(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】トリオルガノホスフィンを含有するエチレン系ポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 23/04 20060101AFI20240209BHJP
C08K 5/14 20060101ALI20240209BHJP
C08K 5/50 20060101ALI20240209BHJP
H01B 7/02 20060101ALI20240209BHJP
【FI】
C08L23/04
C08K5/14
C08K5/50
H01B7/02 F
(21)【出願番号】P 2021509857
(86)(22)【出願日】2019-09-12
(86)【国際出願番号】 US2019050748
(87)【国際公開番号】W WO2020056088
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-08-29
(32)【優先日】2018-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】505477235
【氏名又は名称】ジョージア テック リサーチ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【氏名又は名称】井口 司
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】チャウダリー、バーラト
(72)【発明者】
【氏名】コーゲン、ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】リオッタ、チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】ポレット、パメラ
(72)【発明者】
【氏名】サルンガドハラン、サラス
【審査官】谷合 正光
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-525454(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104311917(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0215899(US,A1)
【文献】特表2004-504435(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0187111(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/04
C08K 5/14
C08K 5/50
H01B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
(i)エチレン系ポリマーと、
(ii)有機過酸化物と、
(iii)構造(1)を有するトリオルガノホスフィン:
【化1】
式中、R
1、R
2、およびR
3は、それぞれ独立して、C
1~C
40ヒドロカルビル基、C
1~C
40ヘテロヒドロカルビル基、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、
ただし、リン原子は、R
1、R
2、およびR
3それぞれにおける炭素原子に結合している、と、
(iv)
スルホン酸、スルフェン酸、スルフィン酸、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるプロトン酸
であるプロトン酸源化合物(「PASC」)と、を含む、組成物
であって、
前記組成物が、2時間にわたり100℃で加熱した後に、70%~100%の過酸化物保持割合を有する組成物。
【請求項2】
R
1、R
2、およびR
3が、それぞれ独立して、フェニル基、p-トリル基、2-フリル基、シクロヘキシル基、およびn-オクチル基からなる基から選択される、
請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
R
1、R
2、およびR
3が同じである、
請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記有機過酸化物が過酸化ジクミルである、
請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が、前記組成物の総重量を基準として、0.001重量%超~1.0重量%の、前記構造(1)を有する前記トリオルガノホスフィンを含み、
R
1、R
2、およびR
3がそれぞれ、フェニル基である、
請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、前記組成物の総重量を基準として、0.001重量%~1.0重量%の、前記構造(1)を有する前記トリオルガノホスフィンを含み、
R
1、R
2、およびR
3がそれぞれ、p-トリル基である、
請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が、前記組成物の総重量を基準として、0.001重量%~1.0重量%の、前記構造(1)を有する前記トリオルガノホスフィンを含み、
R
1、R
2、およびR
3がそれぞれ、2-フリル基である、
請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が、前記組成物の総重量を基準として、0.001重量%~1.0重量%の、前記構造(1)を有する前記トリオルガノホスフィンを含み、
R
1、R
2、およびR
3がそれぞれ、
シクロヘキシル基またはn-オクチル基である、
請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物が、21日にわたり70℃で加熱した後に、100%の保持MHを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物を
架橋温度に加熱することにより作製された、架橋製品。
【請求項11】
被覆された導体であって、
導体と、
請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物または
請求項10に記載の架橋製品を含む、前記導体上の被覆と、を含む、被覆された導体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、架橋性組成物およびこれを含む被覆された導体に関する。
【発明の概要】
【0002】
エチレン系ポリマーと有機過酸化物とを含有する架橋性組成物は、電線およびケーブル用の被覆、特に絶縁体または外被層を形成するために頻繁に使用される。しかしながら、架橋性組成物中の酸化防止剤などの添加剤に含有されているかまたはこれから生成され得るプロトン酸は、架橋性組成物の架橋にとって非生産的な経路を介して有機過酸化物の早期分解を引き起こすことが知られている。すなわち、組成物が経時的に貯蔵されるか、または組成物が導体上に押し出されると、有機過酸化物は、所望のフリーラジカル架橋反応をもたらさないイオン経路で分解する。貯蔵および押出中に組成物において十分な量の有機過酸化物が保持されないと、被覆された導体を作製する押出後に行われる後続の連続加硫ステップにおいて組成物が架橋することができず、それにより、被覆された導体は、電線およびケーブルの用途にとって好適ではなくなる。
【0003】
電線およびケーブルの用途に適した、エチレン系ポリマーと、有機過酸化物と、プロトン酸源化合物とを含有する被覆組成物の必要性を認識している。さらに、貯蔵中におけるまたは約140℃以下の押出温度における有機酸化物のイオン分解を防止または遅延して、それにより、組成物が好適な量の有機過酸化物を保持し、続いて(約140℃超の温度での)連続加硫中に被覆組成物が架橋することを可能にする、エチレン系ポリマーと、有機過酸化物と、プロトン酸源化合物とを含有する被覆組成物の必要性を認識している。
【0004】
本開示は、組成物を提供する。この組成物は、(i)エチレン系ポリマーと、(ii)有機過酸化物と、(iii)トリオルガノホスフィンと、(iv)プロトン酸、プロトン酸発生剤化合物(「PAGC」)、およびそれらの組み合わせから選択されるプロトン酸源化合物(「PASC」)と、を含む。トリオルガノホスフィンは、構造(1)を有する:
【化1】
[式中、R
1、R
2、およびR
3は、それぞれ独立して、C
1~C
40ヒドロカルビル基、C
1~C
40ヘテロヒドロカルビル基、およびそれらの組み合わせから選択され、
ただし、リン原子は、R
1、R
2、およびR
3それぞれにおける炭素原子に結合している]。
【0005】
本開示は、組成物を架橋するのに十分な温度に組成物を加熱することにより作製された架橋製品も提供する。架橋製品は、導体上の被覆であり得る。
【0006】
定義
元素周期表へのいかなる参照も、CRC Press,Inc.により1990-1991に発行されたときのものである。この表における元素の族への参照は、族の番号付けの新しい表記法による。
【0007】
米国特許慣行の目的のため、いかなる参照される特許、特許出願、または刊行物の内容も、特に定義の開示(本開示に具体的に提供されるいかなる定義とも矛盾しない程度まで)および当該技術分野の一般知識に関して、それらの全体が参照により組み込まれる(またはその同等の米国版が、参照によりそのように組み込まれる)。
【0008】
本明細書に開示される数値範囲は、下限値および上限値を含む、下限値から上限値のすべての値を含む。明示的な値を含有する範囲(例えば、1、2、または3~5、または6、または7の範囲)の場合、2つの明示的な値の間の部分範囲が含まれる(例えば、上記の範囲1~7には、部分範囲1~2、2~6、5~7、3~7、5~6等)。
【0009】
文脈から暗黙のうちに、または当該技術分野において慣習的にそうでないと述べられていない限り、全ての部およびパーセントは重量を基準としており、全てのテスト方法は本開示の出願日現在のものである。
【0010】
本明細書に開示される任意の例は、限定するものではない。
【0011】
「アルキル」および「アルキル基」とは、飽和直鎖状、環状、または分岐状炭化水素基を指す。
【0012】
「アルファ-オレフィン」、「α-オレフィン」、および同様の用語は、炭化水素分子または置換炭化水素分子(すなわち、例えば、ハロゲン、酸素、窒素など、水素および炭素以外の1つ以上の原子を含む炭化水素分子)を指し、炭化水素分子は、(i)唯一のエチレン系不飽和であって、この不飽和が、第1の炭素原子と第2の炭素原子との間に位置する、唯一のエチレン系不飽和と、(ii)少なくとも2個の炭素原子、または3~20個の炭素原子、または4~10個の炭素原子、または4~8個の炭素原子と、を含む。α-オレフィンの例としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ドデセン、およびこれらのモノマーのうちの2つ以上からの混合物が挙げられる。
【0013】
「酸化防止剤」は、ポリマーの加工中に起こり得る酸化を最小限に抑えるために使用することができる化学的化合物の種類またはクラスを指す。
【0014】
「ブレンド」、「ポリマーブレンド」などの用語は、2つ以上のポリマーの組成物である。そのようなブレンドは、混和性であっても、そうでなくてもよい。このようなブレンドは、相分離していても、していなくてもよい。そのようなブレンドは、透過電子分光法、光散乱、X線散乱、およびドメイン構成を測定および/もしくは同定するために使用される任意の他の方法から決定されるような、1つ以上のドメイン構成を含んでも含まなくてもよい。
【0015】
「ケーブル」とは、保護絶縁体、外被またはシース内の少なくとも1つの導体、例えば、電線、光ファイバなどのことである。ケーブルは、一般的な保護外被またはシース内で共に結合した2つ以上の電線または2つ以上の光ファイバであってもよい。組み合わせケーブルは、電気電線および光ファイバの両方を含有し得る。外被またはシース内部の個々の電線またはファイバは、むき出しであってもよく、カバーされてもよく、または絶縁されてもよい。典型的なケーブル設計は、USP5,246,783、USP6,496,629、およびUSP6,714,707に例証される。ケーブルは、低、中、および/または高電圧用途のために設計され得る。
【0016】
「カルボン酸」は、カルボキシル基(-COOH)を含有する有機酸である。
【0017】
「組成物」という用語は、組成物を含む材料の混合物、ならびに組成物の材料から形成された反応生成物および分解生成物を指す。
【0018】
「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語、およびそれらの派生語は、任意の追加の構成要素、ステップ、または手順が、具体的に開示されるかに関わらず、それらの存在を除外するようには意図されない。疑念を避けるために、「含む」という語の使用を通じて請求項に記載される全ての組成物は、反対の記述がない限り、重合されているかどうかに関わらず、追加の添加剤、助剤、または化合物を含み得る。対照的に、「から実質的になる」という用語は、任意の後続の詳述の範囲から、操作性に必要不可欠ではないものを除き、任意の他の構成成分、ステップ、または手順を除外する。「~からなる(consisting of)」という用語は、具体的に記述または列挙されていない任意の成分、ステップ、または手順を除外する。「または」という用語は、別途記載がない限り、列挙された部材を個々に、および任意の組み合わせで指す。単数形の使用には、複数形の使用が含まれ、逆の場合も同じである。
【0019】
「導体」は、任意の電圧(DC、AC、または過渡)において、光および/または電気を伝導するための1つ以上の電線(複数可)または1つ以上のファイバ(複数可)である。導体は、単線/ファイバまたはマルチ電線/ファイバであってもよく、かつ撚線形態または管状形態であってもよい。好適な導体の非限定的な例としては、炭素、銀、金、銅、およびアルミニウムなどの様々な金属が挙げられる。導体はまた、ガラスまたはプラスチックのいずれかから作製された光学ファイバであり得る。導体は、保護シース内に配置されてもされなくてもよい。導体は、単一のケーブルでも、一緒に束ねられた複数のケーブル(すなわち、ケーブルコアまたはコア)であってもよい。
【0020】
「架橋性」および「硬化性」とは、物品に成形される前または後のポリマーが、硬化も架橋もされておらず、実質的な架橋を誘発した処理に供されても曝露されてもいないが、ポリマーが、そのような処理(例えば、熱への曝露)に供されるかまたは曝露されたときに実質的な架橋をもたらす添加剤(複数可)または官能基を含み得ることを示す。ポリマーまたは組成物の架橋性は、高温でムービングダイレオメーター(MDR)において試験して弾性トルクの変化を測定することにより評価され得る。
【0021】
「架橋された」および類似する用語は、ポリマー組成物が、物品に成形される前または後に、90重量パーセント以下のキシレンまたはデカリン抽出物(すなわち、10重量パーセント以上のゲル含有量)を有することを意味する。
【0022】
「硬化された」および類似する用語は、ポリマーが、物品に成形される前または後に、架橋を誘発する処理に供されたか、または曝露されたことを示す。
【0023】
「エチレン系ポリマー」、「エチレンポリマー」、または「ポリエチレン」とは、ポリマーの重量を基準として50重量%以上または過半量の重合エチレンを含有するポリマーのことであり、任意選択的に、1つ以上のコモノマーを含んでいてもよい。したがって、一般用語「エチレン系ポリマー」は、エチレンホモポリマーおよびエチレンインターポリマーを含む。好適なコモノマーは、アルファオレフィンである。「エチレン系ポリマー」および用語「ポリエチレン」は、互換可能に使用される。エチレン系ポリマー(ポリエチレン)の例としては、低密度ポリエチレン(LDPE)および直鎖状ポリエチレンが挙げられる。直鎖状ポリエチレンの例としては、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、極低密度ポリエチレン(VLDPE)、多成分エチレン系コポリマー(EPE)、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマー(オレフィンブロックコポリマー(OBC)としても知られる)、シングルサイト触媒直鎖状低密度ポリエチレン(m-LLDPE)、実質的に直鎖状または直鎖状のプラストマー/エラストマー、中密度ポリエチレン(MDPE)、および高密度ポリエチレン(HDPE)が挙げられる。一般に、ポリエチレンは、チーグラーナッタ触媒などの不均一触媒系、4族遷移金属およびメタロセン、非メタロセン金属中心、ヘテロアリール、ヘテロ原子アリールオキシエーテル、ホスフィンイミンなどの配位子構造を含む均一触媒系を使用して、気相流動床反応器、液相スラリープロセス反応器、または液相溶液プロセス反応器で生成され得る。不均一系触媒および/または均一系触媒の組み合わせもまた、単一反応器または二重反応器の構成のいずれかに使用することができる。ポリエチレンは、触媒なしで、高圧反応器内で製造することもできる。
【0024】
「エチレン/α-オレフィンポリマー」は、ポリマーの重量を基準として過半量の重合エチレンと、1つ以上のα-オレフィンコモノマーとを含有するポリマーである。
【0025】
「エチレンマルチブロックインターポリマー」、「エチレンマルチブロックコポリマー」(または「OBC」)、および類似する用語は、好ましくは線状方式で結合された2つ以上の化学的に異なる領域または区分(「ブロック」と称される)を含むエチレン系ポリマー、すなわち、ペンダントまたはグラフト様式ではなく、重合エチレン性官能基に関して端部と端部とが結合している化学的に区別された単位を含むポリマーを指す。好ましい実施形態では、ブロックは、組み込まれたコモノマーの量またはタイプ、密度、結晶化度、そのような組成のポリマーに起因する結晶径、立体規則性の種類または程度(アイソタクチックまたはシンジオタクチック)、位置規則性または位置不規則性、分岐の量(長鎖分岐または超分岐を含む)、均質性、または任意の他の化学的もしくは物理的特性が異なる。連続的なモノマー添加、流動触媒、またはアニオン重合技術により生成されるコポリマーを含む従来技術のブロックコポリマーに比べて、マルチブロックコポリマーは、好ましい実施形態においては、それらの調製で使用される複数の触媒と組み合わせたシャトル剤(複数可)の効果を理由に、両ポリマー多分散性(PDIまたはMw/MnまたはMWD)の独特な分布、ブロック長分布、および/またはブロック数分布により特徴付けられる。代表的なエチレンマルチブロックインターポリマーとしては、The Dow Chemical CompanyによりINFUSE(商標)の商標で製造および販売されているエチレンマルチブロックインターポリマーが挙げられる。
【0026】
「エチレンプラストマー/エラストマー」とは、エチレンから誘導された単位と、少なくとも1つのC3~C10α-オレフィンコモノマー、または少なくとも1つのC4~C8α-オレフィンコモノマー、または少なくとも1つのC6~C8α-オレフィンコモノマーから誘導された単位とを含む、均一短鎖分岐分布を含有する、実質的に直鎖状または直鎖状のエチレン/α-オレフィンコポリマーのことである。エチレンプラストマー/エラストマーは、0.870g/cc、または0.880g/cc、または0.890g/cc~0.900g/cc、または0.902g/cc、または0.904g/cc、または0.909g/cc、または0.910g/cc、または0.917g/ccの密度を有する。エチレンプラストマー/エラストマーの例としては、AFFINITY(商標)プラストマーおよびエラストマー(The Dow Chemical Companyから入手可能)、EXACT(商標)プラストマー(ExxonMobil Chemicalから入手可能)、Tafmer(商標)(Mitsuiから入手可能)、Nexlene(商標)(SK Chemicals Co.から入手可能)、およびLucene(商標)(LG Chem Ltd.から入手可能)が挙げられる。
【0027】
「官能基」および同様の用語は、特定の化合物にその特徴的な反応を与えることに関与する原子の部分または群を指す。官能基の例としては、ヘテロ原子含有部分、酸素含有部分(例えば、加水分解性シラン、アルコール、アルデヒド、エステル、エーテル、ケトン、およびペルオキシド基)、および窒素含有部分(例えば、アミド、アミン、アゾ、イミド、イミン、硝酸塩、ニトリル、および亜硝酸塩基)が挙げられる。
【0028】
「ヘテロ原子」とは、炭素または水素以外の原子である。ヘテロ原子は、周期表の第IV、V、VI、およびVII族からの非炭素原子であり得る。ヘテロ原子の例としては、F、N、O、P、B、S、およびSiが挙げられる。
【0029】
「高密度ポリエチレン」(または「HDPE」)は、エチレンホモポリマーであるか、あるいは少なくとも1つのC4~C10α-オレフィンコモノマーまたはC4α-オレフィンコモノマー、および0.94g/cc、または0.945g/cc、または0.95g/cc、または0.955g/cc~0.96g/cc、または0.97g/cc、または0.98g/cc超の密度を有するエチレン/α-オレフィンコポリマーである。HDPEは、単峰性コポリマーまたは多峰性コポリマーであり得る。「単峰性エチレンコポリマー」とは、分子量分布を示すゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)において1つの明確なピークを有するエチレン/C4~C10α-オレフィンコポリマーのことである。「多峰性エチレンコポリマー」とは、分子量分布を示すGPCにおいて少なくとも2つの明確なピークを有するエチレン/C4~C10α-オレフィンコポリマーのことである。多峰性には、2つのピークを有するコポリマー(二峰性)、ならびに3つ以上のピークを有するコポリマーが含まれる。HDPEの例としては、DOW(商標)高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂(The Dow Chemical Companyから入手可能)、ELITE(商標)強化ポリエチレン樹脂(The Dow Chemical Companyから入手可能)、CONTINUUM(商標)二峰性ポリエチレン樹脂(The Dow Chemical Companyから入手可能)、LUPOLEN(商標)(Lyondell Basellから入手可能)、ならびにBorealis、Ineos、およびExxonMobilからのHDPE製品が挙げられる。
【0030】
「ヒドロカルビル」および「炭化水素」という用語は、分岐または非分岐の、飽和または不飽和の、環式、多環式または非環式の種を含む、水素および炭素原子のみを含有する置換基を指す。例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルカジエニル基、シクロアルケニル基、シクロアルカジエニル基、アリール基、およびアルキニル基が挙げられる。「ヘテロヒドロカルビル基」という用語は、分岐または非分岐の、飽和または不飽和の、環状、多環式または非環式の種を含む、水素原子、炭素原子、およびヘテロ原子を含有する置換基を指す。
【0031】
「外被」とは、導体の最も外側の被覆である。
【0032】
「直鎖状低密度ポリエチレン」(または「LLDPE」)は、エチレンから誘導された単位と、少なくとも1つのC3~C10α-オレフィンコモノマーまたは少なくとも1つのC4~C8α-オレフィンコモノマーまたは少なくとも1つのC6~C8α-オレフィンコモノマーから誘導された単位とを含む、不均一短鎖分岐分布を含有する直鎖状のエチレン/α-オレフィンコポリマーである。LLDPEは、従来のLDPEとは対照的に、長鎖分岐があるとしてもわずかであることを特徴とする。LLDPEは、0.916g/cc~0.925g/ccの密度を有する。LLDPEの例としては、TUFLIN(商標)直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(The Dow Chemical Companyから入手可能)、DOWLEX(商標)ポリエチレン樹脂(The Dow Chemical Companyから入手可能)、MARLEX(商標)ポリエチレン(Chevron Phillipsから入手可能)、およびAXELERON(商標)GP 6059 CPD(The Dow Chemical Companyから入手可能)が挙げられる。
【0033】
「低密度ポリエチレン」(または「LDPE」)は、0.915g/cc~0.925g/ccの密度を有し、かつ広いMWDの長鎖分岐を含有する、エチレンホモポリマー、または少なくとも1つのC3~C10α-オレフィン、もしくはC3~C4α-オレフィンを含むエチレン/α-オレフィンコポリマーである。LDPEは、典型的には、高圧フリーラジカル重合(フリーラジカル開始剤を用いる管状反応器またはオートクレーブ)の方式で生成される。LDPEの例としては、MarFlex(商標)(Chevron Phillips)、LUPOLEN(商標)(Lyondell Basell)、ならびにBorealis、Ineos、ExxonMobilなどからのLDPE製品が挙げられる。
【0034】
中密度ポリエチレン(または「MDPE」)は、エチレンホモポリマーであるか、または0.926g/cc~0.940g/ccの密度を有する、少なくとも1つのC3~C10α-オレフィンもしくはC3~C4α-オレフィンを含むエチレン/α-オレフィンコポリマーである。好適なMDPEの例としては、それぞれThe Dow Chemical Companyから入手可能なAXELERON(商標)FO 6548 BK CPD、AXELERON(商標)FO 6549 NT CPD、AXELERON(商標)FO 8864 NT CPD、およびAXELERON(商標)FO 8864 BK CPDが挙げられる。
【0035】
「多成分エチレン系コポリマー」(または「EPE」)は、エチレンから誘導された単位と、特許参考文献USP6,111,023、USP5,677,383、およびUSP6,984,695に記載されているような少なくとも1つのC3~C10α-オレフィンコモノマー、または少なくとも1つのC4~C8α-オレフィンコモノマー、または少なくとも1つのC6~C8α-オレフィンコモノマーから誘導された単位とを含む。EPE樹脂は、0.905g/cc、または0.908g/cc、または0.912g/cc、または0.920g/cc~0.926g/cc、または0.929g/cc、または0.940g/cc、または0.962g/ccの密度を有する。EPE樹脂の例としては、ELITE(商標)強化ポリエチレン(The Dow Chemical Companyから入手可能)、ELITE AT(商標)先端技術樹脂(The Dow Chemical Companyから入手可能)、SURPASS(商標)ポリエチレン(PE)樹脂(Nova Chemicalsから入手可能)、およびSMART(商標)(SK Chemicals Co.から入手可能)が挙げられる。
【0036】
「オレフィン系ポリマー」または「ポリオレフィン」は、(ポリマーの重量を基準として)50重量%以上または過半量の重合オレフィンモノマーを含有するポリマーであり、任意選択的に、少なくとも1つのコモノマーを含有してもよい。α-オレフィンモノマーの例としては、C2、またはC3~C4、またはC6、またはC8、またはC10、またはC12、またはC16、またはC18、またはC20α-オレフィン、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、および1-オクテンが挙げられる。オレフィン系ポリマーの例としては、エチレン系ポリマーおよびプロピレン系ポリマーが挙げられる。
【0037】
「ポリマー」は、同じタイプであるか異なるタイプであるかにかかわらず、モノマーを重合することにより調製されるポリマー化合物である。したがって、ポリマーという総称は、「ホモポリマー」(微量の不純物がポリマー構造に組み込まれ得るという理解の下で、1種類のモノマーのみから調製されたポリマーを指すために用いられる)、および「インターポリマー」という用語を包含し、これはコポリマー(2つの異なる種類のモノマーから調製されたポリマーを指すのに用いられる)、ターポリマー(3つの異なる種類のモノマーから調製されるポリマーを指すのに用いられる)、および3つより多くの異なる種類のモノマーから調製されるポリマーを含む。例えば、触媒残渣などの微量の不純物が、ポリマー中および/またはポリマー内に組み込まれ得る。また、例えばランダム、ブロックなどの全ての形態のコポリマーも包含する。「エチレン/α-オレフィンポリマー」および「プロピレン/α-オレフィンポリマー」という用語は、それぞれ重合エチレンまたはプロピレンと、1つ以上の追加の重合性α-オレフィンコモノマーとから調製される、上に説明するコポリマーを示す。ポリマーは、多くの場合、1つ以上の特定のモノマー「から作製される」、特定のモノマーもしくはモノマーの種類「に基づく」、または特定のモノマー含有量「を含有する」等と称されるが、この文脈において、「モノマー」という用語は、非重合種を指すのではなく、特定のモノマーの重合レムナント(remnant)を指すことに留意されたい。概して、本明細書中のポリマーは、対応するモノマーの重合形態である「単位」に基づくものを指す。
【0038】
「シース」は総称であり、ケーブルに関連して使用される場合、絶縁被覆または層、保護外被などを含む。
【0039】
「超低密度ポリエチレン」(または「ULDPE」)および「極低密度ポリエチレン」(または「VLDPE」)はそれぞれ、エチレンから誘導された単位と、少なくとも1つのC3~C10α-オレフィンコモノマー、または少なくとも1つのC4~C8α-オレフィンコモノマー、または少なくとも1つのC6~C8α-オレフィンコモノマーから誘導された単位とを含む、不均一短鎖分岐分布を含有する直鎖状のエチレン/α-オレフィンコポリマーである。ULDPEおよびVLDPEはそれぞれ、0.885g/cc、または0.90g/cc~0.915g/ccの密度を有する。ULDPEおよびVLDPEの例としては、ATTANE(商標)超低密度ポリエチレン樹脂(The Dow Chemical Companyから入手可能)およびFLEXOMER(商標)極低密度ポリエチレン樹脂(The Dow Chemical Companyから入手可能)が挙げられる。
【0040】
「電線」は、単一撚線の伝導性金属(例えば、銅もしくはアルミニウム)または単一撚線の光学ファイバである。
【0041】
試験方法
密度を、ASTM D792、方法Bに従って測定する。結果を、1立方センチメートル当たりのグラム(g)(g/ccまたはg/cm3)で記録する。
【0042】
融点(Tm)は、USP5,783,638に記載される、ポリオレフィンの融解ピークを測定するための示差走査熱量測定(DSC)技術により測定する。融点は、摂氏(℃)で報告する。
【0043】
過酸化物保持割合
「過酸化物保持割合」とは、2分の時間にわたり100℃で調節した後に同じ組成物中に存在する有機過酸化物の量(すなわち、有機過酸化物の著しい分解が起こる前の初期過酸化物量)と比較した、一定時間(0.5時間、1.0時間、1.5時間、または2.0時間)にわたり100℃に曝露した後に組成物中に存在する有機過酸化物の量である。
【0044】
(エチレン系ポリマーをシミュレートするために)過酸化ジクミル(DCP)、ドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA)、トリオルガノホスフィン、およびドデカンを含有するサンプル溶液を6ドラムのガラスバイアル内で形成する。この溶液を磁気撹拌棒で撹拌する。
【0045】
ガラスバイアルを、撹拌式ホットプレート上で100℃の温度で維持されて十分に撹拌された(500rpm)シリコンオイル浴に浸す。サンプル溶液を、100℃の温度に加熱し、混合しながら、2.0分、0.5時間、1.0時間、1.5時間、および2.0時間の時間にわたり100℃で維持する。サンプル溶液を、キャップまたは蓋のないガラスバイアル内で加熱する(言い換えれば、サンプル溶液を加熱中に大気に曝露する)。
【0046】
次に、サンプル溶液を、100℃で2分、0.5時間、1.0時間、1.5時間、および2.0時間の時間後に分析し、DCPの濃度または量を決定する。600μlのアリコートを、各ガラスバイアルから取り出し、1.5mLの小型遠心分離管に入れ、氷浴中で7~10分にわたり冷却し、VWR Galaxy Mini Centrifuge、モデルC1413内にて6,000rpmで遠心分離する。次に、350μlの透明な画分を各アリコートから取り出し、700μlのi-プロパノールと組み合わせ、液体クロマトグラフィーで分析し、画分中に存在するDCPの濃度を決定する。DCP量を、重量%またはモル%の単位で報告し、それから過酸化物保持割合に変換する。100℃で2分後に測定されるサンプル溶液中のDCP量を初期DCP量として参照する。
【0047】
過酸化物保持割合は、以下の等式(1)に従って計算される:
【数1】
式中、t=0.5時間、1.0時間、1.5時間、または2.0時間である。
【0048】
保持最大トルク(MH)
保持最大トルク(MH)は、最終的な架橋度の指標である(存在する過酸化物の量を示す)。MHは、以下のように決定される。Alpha TechnologiesのレオメーターMDRモデル2000ユニットを使用して、化合物についてムービングダイレオメーター(MDR)分析を実施する。この試験は、ASTMの手順D 5289、「Standard Test Method for Rubber-Property Vulcanization Using Rotorless Cure Meters」に基づく。MDR分析は、4~5グラムの材料(表5の化合物)を使用して、0時間においてtおよび21日においてtの時間間隔(t)で実施する。サンプルは、20分にわたり180℃もしくは182℃で、または最大120分にわたり140℃で、両方の温度条件について0.5度のアーク振動で試験する。試験する化合物は、架橋剤(例えば、有機過酸化物)を含むすべての必要な添加剤を含有している。
【0049】
MH保持割合は、以下の等式(2)に従って計算される:
【数2】
式中、t=70℃で21日である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本開示は、電線およびケーブルの用途に適した組成物を提供する。この組成物は、(i)エチレン系ポリマーと、(ii)有機過酸化物と、(iii)トリオルガノホスフィンと、(iv)プロトン酸、プロトン酸発生剤化合物(「PAGC」)、およびそれらの組み合わせから選択されるプロトン酸源化合物(「PASC」)と、を含む。トリオルガノホスフィンは、構造(1)を有する:
【化2】
[式中、R
1、R
2、およびR
3は、それぞれ独立して、C
1~C
40ヒドロカルビル基、C
1~C
40ヘテロヒドロカルビル基、およびそれらの組み合わせから選択され、
ただし、リン原子は、R
1、R
2、およびR
3それぞれにおける炭素原子に結合している]。
【0051】
一実施形態では、この組成物は、(i)エチレン系ポリマーと、(ii)有機過酸化物と、(iii)トリオルガノホスフィンと、(iv)プロトン酸、PAGC、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるPASCと、(v)任意選択的に添加剤と、を含む。
【0052】
i.エチレン系ポリマー
本組成物は、エチレン系ポリマーを含む。
【0053】
エチレン系ポリマーは、本明細書に開示される任意のエチレン系ポリマーであり得る。
【0054】
エチレン系ポリマーは、エチレンホモポリマーまたはエチレンインターポリマーであり得る。エチレン系ポリマーの例としては、LDPEおよび直鎖状ポリエチレンが挙げられる。直鎖状ポリエチレンの例としては、LLDPE、ULDPE、VLDPE、多成分エチレン系コポリマー(EPE)、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマー(オレフィンブロックコポリマー(OBC)としても知られている)、シングルサイト触媒直鎖状低密度ポリエチレン(m-LLDPE)、実質的に直鎖状または直鎖状のプラストマー/エラストマー、MDPE、およびHDPEが挙げられる。一実施形態では、エチレン系ポリマーは、LDPE、LLDPE、ULDPE、VLDPE、EPE、OBC、m-LLDPE、実質的に直鎖状または直鎖状のプラストマー/エラストマー、MDPE、HDPE、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0055】
一実施形態では、エチレン系ポリマーは、エチレン/α-オレフィンコポリマーである。さらなる実施形態では、エチレン/αオレフィンコポリマーは、エチレン/C3~C20αオレフィン、またはエチレン/C3~C10αオレフィン、またはエチレン/C4~C10αオレフィン、またはエチレン/C4~C8αオレフィンである。好適なα-オレフィンの例としては、1-ブテン、1-ヘキセン、および1-オクテンが挙げられる。
【0056】
一実施形態では、エチレン系ポリマーは、スチレンを含まないか、または実質的に含まない。
【0057】
一実施形態では、エチレン/αオレフィンコポリマーは、エチレンおよびC4~C8αオレフィンコモノマーからなる。言い換えれば、エチレン/C4~C8α-オレフィンコポリマーは、エチレンおよびC4~C8α-オレフィンコモノマーを唯一のモノマー単位として含む。
【0058】
エチレン系ポリマーは、官能化されていても、官能化されていなくてもよい。「官能化エチレン系ポリマー」は、官能基を含む。一実施形態では、官能基は、ポリマー鎖にペンダントでグラフトされている。官能基はまた、所望の官能基を含有する好適なモノマーの共重合を通して組み込まれてもよい。好適な官能基の例としては、ハロ基、特にクロロ基およびブロモ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、ホスホノ基、酸無水物基、アミノ基、アミン基、イミド基、エポキシ基、メルカプト基、スルフェート基、スルホネート基、アミド基、およびエステル基が挙げられる。予め形成されたエチレン系ポリマーにグラフトすることが可能な不飽和カルボン酸および酸無水物化合物の例としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、無水マレイン酸、および無水イタコン酸が挙げられる。一実施形態では、官能化エチレン系ポリマーは、無水マレイン酸官能化エチレン/α-オレフィンインターポリマーである。さらなる実施形態では、官能化エチレン系ポリマーは、無水マレイン酸官能化エチレン/オクテンインターポリマーである。エチレン系ポリマーとしては、エチレン-エチルアクリレートコポリマー、エチレン-メチルアクリレートコポリマー、エチレン-ブチルアクリレートコポリマー、エチレン-ビニルアクリレートコポリマー、エチレン-アクリル酸コポリマー、エチレン-ビニルトリメトキシシランコポリマー、または高圧反応器内で作製され、かつ0.2重量%~50重量%未満もしくは50重量%のコモノマーを含有する他のコポリマーのうちの1つ以上が挙げられ得る。
【0059】
一実施形態では、エチレン系ポリマーは、官能化されていない。
【0060】
エチレン系ポリマーは、エチレン系ポリマーの総重量を基準として、50重量%、または55重量%、または60重量%、または65重量%、または70重量%、または75重量%~80重量%、または85重量%、または90重量%、または95重量%、または100重量%のエチレンを含有している。
【0061】
一実施形態では、エチレン系ポリマーは、エチレン系ポリマーの総重量を基準として、55重量%、または60重量%、または65重量%、または70重量%、または75重量%~80重量%、または85重量%、または90重量%、または95重量%のエチレンと、相対応する量(reciprocal amount)のα-オレフィンコモノマー、すなわち5重量%、または10重量%、または15重量%、または20重量%、または25重量%、または30重量%、または35重量%、または40重量%、または45重量%のα-オレフィンコモノマーとを含有している。
【0062】
エチレン系ポリマーは、本明細書に開示される2つ以上の実施形態を含み得る。
ii.有機過酸化物
【0063】
本組成物は、有機過酸化物を含む。「有機過酸化物」は、以下の構造(2)を有する、少なくとも1個の炭素原子を含む化合物である:
R1-O-O-R2 構造(2)
[式中、R1およびR2は、それぞれ独立して、C1~C40ヒドロカルビル基、C1~C40ヘテロヒドロカルビル基、水素、およびそれらの組み合わせから選択され、
ただし、R1およびR2のうちの少なくとも1つは、C1~C40ヒドロカルビル基またはC1~C40ヘテロヒドロカルビル基である]。
【0064】
好適な有機過酸化物の例としては、過酸化ジクミル(DCP)、過酸化ラウリル、過酸化ベンゾイル、過安息香酸第三ブチル、過酸化ジ(第三ブチル)、クメンヒドロペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチル-ペルオキシ)ヘキシン-3、2,-5-ジ-メチル-2,5-ジ(t-ブチル-ペルオキシ)ヘキサン、第三ブチルヒドロペルオキシド、過炭酸イソプロピル、アルファ,アルファ’-ビス(第三ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキシル-モノカルボネート、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジヒドロキシペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、アルファ,アルファ’-ビス(t-ブチルペルオキシ)-p-ジイソプロピルベンゼン、ジ-(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、tert-ブチルクミルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0065】
好適な市販の有機過酸化物の非限定的な例としては、AkzoNobelのTRIGONOX(商標)およびARKEMAのLUPEROX(商標)が挙げられる。
【0066】
一実施形態では、有機過酸化物は、過酸化ジクミル(DCP)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチル-ペルオキシ)ヘキサン、ジ-(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、tert-ブチルクミルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0067】
一実施形態では、有機過酸化物は、過酸化ジクミル(DCP)である。
【0068】
一実施形態では、過酸化物は、ジアルキルペルオキシドである。「ジアルキルペルオキシド」は、以下の構造(2A)を有する化合物である:
R1-O-O-R2 構造(2A)
[式中、R1およびR2はそれぞれ、アルキル基である]。
【0069】
一実施形態では、構造(2A)のR1およびR2はそれぞれ、C1~C20アルキル基またはC1~C10アルキル基である。
【0070】
-OOH基を含む有機ヒドロペルオキシドは有機過酸化物から除外される。
【0071】
過酸化水素には炭素がないので、式H2O2を有する過酸化水素は有機過酸化物から除外される。
【0072】
有機過酸化物は、本明細書に開示される2つ以上の実施形態を含み得る。
【0073】
iii.トリオルガノホスフィン
本組成物は、トリオルガノホスフィンを含む。
【0074】
「トリオルガノホスフィン」は、以下の構造(1)を有する化合物である:
【化3】
[式中、R
1、R
2、およびR
3は、それぞれ独立して、C
1~C
40ヒドロカルビル基、C
1~C
40ヘテロヒドロカルビル基、およびそれらの組み合わせから選択され、
ただし、リン原子は、R
1、R
2、およびR
3それぞれにおける炭素原子に結合している]。
【0075】
トリオルガノホスフィンは、3個の炭素原子に結合したリン原子を含む。2個の炭素原子にのみ結合したリン原子を有するジホスフィンはトリオルガノホスフィンから除外される。
【0076】
一実施形態では、構造(1)のヒドロカルビル基は、C1~C20ヒドロカルビル基、またはC1~C10ヒドロカルビル基、またはC2~C8ヒドロカルビル基、またはC6~C8ヒドロカルビル基である。好適なC1~C40ヒドロカルビル基の例としては、フェニル基、p-トリル基、シクロヘキシル基、n-オクチル基が挙げられる。
【0077】
一実施形態では、構造(1)のヘテロヒドロカルビル基は、C1~C20ヘテロヒドロカルビル基、またはC1~C10ヒドロヘテロヒドロカルビルカルボニル基、またはC2~C8ヘテロヒドロカルビル基、またはC3~C8ヘテロヒドロカルビル基である。好適なC1~C40ヘテロヒドロカルビル基の例は、2-フリル基である。
【0078】
実施形態では、構造の(1)のR1、R2、およびR3は、それぞれ独立して、C6~C8ヒドロカルビル基、C3~C8ヘテロヒドロカルビル基、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0079】
一実施形態では、構造(1)のR1、R2、およびR3は、それぞれ独立して、フェニル基、p-トリル基、シクロヘキシル基、n-オクチル基、および2-フリル基から選択される。
【0080】
一実施形態では、構造(1)のR1、R2、およびR3は、それぞれ独立して、p-トリル基、シクロヘキシル基、n-オクチル基、および2-フリル基から選択される。
【0081】
一実施形態では、構造(1)のR1、R2、およびR3は、それぞれ独立して、フェニル基、p-トリル基、シクロヘキシル基、およびn-オクチル基から選択される。
【0082】
構造(1)において、R1、R2、およびR3は、同じであっても、異なっていてもよい。一実施形態では、R1、R2、およびR3は同じである。別の実施形態では、R1、R2、およびR3のうちの少なくとも2つまたはそれぞれが異なる。
【0083】
一実施形態では、R1、R2、およびR3はそれぞれ、フェニル基である。トリオルガノホスフィンは、トリフェニルホスフィンである。
【0084】
一実施形態では、R1、R2、およびR3はそれぞれ、p-トリル基である。トリオルガノホスフィンは、トリ(p-トリル)ホスフィンである。
【0085】
一実施形態では、R1、R2、およびR3はそれぞれ、シクロヘキシル基である。トリオルガノホスフィンは、トリ(シクロヘキシル)ホスフィンである。
【0086】
一実施形態では、R1、R2、およびR3はそれぞれ、n-オクチル基である。トリオルガノホスフィンは、トリ(n-オクチル)ホスフィンである。
【0087】
一実施形態では、R1、R2、およびR3はそれぞれ、2-フリル基である。トリオルガノホスフィンは、トリス(2-フリル)ホスフィンである。
【0088】
一実施形態では、トリオルガノホスフィンは、トリフェニルホスフィン、トリ(p-トリル)ホスフィン、トリ(シクロヘキシル)ホスフィン、トリ(n-オクチル)ホスフィン、トリス(2-フリル)ホスフィン、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0089】
一実施形態では、トリオルガノホスフィンは、トリ(p-トリル)ホスフィン、トリ(シクロヘキシル)ホスフィン、トリ(n-オクチル)ホスフィン、トリス(2-フリル)ホスフィン、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0090】
トリオルガノホスフィンは、本明細書に開示される2つ以上の実施形態を含み得る。
【0091】
iv.プロトン酸源化合物
本組成物は、プロトン酸源化合物を含む。
【0092】
「プロトン酸源化合物」(または「PASC」)は、プロトン酸またはプロトン酸発生剤化合物(「PAGC」)である。
A.プロトン酸
【0093】
「プロトン酸」とは、ポリオレフィン溶融押出または他の条件下で水素イオン(H+)を生成し、かつフリーラジカル分解の代わりに有機過酸化物のイオン分解を引き起こすことができる物質のことである。ポリオレフィン系のラジカルはプロトン酸から除外される。プロトン酸は、プロトン供与体として機能することができ、電子対を受容して共有結合を形成することができる。好適なプロトン酸の例としては、硫黄系の酸、カルボン酸、リン系の酸、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0094】
「硫黄系の酸」とは、硫黄原子を含む有機酸のことである。好適な硫黄系の酸の例としては、スルホン酸、スルフェン酸、スルフィン酸、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0095】
「スルホン酸」とは、以下の構造(3)の基を含む有機酸である:
【化4】
【0096】
好適なスルホン酸の例は、ドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA)である。
【0097】
「スルフェン酸」は、以下の構造(4)の基を含む有機酸である:
-S-O-H 構造(4)。
【0098】
好適なスルフェン酸の例は、メタンスルフェン酸である。
【0099】
「スルフィン酸」は、以下の構造(5)の基を含む有機酸である:
【化5】
。
【0100】
好適なスルフィン酸の例は、フェニルスルフィン酸である。
【0101】
「リン系の酸」とは、リン原子を含む有機酸のことである。好適なリン系の酸の例としては、亜リン酸、リン酸、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0102】
一実施形態では、プロトン酸は、スルホン酸、スルフェン酸、スルフィン酸、カルボン酸、およびそれらの組み合わせから選択される。さらなる実施形態では、プロトン酸は、スルホン酸、スルフェン酸、スルフィン酸、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0103】
プロトン酸は、本明細書に開示される2つ以上の実施形態を含み得る。
【0104】
B.プロトン酸発生剤化合物
「プロトン酸発生剤化合物」(または「PAGC」)とは、プロトン酸ではないが、本組成物の形成、貯蔵、加工、および/または押出中に、酸素および/または酸化生成物(例えば、ヒドロペルオキシド)と反応してプロトン酸に変換されるかまたはこれを生成する官能基を含む物質のことである。PAGCは、潜在的なプロトン酸である。組成物の形成(例えば、溶融混合)、貯蔵、加工、および/または押出中に、PAGCは、プロトン酸を生成する1回の反応または一連の反応を受ける。
【0105】
適切なPAGCの例としては、酸化防止剤(AO)、添加剤、充填剤、およびそれらの組み合わせが挙げられる。好適な酸化防止剤の例としては、亜リン酸塩酸化防止剤および硫黄系酸化防止剤が挙げられる。
【0106】
一実施形態では、PAGCは、亜リン酸塩酸化防止剤である。亜リン酸塩酸化防止剤およびそれらの酸化生成物(リン酸塩)は、(酸化防止剤としての)使用中および/または加工中に加水分解を受けて、リン系の酸を生成する。酸化は、加水分解の前または後に起こり得る。好適な亜リン酸塩酸化防止剤の例は、BASF Inc.からIRGAFOS(商標)168として市販されている亜リン酸トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)である。
【0107】
一実施形態では、PAGCは、硫黄系酸化防止剤である。硫黄系酸化防止剤は、本組成物の形成、貯蔵、加工、および/または押出中に酸化する。酸化生成物は、熱開裂を受けて、スルホン酸、スルフェン酸、スルフィン酸、およびそれらの組み合わせなどの硫黄系の酸を形成する。硫黄系の酸は、さらに酸化を受けて、より高い酸化状態を有する硫黄系の酸を形成し得る。硫黄系酸化防止剤の例としては、ジステアリルチオジプロピオネート(DSTDP)、4,4’-チオビス(2-t-ブチル-5-メチルフェノール)(例えば、Addivant Corporationから入手可能なLOWINOX(商標)TBM-6)、2,2’-チオビス(6-t-ブチル-4-メチルフェノール)(例えば、Addivant Corporationから入手可能なLOWINOX(商標)TBP-6)、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0108】
一実施形態では、PAGCはエステル添加剤である。エステルは、使用、加工、および/または貯蔵中に加水分解してカルボン酸を形成することがある。好適なエステル添加剤の例としては、ペンタエリトリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(例えば、BASFから入手可能なIRGANOX(商標)1010)、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(例えば、Ciba Inc.から入手可能なIRGANOX(商標)1076)、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0109】
一実施形態では、PAGCは、硫黄系酸化防止剤、亜リン酸塩酸化防止剤、エステル添加剤、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0110】
一実施形態では、PAGCは、硫黄系酸化防止剤、亜リン酸塩酸化防止剤、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0111】
PAGCは、本明細書に開示される2つ以上の実施形態を含み得る。
【0112】
本組成物は、組成物を形成する際にPAGC(例えば、硫黄系酸化防止剤)を含み得て、そしてPAGCが、プロトン酸(例えば、スルホン酸、スルフェン酸、および/またはスルフィン酸)を生成する反応(例えば、酸化)を受けたら、プロトン酸を含むだろう。ある時点で、組成物は、(i)PAGCのみ(プロトン酸はなし)、(ii)PAGCとプロトン酸との両方の組み合わせ、または(iii)プロトン酸のみ(PAGCはなし)を含み得る。
【0113】
PASC、さらにはPAGCは、エチレン系ポリマーとは異なる。言い換えれば、エチレン系ポリマーおよびエチレン系ポリマーからのいずれの酸化反応生成物も、PASC、さらにはPAGCから除外される。
【0114】
PASCは、本明細書に開示される2つ以上の実施形態を含み得る。
【0115】
v.任意選択的な添加剤
本組成物は、1つ以上の添加剤を含み得る。好適な添加剤の例としては、酸化防止剤、着色剤、腐食防止剤、潤滑剤、紫外線(UV)吸収剤または安定剤、ブロッキング防止剤、カップリング剤、相溶化剤、可塑剤、充填剤、加工助剤、湿気捕捉剤、スコーチ防止剤、金属不活性化剤、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0116】
添加剤は、本明細書に開示される2つ以上の実施形態を含み得る。
【0117】
vi.組成物
本組成物は、(i)エチレン系ポリマーと、(ii)有機過酸化物と、(iii)トリオルガノホスフィンと、(iv)プロトン酸、PAGC、およびそれらの組み合わせから選択されるPASCと、(v)任意選択的に添加剤と、を含む。トリオルガノホスフィンは、構造(1)を有する:
【化6】
[式中、R
1、R
2、およびR
3は、それぞれ独立して、C
1~C
40ヒドロカルビル基、C
1~C
40ヘテロヒドロカルビル基、およびそれらの組み合わせから選択され、
ただし、リン原子は、R
1、R
2、およびR
3それぞれにおける炭素原子に結合している]。
【0118】
一実施形態では、組成物は、組成物の総重量を基準として、45重量%、または50重量%、または55重量%、または60重量%、または65重量%、または70重量%~75重量%、または80重量%、または85重量%、または90重量%、または95重量%、または97重量%、または99重量%、または99.96重量%のエチレン系ポリマーを含む。
【0119】
一実施形態では、組成物は、組成物の総重量を基準として、0.02重量%、または0.05重量%、または0.1重量%、または0.5重量%、または1重量%~2重量%、または3重量%、または4重量%、または5重量%の有機過酸化物を含む。
【0120】
組成物は、組成物の総重量を基準として、0.001重量%、または0.003重量%、または0.005重量%、または0.007重量%、または0.01重量%、または0.02重量%、または0.05重量%~0.10重量%、または0.20重量%、または0.30重量%、または0.40重量%、または0.50重量%、または0.60重量%、または0.70重量%、または0.80重量%、または0.90重量%、または1.00重量%のトリオルガノホスフィンを含む。一実施形態では、組成物は、組成物の総重量を基準として、0.001重量%~1.00重量%、または0.01重量%~0.50重量%、または0.01重量%~0.10重量%、または0.001重量%超~1.00重量%、または0.01重量%超~0.50重量%、または0.01重量%超~0.10重量%、または0.05重量%~0.50重量%、または0.05重量%~0.10重量%のトリオルガノホスフィンを含む。
【0121】
一実施形態では、組成物は、組成物の総重量を基準として、0.001モル%、または0.002モル%、または0.004モル%、または0.01モル%、または0.1モル%~0.4モル%、または0.5モル%、または1.0モル%、または2.0モル%、または5.0モル%、または10モル%、または15モル%、または20モル%、または25モル%のトリオルガノホスフィンを含む。
【0122】
一実施形態では、組成物は、組成物の総重量を基準として、0.0001重量%、または0.001重量%、または0.01重量%、または0.05重量%、または0.1重量%、または0.5重量%、または1.0重量%、または5重量%、または10重量%、または15重量%~20重量%、または25重量%、または30重量%、または35重量%、または40重量%、または45重量%、または50重量%のPASCを含む。
【0123】
一実施形態では、組成物は、組成物の総重量を基準として、0重量%、または0重量%超、または0.001重量%、または0.002重量%、または0.005重量%、または0.006重量%~0.007重量%、または0.008重量%、または0.009重量%、または0.01重量%、または0.1重量%、または0.2重量%、または0.3重量%、または0.4重量%、または0.5重量%、または1.0重量%、または2.0重量%、または2.5重量%、または3.0重量%、または4.0重量%、または5.0重量%~6.0重量%、または7.0重量%、または8.0重量%、または9.0重量%、または10.0重量%、または15.0重量%、または20.0重量%の添加剤を含む。
【0124】
一実施形態では、組成物は、2時間にわたり100℃で加熱した後に、2%、または5%、または8%、または10%、または15%、または20%、または25%、または30%、または35%、または40%、または45%、または50%、または55%、または60%、または65%、または70%、または75%、または80%、または85%、または90%、または95%、または97%、または98%~100%の過酸化物保持割合を有する。さらなる実施形態では、組成物は、2時間にわたり100℃で加熱した後に、2%~100%、または5%~100%、または10%~100%、または15%~100%、または20%~100%、または50%~100%、または70%~100%、または80%~100%、または90%~100%、または95%~100%、または98%~100%の過酸化物保持割合を有する。特定の理論に束縛されることを望むものではないが、本組成物にトリオルガノホスフィンを含めると、組成物中にプロトン酸が存在することにより従来引き起こされた有機過酸化物のイオン分解が防止または遅延されると考えられる。本組成物の形成、貯蔵、加工、および/または押出中に有機過酸化物のイオン分解を停止または遅延することにより、トリオルガノホスフィンは、有機過酸化物を保持することを有利に可能にするので、有機過酸化物が存在して、導体上への本組成物の押出後のフリーラジカル架橋に利用可能である。本組成物の形成、貯蔵、加工、および/または押出中に有機過酸化物が十分に保持されないと、本組成物から形成された被覆は、導体上に押し出された後に架橋しないであろう。
【0125】
一実施形態では、組成物は、1.5時間にわたり100℃で加熱した後に、10%、または15%、または20%、または25%、または30%、または35%、または40%、または45%、または50%、または55%、または60%、または65%、または70%、または75%、または80%、または85%、または90%、または95%、または97%、または98%~100%の過酸化物保持割合を有する。
【0126】
一実施形態では、組成物は、1.0時間にわたり100℃で加熱した後に、20%、または25%、または30%、または35%、または40%、または45%、または50%、または55%、または60%、または65%、または70%、または75%、または80%、または85%、または90%、または95%、または97%、または98%~100%の過酸化物保持割合を有する。
【0127】
別の実施形態では、組成物は、0.5時間にわたり100℃で加熱した後に、51%、または53%、または55%、または60%、または65%、または70%、または75%、または80%、または85%、または90%、または95%、または97%、または98%~100%の過酸化物保持割合を有する。
【0128】
一実施形態では、組成物は、組成物の総重量を基準として、(i)45重量%、または50重量%、または55重量%、または60重量%、または65重量%、または70重量%~75重量%、または80重量%、または85重量%、または90重量%、または95重量%、または97重量%、または99重量%、または99.96重量%のエチレン系ポリマーと、(ii)0.02重量%、または0.05重量%、または0.1重量%、または0.5重量%、または1重量%~2重量%、または3重量%、または4重量%、または5重量%の有機過酸化物と、(iii)0.001重量%、または0.003重量%、または0.005重量%、または0.007重量%、または0.01重量%、または0.05重量%、または0.1重量%、または0.2重量%、または0.3重量%、または0.4重量%、または0.5重量%~0.6重量%、または0.7重量%、または0.8重量%、または0.9重量%、または1.0重量%のトリオルガノホスフィンと、(iv)0.0001重量%、または0.001重量%、または0.01重量%、または0.05重量%、または0.1重量%、または0.5重量%、または1.0重量%、または5重量%、または10重量%、または15重量%~20重量%、または25重量%、または30重量%、または35重量%、または40重量%、または45重量%、または50重量%のPASCと、(v)0重量%、または0重量%超、または0.001重量%、0.005重量%、または0.01重量%、または0.1重量%、または0.5重量%、または1.0重量%、または2.0重量%、または3.0重量%、または4.0重量%、または5.0重量%~6.0重量%、または7.0重量%、または8.0重量%、または9.0重量%、または10.0重量%、または15.0重量%、または20.0重量%の添加剤と、を含有しており、組成物は、以下の特性のうちの1つ、いくつか、またはすべてを有する:(a)2時間にわたり100℃で加熱した後に、2%、または5%、または8%、または10%、または15%、または20%、または25%、または30%、または35%、または40%、または45%、または50%、または55%、または60%、または65%、または70%、または75%、または80%、または85%、または90%、または95%、または97%、または98%~100%の過酸化物保持割合、および/または(b)1.5時間にわたり100℃で加熱した後に、10%、または15%、または20%、または25%、または30%、または35%、または40%、または45%、または50%、または55%、または60%、または65%、または70%、または75%、または80%、または85%、または90%、または95%、または97%、または98%~100%の過酸化物保持割合、および/または(c)1.0時間にわたり100℃で加熱した後に、20%、または25%、または30%、または35%、または40%、または45%、または50%、または55%、または60%、または65%、または、70%、または75%、または80%、または85%、または90%、または95%、または97%、または98%~100%、および/または(d)0.5時間にわたり100℃で加熱した後に、51%、または53%、または55%、または60%、または65%、または70%、または75%、または80%、または85%、または90%、または95%、または97%、または98%~100%の過酸化物保持割合。
【0129】
一実施形態では、組成物は、組成物の総重量を基準として、(i)45重量%、または50重量%、または55重量%、または60重量%、または65重量%、または70重量%~75重量%、または80重量%、または85重量%、または90重量%、または95重量%、または97重量%、または99重量%、または99.96重量%のエチレン系ポリマーと、(ii)0.02重量%、または0.05重量%、または0.1重量%、または0.5重量%、または1重量%~2重量%、または3重量%、または4重量%、または5重量%の有機過酸化物と、(iii)0.001重量%、または0.003重量%、または0.005重量%、または0.007重量%、または0.01重量%、または0.05重量%、または0.1重量%、または0.2重量%、または0.3重量%、または0.4重量%、または0.5重量%~0.6重量%、または0.7重量%、または0.8重量%、または0.9重量%、または1.0重量%のトリオルガノホスフィンと、(iv)0.0001重量%、または0.001重量%、または0.01重量%、または0.05重量%、または0.1重量%、または0.5重量%、または1.0重量%、または5重量%、または10重量%、または15重量%~20重量%、または25重量%、または30重量%、または35重量%、または40重量%、または45重量%、または50重量%の、スルホン酸、スルフェン酸、スルフィン酸、硫黄系酸化防止剤、およびそれらの組み合わせから選択されるPASCと、(v)0重量%、または0重量%超、または0.001重量%、0.005重量%、または0.01重量%、または0.1重量%、または0.5重量%、または1.0重量%、または2.0重量%、または3.0重量%、または4.0重量%、または5.0重量%~6.0重量%、または7.0重量%、または8.0重量%、または9.0重量%、または10.0重量%、または15.0重量%、または20.0重量%の添加剤と、を含有しており、組成物は、以下の特性のうちの1つ、いくつか、またはすべてを有する:(a)2時間にわたり100℃で加熱した後に、2%、または5%、または8%、または10%、または15%、または20%、または25%、または30%、または35%、または40%、または45%、または50%、または55%、または60%、または65%、または70%、または75%、または80%、または85%、または90%、または95%、または97%、または98%~100%の過酸化物保持割合、および/または(b)1.5時間にわたり100℃で加熱した後に、10%、または15%、または20%、または25%、または30%、または35%、または40%、または45%、または50%、または55%、または60%、または65%、または70%、または75%、または80%、または85%、または90%、または95%、または97%、または98%~100%の過酸化物保持割合、および/または(c)1.0時間にわたり100℃で加熱した後に、20%、または25%、または30%、または35%、または40%、または45%、または50%、または55%、または60%、または65%、または、70%、または75%、または80%、または85%、または90%、または95%、または97%、または98%~100%、および/または(d)0.5時間にわたり100℃で加熱した後に、51%、または53%、または55%、または60%、または65%、または70%、または75%、または80%、または85%、または90%、または95%、または97%、または98%~100%の過酸化物保持割合。
【0130】
一実施形態では、組成物は、組成物の総重量を基準として、0.001重量%、または0.003重量%、または0.005重量%、または0.007重量%、0.009重量%、または0.01重量%、0.04重量%、または0.05重量%、または0.09重量%、または0.10重量%超~0.50重量%、または1.0重量%のトリオルガノホスフィンを含有しており、構造(1)のR1、R2、およびR3はそれぞれ、フェニル基である。別の実施形態では、組成物は、組成物の総重量を基準として、0.001重量%超~1.0重量%、または0.005重量%超~1.0重量%、または0.01重量%超~1.0重量%、または0.05重量%超~1.0重量%のトリオルガノホスフィンを含有しており、構造(1)のR1、R2、およびR3はそれぞれ、フェニル基である。一実施形態では、組成物は、2時間にわたり100℃で加熱した後に、70%、または80%、または90%、または95%、または97%、または98%、または98.2%~100%の過酸化物保持割合を有する。
【0131】
一実施形態では、組成物は、組成物の総重量を基準として、0.001重量%、または0.003重量%、または0.005重量%、または0.007重量%、または0.01重量%、または0.05重量%~1.0重量%のトリオルガノホスフィンを含有しており、R1、R2、およびR3はそれぞれ、p-トリル基である。一実施形態では、組成物は、2時間にわたり100℃で加熱した後に、20%、または25%、または30%、または50%、または60%、または70%、または80%、または85%、または90%、または91%~100%の過酸化物保持割合を有する。
【0132】
一実施形態では、組成物は、組成物の総重量を基準として、0.001重量%、または0.003重量%、または0.005重量%、または0.007重量%、または0.01重量%、または0.05重量%~1.0重量%のトリオルガノホスフィンを含有しており、R1、R2、およびR3はそれぞれ、シクロヘキシル基である。一実施形態では、組成物は、2時間にわたり100℃で加熱した後に、10%、または15%、または20%、または50%、または60%、または70%、または80%、または90%、または95%、または97%~100%の過酸化物保持割合を有する。
【0133】
一実施形態では、組成物は、組成物の総重量を基準として、0.001重量%、または0.003重量%、または0.005重量%、または0.007重量%、または0.01重量%、または0.05重量%~1.0重量%のトリオルガノホスフィンを含有しており、R1、R2、およびR3はそれぞれ、n-オクチル基である。一実施形態では、組成物は、2時間にわたり100℃で加熱した後に、15%、または20%、または24%、または30%、または50%、または60%、または70%、または80%、または90%、または95%、98%~100%の過酸化物保持割合を有する。
【0134】
一実施形態では、組成物は、組成物の総重量を基準として、0.001重量%、または0.003重量%、または0.005重量%、または0.007重量%、または0.01重量%、または0.05重量%~1.0重量%のトリオルガノホスフィンを含有しており、R1、R2、およびR3はそれぞれ、2-フリル基である。一実施形態では、組成物は、2時間にわたり100℃で加熱した後に、2%、または5%、または6%、または7%、または8%、または10%、または30%、または50%、または55%、または59%、または60%、または62%~100%の過酸化物保持割合を有する。
【0135】
一実施形態では、組成物は、組成物の総重量を基準として、
(i)45重量%、または50重量%、または55重量%、または60重量%、または65重量%、または70重量%~75重量%、または80重量%、または85重量%、または90重量%、または95重量%、または97重量%、または98重量%、または99重量%のエチレン系ポリマーと、
(ii)0.02重量%、または0.05重量%、または0.1重量%、または0.5重量%、または1重量%~2重量%、または3重量%、または4重量%、または5重量%の有機過酸化物と、
(iii)0.001重量%、または0.003重量%、または0.005重量%、または0.007重量%、または0.01重量%、または0.05重量%、または0.1重量%、または0.2重量%、または0.3重量%、または0.4重量%、または0.5重量%~0.6重量%、または0.7重量%、または0.8重量%、または0.9重量%、または1.0重量%のトリオルガノホスフィンと、
(iv)0.0001重量%、または0.001重量%、または0.01重量%、または0.05重量%、または0.1重量%、または0.5重量%、または1.0重量%、または5重量%、または10重量%、または15重量%~20重量%、または25重量%、または30重量%、または35重量%、または40重量%、または45重量%、または50重量%の、PAGCであるPASCと、
(v)0重量%、または0重量%超、または0.001重量%、0.005重量%、または0.01重量%、または0.1重量%、または0.5重量%、または1.0重量%、または2.0重量%、または3.0重量%、または4.0重量%、または5.0重量%~6.0重量%、または7.0重量%、または8.0重量%、または9.0重量%、または10.0重量%、または15.0重量%、または20.0重量%の添加剤と、を含有しており、ここで、成分(i)~(v)の集合物は合計100重量%になり、組成物は、
(a)21日にわたり70℃で加熱した後に、80%、85%、90%、95%、97%、または98%~100%の保持MHを有する。
【0136】
一実施形態では、組成物は、組成物の総重量を基準として、
(i)95重量%、または96重量%、または97重量%~98重量%、または99重量%のエチレン系ポリマーと、
(ii)0.05重量%、または0.1重量%、または0.5重量%、または1重量%~2重量%、または3重量%、または4重量%、または5重量%の有機過酸化物と、
(iii)0.003重量%、または0.005重量%、または0.007重量%、または0.01重量%、または0.05重量%、または0.1重量%、または0.2重量%、または0.3重量%、または0.4重量%、または0.5重量%~0.6重量%、または0.7重量%のトリオルガノホスフィンと、
(iv)0.1重量%、または0.2重量%、または0.25重量%~0.3重量%、または0.4重量%、または0.5重量%のPAGCと、
(v)0重量%、または0重量%超、または0.001重量%、0.005重量%、または0.01重量%、または0.1重量%、または0.5重量%、または1.0重量%の添加剤と、を含有しており、ここで、成分(i)~(v)の集合物は合計100重量%になり、組成物は、
【0137】
(a)21日にわたり70℃で加熱した後に、95%、または97%~98%、または99%、または100%の保持MHを有する(以下、組成物1と称する)。
【0138】
一実施形態では、組成物1は、先の段落に記載の前述のすべての特性を有し、組成物1のPAGCは、硫黄系酸化防止剤である。さらなる実施形態では、組成物1についての硫黄系酸化防止剤は、ジステアリルチオジプロピオネート(DSTDP)である。
【0139】
特定の理論に束縛されることを望むものではないが、本組成物にトリオルガノホスフィンを含めると、組成物中にPASCが存在(特にPAGCが存在)することにより従来引き起こされた有機過酸化物のイオン分解が防止または遅延されると考えられる。本組成物の形成、貯蔵、加工、および/または押出中に有機過酸化物のイオン分解を停止または遅延することにより、トリオルガノホスフィンは、有機過酸化物を保持することを有利に可能にするので、有機過酸化物が存在して、導体上への本組成物の押出後のフリーラジカル架橋に利用可能である。本組成物の形成、貯蔵、加工、および/または押出中に有機過酸化物が十分に保持されないと、本組成物から形成された被覆は、導体上に押し出された後に架橋しないであろう。
【0140】
前述の組成物を含む、本明細書に開示される各組成物中の成分の合計は、100重量パーセント(重量%)になる。
【0141】
組成物は、成分のすべてまたはいくつかを溶融混合することにより(例えば、押出などにより)形成され得る。一実施形態では、エチレン系ポリマー、トリオルガノホスフィン、PASC、および任意選択的な添加剤が押し出されてペレット化される。次に、有機過酸化物が、浸漬ステップでペレットに吸収される。すべての成分を含有するペレットは、バッグ、樽、容器、または鉄道車両内で一定期間にわたり貯蔵され得る。ペレットは、押出機に加えられ、導体の表面上に押し出され得る。
【0142】
代替実施形態では、組成物のすべての成分が押出機内で組み合わされ、組成物が導体の表面上に押し出される。
【0143】
組成物は、本明細書に開示される2つ以上の実施形態を含み得る。
【0144】
一実施形態では、組成物は、架橋されている。
【0145】
組成物は、本明細書に開示される2つ以上の実施形態を含み得る。
【0146】
本開示は、組成物を架橋するのに十分な温度に組成物を加熱することにより作製された架橋製品も提供する。架橋製品は、導体上の被覆であり得る。
【0147】
vii.被覆された導体
本開示は、被覆された導体も提供する。被覆された導体は、導体と、導体上の被覆とを含み、被覆は組成物を含む。組成物は、(i)エチレン系ポリマーと、(ii)有機過酸化物と、(iii)トリオルガノホスフィンと、(iv)プロトン酸、PAGC、およびそれらの組み合わせから選択されるPASCと、(v)任意選択的に添加剤と、を含む。トリオルガノホスフィンは、構造(1)を有する:
【化7】
[式中、R
1、R
2、およびR
3は、それぞれ独立して、C
1~C
40ヒドロカルビル基、C
1~C
40ヘテロヒドロカルビル基、およびそれらの組み合わせから選択され、
ただし、リン原子は、R
1、R
2、およびR
3それぞれにおける炭素原子に結合している]。
【0148】
組成物、エチレン系ポリマー、有機過酸化物、トリオルガノホスフィン、PASC、および任意選択的な添加剤は、本明細書に開示される任意のそれぞれのエチレン系ポリマー、有機過酸化物、トリオルガノホスフィン、PASC、および任意選択的な添加剤であり得る。
【0149】
一実施形態では、被覆は、2時間にわたり100℃で加熱した後に、2%、または5%、または8%、または10%、または15%、または20%、または25%、または30%、または35%、または40%、または45%、または50%、または55%、または60%、または65%、または70%、または75%、または80%、または85%、または90%、または95%、または97%、または98%~100%の過酸化物保持割合を有する組成物を含む。さらなる実施形態では、組成物は、2時間にわたり100℃で加熱した後に、2%~100%、または20%~100%、または50%~100%、または70%~100%、または80%~100%、または90%~100%の過酸化物保持割合を有する。
【0150】
一実施形態では、被覆は、1.5時間にわたり100℃で加熱した後に、10%、または15%、または20%、または25%、または30%、または35%、または40%、または45%、または50%、または55%、または60%、または65%、または70%、または75%、または80%、または85%、または90%、または95%、または97%、または98%~100%の過酸化物保持割合を有する組成物を含む。
【0151】
一実施形態では、被覆は、1.0時間にわたり100℃で加熱した後に、20%、または25%、または30%、または35%、または40%、または45%、または50%、または55%、または60%、または65%、または70%、または75%、または80%、または85%、または90%、または95%、または97%、または98%~100%の過酸化物保持割合を有する組成物を含む。
【0152】
一実施形態では、被覆は、0.5時間にわたり100℃で加熱した後に、51%、または53%、または55%、または60%、または65%、または70%、または75%、または80%、または85%、または90%、または95%、または97%、または98%~100%の過酸化物保持割合を有する組成物を含む。
【0153】
一実施形態では、被覆は、導体用の絶縁シースである。別の一実施形態では、被覆は、導体用の外被である。
【0154】
被覆された導体を製造するためのプロセスは、本組成物を少なくともエチレン系ポリマーの溶融温度に加熱し、次いでポリマー溶融ブレンドを導体上に押し出すことを含む。「上に」という用語は、ポリマー溶融ブレンドと導体との間の直接接触または間接接触を含む。ポリマー溶融ブレンドは、押出可能な状態にある。
【0155】
被覆は、導体上にある。被覆は、絶縁層などの1つ以上の内層であり得る。被覆は、導体を全体的にまたは部分的に覆うか、またはそうでなければ取り囲むかもしくは包むことができる。被覆は、導体を囲む唯一の構成成分であり得る。被覆が導体を囲む唯一の構成成分である場合、被覆は外被および/または絶縁体として機能し得る。一実施形態では、被覆は、被覆された導体の最外層である。あるいは、被覆は、金属導体を包む1層の多層外被またはシースであり得る。一実施形態では、被覆は、導体と直接接触する。別の一実施形態では、被覆は、導体を囲む絶縁層と直接接触する。
【0156】
一実施形態では、被覆は、導体と直接接触する。本明細書で使用される「直接接触する」という用語は、被覆が導体に直接隣接して配置され、被覆が導体に接触し、介在層、介在被覆、および/または介在構造が被覆と導体との間に存在しない被覆構成である。
【0157】
一実施形態では、被覆は、導体と間接接触する。本明細書で使用される場合、「間接接触する」という用語は、介在層、介在被覆、または介在構造が被覆と導体との間に存在する被覆構成である。好適な介在層、介在被覆、および介在構造の例としては、絶縁層、防湿層、緩衝管、およびそれらの組み合わせが挙げられる。好適な絶縁層の例としては、発泡絶縁層、熱可塑性絶縁層、架橋絶縁層、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0158】
一実施形態では、被覆は、高電圧送電ケーブルまたは超高電圧送電ケーブルの絶縁層である。
【0159】
被覆は、架橋されている。一実施形態では、本組成物の架橋は、押出機内で始まるが、ごくわずかな程度である。別の一実施形態では、組成物が導体上に押し出されるまで架橋を遅延させる。本組成物の架橋は、熱または放射線を加えることにより開始および/または加速することができる。一実施形態では、押出後に、被覆された導体は、連続加硫管内で160℃、または180℃~200℃、または400℃の温度に調整される。
【0160】
一実施形態では、被覆された導体は、導体と、導体上の被覆とを含むか、実質的にこれらからなるか、またはこれらからなる。被覆は、組成物を含むか、実質的にこれからなるか、またはこれからなる。組成物は、組成物の総重量を基準として、(i)45重量%、または50重量%、または55重量%、または60重量%、または65重量%、または70重量%~75重量%、または80重量%、または85重量%、または90重量%、または95重量%、または97重量%、または99重量%、または99.96重量%のエチレン系ポリマーと、(ii)0.02重量%、または0.05重量%、または0.1重量%、または0.5重量%、または1重量%~2重量%、または3重量%、または4重量%、または5重量%の有機過酸化物と、(iii)0.001重量%、または0.003重量%、または0.005重量%、または0.007重量%、または0.01重量%、または0.05重量%、または0.1重量%、または0.2重量%、または0.3重量%、または0.4重量%、または0.5重量%~0.6重量%、または0.7重量%、または0.8重量%、または0.9重量%、または1.0重量%のトリオルガノホスフィンと、(iv)0.0001重量%、または0.001重量%、または0.01重量%、または0.05重量%、または0.1重量%、または0.5重量%、または1.0重量%、または5重量%、または10重量%、または15重量%~20重量%、または25重量%、または30重量%、または35重量%、または40重量%、または45重量%、または50重量%のPASCと、(v)0重量%、または0重量%超、または0.001重量%、0.005重量%、または0.01重量%、または0.1重量%、または0.5重量%、または1.0重量%、または2.0重量%、または3.0重量%、または4.0重量%、または5.0重量%~6.0重量%、または7.0重量%、または8.0重量%、または9.0重量%、または10.0重量%、または15.0重量%、または20.0重量%の添加剤と、を含むか、実質的にこれらからなるか、またはこれらからなり、組成物は、以下の特性のうちの1つ、いくつか、またはすべてを有する:(a)2時間にわたり100℃で加熱した後に、2%、または5%、または8%、または10%、または15%、または20%、または25%、または30%、または35%、または40%、または45%、または50%、または55%、または60%、または65%、または70%、または75%、または80%、または85%、または90%、または95%、または97%、または98%~100%の過酸化物保持割合、および/または(b)1.5時間にわたり100℃で加熱した後に、10%、または15%、または20%、または25%、または30%、または35%、または40%、または45%、または50%、または55%、または60%、または65%、または70%、または75%、または80%、または85%、または90%、または95%、または97%、または98%~100%の過酸化物保持割合、および/または(c)1.0時間にわたり100℃で加熱した後に、20%、または25%、または30%、または35%、または40%、または45%、または50%、または55%、または60%、または65%、または、70%、または75%、または80%、または85%、または90%、または95%、または97%、または98%~100%、および/または(d)0.5時間にわたり100℃で加熱した後に、51%、または53%、または55%、または60%、または65%、または70%、または75%、または80%、または85%、または90%、または95%、または97%、または98%~100%の過酸化物保持割合。
【0161】
一実施形態では、被覆された導体は、導体と、導体上の被覆とを含むか、実質的にこれらからなるか、またはこれらからなる。被覆は、組成物を含むか、実質的にこれからなるか、またはこれからなる。組成物は、組成物の総重量を基準として、(i)45重量%、または50重量%、または55重量%、または60重量%、または65重量%、または70重量%~75重量%、または80重量%、または85重量%、または90重量%、または95重量%、または97重量%、または99重量%、または99.96重量%のエチレン系ポリマーと、(ii)0.02重量%、または0.05重量%、または0.1重量%、または0.5重量%、または1重量%~2重量%、または3重量%、または4重量%、または5重量%の有機過酸化物と、(iii)0.001重量%、または0.003重量%、または0.005重量%、または0.007重量%、または0.01重量%、または0.05重量%、または0.1重量%、または0.2重量%、または0.3重量%、または0.4重量%、または0.5重量%~0.6重量%、または0.7重量%、または0.8重量%、または0.9重量%、または1.0重量%のトリオルガノホスフィンと、(iv)0.0001重量%、または0.001重量%、または0.01重量%、または0.05重量%、または0.1重量%、または0.5重量%、または1.0重量%、または5重量%、または10重量%、または15重量%~20重量%、または25重量%、または30重量%、または35重量%、または40重量%、または45重量%、または50重量%の、スルホン酸、スルフェン酸、スルフィン酸、硫黄系酸化防止剤、およびそれらの組み合わせから選択されるPASCと、(v)0重量%、または0重量%超、または0.001重量%、0.005重量%、または0.01重量%、または0.1重量%、または0.5重量%、または1.0重量%、または2.0重量%、または3.0重量%、または4.0重量%、または5.0重量%~6.0重量%、または7.0重量%、または8.0重量%、または9.0重量%、または10.0重量%、または15.0重量%、または20.0重量%の添加剤と、を含むか、実質的にこれらからなるか、またはこれらからなり、組成物は、以下の特性のうちの1つ、いくつか、またはすべてを有する:(a)2時間にわたり100℃で加熱した後に、2%、または5%、または8%、または10%、または15%、または20%、または25%、または30%、または35%、または40%、または45%、または50%、または55%、または60%、または65%、または70%、または75%、または80%、または85%、または90%、または95%、または97%、または98%~100%の過酸化物保持割合、および/または(b)1.5時間にわたり100℃で加熱した後に、10%、または15%、または20%、または25%、または30%、または35%、または40%、または45%、または50%、または55%、または60%、または65%、または70%、または75%、または80%、または85%、または90%、または95%、または97%、または98%~100%の過酸化物保持割合、および/または(c)1.0時間にわたり100℃で加熱した後に、20%、または25%、または30%、または35%、または40%、または45%、または50%、または55%、または60%、または65%、または、70%、または75%、または80%、または85%、または90%、または95%、または97%、または98%~100%、および/または(d)0.5時間にわたり100℃で加熱した後に、51%、または53%、または55%、または60%、または65%、または70%、または75%、または80%、または85%、または90%、または95%、または97%、または98%~100%の過酸化物保持割合。
【0162】
一実施形態では、被覆は、組成物の総重量を基準として、0.001重量%、または0.003重量%、または0.005重量%、または0.007重量%、または0.009重量%、または0.01重量%、または0.04重量%、または0.05重量%、または0.09重量%、または0.10重量%超~0.50重量%、または1.0重量%のトリオルガノホスフィンを含有する組成物を含み、構造(1)のR1、R2、およびR3はそれぞれ、フェニル基である。別の実施形態では、被覆は、組成物の総重量を基準として、0.001重量%超~1.0重量%、または0.005重量%超~1.0重量%、または0.01重量%超~1.0重量%、または0.05重量%超~1.0重量%のトリオルガノホスフィンを含有する組成物を含み、構造(1)のR1、R2、およびR3はそれぞれ、フェニル基である。一実施形態では、組成物は、2時間にわたり100℃で加熱した後に、70%、または80%、または90%、または95%、または97%、または98%、または98.2%~100%の過酸化物保持割合を有する。
【0163】
一実施形態では、被覆は、組成物の総重量を基準として、0.001重量%、または0.003重量%、または0.005重量%、または0.007重量%、または0.01重量%、または0.05重量%~1.0重量%のトリオルガノホスフィンを含有する組成物を含み、R1、R2、およびR3はそれぞれ、p-トリル基である。一実施形態では、組成物は、2時間にわたり100℃で加熱した後に、20%、または25%、または30%、または50%、または60%、または70%、または80%、または85%、または90%、または91%~100%の過酸化物保持割合を有する。
【0164】
一実施形態では、被覆は、組成物の総重量を基準として、0.001重量%、または0.003重量%、または0.005重量%、または0.007重量%、または0.01重量%、または0.05重量%~1.0重量%のトリオルガノホスフィンを含有する組成物を含み、R1、R2、およびR3はそれぞれ、シクロヘキシル基である。一実施形態では、組成物は、2時間にわたり100℃で加熱した後に、10%、または15%、または20%、または50%、または60%、または70%、または80%、または90%、または95%、または97%~100%の過酸化物保持割合を有する。
【0165】
一実施形態では、被覆は、組成物の総重量を基準として、0.001重量%、または0.003重量%、または0.005重量%、または0.007重量%、または0.01重量%、または0.05重量%~1.0重量%のトリオルガノホスフィンを含有する組成物を含み、R1、R2、およびR3はそれぞれ、n-オクチル基である。一実施形態では、組成物は、2時間にわたり100℃で加熱した後に、15%、または20%、または24%、または30%、または50%、または60%、または70%、または80%、または90%、または95%、98%~100%の過酸化物保持割合を有する。
【0166】
一実施形態では、被覆は、組成物の総重量を基準として、0.001重量%、または0.003重量%、または0.005重量%、または0.007重量%、または0.01重量%、または0.05重量%~1.0重量%のトリオルガノホスフィンを含有する組成物を含み、R1、R2、およびR3はそれぞれ、2-フリル基である。一実施形態では、組成物は、2時間にわたり100℃で加熱した後に、2%、または5%、または6%、または7%、または8%、または10%、または30%、または50%、または55%、または59%、または60%、または62%~100%の過酸化物保持割合を有する。
【0167】
一実施形態では、被覆された導体は、導体と、導体上の被覆とを含む被覆は、
(i)45重量%、または50重量%、または55重量%、または60重量%、または65重量%、または70重量%~75重量%、または80重量%、または85重量%、または90重量%、または95重量%、または97重量%、または98重量%、または99重量%のエチレン系ポリマーと、
(ii)0.02重量%、または0.05重量%、または0.1重量%、または0.5重量%、または1重量%~2重量%、または3重量%、または4重量%、または5重量%の有機過酸化物と、
(iii)0.001重量%、または0.003重量%、または0.005重量%、または0.007重量%、または0.01重量%、または0.05重量%、または0.1重量%、または0.2重量%、または0.3重量%、または0.4重量%、または0.5重量%~0.6重量%、または0.7重量%、または0.8重量%、または0.9重量%、または1.0重量%のトリオルガノホスフィンと、
(iv)0.0001重量%、または0.001重量%、または0.01重量%、または0.05重量%、または0.1重量%、または0.5重量%、または1.0重量%、または5重量%、または10重量%、または15重量%~20重量%、または25重量%、または30重量%、または35重量%、または40重量%、または45重量%、または50重量%の、PAGCであるPASCと、
(v)0重量%、または0重量%超、または0.001重量%、0.005重量%、または0.01重量%、または0.1重量%、または0.5重量%、または1.0重量%、または2.0重量%、または3.0重量%、または4.0重量%、または5.0重量%~6.0重量%、または7.0重量%、または8.0重量%、または9.0重量%、または10.0重量%、または15.0重量%、または20.0重量%の添加剤と、を含有する組成物を含み、ここで、成分(i)~(v)の集合物は合計100重量%になり、組成物は、
(a)21日にわたり70℃で加熱した後に、80%、85%、90%、95%、97%、または98%~100%の保持MHを有する。
【0168】
一実施形態では、導体上の被覆は、
(i)95重量%、または96重量%、または97重量%~98重量%、または99重量%のエチレン系ポリマーと、
(ii)0.05重量%、または0.1重量%、または0.5重量%、または1重量%~2重量%、または3重量%または4重量%、または5重量%の有機過酸化物と、
(iii)0.003重量%、または0.005重量%、または0.007重量%、または0.01重量%、または0.05重量%、または0.1重量%、または0.2重量%、または0.3重量%、または0.4重量%、または0.5重量%~0.6重量%、または0.7重量%のトリオルガノホスフィンと、
(iv)0.1重量%、または0.2重量%、または0.25重量%~0.3重量%、または0.4重量%、または0.5重量%のPAGCと、
(v)0重量%、または0重量%超、または0.001重量%、0.005重量%、または0.01重量%、または0.1重量%、または0.5重量%、または1.0重量%の添加剤と、を含有する組成物を含み、ここで、成分(i)~(v)の集合物は合計100重量%になり、組成物は、
【0169】
(a)21日にわたり70℃で加熱した後に、95%、または97%~98%、または99%、または100%の保持MHを有する(以下、組成物1と称する)。
【0170】
一実施形態では、組成物1は、先の段落に記載の前述のすべての特性を有し、組成物1のPAGCは、硫黄系酸化防止剤である。さらなる実施形態では、組成物1についての硫黄系酸化防止剤は、ジステアリルチオジプロピオネート(DSTDP)である。
【0171】
一実施形態では、被覆された導体は、光ファイバケーブル、通信ケーブル(電話線またはローカルエリアネットワーク(LAN)ケーブルなど)、電源ケーブル、家庭用電化製品用の配線、携帯電話および/またはコンピュータ用の充電器用配線、コンピュータデータコード、電源コード、家電配線材料、家庭用内部配線材料、家庭用電化製品付属コード、ならびにこれらの任意の組み合わせから選択される。
【0172】
別の一実施形態では、本発明の組成物は、導体上の被覆の他には、例えば電気コネクタまたは電気コネクタの構成要素上の物品に溶融成形される。
【0173】
被覆された導体は、本明細書に開示される2つ以上の実施形態を含み得る。
【0174】
ここで、限定ではなく例として、本開示のいくつかの実施形態を、次の実施例で詳細に説明する。
【実施例】
【0175】
実施例で使用される材料を、以下の表1に提供する。
【表1】
【0176】
以下の3種類のストック溶液を調製し、サンプル溶液を作成するために使用する:(i)過酸化ジクミル(DCP)が0.1154Mでドデカンに入った溶液(ストック溶液A)、(ii)ドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA)が0.00346Mでドデカンに入った溶液(ストック溶液B)、および(iii)ドデカンに入った0.1154MのDCP溶液中に0.1重量%のトリオルガノホスフィンを含有する溶液(ストック溶液C)。ストック溶液Cを、80℃に設定した油浴中で撹拌(1~2分間)し、トリオルガノホスフィンの完全な溶解を確実にする。
【0177】
サンプル溶液および比較溶液は、6ドラムのガラスバイアル内で形成する。ドデカンは、エチレン系ポリマーの特性をシミュレートする(すなわち、そのためのモデルとして機能する)。溶液を磁気撹拌棒で撹拌する。各溶液の組成は、以下の表2に示される。
【0178】
比較溶液1(CS1)は、2mLのストック溶液Aおよび2mLのストック溶液Bをガラスバイアルに添加し、室温にて磁気撹拌棒で混合することにより調製される。CS1の総量は、4mLである。CS1は、0.0577MのDCP(2重量%のDCPに相当)および0.00173MのDBSAを含有している。CS1は、トリオルガノホスフィンを含有していない。CS1の組成は、以下の表2に示される。
【0179】
比較溶液2(CS2)は、2mLのストック溶液Aおよび2mLのドデカンをガラスバイアルに添加し、室温にて磁気撹拌棒で混合することにより調製される。CS2の総量は、4mLである。CS2は、0.0577MのDCP(2重量%のDCPに相当)を含有している。CS2は、トリオルガノホスフィンおよびDBSAを含有していない。CS2の組成は、以下の表2に示される。
【0180】
サンプル溶液1~5、9~10、12~13、15~16、および18~19はそれぞれ、2mLのストック溶液B、XmLのストック溶液C、および(2-X)mLのストック溶液Aをガラスバイアルに添加し、室温にて磁気撹拌棒で混合することにより調製し、ここで、Xは、10にトリオルガノホスフィンの重量パーセント濃度を掛けたものに等しい。例えば、0.05重量%のトリオルガノホスフィンを含有するサンプル溶液を調製するには、2mLのストック溶液Bを、1.5mLのストック溶液Aおよび0.5mLのストック溶液Cと混合する。サンプル溶液1~5、9~10、12~13、15~16、および18~19の組成は、以下の表2に示される。
【0181】
サンプル溶液6~8、11、14、17、および20はそれぞれ、2mLのストック溶液Aおよび2mLのストック溶液Bをガラスバイアルに添加し、室温にて磁気撹拌棒で混合することにより調製される。トリオルガノホスフィンをガラスバイアルの内容物に添加する。サンプル溶液6~8、11、14、17、および20の組成は、以下の表2に示される。
【0182】
次に、ガラスバイアルを、Corning(商標)PC-420D撹拌式ホットプレート上で100℃の温度で維持されて十分に撹拌された(500rpm)シリコンオイル浴に浸す。比較溶液およびサンプル溶液を、それぞれ100℃の温度に加熱し、混合しながら100℃で維持し、2分(この時点で、トリオルガノホスフィンは溶液に完全に溶解する)、0.5時間、1.0時間、1.5時間、および2.0時間後に、600μlのアリコートを取り出す。比較溶液およびサンプル溶液を、それぞれキャップまたは蓋のないガラスバイアル内で加熱する(言い換えれば、各溶液を加熱中に大気に曝露する)。
【0183】
ガラスバイアルから取り出したそれぞれ600μlのアリコートを、1.5mLの小型遠心分離管に入れ、氷浴中で7~10分にわたり冷却し、VWR Galaxy Mini Centrifuge、モデルC1413内にて6,000rpmで遠心分離する。次に、350μlの透明な画分を各アリコートから取り出し、700μlのi-プロパノールと組み合わせ、液体クロマトグラフィーで分析し、画分中に存在するDCPの濃度を決定する。(210nmに設定されたSPD-20A紫外可視検出器を備えるShimadzuのLC-20AD液体クロマトグラフ。カラムは、粒度3.5μmを有するWatersのSunFire C18 2.1mm×50mmカラムである。移動相は、流速0.25mL/分の75%メタノール/25%水である)。100℃で2分後に測定されるサンプル溶液中のDCPの量を初期DCP量として参照する。
【0184】
過酸化ジクミル(DCP)保持割合は、以下の等式(1A)に従って計算される:
【数3】
式中、t=0.5時間、1.0時間、1.5時間、または2.0時間である。
【0185】
例えば、2時間にわたり100℃で加熱した後に、溶液1は、0.1615重量%のDCPが含有している。溶液1中のDCPの初期量(すなわち、100℃で2分後)は、1.9880重量%である。したがって、2時間にわたり100℃で加熱した後の溶液1のDCP保持割合は、以下の等式(1B)に従って計算される:
【数4】
2時間にわたり100℃で加熱した後の溶液1のDCP保持割合は、8.12%である。
【0186】
サンプル溶液および比較溶液の特性は、以下の表2に示される
【表2-1】
【表2-2】
【0187】
CS1は、(i)ドデカン(エチレン系ポリマーをシミュレートするため)と、(ii)過酸化ジクミル(DCP)と、(iii)ドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA)とを含有しており、トリオルガノホスフィンを含有していない比較溶液である。表2に示されるように、CS1は、2時間にわたり100℃で加熱した後に、0.44%の過酸化物(ここではDCP)保持割合しか呈しない。したがって、CS1は、組成物の架橋を可能にするために2時間にわたり100℃で加熱した後に、好適な濃度の有機過酸化物を保持しない。結果的に、CS1は、電線およびケーブルの用途、ならびに他の用途にとって好適ではない過酸化物含有ポリマー組成物の代表的なものである。
【0188】
CS2は、(i)ドデカン(エチレン系ポリマーをシミュレートするため)と、(ii)過酸化ジクミル(DCP)とを含有しており、トリオルガノホスフィンまたはDBSAを含有していない比較組成物である。したがって、CS2には、DCPのイオン分解を引き起こすプロトン酸源化合物(PASC)がない。
【0189】
出願人は、(i)ドデカン(エチレン系ポリマーをシミュレートするため)と、(ii)過酸化ジクミル(DCP)と、(iii)トリオルガノホスフィン(トリフェニルホスフィン、トリ(p-トリル)ホスフィン、トリ(シクロヘキシル)ホスフィン、トリ(n-オクチル)ホスフィン、またはトリス(2-フリル)ホスフィン)と、(iv)ドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA)と、を含有する組成物(溶液1~20)が、2時間にわたり100℃で加熱した後に、8%超、場合によっては98%超の過酸化物(ここではDCP)保持割合を有利に呈することを予期せず見出した。結果的に、溶液1~20は、電線およびケーブルの用途、ならびに他の用途にとって好適な過酸化物含有ポリマー組成物の代表的なものである。
【0190】
エチレン系ポリマー組成物
420mLのBRABENDER(商標)ミキシングボウルを、180℃、30の毎分回転数(rpm)、カムロータあり、充填時からの合計混合時間5分で使用して、添加剤がエチレン系ポリマー(低密度ポリエチレン;LDPE;0.921g/cc、2.16kgの負荷で190℃で測定して2g/10分のメルトインデックス)に入ったマスターバッチを調製する。各マスターバッチ(MB)の組成は、以下の表3に示される。
【表3】
【0191】
成分の「固形物」混合物を容器内で作製し、その後、この「固形物」混合物をBrabenderミキシングボウルに充填し、溶融混合してMBを調製する。ポリマー溶融物をミキシングボウルから取り出し、冷間プレスにおいて平らにして固形にし、ギロチンプラーク裁断機(guillotine plaque cutter)を使用して小さく細切りにし、BERLYN(商標)ペレタイザーを使用してペレット化して小片にする。すべての区域およびヘッド/ダイにわたりバレル設定温度を130℃にして、これらの小片を、40rpmで従来の搬送スクリューと一緒に動作するBRABENDER(商標)単軸押出機に供給する。得られたポリマーストランドを、BERLYN(商標)ペレタイザーを使用して均一なペレットに切断し、MBのペレットを作製する。
【0192】
次に、すべての区域が120℃に設定(溶融温度は約140℃になる)された、60メッシュスクリーンパックを有する60rpmの二軸押出機を使用して、マスターバッチと、上記と同じLDPEとを、表4に示される比率で溶融混合し、「中間」化合物のペレットに変換されるストランドを作製する。
【表4】
【0193】
次に、1.8gの有機過酸化物を98.2gの各「中間」化合物に浸し、表5に示される組成の「完全に配合された」化合物を作製する。本発明の化合物1~5では、DSTDPはPAGCとして機能する。
【表5】
【0194】
上記の表5では、MH保持割合は、以下の等式(2)に従って計算される:
【数5】
式中、t=70℃で21日である。
【0195】
例えば、本発明の化合物1のMH保持割合は、以下の等式(2A)に従って計算される:
【数6】
【0196】
本発明の化合物1の保持MH%は、100%である。
【0197】
21日にわたり70℃でエージングした後に、完全に配合された化合物1、2、3、および4はそれぞれ、100%の保持MHを呈する。
【0198】
特定の理論に縛られるものではないが、DSTDPの酸化副生成物は酸性種を形成し、それにより、過酸化物架橋剤の非生産的な非フリーラジカル分解が引き起こされる可能性があると考えられている。このタイプの有害な影響は、特許出願WO2016/204951A1に教示されており、これは、(a)DSTDPが、70℃の高温での長期貯蔵の後に架橋度の保持に対して有害な影響を与え得ること、および(b)Uvinul 4050を含めると、70℃の高温でMHの保持率が経時的に改善されることを示す。
【0199】
上記の表5では、比較化合物は、Uvinul 4050を含有していた。本発明の化合物1~4は、Uvinul 4050を含有していなかったものの、70℃での長期貯蔵後の架橋度を依然として同程度またはより高い程度で呈した。保持されるMH値は、試験時に配合物中に存在する過酸化物の量を反映しており、MHの値が大きいほど、より多くの過酸化物が存在することに対応する。本発明の化合物1~4はそれぞれ、100%のMH保持を呈し、これは、すべてまたは実質的にすべての過酸化物が本発明の組成物中に存在したままであることを示していた。
【0200】
本開示は、本明細書に含まれる実施形態および例示に限定されず、実施形態の部分、および異なる実施形態の要素の組み合わせを含むこれらの実施形態の変更された形態を、以下の特許請求の範囲の範囲内に該当するものとして含むことが、特に意図されている。
本願発明には以下の態様が含まれる。
項1.
組成物であって、
(i)エチレン系ポリマーと、
(ii)有機過酸化物と、
(iii)構造(1)を有するトリオルガノホスフィン:
【化1】
式中、R
1、R
2、およびR
3は、それぞれ独立して、C
1~C
40ヒドロカルビル基、C
1~C
40ヘテロヒドロカルビル基、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、
ただし、リン原子は、R
1、R
2、およびR
3それぞれにおける炭素原子に結合している、と、
(iv)プロトン酸、プロトン酸発生剤化合物(「PAGC」)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるプロトン酸源化合物(「PASC」)と、を含む、組成物。
項2.
前記PASCが前記プロトン酸であり、
前記組成物が、2時間にわたり100℃で加熱した後に、70%~100%の過酸化物保持割合を有する、項1に記載の組成物。
項3.
前記PASCが前記プロトン酸であり、前記プロトン酸が、スルホン酸、スルフェン酸、スルフィン酸、カルボン酸、リン系の酸、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項1または2に記載の組成物。
項4.
前記PASCが前記PAGCであり、前記PAGCが酸化防止剤(AO)を含む、項1に記載の組成物。
項5.
前記AOが硫黄系酸化防止剤である、項4に記載の組成物。
項6.
R
1、R
2、およびR
3が、それぞれ独立して、フェニル基、p-トリル基、2-フリル基、シクロヘキシル基、およびn-オクチル基からなる基から選択される、項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
項7.
R
1、R
2、およびR
3が同じである、項6に記載の組成物。
項8.
前記有機過酸化物が過酸化ジクミルである、項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
項9.
前記組成物が、前記組成物の総重量を基準として、0.001重量%超~1.0重量%の、前記構造(1)を有する前記トリオルガノホスフィンを含み、
R
1、R
2、およびR
3がそれぞれ、フェニル基である、項1~8のいずれか1項に記載の組成物。
項10.
前記組成物が、前記組成物の総重量を基準として、0.001重量%~1.0重量%の、前記構造(1)を有する前記トリオルガノホスフィンを含み、
R
1、R
2、およびR
3がそれぞれ、p-トリル基である、項1~8のいずれか1項に記載の組成物。
項11.
前記組成物が、前記組成物の総重量を基準として、0.001重量%~1.0重量%の、前記構造(1)を有する前記トリオルガノホスフィンを含み、
R
1、R
2、およびR
3がそれぞれ、2-フリル基である、項1~8のいずれか1項に記載の組成物。
項12.
前記組成物が、前記組成物の総重量を基準として、0.001重量%~1.0重量%の、前記構造(1)を有する前記トリオルガノホスフィンを含み、
R
1、R
2、およびR
3がそれぞれ、シクロヘキシル基またはn-オクチル基である、項1~8のいずれか1項に記載の組成物。
項13.
前記PASCがPAGCであり、
前記組成物が、21日にわたり70℃で加熱した後に、100%の保持MHを有する、項1に記載の組成物。
項14.
項1~13のいずれか1項に記載の組成物を、前記組成物を架橋するのに十分な温度に加熱することにより作製された、架橋製品。
項15.
被覆された導体であって、
導体と、
項1~13のいずれか1項に記載の組成物または項14に記載の架橋製品を含む、前記導体上の被覆と、を含む、被覆された導体。