(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】シリコーンモノマー及びアクリルモノマーの重合プロセス
(51)【国際特許分類】
C08F 283/12 20060101AFI20240209BHJP
C08F 2/22 20060101ALI20240209BHJP
【FI】
C08F283/12
C08F2/22
(21)【出願番号】P 2021500122
(86)(22)【出願日】2019-07-26
(86)【国際出願番号】 US2019043555
(87)【国際公開番号】W WO2020023819
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-07-19
(32)【優先日】2018-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】弁理士法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウィルス、モリス
(72)【発明者】
【氏名】クォ、ハイラン
(72)【発明者】
【氏名】リウ、ナンクォ
(72)【発明者】
【氏名】ラステッロ、ジェフェリー
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-071437(JP,A)
【文献】特開2015-172185(JP,A)
【文献】国際公開第2005/056624(WO,A1)
【文献】特開2017-222837(JP,A)
【文献】国際公開第2013/162080(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2016/0194428(US,A1)
【文献】特開平05-025226(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107151296(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 283/12
C08F 2/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー粒子の集合体の製造方法であって、前記方法が、
(A)コアポリマー(IIa)の粒子の分散液(D1)を水性媒体中で準備することであって、コアポリマー(IIa)が、
(i)
構造(Z)のモノマーから選択される、1つ以上のシリコーンモノマー(IIai)の重合単位、
【化1】
[式中、どのR
1も、独立して、水素又は炭化水素基であり
、pは、0~1,000であり、どのR
aも、独立して、1つ以上のエチレン性不飽和基を含有する有機基である]、
(ii)任意選択で、1つ以上の
モノマー(IIaii)の重合単位、
ここで前記モノマー(IIaii)は、アクリル酸、メタクリル酸、これらの非置換アルキルエステル、これらの置換アルキルエステル及びこれらの混合物からなる群から選択される、及び
(iii)1つ以上のSi不含グラフトリンカー(IIaiii)の重合単位、を含み、
前記分散液(D1)が、1つ以上の界面活性剤のミセルを含む、準備することと、
(B)モノマーエマルジョン(E2)を分散液(D1)に添加すること、を含む、プロセスによって乳化重合プロセス(B)を行うことにより、ラテックス(L1)を生成することであって、エマルジョン(E2)が、
(i)
アクリル酸、メタクリル酸、これらの非置換アルキルエステル、これらの置換アルキルエステル及びこれらの混合物からなる群から選択される1つ以上の
モノマー(Iai)、及び
(ii)1つ以上のSi不含グラフトリンカー(Iaii)、を含み、
前記重合プロセス(B)が、コアポリマー(Ia)の分散粒子を前記水性媒体中で生成するものであり、
ラテックス(L1)が、前記水性媒体中のコアポリマー(Ia)の分散粒子と、コアポリマー(IIa)の分散粒子と、を含む、ラテックス(L1)を生成することと、
(C)モノマーエマルジョン(E3)をラテックス(L1)に添加すること、を含む、プロセスによって乳化重合プロセス(C)を行うことにより、ラテックス(L2)を生成することであって、エマルジョン(E3)が、1つ以上のアクリルモノマー(Ib)を含む、ラテックス(L2)を生成することと、を含む、方法。
【請求項2】
コアポリマー(IIa)が、コアポリマー(IIa)と、
モノマー(Iai)と、Si不含グラフトリンカー(Iaii)と、アクリルモノマー(Ib)との重量の合計に基づいて、30重量%~90重量%の量で存在し、
モノマー(IIai)と、(IIaii)と、(IIaiii)との重量の合計が、コアポリマー(IIa)と、
モノマー(Iai)と、Si不含グラフトリンカー(Iaii)と、アクリルモノマー(Ib)との重量の合計に基づいて、5重量%~50重量%の量であり、
アクリルモノマー(Ib)の重量が、コアポリマー(IIa)と、
モノマー(Iai)と、Si不含グラフトリンカー(Iaii)と、アクリルモノマー(Ib)との重量の合計に基づいて、4重量%~20重量%の量で存在する、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(B)を、1つ以上の水溶性レドックス開始剤の存在下で行う、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
コアとシェルとを有するポリマー粒子は、様々な目的のために有用である。例えば、このような粒子が、ガラス転移温度(Tg)が比較的低いコアと、Tgが比較的高いシェルとを有する場合、粒子は、例えば耐衝撃性改質剤として、様々な目的に有用であることが分かる。耐衝撃性改質剤は、マトリックスポリマーへの添加剤として使用され、耐衝撃性改質剤の存在は、スチレン/アクリロニトリル(SAN)などのマトリックスポリマーの耐衝撃性を改善することを意図している。改質マトリックスポリマーが屋外で使用することを意図している場合、耐衝撃性改質剤により風化作用からの劣化に耐えることが望まれる。改質マトリックスポリマーが比較的高温で使用することを意図している場合、耐衝撃性改質剤は高温からの劣化に耐えることが望まれる。劣化は、望ましくない着色の発生につながると考えられる。いくつかの耐衝撃性改質剤は、シリコーンポリマーとアクリルポリマーとを含有し、これらは両方とも低Tgポリマーを形成可能であり、これらは両方とも概ね、風化作用及び高温に耐えると考えられる。いくつかのシリコーンポリマーは、Tgが極めて低く、このことは、いくつかの耐衝撃性改質剤に有利であると考えられる。シリコーンポリマーはまた、高温での劣化に耐え、難燃性をもたらすと考えられる。しかし、シリコーンポリマーは高価である。
【0002】
米国特許出願公開第2007/0167567号には、第1の工程が末端基を有する変性シロキサンで第1の重合反応を行うものである、プロセスによって作製された、ポリオルガノシロキサン含有グラフトコポリマーについて記載されている。この第1の重合反応は酸性条件下で行われ、ペンダントビニル基を有するポリマーポリオルガノシロキサンを生成する。次いで、ビニルモノマーは、このポリオルガノシロキサンの存在下でラジカル重合する。
【0003】
組成物中にシリコーンを含むという性能の利点を有し、それだけでなくその利点を達成するとともに、組成物中のシリコーンの量を低減した、組成物を提供することが望まれている。また、このような組成物の製造方法を提供することも望まれている。また、SANなどのマトリックスポリマーを含有し、またこのような組成物のポリマー粒子も含有する、組成物を提供することも望まれている。SANとポリマー粒子とを含有するポリマー組成物には、耐衝撃性が良好で着色が少ないことが望まれている。
【0004】
以下は、本発明の記載である。
【0005】
本発明の第1の態様は、
(I)複数のアクリル粒子(I)であって、各々が、
(a)アクリルコアポリマー(Ia)であって、
(i)1つ以上のモノビニルアクリルモノマー(Iai)の重合単位、
(ii)1つ以上のSi不含グラフトリンカー(Iaii)の重合単位、を含む、アクリルコアポリマー(Ia)と、
(b)1つ以上のアクリルモノマー(Ib)の重合単位を含む、シェルポリマー(Ib)と、を含む、複数のアクリル粒子(I)と、
(II)複数のハイブリッドポリマー粒子(II)であって、各々が、
(a)コアポリマー(IIa)であって、
(i)構造(Y)のモノマー、構造(Z)のモノマー、及びこれらの混合物から選択される、1つ以上のモノマー(IIai)の重合単位、
【化1】
[式中、どのR
1も、独立して、水素又は炭化水素基であり、nは、0~1,000であり、mは、2~1,000であり、pは、0~1,000であり、どのR
aも、独立して、1つ以上のエチレン性不飽和基を含有する有機基である]、
(ii)任意選択で、1つ以上のモノビニルアクリルモノマー(IIaii)の重合単位、及び
(iii)1つ以上のSi不含グラフトリンカー(IIaiii)の重合単位、を含む、コアポリマー(IIa)と、
(b)1つ以上のアクリルモノマー(IIb)の重合単位を含む、シェルポリマー(IIb)と、を含む、複数のハイブリッドポリマー粒子(II)と、を含む、ポリマー粒子の集合体である。
【0006】
本発明の第2の態様は、スチレン/アクリロニトリルと、第1の態様の複数のポリマー粒子と、を含む、ポリマー組成物であって、請求項1に記載のポリマー粒子が、ポリマー組成物の重量に基づいて、10重量%~50重量%の量で存在する、ポリマー組成物である。
【0007】
本発明の第3の態様は、ポリマー粒子の集合体の製造方法であって、該方法は、
(A)コアポリマー(IIa)の粒子の分散液(D1)を水性媒体中で準備することであって、コアポリマー(IIa)が、
(i)構造(Y)のモノマー、構造(Z)のモノマー、及びこれらの混合物から選択される、1つ以上のシリコーンモノマー(IIai)の重合単位、
【化2】
[式中、どのR
1も、独立して、水素又は炭化水素基であり、nは、0~1,000であり、mは、2~1,000であり、pは、0~1,000であり、どのR
aも、独立して、1つ以上のエチレン性不飽和基を含有する有機基である]、
(ii)任意選択で、1つ以上のモノビニルアクリルモノマー(IIaii)の重合単位、及び
(iii)1つ以上のSi不含グラフトリンカー(IIaiii)の重合単位、を含み、
分散液(D1)が、1つ以上の界面活性剤のミセルを含む、準備することと、
(B)モノマーエマルジョン(E2)を分散液(D1)に添加すること、を含む、プロセスによって乳化重合プロセス(B)を行うことにより、ラテックス(L1)を生成することであって、エマルジョン(E2)が、
(i)1つ以上のモノビニルアクリルモノマー(Iai)、及び
(ii)1つ以上のSi不含グラフトリンカー(Iaii)、を含み、
重合プロセス(B)が、コアポリマー(Ia)の分散粒子を水性媒体中で生成するものであり、
ラテックス(L1)が、水性媒体中のコアポリマー(Ia)の分散粒子と、コアポリマー(IIa)の分散粒子と、を含む、ラテックス(L1)を生成することと、
(C)モノマーエマルジョン(E3)をラテックス(L1)に添加すること、を含む、プロセスによって乳化重合プロセス(C)を行うことにより、ラテックス(L2)を生成することであって、エマルジョン(E3)が、1つ以上のアクリルモノマー(Ib)を含む、ラテックス(L2)を生成することと、を含む、方法である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
以下は、図面の簡単な説明である。
【
図1】アクリルポリマー粒子(I)とハイブリッドポリマー粒子(II)との、正確な縮尺ではない概略図であり、コアとシェルとの用語体系を示している。
【
図2】本発明のポリマー粒子を作製する方法の一実施形態について、工程を示すフローチャートである。
【0009】
以下は、本発明の詳細な説明である。
【0010】
本明細書で使用するとき、文脈により別段に明確に示されない限り、以下の用語は指定された定義を有する。
【0011】
本明細書で使用するとき、「ポリマー」は、より小さい化学的繰り返し単位の反応生成物から構成された、比較的大きな分子である。ポリマーは、直鎖状、分枝状、星形、ループ状、高分枝状、架橋、又はこれらの組み合わせである構造を有してもよく、ポリマーは、単一の種類の繰り返し単位を有してもよく(「ホモポリマー」)、又は2つ以上の種類の繰り返し単位を有してもよい(「コポリマー」)。コポリマーは、ランダムに、順序通りに、ブロックで、他の配列で、又はこれらの任意の混合物若しくは組み合わせで、配列された様々な種類の繰り返し単位を有してもよい。
【0012】
互いに反応し、ポリマーの繰り返し単位を形成することができる分子は、本明細書で「モノマー」と呼ばれる。そのように形成された繰り返し単位は、本明細書でモノマーの「重合単位」と呼ばれる。100未満のモノマーの繰り返し単位を有する分子がオリゴマーであり、100以上のモノマーの繰り返し単位を有する分子がポリマーである。
【0013】
ビニルモノマーは、構造(III)、
【化3】
[式中、R
21、R
22、R
23、及びR
24の各々は、独立して、水素、ハロゲン、脂肪族基(例えば、アルキル基など)、置換脂肪族基、アリール基、置換アリール基、別の置換若しくは非置換有機基、又はこれらの任意の組み合わせである]を有する。ビニルモノマーは、フリーラジカル重合してポリマーを形成可能である。アルキル基などの脂肪族基は、直鎖状、分枝状、環状、又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0014】
いくつかのビニルモノマーは、R21、R22、R23、及びR24のうちの1つ以上に組み込まれた1つ以上の重合性炭素-炭素二重結合を有し、このようなビニルモノマーは、本明細書で多官能性ビニルモノマーと呼ばれる。丁度1つの重合性炭素-炭素二重結合を有するビニルモノマーは、本明細書で単官能性ビニルモノマーと呼ばれる。
【0015】
アクリルモノマーは、ビニルモノマーであって、R
1及びR
2の各々が水素であり、R
3は、水素又はメチルのいずれかであり、R
4は、以下の構造(V)、(VI)、又は(VII)のうちの1つ、
【化4】
[式中、R
11、R
12、及びR
14の各々は、独立して、水素、C
1~C
14アルキル基、又は置換C
1~C
14アルキル基である]を有する、ビニルモノマーである。本明細書で定義されるように、アクリルモノマーは、ケイ素原子を含有しない。
【0016】
90重量%以上のビニルモノマーの重合単位を有するポリマーは、ビニルポリマーである。55重量%以上のアクリルモノマーの重合単位を有するポリマーは、アクリルポリマーである。ポリマーが0.5重量%以上の多官能性ビニルモノマーの重合単位を含有する場合、ポリマーは、本明細書で架橋されたとみなされる。架橋ポリマーの典型的な試料において、ポリマーの20重量%以下が、任意の溶媒に可溶な材料である場合、架橋ポリマーは、本明細書で、「完全に」架橋されたとみなされる。
【0017】
多官能性ビニルモノマーの範疇には、2つの下位範疇、すなわち架橋剤及びグラフトリンカーが入っている。架橋剤では、分子上のどの重合性ビニル基も、分子上のどの他の重合性ビニル基とも実質的に同じである。グラフトリンカー(iii)では、分子上の少なくとも1つの重合性ビニル基が、分子上の少なくとも1つの他の重合性ビニル基と実質的に異なる。「実質的に」は、以下のように分子構造によって定義される。各重合性ビニル基は、上記の構造(I)に示されるように、2個の炭素原子及び基R1、R2、R3、及びR4によって規定される。各炭素原子の「環境」は、本明細書で、構造(I)における炭素原子のうちの1つからの3つの共有結合の任意の経路に従って決定される、原子の構成として定義される。
【0018】
例えば、以下の分子、すなわち、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジアクリレート、及びトリメチロールプロパントリアクリレートは、各分子中で、どの重合性ビニル基も、同じ分子中のどの他の重合性ビニル基ともその化学的環境において同一であることから、架橋剤である。別の例として、このことは、1,3-ブタンジオールジアクリレート(1,3-BDA)を考慮するのに有用である。
【化5】
1,3-BDAは、上記で定義したように、重合性ビニル基の両方が同じ「環境」を有することから、架橋剤である。ビニル基の「環境」は、以下の構造(IX)に示される。
【化6】
【0019】
グラフトリンカーの例には、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、アリルアクリルオキシプロピオネート、及びジアリルマレエートがある。
【0020】
別の種類のポリマー又はオリゴマーには、ポリシロキサンポリマー及びオリゴマーがある。ポリシロキサンオリゴマー及びポリマーは、構造(X):
【化7】
[式中、各R
20は、どの他のR
20とも独立して、水素、炭化水素基、又は置換炭化水素基であり、qは、1以上である]を有する。いくつかのポリシロキサンオリゴマー又はポリマーは、ビニル重合することが可能なビニル基を含有する1つ以上のR
20基を有し、このようなポリシロキサンオリゴマー又はポリマーもまた、「ビニルモノマー」の範疇に合致する。
【0021】
1種類のビニルモノマーは、構造(X)[式中、q=0であり、R20基のうちの1つ以上は、ビニル重合することが可能なビニル基を含有する]を有する。
【0022】
ポリマーの測定ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量測定(DSC)によって10℃/分で求められる。DSCデータから、ガラス転移が検知され、次いで、その転移温度が、中点法によって求められる。モノマーのTgは、そのモノマーから作製されたホモポリマーの測定Tgとして定義される。また、ポリマーの計算Tgを定義することも有用であり、これは、Fox式によって求められる:
【数1】
[式中、Tgpolymerは、ポリマーの計算Tg(ケルビン単位)であり、z個のモノマーがあり、1からzまでの添え字iで標識されており、wiは、i個目のモノマーの重量分率であり、Tgiは、i個目のモノマーのホモポリマーの測定Tg(ケルビン単位)である]。
【0023】
スチレンの重合単位及びアクリロニトリルの重合単位を含有するポリマーは、本明細書で「SAN」と呼ばれる。SANは、60重量%~90重量%のスチレンの重合単位、及び10重量%~40重量%のアクリロニトリルの重合単位を含有する。SANポリマーでは、スチレン及びアクリロニトリルの重量パーセントの合計は、70重量%以上になる。例えば、アルキル(メタ)アクリレートモノマーなどの他のモノマーの重合単位が、存在してもよい。
【0024】
粒子の集合体は、直径によって特徴付けられる。特定の粒子が球状ではない場合、その特定の粒子の直径は、本明細書で、特定の粒子と同じ体積を有する仮想的粒子の直径であるとみなされる。粒子の集合体は、液体媒体中の粒子の分散での動的光散乱によって測定された、体積平均直径によって特徴付けられる。
【0025】
マトリックスポリマーが連続相を形成し、ポリマー粒子がマトリックスポリマー全体に分布している場合、ポリマー粒子は、本明細書で、マトリックスポリマー中に分散していると言われる。分散ポリマー粒子は、ランダムに分布してもよく、又は何らかの非ランダムパターンで分布してもよい。
【0026】
2グラム以上の化合物が100グラムの水に25℃で溶解する場合、その化合物は、本明細書で、水溶性であるとみなされる。25℃で水に溶解する化合物の最大量が0.5グラム以下である場合、その化合物は、本明細書で、水不溶性であるとみなされる。
【0027】
界面活性剤は、親水性の1つ以上の基、及び疎水性の1つ以上の基を有する、有機化合物である。基が分離され、界面活性剤分子の基と残りとの間の1つ以上の結合が切断され、次いで水素原子でキャップされたとき、得られた分子が水不溶性である場合、基は疎水性である。基が分離され、界面活性剤分子の基と残りとの間の1つ以上の結合が切断され、次いで水素原子でキャップされたとき、得られた分子が水溶性である場合、基は親水性である。ミセルは、水中に懸濁された構造であり、構造の内部は、ほぼ全体が、界面活性剤分子に結合した疎水性基で成り立っており、構造の表面は、ほぼ全体が、界面活性剤分子に結合した親水性基で成り立っている。ミセルは、ミセルの重量に基づいて、5重量%以下の、界面活性剤ではない任意の有機化合物を含有する。
【0028】
界面活性剤が水中に存在するとき、4~10の任意のpH値で、50モル%以上の親水性基がアニオンの状態である場合、界面活性剤は、アニオン性界面活性剤である。界面活性剤が水中に存在するとき、4~10の任意のpH値で、50モル%以上の親水性基がカチオンの状態である場合、界面活性剤は、カチオン性界面活性剤である。
【0029】
ケイ素原子を有していない化合物は、本明細書で、「Si不含」化合物と呼ばれる。
【0030】
比は、本明細書で以下のように記載される。例えば、比が3:1以上であるという場合、その比は、3:1、又は5:1、又は100:1であってもよいが、2:1であってはならない。この概念の全般的な記載は以下のとおりである。本明細書で比がX:1以上という場合、比がY:1[YはX以上である]であることを意味する。同様に、例えば、比が15:1以下という場合、その比は15:1、又は10:1、又は0.1:1であってもよいが、20:1であってはならない。概して述べると、比が本明細書でW:1以下という場合、比がZ:1[ZはW以下である]であることを意味する。
【0031】
本発明は、ポリマー粒子の集合体を伴う。各ポリマー粒子は、コアポリマーと、シェルポリマーと、を含有する。本発明のポリマー粒子の集合体は、2種類の粒子、すなわち、アクリルポリマー粒子(I)と、ハイブリッドポリマー粒子(II)と、を含有する。
【0032】
アクリルポリマー粒子(I)は各々、アクリルコアポリマー(Ia)と、シェルポリマー(Ib)と、を含む。
【0033】
コアポリマー(Ia)は、1つ以上のモノビニルアクリルモノマー(Iai)の、重合単位を含有する。好ましいモノビニルアクリルモノマー(Iai)は、アクリル酸、メタクリル酸、これらの非置換アルキルエステル、これらの置換アルキルエステル、及びこれらの混合物である。アクリル酸、メタクリル酸、これらの非置換アルキルエステル、及びこれらの混合物が、より好ましい。アクリル酸又はメタクリル酸の、1つ以上の非置換アルキルエステルが、より好ましい。アクリル酸の、1つ以上の非置換アルキルエステルが、より好ましい。アクリル酸及びメタクリル酸の、非置換アルキルエステルのうちで、アルキル基が、18個以下の炭素原子、より好ましくは、8個以下の炭素原子、より好ましくは、6個以下の炭素原子、より好ましくは、4個以下の炭素原子を有するものが好ましい。アクリル酸及びメタクリル酸の、非置換アルキルエステルのうち、アルキル基が、2個以上の炭素原子、より好ましくは、4個以上の炭素原子を有するものが好ましい。
【0034】
コアポリマー(Ia)はまた、1つ以上のSi不含グラフトリンカー(Iaii)の、重合単位も含有する。好ましいSi不含グラフトリンカー(Iaii)は、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、アルキルアクリルオキシプロピオネート、ジアリルマレエート、及びこれらの混合物であり、より好ましくは、アリルメタクリレートである。
【0035】
好ましくは、コアポリマー(Ia)では、モノビニルアクリルモノマー(Iai)の重合単位の、Si不含グラフトリンカー(Iaii)の重合単位に対する重量比は、32:1以上、より好ましくは49:1以上、より好ましくは99:1以上である。好ましくは、コアポリマー(Ia)では、モノビニルアクリルモノマー(Iai)の重合単位の、Si不含グラフトリンカー(Iaii)の重合単位に対する重量比は、999:1以下、より好ましくは332:1以下、より好ましくは199:1以下である。
【0036】
好ましくは、モノビニルアクリルモノマー(Iai)の重合単位と、Si不含グラフトリンカー(Iaii)の重合単位との、重量の合計は、コアポリマー(Ia)の重量に基づいて、90重量%以上、より好ましくは95重量%以上、より好ましくは99重量%以上である。
【0037】
好ましくは、コアポリマー(Ia)の量は、アクリルポリマー粒子(I)の重量とハイブリッドポリマー粒子(II)の重量との合計に基づいて、5重量%以上、より好ましくは8重量%以上である。好ましくは、コアポリマー(Ia)の量は、アクリルポリマー粒子(I)の重量とハイブリッドポリマー粒子(II)の重量との合計に基づいて、50重量%以下、より好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下である。
【0038】
好ましくは、コアポリマー(Ia)の計算Tgは、-80℃以上、より好ましくは、-70℃以上、より好ましくは、-60℃以上である。好ましくは、コアポリマー(Ia)の計算Tgは、0℃以下、より好ましくは、-20℃以下、より好ましくは、-40℃以下である。
【0039】
本発明のアクリルポリマー粒子(I)はまた、1つ以上のアクリルモノマー(Ib)の、重合単位を含有する、シェルポリマー(Ib)も含有する。シェルポリマー(Ib)は、好ましくは、コアポリマー(Ia)の存在下で重合する。より好ましくは、シェルポリマー(Ib)と、シェルポリマー(IIb)とは、コアポリマー(Ia)とコアポリマー(IIa)との両方の存在下で、同時に重合する。
【0040】
好ましくは、シェルポリマー(Ib)は、1つ以上のアクリルモノマー(Ib)の、重合単位を含有する。好ましいアクリルモノマー(Ib)は、アクリル酸、メタクリル酸、これらの非置換アルキルエステル、これらの置換アルキルエステル、及びこれらの混合物である。アクリル酸、メタクリル酸、これらの非置換アルキルエステル、及びこれらの混合物が、より好ましい。アクリル酸又はメタクリル酸の、1つ以上の非置換アルキルエステルが、より好ましい。メタクリル酸の、1つ以上の非置換アルキルエステルが、より好ましい。シェルポリマー(Ib)では、アクリル酸及びメタクリル酸の非置換アルキルエステルのうち、アルキル基が、4個以下の炭素原子、より好ましくは3個以下の炭素原子、より好ましくは2個以下の炭素原子、より好ましくは1個の炭素原子を有するもの、及びこれらの混合物が好ましい。
【0041】
ハイブリッドポリマー粒子(II)は各々、コアポリマー(IIa)と、シェルポリマー(IIb)と、を含む。
【0042】
好ましくは、コアポリマー(IIa)は、ポリマー粒子(II)の中心にある。いくつかの実施形態では、シェルポリマー(IIb)は、コアポリマー(IIa)の表面上に配置され、いくつかの実施形態では、シェルポリマー(IIb)は、コアポリマー(IIa)を取り囲む。
【0043】
コアポリマー(IIa)は、1つ以上のシリコーンモノマー(IIai)の、重合単位を含有する。シリコーンモノマー(IIai)は、本明細書で、構造(Y)のモノマー、構造(Z)のモノマー、及びこれらの混合物から選択されるモノマーとして定義される:
【化8】
[式中、どのR
1も、独立して、水素又は炭化水素基であり、nは、0~1,000であり、mは、2~1,000であり、pは、0~1,000であり、どのR
aも、独立して、1つ以上のエチレン性不飽和基を含有する有機基である]。構造(Y)では、2組の括弧内の基は、任意の様式で配列されていてもよく、これらは、示されるような2つのブロックであっても、複数のブロックであっても、交互であっても、統計的順序であっても、これらの組み合わせであってもよい。統計的順序が、好ましい。すなわち、「m」単位及び「n」単位は、統計コポリマーでのように配列されていることが好ましい。
【0044】
構造(Y)及び(Z)では、好ましいR1基は、水素、及び12個以下の炭素原子を有する炭化水素基、より好ましくは、水素、及び8個以下の炭素原子を有する炭化水素基、より好ましくは、4個以下の炭素原子を有する炭化水素基、より好ましくは、メチル基である。構造(I)及び(II)では、好ましくは、全てのR1基が、互いに同じである。
【0045】
構造(Y)及び(Z)では、好ましい、-R
a基は、構造、
【化9】
[式中、R
15は、炭化水素基、好ましくはアルキル基である]を有する。好ましくは、R
15は、8個以下、より好ましくは5個以下、より好ましくは3個以下の炭素原子を有する。好ましくは、R
15は、1個以上の炭素原子、より好ましくは2個以上の炭素原子、より好ましくは3個以上の炭素原子を有する。R
16は、水素又はメチルのいずれかであり、好ましくは、メチルである。好ましくは、全てのR
a基が、互いに同じである。
【0046】
構造(Y)では、nは、好ましくは10以上、より好ましくは20以上、より好ましくは50以上、より好ましくは100以上である。構造(Y)では、nは、好ましくは800以下、より好ましくは500以下、より好ましくは300以下である。構造(Y)では、n:mの比は、好ましくは5:1以上、より好ましくは10:1以上、より好ましくは15:1以上である。構造(Y)では、n:mの比は、好ましくは100:1以下、より好ましくは50:1以下、より好ましくは30:1以下である。構造(Z)では、pは、好ましくは10以上、より好ましくは20以上、より好ましくは50以上である。構造(Z)では、pは、好ましくは800以下、より好ましくは500以下、より好ましくは300以下である。
【0047】
構造(Z)のモノマーが、好ましい。
【0048】
コアポリマー(IIa)はまた、任意選択で、1つ以上のモノビニルアクリルモノマー(IIaii)の、重合単位も含有する。好ましいモノビニルアクリルモノマー(IIaii)は、アクリル酸、メタクリル酸、これらの非置換アルキルエステル、これらの置換アルキルエステル、及びこれらの混合物である。アクリル酸、メタクリル酸、これらの非置換アルキルエステル、及びこれらの混合物が、より好ましい。アクリル酸又はメタクリル酸の、1つ以上の非置換アルキルエステルが、より好ましい。アクリル酸の、1つ以上の非置換アルキルエステルが、より好ましい。アクリル酸及びメタクリル酸の、非置換アルキルエステルのうちで、アルキル基が、18個以下の炭素原子、より好ましくは、8個以下の炭素原子、より好ましくは、6個以下の炭素原子、より好ましくは、4個以下の炭素原子を有する、アルキル基を有するものが好ましい。アクリル酸及びメタクリル酸の、非置換アルキルエステルのうち、アルキル基が、2個以上の炭素原子、より好ましくは、4個以上の炭素原子を有するものが好ましい。
【0049】
コアポリマー(IIa)はまた、1つ以上のグラフトリンカー(IIaiii)の、重合単位も含有する。好ましいグラフトリンカー(IIaiii)は、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、アルキルアクリルオキシプロピオネート、ジアリルマレエート、及びこれらの混合物であり、より好ましくは、アリルメタクリレートである。
【0050】
好ましくは、モノマー(IIai)の重合単位の量は、コアポリマー(IIa)の重量に基づいて、40重量%以上、より好ましくは50重量%以上である。好ましくは、モノマー(IIai)の重合単位の量は、コアポリマー(IIa)の重量に基づいて、99重量%以下、より好ましくは98重量%以下である。
【0051】
コアポリマー(IIa)では、全てのモノビニルアクリルモノマー(IIaii)の量は、コアポリマー(IIa)の重量に基づいて、0重量%以上である。コアポリマー(IIa)では、全てのモノビニルアクリルモノマー(IIaii)の量は、コアポリマー(IIa)の重量に基づいて、好ましくは70重量%以下、より好ましくは60重量%以下、より好ましくは50重量%以下である。
【0052】
コアポリマー(IIa)では、Si不含グラフトリンカー(IIaiii)の量は、コアポリマー(IIa)の重量に基づいて、好ましくは0.2重量%以上、より好ましくは0.3重量%以上、より好ましくは0.4重量%以上である。コアポリマー(IIa)では、Si不含グラフトリンカー(IIaiii)の量は、コアポリマー(IIa)の重量に基づいて、好ましくは4重量%以下、より好ましくは3重量%以下である。
【0053】
好ましくは、モノマー(IIai)の重合単位と、モノビニルアクリルモノマー(IIaii)の重合単位と、グラフトリンカー(IIaiii)の重合単位との量の合計は、コアポリマーの重量に基づいて、95重量%以上、より好ましくは98重量%以上、より好ましくは99重量%以上である。
【0054】
好ましくは、コアポリマー(IIa)の計算Tgは、-150℃以上、より好ましくは、-140℃以上である。好ましくは、コアポリマー(IIa)の計算Tgは、-80℃未満、より好ましくは、-95℃以下、より好ましくは、-110℃以下である。
【0055】
本発明は、いかなる特定の理論にも限定されるものではないが、ハイブリッドポリマー粒子(II)のコアポリマー(IIa)では、モノマー(IIai)は、複数の重合性ビニル基を有することから、架橋剤として機能し、コアポリマーの可溶性画分は比較的少なくなることが想到される。
【0056】
ハイブリッドポリマー粒子(II)はまた、1つ以上のアクリルモノマー(IIb)の、重合単位を含有する、シェルポリマー(IIb)も含有する。
【0057】
好ましくは、シェルポリマー(IIb)は、1つ以上のアクリルモノマー(IIb)の、重合単位を含有する。好ましいアクリルモノマー(IIb)は、アクリル酸、メタクリル酸、これらの非置換アルキルエステル、これらの置換アルキルエステル、及びこれらの混合物である。アクリル酸、メタクリル酸、これらの非置換アルキルエステル、及びこれらの混合物が、より好ましい。アクリル酸又はメタクリル酸の、1つ以上の非置換アルキルエステルが、より好ましい。メタクリル酸の、1つ以上の非置換アルキルエステルが、より好ましい。シェルポリマー(IIb)では、アクリル酸及びメタクリル酸の非置換アルキルエステルのうち、アルキル基が、4個以下の炭素原子、より好ましくは3個以下の炭素原子、より好ましくは2個以下の炭素原子、より好ましくは1個の炭素原子を有するもの、及びこれらの混合物が好ましい。
【0058】
好ましくは、コアポリマー(IIa)の量は、アクリルポリマー粒子(I)の重量とハイブリッドポリマー粒子(II)の重量との合計に基づいて、30重量%以上、より好ましくは40重量%以上、より好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上である。好ましくは、コアポリマー(IIa)の量は、アクリルポリマー粒子(I)の重量とハイブリッドポリマー粒子(II)の重量との合計に基づいて、90重量%以下、より好ましくは80重量%以下である。
【0059】
アクリルポリマー粒子(I)とハイブリッドポリマー粒子(II)との両方に共通のいくつかの特徴点を考慮することは、有用である。
【0060】
アクリルポリマー粒子(I)とハイブリッドポリマー粒子(II)との各々では、本明細書で上記定義されるように、計算Tgを見出すことによって、シェルポリマーの作製に使用されるモノマー又はモノマーの混合物を特徴付けることは、有用である。計算Tgの計算では、シェルポリマーを形成するために添加されたモノマーを使用し、それらのモノマーが、コアポリマーに結合した未反応の重合性ビニル基と共重合する場合を、無視する。シェルポリマー(Ib)と(IIb)との各々について独立して、好ましくは、シェルポリマーの計算Tgは、50℃以上、より好ましくは、75℃以上、より好ましくは、85℃以上である。シェルポリマー(Ib)と(IIb)との各々について独立して、好ましくは、シェルポリマーの計算Tgは、150℃以下である。
【0061】
シェルポリマー(Ib)は、好ましくは、コアポリマー(Ia)の存在下で重合する。シェルポリマー(IIb)は、好ましくは、コアポリマー(IIa)の存在下で重合する。より好ましくは、2つのシェルポリマー(Ib)と(IIb)とは、コアポリマー(Ia)とコアポリマー(IIa)との混合物の存在下で、同じモノマー又はモノマーの混合物から、そのモノマー又はモノマーの混合物を重合することによって、同時に作製される。このように2つのシェルポリマーが同時に作製される場合、2つのシェルポリマー(Ib)と(IIb)とは、同じ組成を有すると考えられる。
【0062】
シェルポリマーの量(Ib)とシェルポリマー(IIb)の量との合計の量によって、アクリルポリマー粒子(I)の重量とハイブリッドポリマー粒子(II)の重量との和の合計の百分率として、シェルポリマーの量を特徴付けることが有用である。シェルポリマーの量は、好ましくは4%以上、より好ましくは8%以上、より好ましくは12%以上である。シェルポリマーの量は、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下、より好ましくは20%以下である。
【0063】
シェルポリマー(Ib)と(IIb)とを考慮する際にはまた、コアポリマー(Ia)と(IIa)とを作製するのに使用されたグラフトリンカーの結末を考慮することも有用である。好ましくは、コアポリマーが重合されたとき、一部又は全てのグラフトリンカーは、1つ以上の重合性ビニル基を反応させることによって、コアポリマーを作製する重合プロセスを経るが、1つ以上の更なる重合性ビニル基が未反応で残る。すなわち、好ましくは、コアポリマーは、それに結合した未反応の重合性ビニル基を有する。好ましくは、シェルポリマーを作製するのに使用されるモノマーがコアポリマーの存在下で重合するとき、それらのモノマーの一部は、コアポリマーに結合したそれらの未反応の重合性ビニル基と共重合し、それらのモノマーの一部は互いに重合する。グラフトリンカー上のいくつかの重合性基が他の基よりも高反応性であり、コアポリマーの形成の重合条件は、モノマーが互いに、及びグラフトリンカー上のより高反応性の重合性ビニル基のみと共重合するように選択されることから、このような結果は可能であると想到される。好ましくは、これらの未反応の重合性ビニル基を別にして、シェルポリマー(Ib)とシェルポリマー(IIb)との各々は、独立して、多価ビニルモノマーの重合単位を含有しない。
【0064】
本発明の組成物を、任意の方法によって作製することができる。組成物を製造する好ましい方法について、以下のようにまとめる。工程(A)において、水性ミニエマルジョン重合を行い、コアポリマー(IIa)の分散液(D1)を形成する(この好ましいプロセスにおいて、コアポリマー(IIa)を、コアポリマー(Ia)の前に形成する)。次に、工程(B)において、重合条件下で、モノマーエマルジョン(E2)を分散液(D1)に添加して、ラテックス(L1)を形成すること、を含む、乳化重合プロセスを行う。モノマーエマルジョン(E2)は、重合してコアポリマー(Ia)を形成する、モノマーを含有する。ラテックス(L1)は、コアポリマー(Ia)の分散粒子とコアポリマー(IIa)の分散粒子との両方を、含有する。次いで、工程(C)において、別の乳化重合プロセスを行い、ラテックス(L2)を形成する。乳化重合プロセス(C)は、重合条件下で、モノマーエマルジョン(E3)をラテックス(L1)に添加すること、を含む。モノマーエマルジョン(E3)は、重合してシェルポリマーを形成する、モノマーを含有する。好ましくは、重合プロセス(C)において、シェルポリマーは、コアポリマー(Ia)の粒子の周囲で、またコアポリマー(IIa)の粒子の周囲で形成され、したがってシェルポリマー(Ib)とシェルポリマー(IIb)とが形成される。
【0065】
好ましくは、工程(A)において、混合物(M1)を、1つ以上のモノマー(IIai)と、1つ以上のモノビニルアクリルモノマー(IIaii)と、1つ以上のグラフトリンカー(IIaiii)とで作製する。モノマー(IIai)と、モノビニルアクリルモノマー(IIaii)と、グラフトリンカー(IIaiii)との好適な好ましい種類及び量は、コアポリマーについて本明細書で上記のものと同じである。
【0066】
好ましくは次いで、混合物(M1)を水及び界面活性剤と接触させて、混合物(M2)を形成する。界面活性剤は、カチオン性であっても、非イオン性であっても、アニオン性であってもよく、非イオン性及びアニオン性が好ましく、アニオン性界面活性剤がより好ましい。
【0067】
界面活性剤の量は、アクリルポリマー粒子(I)とハイブリッドポリマー粒子(II)とを含む、ポリマーの総重量の百分率としての界面活性剤の重量として特徴付けられる。すなわち、混合物M2で、界面活性剤の量が2%であると記載するとき、その記載は、混合物M2で、混合物M2中に存在する界面活性剤の重量をWS1として、工程(A)と(B)と(C)とのプロセス全体を終了させ、アクリルポリマー粒子(I)とハイブリッドポリマー粒子(II)との総重量をWP2とすると、次になることを意味する。
2=100*WS1/WP2
【0068】
好ましくは、混合物(M1)は、100秒-1での定常剪断下でコーン及びプレートレオメーターにて測定したとき、10mPa.秒以下の、25℃での粘度を有する。
【0069】
好ましくは、混合物(M2)中の水の量は、混合物(M2)の重量に基づいて、55重量%以上、より好ましくは65重量%以上である。好ましくは、混合物(M2)中の水の量は、混合物(M2)の重量に基づいて、95重量%以下、より好ましくは85重量%以下である。
【0070】
好ましくは、混合物(M2)を機械的に撹拌して、エマルジョン(E1)を形成し、混合物(M1)の液滴を水中で分散する。好適な撹拌方法では、例えば、高剪断混合、超音波又はマイクロ流動化、及びこれらの組み合わせを用いる。好ましくは、エマルジョン(E1)中の体積平均液滴径は、500nm以下である。
【0071】
E1中の界面活性剤の量は、界面活性剤ミセルを形成するのに十分である。すなわち、界面活性剤の一部が液滴の表面に位置し、したがって液滴の分散を安定化することが想到される。本発明の実施において、エマルジョン(E1)中に、液滴の分散を安定化させることと、また水性媒体中で界面活性剤ミセルを形成することとの両方に十分な、界面活性剤が存在する。
【0072】
必要とされる界面活性剤の量は、液滴のサイズに依存する。所与の重量の液滴に関して、より小さい直径を有する液滴の分散液は、より高い総表面積を有し、したがって、液滴を安定化することと、ミセルを形成することとの両方に、より多くの界面活性剤が必要になる。好ましくは、界面活性剤の最小量は、以下のとおりである。
(界面活性剤の最小量、%)
=282/(液滴の体積平均半径(nm))
好ましくは、エマルジョン(E1)中の界面活性剤の量は、界面活性剤の最小量以上である。
【0073】
好ましくはまた、エマルジョン(E1)中に、1つ以上の開始剤も存在する。好ましい開始剤は、水不溶性熱開始剤、水溶性レドックス開始剤、及びこれらの混合物である。レドックス開始剤は、場合により触媒の存在下で還元剤と反応して、ラジカルを生成し、ビニル重合を開始する。好ましい水溶性レドックス開始剤は、過硫酸塩(例えば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、及び過硫酸アンモニウムなど)及びヒドロペルオキシド(例えば、t-ブチルヒドロペルオキシド、過酸化水素、及び1-メチル-1-(4-メチルシクロヘキシル/エチルヒドロペルオキシドなど)である。好ましい還元剤は、重亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、テトラメチルエチレンジアミン、及びメタ重亜硫酸ナトリウムである。好ましい触媒は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)及び硫酸第一鉄である。
【0074】
熱開始剤は室温で安定であるが、高温で分解して、ラジカルを生成し、ビニル重合を開始する。好ましい熱開始剤は、過酸化物及びアゾ化合物である。
【0075】
好ましくは、エマルジョン(E1)は、1つ以上の水溶性レドックス開始剤を含有する。
【0076】
好ましくは、エマルジョン(E1)を40℃以上まで加熱し、重合を起こさせる。好ましくは、重合は混合物(M1)の液滴内で起こり、ポリマーを、水中に分散された固体ポリマーの粒子として形成する。この種類の重合は、「ミニエマルジョン」重合と呼ばれる。この結果として、水中のコアポリマー(IIa)の粒子の分散液(D1)が得られる。
【0077】
好ましくは次いで、工程(B)を行う。工程(B)において、モノマーの混合物(M2)を作製して、次いで、1つ以上のアニオン性界面活性剤と水とを混合し、エマルジョン(E2)を形成する。混合物(M2)中のモノマーは、コアポリマー(Ia)に含めるため適切なものとして上記したもの、すなわち、1つ以上のモノビニルアクリルモノマー(Iai)と、1つ以上のSi不含グラフトリンカー(Iaii))とである。好ましくは、エマルジョン(E2)を分散液(D1)及び1つ以上の水溶性開始剤と組み合わせ、得られた混合物(M3)を40℃の温度から70℃まで加熱する。エマルジョン(E2)を、分散液(D1)と様々な方法で組み合わせることができる。例えば、エマルジョン(E2)を、分散液(D1)に、単一の比較的急な操作(「ショット」と呼ばれる)で添加することができ、又は、エマルジョン(E2)を、2つ以上の部分に分離することができ、各部分を、別個のショットとして添加することができ、又は、エマルジョン(E2)を、徐々に添加することができる。好ましくは、エマルジョン(E2)を、分散液(D1)に複数のショットで添加する。好ましくは、工程(B)のプロセスは、モノマーが水性媒体により拡散して、ポリマー粒子を成長させ、それが界面活性剤ミセル中で成長し始める、乳化重合のプロセスである。好ましくは、工程(B)の生成物は、コアポリマー(Ia)の分散粒子とコアポリマー(IIa)の分散粒子とを含有する、ラテックス(L1)である。
【0078】
好ましくは次いで、工程(C)を行う。工程(C)において、モノマーの混合物(M4)を作製して、次いで、1つ以上のアニオン性界面活性剤及び水と混合し、エマルジョン(E3)を形成する。混合物(M4)中のモノマーは、シェルポリマー(Ib)又はシェルポリマー(IIb)に含めるため適切なものとして上記したもの、すなわち、1つ以上のアクリルモノマー(Ib)又は(IIb)である。好ましくは、エマルジョン(E3)をラテックス(L1)と組み合わせ、得られた混合物(M5)を70℃以上の温度まで加熱する。エマルジョン(E3)を、分散液(D1)と様々な方法で組み合わせることができる。例えば、エマルジョン(E2)を、ラテックス(L1)に、単一の比較的急な操作(「ショット」と呼ばれる)で添加することができ、又は、エマルジョン(E3)を、2つ以上の部分に分離することができ、各部分を、別個のショットとして添加することができ、又は、エマルジョン(E3)を、徐々に添加することができる。好ましくは、エマルジョン(E3)を、ラテックス(L1)に徐々に添加する。好ましくは、工程(C)のプロセスは、乳化重合のプロセスであり、モノマー分子が、水性媒体によりエマルジョン(E3)の液滴から、コアポリマー(Ia)の粒子の表面及び粒子コアポリマー(IIa)の表面上でポリマーを成長させるまでのプロセス、好ましくは、コアポリマーに結合した利用可能な重合性ビニル基と共重合するまでのプロセスである。好ましくは、工程(C)の生成物は、分散アクリルポリマー粒子(I)と分散ハイブリッドポリマー粒子(II)とを含有する、ラテックス(L2)である。
【0079】
この好ましい方法において、単一のモノマー、又はモノマー(M4)の単一混合物を、シェルポリマー(Ib)とシェルポリマー(IIb)との両方を形成する単一の重合プロセスで使用することに留意されたい。この実施形態では、シェルポリマー(Ib)と(IIb)は、同じ組成を有すると考えられる。また、2つのシェルポリマーは、1つ以上の差異を有する可能性があることも認識される。例えば、1つ又は複数のモノマー(M4)を、2つの異なるコアポリマー間で様々な割合にて分割することができる。また、2つの異なるコアポリマーに対するグラフト化度は、異なっていてもよい。
【0080】
ラテックス(L2)は、2つの異なる種類の粒子、すなわち、アクリルポリマー粒子(I)とハイブリッドポリマー粒子(II)とを含有する。各種類の粒子は、それの独自の粒径分布を有することが想到される。それにもかかわらず、ラテックス(L2)全体の体積平均直径を、動的光散乱によって特徴付けることは有用である。ラテックス(L2)では、好ましくは、粒子の体積平均直径は、100nm以上、より好ましくは200nm以上である。好ましくは、粒子の体積平均直径は、1,000nm以下、より好ましくは750nm以下、より好ましくは500nm以下である。好ましくは、ラテックス(L2)中のポリマーの量は、ラテックス(L2)の総重量に基づいて、20重量%以上、より好ましくは30重量%以上である。好ましくは、ラテックス(L2)中のポリマーの量は、ラテックス(L2)の総重量に基づいて、50重量%以下、より好ましくは、45重量%以下である。
【0081】
ラテックス(L2)を、任意選択で、乾燥して水を除去することができる。好適な乾燥方法としては、凍結乾燥、噴霧乾燥、並びに凝固に続くベルト乾燥及び流動床乾燥が挙げられる。得られた組成による乾燥組成物は、好ましくは、乾燥組成物の重量に基づいて、10重量%以下、より好ましくは5重量%以下の量の水を有する。
【0082】
本発明のポリマー粒子を、任意の目的のために使用することができる。1つの好ましい使用は、複数の粒子をマトリックスポリマーに添加することである。粒子をマトリックスポリマーに添加することにより、マトリックスポリマーの耐衝撃性を改善することが想到される。好ましいマトリックスポリマーは、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、スチレン/アクリロニトリルコポリマー、ポリメチルメタクリレート、及びこれらの混合物である。スチレン/アクリロニトリルコポリマーが、好ましい。
【0083】
本発明のマトリックスポリマーとポリマー粒子とを含む組成物は、本明細書でマトリックスポリマー配合物と呼ばれる。マトリックスポリマー配合物は、任意選択で、更なる成分、例えば、顔料、着色剤、安定剤、潤滑剤、及びこれらの組み合わせなどを含有する。マトリックスポリマー配合物中の本発明のポリマー粒子の量は、マトリックスポリマー配合物の重量に基づいて、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上である。マトリックスポリマー配合物中の本発明のポリマー粒子の量は、マトリックスポリマー配合物の重量に基づいて、好ましくは60重量%以下、より好ましくは50重量%以下である。
【0084】
好ましくは、本発明のポリマー粒子は、マトリックスポリマー中に分散している。分散ポリマー粒子は、ランダムに若しくは何らかの非ランダムな方法で分布していてもよく、又はこれらの組み合わせで分布していてもよい。分散粒子の非ランダム分布の例は、ポリマー粒子が豊富でマトリックスポリマーが乏しいストリングである。
【0085】
以下は、本発明の実施例である。
【0086】
別個のシェル相の存在を、例えば、原子間力顕微鏡(AFM)によって観察することができる。ポリマー粒子の集合体を加熱し、プレスしてフィルムにすることができ、これをAFMによって分析することができる。好ましくは、別個のシェル相を観察する。いくつかの実施形態では、AFMによって観察可能なシェル相は、DSCによって分析すると、別個のTgを示さない。
【0087】
ポリマーを、可溶性画分によって特徴付ける。ポリマーの試料をテトラヒドロフラン(THF)と接触させ、十分に混合することによって、可溶性画分を測定する。次いで、溶解していないポリマーを、遠心分離及び濾過によって除去する。次いで、得られた、THF中に溶解したポリマーの溶液を、核磁気共鳴(NMR)分光法によって分析する。2種類以上のポリマーが元の試料中に存在する場合、NMR分光法により、THF中に溶解した各種類のポリマーの相対量を明らかにする。THF中のポリマーの溶液を乾燥し、乾燥ポリマーの重量を測定する。
【0088】
本発明のポリマー粒子の集合体を上記の好ましい方法によって作製した場合、可溶性画分分析を、いくつかの段階で、すなわち、(A)コアポリマー(IIa)の重合後、(B)コアポリマー(Ia)の重合後、及び(C)シェルポリマーの重合後、に行うことができる。また、未反応モノマーの量を、これらの段階の各々の後に測定することも可能である。これらの分析の結果から、プロセスで作製した各種類のポリマーの溶解量を計算することが可能である。特に興味深いのは、重合シェルモノマー(すなわち、モノマーIbとIIbと)の量である。シェルポリマー中のポリマー鎖の一部は、コアポリマーのうちの1つに(グラフトリンカーとの共重合により)グラフト化し、ポリマー鎖の一部は、いずれのコアポリマーにもグラフト化しない。コアポリマーにグラフト化しているシェルポリマー中のポリマー鎖の多くは、架橋されて不溶性であるコアポリマーの一部分にグラフト化し、またシェルポリマーのうちのこれらのポリマー鎖も不溶性になる。グラフト化シェルモノマーの量を、重量%として、以下のように定義する:
%GS=100*(WPS-WSS)/WPS
[式中、%GSは、グラフト化シェルポリマーの重量%であり、WPSは、全ての重合したシェルポリマーの総重量であり、WSSは可溶性シェルポリマーの重量である]。
【0089】
好ましくは、%GSは、35重量%以上、より好ましくは45重量%以上、より好ましくは55重量%以上である。好ましくは、%GSは、90重量%以下である。
【0090】
同様に、シェルポリマーの可溶性画分は、THF中に溶解したシェルポリマーの重量を、コア/シェル型ポリマーの試料中にあったシェルポリマーを作製するためにコアポリマーに添加していたモノマーの全ての重合単位の重量で除算して、百分率で表したものである。
【0091】
以下は、本発明の実施例である。
【0092】
以下の略語及び材料を使用した。
TSO-1=テレキーレックシリコーン油、以下の構造を有し、式中、p=198である。
【化10】
BA=ブチルアクリレート。
ALMA=アリルメタクリレート。
MMA=メチルメタクリレート。
DS-4=RHODOCAL DS-4(商標)ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(Rhodia製)。
NaPS=過硫酸ナトリウム。
pbw=重量部。
【0093】
実施例1(シリコーンのみのコアポリマー(IIa))
【0094】
混合物(M1)を、98重量部のTSO-1と2重量部のALMAで調製した。混合物(M1)を、水、及びSLS(最終ポリマーの総重量に基づいて2.5重量%のDS-4)と、コールズブレード装備のLIGHTNIN(商標)ミキサー(SPXFLOW COMPANY)を使用し、500RPMで10分間混合することによって、合わせた。これは、高剪断の前に均一性を確保するために行われた。次いで、混合物をモデルM-110Y MICROFLUIDIZER(商標)ホモジナイザー(Microfluidics Corp.)に15,000PSIで3回通し、目標粒径が得られたことを確かめた。所望の場合、市販のより大きなサイズのホモジナイザーを使用し、より大きなバッチを作製できることが想到される。混合物M1の量は、エマルジョンE1の重量に基づいて40重量%であった。エマルジョンE1を丸底フラスコに移し、t-ブチルヒドロペルオキシド(tBHP)のレドックス開始系(最終ポリマーの総重量に基づいて0.2重量%)と、鉄-EDTA(最終ポリマーの総重量の10重量ppm)と、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(SFS)(最終ポリマーの総重量に基づいて0.2重量%)とを使用して重合した。この階層について、40℃まで加熱した。この結果として、コアポリマー(IIa)の粒子の分散液が得られた。
【0095】
次に、BA/ALMAのエマルジョンを、重量比99.3/0.7で作製した。このエマルジョンを3つの部に分け、コアポリマー(IIa)粒子の分散液に3ショットにて添加し、その間、温度を40℃から70℃までに維持した。この重合の結果として、ラテックス(L1)、すなわち、コアポリマー(Ia)粒子とコアポリマー(IIa)粒子とを含有する分散液が得られた。
【0096】
MMAのエマルジョンを作製し、ラテックス(L1)に徐々に添加し、その間、混合物を60℃で維持した。この結果として、水中に分散した、本発明のポリマー粒子の集合体の分散液が得られた。次いで、分散液を凍結乾燥して、固体形態のポリマー粒子を得た。
【0097】
重量割合は、以下のとおりであった。
10重量%のハイブリッドコアポリマー(IIa)
75重量%のアクリルコアポリマー(Ia)
合計15重量%の全てのシェルポリマー(IbとIIb)
【0098】
実施例2(シリコーン/アクリルコアポリマー(IIa)
【0099】
実施例1を繰り返し、ただし、コアポリマー(IIa)内の重量割合を、TSO-1/BA/ALMA=50/49.5/0.5とし、この階層の重量割合を以下のとおりとした。
20重量%のハイブリッドコアポリマー(IIa)
65重量%のアクリルコアポリマー(Ia)
合計15%の全てのシェルポリマー(IbとIIb)
実施例1及び2の組成を表1にまとめる。「シェル」とは、シェルポリマー(Ib)とシェルポリマー(IIb)との合計を意味する。
【表1】
【0100】
グラフト化シェルポリマーの百分率を、上記の可溶性画分及びNMR分析によって分析した。結果を以下のとおり表IIに示した。
【表2】
【0101】
実施例3.着色及び衝撃試験。
【0102】
様々な耐衝撃性改質剤の乾燥粉末を、マトリックスポリマーがSANであるマトリックスポリマー配合物とブレンドした。耐衝撃性改質剤の量は、配合物の重量に基づいて、40重量%であった。配合物はまた、カーボンブラックを含んでいた。配合物をLeistritz(商標)二軸押出機にて押し出し、次いで、着色及び衝撃試験のために試料に射出成形した。
【0103】
国際照明委員会規定のCIE L*a*b法を使用して、着色について評価した。測定により、3つのパラメータ、L*、a*、及びb*を生成する。3つ全てのパラメータについては、数値がより小さいほど、劣化又は他の望ましくないプロセスによる着色の発生がより少ないため、数値がより小さいことが望ましい。
【0104】
耐衝撃性について、ノッチを付けたIzod衝撃試験(ASTM D256、American Society of Testing and Materials(Conshohocken PA,USA))により23℃で試験した。各実施例について10の複製試料を、試験した。衝撃の結果は、(1)試料を破断するのに必要なエネルギー、及び(2)脆性による破断ではなく展延性により破断した複製試料の百分率である。より高いエネルギー及びより高い展延性破断百分率は、各々、より良好な耐衝撃性を示すものである。着色及び衝撃の結果を、表IIIに示す。試験した比較耐衝撃性改質剤は、以下のとおりであった。
【0105】
CAIM=市販の全アクリル耐衝撃性改質剤。
【0106】
CSiAIM=市販のシリコーン/アクリル耐衝撃性改質剤、本発明のポリマー粒子の集合体の構造と異なる構造を有するもの。
【表3】
【0107】
実施例1及び実施例2では、市販の全アクリル耐衝撃性改質剤よりも良好な耐衝撃性及びより良好な着色を示し、市販のシリコーン/アクリル耐衝撃性改質剤に対しより良好な耐衝撃性とともに匹敵する着色を示した。
【0108】
実施例4.原子間力顕微鏡(AFM)
【0109】
実施例1及び2について、以下のように試験した。ポリマー粒子の水性分散液を凍結乾燥して、ポリマー粒子の集合体を固体形態で生成した。固体試料をプレスしてフィルムにし、表面をAFMによって調べた。両方の試料で、3つの相、すなわち、シリコーンに富む相、ポリ(BA)に富む相、及びポリ(MMA)に富む相を示した。実施例1では、シリコーンに富む相のドメインのサイズは、実施例2での場合よりも大きかった。