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特許7433499マルチインバータ並列自己適応制御方法、装置及びマルチインバータ並列システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】マルチインバータ並列自己適応制御方法、装置及びマルチインバータ並列システム
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/493 20070101AFI20240209BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20240209BHJP
【FI】
H02M7/493
H02M7/48 E
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023083499
(22)【出願日】2023-05-19
【審査請求日】2023-05-24
(31)【優先権主張番号】202210924527.8
(32)【優先日】2022-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523187376
【氏名又は名称】深▲せん▼市徳蘭明海新能源股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHENZHEN POWEROAK NEWENER CO.,LTD
【住所又は居所原語表記】F19,BLD NO.1, Kaidaer,Tongsha Rd No.168, Xinwei Community, Xili Street,Nanshan,Shenzhen, Guangdong 518000 China
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】馬輝
(72)【発明者】
【氏名】倉文涛
(72)【発明者】
【氏名】尹相柱
(72)【発明者】
【氏名】郭志華
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第113285486(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第113258602(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第112398173(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第112366967(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109167371(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105429170(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105226727(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104868500(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/493
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスター制御インバータユニット及びスレーブ制御インバータユニットが出力する状態情報を取得することと、
前記状態情報に応じて、各インバータユニットが出力する有効電力及び平均有効電力を算出することと、
各前記インバータユニットが出力する有効電力と前記平均有効電力との偏差に応じて、各前記インバータユニットが出力する参照電圧を調節することと、
調節された前記参照電圧に基づいて、各前記インバータユニットが出力する状態情報を再び取得し、前記マスター制御インバータユニットと前記スレーブ制御インバータユニットの電圧成分の差分値及び電流成分の差分値を計算することと、
前記電圧成分の差分値に応じて前記スレーブ制御インバータユニットの仮想的な電気抵抗を調節し前記電流成分の差分値に応じて前記スレーブ制御インバータユニットの仮想的な誘導性リアクタンスを調節して、スレーブ制御インバータユニットの出力インピーダンスと前記マスター制御インバータユニットの出力インピーダンスを整合させるようにすることと、を含み、
前記仮想的な電気抵抗R の表現式は、以下の通りであり:
前記仮想的な誘導性リアクタンスX の表現式は、以下の通りであり:
ここで、前記参照電圧の計算式は、以下の通りであり:
ここで、ΔU はd軸電圧成分の差分値であり、ΔI はd軸電流成分の差分値であり、k pr は前記d軸電圧成分の差分値の調節割合であり、k ir は前記d軸電圧成分の差分値の積分係数であり、k px は前記d軸電流成分の差分値の調節割合であり、k ix は前記d軸電流成分の差分値の積分係数であり、は定格電圧振幅であり、kpuは前記偏差の割合であり、kiuは前記偏差の積分係数であり、Paverageは前記マスター制御インバータユニットとスレーブ制御インバータユニットの平均有効電力であり、Pは前記各インバータユニットの出力有効電力であり、i=1、2である、ことを特徴とするマルチインバータ並列自己適応制御方法。
【請求項2】
前記状態情報は各インバータユニットの出力電圧と出力電流を含み、上記した前記状態情報に応じて、各インバータユニットが出力する有効電力及び平均有効電力を算出するステップは、
前記出力電圧と前記出力電流をパーク変換することにより、前記出力電圧のq、d軸成分及び前記出力電流のd、q軸成分を取得し、ここで、前記出力電圧に基づくパーク変換表現式は、以下の通りであり:
ここで、uは各インバータユニットの出力電圧であり、ui,delayはuが4分の1の電力周波数周期遅延した電圧信号であり、Ui,dはuのd軸成分であり、Ui,qはuのq軸成分であり、θは前記マスター制御インバータユニットまたは前記スレーブ制御インバータユニットの出力電圧の位相角であり、
前記出力電流に基づくパーク変換表現式は、以下の通りであり:
ここで、iは各インバータユニットの出力電流であり、ii,delayはiが4分の1の電力周波数周期遅延した電流信号であり、Ii,dはiのd軸成分であり、Ii,qはiのq軸成分であることと、
前記出力電圧のd、q軸成分と前記出力電流のd、q軸成分に基づいて、各インバータユニットの出力有効電力と平均有効電力を計算し、ここで、前記各インバータユニットの出力有効電力と前記平均有効電力の計算式は、以下の通りであり:
ここで、Pは前記各インバータユニットの出力有効電力であり、i=1、2であり、Paverageは前記マスター制御インバータユニットとスレーブ制御インバータユニットの平均有効電力であることと、を含むことを特徴とする請求項1に記載のマルチインバータ並列自己適応制御方法。
【請求項3】
上記した前記マスター制御インバータユニットと前記スレーブ制御インバータユニットの電圧成分の差分値及び電流成分の差分値を計算することは、
前記電流成分の差分値及び電圧成分の差分値の表現式は、
ここで、ΔIはd軸電流成分の差分値であり、I2,dは前記スレーブ制御インバータユニットの出力電流のd軸成分であり、I1,dは前記マスター制御インバータユニットの出力電流のd軸成分であり、ΔUはd軸電圧成分の差分値であり、U2,dは前記スレーブ制御インバータユニットの出力電圧のd軸成分であり、U1,dは前記マスター制御インバータユニットの出力電圧のd軸成分であること、を含むことを特徴とする請求項1に記載のマルチインバータ並列自己適応制御方法。
【請求項4】
前記仮想的な電気抵抗Rの表現式は、以下の通りであり:
ここで、T はサンプリング周期であり、
前記仮想的な誘導性リアクタンスXの表現式は、以下の通りである:
と、を特徴とする請求項3に記載のマルチインバータ並列自己適応制御方法。
【請求項5】
上記したマスター制御インバータユニット及びスレーブ制御インバータユニットが出力する状態情報を取得するステップの前に、
前記マスター制御インバータユニット及び前記スレーブ制御インバータユニットに、それぞれ電圧位相角が同じ初期電圧を入力することをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のマルチインバータ並列自己適応制御方法。
【請求項6】
前記方法は、
各前記インバータユニットの出力有効電力と平均有効電力との偏差に応じて、各インバータユニットが出力する参照電圧を調節するとき、前記マスター制御インバータユニットの参照電圧目標値は、
ここで、U1,drefは前記マスター制御インバータユニットのd軸電圧成分であり、U1,qrefは前記マスター制御インバータユニットのq軸電圧成分であり、Uは定格電圧振幅であり、kpuは前記偏差の割合であり、kiuは前記偏差の積分係数であり、Paverageは前記マスター制御インバータユニットとスレーブ制御インバータユニットの平均有効電力であり、Pは前記マスター制御インバータユニットの出力有効電力であることと、
スレーブ制御インバータユニットの出力有効電力と平均有効電力による偏差の調節及び仮想的なインピーダンスの自己適応調節において、前記スレーブ制御インバータユニットの参照電圧目標値は、
ここで、U2,drefは前記スレーブ制御インバータユニットのd軸電圧成分であり、U2,qrefは前記スレーブ制御インバータユニットのq軸電圧成分であり、Pは前記スレーブ制御インバータユニットの出力有効電力であり、I2,dは前記スレーブ制御インバータユニットのd軸電流成分であり、I2,qは前記スレーブ制御インバータユニットのq軸電流成分であり、Rは前記スレーブ制御インバータユニットの仮想的な電気抵抗であり、Xは前記スレーブ制御インバータユニットの仮想的な誘導性リアクタンスであることと、をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のマルチインバータ並列自己適応制御方法。
【請求項7】
マスター制御インバータユニット及びスレーブ制御インバータユニットが出力する状態情報を取得するための取得モジュールと、
前記状態情報に応じて、各インバータユニットが出力する有効電力及び平均有効電力を算出するための第1の計算モジュールと、
各前記インバータユニットが出力する有効電力と前記平均有効電力との偏差に応じて、各前記インバータユニットが出力する参照電圧を調節するための参照電圧調節モジュールと、
調節された前記参照電圧に基づいて、各前記インバータユニットが出力する状態情報を再び取得し、前記マスター制御インバータユニットと前記スレーブ制御インバータユニットの電圧成分の差分値及び電流成分の差分値を計算するための第2の計算モジュールと、
前記電圧成分の差分値に応じて前記スレーブ制御インバータユニットの仮想的な電気抵抗を調節し前記電流成分の差分値に応じて前記スレーブ制御インバータユニットの仮想的な誘導性リアクタンスを調節して、スレーブ制御インバータユニットの出力インピーダンスと前記マスター制御インバータユニットの出力インピーダンスを整合させるようにするための自己適応調節モジュールと、を含み、
前記仮想的な電気抵抗R の表現式は、以下の通りであり:
前記仮想的な誘導性リアクタンスX の表現式は、以下の通りであり:
ここで、前記参照電圧の計算式は、以下の通りであり:
ここで、ΔU はd軸電圧成分の差分値であり、ΔI はd軸電流成分の差分値であり、k pr は前記d軸電圧成分の差分値の調節割合であり、k ir は前記d軸電圧成分の差分値の積分係数であり、k px は前記d軸電流成分の差分値の調節割合であり、k ix は前記d軸電流成分の差分値の積分係数であり、は定格電圧振幅であり、kpuは前記偏差の割合であり、kiuは前記偏差の積分係数であり、Paverageは前記マスター制御インバータユニットとスレーブ制御インバータユニットの平均有効電力であり、Pは前記各インバータユニットの出力有効電力であり、i=1、2である、ことを特徴とするマルチインバータ並列自己適応制御装置。
【請求項8】
マルチインバータ並列システムであって、
少なくとも1つのマスター制御インバータユニットと、
少なくとも1つのスレーブ制御インバータユニットと、及び
少なくとも1つのプロセッサと、前記少なくとも1つのプロセッサと通信接続されるメモリを含む制御ユニットと、を備え、ここで、前記メモリは、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行可能な指令を記憶しており、前記指令が前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されることにより、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法を前記少なくとも1つのプロセッサが実行できるようにすることを、特徴とする前記マルチインバータ並列システム。
【請求項9】
コンピュータ実行可能指令が記憶されている非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体であって、前記コンピュータ実行可能指令が請求項1~6のいずれか一項に記載の方法をコンピュータに実行させるためのものであることを特徴とする非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマイクログリッド技術分野に関し、特にマルチインバータ並列自己適応制御方法、装置及びマルチインバータ並列システムに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクログリッド技術分野では、通常、マルチインバータ並列によってマイクログリッドの電力容量、柔軟性及びシステム冗長度を高めるが、マルチインバータ並列システムにおいて、どのように電力の正確な分配を実現するかが早急に解決すべき技術的問題である。
【0003】
従来技術では、並列的に運転するインバータはドループ制御を採用して電力の合理的な分配を実現することが多いが、その分配精度は物理パラメータの影響を受ける。そして、インバータの等価インピーダンス、接続線の線路インピーダンス(総称して出力インピーダンスという)などの不確定性により、インバータ並列システムの出力電力の分配がアンバランスになり、循環電流が過大になる。
【発明の概要】
【0004】
本発明に係る実施例は、主にマルチインバータ並列自己適応制御方法、装置及びマルチインバータ並列システムを提供し、主に従来技術においてマルチインバータ並列システムにおける電力の分配がアンバランスになり、循環電流が過大になる技術的問題を解決する。
【0005】
前記技術的問題を解決するために、本発明に係る実施形態が採用する一つの技術試案は、以下の通りであり:
マスター制御インバータユニット及びスレーブ制御インバータユニットが出力する状態情報を取得することと、
前記状態情報に応じて、各インバータユニットが出力する有効電力及び平均有効電力を算出することと、
各前記インバータユニットが出力する有効電力と前記平均有効電力との偏差に応じて、各前記インバータユニットが出力する参照電圧を調節することと、
調節された前記参照電圧に基づいて、各前記インバータユニットが出力する状態情報を再び取得し、前記マスター制御インバータユニットと前記スレーブ制御インバータユニットの電圧成分の差分値及び電流成分の差分値を計算することと、
前記電圧成分の差分値及び前記電流成分の差分値に応じて、前記スレーブ制御インバータユニットの仮想的なインピーダンスを自己適応的に調節して、スレーブ制御インバータユニットの出力インピーダンスと前記マスター制御インバータユニットの出力インピーダンスを整合させるようにすることと、を含むマルチインバータ並列自己適応制御方法を提供する。
【0006】
任意的に、前記状態情報は各インバータユニットの出力電圧と出力電流を含み、上記した前記状態情報に応じて、各インバータユニットが出力する有効電力及び平均有効電力を算出するステップは、
前記出力電圧と前記出力電流をパーク変換することにより、前記出力電圧のq、d軸成分及び前記出力電流のd、q軸成分を取得し、ここで、前記出力電圧に基づくパーク変換表現式は、以下の通りであり:
ここで、uは各インバータユニットの出力電圧であり、ui,delayはuが4分の1の電力周波数周期遅延した電圧信号であり、Ui,dはuのd軸成分であり、Ui,qはuのq軸成分であり、
前記出力電流に基づくパーク変換表現式は、以下の通りであり:
ここで、iは各インバータユニットの出力電流であり、ii,delayはiが4分の1の電力周波数周期遅延した電流信号であり、Ii,dはiのd軸成分であり、Ii,qはiのq軸成分であることと、
前記出力電圧のd、q軸成分と前記出力電流のd、q軸成分に基づいて、各インバータユニットの出力有効電力と平均有効電力を計算し、ここで、前記各インバータユニットの出力有効電力と前記平均有効電力の計算式は、以下の通りであり:
ここで、Pは前記各インバータユニットの出力有効電力であり、i=1、2である;Paverageは前記マスター制御インバータユニットとスレーブ制御インバータユニットの平均有効電力であることと、を含む。
【0007】
任意的に、前記参照電圧の計算式は、以下の通りであり:
ここで、Uは定格電圧振幅であり、kpuは前記偏差の割合であり、kiuは前記偏差の積分係数であり、Paverageは前記マスター制御インバータユニットとスレーブ制御インバータユニットの平均有効電力であり、Pは前記各インバータユニットの出力有効電力であり、i=1、2である。
【0008】
任意的に、上記した前記マスター制御インバータユニットと前記スレーブ制御インバータユニットの電圧成分の差分値及び電流成分の差分値を計算することは、
前記電流成分の差分値及び電圧成分の差分値の表現式は、
ここで、ΔIはd軸電流成分の差分値であり、I2,dは前記スレーブ制御インバータユニットの出力電流のd軸成分であり、I1,dは前記マスター制御インバータユニットの出力電流のd軸成分であり、ΔUはd軸電圧成分の差分値であり、U2,dは前記スレーブ制御インバータユニットの出力電圧のd軸成分であり、U1,dは前記マスター制御インバータユニットの出力電圧のd軸成分であること、を含む。
【0009】
任意的に、前記仮想的なインピーダンスは、仮想的な電気抵抗及び仮想的な誘導性リアクタンスを含み、
前記仮想的な電気抵抗Rの表現式は、以下の通りであり:
ここで、kprは前記d軸電圧成分の差分値の調節割合であり、kirは前記d軸電圧成分の差分値の積分係数であり、Tはサンプリング周期であり、
前記仮想的な誘導性リアクタンスXの表現式は、以下の通りであり:
ここで、kpxは前記d軸電流成分の差分値の調節割合であり、kixは前記d軸電流成分の差分値の積分係数である。
【0010】
任意的に、上記したマスター制御インバータユニット及びスレーブ制御インバータユニットが出力する状態情報を取得するステップの前に、
前記マスター制御インバータユニット及び前記スレーブ制御インバータユニットに、それぞれ電圧位相角が同じ初期電圧を入力することをさらに含む。
【0011】
任意的に、前記方法は、
各前記インバータユニットの出力有効電力と平均有効電力との偏差に応じて、各インバータユニットが出力する参照電圧を調節するとき、前記マスター制御インバータユニットの参照電圧目標値は、
ここで、U1,drefは前記マスター制御インバータユニットのd軸電圧成分であり、U1,qrefは前記マスター制御インバータユニットのq軸電圧成分であり、Uは定格電圧振幅であり、kpuは前記偏差の割合であり、kiuは前記偏差の積分係数であり、Paverageは前記マスター制御インバータユニットとスレーブ制御インバータユニットの平均有効電力であり、Pは前記マスター制御インバータユニットの出力有効電力であることと、
スレーブ制御インバータユニットの出力有効電力と平均有効電力による偏差の調節及び仮想的なインピーダンスの自己適応調節において、前記スレーブ制御インバータユニットの参照電圧目標値は、
ここで、U2,drefは前記スレーブ制御インバータユニットのd軸電圧成分であり、U2,qrefは前記スレーブ制御インバータユニットのq軸電圧成分であり、Pは前記スレーブ制御インバータユニットの出力有効電力であり、Rは前記スレーブ制御インバータユニットの仮想的な電気抵抗であり、Xは前記スレーブ制御インバータユニットの仮想的な誘導性リアクタンスであることと、をさらに含む。
【0012】
前記技術的問題を解決するために、本発明に係る実施形態が採用する他の技術試案は、以下の通りであり:
マスター制御インバータユニット及びスレーブ制御インバータユニットが出力する状態情報を取得するための取得モジュールと、
前記状態情報に応じて、各インバータユニットが出力する有効電力及び平均有効電力を算出するための第1の計算モジュールと、
各前記インバータユニットが出力する有効電力と前記平均有効電力との偏差に応じて、各前記インバータユニットが出力する参照電圧を調節するための参照電圧調節モジュールと、
調節された前記参照電圧に基づいて、各前記インバータユニットが出力する状態情報を再び取得し、前記マスター制御インバータユニットと前記スレーブ制御インバータユニットの電圧成分の差分値及び電流成分の差分値を計算するための第2の計算モジュールと;
前記電圧成分の差分値及び前記電流成分の差分値に応じて、前記スレーブ制御インバータユニットの仮想的なインピーダンスを自己適応的に調節して、スレーブ制御インバータユニットの出力インピーダンスと前記マスター制御インバータユニットの出力インピーダンスを整合させるようにするための自己適応調節モジュールと、を含むマルチインバータ並列自己適応制御装置を提供する。
【0013】
前記技術的問題を解決するために、本発明に係る実施形態が採用するさらに他の技術試案は、以下の通りであり:
マルチインバータ並列システムであって、
少なくとも1つのマスター制御インバータユニットと、
少なくとも1つのスレーブ制御インバータユニットと、及び
少なくとも1つのプロセッサと、前記少なくとも1つのプロセッサと通信接続されるメモリを含む制御ユニットと、を備え、ここで、前記メモリは、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行可能な指令を記憶しており、前記指令が前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されることにより、上記のような方法を前記少なくとも1つのプロセッサが実行できるようにする、前記マルチインバータ並列システムを提供する。
【0014】
前記技術的問題を解決するために、本発明に係る実施形態が採用するさらに他の技術試案は、以下の通りであり:
コンピュータ実行可能指令が記憶されている非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体であって、前記コンピュータ実行可能指令が上記のような方法をコンピュータに実行させるためのものである、非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を提供する。
【0015】
関連技術の場合とは異なり、本発明に係る実施例は、マルチインバータ並列自己適応制御方法、装置及びマルチインバータ並列システムを提供し、主にマスター制御インバータユニット及びスレーブ制御インバータユニットが出力する状態情報を取得し、そして前記状態情報に応じて各インバータユニットが出力する有効電力及び平均有効電力を算出して、各前記インバータユニットが出力する有効電力と前記平均有効電力との偏差に応じて、各前記インバータユニットが出力する参照電圧を調節することにより、前記マスター制御インバータユニットと前記スレーブ制御インバータユニットの出力有効電力を均等に分配する。次に、調節された前記参照電圧に基づいて、各前記インバータユニットが出力する状態情報を再び取得し、前記マスター制御インバータユニットと前記スレーブ制御インバータユニットの電圧成分の差分値及び電流成分の差分値を計算し、そして前記電圧成分の差分値及び前記電流成分の差分値に応じて前記スレーブ制御インバータユニットの仮想的なインピーダンスを自己適応的に調節して、スレーブ制御インバータユニットの出力インピーダンスと前記マスター制御インバータユニットの出力インピーダンスを整合させるようにして、計算量を減らし、調節速度を上げると同時に、前記マスター制御インバータユニットと前記スレーブ制御インバータユニットの無効電力を均等に分配し、さらにマルチインバータ並列システムにおける循環電流を低減することを実現する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
1つまたは複数の実施例は、その対応する図面によって例示的に説明され、それらの例示的な説明は実施例に対する限定を構成するものではなく、図面において、同じ参照数字ラベルを有する要素は類似的な要素であることを表し、特に断らない限り、図面中の図はスケールを制限しない。
図1】本発明に係る実施例によって提供されるマルチインバータ並列システムの模式図である。
図2】本発明に係る実施例によって提供されるマルチインバータ並列システムの等価模式図である。
図3】本発明に係る実施例によって提供される制御ユニットの構成模式図である。
図4】本発明に係る実施例によって提供されるマルチインバータ並列自己適応制御方法の方法フロー図である。
図5a】本発明に係る実施例によって提供される各インバータユニットの出力有効電力の結果図である。
図5b】本発明に係る実施例によって提供される各インバータユニットの出力無効電力の結果図である。
図6a】本発明に係る実施例によって提供されるマスター制御インバータユニットの制御ロジックの模式図である。
図6b】本発明に係る実施例によって提供されるスレーブ制御インバータユニットの制御ロジックの模式図である。
図7】本発明に係る実施例によって提供されるマルチインバータ並列自己適応制御装置の構成ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の目的、技術試案及び利点をより明らかにするために、以下、本発明を図面及び実施例に基づいてさらに詳細に説明する。ここに記載されている具体的な実施例は本発明を説明するためだけに使用されており、本発明を限定するために使用されるものではないことを理解されたい。
【0018】
なお、本発明に係る実施例における各特徴は、衝突しない場合、互いに組み合わせることができ、いずれも本発明による保護範囲内にある。また、装置の模式図において、機能モジュールの分割を行って、かつフローチャートに論理的な手順を示したが、いくつかの場合には、装置の模式図におけるモジュールの分割、あるいはフローチャートにおける手順と異なる分割、あるいは手順で、示されるあるいは説明されるステップを実行してもよい。
【0019】
特に定義されない限り、本明細書で用いられるすべての技術用語および科学用語は、本発明の技術分野に属する技術者によって一般的に理解される意味と同じである。本発明の明細書で用いられる用語は、具体的な実施形態を説明するためのものだけであり、本発明を制限するためのものではない。本明細書で用いられる用語「及び/又は」は、関連するリスト項目のうちの1つまたは複数の任意の及びすべての組み合わせを含む。
【0020】
図1は、本発明に係る実施例によって提供されるマルチインバータ並列システムの模式図であり、前記マルチインバータ並列システム300は、少なくとも1つのマスター制御インバータユニット31と、少なくとも1つのスレーブ制御インバータユニット32と、制御ユニット33とを備える。前記マスター制御インバータユニット31は、前記スレーブ制御インバータユニット32と並列接続され、前記マスター制御インバータユニット31と前記スレーブ制御インバータユニット32は、それぞれ前記制御ユニット33と通信接続され、前記マスター制御インバータユニット31と前記スレーブ制御インバータユニット32は、さらに負荷200と接続される。ここで、前記制御ユニット33は、前記マスター制御インバータユニット31と前記スレーブ制御インバータユニット32の作動を制御するとともに、出力状態の変数に応じて前記マスター制御インバータユニット31と前記スレーブ制御インバータユニット32の参照電圧、及び前記スレーブ制御インバータユニット32の仮想的なインピーダンスをリアルタイムで調節するためのものであり、これにより、前記マスター制御インバータユニット31と前記スレーブ制御インバータユニット32から前記負荷200へ出力される出力有効電力を均等に分配するとともに無効電力をも均等に分配するようにする。
【0021】
具体的には、図2を参照してください。図2は、本発明に係る実施例によって提供されるマルチインバータ並列システムの等価模式図であり、図2に示すように、ここで、U∠δ、U∠δはそれぞれ前記マスター制御インバータユニットと前記スレーブ制御インバータユニットの出力電圧であり、、はそれぞれ前記マスター制御インバータユニットと前記スレーブ制御インバータユニットの出力電流であり、jX+R、jX+Rはそれぞれ前記マスター制御インバータユニットと前記スレーブ制御インバータユニットのインピーダンスであり、P、Pはそれぞれ前記マスター制御インバータユニットと前記スレーブ制御インバータユニットの有効電力であり、Q、Qはそれぞれ前記マスター制御インバータユニットと前記スレーブ制御インバータユニットの無効電力であり、VPCC∠0°は並列点の端子電圧であり、RLoadは共通端の負荷である。
【0022】
図3は、本発明に係る実施例によって提供される制御ユニットの構成模式図であり、前記制御ユニット33は、少なくとも1つのプロセッサ331(図3では1つのプロセッサ331を例にとる)と;前記少なくとも1つのプロセッサ331と通信接続されるメモリ332(図3ではバスで接続することを例にとる)と、を備える。
【0023】
ここで、前記メモリ332は、前記少なくとも1つのプロセッサ331によって実行可能な指令を記憶しており、前記指令が前記少なくとも1つのプロセッサ331によって実行されることにより、下記のマルチインバータ並列自己適応制御方法を前記少なくとも1つのプロセッサ331が実行できるようにする。
【0024】
メモリ332は、一つのコンピュータ読み取り可能な不揮発性記憶媒体として、本発明に係る実施例におけるマルチインバータ並列自己適応制御方法に対応するプログラム指令/モジュールのような、不揮発性ソフトウェアプログラム、コンピュータ実行可能な不揮発性プログラム及びモジュールを記憶することに用いられることができる。プロセッサ331は、メモリ322に記憶される不揮発性ソフトウェアプログラム、指令及びモジュールを実行することによって、制御ユニット33の各種の機能アプリ及びデータ処理を実行し、即ち、下記の方法に係る実施例におけるマルチインバータ並列自己適応制御方法を実現する。
【0025】
メモリ332は、プログラム記憶領域とデータ記憶領域を含んでもよく、ここで、プログラム記憶領域には、システム、少なくとも1つの機能を取り扱うために必要であるアプリプログラムを記憶できる。また、メモリ332は、高速ランダムアクセスメモリを含んでもよく、不揮発性メモリを含んでもよい。例えば、少なくとも1つの磁気ディスクメモリデバイス、フラッシュメモリデバイス、又は他の不揮発性固体メモリデバイスを含む。いくつかの実施例においては、メモリ332は、オプションとしてプロセッサ331に対して遠隔に設置されるメモリを含む。
【0026】
前記1つ又は複数のモジュールは前記メモリ332に記憶され、前記1つ又は複数のプロセッサ331によって実行される時に、下記のいずれの方法に係る実施例におけるマルチインバータ並列自己適応制御方法を実行し、例えば、以下に説明される図4における方法ステップを実行して、図7における各モジュールの機能を実現する。
【0027】
前記マルチインバータ並列システムは、本発明に係る実施例によって提供される方法を実行でき、方法の実行に対応する機能モジュールを備える。本実施例において詳細に説明しない技術細部については、本発明に係る実施例によって提供される方法を参照できる。
【0028】
図4を参照してください。図4は、本発明に係る実施例によって提供されるマルチインバータ並列自己適応制御方法の方法フロー図であり、図4に示すように、前記方法は、以下のことを含む。
【0029】
S11、マスター制御インバータユニット及びスレーブ制御インバータユニットが出力する状態情報を取得する。
前記状態情報は、マスター制御インバータユニットの出力電圧、出力電流と出力電圧の位相角、及びスレーブ制御インバータユニットの出力電圧、出力電流と出力電圧の位相角を含む。ここで、前記スレーブ制御インバータユニットとマスター制御インバータユニットの出力電圧の位相角は同じである。
【0030】
いくつかの実施例では、前記マスター制御インバータユニットと前記スレーブ制御インバータユニットが作動する前に、前記スレーブ制御インバータユニットと前記マスター制御インバータユニットが作動を開始するようにために、前記制御ユニットは、前記スレーブ制御インバータユニットと前記マスター制御インバータユニットに初期電圧を入力する必要がある。そして、前記マスター制御インバータユニットと前記スレーブ制御インバータユニットの作動中に、前記制御ユニットは、前記スレーブ制御インバータユニットと前記マスター制御インバータユニットの出力状態の情報を収集する。ここで、前記スレーブ制御インバータユニットと前記マスター制御インバータユニットの初期電圧の位相角は同じである。
【0031】
S12、前記状態情報に応じて、各インバータユニットが出力する有効電力及び平均有効電力を算出する。
具体的には、各インバータユニットが出力する有効電力は、マスター制御インバータユニットが出力する有効電力及びスレーブ制御インバータユニットが出力する有効電力である。まず、前記スレーブ制御インバータユニットと前記マスター制御インバータユニットの出力電圧及び出力電流をパーク変換することにより、前記スレーブ制御インバータユニット、前記マスター制御インバータユニットに対応するd、q軸電圧成分とd、q軸電流成分を得る。そして、前記マスター制御インバータユニットのd、q軸電圧成分とd、q軸電流成分に基づいて、前記マスター制御インバータユニットの出力有効電力を計算し、前記スレーブ制御インバータユニットのd、q軸電圧成分とd、q軸電流成分に基づいて、前記スレーブ制御インバータユニットの出力有効電力を計算する。最後に、前記マスター制御インバータユニットの出力有効電力と前記スレーブ制御インバータユニットの出力有効電力によって、平均有効電力を計算する。前記マスター制御インバータユニットと前記スレーブ制御インバータユニットの平均有効電力を計算することにより、前記スレーブ制御インバータユニットと前記マスター制御インバータユニットの出力有効電力を調節する際に、より迅速になり、前記マルチインバータ並列システムの調節速度を向上させる。
【0032】
前記パーク変換(Park's Transformation)は、同期電動機の運転を分析するための最も一般的な座標変換。前記パーク変換は、主に前記同期電動機におけるステータのa、b、cの三相の電流をロータに伴って回転する直軸(d軸)と、横軸(q軸)と、d、q平面に垂直なゼロ軸に投影することにより、ステータのインダクタンス行列に対する対角化を実現して、同期電動機の運転分析に簡略化の役割を果たす。つまり、abc座標系をdq座標系に変換する。さらに、前記パーク変換により、同期運転する前記マスター制御インバータユニットと前記スレーブ制御インバータユニットにおける正弦波電圧、正弦波電流をd、q座標系に変換して、前記マスター制御インバータユニットと前記スレーブ制御インバータユニットにおける電圧と電流の直流量を得る。
【0033】
具体的には、前記出力電圧に基づくパーク変換表現式は、以下の通りである:
ここで、uは各インバータユニットの出力電圧であり、ui,delayはuが4分の1の電力周波数周期遅延した電圧信号であり、Ui,dはuのd軸成分であり、Ui,qはuのq軸成分であり、θは前記マスター制御インバータユニットまたは前記スレーブ制御インバータユニットの出力電圧の位相角である。例えば、前記i=1であるとき、前記U1,dは前記マスター制御インバータユニットのd軸電圧成分であり、前記i=2であるとき、前記U2,dは前記スレーブ制御インバータユニットのd軸電圧成分である。
【0034】
前記出力電流に基づくパーク変換表現式は、以下の通りである:
ここで、iは各インバータユニットの出力電流であり、ii,delayはiが4分の1の電力周波数周期遅延した電流信号であり、Ii,dはiのd軸成分であり、Ii,qはiのq軸成分である。例えば、i=1であるとき、前記i1,dは前記マスター制御インバータユニットのd軸電流成分であり、i=2であるとき、前記i2,dは前記スレーブ制御インバータユニットのd軸電流成分である。
【0035】
前記出力電圧のd、q軸成分と前記出力電流のd、q軸成分に基づいて、各インバータユニットの出力有効電力と平均有効電力を計算し、ここで、前記計算式は、以下の通りである:
ここで、Pは前記各インバータユニットの出力有効電力であり、i=1、2である;Paverageは前記マスター制御インバータユニットとスレーブ制御インバータユニットの平均有効電力である。前記Pは前記マスター制御インバータユニットの出力有効電力であり、前記Pは前記スレーブ制御インバータユニットの出力有効電力である。
【0036】
S13.各前記インバータユニットが出力する有効電力と前記平均有効電力との偏差に応じて、各前記インバータユニットが出力する参照電圧を調節する。
前記マスター制御インバータユニットと前記スレーブ制御インバータユニットの出力有効電力及び平均有効電力を取得した後、前記マスター制御インバータユニットの出力有効電力と前記平均有効電力との偏差、及び前記スレーブ制御インバータユニットの出力有効電力と前記平均有効電力との偏差をそれぞれ計算する。ここで、前記出力有効電力と前記平均有効電力との偏差とは、前記出力有効電力と前記平均有効電力との差分値をという。例えば、前記マスター制御インバータユニットの電力偏差は、前記平均有効電力と前記マスター制御インバータユニットの出力有効電力との差分値である。
【0037】
前記スレーブ制御インバータユニットと前記マスター制御インバータユニットの定格電圧振幅を取得し、ここで、前記マスター制御インバータユニットの定格電圧振幅と前記スレーブ制御インバータユニットの定格電圧振幅とが同じである。そして、それぞれ前記マスター制御インバータユニットの電力偏差と前記スレーブ制御インバータユニットの電力偏差に基づいて、前記定格電圧振幅を調節して、前記マスター制御インバータユニットの第1の参照電圧と前記スレーブ制御インバータユニットの第2の参照電圧を得る。ここで、前記電力偏差によって前記定格電圧振幅を微調整することにより、前記マスター制御インバータユニットと前記スレーブ制御インバータユニットが調節された参照電圧に準じて作動するとき、前記マスター制御インバータユニットと前記スレーブ制御インバータユニットの出力有効電力が前記平均有効電力と等しくなり、さらに前記マルチインバータ並列システムの出力有効電力の正確な分配を実現する。
【0038】
具体的には、前記参照電圧の計算式は、以下の通りである:
ここで、Uは定格電圧振幅であり、kpuは前記偏差の割合であり、kiuは前記偏差の積分係数であり、Tはサンプリング周期であり、Paverageは前記マスター制御インバータユニットとスレーブ制御インバータユニットの平均有効電力であり、Pは前記各インバータユニットの出力有効電力であり、i=1、2である。
【0039】
ここで、図5aを参照してください。図5aは、本発明に係る実施例によって提供される各インバータユニットの出力有効電力の結果図である。図5aから分かるように、前記マスター制御インバータユニットと前記スレーブ制御インバータユニットが定常状態に入るとき、前記マスター制御インバータユニットと前記スレーブ制御インバータユニットの出力有効電力は等しい。
【0040】
S14.調節された前記参照電圧に基づいて、各前記インバータユニットが出力する状態情報を再び取得し、前記マスター制御インバータユニットと前記スレーブ制御インバータユニットの電圧成分の差分値及び電流成分の差分値を計算する。
具体的には、本実施例では、各インバータユニットが出力する有効電力と平均有効電力との偏差に応じて各インバータユニットが出力する参照電圧を調節するステップにおいて、参照電圧がリアルタイム調節の一つの過程に属するため、参照電圧を過渡状態から定常状態に調節する過程において、各インバータユニットが出力する状態情報をリアルタイムに収集し、前記マスター制御インバータユニットと前記スレーブ制御インバータユニットの電圧成分の差分値と電流成分の差分値をリアルタイムに計算する。
【0041】
前記電力偏差に応じて前記定格電圧振幅を調節して、前記第1の参照電圧と前記第2の参照電圧を得た後、前記第1の参照電圧を前記マスター制御インバータユニットに入力し、前記第2の参照電圧を前記スレーブ制御インバータユニットに入力することにより、前記マスター制御インバータユニットは前記第1の参照電圧に準じて作動し、前記スレーブ制御インバータユニットは前記第2の参照電圧に準じて作動する。そして、前記マスター制御インバータユニットと前記スレーブ制御インバータユニットが作動するとき、前記マスター制御インバータユニットの状態情報と前記スレーブ制御インバータユニットの状態情報を再び取得する。前記状態情報に応じて、前記マスター制御インバータユニットの出力電流、出力電圧と前記スレーブ制御インバータユニットの出力電流、出力電圧を再びパーク変換することにより、前記マスター制御インバータユニットと前記スレーブ制御インバータユニットに対応するd、q軸電圧成分、d、q軸電流成分を取得する。最後に、前記マスター制御インバータユニットと前記スレーブ制御インバータユニットのd軸電圧成分、d軸電流成分に基づいて、前記マスター制御インバータユニットと前記スレーブ制御インバータユニットの電圧成分の差分値及び電流成分の差分値を計算する。
【0042】
具体的には、前記電流成分の差分値及び電圧成分の差分値の表現式は、以下の通りである:
ここで、ΔIは前記d軸電流成分の差分値であり、I2,dは前記スレーブ制御インバータユニットの出力電流のd軸成分であり、I1,dは前記マスター制御インバータユニットの出力電流のd軸成分であり、ΔUは前記d軸電圧成分の差分値であり、U2,dは前記スレーブ制御インバータユニットの出力電圧のd軸成分であり、U1,dは前記マスター制御インバータユニットの出力電圧のd軸成分である。
【0043】
S15.前記電圧成分の差分値及び前記電流成分の差分値に応じて、前記スレーブ制御インバータユニットの仮想的なインピーダンスを自己適応的に調節して、スレーブ制御インバータユニットの出力インピーダンスと前記マスター制御インバータユニットの出力インピーダンスを整合させるようにする。
前記インバータ並列システムが前記参照電圧で作動するとき、前記スレーブ制御インバータユニットの線路インピーダンスに加える仮想的なインピーダンスを取得し、ここで、前記仮想的なインピーダンスは、前記インバータ並列システムの電力分配の不均一の問題を改善することができる。そして、前記電圧成分の差分値と前記電流成分の差分値に応じて、前記スレーブ制御インバータユニットの仮想的なインピーダンスを調節することにより、前記マスター制御インバータユニットと前記スレーブ制御インバータユニットの出力インピーダンスを整合させるようにして、前記マスター制御インバータユニットと前記スレーブ制御インバータユニットの無効電力が等しくなり、さらに電力を均等に分配する効果と調節速度を向上させる。
【0044】
具体的には、前記スレーブ制御インバータユニットの仮想的なインピーダンスは、仮想的な電気抵抗及び仮想的な誘導性リアクタンスを含み、前記電圧成分の差分値に応じて前記仮想的な電気抵抗を調節し、そして前記電流成分の差分値に応じて前記仮想的な誘導性リアクタンスを調節し、最後に前記仮想的な電気抵抗と前記仮想的な誘導性リアクタンスに基づいて、前記スレーブ制御インバータユニットと前記マスター制御インバータユニットの無効電力を均等に分配するようにする。
【0045】
ここで、前記仮想的な電気抵抗Rの表現式は、以下の通りである:
ここで、kprは前記d軸電圧成分の差分値の調節割合であり、kirは前記d軸電圧成分の差分値の積分係数であり、Tはサンプリング周期である;
前記仮想的な誘導性リアクタンスXの表現式は、以下の通りである:
ここで、kpxは前記d軸電流成分の差分値の調節割合であり、kixは前記d軸電流成分の差分値の積分係数である。
【0046】
ここで、図5bを参照してください。図5bは、本発明に係る実施例によって提供される各インバータユニットの出力無効電力の結果図である。図5bから分かるように、前記マスター制御インバータユニットと前記スレーブ制御インバータユニットが定常状態に入るとき、前記マスター制御インバータユニットと前記スレーブ制御インバータユニットの出力無効電力は等しい。
【0047】
いくつかの実施例では、前記マルチインバータ並列システムが定常状態に入るとき、積分器の入力がゼロになり、前記参照電圧計算式から、P=P=Paverageを得ることができ、従って、以下の式を得ることができる:
【0048】
マルチインバータ並列システムのデバイスのハードウェア特性のシフト、インバータとPCCの物理的な距離の違いなどの不確定要因により、2台のインバータの出力インピーダンスに大きな差があり、必然的にR≠R、X≠Xにつがなる。出力インピーダンスが不整合の場合、前記マルチインバータ並列システムが出力する無効電力の間にも大きな差がある。そして、前記無効電力を均等に分配するには、次式が成立することが求める:
【0049】
式(3)は以下のように書き換えられることができる:
【0050】
式(2)から以下の式を得ることができる:
【0051】
式(5)を式(4)に代入する:
【0052】
式(6)を簡略化して以下の式を得ることができる:
【0053】
以上の分析から、式(7)は、2台のインバータが出力有効電力の均等分配を満たすことを前提として、無効電力の均等分配を実現する条件であることがわかる。特に、スレーブ制御インバータユニットに自己適応的な仮想的なインピーダンスZ=R+jXを導入した後、RとXの値を適切に設定することにより、R+R=R、X+X=Xとなるようにし、これは、式(7)が成立する十分な条件の一つである。なお、前記式(1)から(7)は、ZとZの関係を証明するためのものであり、これにより、スレーブ制御インバータユニットに自己適応的な仮想的なインピーダンスZを導入することで無効電力Qの正確的な分配を実現できることが証明される。
【0054】
いくつかの実施例では、前記マスター制御インバータユニットと前記スレーブ制御インバータユニットの出力は正弦波であり、そして前記パーク変換に基づいて、前記マスター制御インバータユニットと前記スレーブ制御インバータユニットの正弦波をd、q軸に変換することにより、前記マスター制御インバータユニットと前記スレーブ制御インバータユニットの直流量を得て、そして前記直流量に基づいて、前記マスター制御インバータユニットと前記スレーブ制御インバータユニットの出力有効電力と平均有効電力を計算する。さらに、上記した各前記インバータユニットの出力有効電力と平均有効電力との偏差に基づいて各インバータユニットが出力する参照電圧を調節するとき、前記マスター制御インバータユニットの参照電圧目標値は、以下の通りである:
ここで、U1,drefは前記マスター制御インバータユニットのd軸電圧成分であり、U1,qrefは前記マスター制御インバータユニットのq軸電圧成分であり、Uは定格電圧振幅であり、kpuは前記偏差の割合であり、kiuは前記偏差の積分係数であり、Paverageは前記マスター制御インバータユニットとスレーブ制御インバータユニットの平均有効電力であり、Pは前記マスター制御インバータユニットの出力有効電力である;
前記スレーブ制御インバータユニットの参照電圧目標値は、以下の通りである:
ここで、U2,drefは前記スレーブ制御インバータユニットのd軸電圧成分であり、U2,qrefは前記スレーブ制御インバータユニットのq軸電圧成分であり、Pは前記スレーブ制御インバータユニットの出力有効電力であり、Rは前記スレーブ制御インバータユニットの仮想的な電気抵抗であり、Xは前記スレーブ制御インバータユニットの仮想的な誘導性リアクタンスである。
【0055】
いくつかの実施例では、図6aを参照してください。図6aは、本発明に係る実施例によって提供されるマスター制御インバータユニットの制御ロジックの模式図である。前記マスター制御インバータユニットの作動中に、前記マスター制御インバータユニットと前記スレーブ制御インバータユニットの平均有効電力から前記マスター制御インバータユニットの出力有効電力を差し引くことにより、前記平均有効電力と前記出力有効電力との偏差を得る。次に、前記偏差をPIコントローラーで演算し、演算した結果を前記マスター制御インバータユニットの定格電圧に加算することで、前記マスター制御インバータユニットの参照電圧を得る。しかし、前記マスター制御インバータユニットは正弦波交流電圧を出力する必要があるが、前記参照電圧は直流電圧であるため、前記参照電圧に位相角を乗じてマスター制御インバータユニットの正弦波交流電圧を得る。そして、初期電圧でのマスター制御インバータユニットの出力電圧を取得し、前記正弦波交流電圧から前記出力電圧を差し引いて電圧偏差を得る。ここで、前記マスター制御インバータユニットの出力端には、フィルタコンデンサとフィルタインダクタをさらに含み、前記フィルタコンデンサで収集された電圧を出力電圧とし、フィルタインダクタで収集された電流を出力電流とする。最後に、前記電圧偏差に基づいて、前記出力電流を調節する。
【0056】
いくつかの実施例では、図6bを参照してください。図6bは、本発明に係る実施例によって提供されるスレーブ制御インバータユニットの制御ロジックの模式図である。前記スレーブ制御インバータユニットの作動中に、前記マスター制御インバータユニットと前記スレーブ制御インバータユニットの平均有効電力から前記スレーブ制御インバータユニットの出力有効電力を差し引くことにより、前記平均有効電力と前記出力有効電力との偏差を得る。次に、前記偏差をPIコントローラーで演算し、演算した結果を前記スレーブ制御インバータユニットの定格電圧に加算することで、前記スレーブ制御インバータユニットの参照電圧を得る。しかし、前記マスター制御インバータユニットと前記スレーブ制御インバータユニットが負荷と接続する際に、ケーブルの長さが不一致などの要因により、マスター制御インバータユニットとスレーブ制御インバータユニットの線路インピーダンスが不一致になり、出力無効電力と出力有効電力を均等に分配することができない。このとき、前記スレーブ制御インバータユニットの参照電圧に仮想的なインピーダンスを加えて、前記仮想的なインピーダンスを調節することにより、前記マスター制御インバータユニットと前記スレーブ制御インバータユニットのインピーダンスが等しくなるようにして、出力無効電力と出力有効電力の均等分配を実現する。次に、前記参照電圧に位相角を乗じて、スレーブ制御インバータユニットの正弦波交流電圧を得る。そして、初期電圧でのスレーブ制御インバータユニットの出力電圧を取得し、前記正弦波交流電圧から前記出力電圧を差し引いて電圧偏差を得て、前記電圧偏差に基づいて前記出力電流を調節する。
【0057】
本発明に係る実施例は、マルチインバータ並列自己適応制御方法、装置及びマルチインバータ並列システムを提供し、主にマスター制御インバータユニット及びスレーブ制御インバータユニットが出力する状態情報を取得し、そして前記状態情報に応じて、各インバータユニットが出力する有効電力及び平均有効電力を算出して、各前記インバータユニットが出力する有効電力と前記平均有効電力との偏差に応じて、各前記インバータユニットが出力する参照電圧を調節することにより、前記マスター制御インバータユニットと前記スレーブ制御インバータユニットの出力有効電力を均等に分配する。次に、調節された前記参照電圧に基づいて、各前記インバータユニットが出力する状態情報を再び取得し、前記マスター制御インバータユニットと前記スレーブ制御インバータユニットの電圧成分の差分値及び電流成分の差分値を計算し、そして前記電圧成分の差分値及び前記電流成分の差分値に応じて前記スレーブ制御インバータユニットの仮想的なインピーダンスを自己適応的に調節して、スレーブ制御インバータユニットの出力インピーダンスと前記マスター制御インバータユニットの出力インピーダンスを整合させるようにして、計算量を減らし、調節速度を上げると同時に、前記マスター制御インバータユニットと前記スレーブ制御インバータユニットの無効電力を均等に分配し、さらにマルチインバータ並列システムにおける循環電流を低減することを実現する。
【0058】
図7を参照してください。図7は、本発明に係る実施例によって提供されるマルチインバータ並列自己適応制御装置の構成ブロック図であり、図7に示すように、前記マルチインバータ並列自己適応制御装置400は、取得モジュール41と、第1の計算モジュール42と、参照電圧調節モジュール43と、第2の計算モジュール44と、自己適応調節モジュール45とを備える。
【0059】
前記取得モジュール41は、マスター制御インバータユニット及びスレーブ制御インバータユニットが出力する状態情報を取得するためのものである。
【0060】
前記第1の計算モジュール42は、前記状態情報に応じて各インバータユニットが出力する有効電力及び平均有効電力を算出するためのものである。
【0061】
前記参照電圧調節モジュール43は、各前記インバータユニットが出力する有効電力と前記平均有効電力との偏差に応じて、各前記インバータユニットが出力する参照電圧を調節するためのものである。
【0062】
前記第2の計算モジュール44は、調節された前記参照電圧に基づいて、各前記インバータユニットが出力する状態情報を再び取得し、前記マスター制御インバータユニットと前記スレーブ制御インバータユニットの電圧成分の差分値及び電流成分の差分値を計算するためのものである。
【0063】
前記自己適応調節モジュール45は、前記電圧成分の差分値及び前記電流成分の差分値に応じて、前記スレーブ制御インバータユニットの仮想的なインピーダンスを自己適応的に調節して、スレーブ制御インバータユニットの出力インピーダンスと前記マスター制御インバータユニットの出力インピーダンスを整合させるようにするためのものである。
【0064】
なお、前記マルチインバータ並列自己適応制御装置は、本発明に係る実施例によって提供されるマルチインバータ並列自己適応制御方法を実行することができ、かつ方法の実行に対応する機能モジュール及び有益な効果を備える。マルチインバータ並列自己適応制御装置の実施例において詳細に説明しない技術細部については、本発明に係る実施例によって提供されるマルチインバータ並列自己適応制御方法を参照できる。
【0065】
本発明に係る実施例は、コンピュータ読み取り可能な不揮発性記憶媒体を提供し、前記コンピュータ読み取り可能な記憶媒体がコンピュータ実行可能指令を記憶しており、このコンピュータ実行可能指令が1つまたは複数のプロセッサによって実行され、例えば、以上に説明される図4における方法ステップを実行し、図7における各モジュールの機能を実現する。
【0066】
以上に説明された装置の実施例は、模式的なものだけであり、その中、上記した離間部品として説明されるユニットは、物理的に離間してもよいし、離間しなくてもよく、ユニットとして表される部品は、物理的なユニットでもよいし、物理的なユニットでなくてもよく、即ち、1つの箇所に位置してもよいし、複数のネットユニットに分布されて位置してもよい。実際の必要に応じてその中の一部又は全部のモジュールを選択して本実施例試案の目的を実現できる。
【0067】
以上の実施形態の説明によって、各実施形態が、ソフトウェアに汎用なハードウェアプラットフォームを加えることによって実現されてもよく、もちろん、ハードウェアによって実現されてもよいことは、当業者にとって明らかである。上記の実施例方法の中の全部又は一部のフローの実現が、コンピュータプログラムが関連するハードウェアに指令を与えることによって成されることは、当業者にとって理解でき、上記プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶されてもよく、このプログラムは実行される時に、上記の各方法の実施例のようなフローを含んでもよい。その中、上記の記憶媒体は、磁気ディスク、光ディスク、リードオンリーメモリ(Read-Only Memory;ROM)又はランダムアクセスメモリ(Random Access Memory;RAM)などであってもよい。
【0068】
最後に説明する。以上の実施例は、本発明の技術試案を説明するためのものだけであり、これを制限するものではなく、本発明の主旨下、以上の実施例又は異なる実施例における技術特徴同士はお互いに組み合わせることができ、ステップはいずれの手順で実現でき、また、上記のような本出願の異なる局面での多くの他の変更があるが、説明の簡略化のために細部に提供されなく、前記実施例を参照して本発明を詳細に説明したが、当業者にとって理解されるべきように、依然として前記各実施例に記載される技術試案に対して修飾し、又は、その中の一部の技術特徴を同等に置き換えることができ、これらの修飾又は置き換えは、対応する技術試案を実質的に本発明の各実施例の技術試案の範囲から逸脱させることはない。
【要約】      (修正有)
【課題】マスター制御インバータユニットとスレーブ制御インバータユニットの無効電力の均等分配を実現する。
【解決手段】方法は、マスター制御インバータユニット及びスレーブ制御インバータユニットが出力する状態情報を取得し、状態情報に応じて各インバータユニットが出力する有効電力及び平均有効電力を計算し、これらの偏差に基づいて各インバータユニットが出力する参照電圧を調節することにより、出力有効電力を均等に分配する。方法はまた、調節された参照電圧に基づいて、各インバータユニットが出力する状態情報を再び取得し、各インバータユニットの電圧成分の差分値及び電流成分の差分値を計算し、そして電圧成分の差分値及び電流成分の差分値に応じてスレーブ制御インバータユニットの仮想的なインピーダンスを自己適応的に調節して、スレーブ制御インバータユニットとマスター制御インバータユニットの出力インピーダンスを整合させる。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6a
図6b
図7