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特許7433402トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]及びその組成物の製造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]及びその組成物の製造
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/416 20060101AFI20240209BHJP
   C07D 231/56 20060101ALI20240209BHJP
   C07F 15/00 20060101ALI20240209BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20240209BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240209BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240209BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240209BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240209BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240209BHJP
【FI】
A61K31/416
C07D231/56 Z
C07F15/00 A
A61K9/19
A61K47/12
A61K47/26
A61K47/02
A61P35/00
A61P35/02
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022186393
(22)【出願日】2022-11-22
(62)【分割の表示】P 2020511873の分割
【原出願日】2018-05-07
(65)【公開番号】P2023016867
(43)【公開日】2023-02-02
【審査請求日】2022-11-22
(31)【優先権主張番号】62/501,984
(32)【優先日】2017-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508319174
【氏名又は名称】インテザイン テクノロジーズ, インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】519395053
【氏名又は名称】ボジコフスキー, トーマス
(73)【特許権者】
【識別番号】519395064
【氏名又は名称】シル, ケビン
(73)【特許権者】
【識別番号】519395112
【氏名又は名称】カリー, アダム
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ボジコフスキー, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】シル, ケビン
(72)【発明者】
【氏名】カリー, アダム
【審査官】石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-531065(JP,A)
【文献】特表2010-529202(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103601759(CN,A)
【文献】国際公開第97/036595(WO,A1)
【文献】特表2013-530983(JP,A)
【文献】Berta Cebrian-Losantos et al.,Synthesis and Reactivity of the Aquation Product of the Antitumor Complex trans-[RuIIICl4(indazole)2,Inorganic Chemistry,2008年,vol.47, no.14,pp.6513-6523
【文献】Wolfgang Peti et al.,Synthesis of Tumor-Inhibiting Complex Salts Containing the Anion trans-Tetrachlorobis(indazole)ruthe,European Journal of Inorganic Chemistry,1999年,no.9,pp.1551-1555
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
C07D 231/56
C07F 15/00
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムと、クエン酸ナトリウムと、クエン酸と、マンニトールと、
mer,トランス-[Ru III Cl (Hind) (H O)]と、
セシウム塩
を含み、
前記トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムが非晶質である、組成物。
【請求項2】
mer,トランス-[Ru III Cl (Hind) (H O)]が、前記組成物の約0.01~約0.4重量パーセントであり、
セシウムが、前記組成物の約0.00001~約0.01重量パーセントである、
請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
mer,トランス-[Ru III Cl (Hind) (H O)]が、前記組成物の約0.01~約0.3重量パーセントであり、
セシウムが、前記組成物の約0.00001~約0.01重量パーセントである、
請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
mer,トランス-[Ru III Cl (Hind) (H O)]が、前記組成物の約0.01~約0.2重量パーセントであり、
セシウムが、前記組成物の約0.00001~約0.01重量パーセントである、
請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が凍結乾燥粉末である、請求項1~4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムが、前記組成物の約40~約60重量パーセントであり、
マンニトールが、前記組成物の約40~約60重量パーセントであり、
クエン酸が、前記組成物の約0.01~約0.5重量パーセントであり、
クエン酸ナトリウムが、前記組成物の約0.001~約0.25重量パーセンテージである、
請求項1~5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
Ru III Cl (Hind) (H O)と、Ru III Cl (Hind) (CH CN)と、Ru III Cl (Hind)(HN=C(Me)ind)とをさらに含む、請求項1~6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
前記Ru III Cl (Hind) (H O)が、前記組成物の約0.5重量パーセンテージ以下であり、
前記Ru III Cl (Hind) (CH CN)が、前記組成物の約1.25重量パーセンテージ以下であり、
前記Ru III Cl (Hind)(HN=C(Me)ind)が、前記組成物の約1.0重量パーセンテージ以下である、
請求項7に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年5月5日に出願された米国仮特許出願第62/501,984号による利益を主張する。当該仮出願の全体は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は、概して化学合成に関し、詳細には、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]のアルカリ金属塩を作製する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウム(別称KP1339、NKP-1339、IT-139、及びNa[RuIIICl(Hind)])の調製のためのいくつかの方法が文献に存在する。例えば、W.Peti et al,Eur.J.Inorg.Chem.1999,1551-1555には、以下の合成スキームが開示されている。
【化1】
【0004】
この方法では、テトラメチルアンモニウムクロリド塩の限られた溶解性により、結果として大量の溶媒が要件となる。さらに、テトラメチルアンモニウム塩の使用に関しては毒性の懸念が存在する。米国特許第8,362,266号には追加的なプロセスが記載されている。このプロセスは、化合物M-トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)](Mは、アルカリ金属カチオンである)を作製する方法であって、(1)水性溶液中で、または水と水溶性の第1の有機溶媒との混合液中で、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]インダゾリウムを当該アルカリ金属カチオンMの無機塩と反応させて、化合物M-トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]及びインダゾールの無機塩を形成するステップと、(2)実質的に水溶性ではない第2の有機溶媒を用いて、当該M-トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]から当該インダゾールを抽出するステップとを含む、方法を提供する。この方法は、下記のスキームに集約される。
【化2】
【0005】
上記の方法は有効であるものの、抽出ステップ及び関連する保持時間が必要であることにより、有効なバッチサイズが限定され得る。また、化合物の純度は、化合物が塩基性水性環境中にある時間の長さに直接的に関連する。この方法における全体的収率は、20~35%である。そのため、抽出プロセスを利用せず、水性塩基性環境を回避し、収率が高く、そして高い純度レベルで化合物を生成する方法が非常に望ましい。さらに、抽出及び大量の有機溶媒を回避する方法論も望ましい。主に沈殿に着目し、次いで濾過に着目した方法論が、この要求を満たすと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第8,362,266号明細書
【非特許文献】
【0007】
【文献】W.Peti et al,Eur.J.Inorg.Chem.1999,1551-1555
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】調製し、冷蔵(2~8℃)及び室温(18~22℃)で保存したバルク溶液中のIT-139原薬の純度。
図2】冷蔵(2~8℃)で18時間保存したIT-139におけるHPLCクロマトグラム。
図3】室温(18~22℃)で18時間保存したIT-139におけるHPLCクロマトグラム。
図4】米国特許第8,362,266に開示されている以前の合成方法論を用いて調製した式I-bにおける、HPLC法#3を用いたHPLCクロマトグラム。
図5】以前の合成方法論を用いて調製した式I-bにおける、HPLC法#2を用いたHPLCクロマトグラム。
図6】本発明の合成方法論を用いて調製した式I-bにおける、HPLC法#3を用いたHPLCクロマトグラム。
図7】本発明の合成方法論を用いて調製した式I-bにおける、HPLC法#2を用いたHPLCクロマトグラム。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のある特定の実施形態における詳細な説明
1.概略的説明
本明細書で説明されるように、本発明は、トランス-[テトラクロロビス(1H-イン
ダゾール)ルテニウム酸(III)]のアルカリ金属塩を調製するための方法を提供する。このような化合物は、式Iの化合物を含む。
【化3】
[式中、Mは、アルカリ金属カチオンである]
【0010】
本発明は、このような化合物の調製に有用な合成中間体を提供する。
【0011】
また、本発明は、下記の式I-aに示すトランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]セシウムの調製のための方法も提供する。
【化4】
【0012】
また、本発明は、下記の式I-bに示すトランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムの調製のための方法も提供する。
【化5】
【0013】
2.定義
トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナト
リウム、KP1339、NKP-1339、IT-139、及びNa[RuIIICl(Hind)]は、全て同じ化合物(式I-b)に相当し、これらの語が互換的に使用され得ることを理解されたい。
【0014】
本明細書で使用する場合、非晶質という用語は、長距離規則度が欠如した非結晶性の固体を指す。
【0015】
本発明の化合物には上記で一般的に記載されたものが含まれ、本発明の化合物はさらに、本明細書で開示されている実施形態、サブ実施形態、及び種によって説明される。本明細書で使用する場合、別段の指示がない限り、以下の定義が適用される。本発明の目的において、化学元素は、the Periodic Table of the Elements,CAS version,Handbook of Chemistry and Physics,75th Ed.に従って同定される。加えて、有機化学の一般的原理は、“Organic Chemistry”,Thomas Sorrell,University Science Books,Sausalito:1999、及び“March’s Advanced Organic Chemistry”,5th Ed.,Ed.:Smith,M.B.and March,J.,John Wiley & Sons,New York:2001に記載されている。
【0016】
本明細書で使用する場合、「脂肪族」または「脂肪族基」という用語は、直鎖(すなわち、非分枝状)、分枝状、または環式(縮合、架橋、及びスピロ縮合多環式を含む)であり得る炭化水素部分を示し、完全に飽和している場合もあれば、1つ以上の不飽和の(ただし、芳香族ではない)単位を含有する場合もある。別段の指定がない限り、脂肪族基は、1~20個の炭素原子を含有する。一部の実施形態において、脂肪族基は、1~10個の炭素原子を含有する。他の実施形態において、脂肪族基は、1~8個の炭素原子を含有する。なお他の実施形態において、脂肪族基は、1~6個の炭素原子を含有し、また他の実施形態において、脂肪族基は、1~4個の炭素原子を含有する。脂肪族基としては、以下に限定されないが、直鎖状または分枝状のアルキル、アルケニル、及びアルキニル基、ならびにこれらのハイブリッド、例えば、(シクロアルキル)アルキル、(シクロアルケニル)アルキル、または(シクロアルキル)アルケニルが挙げられる。
【0017】
「ヘテロ原子」という用語は、酸素、硫黄、窒素、リン、またはケイ素のうちの1つ以上を意味する。このヘテロ原子には、窒素、硫黄、リン、またはケイ素の任意の酸化形態;任意の塩基性窒素の4級化形態、または複素環式環の置換可能な窒素(3,4-ジヒドロ-2H-ピロリルにおけるような=N-、ピロリジニルにおけるような-NH-、またはN-置換ピロリジニルにおけるような=N(R)-を含む)が含まれる。
【0018】
本明細書で使用する場合、「不飽和」という用語は、ある部分が1つ以上の不飽和単位を有することを意味する。
【0019】
本明細書で使用する場合、「二価の、飽和または不飽和の、直鎖または分枝状のC1-12炭化水素鎖」という用語は、本明細書で定義される通りに直鎖または分枝状である二価のアルキレン、アルケニレン、及びアルキニレン鎖を指す。
【0020】
単体で使用される「アリール」、または「アラルキル」、「アラルコキシ」、もしくは「アリールオキシアルキル」におけるようなより大きな部分の一部としての「アリール」という用語は、合計で5~14環員を有する単環式、二環式、及び三環式の環系であって、系内の少なくとも1つの環が芳香族であり、系内の各環が3~7環員を含有する環系を指す。「アリール」という用語は、「アリール環」という用語と互換的に使用され得る。
【0021】
本明細書で説明する場合、本発明の化合物は、「任意選択で置換された」部分を含有してもよい。概して、「置換された」という用語は、「任意選択で」という用語が先行するかしないかにかかわらず、指示された部分における1つ以上の水素が好適な置換基で置き換えられていることを意味する。別段の指示がない限り、「任意選択で置換された」基は、当該基のそれぞれの置換可能な位置に好適な置換基を有することができ、任意の所与の構造内の2つ以上の位置が、指定された基から選択される2つ以上の置換基で置換され得る場合、置換基は、あらゆる位置において同じであっても異なっていてもよい。本発明で想定される置換基の組合せは、好ましくは、安定性のまたは化学的に実現可能な化合物の形成をもたらす組合せである。本明細書で使用する場合、「安定性の」という用語は、化合物であって、その生成、検出、及びある特定の実施形態においてはその回収、精製、ならびに本明細書で開示されている目的のうちの1つ以上のための使用を可能にする条件に供された場合に、実質的に改変されない化合物を指す。
【0022】
「任意選択で置換された」基の置換可能な炭素原子上にある一価の置換基は、独立的に、ハロゲン;-(CH0-4;-(CH0-4OR;-O-(CH0-4C(O)OR;-(CH0-4CH(OR;-(CH0-4SR;-(CH0-4Ph(Rで置換されてもよい);-(CH0-4O(CH0-1Ph(Rで置換されてもよい);-CH=CHPh(Rで置換されてもよい);-NO;-CN;-N;-(CH0-4N(R;-(CH0-4N(R)C(O)R;-N(R)C(S)R;-(CH0-4N(R)C(O)NR ;-N(R)C(S)NR ;-(CH0-4N(R)C(O)OR;-N(R)N(R)C(O)R;-N(R)N(R)C(O)NR ;-N(R)N(R)C(O)OR;-(CH0-4C(O)R;-C(S)R;-(CH0-4C(O)OR;-(CH0-4C(O)SR;-(CH0-4C(O)OSiR ;-(CH0-4OC(O)R;-OC(O)(CH0-4SR-、SC(S)SR;-(CH0-4SC(O)R;-(CH0-4C(O)NR ;-C(S)NR ;-C(S)SR;-SC(S)SR°、-(CH0-4OC(O)NR ;-C(O)N(OR)R;-C(O)C(O)R;-C(O)CHC(O)R;-C(NOR)R;-(CH0-4SSR;-(CH0-4S(O);-(CH0-4S(O)OR;-(CH0-4OS(O);-S(O)NR ;-(CH0-4S(O)R;-N(R)S(O)NR ;-N(R)S(O);-N(OR)R;-C(NH)NR ;-P(O);-P(O)R ;-OP(O)R ;-OP(O)(OR;SiR ;-(C1-4直鎖もしくは分枝状のアルキレン)O-N(R;または-(C1-4直鎖もしくは分枝状のアルキレン)C(O)O-N(Rであり、このとき、各Rは、下記に定義されるように置換されてもよく、かつ独立的に、水素、C1-6脂肪族、-CHPh、-O(CH0-1Ph、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立的に選択される0~4個のヘテロ原子を有する、5~6員の飽和、部分不飽和、もしくはアリールの環であり、あるいは、上記の定義にかかわらず、Rの2つの独立的な存在は、介在原子(複数可)と共に、窒素、酸素、または硫黄から独立的に選択される0~4個のヘテロ原子を有する3~12員の飽和、部分不飽和、またはアリールの単環式または二環式環を形成し、これは下記に定義されるように置換されてもよい。
【0023】
(または2つの独立的なRの存在を介在原子と共に一緒にすることにより形成される環)上にある一価の置換基は、独立的に、ハロゲン、-(CH0-2、-(ハロR)、-(CH0-2OH、-(CH0-2OR、-(CH0-2CH(OR;-O(ハロR)、-CN、-N、-(CH0-2C(O)R、-(CH0-2C(O)OH、-(CH0-2C(O)OR、-(CH0-2SR、-(CH0-2SH、-(CH0-2NH、-(CH
-2NHR、-(CH0-2NR 、-NO、-SiR 、-OSiR 、-C(O)SR -(C1-4直鎖もしくは分枝状のアルキレン)C(O)OR、または-SSRであり、このとき、各Rは、非置換であるか、または「ハロ」が先行する場合は1個以上のハロゲンのみで置換され、かつ独立的に、C1-4脂肪族、-CHPh、-O(CH0-1Ph、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立的に選択される0~4個のヘテロ原子を有する5~6員の飽和、部分不飽和、もしくはアリールの環から選択される。このようなRの飽和炭素原子上にある二価の置換基としては、=O及び=Sが挙げられる。
【0024】
「任意選択で置換された」基の飽和炭素原子上にある二価の置換基としては、=O、=S、=NNR 、=NNHC(O)R、=NNHC(O)OR、=NNHS(O)、=NR、=NOR、-O(C(R ))2-3O-、または-S(C(R ))2-3S-が挙げられ、このとき、Rの各々の独立的な存在は、水素、C1-6脂肪族(下記に定義されるように置換されてもよい)、または、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立的に選択される0~4個のヘテロ原子を有する非置換の5~6員の飽和、部分不飽和、もしくはアリールの環から選択される。「任意選択で置換された」基の隣位の置換可能な炭素に結合した二価の置換基としては、-O(CR 2-3O-が挙げられ、このとき、Rの各々の独立的な存在は、水素、C1-6脂肪族(下記に定義されるように置換されてもよい)、または、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立的に選択される0~4個のヘテロ原子を有する非置換の5~6員の飽和、部分不飽和、もしくはアリールの環から選択される。「任意選択で置換された」基の隣位の置換可能なメチレン炭素に結合している四価の置換基は、ジコバルトヘキサカルボニルクラスターであり、それを有するメチレンと共に図示した場合、
【化6】
によって表される。
【0025】
の脂肪族基上にある好適な置換基としては、ハロゲン、-R、-(ハロR)、-OH、-OR、-O(ハロR)、-CN、-C(O)OH、-C(O)OR、-NH、-NHR、-NR 、または-NOが挙げられ、このとき、各Rは、非置換であるか、または「ハロ」が先行する場合は1個以上のハロゲンのみで置換され、かつ独立的に、C1-4脂肪族、-CHPh、-O(CH0-1Ph、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立的に選択される0~4個のヘテロ原子を有する5~6員の飽和、部分不飽和、もしくはアリールの環である。
【0026】
「任意選択で置換された」基の置換可能な窒素上にある好適な置換基としては、-R、-NR 、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)C(O)R、-C(O)CHC(O)R、-S(O)、-S(O)NR 、-C(S)NR 、-C(NH)NR 、または-N(R)S(O)が挙げられ、このとき、各Rは、独立的に、水素、C1-6脂肪族(下記に定義されるように置換されてもよい)、非置換-OPh、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立的に選択される0~4個のヘテロ原子を有する5~6員の飽和、部分不飽和、もしくはアリールの環であり、あるいは、上記の定義にかかわらず、Rの2つの独立的な存在は、介在原子(複数可)と共に、窒素、酸素、または硫黄から独立的に選択される0~4個のヘテロ原子を有する3~12員の飽和、部分不飽和、またはアリールの単環式または二環式環を形成する。
【0027】
の脂肪族基上にある好適な置換基は、独立的に、ハロゲン、-R、-(ハロR)、-OH、-OR、-O(ハロR)、-CN、-C(O)OH、-C(O)OR
、-NH、-NHR、-NR 、または-NOであり、このとき、各Rは、非置換であるか、または「ハロ」が先行する場合は1個以上のハロゲンのみで置換され、かつ独立的に、C1-4脂肪族、-CHPh、-O(CH0-1Ph、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立的に選択される0~4個のヘテロ原子を有する5~6員の飽和、部分不飽和、もしくはアリールの環である。
【0028】
保護ヒドロキシル基は当技術分野で周知されており、詳細はProtecting Groups in Organic Synthesis,T.W.Greene and P.G.M.Wuts,3rd edition,John Wiley & Sons,1999に記載されている(この全体が参照により本明細書に援用される)。好適な保護ヒドロキシル基の例としては、さらに、以下に限定されないが、エステル、カーボネート、スルホネートアリルエーテル、エーテル、シリルエーテル、アルキルエーテル、アリールアルキルエーテル、及びアルコキシアルキルエーテルが挙げられる。好適なエステルの例としては、フォルメート、アセテート、プロピオネート、ペンタノエート、クロトネート、及びベンゾエートが挙げられる。好適なエステルの具体的な例としては、フォルメート、ベンゾイルフォルメート、クロロアセテート、トリフルオロアセテート、メトキシアセテート、トリフェニルメトキシアセテート、p-クロロフェノキシアセテート、3-フェニルプロピオネート、4-オキソペンタノエート、4,4-(エチレンジチオ)ペンタノエート、ピバロエート(pivaloate)(トリメチルアセテート)、クロトネート、4-メトキシ-クロトネート、ベンゾエート、p-ベニルベンゾエート(p-benylbenzoate)、2,4,6-トリメチルベンゾエートが挙げられる。カーボネートの例としては、9-フルオレニルメチル、エチル、2,2,2-トリクロロエチル、2-(トリメチルシリル)エチル、2-(フェニルスルホニル)エチル、ビニル、アリル、及びp-ニトロベンジルカーボネートが挙げられる。シリルエーテルの例としては、トリメチルシリル、トリエチルシリル、t-ブチルジメチルシリル、t-ブチルジフェニルシリル、トリイソプロピルエーテル、及びその他のトリアルキルシリルエーテルが挙げられる。アルキルエーテルの例としては、メチル、ベンジル、p-メトキシベンジル、3,4-ジメトキシベンジル、トリチル、t-ブチル、及びアリルエーテル、またはこれらの誘導体が挙げられる。アルコキシアルキルエーテルとしては、アセタール、例えば、メトキシメチル、メチルチオメチル、(2-メトキシエトキシ)メチル、ベンゾイルオキシメチル、ベータ-(トリメチルシリル)エトキシメチル、及びテトラヒドロピラン-2-イルエーテルが挙げられる。アリールアルキルの例としては、ベンジル、p-メトキシベンジル(MPM)、3,4-ジメトキシベンジル、O-ニトロベンジル、p-ニトロベンジル、p-ハロベンジル、2,6-ジクロロベンジル、p-シアノベンジル、2-及び4-ピコリルエーテルが挙げられる。
【0029】
保護アミンは当技術分野で周知されており、Greene(1999)で詳細に記載されているものが挙げられる。モノ保護アミンとしては、さらに、以下に限定されないが、アラルキルアミン、カルバメート、アリルアミン、アミドなどが挙げられる。モノ保護アミノ部分の例としては、t-ブチルオキシカルボニルアミノ(-NHBOC)、エチルオキシカルボニルアミノ、メチルオキシカルボニルアミノ、トリクロロエチルオキシカルボニルアミノ、アリルオキシカルボニルアミノ(-NHAlloc)、ベンジルオキソカルボニルアミノ(-NHCBZ)、アリルアミノ、ベンジルアミノ(-NHBn)、フルオレニルメチルカルボニル(-NHFmoc)、ホルムアミド、アセトアミド、クロロアセトアミド、ジクロロアセトアミド、トリクロロアセトアミド、フェニルアセトアミド、トリフルオロアセトアミド、ベンズアミド、t-ブチルジフェニルシリルなどが挙げられる。ジ-保護アミンとしては、モノ保護アミンとして上述されているものから独立的に選択される2つの置換基で置換されているアミンが挙げられ、さらに、環式イミド、例えば、フタルイミド、マレイミド、スクシンイミドなどが挙げられる。また、ジ-保護アミンとしては、ピロールなど、2,2,5,5-テトラメチル-[1.2.5]アザジシロリジ
ンなど、及びアジドも挙げられる。
【0030】
保護アルデヒドは当技術分野で周知されており、Greene(1999)で詳細に記載されているものが挙げられる。保護アルデヒドとしては、さらに、以下に限定されないが、非環式アセタール、環式アセタール、ヒドラゾン、イミンなどが挙げられる。このような基の例としては、ジメチルアセタール、ジエチルアセタール、ジイソプロピルアセタール、ジベンジルアセタール、ビス(2-ニトロベンジル)アセタール、1,3-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、セミカルバゾン、及びこれらの誘導体が挙げられる。
【0031】
保護カルボン酸は当技術分野で周知されており、Greene(1999)で詳細に記載されているものが挙げられる。保護カルボン酸としては、さらに、以下に限定されないが、任意選択で置換されたC1-6脂肪族エステル、任意選択で置換されたアリールエステル、シリルエステル、活性化エステル、アミド、ヒドラジドなどが挙げられる。このようなエステル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ベンジル、及びフェニルエステルが挙げられ、このとき、各基は任意選択で置換されている。追加的な保護カルボン酸としては、オキサゾリン及びオルトエステルが挙げられる。
【0032】
保護チオールは当技術分野で周知されており、Greene(1999)で詳細に記載されているものが挙げられる。保護チオールとしては、さらに、以下に限定されないが、ジスルフィド、チオエーテル、シリルチオエーテル、チオエステル、チオカーボネート、及びチオカルバメートなどが挙げられる。このような基の例としては、以下に限定されないが、いくつか例を挙げると、アルキルチオエーテル、ベンジル及び置換されたベンジルチオエーテル、トリフェニルメチルチオエーテル、及びトリクロロエトキシカルボニルチオエステルが挙げられる。
【0033】
別段の明記がない限り、本明細書で示される構造は、構造における全ての異性体(例えば、エナンチオマー、ジアステレオマー、及び幾何的(または立体構造的))形態、例えば、各不斉中心におけるR及びS配置、Z及びE二重結合異性体、ならびにZ及びE立体構造異性体も含むように意図されている。そのため、本発明化合物の単一の立体化学異性体、ならびにエナンチオマー、ジアステレオマー、及び幾何的(または立体構造的)混合物は、本発明の範囲内である。別段の明記がない限り、本発明化合物の全ての互変異性形態は、本発明の範囲内である。加えて、別段の明記がない限り、本明細書で示される構造は、1つ以上の同位体濃縮原子の存在においてのみ相違する化合物も含むように意図されている。例えば、水素がジュウテリウムもしくはトリチウムで置き換えられている、または炭素が13Cもしくは14C濃縮炭素で置き換えられていること以外において本発明の構造を有する化合物は、本発明の範囲内にある。このような化合物は、例えば、中性子散乱実験におけるように、生物学的アッセイでの分析ツールまたはプローブとして有用である。
【0034】
本明細書で使用する場合、「単位剤形」と言う表現は、治療する対象にとって適切な本発明製剤の物理的に分離した単位を指す。ただし、本発明組成物の1日合計使用量は、主治医が妥当な医学的判断の範囲内で決定することを理解されたい。任意の特定の対象または生物に対する具体的な有効用量レベルは、治療する障害及び障害の重症度、用いる具体的な活性薬剤の活性、用いる具体的な組成物、対象の年齢、体重、全般的健康状態、性別、及び食事、投与の時間、用いる具体的な活性薬剤の排泄率、治療の持続期間、用いる具体的な化合物(複数可)と組み合わせてまたは同時に使用する薬物及び/または追加的療法、ならびに医学分野で周知された類似因子を含めた、様々な因子に依存することになる。
【0035】
「約」という用語は、量、時間的期間などの測定可能な値を指す場合、本開示の方法を実施するのに以下のような変動が適切であることから、指定された値の±20%、または一部の場合では±10%、または一部の場合では±5%、または一部の場合では±1%、または一部の場合では±0.1%の変動を指す。
【0036】
3.例示的実施形態の説明
3.1 原薬
ある特定の実施形態において、本発明化合物は、概して、下記に示すスキームIに従って調製される。
スキームI
【化7】
【0037】
一態様において、本発明は、上記のスキームIに示されるステップに従って式Iの化合物を調製するための方法を提供する。ステップS-1において、塩化ルテニウム酸(III)はインダゾールと反応して、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]のインダゾリウム塩を形成する。このステップ(S-1)は当技術分野で周知されている。Keppler et. al.Inorganic Chemistry,26,1987を参照。ステップS-2で、インダゾリウム塩は、塩化セシウムを用いた処理により、式I-aのトランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]のセシウム塩に転換される。当業者は、これをインダゾリウム塩からセシウム塩への塩交換として認識する。ステップS-3で、式I-aのセシウム塩は、硫酸アルミニウムナトリウムを用いた処理により、式I-bのトランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]のナトリウム塩に転換される。当業者は、これをセシウム塩からナトリウム塩への塩交換として認識する。
【0038】
ある特定の実施形態において、上述の各合成ステップは順次実施されてもよく、各ステップ後に各中間体の単離が実施される。代替的に、上記のスキームIに示されるS-1、S-2、及びS-3の各ステップは、中間体の単離が実施されない方式で実施されてもよい。
【0039】
当業者は、ステップS-1、S-2、及びS-3が、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]における第1のインダゾリウム塩の調製、次いでセシウム塩の調製、次いでナトリウム塩の調製を伴うことを認識する。さらに、米国特許第8,362,266号は、インダゾリウム塩からの直接的な式I-bの調製について説明している。本発明の一態様は、式I-bの合成における中間体としての式I-aの調製を含む。セシウム塩中間体は、生成物の純度及び全体の収率が既存の方法より顕著に増大し得ることから、既存の方法より好ましいことが見いだされた。発明者らは、いかなる特定の理論にも拘泥することは望まないが、この収率及び純度の増大の理由が、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]のインダゾリウム塩を単離することの困難性によるものと考えている。発明者らは、この材料につ
いて、濾過された材料が残留する水及び塩酸を所持するため、溶媒を含まない純粋な物質としての単離が非常に困難であることを見いだした。提唱されるこの材料の分解経路の1つを、下記のスキームIIに示す。
スキームII
【化8】
【0040】
スキームIIは、水分子による塩素分子の置換えから得られる化合物A(mer,トランス-[RuIIICl(Hind)(HO)])の調製を示す。不純物である化合物Aは、文献において水錯体としても知られている。化合物Aの生成は、水の排除によって、または明らかに高濃度の塩素イオンの維持によって制限され得る。例えば、式I-bは、純水中よりも塩化ナトリウムまたは塩酸の溶液中にある方が非常に安定性が高い。当業者は、塩素イオン濃度の維持により、ルテニウム錯体上の塩素が水で置き換えられる可能性が低減されることを認識する。さらに、アクア化(または化合物Aの調製)の速度は塩基性溶液中で大きく増大することが見いだされた。
【0041】
一次分解生成物が、アクア化反応物、詳細には塩基性水性溶液中で促進される反応物であることから、式Iの化合物の水への溶解を伴う反応ステップは回避するのが好ましいと考えられる。
【0042】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]インダゾリウムを調製し、濾過によって材料を単離し、S-2で使用するために、材料が理論的収率の200質量%~500質量%になるまで乾燥することにより、式I-bを調製する方法を提供する。他の実施形態において、本発明は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]インダゾリウムを調製し、濾過によって材料を単離し、S-2で使用するために、材料が理論的収率の245質量%~425質量%になるまで乾燥することにより、式I-bを調製する方法を提供する。
【0043】
本発明の別の態様は、ステップS-2を式I-bの調製に導入することである。ステップS-2は、セシウム中間体である式I-aの調製を伴う。驚くべきことに、セシウム中間体は、沈殿及び濾過によって単離することができ、(インダゾリウム塩で観察されるような)分解の誘発なしで乾燥することができ、乾燥粉末が周囲条件にて安定性であるため、セシウム中間体は本発明の重要なステップであることが見いだされた。上述のように、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]インダゾリウムは、濾過により、泥状の物質という表現が最良であり得る物質として単離される。この化合物の安定性は、塩酸(塩素イオン)の存在によって改善される。濾液を極性溶媒(例えば、メタノール)で洗浄することも分解につながる。そのため、最良の事例は、
トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]インダゾリウムを調製し、濾過によって単離し、遅延なしでS-2に直接使用することである。S-2は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]インダゾリウムと塩化セシウムとを好適な溶媒中で混合することからなる。好適な溶媒は、1~5個の炭素原子を有するアルコール、2~4個の炭素原子を有するジオール、水、1~6個の炭素原子を有するケトン、4~7個の炭素原子を有する環式エーテル、1~4個の炭素原子を有するアミド、DMSO、スルホラン、4~6個の炭素原子を有するエステル、1個もしくは2個の炭素原子を有する塩素化炭化水素、液体芳香族炭化水素、2~6個の炭素原子を有するニトリル、またはこれらの混合物であり得る。
【0044】
本発明の一態様において、S-2は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]インダゾリウムと塩化セシウムとをエタノール及びメチルエチルケトン中で混合して式I-aを得ることからなる。反応混合物を濾過しエタノールで洗浄することにより、セシウム塩中間体を収集した。一部の実施形態において、S-2は、反応混合物中にある1~10等量の塩化セシウムを利用する。他の実施形態において、S-2は、反応混合物中にある2~4等量の塩化セシウムを利用する。好ましい実施形態において、本発明は、式I-bを調製する方法であって、2.8等量の塩化セシウムがステップS-2で使用される、方法を提供する。S-2における好ましい溶媒はエタノール含有混合物であり、最も好ましくはメタノール-メチルエチルケトン(MEK)混合物である。これは、MEK混合物が、精製を助けるセシウム塩の結晶質MEK溶媒和物を形成できるためである。この場合の得られたMEK溶媒和物は、その後、水性エタノールを用いた処理により、安定性がより高い水和物形態のセシウム塩に容易に変換される。
【0045】
本発明の別の態様は、セシウム塩中間体(式I-a)を所望のナトリウム塩である式I-bに転換するステップS-3である。本明細書に記載の式I-bをもたらすための以前の方法論は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]の水性溶液を塩基性条件下でナトリウム塩を用いて処理することを含む。上述のように、水性の塩基性条件は、化合物Aへの分解につながる。この問題に対処するため、発明者らは、硫酸アルミニウムナトリウム(NaAl(SO)を混合することにより式I-aを式I-bに転換する、ステップS-3を開発した。この塩交換は、硫酸アルミニウムナトリウム及び式I-aを水中で混合することにより実施した。反応は、反応混合物が不均質になるような高濃度で実施する。反応における駆動力は、硫酸アルミニウムナトリウム及び硫酸アルミニウムセシウムの差次的溶解性である。硫酸アルミニウムナトリウムは、水に可溶であり、ナトリウムイオン源を提供する。硫酸アルミニウムセシウムは、水に不溶であり、反応混合物から沈殿する。そのため、セシウム対イオンは反応溶液から絶えず除去され、その結果式I-bが形成される。不溶性の硫酸アルミニウムセシウム及び式I-bは、濾過によって単離される。式I-bを好適な溶媒に溶解し、硫酸アルミニウムセシウムを濾過によって除去する。好適な溶媒としては、低分子量アルコール(1~5個の炭素原子を有する)、3~6個の炭素原子を有するケトン、2~5個の炭素原子を有するニトリル、3~6個の炭素原子を有するエステル、1~4個の炭素原子を有するアミド、1~4個の炭素原子を有するジオール、DMSO、スルホラン、水、またはこれらの組合せが挙げられる。固体抽出に最も好ましい溶媒は、アセトニトリルである。次に、式I-bを好適な抗溶媒を用いて沈殿させ、濾過によって回収する。好適な抗溶媒としては、3~8個の炭素原子を有するエーテル、5~8個の炭素原子を有する環式、非環式、または芳香族の炭化水素、1~4個の炭素原子を有する塩素化炭化水素、ベンゾトリフルオリド、クロロベンゼン、炭酸メチルが挙げられる。最も好ましい抗溶媒は、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)である。
【0046】
一部の実施形態において、本発明は、式I-bを調製する方法であって、ステップS-3における硫酸アルミニウムナトリウムの濃度が0.5M~1.65Mである、方法を提
供する。好ましい実施形態において、本発明は、式I-bを調製する方法であって、ステップS-3における硫酸アルミニウムナトリウムの濃度が1.1Mである、方法を提供する。
【0047】
一部の実施形態において、本発明は、式I-bを調製する方法であって、ステップS-3の反応温度が-5℃~50℃である、方法を提供する。好ましい実施形態において、本発明は、式I-bを調製する方法であって、ステップS-3の反応温度が20℃~25℃である、方法を提供する。
【0048】
一部の実施形態において、本発明は、式I-bを調製する方法であって、ステップS-3の反応時間が12時間~168時間である、方法を提供する。好ましい実施形態において、本発明は、式I-bを調製する方法であって、ステップS-3の反応時間が30時間である、方法を提供する。
【0049】
本発明のまた別の態様は、残留セシウムが式I-bから除去される精製ステップである。このプロセスは、式I-bを4Åモレキュラーシーブの存在下でメタノールと共に撹拌し、次いでMTBEを用いて沈殿させることを伴う。いかなる特定の理論にも拘泥することは望まないが、セシウム原子がモレキュラーシーブ内に存在する4Åの細孔への親和性を有すると考えられている。さらに、撹拌し、水で飽和したMTBE溶液で洗浄することにより、所望の生成物から微量の溶媒不純物を除去することができることが見いだされた。この最終精製ステップを使用することで、最も高純度の式I-bが得られる。
【0050】
目標化合物を含有するルテニウムのキャラクタリゼーションには複数の技法が必要となった。ルテニウム化合物の核磁気共鳴分光法は、5/2核スピン状態により困難であるため、HPLC及びx線回折(結晶分析)を含めた代替的なキャラクタリゼーション法が用いられた。IT-139の純度を十分に特徴づけるため、発明者らは意図的に、IT-139の最終組成物における不純物と考えられている複数の化合物、すなわち化合物A、C、及びDを調製した。不純物A、C、及びDの同一性をx線回折によって確認した。化合物Bは、化合物Cの形成での中間体と考えられる不安定な錯体である。不純物の構造は、以下の通りである。
【化9】
【0051】
ひとたび不純物化合物を調製及び同定したら、HPLC分析によって不純物の同一性及びパーセンテージが迅速に定量化できるように、HPLCによってこれら不純物の保持時間を分析した。このプロセス中に、発明者らは、水錯体である化合物Aが、HPLC上で複数のピークをもたらし、クロマトグラフィープロファイルが時間の関数として変化することを観察した。水錯体が、移動相内のアセトニトリルと反応して、アセトニトリル付加物である化合物Bを形成していることと、続いてこの付加物が反応して、アセトニトリル
との共有結合誘導体である化合物Cを形成していることとが見いだされた(Inorganic Chemistry,2008,v47,p6513-6523を参照)。この反応を下記のスキームIIIに示す。
【化10】
【0052】
各化合物における相対保持時間を、下記の表(表1)に列挙する。
【表1】
【0053】
一部の実施形態において、表1に記載の相対保持時間(RRT)は、範囲によって定義され得る。例えば、化合物AのRRTは1.09+/-0.02であり得、化合物BのRRTは1.28+/-0.02であり得、化合物CのRRTは1.06+/-0.03であり得、化合物DのRRTは1.59+/-0.03であり得る。
【0054】
水錯体(化合物A)は、HPLC分析における移動相内で迅速に化合物B及びCを形成するため、HPLC分析に渡す試料中の化合物Aの量は、化合物A、B、及びCに対応するピーク面積の和であると決定される。本発明の合成方法論が他の合成方法論に優る1つの利点は、本発明によって達成され得る高い純度レベルである。上述された以前の方法論では、4~8%の化合物Aを不純物として含有する最終生成物(原薬)がもたらされる。これに対し、本発明では2%未満の化合物Aが容易に達成可能である。本発明の一実施形
態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムと化合物Aとを含む組成物であって、組成物中に2.0重量%以下の化合物Aが存在する、組成物を提供する。本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムと化合物Aとを含む組成物であって、組成物中に1.0重量%以下の化合物Aが存在する、組成物を提供する。本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムと化合物Aとを含む組成物であって、組成物中に1.5重量%以下の化合物Aが存在する、組成物を提供する。本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムと化合物Aとを含む組成物であって、組成物中に0.5重量%以下の化合物Aが存在する、組成物を提供する。本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムと化合物Aとを含む組成物であって、組成物中に3.0重量%以下の化合物Aが存在する、組成物を提供する。
【0055】
本発明において以前の合成方法論に優るもう1つの利点は、精製される不純物の量の低減である。上述された以前の合成方法論(例えば、米国特許第8,362,266号を参照)は、多くの場合、原薬(式I-b)から不純物(化合物A、化合物B、及び化合物C)を分解しないHPLC法(例えば、後述のHPLC法#3)により分析された。図4は、HPLC法#3により分析された、他の合成方法論を用いて調製した原薬を示し、他方図5は、不純物化合物A、化合物B、及び化合物Cから式I-bを分解する分析法(後述のHPLC法#2)により分析された同じ原薬を示している。その結果、他の方法論を用いて合成した原薬からは、約99.5%の純度が報告された(HPLC法#3による分析)。しかし、HPLC法#2により分析された同じ材料からは、純度が実際にはおよそ約76.4%の式I-bで、約7.3%の化合物A、約11.0%の化合物B、及び約0.36%の化合物Cが混入していることが示された。本発明は、HPLC法#3を用いた分析で約99.9%の純度の式I-bを含む組成物を提供する。本発明は、約96.3%の式I-b、約1.1%の化合物A、約1.7%の化合物B、及び約0.2%の化合物Cを含む組成物を提供する。HPLCデータを下記の表(表2)に再現する。
【表2】
【0056】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムと、RuIIICl(Hind)(HO)と、RuIIICl(Hind)(CHCN)と、RuIIICl(Hind)(HN=C(Me)ind)とを含む組成物を提供する。
【0057】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムと、RuIIICl(Hind)(HO)と、RuIIICl(Hind)(CHCN)と、RuIIICl(Hind)(HN=C(Me)ind)と、セシウムとを含む組成物を提供する。
【0058】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムと、RuIIICl(Hind)(HO)と、RuIIICl(Hind)(CHCN)と、RuIIICl(Hind)(HN=C(Me)ind)と、セシウムとを含む組成物であって、
当該トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムが、当該組成物の約95.5重量パーセンテージ以上であり、
当該RuIIICl(Hind)(HO)が、当該組成物の約1.0重量パーセンテージ以下であり、
当該RuIIICl(Hind)(CHCN)が、当該組成物の約2.5重量パーセンテージ以下であり、
当該RuIIICl(Hind)(HN=C(Me)ind)が、当該組成物の約2.0重量パーセンテージ以下であり、
セシウムが、当該組成物の約0.5重量パーセンテージ以下である、
組成物を提供する。
【0059】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムと、セシウムと、任意選択でRuIIICl(Hind)(HO)と、RuIIICl(Hind)(CHCN)と、RuIIICl(Hind)(HN=C(Me)ind)とを含む組成物であって、
当該トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムが、当該組成物の約95.5~約99.9重量パーセンテージであり、
当該RuIIICl(Hind)(HO)が、当該組成物の約0~約1.0重量パーセンテージであり、
当該RuIIICl(Hind)(CHCN)が、当該組成物の約0~約2.5重量パーセンテージであり、
当該RuIIICl(Hind)(HN=C(Me)ind)が、当該組成物の約0~約2.0重量パーセンテージであり、
セシウムが、当該組成物の約0~約0.5重量パーセンテージである、
組成物を提供する。
【0060】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムと、RuIIICl(Hind)(HO)と、RuIIICl(Hind)(CHCN)と、RuIIICl(Hind)(HN=C(Me)ind)と、セシウムとを含む組成物であって、
当該トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムが、当該組成物の約95.5~約99.9重量パーセンテージであり、
当該RuIIICl(Hind)(HO)が、当該組成物の約0.001~約1.0重量パーセンテージであり、
当該RuIIICl(Hind)(CHCN)が、当該組成物の約0.001~約2.5重量パーセンテージであり、
当該RuIIICl(Hind)(HN=C(Me)ind)が、当該組成物の約0.001~約2.0重量パーセンテージであり、
セシウムが、当該組成物の約0.0001~約0.5重量パーセンテージである、
組成物を提供する。
【0061】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムと、RuIIICl(Hind)(HO)と、RuIIICl(Hind)(CHCN)と、RuIIICl(Hind)(HN=C(Me)ind)と、セシウムとを含む組成物であって、
当該トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムが、当該組成物の約95.5~約99.9重量パーセンテージであり、
当該RuIIICl(Hind)(HO)が、当該組成物の約0.001~約0.75重量パーセンテージであり、
当該RuIIICl(Hind)(CHCN)が、当該組成物の約0.001~約1.5重量パーセンテージであり、
当該RuIIICl(Hind)(HN=C(Me)ind)が、当該組成物の約0.001~約1.25重量パーセンテージであり、
セシウムが、当該組成物の約0.0001~約0.25重量パーセンテージである、
組成物を提供する。
【0062】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムと、RuIIICl(Hind)(HO)と、RuIIICl(Hind)(CHCN)と、RuIIICl(Hind)(HN=C(Me)ind)と、セシウムとを含む組成物であって、
当該トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムが、当該組成物の約95.5~約99.9重量パーセンテージであり、
当該RuIIICl(Hind)(HO)が、当該組成物の約0.001~約0.5重量パーセンテージであり、
当該RuIIICl(Hind)(CHCN)が、当該組成物の約0.001~約0.5重量パーセンテージであり、
当該RuIIICl(Hind)(HN=C(Me)ind)が、当該組成物の約0.001~約0.5重量パーセンテージであり、
セシウムが、当該組成物の約0.0001~約0.01重量パーセンテージである、
組成物を提供する。
【0063】
3.2 薬品
本発明の追加的な実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]のナトリウム塩(すなわち、IT-139)を含有する薬品を調製するための方法を提供する。
【0064】
本発明の一態様は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムを含有する滅菌凍結乾燥薬品を調製するための方法を提供する。この製剤は、患者への投与に好適と考えられる。製剤は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムと、pHバッファーと、凍結保護剤とから構成される。前述の製剤を提供するための一般的方法は、水性バッファー溶液を調製するステップ、水性の凍結保護物質溶液を調製するステップ、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムをバッファー溶液に溶解するステップ、凍結保護物質溶液を添加するステップ、滅菌濾過(例えば、無菌濾過)のステップ、滅菌条件下でバイアルを充填するステップ、及び滅菌条件下で凍結乾燥するステップを含む。好適なバッファーとしては、以下に限定されないが、クエン酸、TRIS、酢酸、EDTA、HEPES、トリシン、及びイミダゾールが挙げられる。リン酸バッファーの使用は可能であるが、好ましくはない。本発明の好ましい態様は、クエン酸/クエン酸ナトリウムバッファーの使用である。好適な凍結保護剤としては、以下に限定されないが、糖、単糖、二糖、多糖、ポリアルコール、マンニトール、ソルビ
トール、スクロース、トレハロース、デキストラン、及びデキストロースが挙げられる。本発明の好ましい態様は、凍結保護剤としてのマンニトールの使用である。
【0065】
本明細書で上述されているように、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムは、水中で分解して化合物Aになり得る(スキームII)。当業者は、この分解反応の制限が、最高純度の生成物を得る上で有利になるであろうことを認識する。製剤プロセス中にトランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムを冷却することが、凍結乾燥生成物中に存在する化合物Aの量を大きく低減することが見いだされた。本発明の一態様において、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウム溶液は、製剤プロセス中4℃に冷却される。本発明の別の態様において、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウム溶液は、製剤プロセス中2~8℃に冷却される。本発明の別の態様において、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウム溶液は、製剤プロセス中2~15℃に冷却される。
【0066】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムと、好適なバッファーと、マンニトールとを含む組成物を提供する。一部の実施形態において、好適なバッファーはクエン酸バッファーを含む。例えば、一部の実施形態において、クエン酸バッファーは、クエン酸ナトリウム及びクエン酸を含む。
【0067】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムと、クエン酸ナトリウムと、クエン酸と、マンニトールとを含む組成物を提供する。
【0068】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムと、クエン酸ナトリウムと、クエン酸と、マンニトールと、mer,トランス-[RuIIICl(Hind)(HO)]とを含む組成物を提供する。
【0069】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムと、クエン酸ナトリウムと、クエン酸と、マンニトールと、mer,トランス-[RuIIICl(Hind)(HO)]と、セシウム塩とを含む組成物を提供する。
【0070】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムと、クエン酸ナトリウムと、クエン酸と、マンニトールとを含む組成物であって、当該トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムが非晶質である、組成物を提供する。
【0071】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムと、クエン酸ナトリウムと、クエン酸と、マンニトールと、mer,トランス-[RuIIICl(Hind)(HO)]とを含む組成物であって、当該トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムが非晶質である、組成物を提供する。
【0072】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムと、クエン酸ナトリウムと、クエン酸と、マンニトールと、mer,トランス-[RuIIICl(Hind)(HO)]と、セシウム塩と
を含む組成物であって、当該トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムが非晶質である、組成物を提供する。
【0073】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムと、クエン酸ナトリウムと、クエン酸と、マンニトールと、mer,トランス-[RuIIICl(Hind)(HO)]と、セシウム塩とを含む組成物であって、
mer,トランス-[RuIIICl(Hind)(HO)]が、当該組成物の約0.01~約0.4重量パーセントであり、
セシウムが、当該組成物の約0.00001~約0.01重量パーセントである、
組成物を提供する。
【0074】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムと、クエン酸ナトリウムと、クエン酸と、マンニトールと、mer,トランス-[RuIIICl(Hind)(HO)]と、セシウム塩とを含む組成物であって、
mer,トランス-[RuIIICl(Hind)(HO)]が、当該組成物の約0.01~約0.4重量パーセントであり、
セシウムが、当該組成物の約0.00001~約0.01重量パーセントである、
組成物を提供する。
【0075】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムと、クエン酸ナトリウムと、クエン酸と、マンニトールと、mer,トランス-[RuIIICl(Hind)(HO)]と、セシウム塩とを含む組成物であって、
mer,トランス-[RuIIICl(Hind)(HO)]が、当該組成物の約0.01~約0.2重量パーセントであり、
セシウムが、当該組成物の約0.00001~約0.01重量パーセントである、
組成物を提供する。
【0076】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムと、mer,トランス-[RuIIICl(Hind)(HO)]と、セシウム塩とを含む組成物であって、
mer,トランス-[RuIIICl(Hind)(HO)]が、当該組成物の約0.01~約0.40重量パーセントであり、
セシウムが、当該組成物の約0.00001~約0.01重量パーセントである、
組成物を提供する。
【0077】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムと、mer,トランス-[RuIIICl(Hind)(HO)]と、セシウム塩とを含む組成物であって、
当該組成物が、凍結乾燥粉末であり、
mer,トランス-[RuIIICl(Hind)(HO)]が、当該組成物の約0.01~約0.40重量パーセントであり、
セシウムが、当該組成物の約0.00001~約0.01重量パーセントである、
組成物を提供する。
【0078】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムと、クエン酸ナトリウムと、クエン酸と、マンニトールと、mer,トランス-[RuIIICl(Hind)(HO)]と、セシウム塩と
を含む組成物であって、
当該組成物が、凍結乾燥粉末であり、
mer,トランス-[RuIIICl(Hind)(HO)]が、当該組成物の約0.01~約0.3重量パーセントであり、
セシウムが、当該組成物の約0.00001~約0.1重量パーセントである、
組成物を提供する。
【0079】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムと、クエン酸ナトリウムと、クエン酸と、マンニトールと、mer,トランス-[RuIIICl(Hind)(HO)]と、セシウム塩とを含む組成物であって、
mer,トランス-[RuIIICl(Hind)(HO)]が、当該組成物の約0.01~約0.3重量パーセントであり、
セシウムが、当該組成物の約0.00001~約0.1重量パーセントである、
組成物を提供する。
【0080】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムと、クエン酸ナトリウムと、クエン酸と、マンニトールと、mer,トランス-[RuIIICl(Hind)(HO)]と、セシウム塩とを含む組成物であって、
当該組成物が、凍結乾燥粉末であり、
トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムが、当該組成物の約11.5~約14.0重量パーセントであり、
クエン酸が、当該組成物の約43.9~約53.7重量パーセントであり、
クエン酸ナトリウムが、当該組成物の約25.7~約23.1重量パーセントであり、
マンニトールが、当該組成物の約11.5~約14.0重量パーセントであり、
mer,トランス-[RuIIICl(Hind)(HO)]が、当該組成物の約0.01及び約0.3重量パーセントであり、
セシウムが、当該組成物の約0.00001~約0.1重量パーセントである、
組成物を提供する。
【0081】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムと、クエン酸ナトリウムと、クエン酸と、マンニトールと、mer,トランス-[RuIIICl(Hind)(HO)]と、セシウム塩とを含む組成物であって、
当該組成物が、凍結乾燥粉末であり、
トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムが、当該組成物の約10.2~約15.3重量パーセントであり、
クエン酸が、当該組成物の約39.0~約58.5重量パーセントであり、
クエン酸ナトリウムが、当該組成物の約20.5~約30.8重量パーセントであり、
マンニトールが、当該組成物の約10.2~約15.3重量パーセントであり、
mer,トランス-[RuIIICl(Hind)(HO)]が、当該組成物の約0.01及び約0.3重量パーセントであり、
セシウムが、当該組成物の約0.00001~約0.1重量パーセントである、
組成物を提供する。
【0082】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムと、クエン酸ナトリウムと、クエン酸と、マンニトールと、mer,トランス-[RuIIICl(Hind)(HO)]と、セシウム塩とを含む組成物であって、
当該組成物が、凍結乾燥粉末であり、
トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムが、当該組成物の約10.2~約15.3重量パーセントであり、
mer,トランス-[RuIIICl(Hind)(HO)]が、約0.01及び約0.3重量パーセント組成物であり、
セシウムが、当該組成物の約0.00001~約0.1重量パーセントである、
組成物を提供する。
【0083】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムと、マンニトールと、クエン酸と、クエン酸ナトリウムとを含む組成物であって、
トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムが、当該組成物の約49.86重量パーセントであり、
マンニトールが、当該組成物の約49.86重量パーセントであり、
クエン酸が、当該組成物の約0.187重量パーセントであり、
クエン酸ナトリウムが、当該組成物の約0.093重量パーセンテージである、
組成物を提供する。一部のこのような実施形態において、組成物は、凍結乾燥粉末である。
【0084】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムと、マンニトールと、クエン酸と、クエン酸ナトリウムとを含む組成物であって、
トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムが、当該組成物の約40~約60重量パーセントであり、
マンニトールが、当該組成物の約40~約60重量パーセントであり、
クエン酸が、当該組成物の約0.01~約0.5重量パーセントであり、
クエン酸ナトリウムが、当該組成物の約0.001~約0.25重量パーセンテージである、
組成物を提供する。一部のこのような実施形態において、組成物は、凍結乾燥粉末である。
【0085】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムと、マンニトールと、クエン酸と、クエン酸ナトリウムとを含む組成物であって、
トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムが、当該組成物の約30~約70重量パーセントであり、
マンニトールが、当該組成物の約30~約70重量パーセントであり、
クエン酸が、当該組成物の約0.001~約1重量パーセントであり、
クエン酸ナトリウムが、当該組成物の約0.0001~約1重量パーセンテージである、
組成物を提供する。一部のこのような実施形態において、組成物は、凍結乾燥粉末である。
【0086】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムと、マンニトールと、クエン酸と、クエン酸ナトリウムと、RuIIICl(Hind)(HO)とを含む組成物であって、
トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムが、当該組成物の約49.86重量パーセントであり、
マンニトールが、当該組成物の約49.86重量パーセントであり、
クエン酸が、当該組成物の約0.187重量パーセントであり、
クエン酸ナトリウムが、当該組成物の約0.093重量パーセンテージであり、
RuIIICl(Hind)(HO)が、当該組成物の0.5重量パーセンテージ以下である、
組成物を提供する。一部のこのような実施形態において、組成物は、凍結乾燥粉末である。
【0087】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムと、マンニトールと、クエン酸と、クエン酸ナトリウムと、RuIIICl(Hind)(HO)とを含む組成物であって、
トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムが、当該組成物の約40~約60重量パーセントであり、
マンニトールが、当該組成物の約40~約60重量パーセントであり、
クエン酸が、当該組成物の約0.01~約0.5重量パーセントであり、
クエン酸ナトリウムが、当該組成物の約0.001~約0.25重量パーセンテージであり、
RuIIICl(Hind)(HO)が、当該組成物の約0~約0.5重量パーセンテージである、
組成物を提供する。一部のこのような実施形態において、組成物は、凍結乾燥粉末である。
【0088】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムと、マンニトールと、クエン酸と、クエン酸ナトリウムと、RuIIICl(Hind)(HO)と、セシウムを含む組成物であって、
トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムが、当該組成物の約30~約70重量パーセントであり、
マンニトールが、当該組成物の約30~約70重量パーセントであり、
クエン酸が、当該組成物の約0.001~約1重量パーセントであり、
クエン酸ナトリウムが、当該組成物の約0.0001~約1重量パーセンテージであり、
RuIIICl(Hind)(HO)が、当該組成物の0.5重量パーセンテージ以下であり、
セシウムが、当該組成物の0.25重量パーセンテージ以下である、
組成物を提供する。一部のこのような実施形態において、組成物は、凍結乾燥粉末である。
【0089】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムと、マンニトールと、クエン酸と、クエン酸ナトリウムと、セシウムとを含む組成物であって、
トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムが、当該組成物の約49.61重量パーセントであり、
マンニトールが、当該組成物の約49.86重量パーセントであり、
クエン酸が、当該組成物の約0.187重量パーセントであり、
クエン酸ナトリウムが、当該組成物の約0.093重量パーセンテージであり、
セシウムが、当該組成物の約0.25重量パーセンテージである、
組成物を提供する。一部のこのような実施形態において、組成物は、凍結乾燥粉末である。
【0090】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムと、マンニトールと、クエン酸と、クエン酸ナトリウムと、セシウムとを含む組成物であって、
トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムが、当該組成物の約40~約60重量パーセントであり、
マンニトールが、当該組成物の約40~約60重量パーセントであり、
クエン酸が、当該組成物の約0.01~約0.5重量パーセントであり、
クエン酸ナトリウムが、当該組成物の約0.001~約0.25重量パーセンテージであり、
セシウムが、当該組成物の約0.1~約0.5重量パーセンテージである、
組成物を提供する。一部のこのような実施形態において、組成物は、凍結乾燥粉末である。
【0091】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムと、マンニトールと、クエン酸と、クエン酸ナトリウムと、セシウムとを含む組成物であって、
トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムが、当該組成物の約30~約70重量パーセントであり、
マンニトールが、当該組成物の約30~約70重量パーセントであり、
クエン酸が、当該組成物の約0.001~約1重量パーセントであり、
クエン酸ナトリウムが、当該組成物の約0.0001~約1重量パーセンテージであり、
セシウムが、当該組成物の約0.01~約1重量パーセンテージである、
組成物を提供する。一部のこのような実施形態において、組成物は、凍結乾燥粉末である。
【0092】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムと、マンニトールと、クエン酸と、クエン酸ナトリウムと、RuIIICl(Hind)(HO)と、RuIIICl(Hind)(CHCN)と、RuIIICl(Hind)(HN=C(Me)ind)と、セシウムとを含む組成物であって、
トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムが、当該組成物の約46.61重量パーセントであり、
マンニトールが、当該組成物の約49.86重量パーセントであり、
クエン酸が、当該組成物の約0.187重量パーセントであり、
クエン酸ナトリウムが、当該組成物の約0.093重量パーセンテージであり、
RuIIICl(Hind)(HO)が、当該組成物の0.5重量パーセンテージ以下であり、
RuIIICl(Hind)(CHCN)が、当該組成物の1.25重量パーセンテージ以下であり、
RuIIICl(Hind)(HN=C(Me)ind)が、当該組成物の1.0重量パーセンテージ以下であり、
セシウムが、当該組成物の0.25重量パーセンテージ以下である、
組成物を提供する。一部のこのような実施形態において、組成物は、凍結乾燥粉末である。
【0093】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムと、マンニトールと、クエン酸と、クエン酸ナトリウムと、RuIIICl(Hind)(HO)と、RuIIICl(Hind)(CHCN)と、RuIIICl(Hind)(HN=C(Me)ind)と、セシウムとを含む組成物であって、
トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムが、当該組成物の約46.61重量パーセントであり、
マンニトールが、当該組成物の約49.86重量パーセントであり、
クエン酸が、当該組成物の約0.187重量パーセントであり、
クエン酸ナトリウムが、当該組成物の約0.093重量パーセンテージであり、
RuIIICl(Hind)(HO)が、当該組成物の0.5重量パーセンテージ以下であり、
RuIIICl(Hind)(CHCN)が、当該組成物の1.25重量パーセンテージ以下であり、
RuIIICl(Hind)(HN=C(Me)ind)が、当該組成物の1.0重量パーセンテージ以下であり、
セシウムが、当該組成物の0.25重量パーセンテージ以下である、
組成物を提供する。一部のこのような実施形態において、組成物は、凍結乾燥粉末である。
【0094】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムと、マンニトールと、クエン酸と、クエン酸ナトリウムと、RuIIICl(Hind)(HO)と、RuIIICl(Hind)(CHCN)と、RuIIICl(Hind)(HN=C(Me)ind)と、セシウムとを含む組成物であって、
トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムが、当該組成物の約40~約60重量パーセントであり、
マンニトールが、当該組成物の約40~約60重量パーセントであり、
クエン酸が、当該組成物の約0.01~約0.5重量パーセントであり、
クエン酸ナトリウムが、当該組成物の約0.001~約0.25重量パーセンテージであり、
RuIIICl(Hind)(HO)が、当該組成物の約0.5重量パーセンテージ以下であり、
RuIIICl(Hind)(CHCN)が、当該組成物の約1.25重量パーセンテージ以下であり、
RuIIICl(Hind)(HN=C(Me)ind)が、当該組成物の約1.0重量パーセンテージ以下であり、
セシウムが、当該組成物の0.25パーセンテージ以下である、
組成物を提供する。一部のこのような実施形態において、組成物は、凍結乾燥粉末である。
【0095】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムと、マンニトールと、クエン酸と、クエン酸ナトリウムと、RuIIICl(Hind)(HO)と、RuIIICl(Hind)(CHCN)と、RuIIICl(Hind)(HN=C(Me)ind)と、セシウムとを含む組成物であって、
トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムが、当該組成物の約30~約70重量パーセントであり、
マンニトールが、当該組成物の約30~約70重量パーセントであり、
クエン酸が、当該組成物の約0.001~約1重量パーセントであり、
クエン酸ナトリウムが、当該組成物の約0.0001~約1重量パーセンテージであり、
RuIIICl(Hind)(HO)が、当該組成物の約0.5重量パーセンテージ以下であり、
RuIIICl(Hind)(CHCN)が、当該組成物の約1.25重量パーセンテージ以下であり、
RuIIICl(Hind)(HN=C(Me)ind)が、当該組成物の約1.0
重量パーセンテージ以下であり、
セシウムが、当該組成物の0.25パーセンテージ以下である、
組成物を提供する。一部のこのような実施形態において、組成物は、凍結乾燥粉末である。
【0096】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムと、マンニトールと、クエン酸と、クエン酸ナトリウムと、RuIIICl(Hind)(HO)と、RuIIICl(Hind)(CHCN)と、RuIIICl(Hind)(HN=C(Me)ind)と、セシウムとを含む組成物であって、
トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムが、当該組成物の約20~約80重量パーセントであり、
マンニトールが、当該組成物の約20~約80重量パーセントであり、
クエン酸が、当該組成物の約0.0001~約5重量パーセントであり、
クエン酸ナトリウムが、当該組成物の約0.00001~約5重量パーセンテージであり、
RuIIICl(Hind)(HO)が、当該組成物の約0.5重量パーセンテージ以下であり、
RuIIICl(Hind)(CHCN)が、当該組成物の約1.25重量パーセンテージ以下であり、
RuIIICl(Hind)(HN=C(Me)ind)が、当該組成物の約1.0重量パーセンテージ以下であり、
セシウムが、当該組成物の0.25パーセンテージ以下である、
組成物を提供する。一部のこのような実施形態において、組成物は、凍結乾燥粉末である。
【0097】
3.3 単位剤形
一部の実施形態において、本発明は、本明細書に記載の製剤または組成物を含む単位剤形を提供する。本明細書で使用する場合、「単位剤形」と言う表現は、治療する対象にとって適切な提供される製剤の物理的に分離した単位を指す。ただし、提供される製剤の1日合計使用量は、主治医が妥当な医学的判断の範囲内で決定することになることを理解されたい。任意の特定の対象または生物に対する具体的な有効用量レベルは、治療する障害及び障害の重症度、用いる具体的な活性薬剤の活性、用いる具体的な製剤、対象の年齢、体重、全般的健康状態、性別、及び食事、投与の時間、用いる具体的な活性薬剤の排泄率、治療の持続期間、用いる具体的な化合物(複数可)と組み合わせてまたは同時に使用する薬物及び/または追加的療法、ならびに医学分野で周知された類似因子を含めた、様々な因子に依存することになる。
【0098】
本発明の組成物は、単位剤形として提供され得る。一部の実施形態において、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムと、マンニトールと、クエン酸と、クエン酸ナトリウムとを含むバイアルは、単位剤形である。
【0099】
一部の実施形態において、本発明のトランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムと、マンニトールと、クエン酸と、クエン酸ナトリウムと、セシウムとを含むバイアルは、単位剤形である。
【0100】
一部の実施形態において、本発明のトランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムと、マンニトールと、クエン酸と、クエン酸ナトリウムと、RuIIICl(Hind)(HO)と、RuIIICl(Hin
d)(CHCN)と、RuIIICl(Hind)(HN=C(Me)ind)と、セシウムとを含むバイアルは、単位剤形である。
【0101】
なおさらに本発明に包含されるのは、本明細書に記載の組成物を含む薬学的パック及び/またはキット、あるいは提供される組成物及び容器(例えば、ホイルもしくはプラスチックのパッケージ、またはその他の好適な容器)を含む単位剤形である。任意選択で、このようなキットには使用説明書が追加的に提供される。
【0102】
一部の実施形態において、本発明は、単位剤形として提供され得る。実際に、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムと、マンニトールと、クエン酸と、クエン酸ナトリウムとを含むバイアルは、表3に示す単位剤形である。
【表3】
【0103】
一部の実施形態において、表3に記載の薬学的構成成分は、セシウムをさらに含み、
このとき、
セシウムは、当該組成物の0.25重量パーセンテージ以下である。
【0104】
一部の実施形態において、表3に記載の薬学的構成成分は、セシウムと、RuIIICl(Hind)(HO)と、RuIIICl(Hind)(CHCN)と、RuIIICl(Hind)(HN=C(Me)ind)とをさらに含み、
このとき、
セシウムは、当該組成物の約0.25重量パーセンテージ以下であり、
RuIIICl(Hind)(HO)は、当該組成物の約0.5重量パーセンテージ以下であり、
RuIIICl(Hind)(CHCN)は、当該組成物の約1.25重量パーセンテージ以下であり、
RuIIICl(Hind)(HN=C(Me)ind)は、当該組成物の約1.0重量パーセンテージ以下である。
【0105】
一部の実施形態において、薬学的組成物は、表4にあるものから選択される。
【表4】
【0106】
一部の実施形態において、表4に記載の薬学的構成成分は、セシウムをさらに含み、
このとき、
セシウムは、当該組成物の0.25重量パーセンテージ以下である。
【0107】
一部の実施形態において、表4に記載の薬学的構成成分は、セシウムと、RuIIICl(Hind)(HO)と、RuIIICl(Hind)(CHCN)と、RuIIICl(Hind)(HN=C(Me)ind)とをさらに含み、
このとき、
セシウムは、当該組成物の約0.25重量パーセンテージ以下であり、
RuIIICl(Hind)(HO)は、当該組成物の約0.5重量パーセンテージ以下であり、
RuIIICl(Hind)(CHCN)は、当該組成物の約1.25重量パーセンテージ以下であり、
RuIIICl(Hind)(HN=C(Me)ind)は、当該組成物の約1.0重量パーセンテージ以下である。
【0108】
一部の実施形態において、本発明は、単位剤形として提供され得る。実際に、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムと、マンニトールと、クエン酸と、クエン酸ナトリウムとを含むバイアルは、表5に示す単位剤形である。
【表5】
【0109】
一部の実施形態において、表5に記載の薬学的構成成分は、セシウムをさらに含み、
このとき、
セシウムは、当該組成物の0.25重量パーセンテージ以下である。
【0110】
一部の実施形態において、表5に記載の薬学的構成成分は、セシウムと、RuIIICl(Hind)(HO)と、RuIIICl(Hind)(CHCN)と、RuIIICl(Hind)(HN=C(Me)ind)とをさらに含み、
このとき、
セシウムは、当該組成物の約0.25重量パーセンテージ以下であり、
RuIIICl(Hind)(HO)は、当該組成物の約0.5重量パーセンテージ以下であり、
RuIIICl(Hind)(CHCN)は、当該組成物の約1.25重量パーセンテージ以下であり、
RuIIICl(Hind)(HN=C(Me)ind)は、当該組成物の約1.0重量パーセンテージ以下である。
【0111】
一部の実施形態において、薬学的組成物は、表6にあるものから選択される。
【表6】
【0112】
一部の実施形態において、表6に記載の薬学的構成成分は、セシウムをさらに含み、
このとき、
セシウムは、当該組成物の0.25重量パーセンテージ以下である。
【0113】
一部の実施形態において、表6に記載の薬学的構成成分は、セシウムと、RuIIICl(Hind)(HO)と、RuIIICl(Hind)(CHCN)と、RuIIICl(Hind)(HN=C(Me)ind)とをさらに含み、
このとき、
セシウムは、当該組成物の約0.25重量パーセンテージ以下であり、
RuIIICl(Hind)(HO)は、当該組成物の約0.5重量パーセンテージ以下であり、
RuIIICl(Hind)(CHCN)は、当該組成物の約1.25重量パーセンテージ以下であり、
RuIIICl(Hind)(HN=C(Me)ind)は、当該組成物の約1.0
重量パーセンテージ以下である。
【0114】
一部の実施形態において、薬学的構成成分は、表3~6のいずれかに記載の通りであり、セシウムをさらに含む。一部の実施形態において、セシウムは、組成物の約0.001、0.002、0.003、0.004、0.005、0.006、0.007、0.008、0.009、0.010、0.015、0.020、0.025、0.030、0.035、0.040、0.045、0.050、0.055、0.060、0.065、0.070、0.075、0.080、0.085、0.090、0.095、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60、0.65、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、0.95、または1.0重量パーセンテージの量で存在する。
【0115】
3.4 治療方法
一部の実施形態において、本発明は、がんの治療を必要とする対象におけるがんを治療するための方法であって、上記及び本明細書に記載の提供されるIT-139の組成物を対象に投与することを含む、方法を提供する。一部のこのような実施形態において、対象は、ヒト患者である。
【0116】
一部の実施形態において、本発明は、がんの治療を必要とする対象におけるがんを治療するための方法であって、上記及び本明細書に記載の提供されるIT-139の組成物を化学療法剤と組み合わせて投与することを含む、方法を提供する。
【0117】
一部の実施形態において、本発明は、がんの治療を必要とする対象におけるがんを治療するための方法であって、上記及び本明細書に記載の提供されるIT-139の組成物をがん免疫薬剤と組み合わせて投与することを含む、方法を提供する。
【0118】
別の実施形態によれば、本発明は、乳房、卵巣、子宮頚部、前立腺、精巣、尿生殖路、食道、喉頭、神経膠芽腫、神経芽腫、胃、皮膚、ケラトアカントーマ、肺、類表皮癌、大細胞癌、小細胞癌、肺腺癌、骨、結腸、腺腫、膵臓、腺癌、甲状腺、濾胞状癌、未分化癌、乳頭状癌、精上皮腫、黒色腫、肉腫、膀胱癌、肝臓癌及び胆道、腎臓癌、骨髄系障害、リンパ系障害、ホジキン、ヘアリー細胞、頬側口腔及び咽頭(口腔)、唇、舌、口、咽頭、小腸、結腸直腸、大腸、直腸、脳及び中枢神経系、ならびに白血病から選択されるがんを治療する方法であって、IT-139またはその薬学的に許容される組成物を投与することを含む、方法に関する。
【0119】
別の実施形態によれば、本発明は、乳房、卵巣、子宮頚部、前立腺、精巣、尿生殖路、食道、喉頭、神経膠芽腫、神経芽腫、胃、皮膚、ケラトアカントーマ、肺、類表皮癌、大細胞癌、小細胞癌、肺腺癌、骨、結腸、腺腫、膵臓、腺癌、甲状腺、濾胞状癌、未分化癌、乳頭状癌、精上皮腫、黒色腫、肉腫、膀胱癌、肝臓癌及び胆道、腎臓癌、骨髄系障害、リンパ系障害、ホジキン、ヘアリー細胞、頬側口腔及び咽頭(口腔)、唇、舌、口、咽頭、小腸、結腸直腸、大腸、直腸、脳及び中枢神経系、ならびに白血病から選択されるがんを治療する方法であって、IT-139またはその薬学的に許容される組成物を、化学療法剤と組み合わせて投与することを含む、方法に関する。
【0120】
別の実施形態によれば、本発明は、乳房、卵巣、子宮頚部、前立腺、精巣、尿生殖路、食道、喉頭、神経膠芽腫、神経芽腫、胃、皮膚、ケラトアカントーマ、肺、類表皮癌、大細胞癌、小細胞癌、肺腺癌、骨、結腸、腺腫、膵臓、腺癌、甲状腺、濾胞状癌、未分化癌、乳頭状癌、精上皮腫、黒色腫、肉腫、膀胱癌、肝臓癌及び胆道、腎臓癌、骨髄系障害、リンパ系障害、ホジキン、ヘアリー細胞、頬側口腔及び咽頭(口腔)、唇、舌、口、咽頭、小腸、結腸直腸、大腸、直腸、脳及び中枢神経系、ならびに白血病から選択されるがん
を治療する方法であって、IT-139またはその薬学的に許容される組成物を、がん免疫薬剤と組み合わせて投与することを含む、方法に関する。
【0121】
別の実施形態は、IT-139の投与後に、がん細胞内のGRP78の量を低減することにより、がんを治療するための方法を提供する。
【0122】
別の実施形態によれば、本発明は、化学療法剤と組み合わせてのIT-139の投与後に、がん細胞内のGRP78の量を低減することにより、がんを治療するための方法であって、IT-139、またはその薬学的に許容される組成物の投与が、化学療法剤の投与に比べてGRP78の量の低減をもたらす、方法を提供する。
【0123】
別の実施形態によれば、本発明は、がん免疫薬剤と組み合わせてのIT-139の投与後に、がん細胞内のGRP78の量を低減することにより、がんを治療するための方法であって、IT-139、またはその薬学的に許容される組成物の投与が、がん免疫薬剤単体の投与に比べてGRP78の量の低減をもたらす、方法を提供する。
【0124】
治療薬を投与する順序は、慎重に考慮されるべきである。いかなる特定の理論にも拘泥することは望まないが、GRP78の作用機序及び下方制御により、最大の治療効果のためには、任意の化学療法剤を最初に投与し、次いでIT-139を投与することが求められる。上述のように、一連の化学療法剤を用いた治療はERストレスをもたらし、これがGRP78の生成を誘発する。このプロセスは、細胞生存機構である。IT-139の投与は、細胞生存経路を除去するストレス誘発性のGRP78のレベルを低下させる。最終的な結果は、がん細胞死の増大及び抗腫瘍効果の増大である。
【0125】
本発明の一実施形態によれば、がんの治療を必要とする患者におけるがんを治療するための方法であって、
1)化学療法剤を患者に投与するステップと、
2)続いて、IT-139またはその薬学的に許容される組成物を患者に投与するステップと、
3)任意選択でステップ1及び2を繰り返すステップと
を含む、方法を提供する。
【0126】
ある特定の実施形態において、IT-139またはその薬学的に許容される組成物は、化学療法剤の1日後、投与される。他の実施形態において、IT-139またはその薬学的に許容される組成物は、化学療法剤の1日後、患者に投与される。また他の実施形態において、IT-139は、化学療法剤の後1~7日に患者に投与される。
【0127】
ある特定の実施形態において、IT-139またはその薬学的に許容される組成物は、化学療法剤と同時に投与される。ある特定の実施形態において、IT-139またはその薬学的に許容される組成物、及び化学療法剤は、互いの約20~28時間以内、または互いの約22~26時間以内、または互いの約24時間以内に投与される。
【0128】
ある特定の実施形態において、IT-139またはその薬学的に許容される組成物は、化学療法剤の前に投与される。ある特定の実施形態において、IT-139またはその薬学的に許容される組成物は、化学療法剤の少なくとも約8~16時間前、または化学療法剤の少なくとも約10~14時間前、または化学療法剤の少なくとも約12時間前に投与される。
【0129】
ある特定の実施形態において、IT-139またはその薬学的に許容される組成物は、化学療法剤の少なくとも約20~28時間前、または化学療法剤の少なくとも約22~2
6時間前、または化学療法剤の少なくとも約24時間前に投与される。
【0130】
ある特定の実施形態において、IT-139またはその薬学的に許容される組成物は、化学療法剤の少なくとも約44~52時間前、または化学療法剤の少なくとも約46~50時間前、または化学療法剤の少なくとも約48時間前に投与される。
【0131】
ある特定の実施形態において、IT-139またはその薬学的に許容される組成物は、化学療法剤の少なくとも約64~80時間前、または化学療法剤の少なくとも約70~74時間前、または化学療法剤の少なくとも約72時間前に投与される。
【0132】
ある特定の実施形態において、IT-139またはその薬学的に許容される組成物は、化学療法剤の前に投与される。ある特定の実施形態において、IT-139またはその薬学的に許容される組成物は、化学療法剤の少なくとも約8~16時間後、または化学療法剤の少なくとも約10~14時間後、または化学療法剤の少なくとも約12時間後に投与される。
【0133】
ある特定の実施形態において、IT-139またはその薬学的に許容される組成物は、化学療法剤の少なくとも約20~28時間後、または化学療法剤の少なくとも約22~26時間後、または化学療法剤の少なくとも約24時間後に投与される。
【0134】
ある特定の実施形態において、IT-139またはその薬学的に許容される組成物は、化学療法剤の少なくとも約44~52時間後、または化学療法剤の少なくとも約46~50時間後、または化学療法剤の少なくとも約48時間後に投与される。
【0135】
ある特定の実施形態において、IT-139またはその薬学的に許容される組成物は、化学療法剤の少なくとも約64~80時間後、または化学療法剤の少なくとも約70~74時間後、または化学療法剤の少なくとも約72時間後に投与される。
【0136】
ある特定の実施形態において、化学療法剤は、ゲムシタビン、ナノ粒子アルブミンパクリタキセル、パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル、オキサリプラチン、シスプラチン、カルボプラチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ソラフェニブ、エベロリムス、及びベムラフェニブからなる群より選択される。ある特定の実施形態において、化学療法剤は、ゲムシタビンである。
【0137】
本発明の一実施形態によれば、膵臓癌の治療を必要とする患者における膵臓癌を治療するための方法であって、
1)ゲムシタビン及びアルブミンナノ粒子パクリタキセルを投与するステップと、
2)続いて、IT-139またはその薬学的に許容される組成物を投与するステップと、3)任意選択でステップ1及び2を繰り返すステップと
を含む、方法を提供する。
【0138】
ある特定の実施形態において、IT-139またはその薬学的に許容される組成物は、ゲムシタビンと同時に投与される。ある特定の実施形態において、IT-139またはその薬学的に許容される組成物、及びゲムシタビンは、互いの約20~28時間以内、または互いの約22~26時間以内、または互いの約24時間以内に投与される。
【0139】
ある特定の実施形態において、IT-139またはその薬学的に許容される組成物は、ゲムシタビンの前に投与される。ある特定の実施形態において、IT-139またはその薬学的に許容される組成物は、ゲムシタビンの少なくとも約8~16時間前、またはゲムシタビンの少なくとも約10~14時間前、またはゲムシタビンの少なくとも約12時間
前に投与される。
【0140】
ある特定の実施形態において、IT-139またはその薬学的に許容される組成物は、ゲムシタビンの少なくとも約20~28時間前、またはゲムシタビンの少なくとも約22~26時間前、またはゲムシタビンの少なくとも約24時間前に投与される。
【0141】
ある特定の実施形態において、IT-139またはその薬学的に許容される組成物は、ゲムシタビンの少なくとも約44~52時間前、またはゲムシタビンの少なくとも約46~50時間前、またはゲムシタビンの少なくとも約48時間前に投与される。
【0142】
本発明の一実施形態によれば、がんの治療を必要とする対象におけるがんを治療するための方法であって、IT-139またはその薬学的に許容される組成物をがん免疫薬剤と組み合わせて投与することを含む、方法を提供する。ある特定の実施形態において、がん免疫薬剤は、IT-139またはその薬学的に許容される組成物の投与の前に、患者に投与される。
【0143】
ある特定の実施形態において、IT-139またはその薬学的に許容される組成物は、がん免疫薬剤と同時に投与される。ある特定の実施形態において、IT-139またはその薬学的に許容される組成物、及びがん免疫薬剤は、互いの約20~28時間以内、または互いの約22~26時間以内、または互いの約24時間以内に投与される。
【0144】
ある特定の実施形態において、IT-139またはその薬学的に許容される組成物は、がん免疫薬剤の前に投与される。ある特定の実施形態において、IT-139またはその薬学的に許容される組成物は、がん免疫薬剤の少なくとも約8~16時間前、またはがん免疫薬剤の少なくとも約10~14時間前、またはがん免疫薬剤の少なくとも約12時間前に投与される。
【0145】
ある特定の実施形態において、IT-139またはその薬学的に許容される組成物は、がん免疫薬剤の少なくとも約20~28時間前、またはがん免疫薬剤の少なくとも約22~26時間前、またはがん免疫薬剤の少なくとも約24時間前に投与される。
【0146】
ある特定の実施形態において、IT-139またはその薬学的に許容される組成物は、がん免疫薬剤の少なくとも約44~52時間前、またはがん免疫薬剤の少なくとも約46~50時間前、またはがん免疫薬剤の少なくとも約48時間前に投与される。
【0147】
ある特定の実施形態において、IT-139またはその薬学的に許容される組成物は、がん免疫薬剤の少なくとも約64~80時間前、またはがん免疫薬剤の少なくとも約70~74時間前、またはがん免疫薬剤の少なくとも約72時間前に投与される。
【0148】
ある特定の実施形態において、IT-139またはその薬学的に許容される組成物は、がん免疫薬剤の後に投与される。ある特定の実施形態において、IT-139またはその薬学的に許容される組成物は、がん免疫薬剤の少なくとも約8~16時間後、またはがん免疫薬剤の少なくとも約10~14時間後、またはがん免疫薬剤の少なくとも約12時間後に投与される。
【0149】
ある特定の実施形態において、IT-139またはその薬学的に許容される組成物は、がん免疫薬剤の少なくとも約20~28時間後、またはがん免疫薬剤の少なくとも約22~26時間後、またはがん免疫薬剤の少なくとも約24時間後に投与される。
【0150】
ある特定の実施形態において、IT-139またはその薬学的に許容される組成物は、
がん免疫薬剤の少なくとも約44~52時間後、またはがん免疫薬剤の少なくとも約46~50時間後、またはがん免疫薬剤の少なくとも約48時間後に投与される。
【0151】
ある特定の実施形態において、IT-139またはその薬学的に許容される組成物は、がん免疫薬剤の少なくとも約64~80時間後、またはがん免疫薬剤の少なくとも約70~74時間後、またはがん免疫薬剤の少なくとも約72時間後に投与される。
【0152】
ある特定の実施形態において、がん免疫薬剤は、サイトカイン、チェックポイント阻害薬、及びPD-1抗体以外の抗体からなる群より選択される。ある特定の実施形態において、がん免疫薬剤は、インターフェロン、インターロイキン、PD-L1抗体、アレムツズマブ、イピリムマブ、オファツムマブ、アテゾリズマブ、及びリツキシマブからなる群より選択される。
【0153】
本発明の一実施形態によれば、がんの治療を必要とする対象におけるがんを治療するための方法であって、IT-139またはその薬学的に許容される組成物をPD-1抗体と組み合わせて投与することを含む、方法を提供する。ある特定の実施形態において、PD-1抗体は、IT-139またはその薬学的に許容される製剤の投与の前に投与される。
【0154】
本発明の一実施形態によれば、がんの治療を必要とする対象におけるがんを治療するための方法であって、IT-139またはその薬学的に許容される組成物をPD-L1抗体と組み合わせて投与することを含む、方法を提供する。ある特定の実施形態において、PD-L1抗体は、IT-139またはその薬学的に許容される製剤の投与の前に投与される。
【0155】
本発明の一実施形態によれば、がんの治療を必要とする対象におけるがんを治療するための方法であって、IT-139またはその薬学的に許容される組成物を、PD-1抗体以外のがん免疫薬剤と組み合わせて投与することを含む、方法を提供する。ある特定の実施形態において、PD-1抗体以外のがん免疫薬剤は、IT-139またはその薬学的に許容される製剤の投与の前に投与される。
【実施例
【0156】
本明細書に記載の発明がより十分に理解され得るようにするため、以下の実施例を示す。これらの実施例は、例示目的に過ぎないものであり、いかなる形であっても本発明を限定するものとして解釈すべきではない。
【0157】
分析方法
以下の分析方法を利用して、本発明の化合物を特徴づけた。
【0158】
HPLC法1:トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムの定量及び同一性を、292nmにおけるUV検出を伴った高圧液体クロマトグラフィーによって決定した。IT-139薬品を1mg/mLの濃度で水に溶解し、10μLをAgilent Zorbax SB-C18(3μm、4.6×150mm)HPLCカラムに注入した。移動相Aは、水中0.1%のトリフルオロ酢酸からなり、移動相Bは、アセトニトリル中0.1%のトリフルオロ酢酸からなった。移動相Aがゼロ時間から12分まで90%から10%となり、移動相Bが12分かけて10%から90%となるようにして、1.0mL/分の勾配流により、分離を達成した。次いで、12分から13分まで、勾配を10%の移動相A及び90%の移動相Bから90%のA及び10%のBへと反転させた。これを15分の実行終了まで継続した。アナライト保持時間は7.7分であった。試料温度を5℃に維持し、カラム温度を25℃に維持した。
【0159】
HPLC法2:HPLC法1を用いると2つの異なる不純物が共溶出するため、2つのHPLC法を使用する。292nmにおけるUV検出を伴った高圧液体クロマトグラフィーにより、IT-139薬品における関連物質を決定した。IT-139薬品を1mg/mLの濃度で水に溶解し、10μLをAgilent Zorbax SB-C18(3μm、4.6×150mm)HPLCカラムに注入した。移動相Aは、水中0.1%のトリフルオロ酢酸からなり、移動相Bは、アセトニトリル中0.1%のトリフルオロ酢酸からなった。移動相Aがゼロ時間から15分まで90%から10%となり、移動相Bが15分かけて10%から90%となるようにして、1.0mL/分の勾配流により、分離を達成した。15分から19.9分まで勾配を10%のA及び90%のBで保持した。次いで、19.9分から20分まで勾配を90%のA及び10%のBへと反転させ、26分の実行終了まで保持した。試料温度を5℃に維持し、カラム温度を25℃に維持した。
【0160】
HPLC法3:化合物A、化合物B、及び化合物Cから式I-bを分解しない分析は、297nmにおけるUV検出を伴った高圧液体クロマトグラフィーを使用する。IT-139原薬を0.5mg/mLの濃度で水に溶解し、10μLをPhenomenex Luna、Phenyl-Hexyl(150×3mm×3μm)HPLCカラムに注入した。移動相は、20mMの酢酸アンモニウムバッファー及び4mMの酢酸中の25%(体積/体積)メタノールからなった。カラム温度を25℃に維持して、1.0mL/分のイソクラティック流を合計実行時間27分行うことにより、分離を達成した。
【0161】
元素分析:Galbraith Laboratories(Knoxville,TN)は全ての元素分析測定を実施した。標準的な操作手順ME-14(1~5mgを秤量してスズのカプセルに入れ、次いでPerkinElmer 2400 Series II CHNS/O分析装置内で920~980℃で燃焼することが求められる)を用いて、炭素、水素、及び窒素の分析を実施した。誘導結合プラズマ原子発光分光法により、標準的操作手順ME-70及びICP-OES Optima 5300装置を用いてナトリウム及びルテニウムの分析を実施した。誘導結合プラズマ原子発光分光法により、標準的操作手順ME-30を用いてセシウムの分析を実施した。
【0162】
X線回折:PHOTON 100 CMOS検出器、IμS銅MX源、及びOxford Cryostream Plus低温デバイスを備えたBruker D8 Venture単結晶回折計、または室温のデータ収集による銅放射線を用いたBruker Smart Apex2単結晶回折計上で、X線データを収集した。
【0163】
実施例1 塩化ルテニウムの精製
RuCl.xHO(100.0g)を濃HCl 600mL及びエタノール99%
600mLと合わせた。混合物を正常圧の空気下で蒸留させて、混合物の体積を400mL未満に低減した。次いで、蒸留フラスコ内に残存する得られた濃縮塩化ルテニウム溶液を周囲温度に冷却し、中程度の孔のガラス製ブフナー漏斗で濾過し、ブフナー漏斗及びフラスコを濃HClですすぎ、合わせた濾液を追加の濃HClで約500mL総体積まで希釈した。
【0164】
実施例2 インダゾリウム塩の調製
【化11】
1H-インダゾール300.0g(2.54mol;6.64当量)を水(800mL)と合わせた。濃HCl(4L)を添加し、溶解するまで混合物を撹拌した(20分)。このインダゾール溶液を、大型の効率的なパドル型スターラーと、内部サーモプローブと、(HClガス放出用に)上部にガス排出管を備えた空冷還流凝縮器と、ポリエチレン管で延長したステムを有する0.5Lサイズの添加漏斗とを備えた15Lジャケット付撹拌ガラス及びテフロン(登録商標)製反応器に満たした。追加の濃HCl 4.0Lを反応器内のインダゾール溶液と合わせ、内部温度が90℃に達するまで混合物を撹拌及び加熱し、次いで撹拌速度を上げて250rpmにし、温度を少なくとも30分間90℃に維持した。次いで、250rpmの高速撹拌を維持しながら、実施例1からのRuCl溶液を、ポリエチレン管で延長したステムを有する漏斗から約5時間の期間にわたって慎重に滴下添加した。完全な添加後、添加漏斗を少量の濃HCl(2×50mL)ですすぎ、すすぎ液も反応器に添加した。反応混合物の合わせた体積は9.5Lであり、生成物は黄褐色の微晶質フレークの形態で沈殿した。完全な添加後、反応物を250rpm、90℃でさらに10時間撹拌した。反応混合物を撹拌しながら25℃に冷却し、底部のドレーンバルブを通じてポリエチレンプラスチックのバケットに移した。中程度の孔の3Lガラスフィルター漏斗での濾過により、沈殿した生成物を収集した。反応器及び撹拌パドルを2M
HClで洗浄し、洗浄液をフィルター漏斗上の材料に添加した。得られた固体を追加の2M HCl、約2Lで徹底的にすすぎ、次いで吸引により一晩部分乾燥した。これにより、残留する2M HClで湿っている598gの粗製インダゾリウム塩を褐色の粘着性固体として得た。HPLC分析:方法1:97.7%、方法2:98.0%。
【0165】
実施例3 セシウム塩の調製
【化12】
10Lの広口フラスコに、実施例2からの湿ったインダゾリウム塩を満たし、固体粉末化CsCl 180.0g(1.07mol;2.8当量)を添加した。純粋な非変性エタノール99%(1.8L)をMEK(2.0L)と合わせ、10Lフラスコ中のインダゾリウム塩及びCsClの混合物と合わせた。テフロン(登録商標)製パドルを用いて、22℃で混合物を機械的に撹拌した。最初は200rpmで5分間、次いで700rpmで2時間高速撹拌した。得られた橙色のスラリーを、中程度の孔のガラス製ブフナー漏斗(3L)を用いて濾過により収集し、固体を99%のエタノールで徹底的に洗浄し、濾過ケーキ材料を吸引により約1時間部分乾燥した。残りのCsClと混ざった橙色のMEK溶媒和物の形態でセシウム塩を含有する得られた材料を、大型の4Lビーカーに移した。エタノールと水との2:1(v/v)混合物1リットルを、ビーカー内の粗製Cs塩固体に添加した。スラリーを開放ビーカー中で350rpmで15分間機械的に撹拌した。この間に、MEK溶媒和物スラリーの明るい橙色が水和物の肉桂赤褐色に変化した。以前Cs塩の濾過に使用したのと同じブフナー漏斗を用いて、固体を濾過により収集した。得られた固体を99%のエタノール、約1リットルで徹底的に洗浄した。材料を吸引により乾燥し、次いで真空中で14時間(一晩)乾燥した。得られたのは226.90g(0.350mol)の肉桂赤褐色の固体であった。HPLC分析:遊離インダゾール検出なし、方法1:98.6%、方法2:純度99.0%。元素分析結果実測値:Cs:21.6%、Ru:16.6%、Cl:21.96%。二水和物の理論値:Cs:20.5%、Ru:15.6%、Cl:21.88%。一水和物の理論値:Cs:21.1%、Ru:16.0%、Cl:22.51%。真空乾燥した試料からの単結晶のX線回折分析からは、結晶構造における2つの水和水分子の約50%の占有率密度が示された。
【0166】
実施例4 ナトリウム塩の調製
【化13】
固体Al(SO.18HO 1000g(3.0molのAl)を撹拌DI水(2.0L)にゆっくり添加し、次いで固体NaSO 213.0g(3.0molのNa)を添加した。混合物を撹拌して溶解を完了させ(約30分)、DI水を添加することにより、溶液の総体積を2.7Lの体積に調整した。使用前に、得られた1.1Mの溶液を微細な0.45ミクロンSteriCup Duraporeメンブレンで濾過して、NaAl(SOの1.1M溶液2.7Lを得た。この1.1MのNaAl(SO溶液を、4Lビーカー内で実施例5からの226.9gのCs塩(0.350mol)と合わせた。固体粉末化CsCl 6.0gを混合物に添加して、Csアラムの形成を生じさせた。大型のテフロン(登録商標)コーティングロッド撹拌棒を用いて、周囲温度で30時間、混合物を磁気的に撹拌した。この間に、セシウム塩の赤褐色スラリーが、セシウムアルミニウム塩の微細な白色塩様の結晶と混ざったIT-139のコーヒー黒褐色スラリーに変化した。中程度の孔のブフナー(3L)を用いて、固体を濾過により収集し、反応フラスコ及び固体を、合計約1.5Lの飽和(=1.5M)水性NaSOで徹底的に洗浄し(3回に分け(3×0.5L)、濾液が無色になるまで)、固体をブフナー漏斗上の吸引により乾燥し、次いで真空中で少なくとも1日の間乾燥した。徹底的に乾燥した固体を、700mLのアセトニトリルと共に2Lの広口エルレンマイヤーフラスコに移した。混合物を15分間機械的に撹拌した。中程度の孔のブフナー漏斗上で、得られた橙色のスラリーを濾過し、不溶性の硫酸塩を混合物から除去した。塩ケーキを追加のアセトニトリル300mLですすぎ(3×100mL、無色になるまで)、次いで廃棄した。5L丸底フラスコ内の合わせた橙色の濾液を4LのMTBEで希釈し(1L部分を4回添加、穏やかな撹拌で)、沈殿を完了するためにフラスコを30分間放置した。沈殿した粗製Na塩を濾過により収集し、MTBE(2×0.5L)で徹底的にすすぎ、次いで吸引及び真空中で乾燥した。得られたのは、ふわふわした褐色の固体としての190.4g(理論の100%、二水和物として計算)の粗製生成物であり、溶媒和物の形態でMTBEを保持し、HPLC純度は方法1によると98.4%であった。元素分析は、この生成物が0.1~0.8wt%のセシウムを含有することを示している。生成物の構造をx線回折によって確認した。
【0167】
実施例5 残留セシウムの除去
実施例4からの190.4gの材料を、乾いた10Lフラスコに移した。等しい重量の活性化4Aモレキュラーシーブ粉末(191g)を添加した。[Aldrich 688363-1KG、アルミノケイ酸ナトリウム、「SYLOSIV A4」(Grace Davidsonによる製造)]。メチルエチルケトン(4.2L)をフラスコに添加し、混合物を機械的に撹拌した。撹拌したスラリーにメタノール(600mL)を5分の期
間にわたってゆっくり添加した。撹拌(800rpm)を30分間継続し、このときに、ほぼ全ての暗褐色の材料の塊が溶解した。得られた橙色のスラリーを、微細孔ガラスブフナー孔漏斗の上部に置いたWhatmanガラス繊維GF-Bフィルターディスクで濾過した。消費したモレキュラーシーブを追加のMEK 0.4L(2×200mL)ですすぎ、廃棄した。機械的撹拌を伴ってMTBE 10Lをゆっくり添加することにより、合わせた濾液を沈殿させた。撹拌を止め、混合物を30分間沈殿のために放置した。沈殿した生成物を濾過(3Lのブフナー漏斗)により収集し、MTBE 1L(2×0.5L)で徹底的にすすぎ、約2時間、ブフナー漏斗が冷たくなくなるまで、吸引により乾燥した。これにより、184gの精製ナトリウム塩が得られた。溶媒の痕跡を除去するため、精製材料を湿ったMTBEで処理した。184gの精製ナトリウム塩を、5Lの広口エルレンマイヤー内で3.3Lの湿ったMTBE(水飽和したMTBE)と合わせ、40分間機械的に撹拌した(200rpm)。得られた褐色の固体を濾過により収集した。固体を湿ったMTBEですすぎ、吸引により乾燥し、次いで真空中で一晩(15時間)徹底的に乾燥した。得られたのは、176.11gのコーヒー褐色の顆粒状の重い固体であり、HPLC(方法1)によると純度98.7%であった。これは、(実施例1から開始した)RuCl.xHOからの全体収量の85%に対応する。元素分析から、35~750ppmのセシウムが残留していることが決定された。
【0168】
実施例6 溶液安定性試験
実施例5からの化合物を、室温の溶液を用いて室温(20℃)で調製し、冷たい(2~8℃)溶液を用いて冷蔵した(2~8℃)。各々について500mLの総体積とした。19.2グラムのクエン酸を1Lの水に溶解することにより、クエン酸溶液を調製した。29.4グラムのクエン酸ナトリウムを1Lの水に溶解することにより、クエン酸ナトリウム溶液を調製した。pHが2.0から3.4に増大するまで、クエン酸ナトリウム溶液をクエン酸溶液に添加した。13.3gのマンニトールを200mLの水に溶解することにより、マンニトール溶液を調製した。16.6mLのクエン酸バッファーを400mLの水に添加することにより、式I-bの溶液を調製した。3.33gのトランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムを溶液に添加し、10分間撹拌した。50mLのマンニトール溶液を添加し、次いで33.4mLの水を添加して、最終体積500mLのIT-139バルク溶液とした。ラボ用作業台上の磁気撹拌プレートを用いて室温(18~22℃)試料を撹拌し、冷蔵庫(2~8℃)内の磁気撹拌プレートを用いて冷蔵試料を撹拌した。溶解直後(T=0)ならびに0.5、1、2、3、4、5、6、18、24、32、及び48時間の時点における各試料から100μLのアリコートを採取した。各試料をHPLCバイアル内の1.9mLのメタノールに添加し、ボルテックスにより混合した。室温(18~22℃)で保存したバルク溶液中のトランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムの純度は、96.8%から、18時間後に12.1%に低下した。冷蔵(2~8℃)で保存したバルク溶液中のトランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムの純度は、97.05%から、18時間後に95.4%に、48時間後に89.8%に低下した。図1は、18時間にわたり室温(18~22℃)の場合及び48時間にわたり冷蔵した(2~8℃)場合におけるトランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムのパーセンテージを示す。表7は、HPLCピーク面積に基づいた各試料におけるトランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウム(RT 7.7分)及び不純物(RRT 0.7、1.9、及び不特定RRTの合計)のパーセンテージを示す。18時間時点の冷蔵または室温で保存したIT-139試料におけるHPLCクロマトグラムを、それぞれ図2及び図3に示す。
【表7】
【0169】
実施例7 化合物Aの調製
【化14】
インダゾール(400mg、3.40mmol、1当量)を、大型のビーカー内の2mMのHCl(1.6L)に80℃で溶解した。溶液を室温に冷却してから、水性溶液(400mL HO)としてのNa[RuIIICl(Hind)](1.8g、3.40mmol、1当量)を添加した。得られた褐色を帯びた赤色の溶液を5分間撹拌し、次に撹拌なしで静置した。1日後、ビーカーの底に結晶が形成され始めた。合計で3日後、著しい量の結晶が形成され、これを真空濾過により収集し、HO(2×350mL)で洗浄し、減圧下で一晩乾燥して、RuIIICl(Hind)(HO)(930mg、59.2%)を暗赤色の結晶として得た。生成物はx線結晶解析に好適であり、構造を確認するためにx線結晶解析を使用した。
【0170】
実施例8 化合物Cの調製
【化15】
還流冷却器を取り付けた100mLの丸底フラスコに、RuIIICl(Hind)(HO)(100mg、0.217mmol)及びCHCN(6mL)を満たした。得られた暗赤色の懸濁液を50℃に加熱した。数時間後、材料を可溶化し、50℃で撹拌した。4日後、反応フラスコ内に際立った沈殿物が形成された。粗製の反応混合物を遠心処理して暗褐色の固体を得、これを冷たいEtOで洗浄した(3回、遠心処理を介して各回ごとに単離)。得られた淡褐色の粉末は純度>95%(HPLC分析)であった。少量(約40mg)の生成物を最小量のCHCN(約20mL)に溶解し、超音波処理して溶解し、次いでバイアル内に密封した。1~2日後、回折品質の赤色の結晶が形成され、x線結晶解析により構造を確認した。
【0171】
実施例9 化合物Dの調製
【化16】
還流冷却器を取り付けた50mLの丸底フラスコに、Hind[RuIIICl(Hind)](198mg、0.331mmol)及びTHF(10mL)を満たした。
得られた褐色を帯びた赤色の懸濁液を短時間超音波処理して、大きなチャンクの材料を砕いた。反応混合物を加熱還流し、20分後、材料が完全に可溶化されて暗赤色の溶液が得られた。追加の還流の20分後、反応混合物を室温に冷却し、様々な体積のアリコート(0.1~1.0mL)を様々な量のEtOまたはMTBE(1~15mL)で希釈した。1~2日後、いくつかの結晶化トライアルにより、暗赤色の結晶が生成された。最も成功した試みは、1:2~3の希釈換算係数(すなわち、1体積の反応混合物を2~3体積のEtOまたはMTBEのいずれかで希釈)を伴った。結晶を、使用する抗溶媒に応じて冷たいEtOまたは冷たいMTBEのいずれかで洗浄した。これにより赤色の結晶が得られ、これを使用して、x線結晶解析を介して構造を確認した。
【0172】
実施例10 IT-139製剤プロセス
冷たい(2~8℃)溶液を用いて冷却状態でIT-139を調製し、総体積1Lの薬品とした。pHが2.0から3.4に増大するまでクエン酸ナトリウム溶液(水中29.4g/L)をクエン酸溶液(水中19.2g/L)に添加することにより、クエン酸バッファーを調製した。次いで、33mLのクエン酸バッファーを767mLの水に添加することにより、作業クエン酸バッファー溶液を調製した。6.66グラムのトランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムを800mLの冷たい(2~8℃)作業クエン酸バッファー溶液に添加し、磁気撹拌プレート及び撹拌棒を用いて20分間、溶液を2~8℃に冷却しながら撹拌した。13.3gのマンニトールを200mLの水に溶解することにより、マンニトールの作業溶液を調製した。100mLの冷たい(2~8℃)マンニトール溶液を、作業クエン酸バッファー中に溶解した800mLのトランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムに添加し、溶液を2~8℃に冷却しながら5分間撹拌した。100mLの冷たい(2~8℃)水を薬品溶液に添加し、1Lの最終体積とした。IT-139薬品バルク溶液を0.22μmのパススルーフィルターで濾過し、凍結乾燥バイアルに無菌充填し、50mLの透明なガラスバイアル中30mLの最終充填量とした。バイアルに部分的にストッパーをかけ、シェルフを-5℃に予冷した凍結乾燥器に装填した。凍結乾燥サイクルは、-40℃で3時間の凍結と、0.1mbar及び-10℃で15時間、次いで0.1mbar及び-5℃で10時間の一次乾燥と、0.05mbar及び5℃で2時間、次いで0.05mbar及び10℃で2時間、次いで0.05mbar及び15℃で2時間、次いで0.05mbar及び20℃で2時間の二次乾燥とからなり、36時間の合計乾燥時間とした。バイアルに十分にストッパーをかけ、密封し、-20℃で保存した。
【0173】
実施例11 IT-139製剤プロセス2
冷たい(2~8℃)溶液を用いて冷却状態でIT-139を調製し、総体積2.8Lの薬品とした。pHが2.0から3.4に増大するまでクエン酸ナトリウム溶液(水中29.4g/L)をクエン酸溶液(水中19.2g/L)に添加することにより、クエン酸バッファーを調製した。次いで、9.3gのクエン酸バッファーを1960gの水に添加することにより、作業クエン酸バッファー溶液を調製した。36.3gのトランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムを1969.3グラムの冷たい(2~8℃)作業クエン酸バッファー溶液に添加し、磁気撹拌プレート及び撹拌棒を用いて20分間、溶液を2~8℃に冷却しながら撹拌した。35gのマンニトールを525mLの水に溶解することにより、マンニトールの作業溶液を調製した。525mLの冷たい(2~8℃)マンニトール溶液を、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムの作業クエン酸バッファー中溶液に添加し、溶液を2~8℃に冷却しながら5分間撹拌した。300mLの冷たい(2~8℃)水を薬品溶液に添加し、2.8Lの最終体積とした。IT-139薬品バルク溶液を0.22μmのパススルーフィルターで濾過し、凍結乾燥バイアルに無菌充填し、50mLの透明なガラスバイアル中25.1グラムの最終充填量とした。バイアルに部分的にストッパーをかけ、シェルフを-5℃に予冷した凍結乾燥器に装填した。凍結乾燥サイク
ルは、-40℃で6時間の凍結と、0.2mbar及び-10℃で50時間の一次乾燥と、0.2mbar及び30℃で33時間の二次乾燥とからなった。バイアルを窒素でバックフィルし、十分にストッパーをかけ、密封し、4℃で保存した。
【0174】
実施例12 IT-139原薬のバッチ分析
トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムと、RuIIICl(Hind)(HO)と、RuIIICl(Hind)(CHCN)と、RuIIICl(Hind)(HN=C(Me)ind)と、セシウムとを含む原薬におけるバッチ分析データを表8に再現する。
【表8-1】
【表8-2】
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムと、セシウムとを含む組成物。
(項目2)
RuIIICl(Hind)(HO)と、RuIIICl(Hind)(CHCN)と、RuIIICl(Hind)(HN=C(Me)ind)とをさらに含む、項目1に記載の組成物。
(項目3)
前記トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムが、前記組成物の約95.5重量パーセンテージ以上であり、
前記RuIIICl(Hind)(HO)が、前記組成物の約1.0重量パーセンテージ以下であり、
前記RuIIICl(Hind)(CHCN)が、前記組成物の約2.5重量パーセンテージ以下であり、
前記RuIIICl(Hind)(HN=C(Me)ind)が、前記組成物の約2.0重量パーセンテージ以下であり、
セシウムが、前記組成物の約0.5重量パーセンテージ以下である、
項目2に記載の組成物。
(項目4)
前記トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムが、前記組成物の約95.5~約99.9重量パーセンテージであり、
セシウムが、前記組成物の約0.0001~約0.5重量パーセンテージであり、
前記組成物が、任意選択で、RuIIICl(Hind)(HO)、RuIIICl(Hind)(CHCN)、及びRuIIICl(Hind)(HN=C(Me)ind)のうちの1つ以上を含み、このとき、
RuIIICl(Hind)(HO)が、前記組成物の約0~約1.0重量パーセンテージであり、
前記RuIIICl(Hind)(CHCN)が、前記組成物の約0~約2.5重量パーセンテージであり、
前記RuIIICl(Hind)(HN=C(Me)ind)が、前記組成物の約0~約2.0重量パーセンテージである、
項目1に記載の組成物。
(項目5)
前記トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムが、前記組成物の約95.5~約99.9重量パーセンテージであり、
前記RuIIICl(Hind)(HO)が、前記組成物の約0.001~約1.0重量パーセンテージであり、
前記RuIIICl(Hind)(CHCN)が、前記組成物の約0.001~約2.5重量パーセンテージであり、
前記RuIIICl(Hind)(HN=C(Me)ind)が、前記組成物の約0.001~約2.0重量パーセンテージであり、
セシウムが、前記組成物の約0.0001~約0.5重量パーセンテージである、
項目3に記載の組成物。
(項目6)
前記トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムが、前記組成物の約95.5~約99.9重量パーセンテージであり、
前記RuIIICl(Hind)(HO)が、前記組成物の約0.001~約0.75重量パーセンテージであり、
前記RuIIICl(Hind)(CHCN)が、前記組成物の約0.001~約1.5重量パーセンテージであり、
前記RuIIICl(Hind)(HN=C(Me)ind)が、前記組成物の約0.001~約1.25重量パーセンテージであり、
セシウムが、前記組成物の約0.0001~約0.25重量パーセンテージである、
項目5に記載の組成物。
(項目7)
前記トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムが、前記組成物の約95.5~約99.9重量パーセンテージであり、
前記RuIIICl(Hind)(HO)が、前記組成物の約0.001~約0.5重量パーセンテージであり、
前記RuIIICl(Hind)(CHCN)が、前記組成物の約0.001~約0.5重量パーセンテージであり、
前記RuIIICl(Hind)(HN=C(Me)ind)が、前記組成物の約0.001~約0.5重量パーセンテージであり、
セシウムが、前記組成物の約0.0001~約0.01重量パーセンテージである、
項目6に記載の組成物。
(項目8)
式I-a:
【化17】

の化合物。
(項目9)
トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムと、クエン酸ナトリウムと、クエン酸と、マンニトールとを含む組成物。
(項目10)
mer,トランス-[RuIIICl(Hind)(HO)]をさらに含む、項
目9に記載の組成物。
(項目11)
セシウム塩をさらに含む、項目10に記載の組成物。
(項目12)
前記トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムが非晶質である、項目11に記載の組成物。
(項目13)
mer,トランス-[RuIIICl(Hind)(HO)]が、前記組成物の約0.01~約0.4重量パーセントであり、
セシウムが、前記組成物の約0.00001~約0.01重量パーセントである、
項目12に記載の組成物。
(項目14)
mer,トランス-[RuIIICl(Hind)(HO)]が、前記組成物の約0.01~約0.3重量パーセントであり、
セシウムが、前記組成物の約0.00001~約0.01重量パーセントである、
項目13に記載の組成物。
(項目15)
mer,トランス-[RuIIICl(Hind)(HO)]が、前記組成物の約0.01~約0.2重量パーセントであり、
セシウムが、前記組成物の約0.00001~約0.01重量パーセントである、
項目14に記載の組成物。
(項目16)
前記組成物が凍結乾燥粉末である、項目9~15のいずれかに記載の組成物。
(項目17)
トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]ナトリウムが、前記組成物の約40~約60重量パーセントであり、
マンニトールが、前記組成物の約40~約60重量パーセントであり、
クエン酸が、前記組成物の約0.01~約0.5重量パーセントであり、
クエン酸ナトリウムが、前記組成物の約0.001~約0.25重量パーセンテージである、
項目9~16のいずれかに記載の組成物。
(項目18)
RuIIICl(Hind)(HO)と、RuIIICl(Hind)(CHCN)と、RuIIICl(Hind)(HN=C(Me)ind)とをさらに含む、項目9~17のいずれかに記載の組成物。
(項目19)
前記RuIIICl(Hind)(HO)が、前記組成物の約0.5重量パーセンテージ以下であり、
前記RuIIICl(Hind)(CHCN)が、前記組成物の約1.25重量パーセンテージ以下であり、
前記RuIIICl(Hind)(HN=C(Me)ind)が、前記組成物の約1.0重量パーセンテージ以下である、
項目18に記載の組成物。
(項目20)
式I-aの化合物:
【化18】

を調製するための方法であって、
トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸(III)]インダゾリウムと塩化セシウムとを好適な溶媒中で反応させるステップを含む、前記方法。
(項目21)
式I-bの化合物:
【化19】

を調製するための方法であって、
式I-aの化合物:
【化20】
を、塩交換をもたらすのに好適な条件下で反応させることを含む、前記方法。
(項目22)
がんの治療を必要とする患者におけるがんを治療するための方法であって、IT-139、またはその薬学的に許容される項目1~20のいずれかに記載の組成物を投与することを含む、前記方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7