(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】バルブ
(51)【国際特許分類】
F16K 11/07 20060101AFI20240209BHJP
F16K 51/00 20060101ALI20240209BHJP
【FI】
F16K11/07 C
F16K11/07 F
F16K51/00 A
(21)【出願番号】P 2022544149
(86)(22)【出願日】2021-01-21
(86)【国際出願番号】 EP2021051236
(87)【国際公開番号】W WO2021148489
(87)【国際公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-11-10
(32)【優先日】2020-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519225761
【氏名又は名称】アウロテック・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】AUROTEC GMBH
(73)【特許権者】
【識別番号】515289369
【氏名又は名称】ノードソン・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Nordson Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】ヘルマン,ヘルムート
(72)【発明者】
【氏名】ヴェストマン,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ロンギン,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ツィケリ,シュテファン
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2001/085386(WO,A2)
【文献】特開2014-105774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 11/07
F16K 51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブハウジング(2)とシャットオフ部材(3)とを備えたバルブ(1)であって、
前記バルブハウジング(2)は、
前記シャットオフ部材(3)を受け入れるためのキャビティ(4)と、
前記キャビティ(4)に流体を流入させるための流入口(5)と、
前記キャビティ(4)から前記流体を流出させるための流出口(6)と、を有し、
前記シャットオフ部材(3)は、ガイド体(7)を有し、
前記シャットオフ部材(3)は、前記流入口(5)と前記流出口(6)との間において、前記バルブハウジング(2)の前記キャビティ(4)内に少なくとも部分的に、直線的に移動可能に配置されており、
前記シャットオフ部材(3)は、少なくとも一つの凹部(8)であって、前記流入口(5)から前記凹部(8)を介して前記流出口(6)に前記流体を流すための少なくとも1つの凹部(8)を有し、
前記シャットオフ部材(3)は、さらなる凹部(9)であって、前記流入口(5)から前記さらなる凹部(9)を介して前記流出口(6)に前記流体を流すためのさらなる凹部(9)を有し、
前記さらなる凹部(9)は、前記シャットオフ部材(3)の前記ガイド体(7)に設けられた柱状の開口部であり、
前記バルブハウジングはさらなる流出口(16)を有し、前記シャットオフ部材がある位置にあるときに、前記さらなる流出口は、前記さらなる凹部(9)を介して前記流入口(5)に流体的に接続可能である、バルブ(1)。
【請求項2】
前記シャットオフ部材(3)の前記ガイド体(7)は、柱状(prism-shaped)、好ましくは実質的に円柱状である、請求項1に記載のバルブ(1)。
【請求項3】
前記凹部(8)は、前記ガイド体(7)におけるテーパリング部であり、前記テーパリング部は、好ましくは前記ガイド体(7)の長手軸に対して垂直に配置されている、請求項1または2に記載のバルブ(1)。
【請求項4】
前記凹部(8)は、前記シャットオフ部材(3)の前記ガイド体(7)に設けられた開口部である、請求項1または2に記載のバルブ(1)。
【請求項5】
好ましくは前記ガイド体(7)の長手軸と柱状の前記さらなる凹部(9)の長手軸とが、45°と90°との間、特に好ましくは60°と85°との間、特に70°と80°との間の角度を囲む、請求項1から4のいずれか1つに記載のバルブ(1)。
【請求項6】
前記さらなる流出口(16)を開閉するためのサンプリングバルブ(17)が、前記さらなる流出口(16)に配置されている、請求項1から5のいずれか1つに記載のバルブ(1)。
【請求項7】
前記キャビティ(4)は、実質的に柱状の第1部分(10)と実質的に柱状の第2部分(11)とを含み、前記シャットオフ部材(3)は、実質的に柱状の前記第2部分(11)内に少なくとも部分的に、直線的に移動可能に受け入れられている、請求項1から6のいずれか1つに記載のバルブ(1)。
【請求項8】
実質的に柱状の前記第1部分(10)および実質的に柱状の前記第2部分(11)は、30°と90°との間、好ましくは60°と90°との間、特に好ましくは80°と90°との間、特に正確に90°の角度で交差している、請求項7に記載のバルブ(1)。
【請求項9】
前記流入口(5)は、実質的に柱状の前記第1部分(10)の第1底面上に配置され、特に実質的に柱状の前記第1部分(10)の第1底面と一致している請求項7または8に記載のバルブ(1)。
【請求項10】
前記流出口(6)は、実質的に柱状の前記第1部分(10)における前記第1底面とは反対側の第2底面上に配置され、特に実質的に柱状の前記第1部分(10)における前記第1底面とは反対側の第2底面と一致している、請求項9に記載のバルブ(1)。
【請求項11】
実質的に柱状の前記第2部分(11)は、前記バルブハウジング(2)を通過する円柱状の穴部であり、前記穴部は、前記バルブハウジング(2)の2つの対向する側部に第1開口部および第2開口部
(13)を形成している、請求項7から10のいずれか1つに記載のバルブ(1)。
【請求項12】
前記シャットオフ部材(3)の前記ガイド体(7)が実質的に円柱状であり、円柱状の前記第2部分(11)の長手軸が前記シャットオフ部材(3)の実質的に円柱状の前記ガイド体(7)の長手軸と一致している、請求項11に記載のバルブ(1)。
【請求項13】
前記シャットオフ部材(3)を直線的に移動させるための駆動部(14)を備え、前記駆動部(14)は、前記第2開口部(13)から突出する前記シャットオフ部材(3)の端部に係合している、請求項11または12に記載のバルブ(1)。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1つに記載のバルブ(1)を備え、
前記バルブ(1)の前記流入口(5)に通じるさらなるキャビティ(29)にスタートアップバルブ(20)が設けられている、バルブシステム(19)。
【請求項15】
前記スタートアップバルブ(20)は、
前記さらなるキャビティ(29)に接続され、かつ、スタートアップバルブシャットオフ部材(22)を受け入れるスタートアップバルブキャビティ(23)と、
前記さらなるキャビティ(29)から前記スタートアップバルブキャビティ(23)への前記流体の流れのためのスタートアップバルブ流入口(25)と、
前記スタートアップバルブキャビティ(23)からの前記流体の流れのためのスタートアップバルブ流出口(24)と、を有し、
前記スタートアップバルブシャットオフ部材(22)は、前記スタートアップバルブ流入口(25)を遮断するためのスタートアップバルブガイド体(26)を有し、前記スタートアップバルブキャビティ(23)内に移動可能に配置されている、請求項14に記載のバルブシステム(19)。
【請求項16】
請求項1から13のいずれか1つに記載のバルブ(1)において前記流体の流れを調節および/または制御する、流体の移送方法。
【請求項17】
前記バルブ(1)の前記シャットオフ部材(3)は、前記バルブハウジング(2)と前記シャットオフ部材(3)の前記ガイド体(7)との間における前記キャビティ(4)内の隙間を洗浄するために定期的に(regularly)振動する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
請求項15に記載のバルブシステム(19)において前記流体を移送する、流体の移送方法。
【請求項19】
前記バルブシステム(19)は、前記流入口(5)が前記シャットオフ部材(3)で遮断され、前記スタートアップバルブガイド体(26)が前記スタートアップバルブキャビティ(23)を解放するスタートアップモードで操作される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記バルブシステム(19)が、好ましくはスタートアップモードで操作された後に、生産モードで操作され、前記生産モードでは、前記凹部(8)が前記キャビティ(4)の領域にもたらされ、前記スタートアップバルブ流入口(25)が前記スタートアップバルブガイド体(26)で閉じられる、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
請求項14に記載のバルブシステム(19)において前記流体を移送する、流体の移送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブハウジングとシャットオフ部材とを備えたバルブに関し、バルブハウジングは、シャットオフ部材を受け入れるためのキャビティと、キャビティに流体を流入させるための流入口と、キャビティから流体を流出させるための流出口と、を有し、シャットオフ部材は、ガイド体を有し、シャットオフ部材は、流入口と流出口との間において、バルブハウジングのキャビティ内に少なくとも部分的に、直線的に移動可能に配置されている。
【背景技術】
【0002】
多くの技術的製造プロセスでは、材料供給ラインが常に満たされているか、および/または部分的に満たされた状態で、連続フローベースで作業することが望まれている。この例として、再生可能な原料であるセルロースから繊維、フォイル(箔)、フィルムなどのセルロース成形製品を製造することが挙げられる。この製造プロセスでは、有機溶媒中でセルロース溶液を形成し、セルロース/溶液溶融物を紡糸して繊維またはフィルムを形成することにより、セルロース成形品が製造される。溶媒の好ましい形態は、3級アミン-N-オキシド、典型的にはN-メチルモルホリンN-オキシド(NMMO)である。これらのセルロース溶液は、通常、高粘性であり、典型的には50,000~10,000,000mPasの粘度を有する。このようなセルロース溶液の製造方法は、欧州特許第0356419号に記載されている。セルロース溶液の処理では、高い処理温度(通常80℃~130℃)が必要であり、この温度ではセルロース溶液が不安定であるという問題がある。したがって、デッドスペースがなく、滞留のない状態で作業することが望まれる。
【0003】
先行技術では、様々な形態のバルブが知られている。独国特許発明第3815897号は、押出ツールまで広がる排出路を有する始動バルブスロットルユニットを開示している。始動バルブスロットルユニットのハウジングには、ガイド・始動ボアが設けられている。ガイド・始動ボアの内部に、始動バルブ・スロットル体が、その長手軸の方向(排出路の軸に対して横方向)に、変位可能かつ回転可能に配置されている。始動・スロットル体は、2つの閉鎖部分を有し、これらの間にスロットル体が配置されている。内側の閉鎖部分には、スロットル体から離れた側(スロットル体に対向する側)に始動バルブ体が形成されている。これにより、バルブスロットルハウジングから外部に通じるボアの始動流出口を一方では密閉し、他方では開放するものである。その他のバルブは、例えば、独国特許発明第2751225号、独国特許出願公開第102007047726号および独国特許出願公開第102005037268号から知られている。
【0004】
さらに、米国特許第3,817,668号および米国特許第3,746,481号には、流体の流れを制御するための手段として歯車を使用した溶融ポンプが記載されている。しかし、これらは高温の液体、特に高温のプラスチック液体溶融物の導入、分配、流束の制御には適しておらず、切り替えおよび/または偏向分配器のバルブとして使用することはできないことが判明している。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、従来技術の少なくとも個々の欠点を改善または除去することにある。特に、本発明は、流体の流れが改善されるバルブを提供することを目的とする。
【0006】
上記目的は、バルブハウジングとシャットオフ部材(shut-off element)とを備えたバルブであって、前記バルブハウジングは、前記シャットオフ部材を受け入れるためのキャビティと、前記キャビティに流体を流入させるための流入口(inlet opening)と、前記キャビティから前記流体を流出させるための流出口(outlet opening)と、を有し、前記シャットオフ部材は、ガイド体を有し、前記シャットオフ部材は、前記流入口と前記流出口との間において、前記バルブハウジングの前記キャビティ内に少なくとも部分的に、直線的に移動可能に配置されており、前記シャットオフ部材は、少なくとも一つの凹部であって、前記流入口から前記凹部を介して前記流出口に前記流体を流すための少なくとも1つの凹部を有する、バルブによって達成される。
【0007】
上記のように、シャットオフ部材は、流入口を流出口に流体的に連通させるための少なくとも1つの凹部を含む。本明細書では、流体的に連通させるとは、流体が流入口から流出口へ流れることができることを意味する。したがって、シャットオフ部材の凹部は、流入口と流出口との間を流体が流れることを可能にし、流出口が開くようにするフロースルー(flow-through)凹部である。この例では、シャットオフ部材は、流入口と流出口との間において、バルブハウジングのキャビティ内に少なくとも部分的に配置されている。これにより、シャットオフ部材は、流入口と流出口との間におけるキャビティを流れる流体の流れ方向に少なくとも部分的に位置している。シャットオフ部材を直線的に移動させることにより、シャットオフ部材が直線的に変位し、これによって、流入口と流出口との流体連通が離され、流入口からバルブハウジングのキャビティに流入する流体が、シャットオフ部材によって流出口にさらに流入することが妨げられる。その結果、流出口は、シャットオフ部材によって遮断され、閉じられる。凹部を含むシャットオフ部材の直線的な移動は連続的に行われるので、遮断される流出口を0と100%との間で可変的に遮断することができる。その結果、流出口を通って流れる流体を連続的に(無段階で)調節することが可能となる。
【0008】
シャットオフ部材の凹部は、シャットオフ部材のうち凹部に隣接する部分に対してシャットオフ部材の断面を縮小させる凹部である。凹部に隣接する部分(隣接部)は、キャビティに配置されると、流入口を介してキャビティに流入した流体が流出口に流れるのを阻止するようにキャビティを密閉する。これにより、流出口はシャットオフ部材によって遮断される。隣接部ではなく凹部がキャビティ内に配置されるようにシャットオフ部材を移動させると、凹部の領域では断面が小さいので、シャットオフ部材はキャビティを密閉しない。従って、キャビティ内に、流入口と流出口とを流体的に接続(流体接続)する少なくとも1つの開口が凹部によって形成される。流体は、この少なくとも1つの開口を介して流入口から流出口へ流れることができる。シャットオフ部材が連続的に移動することにより、凹部をキャビティに部分的に配置することが可能になる。これにより、凹部によって形成される少なくとも1つの開口が、凹部のうちキャビティに配置された部分によってのみ形成されるので、キャビティに配置された凹部の割合を変えることによって開口のサイズを変えることができる。
【0009】
凹部は、例えば、遮断部となる隣接部の断面積と比較して、シャットオフ部材の長手軸(移動の直線方向)に垂直な断面積の5%~95%、好ましくは10%~90%または20%~80%または30%~70%を占め得る。凹部のこの断面積は、特に、隣接部と比較して徐々に増加していく凹部の場合、長手軸における凹部の最大点で与えられる。凹部は、好ましくはテーパリング(tapering)の形態であり、流れ方向の断面積の好ましくは10%超、特に好ましくは20%超を占める。すなわち、この場合のシャットオフ部材は、断面積の90%未満または80%未満を構成する。テーパリング部またはガイド体は、テーパリング部の領域において、好ましくは回転対称である。
【0010】
本発明によるバルブは、高粘性液体および/または融液のデッドスペースのない供給、除去、切り替えおよび/または移送制限のために使用することができる。シャットオフ部材の特別な構成により、バルブは、PEK(ポリエーテルケトン)、PPEK(ポリフタラジンエーテルケトン)、PPS(ポリフェニレンスルフィド)などの部分結晶性高性能熱可塑性プラスチック分野、またはPAI(ポリアミドイミド)、PPSU(ポリフェニルサルホン)、PSU(ポリスルホン)またはPES(ポリエーテルサルホン)などの非晶質高性能熱可塑性プラスチック分野の高粘性液体や融液に、対応する製造プロセスにおいて使用することができる。また、本発明によるバルブは、PA(ポリアミド)、PA6(ポリアミド6、カプロラクタムからのポリアミド)、PA66(ポリアミド66.ヘキサメチレンジアミンからのポリアミド)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、POM(ポリオキシメチレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などの部分結晶性および非晶質の熱可塑性プラスチックの製造プロセスに使用することができる。このような方法および製造プロセスには、典型的には、例えば、合成繊維、プラスチックホース、プラスチック箔およびフィルム、ならびに導電線の保護および/または絶縁コーティングの製造などの押出成形、射出成形、ブロー成形、コーティングおよびスプレー技術が含まれる。
【0011】
好ましくは、本発明によるバルブは、セルロースの製造またはセルロース溶液の移送のためのラインで使用される。特に好ましくは、本発明によるバルブは、成形プロセスのための押出媒体として使用されるセルロース溶液の移送に使用される。この場合、セルロース濃度は、リヨセル(Lyocell)プロセスのための通常の濃度に選択される。従って、セルロース溶液中のセルロース濃度は、4%~23%、好ましくは6%~20%、特に8%~18%または10%~16%(全ての%情報は質量%である)であってもよい。
【0012】
好ましくは、セルロース溶液の溶媒は、3級アミノキシド(アミン-N-オキシド)、特に好ましくはN-メチルモルホリンN-オキシドである。代替的に、または追加的に、イオン性溶媒であってもよい。このようなイオン性溶媒は、例えば、国際公開第03/029329号、国際公開第2006/000197号、Parviainen et al., RSC Adv., 2015, 5, 69728-69737、Liu et al., Green Chem.2017, DOI: 10.1039/c7gc02880f、Hauru et al., Cellulose (2014) 21:4471-4481、Fernandez et al. J Membra Sci Technol 2011, p:4等に記載されている。このようなイオン性溶媒は、好ましくは、例えばアンモニウムカチオン、ピリミジオンカチオン、イミダゾリウムカチオンなどの有機カチオン、好ましくは1,3ジアルキルイミダゾリウム塩、例えばハロゲン化物を含有するのがよい。また、ここでは、セルロースの非溶媒として、好ましくは水が用いられる。セルロースと、ブチル-3-メチルイミダゾリウム(BMIM)、例えば対イオンとして塩化物(BMIMCl)、または1-エチル-3-メチルイミダゾリウム(塩化物、酢酸塩またはジエチルリン酸塩としても好ましい)、または1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウム、または1-ヘキシル-1-メチルピロリジニウム(ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミドアニオンを伴うことが好ましい)と、水との溶液は、特に好ましいものである。その他のイオン性溶媒として、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エニウム(好ましくは酢酸塩として)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテート、1,3-ジメチルイミダゾリウムアセテート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムアセテート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジエチルホスフェート、1-メチル-3-メチルイミダゾリウムジメチルホスフェート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムホルメート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムオクタノエート、1,3-ジエチルイミダゾリウムアセテート、および1-エチル-3-メチルイミダゾリウムプロピオネートなどが挙げられる。
【0013】
好ましい実施形態によれば、シャットオフ部材のガイド体は、柱状(prism-shaped)、好ましくは実質的に円柱状である。その結果、シャットオフ部材を、キャビティ内でガイド体の長手方向に容易に直線的に移動させることができる。さらに、シャットオフ部材を簡便に製造することが可能である。凹部は、この例では、柱状のガイド体の切り欠き部であるため、柱状のガイド体の長手軸に垂直な一定の断面は、凹部の領域で小さくなる。その結果、凹部の領域において、シャットオフ部材によって遮断される断面が小さくなるので、流体がシャットオフ部材を通過して流出口へ流れることができる。
【0014】
特に好ましい実施形態によれば、凹部は、ガイド体のテーパリング部である。テーパリング部は、好ましくは、(柱状の)ガイド体の長手軸に対して垂直に配置されている。したがって、凹部は、長手軸に垂直にガイド体の周囲を走る(延在する)溝を形成し、この溝に沿って、流体は、柱状のガイド体の長手軸に対して横方向にシャットオフ部材の周囲を流れることが可能である。その結果、流体は、流入口を介してバルブハウジングのキャビティ内に流れ、さらにテーパリング部に沿って流出口まで流れることができる。溝は、好ましくは、放物線によって画定(delimit)された断面積を有し、これにより、溝は、ガイド体の周囲を延在する貫通チャネル(through-channel)凹部を形成する。好ましくは、テーパリング部は、ガイド体の長手軸に対して回転対称である。好ましくは、ガイド体の断面は、テーパリング部の領域において長手軸に向かって最初に単調に減少し、次に単調に増加する。好ましくは、テーパリング部は、ガイド体の長手軸に沿って互いに離れた第1端点と第2端点との間を、ガイド体の長手軸の中心方向へ延在している。
【0015】
さらなる好ましい実施形態によれば、凹部は、シャットオフ部材のガイド体に設けられた開口部である。その結果、凹部を簡便に製造することが可能である。有利には、開口部は、ガイド体を貫通する円柱状の穴部であり、好ましくは柱状のガイド体の長手軸に対して垂直に延在している。開口部は、バルブハウジングの流入口と流出口を流体的に接続することができるので、流体は流入口から開口部を通って流出口に流れることができる。
【0016】
シャットオフ部材がさらなる凹部を有していると有利である。その結果、流体は、シャットオフ部材の直線的な移動によって、凹部および/またはさらなる凹部を介して、流入口から流出口まで流れることができる。この場合、シャットオフ部材は、直線的な移動によって、凹部および/またはさらなる凹部が流入口と流出口とを流体的に接続し、流体が流入口から流出口に流れることができるように、バルブハウジング内に位置付けられる。さらなる凹部により、連続生産中および排出中(例えば、スタートアップバルブを用いて)の両方において、材料のサンプルを採取することができる。また、さらなる凹部によって、圧力の除去を行う(圧力を逃がす)ことができる。
【0017】
さらに、さらなる凹部は、好ましくは、シャットオフ部材のガイド体に設けられた柱状の開口部、特に好ましくは円柱状(円筒状)のさらなる開口部であると有利である。その結果、さらなる凹部を簡便に製造することが可能である。凹部が円柱状の開口部である場合、凹部の直径は、さらなる凹部の円柱状のさらなる開口部の直径よりも小さくてもよいし、等しくてもよいし、または大きくてもよい。直径が同じであれば、さらなる凹部を開口部に対する冗長要素として使用することができる。凹部およびさらなる凹部の形状が異なれば、または円柱状の開口部および円柱状のさらなる開口部の直径が異なれば、開口部とさらなる開口部とで流量を異ならせることができる。
【0018】
好ましい実施形態によれば、さらなる凹部は、シャットオフ部材のガイド体の柱状の開口部である。好ましくは、柱状のガイド体の長手軸と柱状の開口部の長手軸とは、45°と90°との間、特に好ましくは60°と85°との間、特に70°と80°との間のある角度を囲む(enclose)。結果として有利には、シャットオフ部材がある位置にあるときに、バルブハウジングのさらなる流出口を、流入口に流体接続させることができる。さらなる流出口は、サンプリング用に構成されている。好ましくは、さらなる流出口は、流出口と同じ側にバルブハウジングの流出口に隣接して配置されている。これにより、凹部を柱状のガイド体の長手軸に対して垂直に延在するように構成し、さらなる凹部を柱状のガイド体の長手軸に対して斜めに延在するように構成することができる。さらなる凹部がさらなる流出口につながるようにキャビティ内にシャットオフ部材を配置すると、さらなる凹部が、流入口からさらなる流出口へ流体をさらに導くように構成されていることが好ましい。このように、流入口は、さらなる凹部を介してさらなる流出口に流体接続される。
【0019】
さらなる好ましい実施形態によれば、キャビティは、実質的に柱状の第1部分と実質的に柱状の第2部分とを有する。シャットオフ部材は、少なくとも部分的に第2部分に直線的に移動可能に受け入れられる。好ましくは、第1部分は第2部分と流体的に接続されており、これによって、第2部分にシャットオフ部材が配置されていなければ、流体は第1部分から第2部分に流れ、また逆に流れることができる。特に好ましくは、柱状の第2部分のベース領域は、シャットオフ部材の柱状のガイド体のベース領域と同じ形状を有する。この場合、ガイド体のベース領域は、第2部分のベース領域よりも小さくてもよいし、同じであってもよい。これによって、シャットオフ部材は、0以上の公差で第2部分に受け入れられ得る。その結果、バルブハウジングのキャビティ内にシャットオフ部材を最適に受け入れることが可能になる。
【0020】
特に好ましい実施形態によれば、実質的に柱状の第1部分および実質的に柱状の第2部分は、30°と90°との間、好ましくは60°と90°との間、特に好ましくは80°と90°との間、特に正確に90°の角度で交差している。特に好ましくは、流入口および流出口は、第1部分に配置される。これにより、流体が第1部分内を流れることができ、シャットオフ部材が第2部分内に受け入れられ得る。その結果、シャットオフ部材を移動させることができる軸と、バルブハウジング内の流体の流れ方向に配置される軸とは、30°と90°との間、好ましくは60°と90°との間、特に好ましくは80°と90°との間の角度、特に正確に90°の角度を囲む。このように、シャットオフ部材を流れ方向に対して斜めまたは横方向に移動させることができるので、バルブハウジング内の流体の流れを最適に遮断することが可能になる。
【0021】
流入口は、実質的に柱状の第1部分の第1底面(base surface)上に配置され、特に、実質的に柱状の第1部分の第1底面と一致するように配置されると有利である。その結果、バルブハウジング内のキャビティの第1部分に、流体を、デッドスペースなく最適に流入させることができる。好ましくは、流体は、流入口から第1部分を経てキャビティの第2部分に流れ、そこから、シャットオフ部材の位置によって、凹部を経て流出口にさらに流れることができるか、またはシャットオフ部材によって遮断され、さらに流れることを阻止され得る。
【0022】
さらに、流出口が、実質的に柱状の第1部分の第1底面とは反対側の第2底面上に配置され、特に実質的に柱状の第1部分の第1底面とは反対側の第2底面と一致すると有利である。好ましくは、流入口および流出口は、第1部分の長手軸上に配置される。これにより、バルブハウジングのキャビティによって最適な流体の流れを形成することができる。特に好ましくは、シャットオフ部材が移動可能である軸は、第1部分の長手軸に対して垂直であり、これにより、シャットオフ部材はキャビティの第1部分内の流体の流れに対して垂直に移動することができる。その結果、シャットオフ部材によって、バルブハウジング内で流体を最適に遮断することができる。
【0023】
流体の流れをより良くするために、第1部分は実質的に円柱状である。第1部分と第2部分との交差領域において、実質的に円柱状の第1部分の直径は、第1底面の直径よりも1%~20%、好ましくは5%~10%小さい。
【0024】
好ましい実施形態によれば、第2部分は、バルブハウジングを通過する(貫通する)円柱状の穴部である。穴部は、バルブハウジングの2つの対向する側部(側面)に第1開口部および第2開口部を形成している。その結果、キャビティの第2部分が穴部によって製造されるので、バルブハウジングを簡便かつ高いコスト効率で製造することが可能となる。従って、シャットオフ部材を、バルブハウジングのキャビティの第2部分に簡単に配置することができ、また、メンテナンス目的のためにキャビティの第2部分から再び取り外すことができる。
【0025】
特に好ましい実施形態によれば、シャットオフ部材のガイド体は実質的に円柱状であり、円柱状の第2部分の長手軸は、シャットオフ部材の実質的に円柱状のガイド体の長手軸と一致する。その結果、キャビティの第2部分内にシャットオフ部材を最適に受け入れることが可能である。
【0026】
特に好ましい実施形態によれば、キャビティ内のシャットオフ部材は、シャットオフ部材のガイド体とバルブハウジングとの間のキャビティ内に、流体が流れることができる隙間が形成されるように、公差を有している。その結果、バルブ内に流体が永久に滞留されることを低減し、あるいは防ぐことさえできる。この隙間を通って、規定量の流体がシャットオフ部材のガイド体の周囲を流れることができるので、キャビティに流体が堆積するようなデッドスペースが形成されない。デッドスペースがないため、本発明によるバルブ内に流体が長く滞留することを防ぐことができる。有利には、シャットオフ部材の凹部は、流体が流入するときに凹部がデッドスペースを形成せず、流体が最適に移送できるように構成されている。この構成は、例えば、凹部としてくびれ部(narrowing)を用いることで達成される。公差は、特にくびれ部に隣接する遮断部分に(も)与えられる。
【0027】
さらなる特に好ましい実施形態によれば、シャットオフ部材のガイド体とキャビティとの間に、バルブハウジングに対してシャットオフ部材を密閉するシール部が配置される。これにより、シャットオフ部材を完全に密閉することができるという利点がある。
【0028】
シャットオフ部材をキャビティ内でより良く誘導するために、シャットオフ部材の実質的に円柱状のガイド体は、シャットオフ部材が第2開口部から少なくとも部分的に突出するように、穴部内に少なくとも部分的に受け入れられる。
【0029】
シャットオフ部材がバルブハウジングから突出している第2開口部の領域では、シャットオフ部材のガイド体にフライス加工された溝に、シールリング、好ましくはリークリングが取り付けられていると好ましい。これらのシールリングは、好ましくは、流体に対して耐性のある柔軟なプラスチックリングと、カバーリングとから構成されている。特に好ましくは、シールリングは、第2開口部でキャビティの第2部分内においてバルブハウジングに配置され、これにより、バルブハウジングとシャットオフ部材のガイド体との間のキャビティの第2部分の隙間を埋め(密封し)ている。バルブ内で移送される流体の粘度に依存して、バルブハウジングとガイド体との間のキャビティの第2部分の隙間を通ってバルブハウジングから流出する流体の量が過剰になることもあり得る。この場合、特に好ましくは、シールリングをバルブハウジングに固定する締結ねじを締め付けることにより、シールリングをキャビティの第2部分においてガイド体の方向へ内側に膨出させ得る。これにより、ガイド体とバルブハウジングとの間のキャビティの第2部分の隙間における流体の流れを減少させることが可能になる。
【0030】
シャットオフ部材をキャビティ内で移動させるために、バルブは、シャットオフ部材を直線的に移動させるための駆動部を有し、駆動部が、第2開口部から突出するシャットオフ部材の端部に係合していると有利である。その結果、シャットオフ部材を、バルブハウジングのキャビティ内に部分的に、省スペースで配置することができる。
【0031】
本発明はさらに、本明細書に記載のバルブを備えたバルブシステムに関する。バルブシステムでは、バルブの流入口に通じるさらなるキャビティにスタートアップバルブが設けられている。
【0032】
本発明のバルブシステムの好ましい実施形態では、スタートアップバルブは、
さらなるキャビティに接続され、かつ、スタートアップバルブシャットオフ部材を受け入れるスタートアップバルブキャビティと、
さらなるキャビティからスタートアップバルブキャビティへ流体の流れのためのスタートアップバルブ流入口と、
スタートアップバルブキャビティからの流体の流れのためのスタートアップバルブ流出口と、を有し、
スタートアップバルブシャットオフ部材は、スタートアップバルブ流入口を遮断するためのスタートアップバルブガイド体を有し、スタートアップバルブキャビティ内に移動可能に配置されている。
【0033】
バルブのシャットオフ部材が、バルブハウジングとシャットオフ部材のガイド体との間のキャビティ内の隙間を洗浄するために一定の間隔で(定期的に)振動すると有利である。その結果、隙間の洗浄性(flushing)が改善され、隙間内における流体の割れ(cracking)をさらに減少させることができる。好ましくは、シャットオフ部材は、キャビティの円柱状の第2部分の長手軸の方向に(in the direction of the longitudinal axis)直線運動で振動する。特に好ましくは、振動運動の振幅は、5mmと10mmとの間である。
【0034】
本発明はさらに、流体を移送する方法に関し、本明細書に記載のバルブシステム内で流体が移送されることを特徴とする。この場合、流体は、特に、さらなるキャビティに沿って流れ、バルブが開いていると、キャビティを通って流出口まで流れる。バルブが開いていると、流体は、スタートアップバルブキャビティを通ってスタートアップバルブ流出口まで流れる。
【0035】
バルブシステムは、流入口がシャットオフ部材で遮断され、スタートアップバルブガイド体がスタートアップバルブキャビティを解放するスタートアップモードで操作されると有利である。
【0036】
有利には、バルブシステムは、好ましくはスタートアップモードで操作された後、生産モードで操作される。生産モードでは、凹部がキャビティの領域にもたらされ、スタートアップバルブ流入口がスタートアップバルブガイド体で閉じられる。こうすることで、バルブ内の圧力を逃がし、緩やかに圧力を上昇させることができる。
【0037】
好ましくは、圧力除去(圧力開放)は生産モードで行われ、スタートアップバルブは、バルブの圧力を逃がすために、部分的または完全に開かれる。
【0038】
有利には、生産モードまたはスタートアップモードにおいて、さらなる凹部を介して流体のサンプルが採取される。
【0039】
以下、図面に示す非制限的な例示的実施形態を参照しながら、本発明をさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】バルブハウジングおよびシャットオフ部材が開状態にあり、サンプリングが閉状態にある本発明によるバルブを模式的に示す図である。
【
図2】シャットオフ状態にある
図1によるバルブを模式的に示す図である。
【
図3】シャットオフ状態にあり、サンプリングが開状態にある
図1によるバルブを模式的に示す図である。
【
図4】部分的に開状態にあり、サンプリングが開状態にある
図1によるバルブを模式的に示す図である。
【
図5】
図1による追加バルブを備えたスタートアップバルブを模式的に示す図であり、スタートアップバルブはシャットオフ状態(断面で示す)である。
【
図6】
図5によるスタートアップバルブを模式的に示す図であり、スタートアップバルブは開状態である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1~
図4は、バルブハウジング2とシャットオフ部材3とを備える本発明によるバルブ1を示す。バルブハウジング2は、シャットオフ部材3を受け入れるためのキャビティ4と、キャビティ4への流体の流れのための流入口5と、キャビティ4からの流体の流れのための流出口6とを有する。シャットオフ部材3は、実質的に円柱状のガイド体7を有する。シャットオフ部材3は、流入口5と流出口6との間において、バルブハウジング2のキャビティ4内に直線的に移動可能に配置されている。さらに、ガイド体7は、流入口5から凹部8を経由して流出口6への流体の流れのための凹部8を有している。凹部8は、ガイド体7におけるテーパリング部であり、テーパリング部は、実質的に円柱状のガイド体7の長手軸に対して垂直に配置されている。さらに、シャットオフ部材3は、さらなる凹部9を有する。さらなる凹部9は、シャットオフ部材3のガイド体7に設けられた円柱状の開口部である。柱状のガイド体7の長手軸と円柱状のさらなる凹部9の長手軸とは、75°の角度を囲む。
【0042】
キャビティ4は、実質的に円柱状の第1部分10と、円柱状の第2部分11とを含む。シャットオフ部材3は、第2部分11内に部分的に、直線的に移動可能に受け入れられている。この場合、円柱状の第2部分11の長手軸は、シャットオフ部材3の実質的に円柱状のガイド体7の長手軸と一致する。シャットオフ部材3は、キャビティの第2部分11内に公差を有している。これにより、シャットオフ部材3のガイド体7とバルブハウジング2との間のキャビティ4に、流体が流れることができる隙間が形成される。その結果、バルブ1内に流体が永久に堆積することを低減し、あるいは防ぐことさえできる。
【0043】
第1部分10と第2部分11とは、第1部分10が第2部分11に対して垂直に配置されるように、90°の角度で交差している。その結果、第1部分10と第2部分11とは、互いに直交して配置された2つのトンネルを形成し、これが十字形キャビティ4を形成する。流入口5は、実質的に円柱状の第1部分10の第1底面上に配置されており、第1部分10の第1底面と一致している。流出口6は、実質的に円柱状の第1部分10の、第1底面と反対側の第2底面上に配置され、第1部分10の第2底面と一致している。したがって、流入口5および流出口6は、実質的に円柱状の第1部分10の長手軸上に配置されている。第1部分10は、流入口5と流出口6との間に配置された領域において、キャビティ4の第2部分11と交差している。シャットオフ部材3が第2部分11に受け入れられているので、シャットオフ部材3は、流入口5と流出口6との間に配置されている。図示する実施形態では、第2部分11は、バルブハウジング2を通過する(貫通する)円柱状の穴部(bore)であり、この穴部は、バルブハウジング2の対向する2つの側部に第1開口部12および第2開口部13を形成している。シャットオフ部材3のガイド体7は、シャットオフ部材3が第2開口部13から部分的に突出するように、穴部の内部に受け入れられている。バルブ1は、実質的に円柱状のガイド体7の長手軸の方向にシャットオフ部材3を直線移動させるための駆動部14を備える。駆動部14は、第2開口部13から突出したシャットオフ部材3の端部に係合している。
【0044】
図示する実施形態では、第1部分10と第2部分11との交差領域15において、第1部分10の直径は、流入口5における第1底面の直径よりも20%小さい。凹部8は、実質的に円柱状のガイド体7の長手軸に垂直な環状の切り欠き部(cut-out)であるように構成されている。環状の切り欠き部の幅は、交差領域15における第1部分10の直径に等しい。さらに、環状の切り欠き部は、放物線と、放物線の準線に平行な軸とによって画定される断面を有する。ガイド体7に凹部8が設けられていることで、シャットオフ部材3はボーン形状(bone-shaped)を有する。実質的に円柱状のガイド体7の一定の直径は、凹部8が設けられることによって最大40%小さくなる。
【0045】
バルブハウジング2は、さらなる流出口16を有する。さらなる流出口16には、さらなる流出口16を開閉するためのサンプリングバルブ17、例えば、ボールコックが配置されている。さらなる流出口16は、キャビティ4の第2部分11と流体接続されている。これによって、流体は、キャビティ4の第2部分11から、さらなる流出口16および開状態のサンプリングバルブ17を介して、バルブ1から外部に流れることができる。この場合、さらなる流出口16は、キャビティ4の第2部分11の流出口6と同じ側に配置されており、さらなる流出口16は、キャビティ4の第1部分10の第2底面の仮想延長線上に配置されている。
【0046】
図1~
図4に示す本発明によるバルブ1の実施形態では、流体は、円筒形のパイプ部18を介して、パイプ部18に隣接するバルブハウジング2の円形の流入口5に流れる。流入口5を経由して、流体は、バルブハウジング2のキャビティ4の第1部分10にさらに流れ込み、第2部分11がキャビティ4の第1部分10と交差する交差領域15に至る。シャットオフ部材3は、第2部分11に受け入れられており、
図1では、シャットオフ部材3は、第2部分11において、第1部分10と第2部分11との交差領域15に凹部8が配置されるように位置付けられている。交差領域15では、実質的に円柱状のガイド体7に凹部8が設けられているために、シャットオフ部材3の断面が円柱状の第2部分11の断面よりも小さくなっている。このため、凹部8は、シャットオフ部材3とバルブハウジング2との間において、交差領域15に開口を形成する。これによって、キャビティ4の第1部分10内の流体が交差領域15を通って流出口6に流れる。シャットオフ部材3のガイド体7とバルブハウジング2との間において、キャビティ4の第2部分11内に隙間が形成されているので、隙間を洗浄するために規定量の流体を隙間に流入させることが可能である。
【0047】
駆動部14によって、
図2に示すように、キャビティ4の第1部分10と第2部分11との交差領域15に凹部8がもはや配置されないように、シャットオフ部材3を移動させることができる。この場合、凹部8およびさらなる凹部9は、いずれも交差領域15に配置されず、キャビティ4の第1部分10に流体接続されない。シャットオフ部材3の実質的に円柱状のガイド体7は、隙間を除いて、キャビティ4の第2部分11の断面全体を埋めている。従って、
図2に示すようにシャットオフ部材3を位置付けると、交差領域15は、小さな隙間を除いて、シャットオフ部材3のガイド体7によって完全に埋め尽くされるので、交差領域15はガイド体7によって遮断される。このように、キャビティ4の第1部分10のうち流入口5に隣接する領域は、シャットオフ部材3によって、第1部分10のうち流出口6に隣接する領域から遮断される。その結果、隙間を介して流れる少量の流体を除いて、流体は、流入口5から流出口6へ、またはさらなる流出口16へ、キャビティ4の第1部分10内を流れることができない。
【0048】
シャットオフ部材3を移動させることによって、
図3に示すように、さらなる凹部9を交差領域15に部分的に配置し、さらなる凹部9が第1部分10のうち流入口5に隣接する領域をさらなる流出口16に流体接続するように、シャットオフ部材3をキャビティ4の第2部分11に配置することも可能である。実質的に円柱状のガイド体7の長手軸と円柱状のさらなる凹部9の長手軸とは、例えば75°の角度を囲むので、さらなる凹部9は、流入口5には流体接続されるが流出口6には接続されず、流出口6に対してオフセットしたさらなる流出口16には流体接続される。ガイド体7に長手軸に対して斜めに配置され、さらなる凹部9を形成する開口部によって、流体は、流入口5からキャビティ4の第1部分を経てさらなる流出口16に流れることができる。さらなる流出口16では、流体のサンプリングが行われ得る。さらなる凹部9は、第1部分10のうち流出口6に隣接する領域に流体接続されておらず、凹部8は、キャビティ4の第1部分10と第2部分11との交差領域15に配置されていないので、流出口6は流入口に流体接続されていない。従って、流体は、バルブ1から流出口6を通ってバルブ1から流れ出ることができない。
【0049】
図4は、
図1に示す実施形態によるバルブ1を示す。
図4では、シャットオフ部材3は、キャビティ4の第1部分10と第2部分11との交差領域15に凹部8が部分的に位置するように、キャビティ4の第2部分11に配置されている。この場合、凹部8のうち交差領域15に位置していない部分は、さらなる流出口16とつながって(接して)いる。これにより、交差領域15において凹部8によって形成される開口は、流入口5を流出口6およびさらなる流出口16の両方に流体接続させる。このように、流入口5を介してキャビティ4の第1部分10に流入した流体は、凹部8によって形成された開口を経由し、交差領域15を通って流出口6およびさらなる流出口16にさらに流れることが可能である。この場合、流出口6への開口は、
図1に示すようにシャットオフ部材3を位置付けたときよりも小さいので、
図1に示すシャットオフ部材3の位置付けよりも少ない流体が流出口6を通って流れることができる。その結果、例えば、流出口6を通る流体の流れと、さらなる流出口16を介した流体のサンプリングとを同時に行うことが可能である。キャビティ4の第2部分11内におけるシャットオフ部材3の連続的な(無段階の)移動の結果、交差領域15に配置される凹部8の割合を、0%と100%との間で連続的に変化させることができる。これにより、凹部8によって形成され、流体を流すための開口のサイズを連続的に(無段階に)変化させることができる。その結果、バルブ1を通過する流体の流れを連続的に(無段階で)調節することが可能になる。
【0050】
本発明によるバルブ1は、例えば、セルロース/アミノキシド溶液の製造プロセスで使用され得る。シャットオフ部材3の構成によって、紡糸塊(spinning mass)がシステムのデッドスペースに蓄積して分解されることが防止される。バルブ1内に紡糸塊がかなり長く貯蔵される場合であっても、シャットオフ部材3は、周期的に回転または並進運動するように設定されて洗浄され得るので、バルブハウジング2内でシャットオフ部材3が動かなくなる(seize up)ことがない。このように、本発明は、セルロース/アミノキシド溶液の安全な分流、分配、安全な移送を確実にするために、バルブハウジング2内のセルロース溶液の流量を周期的に設定して変化させることができるバルブ1を用いて、セルロースの三級アミノキシド水溶液の移送方法を提供するものである。
【0051】
図1~
図4に示す本発明によるバルブ1の実施形態は、バルブシステム19の一部として使用され得る。この目的のために、
図5および
図6に示すように、本発明によるバルブ1は、スタートアップバルブ20と組み合わされている。スタートアップバルブ20は、バルブハウジング21とシャットオフ部材22とを備える。スタートアップバルブ20のバルブハウジング21は、シャットオフ部材22を受け入れるためのキャビティ23と、キャビティ23に流体を流入させるための流入口25と、スタートアップバルブ20のキャビティ23から流体を流出させるための流出口24とを有する。スタートアップバルブ20のシャットオフ部材22は、ガイド体26と、流入口25を遮断するためのシャットオフ突起部27とを有する。シャットオフ部材22は、スタートアップバルブ20のバルブハウジング21のキャビティ23内に移動可能に配置されている。シャットオフ突起部27は、流入口25に当接するための湾曲した当接面28を有している。湾曲した当接面28は、円柱状のさらなるキャビティ29の側面上に配置されるスタートアップバルブ20のバルブハウジング21の流入口25に対して当接し得るように、円弧形状を有している。この場合、流入口25は、キャビティ23と、キャビティ23上に垂直に配置されたさらなるキャビティ29とを連通させる。スタートアップバルブ20のシャットオフ部材22のガイド体26は、実質的に円柱状であり、シャットオフ突起部27は実質的に円柱状のガイド体26の底面30に配置されている。キャビティ23は、円柱状の第1部分31と、第1部分31とさらなるキャビティ29との間に配置されている第2部分32とを含む。この場合、円柱状のさらなるキャビティ29は、キャビティ23の円柱状の第1部分31の長手方向に配置されており、円柱状のさらなるキャビティ29の長手軸は、円柱状の第1部分31の長手軸に垂直である。シャットオフ突起部27は、スタートアップバルブ20のバルブハウジング21のキャビティ29の第2部分32と同じ形状を有している。スタートアップバルブ20のシャットオフ部材22は、キャビティ23の円柱状の第1部分31の長手軸がシャットオフ部材22の実質的に円柱状のガイド体26の長手軸と一致するように、キャビティ23内に配置されている。
【0052】
流出口24は、キャビティ23の円柱状の第1部分31の側面に配置されている。キャビティ23の第1部分31は、スタートアップバルブ20のバルブハウジング21を通過する円柱状の穴部であり、円柱状の穴部は、キャビティ23における第2部分32の反対側に開口部33を形成する。ガイド体26は、シャットオフ部材22が開口部33から部分的に突出するように、穴部内に受け入れられている。スタートアップバルブ20は、実質的に円柱状のガイド体26の長手軸の方向にシャットオフ部材22を直線的に移動させるための駆動部34を有する。駆動部34は、開口部33から突出するシャットオフ部材22の端部に係合している。
【0053】
図5では、スタートアップバルブ20は閉じた状態で示されており、シャットオフ突起部27の湾曲した当接面28が流入口25に当接している。さらに、シャットオフ部材22のガイド体26が流出口24に当接し、これを遮断している。従って、流体は、流入口25からスタートアップバルブ20のキャビティ23に流れず、さらに流出口24に流れることができない。この位置では、シャットオフ突起部27はキャビティ23の第2部分32に配置され、ガイド体26はキャビティ23の第1部分31に配置されている。スタートアップバルブ20内に流体のデッドスペースが形成されることを回避するために、バルブハウジング21とガイド体26との間において、キャビティ23に隙間が形成され得る。これにより、流体が流入口25から隙間を介してキャビティ23に流入し、さらに流出口24に流入することが可能になる。その結果、スタートアップバルブ20内に流体が長時間滞留することを防止することができる。スタートアップバルブ20のシャットオフ部材22が、キャビティ23の円柱状の第1部分31の長手方向に、開口部33に向かって直線的に移動する間、シャットオフ部材22のガイド体26は流出口24を通過して移動する。ガイド体26の通過中、流出口24は、流体がさらなるキャビティ29から流入口25を通ってキャビティ23に流入し、さらに流出口24に流入できるように、連続的に(無段階に)開けられる。この場合、キャビティ23内の流体は、キャビティ23内の流体の流れが改善されるように、実質的に円柱状のガイド体26の底面30とシャットオフ突起部27の湾曲した当接面28とによって案内される。開口部33の方向にシャットオフ部材22をさらに直線的に移動させる間、ガイド体26が流出口24をもはや覆わなくなるまで、流出口24がさらに開かれ、
図6に示すように、流出口24が完全に開状態になる。この場合、実質的に円柱状のガイド体26の底面30は、流入口25から離れた(facing away from)側で流出口24に接触する。底面30とシャットオフ突起部27の湾曲した当接面28とによって、キャビティ23内の流体は、流出口24の方向へ案内される。流体の流れは、シャットオフ突起部27が設けられていないシャットオフ部材に比べて改善される。
【0054】
スタートアップバルブ20のさらなるキャビティ29は、
図1~
図4による円筒形のパイプ部18に相当する。流体は、本発明によるバルブ1のバルブハウジング2の流入口5から、キャビティ4の第1部分11およびシャットオフ部材3の凹部8を経て、本発明によるバルブ1のバルブハウジング2の流出口6に流れる。これにより、流体は、円筒形のパイプ部18内を流れ、パイプ部18から、スタートアップバルブ20のバルブハウジング21の流入口25を経て流出口24に流れる。
図1に示すバルブ1は、ここでは、
図5および
図6に示すI-I部に相当する。