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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】ベル形液体噴霧の形状を評価する方法
(51)【国際特許分類】
   B05B 12/08 20060101AFI20240209BHJP
   B05B 3/10 20060101ALI20240209BHJP
   G01P 13/00 20060101ALN20240209BHJP
【FI】
B05B12/08
B05B3/10 B
G01P13/00 D
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022531449
(86)(22)【出願日】2020-11-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-30
(86)【国際出願番号】 EP2020082997
(87)【国際公開番号】W WO2021105026
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-08-01
(31)【優先権主張番号】19211889.1
(32)【優先日】2019-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008981
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D-48165 Muenster,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】ジマイェフ,イェフゲン
(72)【発明者】
【氏名】ラカ,ファトミール
(72)【発明者】
【氏名】ミルバイアー,イゴール
(72)【発明者】
【氏名】ヴィッガー,ゲオルク
(72)【発明者】
【氏名】ブリーゼニック,ダニエル
【審査官】大塚 美咲
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/054438(WO,A1)
【文献】特開平11-010028(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0332174(US,A1)
【文献】特開2014-226797(JP,A)
【文献】特開2010-036388(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 12/08
B05B 3/10
G01P 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベル形液体噴霧(30)の形状を評価するための方法であって、以下のステップ:
・ベル形液体噴霧(30)を噴出するためにスプレーノズル(10)を操作するステップと;
・前記スプレーノズル(10)の操作中に、前記噴出されたベル形液体噴霧(30)を形成する複数の液体ジェット(31)の画像をキャプチャするステップと;
・キャプチャされた画像(40)を処理するステップであって、前記キャプチャされた画像(40)を二値画像(50、51)に変換することを含み、前記二値画像(50、51)は、複数のフィラメント(60)を含み、各フィラメント(60)は、液体ジェット(31)と複数のアーク(70)に対応し、各アーク(70)は、互いに隣接して配置された2つのフィラメント(60)を連結している、ステップと;
・前記処理された画像から前記液体ジェット(31)の少なくとも1つの形状パラメータを導出するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記スプレーノズル(10)及び前記複数の液体ジェット(31)の側面視画像及び/又は部分画像がキャプチャされる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの形状パラメータの導出は、第1アーク(70)の決定された第1点(71)と第2アーク(70)の決定された第2点(72)との間の距離(73)を計算し、前記第1アーク(70)及び前記第2アーク(70)は、フィラメント(60)の反対側に位置し、前記フィラメント(60)に連結されていること、及び、前記計算された距離(73)を少なくとも1つの形状パラメータとして使用し、前記少なくとも1つの形状パラメータは対応する液体ジェット(31)の直径を示していること、を含む請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1点(71)及び前記第2点(72)の決定は、前記第1点(71)と前記第2点(72)の間の前記計算された距離(73)を最小化することと、同時に、前記フィラメント(60)からの前記第1点(71)と前記第2点(72)の距離をそれぞれ最大化することの両方を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの形状パラメータの導出は、フィラメント(60)を分離し、前記分離されたフィラメント(60)の長さ(63)を計算し、前記計算された長さ(63)を少なくとも1つの形状パラメータとして使用し、前記少なくとも1つの形状パラメータは対応する液体ジェット(31)の長さを示すこと、及び/又は、前記分離されたフィラメント(60)の縦の延長に沿って前記分離されたフィラメント(60)の複数の幅を計算し、前記複数の計算された幅を少なくとも1つの形状パラメータとして使用し、前記少なくとも1つの形状パラメータは対応する液体ジェット(31)の幅の縦の展開を示すことを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記フィラメント(60)の分離は、前記二値画像(51)から前記複数のアーク(70)を除去することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの形状パラメータの導出は、前記二値画像(51)からフィラメント(60)を抽出し、前記フィラメント(60)の形状を少なくとも1つの形状パラメータとして使用し、前記少なくとも1つの形状パラメータは、対応する液体ジェット(31)の軌跡を示すことを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
画像(40)のシーケンスが一定期間にわたってキャプチャされ、前記少なくとも1つの形状パラメータの導出は、整列したフィラメント(60)に高速フーリエ変換を適用することによって、対応する二値画像(51)の前記整列したフィラメント(60)のホイップ周波数を計算し、前記計算されたホイップ周波数を少なくとも1つの形状パラメータとして使用し、前記少なくとも1つの形状パラメータは対応する液体ジェット(31)のホイップ周波数を示すことを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。

【請求項9】
前記フィラメント(60)の整列は、デカルト座標系(80)に抽出されたフィラメント(60)を配置すること、及び/又は、抽出されたフィラメント(60)の角度を前記スプレーノズル(10)の形状に関して修正することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの形状パラメータの導出は、前記二値画像(50)から交差するフィラメントを除去することを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの形状パラメータは、ベル形液体噴霧(90)を数値的にシミュレーションするための入力として、及び/又は、数値的にシミュレーションされたベル形液体噴霧(90)の検証手段として使用される、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記導出された少なくとも1つの形状パラメータは、前記スプレーノズル(10)の回転速度への、又は液体の供給速度への、又は気流からの、前記少なくとも1つの形状パラメータの依存性を評価するために使用される、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記方法を実装するプログラムコードを実行するプロセッサによって実行される、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
ベル形液体噴霧(30)の形状を評価するためのコンピュータプログラム製品であって、プロセッサによって実行されるプログラムコードを格納するデータキャリアを備え、前記プログラムコードが請求項1~12のいずれか1項に記載の方法を実装する、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベル形液体噴霧の形状を評価する方法に関する。本方法は、ベル形液体噴霧を噴出するためにスプレーノズルを操作するステップと、スプレーノズルの操作中に、噴出されたベル形液体噴霧を形成する複数の液体ジェットの画像をキャプチャするステップとを含む。本発明はさらに、ベル形液体噴霧の形状を評価するためのコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
ベル形液体噴霧は、液体コーティングを表面に塗布するために幅広く使用されている。ベル形液体噴霧は、液体コーティングがスプレーノズルに連続的に供給される間、回転軸を中心に速い角速度で回転する円板状又は円錐状のスプレーノズルによって噴出されることができる。スプレーノズルの高速回転は、液体コーティングに、回転軸に関して半径方向に液体コーティングを加速する強い遠心力を受けさせる。遠心力とは別に、液体コーティングは、粘弾性力、表面張力、重力、空気抵抗力及び静電力のような複数のさらなる力を受ける。
【0003】
スプレーノズルの周囲に沿って互いに隣接して配置された複数の放射状の溝により、加速された液体コーティングは、スプレーノズルから分離する際に複数の異なる液体ジェットを形成する。液体ジェットは、スプレーノズルの周囲に沿って、互いに実質的に等しい距離で配置される。上記の力の相互作用は、液体コーティング噴霧のベル形状をもたらす。
【0004】
ベル形の液体コーティング噴霧は、多種多様な異なる製作品をコーティングするために使用されることができ、好ましくは、自動車製造業者によって車体部品の表面にコーティングを塗布するために使用される。車体部品は、主に自動車の美観と、車体部品の材料を劣化、すなわち損傷、摩耗、腐食から保護するためにコーティングされる。最適な効果を得るためには、コーティングは、車体部品の表面にできるだけ均一に塗布されなければならない。
【0005】
そのため、自動車製造業者は、塗布されたコーティングのより高い品質を達成させるために、スプレーノズルの形状、液体コーティングの粘度、及びスプレーノズルの角速度と液体コーティングの供給量、などの複数のベル噴霧パラメータを最適化することによって、ベル形液体コーティングの改良を続けている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、ベル形液体噴霧の形状を評価する方法を提案することであり、該評価によりベル形液体噴霧を最適化することができる。本発明の他の目的は、ベル形液体噴霧の形状を評価するためのコンピュータプログラム製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、ベル形液体噴霧の形状を評価する方法である。本方法は、ベル形液体噴霧を噴出するためにスプレーノズルを操作するステップと、スプレーノズルの操作中に、噴出されたベル形液体噴霧を形成する複数の液体ジェットの画像をキャプチャするステップと、を含む。本方法は、スプレーノズルの通常の操作に基づくものである。
【0008】
通常の操作では、スプレーノズルは回転軸を中心に毎分10,000回転(rpm)から70,000回転の範囲内の角速度で回転する。スプレーノズルが回転している間、液体好ましくはコーティングが約50ml/分~400ml/分の範囲の供給速度でスプレーノズルに連続的に供給される。スプレーノズルの回転による遠心力と、粘弾性力、表面張力、重力、空気抵抗力、静電気力のうちの1つ以上との相互作用により、液体噴霧は、スプレーノズルによって噴出される間、ベルの形状を有する。
【0009】
スプレーノズルの角速度と液体の供給速度は、ベル形液体噴霧の形状に影響を与える2つの重要なパラメータである。しかし、ベル形液体噴霧の形状に影響を与える第3重要なパラメータは、液体の粘度及び液体に加えられる外力からの粘度依存性である。外力からの粘度依存性については、ニュートン液体と非ニュートン液体が区別され得る。前者の液体はいかなる外力にも依存しない、すなわち外力に対して一定の粘度有し、一方、後者の液体は、外力に応じて変化する粘度を有する。
【0010】
スプレーノズルの操作中、高速度カメラは、スプレーノズルによって噴出されるベル形液体噴霧の1つ以上の後続の画像をキャプチャする。各キャプチャされた画像は、ベル形液体噴霧の静止状態を表し、スプレーノズルの周囲に沿って互いに隣接して配置されたベル形液体噴霧を形成する複数の液体ジェットを含む。
【0011】
本発明によれば、本方法は、キャプチャされた画像を処理するステップと、処理された画像から液体ジェットの少なくとも1つの形状パラメータを導出するステップとをさらに含む。スプレーノズルの通常の操作中にキャプチャされた画像に基づいて、本発明の方法は、供給された実際の液体で実際のスプレーノズルによって噴出された実際のベル形液体噴霧に関連する1つ以上の形状パラメータを得ることを目的とする経験的な方法である。
【0012】
少なくとも1つの形状パラメータは、画像処理によって導出される。画像処理は、前処理、セグメント化、抽出、及び後処理の1つ以上のステップを含むことができ、これらは以下でより詳細に説明される。
【0013】
有利には、スプレーノズル及び複数の液体ジェットの側面視画像及び/又は部分画像がキャプチャされる。側面視画像は、高速度カメラがカメラの光軸がベル形液体噴霧の外側横表面に対して横方向又は特に垂直に延びるように配置されている場合に、キャプチャされる。部分画像をキャプチャするだけで十分であり、スプレーノズルに関して高速度カメラを配置すること及びキャプチャされた画像を処理することの両方を容易にする。
【0014】
好ましい実施形態では、キャプチャされた画像の処理は、キャプチャされた画像を二値画像に変換することを含み、該二値画像は複数のフィラメントを含み、各フィラメントは液体ジェットと複数のアークに対応し、各アークは、互いに隣接して配置されている2つのフィラメントを連結している。二値画像は、例えば、黒色又は白色であるモノクロ(すなわち単色)の背景と、順に、例えば、1つ以上の色を有し得る前景を含む(前景の各色は背景の単色とは異なる)。
【0015】
したがって、二値画像は前景と背景を区別することを容易にし、特に、二値画像の背景を完全に無視することができる。前景は、スプレーノズルの外周に沿って交互に並ぶフィラメントとアークを含み得る。フィラメントは、細い線であると理解されるべきである。
【0016】
多くの実施形態において、少なくとも1つの形状パラメータの導出は、第1アークの決定された第1点と第2アーク(該第1アーク及び該第2アークは、フィラメントの反対側に位置し、フィラメントに連結されている)の決定された第2点との間の距離を計算すること、及び、該計算された距離を少なくとも1つの形状パラメータ(該少なくとも1つの形状パラメータは対応する液体ジェットの直径を示す)として使用することを含む。距離は、第1点と第2点との間のピクセル数をカウントし、二値画像の解像度を使用することによって、カウントされたピクセル数を距離に変換することによって計算されることができる。第1点と第2点の間の距離は、フィラメントに対応する液体ジェットの直径又は厚さとして解釈され得る。第1点と第2点の間の距離が大きいほど、より多くの液体が液体ジェットを有し、すなわち、液体ジェットがより厚い。
【0017】
これらの実施形態において、第1点及び第2点の決定は、第1点と第2点の間の計算された距離を最小化することと、同時に、フィラメントからの第1点と第2点の距離をそれぞれ最大化することの両方を含む。言い換えれば、第1点、第2点、及びフィラメントの最も近い点は、三角形を形成する。第1点及び第2点は、パターン認識によって容易に決定されることができる。
【0018】
さらにこれらの実施形態において、少なくとも1つの形状パラメータの決定は、二値画像のセグメントを選択することを含んでよく、選択されたセグメントは、本質的にアークのみを含む。選択されたセグメント内のアークを自動的に、すなわち、パターン認識によって認識することが容易になる。
【0019】
追加的に又は代替的に、少なくとも1つの形状パラメータの導出は、フィラメントを分離し、分離されたフィラメントの長さを計算し、計算された長さを少なくとも1つの形状パラメータとして使用し、該少なくとも1つの形状パラメータは液体ジェットの長さを示すこと、及び/又は、分離されたフィラメントの縦の延長に沿って分離されたフィラメントの複数の幅を計算し、複数の計算された幅を少なくとも1つの形状パラメータとして使用し、該少なくとも1つの形状パラメータは対応する液体ジェットの幅の縦の展開を示すことを含む。分離されたフィラメントの長さは、フィラメントの第1端点とフィラメントの第2端点との間のピクセル数をカウントし、次いで二値画像の解像度を使用することによってカウントされたピクセル数を長さに変換することによって計算され得る。分離されたフィラメントの縦位置における分離されたフィラメントの幅は、分離されたフィラメントの縦方向に対して交差するフィラメントのピクセル数をカウントし、次いで二値画像の解像度を使用することによってカウントされたピクセル数を幅に変換することによって計算され得る。
【0020】
これらの実施形態では、フィラメントの分離は、二値画像から複数のアークを除去することを含み得る。アークの除去は、フィラメントを互いに分離するフィラメント間の連結を除去する、すなわち、フィラメントを分離された物体にすることである。分離されたフィラメントによって、フィラメントを自動的に、すなわちパターン認識によって認識することが容易になる。
【0021】
追加的に又は代替的に、キャプチャされた画像の処理は、二値画像からフィラメントを抽出し、該フィラメントの形状を少なくとも1つの形状パラメータとして使用し、該少なくとも1つの形状パラメータは、対応する液体ジェットの軌跡を示すことを含むことができる。フィラメントは、パターン認識によって抽出され得る。フィラメントは、全体として、対応する液体ジェットの軌跡を表すために使用される。軌跡は、長さと、おそらく変化する曲率を含む。
【0022】
追加的に又は代替的に、画像のシーケンスが一定期間にわたってキャプチャされ、少なくとも1つの形状パラメータの導出は、整列したフィラメントに高速フーリエ変換を適用することによって、対応する二値画像の整列したフィラメントのホイップ周波数を計算し、計算されたホイップ周波数を少なくとも1つの形状パラメータとして使用し、該少なくとも1つの形状パラメータは対応する液体ジェットのホイップ周波数を示すことを含む。ホイップ周波数は、それがスプレーノズルの操作中に対応する液体ジェットのホイップ運動、すなわち液体ジェットの軌道の周期的変動を反映するため、動的な形状パラメータである。
【0023】
これらの実施形態では、フィラメントの整列は、デカルト座標系に抽出されたフィラメントを配置すること、及び/又は、抽出されたフィラメントの角度をスプレーノズルの形状に関して修正することを含む。
【0024】
抽出されたフィラメントを含むデカルト座標系は、形状パラメータの高度な計算を可能にする。フィラメントがスプレーノズルの外周に沿って分布するため、フィラメントは回転軸に対してそれぞれ関連する極角度によって互いに対して回転される。関連する極角度によって整列したフィラメントの角度を修正することは、スプレーノズルが円形の外周の代わりに、直線状の外周を有するようにしようとする。角度を修正することにより、フィラメントの整列が改善され、導出される形状パラメータの精度が向上する。
【0025】
好ましくは、少なくとも1つの形状パラメータの導出は、二値画像から交差するフィラメントを除去することを含む。交差するフィラメントは、互いに結合し、又は交差する。二値画像から交差するフィラメント、好ましくは全ての交差するフィラメントを除去することは、フィラメントを自動的に、すなわちパターン認識によって、認識することを容易し、導出される形状パラメータの精度を向上させる。
【0026】
提案された方法による形状パラメータの導出は、それぞれの導出される形状パラメータの精度を高めるために、多数の液体ジェット、すなわち液体ジェット対応するフィラメント及び連結アークにわたって平均化することを含み得ることに留意されたい。
【0027】
導出された少なくとも1つの形状パラメータは、ベル形液体噴霧を数値的にシミュレーションするための入力として、及び/又は、数値的にシミュレーションされたベル形液体噴霧の検証手段として使用されることができる。導出された形状パラメータは、ベル形液体噴霧の数値シミュレーションの精度を高めるために、又は、ベル形液体噴霧の数値シミュレーションの精度を検証するために使用され得る。数値シミュレーションの精度が高いほど、すなわち、数値シミュレーションが、液体ジェットの不安定性の開始又は霧化の開始を含む現実をより良く予測するほど、ベル形液体噴霧構成をより効率的に最適化することができ、該ベル形液体噴霧構成は、スプレーノズルと、液体と、ベル形液体噴霧に影響を与えるパラメータと、を含む。
【0028】
追加的に又は代替的に、少なくとも1つの形状パラメータは、スプレーノズルの回転速度からの、又は、液体の供給速度からの、又は、気流からの該導出された少なくとも1つの形状パラメータの依存性を評価するために使用されてよい。ベル形液体噴霧構成のパラメータに対する形状パラメータの依存性を考慮することにより、数値シミュレーションの精度及びその予測能力がさらに改善する。
【0029】
多くの実施形態では、本方法は、本方法を実装するプログラムコードを実行するプロセッサによって行われてよい。このようにして、ベル形液体噴霧の評価を少なくとも部分的に自動化させることができ、それは評価プロセスの効率及び精度が向上させる。
【0030】
本発明の別の態様は、ベル形液体噴霧を評価するためのコンピュータプログラム製品である。本コンピュータプログラム製品は、プロセッサによって実行されるプログラムコードを格納するデータキャリアを備える。データキャリアは、格納されたプログラムコードをインストールするため、及び/又は、インストールされたプログラムコードを格納されたプログラムコードによってアップグレードするために使用されることができる。
【0031】
本発明によれば、プログラムコードは、本発明の方法を実装する。格納されたプログラムコードは、既存のベル形液体噴霧評価構成の向上された効率と精度を可能にする。ベル形液体噴霧評価構成は、ベル形液体噴霧構成と、高速度カメラと、コンピュータであって、カメラに接続され、プロセッサと、高速度カメラによってキャプチャされた画像を処理するためにプロセッサによって実行される画像処理ソフトウェアとを有するコンピュータと、を備えている。
【0032】
ベル形液体噴霧に影響を与える形状パラメータと、ベル形液体噴霧構成のパラメータに対する形状パラメータの依存性が、高効率かつ高精度に経験的に導出され得ることは、本発明方法の本質的な利点である。導出された経験的形状パラメータは、ベル形液体噴霧の数値シミュレーションを改善又は検証するために使用されることができる。改善された数値シミュレーションは、ベル形液体噴霧によって表面に塗布されるコーティングのより高い品質を達成するために、典型的には、ベル形液体噴霧構成のパラメータを最適化することを可能にする。本発明の方法の他の利点は、本発明方法が、既存のベル形液体噴霧評価構成に容易に基づくことができることである。
【0033】
本発明のさらなる利点及び構成は、以下の説明及び添付の図面から明らかになる。
【0034】
先に説明した特徴及びその後に説明する特徴は、示された組み合わせだけでなく、本発明の範囲を離れることなく、異なる組み合わせ又はそれ自体で使用され得ることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明によるベル形液体噴霧評価構成の側面図を概略的に示す図である。
図2図1に示されたベル形液体噴霧評価構成を高速度カメラでキャプチャされた画像を示す図である。
図3図2に示されたキャプチャされた画像が変換された第1の二値画像を示す図である。
図4図2に示されたキャプチャされた画像が変換された第2の二値画像を示す図である。
図5】複数の整列したフィラメントを含む座標系を示す図である。
図6】本発明による数値的にシミュレートされたベル形液体噴霧の上面図を概略的に示す図である。
【発明を実施する形態】
【0036】
図面の詳細な説明
図1は、本発明によるベル形液体噴霧評価構成の側面図を概略的に示す図である。ベル形液体噴霧評価構成は、ベル形液体噴霧30を噴出するための円錐形スプレーノズル10を備えた液体噴霧構成を有する。ベル形液体噴霧構成は、例えば、自動車製造業者によって、車体部分(図示せず)の表面に液体コーティングを塗布するために使用されることができる。
【0037】
さらに、ベル形液体噴霧評価構成は、高速度カメラ20を備える。高速度カメラ20は、高速度カメラの光軸21がベル形液体噴霧30の外側横表面に対して横方向に延びるように、配置されている。ベル形液体噴霧評価構成は、ベル形液体噴霧30の形状を評価するために使用されることができる。
【0038】
ベル形液体噴霧評価構成は、コンピュータ(図示せず)をさらに備える。コンピュータは、プロセッサと、プログラムコードを含むメモリとを有し、該プログラムコードは、ベル形液体噴霧30の形状を評価するための方法を実装し、プロセッサによって実行可能である。プログラムコードは、本発明によるベル形液体噴霧30の形状を評価するためにコンピュータプログラム製品からコンピュータのメモリにインストールされることができ、該コンピュータプログラム製品は、プログラムコードを格納するDVDやUSBメモリのようなデータキャリアを備える。コンピュータは、高速度カメラ20から1つ以上のキャプチャされた画像40(図2参照)を受信するために、高速度カメラ20に接続されている。
【0039】
ベル形液体噴霧評価構成は、本発明によるベル形液体噴霧30の形状を評価する方法を行うように構成されている。この方法は、以下のステップを含む。
【0040】
ベル形液体噴霧30は、ベル形液体噴霧構成の通常操作中に、スプレーノズル10によって噴出される。通常操作中に、スプレーノズル10は、回転軸を中心に毎分約10,000回転(rpm)から約30,000rpmの範囲の角速度で回転する。スプレーノズル10が回転している間、液体、好ましくは、コーティング、50ml/分~200ml/分の範囲の供給速度で、スプレーノズル10に連続的に供給される。
【0041】
スプレーノズル10の操作中、高速度カメラ20は、噴出されたベル形液体噴霧30の画像40(図2参照)をキャプチャする。
【0042】
図2は、図1に示されたベル形液体噴霧評価構成の高速度カメラ20によってキャプチャされた例示的な画像40を示している。キャプチャされた画像40は、スプレーノズル10とベル形液体噴霧30の部分的な側面図である。キャプチャされた画像40は、噴出されたベル形液体噴霧30を形成する複数の液体ジェット31を有している。
【0043】
本方法のさらなるステップでは、キャプチャされた画像40がコンピュータによって処理され、液体ジェット31の少なくとも1つの形状パラメータが処理された画像から導出される。
【0044】
キャプチャされた画像40の処理は、キャプチャされた画像40を二値画像50(図3参照)、51(図4参照)に変換することを含む。処理は、キャプチャされた画像40のコントラストを上げるために、又はキャプチャされた画像40を鮮明にするために、1つ以上のグラフィックフィルタアルゴリズムをキャプチャされた画像40に適用するようなキャプチャされた画像40の前処理を含んでいてよい。処理はまた、自動パターン認識を容易にするために、フィラメント60及び/又はアーク70を厚くすること及び/又は着色することのような二値画像50の後処理を含んでいてもよい。
【0045】
図3は、図2に示されたキャプチャされた画像40が変換された第1の二値画像50を示している。二値画像50は、複数のフィラメント60を含む。各フィラメント60は液体ジェット31に対応する。二値画像50は、複数のアーク70をさらに含む。各アーク70は、互いに隣接して位置する2つのフィラメント60を連結する。第1形状パラメータとして、液体ジェット31の直径が第1の二値画像50から導出され得る。
【0046】
第1形状パラメータの導出は、第1アーク70の決定された第1点71と第2アーク70の決定された第2点72の間の距離73を算出することを含み、第1アーク70と第2アーク70は、フィラメント60に連結された液体ジェット31に対応するフィラメント60の反対側に配置されている。第1点71及び第2点72の決定は、第1点71と第2点72の間の計算された距離73を最小化することと、同時に、フィラメント60からの第1点71及び第2点72の距離をそれぞれ最大化することの両方を含む。
【0047】
距離73は、第1点71と第2点72の間のピクセル数をカウントし、二値画像の解像度を使用することによって、カウントされたピクセル数を距離73に変換することによって計算されることができる。計算された距離73は、対応する液体ジェット31の直径を示す第1形状パラメータとして使用されることができる。
【0048】
第1形状パラメータの導出は、第1形状パラメータの精度を高めるために、多数のフィラメント60及び連結アーク70にわたって計算された距離73を平均化することをさらに含み得る。
【0049】
図4は、図2に示されたキャプチャされた画像40が変換された第2の二値画像51を示している。第2の二値画像51は、複数のフィラメント60を含む。各フィラメント60は、液体ジェット31に対応する。第2パラメータとして、液体ジェット31の長さが第2の二値画像51から導出され得る。
【0050】
第2パラメータの導出は、二値画像50から交差するフィラメントを除去することと、液体ジェット31に対応するフィラメント60を分離することと、分離されたフィラメント60の長さ63を計算することと、を含む。フィラメント60の分離は、二値画像51から複数のアーク70を除去することを含む。
【0051】
分離されたフィラメント60の長さは、フィラメント60の第1端点61とフィラメント60の第2端点62との間のピクセル数をカウントし、次いで、二値画像51の解像度を使用することによって、カウントされたピクセル数を長さに変換することによって計算され得る。計算された長さ63は、対応する液体ジェット31の長さを示す第2形状パラメータとして使用される。
【0052】
第2形状パラメータの導出は、第2形状パラメータの精度を高めるために、多数のフィラメント60にわたって計算された長さ63を平均化することをさらに含み得る。
【0053】
第3形状パラメータとして、対応する液体ジェット31の幅の縦の展開が、第2の二値画像51から導出されることができる。第3形状パラメータの導出は、分離されたフィラメント60の縦の延長に沿った複数の縦位置における分離されたフィラメント60の複数の幅を計算することを含む。
【0054】
分離されたフィラメント60の縦位置における分離されたフィラメント60の幅は、分離されたフィラメント60の縦方向に対して交差する分離されたフィラメント60のピクセル数をカウントし、次いで第2の二値画像51の解像度を使用することによってカウントされたピクセル数を幅に変換することによって計算され得る。複数の幅は、第3形状パラメータとして使用される。
【0055】
第3形状パラメータの導出は、第3形状パラメータの精度を高めるために、多数のフィラメント60にわたって計算された幅の縦の展開を平均化することをさらに含み得る。
【0056】
第4パラメータとして、液体ジェット31の軌跡が、第2の二値画像51から導出され得る。第4形状パラメータの導出は、二値画像50から交差するフィラメントを除去し、二値画像50から液体ジェット31に対応するフィラメント60を抽出することを含み、及び、スプレーノズル10の形状に関して抽出されたフィラメント60の角度を修正することを含み得る。フィラメント60の形状は、対応する液体ジェット31の軌跡を示す第4形状パラメータとして使用される。
【0057】
第4形状パラメータの導出は、第4形状パラメータの精度を高めるために、多数のフィラメント60にわたって形状を平均化することをさらに含み得る。
【0058】
図5は、複数の整列したフィラメント60を含む座標系を示している。第5パラメータとして、液体ジェット31のホイップ周波数が、デカルト座標系80から導出される。
【0059】
第5パラメータの導出は、一定期間にわたってキャプチャされた画像40のシーケンスに基づいており、高速フーリエ変換を整列したフィラメント60に適用することによって、対応する二値画像50の液体ジェット31に対応する整列したフィラメント60のホイップ周波数を計算することを含む。フィラメント60の整列は、二値画像50から交差するフィラメントを除去し、二値画像50から液体ジェット31に対応するフィラメント60を抽出し、デカルト座標系80に抽出されたフィラメント60を配置することを含み、及び、スプレーノズル10の形状に関して抽出されたフィラメント60の角度を修正することを含み得る。計算されたホイップ周波数は、対応する液体ジェット31のホイップ周波数を示す第5形状パラメータとして使用される。
【0060】
第5形状パラメータの導出は、第5形状パラメータの精度を高めるために、画像40あたり多数のフィラメント60にわたって計算されたホイップ周波数を平均化することをさらに含み得る。
【0061】
図6は、本発明による数値的にシミュレートされたベル形液体噴霧90の上面図を概略的に示している。さらに別のステップでは、導出された形状パラメータは、ベル形液体噴霧90を数値的にシミュレートするための入力として、又は、数値的にシミュレートされたベル形液体噴霧90の検証手段とし使用され、ベル形液体噴霧90は、複数の数値的にシミュレートされた液体ジェット91を有している。さらに、導出された少なくとも1つの形状パラメータは、スプレーノズル10の回転速度への、又は液体の供給速度への、又は気流からの、少なくとも1つの形状パラメータの依存性を評価するために使用され得る。
【符号の説明】
【0062】
10 スプレーノズル
20 高速度カメラ
21 光軸
30 ベル形液体噴霧
31 液体ジェット
40 キャプチャされた画像
50 二値画像
51 二値画像
60 フィラメント
61 第1端点
62 第2端点
63 長さ
70 アーク
71 第1点
72 第2点
73 距離
80 デカルト座標系
90 数値的にシミュレートされたベル形噴霧
91 数値的にシミュレートされた液体ジェット
図1
図2
図3
図4
図5
図6