(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】リンパ系検査装置及びリンパ系検査方法
(51)【国際特許分類】
A61B 10/00 20060101AFI20240209BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20240209BHJP
【FI】
A61B10/00 E
G01N21/64 F
(21)【出願番号】P 2022177499
(22)【出願日】2022-11-04
【審査請求日】2023-10-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】鹿山 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】村越 崇宏
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 太加之
(72)【発明者】
【氏名】水野 利彦
【審査官】磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-118803(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0030542(US,A1)
【文献】米国特許第9167240(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/398
A61B 10/00
G01N 21/64
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンパ系に蛍光色素が注入された被験者が立つ載置部を有し、前記載置部上の撮像領域に前記被験者の下半身を位置させる本体部と、
前記下半身に励起光を照射する照明部と、
前記励起光の照射に応じて前記下半身から発せられた蛍光を検出する撮像部と、
前記撮像部によって検出された前記蛍光に基づいて生成された前記下半身の蛍光像を表示する表示部と、
前記照明部、前記撮像部及び前記表示部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記照明部の発光時間及び前記撮像部の露光時間の少なくとも一方が変更されるように前記照明部及び前記撮像部の少なくとも一方を制御することで、前記蛍光像として複数種の蛍光像を生成し、前記複数種の蛍光像が並んで表示されるように前記表示部を制御する、リンパ系検査装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記複数種の蛍光像のそれぞれを1秒以下の時間で生成する、請求項1に記載のリンパ系検査装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記励起光を閃光として発するように前記照明部を制御する、請求項1に記載のリンパ系検査装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記被験者について過去に生成された前記蛍光像を記憶しており、過去に生成された前記蛍光像及び新たに生成された前記蛍光像が並んで表示されるように前記表示部を制御する、請求項1に記載のリンパ系検査装置。
【請求項5】
リンパ系検査装置において実施されるリンパ系検査方法であって、
前記リンパ系検査装置は、
リンパ系に蛍光色素が注入された被験者が立つ載置部を有し、前記載置部上の撮像領域に前記被験者の下半身を位置させる本体部と、
前記下半身に励起光を照射する照明部と、
前記励起光の照射に応じて前記下半身から発せられた蛍光を検出する撮像部と、
前記撮像部によって検出された前記蛍光に基づいて生成された前記下半身の蛍光像を表示する表示部と、を備え、
前記リンパ系検査方法は、
前記照明部の発光時間及び前記撮像部の露光時間の少なくとも一方が変更されるように前記照明部及び前記撮像部の少なくとも一方を制御することで、前記蛍光像として複数種の蛍光像を生成するステップと、
前記複数種の蛍光像が並んで表示されるように前記表示部を制御するステップと、を備える、リンパ系検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リンパ系検査装置及びリンパ系検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リンパ系は、リンパ液の循環系として機能するネットワークであり、リンパ節、リンパ管等によって構成されている。リンパ系の疾患(例えば、リンパ浮腫)を診断するための検査方法として、リンパ系にインドシアニングリーン等の蛍光色素が注入された被験者の所定部位に励起光を照射し、励起光の照射に応じて当該所定部位から発せられた蛍光を検出することで、当該所定部位の蛍光像を取得する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような検査に使用される装置には、励起光の照射範囲及び蛍光の検出範囲が狭い範囲に限られ、被験者の下半身におけるリンパ系の検査を効率良く実施することが難しいという課題がある。
【0005】
本発明は、被験者の下半身におけるリンパ系の検査に好適なリンパ系検査装置及びリンパ系検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のリンパ系検査装置は、[1]「リンパ系に蛍光色素が注入された被験者が立つ載置部を有し、前記載置部上の撮像領域に前記被験者の下半身を位置させる本体部と、前記下半身に励起光を照射する照明部と、前記励起光の照射に応じて前記下半身から発せられた蛍光を検出する撮像部と、前記撮像部によって検出された前記蛍光に基づいて生成された前記下半身の蛍光像を表示する表示部と、前記照明部、前記撮像部及び前記表示部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記照明部の発光時間及び前記撮像部の露光時間の少なくとも一方が変更されるように前記照明部及び前記撮像部の少なくとも一方を制御することで、前記蛍光像として複数種の蛍光像を生成し、前記複数種の蛍光像が並んで表示されるように前記表示部を制御する、リンパ系検査装置」である。
【0007】
上記[1]に記載のリンパ系検査装置では、照明部の発光時間及び撮像部の露光時間の少なくとも一方が変更されることで、被験者の下半身の蛍光像として、複数種の蛍光像が生成され、当該複数種の蛍光像が並んで表示される。蛍光の強度は、下半身におけるリンパ系の状態に応じて変化するものの、前述のように生成されて表示された複数種の蛍光像から、下半身におけるリンパ系の状態を適切に把握することができる。よって、上記[1]に記載のリンパ系検査装置によれば、被験者の下半身におけるリンパ系の検査を適切に実施することができる。
【0008】
本発明のリンパ系検査装置は、[2]「前記制御部は、前記複数種の蛍光像のそれぞれを1秒以下の時間で生成する、上記[1]に記載のリンパ系検査装置」であってもよい。当該[2]に記載のリンパ系検査装置によれば、被験者の下半身がぶれるのを抑制しつつ複数種の蛍光像を取得することができる。
【0009】
本発明のリンパ系検査装置は、[3]「前記制御部は、前記励起光を閃光として発するように前記照明部を制御する、上記[1]又は[2]に記載のリンパ系検査装置」であってもよい。当該[3]に記載のリンパ系検査装置によれば、被験者の下半身に照射される励起光の光量の変化を抑制しつつ複数種の蛍光像を取得することができる。
【0010】
本発明のリンパ系検査装置は、[4]「前記制御部は、前記被験者について過去に生成された前記蛍光像を記憶しており、過去に生成された前記蛍光像及び新たに生成された前記蛍光像が並んで表示されるように前記表示部を制御する、上記[1]~[3]のいずれか一つに記載のリンパ系検査装置」であってもよい。当該[4]に記載のリンパ系検査装置によれば、被験者の下半身におけるリンパ系の状態の経時的な変化を適切に把握することができる。
【0011】
本発明のリンパ系検査方法は、[5]「リンパ系検査装置において実施されるリンパ系検査方法であって、前記リンパ系検査装置は、リンパ系に蛍光色素が注入された被験者が立つ載置部を有し、前記載置部上の撮像領域に前記被験者の下半身を位置させる本体部と、前記下半身に励起光を照射する照明部と、前記励起光の照射に応じて前記下半身から発せられた蛍光を検出する撮像部と、前記撮像部によって検出された前記蛍光に基づいて生成された前記下半身の蛍光像を表示する表示部と、を備え、前記リンパ系検査方法は、前記照明部の発光時間及び前記撮像部の露光時間の少なくとも一方が変更されるように前記照明部及び前記撮像部の少なくとも一方を制御することで、前記蛍光像として複数種の蛍光像を生成するステップと、前記複数種の蛍光像が並んで表示されるように前記表示部を制御するステップと、を備える、リンパ系検査方法」である。
【0012】
上記[5]に記載のリンパ系検査方法によれば、照明部の発光時間及び撮像部の露光時間の少なくとも一方が変更されることで、被験者の下半身の蛍光像として、複数種の蛍光像が生成され、当該複数種の蛍光像が並んで表示される。蛍光の強度は、下半身におけるリンパ系の状態に応じて変化するものの、前述のように生成されて表示された複数種の蛍光像から、下半身におけるリンパ系の状態を適切に把握することができる。よって、上記[5]に記載のリンパ系検査方法によれば、被験者の下半身におけるリンパ系の検査を適切に実施することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、被験者の下半身におけるリンパ系の検査に好適なリンパ系検査装置及びリンパ系検査方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】一実施形態のリンパ系検査装置の斜視図である。
【
図3】
図2に示されるIII-III線に沿っての装置本体の断面図である。
【
図4】
図3に示されるIV-IV線に沿っての装置本体の断面図である。
【
図5】
図3に示されるV-V線に沿っての装置本体の断面図である。
【
図7】輝度較正用の第2プレートが配置された装置本体の断面図である。
【
図9】
図8に示される対象物についての複数種の蛍光像が表示された表示部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
図1に示されるリンパ系検査装置1は、リンパ系の疾患(例えば、リンパ浮腫)を診断するために、被験者Sの下半身におけるリンパ系の検査を実施する装置である。より具体的には、リンパ系検査装置1は、リンパ系にインドシアニングリーン等の蛍光色素が注入された被験者Sの下半身に励起光を照射し、励起光の照射に応じて当該下半身から発せられた蛍光を検出することで、当該下半身の蛍光像を取得する装置である。以下、鉛直方向をZ方向といい、第1水平方向をX方向といい、第1水平方向に垂直な第2水平方向をY方向という。
【0017】
図1に示されるように、リンパ系検査装置1は、装置本体10と、制御部11と、表示部12と、入力部13と、を備えている。制御部11は、処理部及び記憶部によって構成されている。制御部11の処理部は、プロセッサ、メモリ、ストレージ及び通信デバイス等によって構成されたコンピュータ装置であり、ソフトウェア(プログラム)を実行することで各種データを処理する。制御部11の記憶部は、ハードディスク等であり、各種データを記憶する。表示部12は、ディスプレイ等であり、オペレータに各種データを表示する。入力部13は、マウス及びキーボード等であり、オペレータから各種データの入力を受け付ける。
【0018】
図2、
図3、
図4及び
図5に示されるように、装置本体10は、本体部2を備えている。本体部2は、載置部21と、支持部22と、を有している。本体部2において、載置部21は、被験者Sが立つ部分であり、支持部22は、載置部21に対してX方向における一方の側に配置された部分である。本体部2は、載置部21上の撮像領域Rに被験者Sの下半身L(すなわち、下腹部から爪先までの部分)を位置させる。載置部21及び支持部22のそれぞれの下面には、複数のキャスター23が取り付けられている。これにより、装置本体10のスムーズな移動が可能となっている。
【0019】
本体部2は、フレーム24と、壁部25と、を更に有している。フレーム24は、第1フレーム241及び第2フレーム242によって構成されている。第1フレーム241は、載置部21に取り付けられており、第2フレーム242は、支持部22に取り付けられている。壁部25は、第1壁部251及び第2壁部252によって構成されている。第1壁部251は、第1フレーム241を介して載置部21に取り付けられており、第2壁部252は、第2フレーム242を介して支持部22に取り付けられている。支持部22、第2フレーム242及び第2壁部252によって構成されたユニットは、載置部21、第1フレーム241及び第1壁部251によって構成されたユニットに対して着脱可能である。一例として、X方向における各ユニットの幅及びY方向における各ユニットの幅は70cm以下である。これにより、各ユニットの可搬性を向上させることができる。
【0020】
壁部25は、載置部21及び支持部22上において、筐体250を構成している。筐体250は、載置部21上において、撮像領域Rを画定している。筐体250には、撮像領域Rを介して載置部21と向かい合うように開口25aが形成されている。開口25aの内側には、被験者Sの腰の部分が位置する。つまり、壁部25には、被験者Sが内側に配置される開口25aが形成されている。筐体250の内面は、例えば、黒色とされている。なお、第1壁部251では、第2壁部252とは反対側の壁部分251aによって扉が構成されている。これにより、載置部21に対する被験者Sの乗り降りが可能となっている。
【0021】
本体部2は、規制部26を更に有している。規制部26は、撮像領域Rの上端部Raに沿って配置されている。規制部26は、X方向における一方の側(支持部22側)への被験者Sの移動を規制する。本実施形態では、規制部26は、撮像領域Rの上端部Raに沿ってY方向に延在しており、開口25aを横切った状態で第1フレーム241に掛け渡されている。
図6に示されるように、規制部26は、バー材261及びクッション材262によって構成されている。バー材261は、第1フレーム241に掛け渡された芯材である。クッション材262は、バー材261に巻かれた弾性材である。
【0022】
図2、
図3、
図4及び
図5に示されるように、装置本体10は、照明部3と、撮像部4と、距離センサ5と、を更に備えている。照明部3、撮像部4及び距離センサ5は、撮像領域Rに対してX方向における一方の側(支持部22側)に配置されている。筐体250は、支持部22上において、照明部3、撮像部4及び距離センサ5を収容している。
【0023】
照明部3は、下半身Lに励起光を照射する。照明部3は、Y方向において互いに離れた状態で並んだ第1発光領域31及び第2発光領域32を有している。第1発光領域31及び第2発光領域32のそれぞれは、撮像領域Rと向かい合った状態でZ方向に延在している。第1発光領域31及び第2発光領域32は、X方向において撮像領域Rに近付くほどY方向において互いに遠ざかるように配置されている。第1発光領域31は、複数の第1発光部分31aを含んでおり、第2発光領域32は、複数の第2発光部分32aを含んでいる。照明部3は、各第1発光部分31aの発光強度及び各第2発光部分32aの発光強度を調整する機能を有している。第1発光部分31a及び第2発光部分32aのそれぞれは、例えば、735nmの中心波長を有する光を出射する複数のLEDによって構成されている。照明部3は、第2フレーム242に取り付けられている。つまり、照明部3は、第2フレーム242を介して支持部22によって支持されている。
【0024】
撮像部4は、励起光の照射に応じて下半身Lから発せられた蛍光を検出する。撮像部4は、第1発光領域31と第2発光領域32との間の領域を介して撮像領域Rと向かい合っている。撮像部4は、照明部3に対してX方向における一方の側(撮像領域Rとは反対側)に配置されている。つまり、照明部3は、X方向において、撮像領域Rと撮像部4との間に位置している。撮像部4は、X方向から見た場合に、撮像領域Rの中心に位置している。本実施形態では、撮像部4は、第2フレーム242のうち支持部22側から上側に延在している部材であるバー材242aに取り付けられている。つまり、撮像部4は、第2フレーム242を介して支持部22によって支持されている。
【0025】
一例として、撮像部4は、光検出器、光検出器の前段に配置されたフィルタ、及びフィルタの前段に配置されたレンズ等によって構成されている。光検出器には、蛍光(例えば、近赤外領域の光)に感度を有するエリアセンサ(例えば、CCD、CMOS等)が用いられる。フィルタには、蛍光を選択的に透過させる蒸着フィルタが用いられる。フィルタは、斜め光の影響を除去するため吸収フィルタを含んでいてもよい。レンズには、下半身Lの全体の撮像が可能となるように、広角なレンズが用いられる。
【0026】
距離センサ5は、撮像領域Rに位置する下半身Lまでの距離を測定する。距離センサ5は、例えば、超音波式の距離センサ、又は、三角測量方式若しくはToF方式等の光学的な距離センサでもよい。距離センサ5は、第1発光領域31と第2発光領域32との間の領域を介して撮像領域Rと向かい合っている。距離センサ5は、照明部3に対してX方向における一方の側(撮像領域Rとは反対側)に配置されている。距離センサ5は、X方向から見た場合に、Y方向においては撮像領域Rの中心に位置している。本実施形態では、距離センサ5は、第2フレーム242のうち支持部22とは反対側から下側に延在している部材であるバー材242bに取り付けられている。つまり、距離センサ5は、第2フレーム242を介して支持部22によって支持されている。なお、距離センサ5によって測定された距離に基づいて、下半身Lに照射される励起光の強度が均一になるように照明部3の発光強度が調整されてもよい。このような照明部3の発光強度の調整は、別途設けられた光検出器によって検出された励起光の強度に基づいて実施されてもよい。
【0027】
図3に示されるように、装置本体10は、カメラ6を備えている。カメラ6は、載置部21と向かい合い且つ撮像部4の視野に入らないように第1フレーム241に取り付けられている。筐体250は、載置部21上において、カメラ6を収容している。筐体250内の空間は、被験者Sに装着された状態で開口25aを覆うカバー7によって、暗室とされる。カメラ6は、暗室となる筐体250内の空間において、被験者Sの足元を撮像するものであるため、照明装置及び撮像装置によって構成されたものであってもよいし、赤外カメラ等の撮像装置のみによって構成されたものであってもよい。カメラ6によって取得された画像は、表示部12によって表示されることで、被験者Sに示される。なお、カメラ6は、規制部26に取り付けられていてもよいし、第2フレーム242に取り付けられていてもよい。カメラ6が、照明装置及び撮像装置によって構成されたものである場合、照明装置が撮像装置から離れていてもよい。
【0028】
図5に示されるように、載置部21には、被験者Sの立ち位置を示す位置決め部8が設けられている。本実施形態では、位置決め部8は、被験者Sが撮像部4側に向いた状態での足型81と、被験者Sが撮像部4とは反対側に向いた状態での足型82と、を含んでいる。各足型81,82は、載置部21の載置面21aに形成されたマークである。位置決め部8は、カメラ6によって撮像される。
【0029】
図6に示されるように、規制部26における撮像部4側の表面26aには、第1プレート14及びスケール15が取り付けられている。第1プレート14は、輝度較正用のプレートである。一例として、第1プレート14は、励起光の照射に応じて発せられる蛍光の強度が互いに異なる複数種の部材(例えば、布及びアクリル板)によって構成されている。スケール15は、長さを示す目盛を有する部材である。
図7に示されるように、本体部2に対しては、第2プレート16が着脱可能である。第2プレート16は、撮像部4とは反対側から規制部26に接触した状態で撮像領域Rに位置するように本体部2に配置される。第2プレート16は、輝度較正用のプレートであり、例えば、アクリル板である。
【0030】
以上のように構成されたリンパ系検査装置1では、制御部11は、照明部3、撮像部4、距離センサ5、カメラ6、表示部12及び入力部13のそれぞれと電気的に接続されている。制御部11は、撮像部4の撮像タイミングに合わせて、励起光を閃光として発するように照明部3を制御する。これにより、下半身Lの撮像時に下半身Lに照射される励起光の光量が変化するのを抑制することができる。制御部11は、撮像部4によって検出された蛍光に基づいて下半身Lの蛍光像を生成し、下半身Lの蛍光像を表示するように表示部12を制御する。制御部11は、被験者Sについて過去に生成された下半身Lの蛍光像を記憶しており、過去に生成された下半身Lの蛍光像及び新たに生成された下半身Lの蛍光像が並んで表示されるように表示部12を制御することが可能である。また、制御部11は、下半身Lの可視光像及び下半身Lの蛍光像が並んで表示されるように表示部12を制御することが可能である。更に、制御部11は、入力部13を介して制御部11に入力された指示に基づいて、少なくとも一つの下半身Lの像(可視光像、蛍光像)の一部が拡大されるように表示部12を制御することが可能である。
【0031】
本実施形態では、制御部11は、照明部3の発光時間及び撮像部4の露光時間の少なくとも一方が変更されるように照明部3及び撮像部4の少なくとも一方を制御することで、下半身Lの蛍光像として複数種の蛍光像を生成し、複数種の蛍光像が並んで表示されるように表示部12を制御する。つまり、リンパ系検査装置1では、照明部3の発光時間及び撮像部4の露光時間の少なくとも一方が変更されるように(すなわち、撮像部4における露光量が変更されるように)照明部3及び撮像部4の少なくとも一方を制御することで、下半身Lの蛍光像として複数種の蛍光像を生成するステップと、複数種の蛍光像が並んで表示されるように表示部12を制御するステップと、を備えるリンパ系検査方法が実施される。
【0032】
当該リンパ系検査方法において、制御部11は、複数種の蛍光像のそれぞれを1秒以下の時間(すなわち、入力部13を介して制御部11に撮像指示が入力されてから1秒以下の時間)で生成する。なお、撮像部4における露光量の変更は、照明部3の発光時間、照明部3の発光強度、撮像部4の露光時間、撮像部4のセンサゲイン及び撮像部4のレンズ絞りの少なくとも一つが変更されることで実施されてもよい。
【0033】
図8は、対象物の可視光像を示す図であり、
図9は、
図8に示される対象物についての複数種の蛍光像Iが表示された表示部12を示す図である。
図8に示される対象物は、上下方向に延在する蛍光体が貼り付けられた腕モデルに白紙が巻かれたものである。白紙は、上から順に一重、二重、三重の状態で、蛍光体を覆っている。
図9に示される複数種の蛍光像Iは、照明部3の発光時間及び撮像部4の露光時間が1000ms、500ms、250ms、125ms、62.5msとされて生成された画像である。白紙一重の部分では、照明部3の発光時間及び撮像部4の露光時間が500ms以上である場合に、蛍光の散乱によって、実際の蛍光体よりもかなり太く観察されてしまう。白紙二重の部分では、照明部3の発光時間及び撮像部4の露光時間が125ms以上である場合に、蛍光体の視認が可能である。白紙三重の部分では、照明部3の発光時間及び撮像部4の露光時間が500ms以上である場合に、蛍光体の視認が可能である。以上のことから、照明部3の発光時間及び撮像部4の露光時間の少なくとも一方を調整することで、下半身Lにおけるリンパ系の状態を適切に把握し得ることが分かる。
【0034】
以上説明したように、リンパ系検査装置1では、照明部3が有する第1発光領域31及び第2発光領域32のそれぞれが、撮像領域Rと向かい合った状態でZ方向に延在しており、撮像部4が、第1発光領域31と第2発光領域32との間の領域を介して撮像領域Rと向かい合っている。これにより、撮像領域Rに位置する被験者Sの下半身Lに励起光を均一に照射することができ、均一な励起光の照射に応じて下半身Lから発せられた蛍光を検出することができる。よって、リンパ系検査装置1によれば、被験者Sの下半身Lにおけるリンパ系の検査用として適切な下半身Lの蛍光像を取得することができる。
【0035】
リンパ系検査装置1では、X方向から見た場合に、撮像部4が撮像領域Rの中心に位置している。これにより、取得した蛍光像に歪が生じるのを抑制することができる。
【0036】
リンパ系検査装置1では、X方向において、照明部3が撮像領域Rと撮像部4との間に位置している。これにより、撮像領域Rに位置する被験者Sの下半身Lに励起光をより均一に照射することができる。
【0037】
リンパ系検査装置1では、照明部3が、各第1発光部分31aの発光強度及び各第2発光部分32aの発光強度を調整する機能を有している。これにより、撮像領域Rに位置する被験者Sの下半身Lの形状等に応じて、当該下半身Lに励起光を均一に照射することができる。
【0038】
リンパ系検査装置1では、第1発光領域31及び第2発光領域32が、X方向において撮像領域Rに近付くほどY方向において互いに遠ざかるように配置されている。これにより、撮像領域Rに位置する被験者Sの下半身Lに励起光をより均一に照射することができる。
【0039】
また、リンパ系検査装置1では、被験者Sの下半身Lが位置する撮像領域Rに対してX方向における一方の側に照明部3及び撮像部4が配置されており、撮像領域Rの上端部Raに沿って配置された規制部26によって、X方向における一方の側への被験者Sの移動が規制される。これにより、照明部3と被験者Sの下半身Lとの間の距離、及び、撮像部4と被験者Sの下半身Lとの間の距離を一定に維持することができると共に、被験者Sの下半身Lがぶれるのを抑制することができる。よって、リンパ系検査装置1によれば、被験者Sの下半身Lにおけるリンパ系の検査用として適切な下半身Lの蛍光像を取得することができる。
【0040】
リンパ系検査装置1では、規制部26がY方向に延在しており、輝度較正用の第1プレート14が規制部26における撮像部4側の表面26aに配置されている。これにより、取得した蛍光像ごとに蛍光像の輝度を調整することができる。
【0041】
リンパ系検査装置1では、規制部26がY方向に延在しており、スケール15が規制部26における撮像部4側の表面26aに配置されている。これにより、取得した蛍光像から下半身Lの各部位のサイズを把握することができる。
【0042】
リンパ系検査装置1では、輝度較正用の第2プレート16が、撮像部4とは反対側から規制部26に接触した状態で撮像領域Rに位置するように本体部2に配置される。これにより、リンパ系検査装置1ごとに蛍光像の輝度を調整することができる。
【0043】
リンパ系検査装置1では、撮像領域Rに対してX方向における一方の側に距離センサ5が配置されている。これにより、X方向における被験者Sの下半身Lの位置を正確に把握することができる。
【0044】
また、リンパ系検査装置1(及び上述したリンパ系検査方法)では、照明部3の発光時間及び撮像部4の露光時間の少なくとも一方が変更されることで、被験者Sの下半身Lの蛍光像として、複数種の蛍光像が生成され、当該複数種の蛍光像が並んで表示される。蛍光の強度は、下半身Lにおけるリンパ系の状態に応じて変化するものの、前述のように生成されて表示された複数種の蛍光像から、下半身Lにおけるリンパ系の状態を適切に把握することができる。よって、リンパ系検査装置1(及び上述したリンパ系検査方法)によれば、被験者Sの下半身Lにおけるリンパ系の検査を適切に実施することができる。
【0045】
リンパ系検査装置1では、制御部11が、複数種の蛍光像のそれぞれを1秒以下の時間で生成する。これにより、被験者Sの下半身Lがぶれるのを抑制しつつ複数種の蛍光像を取得することができる。
【0046】
リンパ系検査装置1では、制御部11が、励起光を閃光として発するように照明部3を制御する。これにより、被験者Sの下半身Lに照射される励起光の光量の変化を抑制しつつ複数種の蛍光像を取得することができる。
【0047】
リンパ系検査装置1では、制御部11が、被験者Sについて過去に生成された下半身Lの蛍光像を記憶しており、過去に生成された下半身Lの蛍光像及び新たに生成された下半身Lの蛍光像が並んで表示されるように表示部12を制御する。これにより、被験者Sの下半身Lにおけるリンパ系の状態の経時的な変化を適切に把握することができる。
【0048】
また、リンパ系検査装置1では、被験者Sが立つ載置部21に、被験者Sの立ち位置を示す位置決め部8が設けられている。これにより、照明部3と被験者Sの下半身Lとの間の距離、及び、撮像部4と被験者Sの下半身Lとの間の距離を一定に維持することができると共に、照明部3及び撮像部4に対する被験者Sの両足の向きを所定の向きに合わせることができる。よって、リンパ系検査装置1によれば、被験者Sの下半身Lにおけるリンパ系の検査用として適切な下半身Lの蛍光像を取得することができる。
【0049】
リンパ系検査装置1では、位置決め部8が、被験者Sが撮像部4側に向いた状態での足型81と、被験者Sが撮像部4とは反対側に向いた状態での足型82と、を含んでいる。これにより、被験者Sが撮像部4側に向いた状態、及び、被験者Sが撮像部4とは反対側に向いた状態のそれぞれの状態において、照明部3及び撮像部4に対する被験者Sの両足の向きを所定の向きに合わせることができる。
【0050】
リンパ系検査装置1では、撮像領域Rを画定し且つ照明部3及び撮像部4を収容する筐体250を壁部25が構成しており、被験者Sが内側に配置される開口25aが壁部25に形成されている。これにより、外乱光の影響を抑制しつつ被験者Sの下半身Lの蛍光像を取得することができる。
【0051】
リンパ系検査装置1では、被験者Sに装着されたカバー7が開口25aを覆う。これにより、外乱光の影響をより確実に抑制しつつ被験者Sの下半身Lの蛍光像を取得することができる。
【0052】
リンパ系検査装置1では、支持部22及び第2壁部252が、載置部21及び第1壁部251に対して着脱可能である。これにより、リンパ系検査装置1の可搬性を向上させることができる。
【0053】
リンパ系検査装置1では、カメラ6によって位置決め部8が撮像される。これにより、被験者Sが位置決め部8を直接視認することが難しい場合にも、被験者Sが、カメラ6によって取得された画像を視認しつつ、立ち位置を位置決め部8に合わせることができる。
【0054】
本発明は、上述した各実施形態に限定されない。例えば、
図10に示されるように、規制部26における撮像部4(
図3参照)とは反対側の表面26bは、被験者Sの下腹部に沿うように(すなわち、撮像部4側に凹むように)湾曲する曲面であってもよい。また、位置決め部8は、足型81,82に代えて、又は、足型81,82と共に、被験者Sの足型に合うように載置面21aに設けられた凹部又は凸部であってもよい。また、照明部3、撮像部4、距離センサ5、カメラ6及び規制部26の少なくとも一つは、位置調整及び角度調整の少なくとも一方が可能となるように、フレーム24に取り付けられていてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1…リンパ系検査装置、2…本体部、3…照明部、4…撮像部、5…距離センサ、6…カメラ、7…カバー、8…位置決め部、11…制御部、12…表示部、14…第1プレート、15…スケール、16…第2プレート、21…載置部、22…支持部、25…壁部、25a…開口、26…規制部、26a…表面、31…第1発光領域、31a…第1発光部分、32…第2発光領域、32a…第2発光部分、81,82…足型、250…筐体、251…第1壁部、252…第2壁部、L…下半身、R…撮像領域、Ra…上端部、S…被験者。
【要約】
【課題】被験者の下半身におけるリンパ系の検査に好適なリンパ系検査装置及びリンパ系検査方法を提供する。
【解決手段】リンパ系検査装置は、リンパ系に蛍光色素が注入された被験者Sが立つ載置部21を有し、載置部21上の撮像領域Rに被験者Sの下半身Lを位置させる本体部2と、下半身Lに励起光を照射する照明部3と、励起光の照射に応じて下半身Lから発せられた蛍光を検出する撮像部4と、撮像部4によって検出された蛍光に基づいて生成された下半身Lの蛍光像を表示する表示部と、照明部3、撮像部4及び表示部を制御する制御部と、を備える。制御部は、照明部3の発光時間及び撮像部4の露光時間の少なくとも一方が変更されるように照明部3及び撮像部4の少なくとも一方を制御することで、蛍光像として複数種の蛍光像を生成し、複数種の蛍光像が並んで表示されるように表示部を制御する。
【選択図】
図3