IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社アマダの特許一覧

特許7433398プレスブレーキ及びプレスブレーキ制御方法
<>
  • 特許-プレスブレーキ及びプレスブレーキ制御方法 図1
  • 特許-プレスブレーキ及びプレスブレーキ制御方法 図2
  • 特許-プレスブレーキ及びプレスブレーキ制御方法 図3
  • 特許-プレスブレーキ及びプレスブレーキ制御方法 図4
  • 特許-プレスブレーキ及びプレスブレーキ制御方法 図5
  • 特許-プレスブレーキ及びプレスブレーキ制御方法 図6
  • 特許-プレスブレーキ及びプレスブレーキ制御方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】プレスブレーキ及びプレスブレーキ制御方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 5/02 20060101AFI20240209BHJP
【FI】
B21D5/02 Q
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022169329
(22)【出願日】2022-10-21
【審査請求日】2023-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】天野 兼秀
(72)【発明者】
【氏名】上杉 悟
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 秀起
【審査官】堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-180339(JP,A)
【文献】特開2015-221447(JP,A)
【文献】特開2016-196044(JP,A)
【文献】特開2004-202545(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パンチを装着する上部テーブルと、
ダイを装着する下部テーブルと、
前記上部テーブルまたは前記下部テーブルを昇降させるテーブル昇降機構と、
板金を前記パンチと前記ダイとで挟んだ状態で、前記テーブル昇降機構によって前記上部テーブルまたは前記下部テーブルを昇降させて前記板金を曲げるときの前記板金の角度を計測する角度センサと、
前記角度センサが計測した前記板金の角度に基づいて前記板金の曲げ角度を算出し、前記テーブル昇降機構による前記上部テーブルまたは前記下部テーブルの昇降を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記板金を目標曲げ角度に曲げるよう前記上部テーブルまたは前記下部テーブルの昇降を制御するとき、
仮曲げ期間において、前記板金を前記目標曲げ角度よりも広い所定の仮曲げ角度に曲げるよう、前記上部テーブルを第1のデプス値だけ下降させるか前記下部テーブルを前記第1のデプス値だけ上昇させるよう前記テーブル昇降機構を制御し、
前記角度センサが計測した前記板金の角度に基づいて、前記仮曲げ角度に曲げられた前記板金の第1の曲げ角度を算出し、
前記板金が前記仮曲げ角度に曲げられた後の除荷期間において、前記パンチが前記板金に接触している状態を維持しつつ前記板金を除荷するよう、前記上部テーブルを上昇させるか前記下部テーブルを下降させるよう前記テーブル昇降機構を制御し、
前記除荷期間において前記板金が除荷された状態で、前記角度センサが計測した前記板金の角度に基づいて前記板金の第2の曲げ角度を算出して、前記第2の曲げ角度と前記第1の曲げ角度との差分に基づくスプリングバック量を算出し、
追い込み期間において、前記板金を前記目標曲げ角度に曲げるための前記スプリングバック量を考慮した第2のデプス値を算出して、前記上部テーブルを前記第2のデプス値だけ下降させるか前記下部テーブルを前記第2のデプス値だけ上昇させるよう前記テーブル昇降機構を制御し、
前記板金が前記目標曲げ角度に曲げられた後の最終角度計測期間において、前記パンチが前記板金に接触している状態を維持しつつ前記板金を除荷するよう、前記上部テーブルを上昇させるか前記下部テーブルを下降させるよう前記テーブル昇降機構を制御して、前記角度センサが計測した前記板金の角度に基づいて前記板金の最終的な曲げ角度を算出する
プレスブレーキ。
【請求項2】
前記制御装置は、前記除荷期間において、前記板金の除荷が完了する前の途中の段階までの除荷のために前記上部テーブルを上昇させる上昇量もしくは前記下部テーブルを下降させる下降量、または前記板金の除荷が完了するまで前記上部テーブルを上昇させる上昇量もしくは前記下部テーブルを下降させる下降量に基づいて、前記最終角度計測期間において前記板金を除荷するために前記上部テーブルを上昇させる上昇量または前記下部テーブルを下降させる下降量を設定する請求項1に記載のプレスブレーキ。
【請求項3】
前記制御装置は、前記除荷期間において前記板金の除荷が完了する前の途中の段階までの除荷のために前記上部テーブルを上昇させる上昇量または前記下部テーブルを下降させる下降量を、前記最終角度計測期間において前記板金を除荷するために前記上部テーブルを上昇させる最初の上昇量または前記下部テーブルを下降させる最初の下降量として設定する請求項2に記載のプレスブレーキ。
【請求項4】
前記制御装置は、前記除荷期間において前記板金の除荷が完了するまで前記上部テーブルを上昇させる上昇量に1未満の所定の係数を乗算した上昇量または前記下部テーブルを下降させる下降量に1未満の所定の係数を乗算した下降量を、前記最終角度計測期間において前記板金を除荷するために前記上部テーブルを上昇させる最初の上昇量または前記下部テーブルを下降させる最初の下降量として設定する請求項2に記載のプレスブレーキ。
【請求項5】
前記制御装置は、前記除荷期間において前記板金の除荷が完了するまで前記上部テーブルを上昇させる上昇量または前記下部テーブルを下降させる下降量を、前記最終角度計測期間において前記板金を1段階で除荷するために前記上部テーブルを上昇させる上昇量または前記下部テーブルを下降させる下降量として設定する請求項2に記載のプレスブレーキ。
【請求項6】
パンチを装着する上部テーブルと、ダイを装着する下部テーブルと、前記上部テーブルまたは前記下部テーブルを昇降させるテーブル昇降機構と、前記パンチと前記ダイとで挟まれて曲げられる板金の角度を計測する角度センサとを備えるプレスブレーキを制御する制御装置が、
仮曲げ期間において、前記板金を目標曲げ角度よりも広い所定の仮曲げ角度に曲げるよう、前記上部テーブルを第1のデプス値だけ下降させるか前記下部テーブルを前記第1のデプス値だけ上昇させるよう前記テーブル昇降機構を制御し、
前記角度センサが計測した前記板金の角度に基づいて、前記仮曲げ角度に曲げられた前記板金の第1の曲げ角度を算出し、
前記板金が前記仮曲げ角度に曲げられた後の除荷期間において、前記パンチが前記板金に接触している状態を維持しつつ前記板金を除荷するよう、前記上部テーブルを上昇させるか前記下部テーブルを下降させるよう前記テーブル昇降機構を制御し、
前記除荷期間において前記板金が除荷された状態で、前記角度センサが計測した前記板金の角度に基づいて前記板金の第2の曲げ角度を算出して、前記第2の曲げ角度と前記第1の曲げ角度との差分に基づくスプリングバック量を算出し、
追い込み期間において、前記板金を前記目標曲げ角度に曲げるための前記スプリングバック量を考慮した第2のデプス値を算出して、前記上部テーブルを第2のデプス値だけ下降させるか前記下部テーブルを前記第2のデプス値だけ上昇させるよう前記テーブル昇降機構を制御し、
前記板金が前記目標曲げ角度に曲げられた後の最終角度計測期間において、前記パンチが前記板金に接触している状態を維持しつつ前記板金を除荷するよう、前記上部テーブルを上昇させるか前記下部テーブルを下降させるよう記テーブル昇降機構を制御して、前記角度センサが計測した前記板金の角度に基づいて前記板金の最終的な曲げ角度を算出する
プレスブレーキ制御方法。
【請求項7】
前記制御装置が、前記除荷期間において、前記板金の除荷が完了する前の途中の段階までの除荷のために前記上部テーブルを上昇させる上昇量もしくは前記下部テーブルを下降させる下降量、または前記板金の除荷が完了するまで前記上部テーブルを上昇させる上昇量もしくは前記下部テーブルを下降させる下降量に基づいて、前記最終角度計測期間において前記板金を除荷するために前記上部テーブルを上昇させる上昇量または前記下部テーブルを下降させる下降量を設定する請求項6に記載のプレスブレーキ制御方法。
【請求項8】
前記除荷期間において前記板金の除荷が完了する前の途中の段階までの除荷のために前記上部テーブルを上昇させる上昇量または前記下部テーブルを下降させる下降量を、前記最終角度計測期間において前記板金を除荷するために前記上部テーブルを上昇させる最初の上昇量または前記下部テーブルを下降させる最初の下降量として設定する請求項7に記載のプレスブレーキ制御方法。
【請求項9】
前記制御装置が、前記除荷期間において前記板金の除荷が完了するまで前記上部テーブルを上昇させる上昇量に1未満の所定の係数を乗算した上昇量または前記下部テーブルを下降させる下降量に1未満の所定の係数を乗算した下降量を、前記最終角度計測期間において前記板金を除荷するために前記上部テーブルを上昇させる最初の上昇量または前記下部テーブルを下降させる最初の下降量として設定する請求項7に記載のプレスブレーキ制御方法。
【請求項10】
前記制御装置が、前記除荷期間において前記板金の除荷が完了するまで前記上部テーブルを上昇させる上昇量または前記下部テーブルを下降させる下降量を、前記最終角度計測期間において前記板金を1段階で除荷するために前記上部テーブルを上昇させる上昇量または前記下部テーブルを下降させる下降量として設定する請求項7に記載のプレスブレーキ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレスブレーキ及びプレスブレーキ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プレスブレーキは、パンチを装着する上部テーブルとダイを装着する下部テーブルとを備え、上部テーブルを下部テーブルへと下降させて、ダイの上に配置された板金をパンチとダイとで挟んで曲げる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4280332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プレスブレーキによって板金を目標曲げ角度に曲げても、スプリングバックによって曲げられた板金の曲げ角度は目標曲げ角度よりも広くなる。そこで、板金を目標曲げ角度に曲げるためには、板金を、スプリングバックを考慮して目標曲げ角度よりも狭い曲げ角度で曲げる必要がある。一方で、最終的に得られた曲げ角度が目標曲げ角度よりも狭いと曲げられた板金を製品として用いることはできず、新たな板金を曲げ加工する必要が生じる。そこで、板金を目標曲げ角度に曲げようとするときには、板金を目標曲げ角度よりも広い曲げ角度に曲げた後に、目標曲げ角度まで徐々に曲げていく追い込み動作が行われる。
【0005】
オペレータは、このように曲げられた板金が実際に目標曲げ角度に曲げられているかをデジタルプロトラクタと称されるデジタル曲げ角度計で計測する。これは、板金の板厚または硬さのばらつきによりスプリングバック量もばらつくから、板金が実際に目標曲げ角度に曲げられているか否かを確認する必要があるからである。デジタル曲げ角度計で曲げられた板金の曲げ角度を計測するには所定の時間を要し、板金の曲げ加工開始から曲げ加工完了後の曲げ角度の確認までの加工時間が長くなる。加工時間をできるだけ短縮することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1またはそれ以上の実施形態の第1の態様は、パンチを装着する上部テーブルと、ダイを装着する下部テーブルと、前記上部テーブルまたは前記下部テーブルを昇降させるテーブル昇降機構と、板金を前記パンチと前記ダイとで挟んだ状態で、前記テーブル昇降機構によって前記上部テーブルまたは前記下部テーブルを昇降させて前記板金を曲げるときの前記板金の角度を計測する角度センサと、前記角度センサが計測した前記板金の角度に基づいて前記板金の曲げ角度を算出し、前記テーブル昇降機構による前記上部テーブルまたは前記下部テーブルの昇降を制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記板金を目標曲げ角度に曲げるよう前記上部テーブルまたは前記下部テーブルの昇降を制御するとき、仮曲げ期間において、前記板金を前記目標曲げ角度よりも広い所定の仮曲げ角度に曲げるよう、前記上部テーブルを第1のデプス値だけ下降させるか前記下部テーブルを前記第1のデプス値だけ上昇させるよう前記テーブル昇降機構を制御し、前記角度センサが計測した前記板金の角度に基づいて、前記仮曲げ角度に曲げられた前記板金の第1の曲げ角度を算出し、前記板金が前記仮曲げ角度に曲げられた後の除荷期間において、前記パンチが前記板金に接触している状態を維持しつつ前記板金を除荷するよう、前記上部テーブルを上昇させるか前記下部テーブルを下降させるよう前記テーブル昇降機構を制御し、前記除荷期間において前記板金が除荷された状態で、前記角度センサが計測した前記板金の角度に基づいて前記板金の第2の曲げ角度を算出して、前記第2の曲げ角度と前記第1の曲げ角度との差分に基づくスプリングバック量を算出し、追い込み期間において、前記板金を前記目標曲げ角度に曲げるための前記スプリングバック量を考慮した第2のデプス値を算出して、前記上部テーブルを前記第2のデプス値だけ下降させるか前記下部テーブルを前記第2のデプス値だけ上昇させるよう前記テーブル昇降機構を制御し、前記板金が前記目標曲げ角度に曲げられた後の最終角度計測期間において、前記パンチが前記板金に接触している状態を維持しつつ前記板金を除荷するよう、前記上部テーブルを上昇させるか前記下部テーブルを下降させるよう前記テーブル昇降機構を制御して、前記角度センサが計測した前記板金の角度に基づいて前記板金の最終的な曲げ角度を算出するプレスブレーキを提供する。
【0007】
1またはそれ以上の実施形態の第1の態様によれば、板金が目標曲げ角度に曲げられたら、パンチが板金に接触している状態を維持しつつ板金を除荷して、角度センサが計測した板金の角度に基づいて板金の最終的な曲げ角度を算出する。従って、オペレータは、板金が実際に目標曲げ角度に曲げられているかをデジタル曲げ角度計で計測する必要はない。これにより、板金の曲げ加工開始から曲げ加工完了後の曲げ角度の確認までの加工時間を短縮することができる。
【0008】
1またはそれ以上の実施形態の第2の態様は、パンチを装着する上部テーブルと、ダイを装着する下部テーブルと、前記上部テーブルまたは前記下部テーブルを昇降させるテーブル昇降機構と、前記パンチと前記ダイとで挟まれて曲げられる板金の角度を計測する角度センサとを備えるプレスブレーキを制御する制御装置が、仮曲げ期間において、前記板金を目標曲げ角度よりも広い所定の仮曲げ角度に曲げるよう、前記上部テーブルを第1のデプス値だけ下降させるか前記下部テーブルを前記第1のデプス値だけ上昇させるよう前記テーブル昇降機構を制御し、前記角度センサが計測した前記板金の角度に基づいて、前記仮曲げ角度に曲げられた前記板金の第1の曲げ角度を算出し、前記板金が前記仮曲げ角度に曲げられた後の除荷期間において、前記パンチが前記板金に接触している状態を維持しつつ前記板金を除荷するよう、前記上部テーブルを上昇させるか前記下部テーブルを下降させるよう前記テーブル昇降機構を制御し、前記除荷期間において前記板金が除荷された状態で、前記角度センサが計測した前記板金の角度に基づいて前記板金の第2の曲げ角度を算出して、前記第2の曲げ角度と前記第1の曲げ角度との差分に基づくスプリングバック量を算出し、追い込み期間において、前記板金を前記目標曲げ角度に曲げるための前記スプリングバック量を考慮した第2のデプス値を算出して、前記上部テーブルを第2のデプス値だけ下降させるか前記下部テーブルを前記第2のデプス値だけ上昇させるよう前記テーブル昇降機構を制御し、前記板金が前記目標曲げ角度に曲げられた後の最終角度計測期間において、前記パンチが前記板金に接触している状態を維持しつつ前記板金を除荷するよう、前記上部テーブルを上昇させるか前記下部テーブルを下降させるよう記テーブル昇降機構を制御して、前記角度センサが計測した前記板金の角度に基づいて前記板金の最終的な曲げ角度を算出するプレスブレーキ制御方法を提供する。
【0009】
1またはそれ以上の実施形態の第2の態様によれば、板金が目標曲げ角度に曲げられたら、パンチが板金に接触している状態を維持しつつ板金を除荷して、角度センサが計測した板金の角度に基づいて板金の最終的な曲げ角度を算出する。従って、オペレータは、板金が実際に目標曲げ角度に曲げられているかをデジタル曲げ角度計で計測する必要はない。これにより、板金の曲げ加工開始から曲げ加工完了後の曲げ角度の確認までの加工時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0010】
1またはそれ以上の実施形態に係るプレスブレーキ及びプレスブレーキ制御方法によれば、板金の曲げ加工開始から曲げ加工完了後の曲げ角度の確認までの加工時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、1またはそれ以上の実施形態に係るプレスブレーキの全体構成を示す図である。
図2図2は、1またはそれ以上の実施形態に係るプレスブレーキが備える角度センサの構成例を示す図である。
図3図3は、図2に示す角度センサが検出する板金の角度を示す図である。
図4図4は、1またはそれ以上の実施形態に係るプレスブレーキが備えるNC装置による制御動作の第1の例を示す図である。
図5図5は、1またはそれ以上の実施形態に係るプレスブレーキが備えるNC装置による制御動作の第2の例を示す図である。
図6図6は、1またはそれ以上の実施形態に係るプレスブレーキが備えるNC装置による制御動作の第3の例を示す図である。
図7図7は、1またはそれ以上の実施形態に係るプレスブレーキの動作及び1またはそれ以上の実施形態に係るプレスブレーキ制御方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1またはそれ以上の実施形態に係るプレスブレーキは、上部テーブル、下部テーブル、テーブル昇降機構、角度センサ、制御装置を備える。前記上部テーブルはパンチを装着し、前記下部テーブルはダイを装着する。前記テーブル昇降機構は前記上部テーブルまたは前記下部テーブルを昇降させる。前記角度センサは、板金を前記パンチと前記ダイとで挟んだ状態で、前記テーブル昇降機構によって前記上部テーブルまたは前記下部テーブルを昇降させて前記板金を曲げるときの前記板金の角度を計測する。前記制御装置は、前記角度センサが計測した前記板金の角度に基づいて前記板金の曲げ角度を算出し、前記テーブル昇降機構による前記上部テーブルまたは前記下部テーブルの昇降を制御する。
【0013】
前記制御装置は、前記板金を目標曲げ角度に曲げるよう上前記部テーブルの昇降を次のように制御する。前記制御装置は、仮曲げ期間において、前記板金を前記目標曲げ角度よりも広い所定の仮曲げ角度に曲げるよう、前記上部テーブルを第1のデプス値だけ下降させるか前記下部テーブルを前記第1のデプス値だけ上昇させるよう前記テーブル昇降機構を制御する。前記制御装置は、前記角度センサが計測した前記板金の角度に基づいて、前記仮曲げ角度に曲げられた前記板金の第1の曲げ角度を算出する。
【0014】
前記制御装置は、前記板金が前記仮曲げ角度に曲げられた後の除荷期間において、前記パンチが前記板金に接触している状態を維持しつつ前記板金を除荷するよう、前記上部テーブルを上昇させるか前記下部テーブルを下降させるよう前記テーブル昇降機構を制御する。前記制御装置は、前記除荷期間において前記板金が除荷された状態で、前記角度センサが計測した前記板金の角度に基づいて前記板金の第2の曲げ角度を算出して、前記第2の曲げ角度と前記第1の曲げ角度との差分に基づくスプリングバック量を算出する。
【0015】
前記制御装置は、追い込み期間において、前記板金を前記目標曲げ角度に曲げるための前記スプリングバック量を考慮した第2のデプス値を算出して、前記上部テーブルを前記第2のデプス値だけ下降させるか前記下部テーブルを前記第2のデプス値だけ上昇させるよう前記テーブル昇降機構を制御する。前記制御装置は、前記板金が前記目標曲げ角度に曲げられた後の最終角度計測期間において、前記パンチが前記板金に接触している状態を維持しつつ前記板金を除荷するよう、前記上部テーブルを上昇させるか前記下部テーブルを下降させるよう前記テーブル昇降機構を制御して、前記角度センサが計測した前記板金の角度に基づいて前記板金の最終的な曲げ角度を算出する。
【0016】
1またはそれ以上の実施形態に係るプレスブレーキ制御方法は、制御装置が、パンチを装着する上部テーブルと、ダイを装着する下部テーブルと、前記上部テーブルまたは前記下部テーブルを昇降させるテーブル昇降機構と、前記パンチと前記ダイとで挟まれて曲げられる板金の角度を計測する角度センサとを備えるプレスブレーキを次のように制御する。
【0017】
前記制御装置が、仮曲げ期間において、前記板金を目標曲げ角度よりも広い所定の仮曲げ角度に曲げるよう、前記上部テーブルを第1のデプス値だけ下降させるか前記下部テーブルを前記第1のデプス値だけ上昇させるよう前記テーブル昇降機構を制御する。前記制御装置が、前記角度センサが計測した前記板金の角度に基づいて、前記仮曲げ角度に曲げられた前記板金の第1の曲げ角度を算出する。
【0018】
前記制御装置が、前記板金が前記仮曲げ角度に曲げられた後の除荷期間において、前記パンチが前記板金に接触している状態を維持しつつ前記板金を除荷するよう、前記上部テーブルを上昇させるか前記下部テーブルを下降させるよう前記テーブル昇降機構を制御する。前記制御装置が、前記除荷期間において前記板金が除荷された状態で、前記角度センサが計測した前記板金の角度に基づいて前記板金の第2の曲げ角度を算出して、前記第2の曲げ角度と前記第1の曲げ角度との差分に基づくスプリングバック量を算出する。
【0019】
前記制御装置が、追い込み期間において、前記板金を前記目標曲げ角度に曲げるための前記スプリングバック量を考慮した第2のデプス値を算出して、前記上部テーブルを第2のデプス値だけ下降させるか前記下部テーブルを前記第2のデプス値だけ上昇させるよう前記テーブル昇降機構を制御する。前記制御装置が、前記板金が前記目標曲げ角度に曲げられた後の最終角度計測期間において、前記パンチが前記板金に接触している状態を維持しつつ前記板金を除荷するよう、前記上部テーブルを上昇させるか前記下部テーブルを下降させるよう記テーブル昇降機構を制御して、前記角度センサが計測した前記板金の角度に基づいて前記板金の最終的な曲げ角度を算出する。
【0020】
以下、1またはそれ以上の実施形態に係るプレスブレーキ及びプレスブレーキ制御方法について、添付図面を参照して具体的に説明する。
【0021】
図1は、1またはそれ以上の実施形態に係るプレスブレーキ100の全体構成を示す。図1に示すように、プレスブレーキ100は、プレスブレーキ100を制御する制御装置として機能するNC(Numerical Control)装置10を備える。NC装置10には、ネットワークを介して、加工プログラムデータベース50が接続されている。プレスブレーキ100は、上部テーブル1、下部テーブル3、左右の側板5R及び5Lを備える。上部テーブル1には上部金型ホルダ2が取り付けられ、下部テーブル3には下部金型ホルダ4が取り付けられている。
【0022】
上部テーブル1は、左右に設けた油圧シリンダ6L及び6Rによって昇降するように構成されている。油圧シリンダ6L及び6Rをテーブル昇降機構6と称することとする。テーブル昇降機構6には、油圧シリンダ6L及び6R以外のアクチュエータが含まれることがある。テーブル昇降機構6は、上部テーブル1を下部テーブル3に近付けるように下降させたり、下部テーブル3から離隔させるよう上昇させたりする。
【0023】
上部金型ホルダ2には上部金型であるパンチTpが装着され、下部金型ホルダ4には下部金型であるダイTdが装着されている。図1においては、上部テーブル1の下端部の全長に渡って上部金型ホルダ2が一体的に取り付けられているモジュラータイプを示しているが、上部テーブル1の下端部の長手方向にパンチTpを装着する複数の中間板が取り付けられる中間板タイプであってもよい。中間板も上部金型ホルダである。
【0024】
上部テーブル1にパンチTpを装着するとは、上部金型ホルダ2または中間板にパンチTpを装着することを意味する。下部テーブル3にダイTdを装着するとは、下部金型ホルダ4にダイTdを装着することを意味する。上部テーブル1に2またはそれ以上のパンチTpが並べて装着されることがあり、下部テーブル3に2またはそれ以上のダイTdが並べて装着されることがある。
【0025】
下部テーブル3の裏面側には、バックゲージ40が配置されている。バックゲージ40は、バックゲージキャレッジ41に沿って左右方向に移動する突き当て42a及び42bを備える。ここでは突き当てを突き当て42a及び42bの2つとしているが、突き当ての数は2つに限定されない。突き当て42a及び42bは高さ方向及び前後方向にも移動するように構成されている。
【0026】
オペレータが加工対象の板金WをダイTd上に配置して板金Wを曲げる前に、突き当て42a及び42bはダイTdと対応する位置に移動する。オペレータは、板金Wの奥側の端部を突き当て42a及び42bに突き当てるようにしてダイTd上に配置する。即ち、突き当て42a及び42bは、板金WをダイTd上に配置するときの板金Wの前後方向の位置を決めるよう作用する。
【0027】
プレスブレーキ100の左側の側方には、アーム7aを介して、表示部71と、複数の操作ボタンを含む操作部72とを有する操作ペンダント7が取り付けられている。操作ペンダント7はNC装置10に接続されている。NC装置10には、上部テーブル1を下降させる閉フットスイッチ81と上部テーブル1を上昇させる開フットスイッチ82とを有するフットスイッチ8が接続されている。
【0028】
図2は、プレスブレーキ100が備える角度センサの構成例を示す。図1においては図示を省略しているが、図2に示すように、プレスブレーキ100は、板金Wを曲げるときの板金Wの角度を計測する角度センサ21F及び21Rを備える。角度センサ21FはダイTdの前方側に配置され、角度センサ21RはダイTdの後方側に配置されている。角度センサ21F及び21Rは、いわゆる接触式角度センサである。角度センサ21F及び21Rは、それぞれ、センサ昇降機構22F及び22Rによって昇降するように構成されている。板金Wの角度を計測する必要があるとき、下方に位置する角度センサ21F及び21Rは、NC装置10による制御に従って、センサ昇降機構22F及び22Rによって上方へと移動する。
【0029】
角度センサ21F及び21Rは、本体部211と、本体部211に対して出没自在の突出部212とを有する。突出部212の上端部には、わずかに突出した先端部213が設けられている。図2に示す板金Wを曲げる加工開始前の状態で、角度センサ21F及び21Rの突出部212は最も突出していない状態にある。図3は、角度センサ21F及び21Rが検出する板金Wの角度を示す。図3に示すように、パンチTpが下降して板金Wが曲げられると、突出部212は板Wが上方へと変位するのに応じて上方へと突出する。
【0030】
図3に示すように、角度センサ21Fが計測する板Wの角度とは、ダイTdの上端面を延長した一点鎖線で示す面を基準面として、基準面とパンチTp及びダイTdよりも前方側の板Wの部分とがなす角度αFである。角度センサ21Rが計測する板Wの角度とは、基準面とパンチTp及びダイTdよりも後方側の板Wの部分とがなす角度αRである。図2に示すように、角度センサ21F及び21Rが計測する角度αF及びαRはNC装置10に入力される。NC装置10は、180-αF-αRなる計算式によって、図3に示す板Wの曲げ角度θを算出する。
【0031】
板金Wの角度を計測する角度センサは接触式角度センサに限定されず、レーザ式角度センサであってもよい。角度センサとしてレーザ式角度センサを用いる場合、センサ昇降機構22F及び22Rは必要なく、前方側及び後方側のレーザ式角度センサは高さ方向に固定の位置にある。前方側及び後方側のレーザ式角度センサは、パンチTp及びダイTdよりも前方側及び後方側の板Wの部分に線状のレーザ光を照射するレーザ発光部と、板Wに照射されている線状のレーザ光を撮影する撮像部とを有する。NC装置10は、撮像部による撮影画像の線状のレーザ光の角度に基づいて角度αF及びαRに相当する板Wの角度を求めて板Wの曲げ角度θを算出する。
【0032】
以上のように構成されるプレスブレーキ100において、NC装置10は、加工プログラムに従って、第1~第3の例の制御動作で板Wを曲げ加工するようプレスブレーキ100を制御する。
【0033】
図4は、NC装置10による制御動作の第1の例を示す。図4図6において、横軸は時間、縦軸はパンチTpの先端の高さ方向の位置を示している。図4図6においては、パンチTpの先端の高さ方向の位置の変化を理解しやすいよう、位置R3と位置F3との間を拡大した状態で示している。位置R3から位置F3までの距離は0.1mm~0.2mm程度である。また、後述する接触位置から位置F3までの距離は2mm~3mm程度である。
【0034】
Wの目標曲げ角度を例えば90度とする。NC装置10は、板金Wを目標曲げ角度の90度に曲げるよう上部テーブル1の昇降を図4に示すように制御する。NC装置10が上部テーブル1の下降を開始させると、パンチTpの先端が板金Wに接触する。NC装置10は、上部テーブル1をパンチTpの先端が図4の接触位置に位置している状態で停止させ、突き当て42a及び42bを板金Wから離隔させる。
【0035】
NC装置10は、パンチTpの先端が板金Wに接触した後の仮曲げ期間において、パンチTpの先端の位置を位置T1まで下降させて一旦停止させ、さらに位置T2まで下降させる。図4においては、上部テーブル1(パンチTp)を2段階で下降させているが、下降の段階は2段階に限定されない。
【0036】
仮曲げ期間における位置T2は、目標曲げ角度の90度よりも広い所定の仮曲げ角度に曲げるための位置である。NC装置10は、仮曲げ期間において、板Wを仮曲げ角度に曲げるための第1のデプス値だけ上部テーブル1を下降させるようテーブル昇降機構6を制御する。パンチTpの先端が板金Wに接触した後に板金Wを仮曲げ角度に曲げるためのパンチTpの第1のデプス値は、曲げ理論に基づいて予め求められている。デプス値とは、パンチTpの先端が板金Wに接触した接触位置を基準としたときのパンチTpの下降量である。即ち、デプス値とはパンチTpの先端の高さ方向の位置を示す。以下、デプス値をD値と略記する。
【0037】
NC装置10は、仮曲げ動作の完了時に、角度センサ21F及び21Rが計測した板金Wの角度に基づいて板金Wの第1の曲げ角度θ1を算出する。NC装置10は、板金Wの仮曲げ動作の完了時の第1の曲げ角度θ1を保持する。
【0038】
板金Wが仮曲げ角度に曲げられたら、NC装置10はプレスブレーキ100を除荷期間に移行させる。除荷期間において、NC装置10は、パンチTpが板金Wに接触している状態を維持しつつ、板金Wを除荷するよう、上部テーブル1を複数の段階で順に上昇させるよう制御する。除荷とは板金Wにかかっている荷重を取り除くことである。
【0039】
図4において、NC装置10は、パンチTpの先端の位置を位置R1まで上昇させて一旦停止させ、角度センサ21F及び21Rが計測した板金Wの角度に基づいて板金Wの曲げ角度を算出する。続けて、NC装置10は、パンチTpの先端の位置を位置R2まで上昇させて一旦停止させ、板金Wの曲げ角度を算出する。このとき、位置R1での曲げ角度と位置R2での曲げ角度との差が閾値以内であれば、板金Wの除荷が完了しているということである。図4は、位置R2において板金Wの除荷が完了していない例を示している。そこで、NC装置10は、パンチTpの先端の位置を位置R3まで上昇させて一旦停止させ、板金Wの曲げ角度を算出する。位置R2での曲げ角度と位置R3での曲げ角度との差が閾値以内であり、位置R3で板金Wの除荷が完了している。
【0040】
板金Wの除荷が何段階で完了するかは、位置T2から位置R1までの距離、位置R1から位置R2までの距離等の各種の条件によって異なる。図4においては、位置R1、R2、R3の互いの間隔を比較的長い距離とした粗い段階としているが、一度にパンチTpの先端の位置を上昇させる距離を微細に設定した細かい段階としてもよい。この場合、NC装置10は、パンチTpの先端の位置を微細な距離だけ上昇させて板金Wの曲げ角度を算出する処理を連続的に繰り返す。微細な距離を一定の距離とすれば、パンチTpの先端の位置は、厳密には微細な階段状ではあるものの実質的に直線状に上昇しながら、各時点で板金Wの曲げ角度が算出されることになる。
【0041】
除荷期間において板金Wが除荷された状態で、NC装置10は、角度センサ21F及び21Rが計測した板金Wの角度に基づいて板金Wの第2の曲げ角度θ2を算出する。仮曲げ期間において第1の曲げ角度θ1に曲げても、除荷期間において板金Wが除荷されると、スプリングバックによって曲げ角度が広がる。第2の曲げ角度θ2は、スプリングバックによって広がった板金Wの曲げ角度である。NC装置10は、第2の曲げ角度θ2から第1の曲げ角度θ1を減算することにより、スプリングバック量を算出する。
【0042】
除荷期間において第2の曲げ角度θ2と第1の曲げ角度θ1との差分に基づくスプリングバック量が得られれば、NC装置10はプレスブレーキ100を追い込み期間に移行させる。NC装置10は、板金Wを目標曲げ角度に曲げるためのスプリングバック量を考慮した第2のD値を算出する。単純には、スプリングバック量が例えば2度であるとすると、目標曲げ角度を88度にして、板金Wを曲げ角度88度で曲げることができる下降量だけ上部テーブル1を下降させることが考えられる。ところが、一般的に目標曲げ角度によってスプリングバック量は異なるから、除荷期間において得られたスプリングバック量をそのまま用いて目標曲げ角度を設定しても目標曲げ角度の90度とはならないことがある。
【0043】
そこで、NC装置10は、除荷期間で得られたスプリングバック量をそのまま用いるのではなく、除荷期間で得られたスプリングバック量を補正した上で板金Wを設定した目標曲げ角度に曲げるための第2のD値を算出するのがよい。
【0044】
追い込み期間において、NC装置10は、第2のD値を複数に分割することにより上部テーブル1を複数の段階で順に第2のD値だけ下降させるようテーブル昇降機構6を制御する。図4においては、NC装置10は、パンチTpの先端の位置を位置R3から位置F1まで下降させて一旦停止させ、板金Wの角度に基づいて板金Wの曲げ角度を算出する。続けて、NC装置10は、位置F1での曲げ角度を考慮してパンチTpの先端の位置を位置F2まで下降させて一旦停止させ、板金Wの角度に基づいて板金Wの曲げ角度を算出する。さらに、NC装置10は、位置F2での曲げ角度を考慮してパンチTpの先端の位置を板金Wの最終的な曲げ角度が目標曲げ角度の90度となる位置F3まで下降させる。
【0045】
ここでは、追い込み期間における追い込み動作を3段階としているが、1段階であってもよいし、2段階であってもよいし、4段階以上であってもよい。追い込み動作の段階は限定されない。
【0046】
板金Wが目標曲げ角度に曲げられたら、NC装置10はプレスブレーキ100を最終角度計測期間に移行させる。NC装置10は、パンチTpが板金Wに接触している状態を維持しつつ板金Wを除荷して、角度センサ21F及び21Rが計測した板金Wの角度に基づいて板金Wの最終的な曲げ角度を算出する。
【0047】
図4において、NC装置10は、パンチTpの先端の位置を位置L1まで上昇させて一旦停止させ、板金Wの曲げ角度を算出する。続けて、NC装置10は、パンチTpの先端の位置を位置L2まで上昇させて一旦停止させ、板金Wの曲げ角度を算出する。除荷期間における除荷と同様に、位置L2での曲げ角度と位置L1での曲げ角度との差が閾値以内であれば、板金Wの除荷が完了しているということである。位置L2での曲げ角度と位置L1での曲げ角度との差が閾値以内であり、位置L2で板金Wの除荷が完了している。板金Wが除荷された状態で、NC装置10は板金Wの最終的な曲げ角度を算出する。続けて、NC装置10は、上部テーブル1を上昇させるようテーブル昇降機構6を制御する。
【0048】
図4において、仮曲げ期間終了時のパンチTpの先端の位置T2から板金Wの除荷が完了している位置R3より前の途中の段階である位置R2までの上部テーブル1の上昇量をU2とする。図4に示す第1の例においては、上昇量U2を、最終角度計測期間における最初の上部テーブル1の上昇量である、追い込み期間終了時のパンチTpの先端の位置F3から位置L1までの上昇量として設定している。
【0049】
このように、第1の例においては、追い込み期間終了後に角度センサ21F及び21Rによって板金Wの最終的な曲げ角度を算出するから、オペレータがデジタル曲げ角度計で最終的な曲げ角度を計測する必要はない。よって、板金Wの曲げ加工開始から曲げ加工完了後の曲げ角度の確認までの加工時間を短縮することができる。加えて、第1の例においては、除荷期間における板金Wの除荷が完了する前の途中の段階までの除荷のために上部テーブル1を上昇させる上昇量U2を最終角度計測期間における最初の上部テーブル1の上昇量に設定している。従って、第1の例によれば、最終角度計測期間における除荷に要する時間を短縮することができる。
【0050】
図5は、NC装置10による制御動作の第2の例を示す。図5において、図4と同一部分には同一符号を付し、その説明を省略する。第2の例においても、第1の例と同様に、上部テーブル1を、仮曲げ期間において2段階で下降させ、追い込み期間において3段階で下降させている。第2の例においても、除荷期間において3段階で除荷が完了し、最終角度計測期間において2段階で除荷が完了して、上部テーブル1を上昇させている。
【0051】
図5において、仮曲げ期間終了時のパンチTpの先端の位置T2から板金Wの除荷が完了している位置R3までの上部テーブル1の上昇量をU3とする。図5に示す第2の例においては、上昇量U3に1未満の所定の係数kを乗算した上昇量を、最終角度計測期間における最初の上部テーブル1の上昇量として設定している。最終角度計測期間において、板金Wが除荷された状態で、NC装置10は板金Wの最終的な曲げ角度を算出した後に、上部テーブル1を上昇させるようテーブル昇降機構6を制御する。第2の例によれば、最終角度計測期間における除荷に要する時間を短縮することができる。
【0052】
図6は、NC装置10による制御動作の第3の例を示す。図6において、図4と同一部分には同一符号を付し、その説明を省略する。第3の例においては、第1及び第2の例と同様に、上部テーブル1を、仮曲げ期間において2段階で下降させ、追い込み期間において3段階で下降させている。第3の例においては、除荷期間において3段階で除荷が完了し、最終角度計測期間において1段階で板金Wを除荷が完了して、上部テーブル1を上昇させている。
【0053】
図6に示す第3の例においては、仮曲げ期間終了時のパンチTpの先端の位置T2から板金Wの除荷が完了している位置R3までの上部テーブル1の上昇量U3を、最終角度計測期間において板金Wを1段階で除荷するために上部テーブル1を上昇させる上昇量として設定している。最終角度計測期間において、板金Wが除荷された状態で、NC装置10は板金Wの最終的な曲げ角度を算出した後に、上部テーブル1を上昇させるようテーブル昇降機構6を制御する。第3の例によれば、最終角度計測期間における除荷に要する時間を短縮することができる。
【0054】
以上の第1~第3の例のように、プレスブレーキ100においては、除荷期間における板金Wの除荷が完了する前の途中の段階までの上部テーブル1の上昇量または板金Wの除荷が完了するまでの上部テーブル1の上昇量を、最終角度計測期間における上部テーブル1の上昇量に反映させている。従って、最終角度計測期間における除荷に要する時間を短縮することができるから、板金Wの曲げ加工開始から曲げ加工完了後の曲げ角度の確認までの加工時間を短縮することができる。
【0055】
図7に示すフローチャートを用いて、プレスブレーキ100の動作及びプレスブレーキ100が実行するプレスブレーキ制御方法を説明する。図7において、NC装置10は、曲げ加工の処理が開始されると、ステップS1にて、板金Wを目標曲げ角度より広い所定の仮曲げ角度に曲げるよう、上部テーブル1を第1のD値だけ下降させるようテーブル昇降機構6を制御する。NC装置10は、ステップS2にて、板金Wの第1の曲げ角度θ1を算出する。
【0056】
NC装置10は、ステップS3にて、板金Wの除荷が完了するまで上部テーブル1を上昇させるようテーブル昇降機構6を制御する。NC装置10は、ステップS4にて、板金Wの第2の曲げ角度θ2を算出する。NC装置10は、ステップS5にて、第2の曲げ角度θ2と第1の曲げ角度θ1との差分に基づいてスプリングバック量を算出する。
【0057】
NC装置10は、ステップS6にて、スプリングバック量を考慮して板金Wを目標曲げ角度に曲げるための、上部テーブル1の第2のD値を算出する。NC装置10は、ステップS7にて、上部テーブル1を第2のD値に基づいて1またはそれ以上の段階で下降させて、板金Wを目標曲げ角度に曲げるようテーブル昇降機構6を制御する。NC装置10は、ステップS8にて、板金Wの除荷が完了するまで上部テーブル1を上昇させた後、板金Wの最終的な曲げ角度を算出する。NC装置10は、ステップS9にて、上部テーブル1を上昇させて曲げ加工の処理を終了させる。
【0058】
以上の図7に示す処理は、複数枚の板金Wを順に曲げ加工するときの各板金Wに対して実行される。よって、各板金Wの曲げ加工において、板金Wが実際に目標曲げ角度に曲げられているか否かを確認することができる。
【0059】
本発明は以上説明した1またはそれ以上の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。以上説明した1またはそれ以上の実施形態においては、上部テーブル1を昇降可能なスライドテーブル、下部テーブル3を位置が固定されている固定テーブルとしているが、上部テーブル1を固定テーブル、下部テーブル3をスライドテーブルとすることも可能である。この場合、テーブル昇降機構6は下部テーブル3を昇降させる。上部テーブル1の上昇及び下降はそれぞれ下部テーブル3の下降及び上昇と読み替えられ、上部テーブル1の第1の下降量及び第2の下降量は下部テーブル3の第1の上昇量及び第2の上昇量と読み替えられる。
【0060】
1またはそれ以上の実施形態においては、パンチTpの先端が板金Wに接触した接触位置を基準としたときのパンチTpの下降量をD値としているが、ダイTdの先端の位置を基準としたときのダイTdの先端とパンチTpの先端との間の距離をD値としてもよい。この場合においても、D値はパンチTpの先端の高さ方向の位置を示す。
【符号の説明】
【0061】
1 上部テーブル
2 上部金型ホルダ
3 下部テーブル
4 下部金型ホルダ
5L,5R 側板
6 テーブル昇降機構
6L,6R 油圧シリンダ(テーブル昇降機構)
7 操作ペンダント
8 フットスイッチ
10 NC装置
21F,21R 角度センサ
22F,22R センサ昇降機構
40 バックゲージ
41 バックゲージキャレッジ
42a,42b 突き当て
100 プレスブレーキ
Td ダイ
Tp パンチ
W 板金
【要約】
【課題】板金の曲げ加工開始から曲げ加工完了後の曲げ角度の確認までの加工時間を短縮することができるプレスブレーキを提供する。
【解決手段】制御装置(NC装置10)は、板金Wを目標曲げ角度よりも広い仮曲げ角度に曲げるようテーブル昇降機構6を制御する。制御装置は、角度センサ21F及び21Rが計測した板金Wの角度に基づいて仮曲げ角度に曲げられた板金Wの第1の曲げ角度を算出する。制御装置は、板金Wを除荷して板金Wの第2の曲げ角度を算出し、スプリングバック量を算出する。制御装置は、板金Wを目標曲げ角度に曲げるためのスプリングバック量を考慮した下降量を算出して上部テーブル1を下降させるようテーブル昇降機構6を制御する。制御装置は、板金Wが目標曲げ角度に曲げられたら板金Wを除荷して、板金Wの角度に基づいて板金Wの最終的な曲げ角度を算出する。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7