(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】走行経路生成システム
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20240209BHJP
G05D 1/43 20240101ALI20240209BHJP
【FI】
A01B69/00 303L
A01B69/00 303M
G05D1/02 N
(21)【出願番号】P 2022075017
(22)【出願日】2022-04-28
(62)【分割の表示】P 2019117490の分割
【原出願日】2019-06-25
【審査請求日】2022-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】中林 隆志
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】江戸 俊介
(72)【発明者】
【氏名】宮下 隼輔
(72)【発明者】
【氏名】石見 憲一
【審査官】中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-073399(JP,A)
【文献】特開2018-050491(JP,A)
【文献】特開2015-170223(JP,A)
【文献】特開2019-083703(JP,A)
【文献】特開2016-066293(JP,A)
【文献】特開2019-028688(JP,A)
【文献】実開平06-017411(JP,U)
【文献】特開2001-075646(JP,A)
【文献】特開平02-242602(JP,A)
【文献】米国特許第06216071(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00
G05D 1/00 - 1/02
G08G 1/00 - 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定された作業を行いながら圃場を走行する圃場作業車の走行経路を生成する走行経路生成システムであって、
前記圃場作業車に設けられ、当該圃場作業車の自車位置を検出する位置検出モジュールと、
前記圃場の周囲において前記圃場作業車が前記予め設定された作業とは異なる他の作業を行うときに前記圃場内において停車すべき停車位置に関連付けされた指標と、
前記予め設定された作業の作業中に、前記指標を検出する検出部と、
検出された前記指標に基づいて、前記停車位置を特定する特定部と、
前記自車位置と特定された前記停車位置とに基づいて、前記停車位置まで移動する前記走行経路を生成する走行経路生成部と、を備える走行経路生成システム。
【請求項2】
前記予め設定された作業の状況を示す作業状況情報を取得する作業状況情報取得部と、
前記予め設定された作業の作業中に、前記自車位置と前記作業状況情報とに基づいて、前記圃場作業車が前記予め設定された作業を中断して前記停車位置に移動する移動タイミングを算定する移動タイミング算定部と、
前記移動タイミングにおける前記圃場作業車の位置を予測位置として算定する予測位置算定部と、を備え、
前記走行経路生成部は、前記予測位置から前記停車位置までの前記走行経路を生成する請求項1に記載の走行経路生成システム。
【請求項3】
前記圃場作業車の周囲の情景を撮像した周囲撮像画像を取得する周囲撮像画像取得部を備え、
前記検出部は、前記周囲撮像画像に対して画像認識処理を行って前記指標を検出する請求項1又は2に記載の走行経路生成システム。
【請求項4】
前記検出部は、機械学習されたニューラルネットワークを利用した画像認識処理を行う請求項3に記載の走行経路生成システム。
【請求項5】
前記指標は、前記圃場の周囲に駐車されて前記他の作業を支援する支援車に設けられ、前記支援車を識別可能な表示物である請求項1から4のいずれか一項に記載の走行経路生成システム。
【請求項6】
前記停車位置において、前記予め設定された作業の作業中の第1姿勢よりも前記圃場の地面からの高さが高い第2姿勢で前記他の作業を行う作業ユニットが前記圃場作業車に設けられ、
前記作業ユニットは、前記圃場作業車から前記停車位置までの距離が予め設定された距離以下になった場合に、前記第1姿勢から前記第2姿勢に移行するように構成され、
前記圃場作業車は、前記第1姿勢から前記第2姿勢への前記作業ユニットの移行中に、前記作業ユニットの鉛直上方を含む周囲の情景を撮像した上方撮像画像を取得する上方撮像画像取得部が設けられている請求項1から
5のいずれか一項に記載の走行経路生成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予め設定された作業を行いながら圃場を走行する圃場作業車の走行経路を生成する走行経路生成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場内を走行する技術が利用されてきた。このような技術として、例えば下記に出典を示す特許文献1に記載の自律走行システムがある。
【0003】
特許文献1に記載の自律走行システムでは、作業車両は、測位が可能となる数の測位衛星から測位信号を受信している場合には、当該測位信号に基づいて自律走行を行い、自己位置の測定が困難な数の測位信号しか受信できていない場合には、カメラの撮影画像により直進走行に切り換えて自律走行を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
圃場内を予め設定された作業を行いながら走行する圃場作業車(特許文献1にあっては「作業車両」)は、作業を一時中断して圃場の畦際に停車させることもある。特許文献1に記載の技術は、このような畦際への走行は想定されておらず改善の余地がある。
【0006】
そこで、予め設定された作業を中断して、圃場内の所定の停車位置まで走行する走行経路を生成する走行経路生成システムが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る走行経路生成システムの特徴構成は、予め設定された作業を行いながら圃場を走行する圃場作業車の走行経路を生成する走行経路生成システムであって、前記圃場作業車に設けられ、当該圃場作業車の自車位置を検出する位置検出モジュールと、前記圃場の周囲において前記圃場作業車が前記予め設定された作業とは異なる他の作業を行うときに前記圃場内において停車すべき停車位置に関連付けされた指標と、前記予め設定された作業の作業中に、前記指標を検出する検出部と、検出された前記指標に基づいて、前記停車位置を特定する特定部と、前記自車位置と特定された前記停車位置とに基づいて、前記停車位置まで移動する前記走行経路を生成する走行経路生成部と、を備えている点にある。
【0008】
このような特徴構成とすれば、圃場作業中に、圃場作業車が検出した指標に基づいて、停車位置まで移動する走行経路を生成することができる。したがって、圃場作業車を停車位置に近づいて、停車させることが可能となる。
【0009】
また、前記走行経路生成システムは、前記予め設定された作業の状況を示す作業状況情報を取得する作業状況情報取得部と、前記予め設定された作業の作業中に、前記自車位置と前記作業状況情報とに基づいて、前記圃場作業車が前記予め設定された作業を中断して前記停車位置に移動する移動タイミングを算定する移動タイミング算定部と、前記移動タイミングにおける前記圃場作業車の位置を予測位置として算定する予測位置算定部と、を備え、前記走行経路生成部は、前記予測位置から前記停車位置までの前記走行経路を生成すると好適である。
【0010】
このような構成とすれば、圃場作業の状況に応じて、予め停車位置への移動するタイミングを算定し、この算定結果に応じて移動を開始する予測位置から停車位置までの走行経路を生成することができる。圃場作業車は、このような走行経路に沿って移動することで、停車位置への移動を円滑に行うことが可能となる。
【0011】
また、前記圃場作業車の周囲の情景を撮像した周囲撮像画像を取得する周囲撮像画像取得部を備え、前記検出部は、前記周囲撮像画像に対して画像認識処理を行って前記指標を検出すると好適である。
【0012】
このような構成とすれば、例えば検出すべき指標を予め登録しておき、当該登録しておいた指標と周囲撮像画像とをパターンマッチング等の画像認識処理を行うことで周囲撮像画像内の指標を容易に見つけることができる。また、例えば周囲撮像画像を撮像するカメラを圃場作業車の周囲を監視する監視カメラと併用することで、低コストで実現できる。
【0013】
また、前記検出部は、機械学習されたニューラルネットワークを利用した画像認識処理を行うと好適である。
【0014】
このような構成とすれば、指標が複雑なものであっても容易に検出することが可能となる。したがって、指標の見落としを抑制できる。
【0015】
また、前記指標は、前記圃場の周囲に駐車されて前記他の作業を支援する支援車に設けられ、前記支援車を識別可能な表示物であると好適である。
【0016】
このような構成とすれば、圃場作業車が圃場作業中に、圃場作業車の作業を支援する支援車を見つけ、支援が必要になった場合に圃場作業車が近付いて支援を受けることができる。また、圃場の周囲に複数の支援車が停車している場合であっても、複数の支援車のうち、圃場作業車を支援する支援車を識別して容易に見つけることが可能となる。
【0017】
【0018】
【0019】
また、前記停車位置において、前記予め設定された作業の作業中の第1姿勢よりも前記圃場の地面からの高さが高い第2姿勢で前記他の作業を行う作業ユニットが前記圃場作業車に設けられ、前記作業ユニットは、前記圃場作業車から前記停車位置までの距離が予め設定された距離以下になった場合に、前記第1姿勢から前記第2姿勢に移行するように構成され、前記圃場作業車は、前記第1姿勢から前記第2姿勢への前記作業ユニットの移行中に、前記作業ユニットの鉛直上方を含む周囲の情景を撮像した上方撮像画像を取得する上方撮像画像取得部が設けられていると好適である。
【0020】
このような構成とすれば、自動で停車位置まで移動しながら作業ユニットの姿勢を変更する場合であっても、作業ユニットと周囲の物体との接触を未然に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】コンバインの自動走行の概要を示す図である。
【
図4】走行経路生成システムの構成を示すブロック図である。
【
図7】現在位置から停車位置までの走行経路を示す図である。
【
図8】予測位置から停車位置までの走行経路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る走行経路生成システムは、予め設定された作業を行いながら圃場を走行する圃場作業車の走行経路を生成するように構成される。以下、本実施形態の走行経路生成システム1について、収穫作業(「予め設定された作業」の一例)を行いながら、圃場を走行するコンバイン10(「圃場作業車」の一例)を例に挙げて説明する。
【0023】
図1は、本実施形態のコンバイン10の側面図である。なお、以下では、本実施形態のコンバイン10について所謂普通型コンバインを例に挙げて説明する。もちろん、コンバイン10は自脱型コンバインであっても良い。
【0024】
ここで、理解を容易にするために、本実施形態では、特に断りがない限り、「前」(
図1に示す矢印Fの方向)は機体前後方向(走行方向)における前方を意味し、「後」(
図1に示す矢印Bの方向)は機体前後方向(走行方向)における後方を意味するものとする。また、左右方向または横方向は、機体前後方向に直交する機体横断方向(機体幅方向)を意味するものとする。更に、「上」(
図1に示す矢印Uの方向)及び「下」(
図1に示す矢印Dの方向)は、機体の鉛直方向(垂直方向)での位置関係であり、地上高さにおける関係を示すものとする。
【0025】
図1に示すように、コンバイン10は、走行車体11、クローラ式の走行装置12、運転部13、脱穀装置14、穀粒タンク15、収穫部H、搬送装置16、穀粒排出装置17(「作業ユニット」の一例)、位置検出モジュール18を備えている。
【0026】
走行装置12は、走行車体11(以下では「車体11」と称する)の下部に備えられる。コンバイン10は、走行装置12によって自走可能に構成されている。運転部13、脱穀装置14、及び穀粒タンク15は、走行装置12の上側に備えられ、車体11の上部を構成する。運転部13は、コンバイン10を運転する運転者やコンバイン10の作業を監視する監視者が搭乗可能である。通常、運転者と監視者とは兼務される。なお、運転者と監視者が別人の場合、監視者は、コンバイン10の機外からコンバイン10の作業を監視していても良い。
【0027】
穀粒排出装置17は、穀粒タンク15の後下部に連結されている。また、位置検出モジュール18は、運転部13の前上部に取り付けられ、コンバイン10の自車位置を検出する。位置検出モジュール18は、GNSSモジュールとして構成されている衛星測位モジュールを用いることが可能である。この位置検出モジュール18は、人工衛星GS(
図2参照)からのGPS信号やGNSS信号(本実施形態では「GPS信号」とする)を受信するための衛星用アンテナを有している。なお、位置検出モジュール18には、衛星航法を補完するために、ジャイロ加速度センサや磁気方位センサを組み込んだ慣性航法モジュールを含めることができる。もちろん、慣性航法モジュールは、位置検出モジュール18とは別の場所に設けてもよい。位置検出モジュール18は、上述したGPS信号、慣性航法モジュールの検出結果に基づいて、コンバイン10の位置である自車位置を検出する。
位置検出モジュール18により検出された自車位置は、コンバイン10の自動走行(自律走行)や、後述する各機能部に利用される。
【0028】
収穫部Hは、コンバイン10における前部に備えられる。搬送装置16は、収穫部Hの後側に設けられる。収穫部Hは、切断機構19及びリール20を有している。切断機構19は、圃場の植立穀稈を刈り取る。リール20は、回転駆動しながら収穫対象の植立穀稈を掻き込む。このような構成により、収穫部Hは、圃場の穀物(農作物の一種)を収穫可能となる。コンバイン10は、収穫部Hによって圃場の穀物を収穫しながら走行装置12によって走行する作業走行が可能である。
【0029】
切断機構19により刈り取られた刈取穀稈は、搬送装置16によって脱穀装置14へ搬送される。脱穀装置14において、刈取穀稈は脱穀処理される。脱穀処理により得られた穀粒は、穀粒タンク15に貯留される。穀粒タンク15に貯留された穀粒は、必要に応じて、穀粒排出装置17により機外に排出される。なお、このコンバイン10は、車体11と走行装置12との間に、油圧式の傾斜機構110が設けられており、走行面(圃場面)に対して左右方向及び前後方向で車体11を傾斜させることが可能である。
【0030】
図2は、コンバイン10の自動走行の概要を示す図である。
図2に示されるように、コンバイン10は、圃場において設定された走行経路に沿って自動走行を行う。この自動走行には、上述した位置検出モジュール18により取得された自車位置を示す情報(自車位置情報)が利用される。
【0031】
本実施形態のコンバイン10は、圃場において以下の手順に従って収穫作業を行う。
【0032】
まず、運転者兼監視者は、コンバイン10を手動で操作し、
図2に示すように、圃場内の外周部分において、圃場の境界線に沿って周回するように収穫走行を行う。これにより既刈地(既作業地)となった領域は、外周領域SAとして設定される。外周領域SAの内側に未刈地(未作業地)のまま残された領域は、作業対象領域CAとして設定される。
【0033】
このとき、外周領域SAの幅をある程度広く確保するために、運転者は、コンバイン10を2~3周走行させる。この走行においては、コンバイン10が1周する毎に、コンバイン10の作業幅分だけ外周領域SAの幅が拡大する。例えば、最初の2~3周の走行が終わると、外周領域SAの幅はコンバイン10の作業幅の2~3倍程度の幅となる。なお、運転者による最初の周回走行は2~3周でなく、それ以上(4周以上)であっても良いし、1周であっても良い。
【0034】
外周領域SAは、作業対象領域CAにおいて収穫走行を行うときに、コンバイン10が方向転換するためのスペースとして利用される。また、外周領域SAは、収穫走行を一旦終えて、穀粒の排出場所へ移動する際や、燃料の補給場所へ移動する際等の移動用のスペースとしても利用される。
【0035】
図2には、コンバイン10が収穫した穀粒が排出され、運搬する搬送車CVも示される。穀粒を排出する際、コンバイン10は搬送車CV(「支援車」の一例)の近傍へ移動し、穀粒排出装置17を介して穀粒を搬送車CVへ排出する。
【0036】
上述した手動操作の走行により、外周領域SA及び作業対象領域CAが設定されると、
図3に示すように、作業対象領域CAにおける走行経路が算定される。算定された走行経路は、作業走行のパターンに基づいて順次設定され、設定された走行経路に沿って走行するように、コンバイン10が自動走行制御される。
【0037】
図4は、本実施形態の走行経路生成システム1の構成を示すブロック図である。
図4に示されるように、走行経路生成システム1は、上述した位置検出モジュール18に加え、指標2、検出部30、特定部32、圃場情報取得部34、走行経路生成部36、作業状況情報取得部40、移動タイミング算定部42、予測位置算定部44、周囲撮像画像取得部50の各機能部を備えている。これらの各機能部は、走行経路の生成に係る処理を行うために、CPUを中核部材としてハードウェア又はソフトウェア或いはその両方で構築されている。
【0038】
指標2は、圃場の周囲においてコンバイン10が収穫作業とは異なる他の作業を行うときに圃場内において停車すべき停車位置に関連付けされた状態で設けられる。収穫作業とは異なる他の作業とは、コンバイン10が主に行う作業を中断して行う当該作業以外の作業であって、本実施形態では、例えばコンバイン10の穀粒タンク15に貯留された穀粒を、穀粒排出装置17により機外に排出する排出作業が相当する。また、他の作業は例えばコンバイン10に燃料を補給する燃料補給作業等であっても良い。このような他の作業は、コンバイン10が圃場内において予め設定された停車位置に停止した状態で行われる。指標2は、このような停車位置をコンバイン10が把握できるように当該停車位置と関連付けされた状態で設けられる。このような指標2は、圃場を囲む畦や、圃場を囲む道等に設けられ、これらの何れかに設けられた指標2に隣接する圃場内の区画が停車位置にあたる。
【0039】
本実施形態では、指標2は圃場の周囲に駐車されて排出作業を支援する搬送車CVに設けられ、搬送車CVを識別可能な表示物にあたる。上述したように、搬送車CVは圃場の周囲の畦や道に駐車され、コンバイン10の穀粒タンク15に貯留された穀粒が排出される。指標2は、コンバイン10が穀粒を排出する対象である搬送車CVを識別可能とする表示物にあたる。このような表示物としては、例えば
図5に示すような搬送車CV自体に、搬送車CVを識別するQRコード(登録商標)や文字(例えば「○○ファーム」等)を付されたものとすることが可能である。あるいは、
図6に示すように、QRコード(登録商標)や文字を付した看板を停車位置に隣接する畦や道に建てても良い。また、図示はしないが、搬送車CVのナンバープレートに記載されるナンバーを指標2として利用することも可能である。
【0040】
検出部30は、収穫作業の作業中に、上述した指標2を検出する。収穫作業の作業中とは、コンバイン10が圃場において収穫作業をしながら走行している最中である。したがって、検出部30はコンバイン10が圃場において収穫作業をしながら走行している最中に、指標2を検出する。このように作業中に指標2を検出することで、指標2を検出するために収穫作業を中断する必要がない。したがって、作業効率が悪化することを抑制できる。
【0041】
ここで、コンバイン10と指標2との位置関係によっては、検出部30はコンバイン10が圃場において収穫作業をしながら走行している最中に、指標2を検出できないことも想定される。そこで、
図3に示すように、作業対象領域CAにおいて収穫作業を行う場合には、作業幅で規定された領域を一つおきに走行して、当該一つおきの走行が終了した場合に、残りの領域を走行すると良い。これにより、コンバイン10が外周領域SAにおいて旋回走行を行う場合に、作業対象領域CAの一方の端部(
図3にあっては下側の端部)に向かう旋回のみとならず、作業対象領域CAの他方の端部(
図3にあっては上側の端部)に向かう旋回も行うことになるので、検出部30が指標2を検出し易くできる。
【0042】
ここで、指標2として、上述したようなQRコード(登録商標)や文字等を用いる場合には、コンバイン10に設けられるカメラがコンバイン10の周囲の情景を撮像するように構成すると良く、このカメラがコンバイン10の走行時に撮像して得た周囲撮像画像を周囲撮像画像取得部50が取得すると良い。
【0043】
係る構成においては、検出部30は、周囲撮像画像に対して画像認識処理を行って指標2を検出することが可能である。この画像認識処理は、例えば予め検出部30(或いは図示しない記憶部)にコンバイン10の停車位置と関連付けされる指標2を登録しておき、登録された指標2が周囲撮像画像に含まれるか否かを例えばパターンマッチングにより検出することが可能である。
【0044】
あるいは、検出部30は、機械学習されたニューラルネットワークを利用した画像認識処理を行うように構成することも可能である。ニューラルネットワークとは生物の脳の神経細胞をモデルとしたアルゴリズムであって、機械学習の一つである。機械学習としては、例えばニューラルネットワークの階層を深めたアルゴリズムである深層学習がある。もちろん、深層学習以外の機械学習を適用することも可能である。
【0045】
特定部32は、検出された指標2に基づいて、停車位置を特定する。上述したように検出部30によりコンバイン10の停車位置に関連付けされた指標2が検出される。検出結果が特定部32に伝達される。特定部32は、例えば
図6に示されるように、圃場における指標2が設けられた畦や道との離接場所を停車位置として特定すると良い。もちろん、指標2に、当該指標2を基準として設定された停車位置を示す情報を含ませておいても良い。なお、指標2に基づく停車位置の特定は、例えば周囲撮像画像に、当該周囲撮像画像が得られた位置情報(GPS信号に基づく位置情報)を関連付けておき、互いに異なる複数の場所から得た周囲撮像画像を用いて公知の三角測量法により行うことが可能である。
【0046】
圃場情報取得部34は、圃場の状態を示す圃場情報を取得する。圃場の状態とは、コンバイン10により作業が行われた否かを示す情報や、圃場においてコンバイン10の走行に支障をきたすような障害物を示す情報である。本実施形態では、圃場情報は、圃場においてコンバイン10が収穫作業を行った既作業地を示す情報を含む。このような情報は、コンバイン10が収穫作業をしながら走行した際の自車位置に関連付けて生成すると良い。
【0047】
走行経路生成部36は、自車位置と特定された停車位置と圃場情報とに基づいて、コンバイン10が停車位置まで移動する走行経路を生成する。自車位置は位置検出モジュール18により検出され、自車位置を示す情報として伝達される。圃場情報は圃場情報取得部34により取得され、伝達される。本実施形態では、圃場情報に、圃場においてコンバイン10が収穫作業を行った既作業地を示す情報が含まれる。停車位置は、特定部32により検出部30が検出した指標2に基づき特定される。そこで、走行経路生成部36は、コンバイン10の現在の位置から、既作業地を通って指標2に関連付けされた停車位置まで移動する走行経路を生成する。
【0048】
図7には、コンバイン10の現在位置から停車位置まで移動する走行経路の一例が示される。コンバイン10は、
図7に示されるような走行経路生成部36により生成された走行経路に沿って走行することで、停車位置に適切に移動し、穀粒を搬送車CVに排出することが可能となる。
【0049】
ここで、
図7では、コンバイン10の現在位置から停車位置まで移動する走行経路が示されるが、コンバイン10の現在位置に代えて、収穫作業の状況に応じて予測した位置から停車位置まで移動する走行経路を予め生成し、当該予測した位置に達した際に、その位置から停車位置まで走行するように構成することも可能である。
【0050】
係る場合、作業状況情報取得部40が、収穫作業の状況を示す作業状況情報を取得すると良い。収穫作業の状況を示す作業状況情報とは、例えば穀粒タンク15に貯留される穀粒の量や、穀粒タンク15の貯留度を示す情報である。このような情報は、穀粒タンク15に備えられるセンサの検出結果として取得すると好適である。
【0051】
また、移動タイミング算定部42が、収穫作業の作業中に、自車位置と作業状況情報とに基づいて、コンバイン10が収穫作業を中断して停車位置に移動する移動タイミングを算定すると良い。自車位置(自車位置を示す情報)は位置検出モジュール18から伝達される。作業状況情報は、作業状況情報取得部40から伝達される。移動タイミング算定部42は、これらの情報から、例えば穀粒タンク15が満杯になるタイミングを算定し、このタイミングよりも前に停車位置への移動を開始する移動タイミングを設定すると良い。
このような移動タイミングは、例えば穀粒タンク15が満杯になる直前に走行する外周領域SAのいずれかとするか、あるいは穀粒タンク15が満杯になる以前に走行する外周領域SAのうち、停車位置に近い側の外周領域SAとすると好適である。
【0052】
更に、予測位置算定部44が、移動タイミングにおけるコンバイン10の位置を予測位置として算定すると好適である。移動タイミングは移動タイミングを示す情報として移動タイミング算定部42から伝達される。予測位置算定部44は、このような移動タイミングにおけるコンバイン10の位置を予測位置として算定する。
【0053】
走行経路生成部36は、予測位置から停車位置までの走行経路を生成する。
図8には、コンバイン10の予測位置から停車位置まで移動する走行経路の一例が示される。コンバイン10は、
図8に示されるような走行経路生成部36により生成された走行経路に沿って走行することで、予測位置から停車位置に適切に移動し、穀粒を搬送車CVに排出することが可能となる。
【0054】
〔その他の実施形態〕
上記実施形態では、圃場作業車がコンバイン10であるとして説明したが、圃場作業車はコンバイン10とは異なる物であっても良い。圃場作業車が、例えば田植機である場合には、停車位置は予備苗が仮置きされた畦や道に隣接する場所に設定することも可能であるし、圃場作業車がトラクタである場合にはトラクタに搭載される作業ユニットが仮置きされた畦や道に隣接する場所に設定することも可能である。もちろん、これら以外の車両であっても良い。
【0055】
上記実施形態では、作業状況情報取得部40が作業状況情報を取得し、移動タイミング算定部42が自車位置と作業状況情報とに基づいて停車位置に移動する移動タイミングを算定し、予測位置算定部44が移動タイミングにおけるコンバイン10の予測位置を算定するとして説明した。しかしながら、走行経路生成システム1は、作業状況情報取得部40、移動タイミング算定部42、予測位置算定部44を備えずに構成することも可能である。係る場合、走行経路生成部36は、コンバイン10の現在位置から停車位置まで移動する走行経路を算定するように構成すると良い。
【0056】
上記実施形態では、周囲撮像画像取得部50がコンバイン10の周囲の情景を撮像した周囲撮像画像を取得し、検出部30が周囲撮像画像に対して画像認識処理を行って指標2を検出するとして説明した。しかしながら、周囲撮像画像取得部50を備えずに構成することも可能である。係る場合、例えば検出部30は指標2をレーザーや、その他の方法で検出すると良い。
【0057】
上記実施形態では、検出部30は、機械学習されたニューラルネットワークを利用した画像認識処理を行うとして説明したが、機械学習を行わないニューラルネットワークを利用することも可能である。
【0058】
上記実施形態では、指標2がQRコード(登録商標)や文字を用いて構成されるとして説明したが、指標2は支援車のボディに他の表示物をペイントして構成しても良いし、旗やのぼりを用いて構成しても良い。更には、支援車を識別可能な支援車の車種や色や形状等を利用して指標2とすることも可能である。
【0059】
上記実施形態では、走行経路生成部36は、既作業地を通って停車位置まで移動する走行経路を生成するとして説明したが、走行経路生成部36は、未作業地を通って停車位置まで移動する走行経路を生成するように構成しても良い。係る場合、未作業地を通る際に、収穫作業を行いながら走行すると好適である。
【0060】
上記実施形態では、コンバイン10には穀粒排出装置17が設けられるとして説明した。穀粒排出装置17は、コンバイン10が収穫作業の作業中は穀粒タンク15の上方に位置する第1姿勢で保持される。一方、穀粒タンク15に貯留された穀粒を搬送車CVに排出する際には、穀粒排出装置17(穀粒排出装置17が有するアンローダ)は圃場の地面からの高さが第1姿勢よりも高い第2姿勢に保持される(すなわち、第1姿勢から回転及び上昇を行って第2姿勢に移行される)。係る第1姿勢から第2姿勢への移行は、コンバイン10が停車位置に停車してから行われる場合と、コンバイン10から停車位置までの距離が予め設定された距離以下になった場合に、第1姿勢から第2姿勢に移行するように構成される場合とがある。
【0061】
前者の場合、何ら支障はないが、後者の場合には停車位置への走行中に次第に地面からの高さが高くなることから、周囲の物体(例えば電柱や電線等)との接触に注意する必要がある。そこで、コンバイン10は、第1姿勢から第2姿勢への穀粒排出装置17の移行中に、穀粒排出装置17の鉛直上方を含む周囲の情景を撮像した上方撮像画像を取得する上方撮像画像取得部を備えると好適である。このような構成とすれば、上方撮像画像に例えば画像認識処理を行って穀粒排出装置17よりも高い位置にある物体を検出し、当該高い位置の物体が検出された場合には走行経路生成部36が当該物体との接触を回避できるように改めて走行経路を生成すると良い。そこで、上方撮像画像が取得された位置を位置検出モジュール18が検出し、画像認識処理を行って穀粒排出装置17よりも高い位置にある物体の位置を算定すると好適である。これにより、当該物体を適切に回避することが可能となる。なお、上方撮像画像取得部は穀粒排出装置17に設けても良いし、上述した周囲撮像画像を撮像するカメラの光軸を変更して利用しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、予め設定された作業を行いながら圃場を走行する圃場作業車の走行経路を生成する走行経路生成システムに用いることが可能である。
【符号の説明】
【0063】
1:走行経路生成システム
2:指標
10:コンバイン(圃場作業車)
17:穀粒排出装置(作業ユニット)
18:位置検出モジュール
30:検出部
32:特定部
34:圃場情報取得部
36:走行経路生成部
40:作業状況情報取得部
42:移動タイミング算定部
44:予測位置算定部
50:周囲撮像画像取得部
CV:搬送車(支援車)