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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】歯ブラシ
(51)【国際特許分類】
   A46B 5/00 20060101AFI20240209BHJP
   A46B 5/06 20060101ALI20240209BHJP
【FI】
A46B5/00 B
A46B5/06
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021526992
(86)(22)【出願日】2020-06-23
(86)【国際出願番号】 JP2020024497
(87)【国際公開番号】W WO2020262339
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-01-10
(31)【優先権主張番号】P 2019121254
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】川崎 静香
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3040913(JP,U)
【文献】米国特許第05630244(US,A)
【文献】米国特許第05054154(US,A)
【文献】特開2012-100806(JP,A)
【文献】特開2000-004944(JP,A)
【文献】国際公開第2009/081783(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A46B 1/00-17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長軸方向の先端側に設けられ植毛面を有するヘッド部と、前記ヘッド部より後端側に配置された把持部と、前記植毛面と前記把持部との間に配置されたネック部とを有し、
前記ヘッド部及び前記ネック部は、少なくとも一部が硬質樹脂で形成され、
前記把持部に配置され、前記植毛面と直交する第1方向の外力により変形する変形部と、
前記変形部の前記先端側に配置され、前記第1方向の外力により非変形の第1領域と、
前記変形部の前記後端側に配置され、前記第1方向の外力により非変形の第2領域とを有し、
前記把持部は、前記長軸方向で少なくとも当該把持部の先端から前記第2領域に亘って、前記長軸方向と直交する断面における少なくとも一部が前記硬質樹脂で形成され、
前記変形部は、前記第1領域と前記第2領域とをつなぐ前記硬質樹脂で形成された硬質部と、軟質樹脂で形成され前記硬質部の少なくとも一部を被覆する軟質部とを有し、
前記長軸方向と直交する断面における、前記変形部の外形輪郭または前記外形輪郭の延長線で囲まれた閉空間の断面積に対する前記硬質部の断面積の占有率は、前記長軸方向に亘って35%以下であり、
前記硬質部は、前記長軸方向及び前記第1方向と直交する第2方向の長さが前記第1方向の長さよりも大きい平板状であり、前記第1方向の前記植毛面側および前記植毛面と逆側の背面側には変形させやすく、幅方向にはほとんど変形しない平面応力状態となる前記硬質部であり、
前記変形部の前記長軸方向の長さは、15mm以上、30mm以下であり、
前記変形部は、前記第1方向の曲げ強度が、前記第2方向の曲げ強度よりも小さく規制され、
前記軟質部は、前記長軸方向と交差する方向に延びる凹部と凸部とが前記長軸方向に互いに隣り合って配置された凹凸構造部を有し、
前記凹凸構造部は、前記第1方向の前記植毛面側と、前記第1方向の前記植毛面側とは逆側の背面側とにそれぞれ露出して設けられていることを特徴とする歯ブラシ。
【請求項2】
前記凸部に対する前記凹部の深さは、前記変形部の前記第1方向の最大厚さに対して2%以上、20%以下である、
請求項1に記載の歯ブラシ。
【請求項3】
前記変形部は、前記長軸方向と直交する断面が多角形であり、
前記変形部の前記第2方向両側にそれぞれ前記凹凸構造部が設けられている、
請求項1または2に記載の歯ブラシ。
【請求項4】
前記変形部の前記第2方向の最外郭は、前記変形部の前記第1方向の中心位置よりも前記背面側に位置する、
請求項3に記載の歯ブラシ。
【請求項5】
前記変形部は、前記第1方向に貫通し前記長軸方向に延びる貫通孔を介して前記第2方向に分岐し、
分岐した前記変形部のそれぞれは、前記硬質部が前記貫通孔を介して分岐され前記第1領域と前記第2領域とをつなぐ芯部と、前記軟質部が前記貫通孔を介して分岐され前記芯部の周囲を被覆する被覆部とを有する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の歯ブラシ。
【請求項6】
前記硬質部は、前記芯部と離間し前記貫通孔を前記長軸方向に貫いて前記第1領域と前記第2領域とをつなぐ反転部を有し、
前記反転部は、第1方向の外力がしきい値を超えたときに飛び移り座屈して反転する、
請求項5に記載の歯ブラシ。
【請求項7】
前記硬質部の厚さは、0.5mm以上、2.0mm以下である、
請求項1から6のいずれか一項に記載の歯ブラシ。
【請求項8】
前記硬質部の前記第1方向の中心は、前記変形部の前記第1方向の中心位置よりも前記背面側に位置する、
請求項7に記載の歯ブラシ。
【請求項9】
前記変形部の前記第2方向の長さは、8mm以上、20mm以下である、
請求項1からのいずれか一項に記載の歯ブラシ。
【請求項10】
前記長軸方向と直交する断面における、前記変形部の外形輪郭または前記外形輪郭の延長線で囲まれた閉空間の断面積に対する前記硬質部の断面積の占有率は、前記長軸方向に亘って3%以上、32%以下である、
請求項1から9のいずれか一項に記載の歯ブラシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯ブラシに関するものである。
本願は、2019年6月28日に、日本に出願された特願2019-121254号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
80歳で20本の歯を有する人の割合は約5割となった一方で、高齢者う蝕(根面う蝕)の割合が増加している。根面う蝕は、歯肉退縮により露出した象牙質のう蝕であるが、象牙質はエナメル質よりも有機成分の構成比率が高いため、う蝕の進行が早い。上記歯肉退縮の原因の一つとして、適正値よりも大きなブラッシング圧(刷掃圧)でブラッシングを行うオーバーブラッシングが挙げられる。
【0003】
従来、過剰なブラッシング圧を低減するための歯ブラシとしては、例えば、特許文献1に記載された歯ブラシが開示されている。特許文献1に記載された歯ブラシは、パームグリップで握ってブラッシングした時に、ハンドル部の親指と人指し指で握る部位のうち、熱可塑性樹脂で形成された部位が植毛面側に開口するU字状に形成され、熱可塑性樹脂で形成された部位の周囲がエラストマー材料等の軟質樹脂で被覆されている。
【0004】
特許文献1における上記構成の歯ブラシについては、ヘッド部の荷重をネック部だけでなくハンドル部の前記部位にも弾力を付与することにより、歯茎を傷つけることなく、歯と歯茎に優しく当たり心地のよい操作性を与えつつ、過剰なブラッシング圧を低減することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-004944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ところが、特許文献1の歯ブラシは、ネック部が全方位的に柔軟性を有するため、ブラッシング時に狙った部位にブラシ部を安定して当てることが困難である。
【0007】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、適切なブラッシング圧を維持しつつ、目的部位をしっかり磨けるという良好な操作性を有する歯ブラシを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様に従えば、長軸方向の先端側に設けられ植毛面を有するヘッド部と、前記ヘッド部より後端側に配置された把持部と、前記植毛面と前記把持部との間に配置されたネック部とを有し、前記ヘッド部及び前記ネック部は、少なくとも一部が硬質樹脂で形成され、前記把持部に配置され、前記植毛面と直交する第1方向の外力により変形する変形部と、前記変形部の前記先端側に配置され、前記第1方向の外力により非変形の第1領域と、前記変形部の前記後端側に配置され、前記第1方向の外力により非変形の第2領域とを有し、前記把持部は、前記長軸方向で少なくとも当該把持部の先端から前記第2領域に亘って、前記長軸方向と直交する断面における少なくとも一部が前記硬質樹脂で形成され、前記変形部は、前記第1領域と前記第2領域とをつなぐ前記硬質樹脂で形成された硬質部と、軟質樹脂で形成され前記硬質部の少なくとも一部を被覆する軟質部とを有し、前記長軸方向と直交する断面における、前記変形部の外形輪郭または前記外形輪郭の延長線で囲まれた閉空間の断面積に対する前記硬質部の断面積の占有率は、前記長軸方向に亘って35%以下であり、前記変形部は、前記第1方向の曲げ強度が、前記長軸方向及び前記第1方向と直交する第2方向の曲げ強度よりも小さく規制され、前記軟質部は、前記長軸方向と交差する方向に延びる凹部と凸部とが前記長軸方向に互いに隣り合って配置された凹凸構造部を有し、前記凹凸構造部は、前記第1方向の前記植毛面側と、前記第1方向の前記植毛面側とは逆側の背面側とにそれぞれ露出して設けられていることを特徴とする歯ブラシが提供される。
【0009】
また、上記本発明の一態様に係る歯ブラシにおいて、前記凸部に対する前記凹部の深さは、前記変形部の前記第1方向の最大厚さに対して2%以上、20%以下であることを特徴とする。
【0010】
また、上記本発明の一態様に係る歯ブラシにおいて、前記変形部は、前記長軸方向と直交する断面が多角形であり、前記変形部の前記第2方向両側にそれぞれ前記凹凸構造部が設けられていることを特徴とする。
【0011】
また、上記本発明の一態様に係る歯ブラシにおいて、前記変形部の前記第2方向の最外郭は、前記変形部の前記第1方向の中心位置よりも前記背面側に位置することを特徴とする。
【0012】
また、上記本発明の一態様に係る歯ブラシにおいて、前記変形部は、前記第1方向に貫通し前記長軸方向に延びる貫通孔を介して前記第2方向に分岐し、分岐した前記変形部のそれぞれは、前記硬質部が前記貫通孔を介して分岐され前記第1領域と前記第2領域とをつなぐ芯部と、前記軟質部が前記貫通孔を介して分岐され前記芯部の周囲を被覆する被覆部とを有することを特徴とする。
【0013】
また、上記本発明の一態様に係る歯ブラシにおいて、前記硬質部は、前記芯部と離間し前記貫通孔を前記長軸方向に貫いて前記第1領域と前記第2領域とをつなぐ反転部を有し、前記反転部は、第1方向の外力がしきい値を超えたときに飛び移り座屈して反転することを特徴とする。
【0014】
また、上記本発明の一態様に係る歯ブラシにおいて、前記硬質部は、平板状であり、前記硬質部の前記第2方向の長さは、前記硬質部の前記第1方向の長さよりも大きいことを特徴とする。
【0015】
また、上記本発明の一態様に係る歯ブラシにおいて、前記硬質部の前記第1方向の中心は、前記変形部の前記第1方向の中心位置よりも前記背面側に位置することを特徴とする。
【0016】
また、上記本発明の一態様に係る歯ブラシにおいて、前記変形部の前記長軸方向の長さは、15mm以上、30mmであることを特徴とする。
【0017】
また、上記本発明の一態様に係る歯ブラシにおいて、前記変形部の前記第2方向の長さは、5mm以上、20mm以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、適切なブラッシング圧を維持しつつ一歯ずつ歯列を正確に磨くことが可能な歯ブラシを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施の形態を示す図であって、第1実施形態に係る歯ブラシ1の正面図である。
図2】同歯ブラシ1を幅方向の中心を含む平面で切断した断面図である。
図3】変形部70における長軸方向端部近傍で長軸方向と直交する断面図である。
図4】変形部70を幅方向の中心を含む平面で切断した断面図である。
図5】硬質部70Hにおける変形部70周辺の部分的な正面図である。
図6】硬質部70Hにおける変形部70周辺の部分的な側面図である。
図7】第2実施形態に係る歯ブラシ1の正面図である。
図8】同歯ブラシ1を幅方向の中心を含む平面で切断した断面図である。
図9】変形部70における長軸方向中央で長軸方向と直交する断面図である。
図10】変形部70を幅方向の中心を含む平面で切断した断面図である。
図11】変形部70における硬質部70H周辺の部分的な正面図である。
図12】反転部が反転したことを説明するための、厚さ方向及び長軸方向と平行な平面で変形部70を切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1実施形態]
以下、本発明の歯ブラシの第1実施形態を、図1ないし図6を参照して説明する。
なお、以下の実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせている。また、以下の説明においては、側面視における植毛面と直交する方を厚さ方向とし、厚さ方向における植毛面側を正面側、植毛面と逆側を背面側として適宜説明する。
【0021】
図1は、歯ブラシ1の正面図である。図2は、歯ブラシ1を幅方向(図1における上下方向)の中心を含む平面で切断した断面図である。
【0022】
本実施形態の歯ブラシ1は、長軸方向の先端側(以下、単に先端側と称する)に配置され用毛の毛束(図示せず)が植毛されたヘッド部10と、ヘッド部10の長軸方向後端側(以下、単に後端側と称する)に延設されたネック部20と、ネック部20の後端側に延設され変形部70を有する把持部30(以下、ヘッド部10、ネック部20及び把持部30を合わせてハンドル体2と称する)とを備える。
【0023】
本実施形態の歯ブラシ1は、硬質樹脂で形成された硬質部Hと、軟質樹脂で形成された軟質部Eとが一体的に成形された成形体である。硬質部Hは、ヘッド部10、ネック部20、変形部70を含む把持部30のそれぞれについて少なくとも一部を構成する。軟質部Eは、変形部70を含む把持部30について一部を構成する。より詳細には、本実施形態のヘッド部10及びネック部20は、硬質樹脂でそれぞれ形成されているが、例えば、表面の一部が上記軟質樹脂で被覆されている等、一部が上記軟質樹脂で形成されていてもよい。本実施形態の変形部70を含む把持部30は、一部が硬質樹脂と軟質樹脂の双方でそれぞれ形成されている(詳細は後述)。
【0024】
[ヘッド部10]
ヘッド部10は、厚さ方向(図1における紙面と直交する方向)の一方側に植毛面11を有している。なお、以後、上記厚さ方向及び長軸方向と直交する方向を幅方向(または適宜、側面方向)とする。植毛面11には、植毛穴12が複数形成されている。植毛穴12には、用毛の毛束(図示せず)が植設されている。
【0025】
ヘッド部10の幅、すなわち正面側において植毛面11と平行で、長軸方向と直交する幅方向の長さ(以下、単に幅と称する)は、特に限定されず、例えば、7mm以上、13mm以下が好ましい。上記下限値以上であれば、毛束を植設する面積を十分に確保でき、上記上限値以下であれば、口腔内での操作性をより高められる。
【0026】
ヘッド部10の長軸方向の長さ(以下、単に長さと称する)は、特に限定されず、例えば、10mm以上、33mm以下が好ましい。ヘッド部10の長さが上記下限値以上であれば、毛束を植設する面積を十分に確保でき、上記上限値以下であれば、口腔内での操作性をより高められる。なお、本実施形態におけるネック部20とヘッド部10との長軸方向の境界は、ネック部20からヘッド部10方向に向けて、ネック部20の幅が最小値となった位置とする。ネック部20の幅が最小値となる領域が一定の長さで存在する場合(ネック部20の幅が最小値となる位置が一箇所ではない場合)、ネック部20とヘッド部10との長軸方向の境界は、ネック部20の幅が最小値となる最もヘッド先端側の位置とする。
【0027】
ヘッド部10の厚さ方向の長さ(以下、単に厚さと称する)は、材質等を勘案して決定でき、2.0mm以上、4.0mm以下が好ましい。ヘッド部10の厚さが上記下限値以上であれば、ヘッド部10の強度をより高められる。ヘッド部10の厚さが上記上限値以下であれば、奥歯の奥への到達性を高められるとともに、口腔内での操作性をより高められる。
【0028】
毛束は、複数の用毛を束ねたものである。植毛面11から毛束の先端までの長さ(毛丈)は、毛束に求める毛腰等を勘案して決定でき、例えば、6~13mmとされる。全ての毛束は同じ毛丈であってもよいし、相互に異なっていてもよい。
【0029】
毛束の太さ(毛束径)は、毛束に求める毛腰等を勘案して決定でき、例えば、1~3mmとされる。全ての毛束は同じ毛束径であってもよいし、相互に異なっていてもよい。
【0030】
毛束を構成する用毛としては、例えば、毛先に向かって漸次その径が小さくなり、毛先が先鋭化された用毛(テーパー毛)、植毛面11から毛先に向かいその径がほぼ同一である用毛(ストレート毛)等が挙げられる。ストレート毛としては、毛先が植毛面11に略平行な平面とされたものや、毛先が半球状に丸められたものが挙げられる。
【0031】
用毛の材質は、例えば、6-12ナイロン(6-12NY)、6-10ナイロン(6-10NY)等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)等のポリエステル、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、ポリオレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー等のエラストマー樹脂等が挙げられる。これらの樹脂材料は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、用毛としては、芯部と該芯部の外側に設けられた少なくとも1層以上の鞘部とを有する多重芯構造を有するポリエステル製用毛が挙げられる。
【0032】
用毛の横断面形状は、特に限定されず、真円形、楕円形等の円形、多角形、星形、三つ葉のクローバー形、四つ葉のクローバー形等としてもよい。全ての用毛の断面形状は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0033】
用毛の太さは、材質等を勘案して決定でき、横断面が円形の場合、例えば、6~9mil(1mil=1/1000inch=0.025mm)とされる。また、使用感、刷掃感、清掃効果、耐久性等を考慮して、太さの異なる複数本の用毛を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0034】
[ネック部20]
ネック部20の長さは、操作性の点で40mm以上、70mm以下であることが好ましい。
ネック部20の幅は、一例として、最小値となる位置から後端側に漸次大きくなるように形成されている。本実施形態におけるネック部20は、幅が最小値となる位置から後端側に向かうのに従って漸次大きくなるように形成されている。また、ネック部20は、厚さが、最小となる位置から後端側に向かうのに従って漸次大きくなるように形成されている。
【0035】
ネック部20は、最小となる位置における幅と厚さはいずれも3.0mm以上、4.5mm以下が好ましい。最小となる位置におけるネック部20の幅と厚さが上記下限値以上であれば、ネック部20の強度をより高められ、上記上限値以下であれば、唇が閉じやすく、また奥歯への到達性を高められるとともに、口腔内での操作性をより高められる。最小値となる位置から後端側に向かうのに従って漸次大きくなるように形成されているネック部20の幅及び厚さは、材質等を勘案して適宜決定できる。
【0036】
ネック部20の側面方向視における正面側は、後端側に向かうに従って正面側に向かう方向に傾斜している。ネック部20の側面方向視における背面側は、後端側に向かうに従って背面側に向かう方向に傾斜している。ネック部20は、正面視において、幅方向中心からの距離が後端側に向かうに従って大きくなる方向に傾斜している。
【0037】
本実施形態におけるネック部20と把持部30との境界は、後述する変形部70が設けられるネック側20の先端の位置とする。ここでは、ネック部20から把持部30に向けて幅が正面視及び側面視の双方で円弧状の輪郭で拡大し、当該円弧の曲率中心の位置が変化した長軸方向の位置と一致している。より詳細には、ネック部20と把持部30(変形部70)との境界は、図1に示す正面視においては、曲率中心が円弧状の輪郭の外側から幅方向中心側に変化した長軸方向の位置と一致している。また、ネック部20と把持部30(変形部70)との境界は、図2に示す側面視においては、曲率中心が円弧状の輪郭の外側から厚さ方向中心側に変化した長軸方向の位置と一致している。
【0038】
[把持部30]
把持部30は、長軸方向に沿って配置されている。把持部30は、ネック部20との境界を形成する先端側に変形部70を有している。図1に示すように、変形部70より後端側の把持部30の幅は、変形部70との境界から後端側に向かうのに従って漸次狭くなった後に、略一定の長さで延びている。図2に示すように、変形部70より後端側の把持部30の厚さは、変形部70との境界から後端側に向かうのに従って漸次狭くなった後に、略一定の長さで延びている。把持部30の幅が変形部70との境界から後端側に向かうのに従って漸次狭くなった後に略一定の長さとなる長軸方向の位置と、把持部30の厚さが変形部70との境界から後端側に向かうのに従って漸次狭くなった後に略一定の長さとなる長軸方向の位置は同一である。本実施形態における変形部70の後端の位置は、軟質部70Eと硬質部30Hとの境界とする。
【0039】
把持部30は、変形部70の後端側端部よりも後端側に、正面側における幅方向の中央に軟質部31Eを有している。軟質部31Eは、軟質部Eの一部を構成する。軟質部31Eは、正面視で変形部70の後端側端部から後端側に向かうのに従って漸次狭くなった後に略一定の長さで延びている。正面視において、軟質部31Eの側縁と把持部30の幅方向外側の側縁とは略一定の距離で形成されている。
【0040】
把持部30は、変形部70に設けられた硬質部70H(図2乃至図4参照)と、変形部70よりも後端側に設けられた硬質部30Hを有している。硬質部30H、70Hは、硬質部Hの一部を構成する。硬質部30Hは、正面側に軟質部31Eが埋設される窪み31Hを有している。窪み31Hは、正面視で変形部70の後端から後端側に向かうのに従って漸次狭くなった後に略一定の長さで長軸方向に延びている。窪み31Hに埋設された軟質部31Eの一部は、正面側に露出する硬質部30Hよりも突出している。他の軟質部31Eは、正面側に露出する硬質部30Hと略面一である。
【0041】
把持部30は、背面側における幅方向の中央に軟質部32Eを有している(図1図2参照)。軟質部32Eは、軟質部Eの一部を構成する。軟質部32Eは、正面視で軟質部31Eの外形輪郭と略同一の外形輪郭を有している。すなわち、軟質部32Eは、変形部70の後端から後端側に向かうのに従って漸次狭くなった後に略一定の長さで延びている。背面視において、軟質部32Eの側縁と把持部30の幅方向外側の側縁とは略一定の距離で形成されている。
【0042】
硬質部30Hは、背面側に軟質部32Eの一部が埋設される窪み32H(図2参照)を有している。窪み32Hは、背面視で変形部70の後端から後端側に向かうのに従って漸次狭くなった後に略一定の長さで延びている。軟質部32Eの一部は、背面側に露出する硬質部30Hよりも突出している。他の軟質部32Eは、正面側に露出する硬質部30Hと略面一である。
【0043】
把持部30の正面側に軟質部31Eが設けられ、背面側に軟質部32Eが設けられているため、把持部30を把持した際のグリップ性が向上する。
【0044】
[変形部70]
変形部70は、植毛面11と直交する厚さ方向の外力により変形する。変形部70は、先端側のネック部(第1領域)20と、後端側の把持部(第2領域)30とをつなぐ。変形部70は、硬質部70Hと軟質部70Eとを有している。変形部70は、図1及び図2に示すように、ローレット部(凹凸構造部)101~104を有している。
【0045】
図3は、変形部70における長軸方向と直交する断面図であり、図1におけるA-A線視断面図である。図4は、変形部70を幅方向の中心を含む平面で切断した断面図である。
【0046】
図3に示すように、本実施形態では、硬質部70Hは周囲を軟質部70Eで被覆されている。変形部70の長軸方向の最大長さは、15mm以上、30mm以下であることが好ましい。変形部70の長軸方向の最大長さを15mm以上とすることにより、使用者が把持部30を把持した際に変形部70の変形を十分に感じることが可能になる。また、変形部70の長軸方向の最大長さを30mm以下とすることにより、変形部70が容易に撓みすぎることを抑制できる。また、把持した部分における変形領域が限定され、操作性が低下することが抑制される。
【0047】
変形部70は、長軸方向と直交する断面の輪郭が厚さ方向の背面側に偏心した多角形である。変形部70の断面輪郭は、硬質部70Hが埋設された軟質部70Eの略六角形状の外形輪郭である。外形輪郭の六つの頂点のうち、厚さ方向の中途(幅方向両端)に配置された二つの頂点は、変形部70(軟質部70E)の厚さ方向の中心よりも背面側に配置されている。二つの頂点を変形部70の厚さ方向の中心よりも背面側に配置することにより、正面側よりも背面側が薄くなり変形部70を背面側に撓ませやすくなる。
また、幅方向両端に二つ厚さ方向の位置が同じ頂点が配置されているため、当該頂点位置での肉厚が大きいことから幅方向への曲げ抵抗が大きい。そのため、変形部70は、幅方向に曲がりにくい。
【0048】
硬質部70Hの断面形状は、図3に示すように、幅が厚さよりも大きい、幅方向に延びる矩形状に形成されている。硬質部70Hは、幅が厚さよりも大きいため、厚さ方向に曲がりやすく、幅方向に曲がりづらくなるという曲げ挙動(曲げに関する異方性)を有することになる。換言すると、変形部70は、幅が厚さよりも大きい幅方向に延びる矩形状の断面に形成された硬質部70Hを有することにより、厚さ方向の曲げ強度が幅方向の曲げ強度よりも小さく規制されている。
【0049】
硬質部70Hの厚さ方向の中心位置は、変形部70の厚さ方向の中心位置よりも背面側に配置されている。すなわち、硬質部70Hは、厚さ方向に関して、背面側に偏心して配置されている。
【0050】
長軸方向と直交する断面における、変形部70の外形輪郭または外形輪郭の延長線で囲まれた閉空間の断面積に対する硬質部70Hの断面積の占有率は、長軸方向に亘って35%以下である。変形部70の外形輪郭が、図3に示すように、閉空間を形成する場合は、当該閉空間の面積が変形部70の断面積である。硬質部70Hの断面積の占有率を長軸方向に亘って変形部70の断面積の35%以下とすることにより、背面側への変形部70の曲げ強度を小さくすることができる。前期占有率は、好ましくは25%以下、より好ましくは15%以下である。また、前記占有率は3%以上であることが好ましい。
【0051】
ローレット部101~104は、変形部70における正面側、背面側及び幅方向の両側の側縁にそれぞれ露出して設けられている。より詳細には、ローレット部101は、変形部70における正面側の軟質部70Eに露出して設けられている。ローレット部102は、変形部70における背面側の軟質部70Eに露出して設けられている。
【0052】
ローレット部101、102は、図1に示すように、長軸方向と交差する方向に延び長軸方向に互いに隣り合って複数配置された凹部111と凸部112とをそれぞれ有している。本実施形態における凹部111と凸部112とは、幅方向に延びている。すなわち、凹部111は、幅方向に延びる溝状である。凸部112は、幅方向に延びる突起である。図4に示すように、幅方向の中心を含む平面で切断した凹部111の断面は、厚さ方向中心側に窪んだ円弧形状である。幅方向の中心を含む平面で切断した凸部112の断面は、厚さ方向外側に突出する円弧形状である。
【0053】
変形部70の正面側及び背面側に幅方向に延びる薄肉部を形成する凹部111を長軸方向に複数設けることにより、凹部111を中心にして変形部70が背面側及び正面側に撓みやすくなる。そのため、長軸方向の凹部111の位置は、ローレット部101、102において互いに同一とすることが好ましい。
【0054】
凸部112に対する凹部111の深さ(凸部112の頂点位置から凹部111の最も窪んだ位置までの厚さ方向の距離)は、変形部70の最大厚さに対して2%以上、20%以下であることが好ましい。凹部111の深さが変形部70の最大厚さに対して2%未満の場合、変形部70の厚さ方向の撓みが効果的に発現しない可能性がある。凹部111の深さが変形部70の最大厚さに対して20%を超えると、把持部30が容易に撓んでしまい操作性が損なわれる可能性がある。そのため、凹部111の深さを変形部70の最大厚さに対して2%以上、20%以下とすることにより、操作性を確保した状態で変形部70を背面側及び正面側に撓ませやすくなる。
【0055】
ローレット部101における凹部111の深さと、ローレット部102における凹部111の深さとは、異なっていてもよいが、操作性と厚さ方向への撓み特性を正面側と背面側とで同一とする観点から、凹部111の深さは同一であることが好ましい。
【0056】
ローレット部101、102の最大幅、すなわち変形部70の最大幅としては、8mm以上、20mm以下であることが好ましい。変形部70の最大幅が8mm未満の場合、把持部30が容易に撓んでしまい操作性が損なわれる可能性がある。また、変形部70の最大幅が20mmを超えると、変形部70の厚さ方向の撓みが効果的に発現しない可能性がある。そのため、ローレット部101、102の最大幅を8mm以上、20mm以下とすることにより、操作性を確保した状態で変形部70を背面側及び正面側に撓ませやすくなる。
【0057】
ローレット部101、102における凹部111及び凸部112の長軸方向の配列ピッチRPとしては、変形部70の長軸方向の長さの9%以上、26%以下であることが好ましい。配列ピッチRPが9%未満の場合、変形部70の撓みが十分に発現しない可能性がある。配列ピッチRPが26%を超える場合、変形部70が撓みすぎてしまい操作性が損なわれる可能性がある。そのため、ローレット部101、102における凹部111及び凸部112の長軸方向の配列ピッチRPを変形部70の長軸方向の長さの9%以上、26%以下とすることにより、操作性を確保した状態で変形部70を背面側及び正面側に撓ませやすくなる。
【0058】
ローレット部103は、変形部70における幅方向一方側(図1では上側)の側縁の軟質部70Eに露出して設けられている。ローレット部104は、変形部70における幅方向他方側(図1では下側)の側縁の軟質部70Eに露出して設けられている。
【0059】
ローレット部103、104は、図4に示すように、長軸方向と交差する方向に延び長軸方向に互いに隣り合って複数配置された凹部113と凸部114とをそれぞれ有している(図4ではローレット部103のみ図示)。本実施形態における凹部113と凸部114とは、厚さ方向に延びている。すなわち、凹部113は、厚さ方向に延びる溝状である。凸部114は、厚さ方向に延びる突起である。図1に示すように、正面視において凹部113は、幅方向中心側に窪んだ円弧形状である。正面視において凸部114は、幅方向外側に突出する円弧形状である。
【0060】
変形部70の幅方向両側に、厚さ方向に延びる薄肉部を形成する凹部113を長軸方向に複数設けることにより、変形部70が厚さ方向に撓む際の抵抗が少なくなり、変形部70を背面側及び正面側に撓ませやすくなる。そのため、長軸方向の凹部113の位置は、ローレット部103、104において互いに同一とすることが好ましい。
【0061】
凸部114に対する凹部111の深さ(凸部114の頂点位置から凹部113の最も窪んだ位置までの厚さ方向の距離)は、変形部70の最大幅に対して2%以上、20%以下であることが好ましい。凹部113の深さが変形部70の最大幅に対して2%未満の場合、変形部70が厚さ方向に撓む際の抵抗の減少が小さくなり、変形部70の厚さ方向の撓みが効果的に発現しない可能性がある。凹部113の深さが変形部70の最大幅に対して20%を超えると、把持部30が容易に撓んでしまい操作性が損なわれる可能性がある。そのため、凹部113の深さを変形部70の最大幅に対して2%以上、20%以下とすることにより、操作性を確保した状態で変形部70を背面側及び正面側に撓ませやすくなる。
【0062】
ローレット部103における凹部113の深さと、ローレット部104における凹部113の深さとは、異なっていてもよいが、操作性と幅方向への撓み特性を幅方向の一方側と他方側とで同一とする観点から、凹部113の深さは同一であることが好ましい。
【0063】
厚さ方向に配置されたローレット部101、102における凹部111の深さと、幅方向に配置されたローレット部103、104における凹部113の深さとは同一でもよいが、厚さ方向に撓みやすくする観点から凹部111が凹部113よりも深いことが好ましい。
【0064】
変形部70の周囲に長軸方向に間隔(凹部111、113)をあけて凸部112、114が設けられているため、変形部70を把持した際のグリップ性が向上する。
【0065】
ローレット部101、102としては、凹部111と凸部112とが延びる方向が、凹部111と凸部112とが並ぶ長軸方向と直交する平目ローレット構造に限定されない。凹部111と凸部112とが延びる方向と並ぶ方向との交差角度が90度以外の場合には、凹部111と凸部112とが延びる方向と長軸方向とが第1角度で交差して長軸方向に並ぶ第1ローレット群と、凹部111と凸部112とが延びる方向と長軸方向とが、長軸方向を中心として第1角度と線対称となる第2角度で交差して長軸方向に並ぶ第2ローレット群とが設けられるアヤ目ローレット構造を採ってもよい。第1角度と第2角度とが長軸方向を中心として線対称となるアヤ目ローレット構造を採る場合、凹部111を中心にして変形部70が背面側及び正面側に撓む際に、第1ローレット群と第2ローレット群との抵抗が同一となり、変形部70が厚さ方向と交差する方向に撓むことを抑制できる。ローレット部103、104についても、同様に、アヤ目ローレット構造を採る構成であってもよい。
【0066】
また、凹部111、113及び凸部112、114の断面形状は、円弧形状に限られず、例えば、矩形状、V字状等であってもよい。凹部111、113の断面形状に角部が含まれる場合、当該角部が応力集中する可能性があるため、凹部111、113の断面形状は、円弧形状であることが好ましい。
【0067】
図5は、変形部70における硬質部70H周辺の部分的な正面図である。図6は、変形部70における硬質部70H周辺の部分的な側面図である。
図5に示すように、硬質部70Hは、長軸方向でネック部20である硬質部20Hと、把持部30における変形部70より後端側の硬質部30Hとをつなぐ平面視矩形状に形成されている。硬質部70Hの幅は、硬質部20Hの幅及び硬質部30Hの幅よりも小さく形成されている。
【0068】
硬質部70Hと接続された硬質部20Hは、幅、厚さ及び厚さ方向の曲げ強度が硬質部70Hよりも大きく剛直である第1領域P1を構成する。硬質部70Hと接続された硬質部30Hは、幅、厚さ及び厚さ方向の曲げ強度が硬質部70Hよりも大きく剛直である第2領域P2を構成する。第1領域P1及び第2領域P2は、それぞれ長軸方向と直交する断面において、軟質樹脂よりも硬質樹脂が占める割合が大きい。歯ブラシ1において、把持部30を把持した状態でヘッド部10に背面側への外力が加わった際に、変形部70の先端側の第1領域P1及び後端側の第2領域P2は、曲げ強度が硬質部70Hよりも大きく剛直であることから非変形となり、第1領域P1と第2領域P2の間に配置された変形部70が背面側に変形する。
【0069】
図6に示すように、硬質部70Hにおける正面側の先端側は、側面視で円弧状の曲面73Hで硬質部20H(第1領域P1)と接続されている。硬質部70Hにおける正面側の後端側は、側面視で円弧状の曲面74Hで硬質部30H(第2領域P2)と接続されている。曲面73H、74Hの円弧中心は、側面視で硬質部70Hよりも正面側に位置する。硬質部70Hにおける背面側の先端側は、側面視で円弧状の曲面75Hで硬質部20Hと接続されている。硬質部70Hにおける背面側の後端側は、側面視で円弧状の曲面76Hで硬質部30Hと接続されている。曲面75H、76Hの円弧中心は、側面視で硬質部70Hよりも背面側に位置する。曲面73H~76Hが存在しない場合には、硬質部70Hの先端側と硬質部20Hとの境界、および硬質部70Hの後端側と硬質部30Hとの境界に応力が集中する可能性がある。これに対して、曲面73H~76Hが存在することで集中する応力が緩和される。
【0070】
硬質部70Hの厚さ(最小厚さ)としては、0.5mm以上、2.0mm以下であることが好ましい。硬質部70Hの厚さが0.5mm未満の場合、ヘッド部10に背面側への外力が加わった際の変形部70の変形が大きくなり、ブラッシング時の操作性が低下する可能性がある。硬質部70Hの厚さが2.0mmを超えた場合、ヘッド部10に背面側への外力が加わった際に曲がりづらくなる。また、外力が加わった際に硬質部70Hを平面応力状態とすることが困難になり耐久性が低下する可能性がある。そのため、硬質部70Hの厚さを0.5mm以上、2.0mm以下とすることにより、ブラッシング時の操作性を維持しつつ、硬質部70Hを平面応力状態とすることができる。
【0071】
硬質部Hの素材としては、一例として、曲げ弾性率(JIS7171)が1500MPa以上、3500MPa以下である硬質樹脂が挙げられ、例えば、ポリアセタール樹脂(POM)が挙げられる。硬質部Hの曲げ弾性率としては、2000MPa以上、3500MPa以下がより好ましい。
【0072】
軟質部Eの素材としては、ブラッシング荷重が増加しても歯牙等への荷重が適切な範囲に収まる点で、一例として、ショア硬度Aが50以上、90以下のものが好ましく、ショア硬度Aが60以上、80以下であることがより好ましい。ショア硬度Aが50未満の場合、幅方向に撓みやすくなる可能性がある。軟質樹脂としては、例えば、エラストマー(例えば、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー等)、シリコーンが挙げられる。ポリアセタール樹脂との混和性に優れることからスチレン系エラストマーが好ましい。
【0073】
歯ブラシ1におけるオーバーブラッシング対策として、柔軟な撓み挙動を担保して、ブラッシング荷重を緩和させることが有効である。そのため、歯ブラシ1における厚さ方向の撓み挙動においては、ブラッシング圧が急激に上昇した際にも、なるべく一定の圧力で歯牙等に負荷がかかることが求められる。ただし、ブラッシング時に厚さ方向に加えて幅方向にまで柔軟性を付与すると、本来かけるべき歯牙への圧力が分散してしまい、清掃力の低下に繋がる。また、様々な方向にヘッドが撓む場合、狙った部位にヘッド部10を当てにくくなり、操作性の低下に繋がる可能性がある。
【0074】
これに対して、本実施形態の歯ブラシ1では、曲げ強度に異方性を有し厚さ方向に撓みやすく幅方向に撓みづらい上記の変形部70が設けられているため、上述した清掃力の低下および操作性の低下を抑制できる。また、本実施形態の歯ブラシ1における変形部70は、硬質部70Hが軟質部70Eに埋設され、変形部70が硬質部のみで形成されている場合と比較して適度な弾性が作用するため、ブラッシング圧が急激に上昇した際にも、歯牙等への負荷が抑制される。また、変形部70が軟質部のみで形成されている場合と比較して、負荷を解放したときに直ちに元の形状に戻り、ヘッド部10の様々の動きにも対応できる。
【0075】
以上説明したように、本実施形態の歯ブラシ1においては、外形輪郭または外形輪郭の延長線で囲まれた閉空間の断面積に対する硬質部70Hの断面積の占有率が長軸方向に亘って35%以下で撓みやすく、厚さ方向の曲げ強度が幅方向の曲げ強度よりも小さく規制された変形部70に、正面側及び背面側に露出するローレット部101、102が設けられているため、適切なブラッシング圧を維持しつつ、目的部位をしっかり磨けるという良好な操作性を保持することができる。また、本実施形態の歯ブラシ1においては、変形部70の幅方向両側に露出するローレット部103、104が設けられているため、変形部70が厚さ方向に撓む際の抵抗を減少させることができ、より変形部70を厚さ方向に撓ませやすくなる。
【0076】
[第2実施形態]
続いて、歯ブラシ1の第2実施形態について、図7乃至図12を参照して説明する。
これらの図において、図1乃至図6に示す第1実施形態の構成要素と同一の要素については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0077】
図7は、第2実施形態に係る歯ブラシ1の正面図である。図8は、同歯ブラシ1を幅方向(図7における上下方向)の中心を含む平面で切断した断面図である。
【0078】
図7及び図8に示すように、本実施形態における歯ブラシ1の変形部70は、反転部80と弾性変形部90とを有している。図9は、変形部70における長軸方向中央で長軸方向と直交する断面図であり、図7におけるB-B線視断面図である。図10は、変形部70を幅方向の中心を含む平面で切断した断面図である。
【0079】
反転部80及び弾性変形部90は、それぞれ変形部70より先端側のネック部(第1領域)20と、変形部70よりも後端側の把持部(第2領域)30とをつなぐ。図9に示すように、弾性変形部90は、反転部80の幅方向両側に隙間Sをあけてそれぞれ設けられている。隙間Sは、厚さ方向に貫通する貫通孔Kで形成されている。貫通孔Kは、図7に示すように、長軸方向に延びる平面視矩形状に形成されている。すなわち、変形部90は、貫通孔Kを介して幅方向に分岐され、分岐した変形部70のそれぞれが弾性変形部90を形成している。
【0080】
隙間Sを設けることで、周囲の構造と干渉せずに反転部80が反転可能となる(反転しやすくなる)。また、弾性変形部90と反転部80とが干渉しないので、反転部80の変形が弾性変形部の変形に追従しないため、反転部80と弾性変形部90の機能的役割(後述)を独立させることができる。
これにより、例えば以下の効果を得るための設計の自由度を高めることができる。例えば、後述する反転部80が反転する際の振動・音を明瞭に発生させることができる。また、例えば、外力の大きさがしきい値に至るまでの反転部80の反発力を、変位量に比例して上昇させることが可能となり、特にしきい値近傍においても前記比例関係を保つことが可能となる(反転部80の反発力の上昇度合が緩くならない)。これにより、上限となる圧力(ブラッシング圧)に達する変位量までの領域は、使用者が想定する圧力がそのまま反転部80の反発力に反映されるため、ブラッシング荷重を適切に制御することができる。もし、外力の大きさがしきい値に至る近傍で反発力の上昇度合が徐々に緩くなる設定の場合、使用者は意図せず上限付近の圧力でブラッシングし続ける可能性がある。また、隙間Sは反転部80の厚さ方向両側にも連通させれば、前記効果がさらに向上する。
更に、隙間Sを厚さ方向に広げることで、ブラッシング時に刷毛部(用毛)に負荷する荷重のベクトルと隙間の開口する方向、さらに反転部80と弾性変形部90とが変形する方向が並行となり(図9参照)、反転による振動・音の発生をブラッシング荷重と連動させることが容易となる。
【0081】
更に、隙間Sを貫通孔Kによって正面側と背面側とを貫通させれば、例えば、ブラッシング時の荷重に対する、ハブラシ骨格の撓み機能を担う弾性変形部90の可動領域を更に拡大することができる(撓みに伴う、表面での引張り挙動、裏面での圧縮挙動が阻害されにくい)。弾性変形部90と反転部80との間に貫通孔Kが存在しない場合には、弾性変形部90の可動領域が狭くなる。この場合、反転部80が反転する契機を適切な荷重範囲で与えられず、適切な荷重範囲に達する前に反転部80が反転すること、あるいは適切な荷重範囲であっても反転しないという事態が想定される。これに対して、弾性変形部90と反転部80との間に貫通孔Kを設けることにより、後述する反転部80が反転するしきい値を、より細かい範囲で制御することができる。
なお、隙間Sは厚さ方向に貫通しなくても良く、例えば弾性変形部90の内部に前記長軸方向に延びる閉鎖された空洞により形成されても良い。また、正面側または背面側に開口する窪み(後述)により形成されても良い。
【0082】
各弾性変形部90は、硬質部(芯部)90Hと軟質部(被覆部)90Eとを有している。図7に示すように、軟質部90Eは、ネック部20の後端と変形部70より後端側の把持部30とをつないでいる。図9及び図10に示すように、一対の弾性変形部90の間には、正面側に開口する窪み(凹部)71と、背面側に開口する窪み(凹部)72とが設けられている。窪み71及び窪み72における幅方向両端側の底部は、それぞれ貫通孔Kとつながっている。窪み71及び窪み72における幅方向中央の底部には反転部80が露出して設けられている。窪み71、72を設けることで、例えば、ブラッシング時の荷重に対する、ハブラシ骨格の撓み機能を担う弾性変形部90の可動領域を更に拡大し、厚さ方向への撓み異方性を向上させることができる。なお、一対の弾性変形部90の間の前記窪みは厚さ方向に貫通していなくても良く、厚さ方向の一方のみに開口しても良い。また、例えば、弾性変形部90の内部に長軸方向に延びる閉鎖された空洞を形成し、前記空洞を中央に挟んで、幅方向に一対の弾性変形部90を形成しても良い。
【0083】
一対の弾性変形部90は、正面側及び背面側の両方において、軟質部90Eの長軸方向の端部同士が幅方向でつながっている。一対の弾性変形部90の軟質部90Eは、正面視で長円状の窪み71、72の周囲に設けられている。軟質部90Eの後端側は、把持部30の軟質部31Eと接続している。弾性変形部90の先端側及び後端側の双方で軟質部90Eが幅方向に繋がることにより、反転を繰り返してもヒンジ構造の末端に応力が集中しにくく、折れにくくなる。また、弾性変形部90の先端側及び後端側の双方で軟質部90Eが幅方向に繋がることにより変形部70における異方性が高まり、一対の弾性変形部90はブラッシング時の動きに対して、厚さ方向に対して捻れずに撓むことが可能となる。さらに、軟質部90Eが幅方向に繋がることにより、射出成形時に軟質樹脂(エラストマー)が有する熱量が増えるため、ネック部20と変形部70の接着性(ネック部20と弾性変形部90の接着性)が高まる。
【0084】
変形部70の外形輪郭が、図9に示すように、閉空間を形成しない場合、二点鎖線で示す正面側の外形輪郭の延長線及び二点鎖線で示す背面側の外形輪郭の延長線を含む外形輪郭で囲まれた閉空間の面積が変形部70の断面積である。
【0085】
図11は、変形部70における硬質部70H周辺の部分的な正面図である。
図11に示すように、硬質部70Hは、反転部80の幅方向両側に設けられた貫通孔73を有している。貫通孔73は、長軸方向にそれぞれ延びている。貫通孔73の長軸方向の長さは、硬質部20H、30Hの端部とそれぞれ離間する長さである。図9に示すように、貫通孔73のうち、幅方向で硬質部90H寄りには軟質部90Eが設けられ、幅方向で反転部80寄りには貫通孔Kが形成される。硬質部70Hにおいて、反転部80を中心として幅方向の両側に貫通孔73を介して硬質部90Hが配置されているため、荷重が負荷されて弾性変形部90が変形しても、反転部80の形状を維持できる。歯ブラシ1を全長に亘って構成する硬質部Hが撓んだ際に、その蓄積した歪みエネルギーを開放しようとして変形部70の反転部80が反転する。例えば、硬質部70Hが反転部80のみでネック部20と把持部30とが繋がっている場合、そのエネルギーを蓄積できないので、すぐに反転してしまうことになる。上記の反転部80を、後述する第1部分A1、および第2部分A2、更にはネック部20と把持部30、および硬質部70Hと一体的に射出成型すると、蓄積した歪みエネルギーを反転部80に効率良く伝達することができる。
【0086】
硬質部90Hは、硬質部70Hのうち、貫通孔73よりも幅方向外側に形成されている。図9に示すように、硬質部90Hは、長辺が幅方向に延びる略矩形の断面形状である。硬質部90Hは、軟質部90Eに周囲を覆われた状態で埋設されている。硬質部90Hが軟質部90Eに埋設されているため、強度面からは硬質部90Hに負荷される応力を緩和することができる。また、荷重に対する歯ブラシ1の撓み度合いの点からは、弾性変形部90の弾性挙動のコントロールが可能になる。また、硬質部90Hを軟質部90Eに埋設することにより、変形部70における撓み異方性が高まり、例えば、ブラッシング時の動きに対して、厚さ方向に対して捻れずに弾性変形部90を撓ませることが可能となる。
【0087】
一対の硬質部90Hは、厚さ方向について同一位置に配置されている。一対の硬質部90Hが厚さ方向について同一位置に配置されていることにより、変形部70における異方性が高まり、一対の弾性変形部90はブラッシング時の動きに対して、厚さ方向に対して捻れずに撓むことが可能となる。また、硬質部90Hの厚さ方向の位置としては、弾性変形部90の厚さが半分となる位置よりも背面側であることが好ましい。弾性変形部90の厚さが半分となる位置よりも背面側であることにより、荷重が解放された際に元の形状に直ちに戻る挙動を確保しながら、厚さ方向に対する撓みやすさを担保できる。硬質部90Hの幅としては、2.0mm以上であることが好ましい。硬質部90Hの幅を2.0mm以上とすることにより、幅方向の撓みを抑制できる。硬質部90Hの厚さとしては、2.0mm以下であることが好ましい。硬質部90Hの厚さを2.0mm以下とすることにより、厚さ方向に繰り返し撓みやすくなる。硬質部90Hの幅は、弾性変形部90が厚さ方向よりも幅方向に曲がりにくくする点から、硬質部90Hの厚さよりも大きいことが好ましい。
【0088】
更に、硬質部90Hは、曲面73H~76Hが存在することで、弾性変形部90、および反転部80の先端側及び後端側の双方が柔軟性をもって変形することができる(反転する契機となる弾性変形部90の変形度合いを、より細かく感知することができる)。
【0089】
硬質部90Hと変形部70の幅方向外側輪郭との最小距離、すなわち、硬質部90Hよりも幅方向外側の軟質部90Eの最小厚さ(肉厚)としては、1.0mm以下であることが好ましい。上記軟質部90Eの最小厚さを1.0mm以下とすることにより、幅方向の撓みを抑制できる。
【0090】
硬質部Hの素材として高弾性率の素材(例えば、POM)を用いることにより、形状を細く、あるいは薄くしても過剰な荷重が負荷した際に飛び移り座屈を生じ、振動を発現する。また、高弾性率の素材を用いることで、飛び移り座屈を生じた後に迅速に初期状態(弾性変形部90の撓みが解放される状態)に戻ることができる。
【0091】
軟質部Eの素材としては、飛び移り座屈が生じるまでは、ブラッシング荷重が増加しても歯牙等への荷重が適切な範囲に収まる点で、一例として、ショア硬度Aが50以上、90以下のものが好ましく、ショア硬度Aが60以上、80以下であることがより好ましい。
【0092】
本実施形態の歯ブラシ1における変形部70は、硬質部90Hが軟質部90Eに埋設された弾性変形部90を有し、弾性変形部90が硬質部のみで形成されている場合と比較して適度な弾性が作用するため、ブラッシング圧が急激に上昇した際にも、歯牙等への負荷が抑制される。また、弾性変形部90が軟質部のみで形成されている場合と比較して、負荷を解放したときに直ちに元の形状に戻り、ヘッド部10の様々の動きにも対応できる。さらに、本実施形態では、一対の弾性変形部90が幅方向に並んで配置されているため、厚さ方向の負荷に対して、幅方向の撓みが抑えられることで捻れによる撓みも抑制可能であり、その結果、上述した清掃力の低下および操作性の低下を抑制できる。
【0093】
さらに、本実施形態では、一対の弾性変形部90が幅方向に並んで配置されているため、厚さ方向の負荷に対して、幅方向の撓みが抑えられることで捻れによる撓みも抑制可能であり、その結果、上述した清掃力の低下および操作性の低下を抑制できる。
【0094】
反転部80は、図7に示すように、正面視において長軸方向に延び、硬質部70Hにおける貫通孔73よりも先端側の第1部分A1と、貫通孔73よりも後端側の第2部分A2とをつなぐ第2硬質部である。反転部80は、ヘッド部10に背面側への外力が加わっていない(または、後述する所定のしきい値以下の外力が加わった)図10に示す第1の安定状態(以下、第1状態と称する)において、長軸方向の両端部から中央に向かうに従って漸次背面側に向かって傾斜する側面視で略V字状に形成されている。すなわち、反転部80は、第1状態において、長軸方向の中央が頂点となる背面側に凸形状に形成されている。
【0095】
図9に示すように、反転部80の一部は、第1状態において硬質部90Hと幅方向に重なっている。また、図12に示すように、反転部80の一部は、後述する第2状態においても硬質部90Hと幅方向に重なっている。反転部80の一部が第1状態および第2状態の双方で硬質部90Hと幅方向に重なっているため、変形部70における異方性が高まり、一対の弾性変形部90はブラッシング時の動きに対して、厚さ方向に対して捻れずに撓むことが可能となる。
【0096】
上記の歯ブラシ1において、把持部30を把持した状態でヘッド部10に背面側への外力が加わった際に、変形部70の先端側の第1領域P1及び後端側の第2領域P2は、曲げ強度が硬質部70Hよりも大きく剛直であることから非変形となり、第1領域P1と第2領域P2の間に配置された変形部70が背面側に変形する。
【0097】
このとき、外力の大きさが所定のしきい値以下の場合、弾性変形部90及び反転部80は、外力の大きさに応じて弾性変形する。また、このときローレット部101については、長軸方向に伸張しつつ背面側に撓む。ローレット部102については、長軸方向に圧縮されつつ背面側に撓む。ローレット部101、102は、凹部111の存在によって厚さ方向で薄肉となっており、且つ、両分岐部の表裏 (正面側および背面側)において幅方向に凹凸が同じピッチで形成されることで、厚み方向に対して捻れずに、容易に背面側に撓むことができる。また、ローレット部103、104においては、凹部111の存在によって幅方向で薄肉となっているため、変形部70が厚さ方向に撓む際の抵抗が少なくなり変形部70を背面側に一層撓ませやすくなる。さらに、表裏(正面側および背面側)の凹凸(凹部111および凸部112)を側面部の凹凸(凹部113および凸部114)にも延長して連ねることで、厚み方向に対して、より捻れずに撓ませることができる。
【0098】
外力の大きさが所定のしきい値を超えた場合、弾性変形部90は、しきい値を超えた外力の大きさに応じてしなって弾性変形する。一方、外力の大きさが所定のしきい値を超えた場合、反転部80は、図12に二点鎖線で示すように、ネック部20が変形したときに飛び移り座屈して反転し、第2の安定状態(以下、第2状態と称する)となる。第2状態において、反転部80は、中央に向かうに従って漸次正面側に向かって傾斜する、側面視で略逆V字状となる向きに反転する。反転部80は、第2状態において、長軸方向の中央が頂点となる正面側に凸形状に形成されている。
【0099】
すなわち、外力の大きさが所定のしきい値を超えた場合、弾性変形部90が弾性変形することにより、変形部70における撓み強度が担保された状態で、反転部80が第1状態から飛び移り座屈して反転し第2状態となる。また、反転部80と弾性変形部90との間に貫通孔Kが設けられているため、反転部80と弾性変形部90とは、互いに独立して変形可能となり、反転部80を反転させやすくなる。すなわち、ブラッシング荷重が負荷した際に、貫通孔Kが設けられているため、互いの変形挙動を阻害することなく、まず弾性部材90だけが撓んだ後に反転部80が撓むことができる。なお、反転部80と弾性変形部90との間は必ずしも貫通している必要はなく、隙間Sが形成されていれば良い。
また、ヘッド部10に対する厚さ方向の負荷に対して、弾性変形部90は幅方向の撓みが抑えられることで捻れによる撓みも抑制可能なため、反転部80が厚さ方向への負荷に対して精度よく機能することに寄与できる。さらに、反転部80の反転については、歪みエネルギーを蓄積する必要があるが、上述したように、厚さ方向の負荷に対して、幅方向の撓みが抑えられることで捻れによる撓みも抑制されるため、ブラッシング時の負荷を効率よく歪みエネルギーに変換することができる。そのため、本実施形態では、適切なタイミングで反転部80の明確な繰返し座屈が可能になる。
【0100】
上記反転部80が飛び移り座屈して反転した際の振動により、把持部30を把持した使用者は、ヘッド部10に加わる背面側への外力がしきい値を超えたオーバーブラッシング状態であることを感知できる。
【0101】
反転部80は、正面側における長軸方向の中央、すなわち、凸形状の頂点を含む領域に溝部81を有している。反転部80は、背面側における長軸方向の中央、すなわち、凸形状の頂点を含む領域に溝部82を有している。溝部81、82は、幅方向に延びている。溝部81は、正面側に円弧中心が配置された側面視で円弧形状に形成されている。溝部82は、背面側に円弧中心が配置された側面視で円弧形状に形成されている。反転部80に溝部81、82が設けられていない場合には、反転部80の全体に一様に応力が生じ、飛び移り座屈を生じにくくなる。一方、反転部80に溝81、82が設けられることで、溝部81、82に集中的に応力が生じ、飛び移り座屈が生じやすくなる。
【0102】
側面視で円弧形状の溝部81、82の半径としては、1mm以上、2mm以下であることが好ましい。溝部81、82の半径が1mm未満の場合、反転部80が反転しない可能性がある。溝部81、82の半径が2mmを超えた場合、反転部80の反転時の振動が小さくなりオーバーブラッシング状態であることを感知することが困難になる可能性がある。
【0103】
溝部81、82の深さとしては、溝部81が溝部82よりも深いことが好ましい。溝部82が溝部81よりも深い場合、外力の大きさが所定のしきい値を超えた場合でも反転部80が反転しにくくなる。また、溝部81が溝部82よりも深い場合には、反転部80を正面側により飛び移り座屈しやすくなるように誘導することが可能になる。なお、溝部81、82の双方が設けられる構成ではなく、溝部82が設けられず、溝部81のみが設けられる構成であってもよい。
【0104】
反転部80は、凸形状の頂点を含む領域に溝部81、82が設けられているため、凸形状の頂点を含む領域が他の領域よりも薄くなる。そのため、しきい値を超えた外力による反転部80の変形によって溜まった歪みエネルギーを溝部81、82を起点として瞬時に解放させて、反転部80を反転させることができる。また、上述のように、変形部70が異方性が高く反転部80の厚さ方向の変形が容易なため、反転部80の変形によって溜まった歪みエネルギーにより、反転部80の厚さ方向への効率的な反転等の機能に寄与できる。さらに、厚さ方向の溝部81、82の位置を調整して、反転部80が第1状態から第2状態に反転する位置を調整することが可能となる。
【0105】
また、溝部81、82が側面視で円弧形状に形成されているため、例えば、交差する二つの平面でV字状に形成された場合と比較して、溝部81、82を含む反転部80の頂点が厚さ方向に移動した際にも頂点における応力集中を緩和することができる。
【0106】
ヘッド部10に加わる背面側への外力のしきい値としては、例えば、適正なブラッシング圧の上限値である。
【0107】
長軸方向及び幅方向と平行な平面に対して、図10に示すように、反転部80が傾斜する角度θとしては、5度以上、11度以下であることが好ましく、7度以上、11度以下であることがより好ましい。上記傾斜角度θが5度未満の場合は、反転部80が飛び移り座屈せずに変形することで、オーバーブラッシング状態であることを感知することが困難になる可能性がある。上記傾斜角度θが11度を超えた場合は、オーバーブラッシング圧で反転部80が飛び移り座屈して反転することが困難になるか、または、飛び移り座屈して反転した際に反転部80が破断して可逆性がなくなる可能性がある。
【0108】
反転部80の厚さとしては、溝部81、82を除いて1mm以上、2mm以下であることが好ましい。反転部80の厚さが1mm未満の場合、変形するものの飛び移り座屈せず、オーバーブラッシング状態であることを感知することが困難になる可能性がある。反転部80の厚さが2mmを超えると、オーバーブラッシング圧で反転部80が飛び移り座屈して反転することが困難になるか、または、飛び移り座屈して反転した際に反転部80が破断して可逆性がなくなる可能性がある。
【0109】
反転部80の幅としては、1.5mm以上であることが好ましい。反転部80の幅が1.5mm未満の場合、幅方向に撓みやすくなる可能性がある。
反転部80の最大厚さをT(mm)とし、変形部70の最大厚さをt(mm)とすると、T/tで表される値を規定することで、過剰なブラッシング荷重が負荷した際に反転部80の反転しやすさ、そのタイミング(しきい値)を制御することが可能になる。T/tで表される値としては、0.05以上、0.35以下であることが好ましく、0.10以上、0.35以下であることがより好ましい。T/tで表される値が0.05未満の場合、変形部70(弾性変形部90)のしなりに追随する形で反転部80も変形するものの、飛び移り座屈しないため、オーバーブラッシング状態であることを感知することが困難になる可能性がある。T/tで表される値が0.35を超えると、オーバーブラッシング圧で反転部80が飛び移り座屈して反転することが困難になるか、または、飛び移り座屈して反転した際に破断して反転部80の可逆性がなくなる可能性がある。
【0110】
図9に示すように、反転部80の最大幅をL(mm)とし、変形部70の最大幅をW(mm)とすると、L/Wで表される値を規定することで、例えば、過剰なブラッシング荷重が負荷した際に反転部80の反転しやすさ、そのタイミング(しきい値)を制御することが可能になる。L/Wで表される値は、0.05以上、0.35以下であることが好ましく、0.10以上、0.35以下であることがより好ましい。L/Wで表される値が0.05未満の場合、変形部70(弾性変形部90)のしなりに追随する形で反転部80も変形するものの、飛び移り座屈しにくく、オーバーブラッシング状態であることを感知することが困難になる可能性がある。L/Wで表される値が0.35を超えると、通常のブラッシングの範囲で生じるハンドル体2のしなりでは反転部80が変形および反転しにくくなる。そのため、オーバーブラッシング圧で反転部80が飛び移り座屈して反転することが困難になるか、または、飛び移り座屈して反転した際に破断して反転部80の可逆性がなくなる可能性がある。すなわち、T/t、およびL/Wを前記範囲内とすることで、弾性変形部90に対して反転部80の撓み強度が一定の割合で柔軟となり、ハンドル骨格を担う弾性変形部90の撓みに対して、遅れ気味に反転部80を作動させることが可能となる。そのため、過剰なブラッシング荷重が負荷した際にも、反転部80の反転しやすさ、および反転部80が反転する契機となるタイミング(しきい値)を制御することが可能になる。
【0111】
反転部80の長軸方向の長さとしては、15mm以上、30mm以下であることが好ましく、15mm以上、25mm以下であることがより好ましく、15mm以上、20mm以下であることがさらに好ましい。反転部80の先端側端部の位置は、貫通孔73の先端側端部の位置である。反転部80の後端側端部の位置は、貫通孔73の後端側端部の位置である。反転部80の長軸方向の長さが15mm未満の場合、通常のブラッシング圧で反転部80が飛び移り座屈して反転することが困難になるとともに、飛び移り座屈が発現するために必要な変形を生じることができない可能性がある。反転部80の長軸方向の長さが30mmを超えた場合、飛び移り座屈するまでに必要な変位が非常に大きくなるため、使用性が大きく低下するとともに、反転部80の変形挙動は弾性変形部90と同様な挙動となる可能性がある。
【0112】
反転部80は、側面視で弾性変形部90における植毛面側11の外形輪郭と背面側の外形輪郭との間に位置する。より詳細には、反転部80の厚さ方向の位置としては、反転部80が歯ブラシの最外郭を形成しないよう、側面視で弾性変形部90の厚さからはみ出さない位置とすることで、例えば、使用時に反転部80が使用者に接触することを抑止することができる。具体的には、弾性変形部90の厚さが半分となる位置よりも背面側であることが好ましい。反転部80の厚さ方向の位置が変形部70の厚さが半分となる位置よりも背面側にある場合、反転部80が反転して第2状態となったときに、反転部80の頂点が弾性変形部90の正面側表面から突出して使用者の指に接触する可能性を低減できる。また、弾性変形部90の厚さが半分となる位置よりも背面側に反転部80が配置されることにより、反転部80が撓んだ際に正面側よりも背面側が圧縮されるので、例えば、反転の契機となるエネルギーが溜まりやすくなり、歪みエネルギーを効率よく反転部80に移行させることができる。
【0113】
反転部80を構成する硬質樹脂の曲げ弾性率は、1500MPa以上、3500MPa以下であることが好ましく、2000MPa以上、3500MPa以下であることがより好ましい。硬質樹脂の曲げ弾性率が1500MPa未満の場合、反転部80は変形するものの飛び移り座屈せず、オーバーブラッシング状態であることを感知することが困難になる可能性がある。硬質樹脂の曲げ弾性率が3500MPaを超えた場合、オーバーブラッシング圧で反転部80が飛び移り座屈して反転することが困難になるか、または、飛び移り座屈して反転した際に破断して反転部80の可逆性がなくなる可能性がある。また、規定された曲げ弾性率の素材を用いることで、飛び移り座屈に伴う振動が短時間に集中的に生じて鋭敏(シャープ、大きく)となる。結果、使用者はオーバーブラッシングであることを感知しやすくなる。
【0114】
反転部80が飛び移り座屈したときの、凸形状の頂点の厚さ方向の移動距離としては、0.2mm以上、5.0mm以下であることが好ましい。頂点の厚さ方向の移動距離が0.2mm未満の場合、飛び移り座屈したときの振動が小さくなり、オーバーブラッシング状態であることを感知することが困難になる可能性がある。頂点の厚さ方向の移動距離が5.0mmを超えた場合、オーバーブラッシング圧で反転部80が飛び移り座屈して反転することが困難になるか、または、飛び移り座屈して反転した際に破断して反転部80の可逆性がなくなる可能性がある。飛び移り座屈したときに反転部80の移動距離が上記の範囲であれば、飛び移り座屈で発生する振動が短時間に集中的に起こり鋭敏(シャープ、大きく)なる。その結果、使用者はオーバーブラッシングであることを感知しやすくなる。
【0115】
弾性変形部90における硬質部90Hの厚さとしては、2.0mm以下であり、幅が厚さよりも大きいことが好ましい。硬質部90Hの厚さ2.0mm以下の場合、平面応力状態となるため、硬質部90Hは、内部応力を生じにくくなる。その結果、変形しても破断しにくくなり、反転部80の反転に要するエネルギーを十分に蓄積することが可能となる。また、その結果、弾性変形部90の撓み挙動の異方性を明確にすることができるとともに、捻れにくくすることができる。
【0116】
また、本実施形態の歯ブラシ1においては、反転部80及び弾性変形部90が幅方向に隙間をあけて配置されているため、変形部70を正面側及び背面側にはより変形させやすく、長軸方向及び幅方向にはほとんど変形しない平面応力状態とすることができる。すなわち、本実施形態の歯ブラシ1においては、反転部80及び弾性変形部90が変形する方向は、幅方向に互いに離間した厚さ方向であり、同一平面上に存在しない構成となっている。換言すると、厚さ方向の外力による弾性変形部90が変形する経路と、厚さ方向の外力による反転部80が変形する経路とは、非干渉に設けられている。そのため、本実施形態の歯ブラシ1では、弾性変形部90および反転部80は互いに制約をより受けにくく、変形可能となるため、反転部80の反転に要するエネルギーを一層十分に蓄積することが可能となり、反転部80(特に溝部81、82)に集中的に応力が生じ、鋭敏な飛び移り座屈が発現する。
【0117】
特に、本実施形態の歯ブラシ1においては、弾性変形部90における一対の硬質部90が厚さ方向について同一位置に配置され、硬質部90Hに対して反転部80の一部が、第1状態において幅方向に重なっているため、例えば、ヘッド部10に幅方向の外力が加わった際にも、長軸方向に延びる軸線周りの捻れが生じづらい。そのため、本実施形態の歯ブラシ1においては、変形部70が幅方向に変形しづらくなり、曲げ強度を大きくすることができる。
【0118】
図9に示したように、長軸方向と直交する断面において、変形部70の最大断面積に対する、窪み71、72の空間の断面積(変形部70の最大断面積から一対の弾性変形部90の断面積と反転部80の断面積を除いた断面積)の比で表される窪み71、72の空間の占有率としては、35%以上、60%以下であることが好ましい。ここで、変形部70の最大断面積は、図9に示す変形部70の長軸方向と直交する断面において、一対の弾性変形部90の正面側の最外郭を仮想的に結ぶとともに、一対の弾性変形部90の背面側の最外郭を仮想的に結んで形成された図形の面積である。
【0119】
上記占有率が35%未満の場合、弾性変形部90及び反転部80の占有率が大きくなり、ブラッシング時に厚さ方向背面側への曲げ強度が大きくなってしまう。この場合、適切なブラッシング圧を維持することが困難であり、オーバーブラッシングを抑制することが困難になる可能性がある。上記占有率が60%を超えた場合、弾性変形部90及び反転部80の占有率が小さくなり、ブラッシング時に幅方向の曲げ強度が小さくなってしまう。この場合、ブラッシング時に、幅方向の外力に対して撓みが大きくなり、一歯ずつ歯列を正確に磨くことが困難になる可能性がある。
【0120】
[実施例]
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0121】
(実施例1~4、比較例1~4)
下記の[表1]に示す仕様にしたがって、実施例1~4、比較例1~4のサンプルを作製した。
実施例1~2、比較例1~2は、変形部における貫通孔および反転部を有さない歯ブラシ(第1実施形態で示した歯ブラシに相当)をサンプルとした。実施例3~4、比較例3は、変形部における貫通孔および反転部を有する歯ブラシ(第2実施形態で示した歯ブラシに相当)をサンプルとした。比較例4は、変形部を有さないライオン株式会社製、「クリニカアドバンテージ3列ふつう」の歯ブラシをサンプルとした。
【0122】
また、実施例1~3、比較例2は、変形部の正面側および背面側(表裏)にローレットを設けた歯ブラシをサンプルとした。実施例4については、変形部の正面側および背面側(表裏)に加えて幅方向両側(左右)にもローレットを設けた歯ブラシをサンプルとした。
【0123】
[評価方法]
実施例1~4、比較例1~4に対して、「過剰なブラッシング荷重を緩和している実感」、「目的部位をしっかり磨ける実感(異方性)」および「反転部の飛び移り座屈のしやすさ」をそれぞれ評価した。
【0124】
[試験方法]
専門パネル(5名)が、各サンプルを用いてブラッシングし、「撓むことで過剰なブラッシング荷重を緩和している実感(適切なブラッシング荷重を維持できる感じ)」、「目的部位をしっかり磨ける実感」および「過剰なブラッシング荷重を与えたときの、反転部の飛び移り座屈のしやすさ」のそれぞれについて、実使用で5段階評価し、その平均点で評価した。評点の平均値は、小数点第2位を四捨五入し、小数点第1位までの桁とした。
[評点]
5点:非常に感じる、4点:やや感じる、3点:どちらでもない、2点:あまり感じない、1点:全く感じない
[評価]◎+(Extremely Good):4.7~5.0、◎(Very Good):4.3~4.7未満、○(Good):4.0~4.3未満、△(Not Bad):3.0~4.0未満、△-(Not Good):2.5~3.0未満、×(Bad):2.5点未満
【0125】
【表1】
【0126】
[表1]に示されるように、変形部の正面側および背面側に凹凸構造部(ローレット部)を設け、変形部における硬質部の断面積の占有率が35%以下である実施例1~4のサンプルでは、「過剰なブラッシング荷重を緩和している実感」、「目的部位をしっかり磨ける実感」、更に反転部がある実施例3~4においては「反転部の飛び移り座屈のしやすさ」について、いずれも良好な評価が得られた。
【0127】
これに対して、変形部の正面側および背面側に凹凸構造部を有するが、変形部における硬質部の断面積の占有率が35%を超えている比較例2のサンプルは、「過剰なブラッシング荷重を緩和している実感」および「目的部位をしっかり磨ける実感」のいずれも良好な評価が得られなかった。また、変形部における硬質部の断面積の占有率は35%以下であるが、変形部の正面側および背面側に凹凸構造部を有さない比較例1のサンプルについても、「過剰なブラッシング荷重を緩和している実感」および「目的部位をしっかり磨ける実感」のいずれも良好な評価が得られなかった。また、変形部および凹凸構造部を有さない比較例4のサンプルについても、「過剰なブラッシング荷重を緩和している実感」および「目的部位をしっかり磨ける実感」のいずれも良好な評価が得られなかった。また、実施例3のサンプルに対して、変形部に凹凸構造部を有さない比較例3のサンプルでは、「目的部位をしっかり磨ける実感」について良好な評価が得られなかった。
【0128】
なお、[表1]に示されるように、ローレット部における凸部に対する凹部の深さの、変形部の最大厚さに対する割合が2%以上、20%以下の範囲内にある実施例2~4のサンプルは、当該割合が2%以上、20%以下の範囲から外れた実施例1よりも「目的部位をしっかり磨ける実感」についてより良好な評価が得られた。また、変形部の正面側および背面側に加えて、幅方向の両側にも凹凸構造部を有する実施例4のサンプルは、実施例1~3のサンプルに対して「過剰なブラッシング荷重を緩和している実感」が向上した。
【0129】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0130】
例えば、上記実施形態では、変形部70にローレット部101~104が設けられる構成を例示したが、この構成に限定されず、例えば、幅方向両側のローレット部103、104を設けず、正面側及び背面側にローレット部101、102のみを設ける構成であってもよい。
【0131】
また、上記実施形態では、変形部70が弾性変形部90と反転部80とを有する構成を例示したが、この構成に限定されず、弾性変形部90と反転部80とが設けられない構成であってもよい。
【0132】
また、上記実施形態では、窪み71、72の一部が貫通孔Kによって厚さ方向に貫通する構成を例示したが、この構成に限定されず、正面側または背面側の一方のみが開口する構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明は、歯ブラシに適用できる。
【符号の説明】
【0134】
1…歯ブラシ、 2…ハンドル体、 10…ヘッド部、 11…植毛面、 20…ネック部(第1領域)、 30…把持部(第2領域)、 70…変形部、 71、72…窪み(凹部)、 80…反転部、 81、82…溝部、 90…弾性変形部、 90H…硬質部(芯部)、 H…硬質部、 90E…被覆部 101~104…ローレット部(凹凸構造部)、 111、113…凹部、 112、114…凸部、 P1…第1領域、 P2…第2領域、 E、31E、32E…軟質部、 S…隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12