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特許7433340太陽電池セル、太陽電池デバイスおよび太陽電池モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】太陽電池セル、太陽電池デバイスおよび太陽電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/05 20140101AFI20240209BHJP
   H01L 31/043 20140101ALI20240209BHJP
【FI】
H01L31/04 570
H01L31/04 510
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021563984
(86)(22)【出願日】2020-12-08
(86)【国際出願番号】 JP2020045729
(87)【国際公開番号】W WO2021117740
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-04-12
(31)【優先権主張番号】P 2019223954
(32)【優先日】2019-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】中野 邦裕
【審査官】桂城 厚
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-522353(JP,A)
【文献】国際公開第2019/146366(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/146365(WO,A1)
【文献】特開2013-077820(JP,A)
【文献】特開2019-114812(JP,A)
【文献】特開2019-036733(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0097073(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/04-31/078
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣り合う太陽電池セルのうちの一方の太陽電池セルの第1方向における一方端部が、前記隣り合う太陽電池セルのうちの他方の太陽電池セルの前記第1方向における他方端部の下に重なるように、シングリング方式を用いて配置された複数の太陽電池セルと、
前記複数の太陽電池セルを電気的に接続する配線部材と、
を備え、
前記複数の太陽電池セルの各々は、半導体基板と、前記半導体基板に積層された第1導電型半導体層および第2導電型半導体層と、前記第1導電型半導体層および前記第2導電型半導体層それぞれに対応した第1電極層および第2電極層とを備えており、
前記第1電極層の少なくとも一部は、前記半導体基板の一方主面において前記第1方向における前記一方端部に配置されており、
前記第2電極層の少なくとも一部は、前記半導体基板の前記一方主面において前記第1方向における前記他方端部に配置されており、
前記半導体基板の前記一方端部には、切り欠き部または開孔が形成されており、
前記第1電極層の少なくとも一部と、前記切り欠き部または前記開孔とは、前記第1方向と交差する第2方向に延びる直線上に配置されており、
前記配線部材は、
前記一方の太陽電池セルの前記一方端部に沿って、前記第1方向と交差する前記第2方向に延びる直線上に配置され、
前記一方の太陽電池セルの前記一方端部の第1電極層の少なくとも一部に接続されるとともに、
前記一方の太陽電池セルの前記一方端部の切り欠き部または開孔を介して、前記他方の太陽電池セルの前記他方端部の第2電極層の少なくとも一部に接続される、
太陽電池デバイス。
【請求項2】
前記半導体基板の前記一方端部は、前記直線に沿って凹凸形状をなしており、
凸部には、前記第1電極層の少なくとも一部が形成されており、
凹部は、前記切り欠き部を形成する、
請求項1に記載の太陽電池デバイス
【請求項3】
前記凹凸形状は、正弦波形状であり、
前記正弦波形状における正弦波の接線の傾きが最大になる点において、前記直線に対する接線の傾きの角度が、前記直線に対する前記半導体基板の劈開方向の角度よりも小さい、
請求項2に記載の太陽電池デバイス
【請求項4】
前記半導体基板の前記一方端部は、前記直線に沿って交互に並ぶ複数の前記凸部および複数の前記凹部を含む、請求項2または3に記載の太陽電池デバイス
【請求項5】
前記半導体基板の前記一方端部は、前記直線に沿って複数の前記開孔を含む、請求項1に記載の太陽電池デバイス
【請求項6】
前記一方の太陽電池セルの前記一方端部の切り欠き部または開孔において、前記他方の太陽電池セルの前記他方端部の第2電極層の少なくとも一部上に設けられた導電性のかさ上げ部材を更に備える、請求項1~5のいずれか1項に記載の太陽電池デバイス。
【請求項7】
前記一方の太陽電池セルの前記一方端部の切り欠き部または開孔において、前記一方の太陽電池セルの前記一方端部の端面と前記配線部材との間に配置された絶縁部材を更に備える、請求項1~5のいずれか1項に記載の太陽電池デバイス。
【請求項8】
隣り合う太陽電池セルのうちの一方の太陽電池セルの第1方向における一方端部が、前記隣り合う太陽電池セルのうちの他方の太陽電池セルの前記第1方向における他方端部の下に重なるように、シングリング方式を用いて配置された複数の太陽電池セルと、
前記複数の太陽電池セルを電気的に接続する接着部材と、
を備え、
前記複数の太陽電池セルの各々は、半導体基板と、前記半導体基板に積層された第1導電型半導体層および第2導電型半導体層と、前記第1導電型半導体層および前記第2導電型半導体層それぞれに対応した第1電極層および第2電極層とを備えており、
前記第1電極層の少なくとも一部は、前記半導体基板の一方主面において前記第1方向における前記一方端部に配置されており、
前記第2電極層の少なくとも一部は、前記半導体基板の前記一方主面において前記第1方向における前記他方端部に配置されており、
前記半導体基板の前記一方端部には、切り欠き部または開孔が形成されており、
前記第1電極層の少なくとも一部と、前記切り欠き部または前記開孔とは、前記第1方向と交差する第2方向に延びる直線上に配置されており、
前記接着部材は、
ペースト状の接着部材からなり、
前記一方の太陽電池セルの前記一方端部の切り欠き部または開孔において、前記他方の太陽電池セルの前記他方端部の第2電極層の少なくとも一部に配置されて接続されるとともに、
前記一方の太陽電池セルの前記一方端部の第1電極層の少なくとも一部に盛り上がって接続される、
太陽電池デバイス。
【請求項9】
前記半導体基板の前記一方端部は、前記直線に沿って凹凸形状をなしており、
凸部には、前記第1電極層の少なくとも一部が形成されており、
凹部は、前記切り欠き部を形成する、
請求項8に記載の太陽電池デバイス。
【請求項10】
前記凹凸形状は、正弦波形状であり、
前記正弦波形状における正弦波の接線の傾きが最大になる点において、前記直線に対する接線の傾きの角度が、前記直線に対する前記半導体基板の劈開方向の角度よりも小さい、
請求項9に記載の太陽電池デバイス。
【請求項11】
前記半導体基板の前記一方端部は、前記直線に沿って交互に並ぶ複数の前記凸部および複数の前記凹部を含む、請求項9または10に記載の太陽電池デバイス。
【請求項12】
前記半導体基板の前記一方端部は、前記直線に沿って複数の前記開孔を含む、請求項8に記載の太陽電池デバイス。
【請求項13】
前記一方の太陽電池セルの前記一方端部の切り欠き部または開孔において、前記一方の太陽電池セルの前記一方端部の端面に、前記第1電極層が形成されている。請求項8~12のいずれか1項に記載の太陽電池デバイス。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の1または複数の太陽電池デバイスを備える、太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池セル、およびそれを備える太陽電池デバイス、並びにそれを備える太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、両面電極型の太陽電池セルをモジュール化する場合、導電性の接続線を用いることなく、太陽電池セルの一部同士を重ね合わせることで、直接、電気的かつ物理的に接続を行う方式が存在する。このような接続方式はシングリング方式と称され、シングリング方式で電気的に接続された複数の太陽電池セルは太陽電池ストリング(太陽電池デバイス)と称される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
太陽電池ストリング(太陽電池デバイス)では、太陽電池モジュールにおける限られた太陽電池セル実装面積に、より多くの太陽電池セルが実装可能になり、光電変換のための受光面積が増え、太陽電池モジュールの出力が向上する。また、太陽電池ストリング(太陽電池デバイス)では、太陽電池セル間に隙間が生じず、太陽電池モジュールの意匠性が向上する。
【0004】
出力向上および意匠性向上の観点から、裏面電極型の太陽電池セルをモジュール化する場合にも、シングリング方式を用いて太陽電池セルの一部同士を重ね合わせて接続することが検討されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-517145号公報
【文献】特表2015-534288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
裏面電極型の太陽電池セルをシングリング方式を用いて接続する場合、段差を有する裏面電極同士を接続するために導電性の接続線等を用いる必要がある。例えば、特許文献2の図3Bには、略U字状に折り曲げられた接続線材を用いて、裏面電極型の太陽電池セル同士を接続する技術が開示されている。この技術では、接続線材を略U字状に折り曲げる作業、および太陽電池セル間に接続線材を配置する作業等に起因して、太陽電池モジュールの接続に手間がかかる。
【0007】
本発明は、シングリング方式を用いて太陽電池セルの一部同士を重ね合わせて接続する場合に、この接続を簡易化できる太陽電池セル、太陽電池デバイスおよび太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る太陽電池セルは、半導体基板と、前記半導体基板に積層された第1導電型半導体層および第2導電型半導体層と、前記第1導電型半導体層および前記第2導電型半導体層それぞれに対応した第1電極層および第2電極層とを備える太陽電池セルであって、前記第1電極層の少なくとも一部は、前記半導体基板の一方主面において第1方向における一方端部に配置されており、前記第2電極層の少なくとも一部は、前記半導体基板の前記一方主面において前記第1方向における他方端部に配置されており、前記半導体基板の前記一方端部には、切り欠き部または開孔が形成されており、前記第1電極層の少なくとも一部と、前記切り欠き部または前記開孔とは、前記第1方向と交差する第2方向に延びる直線上に配置されている。
【0009】
本発明に係る太陽電池デバイスは、隣り合う太陽電池セルのうちの一方の太陽電池セルの第1方向における一方端部が、前記隣り合う太陽電池セルのうちの他方の太陽電池セルの前記第1方向における他方端部の下に重なるように、シングリング方式を用いて配置された、上記した複数の太陽電池セルと、前記複数の太陽電池セルを電気的に接続する配線部材と、を備え、前記配線部材は、前記一方の太陽電池セルの前記一方端部に沿って、前記第1方向と交差する第2方向に延びる直線上に配置され、前記一方の太陽電池セルの前記一方端部の第1電極層の少なくとも一部に接続されるとともに、前記一方の太陽電池セルの前記一方端部の切り欠き部または開孔を介して、前記他方の太陽電池セルの前記他方端部の第2電極層の少なくとも一部に接続される。
【0010】
本発明に係る他の太陽電池デバイスは、隣り合う太陽電池セルのうちの一方の太陽電池セルの第1方向における一方端部が、前記隣り合う太陽電池セルのうちの他方の太陽電池セルの前記第1方向における他方端部の下に重なるように、シングリング方式を用いて配置された、上記した複数の太陽電池セルと、前記複数の太陽電池セルを電気的に接続する接着部材と、を備え、前記接着部材は、ペースト状の接着部材からなり、前記一方の太陽電池セルの前記一方端部の切り欠き部または開孔において、前記他方の太陽電池セルの前記他方端部の第2電極層の少なくとも一部に配置されて接続されるとともに、前記一方の太陽電池セルの前記一方端部の第1電極層の少なくとも一部に盛り上がって接続される。
【0011】
本発明に係る太陽電池モジュールは、上記した1または複数の太陽電池デバイスを備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、シングリング方式を用いて裏面電極型の太陽電池セルの一部同士を重ね合わせて接続する場合に、この接続を簡易化できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態に係る太陽電池デバイスを備える太陽電池モジュールを裏面側からみた図である。
図2図1に示す太陽電池モジュールのII-II線断面図である。
図3】第1実施形態に係る太陽電池セルを裏面側からみた図である。
図4図3に示す太陽電池セルのIV-IV線断面図である。
図5図3および図4に示す太陽電池セルを含む大判半導体ウェハの一例を示す図である。
図6A図1に示す太陽電池デバイスのVI-VI線断面図である。
図6B】変形例に係る太陽電池デバイスのVI-VI線相当の断面図である。
図6C】変形例に係る太陽電池デバイスのVI-VI線相当の断面図である。
図6D】変形例に係る太陽電池デバイスのVI-VI線相当の断面図である。
図6E】変形例に係る太陽電池デバイスのVI-VI線相当の断面図である。
図7】第1実施形態の変形例に係る太陽電池デバイスを備える太陽電池モジュールを裏面側からみた図である。
図8】第1実施形態の変形例に係る太陽電池セルを裏面側からみた図である。
図9図8に示す太陽電池セルを含む大判半導体ウェハの一例を示す図である。
図10】第2実施形態に係る太陽電池デバイスを備える太陽電池モジュールを裏面側からみた図である。
図11図10に示す太陽電池モジュールのXI-XI線断面図である。
図12】第2実施形態に係る太陽電池セルを裏面側からみた図である。
図13図12に示す太陽電池セルを含む大判半導体ウェハの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態の一例について説明する。なお、各図面において同一または相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。また、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、他の図面を参照するものとする。
【0015】
[第1実施形態]
<太陽電池モジュール>
図1は、第1実施形態に係る太陽電池デバイスを備える太陽電池モジュールを裏面側からみた図であり、図2は、図1に示す太陽電池モジュールのII-II線断面図である。図1では、後述する受光側保護部材3、裏側保護部材4および封止材5が省略されており、配線部材50を透かして示す。また、図1および図2、並びに後述する図面には、XY直交座標系が示されている。XY平面は太陽電池モジュールの受光面および裏面に沿う面である。
【0016】
図1および図2に示すように、太陽電池モジュール100は、複数の裏面電極型(裏面接合型、バックコンタクト型とも称される)の太陽電池セル2をシングリング方式を用いて電気的に接続する太陽電池デバイス(太陽電池ストリングとも称される)1を含む。
【0017】
太陽電池デバイス1は、受光側保護部材3と裏側保護部材4とによって挟み込まれている。受光側保護部材3と裏側保護部材4との間には、液体状または固体状の封止材5が充填されており、これにより、太陽電池デバイス1は封止される。
【0018】
封止材5は、太陽電池デバイス1、すなわち太陽電池セル2を封止して保護するもので、太陽電池セル2の受光側の面と受光側保護部材3との間、および、太陽電池セル2の裏側の面と裏側保護部材4との間に介在する。封止材5の形状としては、特に限定されるものではなく、例えばシート状が挙げられる。シート状であれば、面状の太陽電池セル2の表面および裏面を被覆しやすいためである。
【0019】
封止材5の材料としては、特に限定されるものではないが、光を透過する特性(透光性)を有すると好ましい。また、封止材5の材料は、太陽電池セル2と受光側保護部材3と裏側保護部材4とを接着させる接着性を有すると好ましい。このような材料としては、例えば、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン/α-オレフィン共重合体、エチレン/酢酸ビニル/トリアリルイソシアヌレート(EVAT)、ポリビニルブチラート(PVB)、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、または、シリコーン樹脂等の透光性樹脂が挙げられる。
【0020】
受光側保護部材3は、封止材5を介して、太陽電池デバイス1、すなわち太陽電池セル2の表面(受光面)を覆って、その太陽電池セル2を保護する。受光側保護部材3の形状としては、特に限定されるものではないが、面状の受光面を間接的に覆う点から、板状またはシート状が好ましい。
【0021】
受光側保護部材3の材料としては、特に限定されるものではないが、封止材5同様に、透光性を有しつつも紫外光に耐性の有る材料が好ましく、例えば、ガラス、または、アクリル樹脂若しくはポリカーボネート樹脂等の透明樹脂が挙げられる。また、受光側保護部材3の表面は、凹凸状に加工されていても構わないし、反射防止コーティング層で被覆されていても構わない。これらのようになっていると、受光側保護部材3は、受けた光を反射させ難くして、より多くの光を太陽電池デバイス1に導けるためである。
【0022】
裏側保護部材4は、封止材5を介して、太陽電池デバイス1、すなわち太陽電池セル2の裏面を覆って、その太陽電池セル2を保護する。裏側保護部材4の形状としては、特に限定されるものではないが、受光側保護部材3同様に、面状の裏面を間接的に覆う点から、板状またはシート状が好ましい。
【0023】
裏側保護部材4の材料としては、特に限定されるものではないが、水等の浸入を防止する(遮水性の高い)材料が好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、オレフィン系樹脂、含フッ素樹脂、若しくは含シリコーン樹脂等の樹脂フィルム、またはガラス、ポリカーボネート、アクリル等の透光性を有する板状の樹脂部材と、アルミニウム箔等の金属箔との積層体が挙げられる。
【0024】
<<太陽電池デバイス>>
太陽電池デバイス1では、太陽電池セル2の端部の一部が重なり合うことにより、太陽電池セル2が直列に接続される。具体的には、隣り合う太陽電池セル2,2のうちの一方の太陽電池セル2のY方向(第1方向)における一方端側(例えば図2において右端側)の受光面側(例えば後述する一方主面側と反対の他方主面側)の一部は、他方の太陽電池セル2のY方向における他方端側(上述の一方端側と反対の他方端側、例えば図2において左端側)の裏面側(例えば一方主面側)の一部の下に重なる。
【0025】
このように、瓦を屋根に葺いたように、複数の太陽電池セル2が一様にある方向にそろって傾く堆積構造となることから、このようにして太陽電池セル2を電気的に接続する方式を、シングリング方式と称する。また、ひも状につながった複数の太陽電池セル2を、太陽電池ストリング(太陽電池デバイス)と称する。以下では、隣り合う太陽電池セル2,2が重なり合う領域を、重ね合わせ領域Roという。
【0026】
隣り合う太陽電池セル2,2は、重ね合わせ領域Roにおいて、配線部材50を介して接着される(詳細は後述する)。配線部材50としては、タブ等の公知のインターコネクタが用いられる。例えば、配線部材50としては、低融点金属またははんだを被覆した銅芯材からなるリボン線、低融点金属粒子または金属微粒子を内包した熱硬化性樹脂フィルムで形成された導電性フィルム、或いは複数本の導電性の素線を編んだ編物または織った織物により形成された部材(例えば、特開2016-219799号公報または特開2014-3161号公報参照)等が挙げられる。
【0027】
配線部材50と太陽電池セル2の電極部とは、導電性接着部材を介して接続される。導電性接着部材としては、低融点金属粒子または金属微粒子を内包した熱硬化性樹脂フィルムで形成された導電性フィルム、低融点金属微粒子若しくは金属微粒子とバインダーとで形成された導電性接着剤、または、はんだ粒子を含有するはんだペースト等が用いられる。
以下、太陽電池デバイス1における太陽電池セル2について説明する。
【0028】
<<<太陽電池セル>>>
図3は、図1および図2に示す太陽電池デバイス1における太陽電池セル2を裏面側からみた図である。太陽電池セル2は、一方主面側(例えば裏面側)と、その反対の他方主面側(例えば受光面側)の2つの主面を有する半導体基板11を備え、半導体基板11の一方主面において第1領域7と第2領域8とを有する。以下では、半導体基板11の主面のうちの受光する側の主面を受光面とし、半導体基板11の主面のうちの受光面の反対側の主面(一方主面)を裏面とする。
【0029】
第1領域7は、いわゆる櫛型の形状をなし、櫛歯に相当する複数のフィンガー部7fと、櫛歯の支持部に相当するバスバー部7bとを有する。バスバー部7bは、半導体基板11の一方端側の辺部に沿ってX方向(第2方向)に延在し、フィンガー部7fは、バスバー部7bから、X方向に交差するY方向(第1方向)に延在する。
【0030】
同様に、第2領域8は、いわゆる櫛型の形状であり、櫛歯に相当する複数のフィンガー部8fと、櫛歯の支持部に相当するバスバー部8bとを有する。バスバー部8bは、半導体基板11の一方端側の辺部に対向する他方端側の辺部に沿ってX方向に延在し、フィンガー部8fは、バスバー部8bからY方向に延在する。
【0031】
フィンガー部7fとフィンガー部8fとは、Y方向に延在する帯状をなしており、X方向に交互に設けられている。
なお、第1領域7および第2領域8は、ストライプ状に形成されてもよい。
【0032】
図4は、図3に示す太陽電池セル2のIV-IV線断面図である。図4に示すように、太陽電池セル2は、半導体基板11の受光面側に順に積層された真性半導体層13および反射防止層15を備える。また、太陽電池セル2は、半導体基板11の裏面側の一部(主に、第1領域7)に順に積層された真性半導体層23、第1導電型半導体層25および第1電極層27を備える。また、太陽電池セル2は、半導体基板11の裏面側の他の一部(主に、第2領域8)に順に積層された真性半導体層33、第2導電型半導体層35および第2電極層37を備える。
【0033】
半導体基板11は、単結晶シリコンまたは多結晶シリコン等の結晶シリコン材料で形成される。半導体基板11は、例えば結晶シリコン材料にn型ドーパントがドープされたn型の半導体基板である。n型ドーパントとしては、例えばリン(P)が挙げられる。
半導体基板11は、受光面側からの入射光を吸収して光キャリア(電子および正孔)を生成する光電変換基板として機能する。
【0034】
半導体基板11の材料として結晶シリコンが用いられることにより、暗電流が比較的に小さく、入射光の強度が低い場合であっても比較的高出力(照度によらず安定した出力)が得られる。
【0035】
真性半導体層13は、半導体基板11の受光面側に形成されている。真性半導体層23は、半導体基板11の裏面側の第1領域7に形成されている。真性半導体層33は、半導体基板11の裏面側の第2領域8に形成されている。真性半導体層13,23,33は、例えば真性(i型)アモルファスシリコン材料で形成される。真性半導体層13,23,33は、パッシベーション層として機能し、半導体基板11で生成されたキャリアの再結合を抑制し、キャリアの回収効率を高める。
【0036】
反射防止層15は、半導体基板11の受光面側の真性半導体層13上に形成されている。反射防止層15は、入射光の反射を防止する反射防止層として機能するとともに、半導体基板11の受光面側および真性半導体層13を保護する保護層として機能する。反射防止層15は、例えば酸化珪素(SiO)、窒化珪素(SiN)、または酸窒化珪素(SiON)のようなそれらの複合物等の絶縁体材料で形成される。
【0037】
第1導電型半導体層25は、真性半導体層23上に、すなわち半導体基板11の裏面側の第1領域7に形成されている。すなわち、第1導電型半導体層25は、いわゆる櫛型の形状をなし、櫛歯に相当する複数のフィンガー部25fと、櫛歯の支持部に相当し、複数のフィンガー部25fの一端が接続されたバスバー部25bとを有する。バスバー部25bは、半導体基板11の一方端側の辺部に沿ってX方向に延在し、フィンガー部25fは、バスバー部25bからY方向に延在する。
【0038】
第2導電型半導体層35は、真性半導体層33上に、すなわち半導体基板11の裏面側の第2領域8に形成されている。すなわち、第2導電型半導体層35は、いわゆる櫛型の形状であり、櫛歯に相当する複数のフィンガー部35fと、櫛歯の支持部に相当し、複数のフィンガー部35fの一端が接続されたバスバー部35bとを有する。バスバー部35bは、半導体基板11の他方端側の辺部に沿ってX方向に延在し、フィンガー部35fは、バスバー部35bからY方向に延在する。
【0039】
第1導電型半導体層25は、例えばアモルファスシリコン材料で形成される。第1導電型半導体層25は、例えばアモルファスシリコン材料にp型ドーパントがドープされたp型半導体層である。p型ドーパントとしては、例えばホウ素(B)が挙げられる。
【0040】
第2導電型半導体層35は、例えばアモルファスシリコン材料で形成される。第2導電型半導体層35は、例えばアモルファスシリコン材料にn型ドーパント(例えば、上述したリン(P))がドープされたn型の半導体層である。
【0041】
なお、第1導電型半導体層25がn型半導体層であり、第2導電型半導体層35がp型半導体層であってもよい。また、半導体基板11は、結晶シリコン材料にp型ドーパント(例えば、上述したホウ素(B))がドープされたp型半導体基板であってもよい。
また、第2導電型半導体層35および真性半導体層33の一部は、隣接する第1導電型半導体層25および真性半導体層23の一部の上に重なっていてもよい(図示省略)。
【0042】
第1電極層27は、第1導電型半導体層25上に、すなわち半導体基板11の裏面側の第1領域7に形成されている。第2電極層37は、第2導電型半導体層35上に、すなわち半導体基板11の裏面側の第2領域8に形成されている。
【0043】
第1電極層27は、いわゆる櫛型の形状をなし、櫛歯に相当する複数の第1フィンガー電極部27fと、櫛歯の支持部に相当し、複数の第1フィンガー電極部27fの一端が接続された第1バスバー電極部27bとを有する。第1バスバー電極部27bは、第1領域7のバスバー部7bに対応し、半導体基板11のY方向(第1方向)の一方端側の辺部(一方端部)に沿ってX方向(第2方向)に延在する。第1フィンガー電極部27fは、第1領域7のフィンガー部7fに対応し、第1バスバー電極部27bからY方向に延在する。これにより、第1電極層27の少なくとも一部は、半導体基板11の裏面においてY方向(第1方向)における一方端部に配置される。
【0044】
第2電極層37は、いわゆる櫛型の形状をなし、櫛歯に相当する複数の第2フィンガー電極部37fと、櫛歯の支持部に相当し、複数の第2フィンガー電極部37fの一端が接続された第2バスバー電極部37bとを有する。第2バスバー電極部37bは、第2領域8のバスバー部8bに対応し、半導体基板11のY方向の他方端側の辺部(他方端部)に沿ってX方向に延在する。第2フィンガー電極部37fは、第2領域8のフィンガー部8fに対応し、第2バスバー電極部37bからY方向に延在する。これにより、第2電極層37の少なくとも一部は、半導体基板11の裏面においてY方向(第1方向)における他方端部に配置される。
【0045】
第1電極層27および第2電極層37は、透明電極層と金属電極層とを含んでもよいし、金属電極層のみを含んでもよい。透明電極層は、透明な導電性材料で形成される。透明導電性材料としては、ITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムおよび酸化スズの複合酸化物)、ZnO(Zinc Oxide:酸化亜鉛)が挙げられる。金属電極層は、金属材料で形成される。金属材料としては、例えば、Cu、Ag、Alおよびこれらの合金が用いられる。金属電極層は、例えば、銀等の金属粉末を含有する導電性ペースト材料で形成されてもよい。
【0046】
<太陽電池セルの詳細>
図3に示すように、太陽電池セル2の他方端部、すなわち半導体基板11の他方端部(左端部)は、X方向に沿って直線形状をなしている。太陽電池セル2の他方端部において、第2電極層37の第2バスバー電極部37bは、半導体基板11の他方端部の形状に沿って直線形状に形成されている。
【0047】
一方、太陽電池セル2の一方端部、すなわち半導体基板11の一方端部(右端部)は、X方向に延びる直線Lに沿って波状形状(凹凸形状)をなし、直線Lに沿ってX方向に交互に並ぶ複数の凸部41と複数の凹部42とを有する。凹部42は切り欠き部を形成する。
【0048】
太陽電池セル2の一方端部において、第1電極層27の第1バスバー電極部27bは、半導体基板11の一方端部の形状に沿って波状形状に形成されている。これにより、凸部41には、第1電極層27の少なくとも一部(より具体的には第1バスバー電極部27bの少なくとも一部)が形成されている。
【0049】
このようにして、太陽電池セル2の一方端部、すなわち半導体基板11の一方端部には、切り欠き部(凹部)42が形成されており、第1電極層27の少なくとも一部(より具体的には第1バスバー電極部27bの少なくとも一部)と、切り欠き部(凹部)42とは、X方向に延びる直線L上に配置されている。
【0050】
なお、第1バスバー電極部27bおよび第2バスバー電極部37bは、後述する配線部材50を介して接続されているならば、複数のパーツに分割されていてもよい。
【0051】
この太陽電池セル2は、例えば図5に示すように、スクエア形状またはセミスクエア形状の大判半導体ウェハをカットすることにより得られる。例えば、レーザまたはダイシングソーなどにより大判半導体ウェハに割断溝を形成し(ハーフカット)、割断溝に沿って折り割ることにより、太陽電池セル2が得られる。
【0052】
半導体基板11の一方端部の波状形状は、下記式のように表される正弦波(または余弦波)形状であってもよい。
y=αsin(x)
【0053】
ここで、一般に、大判半導体ウェハは、結晶シリコン層等の半導体基板11の結晶構造(結晶方位)に起因して、対角線に沿って直交する2つの劈開方向60を有する。そのため、直線Lに対する正弦波の接線の傾きの角度の最大値θ1が45度に近いと、すなわち上記式におけるαが1に近いと、大判半導体ウェハをカットする際に、太陽電池セル2が劈開方向60にそって割断されてしまう可能性がある。
【0054】
この点に関し、直線Lに対する正弦波の接線の傾きの角度の最大値θ1が45度よりも小さくてもよい、すなわち上記式におけるαが1よりも小さくてもよい。例えば、正弦波の接線の傾きの角度の最大値θ1が30.963度程度、すなわちαが0.6程度であってもよい。
【0055】
換言すれば、正弦波の接線の傾き(絶対値)が最大になる点において、直線Lに対する接線の傾きの角度の最大値θ1(鋭角の方)は、直線Lに対する半導体基板11の劈開方向60の角度θ2(鋭角の方)よりも小さくてもよい。これにより、大判半導体ウェハをカットする際に、太陽電池セル2が劈開方向60にそって割断されることを低減することができる。
【0056】
なお、直線Lに対する正弦波の接線の傾きの角度の最大値θ1が45度よりも大きいと、すなわち上記式におけるαが1よりも大きいと、いずれかの場所で直線Lに対する正弦波の接線の傾きの角度が45度となる、すなわち上記式におけるy=1を満たすxが存在し、その場所で劈開方向60にそって割断されることが予想される。
【0057】
<太陽電池デバイスの詳細>
図1および図2に示すように、隣り合う太陽電池セル2,2のうちの一方の太陽電池セル2のY方向(第1方向)における一方端部(右端部)は、他方の太陽電池セル2のY方向における他方端部(左端部)の下に重なっている。重なり領域Roでは、一方の太陽電池セル2の一方端部の切り欠き部(凹部)42において、他方の太陽電池セル2の他方端部の第2電極層37の第2バスバー電極部37bの少なくとも一部が露出する。
【0058】
配線部材50は、重なり領域Roにおいて、一方の太陽電池セル2の波状形状の一方端部に沿って、X方向(第2方向)に延びる直線L上に配置される。これにより、配線部材50は、一方の太陽電池セル2の一方端部の凸部41における第1電極層27の少なくとも一部(より具体的には、第1バスバー電極部27bの少なくとも一部)に接続される。また、配線部材50は、一方の太陽電池セル2の一方端部の切り欠き部(凹部)42を介して、他方の太陽電池セル2の他方端部の第2電極層37の少なくとも一部(より具体的には、第2バスバー電極部37bの少なくとも一部)に接続される。このようにして、配線部材50によって、複数の太陽電池セルが直列に接続される。
【0059】
図6Aは、図1に示す太陽電池デバイス1のVI-VI線断面図である。図6Aに示すように、隣り合う太陽電池セル2,2のうちの一方の太陽電池セル2の一方端部の凸部41では、配線部材50は、一方の太陽電池セル2の第1電極層27の第1バスバー電極部27bと導電性接着部材52を介して接続される。一方の太陽電池セル2の一方端部の凹部(切り欠き部)42では、配線部材50は、他方の太陽電池セル2の第2電極層37の第2バスバー電極部37bと導電性接着部材52を介して接続される。
【0060】
以上説明したように、第1実施形態の太陽電池デバイス1および太陽電池モジュール100によれば、隣り合う太陽電池セル2,2のうちの一方の太陽電池セル2の一方端部(例えば、図2において右端部)が、他方の太陽電池セル2の他方端部(例えば、図2において左端部)の下に重なるように、シングリング方式を用いて複数の太陽電池セル2が電気的に接続される。これにより、太陽電池デバイス1および太陽電池モジュール100における限られた太陽電池セル実装面積に、より多くの太陽電池セル2が実装可能になり、光電変換のための受光面積が増え、太陽電池デバイス1および太陽電池モジュール100の出力が向上する。また、太陽電池セル2間に隙間が生じることがなく、太陽電池デバイス1および太陽電池モジュール100の意匠性が向上する。
【0061】
また、第1実施形態の太陽電池デバイス1および太陽電池モジュール100によれば、裏面電極型の太陽電池セルを用いるので、電極や配線が視認されず、太陽電池デバイス1および太陽電池モジュール100の意匠性が更に向上する。
【0062】
また、第1実施形態の太陽電池セル2によれば、半導体基板11の一方端部(例えば、図3において右端部)に切り欠き部(凹部)42が形成されており、第1電極層27の少なくとも一部(より具体的には、第1バスバー電極部27bの少なくとも一部)と、切り欠き部(凹部)42とは、X方向に延びる直線L上に配置されている。これにより、隣り合う太陽電池セル2,2のうちの一方の太陽電池セル2の一方端部が、他方の太陽電池セル2の他方端部の下に重なるように、シングリング方式を用いて複数の太陽電池セルを配置する場合、隣り合う太陽電池セル2,2の重ね合わせ領域Roにおいて配線部材50を直線L上に配置するだけで、一方の太陽電池セル2の一方端部の凸部41における第1電極層27の少なくとも一部(より具体的には、第1バスバー電極部27bの少なくとも一部)と、切り欠き部(凹部)42を介した他方の太陽電池セル2の他方端部の第2電極層37の少なくとも一部(より具体的には、第2バスバー電極部37bの少なくとも一部)とを電気的に接続することができる。そのため、裏面電極型の太陽電池セルをシングリング方式を用いて電気的に接続する太陽電池デバイスおよび太陽電池モジュールの接続を簡易化することができる。
【0063】
(変形例1)
上述した第1実施形態では、図6Aに示すように、一方の太陽電池セル2の一方端部の凹部(切り欠き部)42において、他方の太陽電池セル2の第2電極層37の第2バスバー電極部37bに直接、配線部材50が接続された。
【0064】
これに対して、図6Bに示すように、一方の太陽電池セル2の一方端部の凹部(切り欠き部)42において、他方の太陽電池セル2の第2電極層37の第2バスバー電極部37b上に導電性のかさ上げ部材53が設けられて、配線部材50が接続されてもよい。これによれば、裏面電極型の太陽電池セルをシングリング方式を用いて電気的に接続する太陽電池デバイスおよび太陽電池モジュールの接続をより簡易化することができる。
【0065】
(変形例2)
また、図6Cに示すように、一方の太陽電池セル2の一方端部の凹部(切り欠き部)42において、一方の太陽電池セル2の端部に絶縁部材54が設けられて、絶縁部材54が一方の太陽電池セル2の一方端部の端面と配線部材50との間に配置されてもよい。ここで、太陽電池セル2の周縁部に第2導電型半導体層35が配置されることがある。これによれば、太陽電池セル2の周縁部に第2導電型半導体層35が配置されていても、一方の太陽電池セル2における短絡を防止することができる。
【0066】
(変形例3)
また、図6Dに示すように、配線部材を用いず、一方の太陽電池セル2の一方端部の凹部(切り欠き部)42において、他方の太陽電池セル2の他方端部の第2電極層37の第2バスバー電極部37b上に設けられた導電性接着部材55のみを用いて、一方の太陽電池セル2と他方の太陽電池セル2とが電気的に接続されてもよい。導電性接着部材55としては、低融点金属微粒子若しくは金属微粒子とバインダーとで形成された導電性接着剤、または、はんだ粒子を含有するはんだペースト等が用いられる。
【0067】
例えば、一方の太陽電池セル2の一方端部の凹部(切り欠き部)42において、他方の太陽電池セル2の他方端部の第2電極層37の第2バスバー電極部37bの少なくとも一部上にペースト状の導電性接着部材55を塗布する。次に、他方の太陽電池セル2の他方端部と一方の太陽電池セル2の一方端部とを押し付けることにより、ペースト状の導電性接着部材55を一方の太陽電池セル2の一方端部の第1電極層27の第1バスバー電極部27bまで盛り上げる。
【0068】
(変形例4)
この場合、図6Eに示すように、一方の太陽電池セル2の一方端部の凹部(切り欠き部)42において、一方の太陽電池セル2の一方端部の端面に第1電極層27を製膜してもよい。
【0069】
(変形例5)
また、上述した実施形態では、太陽電池セル2の一方端部の凹凸形状として波状形状を例示したが、太陽電池セル2の一方端部の凹凸形状はこれに限定されない。例えば、太陽電池セル2の一方端部の凹凸形状は矩形形状であってもよい。
【0070】
図7は、第1実施形態の変形例に係る太陽電池デバイスを備える太陽電池モジュールを裏面側からみた図であり、図8は、図7に示す太陽電池デバイス1における太陽電池セル2を裏面側からみた図である。なお、図7でも、図1同様に、受光側保護部材3、裏側保護部材4および封止材5が省略されており、配線部材50を透かして示す。
【0071】
図8に示すように、太陽電池セル2の一方端部、すなわち半導体基板11の一方端部(右端部)、の凹凸形状(凸部41および凹部42)は、矩形形状であってもよい。この場合でも、太陽電池セル2の一方端部、すなわち半導体基板11の一方端部において、第1電極層27の第1バスバー電極部27bの少なくとも一部と、切り欠き部(凹部)42とは、X方向に延びる直線L上に配置されていればよい。
【0072】
この太陽電池セル2は、例えば図9に示すように、スクエア形状またはセミスクエア形状の大判半導体ウェハをカットすることにより得られる。
【0073】
(第2実施形態)
上述した第1実施形態では、太陽電池セル2の一方端部に切り欠き部42を設けた。第2実施形態では、太陽電池セルの一方端部に、切り欠き部42に代えて開孔を設ける。
【0074】
図10は、第2実施形態に係る太陽電池デバイスを備える太陽電池モジュールを裏面側からみた図であり、図11は、図10に示す太陽電池モジュールのXI-XI線断面図である。図10でも、図1同様に、受光側保護部材3、裏側保護部材4および封止材5が省略されており、配線部材50を透かして示す。
【0075】
図10および図11に示すように、第2実施形態の太陽電池モジュール100Aは、上述した太陽電池モジュール100において、太陽電池デバイス1に代えて太陽電池デバイス1Aを備える構成で第1実施形態と異なる。第2実施形態の太陽電池モジュール100Aの他の構成は、第1実施形態の太陽電池モジュール100と同様である。
【0076】
太陽電池デバイス1Aは、上述した太陽電池デバイス1において、太陽電池セル2に代えて太陽電池セル2Aを備える構成で第1実施形態と異なる。第2実施形態の太陽電池デバイス1Aの他の構成は、第1実施形態の太陽電池デバイス1と同様である。
【0077】
図12は、図10および図11に示す太陽電池デバイス1Aにおける太陽電池セル2Aを裏面側からみた図である。図12に示すように、第2実施形態の太陽電池セル2Aは、上述した太陽電池セル2において、一方端部に、切り欠き部42に代えて開孔43を備える構成で第1実施形態と異なる。第2実施形態の太陽電池セル2Aの他の構成は、第1実施形態の太陽電池セル2と同様である。
【0078】
詳説すると、太陽電池セル2Aの一方端部、すなわち半導体基板11の一方端部(右端部)は、X方向に沿って直線形状をなし、X方向に沿って延びる直線Lに沿って、X方向に離間して並ぶ複数の開孔43を有する。
【0079】
太陽電池セル2Aの一方端部において、第1電極層27の第1バスバー電極部27bは、半導体基板11の一方端部の形状に沿って、かつ開孔43に沿って形成されている。これにより、開孔43の間には、第1電極層27の少なくとも一部(より具体的には、第1バスバー電極部27bの少なくとも一部)が形成されている。
【0080】
このようにして、太陽電池セル2Aの一方端部、すなわち半導体基板11の一方端部には、開孔43が形成されており、第1電極層27の少なくとも一部(より具体的には、第1バスバー電極部27bの少なくとも一部)と、開孔43とは、X方向に延びる直線L上に配置されている。
【0081】
なお、第1バスバー電極部27bおよび第2バスバー電極部37bは、配線部材50を介して接続されているならば、複数のパーツに分割されていてもよい。
【0082】
この太陽電池セル2Aは、例えば図13に示すように、スクエア形状またはセミスクエア形状の大判半導体ウェハをカットすることにより得られる。
【0083】
図10および図11に示すように、隣り合う太陽電池セル2A,2Aのうちの一方の太陽電池セル2AのY方向(第1方向)における一方端部(右端部)は、他方の太陽電池セル2AのY方向における他方端部(左端部)の下に重なっている。重なり領域Roでは、一方の太陽電池セル2Aの一方端部の開孔43において、他方の太陽電池セル2Aの他方端部の第2電極層37の少なくとも一部(より具体的には、第2バスバー電極部37bの少なくとも一部)が露出する。
【0084】
配線部材50は、重なり領域Roにおいて、一方の太陽電池セル2Aの一方端部に沿って、X方向(第2方向)に延びる直線L上に配置される。これにより、配線部材50は、一方の太陽電池セル2Aの一方端部の開孔43の間における第1電極層27の少なくとも一部(より具体的には、第1バスバー電極部27bの少なくとも一部)に接続される。また、配線部材50は、一方の太陽電池セル2Aの一方端部の開孔43を介して、他方の太陽電池セル2Aの他方端部の第2電極層37の少なくとも一部(より具体的には、第2バスバー電極部37bの少なくとも一部)に接続される。このようにして、配線部材50によって、複数の太陽電池セルが直列に接続される。
【0085】
第2実施形態でも、図6A同様に、隣り合う太陽電池セル2A,2Aのうちの一方の太陽電池セル2Aの一方端部の開孔43の間では、配線部材50は、一方の太陽電池セル2Aの第1電極層27の第1バスバー電極部27bと導電性接着部材52を介して接続されてもよい。一方の太陽電池セル2Aの一方端部の開孔43では、配線部材50は、他方の太陽電池セル2Aの第2電極層37の第2バスバー電極部37bと導電性接着部材52を介して接続されてもよい。
【0086】
或いは、図6B同様に、一方の太陽電池セル2Aの一方端部の開孔43において、他方の太陽電池セル2Aの第2電極層37の第2バスバー電極部37b上に導電性のかさ上げ部材53が設けられて、配線部材50が接続されてもよい。
【0087】
或いは、図6C同様に、一方の太陽電池セル2Aの一方端部の開孔43において、一方の太陽電池セル2Aの端部に絶縁部材54が設けられて、絶縁部材54が一方の太陽電池セル2Aの一方端部の端面と配線部材50との間に配置されてもよい。
【0088】
或いは、図6D同様に、配線部材を用いず、一方の太陽電池セル2Aの一方端部の開孔43において、他方の太陽電池セル2Aの他方端部の第2電極層37の第2バスバー電極部37b上に設けられた導電性接着部材55のみを用いて、一方の太陽電池セル2Aと他方の太陽電池セル2Aとが電気的に接続されてもよい。
【0089】
この場合、図6E同様に、一方の太陽電池セル2Aの一方端部の開孔43において、一方の太陽電池セル2Aの一方端部の端面に第1電極層27を製膜してもよい。
【0090】
以上説明したように、第2実施形態の太陽電池デバイス1Aおよび太陽電池モジュール100Aでも、隣り合う太陽電池セル2A,2Aのうちの一方の太陽電池セル2Aの一方端部(例えば、図11において右端部)が、他方の太陽電池セル2Aの他方端部(例えば、図11において左端部)の下に重なるように、シングリング方式を用いて複数の太陽電池セル2Aが電気的に接続される。これにより、太陽電池デバイス1Aおよび太陽電池モジュール100Aにおける限られた太陽電池セル実装面積に、より多くの太陽電池セル2Aが実装可能になり、光電変換のための受光面積が増え、太陽電池デバイス1Aおよび太陽電池モジュール100Aの出力が向上する。また、太陽電池セル2A間に隙間が生じることがなく、太陽電池デバイス1Aおよび太陽電池モジュール100Aの意匠性が向上する。
【0091】
また、第2実施形態の太陽電池デバイス1Aおよび太陽電池モジュール100Aでも、裏面電極型の太陽電池セルを用いるので、電極や配線が視認されず、太陽電池デバイス1Aおよび太陽電池モジュール100Aの意匠性が更に向上する。
【0092】
また、第2実施形態の太陽電池セル2Aでも、半導体基板11の一方端部(例えば、図12において右端部)に開孔43が形成されており、第1電極層27の少なくとも一部(より具体的には、第1バスバー電極部27bの少なくとも一部)と、開孔43とは、X方向に延びる直線L上に配置されている。これにより、隣り合う太陽電池セル2A,2Aのうちの一方の太陽電池セル2Aの一方端部が、他方の太陽電池セル2Aの他方端部の下に重なるように、シングリング方式を用いて複数の太陽電池セルを配置する場合、隣り合う太陽電池セル2A,2Aの重ね合わせ領域Roにおいて配線部材50を直線L上に配置するだけで、一方の太陽電池セル2Aの一方端部の開孔43の間における第1電極層27の少なくとも一部(より具体的には、第1バスバー電極部27bの少なくとも一部)と、開孔43を介した他方の太陽電池セル2Aの他方端部の第2電極層37の第2バスバー電極部37bの少なくとも一部とを電気的に接続することができる。そのため、裏面電極型の太陽電池セルをシングリング方式を用いて電気的に接続する太陽電池デバイスおよび太陽電池モジュールの接続を簡易化することができる。
【0093】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更および変形が可能である。例えば、上述した実施形態では、フィンガー電極部とバスバー電極部とを有する櫛型形状の第1電極層27および第2電極層37を備える太陽電池2を例示した。しかし、本発明の特徴はこれに限定されず、バスバー電極部を有さずフィンガー電極部のみを有するストライプ形状の第1電極層および第2電極層を備える太陽電池にも適用可能である。この場合、第1電極層の少なくとも一部が、半導体基板の裏面においてY方向(第1方向)における一方端部に配置され、第2電極層の少なくとも一部が、半導体基板の一方主面においてY方向(第1方向)における他方端部に配置されればよい。
【0094】
また、上述した実施形態では、裏面電極型の太陽電池2を例示した。しかし、本発明の特徴はこれに限定されず、両面電極型の太陽電池にも適用可能である。この場合、例えばスルーホールまたはビア等を用いて、第1電極層の少なくとも一部が、半導体基板の裏面においてY方向(第1方向)における一方端部に配置され、第2電極層の少なくとも一部が、半導体基板の一方主面においてY方向(第1方向)における他方端部に配置されればよい。
【0095】
また、上述した実施形態では、太陽電池モジュール100,100Aは、単数の太陽電池デバイス1,1Aを備える形態を例示したが、太陽電池モジュール100,100Aは、例えばX方向に配列された複数の太陽電池デバイス1,1Aを備えてもよい。
【0096】
また、上述した実施形態では、図4に示すようにヘテロ接合型の太陽電池セル2,2Aを含む太陽電池デバイス1,1Aを例示した。しかし、本発明はこれに限定されず、ホモ接合型の太陽電池セル等の種々の太陽電池セルを含む太陽電池デバイスにも適用可能である。
【0097】
また、上述した実施形態では、結晶シリコン材料を用いた太陽電池セル2,2Aを例示したが、これに限定されない。例えば、太陽電池セルの材料としては、ガリウムヒ素(GaAs)等の種々の材料が用いられてもよい。
【符号の説明】
【0098】
1,1A 太陽電池デバイス(太陽電池ストリング)
2,2A 太陽電池セル
3 受光側保護部材
4 裏側保護部材
5 封止材
7 第1領域
7f,8f フィンガー部
7b,8b バスバー部
8 第2領域
11 半導体基板11
13,23,33 真性半導体層
15 反射防止層
25 第1導電型半導体層
25f,35f フィンガー部
25b,35b バスバー部
27 第1電極層
27f 第1フィンガー電極部
27b 第1バスバー電極部
35 第2導電型半導体層
37 第2電極層
37f 第2フィンガー電極部
37b 第2バスバー電極部
41 凸部
42 凹部(切り欠き部)
43 開孔
50 配線部材
52 導電性接着部材
53 導電性かさ上げ部材
54 絶縁部材
55 導電性接着部材(ペースト状)
100,100A 太陽電池モジュール
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13