(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】抗PD-L1抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/46 20060101AFI20240209BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240209BHJP
A61K 51/10 20060101ALI20240209BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240209BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240209BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20240209BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240209BHJP
G01N 33/574 20060101ALI20240209BHJP
C07K 16/30 20060101ALN20240209BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240209BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20240209BHJP
【FI】
C07K16/46
A61K39/395 N
A61K51/10
A61P37/04
A61P35/00
G01N33/48 P
G01N33/53 D
G01N33/53 Y
G01N33/574 A
C07K16/30
C12N15/13 ZNA
C12N15/62 Z
(21)【出願番号】P 2021501072
(86)(22)【出願日】2019-03-29
(86)【国際出願番号】 CN2019080496
(87)【国際公開番号】W WO2019185035
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-03-29
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2018/081096
(32)【優先日】2018-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520053809
【氏名又は名称】アダジーン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルオ,ピーター ペイジ
(72)【発明者】
【氏名】デュ,ファンヨン
(72)【発明者】
【氏名】リュ,ギゾン
(72)【発明者】
【氏名】リ,ヤン
【審査官】加藤 幹
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-522905(JP,A)
【文献】国際公開第2016/205277(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/215590(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/
C12N 15/
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離された抗体、またはその抗原結合断片であって、
(1)配列番号100のアミノ酸配列を有するHVR_L1、配列番号109のアミノ酸配列を有するHVR_L2、配列番号118のアミノ酸配列を有するHVR_L3、配列番号167のアミノ酸配列を有するHVR_H1、配列番号168のアミノ酸配列を有するHVR_H2および配列番号169のアミノ酸配列を有するHVR_H3、
(2)配列番号37のアミノ酸配列を有するHVR_L1、配列番号64のアミノ酸配列を有するHVR_L2、配列番号91のアミノ酸配列を有するHVR_L3、配列番号164のアミノ酸配列を有するHVR_H1、配列番号165のアミノ酸配列を有するHVR_H2および配列番号166のアミノ酸配列を有するHVR_H3、
(3)配列番号38のアミノ酸配列を有するHVR_L1、配列番号65のアミノ酸配列を有するHVR_L2、配列番号92のアミノ酸配列を有するHVR_L3、配列番号164のアミノ酸配列を有するHVR_H1、配列番号165のアミノ酸配列を有するHVR_H2および配列番号166のアミノ酸配列を有するHVR_H3、または
(4)配列番号97のアミノ酸配列を有するHVR_L1、配列番号106のアミノ酸配列を有するHVR_L2、配列番号115のアミノ酸配列を有するHVR_L3、配列番号167のアミノ酸配列を有するHVR_H1、配列番号168のアミノ酸配列を有するHVR_H2および配列番号169のアミノ酸配列を有するHVR_H3を含み、
表面プラズモン共鳴による測定で、100nMまたはそれ未満のKDでヒトPD-L1に結合する、
抗体、またはその断片。
【請求項2】
(1)配列番号158のアミノ酸配列を有するVLおよび配列番号127のアミノ酸配列を有するVH、
(2)配列番号161のアミノ酸配列を有するVLおよび配列番号126のアミノ酸配列を有するVH、
(3)配列番号162のアミノ酸配列を有するVLおよび配列番号126のアミノ酸配列を有するVH、または
(4)配列番号155のアミノ酸配列を有するVLおよび配列番号127のアミノ酸配列
を有するVHを含む、
請求項1に記載の抗体またはその断片。
【請求項3】
(1)または(4)を含む前記抗体またはその断片が、ヒト、サルおよびマウスPD-L1と交差反応性を示す、請求項1または2に記載の抗体またはその断片。
【請求項4】
(2)または(3)を含む前記抗体またはその断片が、ヒトおよびサルPD-L1と交差反応性を示す、請求項1または2に記載の抗体またはその断片。
【請求項5】
表面プラズモン共鳴による測定で、50nMまたはそれ未満のKDでヒトPD-L1に結合する、請求項1~4のいずれか1項に記載の抗体またはその断片。
【請求項6】
表面プラズモン共鳴による測定で、10nMまたはそれ未満のKDでヒトPD-L1に結合する、請求項1~4のいずれか1項に記載の抗体またはその断片。
【請求項7】
ヒトIgG1またはIgG4重鎖定常領域Fc、またはそのバリアントをさらに含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の抗体またはその断片。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の抗体またはその断片および薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項9】
それを必要とする対象においてがんを治療しかつ/または腫瘍成長を低減するための医薬であって、治療有効量の請求項1~7のいずれか1項に記載の抗体またはその断片を含む、医薬。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか1項に記載の抗体またはその断片および診断イメージング剤を含
むセラノスティック組成物であって、
前記
抗体またはその断片は前記診断イメージング剤で標識されており、前記診断イメージング剤
は放射性核種標識である、
セラノスティック組成物。
【請求項11】
それを必要とする対象においてがんを診断および治療するための医薬であって、有効量の請求項10に記載のセラノスティック組成物を含む、医薬。
【請求項12】
in vitroでPD-L1を検出する方法であって、パラホルムアルデヒドを用いて細胞を固定すること、および請求項1~7のいずれか1項に記載の抗体またはその断片を用いて前記細胞を免疫染色することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、抗PD-L1抗体またはその抗原結合断片、それをコードする核酸、その治療用組成物、ならびに細胞媒介性免疫応答を上方調節するためおよび腫瘍免疫などのT細胞機能不全障害の治療、およびがんの治療のためにT細胞機能を増進するためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
抗原に対する免疫応答を媒介するT細胞の能力は、2つの別個のシグナル伝達相互作用を必要とする(Viglietta, V. et al. (2007) Neurotherapeutics 4:666-675; Korman, A. J. et al. (2007) Adv. Immunol. 90:297-339)。第1に、抗原提示細胞(APC)の
表面上に並んだ抗原が抗原特異的ナイーブCD4+ T細胞に提示される。そのような提示は、T細胞受容体(TCR)を介してシグナルを送達し、該シグナルは、提示された抗原に特異的な免疫応答を開始させるようにT細胞に指令する。第2に、APCと別個のT細胞表面分子との相互作用を通じて媒介される様々な共刺激および阻害シグナルは、T細胞の活性化および増殖ならびに最終的にその阻害を誘発する。
【0003】
免疫系は、共刺激および共抑制リガンドおよび受容体のネットワークにより緊密に制御される。これらの分子は、T細胞活性化のための第2のシグナルを提供し、正および負のシグナルの均衡の取れたネットワークを提供して、自己に対する免疫を制限しながら感染に対する免疫応答を最大化させる(Wang, L. et al. (Epub Mar. 7, 2011) J. Exp. Med.
208(3):577-92; Lepenies, B. et al. (2008) Endocrine, Metabolic & Immune Disorders- Drug Targets 8:279-288)。共刺激シグナルの例としては、APCのB7.1(CD80)およびB7.2(CD86)リガンドとCD4 Tリンパ球のCD28およびCTLA-4受容体との間の結合が挙げられる(Sharpe, A. H. et al. (2002) Nature Rev. Immunol. 2: 116-126; Lindley, P. S. et al. (2009) Immunol. Rev. 229:307-321)。
CD28へのB7.1またはB7.2の結合はT細胞活性化を刺激する一方、CTLA-4へのB7.1またはB7.2の結合はそのような活性化を阻害する(Dong, C. et al. (2003) Immunolog. Res. 28(l):39-48; Greenwald, R. J. et al. (2005) Ann. Rev. Immunol. 23:515- 548)。CD28はT細胞の表面上に構成的に発現される一方(Gross, J., et al. (1992) J. Immunol. 149:380-388)、CTLA-4発現はT細胞活性化後に急
速に上方調節される(Linsley, P. et al. (1996) Immunity 4:535-543)。
【0004】
CD28受容体の他のリガンドとしては、「B7スーパーファミリー」としても公知の、関連するB7分子の群が挙げられる(Coyle, A. J. et al. (2001) Nature Immunol. 2(3):203-209; Sharpe, A. H. et al. (2002) Nature Rev. Immunol. 2: 116-126; Collins, M. et al. (2005) Genome Biol. 6:223.1- 223.7; Korman, A. J. et al. (2007) Adv. Immunol. 90:297-339)。B7スーパーファミリーのいくつかのメンバーが公知であり
、これには、B7.1(CD80)、B7.2(CD86)、誘導性共刺激因子リガンド(ICOS-L)、プログラム死-1リガンド(PD-Ll;B7-H1)、プログラム死-2リガンド(PD-L2;B7-DC)、B7-H3、B7-H4およびB7-H6が含まれる(Collins, M. et al. (2005) Genome Biol. 6:223.1- 223.7)。
【0005】
プログラム死1(PD-1)タンパク質は、T細胞調節因子の拡張CD28/CTLA-4ファミリーの阻害性メンバーである(Okazaki et al. (2002) Curr Opin Immunol 14: 391779-82; Bennett et al. (2003) J. Immunol. 170:711-8)。CD28ファミリーの他のメンバーとしては、CD28、CTLA-4、ICOSおよびBTLAが挙げられる。PD-1について2つの細胞表面糖タンパク質リガンド、プログラム死リガンド1(P
D-Ll)およびプログラム死リガンド2(PD-L2)が同定されている。PD-LlおよびPD-L2は、PD-1に結合するとT細胞活性化およびサイトカイン分泌を下方制御することが示されている(Freeman et al. (2000) J Exp Med 192: 1027-34; Latchman et al. (2001) Nat Immunol 2:261-8; Carter et al. (2002) Eur J Immunol 32:634-43; Ohigashi et al. (2005) Clin Cancer Res 11 :2947-53)。
【0006】
PD-Ll(分化クラスター274(CD274)またはB7ホモログ1(B7-H1)としても公知)は40kDaの1型膜貫通タンパク質である。PD-Llは、活性化T細胞、B細胞、および骨髄細胞上に見出されるその受容体、PD-1に結合して、活性化または阻害を調節する。PD-LlおよびPD-L2の両方は、PD-1に結合するがCD28およびCTLA-4のいずれにも結合しないB7ホモログである(Blank et al. (2005) Cancer Immunol Immunother. 54:307-14)。T細胞上のその受容体PD-1とのPD-Llの結合は、IL-2産生およびT細胞増殖のTCR媒介性活性化を阻害するシグナルを送達する。機序は、ZAP70リン酸化およびCD3Cとのその会合の阻害を伴う(Sheppard et al. (2004) FEB S Lett. 574:37-41)。PD-1シグナル伝達は、転写因子NF-κΒおよびAP-1の活性化、ならびにIL-2の産生のために必要な、TCRシグナル伝達の結果としてもたらされるPKC-Θ活性化ループリン酸化を減弱する。PD-Llはまた、共刺激分子CD80(B7-1)に結合するがCD86(B7-2)に結合しない(Butte et al. (2008) Mol Immunol. 45:3567-72)。
【0007】
細胞表面上のPD-Llの発現は、IFN-γ刺激を通じて上方調節されることが示されている。PD-Ll発現は、ヒト肺、卵巣および結腸癌ならびに様々な骨髄腫を含む多くのがんにおいて見出されており、多くの場合に予後不良と関連付けられる(Iwai et al. (2002) PNAS 99:12293-7; Ohigashi et al. (2005) Clin Cancer Res 11 :2947-53; Okazaki et al. (2007) Intern. Immun. 19:813-24; Thompson et al. (2006) Cancer Res.
66:3381-5)。PD-Llは、抗原特異的T細胞クローンのアポトーシスを増加させることにより腫瘍免疫において役割を果たすことが示唆されている(Dong et al. (2002) Nat
Med 8:793-800)。PD-Llは腸粘膜炎症に関与する可能性があり、PD-Llの阻害は、大腸炎と関連付けられる消耗性疾患を抑制することもまた示唆されている(Kanai et
al. (2003) J Immunol 171:4156-63)。
【0008】
免疫応答の調節における免疫チェックポイント経路の重要性を考慮すると、PD-Llなどの免疫阻害タンパク質の活性を調節し、そのため免疫系の活性化に繋がる新規の剤を開発する必要性が存在する。そのような剤は、例えば、がん免疫療法および他の状態、例えば慢性感染症の治療のために使用され得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【文献】Viglietta, V. et al. (2007) Neurotherapeutics 4:666-675; Korman, A. J. et al. (2007) Adv. Immunol. 90:297-339
【文献】Wang, L. et al. (Epub Mar. 7, 2011) J. Exp. Med. 208(3):577-92
【文献】Lepenies, B. et al. (2008) Endocrine, Metabolic & Immune Disorders- Drug Targets 8:279-288
【文献】Sharpe, A. H. et al. (2002) Nature Rev. Immunol. 2: 116-126
【文献】Lindley, P. S. et al. (2009) Immunol. Rev. 229:307-321
【文献】Dong, C. et al. (2003) Immunolog. Res. 28(l):39-48
【文献】Greenwald, R. J. et al. (2005) Ann. Rev. Immunol. 23:515- 548
【文献】Gross, J., et al. (1992) J. Immunol. 149:380-388
【文献】Linsley, P. et al. (1996) Immunity 4:535-543
【文献】Coyle, A. J. et al. (2001) Nature Immunol. 2(3):203-209
【文献】Collins, M. et al. (2005) Genome Biol. 6:223.1- 223.7
【文献】Korman, A. J. et al. (2007) Adv. Immunol. 90:297-339
【文献】Okazaki et al. (2002) Curr Opin Immunol 14: 391779-82
【文献】Bennett et al. (2003) J. Immunol. 170:711-8
【文献】Freeman et al. (2000) J Exp Med 192: 1027-34
【文献】Latchman et al. (2001) Nat Immunol 2:261-8
【文献】Carter et al. (2002) Eur J Immunol 32:634-43
【文献】Ohigashi et al. (2005) Clin Cancer Res 11 :2947-53
【文献】Blank et al. (2005) Cancer Immunol Immunother. 54:307-14
【文献】Sheppard et al. (2004) FEB S Lett. 574:37-41
【文献】Butte et al. (2008) Mol Immunol. 45:3567-72
【文献】Iwai et al. (2002) PNAS 99:12293-7
【文献】Okazaki et al. (2007) Intern. Immun. 19:813-24
【文献】Thompson et al. (2006) Cancer Res. 66:3381-5
【文献】Kanai et al. (2003) J Immunol 171:4156-63
【発明の概要】
【0010】
本開示は、そのような抗体をコードする核酸およびそのような抗体を含有する組成物を含む、抗PD-L1抗体、ならびに細胞媒介性免疫応答を上方調節するためおよび感染症(例えば、急性および慢性)および腫瘍免疫を含むT細胞機能不全障害の治療のためにT細胞機能を増進するためのその使用を提供する。
【0011】
一態様では、以下のHVR_L1、HVR_L2、および/もしくはHRV_L3の1つもしくはより多くを含む、またはHVR_L1、HVR_L2、およびHRV_L3の3つ全てを含む(またはそれに対して少なくとも85%の配列同一性を有する配列)、単離された抗体、またはその抗原結合断片が本明細書において提供される:
(1)(a)RASQX1X2X3X4X5LA(配列番号1):
X1:G S
X2:I V
X3:E G S
X4:K P S
X5:F W Y
(b)RASX1SVDFX2GX3SFLX4(配列番号2):
X1:E Q
X2:F H Y
X3:I K
X4:A D
(c)X1ASQX2IPX3FLX4(配列番号3):
X1:Q R
X2:D S T
X3:K S T
X4:A N
(d)RASQGX1SX2X3LA(配列番号4):
X1:I V
X2:P S
X3:W Y
および
(e)RASQX1IPSFLN(配列番号5):
X1:S T
からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHVR_L1
(2)(a)DASX1X2X3X4GX5(配列番号6):
X1:N S
X2:L R
X3:A E
X4:S T
X5:I V
(b)AASX1LQSGV(配列番号7):
X1:S T
および
(c)DASNX1X2TGX3(配列番号8):
X1:L R
X2:A E
X3:I V
からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHVR_L2
(3)(a)YCQQYDX1WPYT(配列番号9):
X1:A H S Y
(b)YCQX1YX2SWPRX3FT(配列番号10):
X1:H Q
X2:G I S T V
X3:G L Q R V
(c)YCQQYDX1WPYT(配列番号11):
X1:A S
および
(d)YCQHYX1SWPRQFT(配列番号12):
X1:I T
からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHVR_L3。
【0012】
一部の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号13~39および94~102からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHVR_L1、配列番号40~66および103~111からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHVR_L2、ならびに/または配列番号67~93および112~120からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHVR_L3を含み得る。
【0013】
ある特定の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号13~39からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHVR_L1、配列番号40~66からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHVR_L2、および/または配列番号67~93からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHVR_L3を含み得る。実施形態では、そのよ
うな抗体またはその断片は、ヒトおよびサルPD-L1と交差反応性を示す。
【0014】
ある特定の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号94~102からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHVR_L1、配列番号103~111からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHVR_L2、および/または配列番号112~120からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHVR_L3を有し得る。実施形態では、そのような抗体またはその断片は、ヒト、サルおよびマウスPD-L1と交差反応性を示す。
【0015】
ある特定の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号121~125からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するVLを有し得る:
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQX1X2X3X4X5LAWYQQKPGKAPKLLIYDASX6X7X8X9GX10PSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYDX11WPYTFGQGTKVEIKR(配列番号121):
X1:G S
X2:I V
X3:E G S
X4:K P S
X5:F W Y
X6:N S
X7:L R
X8:A E
X9:S T
X10:I V
X11:A S Y
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASX1SVDFX2GX3SFLX4WYQQKPGKAPKLLIYDASX5X6X7X8GX9PSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYDX10WPYTFGQGTKVEIKR(配列番号122):
X1:E Q
X2:F H Y
X3:I K
X4:A D
X5:N S
X6:L R
X7:A E
X8:S T
X9:I V
X10:A H S Y
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCX1ASQX2IPX3FLX4WYQQKPGKAPKLLIYAASX5LQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQX6YX7SWPRX8FTFGQGTKVEIKR(配列番号123):
X1:Q R
X2:D S T
X3:K S T
X4:A N
X5:S T
X6:H Q
X7:G I S T V
X8:G L Q R V
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGX1SX2X3LAWYQQKPGKAPKLLIYDASNX4X5TGX6PSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYDX7WPYTFGQGTKVEIKR(配列番号124):
X1:I V
X2:P S
X3:W Y
X4:L R
X5:A E
X6:I V
X7:A S
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQX1IPSFLNWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQHYX2SWPRQFTFGQGTKVEIKR(配列番号125):
X1:S T
X2:I T
【0016】
一部の実施形態では、抗体またはその断片は、ヒトおよびサルPD-L1と交差反応性を示し得る、配列番号121~122および124からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するVLを有し得る。
【0017】
一部の実施形態では、抗体またはその断片は、ヒト、サルおよびマウスPD-L1と交差反応性を示し得る、配列番号123および125からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するVLを有し得る。
【0018】
様々な実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号164および167からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHVR_H1、配列番号165および168からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHVR_H2、ならびに/または配列番号166および169からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHVR_H3をさらに含み得る。
【0019】
一部の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号126~127からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するVHを有し得る。
【0020】
一部の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号128~163からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するVLを有し得る。
【0021】
一部の実施形態では、抗体またはその断片は、表面プラズモン共鳴による測定で、100nMまたはそれ未満、好ましくは50nMまたはそれ未満、より好ましくは10nMまたはそれ未満のKDでヒトPD-L1に結合する。
【0022】
さらなる態様は、本明細書に開示される抗体またはその断片の1つまたはより多くおよび薬学的に許容される担体を含む医薬組成物に関する。
【0023】
別の態様は、それを必要とする対象においてがんを治療しかつ/または腫瘍成長を低減する方法であって、治療有効量の本明細書に開示される抗体またはその断片の1つまたはより多くを前記対象に投与することを含む、方法に関する。
【0024】
本明細書に開示される抗体またはその断片の1つまたはより多くおよび診断イメージング剤を含み、好ましくは、診断イメージング剤が放射性核種標識である、セラノスティック組成物もまた本明細書において提供される。
【0025】
さらなる態様は、それを必要とする対象においてがんを診断および治療する方法であって、有効量の本明細書に開示されるセラノスティック組成物を前記対象に投与することを含む、方法に関する。
【0026】
in vitroでPD-L1を検出する方法であって、パラホルムアルデヒドを用いて細胞を固定すること、および本明細書に開示される抗体またはその断片の1つまたはより多くを用いて細胞を免疫染色することを含む、方法もまた、本明細書において提供される。
【0027】
ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片(antigen-binding fragement
)は、配列番号1~169の1つまたはより多くに対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する配列を有する。
【0028】
よりさらなる態様では、本明細書に開示される抗体のいずれか1つは、ヒトまたはマウス定常領域をさらに含み得る。ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4からなる群から選択されてもよい。一部の実施形態では、ヒト定常領域はIgG1である。マウス定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、およびIgG3からなる群から選択されてもよい。一部の実施形態では、マウス定常領域はIgG2Aである。
【0029】
さらなる態様では、本明細書に開示される抗PD-L1抗体のいずれかから選択される参照抗体とヒトPD-L1タンパク質への結合について競合する、単離された抗体またはその抗原結合断片が本明細書において提供される。一部の実施形態では、抗体または断片は、以下の特性:(a)37℃での表面プラズモン共鳴アッセイにおける測定で約310pM未満の結合解離平衡定数(KD)で単量体PD-L1に結合すること、(b)25℃での表面プラズモン共鳴アッセイにおいて約180pM未満のKDで単量体ヒトPD-L1に結合すること、(c)37℃での表面プラズモン共鳴アッセイにおける測定で約15pM未満のKDで二量体ヒトPD-L1に結合すること、および(d)25℃での表面プラズモン共鳴アッセイにおいて約8pM未満のKDで二量体ヒトPD-L1に結合すること、の1つまたはより多くを有する。
【0030】
よりさらなる態様では、本明細書に開示される配列のいずれか1つをコードする核酸が提供される。核酸は、上記の抗PD-L1抗体のいずれかをコードする核酸の発現のために好適なベクターをさらに含んでもよい。一部の実施形態では、ベクターは、核酸の発現のために好適な宿主細胞と共にまたはその内部に提供される。宿主細胞は真核細胞または原核細胞であってもよい。一部の実施形態では、真核細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)などの哺乳動物細胞である。
【0031】
PD-L1に特異的に結合する第1の抗原結合特異性、ならびに、例えば、腫瘍細胞特異的な抗原、ウイルス感染細胞に特異的な抗原、およびT細胞共阻害因子から選択される抗原に特異的に結合する第2の抗原結合特異性を含む、二重特異性抗体もしくは多重特異性抗体またはその抗原結合分子もしくは断片もまた本明細書において提供される。腫瘍細胞特異的な抗原は、CA9、CA125、黒色腫関連抗原(MAGE)、癌胎児性抗原(CEA)、ビメンチン、腫瘍M2-PK、前立腺特異的抗原(PSA)、MART-1、およびCA19-9の1つまたはより多くであってもよい。ウイルス感染細胞は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、および類人猿免疫不全ウイルス(SIV)の1つまたはより多くから選択されるウイルスに感染していてもよい。T細胞共阻害因子は、LAG3、TIM3、B7-1、CTLA-4、BTLA、CD28、2B4、LY108、TIGIT、ICOS、およびCD160の1つまたはより多くであってもよい。一部の実施形態では、二重または多重特異性抗体は、腎細胞癌、結腸直腸がん、卵巣がん、前立腺がん、乳がん、結腸がん、非小細胞肺がんおよび黒色腫の1つまたはより多くから選択されるがんを治療するために使用され得る。ある特定の実施形態では、二重または多重特異性抗体は、HIV、HPV、HBV、HCV、LCMVおよびSIVの1つまたはより多くから選択されるウイルスにより引き起こされるウイルス感染症を治療するために使用され得る。
【0032】
よりさらなる態様では、本開示は、抗PD-L1抗体またはその抗原結合断片を製造する方法であって、上記の抗PD-L1抗体またはその抗原結合断片のいずれかをコードする核酸を発現のために好適な形態で含有する宿主細胞を、そのような抗体または断片を産生するために好適な条件下で培養すること、および抗体または断片を回収することを含む、方法を提供する。
【0033】
よりさらなる態様では、本開示は、本明細書において提供されるような抗PD-L1抗体またはその抗原結合断片(または二重もしくは多重特異性抗体)および少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む、抗PD-L1組成物を提供する。
【0034】
よりさらなる態様では、本開示は、治療有効量の本明細書に開示される抗PD-L1組成物を封入した容器およびT細胞機能不全障害の治療のための使用を指し示す添付文書を含む、製品を提供する。
【0035】
よりさらなる態様では、本開示は、少なくとも1つのBNCA分子と組み合わせて上記の抗PD-L1組成物のいずれかを含む、製品を提供する。一態様では、BNCA分子は、抗体、抗原結合抗体断片、BNCAオリゴペプチド、BNCA RNAiまたはBNCA小分子である。別の態様では、B7陰性共刺激分子は、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、B7.1、B7-H3およびB7-H4からなる群から選択される。
【0036】
よりさらなる態様では、化学療法剤と組み合わせて上記の抗PD-L1組成物のいずれかを含む、製品が本明細書において提供される。一実施形態では、化学療法剤はゲムシタビンである。
【0037】
よりさらなる態様では、本開示は、陽性共刺激分子の1つまたはより多くのアゴニストと組み合わせて上記の抗PD-L1抗体のいずれかを含む、製品を提供する。一実施形態では、陽性共刺激分子はB7ファミリー共刺激分子である。別の実施形態では、陽性共刺激分子は、CD28、CD80、CD86、ICOS/ICOSLからなる群から選択される。さらに別の実施形態では、陽性共刺激分子はTNFRファミリー共刺激分子である。さらなる実施形態では、TNFR共刺激分子は、OX40/OX40L、4-1BB/
4-1BBL、CD27/CD27L、CD30/CD30LおよびHVEM/LIGHT、ならびにその可溶性断片、構築物およびアゴニスト抗体からなる群から(form)選択される。
【0038】
よりさらなる態様では、本開示は、1つまたはより多くの抗生物質と組み合わせて上記の抗PD-L1抗体(または二重もしくは多重特異性抗体)のいずれかを含む、製品を提供する。一態様では、抗生物質は、抗ウイルス剤、抗細菌剤、抗真菌剤、抗原生動物剤からなる群から選択される。
【0039】
一部の実施形態では、抗ウイルス剤は、逆転写酵素阻害剤、プロテアーゼ阻害剤、インテグラーゼ阻害剤、侵入または融合阻害剤、成熟阻害剤、ウイルス放出阻害剤、免疫応答増進剤、抗ウイルス相乗増進剤、ワクチン、肝臓アゴニストおよび薬草療法からなる群から選択される。さらに別の態様では、組合せは、1つまたはより多くのカテゴリーの抗ウイルス剤を含む。
【0040】
よりさらなる態様では、本開示は、1つまたはより多くのワクチンと組み合わせて上記の抗PD-L1抗体(または二重もしくは多重特異性抗体)のいずれかを含む、製品を提供する。
【0041】
よりさらなる態様では、本開示は、有効量の上記の抗PD-L1抗体または組成物(または二重もしくは多重特異性抗体)のいずれかを投与することを含む、T細胞機能を増進する方法を提供する。一実施形態では、抗PD-L1抗体または組成物は、機能不全T細胞を機能不全ではないものにする。
【0042】
よりさらなる態様では、本開示は、治療有効量の上記の抗PD-L1抗体または組成物(または二重もしくは多重特異性抗体)のいずれかを投与することを含む、T細胞機能不全障害を治療する方法を提供する。1つの特定の実施形態では、T細胞機能不全障害は感染症または腫瘍免疫である。感染症は急性または慢性であり得る。一部の実施形態では、慢性感染症は、持続性、潜伏性または遅発性である。さらに別の実施形態では、慢性感染症は、細菌、ウイルス、真菌および原生動物からなる群から選択される病原体の結果としてもたらされる。さらなる実施形態では、宿主における病原体レベルが低減される。
【0043】
よりさらなる実施形態では、方法は、ワクチンを用いる治療をさらに含む。よりさらなる実施形態では、方法は、抗生物質を用いる治療をさらに含む。よりさらなる実施形態では、病原体は細菌であり、かつ、方法は抗菌剤の投与をさらに含む。よりさらなる実施形態では、細菌は、マイコバクテリウム属菌(Mycobacterium spp.)、サルモネラ属菌(Salmonella spp.)、リステリア属菌(Listeria spp.)、ストレプトコッカス属菌(Streptococcus spp.)、ヘモフィルス属菌(Haemophilus spp.)、ナイセリア属菌(Neisseria spp.)、クレブシエラ属菌(Klebsiella spp.)、ボレリア属菌(Borrelia spp.)、バクテロイデス・フラギリス(Bacterioides fragillis)、トレポネーマ属菌(Treponema spp.)、およびヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)からなる群から選択され
る。よりさらなる実施形態では、病原体はウイルスであり、かつ、方法は抗ウイルス剤の投与をさらに含む。よりさらなる態様では、ウイルスは、B型、C型肝炎、単純ヘルペスウイルスI型、II型、ヒト免疫不全ウイルスI型、II型、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バー(Eppstein Barr)ウイルス、ヒトパピローマウイルス、ヒトTリンパ
球向性ウイルスI型、II型、水痘帯状疱疹(varicella zoster)からなる群から選択される。よりさらなる実施形態では、病原体は真菌であり、かつ、方法は抗真菌剤の投与をさらに含む。よりさらなる実施形態では、障害は、アスペルギルス症(aspergilosis)、ブラストミセス症、カンジダ・アルビカンス症(candidiasis albicans)、コクシジオイデス・イミチス症(coccidioiodmycosis immitis)、ヒストプラズマ症、パラコクシジオ
イデス症(paracoccidioiomycosis)、ミクロスポリジウム症からなる群から選択される
。よりさらなる実施形態では、病原体は原生動物であり、かつ、方法は抗原生動物剤の投与をさらに含む。よりさらなる実施形態では、障害は、リーシュマニア症、プラスモジウム症(すなわち、マラリア)、クリプトスポリジウム症、トキソプラズマ症、トリパノソーマ症、および蠕虫感染症からなる群から選択され、蠕虫感染症としては、吸虫(例えば、住血吸虫症)、条虫(例えば、エキノコックス症)および線虫(nemotodes)(例えば
、トリヒナ症(trchinosis)、回虫症、フィラリア症(filariosis)および糞線虫症(strongylodiosis))の結果としてもたらされるものが挙げられる。
【0044】
よりさらなる態様では、T細胞機能不全障害は腫瘍免疫である。よりさらなる実施形態では、PD-L1抗体または組成物は、放射線療法、化学療法、標的療法、免疫療法、ホルモン療法、血管新生阻害および緩和ケアからなる群から選択される従来の療法をさらに含む治療レジメンと組み合わせられる。よりさらなる特定の実施形態では、化学療法治療は、ゲムシタビン、シクロホスファミド、ドキソルビシン、パクリタキセル、シスプラチンからなる群から選択される。よりさらなる特定の実施形態では、腫瘍免疫は、乳房、肺、結腸、卵巣、黒色腫、膀胱、腎臓、肝臓、唾液、胃(stomach)、神経膠腫、甲状腺、胸腺、上皮、頭頸部がん、胃(gastric)、および膵臓がんからなる群から選択されるがんの結果としてもたらされる。
【0045】
本明細書に開示される抗PD-L1抗体またはその断片、国際出願PCT/CN2017/098332号明細書(参照することにより全体が本明細書に組み込まれる)に開示されるような抗CD137抗体またはその抗原結合断片、および薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物もまた本明細書において提供される。抗CD137抗体またはその断片は、以下のHVR_H1、HVR_H2、HVR_H3、HVR_L1、HVR_L2、および/またはHRV_L3を含み得る:
(1)(a)X1TFX2X3YX4IHWV(配列番号172):
X1:FまたはY
X2:SまたはT
X3:GまたはNまたはS
X4:AまたはGまたはW
好ましくは、X2はSであり、かつ/または、X4はWである;
(b)YSIX1SGX2X3WX4WI(配列番号173):
X1:SまたはT
X2:HまたはY
X3:HまたはY
X4:AまたはDまたはGまたはNまたはSまたはT
好ましくは、X4は、A、D、G、N、またはSである;および
(c)FSLSTX1GVX2VX3WI(配列番号174):
X1:GまたはS
X2:AまたはG
X3:AまたはGまたはSまたはT
好ましくは、X3はAまたはGまたはSである;
からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHVR_H1
(2)(a)LALIDWX1X2DKX3YSX4SLKSRL(配列番号175):
X1:AまたはDまたはY
X2:DまたはG
X3:RまたはSまたはY
X4:PまたはT;
(b)IGX1IYHSGX2TYYX3PSLKSRV(配列番号176):
X1:DまたはE
X2:NまたはS
X3:NまたはS;および
(c)VSX1ISGX2GX3X4TYYADSVKGRF(配列番号177):
X1:AまたはGまたはSまたはVまたはY
X2:AまたはDまたはSまたはY
X3:DまたはGまたはS
X4:SまたはT
好ましくは、X1はGまたはSまたはVまたはYである;
からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHVR_H2
(3)ARX1GX2X3X4VX5GDWFX6Y(配列番号178):
X1:EまたはG
X2:EまたはS
X3:DまたはT
X4:AまたはTまたはV
X5:AまたはIまたはLまたはTまたはV
X6:AまたはDまたはG
のアミノ酸配列を有するHVR_H3
(4)X1ASQX2X3X4X5X6X7X8(配列番号179):
X1:QまたはR
X2:DまたはGまたはS
X3:IまたはV
X4:GまたはRまたはSまたはT
X5:PまたはRまたはSまたはT
X6:AまたはDまたはFまたはSまたはVまたはY
X7:LまたはV
X8:AまたはGまたはN
好ましくは、X6はAまたはFまたはSまたはVまたはYであり、かつ/または、X8はAまたはGである;
のアミノ酸配列を有するHVR_L1
(5)X1ASX2X3X4X5GX6(配列番号180):
X1:AまたはD
X2:NまたはSまたはT
X3:LまたはR
X4:AまたはEまたはQ
X5:SまたはT
X6:IまたはV
好ましくは、X2はNまたはSである;
のアミノ酸配列を有するHVR_L2
(6)(a)YCQQX1YX2X3X4T(配列番号181):
X1:AまたはGまたはSまたはY
X2:QまたはSまたはY
X3:IまたはLまたはTまたはY
X4:IまたはSまたはVまたはW;
好ましくは、
X1:AまたはG
X2:SまたはY
X3:IまたはLまたはT
X4:W;および
(b)YCX1QX2X3X4X5PX6T(配列番号182):
X1:EまたはQ
X2:PまたはSまたはY
X3:DまたはLまたはSまたはTまたはY
X4:DまたはEまたはHまたはSまたはT
X5:DまたはLまたはTまたはW
X6:LまたはPまたはRまたはV
からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHVR_L3。
【0046】
さらなる態様は、それを必要とする対象においてがんを治療しかつ/または腫瘍成長を低減する方法であって、治療有効量の本明細書に開示される抗PD-L1抗体またはその断片および上記の抗CD137抗体またはその抗原結合断片を前記対象に投与することを含む、方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1A】
図1Aは、哺乳動物細胞表面上に発現されたヒト、サルおよびマウスPD-L1に対する例示的な抗体のフローサイトメトリーベースの結合アッセイを示す。それはまた、パネルの上に指し示されるような他の免疫チェックポイント分子に対してではなくPD-L1に対する例示的な抗体の結合特異性を示す。
【
図1B】
図1Bは、哺乳動物細胞表面上に発現されたヒト、サルおよびマウスPD-L1に対する例示的な抗体のフローサイトメトリーベースの結合アッセイを示す。それはまた、パネルの上に指し示されるような他の免疫チェックポイント分子に対してではなくPD-L1に対する例示的な抗体の結合特異性を示す。
【
図1C】
図1Cは、哺乳動物細胞表面上に発現されたヒト、サルおよびマウスPD-L1に対する例示的な抗体のフローサイトメトリーベースの結合アッセイを示す。それはまた、パネルの上に指し示されるような他の免疫チェックポイント分子に対してではなくPD-L1に対する例示的な抗体の結合特異性を示す。
【
図1D】
図1Dは、哺乳動物細胞表面上に発現されたヒト、サルおよびマウスPD-L1に対する例示的な抗体のフローサイトメトリーベースの結合アッセイを示す。それはまた、パネルの上に指し示されるような他の免疫チェックポイント分子に対してではなくPD-L1に対する例示的な抗体の結合特異性を示す。
【
図2】
図2は、例示的な抗体がフローサイトメトリーベースのアッセイによりPD-L1およびそのリガンドPD1の結合を完全に遮断することを示す。
【
図3】
図3は、例示的な抗体がBLIアッセイによりPD-L1およびそのリガンドPD1の結合を完全に遮断することを示す。
【
図4】
図4は、例示的な抗体がELISAアッセイによりPD-L1およびそのリガンドPD1の結合を完全に遮断することを示す。
【
図5】
図5は、1つの例示的な抗体TY21421が約1nMのEC50で哺乳動物細胞表面上に発現されるヒトPD-L1に結合することを示す。
【
図6】
図6は、1つの例示的な抗体TY21421が、パラホルムアルデヒドを用いて固定された細胞表面PD-L1に結合することを示す。
【
図7】
図7は、1つの例示的な抗体TY21421がPromega PD1/PD-L1レポーター遺伝子アッセイにおいて強力であることを示す。
【
図8】
図8は、例示的な抗体がDC-MLRアッセイにおいてDC-CD4+ T細胞によるIFN-γ放出を刺激することを示す。
【
図9】
図9は、1つの例示的な抗体TY21421がMLRアッセイにおいてIL2およびIFN-γ放出を強力に刺激することを示す。
【
図10】
図10は、1つの例示的な抗体TY21421が参照抗体テセントリクとは対照的にADCC効果を持つことを示す。
【
図11】
図11は、H22マウス肝臓がんモデルにおける2つの例示的な交差反応性抗体の抗腫瘍有効性を示す。
【
図12】
図12は、MC38マウス結腸がんモデルにおける2つの例示的な交差反応性抗体の抗腫瘍有効性を示す。
【
図13】
図13は、LL/2マウス肺がんモデルにおけるTY21421と交差反応性抗CD137抗体との組合せを用いて増進された抗腫瘍有効性を示す。
【
図14】
図14は、3LLマウス肺がんモデルにおけるTY21421と交差反応性抗CD137抗体との組合せを用いて増進された抗腫瘍有効性を示す。
【
図15】
図15は、MC38異種移植片を有するマウスにおけるPET/CTイメージングおよび
64Cu-TY21421の体内分布解析を示す。(A)
64Cu-TY21421の注射後0.5時間、12時間、24時間、36時間、48時間および62時間におけるMC38異種移植片を有するマウスの代表的なPET/CT画像。(B)注射後0.5時間、12時間、24時間、36時間、48時間および62時間におけるマウス腫瘍、肝臓、筋肉、脳および肺における
64Cu-TY21421の取込みの平均時間経過(n=4)。(C)注射後12h、24hおよび48hにおける
64Cu-TY21421の平均(n=3)体内分布および取込みの時間経過。
【
図16】
図16は、異なる腫瘍中のPD-L1発現レベルの評価における従来のPETプローブ
18F-FDGとPD-L1特異的PETプローブ
64Cu-TY21421との比較を示す。(A)MC38および4T1異種移植片を有するマウスにおける
18F-FDGおよび
64Cu-TY21421の代表的なPET画像。(B)NU/NUマウス中のMC38および4T1腫瘍における
18F-FDGおよび
64Cu-TY21421の平均(n=4)取込み。
【
図17】
図17は、注射後12時間でのBGC823およびU87MG腫瘍異種移植片を有するNu/Nuマウスにおける
64Cu-TY21421のマイクロPETイメージングを示す。F
【発明を実施するための形態】
【0048】
本開示の実施は、他に指し示されなければ、当該技術分野の技術的範囲内である、分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学および免疫学の従来技術を用いる。そのような技術は、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, second edition
(Sambrook et al., 1989); Oligonucleotide Synthesis (M. J. Gait, ed., 1984); Animal Cell Culture (R. I. Freshney, ed., 1987); Methods in Enzymology (Academic Press, Inc.); Current Protocols in Molecular Biology (F. M. Ausubel et al., eds 1987, and periodic updates); PCR: The Polymerase Chain Reaction, (Mullis et al., ed., 1994); A Practical Guide to Molecular Cloning (Perbal Bernard V., 1988); Phage Display: A Laboratory Manual (Barbas et al., 2001)などの文献において充分に説
明されている。
【0049】
リンパ球の発生および活性化、T細胞およびその機能、免疫応答、免疫グロブリンスーパーファミリー(B7.1(CD80)/B7.2(CD86)-CD28/CTLA-4(CD152)T細胞共刺激経路、ICOS/ICOSLシグナル伝達、PD-1経路などを含む)およびTNFRファミリー共刺激分子による共刺激を含む、宿主免疫の機序(mechnisams)は、米国特許第8,217,419号明細書の段落11~24(参照することにより全体が組み込まれる)において総説されている。プログラム死-1/プログラム死リガンド-1(PD-1/PD-L1)経路およびがん療法におけるその意義は、例えば、Ohaegbulam et al., Human cancer immunotherapy with antibodies to the PD-1 and PD-L1 pathway, Trends in Molecular Medicine, Volume 21, Issue 1, pp. 24-33,
January 2015 (DOI: dx.doi.org/10.1016/j.molmed.2014.10.009)およびDolan et al., PD-1 Pathway Inhibitors: Changing the Landscape of Cancer Immunotherapy, Cancer Control, July 2014, Vol. 21, No. 3, pp. 231-237(これらの参考文献は参照することにより全体が組み込まれる)において総説されている。
【0050】
一態様では、本開示は、PD-L1がPD-1と相互作用することを遮断し、それにより、PD-L1がT細胞および他の抗原提示細胞に陰性共刺激シグナルを送信するのを防止することを含む、PD-L1を通じたシグナル伝達のアンタゴニズムが、感染症(例えば、急性および慢性)および腫瘍免疫に応答した免疫を増進する可能性があるような、抗PD-L1抗体を提供する。さらに、本開示の抗PD-L1抗体は、PD-1:PD-L1シグナル伝達の他の成分のアンタゴニスト、例えば、抗PD-1および抗PD-L2抗体と組み合わせられてもよい。
【0051】
定義
簡便性のために、本明細書、実施例、および添付の特許請求の範囲において用いられるある特定の用語がここに集められる。他に定義されなければ、本明細書において使用される全ての科学技術用語は、本開示が属する技術分野の当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0052】
本明細書において使用される場合、以下の用語および語句は、以下の意味を有することが意図される。
【0053】
冠詞「a」および「an」は、1つまたは1つより多く(すなわち、少なくとも1つ)の、冠詞の文法的対象物を指すために本明細書において使用される。例として、「要素」(an element)は、1つの要素または1つより多くの要素を意味する。
【0054】
本明細書において使用される場合、「約」という用語は、この技術分野における当業者に容易に知られる各々の値についての通常の誤差範囲、例えば、20%以内、より好ましくは10%以内、最も好ましくは5%以内を意味する。
【0055】
「セラノスティック剤」(theranostic)という用語は、診断能力および治療能力を組
み合わせた二重機能剤を指す。例えば、セラノスティック剤は、療法および診断イメージングのモダリティーを組み合わせることができる。ある特定の実施形態では、本明細書に記載のセラノスティック剤は、同じ用量内で治療薬および診断イメージング剤を同時に送達する。1つの薬物中にこれらの特徴を組み合わせることにより、セラノスティック剤は、別個のイメージングおよび治療剤の間で現在存在する体内分布および選択性における望ましくない差異を克服し得る。さらに、この態様では、本開示のセラノスティック剤は、1つのパッケージにおいてがんをイメージングし、腫瘍、送達速度論、および治療薬の有効性をモニターし、結果として、個々の患者に対して療法およびその用量を微調整する能力を医師に与える。一部の実施形態では、セラノスティック剤は、対象における疾患(例えば、がん)の診断を特異的に可能とし、次に疾患を治療するために同一または密接に関連する剤を使用する放射性核種標識剤(例えば、本明細書に開示される抗体(antobodies))であり得る。
【0056】
免疫機能障害の文脈における「機能障害」は、抗原刺激に対する免疫応答性が低減した状態を指す。該用語は、抗原認識が起こり得るが、次いで起こる免疫応答が、感染または腫瘍成長を制御するためには効果的でない、疲弊および/またはアネルギー(anergy)の両方の一般的な要素を含む。
【0057】
「T細胞機能不全障害」は、抗原刺激への減少した応答性により特徴付けられるT細胞
の障害または状態である。特定の実施形態では、T細胞機能不全障害は、PD-1を通じた不適切な増加したシグナル伝達と特に関連付けられる障害である。別の実施形態では、T細胞機能不全障害は、T細胞がアネルギー性である、またはサイトカインの分泌、増殖、もしくは細胞溶解活性の能力が減少しているものである。特定の態様では、減少した応答性は、免疫原を発現する病原体または腫瘍の効果的でない制御を結果としてもたらす。T細胞機能障害により特徴付けられるT細胞機能不全障害の例としては、未解消の急性感染症、慢性感染症および腫瘍免疫が挙げられる。
【0058】
「T細胞機能の増進」は、持続的なもしくは増幅された生物学的機能を有するように、または疲弊したもしくは不活性のT細胞を再生もしくは再活性化するようにT細胞を誘導し、惹起しまたは刺激することを意味する。T細胞機能の増進の例としては、介入前のレベルと比べた、CD8+ T細胞からのγ-インターフェロンの分泌の増加、増殖の増加、抗原応答性(例えば、ウイルスまたは病原体クリアランス)の増加が挙げられる。一実施形態では、増進のレベルは、少なくとも(as least)50%、あるいは、60%、70%、80%、90%、100%、120%、150%、200%である。この増進を測定する方式は当業者に公知である。
【0059】
「慢性感染症」は、感染性因子(例えば、ウイルス、細菌、原生動物寄生虫、または真菌などの病原体)が、感染した宿主において免疫応答を誘導したが、急性感染症におけるように、その宿主からクリアランスまたは除去されていない感染症を指す。慢性感染症は、持続性、潜伏性、または遅発性であってもよい。急性感染症は通常は数日または数週以内に免疫系により解消されるが(例えば、インフルエンザ)、持続性感染症は、何か月、何年、何十年、または生涯にわたり比較的低いレベルで持続し得る(例えば、B型肝炎)。対照的に、潜伏性感染症は、長期間の無症候性活動が、急速に増加する高グレード感染および上昇した病原体レベルの期間により中断されることを特徴とする(例えば、単純ヘルペス)。最後に、遅発性感染症は、長期間の潜伏、続いて臨床症状の発病後に開始する遅延性および進行性の臨床経過などの、疾患症状における段階的および連続的な増加により特徴付けられる感染症である。潜伏性および持続性感染症とは異なり、遅発性感染症は、ウイルス増殖の急性期と共に開始しないことがある(例えば、ピコルナウイルス感染症、ビスナウイルス、スクレイピー、クロイツフェルト・ヤコブ病)。慢性感染症を誘導することができる例示的な感染性因子としては、ウイルス(例えば、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バーウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、単純ヘルペスウイルスI型およびII型、ヒト免疫不全ウイルス1型および2型、ヒトパピローマウイルス、ヒトTリンパ球向性ウイルス1型および2型、および水痘帯状疱疹ウイルスなど)、細菌(例えば、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、リステリア属菌、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、ボレリア属菌(Borrelia spp.)、およびヘリコバクター・ピロリなど)、原生動物寄生
虫(例えば、リーシュマニア属虫(Leishmania spp.)、プラスモジウム・
ファルシパルム(Plasmodium falciparum)、シストソーマ属虫(Schistosoma spp.)、
トキソプラスマ属虫(Toxoplasma spp.)、トリパノソーマ属虫(Trypanosoma spp.)、
およびテニア・クラシセプス(Taenia carssiceps)など)、ならびに真菌(例えば、ア
スペルギルス属菌(Aspergillus spp.)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)、ヒストプラズマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)、およびニューモシスチス・カリニ(Pneumocystis carinii)など)が挙げられる。追加の感染性因子としては、プリオンまたはミスフォールディングしたタンパク質が挙げられ、これらは、脳またはニューロン構造においてタンパク質ミスフォールディングをさらに繁殖させて、細胞死、組織損傷および最終的に死を引き起こすアミロイドプラークの形成を結果としてもたらすことによりこれらの組織に影響する。プリオン感染症の結果としてもたらされる疾患の例としては、クロイツフェルト・ヤ
コブ病およびその変種、ゲルストマン-ストロイスラー-シャインカー症候群(GSS)、致死性家族性不眠症(sFI)、クールー、スクレイピー、ウシにおける牛海綿状脳症(BSE)(別名「狂牛」病)、ならびに脳症の様々な他の動物形態[例えば、伝達性ミンク脳症(TME)、オジロジカ、ヘラジカおよびミュールジカにおける慢性消耗性疾患(CWD)、ネコ海綿状脳症、ニアーラ、オリックスおよびクーズーにおける外来有蹄動物脳症(EUE)、ダチョウの海綿状脳症]が挙げられる。
【0060】
「腫瘍免疫」は、腫瘍が免疫認識およびクリアランスを回避するプロセスを指す。そのため、治療的な概念として、腫瘍免疫は、そのような回避が減弱され、腫瘍が免疫系により認識および攻撃される場合に「治療される」。腫瘍認識の例としては、腫瘍結合、腫瘍収縮および腫瘍クリアランスが挙げられる。
【0061】
「B7陰性共刺激アンタゴニスト」(「BNCA」)は、B7ファミリーのメンバーにより媒介されるTリンパ球上に発現された細胞表面タンパク質により媒介されるまたはそれを通じた陰性共刺激シグナルを減少させ、遮断し、阻害し、妨げまたはそれに干渉する剤である。一態様では、BNCAは、単独で、または本開示の抗PD-1抗体との組合せで、機能不全T細胞を機能不全ではないものとしてもよい。別の態様では、BNCAは、B7陰性共刺激分子の核酸もしくはタンパク質合成、発現、シグナル伝達、および/または発現後プロセシングを阻害する剤であってもよい。さらに別の態様では、BNCAは、B7陰性共刺激分子によるシグナル伝達を減少させ、遮断し、阻害し、妨げまたはそれに干渉する抗体、抗原結合抗体断片、BNCAオリゴペプチド、BNCA RNAiまたはBNCA小分子である。例示的なB7陰性共刺激分子としては、CTLA-4、PD-L1、PD-1、B7.1(T細胞上に発現される)、PD-L2、B7-H3およびB7-H4が挙げられる。
【0062】
「陽性共刺激アゴニスト」は、Tリンパ球上に発現された細胞表面タンパク質により媒介されるまたはそれを通じた共刺激シグナルを増加させ、増進し、増大させまたは促進する分子である。一態様では、陽性共刺激分子は、陽性共刺激経路を活性化させる細胞外ドメイン、可溶性構成物またはアゴニスト抗体であり得る。例示的な陽性共刺激分子としては、B7スーパーファミリー分子、例えば、B7.1、B7.2、CD28およびICOS/ICOSLが挙げられる。追加の例としては、TNFRファミリー共刺激分子、例えば、OX40/OX40L、41-BB/41-BBL、CD27/CD27L、CD30/CD30LおよびHVEM/LIGHTが挙げられる。
【0063】
「小分子」または「小有機分子」は、約500ダルトンより低い分子量を有する分子である。
【0064】
「抗生物質」という用語は、ウイルス、細菌、真菌または原生動物などの微生物の増殖を特異的に阻害しまたは消失させるが、投与される濃度および投与間隔において宿主に対して非致死性である、任意の分子を含む。本明細書において使用される場合、抗生物質という用語は、抗細菌剤、抗ウイルス、剤、抗真菌剤および抗原生動物剤を含む。特定の態様では、抗生物質は、投与される濃度および投与間隔において宿主に対して非毒性である。抗細菌性抗生物質または抗細菌剤は、殺菌性(すなわち、直接的に殺傷する)または静菌性(すなわち、分裂を防止する)のいずれかとして広く分類され得る。抗殺菌性抗生物質(anti-bactericidal antibiotics)は、狭域(すなわち、例えばグラム陰性など、細
菌のサブセットの小さいクラスにのみ影響する)または広域(すなわち、広範なクラスに影響する)としてさらに下位分類され得る。抗生物質の例としては、(i)アミノグリコシド類、例えば、アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、ピューロマイシン(paromycin)、(i
i)アンサマイシン類、例えば、ゲルダナマイシン、ハービマイシン、(iii)カルバ
セフェム類、例えば、ロラカルベフ、(iv)カルバペネム類、例えば、エルタペネム(ertapenum)、ドリペネム、イミペネム/シラスタチン、メロペネム、(v)セファロス
ポリン類(第1世代)、例えば、セファドロキシル、セファゾリン、セファロチン、セファレキシン、(vi)セファロスポリン類(第2世代)、例えば、セファクロル(ceflaclor)、セファマンドール、セフォキシチン、セフプロジル、セフロキシム、(vi)セ
ファロスポリン類(第3世代)、例えば、セフィキシム、セフジニル、セフジトレン、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフポドキシム、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、(vii)セファロスポリン類(第4世代)、例えば、セフェピム、(viii)セファロスポリン類(第5世代)、例えば、セフトビプロル、(ix)糖ペプチド、例えば、テイコプラニン、バンコマイシン、(x)マクロライド類、例えば、アジスロマイシン(axithromycin)、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン(dirithromycine)、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、トロレアンドマイシン、テリスロマイシン、スペクチノマイシン、(xi)モノバクタム類、例えば、アズトレオナム(axtreonam)、(xii)ペニシリン類(penicilins)、例えば、アモキシシリン、
アンピシリン、アズロシリン(axlocillin)、カルベニシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、メズロシリン、メチシリン(meticillin)、ナフシリン(nafcilin)、オキサシリン、ペニシリン、ピペラシリン(peperacillin)、チカルシリン、(xiii)抗生物質ポリペプチド、例えば、バシトラシン、コリスチン、ポリミキシンB、(xiv)キノロン類、例えば、シプロフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、レメフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、オルフロキサシン(orfloxacin)、トロバフロキサシン、(xv)スルホンアミド類、例えば、マフェニド、プロントジル、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルファニルアミド、スルファサラジン、スルフィソキサゾール、トリメトプリム、トリメトプリム-スルファメトキサゾール(TMP-SMX)、(xvi)テトラサイクリン類、例えば、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリンおよび(xvii)その他、例えば、アルスフェナミン(arspenamine)、クロラムフェニコール、クリンダマイシン、リンコマイシン、エタンブトール
、ホスホマイシン、フシジン酸、フラゾリドン、イソニアジド、リネゾリド、メトロニダゾール、ムピロシン、ニトロフラントイン、プラテンシマイシン、ピラジナミド、キヌプリスチン/ダルホプリスチン、リファンピン/リファンピシンまたはチニダゾールが挙げられる。
【0065】
「抗ウイルス剤」という用語は、ウイルスの増殖、罹患性および/または生存を阻害しまたは消失させる任意の分子を含む。これは、抗レトロウイルス薬物、例えば、(1)逆転写酵素阻害剤、例えば、(a)ヌクレオシドアナログ逆転写酵素阻害剤(NRTI)(例えば、アシクロビル(aciclovir)/アシクロビル(acyclovir)(ZOVIRAX(登録商標)、ZOVIR(登録商標))、シドホビル、アジドチミジン/ジドブジン(AZT、RETROVIR(登録商標))、ジダノシン(ddI、VIDEX(登録商標);ザルシタビン(ddC、HIVID(登録商標));スタブジン(d4T、ZERIT(登録商標);ラミブジン(3TC、EPIVIR(登録商標));アバカビル(ZIAGEN(登録商標));エムトリシタビン(EMTRIVA(登録商標));ブリブジン(HELPIN(登録商標));エンテカビル(BARACLUDE(登録商標));イドクスウリジン;ビラミジン(Valeant Pharmaceutialsによるタリバビリン)、シチジンヌクレオシドアナログポリメラーゼ阻害剤PCI-6130、およびPharmasset/Rocheによるプロドラッグバリアント(例えば、R7128);Merck/Isis Pharmaceuticalsによるヌクレオシドアナログ阻害剤--MK-0608、(b)ヌクレオチドアナログ逆転写酵素阻害剤(NtRTI)(例えば、テノホビル(VIREAD(登録商標));アデホビル(PREVEON(登録商標)、HEPSERA(登録商標));ホミビルセン(VITRAVENE(登録商標));(c)非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTI)、エファビレンツ
(SUSTIVA(登録商標)、STOCRIN(登録商標));ネビラピン(VIRAMUNE(登録商標))、デラビルジン(RESCREPTOR(登録商標))、エトラビリン(INTELENCE(登録商標))、ロビリド;ViroChem PharmaによるHCV RNA依存性RNAポリメラーゼの非ヌクレオシド阻害剤--VCH-759、PfizerによるHCVポリメラーゼ阻害剤の非ヌクレオシド阻害剤--PF-868554;および(d)ポリメラーゼ阻害剤、例えば、Boehringer IngelheimによるC型肝炎ウイルスのRNA依存性RNAポリメラーゼ--BILB-1941、RocheによるRNAポリメラーゼ阻害剤--R1626;ACH-0137171 Achillion Pharmaceuticalsによるレプリカーゼ阻害剤、R7128--Roche/Pharmassetによるポリメラーゼ阻害剤、ABT-333、およびABT-072--Abbottによるポリメラーゼ阻害剤、BI 207127 Boehringer Ingelheimによるポリメラーゼ阻害剤、PSI-7851--Pharmassetによるポリメラーゼ阻害剤、ANA598--Anadys Pharmaceuticalsによるポリメラーゼ阻害剤、MK-3281--Merckによるポリメラーゼ阻害剤、IDX184--Idenixによるポリメラーゼ阻害剤、GSK 625433--Glaxo Smith Klineによるポリメラーゼ阻害剤、INX-189--Inhibitexによるポリメラーゼ阻害剤、NM283--Idenixによるポリメラーゼ阻害剤、HCV796--Wyethによるポリメラーゼ阻害剤、GL60667およびGS9190--Gileadによるポリメラーゼ阻害剤、PF-00868554 0 Pfizerによるポリメラーゼ阻害剤、VCH759、VCH916、VX222およびVX759--Virochemによるポリメラーゼ阻害剤、IDX184およびIDX375--Idenixによるポリメラーゼ阻害剤、BMS650032--Bristol Myers Squibbによるポリメラーゼ阻害剤;(2)プロテアーゼ阻害剤、例えば、サキナビル(FOROVASE(登録商標)/INVIRASE(登録商標))、リトナビル(NORVIR(登録商標))、インジナビル(CRIXIVAN(登録商標))、ネルフィナビル(VIRACEPT(登録商標))、アムプレナビル(AGENERASE(登録商標))、ロピナビル(KALETRA(登録商標))、アタザナビル(REYATAZ(登録商標))、フォサムプレナビル(LEXIVA(登録商標))、チプラナビル(APTIVUS(登録商標))、ダルナビル(PREZISTA(登録商標))、テラプレビル(telapravir)(VX-950);Vertex Pharmaceuticalsによる第2世代HCVプロテアーゼ阻害剤--VX-500およびVX-813;Intermune/RocheによるNS3/4Aプロテアーゼ阻害剤--ITMN-191/R-7227、ボセプレビル、Schering-Ploughによるプロテアーゼ阻害剤--SCH 503034、Medivir/TibotecによるHCV NS3/4Aプロテアーゼ阻害剤(inbihitor)--TMC435/TMC435350、ACH
-1625 Achillion Pharmaceuticalsによるプロテアーゼ阻害剤、ACH-806--Achillion/Gileadによるプロテアーゼ阻害剤、BI201335およびBILN 2061--Boehringer Ingelheimによるプロテアーゼ阻害剤、SCH 900518/SP900518(ナルラプレビル)--Schering-Ploughによるプロテアーゼ阻害剤、MK-7009--Merckによるプロテアーゼ阻害剤、BMS-650032、BMS-790052およびBMS-791325--Bristol Myeres Squibbによるプロテアーゼ阻害剤、R7227--Rocheによるプロテアーゼ阻害剤、PHX1766--Phenomixによるプロテアーゼ阻害剤、AVL-181--Avila Therapeuticsによるプロテアーゼ阻害剤、ビリベルジン、CTS-1027--Roche Biosciencesによるプロテアーゼ阻害剤、VX985--Vertexによるプロテアーゼ阻害剤、VCH-759およびVCH-917--Virochem/Vertexによるプロテアーゼ阻害剤、IDX-136および316--Idenixによるプロテアーゼ阻害剤、ABT-450--Abbottによるプ
ロテアーゼ阻害剤、VBY 376--Virobayによるプロテアーゼ阻害剤;(3)インテグラーゼ阻害剤、例えば、ラルテグラビル(ISENTRESS(登録商標))、エルビテグラビル;(4)ヌクレオシドアナログ/ヌクレオチドアナログ阻害剤のコンボ療法、アトリプラ(テノホビル+エムトリシタビン(embricitabine)+エファビレン
ツ)、コンビビル(ラミブジン(lamivudein)+ジドブジン)、(5)侵入または融合阻害剤、例えば、マラビロク、エンフビルチド、ドコサノール、抗CD4抗体、抗gp120抗体、抗CCR5抗体、HCV NS5aアンタゴニスト:(a)Arrow TherapeuticsによるA-831、A-689およびAZD 2836、(b)Bristol Myers SquibbによるBMS-790052およびBMS-824393、(c)Glaxo Smith KlineによるGSK-625433、(d)NS4aアンタゴニストACH-1095;(5)成熟阻害剤、例えば、ベビリマト(bevirimat)およびビベコン(vivecon);(6)ウイルス放出阻害剤、例えば、ザナミビル(RELENZA(登録商標))、オセルタミビル(TAMIFLU(登録商標))、アルビドール;(7)免疫応答増進剤、例えば、インターフェロン-α(例えば、Biolex TherapeuticsによるBLX-883およびBLX 883 CR、Nautilus Biotechによるベレロフォン(belerofon)、LG Lif
e Sciencesによる長期作用性IFN-α、IFN-α SR、Flamel Technologiesによる長期作用性IFN-α2b CRおよびIFN-α2b
XL、ペグ化IFN-α(例えば、PEG-IFN-α-2a、PEGASYS(登録商標);PEG-IFN-α2b、PEGINTRON(登録商標))、IFN-α2b-ヒト血清アルブミン融合タンパク質(ALBUFERON(登録商標));インターフェロン-β、例えば、IFN-β-1b(BETASERON(登録商標))、インターフェロン-γ、インターフェロン-λ、ペグ化インターフェロン-λ(例えば、ZymoGenetics/Novo NordiskによるPEG-rIL-29)、インターフェロン-ω/白血球IIインターフェロン(例えば、Intarcia Therapeutics)、toll様受容体7アゴニスト、例えば、Anadys Pharmaceuticalsによるイミキモド、イサトリビンおよびそのプロドラッグバリアント(例えば、ANA-975およびANA-971)、Implicit Bioscienceによるオグルファニド(IM862、L-Glu-L-Trp-OH)およびその脂質またはグリコシル共役バリアント、NOV-205(例えば、Molixan(登録商標)--Novelos Therapeutics, Inc.によるペプチド性抗ウイルス剤)、Enzo Biochemによる抗ウイルス剤EHC18、ガンマ-D-グルタミル-L-トリプトファン(例えば、SCV-07、SciClone Pharmaceuticals/Verta)、アロフェロン(aloferon)(例えば、アロフェロン(aloferon)-1-HGVSGHGQHGVHG、アロフェロン(aloferon)-2-GVSGHGQHGVHG)、CPG 10101--Coley Pharmaceuticals/ActilonによるTLR-9アゴニスト;(8)抗ウイルス性相乗増進剤、すなわち、単独でほとんどまたは全く抗ウイルス特性がないが、他の抗ウイルス剤の効果を増進するもの--例えば、クロロキン(choroquine)、グレープフルーツジュース、ヒドロキシウレア、レフルノミド、ミコフェノール酸、レスベラトロール、リトナビル(ritonavi);それ以外に、他の抗ウイルス薬物、例えば、アマンタジン、エドクスジン、ファムシクロビル(FAMVIR(登録商標))、ペンシクロビル、ホスカルネット(fascarnet)、ホスホネット、ガンシクロビル(CYTOVENE(登録商標)、CY
MEVENE(登録商標)、VITRASERT(登録商標))、ガーダシル、イバシタビン、イムノビル、モロキシジン、ネキサビル、ペラミビル、プレコナリル、ポドフィロトキシン、リバビリン、リマンタジン、トリフルリジン、トリジビル、トロマンタジン、ツルバダ、バラシクロビル、バルガンシクロビル、ビダラビン、およびインターフェロン増進剤、例えば、Transition TherapeuticsによるEMZ702、ヒスタミン二塩酸塩(例えば、Ceplene(登録商標)+IFN-α);ならびに(9)種々雑多なまたは未分類の抗ウイルス剤、例えば、Kemin Pharmace
uticalsによるKPE-02003002(アルテニモール)、ミトキノン--Antipodean PharmaceuticalsによるコエンザイムQ10抗酸化剤アゴニスト、アルファ-グルコシダーゼ(alpha-glucosydase)I阻害剤(例えば、M
igenix TherapeuticsによるMX-3253-セルゴシビル、カスタノスペルミン、グルココルチコイドアンタゴニスト(例えば、VGX PharmaceuticalsによるHCV IRES阻害剤、ミフェプリストン、VGX-410C)、肝臓アゴニスト(例えば、Phynova PharmaceuticalsによるPYN17)、従来の薬草療法に由来する抗ウイルス剤、例えば、Phynova PharmaceuticalsによるPYN18、カスパーゼ阻害剤(例えば、LG Life SciencesによるLB-84451、エムリカサン--PfizerによるPF-0
3491390/IDN-6556)、シクロフィリンAへの結合を防止することによりウイルス複製を阻害するサイクロスポリンアナログ(例えば、NovartisによるSDZ NIM 911、DebiopharmによるDebio-025)などを含む。
【0066】
「抗真菌剤」という用語は、真菌の増殖、罹患性(morbity)および/または生存を阻
害しまたは消失させる任意の分子を含む。これは、例えば、(1)ポリエン抗真菌剤、例えば、ナタマイシン(natamyin)、リモシジン、フィリピン、ナイスタチン、アムホテリシンB、カンジシン;(2)イミダゾール、例えば、ミコナゾール、ケトコナゾール(LOTRIMIN(登録商標))、エコナゾール、ビホナゾール、ブトコナゾール、フェンチコナゾール、イソコナゾール、オキシコナゾール、セルタコナゾール(ERTACZO(登録商標))、スルコナゾール、チオコナゾール、(3)トリアゾール、例えば、フルコナゾール、イトラコナゾール、イサブコナゾール、ラブコナゾール ポサコナゾール、ボリコナゾール、テルコナゾール;(4)アリルアミン、例えば、テルビナフィン(LAMISIL(登録商標))、アモロルフィン、ナフチフィン(Naftin(登録商標))、ブテナフィン(LOTRIMIN ULTRA(登録商標));(5)エキノカンジン、例えば、アニデュラファンギン、カスポファンギン、ミカファンギン、および抗真菌特性を有する他の物質、例えば、安息香酸、シクロピロクス(cicclopix)、フルシトシ
ン、グリセオフルビン、ゲンチアナバイオレット、ハロプロギン、トルナフテート(TINACTIN(登録商標)、DESENEX(登録商標)、AFTATE(登録商標))、ウンデシレン酸、ティーツリー油--ISO 4730(メラルーカ油、テルピネン-4-オール型) シトロネラ油、レモングラス、オレンジ油、パルマローザ油、パチョリ、レモンマートル、ニーム種子油、ココナッツ油を含む。
【0067】
「抗原生動物剤」(anti-protozoan agent)または「抗原生動物剤」(anti-protozoal
agent)という用語は、増殖、罹患性および/または生存または原生生物を阻害しまたは消失させる任意の分子を含む。例示的な抗原生動物剤としては、(1)抗マラリア剤、例えば、キニーネ、キニマックス、キニジン、キニマックス、クロロキン(ARALEN(登録商標))、ヒドロキシクロロキン(Hydroxycloroquine)(PLAQUENIL(登
録商標))、アモジアキン、ピリメタミン(DARAPRIM(登録商標))、スルファドキシン(sulphadoxine)、プログアニル、メフロキン(LARIAM(登録商標))、ハロファントリン、プリマキン、アルテミシニン(artemesinin)およびその(it)誘
導体(例えば、アルテムエーテル、アルテスネイト(artensunate)、ジヒドロアルテミ
シニン、アルテエーテル)、クリンダマイシンおよびその組合せ;(2)プロテアーゼ阻害剤、および薬物、ベンズニダゾール(benznidaole)、ブパルバクオン(buparvaquone
)、カルバルソン、クリオキノール、ジスルフィラム(disulfuram)、エフロルニチン、エメチン、フラゾリドン、アンチモン酸メグルミン、メラルソプロール、メトロニダゾール(FLAGYL(登録商標))、ミルテホシン、ニフルチモクス、ニタゾキサニド、オルニダゾール、パロモマイシン硫酸塩、ペンタミジン、ピリメタミン(DARAPRIM(登録商標))、セクニダゾール、チニダゾールが挙げられる。
【0068】
本明細書において使用される「ワクチン」という用語は、宿主に接種された場合に、特定の病原体に対する保護免疫を誘導する任意の非病原性免疫原を含む。ワクチンは多くの形態をとることができる。ワクチンは、病原体(pathogem)と重要な抗原を共有するが、それ自体は病原性でない生物全体であり得る(例えば、牛痘)。ワクチンはまた、殺傷(例えば、ソークポリオワクチン)または弱毒化(疾患を生じさせる能力を喪失;例えば、サビンポリオワクチン)されたものから調製され得る。ワクチンはまた、病原性生物から単離された精製された高分子から調製され得る。例えば、不活性形態の可溶性細菌毒素を含有するトキソイドワクチン(例えば、破傷風およびジフテリア)は、インタクトな細菌への免疫ではなく、抗毒素抗体の産生を結果としてもたらす。サブユニットワクチン(例えば、B型肝炎)は、目的の病原体から単離されたただ一つの免疫原性タンパク質を含有する。ハプテンコンジュゲートワクチンは、目的の病原体から単離されたある特定の炭水化物またはポリペプチドエピトープを、破傷風トキソイドなどの免疫原性キャリアに取り付ける。これらの戦略は、抗体産生を誘導するためのハプテンとしてエピトープを本質的に使用し、それが次に天然の病原体中の同じエピトープを認識する。しかしながら、最大に効果的であるために、そのようなワクチンは、B細胞およびT細胞の両方の細胞エピトープを組み込まなければならず、T細胞エピトープは、宿主個体の免疫系により認識、提示および応答され得ることを確実にするように選択されなければならない。
【0069】
本明細書に記載の方法のために抗PD-L1抗体と組み合わせて使用され得る抗ウイルスワクチンの例としては、Pevion BiotechによるHCVワクチン(ビロソーム(virasome))、TG4040(NS3、NS4およびNS5Bに対する細胞(細胞傷害性Tリンパ球CD4+およびCD8+)免疫応答を増進するように設計されたTransgene vironによるMVA-HCV、CHRONVAC(登録商標)--Inovio Biomedicalによるコドン最適化NS3/4a DNAワクチン、NovartisによるHCV/CpGワクチン、GI-5005--GlobeimmuneによるHCVワクチン、IC41 Intercellによるポリ-L-アルギニンと組み合わせてHCV CD4およびCD8 Tエピトープを有する合成ペプチドの混合物が挙げられる。
【0070】
免疫原への宿主応答は、アジュバントとの混合物として投与された場合に増進され得る。免疫アジュバントは、以下の様式の1つまたはより多くにおいて機能する:(1)免疫原の保持を長期化すること、(2)免疫原の効果的なサイズを増加させる(それゆえ、食作用およびマクロファージへの提示を促進する)こと、(3)注射部位へのマクロファージもしくは他の免疫細胞の流入を刺激すること、または(4)局所的なサイトカイン産生および他の免疫学的活性を促進すること。例示的なアジュバントとしては、完全フロイントアジュバント(CFA)、アルミニウム塩、およびマイコバクテリウム由来タンパク質、例えば、ムラミルジまたはトリペプチドが挙げられる。
【0071】
「抗体」という用語は、モノクローナル抗体(免疫グロブリンFc領域を有する全長抗体を含む)、ポリエピトープ特異性を有する抗体組成物、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体、ダイアボディ、および一本鎖分子の他に、抗体断片(例えば、Fab、F(ab’)2、およびFv)を含む。「免疫グロブリン」(Ig)という用語は、本明細書において「抗体」と交換可能に使用される。
【0072】
基本的な4鎖抗体単位は、2つの同一の軽(L)鎖および2つの同一の重(H)鎖から構成されるヘテロ四量体糖タンパク質である。IgM抗体は、J鎖と呼ばれる追加のポリペプチドと共に基本的なヘテロ四量体単位の5つからなり、10の抗原結合部位を含有するが、IgA抗体は、重合してJ鎖との組合せで多価集合体を形成し得る2~5個の基本的な4鎖単位を含む。IgGの場合、4鎖単位は概して約150,000ダルトンである
。各L鎖は、1つの共有結合性ジスルフィド結合によりH鎖に結合されており、2つのH鎖は、H鎖アイソタイプに依存して1つまたはより多くのジスルフィド結合により互いに結合されている。各HおよびL鎖はまた、周期的な間隔の鎖内ジスルフィド架橋を有する。各H鎖は、N末端において、可変ドメイン(VH)、続いてα鎖およびγ鎖のそれぞれについて3つの定常ドメイン(CH)、μおよびεアイソタイプについて4つのCHドメインを有する。各L鎖は、N末端において可変ドメイン(VL)、続いてその他端において定常ドメインを有する。VLはVHと位置合わせされ、CLは重鎖の第1の定常ドメイン(CHI)と位置合わせされる。特定のアミノ酸残基が軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとの間に接点を形成すると考えられている。VHおよびVLのペア形成は、一緒になって単一の抗原結合部位を形成する。抗体の異なるクラスの構造および特性について、例えば、Basic and Clinical Immunology, 8th Edition, Daniel P. Sties, Abba I. Terr and Tristram G. Parsolw (eds), Appleton & Lange, Norwalk, Conn., 1994のpage 71およびChapter 6を参照。任意の脊椎動物種からのL鎖は、定常ドメインのアミノ酸配列
に基づいて、カッパおよびラムダと呼ばれる2つの明確に異なる種類の1つに割り当てることができる。重鎖の定常ドメイン(CH)のアミノ酸配列に依存して、免疫グロブリンは、異なるクラスまたはアイソタイプに割り当てることができる。IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMという5つのクラスの免疫グロブリンがあり、これらはそれぞれα、δ、ε、γおよびμと称される重鎖を有する。γおよびαクラスは、CH配列および機能における比較的小さい差異に基づいてサブクラスにさらに分けられ、例えば、ヒトは以下のサブクラス:IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2を発現する。
【0073】
「単離された」抗体は、その生成環境(例えば、天然または組換え)の成分から同定、分離および/または回収された抗体である。好ましくは、単離されたポリペプチドは、その生成環境からの全ての他の成分との会合を含まない。組換え形質転換細胞の結果としてもたらされるものなどの、その生成環境の夾雑物成分は、通常は、抗体についての研究、診断または治療的使用に干渉しない材料であり、酵素、ホルモン、および他のタンパク質性または非タンパク質性溶質を含み得る。好ましい実施形態では、ポリペプチドは、(1)例えばローリー法による決定で、抗体の95重量%を超えるまで、一部の実施形態では、99重量%を超えるまで、(1)スピニングカップシークエネーターの使用によりN末端もしくは内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るために充分な程度まで、または(3)クマシーブルーもしくは、好ましくは、銀染色を使用する非還元もしくは還元条件下でのSDS-PAGEにより均質に精製される。単離された抗体は、抗体の天然の環境の少なくとも1つの成分が存在しないので、組換え細胞内のin situの抗体を含む。通常は、しかしながら、単離されたポリペプチドまたは抗体は、少なくとも1つの精製ステップにより調製される。
【0074】
抗体の「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗体の重鎖または軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。重鎖および軽鎖の可変ドメインはそれぞれ「VH」および「VL」と称されることがある。これらのドメインは、概しては、抗体の(同じクラスの他の抗体に対して)最も可変の部分であり、抗原結合部位を含有する。一部の実施形態では、軽鎖可変領域はカッパ型であり、「VK」と称されることがある。
【0075】
「可変」という用語は、可変ドメインのある特定のセグメントが抗体の間で配列において大規模に異なるという事実を指す。Vドメインは抗原結合を媒介し、その特定の抗原に対する特定の抗体の特異性を定義する。しかしながら、可変性は、可変ドメインの全範囲にわたり均等に分布しているわけではない。代わりに、それは、軽鎖および重鎖の両方の可変ドメイン中の超可変領域(HVR)と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存された部分はフレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖および軽鎖の可変ドメインはそれぞれ4つのFR領域を含み、これらは概ねベータ
シート構造を取り、3つのHVRにより接続されており、3つのHVRは、ベータシート構造を接続し、一部の場合にはその部分を形成するループを形成する。各鎖中のHVRは、FR領域により近接されて、および他の鎖からのHVRと共に、一緒に保持され、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al., Sequences of Immunological Interest, Fifth Edition, National Institute of Health, Bethesda, Md. (1991)を参照)。定常ドメインは、抗原への抗体の結合に直接的には関与しないが、抗体依存性細胞傷害性における抗体の参加などの様々なエフェクター機能を呈する。
【0076】
「全長抗体」、「インタクトな抗体」または「全体抗体」という用語は交換可能に使用され、抗体断片とは対照的に、その実質的にインタクトな形態にある抗体を指す。特に、全体抗体は、Fc領域を含む重鎖および軽鎖を有する抗体を含む。定常ドメインは、天然配列定常ドメイン(例えば、ヒト天然配列定常ドメイン)またはそのアミノ酸配列のバリアントであってもよい。一部の場合には、インタクトな抗体は、1つまたはより多くのエフェクター機能を有してもよい。
【0077】
「Fc領域」という用語は、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。「Fc領域」は天然配列Fc領域またはバリアントFc領域であってもよい。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は異なり得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、通常、位置Cys226におけるアミノ酸残基またはPro230から、そのカルボキシル末端まで広がるように定義される。「天然配列Fc領域」は、天然に見出されるFc領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。天然配列ヒトFc領域は、天然配列ヒトIgG1
Fc領域(非AおよびAアロタイプ)、天然配列ヒトIgG2 Fc領域、天然配列ヒトIgG3 Fc領域、および天然配列ヒトIgG4 Fc領域の他に、その自然に起こるバリアントを含む。「変種Fc領域」は、本明細書において定義されるような少なくとも1つの「アミノ酸改変」により天然配列Fc領域とは異なるアミノ酸配列を含む。バリアントFc領域は、天然配列Fc領域または親抗体のFc領域と比較して少なくとも1つのアミノ酸置換を有することができ、例えば、天然配列Fc領域中または親抗体のFc領域中の約1~約10アミノ酸の置換、または約1~約5アミノ酸の置換を有してもよい。バリアントFc領域は、天然配列Fc領域および/または親抗体のFc領域と少なくとも約80%の同一性を有することができ、それと少なくとも約90%の同一性、またはそれと少なくとも約95%の同一性を有してもよい。
【0078】
「抗体断片」または「抗原結合断片」は、インタクトな抗体の部分、好ましくは、インタクトな抗体の抗原結合および/または可変領域を含む。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2およびFv断片;ダイアボディ;直鎖状抗体(米国特許第5,641,870号明細書、実施例2;Zapata et al., Protein Eng. 8(10): 1057-1062
[1995]を参照);抗体断片から形成される一本鎖抗体分子および多重特異性抗体が挙げ
られる。抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片、および残余の「Fc」断片を生成し、「Fc」断片という名称は、容易に結晶化する能力を反映している。Fab断片は、H鎖の可変領域ドメイン(VH)、および1つの重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)と共にL鎖全体からなる。各Fab断片は抗原結合に関して一価であり、すなわち、単一の抗原結合部位を有する。抗体のペプシン処理は単一の大きいF(ab’)2断片をもたらし、これは概ね、異なる抗原結合活性を有する2つのジスルフィド結合されたFab断片に対応し、依然として抗原を架橋することができる。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域からの1つまたはより多くのシステインを含むCH1ドメインのカルボキシ末端における数個の追加の残基を有することによりFab断片とは異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基が遊離チオール基を有するFab’についての本明細書における名称である。F(ab’)2抗体断片は元々、それらの間にヒンジシステインを有するFab’断片のペアとして製造された。抗体断片の他の化学的結合もまた公知である。
【0079】
Fc断片は、ジスルフィドにより一緒に保持された両方のH鎖のカルボキシ末端部分を含む。抗体のエフェクター機能は、Fc領域中の配列により決定され、該領域はまた、ある特定の種類の細胞上に見出されるFc受容体(FcR)により認識される。
【0080】
「Fv」は、完全な抗原認識および結合部位を含有する最小抗体断片である。この断片は、緊密な非共有結合性の会合をした1つの重鎖および1つの軽鎖可変領域ドメインの二量体からなる。これらの2つのドメインのフォールディングから、抗原結合のためのアミノ酸残基に寄与し、抗体に抗原結合特異性を付与する6つの超可変ループ(HおよびL鎖から各3つのループ)が発する。しかしながら、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的な3つのHVRのみを含むFvの半分)でさえ、結合部位全体より低い親和性ではあるが、抗原を認識してそれに結合する能力を有する。
【0081】
「sFv」または「scFv」とも略記される「一本鎖Fv」は、接続されて一本のポリペプチド鎖となったVHおよびVL抗体ドメインを含む抗体断片である。好ましくは、sFvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、ポリペプチドリンカーは、sFvが抗原結合のための所望の構造を形成することを可能とする。sFvの総説について、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds., Springer-Verlag, New York, pp.
269-315 (1994)を参照。
【0082】
本開示の抗体の「機能的断片」は、インタクトな抗体の部分を含み、該部分は、概して、インタクトな抗体の抗原結合領域もしくは可変領域、またはFcR結合能力を保持するもしくは改変されたFcR結合能力を有する抗体のFc領域を含む。抗体断片の例としては、直鎖状抗体、一本鎖抗体分子および抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられる。
【0083】
「ダイアボディ」という用語は、Vドメインの鎖内ではなく鎖間ペア形成が達成され、それにより、二価断片、すなわち、2つの抗原結合部位を有する断片が結果としてもたらされるようにVHドメインとVLドメインとの間に短いリンカー(約5~10残基)を有するsFv断片(前段落を参照)を構築することにより調製される小さい抗体断片を指す。二重特異性ダイアボディは、2つの抗体のVHおよびVLドメインが異なるポリペプチド鎖上に存在する2つの「クロスオーバー」sFv断片のヘテロ二量体である。ダイアボディは、例えば、欧州特許第404,097号明細書、国際公開第93/11161号パンフレット、Hollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6444-6448 (1993)に
より詳細に記載されている。
【0084】
本明細書における抗体は、特に、重鎖および/または軽鎖の部分が、特定の種に由来するまたは特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一または相同であり、鎖の残余が、別の種に由来するまたは別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一または相同である、「キメラ」抗体(免疫グロブリン)の他に、所望の生物学的活性を呈する限り、そのような抗体の断片を含む(米国特許第4,816,567号明細書;Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855 (1984))。本明細書における目的のキメラ抗体としては、抗体の抗原結合領域が、例えば、目的の抗原を用いてマカクザルを免疫化することにより、製造される抗体に由来する、PRIMATTZFD(登録商標)抗体が挙げられる。本明細書において使用される場合、「ヒト化抗体」は、「キメラ抗体」のサブセットとして使用される。
【0085】
「ヒト化」型の非ヒト(例えば、マウス)抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小の配列を含有するキメラ抗体である。一実施形態では、ヒト化抗体は、レシピエントの
HVR(以下において定義される)からの残基が、所望の特異性、親和性、および/または能力を有するマウス、ラット、ウサギまたは非ヒト霊長動物などの非ヒト種(ドナー抗体)のHVRからの残基により置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。一部の事例では、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク(「FR」)残基は、対応する非ヒト残基により置換される。さらには、ヒト化抗体は、レシピエント抗体中にもドナー抗体中にも見出されない残基を含んでもよい。これらの改変は、結合親和性などの抗体性能をさらに改良するために為されてもよい。一般に、ヒト化抗体は、超可変ループの全てまたは実質的に全てが非ヒト免疫グロブリン配列のものに対応し、かつFR領域の全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のものである、少なくとも1つの、通常は2つの、可変ドメインの実質的に全てを含むが、FR領域は、結合親和性、異性化、免疫原性などの抗体性能を向上させる1つまたはより多くの個々のFR残基置換を含んでもよい。FR中のこれらのアミノ酸置換の数は、通常は、H鎖において6個以下であり、L鎖において3個以下である。ヒト化抗体はまた、任意選択的に、通常はヒト免疫グロブリンの、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分を含む。さらなる詳細について、例えば、Jones et al., Nature 321:522-525 (1986); Riechmann et al., Nature 332:323-329 (1988);およびPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992)を参照のこ
と。例えば、Vaswani and Hamilton, Ann. Allergy, Asthma & Immunol. 1:105-115 (1998); Harris, Biochem. Soc. Transactions 23:1035-1038 (1995); Hurle and Gross, Curr. Op. Biotech. 5:428-433 (1994);ならびに米国特許第6,982,321号明細書および同第7,087,409号明細書も参照のこと。
【0086】
「ヒト抗体」は、ヒトにより産生される抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する抗体かつ/または本明細書に開示されるようなヒト抗体を製造するための任意の技術を使用して製造された抗体である。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を特に除外する。ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリーを含む、当該技術分野において公知の様々な技術を使用して製造され得る。Hoogenboom and Winter,
J. Mol. Biol., 227:381 (1991); Marks et al., J. Mol. Biol., 222:581 (1991)。Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, p. 77 (1985); Boerner et al., J. Immunol., 147(1):86-95 (1991)に記載の方法もまた、ヒトモノクローナル抗体の調製のために利用可能である。van Dijk and van de Winkel, Curr. Opin. Pharmacol., 5: 368-74 (2001)も参照。ヒト抗体は、抗原負荷に応答してそのような抗体を産生するように改変されているが、その内因性遺伝子座が無能にされたトランスジェニック動物(例えば、免疫化ゼノマウス)に抗原を投与することにより調製され得る(XENOMOUSE(商標)技術に関して、例えば、米国特許第6,075,181号明細書および同第6,150,584号明細書を参照)。ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介して生成されるヒト抗体に関して、例えば、Li et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 103:3557-3562 (2006)も参照。
【0087】
「超可変領域」、「HVR」、または「HV」という用語は、本明細書において使用される場合、配列が超可変でありかつ/または構造的に定義されたループを形成する、抗体可変ドメインの領域を指す。概して、抗体は、VHにおいて3つ(H1、H2、H3)、VLにおいて3つ(L1、L2、L3)の6つのHVRを含む。天然抗体において、H3およびL3は、6つのHVRのうちで最大の多様性を示し、H3は特に、抗体への優れた特異性の付与において特有の役割を果たすと考えられている。例えば、Xu et al., Immunity 13:37-45 (2000); Johnson and Wu, in Methods in Molecular Biology 248:1-25 (Lo, ed., Human Press, Totowa, N.J., 2003)を参照のこと。実際、重鎖のみからなる天然に存在するラクダ科動物抗体は、軽鎖の非存在下で機能的かつ安定である。例えば、Hamers-Casterman et al., Nature 363:446-448 (1993); Sheriff et al., Nature Struct. Biol. 3:733-736 (1996)を参照のこと。
【0088】
多数のHVRの説明が使用されており、本明細書に包含される。Kabat相補性決定領域(CDR)は配列可変性に基づき、最も一般的に使用される(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991))。Chothiaは代わりに、構造
ループの位置を参照する(Chothia and Lesk, J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987))。AbM HVRは、Kabat HVRとChothia構造ループとの折衷を表し、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアにより使用される。「コンタクト」(contact)HVRは、利用可能な複合体結晶構造の解析に基づく。これ
らの各HVRからの残基を以下に記す。
【表1】
【0089】
一部の実施形態では、重鎖の3つのHVRは本明細書においてHVR_H1、HVR_H2、およびHVR_H3として参照され、軽鎖の3つのHVRはHVR_L1、HVR_L2、およびHVR_L3として参照され、その定義は、以下に示すような「ADG」ナンバリングシステムによる。各V
HおよびV
Lは、アミノ末端からカルボキシ末端へと以下の順序:FW1、HVR1、FW2、HVR2、FW3、HVR3、FW4で並んだ3つのHVRおよび4つのFW(フレームワーク領域)から構成される。比較のために、Yvonne Chen, et al. (Selection and Analysis of an Optimized Anti-VEGF Antibody: Crystal Structure of an Affinity-matured Fab in Complex with Antigen, J. Mol. Biol. (1999) 293, 865-881)によるKabat CDR定義もまた以下に示す。
【表2】
【0090】
HVRは、以下:VLにおける24~36または24~34(L1)、46~56または50~56(L2)および89~97または89~96(L3)、ならびにVHにおける26~35(H1)、50~65または49~65(H2)および93~102、94~102、または95~102(H3)のような「拡張HVR」を含んでもよい。可変ドメイン残基は、これらの各定義について、上掲のKabat et al.にしたがってナンバリングされる。
【0091】
「Kabatにおけるような可変ドメイン残基ナンバリング」または「Kabatにおけるようなアミノ酸位置ナンバリング」という表現、およびその変形形態は、上掲のKabat et al.において抗体のコンピレーション(compilation)の重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインのために使用されるナンバリングシステムを指す。このナンバリングシステムを使用して、実際の直鎖状アミノ酸配列は、可変ドメインのFRまたはHVRの短縮または挿入に対応してより少ないまたは追加のアミノ酸を含有してもよい。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後に単一のアミノ酸インサート(Kabatによる残基52a)ならびに重鎖FR残基82の後に挿入された残基(例えば、Kabatによる残基82a、82b、および82cなど)を含んでもよい。残基のKabatナンバリングは、所与の抗体について、「標準」Kabatナンバリング配列との抗体の配列の相同性の領域におけるアライメントにより決定されてもよい。
【0092】
「フレームワーク」または「FR」残基は、本明細書において定義されるようなHVR残基以外の可変ドメイン残基である。「ヒトコンセンサスフレームワーク」または「アクセプターヒトフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVLまたはVHフレームワーク配列の選択において最も共通して存在するアミノ酸残基を表すフレームワークである。概して、ヒト免疫グロブリンVLまたはVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループから為される。概して、配列のサブグループは、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of
Health, Bethesda, Md. (1991)におけるようなサブグループである。VLについての例
として(Examples include for the VL)、サブグループは、上掲のKabat et al.におけ
るようなサブグループカッパI、カッパII、カッパIIIまたはカッパIVであってもよい。さらに、VHについて、サブグループは、上掲のKabat et al.におけるようなサブグループI、サブグループII、またはサブグループIIIであってもよい。あるいは、ヒトコンセンサスフレームワークは、ヒトフレームワーク残基が、ドナーフレームワーク配列を様々なヒトフレームワーク配列のコレクションとアライメントすることによりドナーフレームワークに対するその相同性に基づいて選択される場合のように、上記の特定の残基(the above in which particular residues)に由来し得る。ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークに「由来する」アクセプターヒトフレームワークは、その同じアミノ酸配列を含んでもよく、または既存のアミノ酸配列変化を含有してもよい。一部の実施形態では、既存のアミノ酸変化の数は、10もしくはそれ未満、9もしくはそれ未満、8もしくはそれ未満、7もしくはそれ未満、6もしくはそれ未満、5もしくはそれ未満、4もしくはそれ未満、3もしくはそれ未満、または2もしくはそれ未満である。
【0093】
例えばFc領域の、指定された位置における「アミノ酸改変」は、特定の残基の置換もしくは欠失、または特定の残基に隣接する少なくとも1つのアミノ酸残基の挿入を指す。特定の残基に「隣接する」挿入は、その1~2残基以内の挿入を意味する。挿入は、特定の残基に対してN末端またはC末端であってもよい。本明細書における好ましいアミノ酸改変は置換である。
【0094】
「親和性成熟」抗体は、変更を有しない親抗体と比較して、抗原に対する抗体の親和性の向上を結果としてもたらす、その1つまたはより多くのHVRにおける1つまたはより多くの変更を有する抗体である。一実施形態では、親和性成熟抗体は、標的抗原に対してナノモル濃度またはさらにはピコモル濃度の親和性を有する。親和性成熟抗体は、当該技術分野において公知の手順により製造される。例えば、Marks et al., Bio/Technology 10:779-783 (1992)は、VHおよびVLドメインシャッフリングによる親和性成熟を記載する。HVRおよび/またはフレームワーク残基のランダム突然変異誘発は、例えば、Barbas et al. Proc Nat. Acad. Sci. USA 91:3809-3813 (1994); Schier et al. Gene 169:147-155 (1995); Yelton et al. J. Immunol. 155:1994-2004 (1995); Jackson et al., J
. Immunol. 154(7):3310-9 (1995);およびHawkins et al, J. Mol. Biol. 226:889-896 (1992)に記載されている。
【0095】
本明細書において使用(use)される場合、「特異的に結合する」または「特異的な」
という用語は、生物学的分子を含む分子の不均質集団の存在下で標的の存在の決定因子となる、標的と抗体との結合などの測定可能かつ再現性のある相互作用を指す。例えば、標的(エピトープであり得る)に特異的に結合する抗体は、それが他の標的に結合するよりも高い親和性、アビディティで、より容易に、かつ/またはより長い持続期間でこの標的に結合する抗体である。一実施形態では、無関連の標的への抗体の結合の程度は、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)による測定で、標的への抗体の結合の約10%未満である。ある特定の実施形態では、標的に特異的に結合する抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、または≦0.1nMの解離定数(Kd)を有する。ある特定の実施形態では、抗体は、異なる種からのタンパク質の間で保存されたタンパク質上のエピトープに特異的に結合する。別の実施形態では、特異的結合は、排他的な結合を含み得るが、それを必要としない。
【0096】
「遮断」抗体または「アンタゴニスト」抗体は、それが結合する抗原の生物学的活性を阻害または低減する抗体である。一部の実施形態では、遮断抗体またはアンタゴニスト抗体は、抗原の生物学的活性を実質的または完全に阻害する。本開示の抗PD-L1抗体は、抗原刺激に対する機能不全状態からT細胞による機能的な応答を回復させるようにPD-1を通じたシグナル伝達を遮断する。
【0097】
「アゴニスト」または活性化抗体は、それが結合する抗原によるシグナル伝達を増進または開始させる抗体である。一部の実施形態では、アゴニスト抗体は、天然リガンドの存在なしにシグナル伝達を引き起こしまたは活性化させる。
【0098】
「抗体エフェクター機能」は、抗体のFc領域(天然配列Fc領域またはアミノ酸配列バリアントFc領域)に帰せられる生物学的活性を指し、抗体アイソタイプと共に異なる。抗体エフェクター機能の例としては、C1q結合および補体依存性細胞傷害性、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)、食作用、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方制御、ならびにB細胞活性化が挙げられる。「低減または最小化された」抗体エフェクター機能は、野生型または非改変抗体から少なくとも50%(あるいは、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%)低減した抗体エフェクター機能を意味する。抗体エフェクター機能は、当業者により容易に決定可能かつ測定可能である。好ましい実施形態では、補体結合、補体依存性細胞傷害性および抗体依存性細胞傷害性の抗体エフェクター機能が影響される。本開示の一部の実施形態では、エフェクター機能は、グリコシル化を除去した(eliminated)定常領域中の突然変異、例えば、「エフェクターレス突然変異」(effector-less mutation)を通じて除去される。一態様では、エフェクターレス突然変異は、CH2領域中のN297AまたはDANA突然変異(D265A+N297A)である。Shields et al., J. Biol. Chem. 276 (9): 6591-6604 (2001)。あるいは、エフェクター機能の低減または除去を結果としてもたらす追加の突然変異としては、K322AおよびL234A/L235A(LALA)が挙げられる。あるいは、エフェクター機能は、グリコシル化を行わない(例えば、大腸菌(E. coli))、またはエフェクター機能の促進に
おいて効果的でないもしくは効果がより低い改変したグリコシル化(glycolsylation)パターンを結果としてもたらす宿主細胞中での発現などの製造技術を通じて低減または除去され得る(例えば、Shinkawa et al., J. Biol. Chem. 278(5): 3466-3473 (2003)。
【0099】
「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性」またはADCCは、ある特定の細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球およびマクロファージ)上に存在するF
c受容体(FcR)に結合した分泌されたIgにより、これらの細胞傷害性エフェクター細胞は、抗原保有標的細胞に特異的に結合し、その後に細胞毒を用いて標的細胞を殺傷することが可能となる、細胞傷害性の形態を指す。抗体は細胞傷害性細胞の「アーム(arm)」となり、この機序による標的細胞の殺傷のために必要とされる。ADCCを媒介する主要な細胞、NK細胞はFcγRIIIのみを発現する一方、単球はFcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIを発現する。造血細胞上のFc発現は、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol. 9: 457-92 (1991)のpage 464のTable 3において要約されている。目的の分子のADCC活性を評価するために、米国特許第5,500,362号明細書または同第5,821,337号明細書に記載されるようなin vitro ADCCアッセイが行われてもよい。そのようなアッセイのために有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。あるいは、またはさらに、目的の分子のADCC活性は、例えば、Clynes et al., PNAS USA 95:652-656 (1998)に開示されるような動物モデルにおいて、in vivoで評価さ
れてもよい。
【0100】
本明細書において他に指し示されなければ、免疫グロブリン重鎖中の残基のナンバリングは、上掲のKabat et al.におけるようなEUインデックスのものである。「Kabatにお
けるようなEUインデックス」は、ヒトIgG1EU抗体の残基ナンバリングを指す。
【0101】
「補体依存性細胞傷害性」または「CDC」は、補体の存在下での標的細胞の溶解を指す。古典的な補体経路の活性化は、その同族の抗原に結合した(適切なサブクラスの)抗体への補体システムの第1の成分(C1q)の結合により開始される。補体活性化を評価するために、例えば、Gazzano-Santoro et al., J. Immunol. Methods 202: 163 (1996)
に記載されるようなCDCアッセイが行われてもよい。改変したFc領域アミノ酸配列および増加または減少したC1q結合能力を有する抗体バリアントが米国特許第6,194,551B1号明細書および国際公開第99/51642号パンフレットに記載されている。これらの特許刊行物の内容は参照することにより本明細書に具体的に組み込まれる。Idusogie et al. J. Immunol. 164: 4178-4184 (2000)も参照のこと。
【0102】
「結合親和性」は、概して、分子(例えば、抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との非共有結合性相互作用の総計の強度を指す。他に指し示されなければ、本明細書において使用される場合、「結合親和性」は、結合ペアのメンバー(例えば、抗体および抗原)間の1:1の相互作用を反映した固有の結合親和性を指す。パートナーYに対する分子Xの親和性は、概して、解離定数(Kd)により表され得る。親和性は、本明細書に記載のものを含む、当該技術分野において公知の一般的な方法により測定され得る。低親和性抗体は、概して、抗原に緩徐に結合し、容易に解離する傾向がある一方、高親和性抗体は、概しては、より早く抗原に結合し、より長く結合したままとなる傾向がある。結合親和性を測定する様々な方法が当該技術分野において公知であり、そのいずれも本開示の目的のために使用することができる。結合親和性を測定するための特定の実例的および例示的な実施形態は以下において記載される。
【0103】
本開示による「Kd」または「Kd値」は、一実施形態では、Fab型の抗体および抗原分子を用いて行われる放射性標識抗原結合アッセイ(RIA)により測定され、該アッセイは、非標識抗原の滴定系列の存在下で最小濃度の(125I)標識抗原を用いてFabを平衡化し、次に抗Fab抗体コーティングプレートを用いて結合した抗原を捕捉することにより抗原に対するFabの溶液結合親和性を測定する、以下のアッセイにより記載されるようなものである(Chen, et al., (1999) J. Mol. Biol 293:865-881)。アッセ
イのための条件を確立するために、50mMの炭酸ナトリウム(pH9.6)中の5ug/mlの捕捉用抗Fab抗体(Cappel Labs)を用いてマイクロタイタープレート(Dynex)を終夜コーティングし、その後にPBS中の2%(w/v)のウシ血
清アルブミンを用いて室温(約23℃)で2~5時間ブロッキングする。非吸着プレート(Nunc #269620)中で100pMまたは26pMの[125I]-抗原を目的のFabの段階希釈液と混合する(Presta et al., (1997) Cancer Res. 57:4593-4599における抗VEGF抗体、Fab-12の評価と合致する)。次に目的のFabを終夜インキュベートするが、平衡に達することを確実なものとするためにインキュベーションはより長期間(例えば、65時間)継続されてもよい。その後、混合物を室温で1時間のインキュベーションのために捕捉プレートに移す。溶液を次に除去し、PBS中の0.1%のTween-20(登録商標)を用いてプレートを8回洗浄する。プレートが乾燥している場合、150ul/ウェルのシンチラント(scintillant)(MicroScint-20;Packard)を加え、Topcountガンマカウンター(Packard)で10分間プレートを計数する。最大結合の20%未満または20%を与える各Fabの濃度を競合結合アッセイにおいて使用するために選択する。
【0104】
別の実施形態によれば、Kdは、約10応答単位(RU)において固定化された抗原CM5チップを用いて25℃でBIACORE(登録商標)-2000、BIACORE(登録商標)-3000またはBIACORE(登録商標)-T200instrument(BIAcore, Inc.、Piscataway、N.J.)を使用する表面プラズモン共鳴アッセイを使用することにより測定される。簡潔に述べれば、供給業者の指示にしたがってN-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)およびN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を用いてカルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5、BIAcore Inc.)を活性化させる。pH4.8の10mMの酢酸ナトリウムを用いて抗原を5μg/ml(約0.2μM)に希釈した後、5μL/分の流速で注入して約10応答単位(RU)の結合タンパク質を達成する。抗原の注入後、1Mのエタノールアミンを注入して未反応基をブロッキングする。速度論測定のために、Fabの2倍段階希釈液(0.78nM~500nM)を0.05%のTWEEN 20(登録商標)界面活性剤を含むPBS(PBST)に約25μL/分の流速で25℃において注入する。会合および解離センサーグラムを同時にフィッティングすることにより単純な1対1ラングミュア結合モデル(BIAcore(登録商標) Evaluation Softwareバージョン3.2)を使用して会合速度(kon)および解離速度(koff)を算出する。平衡解離定数(Kd)は、比koff/konとして算出される。例えば、Chen et al., J. Mol. Biol. 293:865-881
(1999)を参照のこと。オンレートが上記の表面プラズモン共鳴アッセイにより106M
-1 s-1を超えている場合、オンレートは、ストップフローを備えた分光光度計(Aviv Instruments)または撹拌キュベットを有する8000シリーズSLM-AMINCO(商標)分光光度計(ThermoSpectronic)などの分光計で測定される、増加する濃度の抗原の存在下でのpH7.2のPBS中の20nMの抗抗原抗体(Fab形態)の25℃における蛍光放出強度(励起=295nm;放出=340nm、16nmのバンドパス)の増加または減少を測定する蛍光クエンチング技術を使用することにより決定され得る。
【0105】
本開示による「オンレート」、「会合の速度」、「会合速度」、または「kon」はまた、約10応答単位(RU)において固定化された抗原CM5チップを用いて25℃でBIACORE(登録商標)-2000またはBIACORE(登録商標)-3000システム(BIAcore, Inc.、Piscataway、N.J.)を使用して上記のように決定され得る。簡潔に述べれば、供給業者の指示にしたがってN-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(ECD)およびN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を用いてカルボキシメチル化デキストランバイオセンサーシップ(biosensor ships)(CM5、BIAcore Inc.)を活性化させる。p
H4.8の10mMの酢酸ナトリウムを用いて抗原を5μg/ml 0.2mM)に希釈した後、5μL/分の流速で注入して約10応答単位(RU)の結合タンパク質を達成す
る。抗原の注入後、1Mのエタノールアミンを加えて未反応基をブロッキングする。速度論測定のために、Fabの2倍段階希釈液(0.78nM~500nM)を0.05%のTween 20(登録商標)を含むPBS(PBST)に約25ul/分の流速で25℃において注入する。会合および解離センサーグラムを同時にフィッティングすることにより単純な1対1ラングミュア結合モデル(BIAcore Evaluation Softwareバージョン3.2)を使用して会合速度(kon)および解離速度(koff)を算出する。平衡解離定数(Kd)は、比koff/konとして算出される。例えば、Chen, Y., et al., (1999) J. Mol. Biol 293:865-881を参照のこと。しかしなが
ら、オンレートが上記の表面プラズモン共鳴アッセイにより106M-1 s-1を超えている場合、オンレートは、ストップフローを備えた分光光度計(spectrophometer)(
Aviv Instruments)または撹拌キュベットを有する8000シリーズSLM-Aminco分光光度計(ThermoSpectronic)などの分光計で測定される、増加する濃度の抗原の存在下でのpH7.2のPBS中の20nMの抗抗原抗体(Fab形態)の25℃における蛍光放出強度(励起=295nm;放出=340nm、16nmのバンドパス)の増加または減少を測定する蛍光クエンチング技術を使用することにより決定されることが好ましい。
【0106】
「実質的に低減された」、または「実質的に異なる」という語句は、本明細書において使用される場合、2つの数値(概して、一方は分子と関連付けられ、他方は参照/比較用分子と関連付けられる)の間の充分に高い程度の差異であって、当業者が、2つの値の間の差異を、前記値(例えば、Kd値)により測定される生物学的特徴の文脈において統計的有意性があると考えるようなものを表す。前記2つの値の間の差異は、例えば、参照/比較用分子についての値の関数として約10%より大きい、約20%より大きい、約30%より大きい、約40%より大きい、かつ/または約50%より大きい。
【0107】
「実質的に類似した」または「実質的に同じ」という用語は、本明細書において使用される場合、2つの数値(例えば、一方は本開示の抗体と関連付けられ、他方は参照/比較用抗体と関連付けられる)の間の充分に高い程度の類似性であって、当業者が、2つの値の間の差異を、前記値(例えば、Kd値)により測定される生物学的特徴の文脈において生物学的および/または統計的有意性がほとんどまたは全くないと考えるようなものを表す。前記2つの値の間の差異は、例えば、参照/比較用の値の関数として約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、かつ/または約10%未満である。
【0108】
「交差競合する」、「交差競合」、「交差遮断する」、「交差遮断される」および「交差遮断」という用語は本明細書において交換可能に使用され、直接的または間接的に本開示の抗PD-L1抗体のアロステリック調節を通じて標的ヒトPD-L1への結合に干渉する抗体またはその断片の能力を意味する。抗体またはその断片が標的に対する別のものの結合に干渉できる程度、およびしたがって、本開示にしたがって交差遮断または交差競合すると言うことができるかどうかは、競合結合アッセイを使用して決定され得る。1つの特に好適な定量的交差競合アッセイは、FACSまたはAlphaScreenベースのアプローチを使用して、標的への結合の観点で、標識化(例えば、Hisタグ化、ビオチン化または放射性標識化)抗体またはその断片と他の抗体またはその断片との競合を測定する。一般に、交差競合的な抗体またはその断片は、例えば、交差競合アッセイにおいて第2の抗体またはその断片の存在下で、本開示による免疫グロブリン単一可変ドメインまたはポリペプチドの記録される置換が、所与の量で存在する試験される潜在的に交差遮断的な抗体またはその断片による最大の理論的置換(例えば、交差遮断される必要があるコールド(例えば、非標識)抗体またはその断片による置換)の100%まで(例えば、FACSベースの競合アッセイにおいて)であるように、該アッセイにおいて標的に結合するものである。好ましくは、交差競合的な抗体またはその断片は、10%~100%、より好ましくは50%~100%の記録される置換を有する。
【0109】
ペプチド、ポリペプチドまたは抗体配列に関する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」および「相同性」は、最大配列同一性パーセントを達成するための配列のアライメントおよび必要な場合はギャップの導入後の、配列同一性の部分としていかなる保存的置換も考慮しない、特定のペプチドまたはポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定する目的のためのアライメントは、当業者の技術的範囲内にある様々なやり方で達成することができ、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMEGALIGN(登録商標)(DNASTAR)ソフトウェアなどの公開されているコンピューターソフトウェアが使用される。当業者は、比較されている配列の全長にわたり最大のアライメントを達成するために必要とされる任意のアルゴリズムを含む、アライメントを測定するための適切なパラメーターを決定することができる。本明細書における目的のために、しかしながら、アミノ酸配列同一性の%値は、Genentech, Inc.により作成された配列比較コンピュータープログラムALIGN-2を使用して生成される。ALIGN-2のソースコードは、米国著作権局、Washington D.C.、20559のユーザードキュメンテーションに提出されており、米国著作権登録第TXU510087号の下で登録されている。ALIGN-2プログラムは、Genentech, Inc.、South San Francisco、Calif.を通じて公開されている。ALIGN-2プログラムは、UNIX(登録商標)オペレーティングシステム、好ましくはデジタルUNIX(登録商標) V4.0D上で使用のためにコンパイルされるべきである。全ての配列比較パラメーターはALIGN-2プログラムにより設定され、変更されない。
【0110】
ALIGN-2がアミノ酸配列比較のために用いられる状況において、所与のアミノ酸配列Bに対する(to、with、またはagainst)所与のアミノ酸配列Aのアミノ酸配列同一
性%(これはあるいは、所与のアミノ酸配列Bに対してある特定の%のアミノ酸配列同一性を有するまたは含む所与のアミノ酸配列Aとして表現され得る)は、以下:
100×比率X/Y
(Xは、AおよびBの配列アライメントプログラムALIGN-2でのアライメントにおいてそのプログラムにより同一のマッチとしてスコア付けされるアミノ酸残基の数であり、Yは、Bにおけるアミノ酸残基の総数である)のように算出される。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さに等しくない場合、Bに対するAのアミノ酸配列同一性%はAに対するBのアミノ酸配列同一性%に等しくないことが理解されるであろう。
【0111】
他に特に記載されなければ、本明細書において使用されるアミノ酸配列同一性の全ての%値は、ALIGN-2コンピュータープログラムを使用して直前の段落に記載されるように得られる。
【0112】
本明細書における抗体をコードする「単離された」核酸分子は、それが生成される環境において通常関連する少なくとも1つの夾雑物核酸分子から同定および分離された核酸分子である。好ましくは、単離された核酸は、生成環境と関連する全ての成分との会合を含まない。本明細書におけるポリペプチドおよび抗体をコードする単離された核酸分子は、それが天然に見出される形態または状況以外の形態である。単離された核酸分子は、したがって、細胞中に天然に存在する本明細書におけるポリペプチドおよび抗体をコードする核酸から区別される。
【0113】
「制御配列」という用語は、特定の宿主生物中での作動可能に結合したコーディング配列の発現のために必要なDNA配列を指す。例えば、原核生物のために好適な制御配列は、プロモーター、任意選択的にオペレーター配列、およびリボソーム結合部位を含む。真核細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、およびエンハンサーを利用すること
が公知である。
【0114】
核酸は、別の核酸配列との機能的な関係性に置かれている場合に「作動可能に結合」している。例えば、プレ配列または分泌リーダーのためのDNAは、ポリペプチドの分泌に参加するプレタンパク質として発現される場合にポリペプチドのためのDNAに作動可能に結合しており、プロモーターもしくはエンハンサーは、配列の転写に影響する場合にコーディング配列に作動可能に結合しており、またはリボソーム結合部位は、翻訳を促進するように配置されている場合にコーディング配列に作動可能に結合している。概して、「作動可能に結合した」は、結合しているDNA配列が連続することを意味しており、分泌リーダーの場合は、連続しかつ読む段階(reading phase)にあることを意味する。しかしながら、エンハンサーは連続している必要はない。結合は、好都合な制限部位におけるライゲーションにより達成される。そのような部位が存在しない場合、合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーが従来の実施にしたがって使用される。
【0115】
「宿主」は、ベクターのためまたは外因性核酸分子、ポリヌクレオチド、および/もしくはタンパク質の組込みのためのレシピエントであり得るまたは該レシピエントであった任意の個々のウイルスまたは細胞またはその培養物を含むことが意図される。それはまた、単一のウイルスまたは細胞の子孫を含むことが意図される。子孫は、天然の、偶発的な、または故意的な突然変異により、元々の親細胞に対して必ずしも(形態またはゲノムもしくは全DNA相補体において)完全に同一でなくてもよい。ウイルスはファージであり得る。細胞は原核性または真核性であってもよく、細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞、動物細胞、および哺乳動物細胞、例えば、マウス、ラット、類人猿、またはヒト細胞が挙げられるがそれに限定されない。
【0116】
本明細書において使用される場合、「ベクター」という用語は、それが結合した別の核酸を輸送することができる核酸分子を指す。ベクターとしては、適切な制御エレメントと関連付けられた場合に複製することができ(例えば、複製機構タンパク質を動員することにより複製の開始を可能とするDNA配列である複製起点を含有する)、かつ遺伝子配列を宿主中にまたは宿主間で移入することができる任意の遺伝子エレメント、例えば、プラスミド、ファージベクター、ファージミド、トランスポゾン、コスミド、染色体、人工染色体、エピソーム、ウイルス、ビリオンなどが挙げられる。1つの種類のベクターはエピソーム、すなわち、染色体外複製が可能な核酸である。別の種類のベクターは、宿主細胞の遺伝材料と組換えを起こすように設計された組込みベクターである。ベクターは自律複製性および組込み型の両方であってもよく、ベクターの特性は細胞状況に依存して異なってもよい(すなわち、ベクターは、1つの宿主細胞種中で自律複製性であり、かつ別の宿主細胞種中で純粋に組込み型であってもよい)。ベクターは、概して、1つまたは少数の制限エンドヌクレアーゼ認識部位および/または部位特異的組換え用の部位を含有する。外来DNA断片は、これらの部位において切断されてベクターにライゲートされてもよい。ベクターは、形質転換またはトランスフェクトされた細胞の同定において使用するために好適なマーカーを含有してもよい。例えば、マーカーは、抗生物質抵抗性、蛍光、酵素の形質の他に、他の形質を提供してもよい。第2の例として、マーカーは、栄養要求欠損を補完してもよく、または培養培地中にない不可欠な栄養分を供給してもよい。
【0117】
「安定」製剤は、その中のタンパク質が貯蔵時にその物理的および化学的安定性ならびに完全性を本質的に保持する製剤である。タンパク質の安定性を測定するための様々な分析技術が当該技術分野において利用可能であり、Peptide and Protein Drug Delivery, 247-301, Vincent Lee Ed., Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., Pubs. (1991)およびJones, A. Adv. Drug Delivery Rev. 10: 29-90 (1993)において総説されている。安定性は、選択された期間にわたり選択された温度において測定され得る。迅速なスクリーニングのために、製剤を2週~1か月間40℃で保存することができ、その期間に安定性が測
定される。製剤が2~8℃で貯蔵される場合、概して、製剤は、30℃もしくは40℃で少なくとも1か月間安定かつ/または2~8℃で少なくとも2年間安定であるはずである。製剤が30℃で貯蔵される場合、概して、製剤は、30℃で少なくとも2年間安定かつ/または40℃で少なくとも6か月間安定であるはずである。例えば、貯蔵の間の凝集の程度は、タンパク質安定性の指標として使用され得る。そのため、「安定」製剤は、約10%未満、好ましくは約5%未満のタンパク質が製剤中で凝集物として存在する製剤であってもよい。他の実施形態では、製剤の貯蔵の間の凝集物形成の任意の増加が決定され得る。
【0118】
「再調製(reconstitution)」製剤は、凍結乾燥されたタンパク質または抗体製剤を希釈剤中に該タンパク質が全体に分散されるように溶解することにより調製された製剤である。再調製製剤は、目的のタンパク質を用いて治療されるべき患者への投与(例えば、皮下(subscutaneous)投与)のために好適であり、本開示のある特定の実
施形態では、非経口または静脈内投与のために好適な製剤であってもよい。
【0119】
「等張」製剤は、ヒト血液と本質的に同じ浸透圧を有する製剤である。等張製剤は、概して、約250~350mOsmの浸透圧を有する。「低張」という用語は、ヒト血液の浸透圧より低い浸透圧を有する製剤を記載する。対応して、「高張」という用語は、ヒト血液の浸透圧より高い浸透圧を有する製剤を記載するために使用される。等張性は、例えば、蒸気圧または氷結型浸透圧計(ice-freezing type osmometer)を使用して測定され得る。本開示の製剤は、塩および/または緩衝剤の添加の結果として高張である。
【0120】
本明細書において使用される「担体」は、用いられる投与量および濃度において曝露される細胞または哺乳動物に対して非毒性である薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定化剤を含む。多くの場合に、生理学的に許容される担体は水性pH緩衝化溶液である。生理学的に許容される担体の例としては、緩衝剤、例えば、リン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸;酸化防止剤、例えば、アスコルビン酸;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンもしくはリジン;単糖、二糖、および他の炭水化物、例えば、グルコース、マンノース、もしくはデキストリン;キレート剤、例えば、EDTA;糖アルコール、例えば、マンニトールもしくはソルビトール;塩形成対イオン、例えば、ナトリウム;ならびに/または非イオン性界面活性剤、例えば、TWEEN(登録商標)、ポリエチレングリコール(PEG)、およびPLURONICS(登録商標)が挙げられる。
【0121】
「添付文書」は、効能、用法、投与量、投与、禁忌、パッケージ製品と組み合わせられる他の医薬、および/またはそのような医薬の使用に関する警告などに関する情報を含有する医薬の商用パッケージ中に慣習的に含まれる適応症に関する情報を含有する医薬の商用パッケージ中に慣習的に含まれる指示を指す。
【0122】
「薬学的に許容される酸」は、配合される濃度および方法において非毒性である無機および有機酸を含む。例えば、好適な無機酸としては、塩酸、過塩素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、スルホン酸、スルフィン酸、スルファニル酸、リン酸、炭酸などが挙げられる。好適な有機酸としては、直鎖および分岐鎖アルキルの、芳香族の、環状の、脂環式の、アリール脂肪族の、複素環の、飽和の、不飽和の、モノ、ジおよびトリカルボン酸が挙げられ、これには、例えば、ギ酸、酢酸、2-ヒドロキシ酢酸、トリフルオロ酢酸、フェニル酢酸、トリメチル酢酸、酢酸t-ブチル、アントラニル酸、プロパン酸、2-ヒドロキシプロパン酸、2-オキソプロパン酸、プロパン二酸(propandioic)、シ
クロペンタンプロピオン酸(cyclopentanepropionic)、シクロペンタンプロピオン酸(cyclopentane propionic)、3-フェニルプロピオン酸、ブタン酸、ブタン二酸(butandioic)、安息香酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、2-アセトキシ-安息
香酸、アスコルビン酸、ケイ皮酸、ラウリル硫酸、ステアリン酸、ムコン酸、マンデル酸、コハク酸、エンボン酸、フマル酸、リンゴ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、マロン酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、グリコール酸、グリコン酸、グルコン酸、ピルビン酸、グリオキサル酸、シュウ酸、メシル酸、コハク酸、サリチル酸、フタル酸、パモ酸(palmoic)、パルメイン酸(palmeic)、チオシアン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタン二スルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4-クロロベンゼンスルホン酸(4-chorobenzenesulfonic)、ナフタレン-2-スルホン酸(napthalene-2-sulphonic)、p-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸(camphorsulphonic)、4-メチルビシクロ[2.2.2]-オクタ-2-エン-1-カルボン酸、グルコヘプトン酸、4,4’-メチレンビス-3-(ヒドロキシ-2-エン-1-カルボン酸)、ヒドロキシナフトエ酸が含まれる。
【0123】
「薬学的に許容される塩基」は、配合される濃度および方法において非毒性である無機および有機塩基を含む。例えば、好適な塩基としては、無機塩基形成金属、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アンモニウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウムから形成されるもの、N-メチルグルカミン、モルホリン、ピペリジン、ならびに有機非毒性塩基、例えば、第一級、第二級および第三級アミン、置換アミン、環状アミンおよび塩基性イオン交換樹脂、[例えば、N(R’)4+(式中、R’は独立してHまたはC1~4アルキル、例えば、アンモニウム、トリス)である]、例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2-ジエチルアミノエタノール、トリメタミン(trimethamine)、ジシクロヘキシルアミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、N-エチルピペリジン、およびポリアミン樹脂などが挙げられる。特に好ましい有機非毒性塩基は、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、トリメタミン(trimethamine)、ジシクロヘキシルアミン、コリン、およびカフェインである。本開示と共に使用可能な追加の薬学的に許容される酸および塩基としては、例えば、ヒスチジン、グリシン、フェニルアラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジンおよびアスパラギンといったアミノ酸に由来するものが挙げられる。
【0124】
「薬学的に許容される」緩衝剤および塩は、上記に指し示される酸および塩基の酸付加塩および塩基付加塩の両方に由来するものが挙げられる。特定の緩衝剤および/または塩としては、ヒスチジン、コハク酸塩および酢酸塩が挙げられる。
【0125】
「薬学的に許容される糖」は、目的のタンパク質と組み合わせられた場合に、貯蔵時のタンパク質の化学的および/または物理的な不安定性を有意に防止または低減する分子である。製剤が凍結乾燥された後に再調製されることが意図される場合、「薬学的に許容される糖」はまた、「凍結乾燥保護剤」として知られることがある。例示的な糖およびその対応する糖アルコールとしては、アミノ酸、例えば、グルタミン酸一ナトリウムまたはヒスチジン;メチルアミン、例えば、ベタイン;リオトロピック塩、例えば、硫酸マグネシウム;ポリオール、例えば、3価(trihydric)またはより高分子量の糖アルコール、例
えば、グリセリン、デキストラン、エリスリトール、グリセロール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、およびマンニトール;プロピレングリコール;ポリエチレングリコール;PLURONICS(登録商標);ならびにその組合せが挙げられる。追加の例示的な凍結乾燥保護剤としては、グリセリンおよびゼラチン、ならびに糖メリビオース(mellibiose)、メレジトース、ラフィノース、マンノトリオースおよびスタキオースが
挙げられる。還元糖の例としては、グルコース、マルトース、ラクトース、マルツロース、イソマルツロースおよびラクツロースが挙げられる。非還元糖の例としては、糖アルコールおよび他の直鎖ポリアルコールから選択されるポリヒドロキシ化合物の非還元グリコシドが挙げられる。好ましい糖アルコールは、モノグリコシド、特に、二糖、例えば、ラクトース、マルトース、ラクツロースおよびマルツロースの還元により得られる化合物である。グリコシド側鎖は、グルコシドまたはガラクトシドのいずれかのものであり得る。糖アルコールの追加の例は、グルシトール、マルチトール、ラクチトールおよびイソマルツロースである。好ましい薬学的に許容される糖は、非還元糖トレハロースまたはスクロースである。薬学的に許容される糖は、タンパク質が貯蔵の間(例えば、再調製および貯蔵後)にその物理的および化学的安定性ならびに完全性を本質的に保持することを意味する「保護量」で製剤に添加される(例えば、凍結乾燥前)。
【0126】
本明細書における目的の「希釈剤」は、薬学的に許容され(ヒトへの投与のために安全かつ非毒性)、かつ凍結乾燥後に再調製される製剤などの液体製剤の調製のために有用なものである。例示的な希釈剤は、滅菌水、注射用静菌水(BWFI)、pH緩衝化溶液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)、滅菌生理食塩水溶液、リンガー溶液またはデキストロース溶液を含む。代替的な実施形態では、希釈剤は、塩および/または緩衝剤の水性溶液を含み得る。
【0127】
「防腐剤」は、細菌活性を低減するために本明細書の製剤に添加され得る化合物である。防腐剤の添加は、例えば、複数使用(複数回投与)製剤の製造を促進し得る。潜在的な防腐剤の例としては、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム(アルキル基が長鎖化合物であるアルキルベンジルジメチルアンモニウムクロリドの混合物)、および塩化ベンゼトニウムが挙げられる。他の種類の防腐剤としては、芳香族アルコール、例えば、フェノール、ブチルおよびベンジルアルコール、アルキルパラベン、例えば、メチルまたはプロピルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール、ならびにm-クレゾールが挙げられる。本明細書における最も好ましい防腐剤はベンジルアルコールである。
【0128】
「治療」は、処置(処理)されている個体または細胞の自然経過を変化させるように設計された臨床的介入を指し、予防のためまたは臨床病理の経過中のいずれかで行われ得る。治療の望ましい効果としては、疾患の発生または再発の予防、転移の予防、疾患進行速度の減少、疾患状態の寛解(ameliorating)または緩和、および寛解(remission)または予後の改善が挙げられる。一部の実施形態では、本開示の抗体は、疾患または障害の発生を遅延させるために使用される。対象は、例えば、本開示のアポトーシス抗PD-L1抗体を使用して、T細胞機能不全障害と関連付けられる1つまたはより多くの症状が軽減される場合に、成功裡に「治療される」。
【0129】
「有効量」は、必要な投与量および期間において、治療結果または予防結果を含む、所望のまたは指し示される効果を達成するために少なくとも効果的な量を指す。例えば、本開示の抗PD-L1抗体の有効量は、T細胞上のPD-1または他のAPC上のB7.1または両方を通じたPD-L1からのシグナル伝達の阻害を結果としてもたらす少なくとも最小濃度である。
【0130】
「治療有効量」は、特定の障害の測定可能な改善または予防をもたらすために必要とされる少なくとも最小濃度である。本明細書における治療有効量は、患者の疾患状態、年齢、性別、および体重、ならびに個体において所望の応答を誘発する抗体の能力などの要因にしたがって異なり得る。治療有効量はまた、抗体の任意の毒性または有害効果を治療的に有益な効果が凌いでいる量である。例えば、本開示の抗PD-L1抗体の治療有効量は、T細胞機能不全障害の少なくとも1つの症状の阻害を結果としてもたらす少なくとも最
小濃度である。
【0131】
「予防有効量」は、必要な投与量および期間において、所望の予防結果を達成するために効果的な量を指す。例えば、本開示の抗PD-L1抗体の予防有効量は、T細胞機能不全障害の少なくとも1つの症状の発生を予防または減弱する少なくとも最小濃度である。
【0132】
「慢性」投与は、長期間にわたり初期の治療効果(活性)が主となる(main)ような、急性モードとは対照的に連続的な医薬の投与を指す。「間欠」投与は、中断なしに連続的に行われるものではなく、むしろ周期的な性質の治療である。
【0133】
治療の目的のための「哺乳動物」は、哺乳動物として分類される任意の動物を指し、これには、ヒト、家畜および農用動物、ならびに動物園、競技、または愛玩動物、例えば、イヌ、ウマ、ウサギ、ウシ、ブタ、ハムスター、アレチネズミ、マウス、フェレット、ラット、ネコなどが含まれる。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
【0134】
「薬学的製剤」という用語は、活性成分の生物学的活性が効果的となることを可能とするような形態にあり、かつ製剤が投与される対象に対して許容できない毒性の追加の成分を含有しない調製物を指す。そのような製剤は無菌である。
【0135】
「無菌」(sterile)製剤は、無菌的(aseptic)であり、または全ての生きた微生物およびその胞子を含まない。
【0136】
「自己免疫障害」は、個体自身の組織もしくは臓器から生じ、それを標的とする疾患もしくは障害、またはその共分離もしくは発現もしくはその結果として生じる状態である。自己免疫疾患は、臓器特異的疾患(すなわち、免疫応答が、内分泌系、造血系、皮膚、心肺系、胃腸および肝臓系、腎臓系、甲状腺、耳、神経筋系、中枢神経系などの臓器系を特異的に標的とする)または複数の臓器系に影響し得る全身性疾患(例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ(RA)、多発性筋炎など)であり得る。好ましいそのような疾患としては、自己免疫性リウマチ疾患(例えば、RA、シェーグレン症候群、強皮症、SLEおよびループス腎炎などのループス、多発性筋炎-皮膚筋炎、クリオグロブリン血症、抗リン脂質抗体症候群、および乾癬性関節炎など)、自己免疫性胃腸および肝臓障害(例えば、炎症性腸疾患(例えば、潰瘍性大腸炎およびクローン病)、自己免疫性胃炎および悪性貧血、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性胆管炎、原発性硬化性胆管炎、およびセリアック病など)、血管炎(例えば、ANCA陰性血管炎およびANCA関連血管炎、例えば、チャーグ・ストラウス血管炎、ウェゲナー肉芽腫症、および顕微鏡的多発血管炎など)、自己免疫性神経障害(例えば、多発性硬化症、オプソクローヌス-ミオクローヌス症候群、重症筋無力症、視神経脊髄炎、パーキンソン病、アルツハイマー病、および自己免疫性多発ニューロパチーなど)、腎障害(例えば、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、およびバージャー病など)、自己免疫性皮膚疾患(例えば、乾癬、蕁麻疹(urticaria)、蕁麻疹(hives)、尋常性天疱瘡、水疱性類天疱瘡、および皮膚ループスエリテマトーデスなど)、血液障害(例えば、血小板減少性紫斑病、血栓性血小板減少性紫斑病、輸血後紫斑病、および自己免疫性溶血性貧血など)、アテローム性動脈硬化症、ぶどう膜炎、自己免疫性聴覚疾患(例えば、内耳疾患および難聴など)、ベーチェット病、レイノー症候群、臓器移植、ならびに自己免疫性内分泌疾患(例えば、インスリン依存性糖尿病(IDDM)などの糖尿病関連自己免疫疾患、、アジソン病、および自己免疫性甲状腺疾患(例えば、グレーブス病(Graves’ disease)および甲状腺炎)など)が挙げられる。より好ましいそのような疾患としては、例えば、RA、潰瘍性大腸炎、ANCA関連血管炎、ループス、多発性硬化症、シェーグレン症候群、グレーブス病、IDDM、悪性貧血、甲状腺炎、および糸球体腎炎が挙げられる。
【0137】
本明細書において使用される「イムノコンジュゲート(immunoconjugate)」または「抗体-薬物コンジュゲート」という用語は、化学療法剤、毒素、免疫療法剤、およびイメージングプローブなどの別の剤との、抗体またはその抗原結合断片の結合を指す。結合は、共有結合、または静電力などを通じた非共有結合性相互作用であり得る。イムノコンジュゲートを形成するために、当該技術分野において公知の様々なリンカーが用いられ得る。さらに、イムノコンジュゲートは、イムノコンジュゲートをコードするポリヌクレオチドから発現され得る融合タンパク質の形態で提供され得る。本明細書において使用される場合、「融合タンパク質」は、元々は別々のタンパク質(ペプチドおよびポリペプチドを含む)をコードしていた2つまたはより多くの遺伝子または遺伝子断片の結合を通じて作られるタンパク質を指す。融合遺伝子の翻訳は、元々の各タンパク質に由来する機能特性を有する単一のタンパク質を結果としてもたらす。
【0138】
本明細書において使用される「細胞傷害剤」という用語は、細胞の機能を阻害もしくは防止しかつ/または細胞の破壊を引き起こす物質を指す。該用語は、放射活性同位体(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、およびLuの放射活性同位体)、ならびに毒素、例えば、細菌、真菌、植物もしくは動物起源の小分子毒素もしくは酵素活性毒素、またはその断片を含む。
【0139】
「化学療法剤」は、がんの治療において有用な化学的化合物である。化学療法剤の例としては、アルキル化剤、例えば、チオテパおよびシクロホスファミド(CYTOXAN(登録商標));アルキルスルホネート、例えば、ブスルファン、インプロスルファン、およびピポスルファン;アジリジン、例えば、ベンゾドパ(benzodopa)、カルボコン、メ
ツレドーパ(meturedopa)、およびウレドーパ(uredopa);エチレンイミンおよびメチ
ラメラミン(methylamelamine)、例えば、アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド(triethiylenethiophosphoramide)およびトリメチロールメラミン(trimethylolomelamine);アセト
ゲニン(特にブラタシンおよびブラタシノン);デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール、MARINOL(登録商標));ベータ-ラパコン;ラパコール;コルヒチン;ベツリン酸;カンプトテシン(合成アナログトポテカン(HYCAMTIN(登録商標))、CPT-11(イリノテカン、CAMPTOSAR(登録商標))、アセチルカンプトテシン、スコポレチン(scopolectin)、および9-アミノカンプトテシ
ンを含む);ブリオスタチン;ペメトレキセド;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシンおよびビゼレシン合成アナログを含む);ポドフィロトキシン;ポドフィリン酸;テニポシド;クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成アナログ、KW-2189およびCB1-TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;TLK-286;CDP323、経口アルファ-4インテグリン阻害剤;サルコジクチン;スポンギスタチン;ナイトロジェンマスタード、例えば、クロラムブシル、クロマファジン(chlomaphazine)、クロロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミ
ド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド(mechlorethamine oxide hydrochloride)、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード;ニトロソウレア(nitrosureas)、例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムス
チン、ニムスチン、およびラニムスチン(ranimnustine);抗生物質、例えば、エンジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン、特にカリケアマイシンガンマ1Iおよびカリケアマイシンオメガll(例えば、Nicolaou et al., Angew. Chem. Intl. Ed. Engl., 33:
183-186 (1994)を参照);ダイネマイシン、例えば、ダイネマイシンA;エスペラマイ
シン;他に、ネオカルジノスタチン発色団および関連色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アントラマイシン(authramycin)
、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン(carabicin)、カミノ
マイシン(caminomycin)、カルジノフィリン、クロモマイシン(chromomycinis)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(ADRIAMYCIN(登録商標)、モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、ドキソルビシンHClリポソーム注射(DOXIL(登録商標))およびデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、ミトマイシン、例えば、ミトマイシンC、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、クエラマイシン、
ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン
、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;抗代謝剤、例えば、メトトレキサート、ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標))、テガフール(UFTORAL(登録商標))、カペシタビン(XELODA(登録商標))、エポチロン、および5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸アナログ、例えば、デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキセート;プリンアナログ、例えば、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジンアナログ、例えば、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、およびイマチニブ(2-フェニルアミノピリミジン誘導体)、他のc-Kit阻害剤;抗アドレナル(anti-adrenals)、例えば、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補充剤(folic acid
replenisher)、例えば、フォリン酸(frolinic acid);アセグラトン;アルドホスフ
ァミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトレキサート(edatraxate);デホファミン(defofamine);デメコルシン;ジアジコン;エルホルミチン(elformithine);エリプチニウム酢酸塩;エトグルシド;ガリウム硝酸塩;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダイニン(lonidainine);メイタンシノイド、例えば、メイタンシンおよびアンサミトシン;ミトグアゾン;
ミトキサントロン;モピダンモール(mopidanmol);ニトラクリン(nitraerine);ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖複合体(JHS Natural Products、Eugene、Oreg.);ラゾキサン;リゾキシン;ゾフラン(sizofuran
);スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特にT-2毒素、ベラクリンA(verracurin A)、ロリジンAおよびアンギジン(anguidine));ウレタン(urethan);ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標));ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);チオテパ;タキソイド、例えば、パクリタキセル(TAXOL(登録商標))、パクリタキセルのアルブミン操作型ナノ粒子製剤(ABRAXANE(商標))、およびドセタキセル(doxetaxel)(TAXOTERE(登録商標
));クロラムブシル(chloranbucil);6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;白金アナログ、例えば、シスプラチンおよびカルボプラチン;ビンブラスチン(VELBAN(登録商標));白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン(ONCOVIN(登録商標));オキサリプラチン;ロイコボリン(leucovovin);ビノレルビン(NAVELBINE(登録商標));ノバントロン;エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;イバンドロネート;トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイド、例えば、レチノイン酸;上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸または誘導体;ならびに上記の2つまたはより多くの組合せ、例えば、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、およびプレドニゾロンの併用療法の略語であるCHOP、および5-FUおよびロイコボリンと組み合わせたオキサリプラチン(ELOXATIN(商標))を用いる治療レジメンの略語であるFOLFOXが挙げられる。特に腫瘍免
疫の治療における、本開示の抗PD-L1抗体と組み合わせて有用な特に好ましい化学療法剤はゲムシタビンである。
【0140】
がんの成長を促進し得るホルモンの効果を調節、低減、遮断、または阻害するように作用する抗ホルモン剤もまたこの定義に含まれ、多くの場合、全身性または全身治療の形態である。それらは、ホルモン自体であってもよい。例としては、抗エストロゲンおよび選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)、例えば、タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標)タモキシフェンを含む)、ラロキシフェン(EVISTA(登録商標))、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、およびトレミフェン(FARESTON(登録商標));抗プロゲステロン;エストロゲン受容体下方制御剤(ERD);エストロゲン受容体アンタゴニスト、例えば、フルベストラント(FASLODEX(登録商標));卵巣を抑制しまたは活動停止させるように機能する剤、例えば、黄体形成(leutinizing)ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニスト、例えば、ロイプロリド酢酸塩
(LUPRON(登録商標)およびELIGARD(登録商標))、ゴセレリン酢酸塩、ブセレリン酢酸塩およびトリプトレリン(tripterelin);抗アンドロゲン、例えば、フ
ルタミド、ニルタミドおよびビカルタミド;および副腎中でのエストロゲン産生を調節する酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害剤、例えば、4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、メゲストロール酢酸塩(MEGASE(登録商標))、エキセメスタン(AROMASIN(登録商標))、ホルメスタニー(formestanie)、ファドロゾ
ール、ボロゾール(RIVISOR(登録商標))、レトロゾール(FEMARA(登録商標))、およびアナストロゾール(ARIMIDEX(登録商標))が挙げられる。さらに、化学療法剤のそのような定義は、ビスホスホネート、例えば、クロドロン酸塩(例えば、BONEFOS(登録商標)またはOSTAC(登録商標))、エチドロン酸塩(DIDROCAL(登録商標))、NE-58095、ゾレドロン酸/ゾレドロン酸塩(ZOMETA(登録商標))、アレンドロン酸塩(FOSAMAX(登録商標))、パミドロン酸塩(AREDIA(登録商標))、チルドロン酸塩(SKELID(登録商標))、またはリセドロン酸塩(ACTONEL(登録商標));他に、トロキサシタビン(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシンアナログ);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に、例えば、PKC-アルファ、Raf、H-Ras、および上皮成長因子受容体(EGF-R)などの異常(abherant)細胞増殖に関係があるとされるシグナル伝達経路における遺伝子の発現を阻害するもの;ワクチン、例えば、THERATOPE(登録商標)ワクチンおよび遺伝子療法ワクチン、例えば、ALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン、およびVAXID(登録商標)ワクチン;トポイソメラーゼ1阻害剤(例えば、LURTOTECAN(登録商標));抗エストロゲン、例えば、フルベストラント;Kit阻害剤、例えば、イマチニブまたはEXEL-0862(チロシンキナーゼ阻害剤);EGFR阻害剤、例えば、エルロチニブまたはセツキシマブ;抗VEGF阻害剤、例えば、ベバシズマブ;イリノテカン(arinotecan);rmRH(例えば、ABARELIX(登録商標));ラパチニブおよびラパチニブ二トシル酸塩(GW572016としても公知のErbB-2およびEGFR二重チロシンキナーゼ小分子阻害剤);17AAG(熱ショックタンパク質(Hsp)90毒であるゲルダナマイシン誘導体)、ならびに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸または誘導体を含む。
【0141】
「増殖阻害剤」は、細胞の増殖を阻害する化合物または組成物を指し、該増殖は、in
vitroまたはin vivoのいずれかにおいて受容体活性化に依存する。そのため、増殖阻害剤としては、S期の受容体依存性細胞のパーセンテージを有意に低減するものが挙げられる。増殖阻害剤の例としては、細胞周期の進行を(S期以外の場所において)遮断する剤、例えば、G1停止およびM期停止を誘導する剤が挙げられる。古典的なM期遮断剤としては、ビンカおよびビンカアルカロイド(ビンクリスチンおよびビンブラス
チン)、タキサン、ならびにトポイソメラーゼII阻害剤、例えば、ドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、およびブレオマイシンが挙げられる。G1停止させる剤はS期停止にも波及し、これには例えば、DNAアルキル化剤、例えば、タモキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、およびara-Cがある。さらなる情報は、The Molecular Basis of Cancer, Mendelsohn and Israel, eds., Chapter 1、タイトル「Cell cycle regulation, oncogenes, and antineoplastic drugs」、Murakami et al. (WB Saunders: Philadelphia, 1995)の特に第13頁において見出すことができる。タキサン(パクリタキセルおよびドセタキセル)は共にイチイの木に由来する抗がん薬である。ヨーロッパイチイに由来するドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Rhone-Poulenc Rorer)は、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol-Myers Squibb)の半合成アナログである。
【0142】
「サイトカイン」という用語は、1つの細胞集団により放出され、細胞間メディエーターとして別の細胞に作用するタンパク質の総称である。そのようなサイトカインの例は、リンホカイン、モノカイン;インターロイキン(IL)、例えば、PROLEUKIN(登録商標)rIL-2を含む、IL-1、IL-1α、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-11、IL-12、IL-13、IL-15...IL-35;腫瘍壊死因子、例えば、TNF-αまたはTNF-β;ならびに他のポリペプチド因子、例えば、LIFおよびkitリガンド(KL)であり、「インターロイキン」という用語は、現在ではサイトカインという用語の本質的に同義語となっている。本明細書において使用される場合、サイトカインという用語は、天然の供給源または組換え細胞培養物からのタンパク質、および、合成的に製造された小分子実体を含む、天然配列サイトカインの生物学的に活性の同等物、ならびにその薬学的に許容される誘導体および塩を含む。サイトカインは、意図される標的の近位位置に基づいて分類することができ、オートクラインは、それが分泌される同じ細胞に対する作用を指し、パラクラインは、サイトカインが分泌されるすぐ近傍に限定された作用を指し、内分泌は、身体の遠くの領域中での作用を指す。免疫サイトカインはまた、細胞性免疫に有利に働くI型応答を増進するのか(例えば、IFN-γ、TGF-βなど)、それとも抗体または液性免疫に有利に働くII型応答を増進するのか(IL-4、IL-10、IL-13など)により分類され得る。免疫サイトカインは、様々な免疫細胞の共刺激、成熟、増殖、活性化、炎症、成長、分化、サイトカイン産生および分泌、生存において役割を果たす。
【0143】
本明細書において使用される、免疫学、がん免疫療法、薬理学、組換え核酸技術、抗体操作工学、ならびに分子生物学および細胞生物学の分野において使用される他の用語は、適用される技術分野の当業者により一般に理解される。
【0144】
抗体ライブラリーおよびそのスクリーニング
ファージ(ミド)ディスプレイ(本明細書においてファージディスプレイと称されることもある)は、例えば、配列設計および/またはランダム化により生成されるライブラリー中の多くの異なる潜在的なバリアント抗体を生成し、スクリーニングするための簡便かつ迅速な方法として使用され得る。しかしながら、改変した抗体を作製しスクリーニングする他の方法は当業者に利用可能である。
【0145】
ファージ(ミド)ディスプレイ(本明細書の一部の文脈においてファージディスプレイと称されることもある)は、配列ランダム化により生成されるライブラリー中の多くの異なる潜在的なバリアント抗体を生成しスクリーニングするための簡便かつ迅速な方法として使用され得る。しかしながら、改変した抗体を作製しスクリーニングする他の方法は当業者に利用可能である。
【0146】
ファージ(ミド)ディスプレイ技術は、抗原などのリガンドに結合する新規のタンパク質を生成および選択するための強力なツールを提供している。ファージ(ミド)ディスプレイの技術の使用は、高親和性で標的分子に結合する配列について迅速に選別できるタンパク質バリアントの大きなライブラリーの生成を可能とする。バリアントポリペプチドをコードする核酸は、概して、遺伝子IIIタンパク質または遺伝子VIIIタンパク質などのウイルスコートタンパク質をコードする核酸配列に融合している。タンパク質またはポリペプチドをコードする核酸配列が遺伝子IIIタンパク質の一部分をコードする核酸配列に融合している一価ファージミドディスプレイシステムが開発されている。(Bass, S., Proteins, 8:309 (1990); Lowman and Wells, Methods: A Companion to Methods in
Enzymology, 3:205 (1991))。一価ファージミドディスプレイシステムにおいて、遺伝
子融合物は低いレベルで発現され、野生型遺伝子IIIタンパク質もまた発現され、それにより粒子の感染力が保持される。ペプチドライブラリーを生成し、それらのライブラリーをスクリーニングする方法は多くの特許において開示されている(例えば、米国特許第5,723,286号明細書、米国特許第5,432,018号明細書、米国特許第5,580,717号明細書、米国特許第5,427,908号明細書および米国特許第5,498,530号明細書)。
【0147】
抗体または抗原結合ポリペプチドのライブラリーは、ランダムなDNA配列を挿入することにより単一の遺伝子を改変させることまたは関連遺伝子のファミリーをクローニングすることによるものを含む多数のやり方で調製されている。ファージ(ミド)ディスプレイを使用して抗体または抗原結合断片を提示するための方法は、米国特許第5,750,373号明細書、同第5,733,743号明細書、同第5,837,242号明細書、同第5,969,108号明細書、同第6,172,197号明細書、同第5,580,717号明細書、および同第5,658,727号明細書に記載されている。ライブラリーは次に、所望の特徴を有する抗体または抗原結合タンパク質の発現のためにスクリーニングされる。
【0148】
一実施形態では、国際出願PCT/CN2017/098333号明細書および国際出願PCT/CN2017/098299号明細書(参照することにより全体が本明細書に組み込まれる)に記載されているように、重鎖および軽鎖ライブラリーが調製され、スクリーニングされる。
【0149】
選択したアミノ酸を鋳型核酸に置換する方法は当該技術分野においてよく確立されており、その一部は本明細書に記載される。例えば、超可変領域残基は、クンケル(Kunkel)法を使用して置換され得る。例えば、Kunkel et al., Methods Enzymol. 154:367-382 (1987)を参照のこと。
【0150】
オリゴヌクレオチドの配列は、改変させる超可変領域残基のために設計されたコドンセットの1つまたはより多くを含む。コドンセットは、所望のバリアントのアミノ酸をコードするために使用される異なるヌクレオチドトリプレット配列のセットである。コドンセットは、IUBコードにより以下に示されるような特定のヌクレオチドまたはヌクレオチドの等モル混合物を指定するための記号を使用して表すことができる。
【表3】
【0151】
組換え体の調製
本開示はまた、抗PD-L1抗体をコードする単離された核酸、そのような核酸を含むベクターおよび宿主細胞、ならびに抗体の産生のための組換え技術を提供する。
【0152】
抗体の組換え体生産のために、それをコードする核酸が単離され、さらにクローニング(DNAの増幅)するためまたは一般的な組換えDNA技術により発現させるために複製可能なベクターに挿入される。上記のようなライブラリースクリーニング後に、抗体をコードするDNAは、従来の手順を使用して容易に推定または他に単離され、シークエンシングされる(例えば、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによる)。当該技術分野において公知の多くのベクターがDNAのクローニングのために利用可能である。ベクターの選択は、部分的には、使用される宿主細胞に依存する。概して、好ましい宿主細胞は、原核由来または真核(概しては哺乳動物)由来のものである。抗体がクローニングされたら、抗体は、当該技術分野において周知の方法を使用して発現および精製され得る。
【0153】
エピトープマッピングおよび関連技術
本開示は、例えば、細胞外(IgV様)ドメイン、細胞外IgC様ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含む、PD-L1分子の1つまたはより多くのドメイン内に見出される1つまたはより多くのアミノ酸と相互作用する抗PD-L1抗体を含む。抗体が結合するエピトープは、PD-L1分子の上述の任意のドメイン内に位置する3つまたはより多く(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20またはより多く)のアミノ酸の単一の連続する配列からなるものであってもよい(例えば、ドメイン中の線形エピトープ)。あるいは、エピトープは、PD-L1分子の上述のドメインのいずれかまたは両方に位置する複数の連続しないアミノ酸(またはアミノ酸配列)からなるものであってもよい(例えば、コンフォメーショナルエピトープ)。
【0154】
抗体がポリペプチドまたはタンパク質内の「1つまたはより多くのアミノ酸と相互作用する」かどうかを決定するために当業者に公知の様々な技術が使用され得る。例示的な技術としては、例えば、Antibodies, Harlow and Lane (Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, NY)に記載されるものなどのルーチンの交差遮断アッセイ(cross-blocking assays)が挙げられる。他の方法としては、アラニンスキャニング突然変異解析、ペプチドブロット解析(Reineke (2004) Methods Mol. Biol. 248: 4
43-63)、ペプチド切断解析 結晶学的研究およびNMR解析が挙げられる。さらに、エ
ピトープ切除、エピトープ抽出および抗原の化学修飾などの方法が用いられ得る(Tomer (2000) Prot. Sci. 9: 487-496)。抗体が相互作用するポリペプチド内のアミノ酸を同定するために使用され得る別の方法は、質量分析により検出される水素/重水素交換である。一般的に、水素/重水素交換法は、目的のタンパク質を重水素標識すること、続いて抗体を重水素標識タンパク質に結合させることを伴う。次に、タンパク質/抗体複合体が水に移され、抗体複合体により保護されたアミノ酸内の交換可能なプロトンが、境界面の部分ではないアミノ酸内の交換可能なプロトンより遅い速度で重水素から水素への逆交換を受ける。結果として、タンパク質/抗体境界面の部分を形成するアミノ酸は重水素を保持することができ、したがって、境界面に含まれないアミノ酸と比較して比較的より高い質量を呈する。抗体の解離後、標的タンパク質はプロテアーゼ切断および質量分析に供され、それにより、抗体が相互作用する特定のアミノ酸に対応する重水素標識残基が明らかになる。例えば、Ehring (1999) Analytical Biochemistry 267: 252-259; EngenおよびSmith (2001 ) Anal. Chem. 73: 256A-265Aを参照のこと。
【0155】
「エピトープ」という用語は、Bおよび/またはT細胞が応答する抗原上の部位を指す。B細胞エピトープは、連続するアミノ酸、またはタンパク質の三次フォールディングにより並置される連続しないアミノ酸の両方から形成され得る。連続するアミノ酸から形成されるエピトープは、通常は、変性溶媒への曝露時に保持される一方、三次フォールディングにより形成されるエピトープは、通常は、変性溶媒を用いた処理により失われる。エピトープは、通常は、特有の空間的配座において少なくとも3つ、より通常は、少なくとも5または8~10のアミノ酸を含む。抗原構造ベース抗体プロファイリング(Antigen Structure-based Antibody Profiling)(ASAP)としても公知の修飾補助プロファイリング(Modification-Assisted Profiling)(MAP)は、化学的または酵素的に修飾された抗原表面に対する各抗体の結合プロファイルの類似性にしたがって、同じ抗原を標的とする多数の抗体を分類する方法である(米国特許第2004/0101920号明細書を参照のこと;参照することにより全体が本明細書に具体的に組み込まれる)。各カテゴリーは、別のカテゴリーにより表されるエピトープから明確に異なるか、またはそれと部分的に重複する特有のエピトープを反映し得る。この技術は、遺伝学的に同一の抗体の迅速なフィルタリングを可能とし、そのような特徴付けは、遺伝学的に異なる抗体に焦点を合わせることができる。ハイブリドーマスクリーニングに応用される場合、MAPは、所望の特徴を有するmAbを産生する希少なハイブリドーマクローンの同定を容易にし得る。MAPは、本開示の抗体を異なるエピトープに結合する抗体のグループに選別するために使用されてもよい。
【0156】
当該技術分野において公知のルーチンの方法を使用することにより、抗体が参照抗PD-L1抗体と同じエピトープに結合するか、または参照抗PD-L1抗体と結合について競合するかどうかを容易に決定することができる。例えば、試験抗体が本開示の参照抗PD-L1抗体と同じエピトープに結合するかどうかを決定するために、参照抗体を飽和条件下でPD-L1タンパク質またはペプチドに結合させる。次に、試験抗体の、PD-L1分子に結合する能力が評価される。試験抗体が参照抗PD-L1抗体との飽和結合後にPD-L1に結合できる場合、試験抗体は参照抗PD-L1抗体とは異なるエピトープに結合すると結論することができる。他方、試験抗体が参照抗PD-L1抗体との飽和結合後にPD-L1タンパク質に結合できない場合、試験抗体は、本開示の参照抗PD-L1抗体が結合するエピトープと同じエピトープに結合する可能性がある。
【0157】
抗体が参照抗PD-L1抗体と結合について競合するかどうかを決定するために、上記の結合方法論が2つの方向性で行われる:第1の方向性において、参照抗体を飽和条件下でPD-L1タンパク質に結合させ、続いてPD-L1分子への試験抗体の結合を評価す
る。第2の方向性において、試験抗体を飽和条件下でPD-L1分子に結合させ、続いてPD-L1分子への参照抗体の結合を評価する。両方の方向性において第1の(飽和)抗体のみがPD-L1分子に結合できる場合、試験抗体および参照抗体はPD-L1への結合について競合すると結論づけられる。当業者により理解されるように、参照抗体と結合について競合する抗体は、参照抗体と同一のエピトープに必ずしも結合しないことがあり、重複または隣接するエピトープに結合することにより参照抗体の結合を立体的に遮断することがある。
【0158】
2つの抗体は、それぞれが抗原への他方の結合を競合的に阻害(遮断)する場合に、同じまたは重複するエピトープに結合する。すなわち、1、5、10、20または100倍過剰の一方の抗体は、競合結合アッセイにおける測定で、他方の結合を少なくとも50%、好ましくは75%、90%またはさらには99%阻害する(例えば、Junghans et al.,
Cancer Res. 1990 50:1495-1502を参照)。あるいは、一方の抗体の結合を低減または除去する抗原中の本質的に全てのアミノ酸突然変異が他方の結合を低減または除去する場合に、2つの抗体は同じエピトープを有する。一方の抗体の結合を低減または除去する一部のアミノ酸突然変異が他方の結合を低減または除去する場合に、2つの抗体は重複するエピトープを有する。
【0159】
試験抗体の結合の観察された欠如が、実際に参照抗体と同じエピトープへの結合に起因するのかどうか、または立体遮断(もしくは別の現象)が観察される結合の欠如に関与するのかどうかを確認するために、追加のルーチンの実験(例えば、ペプチド変異および結合解析)が次に実行され得る。この種類の実験は、ELISA、RIA、表面プラズモン共鳴、フローサイトメトリーまたは当該技術分野において利用可能な任意の他の定量的もしくは定性的な抗体結合アッセイを使用して行われ得る。
【0160】
抗体および断片
一部の実施形態では、以下のHVR_L1、HVR_L2、および/またはHRV_L3の1つまたはより多くを含む、単離された抗体、またはその抗原結合断片が本明細書において提供される:
(1)(a)RASQX1X2X3X4X5LA(配列番号1):
X1:G S
X2:I V
X3:E G S
X4:K P S
X5:F W Y
(b)RASX1SVDFX2GX3SFLX4(配列番号2):
X1:E Q
X2:F H Y
X3:I K
X4:A D
(c)X1ASQX2IPX3FLX4(配列番号3):
X1:Q R
X2:D S T
X3:K S T
X4:A N
(d)RASQGX1SX2X3LA(配列番号4):
X1:I V
X2:P S
X3:W Y
および
(e)RASQX1IPSFLN(配列番号5):
X1:S T
からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHVR_L1
(2)(a)DASX1X2X3X4GX5(配列番号6):
X1:N S
X2:L R
X3:A E
X4:S T
X5:I V
(b)AASX1LQSGV(配列番号7):
X1:S T
および
(c)DASNX1X2TGX3(配列番号8):
X1:L R
X2:A E
X3:I V
からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHVR_L2
(3)(e)YCQQYDX1WPYT(配列番号9):
X1:A H S Y
(f)YCQX1YX2SWPRX3FT(配列番号10):
X1:H Q
X2:G I S T V
X3:G L Q R V
(g)YCQQYDX1WPYT(配列番号11):
X1:A S
および
(h)YCQHYX1SWPRQFT(配列番号12):
X1:I T
からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHVR_L3。
【0161】
ある特定の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号13~39および94~102からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHVR_L1、配列番号40~66および103~111からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHVR_L2、ならびに/または配列番号67~93および112~120からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHVR_L3を含み得る。一部の実施形態では、配列番号13~39からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHVR_L1、配列番号40~66からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHVR_L2、および/または配列番号67~93からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHVR_L3を有する抗体またはその断片は、ヒトおよびサルPD-L1と交差反応性を示す。ある特定の実施形態では、配列番号94~102からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHVR_L1、配列番号103~111からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHVR_L2、およ
び/または配列番号112~120からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHVR_L3を有する抗体またはその断片は、ヒト、サルおよびマウスPD-L1と交差反応性を示す。
>B14033-HVR_L1
RASQGIGSFLA(配列番号13)
>B14614-HVR_L1
RASESVDFYGKSFLD(配列番号14)
>B14615-HVR_L1
RASQSVDFYGKSFLA(配列番号15)
>B14617-HVR_L1
RASESVDFFGKSFLA(配列番号16)
>B14622-HVR_L1
RASQSVDFYGKSFLD(配列番号17)
>B14627-HVR_L1
RASQSVSSWLA(配列番号18)
>B14631-HVR_L1
RASESVDFFGKSFLA(配列番号19)
>B14633-HVR_L1
RASESVDFHGISFLA(配列番号20)
>B14634-HVR_L1
RASQSVSPYLA(配列番号21)
>B14638-HVR_L1
RASQSVGSIYLG(配列番号22)
>B14642-HVR_L1
RASQSVDFYGKSFLA(配列番号23)
>B14644-HVR_L1
RASESVDFYGKSFLA(配列番号24)
>B14645-HVR_L1
RASQSVDFYGKSFLD(配列番号25)
>B14650-HVR_L1
RASESVDFYGKSFLD(配列番号26)
>B14651-HVR_L1
RASESVDFHGKSFLA(配列番号27)
>B14652-HVR_L1
RASQGVSPWLA(配列番号28)
>B14654-HVR_L1
RASQSVSPYLA(配列番号29)
>B14658-HVR_L1
RASQSVDFHGKSFLD(配列番号30)
>B14665-HVR_L1
RASQSVDFYGKSFLA(配列番号31)
>B14673-HVR_L1
RASESVDFYGKSFLA(配列番号32)
>B14674-HVR_L1
RASQSIEKWLA(配列番号33)
>B14681-HVR_L1
RASQSVDFHGISFLD(配列番号34)
>B14689-HVR_L1
RASQSVDFYGKSFLD(配列番号35)
>B14690-HVR_L1
RASQSVDFHGISFLD(配列番号36)
>B13002-HVR_L1
RASQGVSSYLA(配列番号37)
>B13004-HVR_L1
RASQGISPWLA(配列番号38)
>B13005-HVR_L1
RASQSVSSYLA(配列番号39)
>B14033-HVR_L2
DASSLESGV(配列番号40)
>B14614-HVR_L2
DASNRATGI(配列番号41)
>B14615-HVR_L2
DASSLESGV(配列番号42)
>B14617-HVR_L2
DASSLESGV(配列番号43)
>B14622-HVR_L2
DASNRATGI(配列番号44)
>B14627-HVR_L2
DASSLESGV(配列番号45)
>B14631-HVR_L2
DASNLETGV(配列番号46)
>B14633-HVR_L2
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>B14634-HVR_L2
DASNLETGV(配列番号48)
>B14638-HVR_L2
DASNRATGI(配列番号49)
>B14642-HVR_L2
DASSLESGV(配列番号50)
>B14644-HVR_L2
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>B14645-HVR_L2
DASNLETGV(配列番号52)
>B14650-HVR_L2
DASNRATGI(配列番号53)
>B14651-HVR_L2
DASNRATGI(配列番号54)
>B14652-HVR_L2
DASSLESGV(配列番号55)
>B14654-HVR_L2
DASNRATGI(配列番号56)
>B14658-HVR_L2
DASNRATGI(配列番号57)
>B14665-HVR_L2
DASSLESGV(配列番号58)
>B14673-HVR_L2
DASSLESGV(配列番号59)
>B14674-HVR_L2
DASSLESGV(配列番号60)
>B14681-HVR_L2
DASNRATGI(配列番号61)
>B14689-HVR_L2
DASSLESGV(配列番号62)
>B14690-HVR_L2
DASNLETGV(配列番号63)
>B13002-HVR_L2
DASNLETGV(配列番号64)
>B13004-HVR_L2
DASNRATGI(配列番号65)
>B13005-HVR_L2
DASNLETGV(配列番号66)
>B14033-HVR_L3
YCQQYDYWPYT(配列番号67)
>B14614-HVR_L3
YCQQYDSWPYT(配列番号68)
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YCQQYDHWPYT(配列番号69)
>B14617-HVR_L3
YCQQYDSWPYT(配列番号70)
>B14622-HVR_L3
YCQQYDSWPYT(配列番号71)
>B14627-HVR_L3
YCQQYDSWPYT(配列番号72)
>B14631-HVR_L3
YCQQYDHWPYT(配列番号73)
>B14633-HVR_L3
YCQQYDHWPYT(配列番号74)
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YCQQYDAWPYT(配列番号75)
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YCQQYDSWPYT(配列番号76)
>B14642-HVR_L3
YCQQYDAWPYT(配列番号77)
>B14644-HVR_L3
YCQQYDYWPYT(配列番号78)
>B14645-HVR_L3
YCQQYDAWPYT(配列番号79)
>B14650-HVR_L3
YCQQYDHWPYT(配列番号80)
>B14651-HVR_L3
YCQQYDHWPYT(配列番号81)
>B14652-HVR_L3
YCQQYDAWPYT(配列番号82)
>B14654-HVR_L3
YCQQYDAWPYT(配列番号83)
>B14658-HVR_L3
YCQQYDSWPYT(配列番号84)
>B14665-HVR_L3
YCQQYDSWPYT(配列番号85)
>B14673-HVR_L3
YCQQYDSWPYT(配列番号86)
>B14674-HVR_L3
YCQQYDAWPYT(配列番号87)
>B14681-HVR_L3
YCQQYDHWPYT(配列番号88)
>B14689-HVR_L3
YCQQYDHWPYT(配列番号89)
>B14690-HVR_L3
YCQQYDSWPYT(配列番号90)
>B13002-HVR_L3
YCQQYDAWPYT(配列番号91)
>B13004-HVR_L3
YCQQYDSWPYT(配列番号92)
>B13005-HVR_L3
YCQQYDAWPYT(配列番号93)
>B14032-HVR_L1
QASQDIPTFLA(配列番号94)
>B15012-HVR_L1
RASQTIPSFLN(配列番号95)
>B15014-HVR_L1
RASQDIPKFLA(配列番号96)
>B15016-HVR_L1
RASQTIPSFLN(配列番号97)
>B15022-HVR_L1
RASQSIPSFLN(配列番号98)
>B15024-HVR_L1
RASQSIPTFLN(配列番号99)
>B15041-HVR_L1
RASQSIPSFLN(配列番号100)
>B15074-HVR_L1
RASQTIPSFLN(配列番号101)
>B15082-HVR_L1
RASQTIPSFLN(配列番号102)
>B14032-HVR_L2
AASSLQSGV(配列番号103)
>B15012-HVR_L2
AASTLQSGV(配列番号104)
>B15014-HVR_L2
AASTLQSGV(配列番号105)
>B15016-HVR_L2
AASSLQSGV(配列番号106)
>B15022-HVR_L2
AASTLQSGV(配列番号107)
>B15024-HVR_L2
AASTLQSGV(配列番号108)
>B15041-HVR_L2
AASSLQSGV(配列番号109)
>B15074-HVR_L2
AASTLQSGV(配列番号110)
>B15082-HVR_L2
AASSLQSGV(配列番号111)
>B14032-HVR_L3
YCQQYVSWPRGFT(配列番号112)
>B15012-HVR_L3
YCQHYSSWPRGFT(配列番号113)
>B15014-HVR_L3
YCQHYVSWPRQFT(配列番号114)
>B15016-HVR_L3
YCQHYTSWPRQFT(配列番号115)
>B15022-HVR_L3
YCQQYSSWPRLFT(配列番号116)
>B15024-HVR_L3
YCQHYVSWPRLFT(配列番号117)
>B15041-HVR_L3
YCQHYISWPRQFT(配列番号118)
>B15074-HVR_L3
YCQHYISWPRVFT(配列番号119)
>B15082-HVR_L3
YCQHYGSWPRRFT(配列番号120)
【0162】
一部の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号121~125からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するVLを含み得る:
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQX1X2X3X4X5LAWYQQKPGKAPKLLIYDASX6X7X8X9GX10PSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYDX11WPYTFGQGTKVEIKR(配列番号121):
X1:G S
X2:I V
X3:E G S
X4:K P S
X5:F W Y
X6:N S
X7:L R
X8:A E
X9:S T
X10:I V
X11:A S Y
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASX1SVDFX2GX3SFLX4WYQQKPGKAPKLLIYDASX5X6X7X8GX9PSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYDX10WPYTFGQGTKVEIKR(配列番号122):
X1:E Q
X2:F H Y
X3:I K
X4:A D
X5:N S
X6:L R
X7:A E
X8:S T
X9:I V
X10:A H S Y
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCX1ASQX2IPX3FLX4WYQQKPGKAPKLLIYAASX5LQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQX6YX7SWPRX8FTFGQGTKVEIKR(配列番号123):
X1:Q R
X2:D S T
X3:K S T
X4:A N
X5:S T
X6:H Q
X7:G I S T V
X8:G L Q R V
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGX1SX2X3LAWYQQKPGKAPKLLIYDASNX4X5TGX6PSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYDX7WPYTFGQGTKVEIKR(配列番号124):
X1:I V
X2:P S
X3:W Y
X4:L R
X5:A E
X6:I V
X7:A S
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQX1IPSFLNWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQHYX2SWPRQFTFGQGTKVEIKR(配列番号125):
X1:S T
X2:I T
【0163】
一部の実施形態では、配列番号121~122、および124からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するVLを有する抗体またはその断片は、ヒトおよびサルPD-L1と交差反応性を示す。ある特定の実施形態では、配列番号123および125からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するVLを有する抗体またはその断片は、ヒト、サルおよびマウスPD-L1と交差反応性を示す。
【0164】
様々な実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号164および167からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHVR_H1、配列番号165および168からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHVR_H2、ならびに/または配列番号166および169からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHVR_H3をさらに含み得る:
YTFSNYGIHWV(配列番号164)
IGWIYPSGGGTKYAQKFQGRV(配列番号165)
AREGGGYGYALDY(配列番号166)
YSISSGYYWGWI(配列番号167)
IGIIYPSGGGTNYAQKFQGRV(配列番号168)
ARGGGLGFDY(配列番号169)
【0165】
一部の実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号126~127からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するVHをさらに含む。実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号128~163からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するVLを含み得る。これらの配列は、Fabの形態であり得る。
>B14032-VH
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYSISSGYYWGWIRQAPGKGLEWIGIIYPSGGGTNYAQKFQGRVTISRDNSKNTLYLQLNSLRAEDTAVYYCARGGGLGFDYWGQGTLVTVSS(配列番号127)
>B14032-VL
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCQASQDIPTFLAWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYVSWPRGFTFGQGTKVEIKR(配列番号128)
>B14033-VH
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFSNYGIHWVRQAPGKGLEWIGWIYPSGGGTKYAQKFQGRVTISRDNSKNTLYLQLNSLRAEDTAVYYCAREGGGYGYALDYWGQGTLVTVSS(配列番号126)
>B14033-VL
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGIGSFLAWYQQKPGKAPKLLIYDASSLESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYDYWPYTFGQGTKVEIKR(配列番号129)
>B14614-VH
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFSNYGIHWVRQAPGKGLEWIGWIYPSGGGTKYAQKFQGRVTISRDNSKNTLYLQLNSLRAEDTAVYYCAREGGGYGYALDYWGQGTLVTVSS(配列番号126)
>B14614-VL
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASESVDFYGKSFLDWYQQKPGKAPKLLIYDASNRATGIPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYDSWPYTFGQGTKVEIKR(配列番号130)
>B14615-VH
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFSNYGIHWVRQAPGKGLEWIGWIYPSGGGTKYAQKFQGRVTISRDNSKNTLYLQLNSLRAEDTAVYYCAREGGGYGYALDYWGQGTLVTVSS(配列番号126)
>B14615-VL
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSVDFYGKSFLAWYQQKPGKAPKLLIYDASSLESGVPSRFSGSGSGTDFTLTIS
SLQPEDFATYYCQQYDHWPYTFGQGTKVEIKR(配列番号131)
>B14617-VH
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFSNYGIHWVRQAPGKGLEWIGWIYPSGGGTKYAQKFQGRVTISRDNSKNTLYLQLNSLRAEDTAVYYCAREGGGYGYALDYWGQGTLVTVSS(配列番号126)
>B14617-VL
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASESVDFFGKSFLAWYQQKPGKAPKLLIYDASSLESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYDSWPYTFGQGTKVEIKR(配列番号132)
>B14622-VH
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFSNYGIHWVRQAPGKGLEWIGWIYPSGGGTKYAQKFQGRVTISRDNSKNTLYLQLNSLRAEDTAVYYCAREGGGYGYALDYWGQGTLVTVSS(配列番号126)
>B14622-VL
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSVDFYGKSFLDWYQQKPGKAPKLLIYDASNRATGIPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYDSWPYTFGQGTKVEIKR(配列番号133)
>B14627-VH
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFSNYGIHWVRQAPGKGLEWIGWIYPSGGGTKYAQKFQGRVTISRDNSKNTLYLQLNSLRAEDTAVYYCAREGGGYGYALDYWGQGTLVTVSS(配列番号126)
>B14627-VL
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSVSSWLAWYQQKPGKAPKLLIYDASSLESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYDSWPYTFGQGTKVEIKR(配列番号134)
>B14631-VH
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFSNYGIHWVRQAPGKGLEWIGWIYPSGGGTKYAQKFQGRVTISRDNSKNTLYLQLNSLRAEDTAVYYCAREGGGYGYALDYWGQGTLVTVSS(配列番号126)
>B14631-VL
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASESVDFFGKSFLAWYQQKPGKAPKLLIYDASNLETGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYDHWPYTFGQGTKVEIKR(配列番号135)
>B14633-VH
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFSNYGIHWVRQAPGKGLEWIGWIYPSGGGTKYAQKFQGRVTISRDNSKNTLYLQLNSLRAEDTAVYYCAREGGGYGYALDYWGQGTLVTVSS
(配列番号126)
>B14633-VL
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASESVDFHGISFLAWYQQKPGKAPKLLIYDASNRATGIPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYDHWPYTFGQGTKVEIKR(配列番号136)
>B14634-VH
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFSNYGIHWVRQAPGKGLEWIGWIYPSGGGTKYAQKFQGRVTISRDNSKNTLYLQLNSLRAEDTAVYYCAREGGGYGYALDYWGQGTLVTVSS(配列番号126)
>B14634-VL
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSVSPYLAWYQQKPGKAPKLLIYDASNLETGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYDAWPYTFGQGTKVEIKR(配列番号137)
>B14638-VH
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFSNYGIHWVRQAPGKGLEWIGWIYPSGGGTKYAQKFQGRVTISRDNSKNTLYLQLNSLRAEDTAVYYCAREGGGYGYALDYWGQGTLVTVSS(配列番号126)
>B14638-VL
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSVGSIYLGWYQQKPGKAPKLLIYDASNRATGIPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYDSWPYTFGQGTKVEIKR(配列番号138)
>B14642-VH
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFSNYGIHWVRQAPGKGLEWIGWIYPSGGGTKYAQKFQGRVTISRDNSKNTLYLQLNSLRAEDTAVYYCAREGGGYGYALDYWGQGTLVTVSS(配列番号126)
>B14642-VL
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSVDFYGKSFLAWYQQKPGKAPKLLIYDASSLESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYDAWPYTFGQGTKVEIKR(配列番号139)
>B14644-VH
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFSNYGIHWVRQAPGKGLEWIGWIYPSGGGTKYAQKFQGRVTISRDNSKNTLYLQLNSLRAEDTAVYYCAREGGGYGYALDYWGQGTLVTVSS(配列番号126)
>B14644-VL
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASESVDFYGKSFLAWYQQKPGKAPKLLIYDASNRATGIPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYDYWPYTFGQGTKVEIKR(配列番号140)
>B14645-VH
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFSNYGIHWVRQAPGKGLEWIGWIYPSGGGTKYAQKFQGRVTISRDNSKNTLYLQLNSLRAEDTAVYYCAREGGGYGYALDYWGQGTLVTVSS(配列番号126)
>B14645-VL
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSVDFYGKSFLDWYQQKPGKAPKLLIYDASNLETGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYDAWPYTFGQGTKVEIKR(配列番号141)
>B14650-VH
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFSNYGIHWVRQAPGKGLEWIGWIYPSGGGTKYAQKFQGRVTISRDNSKNTLYLQLNSLRAEDTAVYYCAREGGGYGYALDYWGQGTLVTVSS(配列番号126)
>B14650-VL
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASESVDFYGKSFLDWYQQKPGKAPKLLIYDASNRATGIPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYDHWPYTFGQGTKVEIKR(配列番号142)
>B14651-VH
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFSNYGIHWVRQAPGKGLEWIGWIYPSGGGTKYAQKFQGRVTISRDNSKNTLYLQLNSLRAEDTAVYYCAREGGGYGYALDYWGQGTLVTVSS(配列番号126)
>B14651-VL
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASESVDFHGKSFLAWYQQKPGKAPKLLIYDASNRATGIPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYDHWPYTFGQGTKVEIKR(配列番号143)
>B14652-VH
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFSNYGIHWVRQAPGKGLEWIGWIYPSGGGTKYAQKFQGRVTISRDNSKNTLYLQLNSLRAEDTAVYYCAREGGGYGYALDYWGQGTLVTVSS(配列番号126)
>B14652-VL
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGVSPWLAWYQQKPGKAPKLLIYDASSLESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYDAWPYTFGQGTKVEIKR(配列番号144)
>B14654-VH
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFSNYGIHWVRQAPGKGLEWIGWIYPSGGGTKYAQKFQGRVTISRDNSKNTLYLQLNSLRAEDTAVYYCAREGGGYGYALDYWGQGTLVTVSS(配列番号126)
>B14654-VL
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSVSPYLAWYQQKPGKAPKLLIYDASNRATGIPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQP
EDFATYYCQQYDAWPYTFGQGTKVEIKR(配列番号145)
>B14658-VH
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFSNYGIHWVRQAPGKGLEWIGWIYPSGGGTKYAQKFQGRVTISRDNSKNTLYLQLNSLRAEDTAVYYCAREGGGYGYALDYWGQGTLVTVSS(配列番号126)
>B14658-VL
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSVDFHGKSFLDWYQQKPGKAPKLLIYDASNRATGIPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYDSWPYTFGQGTKVEIKR(配列番号146)
>B14665-VH
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFSNYGIHWVRQAPGKGLEWIGWIYPSGGGTKYAQKFQGRVTISRDNSKNTLYLQLNSLRAEDTAVYYCAREGGGYGYALDYWGQGTLVTVSS(配列番号126)
>B14665-VL
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSVDFYGKSFLAWYQQKPGKAPKLLIYDASSLESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYDSWPYTFGQGTKVEIKR(配列番号147)
>B14673-VH
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFSNYGIHWVRQAPGKGLEWIGWIYPSGGGTKYAQKFQGRVTISRDNSKNTLYLQLNSLRAEDTAVYYCAREGGGYGYALDYWGQGTLVTVSS(配列番号126)
>B14673-VL
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASESVDFYGKSFLAWYQQKPGKAPKLLIYDASSLESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYDSWPYTFGQGTKVEIKR(配列番号148)
>B14674-VH
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFSNYGIHWVRQAPGKGLEWIGWIYPSGGGTKYAQKFQGRVTISRDNSKNTLYLQLNSLRAEDTAVYYCAREGGGYGYALDYWGQGTLVTVSS(配列番号126)
>B14674-VL
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSIEKWLAWYQQKPGKAPKLLIYDASSLESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYDAWPYTFGQGTKVEIKR(配列番号149)
>B14681-VH
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFSNYGIHWVRQAPGKGLEWIGWIYPSGGGTKYAQKFQGRVTISRDNSKNTLYLQLNSLRAEDTAVYYCAREGGGYGYALDYWGQGTLVTVSS(配列番号126)
>B14681-VL
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSVDFHGISFLDWYQQKPGKAPKLLIYDASNRATGIPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYDHWPYTFGQGTKVEIKR(配列番号150)
>B14689-VH
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFSNYGIHWVRQAPGKGLEWIGWIYPSGGGTKYAQKFQGRVTISRDNSKNTLYLQLNSLRAEDTAVYYCAREGGGYGYALDYWGQGTLVTVSS(配列番号126)
>B14689-VL
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSVDFYGKSFLDWYQQKPGKAPKLLIYDASSLESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYDHWPYTFGQGTKVEIKR(配列番号151)
>B14690-VH
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFSNYGIHWVRQAPGKGLEWIGWIYPSGGGTKYAQKFQGRVTISRDNSKNTLYLQLNSLRAEDTAVYYCAREGGGYGYALDYWGQGTLVTVSS(配列番号126)
>B14690-VL
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSVDFHGISFLDWYQQKPGKAPKLLIYDASNLETGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYDSWPYTFGQGTKVEIKR(配列番号152)
>B15012-VH
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYSISSGYYWGWIRQAPGKGLEWIGIIYPSGGGTNYAQKFQGRVTISRDNSKNTLYLQLNSLRAEDTAVYYCARGGGLGFDYWGQGTLVTVSS(配列番号127)
>B15012-VL
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQTIPSFLNWYQQKPGKAPKLLIYAASTLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQHYSSWPRGFTFGQGTKVEIKR(配列番号153)
>B15014-VH
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYSISSGYYWGWIRQAPGKGLEWIGIIYPSGGGTNYAQKFQGRVTISRDNSKNTLYLQLNSLRAEDTAVYYCARGGGLGFDYWGQGTLVTVSS(配列番号127)
>B15014-VL
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDIPKFLAWYQQKPGKAPKLLIYAASTLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQHYVSWPRQFTFGQGTKVEIKR(配列番号154)
>B15016-VH
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYSISSGYYWGWIRQ
APGKGLEWIGIIYPSGGGTNYAQKFQGRVTISRDNSKNTLYLQLNSLRAEDTAVYYCARGGGLGFDYWGQGTLVTVSS(配列番号127)
>B15016-VL
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQTIPSFLNWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQHYTSWPRQFTFGQGTKVEIKR(配列番号155)
>B15022-VH
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYSISSGYYWGWIRQAPGKGLEWIGIIYPSGGGTNYAQKFQGRVTISRDNSKNTLYLQLNSLRAEDTAVYYCARGGGLGFDYWGQGTLVTVSS(配列番号127)
>B15022-VL
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSIPSFLNWYQQKPGKAPKLLIYAASTLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYSSWPRLFTFGQGTKVEIKR(配列番号156)
>B15024-VH
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYSISSGYYWGWIRQAPGKGLEWIGIIYPSGGGTNYAQKFQGRVTISRDNSKNTLYLQLNSLRAEDTAVYYCARGGGLGFDYWGQGTLVTVSS(配列番号127)
>B15024-VL
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSIPTFLNWYQQKPGKAPKLLIYAASTLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQHYVSWPRLFTFGQGTKVEIKR(配列番号157)
>B15041-VH
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYSISSGYYWGWIRQAPGKGLEWIGIIYPSGGGTNYAQKFQGRVTISRDNSKNTLYLQLNSLRAEDTAVYYCARGGGLGFDYWGQGTLVTVSS(配列番号127)
>B15041-VL
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSIPSFLNWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQHYISWPRQFTFGQGTKVEIKR(配列番号158)
>B15074-VH
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYSISSGYYWGWIRQAPGKGLEWIGIIYPSGGGTNYAQKFQGRVTISRDNSKNTLYLQLNSLRAEDTAVYYCARGGGLGFDYWGQGTLVTVSS(配列番号127)
>B15074-VL
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQTIPSFLNWYQQKPGKAPKLLIYAASTLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQHYISWPRVFTFGQGTKVEIKR(配列番号159)
>B15082-VH
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYSISSGYYWGWIRQ
APGKGLEWIGIIYPSGGGTNYAQKFQGRVTISRDNSKNTLYLQLNSLRAEDTAVYYCARGGGLGFDYWGQGTLVTVSS(配列番号127)
>B15082-VL
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQTIPSFLNWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQHYGSWPRRFTFGQGTKVEIKR(配列番号160)
>B13002-VH
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFSNYGIHWVRQAPGKGLEWIGWIYPSGGGTKYAQKFQGRVTISRDNSKNTLYLQLNSLRAEDTAVYYCAREGGGYGYALDYWGQGTLVTVSS(配列番号126)
>B13002-VL
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGVSSYLAWYQQKPGKAPKLLIYDASNLETGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYDAWPYTFGQGTKVEIKR(配列番号161)
>B13004-VH
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFSNYGIHWVRQAPGKGLEWIGWIYPSGGGTKYAQKFQGRVTISRDNSKNTLYLQLNSLRAEDTAVYYCAREGGGYGYALDYWGQGTLVTVSS(配列番号126)
>B13004-VL
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGISPWLAWYQQKPGKAPKLLIYDASNRATGIPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYDSWPYTFGQGTKVEIKR(配列番号162)
>B13005-VH
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFSNYGIHWVRQAPGKGLEWIGWIYPSGGGTKYAQKFQGRVTISRDNSKNTLYLQLNSLRAEDTAVYYCAREGGGYGYALDYWGQGTLVTVSS(配列番号126)
>B13005-VL
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSVSSYLAWYQQKPGKAPKLLIYDASNLETGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYDAWPYTFGQGTKVEIKR(配列番号163)
【0166】
一部の実施形態では、上記の配列の1つまたはより多くは、IgG、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4に変換され得る。例示的なIgG配列は、以下のVHおよび/またはVLを有し得る:
>TY21418-VH
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFSNYGIHWVRQAPGKGLEWIGWIYPSGGGTKYAQKFQGRVTISRDNSKNTLYLQLNSLRAEDTAVYYCAREGGGYGYALDYWGQGTLVTVSS(配列番号126)
>TY21418-VL
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGVSSYLAWYQQKPGKAPKLLIYDASNLETGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQP
EDFATYYCQQYDAWPYTFGQGTKVEIKR(配列番号161)
>TY21419-VH
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFSNYGIHWVRQAPGKGLEWIGWIYPSGGGTKYAQKFQGRVTISRDNSKNTLYLQLNSLRAEDTAVYYCAREGGGYGYALDYWGQGTLVTVSS(配列番号126)
>TY21419-VL
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGISPWLAWYQQKPGKAPKLLIYDASNRATGIPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYDSWPYTFGQGTKVEIKR(配列番号162)
>TY21420-VH
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYSISSGYYWGWIRQAPGKGLEWIGIIYPSGGGTNYAQKFQGRVTISRDNSKNTLYLQLNSLRAEDTAVYYCARGGGLGFDYWGQGTLVTVSS(配列番号127)
>TY21420-VL
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQTIPSFLNWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQHYTSWPRQFTFGQGTKVEIKR(配列番号155)
>TY21421-VH
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYSISSGYYWGWIRQAPGKGLEWIGIIYPSGGGTNYAQKFQGRVTISRDNSKNTLYLQLNSLRAEDTAVYYCARGGGLGFDYWGQGTLVTVSS(配列番号127)
>TY21421-VL
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSIPSFLNWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQHYISWPRQFTFGQGTKVEIKR(配列番号158)
【0167】
一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、以下のHVR領域配列(例えば、IgG中)の1つまたはより多くを含み得る:
>TY21418-HVR_H1
YTFSNYGIHWV(配列番号164)
>TY21418-HVR_H2
IGWIYPSGGGTKYAQKFQGRV(配列番号165)
>TY21418-HVR_H3
AREGGGYGYALDY(配列番号166)
>TY21418-HVR_L1
RASQGVSSYLA(配列番号37)
>TY21418-HVR_L2
DASNLETGV(配列番号64)
>TY21418-HVR_L3
YCQQYDAWPYT(配列番号91)
>TY21419-HVR_H1
YTFSNYGIHWV(配列番号164)
>TY21419-HVR_H2
IGWIYPSGGGTKYAQKFQGRV(配列番号165)
>TY21419-HVR_H3
AREGGGYGYALDY(配列番号166)
>TY21419-HVR_L1
RASQGISPWLA(配列番号38)
>TY21419-HVR_L2
DASNRATGI(配列番号65)
>TY21419-HVR_L3
YCQQYDSWPYT(配列番号92)
>TY21420-HVR_H1
YSISSGYYWGWI(配列番号167)
>TY21420-HVR_H2
IGIIYPSGGGTNYAQKFQGRV(配列番号168)
>TY21420-HVR_H3
ARGGGLGFDY(配列番号169)
>TY21420-HVR_L1
RASQTIPSFLN(配列番号97)
>TY21420-HVR_L2
AASSLQSGV(配列番号106)
>TY21420-HVR_L3
YCQHYTSWPRQFT(配列番号115)
>TY21421-HVR_H1
YSISSGYYWGWI(配列番号167)
>TY21421-HVR_H2
IGIIYPSGGGTNYAQKFQGRV(配列番号168)
>TY21421-HVR_H3
ARGGGLGFDY(配列番号169)
>TY21421-HVR_L1
RASQSIPSFLN(配列番号100)
>TY21421-HVR_L2
AASSLQSGV(配列番号109)
>TY21421-HVR_L3
YCQHYISWPRQFT(配列番号118)
【0168】
ある特定の状況において、全体抗体よりもむしろ抗体断片を使用することに利点がある。より小さい断片サイズは迅速なクリアランスを可能とし、固形腫瘍への向上したアクセスに繋がり得る。
【0169】
抗体断片の生産のために様々な技術が開発されてきた。伝統的に、これらの断片は、インタクトな抗体のタンパク質消化分解を介して得られた(例えば、Morimoto et al., J Biochem Biophys. Method. 24:107-117 (1992);およびBrennan et al., Science 229:81 (1985)を参照)。しかしながら、これらの断片は、現在では、組換え宿主細胞により直接
的に産生することができる。Fab、FvおよびscFv抗体断片は全て、大腸菌において発現および分泌され得るため、大量のこれらの断片の簡易な生産が可能である。抗体断片は、上記の抗体ファージライブラリーから単離することができる。あるいは、Fab’-SH断片は、大腸菌から直接的に回収され、化学的に結合されてF(ab’)2断片を形成し得る(Carter et al., Bio/Technology 10:163-167 (1992))。別のアプローチに
よれば、F(ab’)2断片は、組換え宿主細胞培養物から直接的に単離され得る。増加したin vivo半減期を有するFabおよびF(ab’)2が米国特許第5,869,046号明細書に記載されている。他の実施形態では、選択される抗体は一本鎖Fv断片(scFv)である。国際公開第93/16185号パンフレット;米国特許第5,571,894号明細書および米国特許第5,587,458号明細書を参照のこと。抗体断片はまた、例えば、米国特許第5,641,870号明細書に記載されるような「直鎖状抗体」であってもよい。そのような直鎖状抗体断片は、単一特異性または二重特異性であってもよい。
【0170】
二重特異性および多重特異性抗体
二重特異性抗体(BsAb)は、同じまたは別のタンパク質上のエピトープを含む、少なくとも2つの異なるエピトープに対して結合特異性を有する抗体である。あるいは、一方のアームは標的抗原に結合することができ、別のアームは、標的抗原発現細胞に対する細胞防御機構を集中および局在化させるように、T細胞受容体分子(例えば、CD3)、またはIgGについてFc受容体(FcγR)、例えば、FcγR1(CD64)、FcγRII(CD32)およびFcγRIII(CD16)などの白血球上の誘発性分子に結合するアームと組み合わせられ得る。そのような抗体は、全長抗体または抗体断片(例えば、F(ab’)2二重特異性抗体)に由来し得る。
【0171】
二重特異性抗体はまた、標的抗原を発現する細胞に細胞傷害剤を局在化させるために、使用されてもよい。そのような抗体は、所望の抗原に結合する一方のアーム、および細胞傷害剤(例えば、サポリン、抗インターフェロン-α、ビンカアルカロイド(vinca alkoloid)、リシンA鎖、メトトレキサートまたは放射活性同位体ハプテン)に結合する別のアームを有する。公知の二重特異性抗体の例としては、抗ErbB2/抗FcgRIII(国際公開第96/16673号パンフレット)、抗ErbB2/抗FcgRI(米国特許第5,837,234号明細書)、抗ErbB2/抗CD3(米国特許第5,821,337号明細書)が挙げられる。
【0172】
二重特異性抗体を作製する方法は当該技術分野において公知である。全長二重特異性抗体の従来の作製は2つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖ペアの共発現に基づいており、2つの鎖は異なる特異性を有する。Millstein et al., Nature, 305:537-539 (1983)。免疫グロブリン重鎖および軽鎖のランダムな組合せのため、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、10の異なる抗体分子の潜在的な混合物を産生し、そのうちの1つのみが正しい二重特異性構造を有する。アフィニティークロマトグラフィーステップにより通常行われる正しい分子の精製はかなり面倒であり、生成物の収率は低い。類似した手順が国際公開第93/08829号パンフレットおよびTraunecker et al., EMBO J., 10:3655-3659 (1991)に開示されている。
【0173】
異なるアプローチによれば、所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗体-抗原組合せ部位)は、免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合される。好ましくは、融合物は、ヒンジ、CH2、およびCH3領域の少なくとも一部分を含む、免疫グロブリン重鎖定常ドメインを有する。融合物の少なくとも1つに存在する、軽鎖結合のために必要な部位を含有する第1の重鎖定常領域(CH1)を有することが好ましい。免疫グロブリン重鎖融合物および、所望の場合、免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAは、別々の発現ベクターに挿入され、好適な宿主生物に共トランスフェクトされ(co-transfected)る。これは、構築において使用される3つのポリペプチド鎖の不均等な比率が最適な収率をもたらす場合の実施形態において、3つのポリペプチド断片の相互の割合の調整において大きい柔軟性を提供する。しかしながら、等しい比で少なくとも2つのポリペプチド鎖の発現が高い収率を結果としてもたらす場合、または比が特に意義を持たない場合、1つの発現ベクター中に2つまたは3つ全てのポリペプチド鎖のコーディング配列を挿
入することが可能である。
【0174】
このアプローチの好ましい実施形態では、二重特異性抗体は、一方のアーム中の第1の結合特異性を有するハイブリッド免疫グロブリン重鎖、および他のアーム中のハイブリッド免疫グロブリン重鎖-軽鎖ペア(第2の結合特異性を提供する)から構成される。この非対称構造は、二重特異性分子の1つの半分においてのみ免疫グロブリン軽鎖が存在することにより容易な分離方法が提供されるので、不要な免疫グロブリン鎖の組合せからの所望の二重特異性化合物の分離を容易にする。このアプローチは国際公開第94/04690号パンフレットに開示されている。二重特異性抗体の生成のさらなる詳細については、例えば、Suresh et al., Methods in Enzymology 121: 210 (1986)を参照のこと。
【0175】
国際公開第96/27011号パンフレットまたは米国特許第5,731,168号明細書に記載の別のアプローチによれば、抗体分子のペアの間の境界面は、組換え細胞培養物から回収されるヘテロ二量体のパーセンテージを最大化するように操作され得る。好ましい境界面は、抗体定常ドメインのCH3領域の少なくとも一部分を含む。この方法では、第1の抗体分子の境界面からの1つまたはより多くの小さなアミノ酸側鎖は、より大きい側鎖(例えば、チロシンまたはトリプトファン)で置換される。大きなアミノ酸側鎖をより小さなアミノ酸側鎖(例えば、アラニンまたはスレオニン)で置換することにより、大きな側鎖と同一または類似のサイズの代償的な「空洞(cavities)」が第2の抗体分子の境界面に作製される。これは、ホモ二量体などの他の不要な最終生成物よりもヘテロ二量体の収率を増加させる機序を提供する。
【0176】
抗体断片から二重特異性抗体を生成する技術は文献に記載されている。例えば、二重特異性抗体は、化学的結合を使用して調製され得る。Brennan et al., Science 229: 81 (1985)は、インタクトな抗体がタンパク質分解により切断されてF(ab’)2断片を生成する手順を記載する。ビシナルジチオールを安定化させ、かつ分子間ジスルフィド形成を防止するために、これらの断片はジチオール錯化剤亜ヒ酸ナトリウムの存在下で還元される。生成されたFab’断片は次にチオニトロベンゾエート(TNB)誘導体に変換される。Fab’-TNB誘導体の1つは次にFab’-TNB誘導体に再変換されて二重特異性抗体を形成する。生成された二重特異性抗体は、酵素の選択的固定化用の剤として使用され得る。
【0177】
Fab’断片は、大腸菌から直接的に回収され、化学的に結合されて二重特異性抗体を形成してもよい。Shalaby et al., J. Exp. Med. 175: 217-225 (1992)は、完全ヒト化二重特異性抗体F(ab’)2分子の産生を記載する。各Fab’断片は大腸菌から別々に分泌され、in vitroでの特異的化学的結合に供されて二重特異性抗体を形成した。そのようにして形成された二重特異性抗体は、ErbB2受容体を過剰発現する細胞および正常なヒトT細胞に結合することができた他に、ヒト乳房腫瘍標的に対するヒト細胞傷害性リンパ球の溶解作用を誘発することができた。
【0178】
組換え細胞培養物から直接的に二価抗体断片を作成し単離する様々な技術が記載されている。例えば、二価ヘテロ二量体がロイシンジッパーを使用して作製されている。Kostelny et al., J. Immunol., 148(5):1547-1553 (1992)。FosおよびJunタンパク質か
らのロイシンジッパーペプチドが遺伝子融合により2つの異なる抗体のFab’部分に結合された。抗体ホモ二量体をヒンジ領域において還元して単量体が形成され、次に再酸化して抗体ヘテロ二量体が形成された。Hollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 6444-6448 (1993)に記載された「ダイアボディ」技術は、二重特異性/二価抗体断片を作製するための代替的な機構を提供した。断片は、同じ鎖上で2つのドメイン間のペア形成を可能とするには短すぎるリンカーにより軽鎖可変ドメイン(VL)に接続された重鎖可変ドメイン(VH)を含む。したがって、一方の断片のVHおよびVLドメインは別
の断片の相補的なVLおよびVHドメインとペア形成することを強いられ、それにより、2つの抗原結合部位が形成される。一本鎖Fv(sFv)二量体の使用により二重特異性/二価抗体断片を作製する別の戦略もまた報告されている。Gruber et al., J. Immunol., 152:5368 (1994)を参照のこと。
【0179】
2より大きい価数を有する抗体が想定される。例えば、三重特異性抗体が調製され得る。Tutt et al., J. Immunol. 147: 60 (1991)。
【0180】
例示的な二重特異性抗体は、所与の分子上の2つの異なるエピトープに結合してもよい。あるいは、特定のタンパク質を発現する細胞に細胞防御機構を集中させるように、抗タンパク質アームは、T細胞受容体分子(例えば、CD2、CD3、CD28もしくはB7)、またはIgGについてFc受容体(FcγR)、例えば、FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)およびFcγRIII(CD16)などの白血球上の誘発性分子に結合するアームと組み合わせられてもよい。二重特異性抗体はまた、特定のタンパク質を発現する細胞に細胞傷害剤を局在化させるために使用されてもよい。そのような抗体は、タンパク質結合アームおよび細胞傷害剤または放射性核種キレーター、例えば、EOTUBE、DPTA、DOTAもしくはTETAに結合するアームを有する。目的の別の二重特異性抗体は、目的のタンパク質に結合し、組織因子(TF)にさらに結合する。
【0181】
イムノコンジュゲート
本開示は、がんを治療するための細胞毒または化学療法剤などの治療部分に共役したヒト抗PD-L1抗体(「イムノコンジュゲート」)を包含する。本明細書において使用される場合、「イムノコンジュゲート」という用語は、細胞毒、放射性剤、サイトカイン、インターフェロン、標的もしくはレポーター部分、酵素、毒素、ペプチドもしくはタンパク質または治療剤に化学的または生物学的に結合された抗体を指す。抗体は、その標的に結合できる限り、分子の任意の位置において細胞毒、放射性剤、サイトカイン、インターフェロン、標的もしくはレポーター部分、酵素、毒素、ペプチドまたは治療剤に結合していてもよい。イムノコンジュゲートの例としては、抗体薬物コンジュゲート(antibody drug conjudages)および抗体-毒素融合タンパク質が挙げられる。一実施形態では、剤は、PD-L1に対する第2の異なる抗体であってもよい。ある特定の実施形態では、抗体は、腫瘍細胞またはウイルス感染細胞に特異的な剤に共役していてもよい。抗PD-L1抗体に共役していてもよい治療部分の種類は、治療される状態および達成されるべき所望の治療効果を考慮に入れる。イムノコンジュゲートを形成するために好適な剤の例は当該技術分野において公知であり、例えば、国際公開第05/103081号パンフレットを参照のこと。
【0182】
エフェクター機能工学
例えば、抗体の抗原依存性細胞媒介性細胞傷害性(antigen-dependent cell-mediated cyotoxicity)(ADCC)および/または補体依存性細胞傷害性(CDC)を改変(例
えば、増進または除去)するように、Fcエフェクター機能に関して本開示の抗体を改変することが望ましいことがある。好ましい実施形態では、抗PD-L1抗体のFcエフェクター機能は低減または除去される。これは、抗体のFc領域に1つまたはより多くのアミノ酸置換を導入することにより達成されてもよい。あるいは、またはさらに、システイン残基は、Fc領域に導入されてもよく、それにより、この領域における鎖間ジスルフィド結合形成が可能となる。そのようにして生成されるホモ二量体抗体は、向上した内部移行能力ならびに/または増加した補体媒介性細胞殺傷および抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を有してもよい。Caron et al., J. Exp Med. 176:1191-1195 (1992)およびShopes, B. J. Immunol. 148:2918-2922 (1992)を参照のこと。増進した抗腫瘍活性を有するホ
モ二量体抗体はまた、Wolff et al., Cancer Research 53:2560-2565 (1993)に記載され
るようなヘテロ二官能性クロスリンカーを使用して調製されてもよい。あるいは、二重F
c領域を有し、かつそれにより増進した補体溶解およびADCC能力を有してもよい抗体が設計され得る。Stevenson et al., Anti-Cancer Drug Design 3:219-230 (1989)を参照のこと。
【0183】
抗体の血清半減期を増加させるために、例えば、米国特許第5,739,277号明細書に記載されるように抗体(特に抗体断片)にサルベージ受容体結合エピトープを組み込んでもよい。本明細書において使用される場合、「サルベージ受容体結合エピトープ」という用語は、IgG分子(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4)のin vivo血清半減期の増加に関与するIgG分子のFc領域のエピトープを指す。
【0184】
他のアミノ酸配列改変
本明細書に記載の抗体のアミノ酸配列改変が想定される。例えば、抗体の結合親和性および/または他の生物学的特性を向上させることが望ましいことがある。抗体のアミノ酸配列バリアントは、抗体核酸に適切なヌクレオチド変化を導入すること、またはペプチド合成により調製される。そのような改変としては、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基の欠失および/または挿入および/または置換が挙げられる。最終構築物が所望の特徴を有する限り、最終構築物に達するように欠失、挿入、および置換の任意の組合せが行われる。アミノ酸の変更はまた、グリコシル化部位の数または位置の変化などの、抗体の翻訳後プロセシングを変化させることがある。
【0185】
突然変異誘発のために好ましい位置である抗体のある特定の残基または領域の同定のために有用な方法は、Cunningham and Wells in Science, 244:1081-1085 (1989)に記載さ
れるように「アラニンスキャニング突然変異誘発」と呼ばれる。ここでは、残基または標的残基のグループが同定され(例えば、arg、asp、his、lys、およびgluのような荷電残基)、中性のまたは負に荷電したアミノ酸(最も好ましくはアラニンまたはポリアラニン)により置換され、アミノ酸抗原の相互作用に影響を与える。置換に対する機能的な感受性を実証するアミノ酸位置は次に、置換の部位にさらなるバリアントまたは他のバリアントを導入することにより改良される。そのため、アミノ酸配列の変異を導入するための部位は予め決定されるが、突然変異の性質自体は予め決定される必要はない。例えば、所与の部位における突然変異の性能を解析するために、alaスキャニングまたはランダム突然変異誘発が標的コドンまたは領域において実行され、発現された抗体バリアントが所望の活性についてスクリーニングされる。
【0186】
アミノ酸配列挿入としては、1残基から100またはより多くの残基を含有するポリペプチドまでの長さのアミノおよび/またはカルボキシル末端融合物の他に、単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入が挙げられる。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体または細胞傷害性ポリペプチドに融合した抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入変異体としては、酵素(例えば、ADEPTのため)または抗体の血清半減期を増加させるポリペプチドへの抗体のNまたはC末端に対する融合物が挙げられる。
【0187】
別の種類のバリアントはアミノ酸置換バリアントである。これらのバリアントは、異なる残基により置換された抗体分子中の少なくとも1つのアミノ酸残基を有する。置換突然変異誘発のために最も関心対象となる部位としては超可変領域が挙げられるが、FRの改変もまた想定される。保存的置換を、以下の表1に「好ましい置換」の見出しの下で示す。そのような置換が生物学的活性の変化を結果としてもたらす場合、表1において「例示的な置換」と命名される、またはアミノ酸クラスに関してさらに以下に記載される、より実質的な変化が導入され、生成物がスクリーニングされてもよい。
【表4】
【0188】
抗体の生物学的特性における実質的な改変は、(a)置換の領域におけるポリペプチド骨格の構造、例えば、シート状もしくはらせん状構造、(b)標的部位における分子の電荷もしくは疎水性、または(c)側鎖のバルクの維持において効果が顕著に異なる置換を選択することにより達成される。天然に存在する残基は、共通の側鎖特性に基づいてグループに分けられる:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:Asn、Gln、His、Lys、Arg;
(5)鎖配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro;および
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0189】
非保存的置換は、これらの1つのクラスのメンバーを別のクラスのものに交換することを伴う。
【0190】
抗体の適切なコンフォメーションの維持に関与しない任意のシステイン残基もまた、分子の酸化安定性を向上させかつ異常な架橋を防止するために、一般的にセリンで置換されてもよい。反対に、その安定性を向上させるためにシステイン結合が抗体に付加されてもよい(特に、抗体がFv断片などの抗体断片である場合)。
【0191】
特に好ましい種類の置換バリアントは、親抗体(例えば、ヒト化またはヒト抗体)の1つまたはより多くの超可変領域残基を置換することを伴う。概して、さらなる開発のために選択されることで得られるバリアントは、その生成の由来となる親抗体と比べて向上した生物学的特性を有する。そのような置換バリアントを生成するための簡便なやり方は、ファージディスプレイを使用する親和性成熟を伴う。簡潔に述べれば、いくつかの超可変領域部位(例えば、6~7の部位)が、各部位における全ての可能なアミノ置換を生成するように突然変異される。そのようにして生成される抗体バリアントは、各糸状ファージ粒子内にパッケージングされたM13の遺伝子III生成物への融合物として該粒子から一価の様式で提示される。ファージの提示バリアントは次に、本明細書に開示されるように生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。改変のための候補超可変領域部位を同定するために、アラニンスキャニング突然変異誘発を行って、抗原結合に顕著に寄与する超可変領域残基を同定することができる。あるいは、またはさらに、抗原-抗体複合体の結晶構造を解析して、抗体とその標的(例えば、PD-L1、B7.1)との間の接触点を同定することが有益なことがある。そのような接触残基および隣接する残基は、本明細書に詳述される技術により置換のための候補となる。そのようなバリアントが生成されたら、バリアントのパネルは本明細書に記載されるようなスクリーニングに供され、1つまたはより多くの関連するアッセイにおいて優れた特性を有する抗体は、さらなる開発のために選択されてもよい。
【0192】
抗体の別の種類のアミノ酸バリアントは、抗体の元々のグリコシル化パターンを変化させる。変化させることは、抗体中に見出される1つもしくはより多くの炭水化物部分を欠失させること、および/または抗体中に存在しない1つもしくはより多くのグリコシル化部位を付加することを意味する。
【0193】
抗体のグリコシル化は、通常は、N結合型またはO結合型のいずれかである。N結合型は、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の付着(attachment)を指す。トリペプチド配列アスパラギン-X-セリンおよびアスパラギン-X-スレオニン(Xは、プロリンを除く任意のアミノ酸である)は、アスパラギン側鎖への炭水化物部分の酵素による付着のための認識配列である。そのため、ポリペプチド中のこれらのトリペプチド配列のいずれかの存在は、潜在的なグリコシル化部位を生成する。O結合型グリコシル化は、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリンまたはスレオニンへの糖N-アセチルガラクトサミン(N-aceylgalactosamine)、ガラクトース、またはキシロースの1つの付着を指すが、5-ヒドロキシプロリンまたは5-ヒドロキシリジンもまた使用され得る。
【0194】
抗体へのグリコシル化部位の付加は、便利に、上記のトリペプチド配列の1つまたはより多くを含有するようにアミノ酸配列を改変させることにより達成される(N結合型グリコシル化部位の場合)。改変はまた、元々の抗体の配列への1つまたはより多くのセリンまたはスレオニン残基の付加、またはそれによる置換により為されてもよい(O結合型グリコシル化部位の場合)。
【0195】
本開示の抗体に対するアミノ酸配列バリアントをコードする核酸分子は、当該技術分野において公知の様々な方法により調製される。これらの方法としては、天然源からの単離(天然に存在するアミノ酸配列バリアントの場合)または以前に調製されたバリアントもしくは非バリアントバージョンのオリゴヌクレオチド媒介性(もしくは部位特異的)突然変異誘発、PCR突然変異誘発、およびカセット突然変異誘発による調製が挙げられるがそれに限定されない。
【0196】
他の抗体改変
本開示の抗体は、当該技術分野において公知かつ容易に利用可能な非タンパク質性部分を含有するようにさらに改変され得る。好ましくは、抗体の誘導体化のために好適な部分は水溶性ポリマーである。水溶性ポリマーの非限定的な例としては、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/マレイン酸無水物コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれか)、およびデキストランまたはポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、ならびにこれらの混合物が挙げられるがそれに限定されない。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中でのその安定性のために、製造において利点を有することがある。ポリマーは任意の分子量であってもよく、分岐または非分岐であってもよい。抗体に付着するポリマーの数は変動してもよく、1以上のポリマーが付着する場合、それらは同じ分子または異なる分子であってよい。一般に、誘導体化のために使用されるポリマーの数および/または種類は、向上させるべき抗体の特定の特性または機能、抗体誘導体が定義された条件下での療法において使用されるかどうかなどが挙げられるが、それに限定されない考慮事項に基づいて決定され得る。そのような技術および他の好適な製剤は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Ed., Alfonso Gennaro, Ed., Philadelphia College of Pharmacy and Science (2000)に開示されている。
【0197】
抗体の治療的使用
本開示の抗体は、がん、自己免疫疾患もしくはウイルス感染症などの疾患もしくは障害もしくは状態の治療、予防、および/もしくは寛解のため、ならびに/またはそのような疾患、障害もしくは状態と関連する少なくとも1つの症状を寛解させるために有用である。本開示の一部の実施形態では、本明細書に記載の抗体は、原発性がんまたは再発性がんを患う対象を治療するために有用であり、該がんとしては、例えば、腎細胞癌、前立腺がん、卵巣がん、腎臓がん、結腸直腸がん、胃がん、乳がん、頭頸部がん、非小細胞肺がん、脳がん、多発性骨髄腫、および黒色腫が挙げられる。抗体は、がんの早期ステージまたは後期ステージの症状を治療するために使用されてもよい。一実施形態では、本開示の抗体またはその断片は、転移がんを治療するために使用されてもよい。抗体は、固形腫瘍および血液がんの両方の腫瘍成長の低減または阻害または縮小において有用である。ある特定の実施形態では、抗体は、腫瘍の再発を予防するために使用されてもよい。ある特定の実施形態では、本開示の抗体またはその抗原結合断片を用いる治療は、対象において腫瘍の50%より高い退縮、60%より高い退縮、70%より高い退縮、80%より高い退縮または90%より高い退縮をもたらし得る。ある特定の実施形態では、抗体は、がんを患う対象の生存を増加させるために使用されてもよい。
【0198】
ある特定の実施形態では、本開示の抗体は、慢性ウイルス感染症を患う対象を治療するために有用である。一部の実施形態では、本開示の抗体は、宿主におけるウイルス力価の減少および/または疲弊したT細胞の救済において有用である。一実施形態では、本開示
の抗体またはその抗原結合断片は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはヒトパピローマウイルス(HPV)またはB/C型肝炎ウイルス(HBV/HCV)による感染症を有する患者に治療用量で投与されてもよい。関連する実施形態では、本開示の抗体またはその抗原結合断片は、カニクイザルなどの類人猿対象におけるサル免疫不全ウイルス(SIV)による感染症を治療するために使用されてもよい。別の実施形態では、本開示の抗体またはその断片は、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)による慢性ウイルス感染症を治療するために使用されてもよい。
【0199】
ある特定の実施形態では、本開示の遮断抗体は、がんまたはウイルス感染症を患う対象に治療有効量で投与されてもよい。
【0200】
ある特定の実施形態では、本開示の抗体は、自己免疫疾患を治療するために有用であり、自己免疫疾患としては、円形脱毛症、自己免疫性肝炎、セリアック病、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、橋本病、溶血性貧血、炎症性腸疾患、炎症性ミオパチー、多発性硬化症、原発性胆汁性胆管炎、乾癬、関節リウマチ、強皮症、シェーグレン症候群、全身性ループスエリテマトーデス(systemic lupus erthyematosus)、白斑、自己免疫性膵炎、自己免疫性蕁麻疹、自己免疫性血小板減少性紫斑病、クローン病、I型糖尿病、好酸球性筋膜炎、好酸球性胃腸炎、グッドパスチャー症候群、重症筋無力症、乾癬性関節炎、リウマチ熱、潰瘍性大腸炎、血管炎およびウェゲナー肉芽腫症が挙げられるがそれに限定されない。ある特定の実施形態では、本開示の活性化抗体は、自己免疫疾患を患う対象を治療するために使用されてもよい。
【0201】
本開示の1つまたはより多くの抗体は、疾患または障害の症状または状態の1つまたはより多くの重篤度を緩和しまたは予防しまたは減少させるために投与されてもよい。
【0202】
がん、および慢性ウイルス感染症などの疾患または障害を発生するリスクがある患者に対して予防的に本開示の1つまたはより多くの抗体を使用することもまた本明細書において想定される。
【0203】
本開示のさらなる実施形態では、本発明の抗体は、がん、自己免疫疾患またはウイルス感染症を患う患者を治療するための医薬組成物の調製のために使用される。本開示の別の実施形態では、本発明の抗体は、がん、自己免疫疾患またはウイルス感染症を治療するために有用な、当業者に公知の任意の他の剤または任意の他の療法との補助療法として使用される。
【0204】
併用療法
併用療法は、本開示の抗PD-L1抗体、および、本開示の抗体、または本開示の抗体の生物学的に有効な断片と有利に組み合わせることができる任意の追加の治療剤を含んでもよい。
【0205】
本開示の抗体は、例えば、腎細胞癌、卵巣がん、前立腺がん、結腸直腸がん、非小細胞肺がん、および黒色腫を含むがんを治療するために使用される1つまたはより多くの抗がん薬物または療法と相乗的に組み合わせられてもよい。腫瘍成長を阻害し、かつ/またはがん患者の生存を増進するために、本開示の抗PD-L1抗体を免疫賦活および/または免疫支援療法と組み合わせて使用することが、本明細書において想定される。免疫賦活療法としては、免疫応答を活性化させるために抑制された免疫細胞に対する「ブレーキの解放」または「アクセルを踏むこと」のいずれかにより免疫細胞活性を増大させる直接的な免疫賦活療法が挙げられる。例としては、他のチェックポイント受容体の標的化、ワクチン接種およびアジュバントが挙げられる。免疫支援モダリティーは、免疫原性の細胞死、炎症を促進することにより腫瘍の抗原性を増加させてもよく、または抗腫瘍免疫応答を促
進する他の間接的な効果を有してもよい。
【0206】
例としては、放射線、化学療法、抗血管新生剤、および手術が挙げられる。
【0207】
様々な実施形態では、本開示の1つまたはより多くの抗体は、PD-L1に対する第2の抗体、PD-1に対する抗体(例えば、ニボルマブ)、LAG-3阻害剤、CTLA-4阻害剤(例えば、イピリムマブ)、TIM3阻害剤、BTLA阻害剤、TIGIT阻害剤、CD47阻害剤、別のT細胞共阻害因子もしくはリガンドのアンタゴニスト(例えば、CD-28、2B4、LY108、LAIR1、ICOS、CD160もしくはVISTAに対する抗体)、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)阻害剤、血管内皮増殖因子(VEGF)アンタゴニスト[例えば、「VEGF-トラップ」、例えば、アフリベルセプト、もしくは米国特許第7,087,411号明細書に示されるような他のVEGF阻害性融合タンパク質、もしくは抗VEGF抗体もしくはその抗原結合断片(例えば、ベバシズマブ、もしくはラニビズマブ)もしくはVEGF受容体の小分子キナーゼ阻害剤(例えば、スニチニブ、ソラフェニブ、もしくはパゾパニブ)]、Ang2阻害剤(例えば、ネスバクマブ)、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF3)阻害剤、上皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤(例えば、エルロチニブ、セツキシマブ)、共刺激性受容体に対するアゴニスト(例えば、グルココルチコイド誘導性TNFR関連タンパク質に対するアゴニスト)、腫瘍特異抗原(例えば、CA9、CA125、黒色腫関連抗原3(MAGE3)、癌胎児性抗原(CEA)、ビメンチン、腫瘍M2-PK、前立腺特異的抗原(PSA)、ムチン-1、MART-1、およびCA19-9)に対する抗体、ワクチン(例えば、バチルスカルメット-ゲラン、がんワクチン)、抗原提示を増加させるためのアジュバント(例えば、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)、二重特異性抗体(例えば、CD3xCD20二重特異性抗体、PSMAxCD3二重特異性抗体)、細胞毒、化学療法剤(例えば、ダカルバジン、テモゾロミド、シクロホスファミド、ドセタキセル、ドキソルビシン、ダウノルビシン、シスプラチン、カルボプラチン、ゲムシタビン、メトトレキサート、ミトキサントロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、およびビンクリスチン)、シクロホスファミド、放射線療法、IL-6R阻害剤(例えば、サリルマブ)、IL-4R阻害剤(例えば、デュピルマブ)、IL-10阻害剤、サイトカイン、例えば、IL-2、IL-7、IL-21、およびIL-15、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)(例えば、抗CD19-DM4 ADC、および抗DS6-DM4 ADC)、抗炎症性薬物(例えば、コルチコステロイド、および非ステロイド抗炎症性薬物)、栄養補助食品、例えば、抗酸化剤、またはがんを治療するための任意の緩和ケアと組み合わせて使用されてもよい。ある特定の実施形態では、本開示の抗PD-L1抗体は、抗腫瘍応答を増大するために樹状細胞ワクチン、腫瘍溶解性ウイルス、腫瘍細胞ワクチンなどを含むがんワクチンと組み合わせて使用されてもよい。本開示の抗PD-L1抗体と組み合わせて使用され得るがんワクチンの例としては、黒色腫および膀胱がんに対するMAGE3ワクチン、乳がんに対するMUC1ワクチン、脳がん(多形膠芽腫を含む)に対するEGFRv3(例えば、リンドペピムト)、またはALVAC-CEA(CEA+がんのため)が挙げられる。ある特定の実施形態では、本開示の抗PD-L1抗体は、抗酸化剤などの栄養補助食品またはがんを治療するための任意の緩和ケアと組み合わせて使用されてもよい。
【0208】
ある特定の実施形態では、本開示の抗PD-L1抗体は、長期的に持続する抗腫瘍応答を生成しかつ/またはがんを有する患者の生存を増進する方法において放射線療法と組み合わせて投与されてもよい。一部の実施形態では、本開示の抗PD-L1抗体は、がん患者に放射線療法を投与する前に、同時にまたは後に投与されてもよい。例えば、放射線療法は、腫瘍病変に1つまたはより多くの用量で投与され、続いて本開示の抗PD-L1抗体の1つまたはより多くの用量が投与されてもよい。一部の実施形態では、放射線療法は、患者の腫瘍の局所的な免疫原性を増進するため(アジュバント性放射線(adjuvinating
radiation)および/または腫瘍細胞を殺傷するため(切除性放射線)に腫瘍病変に局所的に投与され、続いて本開示の抗PD-L1抗体が全身投与されてもよい。例えば、頭蓋内放射線は、本開示の抗PD-L1抗体の全身投与と共に脳のがん(例えば、多形膠芽腫)を有する患者に投与されてもよい。ある特定の実施形態では、本開示の抗PD-L1抗体は、放射線療法および化学療法剤(例えば、テモゾロミド)またはVEGFアンタゴニスト(例えば、アフリベルセプト)と組み合わせて投与されてもよい。
【0209】
本開示の抗体またはその断片は、当該技術分野において公知の1つまたはより多くの抗ウイルス薬物と組み合わせて投与されてもよく、該薬物としては、ジドブジン、ラミブジン、アバカビル、リバビリン、ロピナビル、エファビレンツ、コビシスタット、テノホビル、リルピビリンおよびコルチコステロイドが挙げられるがそれに限定されない。一部の実施形態では、本開示の抗PD-L1抗体は、LAG3阻害剤、CTLA-4阻害剤、PD-1阻害剤、または慢性ウイルス感染症を治療するための別のT細胞共阻害因子の任意のアンタゴニストと組み合わせて投与されてもよい。
【0210】
本開示のその断片の抗体(The antibodies of fragments thereof)は、自己免疫疾患
または障害を治療するために当該技術分野において公知の任意の薬物または療法(例えば、コルチコステロイドおよび他の免疫抑制剤)と組み合わせて使用されてもよく、該疾患または障害としては、円形脱毛症、自己免疫性肝炎、セリアック病、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、橋本病、溶血性貧血、炎症性腸疾患、炎症性ミオパチー、多発性硬化症、原発性胆汁性胆管炎、乾癬、関節リウマチ、強皮症、シェーグレン症候群、全身性ループスエリテマトーデス(systemic lupus erthyematosus)、白斑、自己免疫性膵炎、自己免疫性蕁麻疹(autoimmune urticaira)、自己免疫性血小板減少性紫斑病、クローン病、I型糖尿病、好酸球性筋膜炎、好酸球性胃腸炎、グッドパスチャー症候群、重症筋無力症、乾癬性関節炎、リウマチ熱、潰瘍性大腸炎、血管炎およびウェゲナー肉芽腫症が挙げられるがそれに限定されない。
【0211】
追加の治療活性成分は、本開示の抗PD-L1抗体の投与の前に、同時に、または後に投与されてもよい。本開示の目的のために、そのような投与レジメンは、第2の治療活性成分と「組み合わせた」抗PD-L1抗体の投与と考えられる。
【0212】
追加の治療活性成分は、本開示の抗PD-L1抗体の投与の前に対象に投与されてもよい。例えば、第1の成分が第2の成分の投与の1週間前、72時間前、60時間前、48時間前、36時間前、24時間前、12時間前、6時間前、5時間前、4時間前、3時間前、2時間前、1時間前、30分前、15分前、10分前、5分前、または1分未満の前に投与される場合に、第1の成分は第2の成分の「前に」投与されるとみなすことができる。他の実施形態では、追加の治療活性成分は、本開示の抗PD-L1抗体の投与の後に対象に投与されてもよい。例えば、第1の成分が第2の成分の投与の1分後、5分後、10分後、15分後、30分後、1時間後、2時間後、3時間後、4時間後、5時間後、6時間後、12時間後、24時間後、36時間後、48時間後、60時間後、72時間後に投与される場合に、第1の成分は第2の成分の「後に」投与されるとみなすことができる。さらに他の実施形態では、追加の治療活性成分は、本開示の抗PD-L1抗体の投与と同時に対象に投与されてもよい。「同時」投与は、本開示の目的のために、例えば、単一の剤形(例えば、共配合)、または互いに約30分もしくはそれ未満の時間内に対象に投与される別々の投与形態での対象への抗PD-L1抗体および追加の治療活性成分の投与を含む。別々の剤形で投与される場合、各剤形は同じ経路を介して投与されてもよく(例えば、抗PD-L1抗体および追加の治療活性成分の両方は、静脈内、皮下などに投与されてもよい)、あるいは、各剤形は、異なる経路を介して投与されてもよい(例えば、抗PD-L1抗体は静脈内に投与されてもよく、かつ、追加の治療活性成分は皮下に投与されてもよい)。いずれの場合にも、単一の剤形(single dosage from)、同じ経路による
別々の剤形、または異なる経路による別々の剤形での成分の投与は全て、本開示の目的のために「同時投与」と考えられる。本開示の目的のために、追加の治療活性成分の投与の「前」、「同時」または「後」(これらの用語は本明細書において上記に定義される通りである)の抗PD-L1抗体の投与は、追加の治療活性成分と「組み合わせた」抗PD-L1抗体の投与と考えられる)。
【0213】
本開示は、本開示の抗PD-L1抗体が、様々な投与量の組合せを使用して本明細書の他の箇所において記載されるような追加の治療活性成分の1つまたはより多くと共配合された医薬組成物を含む。
【0214】
抗PD-L1抗体およびVEGFアンタゴニストを含む共製剤(co-formulation)の投与を含む、本開示の抗PD-L1抗体がVEGFアンタゴニスト(例えば、アフリベルセプトなどのVEGFトラップ)と組み合わせて投与される例示的な実施形態では、個々の成分は、様々な投与量の組合せを使用して対象に投与されかつ/または共配合されてもよい。例えば、抗PD-L1抗体は、0.01mg、0.02mg、0.03mg、0.04mg、0.05mg、0.1mg、0.2mg、0.3mg、0.4mg、0.5mg、0.6mg、0.7mg、0.8mg、0.9mg、1.0mg、1.5mg、2.0mg、2.5mg、3.0mg、3.5mg、4.0mg、4.5mg、5.0mg、6.0mg、7.0mg、8.0mg、9.0mg、および10.0mgからなる群から選択される量で対象に投与されかつ/または共製剤中に含有されてもよく、かつ、VEGFアンタゴニスト(例えば、アフリベルセプトなどのVEGFトラップ)は、0.1mg、0.2mg、0.3mg、0.4mg、0.5mg、0.6mg、0.7mg、0.8mg、0.9mg、1.0mg、1.1mg、1.2mg、1.3mg、1.4mg、1.5mg、1.6mg、1.7mg、1.8mg、1.9mg、2.0mg、2.1mg、2.2mg、2.3mg、2.4mg、2.5mg、2.6mg、2.7mg、2.8mg、2.9mgおよび3.0mgからなる群から選択される量で対象に投与されかつ/または共製剤中に含有されてもよい。組合せ/共製剤は、本明細書の他の箇所において開示される任意の投与レジメンにしたがって対象に投与されてもよく、これには、例えば、週に2回、毎週1回、2週毎に1回、3週毎に1回、毎月1回、2か月毎に1回、3か月毎に1回、4か月毎に1回、5か月毎に1回、6か月毎に1回などが含まれる。
【0215】
抗体の診断的使用
本開示の抗PD-L1抗体は、例えば診断目的のために、試料中のPD-L1を検出および/または測定するために使用されてもよい。一部の実施形態は、がん、自己免疫疾患または慢性ウイルス感染症などの疾患または障害を検出するためのアッセイにおける本開示の1つまたはより多くの抗体の使用を想定する。PD-L1についての例示的な診断アッセイは、例えば、患者から得られた試料を本開示の抗PD-L1抗体と接触させることを含んでもよく、抗PD-L1抗体は、検出可能な標識もしくはレポーター分子を用いて標識されるか、または患者試料からPD-L1を選択的に単離するための捕捉リガンドとして使用される。あるいは、非標識の抗PD-L1抗体が、それ自体が検出可能に標識された二次抗体と組み合わせて診断用途において使用され得る。検出可能な標識またはレポーター分子は、放射性同位体、例えば、3H、14C、32P、35S、もしくは125l;蛍光もしくは化学発光部分、例えば、フルオレセインイソチオシアネート、もしくはローダミン;または酵素、例えば、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、もしくはルシフェラーゼであり得る。試料中のPD-L1を検出または測定するために使用され得る特定の例示的なアッセイとしては、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、および蛍光活性化細胞選別(FACS)が挙げられる。
【0216】
本開示によるPD-L1診断アッセイにおいて使用することができる試料としては、正常または病的状態下の、検出可能な量のPD-L1タンパク質、またはその断片のいずれかを含有する、患者から得られ得る任意の組織または液体試料が挙げられる。
【0217】
概して、健常患者(例えば、がんまたは自己免疫疾患に罹患していない患者)から得られた特定の試料中のPD-L1のレベルが測定されて、PD-L1のベースラインまたは標準レベルが最初に確立される。PD-L1のこのベースラインレベルは次に、がん関連状態、またはそのような状態と関連する症状を有することが疑われる個体から得られた試料中で測定されたPD-L1のレベルに対して比較され得る。
【0218】
PD-L1に特異的な抗体は、追加の標識および部分のいずれも含有しなくてもよく、またはN末端もしくはC末端の標識もしくは部分を含有してもよい。一実施形態では、標識または部分はビオチンである。結合アッセイにおいて、標識(存在する場合)の位置は、ペプチドが結合した表面に対するペプチドの配向を決定し得る。例えば、表面がアビジンでコーティングされている場合、N末端ビオチンを含有するペプチドは、ペプチドのC末端部分が表面に対して遠位となるように配向している。
【0219】
本開示の態様は、患者においてがんまたは自己免疫障害の予後を予測するためのマーカーとしての開示される抗体の使用に関する。本開示の抗体は、患者においてがんの予後を評価するため、および生存を予測するための診断アッセイにおいて使用されてもよい。
【0220】
薬学的製剤
治療用製剤は、所望の程度の純度を有する活性成分を、任意の薬学的に許容される担体、賦形剤または安定化剤と混合することにより貯蔵のために調製される(Remington: The
Science and Practice of Pharmacy, 20th Ed., Lippincott Williams & Wiklins, Pub., Gennaro Ed., Philadelphia, Pa. 2000)。許容される担体、賦形剤、または安定化剤
は、用いられる投与量および濃度においてレシピエントに対して非毒性であり、緩衝剤、酸化防止剤、例えば、アスコルビン酸、メチオニン、ビタミンE、ピロ亜硫酸ナトリウム;防腐剤、等張化剤、安定化剤、金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);キレート剤、例えば、EDTAおよび/または非イオン性界面活性剤を含む。
【0221】
治療剤が抗体断片である場合、標的タンパク質の結合ドメインに特異的に結合する最小の阻害断片が好ましい。例えば、抗体の可変領域配列に基づいて、標的タンパク質配列に結合する能力を保持する抗体断片、またはさらにはペプチド分子が設計され得る。そのようなペプチドは、化学的に合成され得かつ/または組換えDNA技術により製造され得る(例えば、Marasco et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 7889-7893 [1993]を参照
)。
【0222】
特に安定性がpH依存的である場合に、治療効果を最適化する範囲内にpHを制御するために緩衝剤が使用される。緩衝剤は、好ましくは、約50mM~約250mMの範囲内の濃度において存在する。本開示と共に使用するための好適な緩衝化剤としては、有機酸および無機酸の両方ならびにその塩が挙げられる。例えば、クエン酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、酢酸塩である。さらに、緩衝剤は、ヒスチジンおよびトリメチルアミン塩、例えば、トリスを含んでもよい。
【0223】
防腐剤は、微生物増殖を遅らせるために添加され、通常は、0.2%~1.0%(w/v)の範囲内で存在する。本開示と共に使用するための好適な防腐剤としては、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;ベンザルコニウムハロゲン化物(例えば、塩化物、臭化物、ヨウ化物)、塩化ベンゼトニウム;チメロサー
ル、フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチルまたはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール、3-ペンタノール、およびm-クレゾールが挙げられる。
【0224】
「安定化剤」として知られることもある等張化剤は、組成物中の液体の浸透圧を調整または維持するために存在する。タンパク質および抗体などの大きい荷電性生体分子と共に使用される場合、それらはしばしば「安定化剤」と称され、その理由は、それらはアミノ酸側鎖の荷電性基と相互作用し、それにより、分子間および分子内相互作用の可能性を減少させることができるからである。等張化剤は、他の成分の相対量を考慮に入れて、0.1%~25重量%、好ましくは1~5%の任意の量で存在し得る。好ましい等張化剤としては、多価糖アルコール、好ましくは、三価またはより高い価数の糖アルコール、例えば、グリセリン、エリスリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトールおよびマンニトールが挙げられる。
【0225】
追加の賦形剤としては、以下:(1)充填剤、(2)溶解性増進剤、(3)安定化剤、および(4)および変性または容器壁への付着を防止する剤の1つまたはより多くとして働くことができる剤が挙げられる。そのような賦形剤としては、多価糖アルコール(上記に列挙したもの);アミノ酸、例えば、アラニン、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、リジン、オルニチン、ロイシン、2-フェニルアラニン、グルタミン酸、スレオニンなど;有機糖または糖アルコール、例えば、スクロース、ラクトース、ラクチトール、トレハロース、スタキオース、マンノース、ソルボース、キシロース、リボース、リビトール、ミオイニシトース(myoinisitose)、ミオイノシトール、ガラクトース、ガラクチトール、グリセロール、シクリトール(例えば、イノシトール)、ポリエチレングリコール;硫黄含有還元剤、例えば、尿素、グルタチオン、チオクト酸、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリセロール、α-モノチオグリセロールおよびチオ硫酸ナトリウム;低分子量タンパク質、例えば、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ゼラチンまたは他の免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;単糖(例えば、キシロース、マンノース、フルクトース、グルコース;二糖(例えば、ラクトース、マルトース、スクロース);三糖、例えば、ラフィノース;ならびに多糖、例えば、デキストリンまたはデキストランが挙げられる。
【0226】
非イオン性界面活性剤または洗浄剤(「湿潤剤」としても公知)は、治療剤の可溶化を助ける他に、撹拌誘導性の凝集から治療用タンパク質を保護するために存在し、それはまた、活性の治療用タンパク質または抗体の変性を引き起こすことなく製剤がせん断表面応力に曝露されることを可能とする。非イオン性界面活性剤は、約0.05mg/ml~約1.0mg/ml、好ましくは約0.07mg/ml~約0.2mg/mlの範囲内で存在する。
【0227】
好適な非イオン性界面活性剤としては、ポリソルベート(20、40、60、65、80など)、ポロキサマー(184、188など)、PLURONIC(登録商標)ポリオール、TRITON(登録商標)、ポリオキシエチレンソルビタンモノエーテル(TWEEN(登録商標)-20、TWEEN(登録商標)-80など)、ラウロマクロゴール400、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン水添ヒマシ油10、50および60、モノステアリン酸グリセロール、スクロース脂肪酸エステル、メチルセルロース(methyl celluose)ならびにカルボキシメチルセルロースが挙げられる。使用され得る
陰イオン界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ジオクチル(dioctyle)ソジウムスルホサクシネートおよびジオクチルソジウムスルホネートが挙げられる。陽イオン界面活性剤としては、塩化ベンザルコニウムまたは塩化ベンゼトニウムが挙げられる。
【0228】
製剤がin vivo投与のために使用されるためには、それらは無菌でなければなら
ない。製剤は、無菌濾過膜を通じた濾過により無菌とされてもよい。本明細書における治療用組成物は、概して、無菌アクセスポートを有する容器、例えば、皮下注射針により貫通可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグまたはバイアルに入れられる。
【0229】
投与の経路は、公知の許容される方法によるものであり、それは例えば、好適な方式での長期間にわたる単回または複数回ボーラスまたは注入によるもの、例えば、皮下、静脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内、病巣内もしくは関節内経路による注射もしくは注入、外用投与、吸入、または徐放性手段もしくは持続放出性手段によるものである。
【0230】
本明細書における製剤はまた、治療されている特定の適応症のために必要に応じて1つより多くの活性化合物、好ましくは、互いに悪影響を及ぼさない相補的な活性を有するものを含有してもよい。あるいは、またはさらに、組成物は、細胞傷害剤、サイトカインまたは増殖阻害剤を含んでもよい。そのような分子は、意図される目的に有効な量で組合せて好適に存在する。
【0231】
活性成分はまた、例えば、コアセルベーション(coascervation)技術によりもしくは
界面重合により調製されるマイクロカプセル中に、例えば、それぞれヒドロキシメチルセルロースもしくはゼラチンマイクロカプセルおよびポリ(メチルメタクリレート(methylmethacylate))マイクロカプセル中に、コロイド薬物送達システム(例えば、リポソー
ム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子およびナノカプセル)中に、またはマクロエマルション中に捕捉されてもよい。そのような技術は、上掲のRemington's Pharmaceutical Sciences 18th editionに開示されている。
【0232】
本明細書に記載のタンパク質および抗体の安定性は、非毒性の「水溶性多価金属塩」の使用を通じて増進されてもよい。例としては、Ca2+、Mg2+、Zn2+、Fe2+、Fe3+、Cu2+、Sn2+、Sn4+、Al2+およびAl3+が挙げられる。上記の多価金属陽イオンと水溶性塩を形成できる例示的な陰イオンとしては、無機酸および/または有機酸から形成されるものが挙げられる。そのような水溶性塩は、少なくとも約20mg/ml、あるいは少なくとも約100mg/ml、あるいは少なくとも約200mg/mlの水(20℃)中での溶解度を有する。
【0233】
「水溶性多価金属塩」を形成するために使用され得る好適な無機酸としては、塩酸、酢酸、硫酸、硝酸、チオシアン酸およびリン酸が挙げられる。使用され得る好適な有機酸としては、脂肪族カルボン酸および芳香族酸が挙げられる。この定義内の脂肪族酸は、飽和または不飽和C2~9カルボン酸(例えば、脂肪族モノ、ジおよびトリカルボン酸)として定義されてもよい。例えば、この定義内の例示的なモノカルボン酸としては、飽和C2~9モノカルボン酸である酢酸、プロピオン酸(proprionic)、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸 ペラルゴン酸およびカプリン酸(capryonic)、ならびに
不飽和C2~9モノカルボン酸であるアクリル酸、プロピオール酸(propriolic) メタクリル酸、クロトン酸およびイソクロトン酸が挙げられる。例示的なジカルボン酸としては、飽和C2~9ジカルボン酸であるマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸およびピメリン酸が挙げられ、不飽和C2~9ジカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸およびメサコン酸が挙げられる。例示的なトリカルボン酸としては、飽和C2~9トリカルボン酸であるトリカルバリル酸および1,2,3-ブタントリカルボン酸が挙げられる。さらに、この定義のカルボン酸はまた、ヒドロキシカルボン酸を形成するために1または2つのヒドロキシル基を含有してもよい。例示的なヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、乳酸、グリセリン酸、タルトロン酸、リンゴ酸、酒石酸およびクエン酸が挙げられる。この定義内の芳香族酸としては、安息香酸およびサリチル酸が挙げられる。
【0234】
本開示のカプセル化ポリペプチドの安定化を助けるために使用されてもよい一般的に用いられる水溶性多価金属塩としては、例えば、(1)ハロゲン化物(例えば、塩化亜鉛、塩化カルシウム)、硫酸、硝酸、リン酸およびチオシアン酸の無機酸金属塩;(2)脂肪族カルボン酸金属塩(例えば、酢酸カルシウム、酢酸亜鉛、プロピオン酸カルシウム(calcium proprionate)、グリコール酸亜鉛、乳酸カルシウム、乳酸亜鉛および酒石酸亜鉛
);ならびに(3)安息香酸(例えば、安息香酸亜鉛)およびサリチル酸の芳香族カルボン酸金属塩が挙げられる。
【0235】
薬学的投与量
本開示の薬学的組成物の投与量および所望の薬物濃度は、想定される特定の用途に依存して変化し得る。適切な投与量または投与経路の決定は、充分に当業者の技術的範囲内である。動物実験は、ヒト療法のための有効量の決定のための信頼できるガイダンスを提供する。有効量の種間スケーリングは、Mordenti, J. and Chappell, W. “The Use of Interspecies Scaling in Toxicokinetics,” In Toxicokinetics and New Drug Development, Yacobi et al., Eds, Pergamon Press, New York 1989, pp. 42-46により規定された
原則にしたがって行うことができる。
【0236】
本明細書に記載のポリペプチドまたは抗体のin vivo投与が使用される場合、通常の投与量は、投与の経路に依存して、1日当たり哺乳動物の体重1kg当たり約10ngから約100mgまで、好ましくは約1mg/kg/日~10mg/kg/日で変動し得る。特定の投与量および送達の方法に関するガイダンスは文献中に提供されている。例えば、米国特許第4,657,760号明細書、同第5,206,344号明細書、または同第5,225,212号明細書を参照のこと。異なる製剤が異なる治療および異なる障害のために効果的であること、ならびに特定の臓器または組織を治療することが意図される投与は、別の臓器または組織への投与とは異なる方式での送達を必要とし得ることは、本開示の範囲内である。さらに、投与量は、1つもしくはより多くの別々の投与により、または連続注入により投与されてもよい。数日またはより長い期間にわたる繰返しの投与では、状態に応じて、治療は、疾患症状の所望の抑制が起こるまで持続される。しかしながら、他の投与量レジメンが有用なことがある。この療法の経過は、従来技術およびアッセイにより容易にモニターされる。
【0237】
製剤の投与
再調製製剤および液体製剤が挙げられるがそれに限定されない本開示の製剤は、公知の方法、例えば、ボーラスとしてもしくは期間にわたる連続注入による静脈内投与、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内(intracerobrospinal)、皮下、関節内、滑液嚢内、髄腔内、経口、外用、または吸入経路によって、抗PD-L1抗体を用いる治療を必要とする哺乳動物、好ましくはヒトに投与される。
【0238】
好ましい実施形態では、製剤は、皮下(すなわち、皮膚下)投与により哺乳動物に投与される。そのような目的のために、製剤は、シリンジを使用して注射されてもよい。しかしながら、製剤の投与のための他のデバイスが利用可能であり、これは例えば、注射デバイス(例えば、INJECT-EASE(商標)およびGENJECT(商標)デバイス);インジェクターペン(例えば、GENPEN(商標));オートインジェクターデバイス、無針デバイス(例えば、MEDIJECTOR(商標)およびBIOJECTOR(商標));ならびに皮下パッチ送達システムである。
【0239】
特定の実施形態では、本開示は、単回用量投与ユニットのためのキットを対象とする。そのようなキットは、単一または複数の両方のチャンバーの事前充填シリンジを含む、治療用タンパク質または抗体の水性製剤の容器を含む。例示的な事前充填シリンジは、Vetter GmbH、Ravensburg、Germanyから入手可能である。
【0240】
タンパク質の適切な投与量(「治療有効量」)は、例えば、治療される状態、状態の重篤度および経過、タンパク質が予防目的または治療目的のいずれのために投与されるのか、以前の療法、患者の臨床歴および抗PD-L1抗体に対する応答、使用される製剤のフォーマット、ならびに主治医の自由裁量に依存する。抗PD-L1抗体は、好適には、1回または一連の治療にわたり患者に投与され、診断後の任意の時点において患者に投与されてもよい。抗PD-L1抗体は、単独の治療としてまたは問題とする状態の治療において有用な他の薬物もしくは療法と組み合わせて投与されてもよい。
【0241】
抗PD-L1抗体について、初期候補投与量は、患者への投与のために約0.1~20mg/kgの範囲に及ぶことができ、これは、1つまたはより多くの別々の投与の形態をとることができる。しかしながら、他の投与量レジメンが有用なことがある。そのような療法の経過は、従来技術により容易にモニターされる。
【0242】
本開示のある特定の実施形態によれば、抗PD-LI抗体(または抗PD-L1抗体と本明細書に記載の任意の追加の治療活性剤との組合せを含む医薬組成物)の複数の用量は、定義された時間経過にわたり対象に投与されてもよい。本開示のこの態様による方法は、本開示の抗PD-L1抗体の複数の用量を対象に逐次的に投与することを含む。本明細書において使用される場合、「逐次的に投与する」は、抗PD-L1抗体の各用量が異なる時点、例えば、予め決定された間隔(例えば、数時間、数日、数週間または数ヶ月)で区切られた異なる日に対象に投与されることを意味する。本開示は、抗PD-L1抗体の単一の開始用量、続いて抗PD-LI抗体の1つまたはより多くの二次用量、および任意に、続いて抗PD-L1抗体の1つまたはより多くの三次用量を患者に逐次的に投与することを含む方法を含む。抗PD-L1抗体は、0.1mg/kg~約100mg/kgの用量で投与されてもよい。
【0243】
「開始用量」、「二次用量」、および「三次用量」という用語は、本開示の抗PD-L1抗体の投与の時間的順序を指す。そのため、「開始用量」は、治療レジメンの始めに投与される用量(「ベースライン用量」とも称される)であり、「二次用量」は、開始用量の後に投与される用量であり、「三次用量」は、二次用量の後に投与される用量である。開始用量、二次用量、および三次用量は全て、同じ量の抗PD-L1抗体を含有してもよいが、概して、投与の頻度の観点で互いに異なってもよい。しかしながら、ある特定の実施形態では、開始用量、二次用量および/または三次用量に含有される抗PD-L1抗体の量は、治療の経過の間に互いから変更される(例えば、適宜に増加または減少させるように調整される)。ある特定の実施形態では、2またはより多く(例えば、2、3、4、または5)の用量が「負荷用量」として治療レジメンの始めに投与され、続いてより低い頻度でその後の用量が投与される(例えば、「維持用量」)。
【0244】
本開示のある特定の例示的な実施形態では、各二次用量および/または三次用量は、直前の用量の1~26(例えば、1、1 1/2、2、2 1/2、3、3 1/2、4、4 1/2、5、5 1/2、6、6 1/2、7、7 1/2、8、8 1/2、9、9 1/2、10、10 1/2、11、11 1/2、12、12 1/2、13、13 1/2、14、14 1/2、15、15 1/2、16、16 1/2、17、17 1/2、18、18 1/2、19、19 1/2、20、20 1/2、21、21 1/2、22、22 1/2、23、23 1/2、24、24 1/2、25、25 1/2、26、26 1/2、またはより長い)週後に投与される。「直前の用量」という語句は、本明細書において使用される場合、複数の投与の順序において、間に介在する投与なしで順序のすぐ次の用量の投与の前に患者に投与された抗PD-L1抗体の用量を意味する。
【0245】
本開示のこの態様による方法は、抗PD-L1抗体の任意の数の二次用量および/または三次用量を患者に投与することを含んでもよい。例えば、ある特定の実施形態では、単一の二次用量のみが患者に投与される。他の実施形態では、2またはより多く(例えば、2、3、4、5、6、7、8、またはより多く)の二次用量が患者に投与される。同様に、ある特定の実施形態では、単一の三次用量のみが患者に投与される。他の実施形態では、2またはより多く(例えば、2、3、4、5、6、7、8、またはより多く)の三次用量が患者に投与される。
【0246】
複数の二次用量を伴う実施形態では、各二次用量は、他の二次用量と同じ頻度で投与されてもよい。例えば、各二次用量は、直前の投与の1~2週または1~2か月後に患者に投与されてもよい。同様に、複数の三次用量を伴う実施形態では、各三次用量は、他の三次用量と同じ頻度で投与されてもよい。例えば、各三次用量は、直前の投与の2~12週後に患者に投与されてもよい。本開示のある特定の実施形態では、二次用量および/または三次用量が患者に投与される頻度は、治療レジメンの経過にわたり変動することができる。投与の頻度はまた、臨床検査後に個々の患者の必要性に依存して医師により治療の経過の間に調整されてもよい。
【0247】
本開示は、2~6の負荷用量が第1の頻度(例えば、週に1回、2週毎に1回、3週毎に1回、月に1回、2か月毎に1回など)において患者に投与され、続いてより低い頻度で2つまたはより多くの維持用量が患者に投与される投与レジメンを含む。例えば、本開示のこの態様によれば、負荷用量が例えば月に1回の頻度で投与される(例えば、2、3、4、またはより多くの負荷用量が月に1回投与される)場合、維持用量は、5週毎に1回、6週毎に1回、7週毎に1回、8週毎に1回、10週毎に1回、12週毎に1回などで患者に投与されてもよい)。
【0248】
製品
本開示の別の実施形態では、製剤を含有し、好ましくは、その使用のための指示を提供する、製品が提供される。製品は容器を含む。好適な容器としては、例えば、ボトル、バイアル(例えば、デュアルチャンバーバイアル)、シリンジ(例えば、シングルまたはデュアルチャンバーシリンジ)および試験チューブが挙げられる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの様々な材料から形成されてもよい。容器は製剤を保持する。容器に貼られた、または容器に関連するラベルは、再調製および/または使用のための指示を指し示してもよい。ラベルは、製剤は、皮下投与のため、および/またはT細胞機能不全障害の治療のために有用または意図されることをさらに指し示してもよい。製剤を保持する容器は、再調製製剤の繰返し投与(例えば、2~6回の投与)を可能とする、複数回使用バイアルであってもよい。製品は、好適な希釈剤(例えば、BWFI)を含む第2の容器をさらに含んでもよい。希釈剤と凍結乾燥製剤を混合すると、再調製製剤中のタンパク質の終濃度は、概して、少なくとも50mg/mlとなる。製品は、商用およびユーザーの見地から望ましい他の材料をさらに含んでもよく、これには、他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、および使用のための指示を含む添付文書が含まれる。
【0249】
本開示は、以下の実施例を参照することによってより充分に理解される。しかしながら、それらは、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。本開示を通じた全ての引用は、参照することにより本明細書に明示的に組み込まれる。
【0250】
別の実施形態では、本開示は、オートインジェクターデバイスにおける投与のために本明細書に記載の製剤を含む製品を提供する。オートインジェクターは、作動されると、患者または管理者からの追加の行為を必要とせずにその内容物を送達する注射デバイスとして記載され得る。それらは、送達速度が一定でなければならず、かつ送達時間が数秒より長い場合に、治療用製剤のセルフメディケーションのために特に適する。
【実施例】
【0251】
実施例1
PD-L1に特異的に結合する一次Fabの発見
私有のファージミドライブラリーを用いてヒト抗原PD-L1-His(Sino Biological # 10084-H08H)に対するパニングを行った。抗原をビオチン化し、製造業者の指示にしたがってKingFisher(Thermo Scientific)を通じたパニングのためにDynabeads(M280、Streptavidin、Invitrogen #60210)により捕捉した。標準的なファージパニングプロトコールを処理において用いた。3~4ラウンドのパニングを実行し、次に単一コロニー上清ELISAを行って、ヒトPD-L1に結合する一次Fabを同定した。一次ヒットは、そのELISAシグナルがバックグラウンドの少なくとも2倍であるものとして定義した。計960のクローンを上清ELISA分析のために選び、特有の配列を有する101のクローンが発見された。これらの特有の一次ヒットは、Fab ELISAアッセイに基づいて2つの群に分離することができ、1つの群はヒトPD-L1に特異的であり、他の群はヒトPD-L1およびマウスPD-L1の両方と交差反応する。ほとんどの一次ヒットのKDは、バイオレイヤー干渉法(BLI)アッセイによる測定で0.5nM~10nMの範囲に及んだ。
【0252】
KD値は、同じ抗体を用いる異なる測定方法において、10~20%異なり得ることに留意すべきである。KDにおける差異はまた、PD-L1の単量体または二量体形態の結果としてもたらされた可能性がある。驚くべきことに、PD-L1-Fc(二量体と推定される)をチップ表面に固定化した場合、同じアッセイにおける従来の抗体と比較して有意により高い親和性(<15pM)が観察された。
【0253】
7つの交差反応性ヒットおよび5つのヒト特異的ヒットからなる12の一次ヒットを、軽鎖シャッフリングを通じたさらなる親和性成熟のために選択した。親和性成熟は、ファージディスプレイまたは酵母ディスプレイを通じて行った。PD-L1に対して増進した親和性を有する計36のヒットを同定し、それらを2つの群に分離した。27のFabヒットを含む1つの群はヒトPD-L1に結合し(後にサルPD-L1にも結合することが確認された)、9のFabヒットを含む他の群はヒトおよびマウスからのPD-L1に結合する(後にサルPD-L1にも結合することが確認された)。特有のヒットに対応するFabを大腸菌において発現させ、精製した。ヒトまたはマウスPD-L1に対するそれらの親和性をBLIアッセイにより測定した。簡潔に述べれば、AHCセンサー(Anti-Human IgG Fc Capture Dip and Read Biosensors)を使用してPD-L1-Fc融合タンパク質(Sino Biological Cat# 10084-H02H)を捕捉し、キネティック緩衝液(10mMのHEPES、150mMのNaCl、3mMのEDTA、0.005% v/vのSurfactant P20、pH7.4)を用いて5~10μg/mlに希釈した精製されたFabを含有するウェルに浸した。取得したデータをData Acquisition software 7.1を用いて処理し、速度論的データを1:1ラングミュア結合モデルにフィッティングした。親和性および速度論的パラメーター(バックグラウンドを差し引いたもの)を表2に列記する。全てのVHおよびVLのアミノ酸配列を配列番号126~163に示す。
【0254】
27のFabヒットの群はヒトおよびサルPD-L1に結合する。それらは同一のVH(配列番号126)を有するが、異なるVLを有する。
【0255】
9のFabヒットの群はヒト、サルおよびマウスからのPD-L1に結合し、それらは同一のVH(配列番号127)を有するが、異なるVLを有する。
【表5】
【0256】
実施例2
IgG変換および発現:TY21418、TY21419、TY21420およびTY21421
4つのFab、B13002、B13004、B15016、およびB15041を選択してIgG1に変換した。それらの2つ(B13002およびB13004)はヒトP
D-L1に特異的であり、他の2つ(B15016およびB15041)はヒトおよびマウスPD-L1と交差反応性を示した。それらの重鎖および軽鎖をIgG1アイソタイプにおいて哺乳動物発現ベクターpCDNA3.3(Thermo Fisher Scientific cat# K830001)に別々にクローニングした。参照抗体(YW243.55.S70)の重鎖および軽鎖もまた、IgG1アイソタイプにおいてpCDNA3.3にクローニングした(参考文献米国特許第8217149B2号明細書(Genentech) Anti-PD-L1 antibodies, compositions and articles of manufacture)。ここで使用したIgGを表3に示す。
>米国特許第8217149B2号明細書からのYW243.55.S70_VH
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSA(配列番号170)
>米国特許第8217149B2号明細書からのYW243.55.S70_VL
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKR(配列番号171)
【表6】
【0257】
プラスミドのペアをHEK293F細胞に一過的にトランスフェクトした。6日後に上清を回収し、遠心分離および濾過により清澄化し、標準的なプロテインAアフィニティークロマトグラフィー(MabSelect SuRe、GE Healthcare)を用いてIgGを精製した。IgGを溶出させ、中和し、PB緩衝液(20mMのリン酸ナトリウム、150mMのNaCl、pH7.0)に緩衝液交換した。UV分光光度法によりタンパク質濃度を測定し、変性性の還元条件下および非還元条件下でSDS-PAGEまたはSEC-HPLCによりIgG純度を分析した。
【0258】
実施例3
PD-L1抗体は哺乳動物細胞表面上に発現されるPD-L1に選択的に結合する
PD-L1に対する抗体の選択性をフローサイトメトリーを使用して評価した。簡潔に述べれば、ヒト、アカゲザルおよびマウスPD-L1の他に、ヒトPD1、CTLA4、LAG3、TIM3およびB7-H3を個々にHEK293F細胞の膜上に一過的に発現させた。トランスフェクトされた細胞を、予備冷却した染色緩衝液(2%のFBSを添加したPBS)中で洗浄し、次に100nMの試験抗体と共に氷上で1時間インキュベートした。染色緩衝液を用いて細胞を2回洗浄し、フィコエリトリン(PE)共役マウス抗ヒトFc抗体を加え、氷上で30分間インキュベートした。染色緩衝液を用いて試料を1回洗浄した後、フローサイトメトリーにより分析した。
図1に示されるように、TY214
18、TY21419、TY21420、TY21421および参照抗体はヒトおよびアカゲザルPD-L1に強く結合したが、TY21420、TY21421および参照抗体のみがマウスPD-L1に結合することができ、これは精製されたFabタンパク質を用いたELISAに基づく以前の観察に合致していた。重要なことに、候補抗体TY21418、TY21419、TY21420およびTY21421はPD-L1のみに結合し、それらのいずれも、他の試験された免疫チェックポイント分子へのいかなる可視的な結合も示さなかった。
【0259】
実施例4
抗体によるPD1およびPD-L1相互作用の遮断
候補抗体がPD-L1とそのリガンドPD1との相互作用を遮断するかどうかを決定するために、3種類のアッセイを行った。それらは、フローサイトメトリー、BLIおよびELISAを含んだ。3つ全ての方法は、4つの候補抗体TY21418、TY21419、TY21420およびTY21421はPD-L1へのPD1の結合を完全に遮断することを実証した。
【0260】
4a.フローサイトメトリーを通じた測定でのPD1とPD-L1との結合の遮断
全長ヒトPD-L1をコードするプラスミドをHEK293F細胞中で一過的に発現させた。染色緩衝液(1%のBSAを添加したPBS)を用いて細胞を洗浄し、100nMの試験抗体を含有する染色緩衝液に再懸濁した。氷上での1時間のインキュベーション後、100nMのビオチン化PD1-His(Sino Biological cat#
10377-H08H)を各ウェルに加え、氷上でさらに30分間インキュベートした。1×PBSAを用いて細胞を1回洗浄し、Alexa fluor 633共役ストレプトアビジンを含有する100μLの染色緩衝液を加え、氷上で30分間インキュベートした。次に、細胞を1回洗浄し、CytoFlexフローサイトメトリーにより分析した。
図2に示されるように、4つ全ての候補抗体は、参照抗体と同様に、PD-L1とPD1との結合を効果的に遮断した。
【0261】
4b.BLIを通じた測定でのPD1とPD-L1との結合の遮断
このアッセイでは、ビオチン化PD-L1-Hisを4μg/mlに調整し、Streptavidin(SA) Dip and Read Biosensorに並行して流した。キネティック緩衝液中での30秒の平衡後、キネティック緩衝液中で37.5μg/mlに調整した異なる抗体を含有するウェルにバイオセンサーを浸した。シグナルがプラトーに達した後に、PD1-Fc(5μg/ml)と対応する抗体(37.5μg/ml)との混合物を含有するウェルにバイオセンサーを浸した。シグナルの増加は効果的な結合を指し示した。
図3に立証されるように、4つ全ての候補抗体は、参照抗体と同様に、PD1シグナルの増加を防止し、それらはPD-L1とPD1との相互作用を効果的に遮断することを示唆した。
【0262】
4c.ELISAを通じた測定でのPD1とPD-L1との結合の遮断
組換えヒトPD1-FcをPBS中で1μg/mLに希釈し、4℃で終夜Maxisorpプレートにコーティングした。3%の脱脂乳を添加したPBSを用いてプレートを37℃で1時間ブロッキングした。洗浄後、50μLのビオチン化PD-L1-Fc(3μg/mL)と様々な濃度の試験抗体(50μg/mL~0.195μg/mLの範囲に及ぶ8つの1:2段階希釈液)との総体積100μLの混合物を各ウェルに加え、37℃で1時間インキュベートした。プレートを3回洗浄し、100μLのHRP共役ニュートラアビジン(1:1,000)を各ウェルに加え、37℃で1時間インキュベートした。以前に記載したようにプレートを洗浄し、50μLのTMB基質溶液を加え、室温でインキュベートした。各反応を50μLのH
2SO
4により停止させた。
図4に示されるように、4つ全ての候補抗体は、参照抗体と同様に、PD1へのPD-L1の結合を効果的に遮
断する。
【0263】
実施例5
PD-L1に結合する抗体の特徴付け
ヒト、アカゲザル、マウスおよびラットPD-L1に対する抗体の結合親和性をBiacoreにより測定した。結果を表4~6に要約する。
【0264】
5a.SPRによるヒトPD-L1に対するTY21418およびTY21419の結合親和性および速度論の測定
製造業者のガイドラインにしたがって、Biacore(商標) T200機器(Biacore AB、Uppsala、Sweden)を使用して表面プラズモン共鳴(SPR)分析により、ヒトPD-L1タンパク質に対するTY21418およびTY21419の結合親和性および速度論を調べた。Human Antibody Capture Kit(GE BR-1008-39)からの抗ヒトIgG(Fc)抗体を、Amine Coupling kit(GE Biacore #BR-1000-50)の指示にしたがってセンサーチップのカルボキシル化表面上へそのアミン基をカップリングすることにより、CM5チップに固定化した。固定化された抗ヒトIgG(Fc)抗体を使用してTY21418、TY21419、または参照抗体を捕捉した。最後に、6つの濃度(3.13、6.25、12.5、25、50、100)(nM)(ランニング緩衝液中に希釈)のヒトPD-L1-His6(Sino Biological # 10084-H08H)を30μI/分の流速で300秒間注入し、解離時間は300秒であった。使用したランニング緩衝液は、1×HBS-EP(10mMのHEPES、150mMのNaCl、3mMのEDTA、0.005% v/vのSurfactant P20、pH7.4、25℃)であった。「バックグラウンド」を引くために、タンパク質が固定化されていないブランクフローセルを使用して各ケースにおいて対応する対照を実施した。製造業者のガイドラインにしたがってBIAcore T200 Evaluation Software(Biacore AB、Uppsala、Sweden)を使用して、会合および解離曲線を1:1ラングミュア結合モデルにフィッティングした。表4に示されるように、TY21418およびTY21419の両方は、参照抗体と類似して、ナノモル濃度以下の親和性でヒトPD-L1に結合する。しかしながら、参照抗体とは対照的に、TY21418およびTY21419のいずれも、BiacoreにおいてマウスPD-L1へのいかなる結合も示さなかった。
【表7】
【0265】
5b.SPRによるヒトPD-L1に対するTY21421の結合親和性および速度論の測定
ヒトPD-L1-Fc融合タンパク質を300RUまでCM5チップに直接的に固定化し、ランニング緩衝液(HBS-EP)中のIgGの2倍段階希釈液(0.098nM~1.563nM)を30μI/分の流速で300秒間25℃において注入し、続いて1,
200秒の解離時間とした以外は、同様に、Biacore(商標) T200機器(Biacore AB、Uppsala、Sweden)を使用したSPR分析により、ヒトPD-L1タンパク質に対するTY21421の結合親和性および速度論を調べた。製造業者のガイドラインにしたがってBIAcore T200 Evaluation Software(Biacore AB、Uppsala、Sweden)を使用して会合および解離曲線を1:1ラングミュア結合モデルにフィッティングした。表5に示されるように、TY21421は、極めて高親和性(KD<10pM)で、固定化されたヒトPD-L1-Fcに結合し、参照抗体と同等またはわずかにより良好であった。
【表8】
【0266】
5c.他の種由来のPD-L1に対するTY21421の結合親和性および速度論のSPRによる測定
ヒト、アカゲザル、マウスおよびラット由来のPD-L1-Fc融合タンパク質を約500RUまでCM5チップに直接的に固定化し、ランニング緩衝液(HBS-EP)中のIgGの2倍段階希釈液(0.098nM~1.563nM)を30μI/分の流速で300秒間25℃において注入し、続いて1,200秒の解離時間とした以外は同様に、Biacore(商標) T200機器(Biacore AB、Uppsala、Sweden)を使用してSPR分析により、ヒト、アカゲザル(Sino Biological cat# 90251-C02H)、マウスおよびラット(Sino Biological cat# 80450-R08H)由来のPD-L1タンパク質に対するTY21421の結合親和性および速度論を調べた。製造業者のガイドラインにしたがって、BIAcore T200 Evaluation Software(Biacore AB、Uppsala、Sweden)を使用して、会合および解離曲線を1:1ラングミュア結合モデルにフィッティングした。表6に示されるように、TY21421は、ピコモル濃度の親和性で全ての試験した種由来の固定化されたPD-L1に結合するが、ラットPD-L1に対するその親和性は、ヒト、アカゲザルまたはマウスからのPD-L1と比較してわずかに悪い(KD=20.9pM)。
【表9】
【0267】
5d.細胞表面上に発現されたPD-L1に対するTY21421のEC50のフローサイトメトリーによる測定
細胞表面上に発現されたPD-L1に対するTY21421の親和性を測定するために、その膜上にPD-L1を発現する安定な細胞株293T-002(Crownbio #C2005)を用いた。簡潔に述べれば、冷たいFACS緩衝液(1%のBSAを添加した1×PBS)を用いて細胞を1回洗浄し、次にTY21421の3倍段階希釈液(100nMから開始)で氷上で1時間インキュベートし、予備冷却したFACS緩衝液を用いて2回洗浄し、アロフィコシアニン(APC)共役マウス抗ヒトFc抗体と共に氷上で30分間インキュベートした。細胞を1回洗浄した後に、フローサイトメトリー(Beckman(登録商標) CytoFlex)による分析を行った。
図5に示されるように、TY21421は、1.08nMのEC50で細胞表面上に発現されたPD-L1に強く結合する。
【0268】
実施例6
パラホルムアルデヒドを用いた固定後の細胞表面PD-L1に結合する抗体
パラホルムアルデヒドを用いた固定後の細胞表面PD-L1に結合する能力についても抗体を調べた。簡潔に述べれば、10,000のPD-L1発現HCC827ヒト細胞(Cell Bank, Type Culture Collection of Chinese Academy of Sciences)を96ウェルプレートにプレーティングした。組織培養インキュベーター中での終夜のインキュベーション後、細胞を4%のパラホルムアルデヒドを用いて固定し、1%のBSAを用いてブロッキングした。次に、TY21421の段階希釈液をウェルに加え、4℃で終夜インキュベートした。PBSTを用いた洗浄後、HRP共役抗IgG Fc抗体(Santa Cruz、sc-2005)およびTMB基質を加え、細胞結合を450nmでの吸光度により測定した。
図6に示されるように、TY21421は、パラホルムアルデヒドを用いた固定後の細胞表面PD-L1に高親和性で結合し、その算出されたEC50は0.30nMである。
【0269】
実施例7
Promega PD1/PD-L1レポーター遺伝子アッセイを使用する抗体の機能的特徴付け
Promega PD1/PD-L1レポーター遺伝子アッセイを使用して、PD-L1抗体が、PD-L1依存性NFAT媒介性ルシフェラーゼ発現の活性化において機能的かどうかを調べた。簡潔に述べれば、40.000のPD-L1発現CHO細胞(Promega cat# J1081)を96ウェル白色プレートの各ウェルにプレーティングし、37℃で16~18hインキュベートした。次に、40,000のPD-1発現J
urkat細胞(Promega cat# J1121)を2%のFBS-RPMI1640中で各ウェルに加えた。TY21421の段階希釈液を培養物に加え、プレートを37℃で6hさらにインキュベートした後、相対発光単位(RLU)を測定した。その算出されたEC50により抗体力価を評価した。
図7に示されるように、TY21421はPD-L1依存性シグナル伝達経路を強力に刺激し、その算出されたEC50は0.39nMに達する。
【0270】
実施例8
抗PD-L1抗体によるCD4+ T細胞活性の刺激
DC-MLRアッセイにおいてT細胞活性を増進する能力についてもPD-L1抗体を試験した。簡潔に述べれば、密度勾配遠心分離により健常ドナーからPBMCを単離し、ポジティブセレクション市販キット(StemCell)によりPBMCからCD14+単球を精製した。10%の不活性化FBS、1%のペニシリン/ストレプトマイシン、20ng/mLのrhGM-CSFおよび20ng/mLのrhIL-4を添加したRPMI 1640培地中でin vitroで6日間培養することにより、それらをDCにし、培養培地は3日目に新鮮なものに変更した。10%の不活性化FBS、1%のペニシリン/ストレプトマイシン、および50ng/mLのrhTNF-αを添加したRPMI 1640培地中で6日目に24時間DC成熟を誘導した。密度勾配媒体での遠心分離により全血から調製された新鮮なヒトPBMCからの陰性単離(negative isolation)により、別の健常ドナーからのCD4+ T細胞を精製した。成熟DC(10,000)を、次に、PD-L1抗体の段階希釈液の存在下で同種CD4+ T細胞(100,000)と共培養した。5日後、上清中のIFN-γサイトカインをELISAにより測定した。
図8に示されるように、TY21418、TY21419およびTY21421は、試験した最低濃度である0.03μg/mlにおいてでも、IFN-γサイトカインの分泌を有意に増進した。
【0271】
別のドナーペアにおいて、DC成熟の別のアプローチを用いて、すなわち、50ng/mLのrhTNF-αの代わりに1mg/mLのLPS(Sigma)および50ng/mLのIFN-γ(Novoprotein)を使用して、放出されるIL2およびIFN-γの増加により例示されるT細胞活性の刺激において、TY21421は参照抗体と同等に効果的であることが示された(
図9)。
【0272】
実施例9
抗PD-L1抗体による抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)
候補抗体を野生型IgG1アイソタイプにおいて構築した。in vitro実験を実行してそれらのADCC効果を実証した。簡潔に述べれば、健常ドナーからのヒト末梢血単核細胞(PBMC)をPD-L1発現HCC827細胞と共に30:1の比でインキュベートした。次に、段階希釈したTY21421または市販のテセントリク(ADCCについての陰性対照として)を培養物に加え、4時間インキュベートした。LDH cytotoxicity kit(Dojindo cat# CK12)により標的細胞からの乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の放出を測定することにより細胞傷害性を評価した。
図10に立証されるように、TY21421は強力なADCC効果を示す。対照的に、以前の報告と合致して、テセントリクは高濃度であってもADCC効果をほとんど示さない。
【0273】
実施例10
抗PD-L1抗体を用いたマウス同系モデルの治療
マウスPD-L1との種交差反応性は迅速なin vivo機能評価を可能とする。TY21420およびTY21421を複数のマウス同系モデルにおいて試験した。
【0274】
10a.PD-L1抗体はH22マウス肝臓がんモデルにおいて抗腫瘍有効性を呈する
BALB/cマウス(n=8/群)の皮下に2×10
6のH22マウス肝臓がん細胞を移植した。腫瘍が確立された時に(約100mm
3)、ビヒクル、TY21420(10mg/kg)、またはTY21421(10mg/kg)を用いた週に2回、3週間までの腹腔内注射により、これらの腫瘍保有マウスを治療した。腫瘍成長を週に2回モニターし、平均腫瘍体積±SEMとして経時的に報告した。
図11に示されるように、TY21420およびTY21421の両方は、H22腫瘍成長の抑制において有効であった。
【0275】
10b.PD-L1抗体はMC38マウス結腸がんモデルにおいて抗腫瘍有効性を呈する
9つのFabヒットの群はヒト、サルおよびマウス由来のPD-L1に結合し、それらは同一のVH(配列番号127)を有するが、異なるVLを有する。C57BL/6マウスの皮下に3×10
5のMC38マウス結腸がん細胞を移植した。腫瘍が確立された時に(約75mm
3)、ビヒクル、TY21420(10mg/kg)、またはTY21421(10mg/kg)を用いた週に2回、3週間までの腹腔内注射により、これらの腫瘍保有マウスを治療した。腫瘍成長を週に3回モニターし、平均腫瘍体積±SEMとして経時的に報告した。
図12に示されるように、TY21420およびTY21421の両方は、MC38腫瘍成長の抑制において有効であった。
【0276】
実施例11
抗体の組合せを用いて増進された抗腫瘍有効性
11a.LL/2マウス肺がんモデルにおけるTY21421と種交差反応性抗CD137抗体との組合せを用いて増進された抗腫瘍有効性
C57BL/6マウス(n=8/群)の皮下に2×105のLL/2マウス肺がん細胞を移植した。腫瘍が確立された時に(約87mm3)、単剤療法または組合せのいずれかとして、アイソタイプ対照、TY21421(7.5mg/kg、週3回×3週)、または国際出願PCT/CN2017/098332号明細書(参照することにより全体が本明細書に組み込まれる)に開示されるものなどの抗CD137抗体(10mg/kg、週2回×3週)の腹腔内注射によりこれらの腫瘍保有マウスを治療した。腫瘍成長を週に2回モニターし、平均腫瘍体積±SEMとして経時的に報告した。
図13に示されるように、単剤療法としてのTY21421または抗CD137抗体のいずれかは、LL/2マウス腫瘍成長の抑制において有効であった。興味深いことに、組合せで使用した場合、TY21421および抗CD137抗体はLL/2マウス腫瘍成長の抑制においてよりいっそう強力であった。
【0277】
11b.3LLマウス肺がんモデルにおけるTY21421と種交差反応性抗CD137抗体との組合せを用いて増進された抗腫瘍有効性
C57BL/6マウス(n=8/群)の皮下に2×106の3LLマウス肺がん細胞を移植した。腫瘍が確立された時に(約76mm3)、単剤療法または組合せのいずれかとして、アイソタイプ対照、TY21421(10mg/kg、週2回×3週)、または抗CD137抗体(10mg/kg、週2回×3週)の腹腔内注射によりこれらの腫瘍保有マウスを治療した。腫瘍成長を週に2回モニターし、平均腫瘍体積±SEMとして経時的に報告した。
図14に示されるように、単剤療法としてのTY21421または抗CD137抗体のいずれかは、3LLマウス腫瘍成長の抑制において有効であった。興味深いことに、組合せで使用した場合、TY21421および抗CD137抗体は3LLマウス腫瘍成長の抑制においてはるかにより強力であった。
【0278】
実施例12
がん免疫療法用のセラノスティック剤としての抗PD-L1抗体の応用
マウス交差反応性抗PD-L1抗体TY21421をがん免疫療法用のセラノスティッ
ク剤として試験した。PBS緩衝液中で抗体TY21421にp-SCN-Bn-NOTA(Macrocyclics, Inc. Dallas、TX)を共役させた。MALDI-TOF-MSによる測定で、平均で3分子のp-SCN-Bn-NOTAが各TY21421分子に共役された。その後、64Cu-Cu2+(Peking University Cancer Hospital、Beijing、China)を37℃で1時間キレートし、キレートした抗体(64Cu-TY21421)をサイズ排除クロマトグラフィーを通じて分別し、PBS(pH7.4)中で保存した。
【0279】
12a.MC38異種移植片を有するマウスにおけるPET/CTイメージングおよび64Cu-AG10130の体内分布
放射性標識した抗PD-L1抗体64Cu-TY21421(22.2±0.2MBq)をMC38異種移植片を有する雌C57BL/6マウスに注射し、NanoScan PET-CTスキャナー(Mediso Medical Solutions HUN, Inc.)を使用して注射後0.5時間、12時間、24時間、36時間、48時間および62時間において画像を記録した。画像をTera-Tomo 3D法により再構築し、再構築されたPET画像において、Nucline NanoScanソフトウェア(InterView(商標) FUSION、Mediso Medical Solutions HUN, Inc.)により、Variance Reduced D.W. Three-Dimensional ROI(目的の領域)を取得した。
【0280】
図15における代表的なPET/CT画像に示されるように、ROIにより測定された腫瘍部位における
64Cu-TY21421の取込みは、注射後0.5時間における2.3±1.2% ID/gから注射後62時間における10.2±1.7% ID/gへと徐々に増加した(
図15、パネルB)。対照的に、同じ期間の間に、肝臓および筋肉における
64Cu-TY21421の取込みは徐々に減少した(
図15、パネルB)。したがって、腫瘍/肝臓および腫瘍/筋肉のROI比は、注射後62時間においてそれぞれ62.1±23.3および3.18±1.06に安定的に増加した。
【0281】
次に、注射後12時間、24時間および48時間において
64Cu-TY21421のex vivo体内分布研究を実行した。MC38腫瘍保有雌C57BL/6マウス(各時点についてn=3)の静脈内に
64Cu-TY21421を注射し、その分解(decay)により補正した場合、各マウスについての注射用量は、注射後12時間、24時間および48時間において0.56MBqであった。腫瘍および複数のマウス臓器を解剖および計量し、放射能をガンマカウンターにより測定した。
図15、パネルCおよび表7に示されるように、腫瘍、肝臓、筋肉および骨における
64Cu-TY21421の取込みはPET/CTイメージングと合致し、すなわち、腫瘍への取込みは時間依存的な方式で増加し、注射後48時間において肝臓および他の主要な臓器より高くなった。
【表10】
【0282】
12b.従来のPETプローブ
18F-FDGとPD-L1特異的PETプローブ
64Cu-TY21421との比較
従来のPETプローブ
18F-FDGとPD-L1特異的PETプローブ
64Cu-TY21421とを比較対照するために、MC38および4T1異種移植片を有するマウスに
18F-FDG(7.4MBq)を注射し、1時間後に画像を記録した。その後、
64Cu-TY21421(7.4MBq)を注射し、12時間後に画像を記録した。
図16に示されるように、MC38および4T1腫瘍部位において
18F-FDG取込みの有意差は観察されず、
18F-FDG取込みはMC38異種移植片について5.3±0.4%
ID/g、4T1異種移植片について6.4±0.6%ID/gであった(
図16、パネルB)。対照的に、
64Cu-TY21421ははるかにより特異的であり、
64Cu-TY21421取込みはPD-L1発現MC38腫瘍について5.6±0.3% ID/g、PD-L1を発現しない4T1腫瘍について1.3±0.4% ID/gであり、4倍より大きい差異であった(
図16、パネルB)。MC38腫瘍におけるPD-L1の存在および4T1腫瘍におけるその不在は、IHC特異的抗PD-L1抗体(#6498
8、Cell Signaling Technology)を使用するIHC実験を用いて確認された。
【0283】
12c.ヒトがんモデルにおける
64Cu-TY21421のPETイメージング
放射性標識した抗PD-L1抗体
64Cu-TY21421を使用して、ヒトがん異種移植片におけるPD-L1発現レベルも評価した。Nu/Nuマウスにヒト胃がん(BGC823、National Infrastracture of Cell Line Resources、China)およびヒト膠芽腫(U87MG、National Infrastracture of Cell Line Resources、China)の異種移植片を接種し、両方はPD-L1発現を有することが報告されていた。
64Cu-TY21421は、BGC823およびU87MGの両方の異種移植片において特異的な蓄積を呈した(
図17)。注射後12時間において
64Cu-TY21421の取込みはBGC823(n=3)において4.6±0.5% ID/g、U87MG(n=3)において5.3±0.4% ID/gであった。
【0284】
均等
本開示は、特に、新規の抗PD-L1抗体およびその使用を提供する。主題の開示の特定の実施形態を議論したが、上記の説明は実例的なものであり、限定的なものではない。本開示の多くの変形形態が本明細書を読んだ当業者に明らかとなる。本開示の全範囲は、均等の全範囲と共に特許請求の範囲、およびそのような変形形態と共に本明細書を参照することにより決定されるべきである。
【0285】
参照による組込み
本明細書に記載の全ての刊行物、特許および配列データベースエントリーは、各個々の刊行物または特許が参照することにより組み込まれると具体的および個々に指し示された場合と同様に参照することにより全体が本明細書に組み込まれる。
【配列表】