(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】新規化合物[2-(ジメチルアミノ)-2-フェニルブチル]-3,4,5-トリメトキシベンゾエート4-メチル-2H-クロメン-2-オン-7-イルサルフェートおよびその使用
(51)【国際特許分類】
C07C 211/27 20060101AFI20240209BHJP
C07D 311/16 20060101ALI20240209BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20240209BHJP
A61P 1/06 20060101ALI20240209BHJP
A61P 1/08 20060101ALI20240209BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240209BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20240209BHJP
A61K 31/235 20060101ALI20240209BHJP
A61K 31/353 20060101ALI20240209BHJP
【FI】
C07C211/27 CSP
C07D311/16 101
A61P1/00
A61P1/06
A61P1/08
A61K9/20
A61K9/48
A61K31/235
A61K31/353
(21)【出願番号】P 2022566106
(86)(22)【出願日】2021-04-26
(86)【国際出願番号】 RU2021050109
(87)【国際公開番号】W WO2021221544
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2022-10-27
(32)【優先日】2020-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(73)【特許権者】
【識別番号】522421886
【氏名又は名称】エルティーディー “ヴァレンタ-インテレクト”
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ウラディキン,アレクサンドル リヴォヴィッチ
【審査官】高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】特開昭50-142533(JP,A)
【文献】特表2015-511589(JP,A)
【文献】特表2009-539777(JP,A)
【文献】特表2000-504717(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07D
A61P
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
[2-(ジメチルアミノ)-2-フェニルブチル]-3,4,5-トリメトキシベンゾエート4-メチル-2H-クロメン-2-オン-7-イルサルフェートである、式Iの化合物。
【化1】
【請求項2】
有効量の請求項1に記載の化合物および少なくとも1種の薬学的に許容される担体を含む、機能性消化管疾患の治療および予防のための医薬組成物。
【請求項3】
前記機能性消化管疾患が、機能性食道障害、胃十二指腸障害、機能性腸障害、過敏性腸症候群(IBS)、中枢介在性腹痛障害である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記機能性消化管疾患が、機能性食道胸痛、機能性胸やけ、逆流性過敏症、食道痙攣、食道球、および/または機能性嚥下困難、機能性ディスペプシア、食後不快症候群、上腹部痛症候群、暖気障害、空気嚥下症、および/または非特定過剰暖気障害、慢性悪心嘔吐症候群、周期性嘔吐症候群、カンナビノイド誘発性悪阻症候群、および/または成人反芻症候群、内臓過敏症を伴うものを含む機能性腸障害、過敏性腸症候群(IBS)であって、便秘型IBS、下痢型IBS、混合型IBS、分類不能型IBS、機能性便秘、機能性下痢、機能性腹部膨満/膨張、非特定機能性腸障害、および/またはオピオイド誘発性便秘を含むIBS、胆管痛、機能性胆嚢障害、機能性胆管オッジ括約筋障害、および/または機能性膵臓オッジ括約筋障害である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
薬学的に許容されるパッケージに入れられた錠剤またはカプセルの形態の機能性消化管疾患の治療または予防のための薬物であって、前記薬物は、有効量の請求項1に記載の化合物または請求項2に記載の医薬組成物を含む、薬物。
【請求項6】
前記機能性消化管疾患が、機能性食道障害、胃十二指腸障害、機能性腸障害、過敏性腸症候群(IBS)、中枢介在性腹痛障害である、請求項5に記載の薬物。
【請求項7】
前記機能性消化管疾患が、機能性食道胸痛、機能性胸やけ、逆流性過敏症、食道痙攣、食道球、および/または機能性嚥下困難、機能性ディスペプシア、食後不快症候群、上腹部痛症候群、暖気障害、空気嚥下症、および/または非特定過剰暖気障害、慢性悪心嘔吐症候群、周期性嘔吐症候群、カンナビノイド誘発性悪阻症候群、および/または成人反芻症候群、内臓過敏症を伴うものを含む機能性腸障害、過敏性腸症候群(IBS)であって、便秘型IBS、下痢型IBS、混合型IBS、分類不能型IBS、機能性便秘、機能性下痢、機能性腹部膨満/膨張、非特定機能性腸障害、および/またはオピオイド誘発性便秘を含むIBS、胆管痛、機能性胆嚢障害、機能性胆管オッジ括約筋障害、および/または機能性膵臓オッジ括約筋障害である、請求項5に記載の薬物。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は有機化学および薬学の分野に関し、新規化合物[2-(ジメチルアミノ)-2-フェニルブチル]-3,4,5-トリメトキシベンゾエート4-メチル-2H-クロメン-2-オン-7-イルサルフェートを提供する。この化合物は、機能性消化管障害に対して改善された薬理活性を示す。
【0002】
セラピスト、一般開業医および胃腸科医の臨床診療における疾患のかなりの部分は、機能性消化管障害である。機能性腸障害(FBD)は、中腸および後腸における症状を介して明らかにされ、かつ、いかなる構造的、全身的または代謝的変化も伴わない、一群の不均一な臨床状態を含む。器質的な基礎がないにもかかわらず、機能性疾患は、医療費および治療費の直接的な指標と、一時的な障害の補償を含む間接的な指標と、の両方によって、患者の生活の質を低下させ、社会に大きな経済的被害を引き起こす。
【0003】
1969年を発端として、[2-(ジメチルアミノ)-2-フェニルブチル]-3,4,5-トリメトキシベンゾエートは、多くの国で、機能性腸障害、主に過敏性腸障害(IBS)の場合に、その治療に使用されている。腹痛の緩和に使用される[2-(ジメチルアミノ)-2-フェニルブチル]-3,4,5-トリメトキシベンゾエートの有効性が、様々な臨床研究において実証された。長い間、[2-(ジメチルアミノ)-2-フェニルブチル]-3,4,5-トリメトキシベンゾエートの影響は、その鎮痙活性と関連し、この調製物は、筋萎縮性鎮痙剤であるメベベリンと同様に作用すると考えられた。しかし、[2-(ジメチルアミノ)-2-フェニルブチル]-3,4,5-トリメトキシベンゾエートの作用機序に関連する新たなデータが発見され、典型的な鎮痙薬ではなかった。実験的および臨床的研究は、消化管(GIT)の運動機能に及ぼす[2-(ジメチルアミノ)-2-フェニルブチル]-3,4,5-トリメトキシベンゾエートの調節作用が、治療的および外科的病態における消化運動性の低運動性および高運動性障害を正常化する際にそれ自身が現れることを示している。[2-(ジメチルアミノ)-2-フェニルブチル]-3,4,5-トリメトキシベンゾエートは、有意な鎮痛作用を提供する。[2-(ジメチルアミノ)-2-フェニルブチル]-3,4,5-トリメトキシベンゾエートは、オピエート受容体のアゴニストであり、消化管運動性およびその鎮痛効果に対するその調節作用は、この作用機序によっても決定できることが、実験研究で見出されている。それは、腸のエンケファリン作動系に作用することによって、GITの全長に沿って蠕動を調節する。
【0004】
その構造により、[2-(ジメチルアミノ)-2-フェニルブチル]-3,4,5-トリメトキシベンゾエートは第三級脂肪族アミンである:
【0005】
【0006】
その顕著な特徴は、第三級脂肪族アミンにしては異常に低い酸性度定数値pKBH+=6.25である[1]。比較として、有機合成において広く使用されるような塩基であるトリエチルアミンおよびジイソプロピルエチルアミンは、それぞれ10.87および10.75のpKBH+値を有する。この特徴の結果として、[2-(ジメチルアミノ)-2-フェニルブチル]-3,4,5-トリメトキシベンゾエートは、多くの有機酸と熱力学的に安定な固体塩を形成しない。したがって、酢酸および安息香酸などの酸は、[2-(ジメチルアミノ)-2-フェニルブチル]-3,4,5-トリメトキシベンゾエートと安定な塩を形成しないことが知られている[2]。[2-(ジメチルアミノ)-2-フェニルブチル]-3,4,5-トリメトキシベンゾエートの多くの周知の剤形の1つは、マレイン酸とのその塩、すなわち、[2-(ジメチルアミノ)-2-フェニルブチル]-3,4,5-トリメトキシベンゾエートマレイン酸塩である。
【0007】
【0008】
本発明者らは、改善された薬理活性を有する新規化合物[2-(ジメチルアミノ)-2-フェニルブチル]-3,4,5-トリメトキシベンゾエート4-メチル-2H-クロメン-2-オン-7-イルサルフェートを製造した。
【0009】
この塩は、[2-(ジメチルアミノ)-2-フェニルブチル]-3,4,5-トリメトキシベンゾエートが対応する芳香族硫酸モノエステルと相互作用する場合に生成され得る。
【0010】
【0011】
したがって、本発明の技術的効果は、改善された薬理活性を有する新規化合物[2-(ジメチルアミノ)-2-フェニルブチル]-3,4,5-トリメトキシベンゾエート4-メチル-2H-クロメン-2-オン-7-イルサルフェートの製造である。
【0012】
この化合物を製造するために、イオン交換クロマトグラフィーを使用した;この例示的な用途は、アリールサルフェートに関するものを含む文献の出典に見出すことができる[3]。
【0013】
以下に、本明細書中で使用される用語の定義を示す。
【0014】
「医薬品」(薬剤物質、医薬物質)は、薬学的活性を有し、医薬製剤(薬剤)の製造(production)および製造(making)に用いられる医薬組成物の活性基礎を形成する、合成または他の(生物工学的、植物、動物、微生物など)由来の生理活性物質を意味する。
【0015】
「薬物(製剤)」は、ヒトまたは動物における生理学的機能の回復、矯正または変化、ならびに疾患、診断、麻酔、避妊、美容などの治療および予防を目的とする、錠剤、カプセル剤、注射剤、軟膏剤および他のすぐに使用できる形態として調製された物質(または医薬組成物の形態の物質の混合物)を意味する。
【0016】
「医薬組成物」は、新規化合物[2-(ジメチルアミノ)-2-フェニルブチル]-3,4,5-トリメトキシベンゾエート4-メチル-2H-クロメン-2-オン-7-イルサルフェートと、防腐剤、安定剤、充填剤、崩壊剤、水和剤、乳化剤、懸濁剤、増粘剤、甘味剤、付臭剤、香料、抗菌剤、防かび剤、潤滑剤、長期送達の調整剤等の薬学的に許容され、薬学的に適合する充填剤、溶媒、希釈剤、担体、アジュバント、分配剤、送達ビヒクルからなる群より選択される少なくとも1つの成分と、を含む組成物を意味し、これらの成分の選択および比率は、それらの性質、組成物の導入方法、および投与量に依存する。懸濁剤の例は、エトキシレートイソステアリルアルコール、ポリオキシエチレン、ソルビトールおよびソルビトールエーテル、微結晶セルロース、メタヒドロキシドアルミニウム、ベントナイト、寒天およびトラガカント、ならびに他の薬学的に許容される界面活性剤およびそれらの混合物である。微生物に対する防御は、例えば、ベンジルアルコール、ウロトロピン、エチレンジアミン四酢酸、安息香酸、クロルブタノール、ソルビン酸、パラベン、アルキルピリジニウム、ベンゼトニウム、それらの薬学的に許容される塩および類似の化合物などの様々な抗菌剤および抗真菌剤を用いて提供され得る。化合物はまた、等張剤、例えば、糖、塩化ナトリウムなどを含み得る。例えば、親水性高分子放出遅延剤(例えば、セルロース誘導体、ポリエチレンオキシド、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アルギン酸塩、カルボマー)、ベヘン酸グリセリル、モノステアリン酸アルミニウムなどの疎水性放出遅延剤などの、活性医薬剤の吸収を減速させる薬剤を用いて、組成物の持続性作用を確実にすることができる。適当な担体、溶媒、希釈剤および送達ビヒクルの例は、水、エタノール、多価アルコール、緩衝溶液およびそれらの混合物、植物油(オリーブ油など)、ならびに有機物注入エステル(オレイン酸エチルなど)である。充填剤の例は、ラクトース、乳糖、微結晶性セルロース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムなどである。pHを調節するために、リンゴ酸、アスコルビン酸、クエン酸、酢酸、コハク酸、酒石酸、フマル酸、乳酸、アスパラギン酸、グルタル酸、グルタミン酸、ソルビン酸などの様々な有機酸および無機酸を使用することができる。分散剤および分配剤の例は、デンプン、アルギン酸およびその塩、ケイ酸塩である。滑沢剤の例は、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、コロイド状二酸化ケイ素および高分子ポリエチレングリコールである。活性剤の経口、舌下、経皮、筋肉内、静脈内、皮下、局所、または直腸投与のための医薬組成物は、単独で、または別の活性剤と組み合わせて、従来の医薬担体との混合物の形態で、標準的な投与形態で動物およびヒトに投与され得る。適当な標準投与形態は、経口形態、例えば、錠剤、ゼラチンカプセル、丸剤、紛剤、顆粒剤、チューインガムおよび経口溶液、エリキシル剤または懸濁剤、舌下および経頬投与形態、エアロゾル、インプラント、局所、経皮、皮下、筋肉内、静脈内、鼻腔内または眼内投与形態および直腸投与形態を含む。
【0017】
「薬学的に許容される塩」は、本発明で提案される酸および塩基の相対的に無毒な有機塩および無機塩を意味する。これらの塩は、化合物の合成、単離または精製のプロセスにおいてインサイチュで製造することができ、または特殊目的のために製造することができる。特に、塩基の塩は、特許請求される化合物の精製された遊離塩基、および適当な有機酸または無機酸から、特殊目的のために製造され得る。このようにして製造される塩の例は、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、ホウ酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、トシレート、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、メシレート、マロン酸塩、サリチル酸塩、プロピオン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、スルファミン酸塩などである[4]。提案された酸の塩はまた、精製された酸と適当な塩基との反応によって、特殊目的のために製造することができ、金属およびアミンの塩を合成することができる。金属の塩には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、マグネシウム、リチウムおよびアルミニウムの塩が含まれ、最も好ましくはナトリウムおよびカリウムの塩である。金属塩を製造するのに適した無機塩基は、水酸化ナトリウム、炭酸塩、重炭酸塩および水素化物、水酸化カリウムおよび重炭酸塩、カリ、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛である。提案された酸の塩が生成され得る有機塩基として、安定な塩を形成するのに十分な塩基性を有し、医療目的での使用に適している(特に、それらは低い毒性を有するべきである)、アミンおよびアミノ酸が選択される。このようなアミンには、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ベンジルアミン、ジベンジルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ピペラジン、エチルピペリジン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンなどが含まれる。さらに、水酸化テトラアルキルアンモニウム、例えば、コリン、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウムなどを塩形成のために使用することができる。アミノ酸としては、リジン、オルニチン、およびアルギニンなどの主要なアミノ酸を用いることができる。
【0018】
医薬組成物は、薬学的に許容される賦形剤を含み得る。薬学的に許容される賦形剤は、薬学の分野で使用される希釈剤、アジュバントおよび/または担体を指す。医薬組成物は、本発明による活性物質またはその薬学的に許容される塩とは別に、望ましくない効果を引き起こさない限り、活性を有するものを含む他の活性物質も含み得る。
【0019】
用語「有効量」は、(1)特定の疾患、状態または障害の治療または予防のために使用される、(2)特定の疾患、状態または障害の1つ以上の症状を緩和、改善または排除する、あるいは(3)本明細書中に記載される特定の疾患、状態または障害の1つ以上の症状の出現を予防または遅延する、活性物質の量を意味する。
【0020】
用語「薬学的に許容される」は、この用語によって言及される所与の物質または組成物が、化学および/または毒性学の点から、製剤の他の成分と適合しているべきであり、この物質または組成物を投与されている患者にとって安全であるべきであることを意味する。
【0021】
用語「含む(comprising)」、「含む(comprises)」は、それぞれの組み合わせ、組成物およびセットが列挙された成分を含むことを意味するが、それらは他の成分の添加を排除しない。
【0022】
〔発明の概要〕
本発明は、[2-(ジメチルアミノ)-2-フェニルブチル]-3,4,5-トリメトキシベンゾエート4-メチル-2H-クロメン-2-オン-7-イルサルフェートである、式Iの化合物を提案する。
【0023】
【0024】
本発明の主題は、有効量の式Iに記載の化合物を、それを必要とする患者に投与することを含む、機能性消化管疾患の治療または予防のための方法でもある。
【0025】
より好ましくは、機能性消化管疾患が機能性食道障害:機能性食道性胸痛、機能性胸やけ、逆流性過敏症、食道痙攣、食道球、および/または機能性嚥下困難であることを特徴とする、機能性消化管疾患の治療または予防のための方法である。
【0026】
より好ましくは、機能性消化管疾患を治療または予防するための方法であって、前記機能性胃腸疾患が、胃十二指腸障害:機能性ディスペプシア、食後不快症候群、上腹部痛症候群、暖気障害、空気嚥下症、および/または非特異過剰暖気障害である、方法である。
【0027】
より好ましくは、機能性消化管疾患を治療または予防する方法であって、前記機能性消化管疾患が、悪心嘔吐障害:慢性悪心嘔吐症候群、周期性嘔吐症候群、カンナビノイド誘発性悪阻症候群、および/または成人反芻症候群である、方法である。
【0028】
より好ましくは、機能性消化管疾患を治療または予防するための方法であって、前記機能性消化管疾患が、内臓過敏症を伴うものを含む機能性腸障害:過敏性腸症候群(IBS)であり、当該IBSが、便秘型IBS、下痢型IBS、混合型IBS、分類不能型IBS、機能性便秘、機能性下痢、機能性腹部膨満/膨張、非特異機能性腸障害、および/またはオピオイド誘発性便秘を含む、方法である。
【0029】
より好ましくは、機能性消化管疾患を治療または予防するための方法であって、前記機能性消化管疾患が、中枢介在性腹痛障害:中枢介在性腹痛症候群および/またはオピオイド誘発性胃腸痛覚過敏である、方法である。
【0030】
より好ましくは、機能性消化管疾患を治療または予防する方法であって、前記機能性消化管疾患が、胆嚢およびオッジ括約筋障害:胆管痛、機能性胆嚢障害、機能性胆管オッジ括約筋障害、および/または機能性膵臓オッジ括約筋障害である、方法である。
【0031】
より好ましくは、機能性消化管疾患を治療または予防するための方法であって、前記機能性消化管疾患が、独立して進行するものと、胆石症、胆嚢炎、胆管炎、様々な原因の胆汁鬱滞性肝疾患、任意の線維症段階を有する脂肪性肝炎を含む非アルコール性およびアルコール性脂肪肝疾患、急性および慢性形態の膵炎、胆汁逆流性胃炎および逆流性食道炎、および/または胆嚢摘出後症候群を含む、胆嚢および胆道、膵臓に対する外科的介入後の状態の背景で進行するものと、の両方である、方法である。
【0032】
本発明の主題はまた、有効量の式Iの化合物および少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む、機能性消化管疾患の治療および予防のための医薬組成物である。
【0033】
より好ましくは、機能性消化管疾患が機能性食道障害:機能性食道性胸痛、機能性胸やけ、逆流性過敏症、食道痙攣、食道球、および/または機能性嚥下困難であることを特徴とする、機能性消化管疾患の治療および予防のための医薬組成物である。
【0034】
より好ましくは、機能性消化管疾患を治療および予防するための医薬組成物であって、前記機能性消化管疾患が、胃十二指腸障害:機能性ディスペプシア、食後不快症候群、上腹部痛症候群、暖気障害、空気嚥下症、および/または非特異過剰暖気障害である、医薬組成物である。
【0035】
より好ましくは、機能性消化管疾患の治療および予防のための医薬組成物であって、前記機能性消化管疾患が、悪心嘔吐障害:慢性悪心嘔吐症候群、周期性嘔吐症候群、カンナビノイド誘発性悪阻症候群、および/または成人反芻症候群である、医薬組成物である。
【0036】
より好ましくは、機能性消化管疾患の治療および予防のための医薬組成物であって、前記機能性消化管疾患が、内臓過敏症を伴うものを含む機能性腸障害:過敏性腸症候群(IBS)であり、当該IBSが、便秘型IBS、下痢型IBS、混合型IBS、分類不能型IBS、機能性便秘、機能性下痢、機能性腹部膨満/膨張、非特異機能性腸障害、および/またはオピオイド誘発性便秘を含む、医薬組成物である。
【0037】
より好ましくは、機能性消化管疾患を治療および予防するための医薬組成物であって、前記機能性消化管疾患が、中枢介在性腹痛障害:中枢介在性腹痛症候群および/またはオピオイド誘発性胃腸痛覚過敏である、医薬組成物である。
【0038】
より好ましくは、機能性消化管疾患を治療および予防するための医薬組成物であって、前記機能性消化管疾患が、胆嚢およびオッジ括約筋障害:胆管痛、機能性胆嚢障害、機能性胆管オッジ括約筋障害、および/または機能性膵臓オッジ括約筋障害である、医薬組成物である。
【0039】
より好ましくは、機能性消化管疾患の治療および予防のための医薬組成物であって、前記機能性消化管疾患が、独立して進行するものと、胆石症、胆嚢炎、胆管炎、様々な原因の胆汁鬱滞性肝疾患、非アルコール性およびアルコール性脂肪肝疾患(任意の線維症段階を有する脂肪性肝炎を含む)、急性および慢性形態の膵炎、胆汁逆流性胃炎および逆流性食道炎、および/または胆嚢摘出後症候群を含む、胆嚢および胆道、膵臓に対する外科的介入後の状態の背景で進行するものと、の両方である、医薬組成物である。
【0040】
本発明の主題はまた、薬学的に許容されるパッケージに入れられた錠剤またはカプセルの形態の機能性消化管疾患の治療または予防のための薬物であって、前記薬物は、有効量の式Iに記載の化合物または有効量の式Iに記載の化合物および少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を含む、薬物である。
【0041】
より好ましくは、機能性消化管疾患が機能性食道障害:機能性食道性胸痛、機能性胸やけ、逆流性過敏症、食道痙攣、食道球、および/または機能性嚥下困難であることを特徴とする、機能性疾患の治療または予防のための薬物である。
【0042】
より好ましくは、機能性消化管疾患の治療または予防のための薬物であって、前記機能性消化管疾患が、胃十二指腸障害:機能性ディスペプシア、食後不快症候群、上腹部痛症候群、暖気障害、空気嚥下症、および/または非特異過剰暖気障害である、薬物である。
【0043】
より好ましくは、機能性消化管疾患の治療または予防のための薬物であって、前記機能性消化管疾患が、悪心嘔吐障害:慢性悪心嘔吐症候群、周期性嘔吐症候群、カンナビノイド誘発性悪阻症候群、および/または成人反芻症候群である、薬物である。
【0044】
より好ましくは、機能性消化管疾患の治療または予防のための薬物であって、前記機能性消化管疾患が、内臓過敏症を伴うものを含む機能性腸障害:過敏性腸症候群(IBS)であり、当該IBSが、便秘型IBS、下痢型IBS、混合型IBS、分類不能型IBS、機能性便秘、機能性下痢、機能性腹部膨満/膨張、非特異機能性腸障害、および/またはオピオイド誘発性便秘を含む、薬物である。
【0045】
より好ましくは、機能性消化管疾患の治療または予防のための薬物であって、前記機能性消化管疾患が、中枢介在性腹痛障害:中枢介在性腹痛症候群および/またはオピオイド誘発性胃腸痛覚過敏である、薬物である。
【0046】
より好ましくは、機能性消化管疾患の治療又は予防のための薬物であって、前記機能性消化管疾患が、胆嚢およびオッジ括約筋障害:胆管痛、機能性胆嚢障害、機能性胆管オッジ括約筋障害、および/または機能性膵臓オッジ括約筋障害である、薬物である。
【0047】
より好ましくは、機能性消化管疾患の治療または予防のための薬物であって、前記機能性消化管疾患が、独立して進行するものと、胆石症、胆嚢炎、胆管炎、様々な原因の胆汁鬱滞性肝疾患、非アルコール性およびアルコール性脂肪肝疾患(任意の線維症段階を有する脂肪性肝炎を含む)、急性および慢性形態の膵炎、胆汁逆流性胃炎および逆流性食道炎、および/または胆嚢摘出後症候群を含む、胆嚢および胆道、膵臓に対する外科的介入後の状態の背景で進行するものと、の両方である、薬物である。
【0048】
本発明の主題はまた、薬学的に許容されるパッケージに入れられた錠剤またはカプセルの形態の機能性消化管疾患の治療および予防のための最終剤形であって、前記剤形は、有効量の式Iに記載の化合物、または、有効量の式Iに記載の化合物および少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を含む、最終剤形である。
【0049】
より好ましくは、機能性消化管疾患が機能性食道障害:機能性食道性胸痛、機能性胸やけ、逆流性過敏症、食道痙攣、食道球、および/または機能性嚥下困難であることを特徴とする、機能性疾患の治療および予防のための最終剤形である。
【0050】
より好ましくは、機能性消化管疾患の治療および予防のための最終剤形であって、前記機能性消化管疾患が、胃十二指腸障害:機能性ディスペプシア、食後不快症候群、上腹部痛症候群、暖気障害、空気嚥下症、および/または非特異過剰暖気障害である、最終剤形である。
【0051】
より好ましくは、機能性消化管疾患の治療および予防のための最終剤形であって、前記機能性消化管疾患が、悪心嘔吐障害:慢性悪心嘔吐症候群、周期性嘔吐症候群、カンナビノイド誘発性悪阻症候群、および/または成人反芻症候群である、最終剤形である。
【0052】
より好ましくは、機能性消化管疾患の治療および予防のための最終剤形であり、前記機能性消化管疾患が、内臓過敏症を伴うものを含む機能性腸障害:過敏性腸症候群(IBS)であり、当該IBSが、便秘型IBS、下痢型IBS、混合型IBS、分類不能型IBS、機能性便秘、機能性下痢、機能性腹部膨満/膨張、非特異機能性腸障害、および/またはオピオイド誘発性便秘を含む、最終剤形である。
【0053】
より好ましくは、機能性消化管疾患を治療および予防するための最終剤形であって、前記機能性消化管疾患が、中枢介在性腹痛障害:中枢介在性腹痛症候群および/またはオピオイド誘発性胃腸痛覚過敏である、最終剤形である。
【0054】
より好ましくは、機能性消化管疾患の治療および予防のための最終剤形であり、前記機能性消化管疾患が、胆嚢およびオッジ括約筋障害:胆管痛、機能性胆嚢障害、機能性胆管オッジ括約筋障害、および/または機能性膵臓オッジ括約筋障害である、最終剤形である。
【0055】
より好ましくは、機能性消化管疾患の治療および予防のための最終剤形であって、前記機能性消化管疾患が、独立して進行するものと、胆石症、胆嚢炎、胆管炎、様々な原因の胆汁鬱滞性肝疾患、非アルコール性およびアルコール性脂肪肝疾患(任意の線維症段階を有する脂肪性肝炎を含む)、急性および慢性形態の膵炎、胆汁逆流性胃炎および逆流性食道炎、および/または胆嚢摘出後症候群を含む、胆嚢および胆道、膵臓に対する外科的介入後の状態の背景で進行するものと、の両方である、最終剤形である。
【0056】
本発明の主題はまた、式Iの化合物の、機能性消化管疾患の治療または予防のための、使用である。
【0057】
より好ましくは、機能性消化管疾患が機能性食道障害:機能性食道性胸痛、機能性胸やけ、逆流性過敏症、食道痙攣、食道球、および/または機能性嚥下困難であることを特徴とする、式Iの化合物の、機能性疾患の治療または予防のための、使用である。
【0058】
より好ましくは、式Iの化合物の、機能性消化管疾患の治療又は予防のための、使用であって、前記機能性消化管疾患が、胃十二指腸障害:機能性ディスペプシア、食後不快症候群、上腹部痛症候群、暖気障害、空気嚥下症、および/または非特異過剰暖気障害である、使用である。
【0059】
より好ましくは、式Iの化合物の、機能性消化管疾患の治療または予防のための、使用であって、前記機能性消化管疾患が、悪心嘔吐障害:慢性悪心嘔吐症候群、周期性嘔吐症候群、カンナビノイド誘発性悪阻症候群、および/または成人反芻症候群である、使用である。
【0060】
より好ましくは、式Iの化合物の、機能性消化管疾患の治療または予防のための、使用であって、前記機能性消化管疾患が、内臓過敏症を伴うものを含む機能性腸障害:過敏性腸症候群(IBS)であり、当該IBSが、便秘型IBS、下痢型IBS、混合型IBS、分類不能型IBS、機能性便秘、機能性下痢、機能性腹部膨満/膨張、非特異機能性腸障害、および/またはオピオイド誘発性便秘を含む、使用である。
【0061】
より好ましくは、式Iの化合物の、機能性消化管疾患の治療または予防のための、使用であって、前記機能性消化管疾患が、中枢介在性腹痛障害:中枢介在性腹痛症候群および/またはオピオイド誘発性胃腸痛覚過敏である、使用である。
【0062】
より好ましくは、式Iの化合物の、機能性消化管疾患の治療または予防のための、使用であって、前記機能性消化管疾患が、胆嚢およびオッジ括約筋障害:胆管痛、機能性胆嚢障害、機能性胆管オッジ括約筋障害、および/または機能性膵臓オッジ括約筋障害である、使用である。
【0063】
より好ましくは、式Iの化合物の、機能性消化管疾患の治療または予防のための、使用であって、前記機能性消化管疾患が、独立して進行するものと、胆石症、胆嚢炎、胆管炎、様々な原因の胆汁鬱滞性肝疾患、非アルコール性およびアルコール性脂肪肝疾患(任意の線維症段階を有する脂肪性肝炎を含む)、急性および慢性形態の膵炎、胆汁逆流性胃炎および逆流性食道炎、および/または胆嚢摘出後症候群を含む、胆嚢および胆道、膵臓に対する外科的介入後の状態の背景で進行するものと、の両方である、使用である。
【0064】
本発明の主題はまた、有効量の式Iの化合物を含む医薬組成物または有効量の式Iの化合物を含む最終剤形の、機能性消化管疾患の治療または予防のための、使用である。
【0065】
より好ましくは、機能性消化管疾患が機能性食道障害:機能性食道性胸痛、機能性胸やけ、逆流性過敏症、食道痙攣、食道球、および/または機能性嚥下困難であることを特徴とする、有効量の式Iの化合物を含む医薬組成物または有効量の式Iの化合物を含む最終剤形の、機能性疾患の治療または予防のための、使用である。
【0066】
より好ましくは、有効量の式Iの化合物を含む医薬組成物または有効量の式Iの化合物を含む最終剤形の、機能性消化管疾患の治療または予防のための、使用であって、前記機能性消化管疾患が、胃十二指腸障害:機能性ディスペプシア、食後不快症候群、上腹部痛症候群、暖気障害、空気嚥下症、および/または非特異過剰暖気障害である、使用である。
【0067】
より好ましくは、有効量の式Iの化合物を含む医薬組成物または有効量の式Iの化合物を含む最終剤形の、機能性消化管疾患の治療または予防のための、使用であって、前記機能性消化管疾患が、悪心嘔吐障害:慢性悪心嘔吐症候群、周期性嘔吐症候群、カンナビノイド誘発性悪阻症候群、および/または成人反芻症候群である、使用である。
【0068】
より好ましくは、有効量の式Iの化合物を含む医薬組成物または有効量の式Iの化合物を含む最終剤形の、機能性消化管疾患の治療または予防のための、使用であって、前記機能性消化管疾患が、内臓過敏症を伴うものを含む機能性腸障害:過敏性腸症候群(IBS)であり、当該IBSが、便秘型IBS、下痢型IBS、混合型IBS、分類不能型IBS、機能性便秘、機能性下痢、機能性腹部膨満/膨張、非特異機能性腸障害、および/またはオピオイド誘発性便秘を含む、使用である。
【0069】
より好ましくは、有効量の式Iの化合物を含む医薬組成物または有効量の式Iの化合物を含む最終剤形の、機能性消化管疾患の治療または予防のための、使用であって、前記機能性消化管疾患が、中枢介在性腹痛障害:中枢介在性腹痛症候群および/またはオピオイド誘発性胃腸痛覚過敏である、使用である。
【0070】
より好ましくは、有効量の式Iの化合物を含む医薬組成物または有効量の式Iの化合物を含む最終剤形の、機能性消化管疾患の治療または予防のための、使用であって、前記機能性消化管疾患が、胆嚢およびオッジ括約筋障害:胆管痛、機能性胆嚢障害、機能性胆管オッジ括約筋障害、および/または機能性膵臓オッジ括約筋障害である、使用である。
【0071】
より好ましくは、有効量の式Iの化合物を含む医薬組成物または有効量の式Iの化合物を含む最終剤形の、機能性消化管疾患の治療または予防のための、使用であって、前記機能性消化管疾患が、独立して進行するものと、胆石症、胆嚢炎、胆管炎、様々な原因の胆汁鬱滞性肝疾患、非アルコール性およびアルコール性脂肪肝疾患(任意の線維症段階を有する脂肪性肝炎を含む)、急性および慢性形態の膵炎、胆汁逆流性胃炎および逆流性食道炎、および/または胆嚢摘出後症候群を含む、胆嚢および胆道、膵臓に対する外科的介入後の状態の背景で進行するものと、の両方である、使用である。
【0072】
以下に、本発明を例示するが限定するものではない、本発明の例示的な実施形態を説明する。
【0073】
〔機器・化学〕
1H NMRスペクトルは、Bruker Avance III 400MHz UltraShield Plus Instrumentで取得した。化学シフト(ppm)を、1H NMRスペクトルにおける溶媒残留シグナルに対して決定した:CHCl3について7.26ppm、DMSO-d5について2.50ppm。
【0074】
メルクプレート(シリカゲル60 F254)上で、TLC法を用いて、生成物の反応の完全性、Rf値、および純度を制御した。検出は、UVランプを用いて行った。
【0075】
カラムクロマトグラフィー法による混合物の分離には、Macherey-Nagelシリカゲル60(0.063~0.210mm)を用いた。融解温度は、油浴および水銀温度計を使用して、開放キャピラリー中で測定した。
【0076】
式Iの化合物を合成するために、市販の化学物質を使用した:Py*SO3錯体(Alfa Aesar)、7-ヒドロキシ-4-メチル-2H-クロメン-2-オン(BLD Pharmatech)、[2-(ジメチルアミノ)-2-フェニルブチル]-3,4,5-トリメトキシベンゾエート(TCI)。
【0077】
〔実施例1.式Iの化合物の合成〕
式Iの化合物の合成は、多段階プロセスである。
【0078】
4-メチル-2-オキソ-2H-クロメン-7-イルサルフェートナトリウムを、7-ヒドロキシ-4-メチル-2H-クロメン-2-オンから製造した[5]。
【0079】
【0080】
ピリジン中クマリン溶液にPy*SO3を加えて、得られた反応混合物を、室温で1日間攪拌して保持した。次に、回転気化器で反応混合物からピリジンの大部分を除去し、残渣をMeOHに溶解し、塩基性溶液にMeOH中1M NaOH溶液を加え、その後、沈殿物を形成した。沈殿物を濾過し、MeOHで洗浄した。次に、この溶液からEt2Oを再結晶し、大気中に保持して乾燥させた。さらに精製するために、塩を氷冷水中で粉砕し、無色の結晶が形成されるまでオーブン中にて40℃で乾燥させた。1Н NMR(400 MHz、DMSO-d6)δ 2.41(d、J=1.3Hz、3H)、6.26(d、J=1.3Hz、1H)、7.16-7.20(m、2H)7.69(d、J=8.6 Hz、1Н)。
【0081】
この塩を、[2-(ジメチルアミノ)-2-フェニルブチル]-3,4,5-トリメトキシベンゾエートで予め飽和させたIR-120イオン交換樹脂上でイオン交換に供し、樹脂表面上に[2-(ジメチルアミノ)-2-フェニルブチル]-3,4,5-トリメトキシベンゾエートのプロトン化形態を形成した。その構造において、樹脂は、芳香族スルホン酸基(ベンゼンスルホン酸について、pKa=-(2.8))を含むスチレンおよびジビニルベンゼン共重合生成物であるので、[2-(ジメチルアミノ)-2-フェニルブチル]-3,4,5-トリメトキシベンゾエートポリマーの飽和はかなり容易であった。撹拌しながら、IR-120(H)上でMeOH中にアミンの溶液を長期間保持することによって、アミンを適用した。
【0082】
[2-(ジメチルアミノ)-2-フェニルブチル]-3,4,5-トリメトキシベンゾエートでイオン交換樹脂を飽和させた後、硫酸モノエステルのナトリウム塩のアルコール溶液(MeOH溶媒)をそれに通した。
【0083】
イオン交換後、反応混合物を水中で粉砕した。形成された水不溶性残渣を35℃で乾燥し、室温に冷却すると、無色の塊が形成され、これはスパチュラで容易に粉砕されて無色の結晶性沈殿物となった。沈殿物スペクトルは、硫酸エステルのアニオンとプロトン化形態の[2-(ジメチルアミノ)-2-フェニルブチル]-3,4,5-トリメトキシベンゾエートとのシグナルのセットのみであった。1H NMR(400MHz、DMSO-d6)δ 0.75(t、J=7.2Hz、3H)、2.23-2.47(m、5H)、2.67(br、3H)、2.85(br、3H)、3.75(s、3Н)、3.82(s、6Н)、4.89(d、J=13.5Hz、1H)、5.25(d、J=13.5Hz、1H)、6.24(s、1H)、7.16-7.23(m、4H)、7.49-7.60(m、3H)、7.62-7.70(m、3H)、9.63(br、1H)。
【0084】
以下の実施例は、式Iの新規化合物の薬理学的活性を示す。
【0085】
表1は、導入された活性成分およびプラセボの量によって形成された試験群を示す。
【0086】
示された投与量は、ヒトについて再計算されている。
【0087】
【0088】
〔実施例2.内臓痛感知モデルにおける式Iの化合物の影響の研究〕
実験では、C57 BL/6系統の13週齢の雄マウスを使用した。60匹の動物を、投与された化合物の投与量によって特徴付けられる同数(N=15)の4群に無作為に分配した。
【0089】
本研究は、式Iの化合物の、3つの異なる投与量について行った。担体(デンプン溶液)のみを投与されたマウスの群を、対照群(プラセボ群)とした。
【0090】
イソフルランで麻酔したマウスの肛門に3cm導入したポリエチレンカテーテルを通して、0.1mLのTNBS(トリニトロベンゼンスルホネート)(30%EtOH中130μg/mL)を大腸に導入することによって、大腸炎を誘導した。その後、マウスを個別に配置し、体重、様子および行動の変化を毎日観察した。粘膜構造、細胞浸潤、腸腺窩膿瘍、および杯細胞の組織学的研究は、3日目におけるTNBS導入によって有意な程度で引き起こされる、有意な損傷を7日目に確認した[6]。
【0091】
調製物を、TNBS導入の3日後に経口的に導入し、次いで、研究期間全体にわたって1日1回導入した。
【0092】
疼痛行動を評価するために、TNBS導入後28日目に、フィラメント(機械的異痛症の出現)を用いてvon Frey試験を行った。
【0093】
底部の金網によって地面から持ち上げられた、アクリルチャンバ(15×15×15cm)に、動物を入れた。試験を開始する前に、順応のために5~10分間、動物をチャンバに放置した。次いで、動物の腹腔をvon Frey較正されたフィラメント(または繊維)(BIOSEB、USA)で刺激した。フィラメントは、直径が増加する、10本の標準的なプラスチック繊維のセットであった。繊維を曲げるのに必要な最小力として表される繊維剛性は、このような較正において対数的に増加し、絶対値は0.6gから26gであった。各マウスの感度閾値を、3回の反復で決定した(各フィラメントについて、10秒の間隔で合計6回のタッチ;異なるフィラメントでの連続するタッチの間隔は2分であった)。腹部表面を、繊維を曲げるのに必要な力で突き、繊維をその位置に6~8秒間保持した。触れている間に動物が急激にたじろいだ場合に、陽性反応が記録された。感度閾値は、ウィンチング反射反応(6回のタッチのうち4回)を引き起こす最小圧力によって決定された。
【0094】
各試験群(n=15)について、対応する試験で得られた平均スコアおよび各値の平均の標準誤差を計算した。
【0095】
【0096】
機械的異痛の指標は、式Iの化合物を投与された群において有意に低く、これは腹腔における慢性疼痛の治療のための本発明の化合物の有効な使用を証明する。
【0097】
〔文献〕
1.Nagasaki,M.;Komori,S.;Ohashi,H.Effect of trimebutine on voltage-activated calcium current in rabbit ileal smooth muscle cells.Br.J.Pharmacol.1993,110,399.
2.国際出願 WO 2013/134869 A1.
3.Fukuda,T.;Ohta,T.;Saeki,S.;Iwao,M.Divergent synthesis of lamellarin α 13-sulfate,20-sulfate,and 13,20-disulfate.Heterocycles 2010, 80,841.
4.Berge S.M.,Bighley L.D.,Monkhouse D.C.:“Pharmaceutical Salts”//Journal of Pharmaceutical Sciences,V.66,#1,1977,pp.1-19.
5.特許 US 6921776 B1.
6.de Araujo AD et al.Selenoether oxytocin analogues have analgesic properties in a mouse model of chronic abdominal pain//Nature Communications,2014,5,3165.
7.Hiroshi et al.Biliary spasmolytic action of 3-(2,4,5-trieyjoxybenzoyl)propionic acid(aa-149)in dogs,Europ.J.of Pharm.,1978,v.48,pp.:309-317;
8.Satoh H.et al.,Relaxing action of trepibutone(AA-149),Japan.J.Pharmacol.,1981,v.31,pp.587-592.