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特許7433331特発性肺線維症を治療するための組成物及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】特発性肺線維症を治療するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/445 20060101AFI20240209BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240209BHJP
   A61K 31/454 20060101ALI20240209BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240209BHJP
【FI】
A61K31/445
A61P11/00
A61K31/454
A61P43/00 105
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021547495
(86)(22)【出願日】2020-02-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-28
(86)【国際出願番号】 CA2020050199
(87)【国際公開番号】W WO2020163966
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2023-01-20
(31)【優先権主張番号】62/805,755
(32)【優先日】2019-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/873,723
(32)【優先日】2019-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521002165
【氏名又は名称】アルジャーノン・ファーマスーティカルズ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マーク・ウィリアムズ
【審査官】三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/069401(WO,A1)
【文献】特表2017-514871(JP,A)
【文献】Yang Li et al.,NMDA Receptor Antagonist Attenuates Bleomycin-Induced Acute Lung Injury,PLOS one,PLOS,2015年05月05日,vol.10, no.5,e0125873/1-14
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/445
A61P 11/00
A61K 31/454
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における間質性肺疾患の治療又は予防に使用するための、イフェンプロジルを含む医薬組成物
【請求項2】
イフェンプロジルの量が、対象のkg当たり0.1~5mgの間である、請求項1に記載の医薬組成物
【請求項3】
イフェンプロジルの量が、対象のkg当たり0.5~3mgの間である、請求項2に記載の医薬組成物
【請求項4】
イフェンプロジルの量が、対象のkg当たり約1mgである、請求項3に記載の医薬組成物
【請求項5】
イフェンプロジルの量が、対象のkg当たり約2mgである、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項6】
イフェンプロジルの量が、対象のkg当たり約3mgである、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項7】
対象における間質性肺疾患の治療又は予防に使用するための、ラジプロジルを含む医薬組成物
【請求項8】
ラジプロジルの量が、対象のkg当たり1~5mgの間である、請求項7に記載の医薬組成物
【請求項9】
ラジプロジルの量が、対象のkg当たり約1mgである、請求項8に記載の医薬組成物
【請求項10】
ラジプロジルの量が、対象のkg当たり約2mgである、請求項8に記載の医薬組成物
【請求項11】
ラジプロジルの量が、対象のkg当たり約3mgである、請求項8に記載の医薬組成物
【請求項12】
ラジプロジルの量が、対象のkg当たり約4mgである、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項13】
ラジプロジルの量が、対象のkg当たり約5mgである、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項14】
間質性肺疾患が、特発性肺線維症である、請求項1から13のいずれか一項に記載の医薬組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年2月14日に出願された米国仮特許出願第62/805,755号及び2019年7月12日に出願された米国仮特許出願第62/873,723号からの優先権を主張するものであり、その内容が参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本発明は、肺における線維化を治療するための化合物の使用であって、特に、特発性肺線維症を含む慢性肺疾患を治療するための、ブロマンタン、イフェンプロジル、ラジプロジル、ベミチル、及び/又はレピリナストの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
特発性肺線維症(IPF)は、肺の瘢痕(線維化)を特徴とする間質性肺疾患の一形態である。これは、呼吸を含む肺の働きにおける進行性の不可逆的な低下を招く。症状には、典型的に息切れの漸進的な発症及び慢性の空咳が含まれる。他の症状には胸痛及び疲労が含まれる。IPFの原因は、完全には理解されていない。しかし、IPFのリスクを増加させる要因には、喫煙、胃酸逆流、及びこの状態の家族歴が含まれる。
【0004】
現時点において、IPFのための治療法は存在せず、肺からその瘢痕を除去し得る手法又は医薬品も存在しない。IPFの従来の治療は、肺の瘢痕の進行を遅らせることを主眼とする傾向がある。このような治療には、肺リハビリテーション、酸素補給、及び/又はピルフェニドン若しくはニンテダニブといった医薬品の使用が含まれる。重症例では、肺移植も選択肢の1つである。
【0005】
ブレオマイシン(BLM)マウスモデルは、肺線維症の恐らく最も認められているモデルである。ブレオマイシンの気管内投与は、肺線維症の慢性局面に加えて、過形成肺胞上皮細胞の存在を含む他の特徴も事実上模倣する。(Mouratisら、Modeling pulmonary fibrosis with bleomycin、Current Opinion in Pulmonary Medicine:2011年9月、第17巻(5):355~361頁)。このような一モデルにおいて、BLMは、好中球増加及びリンパ球を生じさせるために、最初に肺胞上皮細胞に直接導入され、約7日後にBLM誘発性の線維化が生じる。このモデルでは、単回のみの滴下注入が必要とされ、疾患が短期間で発症し、これは高い再現性を有する。マウスにおけるBLM誘発性の線維化は、ヒト特発性肺線維症で述べられる組織病理学的特徴及び肺線維化の分布に対する高度の類似性を有するIPFの動物モデルに相当する。
【0006】
本発明は、IPFの治療及び/又は軽減のための、他の病状に対する有望な療法として一般的に試験され、使用される既存薬物の新規使用を提供する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Mouratisら、Modeling pulmonary fibrosis with bleomycin、Current Opinion in Pulmonary Medicine:2011年9月、第17巻(5):355~361頁
【文献】Annual Reports in Medicinal Chemistry (2012)第47巻:94~103頁
【文献】J. Pharmacological Sciences (2015) 127:6~9頁
【文献】BMC Pulm Med. 2017年4月18日;17(1):63
【文献】Nair及びJacob、J Basic Clin Pharm2016年3月~2016年5月、7(2):27~31頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様において、本発明は、対象における特発性肺線維症の治療又は予防のための方法及びブロマンタンの使用を提供する。
【0009】
別の態様において、本発明は、対象における特発性肺線維症の治療又は予防のための方法及びイフェンプロジルの使用を提供する。
【0010】
別の態様において、本発明は、対象における特発性肺線維症の治療又は予防のための方法及びラジプロジルの使用を提供する。
【0011】
別の態様において、本発明は、対象における特発性肺線維症の治療又は予防のための方法及びベミチルの使用を提供する。
【0012】
別の態様において、本発明は、対象における特発性肺線維症の治療又は予防のための方法及びレピリナストの使用を提供する。
【0013】
本発明のある実施形態の、対象における特発性肺線維症の治療又は予防のためのグルタミン酸2b受容体(Glut2B又はGluN2B)拮抗薬。Glut2B拮抗薬は、vの1種又は複数であってよい。
【0014】
例示的な実施形態は、図面の参照図で例証される。本明細書中に開示されている実施形態及び図は、限定的というよりも例示的とみなされるべきであることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】試験化合物であるブロマンタン、イフェンプロジル、ラジプロジル、ベミチル、デキサメタゾン、及びレピリナストを使用した試験治療群のマウスを、正常(BLM非投与)対照群、BLM-ビヒクル対照群、及びピルフェニドン陽性対照群と比較した際のグラム単位の体重における平均パーセント変化率を比較する線グラフである。
図2】試験化合物であるブロマンタン、イフェンプロジル、ラジプロジル、ベミチル、デキサメタゾン、及びレピリナストを使用した試験治療群のマウスを、正常(BLM非投与)対照群、BLM-ビヒクル対照群、及びピルフェニドン陽性対照群と比較した際の平均トリクロームスコア(Trichrome Score)データを比較する棒グラフである。
図3】試験化合物であるブロマンタン、イフェンプロジル、ラジプロジル、ベミチル、デキサメタゾン、及びレピリナストを使用した試験治療群のマウスを、BLM-ビヒクル対照群及びピルフェニドン陽性対照群と比較した際の線維化におけるパーセント減少率を比較する棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明者は、他の病状における使用を承認された特定の薬理化合物は、肺における線維化を抑制すること又は軽減することに有用であり、間質性肺疾患の予防及び/又は治療に有用と思われることを見出した。
【0017】
BLM誘発性の線維化において、肺の炎症のレベルは抑制されるか、又は軽減されることが見出された。本明細書に記載されている試験結果に基づいて、記載されている化合物は、間質性肺疾患又は特発性肺線維症の予防及び/又は治療において有用であることが示されている。
【0018】
肺線維化及び特発性肺線維症に対して現時点で使用されている療法は、本明細書に記載されている試験例で陽性対照として使用された薬理化合物ピルフェニドンを投与することである。
【0019】
ピルフェニドン、5-メチル-1-フェニルピリジン-2(1H)-オンは、コラーゲン形成を抑制することが当該分野で知られている経口で活性な合成抗線維化剤であり、特発性肺線維症を治療するために使用されている。ピルフェニドンの化学構造は:
【0020】
【化1】
【0021】
である。デキサメタゾン、NaN3、又はC22H29FO5は、炎症を抑制することが当該分野で知られている経口で活性な合成抗炎症剤であり、特発性肺線維症モデルにおいて陽性対照として使用されている。デキサメタゾンの化学構造は:
【0022】
【化2】
【0023】
である。
【0024】
以下の実施例及びデータは、治療上有効な量のブロマンタン、イフェンプロジル、ラジプロジル、ベミチル、及びレピリナストを投与することによる、肺線維化の抑制又は軽減の効果を示す。本明細書に記載されているこれらの化合物は、通常、肺に関連していない状態の治療のためのものとして知られる既存の薬物である。
【0025】
ブロマンタンの使用
ブロマンタン、N-(4-ブロモフェニル)アダマンタン-2-アミンは、アダマンタン系の精神刺激薬及び抗不安薬として当該分野で知られている。ブロマンタンの化学構造は:
【0026】
【化3】
【0027】
である。
【0028】
一態様において、本発明は、ブロマンタン又は薬学的に許容されるその変形形態を用いた、対象における特発性肺線維症の治療又は予防の使用及び方法を提供する。とりわけ、間質性肺疾患が特発性肺線維症(IPF)であることがある。
【0029】
ある実施形態において、使用されるブロマンタンの1日当たりの量は、対象のkg当たり0.8~5mgの間である。好ましい実施形態において、使用されるブロマンタンの1日当たりの量は、対象のkg当たり1.7~3.3mgの間である。更に好ましい実施形態において、使用されるブロマンタンの1日当たりの量は、対象のkg当たり約1.7mgである。
【0030】
ブロマンタン又は薬学的に許容されるその変形形態は、経口、静脈内、又は当該分野で知られている方法で、対象に投与されてよい。ブロマンタン又は薬学的に許容されるその変形形態は、1種又は複数の薬学的に許容される添加物と共に投与されてもよい。
【0031】
イフェンプロジルの使用
イフェンプロジル、4-[2-(4-ベンジルピペリジン-1-イウム-1-イル)-1-ヒドロキシプロピル]フェノール;2,3,4-トリヒドロキシ-4-オキソブタノエートは、選択的NMDA受容体(グルタミン酸)拮抗薬として当該分野で知られている。イフェンプロジルは、当初(1970年代初期)、血管拡張剤として開発された。イフェンプロジルは、青年期PTSDの治療のために現在試験されている。その化学構造は:
【0032】
【化4】
【0033】
である。
【0034】
本明細書の実施例で試験されたいくつかの実施形態において、以下の構造を有するイフェンプロジルヘミ酒石酸塩が使用された:
【0035】
【化5】
【0036】
一態様において、本発明は、イフェンプロジル又は薬学的に許容されるその変形形態を用いた、対象における特発性肺線維症の治療又は予防の使用及び方法を提供する。とりわけ、間質性肺疾患が特発性肺線維症(IPF)であることがある。
【0037】
ある実施形態において、使用されるイフェンプロジルの1日当たりの量は、対象のkg当たり0.6~5mgの間である。好ましい実施形態において、使用されるイフェンプロジルの1日当たりの量は、対象のkg当たり0.8~3mgの間である。更に好ましい実施形態において、使用されるイフェンプロジルの1日当たりの量は、対象のkg当たり約1mgである。
【0038】
イフェンプロジル又は薬学的に許容されるその変形形態は、経口、静脈内、又は当該分野で知られている方法で、対象に投与されてよい。イフェンプロジル又は薬学的に許容されるその変形形態は、1種又は複数の薬学的に許容される添加物と共に投与されてもよい。
【0039】
ラジプロジルの使用
ラジプロジル、2-[4-[(4-フルオロフェニル)メチル]ピペリジン-1-イル]-2-オキソ-N-(2-オキソ-3H-1,3-ベンゾオキサゾール-6-イル)アセトアミドは、NMDA受容体拮抗薬として当該分野で知られている。これは、点頭癲癇(IS)及び糖尿病性末梢神経障害性疼痛の治療を検討する臨床試験で使用されてきた。ラジプロジルの化学構造は:
【0040】
【化6】
【0041】
である。
【0042】
一態様において、本発明は、ラジプロジル又は薬学的に許容されるその変形形態を用いた、対象における特発性肺線維症の治療又は予防の使用及び方法を提供する。とりわけ、間質性肺疾患が特発性肺線維症(IPF)であることがある。
【0043】
ある実施形態において、使用されるラジプロジルの1日当たりの量は、対象のkg当たり1.6~3.3mgの間である。好ましい実施形態において、使用されるラジプロジルの1日当たりの量は、対象のkg当たり約2.5mgである。更に好ましい実施形態において、使用されるラジプロジルの1日当たりの量は、対象のkg当たり約2.25mgである。
【0044】
ラジプロジル又は薬学的に許容されるその変形形態は、経口、静脈内、又は当該分野で知られている方法で、対象に投与されてよい。ラジプロジル又は薬学的に許容されるその変形形態は、1種又は複数の薬学的に許容される添加物と共に投与されてもよい。
【0045】
ベミチルの使用
ベミチル、2-エチルスルファニル-1H-ベンゾイミダゾールは、合成アクトプロテクター、抗酸化剤、及び抗変異原性剤として当該分野で知られており、身体能力を増強するためにしばしば使用される。ベミチルの化学構造は:
【0046】
【化7】
【0047】
である。
【0048】
一態様において、本発明は、ベミチル又は薬学的に許容されるその変形形態を用いた、対象における特発性肺線維症の治療又は予防の使用及び方法を提供する。とりわけ、間質性肺疾患が特発性肺線維症(IPF)であることがある。
【0049】
ある実施形態において、使用されるベミチルの1日当たりの量は、対象のkg当たり0.5~50mgの間である。好ましい実施形態において、使用されるベミチルの1日当たりの量は、対象のkg当たり1~30mgの間である。更に好ましい実施形態において、使用されるベミチルの1日当たりの量は、対象のkg当たり4~25mgの間である。なお更に好ましい実施形態において、使用されるベミチルの1日当たりの量は、対象のkg当たり8~17mgの間である。また更に好ましい実施形態において、使用されるベミチルの1日当たりの量は、対象のkg当たり約17mgである。
【0050】
ベミチル又は薬学的に許容されるその変形形態は、経口、静脈内、又は当該分野で知られている方法で、対象に投与されてよい。ベミチル又は薬学的に許容されるその変形形態は、1種又は複数の薬学的に許容される添加物と共に投与されてもよい。
【0051】
レピリナストの使用
レピリナスト、イソペンチル7,8-ジメチル-4,5-ジオキソ-5,6-ジヒドロ-4H-ピラノ[3,2-c]キノリン-2-カルボキシレートは、抗ヒスタミン剤として当該分野で知られている。レピリナストの化学構造は:
【0052】
【化8】
【0053】
である。
【0054】
一態様において、本発明は、レピリナスト又は薬学的に許容されるその変形形態を用いた、対象における特発性肺線維症の治療又は予防の使用及び方法を提供する。とりわけ、間質性肺疾患が特発性肺線維症(IPF)であることがある。
【0055】
ある実施形態において、使用されるレピリナストの1日当たりの量は、対象のkg当たり1~50mgの間である。好ましい実施形態において、使用されるレピリナストの1日当たりの量は、対象のkg当たり2.5~10mgの間である。更に好ましい実施形態において、使用されるレピリナストの1日当たりの量は、対象のkg当たり約7.5mgである。
【0056】
レピリナスト又は薬学的に許容されるその変形形態は、経口、静脈内、又は当該分野で知られている方法で、対象に投与されてよい。レピリナスト又は薬学的に許容されるその変形形態は、1種又は複数の薬学的に許容される添加物と共に投与されてもよい。
【0057】
本発明のある実施形態の、対象における特発性肺線維症の治療又は予防のためのグルタミン酸2b受容体(Glut2B又はGluN2B)拮抗薬。Glut2B拮抗薬は、イフェンプロジル、ラジプロジル、トラキソプロジル、リスレンムダズ、エリプロジル、Ro-25-6981、及びBMT-108908、EVT-101、CP101-606、MK-0657、EVT-103、及びAZD 6765(Annual Reports in Medicinal Chemistry (2012)第47巻:94~103頁)のうちの1種又は複数であってよい。
【0058】
本発明の別の態様において、イフェンプロジルは、NDMA受容体拮抗作用(GluN1及びより具体的にはGlunN2Bサブユニット)及びシグマ受容体(より具体的にはサブタイプ1)作動薬活性を示すことが知られている。シグマ受容体は、細胞の小胞体に存在する細胞内シャペロンである。このため、同様の活性を有する分子は、抗線維化効果を有し、IPFを治療する。代表的なシグマ受容体作動薬には、フルボキサミン、フルオキセチン、エスシタロプラム、及びドネペジル等の選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が含まれる(J. Pharmacological Sciences (2015) 127:6~9頁)。
【0059】
組合せでの使用
別の態様において、本発明は、ブロマンタン、イフェンプロジル、ラジプロジル、ベミチル、トラキソプロジル、リスレンムダズ、エリプロジル、Ro-25-6981、及びBMT-108908、EVT-101、CP101-606、MK-0657、EVT-103、及びAZD 6765のうちの1種又は複数を組み合わせて用いた、対象における特発性肺線維症の治療又は予防の使用及び方法を提供する。別の態様において、本発明は、ブロマンタン、イフェンプロジル、ラジプロジル、ベミチル、及びデキサメタゾンのうちの1種又は複数を、デキサメタゾン、ピルフェニドン、及びニンテダニブのうちの1種又は複数と組み合わせて用いた、対象における特発性肺線維症の治療又は予防の使用及び方法を提供する。
【0060】
抗炎症薬、免疫系抑制剤、抗菌薬、下痢止め、鎮痛剤、鉄サプリメント、ビタミンB-12注射、並びにカルシウム及びビタミンDサプリメントのうちの1種又は複数と組み合わせたレピリナスト。
【0061】
本明細書で使用される用語「治療上有効な量」は、治療を受ける対象において、望ましい予防効果又は治療効果をもたらすために十分な有効成分の量を指す。いくつかの実施形態において、この有効な量は、例えば、投与経路及び回数、薬理化合物を投与される対象の体重及び種属に基づいて決定される。
【0062】
いくつかの実施形態において、有効な量の薬理化合物は、薬学的に許容されるビヒクルを用いて製剤化され、対象に投与される。本明細書で使用される用語「薬学的に許容される」は、ビヒクルが、薬理化合物と相溶性であり、更に治療を受ける対象に対して安全であると当該分野で知られていることを意味する。いくつかの実施形態において、薬学的に許容されるビヒクルは、当業者が、例えば、前記ビヒクルにおける薬理化合物の溶解度を評価することによって決定される。
【0063】
本発明の実施形態は、例示的であり、本質的に限定しないことを意図した以下の実施例を参照して更に説明される。
【実施例
【0064】
材料及び方法
マウス種又は株は、マウス/C57BL/6であり、8~10週齢の雄のマウスであった。それぞれマウス10匹からなる9群を、Charles River Laboratories社から入手した。各群を、体重に基づいて無作為化した。ブレオマイシン(BLM)を、Euroasias社から入手した。
【0065】
マウスを、温度70~72°F、湿度30~70%で、12時間の点灯及び12時間の消灯からなる光周期を用いて制御された環境に維持した。マウスには、TEKLAD 2018-Global18%飼料及びArrowhead飲料水を自由摂取で与えた。
【0066】
イソフルラン/O2混合物を用いてマウスに麻酔をかけた。次に、ブレオマイシン(BLM)を、滅菌生理食塩水50μl中2.5U/体重kgの単回ボーラス投与(PennCentury社)で、マウス気管内に投与した。
【0067】
ブレオマイシンを投与した7日後、線維芽細胞は概ね増殖し、ITブレオマイシン障害マウス9群のうちの6群には、連続14日間に毎日、ブロマンタン、イフェンプロジル、ラジプロジル、ベミチル、デキサメタゾン、又はレピリナストを、体重kg当たりの所定量(mg/kg)で1日1回経口投与(p.o.)した。量は、以下のTable 1(表1)に記載されている。使用されたビヒクルは、0.5%カルボキシメチルセルロース(CMC)であった。ピルフェニドンも0.5%CMCで調製し、ITブレオマイシン障害マウス9群のうちの1群に、連続14日間、1日1回経口投与した。ビヒクル及びBLM非投与の対照群には、連続14日間、0.5%CMCを経口投与した。
【0068】
【表1】
【0069】
本試験の21日目の最終投与4時間後に、マウスを屠殺し、血奬を採取してサイトカイン分析(IL-6、IL-12、TGFβ、IL-13タンパク質又は線維化マーカーを試験する)のために凍結した。気管支肺胞洗浄液(BALF)を採取し、最初のデータが出るまで、任意のサイトカイン分析及び細胞計数のために凍結した。次に、肺を摘出し、重量を測定し、ホルマリンで固定した。組織染色であるGomoriのトリクローム染色を使用して、コラーゲン含有率を求めた。
【0070】
この動物試験のために選択される用量は、既知のヒト最大1日量を、成人の平均体重(約60kg)で除してヒトのmg/kg用量を得ることによって求めた。次に、その数値を12で乗じ、従来の投与表に基づいたマウス用量に変換した。Nair及びJacob、J Basic Clin Pharm2016年3月~2016年5月、7(2):27~31頁を参照。
【0071】
例えば、
糖尿病性ニューロパチーに対するラジプロジルの1日量=45mgを1日3回(TID)=135mg/日
ヒト最大1日量=135/60=2.25mg/kg
マウス用量=2.25×12=27mg/kg/日(イフェンプロジルと合わせるために30に増加)
【0072】
以下の測定及び評価は、各マウスに対して行われた。
【0073】
体重:電子天秤を使用して21日間にわたって体重を測定した。
【0074】
トリクロームスコア:トリクロームスコアは、疾患によって生じた肺に対する瘢痕のレベルを測定する。トリクロームスコアが大きいほど、瘢痕は大きい。
【0075】
ホルマリンで固定した肺サンプルを、コラーゲン含有率を求めるために使用される組織染色であるGomoriのトリクローム染色を行う組織病理学的分析のため、提携している組織病理学研究所に提出した。
【0076】
各肺を、10個の切片に分割した。10個の切片全てを染色し、評価した。有資格の獣医病理学者が、肺線維化の有無及び重症度スコアを評価した-(線維化に関連する)コラーゲンの発現は、染色面積対肺切片の合計面積の比から求められる。
【0077】
死亡率:各群の死亡率も21日間にわたって観察した。
【0078】
結果
体重
体重の変化を、図1、Tables 3(表4)及びTable 4(表5)、並びに付属書類Aに示す。体重の減少は、1日目から5日目まで観察され、その後回復し始めた。イフェンプロジル(30mg/kg)、ラジプロジル(30mg/kg)、ベミチル(200mg/kg)、及びデキサメタゾン(0.25mg/kg)を用いて治療された群において差異が認められた。これらは、BLM-ビヒクル群と比較して、5日目に改善し始めていることを示した。ブロマンタン(20mg/kg)も、BLM-ビヒクル群と比較して、15日目を除いて、5日目に改善し始めていることを示した。レピリナスト治療群とBLM-ビヒクル群の間に有意差は認められなかった。予想外に、ピルフェニドン群(300mg/kg)は、本臨床試験全体を通して体重の著しい低下を示した。
【0079】
トリクロームスコア
トリクロームスコアデータを、図2、Table 5(表2)、及び付属書類Bに示す。トリクロームスコアは、・・・を測定した。治療群とBLM-ビヒクル群の間に有意差は認められなかったが、反応は、デキサメタゾン(0.25mg/kg)及びレピリナスト(90mg/kg)でより良好であり、イフェンプロジル(30mg/kg)及びラジプロジル(30mg/kg)治療群がそれに続いた。
【0080】
【表2】
【0081】
ピルフェニドンにおける線維化の減少を算出する方法の例は以下の通りである:
%減少率=100-(トリクロームスコアピルフェニドン-トリクロームスコア正常)/(トリクロームスコアビヒクル-トリクロームスコア正常)
【0082】
パーセント生存率
死亡率は、IPF患者に関する重要な評価項目である。パーセント生存率データを、図6及びTable ##(表##)に示す。パーセント生存率は、デキサメタゾン(0.25mg/kg)及びレピリナスト(90mg/kg)を用いて治療した治療群でより高く、イフェンプロジル(30mg/kg)及びラジプロジル(30mg/kg)がそれに続いた。
【0083】
【表3】
【0084】
全体的
線維化パーセント減少率分析を、図3及び付属書類Cに示す。BLM-ビヒクル群と比較した肺線維化のパーセント減少率は、デキサメタゾン(0.25mg/kg)及びレピリナスト(90mg/kg)を用いて治療した治療群でより高く、イフェンプロジル(30mg/kg)及びラジプロジル(30mg/kg)がそれに続いた。
【0085】
結論
結論として、デキサメタゾン0.25mg/kg、レピリナスト90mg/kg、イフェンプロジル30mg/kg、及びラジプロジル30mg/kgの経口投与は、BLM-ビヒクルと比較して、肺線維化の改善に加えて、体重減少、トリクロームスコア、及び死亡率の改善を示した。この改善は、デキサメタゾン及びレピリナストを用いて治療した群で概して最も顕著であった。
【0086】
ピルフェニドン300mg/kgの経口投与は、BLM-ビヒクルと比較して、体重の減少及びトリクローム指数において最小の改善を示した。
【0087】
以下の説明全体を通して、具体的な詳細は、当業者がより深く理解できるように明記される。しかし、公知の要素は、不必要に本開示を不明瞭にすることを避けるため、詳細に示されることも、記載されることもない場合がある。したがって、これらの説明及び図は、限定的というよりも、例示的な意味とみなされるべきである。
【0088】
多くの例示的な態様及び実施形態が上記で検討されたが、当業者は、特定の修正、並べ替え、追加、及びその下位の組合せを認識するであろう。このため、以下の添付された特許請求の範囲及び今後提起される特許請求の範囲は、本明細書全体としての最も広い解釈に一致するように、このような修正、並べ替え、追加、及び下位の組合せを全て含むと解釈されることを意図されている。
【0089】
【表4】
【0090】
【表5】
図1
図2
図3