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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】インシュレータ、固定子、及び回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/04 20060101AFI20240209BHJP
   H02K 15/095 20060101ALI20240209BHJP
   H02K 3/46 20060101ALI20240209BHJP
   H02K 3/52 20060101ALI20240209BHJP
【FI】
H02K15/04 E
H02K15/095
H02K3/46 C
H02K3/52 E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022528769
(86)(22)【出願日】2021-05-26
(86)【国際出願番号】 JP2021019948
(87)【国際公開番号】W WO2021246257
(87)【国際公開日】2021-12-09
【審査請求日】2022-12-16
(31)【優先権主張番号】P 2020095961
(32)【優先日】2020-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒木 貴志
(72)【発明者】
【氏名】望月 資康
(72)【発明者】
【氏名】松本 昌明
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-278289(JP,A)
【文献】特開2003-209944(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/04
H02K 15/095
H02K 3/46
H02K 3/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の固定子鉄心の径方向における一側面から前記径方向に沿って延びるティースに装着され、前記ティースに巻回されるコイルと前記ティースとの絶縁を確保するインシュレータであって、
前記ティースの周囲を覆うティース被覆部と、
前記ティース被覆部の軸方向における一端に設けられ、前記コイルを収納するコイル収納部と、を有し、
前記コイル収納部は、複数のコイルが束ねて結合された結合部を収納する結合部収納凹部を有し、
前記結合部収納凹部は、前記コイル収納部を構成する壁部により前記ティース被覆部と隔てて設けられており、
前記壁部には、前記コイル収納部側から前記ティース被覆部側へと前記コイルを導くコイル導入スリットが形成されている、
インシュレータ。
【請求項2】
前記結合部は、金属スリーブを有する、
請求項に記載のインシュレータ。
【請求項3】
請求項又は請求項に記載のインシュレータと、
前記インシュレータが装着される前記ティースと、
前記ティースと一体化された前記固定子鉄心と、
を備える、
固定子。
【請求項4】
請求項に記載の固定子と、
前記固定子に対して回転自在に設けられた回転子と、
を備える、
回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ンシュレータ、固定子、及び回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機として、固定子と回転子とを備えた回転電機が知られている。固定子は、例えば、円環状の固定子鉄心と、固定子鉄心の内周面から径方向内側に向かって突出された複数のティースと、ティースに巻回されたコイルと、ティースに装着されティースとコイルとの間の絶縁を確保するためのインシュレータと、を備える。
ここで、ティースに巻回されたコイルの端末部を結線する工程として、例えば、丸菅の金属スリーブを用いる場合がある。このような場合、金属スリーブに複数のコイルの端末部を挿入し、複数のコイルの端末部が金属スリーブに挿入したままの状態で、金属スリーブを加締める。これにより、各コイルの端末部が金属スリーブを圧着され、結線される。
【0003】
ところで、金属スリーブによって圧着されたコイルの形状が、例えば、丸線である場合、コイルの向きが金属スリーブに影響を及ぼすことは少ない。これに対し、例えば、コイルが平角線である場合、コイルを整列させた状態で金属スリーブを加締める必要がある。これは、平角線を用いる場合、平角線の向きによって各コイルに均一に圧力が加わらなかったり、金属スリーブによって圧着された平角線が金属スリーブから引出される方向が制限されてしまったりするからである。
しかしながら、金属スリーブの内部で平角線を整列させることが煩わしく、コイルを結線する作業の作業性が悪くなる可能性があった。
【0004】
また、金属スリーブによってコイルの端末部を圧着した場合、金属スリーブが配置される箇所によっては、ティースに巻回されたコイルに金属スリーブが接触してしまう可能性がある。コイルに金属スリーブが接触する場合、コイルの被覆が剥がれ、コイルと金属スリーブとの間で短絡が生じてしまう可能性があった。コイルと金属スリーブとの間の接触や短絡を防止するために、金属スリーブを別の部材で固定することが考えられる。しかしながら、この場合では、回転電機が大型化してしまう可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】日本国特開2005-278289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、コイルを結線する作業の作業性を向上させることができるとともに、コイルの短絡を防止でき、かつ装置の大型化を抑制できるンシュレータ、固定子、及び回転電機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態のインシュレータは、環状の固定子鉄心の径方向における一側面から前記径方向に沿って延びるティースに装着され、前記ティースに巻回されるコイルと前記ティースとの絶縁を確保するインシュレータであって、前記ティースの周囲を覆うティース被覆部と、前記ティース被覆部の軸方向における一端に設けられ、前記コイルを収納するコイル収納部と、を有し、前記コイル収納部は、複数のコイルが束ねて結合された結合部を収納する結合部収納凹部を有し、前記結合部収納凹部は、前記コイル収納部を構成する壁部により前記ティース被覆部と隔てて設けられており、前記壁部には、前記コイル収納部側から前記ティース被覆部側へと前記コイルを導くコイル導入スリットが形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態の回転電機を示す平面図。
図2】実施形態の分割コアを示す斜視図。
図3】実施形態のコイルを結線する方法を説明する図であって、金属スリーブを示す模式断面図である。
図4】実施形態の圧着装置を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態の回転電機を、図面を参照して説明する。
【0010】
図1は、回転電機1を示す平面図である。
回転電機1は、円筒状の固定子2と、固定子2の径方向内側に配置され固定子2に対して回転自在に設けられた回転子3と、を備える。
以下の説明では、回転子3の回転軸線Cと平行な方向を単に軸方向と称し、回転子3の回転方向を単に周方向と称し、軸方向及び周方向に直交する回転子3の径方向を単に径方向と称する。
【0011】
回転子3は、回転軸線C回りに回転するシャフト4と、シャフト4の外周面に嵌合された回転子鉄心5と、を備える。回転子鉄心5の径方向における中央には、軸方向に回転子鉄心5を貫通する貫通孔5aが形成されている。この貫通孔5aに、シャフト4が例えば、圧入により固定されている。回転子鉄心5の外周部寄りの位置には、図示しない複数のマグネットが周方向に並んで設けられている。
【0012】
固定子2は、円筒状の固定子ケース6の内周面に嵌合され、固定されている。固定子ケース6及び固定子2の軸方向は、回転軸線Cと一致している。固定子2は、円筒状の固定子鉄心7と、固定子鉄心7の内周面7aから径方向内側に向かって突出形成された複数(例えば、本実施形態では24個)のティース8と、ティース8の周囲を被覆するように装着された絶縁性のインシュレータ9と、各ティース8におけるインシュレータ9に集中巻き方式により巻回されるコイル10と、を備える。
【0013】
ここで、固定子鉄心7は、周方向に分割可能な分割コア方式が採用されている。すなわち、固定子鉄心7は、ティース8ごとに周方向に分割された複数の分割コア11を環状に連結して構成される。本実施形態では、分割コア11の個数は、24個となる。
【0014】
図2は、分割コア11を示す斜視図である。
図1図2に示すように、分割コア11は、例えば、複数の金属板を積層したり軟磁性粉を加圧成形したりすることによって構成されている。分割コア11は、周方向に延びる分割鉄心12と、分割鉄心12の周方向における中央から径方向内側に向かって突出するティース8と、を備える。
分割鉄心12は、分割コア11を環状に連結したときに固定子鉄心7の環状の磁路を形成する箇所である。分割鉄心12は、軸方向に直交する断面形状が円弧状となるように形成されている。
【0015】
分割鉄心12の周方向における両端部には、連結部13a,13bが形成されている。図1に示すように互いに隣り合う2つの分割鉄心12は、連結部13a,13bにおいて連結される。具体的には、互いに隣り合う2つの分割鉄心12のうち一方の分割鉄心の連結部13aが他方の分割鉄心の連結部13bに圧入されることで、2つの分割鉄心12が連結される。2つの連結部13a,13bのうち、一方の連結部13aは、凸形状に形成されている。2つの連結部13a,13bのうち、他方の連結部13bは、連結部13aを受け入れ可能な凹形状に形成されている。
【0016】
ティース8は、径方向に沿って延びるティース本体14と、鍔部15と、を備える。鍔部15は、ティース本体14の径方向内側の端部に位置する。鍔部15は、ティース本体14と一体に成形されている。鍔部15は、ティース本体14の先端部における周方向両側に沿って延びる。これによって、ティース本体14と鍔部15と分割鉄心12とに囲まれたスロット16が形成されている。つまり、各分割コア11には、ティース8を挟むようにティース8の両側に配置された一対のスロット16が形成される。スロット16には、コイル10が巻回される。
【0017】
インシュレータ9は、第1インシュレータ17と、第2インシュレータ18とによって構成されている。第1インシュレータ17及び第2インシュレータ18は、ティース8の軸方向において互いに分離又は結合が可能である。
第1インシュレータ17は、ティース8の軸方向における一方方向(例えば、ティース8の上方から下方に向かう方向)に沿って移動することで、ティース8に装着される。
第2インシュレータ18は、ティース8の軸方向における他方方向(例えば、ティース8の下方から上方に向かう方向)に沿って移動することで、ティース8に装着される。
つまり、インシュレータ9は、2つのインシュレータが軸方向に分割可能な分割構成を有する。
ティース8にインシュレータ9が装着された状態では、第1インシュレータ17と第2インシュレータ18とは隙間なく重なり合う。第1インシュレータ17と第2インシュレータ18との間からティース8が露出されることがない。
【0018】
第1インシュレータ17は、ティース本体14の周囲を覆うティース被覆部21と、ティース被覆部21の径方向における外側端に一体に成形されている外壁部24と、ティース被覆部21の径方向内側端に一体に成形されている内壁部25と、を備えている。
外壁部24は、分割鉄心12の内側面12aを被覆する。外壁部24は、分割鉄心12の軸方向における一端面から突出する外壁突出部27を有する。外壁突出部27の周方向における中央には、コイル導入スリット28が形成されている。コイル導入スリット28は、外壁部24の径方向外側から径方向内側へとコイル10を導く溝である。
【0019】
コイル導入スリット28は、径方向及び周方向に交差するように軸方向から見て斜めに延びて形成されている。外壁突出部27の外側面27aには、コイル押え壁29が形成されている。コイル押え壁29は、外壁部24の径方向外側で引き回されるコイル10(渡り線)を収納する。コイル押え壁29は、底壁部29aと側壁部29bとを備える。底壁部29aは、外壁突出部27の根元(外壁部24における分割鉄心12の軸方向における一端面に近い位置)から径方向外側に向かって突出する。側壁部29bは、底壁部29aの径方向における外側端から外壁突出部27と平行に立ち上がる。
【0020】
これら底壁部29a及び側壁部29bと、外壁突出部27とにより、コイル10の渡り線部を収納する渡り線収納部30(コイル収納部の一例)が形成される。渡り線収納部30を構成する外壁突出部27の外側面27aの一部には、スリーブ収納凹部31(結合部収納凹部の一例)が形成されている。スリーブ収納凹部31は、コイル導入スリット28を避けるように配置されている。スリーブ収納凹部31は、軸方向から見て四角形状に形成されている。スリーブ収納凹部31は、後述する金属スリーブ70を収納する。
【0021】
内壁部25は、ティース8を構成する鍔部15の内側面(径方向外側の面)を被覆する。内壁部25は、鍔部15の軸方向における一端面から突出する内壁突出部32を有する。鍔部15から突出する内壁突出部32の突出高さと、分割鉄心12から突出する外壁突出部27の突出高さとは、ほぼ同一である。
【0022】
第2インシュレータ18は、ティース本体14の周囲を覆うティース被覆部41と、ティース被覆部41の径方向における外側端に一体に成形されている外壁部44と、ティース被覆部41の径方向における内側端に一体に成形されている内壁部45と、を備えている。
【0023】
外壁部44は、分割鉄心12の内側面12aを被覆する。外壁部44は、分割鉄心12の軸方向における他端面から突出する外壁突出部47を有する。外壁突出部47の周方向における中央には、コイル引出スリット48が形成されている。コイル引出スリット48を介してインシュレータ9に巻回されたコイル10が引き出される。
【0024】
外壁突出部47の外側面47aには、コイルガイド部49が形成されている。コイルガイド部49は、外壁部44の径方向外側で引き回されるコイル10(渡り線)を収納する。コイルガイド部49は、周方向に沿う複数(例えば、本実施形態では3個)のガイド溝49aを有する。3個のガイド溝49aは、径方向に並んで配置されている。3個のガイド溝49aの各々は、U相、V相、W相に対応する。U相のガイド溝49aには、U相のコイル10が収納される。V相のガイド溝49aには、V相のコイル10が収納される。W相のガイド溝49aには、W相のコイル10が収納される。
【0025】
内壁部45は、ティース8を構成する鍔部15の内側面(径方向外側の面)を被覆する。内壁部45は、鍔部15の軸方向における端面から突出する内壁突出部52を有する。鍔部15から突出する内壁突出部52の突出高さは、分割鉄心12から突出する外壁突出部47の突出高さよりも低い。
【0026】
このような構成のもと、ティース8の軸方向における両端に第1インシュレータ17と第2インシュレータ18とが装着される。第1インシュレータ17及び第2インシュレータ18を構成する、ティース被覆部21,41と、外壁部24,44、及び内壁部25,45とによって、巻回コイル収容凹部60が形成される。この巻回コイル収容凹部60に収納されるように、各ティース8に装着されたインシュレータ9にコイル10が集中巻き方式により巻回される。
【0027】
ティース8に装着されたインシュレータ9にコイル10を巻回する工程を具体的に説明する。
コイル10が最初に第1インシュレータ17に巻回される(巻き始め)。ティース8に対するコイル10の巻回が終了した後、コイル10の巻き終わり端は、第2インシュレータ18から引き出される。コイル10は、断面形状が長方形であるいわゆる平角線である。このような平角線のコイル10は、長手方向が径方向に沿うように、かつ短手方向が周方向に沿うように隙間なく整列されて巻回される。
【0028】
各ティース8に巻回され、各分割コア11の軸方向における両端から引き出されたコイル10の端末部は、それぞれ結線される。本実施形態では、回転電機1は、3相(U相、V相、W相)のコイルで構成され、コイル10は、スター結線(Y結線)される。例えば、第1インシュレータ17のコイル導入スリット28を介して引き出されたコイル10の端末部10a(図2参照、巻き始め端)は、中性点として結線される。第2インシュレータ18のコイル引出スリット48を介して引き出されたコイル10の端末部10b(図2参照、巻き終わり端)は、同相のコイルが互いに結線されており、対応する相の図示しない端子に接続される。
【0029】
図示しない端子に結線されるコイル10の端末部10b(巻き終わり端)と、中性点として結線されるコイル10の端末部10a(巻き始め端)とが、固定子鉄心7の軸方向における両側に別々に配置される。中性点として結線されるコイル10の端末部10aは、例えば、3本を一束として金属スリーブ70(図2参照)によって圧着される。この状態でコイル10の端末部10aは、第1インシュレータ17の渡り線収納部30に収納されて引き回される。金属スリーブ70は、第1インシュレータ17のスリーブ収納凹部31に収納される。
【0030】
一方、図示しない端子に結線されるコイル10の端末部10bは、第2インシュレータ18の各ガイド溝49aに収納される。すなわち、U相、V相、W相のコイル10がU相、V相、W相のガイド溝49aに各々収納されて引き回される。
図示しない各端子を介して所望のコイル10に電力が供給されることにより、固定子2に所望の鎖交磁束が形成される。この鎖交磁束と回転子3の図示しないマグネットとの間で磁気的な吸引力や反発力が生じ、回転子3が回転される。
また、回転電機1を発電機として用いる場合、外力等により回転子3が回転させられることにより、回転子3の図示しないマグネットと固定子2のコイル10との間に磁気的な吸引力や反発力が生じ、鎖交磁束が形成される。これにより、図示しない各端子に電力が生じる。
【0031】
ここで、図2から図4に基づいて、金属スリーブ70を用いた、中性点となるコイル10の端末部10aを結線する方法について詳述する。
図3は、金属スリーブ70を用いたコイル10の端末部10aを結線する方法を説明する図である。図3において、PART(a)から(c)の各々は、工程を示す。
図3(a)に示すように、圧着する前の金属スリーブ70は、丸菅状である。つまり、金属スリーブ70の軸方向から見て、円形形状を有する金属スリーブ70を準備する。
【0032】
図3(b)に示すように、丸菅状の金属スリーブ70の両側を、金属スリーブ70の軸心Csを挟むように押圧する(図3(b)における符号P参照)。これによって、金属スリーブ70を軸心Cs方向から見て楕円形状に変形させる(スリーブ加工工程)。つまり、軸方向から見て金属スリーブ70が非円形形状を有するように金属スリーブ70を加工し、変形した金属スリーブ70を得る。変形後(加工後)の金属スリーブを「変形スリーブ」又は「変形した金属スリーブ」と称してもよい。
【0033】
次に、図3(c)に示すように、楕円形状に変形した金属スリーブ70に、コイル10の端末部10aを挿入する(コイル挿入工程)。
上述したスリーブ加工工程では、所定の本数(例えば、本実施形態では3本)のコイル10が金属スリーブ70の内部において横並びに整列されるように、金属スリーブ70を楕円形状に変形させている。このため、コイル挿入工程では、金属スリーブ70にコイル10の端末部10aを挿入させることによって、コイル10の端末部10aが横並びに整列される。例えば、本実施形態では、コイル10は平角線であるため、コイル10の断面視において、コイル10は、長手方向と短手方向とを有する。図3(c)に示すように、変形した金属スリーブ70においては3本のコイル10は、コイル10の長手方向に沿って横並びで整列される。
【0034】
次に、変形した金属スリーブ70に3本のコイルを挿入した後に、金属スリーブ70を加締めることによって、変形した金属スリーブ70と各コイル10の端末部10aとを接合する(加締め工程)。
【0035】
図4は、加締め工程を行うための圧着装置80を示す斜視図である。
図4に示すように、圧着装置80は、固定電極81と、固定電極81に対して接近、離間する可動電極82と、を備えている。このような圧着装置80の固定電極81上に、コイル10の端末部10aが挿入された金属スリーブ70を配置する。このとき、固定電極81に対して可動電極82が離間されている。この後、固定電極81に可動電極82を接近させて金属スリーブ70を加圧する。この際、各電極81,82に通電を行う。
【0036】
例えば、金属スリーブ70によって3本のコイル10を接合させる場合、金属スリーブ70への加圧条件及び各電極81,82への通電条件は、例えば、以下の通りである。
・金属スリーブ70に加わる加圧力:3000[N]
・各電極81,82への通電方法:PWM(Pulse Width Modulation)制御(パルス通電制御)
・通電電流:10[kA]
・通電サイクル:8回
・通電立ち上げ時間:50[ms]
・通電時間:600[ms]
【0037】
圧着装置80を用い、上記条件で金属スリーブ70に通電加圧を行う。したがって、金属スリーブ70が加締められ、この金属スリーブ70とコイル10とが確実に接合される。これにより、コイル10の端末部10aの金属スリーブ70を用いた結線工程が完了する。加締められた金属スリーブ70の形状は、平板状となる。この状態の金属スリーブ70が、図2に示すように第1インシュレータ17のスリーブ収納凹部31に収納される。スリーブ収納凹部31は、加締められた金属スリーブ70の形状に対応するように、軸方向から見て四角形状に形成されている。
なお、スリーブ加工工程においては、圧着装置80の各電極81,82に通電を行わない状態で、電極81,82にプレス加工が施されてもよい。プレス加工の条件としては、特に限定されず、公知のプレス加工条件が用いられる。
【0038】
このように上述の実施形態では、コイル10の端末部10aを結線するにあたって、金属スリーブ70を用いることにより、コイル10の結線を容易に行うことができる。
また、上述のコイル10を結線する方法では、スリーブ加工工程と、コイル挿入工程と、加締め工程と、を有する。このため、コイル挿入工程において、金属スリーブ70にコイル10の端末部10aを挿入させることによってコイル10の端末部10aを容易に横並びに整列させることができる。よって、コイル10を結線する作業の作業性を向上できる。
【0039】
また、加締め工程において、金属スリーブ70に、パルス通電制御による通電加熱を行っている。このため、金属スリーブ70とコイル10とが確実に接合され、金属スリーブ70からコイル10が引き抜けてしまったり、コイル10が焼損してしまったりすることを防止できる。
【0040】
また、上述の実施形態では、ティース8を被覆する第1インシュレータ17に、渡り線収納部30を形成している。さらに、渡り線収納部30を構成する外壁突出部27の外側面27aの一部に、スリーブ収納凹部31を形成している。このスリーブ収納凹部31に、コイル10を結線した金属スリーブ70を収納している。このため、金属スリーブ70の位置を容易に安定させることができる。また、渡り線収納部30のスペースを有効的に活用して金属スリーブ70を配置することができる。このため、固定子2が無駄に大型化してしまうことを防止できる。
【0041】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、コイル10を結線する方法として、スリーブ加工工程と、コイル挿入工程と、加締め工程と、を有する。このため、コイル挿入工程において、金属スリーブ70にコイル10の端末部10aを挿入させることによってコイル10の端末部10aを容易に横並びに整列させることができる。よって、コイル10を結線する作業の作業性を向上できる。
【0042】
なお、上述の実施形態では、固定子2(固定子鉄心7)が分割コア11を環状に連結して構成される場合について説明した。分割コア11の個数が24個である場合について説明した。しかしながら、実施形態は、この構成に限られない。固定子2(固定子鉄心7)は、周方向に分割可能な分割コア方式が採用されていなくてもよい。
【0043】
上述の実施形態では、例えば、3本のコイル10の端末部10aを、金属スリーブ70を用いて結線する場合について説明した。しかしながら、実施形態は、この構成に限られない。コイル10の本数は、任意に決定することができる。すなわち、コイル10の本数は、4本以上でもよい。金属スリーブ70の大きさは、結線させるコイル10の本数に応じて変更すればよい。また、スリーブ加工工程では、金属スリーブ70を軸心Cs方向から見て楕円形状に変形させなくてもよく、コイル10の整列させる配置に応じて金属スリーブ70を変形させればよい。変形前の金属スリーブ70の形状は、軸方向から見て円形形状である。変形した金属スリーブ70形状は、円形形状以外の形状(異形状)であればよい。
【0044】
上述の実施形態では、コイル10の端末部10a(中性点)を、金属スリーブ70を用いて結線した場合について説明した。しかしながら、実施形態は、この構成に限られない。コイル10の端末部10bを図示しない端子と接合する場合にも、上述のコイル10を結線する方法を採用することが可能である。
【0045】
上述の実施形態では、インシュレータ9(第1インシュレータ17)にスリーブ収納凹部31を形成し、このスリーブ収納凹部31にコイル10を結線した金属スリーブ70を収納した場合について説明した。しかしながら、実施形態は、この構成に限られない。金属スリーブ70に代わって、コイル10の端末部10aを結線する部材を用いてもよい。また、直接溶接等によりコイル10の端末部10aを結線してもよい。これらの場合においても、スリーブ収納凹部31は、コイル10の結線箇所を収納可能に形成されていればよい。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0047】
1…回転電機、2…固定子、3…回転子、7…固定子鉄心、8…ティース、9…インシュレータ、10…コイル、17…第1インシュレータ、18…第2インシュレータ、21,41…ティース被覆部、30…渡り線収納部(コイル収納部)、31…スリーブ収納凹部(結合部収納凹部)、70…金属スリーブ、80…圧着装置
図1
図2
図3
図4