(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】綿質地ポリエステル先染生地、その製造方法、及び使用
(51)【国際特許分類】
D03D 15/47 20210101AFI20240209BHJP
D03D 15/283 20210101ALI20240209BHJP
D03D 15/56 20210101ALI20240209BHJP
D03D 15/54 20210101ALI20240209BHJP
D02G 3/36 20060101ALI20240209BHJP
D06M 11/00 20060101ALI20240209BHJP
D06M 11/38 20060101ALI20240209BHJP
D06P 3/54 20060101ALI20240209BHJP
【FI】
D03D15/47
D03D15/283
D03D15/56
D03D15/54
D02G3/36
D06M11/00 110
D06M11/38
D06P3/54 Z
(21)【出願番号】P 2021547695
(86)(22)【出願日】2019-11-28
(86)【国際出願番号】 CN2019121549
(87)【国際公開番号】W WO2021097886
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2021-08-16
(31)【優先権主張番号】201911140910.9
(32)【優先日】2019-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510293925
【氏名又は名称】魯泰紡績股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 子斌
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 徳▲銘▼
(72)【発明者】
【氏名】沈 乾峰
(72)【発明者】
【氏名】王 家▲賓▼
(72)【発明者】
【氏名】路 静静
(72)【発明者】
【氏名】▲シン▼ 成利
(72)【発明者】
【氏名】李 文豪
【審査官】印出 亮太
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-212640(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D02G 1/00 - 3/48
D02J 1/00 - 13/00
D03D 1/00 - 27/18
D06B 1/00 - 23/30
D06C 3/00 - 29/00
D06G 1/00 - 5/00
D06H 1/00 - 7/24
D06J 1/00 - 1/12
D06M 10/00 - 11/84
D06M 16/00
D06M 19/00 - 23/18
D06P 1/00 - 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦糸と横糸を織り交ぜた綿質地ポリエステル先染生地であって、
前記縦糸は、染色したポリエステルを被覆層、低温スパンデックスを芯糸としたコアスパンヤーンを用い、前記ポリエステルと低温スパンデックスとの重量比が4~49:1であり、前記ポリエステルはアルカリ減量処理により侵食表面が形成されており、
前記低温スパンデックスは繊度20D~40Dであり、
前記コアスパンヤーンはポリエステルと低温スパンデックスとを用いて機械的被覆プロセスにより製造されるものであり、撚数が5~8t/cm、延伸比が2.5~3.5であることを特徴とする綿質地ポリエステル先染生地。
【請求項2】
前記機械的被覆プロセスでは、撚数を5~6t/cm、前記延伸比を3とすることを特徴とする請求項1に記載の先染生地。
【請求項3】
前記ポリエステルは、ポリエステルフィラメント、ポリエステル複合繊維、及びポリエステル短繊維から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の先染生地。
【請求項4】
前記ポリエステルフィラメントは、延伸加工糸DTY、完全延伸糸FDY、エア加工糸ATY、及び高弾性糸から選ばれる少なくとも1種であり、前記ポリエステル複合繊維は、弾性複合ポリエステル繊維T400を含み、前記ポリエステル短繊維は綿質地ポリエステルを含むことを特徴とする請求項
3に記載の先染生地。
【請求項5】
前記ポリエステルは繊維構成本数が24以上のポリエステルであることを特徴とする請求項1に記載の先染生地。
【請求項6】
前記ポリエステル染色に使用される染料は、耐熱・耐水洗・耐アルカリ性分散染料であることを特徴とする請求項1に記載の先染生地。
【請求項7】
GB/T3920-2008に準じて測定した前記先染生地の色堅牢度が4級以上であることを特徴とする請求項1に記載の先染生地。
【請求項8】
GB/T3920-2008に準じる前記先染生地の色堅牢度が5級以上であることを特徴とする請求項
7に記載の先染生地。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか1項に記載の綿質地ポリエステル先染生地の製造方法であって、
提供した横糸とサイジングした縦糸とを織り交ぜて、粗先染生地を得るステップ1)と、
粗先染生地を、強塩基2~3wt%とデサイジング剤2~3wt%を含むデサイジング混合液Iで、91~91.5℃の温度で20分以下、連続的にデサイジングする、第1のデサイジングのステップ2)と、
180~200℃の温度でプレセッティングを行う、プレセッティングのステップ3)と、
強塩基2~5wt%と亜ジチオン酸ナトリウム2~5wt%を含むデサイジング混合液IIで、60~90℃の温度で45分以下、断続的にデサイジングする、第2のデサイジングのステップ4)と、
100~140℃の温度で本セッティングを行い、前記先染生地を得る、本セッティングのステップ5)とを含み、
前記縦糸は、染色したポリエステル糸を被覆層、低温スパンデックスを芯糸としたコアスパンヤーンを含み、前記サイジングしたサイジング剤はアクリル酸類サイジング剤を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項10】
前記染色したポリエステルに使用される染料は、耐熱・耐水洗・耐アルカリ性分散染料であることを特徴とする請求項
9に記載の先染生地の製造方法。
【請求項11】
前記染色温度は130±5℃である、請求項
9に記載の先染生地の製造方法。
【請求項12】
前記低温スパンデックスは繊度20D~40Dであり、前記コアスパンヤーンは、ポリエステルと低温スパンデックスを用いて機械的被覆プロセスにより製造され、撚数が5~8t/cm、延伸比が2.5~3.5である、請求項
9に記載の先染生地の製造方法。
【請求項13】
前記機械的被覆プロセスでは、撚数を5~6t/cm、前記延伸比を3とする、請求項
12に記載の先染生地の製造方法。
【請求項14】
前記サイジング温度は130±5℃である、請求項
9に記載の先染生地の製造方法。
【請求項15】
前記サイジング剤の濃度は10~15wt%、前記サイジングの速度は40~50m/minである、請求項
9に記載の先染生地の製造方法。
【請求項16】
前記連続デサイジングは連続デサイジング機を用いたデサイジングであり、第1のデサイジングの温度は91℃であり、デサイジング速度は40~50m/minであり、第1のデサイジングの時間は15分以下である、請求項
9に記載の先染生地の製造方法。
【請求項17】
前記プレセッティングの速度は30~40m/minである、請求項
9に記載の先染生地の製造方法。
【請求項18】
前記断続式デサイジングはバット内水洗であり、前記第2のデサイジング温度は70℃であり、時間は45分以下であり、前記デサイジング混合液IIは、強塩基4~5wt%と、亜ジチオン酸ナトリウム4~5wt%とを含む、請求項
9に記載の先染生地の製造方法。
【請求項19】
前記本セッティングの速度は30~50m/minである、請求項
9に記載の先染生地の製造方法。
【請求項20】
前記プレセッティングにプレセッティング助剤Iが添加され、前記プレセッティング助剤Iはしゃり付与助剤と酢酸を含むことを特徴とする請求項
9に記載の先染生地の製造方法。
【請求項21】
前記しゃり付与助剤は抗菌助剤を含む、請求項
20に記載の先染生地の製造方法。
【請求項22】
前記抗菌助剤は亜鉛イオン系抗菌剤であり、
前記本セッティングに本セッティング助剤IIが添加され、前記本セッティング助剤IIは滑らかさ付与助剤を含む、請求項
21に記載の先染生地の製造方法。
【請求項23】
前記滑らかさ付与助剤は吸湿排汗剤及び/又は柔軟剤を含む、請求項
22に記載の先染生地の製造方法。
【請求項24】
先染生地で作製され、
前記先染生地は、請求項1~
8のいずれか1項に記載の先染生地であることを特徴とする衣料品。
【請求項25】
前記衣料品はシャツである、請求項
24に記載の衣料品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年11月20日に中国特許庁に提出された、出願番号が201911140910.9、発明の名称が「綿質地ポリエステル先染生地、その製造方法、及び使用」である中国特許出願の優先権を主張しており、その全内容は引用により本出願に組み込まれている。
【0002】
本出願は、綿質地ポリエステル先染生地、その製造方法及び使用に関し、紡績の技術分野に属する。
【背景技術】
【0003】
先染とは、糸又はフィラメントを染色した後に布を織るプロセスであり、全先染と半先染に分けられ、まず糸又はフィラメントを染色し、次に色糸を用いて布を織るプロセスであり、このような生地は「先染布」と呼ばれる。先染布は、まず糸を染色して、次に布を織り、最後に仕上げを行うものであり、後染とは原色の原反を染色バットに投入して巻き染め(又は連続パッド染色)、次に仕上げを行うことである。織布用綿質地ポリエステルは後染への適用が成熟しているが、先染への適用がまだない。
【0004】
ポリエステル先染織布の製織プロセスは、加撚を行うものとサイジングを行うものに分けられ、加撚とサイジングの実施はすべて製織の問題を解決するためのものであり、加撚とサイジングをせずに製織すると、品質が不合格であり、量産も実現されない。加撚を伴う従来の先染では、直接セッティングすればよいが、ポリエステルは加撚すると粗くて硬い風合いとなり、綿のような風合いがなくなる。サイジングを伴うと、デサイジングが必要とされ、ポリエステル色糸の色堅牢度が不良であることは世界的に難問であり、ポリエステル色糸をサイジングした後にデサイジングする場合、デサイジングの度合いや色固定が主な課題であり、従来のデサイジングプロセス、例えば、拡布水洗デサイジングは保護を考慮したデサイジングであり、デサイジングが不十分であり、このため、この場合も、先染地に綿のような風合いがなく、先染布では、今まで、デサイジングプロセスに関しては、満足のいく解決手段がない。先染布について、どのように綿のような風合いを付与しながら所望の色や鮮やかさを保持しつつ、サイジング剤を取り除くかは急務となっている。
【0005】
一方、ポリエステル先染生地織物は、高品質の衣料品、例えば、シャツの製造に用いる場合、快適性、形状保持性や色安定性を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記問題を解决するために、綿質地ポリエステル先染生地、その製造方法、及び使用を提供し、該綿質地ポリエステル先染生地は、良好な綿の風合い、高弾性、高色堅牢度及び低アイロン収縮率を有し、高品質衣料品の作製、特にシャツの作製に適している。該先染生地の製造方法は、エネルギーを節約して排出を削減させ、低アイロン収縮率、高色堅牢度及び綿のような風合いを有する新規ポリエステル先染生地を製造する。該先染生地は、衣料品、例えば、シャツの作製に用いると、その選択性及び機能性を向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願の一態様によれば、良好な綿の風合い、高弾性、高色堅牢度及び低アイロン収縮率を有する先染生地を提供する。
【0008】
前記先染生地は、縦糸(経糸)と横糸(緯糸)を織り交ぜたものであり、前記縦糸は、染色したポリエステルを被覆層、低温スパンデックスを芯糸としたコアスパンヤーンを用い、前記ポリエステルと低温スパンデックスとの重量比が4~49:1であり、前記ポリエステルはアルカリ減量処理により侵食表面が形成されていることを特徴とする。
【0009】
さらに、前記ポリエステルと低温スパンデックスとの重量比は10~30:1である。好ましくは、前記ポリエステルと低温スパンデックスとの重量比は10~15:1である。より好ましくは、前記ポリエステルと低温スパンデックスとの重量比は13~14:1である。
【0010】
選択的に、前記低温スパンデックスは、繊度20D~40Dであり、前記コアスパンヤーンはポリエステルと低温スパンデックスとを用いて機械的被覆プロセスにより製造されるものであり、撚数が5~8t/cm、延伸比が2.5~3.5である。好ましくは、前記低温スパンデックスの繊度範囲の上限は25D、30D又は35Dから選ばれ、下限は25D、30D又は35Dから選ばれる。好ましくは、撚数は5~6t/cmであり、前記延伸比は3である。撚数が5t/cm未満であると、低温スパンデックスが露出して先染地に悪影響を与え、撚数が8t/cmよりも高いと、先染地は粗さが上昇し、風合いが不合格になる。
【0011】
選択的に、低温スパンデックスは染色又は非染色のものであり、低温スパンデックスが染色される場合、使用される染料は耐熱・耐水洗・耐アルカリ性分散染料である。
【0012】
低温スパンデックスを使用することにより、セッティングに必要な温度が下がり、アイロン収縮率が制御される。低温スパンデックスの使用はセッティングの温度及び時間を低下させ、色糸用分散染料の熱昇華を制御し、先染生地の色堅牢度を向上させ、エネルギーを節約して排出を削減させる。
【0013】
選択的に、前記ポリエステルは、アルカリ減量処理による減量率が5%以下である。好ましくは、前記ポリエステルは、アルカリ減量処理による減量率が1%~3%である。
【0014】
選択的に、前記ポリエステルは、ポリエステルフィラメント、ポリエステル複合繊維、及びポリエステル短繊維から選ばれる少なくとも1種である。
【0015】
好ましくは、前記ポリエステルフィラメントは、延伸加工糸DTY、完全延伸糸FDY、エア加工糸ATY、及び高弾性糸から選ばれる少なくとも1種を含み、前記ポリエステル複合繊維は、弾性複合ポリエステル繊維T400を含み、前記ポリエステル短繊維は、綿質地ポリエステルを含む。
【0016】
より好ましくは、前記ポリエステルは、繊維構成本数(F数)が24以上のポリエステルである。さらに、前記ポリエステルは、高繊維構成本数のマットポリエステルDTYである。該ポリエステルをこのようにすると、製造される先染生地は綿の風合いが高い。
【0017】
好ましくは、前記横糸はポリエステル、スパンデックス、綿糸、及び前記縦糸と組成が同じものから選ばれる少なくとも1種である。より好ましくは、前記横糸は、前記縦糸と組成が同じもの、ポリエステルDTY、FDY、ATY、高弾性糸、T400、他の綿質地ポリエステルから選ばれる。さらに、前記横糸は、75D/72FマットポリエステルDTYを含む。
【0018】
好ましくは、前記ポリエステルの染色に使用される染料は、耐熱・耐水洗・耐アルカリ性分散染料であり、前記染料の染色温度が130±5℃である。より好ましくは、染料は、ダイスター社製の耐熱・耐水洗・耐アルカリ性分散染料を含む。ポリエステルの染色時間は30~60分であり、該染色時間をこのように設定すると、ポリエステルが十分に解繊し、ポリエステルの繊維網目点が開かれる。
【0019】
選択的に、GB/T 3920-2008に準じて測定した前記先染生地の色堅牢度は4級以上である。好ましくは、GB/T 3920-2008に準じて前記先染生地の色堅牢度は5級以上である。
【0020】
選択的に、GB/T 5718-1997『紡績品色堅牢度試験耐乾熱(ホットプレスを除く)色堅牢度』に準じて測定した前記先染生地の色堅牢度は4級以上である。好ましくは、GB/T 5718-1997『紡績品色堅牢度試験耐乾熱(ホットプレスを除く)色堅牢度』に準じて測定した前記先染生地の色堅牢度は5級以上である。
【0021】
選択的に、前記先染生地は、170℃、15sの処理を6回施すと、アイロン収縮率が3%以下になり、該アイロン収縮率がこのように制御されると、弾力生地の快適性が十分に確保され、低温スパンデックスは弾力生地のアイロン収縮率の制御に有利である。
【0022】
本出願の別の態様によれば、上記のいずれかに記載の綿質地ポリエステル先染生地の製造方法を提供し、該先染生地の製造方法はエネルギーを節約して排出を削減させ、低アイロン収縮率、高色堅牢度及び綿のような風合いを有する新規ポリエステル先染生地を製造する。
【0023】
前記綿質地ポリエステル先染生地の製造方法は、
提供した横糸とサイジングした縦糸とを織り交ぜて、粗先染生地を得るステップ1)と、
粗先染生地を、強塩基2~3wt%とデサイジング剤2~3wt%を含むデサイジング混合液Iで、91~91.5℃の温度で20分以下、連続的にデサイジングする、第1のデサイジングのステップ2)と、
180~200℃の温度でプレセッティングを行う、プレセッティングのステップ3)と、
強塩基2~5wt%と亜ジチオン酸ナトリウム2~5wt%を含むデサイジング混合液IIで、60~90℃の温度で45分以下、断続的にデサイジングする、第2のデサイジングのステップ4)と、
100~140℃の温度で本セッティングを行い、前記先染生地を得る、本セッティングのステップ5)とを含み、
前記縦糸は、染色したポリエステル糸を被覆層、低温スパンデックスを芯糸としたコアスパンヤーンを含み、前記サイジングしたサイジング剤はアクリル酸類サイジング剤を含む。
【0024】
選択的に、前記染色したポリエステルに使用される染料は耐熱・耐水洗・耐アルカリ性分散染料である。好ましくは、前記染色温度は130±5℃である。ポリエステルの染色時間は30~60分であり、該染色時間を設定することにより、ポリエステルが十分に解繊し、ポリエステルの繊維網目点が開かれる。
【0025】
好ましくは、前記低温スパンデックスは繊度、20D~40Dであり、前記コアスパンヤーンは、ポリエステルと低温スパンデックスを用いて機械的被覆プロセスにより製造され、撚数が5~8t/cm、延伸比が2.5~3.5である。より好ましくは、撚数は5~6t/cmであり、前記延伸比は3である。
【0026】
好ましくは、前記サイジング温度は130±5℃であり、このサイジング温度では低温サイジングである。より好ましくは、前記サイジング剤の濃度は10~15wt%であり、前記サイジング速度は40~50m/minである。さらに好ましくは、前記サイジング剤の濃度は12wt%であり、前記サイジング速度は45m/minである。該サイジング剤の濃度が低いと、高品質で製織できるとともに、整理やデサイジングに有利である。サイジング工程は分繊機で整経してワープビームを作製し、ワープビームを巻返してサイジングすることを含み、該サイジング工程は操作時間が短く、エラーを減らす。
【0027】
好ましくは、前記製織に使用される織機はウォータージェット織機である。化学繊維製品の場合は、ウォータージェット織機を使用すると、エアジェット織機よりも静電気による影響が少なく、また水はサイジング剤に対して一定の膨潤作用を果たし、製織中に一部のサイジング剤を抜いておく。
【0028】
好ましくは、前記連続デサイジングは、連続デサイジング機を用いたデサイジングであり、第1のデサイジングの温度は91℃であり、デサイジング速度は40~50m/minであり、第1のデサイジングの時間は15分以下である。第1のデサイジング温度が91℃未満であると、デサイジング率は低く、91.5℃よりも高いと、色付着が明らかになり、前記第1のデサイジングは大部分のサイジング剤を取り除いて先染生地を予備収縮できるとともに、先染生地の色を維持できる。
【0029】
好ましくは、前記プレセッティングの速度は、30~40m/minである。第1のデサイジングが予備収縮の作用を有する場合、第1のデサイジング後にプレセッティングを行うと、生地に形状保持性を持たせる。
【0030】
好ましくは、前記断続式デサイジングはバット内水洗である。前記第2のデサイジング温度は70℃であり、時間は15分以下であり、前記デサイジング混合液IIは、強塩基4~5wt%と、亜ジチオン酸ナトリウム4~5wt%を含む。前記デサイジング混合液IIは脱脂剤0.5~2g/Lをさらに含む。前記第2のデサイジングステップは、デサイジング混合液IIと先染生地とを1回水洗し、親水性柔軟剤0.5~2g/Lを加えて、1回水洗し、2回脱水するか水を完全に脱水するステップを含む。前記第2のデサイジングは、先染生地に対して還元水洗を行うことで、先染生地のサイジング剤を完全に取り除くとともに、先染生地中のポリエステルについてアルカリ減量腐食を行い、綿の風合いを向上させる。
【0031】
好ましくは、前記本セッティングの速度は、30~50m/minである。本セッティングはさらに先染生地をセッティングし、本セッティングの温度が100~140℃に設定されるため、低温セッティングであり、先染生地の保色性、アイロン率や風合いの制御に有利である。
【0032】
選択的に、前記強塩基は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、及び炭酸ナトリウムから選ばれる少なくとも1種である。好ましくは、前記強塩基は水酸化ナトリウムである。
【0033】
選択的に、前記プレセッティングに、プレセッティング助剤Iが添加され、前記プレセッティング助剤Iは、しゃり付与助剤と酢酸を含む。好ましくは、前記しゃり付与助剤は抗菌助剤を含む。より好ましくは、前記抗菌助剤は亜鉛イオン系抗菌剤である。さらに好ましくは、前記プレセッティング助剤Iは、亜鉛イオン系抗菌剤2wt‰と酢酸4wt‰とを含む。酢酸はデサイジングで残留された一部のアルカリ液を中和できる。化学繊維製シャツ生地には吸湿排汗機能が求められ、汗を導くときに大量の人体の代謝物が生地に残留され、微生物や細菌が繁殖しやすくなり、その結果、皮膚の健康に悪影響を与えるとともに、微生物や細菌の成長により臭気が生じやすく、このため、抗菌剤を添加する必要がある。従来技術では、機能性助剤が本セッティングのステップで添加され、本出願では、しゃり付与助剤がプレセッティングのステップで添加され、それにより、先染生地のしゃりが向上する。
【0034】
選択的に、前記本セッティングに本セッティング助剤IIが添加され、前記本セッティング助剤IIは滑らかさ付与助剤を含む。好ましくは、前記滑らかさ付与助剤は、吸湿排汗剤及び/又は柔軟剤を含む。より好ましくは、前記滑らかさ付与助剤は、吸湿排汗剤3wt%と柔軟剤3%を含み、前記本セッティング助剤IIは2wt‰濃度の抗菌剤をさらに含む。該本セッティング助剤IIは、先染生地の綿のような風合い及び機能性を維持する。
【0035】
本出願のさらなる態様によれば、衣料品を提供し、該先染生地は衣料品例えばシャツの作製に用いられると、その選択性及び機能性を向上させる。
【0036】
該衣料品は先染生地で作製され、前記先染生地は、上記のいずれかに記載の先染生地と、上記のいずれかに記載の方法で製造される先染生地から選ばれる少なくとも1種である。
【0037】
本出願では、前記GB/T 3920-2008『紡績品色堅牢度試験耐ソーピング色堅牢度』中のD(4)方法により測定された耐ソーピング色堅牢度、及びGB/T 3920-2008『紡績品色堅牢度試験耐摩擦色堅牢度』において測定した耐摩擦色堅牢度がある。
【発明の効果】
【0038】
本出願の有益な効果は以下を含むが、これらに制限されない。
1.本出願に係る綿質地ポリエステル先染生地は、良好な綿の風合い、高弾性、高色堅牢度及び低アイロン収縮率を有し、該先染生地は、高品質衣料品の作製、特にシャツの作製に適している。
2.本出願に係る先染生地の製造方法は、エネルギーを節約して排出を削減させ、低アイロン収縮率、高色堅牢度及び綿のような手触りを有する該新規ポリエステル先染生地を製造できる。
3.本出願に係る衣料品では、該先染生地は衣料品例えばシャツの作製に用いられると、その選択性及び機能性を向上させる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、実施例を参照して本出願を詳しく説明するが、本出願はこれらの実施例に制限されない。
【0040】
特に断らない限り、本出願の実施例の原料及び触媒はすべて市販品として購入する。
【0041】
本出願の実施例では、分析方法は以下のとおりである。
1、染色堅牢度
耐ソーピング色堅牢度:GB/T 3920-2008『紡績品色堅牢度試験耐ソーピング色堅牢度』のD(4)方法を参照して測定する。
耐摩擦色堅牢度:GB/T 3920-2008『紡績品色堅牢度試験耐摩擦色堅牢度』を参照して測定する。
耐昇華色堅牢度:GB/T 5718-1997『紡績品色堅牢度試験耐乾熱(ホットプレスを除く)色堅牢度』を参照して測定する。
2、アイロン収縮率:先染生地を170℃、15sで6回処理した後、アイロン収縮率をテストする。
3、弾性のテスト基準:FZ/T01034『紡績品 織物延伸弾性試験方法』。
4、綿の風合い:10人が綿質地ポリエステル先染生地への触り感に応じて判定する。
優:ソフトで、はりがあり、ふくらみが高い。
良:いくつかのぬめり、ドレープ性を有する。
劣:紙のような質地感や粗さが高い。
【0042】
本出願の1つの実施形態では、綿質地ポリエステル先染生地の製造方法は、以下のステップを含む。
1)提供した横糸とサイジングした縦糸とを織り交ぜて、粗先染生地を得て、前記縦糸は、染色したポリエステル糸を被覆層、低温スパンデックスを芯糸としたコアスパンヤーンを含み、前記サイジングのサイジング剤はアクリル酸類サイジング剤を含む。
2)第1のデサイジング:粗先染生地を、強塩基2~3wt%とデサイジング剤2~3wt%を含むデサイジング混合液Iで、91~91.5℃の温度で20分以下、連続的にデサイジングする。
3)プレセッティング:プレセッティングの温度を180~200℃とする。
4)第2のデサイジング:強塩基2~5wt%と亜ジチオン酸ナトリウム2~5wt%とを含むデサイジング混合液IIで、60~90℃の温度で45分以下、断続的にデサイジングする。
5)本セッティング:100~140℃の温度で本セッティングを行い、前記先染生地を得る。
【0043】
実施例1 先染生地1#
1)A、原料の提供:重量比13.5:1のポリエステルと低温スパンデックスを提供し、ポリエステルは75D/72FマットポリエステルDTYであり、低温スパンデックスは30D繊度の新規低温スパンデックスであった。
B、ポリエステルの染色:ダイスター社製の耐熱・耐水洗・耐アルカリ性分散染料を用いて、ポリエステルを、温度130℃で、40分染色した。
C、縦糸、横糸の製造:染色ポリエステルを被覆層、低温スパンデックスを芯糸として、機械的被覆プロセスにより、撚数5~6t/cm、延伸比3のコアスパンヤーンを生産した。
D、縦糸サイジング:濃度12wt%のアクリル酸類サイジング剤を用いて、130℃でコアスパンヤーンをサイジングし、具体的には分繊機で整経してワープビームを作製し、ワープビームを巻返してサイジングし、サイジング速度を45m/minとした。
E、製織:縦糸と横糸をウォータージェット織機で織り交ぜて、粗先染生地を得た。
2)第1のデサイジング:粗先染生地を、強塩基2~3wt%とデサイジング剤2~3wt%とを含むデサイジング混合液Iで、91~91.5℃の温度で20分以下、連続的にデサイジングし(連続デサイジング)、速度を45m/minとし、ここで、デサイジング剤はデサイジング酵素であってもよい。
3)プレセッティング:プレセッティングの温度を190℃、速度を35m/minとし、一回目に濃度約2wt‰の抗菌剤をサイジングし、濃度約4wt‰酢酸を追加してデサイジングにおいて残留されたアルカリ液を中和した。
4)第2のデサイジング:2g/L水酸化ナトリウム、2g/L亜ジチオン酸ナトリウム、及び1g/L脱脂剤を含むデサイジング混合液IIで、60~90℃の温度で45分以下、断続的にデサイジングし(バット内水洗)、1回水洗し、1g/L柔軟剤を加えて、1回水洗し、2回脱水するか、水を完全に脱水した。
5)本セッティング:本セッティングの温度を140℃、速度を35m/minとし、濃度2wt‰の抗菌剤、3%濃度の吸湿排汗剤及び3%濃度の柔軟剤を添加すると、先染生地1#を得た。
性能テスト:耐ソーピング色堅牢度は5級、耐摩擦色堅牢度は5級、耐昇華色堅牢度は5級であり、アイロン収縮率は1%以下であり、綿の風合いは優であった。
【0044】
実施例2 先染生地2#、3#
縦糸として使用されるポリエステルと低温スパンデックスとの重量比が3、52である以外、実施例1の方法によって先染生地2#、3#を製造し、先染生地2#、3#をそれぞれ得て、先染生地2#は、手で触ると、弾性が極めて悪く、強度が悪く、先染生地3#は、手で触ると、硬くて、吸湿性や綿の風合いが悪い。
【0045】
実施例3 先染生地4#、5#
縦糸に使用される低温スパンデックスの撚数が4t/cmと9t/cmである以外、実施例1の方法によって先染生地4#、5#を製造し、先染生地4#、5#をそれぞれ得て、先染生地4#には、低温スパンデックスが露出した部位があり、先染生地5#の風合いが悪い。
【0046】
実施例4 先染生地6#
ステップBに使用されるスパンデックスが常温スパンデックスであり、染色温度が150℃であり、染色時間が20分である以外、実施例1の方法によって先染生地6#を製造、先染生地6#を得た。
性能テスト:耐ソーピング色堅牢度は3級、耐摩擦色堅牢度は3級、耐昇華色堅牢度は3級であり、アイロン収縮率は5%以下であり、綿の風合いは良であった。
【0047】
実施例5 先染生地7#、8#
ステップ2)の第1のデサイジングではデサイジング温度が92.5℃、90.5℃である以外、実施例1の方法によって先染生地7#、8#を製造し、先染生地7#、8#をそれぞれ得た。
先染生地7#の性能テスト:生地に色が付いており、品質が不合格である。先染生地8#の性能テスト:綿の風合いが悪く、デサイジングが不十分である。
【0048】
実施例6 先染生地9#
ステップ2)では抗菌助剤が添加されず、ステップ5)の本セッティングに4wt‰抗菌剤を添加する以外、実施例1の方法によって先染生地9#を製造した。
先染生地9#の性能テスト:耐ソーピング色堅牢度は5級、耐摩擦色堅牢度は5級、耐昇華色堅牢度は5級であり、アイロン収縮率は1%以下であり、綿の風合いについては、先染生地1#よりもしゃりが悪い。
【0049】
実施例7 先染生地10#
ステップ2)の第1のデサイジングでは、デサイジング混合液Iは強塩基4wt%とデサイジング剤2~3wt%を含み、
ステップ4)の第2のデサイジングでは、6g/L水酸化ナトリウム、2g/L亜ジチオン酸ナトリウム、及び1g/L脱脂剤を含むデサイジング混合液IIで、60~90℃の温度で45min以下、断続的にデサイジング(バット内水洗)、1回水洗し、1g/L柔軟剤を加えて、1回水洗し、水を2回脱水するか、水を完全に脱水した以外、実施例1の方法によって先染生地10#を製造した。
先染生地10#の性能テスト:耐ソーピング色堅牢度は3級、耐摩擦色堅牢度は3級、耐昇華色堅牢度は3級であり、アイロン収縮率は5%よりも高く、綿の風合いは良であった。
【0050】
実施例8 先染生地11#
ステップ4)、5)を行わない以外、実施例1の方法によって先染生地11#を製造した。
先染生地11#の性能テスト:耐ソーピング色堅牢度は4級、耐摩擦色堅牢度は4級、耐昇華色堅牢度は4級であり、アイロン収縮率は5%よりも高く、綿の風合いは悪い。
【0051】
実施例9 先染生地12#
ステップ2)を行わない以外、実施例1の方法によって先染生地12#を製造した。
先染生地12#の性能テスト:耐ソーピング色堅牢度は3級、耐摩擦色堅牢度は3級、耐昇華色堅牢度は3級であり、アイロン収縮率は6%よりも高く、綿の風合いは悪い。