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特許7433370複合基板及びその作製方法、半導体デバイス、並びに電子機器
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】複合基板及びその作製方法、半導体デバイス、並びに電子機器
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/20 20060101AFI20240209BHJP
   H01L 21/265 20060101ALI20240209BHJP
   H01L 21/324 20060101ALI20240209BHJP
   H01L 21/338 20060101ALI20240209BHJP
   H01L 29/778 20060101ALI20240209BHJP
   H01L 29/812 20060101ALI20240209BHJP
【FI】
H01L21/20
H01L21/265 Z
H01L21/265 Q
H01L21/324 X
H01L29/80 H
【請求項の数】 16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022108410
(22)【出願日】2022-07-05
(65)【公開番号】P2023009026
(43)【公開日】2023-01-19
【審査請求日】2022-08-15
(31)【優先権主張番号】202110762279.7
(32)【優先日】2021-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503433420
【氏名又は名称】華為技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】HUAWEI TECHNOLOGIES CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Huawei Administration Building, Bantian, Longgang District, Shenzhen, Guangdong 518129, P.R. China
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133569
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 進
(72)【発明者】
【氏名】ボ・ガオ
(72)【発明者】
【氏名】ボニン・フアン
(72)【発明者】
【氏名】ユシ・ワン
【審査官】宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-216555(JP,A)
【文献】特表2008-501229(JP,A)
【文献】特開2005-353771(JP,A)
【文献】特開2013-212951(JP,A)
【文献】特表2018-530925(JP,A)
【文献】特表2017-525134(JP,A)
【文献】特開2018-014372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/20
H01L 21/265
H01L 21/324
H01L 21/338
H01L 29/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体層と、
前記担体層上に配置され、前記担体層に接合された炭化ケイ素層であって、前記炭化ケイ素層の材料が単結晶炭化ケイ素を含む、炭化ケイ素層と、
導電性媒体または金属を含む、前記炭化ケイ素層と前記担体層との間に位置する遷移層であって、前記炭化ケイ素層及び前記担体層が別々に接合されている、遷移層と、
前記炭化ケイ素層の、前記担体層から離れた側に配置された少なくとも1つのエピタキシャル層と、
を含む、複合基板。
【請求項2】
前記炭化ケイ素層が前記遷移層に接合されて第2の接合層を形成し、前記担体層が前記遷移層に接合されて第3の接合層を形成し、
前記遷移層の厚さと、前記第2の接合層の厚さと、前記第3の接合層の厚さとの合計が100nm以下である、
請求項に記載の複合基板。
【請求項3】
前記エピタキシャル層の材料がIII-V族窒化物を含む、請求項1に記載の複合基板。
【請求項4】
前記炭化ケイ素層の前記材料が4H炭化ケイ素又は6H炭化ケイ素を含む、請求項1に記載の複合基板。
【請求項5】
前記担体層の材料の融点が1260℃以上である、請求項1に記載の複合基板。
【請求項6】
前記炭化ケイ素層の厚さが350μm以下であり、
前記担体層の厚さが3000μm以下であり、
及び/又は
前記少なくとも1つのエピタキシャル層の厚さが3000μm以下である、
請求項1に記載の複合基板。
【請求項7】
注入されたイオンが予め設定された深さに達するように、単結晶炭化ケイ素インゴットに前記単結晶炭化ケイ素インゴットの裏面から水素イオン注入を行い、前記予め設定された深さに欠陥層を形成し、前記欠陥層の、前記単結晶炭化ケイ素インゴットの前記裏面に面する側に炭化ケイ素層を形成するステップと、
前記単結晶炭化ケイ素インゴットの前記裏面を担体層に接合して第1の複合構造を形成するステップと、
前記欠陥層に沿って前記炭化ケイ素層が剥離されるように、前記第1の複合構造に対して第1のアニール処理を行い、第2の複合構造を形成するステップであって、前記第2の複合構造が前記欠陥層から分離された損傷層と、互いに接合された前記炭化ケイ素層及び前記担体層と、を含む、ステップと、
前記炭化ケイ素層の、前記担体層から離れた表面に対して表面処理を行い、前記損傷層を除去して第3の複合構造を形成するステップと、
前記第3の複合構造に対して第2のアニール処理を行い、前記炭化ケイ素層における前記水素イオン注入に起因して引き起こされた欠陥を修復するステップであって、前記第2のアニール処理のアニール温度が前記第1のアニール処理の温度よりも高い、ステップと、
前記炭化ケイ素層の、前記担体層から離れた前記表面上に少なくとも1つのエピタキシャル層を形成して、複合基板を形成するステップと、
含み、
前記単結晶炭化ケイ素インゴットの前記裏面を担体層に接合する前記ステップが、
前記単結晶炭化ケイ素インゴットの前記裏面又は前記担体層上に導電性媒体または金属を含む遷移層を形成するステップと、
前記遷移層を用いることによって前記単結晶炭化ケイ素インゴットの前記裏面と前記担体層とを接合するステップと、を含み、
前記複合基板が前記炭化ケイ素層と前記担体層との間に位置する前記遷移層をさらに含む、複合基板の作製方法。
【請求項8】
前記第3の複合構造に対して第2のアニール処理を行う前記ステップの前に、
前記炭化ケイ素層の、前記担体層から離れた前記表面上にカーボン保護膜を形成するステップをさらに含み、
前記炭化ケイ素層の、前記担体層から離れた前記表面上に少なくとも1つのエピタキシャル層を形成する前記ステップの前に、前記カーボン保護膜を除去するステップをさらに含む、
請求項に記載の複合基板の作製方法。
【請求項9】
前記単結晶炭化ケイ素インゴットの格子方向が<0001>格子方向に対して0°以上8°以下の範囲で偏向され、
及び/又は
前記水素イオン注入のエネルギーが100keV以上であり、注入ドーズ量が1e16cm-2以上であり、イオン注入角度が5°以上20°以下である、
請求項に記載の複合基板の作製方法。
【請求項10】
前記炭化ケイ素層の、前記担体層から離れた表面に対して表面処理を行い、前記損傷層を除去する前記ステップが、
湿式洗浄、プラズマ活性化、高温アニール、化学機械研磨、機械研磨、反応性イオンエッチング、イオンビームエッチング、又はイオンビームグレージング研磨のうちの少なくとも1つを使用することによって、前記炭化ケイ素層の、前記担体層から離れた前記表面を処理し、前記損傷層を除去するステップを含む、
請求項に記載の複合基板の作製方法。
【請求項11】
前記第1のアニール処理の前記温度が1000℃以上であり、前記第2のアニール処理の前記アニール温度が1200℃以上である、請求項に記載の複合基板の作製方法。
【請求項12】
前記炭化ケイ素層の、前記担体層から離れた表面に対して表面処理を行った前記ステップの後に、前記炭化ケイ素層の、前記担体層から離れた前記表面における粗さが0.5nm以下となる、請求項に記載の複合基板の作製方法。
【請求項13】
前記第1のアニール処理のアニール環境がN、Ar、又はHのうちの少なくとも1つであり、
前記第2のアニール処理のアニール環境が真空、N、Ar、又はCを含むガスのうちの少なくとも1つである、
請求項に記載の複合基板の作製方法。
【請求項14】
請求項1に記載の複合基板と、ヘテロ接合とを含む半導体デバイスであって、前記ヘテロ接合が前記複合基板の少なくとも1つのエピタキシャル層の、前記担体層から離れた側に配置されている、半導体デバイス。
【請求項15】
請求項14に記載の半導体デバイスと、アンテナとを備え、前記半導体デバイスが高周波信号を増幅して、前記増幅された高周波信号を外部放射するために前記アンテナに出力するように構成される、電子機器。
【請求項16】
請求項14に記載の半導体デバイスと、プリント回路基板とを備え、前記半導体デバイスが前記プリント回路基板に結合され、
前記半導体デバイスにおける担体層の材料が導電性材料である、
電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、半導体技術の分野に関し、詳細には、複合基板及びその作製方法、半導体デバイス、並びに電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウムガリウム窒素(AlGaN、x≧0、y≧0)材料は、広いバンドギャップ、高い電子飽和速度、及び高い臨界破壊電界強度などの優れた物理的特徴を有するため、AlGaN材料は、通常、高電圧及び高周波デバイスを製造するために使用される。これに基づいて、AlGaN半導体デバイスは、高いスイッチング速度及び小さいオン抵抗などの優れた特徴のために、航空宇宙、無線通信、光電変換、及び充電アダプタなどの分野において広く応用されている。しかしながら、AlGaN材料は真性結晶を有さず、ヘテロエピタキシ法を使用することによって得られなければならない。したがって、AlGaNヘテロエピタキシ技術は、AlGaN半導体デバイス産業の発展を制限する重要な技術の1つとなっている。
【0003】
現在、AlGaN半導体デバイスでは、AlGaN複合基板は、積層されたAlGaNと炭化ケイ素(SiC)、積層されたAlGaNとアルミナ(Al)、又は積層されたAlGaNとシリコン(Si)などのタイプを有する。ここで、SiCとAlGaNは、格子不整合が最小で、熱不整合が最小である。したがって、積層されたAlGaNとSiCを含むAlGaN複合基板は、低い欠陥密度を有し、高品質なAlGaN複合基板の理想的な構造となる。
【0004】
しかしながら、SiC結晶の成長方法及び歩留まりの制限により、SiCは比較的高い製造コストを有する。この場合、積層されたAlGaNとSiCを含む複合基板は、比較的高い製造コストを有し、これは、AlGaN半導体デバイスの工業製品及び民生製品における幅広い応用を制限する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態は、SiCの高コストに起因するAlGaN半導体デバイスの高コストの問題を解決するために、複合基板及びその作製方法、半導体デバイス、並びに電子機器を提供する。
【0006】
前述の目的を達成するために、本出願は、以下の技術的解決策を用いる。
【0007】
第1の態様によると、複合基板が提供され、複合基板は、担体層と、担体層上に配置され、担体層に接合された炭化ケイ素層であって、炭化ケイ素層の材料が単結晶炭化ケイ素を含む、炭化ケイ素層と、炭化ケイ素層の、担体層から離れた側に配置された少なくとも1つのエピタキシャル層と、を含む。
【0008】
本出願の実施形態において提供される複合基板の作製方法では、単結晶炭化ケイ素インゴットは、切断損失を効果的に低減し、歩留まり及び切断効率を向上させるために、水素イオン注入方式で切断される。加えて、研磨された後の残りの単結晶炭化ケイ素インゴットは、そのまま単結晶炭化ケイ素インゴットとして用いられてもよい。したがって、単結晶GaN基板及び単結晶SiC基板と比較して、本出願の実施形態において提供される複合基板の作製方法を使用することによって作製された複合基板は、炭化ケイ素インゴットの利用率を向上し、コストを低減することができる。加えて、本出願の本実施形態において提供される複合基板の表面は、エピタキシャル層(III-V族窒化物)を含む。半導体デバイスにおいて別の膜層を非単結晶SiC基板上に成長させた場合と比較して、半導体デバイスにおいて別の膜層を本出願の本実施形態において提供される複合基板のエピタキシャル層上に成長させると、炭化ケイ素層とエピタキシャル層は、格子不整合が小さく、小さい熱不整合が小さくなる。したがって、別の膜層をエピタキシャル層上に成長させた場合、エピタキシャル層の欠陥密度が低く、高品質のさらなるエピタキシャル製造要件及び半導体デバイスの製造要件を満たす。
【0009】
可能な実施形態では、炭化ケイ素層は、担体層に直接接触して接合される。このようにして、炭化ケイ素層と担体層との間の距離は小さく、複合基板の熱伝導率は良好である。
【0010】
可能な実施形態では、炭化ケイ素層と担体層との間を直接接触させて接合することによって形成される第1の接合層の厚さは、5nm以下である。第1の接合層の厚さが過度に大きいと、複合基板の熱伝導率に影響を与える。
【0011】
可能な実施形態では、複合基板は、遷移層をさらに含む。遷移層は、炭化ケイ素層と担体層との間に位置する。炭化ケイ素層及び担体層は、遷移層に別々に接合される。炭化ケイ素層と担体層は、良好な接合効果及び低い接合困難性を実施するために、遷移層を使用することによって接合される。
【0012】
可能な実施形態では、炭化ケイ素層は、遷移層に接合されて第2の接合層を形成し、担体層は、遷移層に接合されて第3の接合層を形成する。遷移層の厚さと、第2の接合層の厚さと、第3の接合層の厚さとの合計は、100nm以下である。遷移層の厚さと、第2の接合層の厚さと、第3の接合層の厚さとの合計が過度に大きいと、複合基板の熱伝導率に影響を与える。
【0013】
可能な実施形態では、エピタキシャル層の材料は、III-V族窒化物を含む。III-V族窒化物と炭化ケイ素層は、格子不整合が小さく、熱不整合が小さい。
【0014】
可能な実施形態では、炭化ケイ素層の材料は、4H炭化ケイ素又は6H炭化ケイ素を含む。ここで、4H又は6H炭化ケイ素とエピタキシャル層は、熱不整合が小さく、格子不整合が小さい。
【0015】
可能な実施形態では、担体層の材料の融点は、1260℃以上である。このようにして、アニール処理プロセスにおいて担体層が溶融して性能が損なわれることを防止することができる。
【0016】
可能な実施形態では、炭化ケイ素層の厚さは、資源の浪費及び複合基板の過度に大きな厚さを回避するために、350μm以下である。
【0017】
可能な実施形態では、資源の浪費及び複合基板の過度に大きな厚さを回避するために、担体層の厚さは3000μm以下である。
【0018】
可能な実施形態では、少なくとも1つのエピタキシャル層の厚さは、資源の浪費及び複合基板の過度に大きな厚さを回避するために、3000μm以下である。
【0019】
第2の態様によると、注入されたイオンが予め設定された深さに達するように、単結晶炭化ケイ素インゴットに単結晶炭化ケイ素インゴットの裏面から水素イオン注入を行うステップと、予め設定された深さに欠陥層を形成するステップと、欠陥層の、単結晶炭化ケイ素インゴットの裏面に面する側に炭化ケイ素層を形成するステップと、単結晶炭化ケイ素インゴットの裏面を担体層に接合して第1の複合構造を形成するステップと、欠陥層に沿って炭化ケイ素層が剥離されるように、第1の複合構造に対して第1のアニール処理を行い、第2の複合構造を形成するステップであって、第2の複合構造が欠陥層から分離された損傷層と、互いに接合された前記炭化ケイ素層及び担体層と、を含む、ステップと、炭化ケイ素層の、担体層から離れた表面に対して表面処理を行い、損傷層を除去して第3の複合構造を形成するステップと、第3の複合構造に対して第2のアニール処理を行い、炭化ケイ素層における水素イオン注入に起因して引き起こされた欠陥を修復するステップであって、第2のアニール処理のアニール温度が第1のアニール処理の温度よりも高いステップと、炭化ケイ素層の、担体層から離れた表面上に少なくとも1つのエピタキシャル層を形成して、複合基板を形成するステップと、を含む複合基板の作製方法が提供される。
【0020】
第1の態様による複合基板は、本出願の本実施形態において提供される複合基板の作製方法を使用することによって得られる可能性がある。本方法の有益な効果は、複合基板の有益な効果と同じである。本明細書では詳細は再び説明されない。
【0021】
可能な実施形態では、第3の複合構造に対して第2のアニール処理を行うステップの前に、本作製方法は、炭化ケイ素層の、担体層から離れた表面上にカーボン保護膜を形成するステップをさらに含む。炭化ケイ素層の、担体層から離れた表面上に少なくとも1つのエピタキシャル層を形成するステップの前に、本作製方法は、カーボン保護膜を除去するステップをさらに含む。カーボン保護膜は、炭化ケイ素層の、担体層から離れた表面上に形成され、後続の高温アニールプロセスにおける高温による炭化ケイ素層中の炭素蒸発及びケイ素析出を回避し、したがって炭化ケイ素層の、担体層から離れた表面における粗さを回避する。
【0022】
可能な実施形態では、単結晶炭化ケイ素インゴットの裏面を担体層に接合するステップは、単結晶炭化ケイ素インゴットの裏面又は担体層上に遷移層を形成するステップと、遷移層を用いることによって単結晶炭化ケイ素インゴットの裏面と担体層とを接合するステップとを含み、複合基板が炭化ケイ素層と担体層との間に位置する遷移層をさらに含む。
【0023】
可能な実施形態では、単結晶炭化ケイ素インゴットの裏面を担体層に接合するステップは、単結晶炭化ケイ素インゴットの裏面を担体層に直接接触させて接合するステップを含む。
【0024】
可能な実施形態では、単結晶炭化ケイ素インゴットの格子方向は、<0001>格子方向に対して0°以上8°以下の範囲で偏向されている。
【0025】
可能な実施形態では、水素イオン注入のエネルギーは、100keV以上であり、注入ドーズ量は、1e16cm-2以上であり、イオン注入角度は、5°以上20°以下である。このようにして、欠陥層が全体的に平坦な層構造として形成され得る。
【0026】
可能な実施形態では、炭化ケイ素層の、担体層から離れた表面に対して表面処理を行い、損傷層を除去するステップは、湿式洗浄、プラズマ活性化、高温アニール、化学機械研磨、機械研磨、反応性イオンエッチング、イオンビームエッチング、又はイオンビームグレージング研磨のうちの少なくとも1つを使用することによって、炭化ケイ素層の、担体層から離れた表面を処理し、損傷層を除去するステップを含む。
【0027】
可能な実施形態では、第1のアニール処理の温度は、1000℃以上であり、第2のアニール処理のアニール温度は、1200℃以上である。
【0028】
可能な実施形態では、炭化ケイ素層の、担体層から離れた表面に対して表面処理を行った後、炭化ケイ素層の、担体層から離れた表面における粗さは、0.5nm以下となる。
【0029】
可能な実施形態では、前記第1のアニール処理のアニール環境は、N、Ar、又はHのうちの少なくとも1つであり、第2のアニール処理のアニール環境は、真空、N、Ar、又はCを含むガスのうちの少なくとも1つである。
【0030】
第3の態様によると、第1の態様のいずれか1つによる複合基板と、ヘテロ接合とを含む半導体デバイスが提供される。ヘテロ接合は、複合基板の少なくとも1つのエピタキシャル層の、担体層から離れた側に配置される。
【0031】
第4の態様によると、第3の態様による半導体デバイスと、アンテナとを備える電子機器が提供される。半導体デバイスは、高周波信号を増幅して外部放射のためにアンテナに出力するように構成されている。
【0032】
第5の態様によると、第3の態様による半導体デバイスと、プリント回路基板とを備える電子機器が提供される。半導体デバイスは、プリント回路基板に結合される。半導体デバイスにおける担体層の材料は、導電性材料である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本出願の一実施形態による基地局の構造の概略図である。
図2】本出願の一実施形態によるAAUの構造の概略図である。
図3A】本出願の一実施形態による充電器の構造の概略図である。
図3B】本発明の一実施形態による半導体デバイスの構造の概略図である。
図3C】本出願の一実施形態による別の半導体デバイスの構造の概略図である。
図4】本出願の一実施形態による複合基板の作製手順の概略図である。
図5A】本発明の一実施形態による複合基板の作製手順の概略流れ図である。
図5B】本発明の一実施形態による複合基板の作製手順の概略図である。
図6】本発明の一実施形態による複合基板の構造を示す図である。
図7A】本発明の一実施形態による複合基板の別の作製手順の概略流れ図である。
図7B】本出願の一実施形態による複合基板の別の作製手順の概略流れ図である。
図8A】本出願の一実施形態による別の複合基板の構造を示す図である。
図8B】本出願の一実施形態によるさらに別の複合基板の構造の図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下では、本出願の実施形態における添付の図面を参照して、本出願の実施形態における技術的解決策を説明する。説明される実施形態は、本出願の実施形態のすべてではなく一部に過ぎないことは明らかである。
【0035】
以下で言及される用語「第1の」及び「第2の」は、単に説明の目的のために意図されており、相対的な重要性の指示若しくは暗示、又は示された技術的特徴の量の暗示的な指示として理解されるべきではない。したがって、「第1の」又は「第2の」によって限定される特徴は、1つ又は複数の特徴を明示的又は暗示的に含むことがある。本出願の説明において、別段の指定がない限り、「複数」は、2つ又は3つ以上を意味する。
【0036】
本出願の実施形態では、別段の指定及び限定がない限り、「電気的接続」という用語は、直接的な電気的接続であってもよく、又は中間媒体を介した間接的な電気的接続であってもよい。
【0037】
加えて、本出願の実施形態では、「例えば」という単語は、例、例示、又は説明を与えることを表すために使用される。本出願の実施形態において「例えば」として説明される任意の実施形態又は設計スキームは、別の実施形態又は設計スキームよりも好ましい、又はより多くの利点を有するものとして説明されるべきではない。正確には、「例えば(for example)」などの単語の使用は、相対的な概念を特定の方法で提示することが意図されている。
【0038】
本出願の実施形態では、「及び/又は」は、関連付けられたオブジェクト間の関連付け関係を説明し、3つの関係が存在することができることを表す。例えば、A及び/又はBは、以下の場合を表すことができる。Aのみが存在し、A及びBの両方が存在し、Bのみが存在し、A及びBが単数又は複数であってもよい。記号「/」は一般に、関連付けられたオブジェクト間の「又は」の関係を示す。
【0039】
本出願の実施形態において、例えば、上、下、左、右、前、及び後は、本出願における異なる部品の構造及び動きを説明するために使用される相対的な方向指示である。これらの指示は、部品が図に示される位置にあるときに適切である。しかしながら、部品の位置の記述が変わった場合、これらの方向指示もそれに応じて変わる。
【0040】
本出願の実施形態において、「2次元電子ガス(two-dimensional electron gas、2DEG)」という用語は、界面方向に垂直な電子の運動がポテンシャル井戸によって束縛されて電子を量子化することを示す。表面に平行な電子の移動は、依然として自由である。この場合、このような2次元方向の自由電子は、2次元電子ガスと呼ばれる。
【0041】
本願の実施の形態において、「単結晶炭化ケイ素インゴットの裏面」という用語は、単結晶炭化ケイ素インゴットの(000-1)結晶配向面を示し、「単結晶炭化ケイ素インゴットの前面」という用語は、単結晶炭化ケイ素インゴットの(0001)結晶配向面を示す。
【0042】
本願の実施の形態において、「炭化ケイ素層の裏面」という用語は、炭化ケイ素層の(000-1)結晶配向面を示し、「炭化ケイ素層の前面」という用語は、炭化ケイ素層の(0001)結晶配向面を示す。
【0043】
本出願の一実施形態は、電子機器を提供する。電子機器は、例えば、充電器、小型充電家庭用電化製品(豆乳マシン又は掃除機ロボットなど)、無人航空機、航空宇宙機器、レーザレーダドライバ、レーザ、検出器、レーダ、及び5G(第5世代モバイルネットワーク、第5世代モバイル通信技術)通信機器などの異なるタイプのユーザ機器又は端末機器であってもよい。電子機器は、代替として、基地局などのネットワーク機器であってもよい。本出願の実施形態において、電子機器の具体的な形態は、特に限定されない。
【0044】
高電子移動度トランジスタ(high electron mobility transistor、HEMT)デバイスは、半導体デバイスである。高電子移動度トランジスタは、高い破壊電界、高いチャネル電子濃度、高い電子移動度、高温安定性などの利点から、高周波デバイスやパワーデバイスとして広く用いられている。
【0045】
HEMTデバイスが高周波デバイスとして使用される場合、電子機器が基地局である例を使用することによって、電子機器の構造が説明される。図1に示されるように、基地局1は、ベースバンドユニット(baseband unit、BBU)101と、アクティブアンテナユニット(active antenna unit、AAU)102と、を含む。BBU101は、主に、ベースバンドデジタル信号処理、例えば、FFT(fast Fourier transform、高速フーリエ変換)/IFFT(inverse fast Fourier transform、逆高速フーリエ変換)、変調/復調、及びチャネル符号化/復号を担う。図2に示されるように、AAU102は、演算ユニット121と、第1の送信ユニット122と、アンテナユニット123と、を含む。演算ユニット121は、制御ユニット1210と、第2の送信ユニット1211と、ベースバンドユニット1212と、電源ユニット1213と、を含む。制御ユニット1210、第2の送信ユニット1211、ベースバンドユニット1212、及び電源ユニット1213は、互いに電気的に接続されている。制御ユニット1210は、高周波信号の制御を担うように構成されている。第2の送信ユニット1211は、高周波信号の送信を担うように構成されている。ベースバンドユニット1212は、デジタル信号とアナログ信号との変換を担うように構成されている。例えば、ベースバンドユニット1212は、DAC(Digital to Analog Converter、デジタルアナログ変換器)である。DACは、BBU101によって出力されたデジタル信号をアナログ信号に変換することができる。電源ユニット1213は、電源124に電気的に接続されており、演算ユニット121内の制御ユニット1210、第2の送信ユニット1211、及びベースバンドユニット1212に電力を供給する。第1の送信ユニット122は、高周波信号の送信及び増幅を担うように構成されている。第1の送信ユニット122は、RF(Radio Frequency、高周波)ユニット1221と、PA(Power Amplifier、電力増幅器)1222と、を含む。RFユニット1221は、アナログ信号を低電力高周波信号に変換するように構成されている。PA1222は、低電力高周波信号の電力を増幅し、増幅された信号をアンテナユニット123に出力するように構成されている。アンテナユニット123は、高周波信号を放射する役割を果たす。図2に示されるように、AAU102は、複数のRFユニット1221、複数のPA1222、及び複数のアンテナユニット123を含むことができる。PA1222は、HEMTデバイスであってもよいことに留意されたい。
【0046】
HEMTデバイスがPAとして使用される場合、本出願の本実施形態において提供される電子機器は、図1及び図2に示される基地局に限定されないことを理解されたい。電力増幅器を使用することによって信号を増幅するために使用される必要があるいかなる電子機器も、本出願の本実施形態の適用シナリオに属する。
【0047】
HEMTデバイスがパワーデバイスとして使用される場合、電子機器が充電器である例を使用することによって電子機器の構造が説明される。図3Aに示されるように、充電器2は、パワーデバイス、抵抗器R、インダクタL、キャパシタCなどを含むことができる。パワーデバイスは、例えば、HEMTデバイスであってもよい。HEMTデバイス、抵抗器R、インダクタL、及びキャパシタCは、プリント回路基板(printed circuit board、PCB)を使用することによって相互接続されてよい。
【0048】
HEMTデバイスがパワーデバイスとして使用される場合、本出願の本実施形態において提供される電子機器は、図3Aに示される充電器に限定されないことを理解されたい。パワーデバイスを使用する必要があるいかなる電子機器も、本出願の本実施形態の適用シナリオに属する。
【0049】
HEMTデバイスの構造が例として使用される。図3Bに示されるように、ノーマリオープンHEMTデバイスは、基板と、基板上に配置されたAlN(窒化アルミニウム)核形成層、GaN(窒化ガリウム)バッファ層、AlN挿入層、AlGaN(アルミニウムガリウム窒素)ポテンシャルエネルギー障壁層、GaNキャップ層、ソース(source、S)、ドレイン(drain、D)、及びゲート(gate、G)とを含む。
【0050】
図3Cに示されるように、ノーマリクローズHEMTデバイスは、基板と、基板上に配置されたAlN核形成層、GaNバッファ層、AlN挿入層、AlGaNポテンシャルエネルギー障壁層、ゲートキャップ層、ソース(source、S)、ドレイン(drain、D)、及びゲート(gate、G)とを含む。
【0051】
ゲートキャップ層は、エネルギーバンド構造を調整して、ゲートキャップ層の下の電子を排出することができる。2DEGは、バイアス電圧なしでオフ状態にある。2DEGは、ソースSとドレインDとの間のチャネル層を流れることができない。HEMTデバイスは、オフ状態である。
【0052】
HEMTデバイスの動作原理は、以下の通りである。ソースS及びドレインDは、AlGaNポテンシャルエネルギー障壁層と別々に導電性オーミック接触している。ゲートGは、AlGaNポテンシャルエネルギー障壁層とショットキー接触している。AlN挿入層の破線は、HEMTデバイスのAlN挿入層とAlGaNポテンシャルエネルギー障壁層とによって形成されるヘテロ接合において分極機能に起因して生成される2DEGを表す。2DEGは、電界の作用下で電子を効率的に伝導するために使用される。ソースS及びドレインDは、電界の作用下でソースSとドレインDとの間のAlN挿入層において2DEGが流れることを可能にするように構成される。ソースSとドレインDとの間の伝導は、AlN挿入層における2次元電子ガスにおいて生じる。ゲートGは、ソースSとドレインDとの間に配置され、2次元電子ガスの通過を許容又は阻止する。2DEGは、ひとつには、AlN挿入層とAlGaNポテンシャルエネルギー障壁層との界面の非常に狭い領域に電子がトラップされ、電子移動度が大幅に向上するといった理由で、高い導電性を有する。
【0053】
HEMTデバイスが高周波デバイスとして機能する場合、HEMTデバイスの基板は、非導電性基板である。HEMTデバイスがパワーデバイスとして機能する場合、HEMTデバイスの基板は、導電性基板である。
【0054】
アルミニウムガリウム窒素(AlGaN、x≧0、y≧0)材料は、広いバンドギャップ、高い電子飽和速度、及び高い臨界破壊電界強度などの優れた物理的特徴を有するため、AlGaN材料は、通常、高電圧及び高周波デバイスを製造するために使用される。これに基づいて、AlGaN半導体デバイスは、高いスイッチング速度及び小さいオン抵抗などの優れた特徴のために、航空宇宙、無線通信、光電変換、及び充電アダプタなどの分野において広く応用されている。
【0055】
ここで、炭化ケイ素(SiC)は、比較的コストが高いため、パワーデバイスにおいて、AlGaNとSiCとを積層したAlGaN複合基板は、比較的コストが高く、工業製品及び民生製品へのAlGaN半導体デバイスの幅広い応用が厳しく制限されている。
【0056】
前述の問題を解決するために、複合基板の作製方法が提供される。まず、サファイア基板上に単結晶GaN層をエピタキシャル成長させる。次いで、単結晶GaN層を、応力補償層が形成された担体基板に接合する。その後、サファイア基板を剥離して、図4に示される複合基板を得る。図4に示されるように、複合基板は、担体基板と、担体基板上に配置された接合誘電体層及び単結晶GaN層と、担体基板の裏面の応力補償層と、を含む。
【0057】
図4に示される複合基板は、GaN基板の利点を有するが、サファイア基板上に単結晶GaN層を成長させることは、技術的複雑さが高く、成長厚さが大きく、歩留まりが低いなどの問題に依然として直面している。そのため、複合基板を得ることが困難である。加えて、コストが高い。さらに、応力補償層は、薄膜誘電体層であり、後続の処理プロセスにおいて安定性が乏しく、それによって応力の悪化又は解放の原因となる。その結果、新たに成長したエピタキシャル層の欠陥密度が高くなり、単結晶GaN層が剥離又は分断されることさえある。
【0058】
これに基づいて、本出願の一実施形態は、複合基板の作製方法をさらに提供する。欠陥密度の低いAlGaNデバイスは、複合基板の作製方法を用いることによって作製された複合基板を用いることによって、直接作製され得る。複合基板は、製造コストが低いため、様々な分野におけるAlGaN半導体デバイスの普及及び応用を改善する。
【0059】
以下は、いくつかの実施例を使用することによって、本出願の本実施形態において提供される複合基板の作製方法を説明する。
【0060】
実施例1
図5Aに示されるように、本発明の一実施形態は、複合基板の作製方法を提供する。本方法は、以下のステップを含む。
【0061】
S10:図5Bに示されるように、注入されたイオンが予め設定された深さXに達するように、単結晶炭化ケイ素インゴット10に単結晶炭化ケイ素インゴット10の裏面a1から水素イオン注入を行い、予め設定された深さに欠陥層20を形成し、欠陥層20の、単結晶炭化ケイ素インゴット10の裏面a1に面する側に、炭化ケイ素層11を形成する。
【0062】
すなわち、単結晶炭化ケイ素インゴット10において、欠陥層20の、単結晶炭化ケイ素インゴット10の裏面a1に面する側に位置する部分が炭化ケイ素層11として用いられる。
【0063】
一部の実施形態では、単結晶炭化ケイ素インゴット10の格子方向は、<0001>格子方向に対して0°以上8°以下の範囲で偏向している。
【0064】
例えば、単結晶炭化ケイ素インゴット10の格子方向は、<0001>格子方向に対して偏向しておらず(0°偏向している)、単結晶炭化ケイ素インゴット10の格子方向は、<0001>格子方向に対して1°偏向しており、単結晶炭化ケイ素インゴット10の格子方向は、<0001>格子方向に対して2°偏向しており、単結晶炭化ケイ素インゴット10の格子方向は、<0001>格子方向に対して3°偏向しており、単結晶炭化ケイ素インゴット10の格子方向は、<0001>格子方向に対して4°偏向しており、単結晶炭化ケイ素インゴット10の格子方向は、<0001>格子方向に対して5°偏向しており、単結晶炭化ケイ素インゴット10の格子方向は、<0001>格子方向に対して6°偏向しており、単結晶炭化ケイ素インゴット10の格子方向は、<0001>格子方向に対して7°偏向している。
【0065】
このように、単結晶炭化ケイ素インゴット10を用いることによって得られる炭化ケイ素層11の格子方向も、<0001>格子方向に対して0°以上8°以下の範囲で偏向している。炭化ケイ素層11とエピタキシャル層と、格子不整合が小さい。このため、その後の炭化ケイ素層11の表面におけるエピタキシャル成長時に、エピタキシャル成長の欠陥密度が低減され得る。
【0066】
一部の実施形態では、全体的に平坦な欠陥層20を形成するために、水素イオン注入のエネルギーは、100keV以上である。一部の実施形態では、水素イオン注入のドーズ量は、1e16cm以上である。一部の実施形態では、水素イオン注入の角度は、5°以上20°以下の範囲である。例えば、水素イオン注入の角度は、10°又は15°である。欠陥層20の構造形態は、水素イオン注入のエネルギー、ドーズ量及び角度を調節することによって調節され得る。
【0067】
すなわち、欠陥層20は、水素イオン注入により、単結晶炭化ケイ素インゴット10の予め設定された深さXに形成される。欠陥層20は、単結晶炭化ケイ素インゴット10を2つの部分に分割する。欠陥層20の、単結晶炭化ケイ素インゴット10の裏面a1に近い側に位置する部分が炭化ケイ素層11として用いられ、欠陥層20の、単結晶炭化ケイ素インゴット10の裏面a1から離れた側(単結晶炭化ケイ素インゴット10の前面a2に近い側)に位置する部分が残りの単結晶炭化ケイ素インゴット12として用いられる。
【0068】
研磨された後の残りの単結晶炭化ケイ素インゴット12は、次回の複合基板の製造において単結晶炭化ケイ素インゴット10として使用されてもよい。確かに、残りの単結晶炭化ケイ素インゴット12の厚さが厳密に炭化ケイ素層11として使用され得る場合、残りの単結晶炭化ケイ素インゴット12は、炭化ケイ素層11としてそのまま使用されてもよい。
【0069】
炭化ケイ素層11の厚さは、予め設定された深さXを調整することにより調整されてもよい。水素イオン注入プロセスにおいて、水素イオン注入のエネルギーは、注入イオンが予め設定された深さXに到達できるように調整されてもよい。
【0070】
一部の実施形態では、水素イオン注入のエネルギーは、炭化ケイ素層11の厚さが350μm以下となるように調整される。
【0071】
例えば、炭化ケイ素層11の厚さは、300μm、250μm、200μm、150μm、又は100μmである。
【0072】
一部の実施形態では、単結晶炭化ケイ素インゴット10の材料は、4H炭化ケイ素又は6H炭化ケイ素を含む。このように、単結晶炭化ケイ素インゴット10を用いることによって作製される炭化ケイ素層11の材料も、4H型炭化ケイ素又は6H型炭化ケイ素を含む。その後、炭化ケイ素層11の表面にエピタキシャル層が形成されると、炭化ケイ素層11とエピタキシャル層との格子不整合が小さくなる。エピタキシャル層は、低い欠陥密度を有する。
【0073】
一部の実施形態では、単結晶炭化ケイ素インゴット10の裏面a1は、単結晶炭化ケイ素インゴット10の前面a2の反対側に配置される。単結晶炭化ケイ素インゴット10の裏面a1及び単結晶炭化ケイ素インゴット10の前面a2は、同じ粗さ要件を有する。
【0074】
S20:図5Bに示されるように、単結晶炭化ケイ素インゴット10の裏面a1を担体層30に接合して、第1の複合構造Q1を形成する。
【0075】
一部の実施形態では、担体層30の厚さは、3000μm以下である。
【0076】
例えば、担体層30の厚さは、2500μm、2000μm、1500μm、1000μm、又は500μmである。
【0077】
担体層30は、単結晶炭化ケイ素インゴット10の支持機能を有する。担体層30の厚さが過度に大きいと、資源の浪費を招き、複合基板の厚さが増加する。
【0078】
複合基板が作製される際、後続の作製プロセスにおいて2つの高温アニーリングプロセスがある。第2のアニール処理温度は、第1のアニール処理温度よりも高い。
【0079】
これに基づいて、一部の実施形態では、後続のアニール処理プロセスにおける担体層30の形状の変化を回避するために、担体層30の材料の融点は、第2のアニール処理温度よりも高い。例えば、担体層30の材料の融点は、1260℃以上である。
【0080】
一部の実施形態では、担体層30の材料は、Si(シリコン)若しくはSiC(炭化ケイ素)などの導電性基板、SiO(酸化ケイ素)、Si(窒化ケイ素)、Al(アルミナ)などの絶縁性基板、又は前述の複数の材料を含む複合多層基板を含む。前述の材料は、単結晶構造であっても、多結晶構造であっても、非晶質構造であってもよい。
【0081】
担体層30の材料が導電性基板である場合、複合基板は導電性基板である。担体層30の材料が絶縁性基板である場合、複合基板は絶縁性基板である。したがって、担体層30の材料は、複合基板を用いたHEMTデバイスが高周波デバイス又はパワーデバイスとして使用され得るように、選択される。
【0082】
一部の実施形態では、単結晶炭化ケイ素インゴット10の裏面a1は、担体層30に直接接触して直接接合されている。
【0083】
すなわち、単結晶炭化ケイ素インゴット10の裏面a1が担体層30に面し、単結晶炭化ケイ素インゴット10は担体層30に直接接触して接合されている。
【0084】
炭化ケイ素層11は、単結晶炭化ケイ素インゴット10から得られることが理解され得る。単結晶炭化ケイ素インゴット10の裏面a1は、炭化ケイ素層11の裏面c1でもある。したがって、単結晶炭化ケイ素インゴット10の裏面a1は、担体層30に直接接触して接合されている。すなわち、炭化ケイ素層11の裏面a1は、担体層30に直接接触して接合されている。作製された複合基板において、炭化ケイ素層11は、担体層30に直接接触して接合されている。
【0085】
例えば、単結晶炭化ケイ素インゴット10の裏面a1及び担体層30に対して表面洗浄及び表面処理を行った後、単結晶炭化ケイ素インゴット10の裏面a1と担体層30とが直接接触して接合される。
【0086】
単結晶炭化ケイ素インゴット10の裏面a1及び担体層30に対して表面処理を行うやり方は、例えば、湿式洗浄、活性化、化学活性化、プラズマ活性化、及び金属蒸着のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0087】
加えて、単結晶炭化ケイ素インゴット10の裏面a1と担体層30とを直接接触させて接合することは、常温、高温、高圧、常圧、真空などの環境下で行われてもよい。これは、本出願の本実施形態では限定されない。
【0088】
第1の接合層41は、単結晶炭化ケイ素インゴット10の裏面a1を担体層30に直接接触させて接合するプロセスにおいて自然に形成されることが理解され得る。第1の接合層41の厚さは、単結晶炭化ケイ素インゴット10の裏面a1が担体層30に接合される時間を制御することによって制御されてもよい。
【0089】
一部の実施形態では、第1の接合層41の厚さは、5nm以下である。第1の接合層41の厚さは、例えば、1nm、2nm、3nm、又は4nmである。
【0090】
第1の接合層41の厚さが過度に大きいと、複合基板の熱伝導率に影響を与える。したがって、第1の接合層41の厚さは、単結晶炭化ケイ素インゴット10の裏面a1が確実に担体層30に直接接触して接合されるということに基づいて、5nm以下となるように制御され、第1の接合層41の厚さを可能な限り低減する。
【0091】
これに基づいて、第1の複合構造Q1は、単結晶炭化ケイ素インゴット10と、第1の接合層41と、担体層30と、を含むことが理解され得る。
【0092】
S30:図5Bに示されるように、炭化ケイ素層11が欠陥層20に沿って剥離されるように、第1の複合構造Q1に対して第1のアニール処理を行い、第2の複合構造Q2を形成する。
【0093】
第2の複合構造Q2は、欠陥層20から分離することで得られる損傷層21と、接合された炭化ケイ素層11及び担体層30と、を含む。損傷層21は、炭化ケイ素層11の、担体層30から離れた表面(炭化ケイ素層11の前面c2)に位置している。
【0094】
第1の複合構造Q1に対して第1のアニール処理が行われる。例えば、第1の複合構造Q1は、熱アニーリングプロセスを使用することによって処理されてもよい。
【0095】
一部の実施形態では、第1の複合構造Q1に対して第1のアニール処理が行われるアニール温度は、例えば、1000℃以上であってもよい。例えば、第1のアニール処理のアニール温度は、1050℃、1100℃、又は1150℃である。
【0096】
一部の実施形態では、第1の複合構造Q1に対して第1のアニール処理が行われるアニール環境は、N(窒素)、Ar(アルゴン)、及びH(水素)のうちの少なくとも1つであってもよい。
【0097】
第1のアニール処理のアニール時間は、本出願の本実施形態では限定されず、欠陥層20が自然に亀裂して第2の複合構造Q2を得ることができるように、欠陥層20の厚さなどの要因に基づいて合理的に決定される。
【0098】
S40:図5Bに示されるように、炭化ケイ素層11の、担体層30から離れた表面(前面c2)を処理し、損傷層21を除去して、第3の複合構造Q3を形成する。
【0099】
一部の実施形態では、炭化ケイ素層11の、担体層30から離れた表面(前面c2)は、損傷層21を除去するために、湿式洗浄、プラズマ活性化、高温アニール、CMP、CP、機械研磨、反応性イオンエッチング、イオンビームエッチング、又はイオンビームグレージング研磨などの1つ又は複数のプロセスを使用することによって処理される。
【0100】
炭化ケイ素層11の、担体層30から離れた表面(前面c2)は、損傷層21を除去するために処理されてもよいことが理解され得る。得られた第3の複合構造Q3は、接合された炭化ケイ素層11及び担体層30(例えば、炭化ケイ素層11、第1の接合層41及び担体層30)を含む。
【0101】
一部の実施形態では、炭化ケイ素層11の、担体層30から離れた表面(前面c2)を処理するプロセスは、炭化ケイ素層11の、担体層30から離れた表面(前面c2)における粗さを低減するために、CMP、CP及び機械研磨のうちの少なくとも1つ又は複数を含む。
【0102】
一部の実施形態では、炭化ケイ素層11の、担体層30から離れた表面に対して表面処理が行われた後、炭化ケイ素層11の、担体層30から離れた表面における粗さは、0.5nm以下となる。
【0103】
すなわち、炭化ケイ素層11の前面c2における粗さは、炭化ケイ素層11の前面c2にエピタキシャル層が形成される際の炭化ケイ素層11の前面c2における粗さの要件を満たすように、0.5nm以下である。
【0104】
S50:図5Bに示されるように、炭化ケイ素層11の、担体層30から離れた表面(前面c2)上に、カーボン保護膜50を形成する。
【0105】
例えば、カーボン保護膜50は、スパッタリングプロセスを用いることによって、炭化ケイ素層11の、担体層30から離れた表面(前面c2)上に形成されてもよい。
【0106】
カーボン保護膜50が過度に大きい場合、資源が無駄になる。カーボン保護膜50の厚さが過度に薄い場合、保護機能が発揮されない。一部の実施形態では、カーボン保護膜50の厚さは、10nm~50nmである。例えば、カーボン保護膜50の厚さは、20nm、25nm、30nm、35nm、又は40nmである。
【0107】
カーボン保護膜50は、炭化ケイ素層11の、担体層30から離れた表面(前面c2)上に形成され、後続の高温アニールプロセスにおける高温による炭化ケイ素層11中の炭素蒸発及びシリコン析出を回避し、したがって炭化ケイ素層11の、担体層30から離れた表面(前面c2)における粗さを回避する。
【0108】
S60:図5Bに示されるように、第3の複合構造Q3に対して第2のアニール処理を行い、炭化ケイ素層11において水素イオン注入に起因して引き起こされた欠陥を修復する。
【0109】
カーボン保護膜50は、炭化ケイ素層11の、担体層30から離れた表面(前面c2)上に形成されていることが理解され得る。すなわち、複合基板の作製方法がステップS50を含む場合、第2のアニール処理は、第3の複合構造Q3に対して行われ、すなわち、処理は、カーボン保護膜50が第3の複合構造Q3の表面を覆っている構造に対して行われる。
【0110】
第2のアニール処理は、第3の複合構造Q3に対して行われる。例えば、第3の複合構造Q3は、熱アニーリングプロセスを使用することによって処理されてもよい。第2のアニール処理のアニール温度は、第1のアニール処理のアニール温度よりも高い。
【0111】
一部の実施形態では、第3の複合構造Q3に対して第2のアニール処理が行われるアニール温度は、例えば、1200℃以上であってもよい。例えば、第2のアニール処理のアニール温度は、1250℃、1300℃、1350℃、又は1400℃である。
【0112】
一部の実施形態では、第3の複合構造Q3に対して第2のアニール処理が行われるアニール環境は、大気圧、真空、N、Ar、又はC(炭素)を含むガスのうちの少なくとも1つである。
【0113】
本出願の本実施形態は、炭化ケイ素層11への水素イオン注入に起因して引き起こされた欠陥が修復され得るのであれば、第2のアニール処理のアニール時間を特に限定しない。加えて、本明細書における欠陥修復は、処理が実際の要件に従って行われるのであれば、完全な修復又はある程度の修復であってもよい。
【0114】
S70:図5Bに示されるように、カーボン保護膜50を除去する。
【0115】
例えば、カーボン保護膜50は、高温酸化又はプラズマ処理プロセスにより除去されてもよい。
【0116】
一部の実施形態では、複合基板の作製方法はステップS50を含まないことに留意されたい。すなわち、第3の複合構造Q3に対して第2のアニール処理が行われる前に、カーボン保護膜50が形成されず、第3の複合構造Q3に対して直接第2のアニール処理が行われる。このように、複合基板の作製方法は、ステップS70を含まない。
【0117】
S80:図5Bに示されるように、炭化ケイ素層11の、担体層30から離れた表面上に少なくとも1つのエピタキシャル層60を形成し、複合基板100を形成する。
【0118】
例えば、1つ又は複数のエピタキシャル層60は、有機金属化学気相堆積(metal-organic chemical vapor deposition、MOCVD)成長法又は分子線エピタキシ(molecular beam epitaxy、MBE)成長法などのプロセスを使用することによって形成されてもよい。複数のエピタキシャル層60の材料は、同じであってもよく、異なっていてもよく、完全に同じでなくてもよい。
【0119】
一部の実施形態では、エピタキシャル層60の材料は、III-V族窒化物を含む。
【0120】
例えば、エピタキシャル層60の材料は、AlGaN(x≧0、y≧0)を含む。
【0121】
例えば、AlNエピタキシャル層、又はGaNエピタキシャル層、又はAlGaNエピタキシャル層、又は複数の窒化物エピタキシャル層が、炭化ケイ素層11の、担体層30から離れた表面上に形成される。
【0122】
一部の実施形態では、少なくとも1つのエピタキシャル層60の厚さの合計は、3000μm以下である。
【0123】
少なくとも1つのエピタキシャル層60の厚さの合計は、以下のように理解されてもよい。炭化ケイ素層11の、担体層30から離れた表面上にエピタキシャル層60が形成される場合、エピタキシャル層60の厚さは、3000μm以下である。複数のエピタキシャル層60が、炭化ケイ素層11の、担体層30から離れた表面上に形成される場合、複数のエピタキシャル層60の厚さの合計は、3000μm以下である。
【0124】
例えば、少なくとも1つのエピタキシャル層60の厚さの合計は、2500μm、2000μm、1500μm、1000μm、500μm、400μm、300μm、200μm、100μm、90μm、80μm、70μm、60μm、50μm、40μm、30μm、20μm、10μm、9μm、8μm、7μm、6μm、5μm、4μm、3μm、2μm、又は1μmである。
【0125】
担体層30の厚さが過度に大きいと、資源の浪費を招き、複合基板の厚さを増加させる。
【0126】
以下は、2つの具体的な実施形態を使用することによって、本実施例において提供される複合基板の作製方法の実施例を説明する。
【0127】
複合基板の作製方法は、以下を含む。
【0128】
水素イオン(H+)が、非導電性4H単結晶炭化ケイ素インゴット10の裏面に<0001>格子方向に注入される。欠陥層20が裏面の予め設定された深さXの位置に形成される。
【0129】
水素イオン注入の温度は、室温である。水素イオン注入のエネルギーは、100keVである。水素イオン注入のドーズ量は、1e17cmである。水素イオン注入の角度は、7°である。
【0130】
化学液洗浄及び乾燥が単結晶炭化ケイ素インゴット10及びSi基板(担体層30)の裏面に対して行われる。次いで、単結晶炭化ケイ素インゴット10の裏面a1及びSi基板に対して、Ar、N、O(酸素)などを用いることによってプラズマ活性化が行われる。その後、200℃、10-4mbarの真空環境下で、単結晶炭化ケイ素インゴット10の裏面a1がSi基板に直接接触して直接接合される。第1の複合構造Q1が形成される。
【0131】
接合圧力は、10kNである。接合時間は、120分である。
【0132】
第1の複合構造Q1が高温アニーリング炉内に配置される。N保護環境において、第1の複合構造Q1は、20℃/sの速度で1000℃に加熱され、次いで、60分間アニールされ、冷却され、炉から取り出される。単結晶炭化ケイ素インゴット10は、欠陥層20に沿って自動的に剥離され、第2の複合構造Q2が形成される。
【0133】
第2の複合構造Q2は、欠陥層20から分離された損傷層21と、接合された炭化ケイ素層11及び担体層30と、を含む。損傷層21は、炭化ケイ素層11の、担体層30から離れた表面に位置する。剥離後に表面が研磨された残りの単結晶炭化ケイ素インゴット12は、次回複合基板を製造するための単結晶炭化ケイ素インゴット10として使用されてもよい。
【0134】
損傷層21を除去するために、第2の複合構造Q2における炭化ケイ素層11の、担体層30から離れた表面に対して表面処理が行われる。第3の複合構造Q3を得るために、炭化ケイ素層11の表面の粗さは0.5nm以下である。
【0135】
例えば、表面における粗さが10nmに達するように、8000番の砥石を用いることによって表面が乾式研磨される。次いで、炭化ケイ素層11の表面における粗さが0.5nm以下となるように、表面がCMPにより研削される。
【0136】
炭化ケイ素層11の、担体層30から離れた表面上に、20nmのカーボン保護膜50がスパッタリングにより形成される。次いで、真空環境及び1200℃のアニール環境で、カーボン保護膜50が60分間アニールされた後、炉から取り出される。その後、酸素含有プラズマを用いることによってカーボン保護膜50が完全にエッチングされる。
【0137】
次いで、複合基板100を形成するために、AlNエピタキシャル層及びGaNエピタキシャル層が、炭化ケイ素層11の、担体層30から離れた表面上に順次エピタキシャル成長される。
【0138】
代替として、複合基板の作製方法は、以下を含む。
【0139】
水素イオンが、非導電性6H単結晶炭化ケイ素インゴット10の裏面に、<0001>格子方向に注入される。欠陥層20が裏面の予め設定された深さXの位置に形成される。
【0140】
水素イオン注入の温度は、室温である。水素イオン注入のエネルギーは、200keVである。水素イオン注入のドーズ量は、1e17cmである。水素イオン注入の角度は、7°である。
【0141】
化学液洗浄及び乾燥が単結晶炭化ケイ素インゴット10及びSi基板(担体層30)の裏面に対して行われる。次いで、単結晶炭化ケイ素インゴット10の裏面a1及びSi基板に対して、Ar、N、O(酸素)などを用いることによってプラズマ活性化が行われる。その後、室温のN雰囲気中で、単結晶炭化ケイ素インゴット10の裏面a1がSi基板に直接接合される。第1の複合構造Q1が形成される。
【0142】
接合圧力は、15kNである。接合時間は、180分である。
【0143】
第1の複合構造Q1が高温アニーリング炉内に配置される。N保護環境において、第1の複合構造Q1は、レーザ加熱による高速熱アニール方式で、1100℃のアニール温度で60分間アニールされ、その後、冷却されて炉から取り出される。単結晶炭化ケイ素インゴット10は、欠陥層20に沿って自動的に剥離され、第2の複合構造Q2が形成される。
【0144】
表面における粗さが10nmに達するように、8000番の砥石を用いることによって表面に対して乾式研磨が行われる。次いで、炭化ケイ素層11の表面における粗さが0.5nm以下となるように、表面がCMPにより研削される。
【0145】
炭化ケイ素層11の、担体層30から離れた表面上に、20nmのカーボン保護膜50がスパッタリングにより形成される。次いで、CH/Ar混合ガスで満たされたアニール環境において、カーボン保護膜50は、アニール温度1350℃で30分間アニールされた後、炉から取り出される。その後、カーボン保護膜50は、エピタキシャル成長に適合する複合基板を形成するために、酸素含有プラズマを用いることによって完全にエッチングされる。
【0146】
次いで、複合基板100を形成するために、AlNエピタキシャル層及びGaNエピタキシャル層が、炭化ケイ素層11の、担体層30から離れた表面上に順次エピタキシャル成長される。
【0147】
これに基づいて、図6に示されるように、本出願の一実施形態は、炭化ケイ素層11と、担体層30と、少なくとも1つのエピタキシャル層60(図6は1つのエピタキシャル層60を示す)と、を含む複合基板100を提供する。
【0148】
炭化ケイ素層11は、単結晶炭化ケイ素インゴット10を用いることによって作製される。炭化ケイ素層11の材料は、単結晶炭化ケイ素を含む。あるいは、炭化ケイ素層11は、単結晶炭化ケイ素ウエハであることが理解される。
【0149】
担体層30は、炭化ケイ素層11の裏面c1の側に配置されている。炭化ケイ素層11は、担体層30上に配置されている。炭化ケイ素層11の裏面c1は、担体層30に面している。炭化ケイ素層11の裏面c1は、担体層30に接合されている。すなわち、炭化ケイ素層11は、担体層30に接合されている。
【0150】
一部の実施形態では、図6に示されるように、単結晶炭化ケイ素インゴット11の裏面c1は、担体層30に直接接触して接合される。炭化ケイ素層11の裏面c1は、担体層30に直接接触して接合され、第1の接合層41を形成する。
【0151】
少なくとも1つのエピタキシャル層60が炭化ケイ素層11の、担体層30から離れた側に配置される。
【0152】
実施例2
実施例1と実施例2の違いは、炭化ケイ素層11が遷移層42を用いることによって担体層30に接合されていることである。
【0153】
図7Aに示されるように、本出願の一実施形態は、複合基板の作製方法をさらに提供する。本方法は、以下のステップを含む。
【0154】
S100:図7Bに示されるように、注入されたイオンが予め設定された深さXに達するように、単結晶炭化ケイ素インゴット10に単結晶炭化ケイ素インゴット10の裏面a1から水素イオン注入を行い、予め設定された深さに欠陥層20を形成し、欠陥層20の単結晶炭化ケイ素インゴット10の、裏面a1に面する側に炭化ケイ素層11を形成する。
【0155】
すなわち、単結晶炭化ケイ素インゴット10において、欠陥層20の、単結晶炭化ケイ素インゴット10の裏面a1に面する側に位置する部分が炭化ケイ素層11として用いられる。
【0156】
ステップS100は、実施例1のステップS10と同じであってもよい。前述の関連する説明が参照されてもよい。本明細書では詳細は再び説明されない。
【0157】
S200:図7Bに示されるように、単結晶炭化ケイ素インゴット10の裏面a1上に遷移層42を形成する。
【0158】
代替として、ステップS200は実行されず、ステップS200’が実行される。
【0159】
代替として、ステップS200が実行され、ステップS200’が実行される。
【0160】
S200’:担体層30上に遷移層42を形成する。
【0161】
例えば、遷移層42はスパッタリングプロセスによって形成されてもよい。
【0162】
遷移層42の材料は、例えば、SiO(酸化ケイ素)、Si(窒化ケイ素)、若しくはAl(酸化アルミニウム)などの絶縁媒体、又はSi(ケイ素)若しくはSiC(炭化ケイ素)などの導電性媒体、又はAl(アルミニウム)、Cu(銅)、Pt(白金)、Ni(ニッケル)、Ti(チタン)、Au(金)、若しくはCr(クロム)などの金属、又は前述の複数の材料を含む複合多層材料を含むことができる。
【0163】
S300:図7Bに示されるように、遷移層42を用いることによって単結晶炭化ケイ素インゴット10の裏面a1を担体層30に接合して、第1の複合構造Q1を形成する。
【0164】
第2の接合層43は、単結晶炭化ケイ素インゴット10の裏面a1を遷移層42に接合するプロセスにおいて自然に形成される。第3の接合層44は、担体層30を遷移層42に接合するプロセスにおいて自然に形成される。
【0165】
これに基づいて、第1の複合構造Q1は、単結晶炭化ケイ素インゴット10と、第2の接合層43と、遷移層42と、第3の接合層44と、担体層30と、を含むことが理解され得る。
【0166】
一部の実施形態では、遷移層42の厚さと、第2の接合層43の厚さと、第3の接合層44の厚さとの合計は、100nm以下である。例えば、遷移層42の厚さと、第2の接合層43の厚さと、第3の接合層44の厚さとの合計は、90nm、80nm、70nm、又は60nmである。
【0167】
遷移層42の厚さと、第2の接合層43の厚さと、第3の接合層44の厚さとの合計が過度に大きいと、複合基板の熱伝導率に影響を与える。したがって、遷移層42の厚さと、第2の接合層43の厚さと、第3の接合層44の厚さとの合計は、単結晶炭化ケイ素インゴット10の裏面a1が担体層30に確実にしっかりと接合されるということに基づいて、100nm以下となるように制御され、遷移層42の厚さと、第2の接合層43の厚さと、第3の接合層44の厚さとの合計を可能な限り低減する。
【0168】
実施例1の説明から、遷移層42の厚さと、第2の接合層43の厚さと、第3の接合層44の厚さとの合計は、単結晶炭化ケイ素インゴット10の裏面a1が担体層30に接合される時間を制御することにより制御されてもよいことが分かる。
【0169】
S400:図7Bに示されるように、炭化ケイ素層11が欠陥層20に沿って剥離されるように、第1の複合構造Q1に対して第1のアニール処理を行い、第2の複合構造Q2を形成する。
【0170】
第1の複合構造Q1に対して第1のアニール処理を行うプロセスについては、実施例1のステップS30の説明を参照されたい。違いは、得られた第2の複合構造Q2が、欠陥層20から分離することで得られた損傷層21と、接合された炭化ケイ素層11、遷移層42及び担体層30と、を含むことである。
【0171】
S500:図7Bに示されるように、炭化ケイ素層11の、担体層30から離れた表面(前面c2)を処理し、損傷層21を除去して、第3の複合構造Q3を形成する。
【0172】
炭化ケイ素層11の前面c2を処理するプロセスについては、実施例1のステップS40の説明を参照されたい。違いは、得られた第3の複合構造Q3が、接合された炭化ケイ素層11、遷移層42及び担体層30を含むことである。
【0173】
S600:図7Bに示されるように、炭化ケイ素層11の、担体層30から離れた表面(前面c2)上にカーボン保護膜50を形成する。
【0174】
ステップS600は、実施例1のステップS50と同じであってもよい。関連する説明が参照されてもよい。本明細書では詳細は再び説明されない。
【0175】
S700:図7Bに示されるように、第3の複合構造Q3に対して第2のアニール処理を行い、炭化ケイ素層11において水素イオン注入に起因して引き起こされた欠陥を修復する。
【0176】
ステップS700は、実施例1のステップS60と同じであってもよい。関連する説明が参照されてもよい。本明細書では詳細は再び説明されない。
【0177】
S800:図7Bに示されるように、カーボン保護膜50を除去する。
【0178】
ステップS800は、実施例1のステップS70と同じであってもよい。関連する説明が参照されてもよい。本明細書では詳細は再び説明されない。
【0179】
S900:図7Bに示されるように、炭化ケイ素層11の、担体層30から離れた表面上に少なくとも1つのエピタキシャル層60を形成し、複合基板100を形成する。
【0180】
ステップS900は、実施例1のステップS80と同じであってもよい。関連する説明が参照されてもよい。本明細書では詳細は再び説明されない。違いは、得られた複合基板が遷移層42をさらに含み、遷移層42が炭化ケイ素層11の裏面a1と担体層30との間に位置していることである。
【0181】
これに基づいて、図8Aに示されるように、本出願の一実施形態は、炭化ケイ素層11と、遷移層42と、担体層30と、少なくとも1つのエピタキシャル層60(図8Aは1つのエピタキシャル層60を示す)と、を含む複合基板100を提供する。
【0182】
遷移層42は、炭化ケイ素層11の裏面a1と担体層30との間に位置する。炭化ケイ素層11は、遷移層42を用いることによって担体層30に接合される。
【0183】
例えば、図8Bに示されるように、炭化ケイ素層11が遷移層42に接合されて第2の接合層43を形成し、担体層30が遷移層42に接合されて第3の接合層44を形成する。
【0184】
本出願の本実施形態において提供される複合基板の作製方法において、水素イオン注入は、欠陥層20を形成するために単結晶炭化ケイ素インゴット10に対して行われる。次いで、単結晶炭化ケイ素インゴット10が担体層30に接合される。接合された複合構造が高温でアニールされ、担体層30及び炭化ケイ素層11を含む複合構造と、残りの単結晶炭化ケイ素インゴット12とを形成する。研磨された後の残りの単結晶炭化ケイ素インゴット12が、そのまま単結晶炭化ケイ素インゴット10として用いられてもよい。複合構造に対して表面研磨及び高温アニールが行われた後、1つ又は複数のエピタキシャル層60(III-V族窒化物)が、炭化ケイ素層11の、担体層30から離れた表面上に形成されて、AlGaN複合基板100を形成する。
【0185】
本出願の実施形態において提供される複合基板の作製方法において、単結晶炭化ケイ素インゴット10は、切断損失を効果的に低減し、歩留まり及び切断効率を向上させるために、水素イオン注入方式で切断される。加えて、研磨された後の残りの単結晶炭化ケイ素インゴット12は、そのまま単結晶炭化ケイ素インゴット10として用いられてもよい。したがって、単結晶GaN基板及び単結晶SiC基板と比較して、本出願の実施形態において提供される複合基板の作製方法を使用することによって作製された複合基板は、炭化ケイ素インゴットの利用率を向上し、コストを低減することができる。
【0186】
加えて、本出願の本実施形態において提供される複合基板100の表面は、エピタキシャル層60(III-V族窒化物)を含む。半導体デバイスにおいて別の膜層を非単結晶SiC基板上に成長させた場合比較して、半導体デバイスにおける別の膜層を本出願の実施形態において提供される複合基板100のエピタキシャル層60上に成長させると、炭化ケイ素層11とエピタキシャル層60は、格子不整合が小さく、熱不整合が小さくなる。したがって、別の膜層をエピタキシャル層60上に成長させた場合、エピタキシャル欠陥密度が小さくなり、高品質のさらなるエピタキシャル製造要件及び半導体デバイスの製造要件を満たす。
【0187】
前述の説明は、本出願の特定の実施態様に過ぎず、本出願の保護範囲を限定することは意図されていない。本出願において開示される技術的範囲内で当業者によって容易に想到されるいかなる変形又は置換も本出願の保護範囲内に入るものとする。したがって、本出願の保護範囲は、特許請求の範囲の保護範囲に従うものとする。
【符号の説明】
【0188】
1 基地局
2 充電器
101 ベースバンド処理ユニット
102 アクティブアンテナユニット
121 演算ユニット
122 第1の送信ユニット
123 アンテナユニット
1210 制御ユニット
1211 第2の送信ユニット
1212 ベースバンドユニット
1213 電源ユニット
1221 RFユニット
1222 PA
10 単結晶炭化ケイ素インゴット
11 炭化ケイ素層
12 残りの単結晶炭化ケイ素インゴット
20 欠陥層
21 損傷層
30 担体層
41 第1の接合層
42 遷移層
43 第2の接合層
44 第3の接合層
50 カーボン保護膜
60 エピタキシャル層
100 複合基板
Q1 第1の複合構造
Q2 第2の複合構造
Q3 第3の複合構造
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8A
図8B