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特許7433288イサブコナゾニウム硫酸塩を精製するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】イサブコナゾニウム硫酸塩を精製するための方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 417/14 20060101AFI20240209BHJP
   A61K 31/4439 20060101ALI20240209BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20240209BHJP
   C07D 401/14 20060101ALI20240209BHJP
   C07D 411/14 20060101ALI20240209BHJP
【FI】
C07D417/14
A61K31/4439
A61P31/10
C07D401/14
C07D411/14
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2021505251
(86)(22)【出願日】2019-07-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-02
(86)【国際出願番号】 EP2019070385
(87)【国際公開番号】W WO2020025553
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-07-25
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2018/097881
(32)【優先日】2018-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2019/090347
(32)【優先日】2019-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517279920
【氏名又は名称】バジリア・ファルマスーチカ・インターナショナル・アーゲー,アルシュヴィル
【氏名又は名称原語表記】Basilea Pharmaceutica International AG, Allschwil
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ツォン,ウェイペン
(72)【発明者】
【氏名】マゾッティ,マルコ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィクム,ラルス
(72)【発明者】
【氏名】コーネル,イェルン
(72)【発明者】
【氏名】ホイベス,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】シュライマー,ミヒャエル
【審査官】柳本 航佑
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106467534(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106883226(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106916152(CN,A)
【文献】国際公開第2016/016766(WO,A1)
【文献】特表2016-502552(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 417/00-417/14
A61K 31/4439
A61P 31/10
C07D 401/00-401/14
C07D 411/00-411/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

の化合物の硫酸塩を精製するための方法であって、
(a)式Iの化合物の硫酸塩及び脂肪族アルコールを含む混合物であって、前記混合物のpHが約pH1~約pH6の範囲にある混合物を提供する、ステップと;
(b)前記混合物を冷却し、そして前記混合物を好適な期間静置させることにより、前記混合物から式Iの化合物の硫酸塩の第1の分量を結晶化させるステップと;
(c)前記混合物に非プロトン性有機溶媒を添加し、前記混合物から式Iの化合物の硫酸塩の追加の分量を析出させるステップと;
を含み、ここで、
前記脂肪族アルコールは、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、又はこれらの混合物であり;
前記非プロトン性有機溶媒は、C4~C10アルキル若しくはC4~C10アルケニル又はこれらの混合物であり;
「約」という語は所与の値に対し±5%の変動があることを示す、方法。
【請求項2】
ステップ(a)で提供される混合物が、式Iの化合物の硫酸塩の以下のエピマー:
【化2】

の混合物であり、ここで
移動相が酢酸トリエチルアンモニウム及びアセトニトリルの混合比40:60のpH6.5の混合物である、フェニルカルバメート化β-シクロデキストリンで修飾されたキラルHPLCカラムから1番目に溶出するエピマーがエピマーAであり、そして2番目に溶出するエピマーがエピマーBであり、そして
ステップ(b)はエピマーBを選択的に結晶化し、そしてステップ(c)は溶液中に残存しているエピマーAを析出させるのに有効である、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(a)で提供される混合物が、式Iの化合物の硫酸塩の以下のエピマー:
【化3】

の混合物であり、ここで
移動相が酢酸トリエチルアンモニウム及びアセトニトリルの混合比40:60のpH6.5の混合物である、フェニルカルバメート化β-シクロデキストリンで修飾されたキラルHPLCカラムから1番目に溶出するエピマーがエピマーAであり、そして2番目に溶出するエピマーがエピマーBであり、そして
ステップ(b)から得られる式Iの化合物の硫酸塩の分量中におけるエピマーB対エピマーAのモル比は、1超:1である、
請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(a)で提供される混合物が、式Iの化合物の硫酸塩の以下のエピマー:
【化4】

の混合物であり、ここで
移動相が酢酸トリエチルアンモニウム及びアセトニトリルの混合比40:60のpH6.5の混合物である、フェニルカルバメート化β-シクロデキストリンで修飾されたキラルHPLCカラムから1番目に溶出するエピマーがエピマーAであり、そして2番目に溶出するエピマーがエピマーBであり、そして
ステップ(c)から得られる式Iの化合物の硫酸塩の分量中におけるエピマーA対エピマーBのモル比は、1超:1である、
請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(b)及びステップ(c)から得られる式Iの化合物の硫酸塩の合わせた分量中のエピマー:
【化5】

のモル比が、1:2~2:1の範囲にある、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記脂肪族アルコールが、エタノール、プロパノール、ブタノール、若しくはペンタノール、又はこれらの混合物である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記脂肪族アルコールが、エタノールである、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記脂肪族アルコール対式Iの化合物の硫酸塩のv/w比が、2:1~6:1の範囲にある、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(a)における前記混合物が、式Iの化合物の硫酸塩、脂肪族アルコール、及び水を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記脂肪族アルコール対水のv/v比が、5:1~50:1の範囲にある、請求項に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(a)における前記混合物のpHが、約pH3~約pH5の範囲にある、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(a)における前記混合物のpHが、約pH3.8~約pH4.5の範囲にある、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(b)が前記混合物を冷却することを含み、冷却速度が毎時3℃以下である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記非プロトン性有機溶媒が、ヘキサン若しくはヘプタン、又はこれらの混合物である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記非プロトン性有機溶媒が、n-ヘプタンである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記脂肪族アルコールが、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、又はこれらの混合物であり、そして、前記非プロトン性有機溶媒が、ヘキサン、ヘプタン、ヘキセン、ヘプテン、又はこれらの混合物である、請求項1~5及び8~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記脂肪族アルコールが、エタノール、ブタノール、シクロヘキサノール、又はこれらの混合物であり、そして、前記非プロトン性有機溶媒が、ヘキサン、ヘプタン、ヘキセン、若しくはヘプテン、又はこれらの混合物である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記脂肪族アルコールが、エタノール、n-ブタノール、若しくはシクロヘキサノール、又はこれらの混合物であり、そして、前記非プロトン性有機溶媒が、n-ヘプタン、n-ヘキサン、若しくは1-ヘキセン、又はこれらの混合物である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記脂肪族アルコールが、エタノール、n-ブタノール、又はシクロヘキサノールであり、そして、前記非プロトン性有機溶媒が、n-ヘプタン、n-ヘキサン、又は1-ヘキセンである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
ステップ(c)において使用される非プロトン性有機溶媒の体積が、ステップ(a)における前記混合物の体積の0.05~8倍の範囲にある、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
(a)式Iの化合物の硫酸塩及びエタノール及び必要に応じて水を含む混合物であって、前記混合物のpHは、約pH1~約pH6の範囲にある、混合物を提供することと;
(b)前記混合物から式Iの化合物の硫酸塩の第1の分量を結晶化させることと;
(c1)前記混合物にプロパノール及び/又はブタノールを添加し、前記混合物から式Iの化合物の硫酸塩の追加の分量を析出させることと;
(c2)前記混合物にヘキサン若しくはヘプタン又はこれらの混合物を添加し、前記混合物から式Iの化合物の硫酸塩の更なる追加の分量を析出させることと;
を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
(a)式Iの化合物の硫酸塩及び脂肪族アルコールを含む混合物を提供するステップであって、前記脂肪族アルコールは、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール又はこれらの混合物であり、前記脂肪族アルコール対式Iの化合物の硫酸塩のv/w比は、1:1~100の範囲にあり、前記混合物のpHは、約pH3~約pH5の範囲にある、ステップと;
(b)前記混合物から式Iの化合物の硫酸塩の第1の分量を結晶化させるステップと;
(c)前記混合物に非プロトン性有機溶媒を添加し、前記混合物から式Iの化合物の硫酸塩の追加の分量を析出させるステップであって、前記非プロトン性有機溶媒は、C4~C10アルキル若しくはC4~C10アルケニル又はこれらの混合物であり、ステップ(c)において使用される非プロトン性有機溶媒の体積は、ステップ(a)における前記混合物の体積の0.05~8倍の範囲にある、ステップと;
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
(a)式Iの化合物の硫酸塩、水、及びエタノールを含む混合物を提供するステップであって、前記エタノール対式Iの化合物の硫酸塩のv/w比は、2:1~6:1の範囲にあり、エタノール対水のv/v比は、15:1~25:1であり、前記混合物のpHは、約pH3~約pH5の範囲にある、ステップと;
(b)前記混合物を冷却し、前記混合物から式Iの化合物の硫酸塩の第1の分量を結晶化させるステップであって、冷却速度は毎時3℃以下である、ステップと;
(c1)前記混合物にプロパノール及び/又はブタノールを添加し、前記混合物から式Iの化合物の硫酸塩の追加の分量を析出させるステップであって、プロパノール及び/又はブタノールの体積は、ステップ(a)における前記混合物の体積の1~6倍である、ステップと;
(c2)前記混合物に非プロトン性有機溶媒を添加し、前記混合物から式Iの化合物の硫酸塩の更なる追加の分量を析出させるステップであって、前記非プロトン性有機溶媒は、ヘキサン若しくはヘプタン又はこれらの混合物であり、非プロトン性有機溶媒の体積は、ステップ(a)における前記混合物の体積の1~6倍の範囲にある、ステップと;
を含み、ステップ(b)並びにステップ(c1)及び(c2)から得られる式Iの化合物の硫酸塩の合わせた分量中のエピマー:
【化6】

のモル比は、1:2~2:1の範囲にある、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
結晶形態にある請求項1に記載の式Iの化合物の硫酸塩のエピマーBを調製するための方法であって、
(a)式Iの化合物の硫酸塩及び脂肪族アルコールを含む混合物を提供するステップであって、前記混合物のpHは、約pH1~約pH6の範囲にある、ステップと;
(b)前記混合物を冷却し、そして前記混合物を好適な期間静置させることにより、前記混合物からエピマーBを結晶化させるステップと;
を含み、エピマーBは、エピマー:
【化7】

のうちの、移動相が酢酸トリエチルアンモニウム及びアセトニトリルの混合比40:60のpH6.5の混合物である、フェニルカルバメート化β-シクロデキストリンで修飾されたキラルHPLCカラムから溶出する2番目のエピマーであり、ここで、
ステップ(a)において提供される前記混合物は、エピマーA及びエピマーBの混合物であり、そしてステップ(b)はエピマーBを選択的に結晶化させ;
前記脂肪族アルコールは、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、又はこれらの混合物であり;
「約」という語は所与の値に対し±5%の変動があることを示す、方法。
【請求項25】
ステップ(b)において、冷却速度が、毎時3℃以下である。請求項24に記載の方法。
【請求項26】
固体形態にある請求項1に記載の式Iの化合物の硫酸塩のエピマーAを調製するための方法であって、
(c)エピマーAの硫酸塩及び脂肪族アルコールを含む混合物に非プロトン性有機溶媒を添加し、前記混合物からエピマーAの前記硫酸塩を析出させるステップであって、前記混合物のpHは、約pH1~約pH6の範囲にある、ステップ;
を含み、
エピマーAは、エピマー:
【化8】

のうちの、移動相が酢酸トリエチルアンモニウム及びアセトニトリルの混合比40:60のpH6.5の混合物である、フェニルカルバメート化β-シクロデキストリンで修飾されたキラルHPLCカラムから溶出する1番目のエピマーであり、
ステップ(c)からの析出物中のエピマーAのモル量はエピマーBのモル量を上回り;ここで、
前記脂肪族アルコールは、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、又はこれらの混合物であり;
前記非プロトン性有機溶媒は、C4~C10アルキル若しくはC4~C10アルケニル又はこれらの混合物であり;
「約」という語は所与の値に対し±5%の変動があることを示す、方法。
【請求項27】
請求項1に記載の式Iの化合物の硫酸塩を含む医薬組成物を調製するための方法であって、
(i)請求項1~23のいずれか一項に記載の方法により、式Iの化合物の硫酸塩を精製すること、及び
(ii)式Iの化合物の硫酸塩を1つ以上の医薬品添加剤と配合すること
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イサブコナゾニウム硫酸塩(isavuconazonium sulfate)及びそのエピマーを精製するための方法を提供する。
【0002】
イサブコナゾニウム硫酸塩はスペクトルの広いアゾール系抗真菌剤であるイサブコナゾールのプロドラッグである。これはアスペルギルス症及びムコール症の治療用として市販されており、経口及び静脈内投与用製剤として入手することができる。イサブコナゾニウム塩は国際公開第2001/32652号パンフレットに記載されており、イサブコナゾニウム塩酸塩を調製するための方法が実施例7に示されている。しかしながら、市販品のイサブコナゾニウム硫酸塩等のイサブコナゾニウム塩は水分の影響を受けやすいため、粗生成物から高収率で精製を行うことが困難である。
【背景技術】
【0003】
イサブコナゾニウム硫酸塩を結晶化によって精製する試みが行われてきた。例えば、CN106565699号明細書には、イサブコナゾニウム硫酸塩の結晶を調製する方法が記載されている。この方法は、ステップ1:イサブコナゾール塩酸塩を水に溶解し、低温で塩基を使用してpHを中性に調整し、抽出を行うために有機溶媒Aを添加し、乾燥及び濃縮を行い、次いで有機溶媒Bに溶解し、低温で濃硫酸及び過酸化水素を添加し、撹拌し、濃縮するステップ;ステップ2:上述の濃縮物を有機溶媒Cに加え、加熱して溶解し、撹拌及び冷却して結晶化させ、吸引濾過を行うことにより結晶を得るステップ;を含む。しかし、この方法は商業的スケールアップには適していない。特に過酸化水素を使用すると生成物が著しく劣化する。
【0004】
CN106467534号明細書にもイサブコナゾニウム硫酸塩の結晶を調製する方法が記載されている。この方法は、(a)イサブコナゾニウム硫酸塩の粗生成物を、水、有機溶媒A、及び有機溶媒Bの混合溶液に溶解することと、(b)ステップ(a)で得られたイサブコナゾニウム硫酸塩溶液に有機溶媒Cを滴下することと、(c)撹拌結晶化及び分離を行うことにより上記イサブコナゾニウム硫酸塩化合物を得ることと、を含み、有機溶媒Aは、R1-O-CH2-CH2OHで表され;有機溶媒Bは、R2-C(=O)-R3で表され、及び/又はテトラヒドロフランであり;有機溶媒Cは、R4-C(=O)O-R5で表され;R1、R2、R3、R4、及びR5は、独立に、C1~3アルキルから選択される。
【0005】
しかしながら、後に比較例に示すように、CN106467534号明細書に記載されている方法では、粗生成物の純度が低い場合は収率がより低くなることを本発明者らは見出している。また、CN106467534号明細書では、高純度物質から出発すると、2種のエピマーのうちの1種が非常に濃縮されたイサブコナゾニウム硫酸塩生成物を生成するが、承認されている市販品におけるエピマーのモル比は1.2:1~1:1.2である。
【0006】
ここにイサブコナゾニウムの2種のエピマーを示す。
【化1】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、本明細書において式Iの化合物の硫酸塩と称するイサブコナゾニウム硫酸塩を精製するための新規な手順を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、式Iの化合物の硫酸塩を精製するための方法であって:
【化2】

(a)式Iの化合物の硫酸塩及び脂肪族アルコールを含む混合物であって、pHが約pH1~約pH6の範囲にある混合物を提供するステップと;
(b)混合物から式Iの化合物の硫酸塩の第1の分量(portion)を結晶化させるステップと;
(c)混合物に非プロトン性有機溶媒を添加し、混合物から式Iの化合物の硫酸塩の追加の分量を析出させるステップと;
を含む方法を提供する。
【0009】
本明細書においては、式Iの化合物の硫酸塩のエピマーを、その保持時間を参照することにより定義する。エピマーAは、移動相として酢酸トリエチルアンモニウム及びアセトニトリルの混合比40:60の混合物(pH6.5)を用いた場合に、フェニルカルバメート化β-シクロデキストリンで修飾されたキラルHPLCカラムから最初に溶出するエピマーである。
【0010】
一般に、ステップ(a)において提供される混合物は、式Iの化合物の硫酸塩のエピマーA及びエピマーBの、通常は同程度の量の混合物を含む。ステップ(b)及びステップ(c)から得られる分量に含まれるエピマーA及びエピマーBは比率が異なっている。ステップ(b)はエピマーBを選択的に結晶化させる一方、ステップ(c)は溶液中に残存しているエピマーAを析出させるのに有効である。したがって、ステップ(c)を用いない場合、エピマーAの大部分が依然として溶液中にあることになるため、ステップ(b)から得られる結晶形態は、収率がより低くなる傾向にあるであろう。更に、こうした理由から、エピマーの比率は、商業化に要求される比率、即ち、1.2:1~1:1.2に通常は一致しないことになる。ステップ(c)を含めることにより、析出するエピマーAの比率がより高くなり、それにより、結果として得られるエピマーA対エピマーBの比を市販品に要求される範囲内に収めることができる可能性がある。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ステップ(b)から得られる分量中における式Iの化合物の硫酸塩のエピマーB対エピマーAのモル比は、一般に、1超:1、例えば、少なくとも1.3:1、例えば、少なくとも1.5:1、例えば、少なくとも2:1、例えば、少なくとも5:1、例えば、1.3:1~100:1の範囲、例えば、1.5:1~50:1の範囲、例えば、2:1~20:1の範囲、例えば、5:1~20:1の範囲にある。
【0012】
ステップ(c)から得られる分量中における式Iの化合物の硫酸塩のエピマーA対エピマーBのモル比は、一般に、1超:1、例えば、少なくとも1.3:1、例えば、少なくとも1.5:1、例えば、少なくとも2:1、例えば、少なくとも5:1、例えば、1.3:1~100:1の範囲、例えば、1.5:1~50:1の範囲、例えば、2:1~20:1の範囲、例えば、5:1~20:1の範囲にある。
【0013】
ステップ(b)及びステップ(c)から得られる分量を合わせた分量中における式Iの化合物の硫酸塩のエピマーA対エピマーBのモル比は、2:1~1:2、例えば、約1.2:1~約1:1.2となり得る。
【0014】
ステップ(a)で提供される混合物は、当業者が公知の手順に従って合成することができる式Iの化合物の硫酸塩を合成することにより得られる固体粗生成物から調製することができる。一実施形態において、式Iの化合物の前駆体は、式Iの化合物のBoc保護された類似体の硫酸塩(中国特許出願公開第106916152A号明細書に示されている化合物6)であり、これは、好適な溶媒、例えば酢酸エチルを、例えば20℃~25℃の範囲の温度で使用し、硫酸を用いることにより脱保護され、それにより、式Iの化合物の硫酸塩を得ることができる。こうすることにより、例えば、水中で析出させて固体粗生成物を得ることができ、これは任意選択的にイソプロパノール等のプロトン性有機溶媒で洗浄してもよい。
【0015】
固体粗生成物は、式Iの化合物の硫酸塩を合成する際に形成される不純物を含有することになる。ステップ(a)で使用することができる固体粗生成物中の式Iの化合物の硫酸塩の純度は、通常、例えば、(洗浄前又は洗浄後)少なくとも80%(即ち、不純物の重量に対する式Iの化合物の硫酸塩の重量)、例えば、80%~100%の範囲、例えば、90%~100%の範囲、例えば、90%~99%の範囲、例えば、90%~98%の範囲、例えば、90%~97%の範囲、例えば、90%~96%の範囲、例えば、90%~95%の範囲、例えば、93%~100%の範囲、例えば、93%~98%の範囲にある。他の実施形態において、ステップ(a)に使用することができる式Iの化合物の硫酸塩の固体粗生成物中の純度は、98%以下、例えば、97%以下、例えば、96%以下、95%以下である。
【0016】
ステップ(a)の混合物は、式Iの化合物の硫酸塩の固体粗生成物を脂肪族アルコールに溶解することにより得ることができる。脂肪族部分は、構成要素である炭素原子が直鎖、分岐鎖、又は環状であってもよい非芳香族炭化水素部分である。本発明による脂肪族アルコールは、1又は2個のOH基を含み、但し、2個のOH基が存在する場合、脂肪族部分には3~6個の炭素原子が存在する。脂肪族アルコールは、C2~C10アルキル-OH若しくはC3~C10シクロアルキル-OH(例えば、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロヘプタノール)又はこれらの混合物、特に、C2~C10アルキル-OHとすることができる。一実施形態において、脂肪族アルコールは、エタノール、プロパノール(そのあらゆる異性体、例えば、プロパン-1-オール、イソプロパノールを含む)、ブタノール(そのあらゆる異性体、例えば、n-ブタン-1-オール、n-ブタン-2-オール、t-ブタン-1-オール、t-ブタン-2-オールを含む)、及びペンタノール(そのあらゆる異性体を含む)、又はこれらの混合物から選択される脂肪族アルコールである。別の実施形態において、脂肪族アルコールは、プロパノール若しくはエタノール又はこれらの混合物である。別の実施形態において、脂肪族アルコールはエタノール又はn-ブタノールである。別の実施形態において、脂肪族アルコールはエタノールである。
【0017】
脂肪族アルコール対式Iの化合物の硫酸塩のv/w比(即ち、ミリリットル:グラム)は、100以下:1、例えば、75以下:1、例えば、40以下:1、例えば、20以下:1、例えば、10以下:1、例えば、8以下:1、例えば、6以下:1、例えば、5以下:1、例えば、少なくとも1:1、例えば、少なくとも2:1、例えば、1:1~100:1の範囲、例えば、1:1~75:1の範囲、例えば、1:1~40:1の範囲、例えば、1:1~20:1の範囲、例えば、1:1~10:1の範囲、例えば、2:1~10:1の範囲、例えば、2:1~8:1の範囲、例えば、2:1~6:1の範囲、例えば、3:1~5:1の範囲、例えば、約4:1とすることができる。例えば、エタノール対式Iの化合物の硫酸塩のv/w比は、100以下:1、例えば、75以下:1、例えば、40以下:1、例えば、20以下:1、例えば、10以下:1、例えば、8以下:1、例えば、6以下:1、例えば、5以下:1、例えば、少なくとも1:1、例えば、少なくとも2:1、例えば、1:1~100:1の範囲、例えば、1:1~75:1の範囲、例えば、1:1~40:1の範囲、例えば、1:1~20:1の範囲、例えば、1:1~10:1の範囲、例えば、2:1~10:1の範囲、例えば、2:1~8:1の範囲、例えば、2:1~6:1の範囲、例えば、3:1~5:1の範囲、例えば、約4:1とすることができる。
【0018】
任意選択的に、ステップ(a)における混合物は、脂肪族アルコールに加えて水を含む。脂肪族アルコール対水のv/v比は、500以下:1、例えば、1:1~50:1の範囲、例えば、5:1~50:1の範囲、例えば、5:1~30:1の範囲、例えば、10:1~30:1の範囲、例えば、15:1~25:1の範囲、例えば、約20:1とすることができる。例えば、エタノール対水のv/v比は、500以下:1、例えば、1:1~50:1の範囲、例えば、5:1~50:1の範囲、例えば、5:1~30:1の範囲、例えば、10:1~30:1の範囲、例えば、15:1~25:1の範囲、例えば、約20:1とすることができる。
【0019】
一実施形態において、ステップ(a)の混合物は、式Iの化合物の硫酸塩を含む固体粗生成物を取得し、この固体粗生成物を脂肪族アルコール及び必要に応じて水に溶解することにより提供される。
【0020】
固体粗生成物を脂肪族アルコール及び任意選択的な水に溶解すると、過剰の硫酸が存在することから、pHが所望のpHよりも低くなることがある。pHを調整する場合、無機塩基は生成物を分解する可能性があるため、通常、使用を避けることが好ましいであろう。pHを調整、例えば上昇させるための代替法として、例えば、Amberlite(登録商標)から市販されている弱塩基性陰イオン交換樹脂等の陰イオン交換樹脂を使用することが挙げられる。一実施形態において、ステップ(a)の混合物には、約pH3~約pH6、例えば、約pH3.8~約pH6のpHが付与される。別の実施形態においては、約pH3~約pH5のpHが付与される。別の実施形態においては、約pH1~約pH5のpHが付与される。別の実施形態においては、約pH3~約pH4.5のpHが付与される。別の実施形態においては、約pH3.8~約pH4.5のpHが付与される。別の実施形態においては、約4のpHが付与される。一般に、pHは、混合物が油状に変化しない値まで上昇させるが、式Iの化合物の硫酸塩の溶解性が過度に高くならないように、上昇させ過ぎない。
【0021】
一般に、固体粗生成物の脂肪族アルコール(及び任意選択的な水)中への溶解は、式Iの化合物を溶解させるのに十分に高いが、式Iの化合物が、例えば加水分解によって分解しないように過度に高くない、適切な温度で行われるであろう。例えば、溶解温度は-70℃~50℃の範囲、例えば、0℃~40℃の範囲、例えば、15℃~30℃の範囲、例えば、20℃~25℃の範囲、例えば、少なくとも-70℃、例えば、少なくとも0℃、例えば、少なくとも15℃、例えば、50℃以下、例えば、40℃以下、例えば、30℃以下、例えば、25℃以下とすることができる。混合物は、48時間以下、例えば、30時間以下、例えば、24時間以下、例えば、1~48時間の範囲、例えば、5~30時間の範囲、例えば、12~24時間の範囲の時間、これらの温度のままにすることができ、その間中、撹拌してもよい。
【0022】
ステップ(b)は、混合物を冷却することにより、式Iの化合物の硫酸塩の第1の分量を混合物から結晶化させることを含むことができる。例えば、混合物は、開始温度(例えば、溶解温度)から-25℃~20℃の範囲の温度(例えば、少なくとも-25℃、例えば、20℃以下)まで、例えば、-15℃~20℃の範囲の温度(例えば、少なくとも-15℃、例えば、20℃以下)まで、例えば、5℃~20℃の範囲の温度(例えば、少なくとも5℃、例えば、20℃以下)まで、例えば、5℃~15℃の範囲の温度(例えば、少なくとも5℃、例えば、15℃以下)まで、例えば、約10℃の温度まで冷却することができる。開始温度(例えば、通常、溶解温度)は、5℃~40℃の範囲の温度(例えば、少なくとも5℃、例えば、40℃以下)、例えば、20℃~40℃の範囲の温度(例えば、少なくとも20℃、例えば、40℃以下)、例えば、20℃~30℃の範囲の温度(例えば、少なくとも20℃、例えば、30℃以下)とすることができる。混合物を冷却する時間は、例えば、10分間~48時間、例えば、5~15時間の範囲、例えば、8~12時間の範囲とすることができるが、より高い温度で長い時間が経過すると分解の可能性があることに留意されたい。
【0023】
用いることができる冷却速度の例は、例えば、毎時3℃以下、例えば、毎時2℃以下、例えば、毎時1.5℃以下、例えば、毎時1℃以下、例えば、毎時0.2~3℃の範囲、例えば、毎時0.5~1.5℃の範囲、例えば、毎時約1℃である。
【0024】
ステップ(b)において、混合物は、好適な期間、例えば、10日間以下、例えば、1~10日間の範囲で、-10℃~20℃の範囲の温度(例えば、少なくとも-10℃、例えば、20℃以下)、例えば、0℃~15℃の範囲(例えば、少なくとも0℃、例えば、15℃以下)、例えば、約10℃で静置することができる。静置期間をより長くすると、例えば、少なくとも3日間、例えば、4~10日間の範囲、例えば、4~5日間の範囲とすると、油状生成物となるのを回避しながら収率を増加させることができる。混合物を静置する期間は種結晶を添加することで短縮することができる。
【0025】
ステップ(c)において、非プロトン性有機溶媒は、C4~C10アルキル若しくはC4~C10アルケニル又はこれらの混合物とすることができる。具体例として、ヘキサン及びヘプタン又はこれらの混合物、例えば、n-ヘキサン又はn-ヘプタン又はこれらの混合物等が挙げられる。一実施形態において、非プロトン性溶媒はn-ヘプタンである。他の具体例として、1-ヘキセン又は1-ヘプテン等のヘキセン及びヘプテンが挙げられる。別の実施形態において、非プロトン性溶媒は1-ヘキセンである。
【0026】
ステップ(c)において使用される非プロトン性有機溶媒の体積は、ステップ(a)における混合物の体積の、8倍以下、例えば、6倍以下、例えば、4倍以下、例えば、少なくとも0.05倍、例えば、少なくとも0.1倍、例えば、少なくとも0.5倍、例えば、少なくとも1倍、例えば、少なくとも3倍、例えば、ステップ(a)における混合物の体積の0.05~8倍の範囲、例えば、ステップ(a)における混合物の体積の0.1~8倍の範囲、例えば、0.5~6倍の範囲、例えば、1~6倍の範囲、例えば、3~5倍の範囲とすることができる。
【0027】
非プロトン性有機溶媒は、適切な期間に亘り、例えば、10分間~48時間の範囲、例えば、1~30時間の範囲、例えば、2~12時間の範囲に亘り添加することができる。この期間の温度は、-10℃~20℃の範囲(例えば、少なくとも-10℃、例えば、20℃以下)、例えば、0℃~15℃の範囲(例えば、少なくとも0℃、例えば、15℃以下)、例えば、約10℃とすることができる。この期間中、混合物を撹拌してもよい。
【0028】
非プロトン性溶媒を添加した後、混合物を適切な期間、例えば、5日間以下、例えば、1時間~5日間の範囲、例えば、-10℃~20℃の範囲の温度(例えば、少なくとも-10℃、例えば、20℃以下)、例えば、0℃~15℃の範囲(例えば、少なくとも0℃、例えば、15℃以下)、例えば、約10℃で静置することができる。生成物を乾燥させてもよい。
【0029】
ステップ(a)は、式Iの化合物の硫酸塩及びエタノール及び必要に応じて水を含む混合物を提供することを含むことができ、ステップ(c)は、プロパノール(任意のその異性体、例えば、プロパン-1-オール、イソプロパノールを含む)及び/又はブタノール(任意のその異性体、例えば、n-ブタン-1-オール、n-ブタン-2-オール、t-ブタン-1-オール、t-ブタン-2-オールを含む)、好ましくはイソプロパノールと、ヘキサン及びヘプタン並びにこれらの混合物から選択される非プロトン性有機溶媒、好ましくはn-ヘプタンと、を混合物に加え、式Iの化合物の硫酸塩の追加の分量を混合物から析出させることを含むことができる。プロパノール及び/又はブタノールを非プロトン性有機溶媒よりも先に混合物に添加してもよく、プロパノール及び/又はブタノールを添加した後の非プロトン性有機溶媒を添加する前に混合物を静置することにより、例えば、式Iの化合物の硫酸塩の一部を非プロトン性溶媒を添加する前に混合物から析出させてもよい。
【0030】
一実施形態によれば、本発明は、式Iの化合物の硫酸塩を精製するための方法であって:
(a)式Iの化合物の硫酸塩及びエタノール及び必要に応じて水を含む混合物を提供するステップであって、混合物のpHは約pH1~約pH6の範囲にある、ステップと;
(b)混合物から式Iの化合物の硫酸塩の第1の分量を結晶化させるステップと;
(c1)混合物にプロパノール及び/又はブタノールを添加し、式Iの化合物の硫酸塩の追加の分量を混合物から析出させるステップと;
(c2)混合物にヘキセン、ヘプテン、ヘキサン、若しくはヘプタン、又はこれらの混合物を添加し、式Iの化合物の硫酸塩の更なる追加の分量を混合物から析出させるステップと;
を含む方法を提供する。
【0031】
プロパノール及び/又はブタノールの混合物への添加は、10分間~48時間の範囲、例えば、1~30時間の範囲、例えば、2~24時間の範囲の期間に亘り行うことができる。この期間の温度は、-10℃~20℃の範囲(例えば、少なくとも-10℃、例えば、20℃以下)、例えば、0℃~15℃の範囲(例えば、少なくとも0℃、例えば、15℃以下)、例えば、約10℃とすることができる。この期間中、混合物を撹拌してもよい。プロパノール及び/又はブタノールを添加(additional)した後、非プロトン性溶媒を添加する前に、適切な期間、例えば、5日間以下、例えば、1時間~5日間、例えば、-10℃~20℃の範囲の温度(例えば、少なくとも-10℃、例えば、20℃以下)、例えば、5℃~15℃の範囲(例えば、少なくとも0℃、例えば、15℃以下)、例えば、約10℃で静置することができる。
【0032】
プロパノール及び/又はブタノールの体積は、ステップ(a)における混合物の体積の8倍以下、例えば、6倍以下、例えば、5倍以下、例えば、ステップ(a)における混合物の体積の、例えば、少なくとも0.05倍、例えば、少なくとも0.1倍、例えば、少なくとも1倍、例えば、少なくとも4倍、例えば、0.05~8倍の範囲、例えば、0.1~6倍の範囲、例えば、1~6倍の範囲、例えば、4~6倍の範囲とすることができる。
【0033】
非プロトン性有機溶媒対プロパノール及び/又はブタノールのv/v比は、例えば、1:10~10:1、例えば、1:5~5:1、例えば、1:2~2:1とすることができる。
【0034】
一実施形態によれば、本発明は、式Iの化合物の硫酸塩を精製するための方法であって、
(a)式Iの化合物の硫酸塩及び脂肪族アルコールを含む混合物を提供するステップであって、脂肪族アルコールは、C2~C10アルキル-OH若しくはC3~C10シクロアルキル-OH又はこれらの混合物であり、脂肪族アルコール対式Iの化合物の硫酸塩のv/w比は、1:1~100:1の範囲(例えば、1:1~10:1)にあり、混合物のpHは、約pH3~約pH5の範囲にある、ステップと;
(b)混合物から式Iの化合物の硫酸塩の第1の分量を結晶化させるステップと;
(c)混合物に非プロトン性有機溶媒を添加し、式Iの化合物の硫酸塩の追加の分量を混合物から析出させるステップであって、非プロトン性有機溶媒は、C4~C10アルキル若しくはC4~C10アルケニル又はこれらの混合物であり、ステップ(c)において使用される非プロトン性有機溶媒の体積は、ステップ(a)における混合物の体積の0.05~8倍の範囲にある、ステップと;
を含む、方法を提供する。
【0035】
一実施形態によれば、本発明は、式Iの化合物の硫酸塩を精製するための方法であって、
(a)式Iの化合物の硫酸塩及び脂肪族アルコールを含む混合物を提供するステップであって、脂肪族アルコールは、エタノール、プロパノール、ブタノール、若しくはペンタノール、又はこれらの混合物であり、脂肪族アルコール対式Iの化合物の硫酸塩のv/w比は、1:1~100:1の範囲にあり、混合物のpHは、約pH3~約pH5の範囲にある、ステップと;
(b)混合物から式Iの化合物の硫酸塩の第1の分量を結晶化させるステップと;
(c)混合物に非プロトン性有機溶媒を添加し、式Iの化合物の硫酸塩の追加の分量を混合物から析出させるステップであって、非プロトン性有機溶媒は、ヘキサン若しくはヘプタン又はこれらの混合物であり、非プロトン性有機溶媒の体積は、ステップ(a)における混合物の体積の0.5~6倍の範囲にある、ステップと;
を含む、方法を提供する。
【0036】
一実施形態によれば、本発明は、式Iの化合物の硫酸塩を精製するための方法であって、
(a)式Iの化合物の硫酸塩及び脂肪族アルコールを含む混合物を提供するステップであって、脂肪族アルコールは、エタノール、プロパノール、ブタノール、若しくはペンタノール、又はこれらの混合物であり、脂肪族アルコール対式Iの化合物の硫酸塩のv/w比は、2:1~6:1の範囲にあり、混合物のpHは、約pH3~約pH5の範囲にある、ステップと;
(b)混合物から式Iの化合物の硫酸塩の第1の分量を結晶化させるステップと;
(c)混合物に非プロトン性有機溶媒を添加し、式Iの化合物の硫酸塩の追加の分量を混合物から析出させるステップであって、非プロトン性有機溶媒は、ヘキサン若しくはヘプタン又はこれらの混合物であり、非プロトン性有機溶媒の体積は、ステップ(a)における混合物の体積の1~6倍の範囲にある、ステップと;
を含む方法を提供する。
【0037】
一実施形態によれば、本発明は、式Iの化合物の硫酸塩を精製するための方法であって、
(a)式Iの化合物の硫酸塩、水、及びエタノールを含む混合物を提供するステップであって、エタノール対式Iの化合物の硫酸塩のv/w比は、2:1~6:1の範囲にあり、エタノール対水のv/v比は、15:1~25:1であり、混合物のpHは、約pH3~約pH5の範囲にある、ステップと;
(b)混合物から式Iの化合物の硫酸塩の第1の分量を結晶化させるステップと;
(c1)混合物にプロパノール及び/又はブタノールを添加し、式Iの化合物の硫酸塩の追加の分量を混合物から析出させるステップであって、プロパノール及び/又はブタノールの体積は、ステップ(a)における混合物の体積の1~6倍である、ステップと;
(c2)混合物に非プロトン性有機溶媒を添加し、式Iの化合物の硫酸塩の更なる追加の分量を混合物から析出させるステップであって、非プロトン性有機溶媒は、ヘキサン若しくはヘプタン又はこれらの混合物であり、非プロトン性有機溶媒の体積は、ステップ(a)における混合物の体積の1~6倍の範囲にある、ステップと;
を含む方法を提供する。
【0038】
一実施形態によれば、本発明は、式Iの化合物の硫酸塩を精製するための方法であって、
(a)式Iの化合物の硫酸塩、水、及びエタノールを含む混合物を提供するステップであって、エタノール対式Iの化合物の硫酸塩のv/w比は、2:1~6:1の範囲にあり、エタノール対水のv/v比は、15:1~25:1であり、混合物のpHは、約pH3~約pH5の範囲にある、ステップと;
(b)混合物を冷却し、式Iの化合物の硫酸塩の第1の分量を混合物から結晶化させるステップであって、冷却速度は毎時3℃以下である、ステップと;
(c1)混合物にプロパノール及び/又はブタノールを添加し、式Iの化合物の硫酸塩の追加の分量を混合物から析出させるステップであって、プロパノール及び/又はブタノールの体積は、ステップ(a)における混合物の体積の1~6倍である、ステップと;
(c2)混合物に非プロトン性有機溶媒を添加し、式Iの化合物の硫酸塩の更なる追加の分量を混合物から析出させるステップであって、非プロトン性有機溶媒は、ヘキサン若しくはヘプタン又はこれらの混合物であり、非プロトン性有機溶媒の体積は、ステップ(a)における混合物の体積の1~6倍の範囲にある、ステップと;
を含み、
ステップ(b)並びにステップ(c1)及び(c2)から得られる式Iの化合物の硫酸塩の合わせた分量中のエピマー:
【化3】

のモル比は、1:2~2:1の範囲にある、方法を提供する。
【0039】
更なる態様において、本発明は、結晶形態にある式Iの化合物の硫酸塩のエピマーBを調製するための方法であって、エピマーBは、エピマー:
【化4】

のうちの、移動相が酢酸トリエチルアンモニウム及びアセトニトリルの混合比40:60の混合物(pH6.5)である、フェニルカルバメート化β-シクロデキストリンで修飾されたキラルHPLCカラムから溶出する2番目のエピマーであり、
(a)式Iの化合物の硫酸塩及び脂肪族アルコールを含む混合物であって、pHが約pH1~約pH6の範囲にある混合物を提供するステップと;
(b)混合物からエピマーBを結晶化させるステップと;
を含む、方法を提供する。
【0040】
本発明の第一の態様に関連するステップ(a)及び(b)に関する上の説明は、可能であれば本発明の本態様のステップ(a)及び(b)にも適用される。
【0041】
更なる態様において、本発明は、固体形態にある式Iの化合物の硫酸塩のエピマーAを調製するための方法であって、エピマーAは、エピマー:
【化5】

のうちの、移動相が酢酸トリエチルアンモニウム及びアセトニトリルの混合比40:60の混合物(pH6.5)である、フェニルカルバメート化β-シクロデキストリンで修飾されたキラルHPLCカラムから溶出する1番目のエピマーであり、
(c)エピマーAの硫酸塩及び脂肪族アルコールを含む混合物に非プロトン性有機溶媒を添加し、混合物からエピマーAの硫酸塩を析出させるステップであって、混合物のpHは、約pH1~約pH6の範囲にあり、ステップ(c)からの析出物中のエピマーAのモル量はエピマーBのモル量を上回る、ステップを含む、方法を提供する。
【0042】
本発明の第一の態様に関するステップ(c)に関する上の説明(ステップ(c1)及び(c2)としてのステップ(c)の説明を含む)は、可能であれば、本発明の本態様のステップ(c)にも適用される。
【0043】
更なる態様において、本発明は、式Iの化合物の硫酸塩を、1つ以上の医薬品添加剤(pharmaceutical excipient)と配合することを含む、医薬組成物を調製するための方法であって、式Iの化合物の硫酸塩は、本明細書に記載する方法により精製されている、方法を提供する。
【0044】
更なる態様において、本発明は、式Iの化合物の硫酸塩及び1つ以上の医薬品添加剤を含む医薬組成物であって、式Iの化合物の硫酸塩は、本明細書に記載したように定義した方法により精製されている、医薬組成物を提供する。
【0045】
式Iの化合物の硫酸塩を含む医薬組成物は、当業者の共通の一般知識に従い、日常的に利用可能な医薬品添加剤を用いて調製することができる。医薬製剤は、注射用粉末又は経口投与用カプセル剤とすることができる。例えば、凍結乾燥粉末として市販されているイサブコナゾニウム硫酸塩は、添加剤であるマンニトール及びpH調整用の硫酸を含む静脈投与用粉末として、並びに添加剤である二クエン酸マグネシウム、微結晶セルロース、タルク、コロイド状二酸化シリカ(colloidal silica dioxide)、及びステアリン酸を含む経口投与用カプセル剤として市販されている。
【0046】
本明細書に記載するように精製された式Iの化合物の硫酸塩は、医薬組成物に直接配合することもできるし、或いは医薬組成物に配合する前に更なる処理工程を経ることもできる。例えば、経口投与用として承認されている製剤に使用されているように、例えば非晶質形態を生成するために、例えば、再析出させてもよい。例えば、注射用として承認されている製剤に使用されているように、例えば、好適な溶媒に溶解させて凍結乾燥させてもよい。
【0047】
アルキル基及びアルケニル基は直鎖であっても分岐であってもよい。「約」という語は所与の値に対し±5%、好ましくは2%、より好ましくは1%の変動があることを示唆している。言及する範囲は全て、規定した範囲の始点及び終点を包含する。本明細書に記載する本発明の全ての態様及び実施形態は、可能であれば、あらゆる組合せで組み合わせることもできる。
【0048】
本明細書においては、本発明及び本発明に関連する先行技術をより充分に記載及び開示することを目的として幾つかの刊行物を引用する。これらの参考文献のそれぞれを参照することにより、個々の参考文献がそれぞれ具体的且つ個別に参照により組み込まれることが示唆されているのと同程度に、その内容全体を本明細書における本開示に組み込む。
【0049】
本発明の特定の実施形態を以下の実施例に記載する。これらは本発明をより詳細に説明する役割を果たすが、本発明をいかなる形でも限定するものとみなすべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】式Iの化合物の硫酸塩のI形(Form I)のXRPD回折図を示すものである。
図2】式Iの化合物の硫酸塩のII形のXRPD回折図を示すものである。
【実施例
【0051】
実施例1
式Iの化合物の硫酸塩の粗生成物(HPLC純度93.7%)30gをエタノール90mL及び水10mLの混合物に溶解した。この溶液のpH値は3.5であった。次いで、得られた溶液を10℃から-20℃まで冷却した(毎時-1℃)。混合物を-20℃で16時間撹拌した後、5℃まで加温した。次いで混合物を5℃で16時間撹拌した。濾過及び乾燥させることにより、式Iの化合物の硫酸塩5gをI形の白色結晶として、HPLC純度98.5%、収率16.6%で得た(エピマー比は測定せず)。
【0052】
実施例2
式Iの化合物の硫酸塩の粗生成物(HPLC純度94.8%)75gをエタノール225mL及び水25mLの混合物に溶解し(pH2.8)、8℃で2日間撹拌した。濾過及び乾燥させることにより、式Iの化合物の硫酸塩18gをI形の白色結晶として、HPLC純度98%、収率24%で得た(エピマー比は測定せず)。
【0053】
実施例3
式Iの化合物の硫酸塩の粗生成物(HPLC純度85.2%)1gをエタノール3.6mL及び水0.4mLに溶解した。pH値は5.1となった。この溶液を25℃から19℃まで冷却し、式Iの化合物の硫酸塩の白色析出物0.55gを、HPLC純度92%、収率55%で得た。XRPD分析から、式Iの化合物の硫酸塩がII形結晶として得られたことが示された(エピマー比は測定せず)。
【0054】
実施例4
式Iの化合物の硫酸塩の粗生成物(HPLC純度85.2%)0.9gをエタノール4.5mL及び水0.5mLに溶解し、pH値を濃硫酸で3.7に調整した。溶液を20℃から-10℃まで15時間かけて冷却し、式Iの化合物の硫酸塩を析出させた。析出物を濾過して乾燥させることにより、II形結晶0.36gを、HPLC純度98%、収率36%で得た(エピマー比は測定せず)。
【0055】
実施例5
式Iの化合物の硫酸塩の粗生成物(HPLC純度85.2%)6gをエタノール36mL及び水4mLに溶解した。pH値は4.2であった。次いでこの溶液を20℃から-10℃まで15時間かけて冷却し、式Iの化合物の硫酸塩を析出させた。析出物を濾過して乾燥させることにより、II形結晶0.36gを収率35%で得た(エピマー比は測定せず)。
【0056】
実施例6
式Iの化合物の硫酸塩の粗生成物(HPLC純度95.6%)101gをエタノール400mL及び水20mLに溶解した。pH値は4.0であった。I形結晶1.0gを種結晶として添加した。次いで混合物を20~25℃で16時間撹拌し、10時間かけて10℃まで冷却し、0~10℃で5日間静置した。この期間に析出物が生成した。収率は35%であり、エピマーA対エピマーBの比は1:11であった。次いでイソプロパノール1.5Lを21時間かけて加え、n-ヘプタン2Lを12時間かけて投入した。濾過及び乾燥させることにより、式Iの化合物の硫酸塩52gをI形結晶として純度97.4%で得た。全収率は71.7%であり、エピマーA対エピマーB比は1:1.18であった。
【0057】
実施例7
式Iの化合物の硫酸塩の粗生成物(HPLC純度95.6%)10gをエタノール40mL及び水2mLに溶解した。pH値は4.0であった。I形結晶0.05gを種結晶として添加した。次いで混合物を20~25℃で16時間撹拌し、10時間かけて10℃まで冷却し、10℃で5日間静置した。濾過及び乾燥させることにより、式Iの化合物の硫酸塩2.2gをI形結晶として、純度99.0%、収率35%で得た。エピマーA対エピマーB比は1:10.8であった。
【0058】
実施例8
式Iの化合物の硫酸塩の粗生成物(BAL0008557-002)(HPLC純度94.9%)2.8gをシクロヘキサノール100mL及び水5mLに溶解し、pH値を4.1に調整した。I形結晶0.03gを種結晶として添加した。次いで混合物を20~25℃で16時間撹拌し、10時間かけて5~10℃まで冷却し、5℃で5日間静置した。次いでイソプロパノール75mLを2時間かけて加え、n-ヘプタン100mLを3時間かけて投入した。濾過及び乾燥させることにより、式Iの化合物の硫酸塩0.71gをI形結晶として純度98.1%で得た。全収率は40.5%であり、エピマーA対エピマーB比は1.89であった。
【0059】
実施例9
式Iの化合物の硫酸塩の粗生成物(BAL0008557-002)(HPLC純度94.9%)2gをn-ブタノール100mL及び水5mLに溶解し、pH値を4.0に調整した。I形結晶0.02gを種結晶として加えた。次いで混合物を20~25℃で16時間撹拌し、5~10℃まで10時間かけて冷却し、5℃で5日間静置した。次いでイソプロパノール75mLを21時間かけて加え、n-ヘプタン100mLを12時間かけて投入した。濾過及び乾燥させることにより、式Iの化合物の硫酸塩0.61gをI形結晶として純度98.2%で得た。全収率は48.8%であり、エピマーA対エピマーB比は2.26であった。
【0060】
実施例10
式Iの化合物の硫酸塩の粗生成物(BAL0008557-002)(HPLC純度94.9%)4gを無水エタノール200mLに溶解した。pH値を4.5に調整した。I形結晶0.08gを種結晶として添加した。次いで混合物を20~25℃で16時間撹拌し、5~10℃まで10時間かけて冷却し、5℃で5日間静置した。次いでイソプロパノール150mLを18時間かけて加え、n-ヘプタン200mLを12時間かけて投入した。濾過及び乾燥させることにより、式Iの化合物の硫酸塩1.25gをI形結晶として純度97.4%で得た。全収率は49.6%であり、エピマーA対エピマーB比は1.18であった。
【0061】
実施例11
式Iの化合物の硫酸塩の粗生成物(BAL0008557-002)(HPLC純度94.9%)10gをエタノール80mL及び水4mLに溶解し、pH値を4.4に調整した。I形結晶0.10gを種結晶として添加した。次いで混合物を20~25℃で16時間撹拌し、5~10℃まで10時間かけて冷却し、5℃で6日間静置した。次いでn-ヘプタン200mLを7時間かけて加えた。次いで混合物を0~5℃で48時間撹拌した。濾過及び乾燥させることにより、式Iの化合物の硫酸塩2.72gを純度95.8%で得た。全収率は36.0%であり、エピマーA対エピマーB比は0.80であった。
【0062】
実施例12
式Iの化合物の硫酸塩の粗生成物(BAL0008557-002)(HPLC純度94.9%)5gをエタノール40mL及び水2mLに溶解し、pH値を4.4に調整した。I形結晶0.05gを種結晶として添加した。次いで混合物を20~25℃で16時間撹拌し、5~10℃まで10時間かけて冷却し、5℃で6日間静置した。次いでn-ヘキサン100mLを8時間かけて加えた。次いで混合物を0~5℃で48時間撹拌した。濾過及び乾燥させることにより、式Iの化合物の硫酸塩1.95gを純度96.6%で得た。全収率は53.2%であり、エピマーA対エピマーB比は1.19であった。
【0063】
実施例13
式Iの化合物の硫酸塩の粗生成物(BAL0008557-002)(HPLC純度94.9%)5gをエタノール40mL及び水2mLに溶解し、pH値を4.4に調整した。I形結晶0.05gを種結晶として添加した。次いで混合物を20~25℃で16時間撹拌し、5~10℃まで10時間かけて冷却し、5℃で6日間静置した。次いで1-ヘキセン100mLを11時間かけて添加した。次いで混合物を0~5℃で48時間撹拌した。濾過及び乾燥させることにより、式Iの化合物の硫酸塩1.88gを純度96.9%で得た。全収率は51.5%であり、エピマーA対エピマーB比は1.20であった。
【0064】
実施例14
式Iの化合物の硫酸塩の粗生成物(BAL0008557-002)(HPLC純度94.9%)5gをエタノール40mL及び水2mLに溶解し、pH値を4.2に調整した。I形結晶0.05gを種結晶として添加した。次いで混合物を20~25℃で16時間撹拌し、5~10℃まで10時間かけて冷却し、5℃で6日間静置した。次いでイソプロパノール75mLを8時間かけて加え、次いでn-ヘプタン20mLを4時間かけて添加した。次いで混合物を0~5℃で48時間撹拌した。濾過及び乾燥させることにより、式Iの化合物の硫酸塩1.92gを純度97.8%で得た。全収率は55.7%であり、エピマーA対エピマーB比は1.89であった。
【0065】
実施例15
式Iの化合物の硫酸塩の粗生成物(BAL0008557-002)(HPLC純度94.9%)5gをエタノール40mL及び水2mLに溶解し、pH値を4.2に調整した。I形結晶0.05gを種結晶として添加した。次いで混合物を20~25℃で16時間撹拌し、5~10℃まで10時間かけて冷却し、5℃で6日間静置した。次いでn-ヘプタン20mLを4時間かけて添加した。次いで混合物を0~5℃で48時間撹拌した。濾過及び乾燥させることにより、式Iの化合物の硫酸塩1.30gを純度97.6%で得た。全収率は37.1%であり、エピマーA対エピマーB比は2.59であった。
【0066】
実施例16:式Iの化合物の硫酸塩の粗生成物の調製
式Iの化合物の硫酸塩の粗生成物(HPLC純度93面積%)13gをエタノール45mL及び水5mLの混合物に溶解した。pH値は2.3であった。溶液を-20℃に冷却し、再結晶させるために冷蔵庫で14日間静置した。濾過及び乾燥させることにより、式Iの化合物の硫酸塩5gをI形結晶として、HPLC純度97.8面積%、収率41%で得た(エピマー比は測定せず)。
【0067】
実施例17:式Iの化合物の硫酸塩のエピマーの分離
HPLCカラムとして、寸法250mm×4.6mmの資生堂(Shiseido)キラルCD-Ph 5μmカラムを使用した。HPLC用検出器の波長を290nmとし、カラム温度を40℃±5℃に維持した。HPLC用試料は、水、アセトニトリル、及びトリフルオロ酢酸を100:100:0.1の比で含む溶解用混合物50mLに生成物10mgを溶解し、振盪して均質化することにより調製した。HPLC移動相は、酢酸トリエチルアンモニウム及びアセトニトリルの混合比40:60の混合物(pH6.5)とした。混合物を振盪して均質化し、脱気した。注入量を10μLとし、流速を1mL/分とした。
【0068】
エピマーの保持時間は次の通りである:
エピマーA:80分
エピマーB:84分
【0069】
実施例18:式Iの化合物の硫酸塩のI形及びII形の特性評価
ハイスループットXRPD構成(set-up)を用いてXRPDパターンを取得した。Hi-Star2次元検出器を備えたBruker GADDS回折装置にプレートを装着した。XRPDプラットフォームを、広い面間隔に関してはベヘン酸銀を使用し、狭い面間隔に関してはコランダムを使用して校正を行った。室温で単色CuKα線を使用し、XRPDパターンの特徴が最もよく現れる2θ=1.5°~41.5°の範囲でデータを収集した。各ウェルの回折パターンを2つの2θ範囲(第1フレーム1.5°≦2θ≦21.5°、第2フレーム19.5°≦2θ≦41.5°)で収集した。各フレームの露光時間を90秒間とした。XRPDパターンのバックグラウンド除去及びスムージングは行わなかった。XRPD分析に使用した担体材料は、X線に対し透明であり、バックグラウンドへの寄与がごくわずかであった。
【0070】
室温下におけるI形のXRPDを図1に示し、その回折図のピークを表1に示す。室温下におけるII形のXRPDを図2に示し、その回折図のピークを表2に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
比較例1(CN106565699)
式Iの化合物の硫酸塩の粗生成物5gを水50mLに溶解し、この溶液を0℃で飽和炭酸水素ナトリウムにて処理し、pHを7に調整した。次いで溶液を塩化メチレン50mLで抽出し、有機相を濃縮乾固した。粗生成物をメタノール10mLに-5℃で溶解し、次いで、濃縮乾固させた後、溶液を硫酸6.7g及び30%過酸化水素水8.3gで30分間処理した。生成物は分解が激しく、結晶性固体は生成しなかった。
【0074】
比較例2(CN106467534)
250mLのフラスコに、アセトン62mL、純水2.65mL、及び2-メトキシエタノール5mLを加えた。式Iの化合物の硫酸塩の粗生成物(HPLC純度97.2%、エピマーA対エピマーB比1:1)5gを加えた。溶液を0~10℃で1時間撹拌した後、酢酸エチル41mLを滴下し、溶液を0~5℃で10時間撹拌した。混合物を窒素中で濾過し、ケークを30分間乾燥させることにより、式Iの化合物の硫酸塩4gをI形結晶として、HPLC純度98.9%、収率71.6%で得た。エピマーA対エピマーBのエピマー比は1:16であった。
【0075】
比較例3(CN106467534)
250mLのフラスコに、アセトン62mL、純水2.65mL、及び2-メトキシエタノール5mLを加えた。次いで式Iの化合物の硫酸塩の粗生成物(HPLC純度92.8%エピマーA対エピマーB比3.2:1)5gを加えた。溶液を0~10℃で1時間撹拌した後、酢酸エチル41mLを滴下し、溶液を0~5℃で10時間撹拌した。混合物を窒素中で濾過し、ケークを30分間乾燥させることにより、式Iの化合物の硫酸塩0.7gをI形結晶として、HPLC純度96.3%、収率13%で得た。エピマーA対エピマーBのエピマー比は1:2であった。
図1
図2