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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】センサ装置および空気調和機
(51)【国際特許分類】
   G01J 5/10 20060101AFI20240209BHJP
   F24F 11/89 20180101ALI20240209BHJP
   G01J 5/48 20220101ALI20240209BHJP
   G01J 5/03 20220101ALI20240209BHJP
【FI】
G01J5/10 C
F24F11/89
G01J5/48 D
G01J5/03
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021142357
(22)【出願日】2021-09-01
(65)【公開番号】P2023035475
(43)【公開日】2023-03-13
【審査請求日】2022-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】316011466
【氏名又は名称】日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000420
【氏名又は名称】弁理士法人MIP
(72)【発明者】
【氏名】高畑 茂
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-194231(JP,A)
【文献】特開2018-077256(JP,A)
【文献】特開2012-037087(JP,A)
【文献】実開平02-042145(JP,U)
【文献】特開昭62-161062(JP,A)
【文献】特開昭52-050774(JP,A)
【文献】特表2018-503815(JP,A)
【文献】特表2021-522475(JP,A)
【文献】米国特許第07250747(US,B1)
【文献】中国特許出願公開第102095501(CN,A)
【文献】国際公開第2019/235115(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/00 - G01J 1/60
G01J 5/00 - G01J 5/90
G01J 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の熱型検出素子を含む素子アレイと、
前記複数の熱型検出素子各々から分配される複数の出力端子と、
それぞれ前記複数の熱型検出素子の複数の出力端子のうちの1つに接続される、前記複数の熱型検出素子の複数の出力端子の数と一致する数を有する複数の増幅回路と、
前記複数の増幅回路に入力された各信号をデータに変換する少なくとも1つの信号変換部と
を含むセンサ装置。
【請求項2】
前記素子アレイを備える第1構造体と、
前記複数の増幅回路および前記少なくとも1つの信号変換部を備え、前記第1構造体とは別体の第2構造体と、
それぞれ、前記第1構造体における各出力端子と、前記第2構造体における対応する増幅回路に接続される入力端子との間を結線する複数の接続線と
を含み、前記第1構造体および前記第2構造体は、同一のパッケージに封入される、請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項3】
前記熱型検出素子は、サーモパイル素子であり、前記素子アレイは、1次元アレイであり、前記信号変換部は、A/Dコンバータであり、前記信号は、アナログ信号であり、前記センサ装置は、前記複数の増幅回路に入力された複数の信号のうちの選択された信号を前記少なくとも1つの信号変換部に出力する選択回路を備え、前記複数の増幅回路は、それぞれ1の利得を有するバッファ回路である、請求項1または2に記載のセンサ装置。
【請求項4】
前記センサ装置は、外部装置と通信し、前記複数の熱型検出素子からのセンサ出力のデータを通信回路により送信する制御回路を備える、請求項1~3のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項5】
前記複数の出力端子の数は、前記熱型検出素子の数の整数倍(2以上)であり、前記増幅回路の数は、前記熱型検出素子の数の前記整数倍以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のセンサ装置を備える空気調和機。
【請求項7】
前記空気調和機は、被空調空間の少なくとも1方向に向きを変えられるように回転可能に前記センサ装置が備えられた室内機を含み、前記空気調和機は、
前記被空調空間の前記少なくとも1方向で前記センサ装置の向きを走査しながら、前記複数の熱型検出素子のセンサ出力のデータを取得することによって、温度の二次元分布を計測するよう制御する制御部
をさらに備える、請求項6に記載の空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ技術に関し、より詳細には、センサ装置および該センサ装置を備える空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機などの製品開発においては、従来より、性能や利用者の快適性や利便性を可能な限り低下せずに、製造コストを低減することが求められている。また、空気調和機などの製品の部品については、互換性が重視される。互換性と言っても同じ部品やスペックであれば、性能や快適性、利便性を維持することが困難となるので、技術的に補完する必要がある。また、空気調和機において、可視光カメラ、熱検出センサ、赤外線センサを用いて、室内での在室人数、各人の位置、人の出入り、活動量を検知し、風向きや風量を制御することが行われている。そして、これらの熱検知センサを含むセンサ装置についても、性能の低下を避けながらコストを低減することが望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本開示は、上記点に鑑みてなされたものであり、充分な精度を有する安価かつ小型のセンサ装置を提供することを目的とする。
【0004】
本開示の他の目的は、充分な精度を有するセンサ装置を備える、コストが削減された空気調和機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示では、上記課題を解決するために、下記特徴を有するセンサ装置を提供する。本センサ装置は、複数の熱型検出素子を含む素子アレイを含み、複数の熱型検出素子各々から分配される複数の出力端子をさらに含む。本センサ装置は、また、それぞれ複数の熱型検出素子の複数の出力端子のうちの1つに接続される複数の増幅回路と、複数の増幅回路に入力された各信号をデータに変換する少なくとも1つの信号変換部とを含む。
【0006】
本開示では、さらに、上記センサ装置を備える空気調和機を提供することができる。
【発明の効果】
【0007】
上記構成を備えることにより、充分な精度を有する安価かつ小型のセンサ装置を提供することが可能となる。また、充分な精度を有するセンサ装置を備える、コストが削減された空気調和機を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施形態による空気調和機が備える室内機、室外機およびリモートコントローラ(以下、単にリモコンという。)の正面図である。
図2図2は、本発明の実施形態による空気調和機の冷媒回路を示す説明図である。
図3図3は、本発明の実施形態による空気調和機が備える室内機の側断面構成図である。
図4図4は、本発明の実施形態による空気調和機の機能ブロック図である。
図5図5は、典型的な表面温度検知部の温度検知範囲を説明する図である。
図6図6は、本実施形態による表面温度検知部を構成するセンサ装置のパッケージ構成を説明する図である。
図7図7は、本発明の実施形態による空気調和機において、表面温度検知部の温度検知範囲を説明する図である。
図8図8は、本発明の実施形態による空気調和機において測定される二次元の温度分布を撮像画像に重ねて示す図である。
図9図9は、関連技術における一次元アレイのサーモパイル素子を例示する回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明するが、本発明の実施形態は、以下に説明する具体的な実施形態に限定されるものではない。なお、図面において、同一符号は、同一または相当部分を示すものとする。
【0010】
図1は、本実施形態による空気調和機1が備える室内機10、室外機30およびリモコン40の正面図である。空気調和機1は、冷凍サイクル(ヒートポンプサイクル)で冷媒を循環させることによって、空気調和を行う機器である。図1に示すように、空気調和機1は、室内(被空調空間)に設置される室内機10と、屋外に設置される室外機30と、利用者によって操作されるリモコン40とを備える。
【0011】
室内機10は、リモコン送受信部11を備える。リモコン送受信部11は、赤外線通信などによって、リモコン40との間で所定の信号を送受信する。例えば、リモコン送受信部11は、運転指令、停止指令、設定温度の変更指令、運転状態の変更指令、タイマの設定指令などの信号をリモコン40から受信する。また、リモコン送受信部11は、室内温度の検出値などをリモコン40に送信する。
【0012】
室内機10の中央下部には、撮像部22および表面温度検知部23が近接して設置されている。撮像部22は、可視光帯域および赤外線光の一部帯域を含んだ帯域で被空調空間を撮像する。表面温度検知部23は、サーモパイルなどの非接触温度センサである。表面温度検知部23は、検出された温度分布を取得する。撮像部22と表面温度検知部23とは近接しているため、撮像部22による撮影画像と表面温度検知部23による温度分布とを対応付けることができる。空気調和機1において、撮像部22は、被空調空間を撮像し、撮像画像から、壁面、梁、扉や家具などの室内の構造の位置を推定したり、人の位置を推定したりするために用いられる。表面温度検知部23は、在室者の周辺温度などを検知するために用いられる。撮像部22および表面温度検知部23を用いることで、空気調和機1の節電と快適性の向上の両立を図っている。なお、表面温度検知部23および撮像部22の配置は、特に限定されるものではなく、画像検出方式、検出対象、撮像部22および表面温度検知部23の仕様などに応じて設定すればよい。
【0013】
なお、図1では省略しているが、室内機10と室外機30とは冷媒配管を介して接続されるとともに、通信線を介して接続される。
【0014】
図2は、本実施形態による空気調和機1の冷媒回路Qを示す説明図である。なお、図2の実線矢印は、暖房運転時における冷媒の流れを示している。また、図2の破線矢印は、冷房運転時における冷媒の流れを示している。図2に示すように、室内機10は、室内熱交換器12と、室内ファン14とを備える。室外機30は、圧縮機31と、室外熱交換器32と、室外ファン33と、室外膨張弁34と、四方弁35とを備える。
【0015】
室内熱交換器12は、伝熱管を通流する冷媒と室内空気との熱交換が行われる熱交換器である。室内ファン14は、例えば、円筒状のクロスフローファンであり、室内ファンモータ14a(図4参照)によって駆動される。
【0016】
圧縮機31は、圧縮機モータ31aの駆動によって、低温低圧のガス冷媒を圧縮し、高温高圧のガス冷媒として吐出する機器である。室外熱交換器32は、その伝熱管を通流する冷媒と室外ファン33から送り込まれる外気との間で熱交換が行われる熱交換器である。
【0017】
室外ファン33は、室外ファンモータ33aの駆動によって、室外熱交換器32に外気を送り込むファンであり、室外熱交換器32の付近に設置される。室外膨張弁34は、「凝縮器」(室外熱交換器32および室内熱交換器12の一方)で凝縮した冷媒を減圧する機能を有している。なお、室外膨張弁34において減圧された冷媒は、「蒸発器」(室外熱交換器32および室内熱交換器12の他方)に導かれる。
【0018】
四方弁35は、空気調和機1の運転状態に応じて、冷媒の流路を切り替える弁である。すなわち、冷房運転時(破線矢印を参照)には、圧縮機31、室外熱交換器32(凝縮器)、室外膨張弁34および室内熱交換器12(蒸発器)が、四方弁35を介して環状に順次接続されてなる冷媒回路Qにおいて、冷凍サイクルで冷媒が循環する。また、暖房運転時(実線矢印を参照)には、圧縮機31、室内熱交換器12(凝縮器)、室外膨張弁34および室外熱交換器32(蒸発器)が、四方弁35を介して環状に順次接続されてなる冷媒回路Qにおいて、冷凍サイクルで冷媒が循環する。
【0019】
図3は、本実施形態による空気調和機1が備える室内機10の側断面構成を示す図である。図3に示すように、室内機10は、図2に示した室内熱交換器12、室内ファン14の他に、ドレンパン13と、筐体ベース15と、フィルタ16a,16bと、前面パネル17と、左右風向板18と、上下風向板19とを備えている。
【0020】
室内熱交換器12は、複数のフィンと、それらのフィンを貫通する複数の伝熱管aとを有している。ドレンパン13は、室内熱交換器12の凝縮水を受けるものであり、室内熱交換器12の下方に配置される。なお、ドレンパン13に落下した水は、ドレンホースを介して外部に排出される。室内ファン14は、例えば、円筒状のクロスフローファンであり、室内熱交換器12の付近に配置される。
【0021】
筐体ベース15は、室内熱交換器12や室内ファン14などの機器が設置される筐体である。フィルタ16aは、前側の空気吸込口h1に向かう空気から塵埃を除去するものであり、室内熱交換器12の前側に設置される。フィルタ16bは、上側の空気吸込口h2に向かう空気から塵埃を除去するものであり、室内熱交換器12の上側に設置される。前面パネル17は、前側のフィルタ16aを覆うように設置されるパネルであり、下端を軸として前側に回動可能になっている。なお、前面パネル17が回動しない構成であってもよい。
【0022】
左右風向板18は、室内ファン14の回転に伴って、室内に吹き出される空気の左右方向の流れを調整する板状部材である。左右風向板18は、吹出風路h3に配置され、左右風向板用モータ18a(図4参照)によって左右方向に回動するようになっている。
【0023】
上下風向板19は、室内ファン14の回転に伴って室内に吹き出される空気の上下方向の流れを調整する板状部材である。上下風向板19は、空気吹出口h4の付近に配置され、上下風向板用モータ19a(図4参照)によって上下方向に回動するようになっている。上下風向板19は、また、空気吹出口h4を開閉するよう制御される。
【0024】
空気吸込口h1,h2を介して吸い込まれた空気は、室内熱交換器12の伝熱管aを通流する冷媒と熱交換し、熱交換した空気が吹出風路h3に導かれる。この吹出風路h3を通流する空気は、左右風向板18および上下風向板19によって所定方向に導かれ、さらに、空気吹出口h4を介して室内に吹き出される。
【0025】
撮像部22は、空気吹出口h4の近傍に取り付けられている。撮像部22は、所定の画角を有しており、自身の取り付け位置から水平方向に対して所定角度だけ下方を向くように設置されている。撮像部22は、CCDセンサ(Charge Coupled Device)やCMOSセンサ(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などの撮像素子を備え、これにより、室内機10が設置されている室内を適切に撮像可能である。ただし、撮像部22の取り付け位置やその設置角度は、空気調和機の仕様や用途に合わせて設定すればよく、特に限定されるものではない。
【0026】
表面温度検知部23は、撮像部22と同様(実際は、撮像部22と異なる断面に位置する。)であるが、空気吹出口h4の近傍に取り付けられている。説明する実施形態において、表面温度検知部23は、例えば横×縦が1×N画素で構成されたサーモパイル素子のアレイで構成される。表面温度検知部23は、各画素において、各画素に対応する室内の各部(エリア)の平均的な表面温度を検出する。なお、表面温度検知部23で検出するのは、室内の平均的な表面温度に限られず、床面、壁面の表面温度、人の着衣の表面温度、人の皮膚の温度、足の温度、足付近の温度、人の各部位の温度でもよい。
【0027】
図4は、空気調和機1の機能ブロック図である。図4に示す室内機10は、図1および図3でも示した撮像部22および表面温度検知部23のほかに、環境検出部24と、室内制御回路25とを備える。
【0028】
環境検出部24は、室内の状態や室内機10の機器の状態を検出する機能を有し、室内温度センサ24aと、湿度センサ24bと、室内熱交換器温度センサ24cと、を備えている。室内温度センサ24aは、室内(被空調空間)の温度を検出するセンサである。湿度センサ24bは、室内(被空調空間)の空気の湿度を検出するセンサである。室内熱交換器温度センサ24cは、室内熱交換器12の温度を検出するセンサであり、室内熱交換器12に設置される。室内温度センサ24a、湿度センサ24bおよび室内熱交換器温度センサ24cの検出値は、室内制御回路25に出力される。室内温度センサ24a、湿度センサ24bおよび室内熱交換器温度センサ24c以外のセンサが設けられてもよい。
【0029】
また、撮像部22は、被空調室内を連続的に撮像して画像情報に変換し、画像情報を室内制御回路25に出力する。表面温度検知部23は、被空調空間内の各部(各エリア)の温度分布を非接触で測定し、室内制御回路25に温度分布を出力する。
【0030】
室内制御回路25は、図示はしないが、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、各種インタフェースなどの電子回路を含んで構成される。そして、ROMに記憶されたプログラムを読み出してRAMに展開し、CPUが各種処理を実行するようになっている。
【0031】
図4に示すように、室内制御回路25は、記憶部25aと、室内制御部25bと、を備えている。記憶部25aには、所定のプログラムのほか、撮像部22の撮像結果、表面温度検知部23の温度分布、環境検出部24の検出結果、リモコン送受信部11を介して受信したデータなどが記憶される。室内制御部25bは、記憶部25aに記憶されているデータに基づいて、所定の制御を実行する。
【0032】
室外機30は、図2に示した構成のほか、室外温度センサ36と、室外制御回路37とを備える。室外温度センサ36は、室外の温度(外気温)を検出するセンサであり、室外機30の所定箇所に設置されている。なお、図4では省略しているが、室外機30は、圧縮機31(図2を参照のこと)の吸入温度、吐出温度、吐出圧力などを検出する各センサも備える。室外温度センサ36を含む各センサの検出値は、室外制御回路37に出力される。
【0033】
室外制御回路37は、図示はしないが、CPU、ROM、RAM、各種インタフェースなどの電子回路を含んで構成され、室内制御回路25と通信線を介して接続されている。図4に示すように、室外制御回路37は、記憶部37aと、室外制御部37bとを備えている。記憶部37aには、所定のプログラムのほか、室外温度センサ36を含む各センサの検出値などが記憶される。室外制御部37bは、記憶部37aに記憶されているデータに基づいて、圧縮機モータ31a(つまり、圧縮機31)、室外ファンモータ33a、室外膨張弁34などを制御する。
【0034】
以下では、室内制御回路25および室外制御回路37をまとめて「制御部K」と参照する。
【0035】
冷房運転では、制御部Kは、図2に破線矢印で示すように、四方弁35を、室内熱交換器12を蒸発器として作用させ、室外熱交換器32を凝縮器として作用させるように切り換えて、圧縮機31を駆動する。そして、制御部Kは、室内ファン14を駆動させることによって、図3に示す空気吸込口h1,h2などから取り入れた室内空気を、室内熱交換器12で冷却し、上下風向板19が開状態に設定された空気吹出口h4から吹き出させることで、室内機10が設置された室内(被空調空間)を冷房する。
【0036】
暖房運転では、図2に実線矢印で示すように、制御部Kは、四方弁35を、室内熱交換器12を凝縮器として作用させ、室外熱交換器32を蒸発器として作用させるように切り換えて、圧縮機31を駆動する。そして、制御部Kは、室内ファン14を駆動させることで、図3に示す空気吸込口h1,h2などから取り入れた室内空気を、室内熱交換器12で加熱し、上下風向板19が開状態に設定された空気吹出口h4から吹き出させることで、室内機10が設置された室内(被空調空間)を暖房する。その他、いわゆる再熱除湿運転と、冷房除湿運転などの除湿運転も行われる。
【0037】
また、制御部Kには、室内温度センサ24aおよび湿度センサ24bと、撮像部22と、表面温度検知部23が接続され、これらから情報が入力される。撮像部22により得られた被空調室内を連続的に撮像した画像情報および表面温度検知部23により得られた被空調室内の各部(各エリア)の温度分布は、制御部Kに入力される。制御部Kは、撮像部22から入力される画像情報と、表面温度検知部23から入力される温度分布と、室内温度センサ24aから入力される室温および湿度センサ24bから入力される湿度と、リモコン40から入力される指令信号、および各種センサから入力されるセンサ出力などに応じて、空気調和機1の動作を制御する。
【0038】
より具体的には、制御部Kは、撮像部22で撮像した画像情報に基づき室内環境を認識し、人の各部位や家具や窓などを認識することができる。認識された人の各部位の位置と、表面温度検知部23により取得される被空調室内の各部の温度を示す温度分布の情報とから、人の顔部、手足部(顔部以外の部位)を特定し、特定した部位の温度物体の温度を非接触で検知することができる。これにより、空気調和機1は、人の各部位の温度に基づいて空調運転を調整することができる。制御部Kは、空調運転中に表面温度検知部23から得られた人の顔部および顔部以外の部位の温度が所定条件を満たすと、設定温度または風向を調整する。制御部Kは、左右風向板18および左右風向板用モータ18aと、上下風向板19および上下風向板用モータ19aを駆動することにより、空調の風向を制御する。
【0039】
以下、上述した空気調和機1の動作で使用される、図1図3および図4に示した表面温度検知部23について、より詳細に説明する。
【0040】
図5は、典型的な表面温度検知部23の温度検知範囲を示す説明図であり、(A)は側面図である。表面温度検知部23は、複数のサーモパイル素子の集合を含むセンサ装置であり、上述したように、横×縦が1×N画素のサーモパイル素子が1次元配置された素子アレイを含む。各画素は、室内(被空調空間)の垂直方向の所定の画角を受け持つ。以下、センサ装置における各画素に対応するサーモパイル素子部分を熱感受部と参照する。なお、図5に示す例は、1×8画素の1次元アレイを用いる場合を例示しており、図5(A)に示すように室内(被空調空間)が垂直方向の所定の画角を受け持つ8つの領域に分割されている。
【0041】
また、素子の配列方向(N画素に並ぶ方向)を回転軸にしてサーモパイル素子を回転させることにより、検出素子の配列方向に垂直な方向に走査することができる。この走査中、各向きにおいてサンプリングすることにより、図5(B)に示すような、縦方向にN画素、走査方向(横方向)にM画素の2次元の放射熱像を取得することが可能となる。なお、図5(B)は、撮像部22により取得された撮像画像に、各画素(素子)および走査位置(向き)に対応するエリアを矩形で表して重ねた図である。また、図5(B)に示す例では、横×縦で14×8の画素数の温度分布が取得されている。なお、水平方向の分解能は、一例にすぎず、回転の角度範囲、走査速度、各水平位置での平均をとるサンプリング数などに依存して変化し得る。
【0042】
ここで、表面温度検知部23を構成するセンサ装置について、空気調和機1が提供する快適性を可能な限り損なわずに製造コストを低減することを検討する。まず、センサ装置の画素数を削減することにより、コストを削減することができる。しかしながら、この場合、画素数の削減に伴い、(例えば従来品の)所定の画素数であるとして用意していた空調温度や風向制御のソフトウェア資産(ロジック)を利用することができなくなる。また、センサ装置を小型化することにより、コストの削減を図ることができる。受光面積(熱電対の数)が減少すると、製造コストを削減することができ、また、レンズなどの光学要素も小型化されるためである。
【0043】
一方、センサ装置を構成するサーモパイル素子は、熱電対の数が多いほど高感度となり、一般に、熱電対の数と受光面積とは、比例することから、受光面が大面積であるほど高感度となる。そのため、センサ装置の小型化により、各画素あたりの受光面積が縮小すると、感度が低下し、ばらつきやノイズの影響が大きくなることが懸念される。一方、画素数を削減することにより、センサ装置の全体的なサイズを縮小しながら、各画素当たりの受光面積を増大させることで、各画素あたりの精度の向上が見込まれる。
【0044】
ここで、さらに、センサ装置における画素からデジタル値を取得するまでの経路で発生する可能性のあるノイズやばらつきを検討する。この場合、サーモパイル素子内部で発生する熱雑音や素子個体差によるばらつき、センサ出力を増幅するための増幅回路での熱雑音や個体差によるばらつき、配線や接続線など他の回路部分で発生する熱雑音や製造工程に起因したばらつきが存在し、これらが合成されたものが、センサ装置全体としての出力のノイズおよびばらつきとなる。
【0045】
一般的に、ノイズやばらつきを抑制するためには2通りの手法を採用することができる。1つ目は、センサ素子や構成要素そのものの性能を高めて、各回路要素で発生するノイズやばらつきを抑制するアプロ―チである。2つ目は、ノイズが一般的には正規部分布に従ってランダムに発生することから、センサ素子の複数回サンプリングした出力値を加算し、平均値を求めることで、ノイズやばらつきを吸収するアプローチである。
【0046】
しかしながら、第1の手法のように、センサ素子そのものの精度をあげたり、低ノイズの回路や構成要素を採用する場合、高価な部品が必要であったり、安定化させるためにセンサ素子そのものが大きくなり、その使い勝手が悪化するという点で充分ではない。また、センサ素子の複数回サンプリングした出力値の平均値を求める第2の手法では、例えば一定間隔のループで出力値を取得し、平均値を求めるため、精度を高めようとしても、データ取得の間隔が所定の一定間隔に制限されてしまうため、計算を行うために時間がかかってしまう。一方で、平均値を取得する際のサンプリング回数を減少させると、充分な精度が得られない可能性がある。図5で示した例で説明すると、精度を上げるため各向きでのサンプリング回数を増加させると、同一の画素数の温度分布を得るためには、走査速度を低下させる必要があり、一枚の温度分布を得るために必要な時間が長くなる。
【0047】
そこで、本実施形態では、上記センサ装置において、熱感受部の数(画素数)を削減、例えば整数分の1にする一方で、熱感受部各々から出力される端子を分配して複数の出力端子、例えば整数倍の出力端子とし、各出力端子に対して各バッファ回路を接続する構成を採用する。つまり、従来であれば、熱感受部の数(画素数)のバッファ回路が設けられており、熱感受部各々から出力される端子をそのまま各バッファ回路に接続していたところ、本発明の実施形態においては、熱感受部の数(画素数)を整数分の一(例えば1/2)にし、熱感受部各々から分配された整数倍(例えば2倍)の出力端子各々に、従来からの所定数(整数分の一にする前の熱感受部の数)のバッファ回路各々を接続するという構成を採用する。これにより安価な素子の構成を維持しながら短時間の測定でその精度の向上を図る。
【0048】
図6は、本実施形態による表面温度検知部23を構成するセンサ装置のパッケージを説明する図である。図6(A)は、センサ装置のパッケージの断面図であり、図6(B)は、センサ装置のパッケージ内部の回路構成を示す。なお、図6は、本発明の原理を説明するためのものであり、本発明に関連のある主要な構成要素のみが図示されており、関連性の少ない構成要素が省略され、図示されていないことに留意されたい。また、表面温度検知部23は、素子配列方向を回転軸にしてセンサ装置を回動する機械的機構を備えるが、これについても詳細な説明は割愛する。
【0049】
図6(A)に示すように、本実施形態による表面温度検知部23を構成するセンサ装置100のパッケージは、パッケージ基板102と、パッケージ基板102上に搭載された熱感受チップ110と、制御チップ130と、熱感受チップ110および制御チップ130を封止するためのキャップ104と、所定感度波長範囲を透過するレンズなどの窓部材106とを含み構成される。図6(A)に示すパッケージは、缶状パッケージとして構成されており、内部は、典型的には、窒素などが封入されて不活性雰囲気にあるか、または真空状態で封止され、真空雰囲気にある。
【0050】
図6(B)の回路構成を参照すると、熱感受チップ110は、素子アレイ111を備え、素子アレイ111は、それぞれ1画素を構成する複数の熱感受部112を含み構成される。各熱感受部112は、上述したように1画素分のサーモパイル素子部分であり、本実施形態において、熱型検出素子を構成し、各エリアの熱量を検出する。各熱感受部112は、2端子構成とされており、各熱感受部112の一方の端子は、接地されるグランド端子113に接続される。各熱感受部112の他方の端子については、一般的には、熱感受部1つに対して1つの出力端子が割り当てられるが、本発明の実施形態においては、複数のチャンネルに対応するために、分岐されて複数の出力端子114,115に接続される。
【0051】
図6に示す例では、4つの熱感受部112a~112dに対し、各熱感受部112あたり2つの出力端子114、115で、合計8つの出力端子114a~114d,115a~115dが設けられている。なお、図6(B)においては、熱感受部112dの出力端子114d,115dのみに代表して符番が付されているが、図上符番が付されていなくとも、他の熱感受部112に関連するものについては、熱感受部112aについて、出力端子114a,115aのように参照する。なお、熱感受部112の数は、4に限定されず、各熱感受部112あたりの出力端子の数も、2に限定されない。好ましい実施形態においては、すべての熱感受部112の出力端子の合計数は、熱感受部112の数Nの整数倍(2以上)となる。
【0052】
以下、さらに、図6(B)を参照しながら、制御チップ130の回路構成について説明する。制御チップ130は、グランド端子131と、入力される複数のチャンネルのうちの1つのチャンネルの信号を選択して出力する選択回路132と、それぞれ選択回路132の各チャンネルの入力に接続される複数の入力端子133と、A/Dコンバータ136と、制御回路138とを含み構成される。
【0053】
選択回路132は、各チャンネル毎にバッファ回路134を備える。バッファ回路134は、増幅率が1倍の増幅回路であり、高い入力インピーダンス、かつ、低い出力インピーダンスで、アナログ信号(電位差)をバッファリングする。複数の入力端子133各々は、対応するバッファ回路134に接続される。
【0054】
選択回路132は、複数のバッファ回路134により保持されたアナログ信号のうちの1つを選択し、後段のA/Dコンバータ136へ出力する。選択回路132は、選択信号を受けて選択チャンネルを切り替える。選択信号は、例えば、制御回路138から入力される。選択チャネルの切り替えは、ステートマシンなどで、複数のチャンネルを巡回、反復して選択するように行われる。
【0055】
制御チップ130の複数の入力端子133各々は、例えば接続線120により、熱感受チップ110の複数の出力端子114a~114d,115a~115dのうちの1つに接続される。制御チップ130のグランド端子131と、熱感受チップ110のグランド端子113とも、接続線を介して接続される。なお、接続線120については、1番目の熱感受部112aの第1の出力端子114aと、バッファ回路134-1に接続された第1の入力端子133-1との間の接続線120-1に代表して符番が付されている。また、入力端子133については、4番目の熱感受部112dの第2の出力端子115aに接続された第8チャンネルのバッファ回路134-8に接続される入力端子133-8に代表して符番が付されている。また、バッファ回路134については、1番目の熱感受部112aの第1の出力端子114aに接続された第1チャンネルのバッファ回路134-1に代表して符番が付されている点に留意されたい。
【0056】
チャンネル数は、切り替えができる数分だけ存在する。チャンネル数は、図6(B)は、一例として、熱感受部112の数4に各熱感受部112あたりの出力端子の数2を乗じた8チャンネル備えるものとして説明するが、これに限定されるものではない。好ましい実施形態においては、チャンネル数は、熱感受部112の数Nの整数倍(2以上)以上であり、制御チップ130の仕様により、必ずしも熱感受部112の数Nの整数倍(2以上)に一致しなくともよい。
【0057】
選択回路132は、複数のバッファ回路134各々にバッファリングされる熱感受部112から出力される電位差のアナログ信号のうちの1つを選択して、後段のA/Dコンバータ136に出力する。A/Dコンバータ136は、選択回路132により選択された1つのアナログ信号を、デジタル信号に変換し、制御回路138に出力する。A/Dコンバータ136は、本実施形態における信号変換部を構成する。説明する実施形態において、A/Dコンバータ136は、選択信号に基づいて選択回路132により選択されたアナログ信号をデジタル信号に変換しており、選択信号が切り替えられることによって、複数のバッファ回路134により保持された電位差が順次デジタルデータとして取得される。
【0058】
なお、説明する実施形態において、A/Dコンバータ136は、1つだけ設けられており、選択回路132を介して複数のチャンネルに接続されてきる。計装コストを削減する観点からは、A/Dコンバータ136は、1つであることが望ましい。しかしながら、特に限定されるものではなく、A/Dコンバータ136が複数あってもよく、例えば、複数のチャンネルを複数のグループに分けて、選択回路132を分割し、分割された各グループ毎におよびA/Dコンバータ136が設けられてもい。
【0059】
また、説明する実施形態では、増幅率が1の増幅回路としてバッファ回路134を備える選択回路132から、直接A/Dコンバータ136に接続されるものとして説明しているが、特に限定されるものではない。他の実施形態では、選択回路132の出力と、A/Dコンバータ136の入力との間に、入力された信号を所定の増幅率(>1)で増幅する増幅回路が設けられてもよい。これにより、小さな信号を充分に大きな信号に変換することができる。また、選択回路132の入力前に各チャンネル毎に所定の増幅率(>1)の増幅回路が設けられてもよいし、バッファ回路134の増幅率が1より大きくてもよい。
【0060】
このように、複数のチャンネルを制御できるように選択回路132を用意し、1つのA/Dコンバータ136へ接続する選択チャンネルを切り替えることにより、目的とするチャンネルのみをA/Dコンバータ136に接続し、熱感受部112で発生した電位差を読み取らせることができる。
【0061】
制御回路138は、センサ装置100の全体制御するための回路である。制御回路138は、選択回路132の選択するチャンネルを指定する選択信号を出力する。制御回路138は、また、一定のルーチン処理回路により、空気調和機1の制御部Kなどの外部装置と通信を行うことができる。目的とするチャンネルの切り替えや、その他、熱エネルギーから得られた電位差から温度に切り替えるための演算、複数サンプリングした測定値から平均値の算出は、制御回路138が行ってもよいし、空気調和機1の制御部Kなどの外部装置側で行ってもよく、特に限定されるものではない。制御回路138は、外部からの問い合わせを受けて、複数の熱感受部112からのセンサ出力の測定値、温度値、またはこれらの平均値を通信回路により応答する。
【0062】
図6(A)および図6(B)に示すように、素子アレイ111を備える熱感受チップ110(第1構造体)と、選択回路132、複数のバッファ回路134およびA/Dコンバータを備える制御チップ130(第2構造体)は、典型的には、別体として構成される。熱感受チップ110における8つの出力端子114a~114d、115a~115dと、制御チップ130における対応する8つのバッファ回路134-1~134~8に接続された複数の入力端子134-1~134-8との間は、それぞれ金線などの複数の接続線120-1~120~8により結線される。熱感受チップ110および制御チップ130は、図6(A)に示すように、同一のパッケージに封入されている。
【0063】
図7は、本発明の実施形態による空気調和機1において、表面温度検知部23の温度検知範囲を説明する図である。図7(A)は、平面図であり、図7(B)は、側面図である。図8は、本発明の実施形態による空気調和機1において測定される二次元の温度分布を撮像画像に重ねて示す図である。
【0064】
表面温度検知部23は、例えば、上述したように、横×縦が1×4画素の1次元配置された受熱素子となっている。表面温度検知部23を構成するセンサ装置100は、被空調空間の少なくとも1方向に向きを変えるように回転可能に室内機に設けられている。制御回路138および制御部Kの制御の下、素子配列方向を回転軸にしてサーモパイルを回動することにより、検出素子の配列方向に垂直な方向に走査する。そして、この走査中、各向きにおいて、例えば一定期間向きを固定して複数回サンプリングすることにより、図8に示すような、縦方向にN画素の温度の二次元分布が取得される。例えば、14×4の画素数の温度の二次元分布が取得される。
【0065】
なお、図8は、撮像部22により取得される撮像画像に、各画素(素子)および走査位置(向き)に対応するエリアを矩形で表して重ねた模式図である。図5(B)と比較すると、図5(B)に示す例では、横×縦で14×8の画素数の温度分布であったのに対し、図8に示す例では、横×縦で14×4の画素数の温度分布となっている。
【0066】
一方、各エリアに対しては、同一の時間かけて測定するもの(つまり、回転走査において、向きを固定して複数回のサンプリングを行う時間を同一とする)と仮定すると、整数倍、図6に示す具体例では2倍の測定値が得られることとなる。同一の熱感受部112から分岐されて複数の出力端子114,115を経て取り込まれた信号は、異なるノイズ環境の影響を受けることとなる。そのため、同一の熱感受部112から分岐されて複数の出力端子114,115に接続したチャンネルの測定値を含めて平均値を求めることで、よりノイズやばらつきが低減された精度の高い値となる。これは、同一の時間ではより高い精度の測定が可能となり、同程度の精度であれば、より短期間での測定が可能であるということを意味する。
【0067】
図9は、関連技術における8画素の一次元アレイのサーモパイル素子の回路図である。図9を参照すると、サーモパイル素子500は、8つの熱感受部512a~512hを有する素子アレイ511を備える熱感受チップ510と、制御チップ530とを備える。制御チップ530は、選択回路532と、A/Dコンバータ536と、制御回路538とを含み構成される。
【0068】
選択回路532は、各チャンネル毎にバッファ回路534を備える。8つの熱感受部512a~512hの出力端子については、図6(B)に示した回路構成では、分岐されて複数の出力端子114,115に接続されていたが、図9に示す回路構成では、熱感受部1つに対して1つの出力端子が割り当てられており、金線などの接続線で接続されている。
【0069】
図6(B)に示す回路図と、図9に示す回路図とを比較すると明らかなように、本実施形態によるセンサ装置100においては、同一の熱感受部112から出力されたセンサ信号を分岐して別々のバッファ回路134に入力し、あたかも複数の熱感受部112が存在するかのように見せかけることができる。このようにして、一度に取得できるデータを一定間隔の中に多く取り入れることができる。また、素子数が削減された分だけ、全体としては小型化を図りながら、各画素あたりの受光面積を増大させることが可能となり、全体として小型化によりコスト削減を行いつつ、高い精度を維持することが可能となる。
【0070】
さらに、あたかも複数の熱感受部112が存在するかのように見せかけることができるので、開発において、従前のセンサ装置を用いた際に使用していたソフトウェア資産(ロジック)を再利用することが可能となる。例えば、図9に示すような1×8画素の一次元センサを用いて14×8画素の二次元温度分布を前提としたロジックがあるとする。図8に示した二次元温度分布では、2チャンネル分の信号をまとめて縦方向の一画素となっているが、これを図5(B)のように、単純に、2チャンネル分の信号から計算された値を縦方向の二画素分に割り当て、データ形式を揃え、14×8画素の二次元温度分布を得ることができる。そして、図5(B)に示す二次元温度分布において、天井付近の温度として最上段の行の温度の平均値がA度以上となった場合に、所定の制御を行うロジックがあるとすると、1×4画素の一次元センサを用いて2倍の出力端子とする図6に示すセンサ装置でも同一のロジックを適用することが可能である。ただし、センサ素子の1画素が担当するエリアが広がっているため、閾値については、異なる値A’を用いる可能性があるが、これは、外部化されたパラメータを変更するだけ良く、ロジックの変更を必要としない。
【0071】
以上説明した実施形態によれば、充分な精度を有する安価かつ小型のセンサ装置および充分な精度を有するセンサ装置を備えるコストが削減された空気調和機を提供することが可能となる。
【0072】
なお、上述した本発明の実施形態では、熱型検出素子に基づくセンサ装置の一例として、ゼーベック効果を利用して、赤外線の入射エネルギー量に応じた起電力を出力するサーモパイル素子を用いて、温度分布を測定するセンサ装置を例に説明してきた。しかしながら、熱型検出素子に基づくセンサ装置としては、サーモパイル素子と同様の構成で、窓部材を適切なものに置き替えることで、感度波長を選択し、放射温度計、ガス分析および炎検知など種々の用途で用いることができる。このため、本発明の実施形態では、熱型検出素子に基づくセンサ装置は、上述した温度分布測定以外の用途のセンサ装置として構成されてもよい。
【0073】
また、本発明の実施形態は、上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれ得る。例えば、上記した実施形態は、分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0074】
また上記の各構成、機能、処理部、処理手段等の一部または全部は、例えば集積回路で設計するなどによりハードウェアで実現してもよい。さらに、上記の各構成、機能等の一部または全部は、アセンブラ、C、C++、C#、Java(登録商標)などのレガシープログラミング言語やオブジェクト指向プログラミング言語などで記述された、プロセッサがそれぞれの機能を実現するコンピュータ実行可能なプログラムにより実現でき、各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイルなどの情報は、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)ROM、EEPROM、EPROM、フラッシュメモリなどの記憶装置、フレキシブルディスク、CD-ROM、CD-RW、DVD-ROM、DVD-RAM、DVD-RW、ブルーレイディスク、SD(登録商標)カード、MOなど装置可読な記録媒体に格納して、あるいは電気通信回線を通じて頒布することができる。
【0075】
また、さらに、上記の各構成、機能等の一部または全部は、例えばフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)などのプログラマブル・デバイス(PD)上に実装することができ、上記機能部をPD上に実現するためにPDにダウンロードする回路構成データ(ビットストリームデータ)、回路構成データを生成するためのHDL(Hardware Description Language)、VHDL(Very High Speed Integrated Circuits Hardware Description Language)、Verilog-HDLなどにより記述されたデータとして記録媒体により配布することができる。また制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1…空気調和機、10…室内機、11…リモコン送受信部、12…室内熱交換器、13…ドレンパン、14…室内ファン、15…筐体ベース、16…フィルタ、17…前面パネル、18…左右風向板、18a…左右風向板用モータ、19…上下風向板、19a…上下風向板用モータ、20…後方案内板、22…撮像部、22…撮像部、23…表面温度検知部、24…環境検出部、24a…室内温度センサ、24b…湿度センサ、24c…室内熱交換器温度センサ、25…室内制御回路、25a…記憶部、25b…室内制御部、30…室外機、31…圧縮機、31a…圧縮機モータ、32…室外熱交換器、33…室外ファン、33a…室外ファンモータ、34…室外膨張弁、35…四方弁、36…室外温度センサ、37…室外制御回路、37a…記憶部、37b…室外制御部、40…リモコン、h1,h2…空気吸込口、h3…吹出風路、h4…空気吹出口、Q…冷媒回路、100…センサ装置、102…パッケージ基板、104…キャップ、106…窓部材、110…熱感受チップ、111…素子アレイ、112…熱感受部、113…グランド端子、114,115…出力端子、120…接続線、130…制御チップ、131…グランド端子、132…選択回路、133…入力端子、134…バッファ回路、136…A/Dコンバータ、138…制御回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9