち回転部302は陽極212を支持する。
【0031】
回転円筒部301は、円筒の一端に底面を有する形状であり、回転円筒部301の内側には固定部300及び回転部302が配置される。回転円筒部301は、励磁コイル214が発生する磁界を駆動力として、回転軸219を中心として回転する。回転円筒部301の回転に伴い、回転円筒部301に接続される陽極212及び回転部302も回転する。
【0032】
締結部303は、回転円筒部301と回転部302を接続する部材であり、陽極212から回転部302への伝熱経路が長くなるようにハット形状を有する。伝熱経路が長くなることにより、陽極212から回転部302への伝熱が抑制される。
【0033】
図4A図4Bを用いて、回転体支持部215が備える回転軸受304の詳細構造について説明する。回転軸受304は、内輪304A、転動体304B、外輪304Cを有する。転動体304Bは球体の部材であって、回転部302の周方向に多数配置され、内輪304Aと外輪304Cに挟まれる。内輪304Aと外輪304Cは転動体304Bが滑走する溝を有する部材である。回転軸219に近い側が内輪304A、回転軸219から遠い側が外輪304Cである。内輪304Aは図4A図4Bに例示されるように回転部302に設けられても良い。外輪304Cは固定部300に保持される。すなわち固定部300は外輪304Cを保持する保持部となる。内輪304A、転動体304B、外輪304Cには耐久性が必要とされるため、高速度工具鋼に用いられるような高硬度な材質、例えばSKH材等が用いられる。
【0034】
回転軸受304は、前述のように回転軸219の方向に所定の距離を隔てて配置される。図4Aでは、ネジ402によって固定部300に固定された間座400が、予圧バネ401とともに、2つの回転軸受304の間に配置される。予圧バネ401は図4Aに例示されるようにネジ402よりも陽極212に近い側に配置されても良いし、ネジ402よりも陽極212から遠い側に配置されても良い。また、ネジ402の両側に予圧バネ401が配置されても良い。図4Bでは、止め輪403とバネ404との間に、間座400によって所定の距離に隔てられた2つの回転軸受304が配置される。
【0035】
陽極212からの伝熱による熱膨張と、伝熱が停止したときの熱収縮とを回転部302が繰り返すことによって、2つの内輪304Aの間の距離が伸縮するので、外輪304Cは内輪304Aに追従して図4A図4Bに示される矢印の方向に摺動する。外輪304Cの摺動は、固定部300と外輪304Cとの間の潤滑剤を摩耗させたり、純鉄等の比較的軟らかい材質である固定部300の内壁を損傷させたりすることがある。固定部300の内壁の損傷は外輪304Cの摺動を妨げ、内輪304Aや外輪304Cと転動体304Bとの隙間を正常範囲外にし、回転軸受304の機能を損なわせる要因になる。そこで第一実施形態では、固定部300の損傷を防止できるように、外輪304Cの角から固定部300の内壁を離間させる。
【0036】
図5A乃至図5Cを用いて、第一実施形態の外輪304Cの周辺構造の一例について説明する。図5Aでは、外輪304Cの角Eから固定部300の内壁を離間させるために、固定部300の端部にR部500が設けられる。R部500は、固定部300の端部の角を丸めることによって形成され、外輪304Cの角Eが回転軸219の方向に摺動する範囲にわたって設けられ、外輪304Cが摺動しても角Eを固定部300の内壁に接触させない。言い換えると、回転軸219の方向において、外輪304Cと固定部300との接触面の長さが、外輪304Cの長さよりも短くなるように、固定部300が形成される。
【0037】
図5Bでは、固定部300の端部に面取り部501が設けられる。面取り部501は、固定部300の端部の角を面取りすることによって形成され、R部500と同様に、外輪304Cの角Eが回転軸219の方向に摺動する範囲にわたって設けられる。すなわち図5Bにおいても、回転軸219の方向において、外輪304Cと固定部300との接触面の長さが、外輪304Cの長さよりも短くなるように、固定部300が形成される。
【0038】
図5Cでは、回転軸219の方向において固定部300の端部よりも外輪304Cが突出するように固定部300が形成される。言い換えると、回転軸219の方向において、固定部300が外輪304Cに対して埋没させられる。なお、図5Cにおいても、回転軸219の方向において、外輪304Cと固定部300との接触面の長さは、外輪304Cの長さよりも短い。
【0039】
図5A乃至図5Cに例示される構造によれば、外輪304Cの角Eから固定部300の内壁が離間させられ、固定部300の内壁が外輪304Cの角Eに接触せずに済むので、固定部300の損傷を防止できる。図5A乃至図5Cでは、陽極212に近い側の固定部300の端部の形状について説明した。外輪304Cの角Eは固定部300の端部以外にも接触しえるので、以降では固定部300の内壁構造について説明する。
【0040】
図6A図6Bを用いて、第一実施形態の固定部300の内壁構造の一例について説明する。図6Aでは、固定部300の内壁に溝600が設けられる。溝600は、外輪304Cのそれぞれの角Eが回転軸219の方向に摺動する範囲にわたって設けられる。その結果、外輪304Cが摺動しても角Eを固定部300の内壁に接触させずに済むようになり、固定部300の損傷を防止できる。なお溝600の端部にR部500が設けられても良い。
【0041】
図6Bでは溝600とともに、異物回収部601が固定部300の内壁に設けられる。異物回収部601は、回転軸219の方向において固定部300と外輪304Cとの接触面のほぼ中央に設けられる溝であり、接触面から発生する異物を回収する。固定部300の接触面から発生する異物は、例えば接触面からはがれた潤滑剤であり、外輪304Cの摺動の妨げとなる。すなわち、異物回収部601が異物を回収することにより、外輪304Cの円滑な摺動が維持される。なお異物回収部601は回転軸219に直交する方向に対して傾斜する溝であることが好ましい。異物回収部601が傾斜溝であることにより、回収された異物は異物回収部601の中に留まりやすくなる。
【0042】
以上説明した第一実施形態によれば、摺動する外輪304Cの角Eを固定部300の内壁に接触させずに済むので、固定部300の損傷を防止できる。その結果、回転軸受304の機能を維持できる。
【0043】
[第二実施形態]
第一実施形態では、回転軸受304の外輪304Cが固定部300に保持される場合について説明した。第二実施形態では、外輪304Cが回転部302に保持される場合について説明する。なお第二実施形態において、固定部300、回転部302、回転軸受304以外の構成は、第一実施形態と同じであるので説明を省略する。
【0044】
図7を用いて、第二実施形態の固定部300、回転部302、回転軸受304の構造の一例について説明する。固定部300は円柱形状を有し、回転軸219の方向に所定の距離を隔てて、回転軸受304の内輪304Aが設けられる。
【0045】
回転部302は円筒の一端に底面が設けられた形状を有し、回転部302の底面側の端部に締結部303が接続され、締結部303と回転円筒部301を介して陽極212を支持する。回転部302の円筒の内側には、回転軸219の方向に所定の距離を隔てて回転軸受304が配置され、回転軸受304の外輪304Cは回転部302に保持される。すなわち回転部302は外輪304Cを保持する保持部となる。
【0046】
回転部302の円筒の内壁には、溝600が設けられる。溝600は、回転部302の熱膨張と熱収縮によって、外輪304Cのそれぞれの角Eが回転軸219の方向に回転部302に対して摺動する範囲にわたって設けられる。その結果、回転部302に対して外輪304Cが摺動しても角Eを回転部302の内壁に接触させずに済むようになり、回転部302の損傷を防止できる。
【0047】
以上説明した第二実施形態によれば、摺動する外輪304Cの角Eを、外輪304Cを保持する保持部となる回転部302の内壁に接触させずに済むので、保持部である回転部302の損傷を防止できる。その結果、回転軸受304の機能を維持できる。
【0048】
以上、本発明の複数の実施形態について説明した。なお本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせても良い。さらに、上記実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除しても良い。
【符号の説明】
【0049】
1:X線CT装置、10:被検体、100:スキャンガントリ部、101:X線管装置、102:回転円盤、103:コリメータ、104:開口部、105:寝台装置、106:X線検出器、107:データ収集装置、108:ガントリ制御装置、109:寝台制御装置、110:X線制御装置、120:操作ユニット、121:入力装置、122:画像処理装置、123:記憶装置、124:システム制御装置、125:表示装置、210:X線管、211:陰極、212:陽極、213:外囲器、214:励磁コイル、215:回転体支持部、216:電子線、217:X線、218:放射窓、219:回転軸、220:容器、300:固定部、301:回転円筒部、302:回転部、303:締結部、304:回転軸受、304A:内輪、304B:転動体、304C:外輪、400:間座、401:予圧バネ、402:ネジ、403:止め輪、404:バネ、500:R部、501:面取り部、600:溝、601:異物回収部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7