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特許7433506プレスブレーキ及びプレスブレーキ制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】プレスブレーキ及びプレスブレーキ制御方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 5/02 20060101AFI20240209BHJP
【FI】
B21D5/02 S
B21D5/02 Q
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023143043
(22)【出願日】2023-09-04
【審査請求日】2023-09-19
(31)【優先権主張番号】P 2022169403
(32)【優先日】2022-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】天野 兼秀
(72)【発明者】
【氏名】上杉 悟
(72)【発明者】
【氏名】菅井 幸一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 秀起
(72)【発明者】
【氏名】有路 伸明
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特許第3666926(JP,B2)
【文献】仏国特許出願公開第03019070(FR,A1)
【文献】特許第3801466(JP,B2)
【文献】特許第4280332(JP,B2)
【文献】特許第6364237(JP,B2)
【文献】特開2013-180339(JP,A)
【文献】特開平01-228612(JP,A)
【文献】特許第2859689(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2020/0180003(US,A1)
【文献】特開平11-179433(JP,A)
【文献】特開平11-000719(JP,A)
【文献】特開平08-066726(JP,A)
【文献】特公昭63-036851(JP,B2)
【文献】特許第3437416(JP,B2)
【文献】特許第4118975(JP,B2)
【文献】特許第3394141(JP,B2)
【文献】特許第3666925(JP,B2)
【文献】特許第3504329(JP,B2)
【文献】特許第3373075(JP,B2)
【文献】特許第3734315(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2013/0340494(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0103706(US,A1)
【文献】米国特許第07055355(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パンチを装着する上部テーブルと、
ダイを装着する下部テーブルと、
前記上部テーブルまたは前記下部テーブルを昇降させるテーブル昇降機構と、
板金を前記パンチと前記ダイとで挟んだ状態で、前記テーブル昇降機構によって前記上部テーブルまたは前記下部テーブルを昇降させて前記板金を曲げるときの前記板金の角度を計測する角度センサと、
前記角度センサが計測した前記板金の角度に基づいて前記板金の曲げ角度を算出し、前記テーブル昇降機構による前記上部テーブルまたは前記下部テーブルの昇降を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
同じ材料及び同じ板厚の複数枚の板金における1枚目の板金である第1の板金を曲げ加工するよう制御するとき、
前記第1の板金を目標曲げ角度よりも広い仮曲げ角度に曲げるよう、前記上部テーブルを第1のデプス値だけ下降させるか前記下部テーブルを前記第1のデプス値だけ上昇させるよう制御し、
前記上部テーブルが前記第1のデプス値だけ下降した状態または前記下部テーブルが前記第1のデプス値だけ上昇した状態で、前記角度センサが計測した前記第1の板金の角度に基づいて前記第1の板金の第1の曲げ角度を算出して保持し、
前記パンチが前記第1の板金に接触している状態を維持しつつ前記第1の板金を除荷して、前記角度センサが計測した前記第1の板金の角度に基づいて除荷された状態の前記第1の板金の第2の曲げ角度を算出し、
前記第1の曲げ角度または前記第1の板金を除荷する前に前記第1の板金を前記第1の曲げ角度より狭い曲げ角度に曲げたときの曲げ角度を、スプリングバック量を算出するための基準角度として、前記第2の曲げ角度と前記基準角度との差分に基づいて、前記第1の板金の第1のスプリングバック量を算出し、
除荷された状態の前記第1の板金を、前記目標曲げ角度及び前記第1のスプリングバック量に基づいて前記目標曲げ角度より広い曲げ角度に曲げるよう、前記上部テーブルを下降させるか前記下部テーブルを上昇させた状態で、前記角度センサが計測した前記第1の板金の角度に基づいて前記第1の板金の第3の曲げ角度を算出し、
前記目標曲げ角度、前記第1のスプリングバック量、及び前記第3の曲げ角度に基づいて、前記第3の曲げ角度に曲げられた前記第1の板金を前記目標曲げ角度に曲げるための第2のデプス値を算出して保持し、
前記上部テーブルを前記第2のデプス値だけ下降させるか前記下部テーブルを前記第2のデプス値だけ上昇させるよう制御して、前記第1の板金を前記目標曲げ角度に曲げた後に、前記上部テーブルを上昇させるか前記下部テーブルを下降させて、前記第1の板金の曲げ加工を完了し、
前記複数枚の板金における2枚目以降の板金である第2の板金を曲げ加工するよう制御するとき、
前記第2の板金を前記仮曲げ角度に曲げるよう、前記上部テーブルを前記第1のデプス値だけ下降させるか前記下部テーブルを前記第1のデプス値だけ上昇させるよう制御し、
前記上部テーブルが前記第1のデプス値だけ下降した状態または前記下部テーブルが前記第1のデプス値だけ上昇した状態で、前記角度センサが計測した前記第2の板金の角度に基づいて前記第2の板金の第4の曲げ角度を算出し、
前記第4の曲げ角度と前記第1の曲げ角度との差分が所定の角度以内であるか否かを判定し、
前記第4の曲げ角度と前記第1の曲げ角度との差分が前記所定の角度以内であれば、前記第2の板金におけるスプリングバック量を算出することなく、前記上部テーブルを前記第2のデプス値または前記第2のデプス値を前記第4の曲げ角度と前記第1の曲げ角度との差分に応じて補正した補正デプス値だけ下降させるか前記下部テーブルを前記第2のデプス値または前記補正デプス値だけ上昇させるよう制御して、前記仮曲げ角度に曲げられた状態の前記第2の板金を前記目標曲げ角度に曲げた後に、前記上部テーブルを上昇させるか前記下部テーブルを下降させて、前記第2の板金の曲げ加工を完了する
プレスブレーキ。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記第2の板金を曲げ加工するよう制御するとき、
前記第4の曲げ角度と前記第1の曲げ角度との差分が前記所定の角度以内でなければ、前記パンチが前記第2の板金に接触している状態を維持しつつ前記第2の板金を除荷して、前記角度センサが計測した前記第2の板金の角度に基づいて前記第2の板金の第5の曲げ角度を算出し、
前記第5の曲げ角度と前記第4の曲げ角度との差分に基づいて、前記第2の板金の第2のスプリングバック量を算出し、
除荷された状態の前記第2の板金を、前記目標曲げ角度及び前記第2のスプリングバック量に基づいて前記目標曲げ角度より広い曲げ角度に曲げるよう、前記上部テーブルを下降させるか前記下部テーブルを上昇させた状態で、前記角度センサが計測した前記第2の板金の角度に基づいて前記第2の板金の第6の曲げ角度を算出し、
前記目標曲げ角度、前記第2のスプリングバック量、及び前記第6の曲げ角度に基づいて、前記第6の曲げ角度に曲げられた前記第2の板金を前記目標曲げ角度に曲げるための第3のデプス値を算出し、
前記上部テーブルを第3のデプス値だけ下降させるか前記下部テーブルを前記第3のデプス値だけ上昇させるよう制御して、前記第2の板金を前記目標曲げ角度に曲げた後に、前記上部テーブルを上昇させるか前記下部テーブルを下降させて、前記第2の板金の曲げ加工を完了する
請求項1に記載のプレスブレーキ。
【請求項3】
前記制御装置は、前記第1の板金の除荷が完了する前の途中の段階までの除荷のために前記上部テーブルを上昇させる上昇量または前記下部テーブルを下降させる下降量、または前記第1の板金の除荷が完了するまで前記上部テーブルを上昇させる上昇量または前記下部テーブルを下降させる下降量を、前記第2の板金を除荷するために前記上部テーブルを上昇させる上昇量または前記下部テーブルを下降させる下降量に反映させる請求項2に記載のプレスブレーキ。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記第2の板金を曲げ加工するよう制御するとき、
前記第4の曲げ角度と前記第1の曲げ角度との差分が前記所定の角度以内でなければ、前記第2の板金におけるスプリングバック量を算出することなく、前記仮曲げ角度に曲げられた状態の前記第2の板金を前記目標曲げ角度及び前記第1のスプリングバック量に基づいて前記目標曲げ角度より広い曲げ角度に曲げるよう、前記上部テーブルを下降させるか前記下部テーブルを上昇させた状態で、前記角度センサが計測した前記第2の板金の角度に基づいて前記第2の板金の第7の曲げ角度を算出し、
前記目標曲げ角度、前記第1のスプリングバック量、及び前記第7の曲げ角度に基づいて、前記第7の曲げ角度に曲げられた前記第2の板金を前記目標曲げ角度に曲げるための第4のデプス値を算出し、
前記上部テーブルを前記第4のデプス値だけ下降させるか前記下部テーブルを前記第4のデプス値だけ上昇させるよう制御して、前記第2の板金を前記目標曲げ角度に曲げた後に、前記上部テーブルを上昇させるか前記下部テーブルを下降させて、前記第2の板金の曲げ加工を完了する
請求項1に記載のプレスブレーキ。
【請求項5】
パンチを装着する上部テーブルと、ダイを装着する下部テーブルと、前記上部テーブルまたは前記下部テーブルを昇降させるテーブル昇降機構と、前記パンチと前記ダイとで挟まれて曲げられる板金の角度を計測する角度センサとを備えるプレスブレーキを制御する制御装置が、
同じ材料及び同じ板厚の複数枚の板金における1枚目の板金である第1の板金を曲げ加工するよう制御するとき、
前記第1の板金を目標曲げ角度よりも広い仮曲げ角度に曲げるよう、前記上部テーブルを第1のデプス値だけ下降させるか前記下部テーブルを前記第1のデプス値だけ上昇させるよう制御し、
前記上部テーブルが前記第1のデプス値だけ下降した状態または前記下部テーブルが前記第1のデプス値だけ上昇した状態で、前記角度センサが計測した前記第1の板金の角度に基づいて前記第1の板金の第1の曲げ角度を算出して保持し、
前記パンチが前記第1の板金に接触している状態を維持しつつ前記第1の板金を除荷して、前記角度センサが計測した前記第1の板金の角度に基づいて除荷された状態の前記第1の板金の第2の曲げ角度を算出し、
前記第1の曲げ角度または前記第1の板金を除荷する前に前記第1の板金を前記第1の曲げ角度より狭い曲げ角度に曲げたときの曲げ角度を、スプリングバック量を算出するための基準角度として、前記第2の曲げ角度と前記基準角度との差分に基づいて、前記第1の板金の第1のスプリングバック量を算出し、
除荷された状態の前記第1の板金を、前記目標曲げ角度及び前記第1のスプリングバック量に基づいて前記目標曲げ角度より広い曲げ角度に曲げるよう、前記上部テーブルを下降させるか前記下部テーブルを上昇させた状態で、前記角度センサが計測した前記第1の板金の角度に基づいて前記第1の板金の第3の曲げ角度を算出し、
前記目標曲げ角度、前記第1のスプリングバック量、及び前記第3の曲げ角度に基づいて、前記第3の曲げ角度に曲げられた前記第1の板金を前記目標曲げ角度に曲げるための第2のデプス値を算出して保持し、
前記上部テーブルを前記第2のデプス値だけ下降させるか前記下部テーブルを前記第2のデプス値だけ上昇させるよう制御して、前記第1の板金を前記目標曲げ角度に曲げた後に、前記上部テーブルを上昇させるか前記下部テーブルを下降させて、前記第1の板金の曲げ加工を完了し、
前記複数枚の板金における2枚目以降の板金である第2の板金を曲げ加工するよう制御するとき、
前記第2の板金を前記仮曲げ角度に曲げるよう、前記上部テーブルを前記第1のデプス値だけ下降させるか前記下部テーブルを前記第1のデプス値だけ上昇させるよう制御し、
前記上部テーブルが前記第1のデプス値だけ下降した状態または前記下部テーブルが前記第1のデプス値だけ上昇した状態で、前記角度センサが計測した前記第2の板金の角度に基づいて前記第2の板金の第4の曲げ角度を算出し、
前記第4の曲げ角度と前記第1の曲げ角度との差分が所定の角度以内であるか否かを判定し、
前記第4の曲げ角度と前記第1の曲げ角度との差分が前記所定の角度以内であれば、前記第2の板金におけるスプリングバック量を算出することなく、前記上部テーブルを前記第2のデプス値または前記第2のデプス値を前記第4の曲げ角度と前記第1の曲げ角度との差分に応じて補正した補正デプス値だけ下降させるか前記下部テーブルを前記第2のデプス値または前記補正デプス値だけ上昇させるよう制御して、前記仮曲げ角度に曲げられた状態の前記第2の板金を前記目標曲げ角度に曲げた後に、前記上部テーブルを上昇させるか前記下部テーブルを下降させて、前記第2の板金の曲げ加工を完了する
プレスブレーキ制御方法。
【請求項6】
前記制御装置が、
前記第2の板金を曲げ加工するよう制御するとき、
前記第4の曲げ角度と前記第1の曲げ角度との差分が前記所定の角度以内でなければ、前記パンチが前記第2の板金に接触している状態を維持しつつ前記第2の板金を除荷して、前記角度センサが計測した前記第2の板金の角度に基づいて前記第2の板金の第5の曲げ角度を算出し、
前記第5の曲げ角度と前記第4の曲げ角度との差分に基づいて、前記第2の板金の第2のスプリングバック量を算出し、
除荷された状態の前記第2の板金を、前記目標曲げ角度及び前記第2のスプリングバック量に基づいて前記目標曲げ角度より広い曲げ角度に曲げるよう、前記上部テーブルを下降させるか前記下部テーブルを上昇させた状態で、前記角度センサが計測した前記第2の板金の角度に基づいて前記第2の板金の第6の曲げ角度を算出し、
前記目標曲げ角度、前記第2のスプリングバック量、及び前記第6の曲げ角度に基づいて、前記第6の曲げ角度に曲げられた前記第2の板金を前記目標曲げ角度に曲げるための第3のデプス値を算出し、
前記上部テーブルを第3のデプス値だけ下降させるか前記下部テーブルを前記第3のデプス値だけ上昇させるよう制御して、前記第2の板金を前記目標曲げ角度に曲げた後に、前記上部テーブルを上昇させるか前記下部テーブルを下降させて、前記第2の板金の曲げ加工を完了する
請求項5に記載のプレスブレーキ制御方法。
【請求項7】
前記制御装置が、前記第1の板金の除荷が完了する前の途中の段階までの除荷のために前記上部テーブルを上昇させる上昇量または前記下部テーブルを下降させる下降量、または前記第1の板金の除荷が完了するまで前記上部テーブルを上昇させる上昇量または前記下部テーブルを下降させる下降量を、前記第2の板金を除荷するために前記上部テーブルを上昇させる上昇量または前記下部テーブルを下降させる下降量に反映させる請求項6に記載のプレスブレーキ制御方法。
【請求項8】
前記制御装置が、
前記第2の板金を曲げ加工するよう制御するとき、
前記第4の曲げ角度と前記第1の曲げ角度との差分が前記所定の角度以内でなければ、前記第2の板金におけるスプリングバック量を算出することなく、前記仮曲げ角度に曲げられた状態の前記第2の板金を前記目標曲げ角度及び前記第1のスプリングバック量に基づいて前記目標曲げ角度より広い曲げ角度に曲げるよう、前記上部テーブルを下降させるか前記下部テーブルを上昇させた状態で、前記角度センサが計測した前記第2の板金の角度に基づいて前記第2の板金の第7の曲げ角度を算出し、
前記目標曲げ角度、前記第1のスプリングバック量、及び前記第7の曲げ角度に基づいて、前記第7の曲げ角度に曲げられた前記第2の板金を前記目標曲げ角度に曲げるための第4のデプス値を算出し、
前記上部テーブルを前記第4のデプス値だけ下降させるか前記下部テーブルを前記第4のデプス値だけ上昇させるよう制御して、前記第2の板金を前記目標曲げ角度に曲げた後に、前記上部テーブルを上昇させるか前記下部テーブルを下降させて、前記第2の板金の曲げ加工を完了する
請求項5に記載のプレスブレーキ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレスブレーキ及びプレスブレーキ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プレスブレーキは、パンチを装着する上部テーブルとダイを装着する下部テーブルとを備え、上部テーブルを下部テーブルへと下降させて、ダイの上に配置された板金をパンチとダイとで挟んで曲げる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4280332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プレスブレーキによって板金を目標曲げ角度に曲げても、スプリングバックによって曲げられた板金の曲げ角度は目標曲げ角度よりも広くなる。そこで、板金を目標曲げ角度に曲げるためには、板金を、スプリングバック量を考慮して目標曲げ角度よりも狭い曲げ角度で曲げる必要がある。
【0005】
同じ材料及び同じ板厚の複数枚の板金を連続的に曲げ加工することがある。このような場合、各板金を曲げ加工するたびにスプリングバック量を算出するので、複数枚の板金を曲げ加工するためにはかなりの時間を要する。複数枚の板金を曲げ加工するときの加工時間をできるだけ短縮することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1またはそれ以上の実施形態の第1の態様は、パンチを装着する上部テーブルと、ダイを装着する下部テーブルと、前記上部テーブルまたは前記下部テーブルを昇降させるテーブル昇降機構と、板金を前記パンチと前記ダイとで挟んだ状態で、前記テーブル昇降機構によって前記上部テーブルまたは前記下部テーブルを昇降させて前記板金を曲げるときの前記板金の角度を計測する角度センサと、前記角度センサが計測した前記板金の角度に基づいて前記板金の曲げ角度を算出し、前記テーブル昇降機構による前記上部テーブルまたは前記下部テーブルの昇降を制御する制御装置とを備えるプレスブレーキを提供する。
【0007】
第1の態様において、前記制御装置は、同じ材料及び同じ板厚の複数枚の板金における1枚目の板金である第1の板金を曲げ加工するよう制御するとき、前記第1の板金を目標曲げ角度よりも広い仮曲げ角度に曲げるよう、前記上部テーブルを第1のデプス値だけ下降させるか前記下部テーブルを前記第1のデプス値だけ上昇させるよう制御し、前記上部テーブルが前記第1のデプス値だけ下降した状態または前記下部テーブルが前記第1のデプス値だけ上昇した状態で、前記角度センサが計測した前記第1の板金の角度に基づいて前記第1の板金の第1の曲げ角度を算出して保持し、前記パンチが前記第1の板金に接触している状態を維持しつつ前記第1の板金を除荷して、前記角度センサが計測した前記第1の板金の角度に基づいて除荷された状態の前記第1の板金の第2の曲げ角度を算出し、前記第1の曲げ角度または前記第1の板金を除荷する前に前記第1の板金を前記第1の曲げ角度より狭い曲げ角度に曲げたときの曲げ角度を、スプリングバック量を算出するための基準角度として、前記第2の曲げ角度と前記基準角度との差分に基づいて、前記第1の板金の第1のスプリングバック量を算出し、除荷された状態の前記第1の板金を、前記目標曲げ角度及び前記第1のスプリングバック量に基づいて前記目標曲げ角度より広い曲げ角度に曲げるよう、前記上部テーブルを下降させるか前記下部テーブルを上昇させた状態で、前記角度センサが計測した前記第1の板金の角度に基づいて前記第1の板金の第3の曲げ角度を算出し、前記目標曲げ角度、前記第1のスプリングバック量、及び前記第3の曲げ角度に基づいて、前記第3の曲げ角度に曲げられた前記第1の板金を前記目標曲げ角度に曲げるための第2のデプス値を算出して保持し、前記上部テーブルを前記第2のデプス値だけ下降させるか前記下部テーブルを前記第2のデプス値だけ上昇させるよう制御して、前記第1の板金を前記目標曲げ角度に曲げた後に、前記上部テーブルを上昇させるか前記下部テーブルを下降させて、前記第1の板金の曲げ加工を完了する。
【0008】
第1の態様において、前記制御装置は、前記複数枚の板金における2枚目以降の板金である第2の板金を曲げ加工するよう制御するとき、前記第2の板金を前記仮曲げ角度に曲げるよう、前記上部テーブルを前記第1のデプス値だけ下降させるか前記下部テーブルを前記第1のデプス値だけ上昇させるよう制御し、前記上部テーブルが前記第1のデプス値だけ下降した状態または前記下部テーブルが前記第1のデプス値だけ上昇した状態で、前記角度センサが計測した前記第2の板金の角度に基づいて前記第2の板金の第4の曲げ角度を算出し、前記第4の曲げ角度と前記第1の曲げ角度との差分が所定の角度以内であるか否かを判定し、前記第4の曲げ角度と前記第1の曲げ角度との差分が前記所定の角度以内であれば、前記第2の板金におけるスプリングバック量を算出することなく、前記上部テーブルを前記第2のデプス値または前記第2のデプス値を前記第4の曲げ角度と前記第1の曲げ角度との差分に応じて補正した補正デプス値だけ下降させるか前記下部テーブルを前記第2のデプス値または前記補正デプス値だけ上昇させるよう制御して、前記仮曲げ角度に曲げられた状態の前記第2の板金を前記目標曲げ角度に曲げた後に、前記上部テーブルを上昇させるか前記下部テーブルを下降させて、前記第2の板金の曲げ加工を完了する。
【0009】
1またはそれ以上の実施形態の第1の態様によれば、制御装置が第2の板金を曲げ加工するよう制御するとき、第2の板金のスプリングバック量の算出を省略することができるので、複数枚の板金を曲げ加工するときの加工時間を短縮することができる。
【0010】
1またはそれ以上の実施形態の第2の態様は、パンチを装着する上部テーブルと、ダイを装着する下部テーブルと、前記上部テーブルまたは前記下部テーブルを昇降させるテーブル昇降機構と、前記パンチと前記ダイとで挟まれて曲げられる板金の角度を計測する角度センサとを備えるプレスブレーキを制御する制御装置が、以下のようにプレスブレーキを制御するプレスブレーキ制御方法を提供する。
【0011】
第2の態様において、前記制御装置は、同じ材料及び同じ板厚の複数枚の板金における1枚目の板金である第1の板金を曲げ加工するよう制御するとき、前記第1の板金を目標曲げ角度よりも広い仮曲げ角度に曲げるよう、前記上部テーブルを第1のデプス値だけ下降させるか前記下部テーブルを前記第1のデプス値だけ上昇させるよう制御し、前記上部テーブルが前記第1のデプス値だけ下降した状態または前記下部テーブルが前記第1のデプス値だけ上昇した状態で、前記角度センサが計測した前記第1の板金の角度に基づいて前記第1の板金の第1の曲げ角度を算出して保持し、前記パンチが前記第1の板金に接触している状態を維持しつつ前記第1の板金を除荷して、前記角度センサが計測した前記第1の板金の角度に基づいて除荷された状態の前記第1の板金の第2の曲げ角度を算出し、前記第1の曲げ角度または前記第1の板金を除荷する前に前記第1の板金を前記第1の曲げ角度より狭い曲げ角度に曲げたときの曲げ角度を、スプリングバック量を算出するための基準角度として、前記第2の曲げ角度と前記基準角度との差分に基づいて、前記第1の板金の第1のスプリングバック量を算出し、除荷された状態の前記第1の板金を、前記目標曲げ角度及び前記第1のスプリングバック量に基づいて前記目標曲げ角度より広い曲げ角度に曲げるよう、前記上部テーブルを下降させるか前記下部テーブルを上昇させた状態で、前記角度センサが計測した前記第1の板金の角度に基づいて前記第1の板金の第3の曲げ角度を算出し、前記目標曲げ角度、前記第1のスプリングバック量、及び前記第3の曲げ角度に基づいて、前記第3の曲げ角度に曲げられた前記第1の板金を前記目標曲げ角度に曲げるための第2のデプス値を算出して保持し、前記上部テーブルを前記第2のデプス値だけ下降させるか前記下部テーブルを前記第2のデプス値だけ上昇させるよう制御して、前記第1の板金を前記目標曲げ角度に曲げた後に、前記上部テーブルを上昇させるか前記下部テーブルを下降させて、前記第1の板金の曲げ加工を完了する。
【0012】
第2の態様において、前記制御装置は、前記複数枚の板金における2枚目以降の板金である第2の板金を曲げ加工するよう制御するとき、前記第2の板金を前記仮曲げ角度に曲げるよう、前記上部テーブルを前記第1のデプス値だけ下降させるか前記下部テーブルを前記第1のデプス値だけ上昇させるよう制御し、前記上部テーブルが前記第1のデプス値だけ下降した状態または前記下部テーブルが前記第1のデプス値だけ上昇した状態で、前記角度センサが計測した前記第2の板金の角度に基づいて前記第2の板金の第4の曲げ角度を算出し、前記第4の曲げ角度と前記第1の曲げ角度との差分が所定の角度以内であるか否かを判定し、前記第4の曲げ角度と前記第1の曲げ角度との差分が前記所定の角度以内であれば、前記第2の板金におけるスプリングバック量を算出することなく、前記上部テーブルを前記第2のデプス値または前記第2のデプス値を前記第4の曲げ角度と前記第1の曲げ角度との差分に応じて補正した補正デプス値だけ下降させるか前記下部テーブルを前記第2のデプス値または前記補正デプス値だけ上昇させるよう制御して、前記仮曲げ角度に曲げられた状態の前記第2の板金を前記目標曲げ角度に曲げた後に、前記上部テーブルを上昇させるか前記下部テーブルを下降させて、前記第2の板金の曲げ加工を完了する。
【0013】
1またはそれ以上の実施形態の第2の態様によれば、制御装置が第2の板金を曲げ加工するよう制御するとき、第2の板金のスプリングバック量の算出を省略することができるので、複数枚の板金を曲げ加工するときの加工時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0014】
1またはそれ以上の実施形態に係るプレスブレーキ及びプレスブレーキ制御方法によれば、複数枚の板金を曲げ加工するときの加工時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、1またはそれ以上の実施形態に係るプレスブレーキの全体構成を示す図である。
図2図2は、1またはそれ以上の実施形態に係るプレスブレーキが備える角度センサの構成例を示す図である。
図3図3は、図2に示す角度センサが検出する板金の角度を示す図である。
図4図4は、1またはそれ以上の実施形態に係るプレスブレーキが備えるNC装置による、1枚目の板金を曲げ加工するときの制御動作の一例を示す図である。
図5図5は、1またはそれ以上の実施形態に係るプレスブレーキが備えるNC装置による、2枚目以降の板金を曲げ加工するときの仮曲げ動作を示す図である。
図6図6は、1またはそれ以上の実施形態に係るプレスブレーキが備えるNC装置による、2枚目以降の板金を曲げ加工するときのスプリングバック量の算出動作を省略した制御動作を示す図である。
図7図7は、1またはそれ以上の実施形態に係るプレスブレーキが備えるNC装置による、2枚目以降の板金を曲げ加工するときのスプリングバック量の算出動作を省略しない制御動作を示す図である。
図8A図8Aは、1またはそれ以上の実施形態に係るプレスブレーキが備えるNC装置による、2枚目以降の板金を曲げ加工するときのスプリングバック量の算出動作の第1の変形例を示す図である。
図8B図8Bは、1またはそれ以上の実施形態に係るプレスブレーキが備えるNC装置による、2枚目以降の板金を曲げ加工するときのスプリングバック量の算出動作の第2の変形例を示す図である。
図9図9は、1またはそれ以上の実施形態に係るプレスブレーキが備えるNC装置による、2枚目以降の板金を曲げ加工するときのスプリングバック量の算出動作を省略し、1枚目の板金を曲げ加工するときに得られたスプリングバック量を用いて2枚目以降の板金を曲げ加工するときの制御動作を示す図である。
図10図10は、1またはそれ以上の実施形態に係るプレスブレーキの動作及び1またはそれ以上の実施形態に係るプレスブレーキ制御方法を示すフローチャートである。
図11図11は、1またはそれ以上の実施形態に係るプレスブレーキの動作及び1またはそれ以上の実施形態に係るプレスブレーキ制御方法の変形例を示す部分的なフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1またはそれ以上の実施形態に係るプレスブレーキは、パンチを装着する上部テーブルと、ダイを装着する下部テーブルと、前記上部テーブルまたは前記下部テーブルを昇降させるテーブル昇降機構と、板金を前記パンチと前記ダイとで挟んだ状態で、前記テーブル昇降機構によって前記上部テーブルまたは前記下部テーブルを昇降させて前記板金を曲げるときの前記板金の角度を計測する角度センサと、前記角度センサが計測した前記板金の角度に基づいて前記板金の曲げ角度を算出し、前記テーブル昇降機構による前記上部テーブルまたは前記下部テーブルの昇降を制御する制御装置とを備える。
【0017】
前記制御装置は、同じ材料及び同じ板厚の複数枚の板金における1枚目の板金である第1の板金を曲げ加工するよう制御するとき、前記第1の板金を目標曲げ角度よりも広い仮曲げ角度に曲げるよう、前記上部テーブルを第1のデプス値だけ下降させるか前記下部テーブルを前記第1のデプス値だけ上昇させるよう制御し、前記上部テーブルが前記第1のデプス値だけ下降した状態または前記下部テーブルが前記第1のデプス値だけ上昇した状態で、前記角度センサが計測した前記第1の板金の角度に基づいて前記第1の板金の第1の曲げ角度を算出して保持し、前記パンチが前記第1の板金に接触している状態を維持しつつ前記第1の板金を除荷して、前記角度センサが計測した前記第1の板金の角度に基づいて除荷された状態の前記第1の板金の第2の曲げ角度を算出し、前記第1の曲げ角度または前記第1の板金を除荷する前に前記第1の板金を前記第1の曲げ角度より狭い曲げ角度に曲げたときの曲げ角度を、スプリングバック量を算出するための基準角度として、前記第2の曲げ角度と前記基準角度との差分に基づいて、前記第1の板金の第1のスプリングバック量を算出し、除荷された状態の前記第1の板金を、前記目標曲げ角度及び前記第1のスプリングバック量に基づいて前記目標曲げ角度より広い曲げ角度に曲げるよう、前記上部テーブルを下降させるか前記下部テーブルを上昇させた状態で、前記角度センサが計測した前記第1の板金の角度に基づいて前記第1の板金の第3の曲げ角度を算出し、前記目標曲げ角度、前記第1のスプリングバック量、及び前記第3の曲げ角度に基づいて、前記第3の曲げ角度に曲げられた前記第1の板金を前記目標曲げ角度に曲げるための第2のデプス値を算出して保持し、前記上部テーブルを前記第2のデプス値だけ下降させるか前記下部テーブルを前記第2のデプス値だけ上昇させるよう制御して、前記第1の板金を前記目標曲げ角度に曲げた後に、前記上部テーブルを上昇させるか前記下部テーブルを下降させて、前記第1の板金の曲げ加工を完了する。
【0018】
前記制御装置は、前記複数枚の板金における2枚目以降の板金である第2の板金を曲げ加工するよう制御するとき、前記第2の板金を前記仮曲げ角度に曲げるよう、前記上部テーブルを前記第1のデプス値だけ下降させるか前記下部テーブルを前記第1のデプス値だけ上昇させるよう制御し、前記上部テーブルが前記第1のデプス値だけ下降した状態または前記下部テーブルが前記第1のデプス値だけ上昇した状態で、前記角度センサが計測した前記第2の板金の角度に基づいて前記第2の板金の第4の曲げ角度を算出し、前記第4の曲げ角度と前記第1の曲げ角度との差分が所定の角度以内であるか否かを判定し、前記第4の曲げ角度と前記第1の曲げ角度との差分が前記所定の角度以内であれば、前記第2の板金におけるスプリングバック量を算出することなく、前記上部テーブルを前記第2のデプス値または前記第2のデプス値を前記第4の曲げ角度と前記第1の曲げ角度との差分に応じて補正した補正デプス値だけ下降させるか前記下部テーブルを前記第2のデプス値または前記補正デプス値だけ上昇させるよう制御して、前記仮曲げ角度に曲げられた状態の前記第2の板金を前記目標曲げ角度に曲げた後に、前記上部テーブルを上昇させるか前記下部テーブルを下降させて、前記第2の板金の曲げ加工を完了する。
【0019】
1またはそれ以上の実施形態に係るプレスブレーキ制御方法は、パンチを装着する上部テーブルと、ダイを装着する下部テーブルと、前記上部テーブルまたは前記下部テーブルを昇降させるテーブル昇降機構と、前記パンチと前記ダイとで挟まれて曲げられる板金の角度を計測する角度センサとを備えるプレスブレーキを制御する制御装置が、以下のようにプレスブレーキを制御する。
【0020】
前記制御装置は、同じ材料及び同じ板厚の複数枚の板金における1枚目の板金である第1の板金を曲げ加工するよう制御するとき、前記第1の板金を目標曲げ角度よりも広い仮曲げ角度に曲げるよう、前記上部テーブルを第1のデプス値だけ下降させるか前記下部テーブルを前記第1のデプス値だけ上昇させるよう制御し、前記上部テーブルが前記第1のデプス値だけ下降した状態または前記下部テーブルが前記第1のデプス値だけ上昇した状態で、前記角度センサが計測した前記第1の板金の角度に基づいて前記第1の板金の第1の曲げ角度を算出して保持し、前記パンチが前記第1の板金に接触している状態を維持しつつ前記第1の板金を除荷して、前記角度センサが計測した前記第1の板金の角度に基づいて除荷された状態の前記第1の板金の第2の曲げ角度を算出し、前記第1の曲げ角度または前記第1の板金を除荷する前に前記第1の板金を前記第1の曲げ角度より狭い曲げ角度に曲げたときの曲げ角度を、スプリングバック量を算出するための基準角度として、前記第2の曲げ角度と前記基準角度との差分に基づいて、前記第1の板金の第1のスプリングバック量を算出し、除荷された状態の前記第1の板金を、前記目標曲げ角度及び前記第1のスプリングバック量に基づいて前記目標曲げ角度より広い曲げ角度に曲げるよう、前記上部テーブルを下降させるか前記下部テーブルを上昇させた状態で、前記角度センサが計測した前記第1の板金の角度に基づいて前記第1の板金の第3の曲げ角度を算出し、前記目標曲げ角度、前記第1のスプリングバック量、及び前記第3の曲げ角度に基づいて、前記第3の曲げ角度に曲げられた前記第1の板金を前記目標曲げ角度に曲げるための第2のデプス値を算出して保持し、前記上部テーブルを前記第2のデプス値だけ下降させるか前記下部テーブルを前記第2のデプス値だけ上昇させるよう制御して、前記第1の板金を前記目標曲げ角度に曲げた後に、前記上部テーブルを上昇させるか前記下部テーブルを下降させて、前記第1の板金の曲げ加工を完了する。
【0021】
前記制御装置は、前記複数枚の板金における2枚目以降の板金である第2の板金を曲げ加工するよう制御するとき、前記第2の板金を前記仮曲げ角度に曲げるよう、前記上部テーブルを前記第1のデプス値だけ下降させるか前記下部テーブルを前記第1のデプス値だけ上昇させるよう制御し、前記上部テーブルが前記第1のデプス値だけ下降した状態または前記下部テーブルが前記第1のデプス値だけ上昇した状態で、前記角度センサが計測した前記第2の板金の角度に基づいて前記第2の板金の第4の曲げ角度を算出し、前記第4の曲げ角度と前記第1の曲げ角度との差分が所定の角度以内であるか否かを判定し、前記第4の曲げ角度と前記第1の曲げ角度との差分が前記所定の角度以内であれば、前記第2の板金におけるスプリングバック量を算出することなく、前記上部テーブルを前記第2のデプス値または前記第2のデプス値を前記第4の曲げ角度と前記第1の曲げ角度との差分に応じて補正した補正デプス値だけ下降させるか前記下部テーブルを前記第2のデプス値または前記補正デプス値だけ上昇させるよう制御して、前記仮曲げ角度に曲げられた状態の前記第2の板金を前記目標曲げ角度に曲げた後に、前記上部テーブルを上昇させるか前記下部テーブルを下降させて、前記第2の板金の曲げ加工を完了する。
【0022】
以下、1またはそれ以上の実施形態に係るプレスブレーキ及びプレスブレーキ制御方法について、添付図面を参照して具体的に説明する。
【0023】
図1は、1またはそれ以上の実施形態に係るプレスブレーキ100の全体構成を示す。図1に示すように、プレスブレーキ100は、プレスブレーキ100を制御する制御装置として機能するNC(Numerical Control)装置10を備える。NC装置10には、ネットワークを介して、加工プログラムデータベース50が接続されている。プレスブレーキ100は、上部テーブル1、下部テーブル3、左右の側板5R及び5Lを備える。上部テーブル1には上部金型ホルダ2が取り付けられ、下部テーブル3には下部金型ホルダ4が取り付けられている。
【0024】
上部テーブル1は、左右に設けた油圧シリンダ6L及び6Rによって昇降するように構成されている。油圧シリンダ6L及び6Rをテーブル昇降機構6と称することとする。テーブル昇降機構6には、油圧シリンダ6L及び6R以外のアクチュエータが含まれることがある。テーブル昇降機構6は、上部テーブル1を下部テーブル3に近付けるように下降させたり、下部テーブル3から離隔させるよう上昇させたりする。
【0025】
上部金型ホルダ2には上部金型であるパンチTpが装着され、下部金型ホルダ4には下部金型であるダイTdが装着されている。図1においては、上部テーブル1の下端部の全長に渡って上部金型ホルダ2が一体的に取り付けられているモジュラータイプを示しているが、上部テーブル1の下端部の長手方向にパンチTpを装着する複数の中間板が取り付けられる中間板タイプであってもよい。中間板も上部金型ホルダである。
【0026】
上部テーブル1にパンチTpを装着するとは、上部金型ホルダ2または中間板にパンチTpを装着することを意味する。下部テーブル3にダイTdを装着するとは、下部金型ホルダ4にダイTdを装着することを意味する。上部テーブル1に2またはそれ以上のパンチTpが並べて装着されることがあり、下部テーブル3に2またはそれ以上のダイTdが並べて装着されることがある。
【0027】
下部テーブル3の裏面側には、バックゲージ40が配置されている。バックゲージ40は、バックゲージキャレッジ41に沿って左右方向に移動する突き当て42a及び42bを備える。ここでは突き当てを突き当て42a及び42bの2つとしているが、突き当ての数は2つに限定されない。突き当て42a及び42bは高さ方向及び前後方向にも移動するように構成されている。
【0028】
オペレータが加工対象の板金WをダイTd上に配置して板金Wを曲げる前に、突き当て42a及び42bはダイTdと対応する位置に移動する。オペレータは、板金Wの奥側の端部を突き当て42a及び42bに突き当てるようにしてダイTd上に配置する。即ち、突き当て42a及び42bは、板金WをダイTd上に配置するときの板金Wの前後方向の位置を決めるよう作用する。
【0029】
プレスブレーキ100の左側の側方には、アーム7aを介して、表示部71と、複数の操作ボタンを含む操作部72とを有する操作ペンダント7が取り付けられている。操作ペンダント7はNC装置10に接続されている。NC装置10には、上部テーブル1を下降させる閉フットスイッチ81と上部テーブル1を上昇させる開フットスイッチ82とを有するフットスイッチ8が接続されている。
【0030】
図2は、プレスブレーキ100が備える角度センサの構成例を示す。図1においては図示を省略しているが、図2に示すように、プレスブレーキ100は、板金Wを曲げるときの板金Wの角度を計測する角度センサ21F及び21Rを備える。角度センサ21FはダイTdの前方側に配置され、角度センサ21RはダイTdの後方側に配置されている。角度センサ21F及び21Rは、いわゆる接触式角度センサである。角度センサ21F及び21Rは、それぞれ、センサ昇降機構22F及び22Rによって昇降するように構成されている。板金Wの角度を計測する必要があるとき、下方に位置する角度センサ21F及び21Rは、NC装置10による制御に従って、センサ昇降機構22F及び22Rによって上方へと移動する。
【0031】
角度センサ21F及び21Rは、本体部211と、本体部211に対して出没自在の突出部212とを有する。突出部212の上端部には、わずかに突出した先端部213が設けられている。図2に示す板金Wを曲げる加工開始前の状態で、角度センサ21F及び21Rの突出部212は最も突出していない状態にある。図3は、角度センサ21F及び21Rが検出する板金Wの角度を示す。図3に示すように、パンチTpが下降して板金Wが曲げられると、突出部212は板金Wが上方へと変位するのに応じて上方へと突出する。
【0032】
図3に示すように、角度センサ21Fが計測する板金Wの角度とは、ダイTdの上端面を延長した一点鎖線で示す面を基準面として、基準面とパンチTp及びダイTdよりも前方側の板金Wの部分とがなす角度αFである。角度センサ21Rが計測する板金Wの角度とは、基準面とパンチTp及びダイTdよりも後方側の板金Wの部分とがなす角度αRである。図2に示すように、角度センサ21F及び21Rが計測する角度αF及びαRはNC装置10に入力される。NC装置10は、180-αF-αRなる計算式によって、図3に示す板金Wの曲げ角度θを算出する。
【0033】
板金Wの角度を計測する角度センサは接触式角度センサに限定されず、レーザ式角度センサであってもよい。角度センサとしてレーザ式角度センサを用いる場合、センサ昇降機構22F及び22Rは必要なく、前方側及び後方側のレーザ式角度センサは高さ方向に固定の位置にある。前方側及び後方側のレーザ式角度センサは、パンチTp及びダイTdよりも前方側及び後方側の板金Wの部分に線状のレーザ光を照射するレーザ発光部と、板金Wに照射されている線状のレーザ光を撮影する撮像部とを有する。NC装置10は、撮像部による撮影画像の線状のレーザ光の角度に基づいて角度αF及びαRに相当する板金Wの角度を求めて板金Wの曲げ角度θを算出する。
【0034】
以上のように構成されるプレスブレーキ100が、同じ材料及び同じ板厚の複数枚の板金Wを連続的に曲げ加工するときの、NC装置10による制御動作を説明する。同じ材料及び同じ板厚の板金Wとは、同じ材料及び同じ板厚であると販売されている板金である。現実には、同じ材料及び同じ板厚であると販売されている板金であっても、板厚にばらつきがあることがあり、ヤング率等の材料特性にもばらつきがあることがある。
【0035】
<1枚目の板金Wの曲げ加工>
図4は、NC装置10による1枚目の板金W(第1の板金)を曲げ加工するときの制御動作の一例を示している。図4図7、及び図9において、横軸は時間、縦軸はパンチTpの先端の高さ方向の位置を示している。図4図7、及び図9においては、パンチTpの先端の高さ方向の位置の変化を理解しやすいよう、縦軸方向を拡大した状態で示している。図4における位置R3から位置F2までの距離は0.1mm~0.2mm程度である。また、後述する接触位置から位置F2までの距離は2mm~3mm程度である。
【0036】
板金Wの目標曲げ角度を例えば90度とする。NC装置10は、板金Wを目標曲げ角度の90度に曲げるよう上部テーブル1の昇降を図4に示すように制御する。NC装置10が上部テーブル1の下降を開始させると、パンチTpの先端が板金Wに接触する。パンチTpの先端が板金Wに接触している高さ方向の位置が接触位置である。NC装置10は、上部テーブル1をパンチTpの先端が図4の接触位置に位置している状態で停止させ、突き当て42a及び42bを板金Wから離隔させる。
【0037】
NC装置10は、パンチTpの先端が板金Wに接触した後の仮曲げ期間において、パンチTpの先端の位置を位置T1まで下降させて一旦停止させる。位置T1は、板金Wを目標曲げ角度の90度よりも広い所定の仮曲げ角度に曲げるための理論演算位置である。パンチTpの先端が板金Wに接触した後に板金Wを位置T1における仮曲げ角度に曲げるためのパンチTpの第1のデプス値は、曲げ理論に基づいて予め求められている。デプス値とは、パンチTpの先端が板金Wに接触した接触位置を基準としたときのパンチTpの下降量である。即ち、デプス値とはパンチTpの先端の高さ方向の位置を示す。以下、デプス値をD値と略記する。
【0038】
NC装置10は、パンチTpの先端の位置が位置T1となるようパンチTpを第1のD値だけ下降させたときの、角度センサ21F及び21Rが計測した板金Wの角度に基づいて板金Wの曲げ角度θt1(第1の曲げ角度)を算出する。NC装置10は、1枚目の板金Wの仮曲げ期間に算出した曲げ角度θt1を保持する。
【0039】
図4に示す例では、NC装置10は、仮曲げ期間においてパンチTpの先端の位置をさらに位置T2まで下降させる。位置T2は、板金Wを曲げ角度θt1よりも目標曲げ角度の90度に近い曲げ角度θt2に曲げるための演算位置である。NC装置10は、パンチTpの先端の位置が位置T2となるようパンチTpを所定のD値だけ下降させたときの板金Wの曲げ角度θt2を算出して保持する。位置T2における曲げ角度θt2は、後述するスプリングバック量を算出するための基準角度である。
【0040】
図4においては、仮曲げ期間において上部テーブル1(パンチTp)を2段階で下降させているが、下降の段階は2段階に限定されない。パンチTpの先端の位置を位置T1までの1段階で下降させてもよいし、3段階以上で下降させてもよい。前者の場合は位置T1における曲げ角度θt1がスプリングバック量を算出するための基準角度となり、後者の場合は最後の位置における曲げ角度がスプリングバック量を算出するための基準角度となる。このように、基準角度は、曲げ角度θt1であってもよいし、板金Wを除荷する前に板金Wを曲げ角度θt1より狭い曲げ角度に曲げたときの曲げ角度(例えば曲げ角度θt2)であってもよい。
【0041】
板金Wが曲げ角度θt2に曲げられたら、NC装置10はプレスブレーキ100をスプリングバック算出期間(以下、SB算出期間)に移行させる。SB算出期間において、NC装置10は、パンチTpが板金Wに接触している状態を維持しつつ、板金Wを除荷するよう、上部テーブル1を複数の段階で順に上昇させるよう制御する。除荷とは板金Wにかかっている荷重を取り除くことである。
【0042】
図4において、NC装置10は、パンチTpの先端の位置を位置R1まで上昇させて一旦停止させ、角度センサ21F及び21Rが計測した板金Wの角度に基づいて板金Wの曲げ角度θr1を算出する。続けて、NC装置10は、パンチTpの先端の位置を位置R2まで上昇させて一旦停止させ、板金Wの曲げ角度θr2を算出する。このとき、曲げ角度θr1と曲げ角度θr2との差が閾値以内であれば、板金Wの除荷が完了しているということである。図4は、位置R2において曲げ角度θr1と曲げ角度θr2との差が閾値より大きく、位置R2において板金Wの除荷が完了していない例を示している。
【0043】
そこで、NC装置10は、パンチTpの先端の位置を位置R3まで上昇させて一旦停止させ、板金Wの曲げ角度θr3を算出する。位置R3において曲げ角度θr2と曲げ角度θr3との差が閾値以内であり、位置R3で板金Wの除荷が完了している。
【0044】
板金Wの除荷が何段階で完了するかは、位置T2から位置R1までの距離、位置R1から位置R2までの距離等の各種の条件によって異なる。図4においては、位置R1、R2、R3の互いの間隔を比較的長い距離とした粗い段階としているが、一度にパンチTpの先端の位置を上昇させる距離を微細に設定した細かい段階としてもよい。この場合、NC装置10は、パンチTpの先端の位置を微細な距離だけ上昇させて板金Wの曲げ角度を算出する処理を連続的に繰り返す。微細な距離を一定の距離とすれば、パンチTpの先端の位置は、厳密には微細な階段状ではあるものの実質的に直線状に上昇しながら、各時点で板金Wの曲げ角度が算出されることになる。
【0045】
このように、NC装置10は、SB算出期間において板金Wが除荷された状態における板金Wの曲げ角度θr3(第2の曲げ角度)を算出する。仮曲げ期間において曲げ角度θt2に曲げても、SB算出期間において板金Wが除荷されると、スプリングバックによって曲げ角度が広がる。曲げ角度θr3は、スプリングバックによって広がった板金Wの曲げ角度である。NC装置10は、曲げ角度θr3から曲げ角度θt2を減算することにより、スプリングバック量(第1のスプリングバック量)を算出する。
【0046】
SB算出期間において曲げ角度θr3と曲げ角度θt2との差分に基づくスプリングバック量が得られれば、NC装置10はプレスブレーキ100を追い込み期間に移行させる。NC装置10は、板金Wを目標曲げ角度に曲げるためのスプリングバック量を考慮したD値を算出する。単純には、スプリングバック量が例えば2度であるとすると、目標曲げ角度を88度にして、板金Wを曲げ角度88度で曲げることができる下降量だけ上部テーブル1を下降させることが考えられる。ところが、一般的に目標曲げ角度によってスプリングバック量は異なるから、SB算出期間において得られたスプリングバック量をそのまま用いて目標曲げ角度を設定しても目標曲げ角度の90度とはならないことがある。
【0047】
そこで、NC装置10は、SB算出期間で得られたスプリングバック量をそのまま用いるのではなく、SB算出期間で得られたスプリングバック量を補正した上で板金Wを設定した目標曲げ角度に曲げるためのD値を算出するのがよい。
【0048】
詳細には、NC装置10は、パンチTpの先端の位置を位置R3から位置F1まで下降させる。位置F1は、スプリングバック量(好ましくは補正したスプリングバック量)を考慮した上で、板金Wを目標曲げ角度の90度よりわずかに広い曲げ角度に曲げるための理論演算位置である。このように、NC装置10は、除荷された状態の板金Wを目標曲げ角度及びスプリングバック量に基づいて、目標曲げ角度より広い曲げ角度に曲げるよう、上部テーブル1を下降させて、パンチTpの先端の位置を位置F1とする。NC装置10は、パンチTpの先端の位置が位置F1に位置している状態で、角度センサ21F及び21Rが計測した板金Wの角度に基づいて板金Wの曲げ角度θf1(第3の曲げ角度)を算出する。
【0049】
NC装置10は、パンチTpの先端の位置をさらに位置F2まで下降させる。位置F2は、スプリングバック量(補正したスプリングバック量)を考慮して、板金Wを目標曲げ角度の90度に曲げるための演算位置である。NC装置10は、パンチTpの先端の位置が位置F1に位置している状態で、目標曲げ角度と、スプリングバック量と、曲げ角度θf1とに基づいて、曲げ角度θf1に曲げられた板金Wを目標曲げ角度の90度に曲げるための第2のD値を求めて保持する。NC装置10は、求めた第2のD値だけ上部テーブル1を下降させて最終追い込み動作を実行して、パンチTpの先端の位置を位置F2とする。追い込み期間における追い込み動作の段階は2段階に限定されない。
【0050】
板金Wが目標曲げ角度に曲げられたら、NC装置10は、上部テーブル1を上昇させるようテーブル昇降機構6を制御する。以上により、1枚目の板金Wの曲げ加工が完了する。
【0051】
<2枚目以降の板金Wの曲げ加工>
図5は、2枚目以降の板金W(第2の板金)を曲げ加工するときの仮曲げ動作を示している。図5に示すように、NC装置10は、2枚目以降の板金Wの曲げ加工においては、パンチTpの先端が板金Wに接触した後の仮曲げ期間において、パンチTpの先端の位置を位置T1まで下降させるように、上部テーブル1を第1のD値だけ下降させるようテーブル昇降機構6を制御する。この第1のD値は、1枚目の板金Wの仮曲げ期間において用いた第1のD値と同じ値のD値である。図5における位置T1は、図4における位置T1と同じ位置である。
【0052】
NC装置10は、パンチTpの先端の位置を位置T1させて板金Wを仮曲げ角度に曲げた状態で、角度センサ21F及び21Rが計測した板金Wの角度に基づいて板金Wの曲げ角度θt1(第4の曲げ角度)を算出する。NC装置10は曲げ角度θt1を保持する。
【0053】
NC装置10は、例えば、2枚目以降の板金Wの曲げ加工の仮曲げ動作において得られた曲げ角度θt1(第4の曲げ角度)から1枚目の板金Wの曲げ加工の仮曲げ動作において得られた曲げ角度θt1(第1の曲げ角度)を減じて、両者の差分が±Δθ以内であるか否かを判定する。Δθは、2つの曲げ角度θt1間にほとんど差がないと判定できる程度の所定の角度に設定すればよい。
【0054】
両者の差分が±Δθ以内であれば、1枚目の板金Wと2枚目以降の板金Wとは板厚及び材料特性にほとんどばらつきがないと考えられる。そこで、NC装置10は、図6に示すように、SB算出期間におけるスプリングバック量の算出動作を省略して、即座に追い込み期間の追い込み動作に移行させる。NC装置10は、上部テーブル1を1枚目の板金Wの曲げ加工の追い込み期間における第2のD値だけ下降させて、パンチTpの先端の位置を位置T1から位置F2まで一度に下降させる。このように、板金Wは、パンチTpの先端の位置を位置T1から位置F2まで下降させる1段階の最終追い込み動作によって、目標曲げ角度の90度となるように曲げられる。
【0055】
2枚目以降の板金Wの曲げ加工の仮曲げ動作において得られた曲げ角度θt1から1枚目の板金Wの曲げ加工の仮曲げ動作において得られた曲げ角度θt1を減じた差分をdt1とする。差分dt1が±Δθ以内であったとする。
【0056】
図6に示す追い込み期間において、1枚目の板金Wの曲げ加工の追い込み期間において用いた第2のD値をそのまま用いるのではなく、上部テーブル1を、差分dt1に応じて第2のD値を補正した補正D値だけ下降させてもよい。NC装置10は、差分dt1が正の値であれば、第2のD値に値ΔDだけ加算したD値を補正D値とし、差分dt1が負の値であれば、第2のD値より値ΔDを減算したD値を補正D値とすればよい。値ΔDは、差分dt1が小さいほど小さく、大きいほど大きくすればよい。追い込み期間において補正D値を用いると、追い込み動作後のパンチTpの先端の位置は、第2のD値を用いたときの位置F2とはわずかに異なる位置となる。
【0057】
板金Wが目標曲げ角度に曲げられたら、NC装置10は、上部テーブル1を上昇させるようテーブル昇降機構6を制御する。以上により、1枚目の板金Wの仮曲げ角度である曲げ角度θt1と2枚目以降の板金Wの仮曲げ角度である曲げ角度θt1との差分が±Δθ以内である場合の2枚目以降の板金Wの曲げ加工が完了する。
【0058】
2枚目以降の板金Wの曲げ加工において、仮曲げ期間で得られた曲げ角度θt1と1枚目の板金Wの曲げ加工時の仮曲げ期間で得られた曲げ角度θt1との差分が±Δθ以内であれば、2枚目以降の板金Wのスプリングバック量の算出を省略することができるので、2枚目以降の板金Wの曲げ加工に要する時間を大幅に短縮することができる。
【0059】
一方で、2つの曲げ角度θt1間で差分が±Δθ以内でなければ、1枚目の板金Wと2枚目以降の板金Wとで板厚または材料特性のばらつきが大きいと考えられる。よって、1枚目の板金Wの曲げ加工の追い込み期間における最終追い込み動作で用いる第2のD値をそのまま用いて板金Wの追い込み動作を実行しても、目標曲げ角度の90度とはならない可能性が高い。そこで、NC装置10は、図7に示すように、SB算出期間を設けてスプリングバック量を算出した上で、追い込み期間の追い込み動作に移行させる。
【0060】
このとき、NC装置10は、1枚目の板金Wの曲げ加工のSB算出期間における上部テーブル1の上昇量を2枚目以降の板金WのSB算出期間における上部テーブル1の上昇量に反映させることにより、SB算出期間を短縮することが好ましい。
【0061】
図4において、仮曲げ期間終了時のパンチTpの先端の位置T2から板金Wの除荷が完了している位置R3より前の途中の段階である位置R2までの上部テーブル1の上昇量をU2とする。図7に示すように、NC装置10は、SB算出期間において、パンチTpの先端の位置T1から即座に上部テーブル1を上昇量U2だけ上昇させる。このようにすれば、NC装置10は、パンチTpの先端を短時間で板金Wの除荷が完了する位置R3まで上昇させることができる。
【0062】
SB算出期間において板金Wが除荷された状態で、NC装置10は、角度センサ21F及び21Rが計測した板金Wの角度に基づいて板金Wの曲げ角度θr3(第5の曲げ角度)を算出する。NC装置10は、曲げ角度θr3(第5の曲げ角度)から曲げ角度θt1(第4の曲げ角度)を減算することにより、スプリングバック量(第2のスプリングバック量)を算出する。NC装置10は、SB算出期間で得られたスプリングバック量を補正した上で板金Wを設定した目標曲げ角度に曲げるためのD値を算出するのがよい。
【0063】
詳細には、NC装置10は、パンチTpの先端の位置を位置R3から位置F1’まで下降させる。位置F1’は、スプリングバック量(好ましくは補正したスプリングバック量)を考慮した上で、板金Wを目標曲げ角度の90度よりわずかに広い曲げ角度に曲げるための理論演算位置である。NC装置10は、パンチTpの先端の位置が位置F1’に位置している状態で、角度センサ21F及び21Rが計測した板金Wの角度に基づいて板金Wの曲げ角度θf1’(第6の曲げ角度)を算出する。位置F1’は図4における位置F1と異なることがある。
【0064】
NC装置10は、パンチTpの先端の位置をさらに位置F2まで下降させる。位置F2は、スプリングバック量(補正したスプリングバック量)を考慮して、板金Wを目標曲げ角度の90度に曲げるための演算位置である。NC装置10は、パンチTpの先端の位置が位置F1’に位置している状態で、目標曲げ角度と、スプリングバック量と、曲げ角度θf1’とに基づいて、曲げ角度θf1’に曲げられた板金Wを目標曲げ角度の90度に曲げるための第3のD値を求めて保持する。NC装置10は、求めた第3のD値だけ上部テーブル1を下降させて最終追い込み動作を実行して、パンチTpの先端の位置を位置F2とする。追い込み期間における追い込み動作の段階は2段階に限定されない。
【0065】
板金Wが目標曲げ角度に曲げられたら、NC装置10は、上部テーブル1を上昇させるようテーブル昇降機構6を制御する。以上により、1枚目の板金Wの曲げ加工の仮曲げ期間で得られた曲げ角度θt1と2枚目以降の板金Wの曲げ加工の仮曲げ期間で得られた曲げ角度θt1との差分が±Δθ以内でない場合の2枚目以降の板金Wの曲げ加工が完了する。
【0066】
図8Aは、2枚目以降の板金Wを曲げ加工するときのスプリングバック量の算出動作の第1の変形例を示す。図8Aに示すように、図4における仮曲げ期間終了時のパンチTpの先端の位置T2から板金Wの除荷が完了している位置R3までの上部テーブル1の上昇量をU3とする。
【0067】
図8Aに示す第1の変形例においては、上昇量U3に1未満の所定の係数kを乗算した上昇量を、2枚目以降の板金Wを曲げ加工するときのSB算出期間における最初の上昇量R4として設定している。NC装置10は、パンチTpの先端を短時間で板金Wの除荷が完了する位置R5まで上昇させることができる。位置R5は位置R3と実質的に同じ位置である。
【0068】
図8Bは、2枚目以降の板金Wを曲げ加工するときのスプリングバック量の算出動作の第2の変形例を示す。図8Bに示す第2の変形例においては、上昇量U3を、2枚目以降の板金Wを曲げ加工するときのSB算出期間において板金Wを1段階で除荷するために上部テーブル1を上昇させる上昇量として設定している。第1または第2の変形例においても、2枚目以降の板金Wを曲げ加工するときのSB算出期間を短縮することができる。
【0069】
このように、2枚目以降の板金Wの曲げ加工において、1枚目の板金Wの曲げ加工の仮曲げ期間で得られた曲げ角度θt1と2枚目以降の板金Wの曲げ加工の仮曲げ期間で得られた曲げ角度θt1との差分が±Δθ以内でなければ、2枚目以降の板金Wのスプリングバック量を算出するので、2枚目以降の板金Wを目標曲げ角度に曲げることができる。1枚目の板金Wの曲げ加工のSB算出期間における上部テーブル1の上昇量を2枚目以降の板金WのSB算出期間における上部テーブル1の上昇量に反映させることにより、2枚目以降の板金Wの曲げ加工におけるSB算出期間を短縮することができる。従って、差分が±Δθ以内でなくても、2枚目以降の板金Wの曲げ加工に要する時間を短縮することができる。
【0070】
差分が±Δθ以内でないとき、NC装置10は、2枚目以降の板金Wを曲げ加工する加工時間をさらに短縮するために、プレスブレーキ100を図9に示すように制御してもよい。図9は、2枚目以降の板金Wを曲げ加工するときのスプリングバック量の算出動作を省略し、1枚目の板金Wを曲げ加工するときに得られたスプリングバック量を用いて2枚目以降の板金Wを曲げ加工するときの制御動作を示している。
【0071】
図9に示すように、NC装置10は、SB算出期間におけるスプリングバック量の算出動作を省略して、即座に追い込み期間の追い込み動作に移行させる。但し、差分が±Δθ以内であるときの図6に示す追い込み動作とは異なり、NC装置10は、次のように上部テーブル1の下降を制御する。
【0072】
NC装置10は、1枚目の板金Wの曲げ加工のSB算出期間で得られたスプリングバック量を用いて目標曲げ角度の90度となるようなD値を算出して追い込みを実行する。
【0073】
詳細には、NC装置10は、パンチTpの先端の位置を位置T1から位置F1”まで下降させる。位置F1”は、1枚目の板金Wの曲げ加工時に得られたスプリングバック量(好ましくは補正したスプリングバック量)を考慮した上で、板金Wを目標曲げ角度の90度よりわずかに広い曲げ角度に曲げるための理論演算位置である。NC装置10は、パンチTpの先端の位置が位置F1”に位置している状態で、角度センサ21F及び21Rが計測した板金Wの角度に基づいて板金Wの曲げ角度θf1”(第7の曲げ角度)を算出する。位置F1”は図4における位置F1と異なることがある。
【0074】
NC装置10は、パンチTpの先端の位置をさらに位置F2まで下降させる。位置F2は、スプリングバック量(補正したスプリングバック量)を考慮して、板金Wを目標曲げ角度の90度に曲げるための演算位置である。NC装置10は、パンチTpの先端の位置が位置F1”に位置している状態で、目標曲げ角度と、スプリングバック量と、曲げ角度θf1”とに基づいて、曲げ角度θf1’に曲げられた板金Wを目標曲げ角度の90度に曲げるための第4のD値を求める。NC装置10は、求めた第4のD値だけ上部テーブル1を下降させて最終追い込み動作を実行して、パンチTpの先端の位置を位置F2とする。
【0075】
NC装置10は、上部テーブル1を第4のD値だけ下降させるようテーブル昇降機構6を制御して、パンチTpの先端の位置を位置F1”から位置F2まで下降させる。追い込み動作の段階は2段階に限定されない。
【0076】
板金Wが目標曲げ角度に曲げられたら、NC装置10は、上部テーブル1を上昇させるようテーブル昇降機構6を制御する。以上により、1枚目の板金Wの曲げ加工の仮曲げ期間で得られた曲げ角度θt1と2枚目以降の板金Wの曲げ加工の仮曲げ期間で得られた曲げ角度θt1との差分が±Δθ以内でない場合の2枚目以降の板金Wを曲げ加工する加工時間をさらに短縮することができる。
【0077】
図10及び図11に示すフローチャートを用いて、プレスブレーキ100の動作及びプレスブレーキ100が実行するプレスブレーキ制御方法を説明する。図10は、少なくとも2枚の板金Wを曲げ加工する場合を示している。
【0078】
図10において、NC装置10は、曲げ加工の処理が開始されると、ステップS11にて、1枚目の板金W(第1の板金W)の曲げ加工を実行する。ステップS11は、図4に示すNC装置10による制御動作に相当する。このとき、NC装置10は、2枚目以降の板金Wの曲げ加工のため、仮曲げ期間の仮曲げ角度である曲げ角度θt1(第1の曲げ角度)、SB算出期間のスプリングバック量(第1のスプリングバック量)、追い込み期間における最終追い込み動作時の第2のD値を保持する。
【0079】
NC装置10は、ステップS21にて、次の板金W(第2の板金W)を仮曲げして、仮曲げ期間の仮曲げ角度である曲げ角度θt1(第4の曲げ角度)を取得する。ステップS21は、図5に示すNC装置10による仮曲げ動作に相当する。
【0080】
NC装置10は、ステップS22にて、第4の曲げ角度と第1の曲げ角度との差分が所定の角度以内であるか否かを判定する。第4の曲げ角度と第1の曲げ角度との差分が所定の角度以内であれば(YES)、NC装置10は、ステップS23にて、1枚目の板金Wの曲げ加工の追い込み動作で得られた第2のD値を用いて最終追い込み動作を実行して、処理をステップS28に移行させる。ステップS23は、図6に示すNC装置10による追い込み動作に相当する。上記のように、ステップS23にて、第2のD値の代わりに補正D値がもちいられてもよい。
【0081】
ステップS22にて、第4の曲げ角度と第1の曲げ角度との差分が所定の角度以内でなければ(NO)、NC装置10は、ステップS24にて、SB算出期間に移行させて第2の板金Wのスプリングバック量(第2のスプリングバック量)を算出する。NC装置10は、ステップS25にて、目標曲げ角度及び第2のスプリングバック量に基づいて第2の板金Wを目標曲げ角度より広い曲げ角度に曲げて、曲げ角度θf1’(第6の曲げ角度)を算出する。
【0082】
NC装置10は、ステップS26にて、目標曲げ角度、第2のスプリングバック量、第6の曲げ角度に基づいて、第2の板金Wを目標曲げ角度に曲げるための第3のD値を算出する。NC装置10は、ステップS27にて、第3のD値を用いて第2の板金Wの最終追い込み動作を実行して、処理をステップS28に移行させる。ステップS24~S27は、図7に示すNC装置10による制御動作に相当する。図7におけるSB算出期間の代わりに図8Aまたは図8Bに示すSB算出期間が用いられてもよい。
【0083】
NC装置10は、ステップS28にて、上部テーブル1を上昇させる。NC装置10は、ステップS31にて、曲げ加工する次の板金Wがあるか否かを判定する。次の板金Wがあれば(YES)、NC装置10は処理をステップS21に戻し、ステップS21以降の動作を繰り返す。次の板金Wがなければ(NO)、NC装置10は処理を終了させる。
【0084】
NC装置10は、ステップS24~S27に代えて、1枚目の板金Wの曲げ加工で得られたスプリングバック量(第1のスプリングバック量)を用いる図11に示すステップS250、260、及びS270を実行してもよい。図11は、図10に示すプレスブレーキ100の動作及びプレスブレーキ制御方法の変形例であり、図9に示すNC装置10による追い込み動作に相当する。
【0085】
NC装置10は、ステップS250にて、目標曲げ角度及び第1のスプリングバック量に基づいて第2の板金Wを目標曲げ角度より広い曲げ角度に曲げて、曲げ角度θf1”(第7の曲げ角度を算出)を算出する。NC装置10は、ステップS260にて、目標曲げ角度、第1のスプリングバック量、第7の曲げ角度に基づいて、第2の板金Wを目標曲げ角度に曲げるための第4のD値を算出する。NC装置10は、ステップS270にて、第4のD値を用いて第2の板金Wの最終追い込み動作を実行して、処理をステップS28に移行させる。
【0086】
本発明は以上説明した1またはそれ以上の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。以上説明した1またはそれ以上の実施形態においては、上部テーブル1を昇降可能なスライドテーブル、下部テーブル3を位置が固定されている固定テーブルとしているが、上部テーブル1を固定テーブル、下部テーブル3をスライドテーブルとすることも可能である。この場合、テーブル昇降機構6は下部テーブル3を昇降させる。上部テーブル1の上昇及び下降はそれぞれ下部テーブル3の下降及び上昇と読み替えられ、上部テーブル1の下降量及び下降量はそれぞれ下部テーブル3の上昇量及び上昇量と読み替えられる。
【0087】
1またはそれ以上の実施形態においては、パンチTpの先端が板金Wに接触した接触位置を基準としたときのパンチTpの下降量をD値としているが、ダイTdの先端の位置を基準としたときのダイTdの先端とパンチTpの先端との間の距離をD値としてもよい。この場合においても、D値はパンチTpの先端の高さ方向の位置を示す。
【符号の説明】
【0088】
1 上部テーブル
2 上部金型ホルダ
3 下部テーブル
4 下部金型ホルダ
5L,5R 側板
6 テーブル昇降機構
6L,6R 油圧シリンダ(テーブル昇降機構)
7 操作ペンダント
8 フットスイッチ
10 NC装置
21F,21R 角度センサ
22F,22R センサ昇降機構
40 バックゲージ
41 バックゲージキャレッジ
42a,42b 突き当て
100 プレスブレーキ
Td ダイ
Tp パンチ
W 板金
【要約】
【課題】複数枚の板金を曲げ加工するときの加工時間を短縮することができるプレスブレーキを提供する。
【解決手段】制御装置(NC装置10)は、複数枚の板金Wにおける1枚目の板金Wである第1の板金と、2枚目以降の板金Wである第2の板金を曲げ加工するよう制御する。制御装置は、第2の板金の仮曲げ時の第4の曲げ角度と第1の板金の仮曲げ時の第1の曲げ角度との差分が所定の角度以内であるか否かを判定する。第4の曲げ角度と第1の曲げ角度との差分が所定の角度以内であれば、制御装置は、第2の板金におけるスプリングバック量を算出することなく、上部テーブル1を第1の板金の追い込み動作時の第2のデプス値または第2のデプス値を第4の曲げ角度と第1の曲げ角度との差分に応じて補正した補正デプス値だけ下降させる。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11