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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】漏洩判定装置および漏洩判定システム
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/26 20060101AFI20240209BHJP
【FI】
G01M3/26 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023500205
(86)(22)【出願日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 JP2021006044
(87)【国際公開番号】W WO2022176089
(87)【国際公開日】2022-08-25
【審査請求日】2023-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 雄誠
(72)【発明者】
【氏名】落合 康敬
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 信
(72)【発明者】
【氏名】堂岸 善宏
(72)【発明者】
【氏名】市川 尚弘
(72)【発明者】
【氏名】谷口 勝也
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/208681(WO,A1)
【文献】特開平11-304632(JP,A)
【文献】特開平08-271372(JP,A)
【文献】特開2020-169768(JP,A)
【文献】国際公開第2019/021346(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00 - 3/40
F25B 49/00 -49/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒体循環回路を形成する配管に流体が充填された冷凍サイクル装置における前記流体の漏洩の有無を判定する漏洩判定装置であって、
前記配管に充填された前記流体の温度、または、前記冷凍サイクル装置内の外気温度が入力される温度入力部と、
前記配管に設定量だけ充填された際の前記流体の圧力が入力される圧力入力部と、
前記配管内の前記流体の圧力と基準圧力との差分である実測差圧値が入力される差圧入力部と、
前記温度入力部に入力された前記流体の温度または前記外気温度と、前記圧力入力部に入力された前記流体の圧力と、前記差圧入力部に入力された前記実測差圧値とを取得する情報取得部と、
前記配管に前記流体が設定量だけ充填された第1の時点における前記流体の温度または前記外気温度である第1温度値と、前記第1の時点における前記配管内の圧力である第1圧力値と、前記第1の時点から設定時間だけ経過した第2の時点における前記流体の温度または前記外気温度である第2温度値とに基づき、前記第2の時点の推定圧力である温度補正圧力値を算出する圧力補正部と、
前記第1圧力値と前記温度補正圧力値との差分である推定差圧値を算出する演算部と、
前記実測差圧値と前記推定差圧値との差である圧力差に基づき、前記冷凍サイクル装置における前記流体の漏洩の有無を判定する漏洩判定部と
を備える
漏洩判定装置。
【請求項2】
前記冷凍サイクル装置は、
室外熱交換器を有する室外機を備え、空調対象空間の空気調和を行う空気調和装置であり、
前記温度入力部は、
前記室外熱交換器の配管温度を検出する温度センサが接続され、
前記情報取得部は、
前記温度センサで検出された前記室外熱交換器を流れる流体の温度を取得する
請求項1に記載の漏洩判定装置。
【請求項3】
全天日射量を計測する日射計をさらに備え、
前記冷凍サイクル装置は、
室外機を備え、空調対象空間の空気調和を行う空気調和装置であり、
前記温度入力部は、
前記室外機の内部の外気温度を検出する温度センサが接続され、
前記情報取得部は、
前記温度センサで検出された前記外気温度を取得し、
前記演算部は、
前記第1の時点における前記全天日射量および前記外気温度に基づき前記第1温度値を算出するとともに、前記第2の時点における前記全天日射量および前記外気温度に基づき前記第2温度値を算出する
請求項1に記載の漏洩判定装置。
【請求項4】
前記冷凍サイクル装置は、
室外機および前記室外機を制御する室外制御装置を備え、空調対象空間の空気調和を行う空気調和装置であり、
前記温度入力部は、
前記室外制御装置で取得された温度が入力され、
前記情報取得部は、
前記温度入力部に入力された前記温度を前記流体の温度として取得する
請求項1に記載の漏洩判定装置。
【請求項5】
前記漏洩判定部は、
前記圧力差が閾値よりも大きい場合に、前記流体が漏洩していると判定し、
前記圧力差が前記閾値以下である場合に、前記流体が漏洩していないと判定する
請求項1~4のいずれか一項に記載の漏洩判定装置。
【請求項6】
前記漏洩の有無の判定結果を表示する表示部をさらに備える
請求項1~5のいずれか一項に記載の漏洩判定装置。
【請求項7】
前記冷凍サイクル装置における前記流体の漏洩の有無を判定する漏洩判定処理の開始および終了の操作を行う操作部をさらに備える
請求項1~6のいずれか一項に記載の漏洩判定装置。
【請求項8】
熱媒体循環回路を形成する配管に流体が充填された冷凍サイクル装置における前記流体の漏洩の有無を判定する漏洩判定システムであって、
前記冷凍サイクル装置の前記配管に充填する流体が封入された充填ボンベと、
前記流体の圧力に対する基準となる基準圧力の流体が封入されたマスター容器と、
前記冷凍サイクル装置の前記配管内の前記流体の圧力と前記基準圧力との差分である実測差圧値を計測する差圧計と、
前記冷凍サイクル装置における前記流体の漏洩の有無を判定する漏洩判定装置と
を備え、
前記漏洩判定装置は、
前記配管に充填された前記流体の温度、または、前記冷凍サイクル装置内の外気温度が入力される温度入力部と、
前記配管に設定量だけ充填された際の前記流体の圧力が入力される圧力入力部と、
前記実測差圧値が入力される差圧入力部と、
前記温度入力部に入力された前記流体の温度または前記外気温度と、前記圧力入力部に入力された前記流体の圧力と、前記差圧入力部に入力された前記実測差圧値とを取得する情報取得部と、
前記配管に前記流体が設定量だけ充填された第1の時点における前記流体の温度または前記外気温度である第1温度値と、前記第1の時点における前記配管内の圧力である第1圧力値と、前記第1の時点から設定時間だけ経過した第2の時点における前記流体の温度または前記外気温度である第2温度値とに基づき、前記第2の時点の推定圧力である温度補正圧力値を算出する圧力補正部と、
前記第1圧力値と前記温度補正圧力値との差分である推定差圧値を算出する演算部と、
前記実測差圧値と前記推定差圧値との差である圧力差に基づき、前記冷凍サイクル装置における前記流体の漏洩の有無を判定する漏洩判定部と
を有する
漏洩判定システム。
【請求項9】
前記マスター容器は、
外周部の熱伝導率よりも低い熱伝導率を有する断熱材で、前記外周部が覆われている
請求項8に記載の漏洩判定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷凍サイクル装置の気密試験に用いられる漏洩判定装置および漏洩判定システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気調和装置などの冷凍サイクル装置の据付け時および補修時において、冷凍サイクル装置に冷媒を封入する場合には、冷媒の漏洩を避けるため、封入前に冷凍サイクル装置の気密性を確認する必要がある。冷凍サイクル装置の気密性は、例えば窒素加圧漏洩試験などの気密試験により確認される。窒素加圧漏洩試験では、冷媒の封入前に冷凍サイクル装置に窒素ガスを封入して加圧し、一定時間の間に圧力降下があるかどうかで気密性が評価される。
【0003】
従来の加圧漏洩試験では、圧力計によって冷凍サイクル装置の圧力が検出され、圧力降下の有無が判断される。圧力計を用いる場合、圧力計の計測レンジは加圧圧力に依存するため、計測レンジが大きくなり、圧力変化への応答性が悪くなってしまう。そのため、冷凍サイクル装置に窒素ガスを封入して加圧した後に、気密性を評価するまでに、例えば1日などの長い時間が必要であった。
【0004】
気密性の評価方法として、差圧計を用いた差圧計法も知られている。差圧計法は、冷凍サイクル装置などの被検査物と、マスターと呼ばれる基準物とを同時に加圧し、被検査物における漏れによる圧力変化をマスターの圧力との差として検出する方法である。差圧計を用いる場合、差圧計の計測レンジは加圧圧力に依存しないため、計測レンジを小さくできる。そのため、圧力計を用いる場合と比較して、応答性を改善することができる。
【0005】
ただし、圧力は温度の変化により変動するため、差圧計法を用いて気密試験を行う場合、温度変化による影響を受けるという課題がある。特に、冷凍サイクル装置としての空気調和装置では、室外機が屋外に設置されていることが多い。そのため、例えば屋外などの日射などによる温度変化のある場所で試験を行う場合には、差圧計のメモリの振れが温度変化によるものなのか、あるいは被検査物の漏れによるものなのかの判定が困難になってしまう。
【0006】
この課題を解決するために、特許文献1では、漏洩検査時に、被検査物である測定対象容器と基準物である基準容器との差圧に対して温度補正を行い、測定対象容器における漏洩の判定精度を向上させることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2007-327849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
空気調和装置の気密試験を行う場合には、屋外に設置された室外機に対して、加圧のための窒素ガスを封入することが多い。また、空気調和装置は、冷媒回路の各部の温度上昇に起因して、空気調和装置自体の温度が上昇する。この場合、空気調和装置の室外機は、日射による輻射熱に加え、冷媒回路の各部における熱伝導による温度変化の影響を受ける。
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の漏洩検査では、雰囲気温度に基づいて圧力を補正するが、外気温度による熱伝導および熱輻射の影響が考慮されていない。そのため、圧力の補正が適切に行われず、測定誤差が生じてしまう。
【0010】
本開示は、上記従来の技術における課題に鑑みてなされたものであって、気密試験の際に、冷凍サイクル装置における漏洩の有無を精度よく判定することができる漏洩判定装置および漏洩判定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の漏洩判定装置は、熱媒体循環回路を形成する配管に流体が充填された冷凍サイクル装置における前記流体の漏洩の有無を判定する漏洩判定装置であって、前記配管に充填された前記流体の温度、または、前記冷凍サイクル装置内の外気温度が入力される温度入力部と、前記配管に設定量だけ充填された際の前記流体の圧力が入力される圧力入力部と、前記配管内の前記流体の圧力と基準圧力との差分である実測差圧値が入力される差圧入力部と、前記温度入力部に入力された前記流体の温度または前記外気温度と、前記圧力入力部に入力された前記流体の圧力と、前記差圧入力部に入力された前記実測差圧値とを取得する情報取得部と、前記配管に前記流体が設定量だけ充填された第1の時点における前記流体の温度または前記外気温度である第1温度値と、前記第1の時点における前記配管内の圧力である第1圧力値と、前記第1の時点から設定時間だけ経過した第2の時点における前記流体の温度または前記外気温度である第2温度値とに基づき、前記第2の時点の推定圧力である温度補正圧力値を算出する圧力補正部と、前記第1圧力値と前記温度補正圧力値との差分である推定差圧値を算出する演算部と、前記実測差圧値と前記推定差圧値との差である圧力差に基づき、前記冷凍サイクル装置における前記流体の漏洩の有無を判定する漏洩判定部とを備えるものである。
【0012】
本開示の漏洩判定システムは、熱媒体循環回路を形成する配管に流体が充填された冷凍サイクル装置における前記流体の漏洩の有無を判定する漏洩判定システムであって、前記冷凍サイクル装置の前記配管に充填する流体が封入された充填ボンベと、前記流体の圧力に対する基準となる基準圧力の流体が封入されたマスター容器と、前記冷凍サイクル装置の前記配管内の前記流体の圧力と前記基準圧力との差分である実測差圧値を計測する差圧計と、前記冷凍サイクル装置における前記流体の漏洩の有無を判定する漏洩判定装置とを備え、前記漏洩判定装置は、前記配管に充填された前記流体の温度、または、前記冷凍サイクル装置内の外気温度が入力される温度入力部と、前記配管に設定量だけ充填された際の前記流体の圧力が入力される圧力入力部と、前記実測差圧値が入力される差圧入力部と、前記温度入力部に入力された前記流体の温度または前記外気温度と、前記圧力入力部に入力された前記流体の圧力と、前記差圧入力部に入力された前記実測差圧値とを取得する情報取得部と、前記配管に前記流体が設定量だけ充填された第1の時点における前記流体の温度または前記外気温度である第1温度値と、前記第1の時点における前記配管内の圧力である第1圧力値と、前記第1の時点から設定時間だけ経過した第2の時点における前記流体の温度または前記外気温度である第2温度値とに基づき、前記第2の時点の推定圧力である温度補正圧力値を算出する圧力補正部と、前記第1圧力値と前記温度補正圧力値との差分である推定差圧値を算出する演算部と、前記実測差圧値と前記推定差圧値との差である圧力差に基づき、前記冷凍サイクル装置における前記流体の漏洩の有無を判定する漏洩判定部とを有するものである。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、算出した推定差圧値と、実際の差圧である実測差圧値との比較により、冷凍サイクル装置における流体の漏洩の有無が判定される。そのため、冷凍サイクル装置における流体の漏洩の有無を精度よく判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施の形態1に係る漏洩判定システムの概略的な構成の一例を示すブロック図である。
図2】実施の形態1に係る漏洩判定装置の構成の一例を示す概略図である。
図3】実施の形態1に係る漏洩判定システムの構成の一例を示す概略図である。
図4図2の制御部の構成の一例を示す機能ブロック図である。
図5図4の制御部の構成の一例を示すハードウェア構成図である。
図6図4の制御部の構成の他の例を示すハードウェア構成図である。
図7】実施の形態1に係る漏洩判定装置による漏洩判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図8】実施の形態1に係る漏洩判定装置による漏洩判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図9】実施の形態2に係る漏洩判定システムの構成の一例を示す概略図である。
図10】実施の形態2に係る漏洩判定装置の構成の一例を示す概略図である。
図11】実施の形態2に係る漏洩判定装置による漏洩判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図12】実施の形態2に係る漏洩判定装置による漏洩判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図13】実施の形態3に係る漏洩判定システムの構成の一例を示す概略図である。
図14】実施の形態3に係る漏洩判定装置による漏洩判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図15】実施の形態3に係る漏洩判定装置による漏洩判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して説明する。本開示は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、本開示は、以下の各実施の形態に示す構成のうち、組合せ可能な構成のあらゆる組合せを含むものである。また、各部の具体的な構造などについては、適宜図示を簡略化または省略することがある。
【0016】
実施の形態1.
本実施の形態1に係る漏洩判定装置について説明する。本実施の形態1に係る漏洩判定装置は、被検査物である冷凍サイクル装置に対して気密試験を行った際に、冷凍サイクル装置の冷媒などの熱媒体が循環する配管における漏洩の有無を判定するものである。
【0017】
[漏洩判定システム100の概略構成]
図1は、本実施の形態1に係る漏洩判定システムの概略的な構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、漏洩判定システム100は、漏洩判定装置1、冷凍サイクル装置2、充填ボンベ3、マスター容器4および差圧計5を含んで構成されている。
【0018】
漏洩判定装置1は、気密試験の際に、冷凍サイクル装置2における漏洩の有無を判定する。漏洩判定装置1には、冷凍サイクル装置2および差圧計5が接続されている。
【0019】
冷凍サイクル装置2は、気密試験が行われる測定対象物であり、例えば、配管内を冷媒、あるいは、水またはブラインなどの熱媒体が循環することにより、空調対象空間の空気を調和する空気調和装置である。冷凍サイクル装置2には、漏洩判定装置1および充填ボンベ3が接続されている。なお、以下の説明では、冷凍サイクル装置2の配管内を循環する冷媒または熱媒体を単に「熱媒体」と称して説明する。
【0020】
充填ボンベ3は、冷凍サイクル装置2に窒素などの流体を充填して封入するために設けられている。充填ボンベ3は、冷凍サイクル装置2に接続されている。マスター容器4は、冷凍サイクル装置2の漏洩を判定する際の圧力の基準となる、基準圧力の流体が封入された基準容器である。基準圧力は、気密試験の際に、冷凍サイクル装置2の配管に設定充填量だけ流体が充填された際の配管内の圧力と同等の圧力である。マスター容器4は、差圧計5に接続されている。
【0021】
差圧計5は、冷凍サイクル装置2に充填された流体の圧力と、マスター容器4内の流体の圧力との差圧を計測する。差圧計5には、漏洩判定装置1、冷凍サイクル装置2およびマスター容器4が接続されている。
【0022】
(漏洩判定装置1)
図2は、本実施の形態1に係る漏洩判定装置の構成の一例を示す概略図である。図2に示すように、漏洩判定装置1は、温度入力部11、差圧入力部12、圧力入力部13、温度センサ14、表示部15、操作部16および制御部10を備えている。
【0023】
温度入力部11は、温度センサ14が接続される端子である。温度入力部11には、温度センサ14で検出された冷凍サイクル装置2の配管に充填された流体の温度を示す温度値が入力される。温度センサ14は、冷凍サイクル装置2に接続され、冷凍サイクル装置2の温度を取得する。温度センサ14として、例えば、熱電対が用いられる。
【0024】
差圧入力部12は、差圧計5が接続される端子である。差圧入力部12には、差圧計5で計測された冷凍サイクル装置2の圧力とマスター容器4の圧力との差圧である実測差圧値が入力される。
【0025】
圧力入力部13は、冷凍サイクル装置2に設けられた圧力センサ25(図3参照)が接続される端子である。圧力入力部13には、充填ボンベ3から冷凍サイクル装置2の配管に充填されたる流体の圧力を示す圧力値が入力される。
【0026】
各種のセンサ類が接続される温度入力部11、差圧入力部12および圧力入力部13には、温度または圧力などを示す値が電流として入力され、入力された電流が制御部10で温度値または圧力値を示すデータに変換される。そのため、温度入力部11、差圧入力部12および圧力入力部13は、例えば制御盤などの端子台に設けられると好ましい。
【0027】
表示部15は、操作部16に対する操作、気密試験時の温度および圧力などのパラメータおよび気密試験による漏洩の有無など、気密試験に関する情報を表示する。表示部15は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)または有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイなどの、日射が当たった場合の視認性を考慮した素材で構成されている。また、日射による反射を防止するため、表示部15には、液晶フィルムが貼付されてもよい。
【0028】
本実施の形態1において、表示部15は、温度および圧力などのパラメータを表示するパラメータ表示部15aと、気密試験時における漏洩の有無などを表示する漏洩有無表示部15bとに区別されて設けられている。なお、これに限られず、表示部15は、パラメータ表示部15aおよび漏洩有無表示部15bが一体的に設けられてもよい。
【0029】
操作部16は、気密試験の開始および終了などの各種の操作を行うために設けられ、例えば、ユーザによって操作されるボタンおよびキーなどで構成されている。操作部16としては、例えば、タッチセンサを有するタッチパネルを用いると、ユーザによる誤操作を防止することができるため、好ましい。
【0030】
この場合、表示部15としては、例えばディスプレイ上にタッチパネルが積層されたタッチパネルディスプレイを用いることができる。また、表示部15および操作部16としてタッチパネルディスプレイを用いる場合には、各種ボタンまたはキーがソフトウェアボタンまたはソフトウェアキーとして表示部15に表示されるようにしてもよい。
【0031】
制御部10は、漏洩判定システム100に設けられた各種センサなどから受け取る情報に基づき、漏洩判定装置1全体の動作を制御する。特に、本実施の形態1では、制御部10は、気密試験の際に、受け取った各種の情報に基づき、冷凍サイクル装置2の漏洩の有無を判定する漏洩判定処理を行う。制御部10は、ソフトウェアを実行することにより各種機能を実現するマイクロコンピュータなどの演算装置、もしくは各種機能に対応する回路デバイスなどのハードウェアなどで構成されている。制御部10の詳細については、後述する。
【0032】
[漏洩判定システム100の構成]
次に、本実施の形態1に係る漏洩判定システム100の具体的な構成について説明する。図3は、本実施の形態1に係る漏洩判定システムの構成の一例を示す概略図である。図3に示す例は、図1に示す漏洩判定システム100の構成をより具体的に図示したものである。図3に示すように、漏洩判定システム100は、漏洩判定装置1、冷凍サイクル装置2、充填ボンベ3、マスター容器4および差圧計5を含んで構成されている。この例では、冷凍サイクル装置2として空気調和装置が用いられた場合について説明する。
【0033】
冷凍サイクル装置2としての空気調和装置は、屋外に設置された室外機2aと、空調対象空間に設置された図示しない室内機とで構成されている。室外機2aには、室外熱交換器20と、図示しない圧縮機とが設けられている。室外機2aの圧縮機および室外熱交換器20、ならびに室内機に設けられた室内熱交換器および減圧弁が配管で接続されることにより、冷媒または水などの熱媒体が循環する熱媒体循環回路(冷媒回路)が構成される。
【0034】
室外機2aには、充填口21および接続口22が設けられている。この例では、2つの充填口21aおよび21bと、2つの接続口22aおよび22bとが熱媒体循環回路を構成する配管にそれぞれ設けられている。充填口21aおよび21bは、充填ボンベ3が接続され、気密試験の際に流体が充填される。接続口22aおよび22bは、差圧計5の測定ポート5aに接続されている。なお、充填口21および接続口22のそれぞれは、この例に限られず、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0035】
充填口21と充填ボンベ3の接続端との間には、充填バルブ23が設けられている。この例では、充填口21aに対して充填バルブ23aが設けられ、充填口21bに対して充填バルブ23bが設けられている。充填バルブ23aおよび23bは、例えば電磁弁であり、開閉することによって充填ボンベ3から充填される流体の通過および遮断を制御する。充填バルブ23aおよび23bの開閉は、漏洩判定装置1の制御部10によって制御される。
【0036】
接続口22と差圧計5の測定ポート5aとの間には、接続バルブ24が設けられている。この例では、接続口22aに対して接続バルブ24aが設けられ、接続口22bに対して接続バルブ24bが設けられている。接続バルブ24aおよび24bは、例えば電磁弁であり、開閉することによって差圧計5の測定ポート5aに供給される流体の通過および遮断を制御する。接続バルブ24aおよび24bの開閉は、漏洩判定装置1の制御部10によって制御される。
【0037】
充填ボンベ3は、空気調和装置の熱媒体循環回路に流体を充填するために設けられ、室外機2aの充填バルブ23に接続されている。充填ボンベ3は、例えば、窒素ガスを封入する窒素ガスボンベである。なお、気密試験に用いられる流体は、窒素ガスに限られず、空気などの他の流体であってもよい。
【0038】
充填ボンベ3と充填口21との間には、圧力センサ25が設けられている。圧力センサ25は、充填ボンベ3から熱媒体循環回路に充填される流体の圧力を検出する。圧力センサ25は、漏洩判定装置1の圧力入力部13に接続されている。圧力センサ25は、例えば、軽量かつ耐久性が高いものが好ましい。また、気密試験である加圧漏洩試験では、一般的に2MPa~4MPa以上の窒素を充填して試験が行われる。そのため、圧力センサ25の耐圧は、5MPa以上であると好ましい。さらに、圧力センサ25の計測レンジは、測定精度を考慮して、-100kPa~5MPa程度であると好ましい。
【0039】
マスター容器4は、熱媒体循環回路に充填された流体の圧力に対して基準となる容器であり、内部の圧力が基準圧力となるように流体が封入されている。マスター容器4は、差圧計5の基準ポート5bに接続されている。マスター容器4は、温度変化によって内部の流体の圧力変化を極力抑えることができると好ましい。そのために、マスター容器4は、例えば、熱伝導率が低いステンレス鋼製(SUS304)であると好ましい。また、マスター容器4は、5mm以上程度の肉厚を有し、100cm~300cm程度の持ち運びが行いやすい大きさであると好ましい。
【0040】
なお、マスター容器4は、外周部を断熱材で覆うようにしてもよい。この場合の断熱材は、例えば、ウレタンフォームなどの熱伝導率がマスター容器4の外周部よりも低く、かつ入手しやすいものが好ましい。また、断熱材は、例えば、結束バンドで巻く、または両面テープなどで貼り付けるなど、マスター容器4に対して簡易的に固定できると好ましい。
【0041】
差圧計5は、空気調和装置の熱媒体循環回路に充填された流体の圧力と、マスター容器4に封入された流体による基準圧力との差圧を計測する。差圧計5は、測定ポート5a、基準ポート5bおよび出力ポート5cを有している。測定ポート5aには、室外機2aの接続口22が接続され、熱媒体循環回路に充填された流体の一部が入力される。基準ポート5bには、マスター容器4が接続され、マスター容器4内の流体の一部が入力される。出力ポート5cには、漏洩判定装置1の差圧入力部12が接続され、計測された差圧を示す実測差圧値ΔPが漏洩判定装置1に対して出力される。
【0042】
差圧計5は、例えば、軽量かつ耐久性が高いものが好ましい。また、加圧漏洩試験では、一般的に2MPa~4MPa以上の窒素を充填して試験が行われる。そのため、差圧計5の耐圧は、5MPa以上であると好ましい。さらに、差圧計5の計測レンジは、測定精度を考慮して微少な漏洩でも検知できるように、-150kPa~150kPa程度であると好ましい。
【0043】
測定ポート5aと接続口22との間には、開閉バルブ26aが設けられている。また、基準ポート5bとマスター容器4との間には、開閉バルブ26bが設けられている。開閉バルブ26aおよび26bは、例えば電磁弁であり、開閉することによって差圧計5に入力される流体の通過および遮断を制御する。開閉バルブ26aおよび26bの開閉は、漏洩判定装置1の制御部10によって制御される。
【0044】
漏洩判定装置1は、差圧計5から入力された実測差圧値ΔPに基づき、冷凍サイクル装置2である空気調和装置における漏洩の有無を判定する。漏洩判定装置1の温度入力部11には、温度センサ14が接続されている。
【0045】
温度センサ14は、空気調和装置の室外機2aに接続されている。特に、温度センサ14は、冷凍サイクル装置2である空気調和装置の熱媒体循環回路において特に表面積が大きく、日射の影響を受けやすい部位に設置されている。これは、気密試験の際に、室外機2aに対する日射による温度上昇に基づく圧力変化を正確に計測するためである。本実施の形態1において、温度センサ14は、室外機2aの室外熱交換器20の配管部に設置される。
【0046】
漏洩判定装置1の差圧入力部12には、差圧計5の出力ポート5cが接続され、差圧計5で計測された実測差圧値ΔPが入力される。
【0047】
漏洩判定装置1は、気密試験の際に容易に設置できるように、例えば縦10cm×横10cm×高さ15cm程度の小型のものとし、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂などのプラスチック製とすると好ましい。
【0048】
[制御部10の構成]
次に、漏洩判定装置1の制御部10の構成について説明する。図4は、図2の制御部の構成の一例を示す機能ブロック図である。図4に示すように、制御部10は、情報取得部111、圧力補正部112、演算部113、漏洩判定部114、指令部115および記憶部116を有している。
【0049】
情報取得部111は、漏洩判定システム100に設けられた各種センサなどからデータを取得する。例えば、情報取得部111は、温度入力部11を介して温度センサ14で検出された初期温度値である第1温度値T1および第2温度値T2などの温度値を取得する。第1温度値T1は、冷凍サイクル装置2である空気調和装置の配管に充填ボンベ3から流体が設定充填量だけ充填され、配管内の均圧が完了した第1の時点における流体の温度である。第2温度値T2は、差圧計5によって空気調和装置とマスター容器4との差圧の計測が開始されてから設定時間が経過した第2の時点における、空気調和装置内の流体の温度である。
【0050】
また、情報取得部111は、差圧入力部12を介して差圧計5から供給された実測差圧値ΔPを取得する。さらに、情報取得部111は、圧力入力部13を介して圧力センサ25で検出された初期圧力値である第1圧力値P1などの圧力値を取得する。第1圧力値P1は、第1の時点における流体の圧力である。
【0051】
圧力補正部112は、温度センサ14で検出された第1温度値T1および第2温度値T2、ならびに、圧力センサ25で検出された第1圧力値P1に基づき、温度補正圧力値P2を算出する。温度補正圧力値P2は、空気調和装置における漏洩がないと仮定した場合の、日射などによる温度変化を考慮して推定される圧力である。
【0052】
演算部113は、第1圧力値P1と温度補正圧力値P2との差分である推定差圧値「P2-P1(またはP1-P2)」を算出する。推定差圧値は、空気調和装置における漏洩がないと仮定した場合の、日射などによる温度変化を考慮して推定される差圧である。漏洩判定部114は、差圧計5から供給される実測差圧値ΔPと、演算部113で算出された推定差圧値とに基づき、冷凍サイクル装置2の漏洩の有無を判定する。
【0053】
指令部115は、漏洩判定装置1の各部に対して指令を送ることにより、各部の動作を制御する。例えば、指令部115は、情報取得部111で取得された温度値および圧力値などに基づき、充填バルブ23、接続バルブ24および開閉バルブ26の各バルブの開閉を制御する。また、指令部115は、漏洩判定部114での判定結果を表示部15に表示させる。
【0054】
記憶部116は、制御部10の各部で用いられる各種の情報を記憶する。例えば、記憶部116は、温度センサ14で検出された第1温度値T1および第2温度値T2などの温度値と、圧力センサ25で検出された第1圧力値P1および圧力補正部112で算出された温度補正圧力値P2などの圧力値とを記憶する。
【0055】
図5は、図4の制御部の構成の一例を示すハードウェア構成図である。制御部10の各種機能がハードウェアで実行される場合、図4の制御部10は、図5に示すように、処理回路51で構成される。図4の情報取得部111、圧力補正部112、演算部113、漏洩判定部114、指令部115および記憶部116の各機能は、処理回路51により実現される。
【0056】
各機能がハードウェアで実行される場合、処理回路51は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせたものが該当する。情報取得部111、圧力補正部112、演算部113、漏洩判定部114、指令部115および記憶部116の各部の機能それぞれを処理回路51で実現してもよいし、各部の機能を1つの処理回路51で実現してもよい。
【0057】
図6は、図4の制御部の構成の他の例を示すハードウェア構成図である。制御部10の各種機能がソフトウェアで実行される場合、図4の制御部10は、図6に示すように、プロセッサ52およびメモリ53で構成される。情報取得部111、圧力補正部112、演算部113、漏洩判定部114、指令部115および記憶部116の各機能は、プロセッサ52およびメモリ53により実現される。
【0058】
各機能がソフトウェアで実行される場合、情報取得部111、圧力補正部112、演算部113、漏洩判定部114、指令部115および記憶部116の機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアおよびファームウェアは、プログラムとして記述され、メモリ53に格納される。プロセッサ52は、メモリ53に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各部の機能を実現する。
【0059】
メモリ53として、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable and Programmable ROM)およびEEPROM(Electrically Erasable and Programmable ROM)などの不揮発性または揮発性の半導体メモリなどが用いられる。また、メモリ53として、例えば、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、CD(Compact Disc)、MD(Mini Disc)およびDVD(Digital Versatile Disc)などの着脱可能な記録媒体が用いられてもよい。
【0060】
[漏洩判定装置1の設置]
気密試験を行う際の漏洩判定装置1の設置について説明する。まず、漏洩判定装置1が室外機2a近傍の任意の位置に設置される。また、漏洩判定装置1に差圧計5が接続される。具体的には、漏洩判定装置1の差圧入力部12と差圧計5の出力ポート5cとが接続される。また、差圧計5が室外機2aに接続される。具体的には、室外機2aの筐体の一部が開放され、内部に設けられた接続口22と差圧計5の測定ポート5aとが接続される。
【0061】
次に、漏洩判定装置1の圧力入力部13に圧力センサ25が接続される。また、圧力センサ25が室外機2aの充填口21に設置されるとともに、充填ボンベ3が充填口21aに接続される。また、マスター容器4が差圧計5の基準ポート5bに接続される。
【0062】
そして、温度センサ14が室外機2aに接続される。具体的には、温度センサ14は、熱媒体循環回路において表面積が大きい室外熱交換器20の配管部分に設置される。なお、この場合には、温度センサ14で検出される温度が外気の影響を受けることを防ぐため、温度センサ14は、先端を断熱材などで覆うようにして設置されると好ましい。
【0063】
[漏洩判定処理]
漏洩判定装置1による冷凍サイクル装置2の漏洩判定処理について説明する。ここでは、気密試験として、冷凍サイクル装置2である空気調和装置の配管に窒素を充填する窒素加圧漏洩試験を行う場合を例にとって説明する。
【0064】
図7および図8は、本実施の形態1に係る漏洩判定装置による漏洩判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、図7および図8に示されるフローチャートにおいて、記号Aは、それぞれ対応する記号へと処理が移行することを示す。作業者によって漏洩判定装置1の操作部16が操作され、気密試験を開始するための開始ボタンなどが操作されると、気密試験が開始され、以下に示す一連の処理が実行される。
【0065】
ステップS1において、制御部10の指令部115は、充填バルブ23aおよび23b、接続バルブ24aおよび24b、ならびに、開閉バルブ26aおよび26bの各バルブを「開」状態とする。これにより、充填ボンベ3から流体である窒素ガスが流出し、空気調和装置の室外機2aの配管に窒素ガスが充填される。
【0066】
ステップS2において、制御部10は、空気調和装置の配管に充填された窒素ガスが2MPaなどの予め設定された設定充填量に到達したか否かを判定する。窒素ガスの充填量が設定充填量に到達した場合(ステップS2:Yes)、指令部115は、ステップS3において、充填バルブ23aおよび23bを「閉」状態とする。そして、ステップS4において、10分~15分程度、配管内の窒素ガスが均圧される。一方、窒素ガスの充填量が設定充填量に到達していない場合(ステップS2:No)には、充填量が設定充填量に到達するまで、ステップS2の処理が繰り返される。
【0067】
次に、均圧が完了した第1の時点において、室外機2aに設けられた室外熱交換器20の温度が温度センサ14によって検出される。そして、ステップS5において、情報取得部111は、温度センサ14で検出された温度を示す温度値を取得し、第1温度値T1として記憶部116に記憶する。
【0068】
ステップS6では、第1の時点における空気調和装置の配管内の圧力が圧力センサ25によって検出される。情報取得部111は、圧力センサ25で検出された圧力を示す圧力値を取得し、第1圧力値P1として記憶部116に記憶する。そして、ステップS7において、指令部115は、開閉バルブ26aおよび26bを「閉」状態とする。
【0069】
次に、ステップS8において、差圧計5による空気調和装置とマスター容器4との差圧計測が開始される。差圧計測は、差圧計5により、例えば定期的に行われる。差圧計5は、室外機2aから供給される流体と、マスター容器4から供給される流体とに基づき、それぞれの流体の差圧である実測差圧値ΔPを計測する。情報取得部111は、差圧計5で計測された実測差圧値ΔPを取得し、記憶部116に記憶する。
【0070】
ステップS9において、差圧計測が開始されてから設定時間だけ待機し、待機が終了した第2の時点において、室外熱交換器20の温度が温度センサ14によって再度検出される。そして、ステップS10において、情報取得部111は、温度センサ14で検出された温度を示す温度値を取得して、第2温度値T2として記憶部116に記憶する。
【0071】
ステップS11において、圧力補正部112は、記憶部116に記憶された第1温度値T1、第2温度値T2および第1圧力値P1に基づき、温度補正圧力値P2を算出し、記憶部116に記憶する。温度補正圧力値P2は、式(1)に基づき算出される。
P2=((T2+273.15)/(T1+273.15))×P1
・・・(1)
【0072】
ステップS12において、漏洩判定部114は、第1温度値T1と第2温度値T2とを比較し、第2温度値T2が第1温度値T1より大きいか否かを判定する。比較の結果、第2温度値T2が第1温度値T1より大きい場合(ステップS12:Yes)、すなわち、待機中に流体の温度が上昇した場合には、処理がステップS13に移行する。また、第2温度値T2が第1温度値T1以下である場合(ステップS12:No)、すなわち、待機中に流体の温度が低下した場合には、処理がステップS15に移行する。
【0073】
ステップS13において、演算部113は、温度補正圧力値P2と第1圧力値P1との差分である推定差圧値「P2-P1」を算出する。そして、漏洩判定部114は、記憶部116に記憶された実測差圧値ΔPと、演算部113で算出された推定差圧値「P2-P1」との差である圧力差「ΔP-(P2-P1)」が予め設定された閾値よりも大きいか否かを判定する。ここで、圧力差と比較される閾値は、差圧計5で検知できる圧力を考慮して、差圧計5の分解能に対応する値(例えば、5kPa程度)に設定すると好ましい。
【0074】
圧力差が閾値よりも大きい場合(ステップS13:Yes)には、推定差圧値以上の圧力差が生じているため、漏洩判定部114は、ステップS14において、「漏洩あり」と判定する。一方、圧力差が閾値以下である場合(ステップS13:No)には、処理がステップS16に移行する。
【0075】
ステップS15において、演算部113は、第1圧力値P1と温度補正圧力値P2との差分である推定差圧値「P1-P2」を算出する。そして、漏洩判定部114は、記憶部116に記憶された実測差圧値ΔPと、演算部113で算出された推定差圧値「P1-P2」との差である圧力差「ΔP-(P1-P2)」が閾値よりも大きいか否かを判定する。
【0076】
圧力差が閾値よりも大きい場合(ステップS15:Yes)には、推定差圧値以上の圧力差が生じているため、漏洩判定部114は、ステップS14において、「漏洩あり」と判定する。一方、圧力差が閾値以下である場合(ステップS15:No)には、処理がステップS16に移行する。
【0077】
ステップS16において、漏洩判定部114は、気密試験の試験時間が2時間以上であるか否かを判定する。試験時間が2時間以上である場合(ステップS16:Yes)には、十分な試験時間が経過しているにもかかわらず圧力差に差が生じていないため、漏洩判定部114は、ステップS17において、「漏洩なし」と判定する。一方、試験時間が2時間未満である場合(ステップS16:No)には、処理がステップS10に戻る。
【0078】
ステップS18において、指令部115は、判定結果である漏洩の有無を示す情報を、記憶部116に記憶するとともに、表示部15に表示させる。そして、指令部115は、接続バルブ24aおよび24bを「閉」状態とする。これにより、一連の処理が終了する。
【0079】
以上のように、本実施の形態1に係る漏洩判定装置1は、空気調和装置における漏洩がないと仮定した場合の、日射などによる温度変化を考慮して推定される差圧である推定差圧値を算出し、算出した推定差圧値と、実際の差圧である実測差圧値とを比較して漏洩の有無を判定する。推定差圧値と実測差圧値との間に差が生じる場合には、この差が日射などによる温度変化以外の要因、すなわち、配管における漏洩によるものであると判定できるしたがって、本実施の形態1に係る漏洩判定装置1では、推定差圧値と実測差圧値とを比較することにより、冷凍サイクル装置2における流体の漏洩の有無を精度よく判定することができる。
【0080】
実施の形態2.
次に、本実施の形態2について説明する。本実施の形態2に係る漏洩判定装置は、温度補正圧力値P2を算出する際に用いられる第1温度値T1および第2温度値T2を、外気温度および日射量などの日射の影響を含むパラメータに基づき取得する点で、実施の形態1と相違する。なお、以下の説明において、実施の形態1と共通する部分には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0081】
[漏洩判定システム200の構成]
図9は、本実施の形態2に係る漏洩判定システムの構成の一例を示す概略図である。図9に示すように、漏洩判定システム200は、漏洩判定装置1A、冷凍サイクル装置2、充填ボンベ3、マスター容器4および差圧計5を含んで構成されている。この例では、実施の形態1と同様に、冷凍サイクル装置2として空気調和装置が用いられた場合について説明する。
【0082】
本実施の形態2において、漏洩判定装置1Aに接続される温度センサ14は、冷凍サイクル装置2である空気調和装置の室外機2a内の外気温度を検出できるように、室外機2a内の任意の位置に設置されている。温度センサ14は、例えば、テープなどの簡易な方法で室外機2aに固定されている。
【0083】
[漏洩判定装置1Aの構成]
図10は、本実施の形態2に係る漏洩判定装置の構成の一例を示す概略図である。図10に示すように、漏洩判定装置1Aは、温度入力部11、差圧入力部12、圧力入力部13、温度センサ14、表示部15、操作部16、日射計17および制御部10を備えている。日射計17は、例えば全天日射計であり、全天日射量を検出する。全天日射量は、天空の全方向からの日射量を測定したものである。
【0084】
本実施の形態2において、温度入力部11には、温度センサ14で検出された冷凍サイクル装置2の内部の外気温度を示す温度値が入力される。この場合、制御部10は、各入力部に入力される温度および圧力に関する情報と、日射計17で検出される全天日射量とに基づき、気密試験の際の漏洩判定処理を行う。制御部10の構成は、実施の形態1の説明の際に示した図4と同様である。
【0085】
なお、本実施の形態2において、制御部10の情報取得部111は、実施の形態1と同様の情報に加えて、日射計17で検出された全天日射量を取得する。また、演算部113は、日射計17で検出された全天日射量と、温度センサ14で検出された室外機2aの外気温度とに基づき、相当外気温度を算出する。相当外気温度は、日射の影響を温度に換算し、外気温度に加えたものである。さらに、記憶部116は、実施の形態1と同様の情報に加えて、日射計17で検出された全天日射量と、演算部113で算出された相当外気温度とを記憶する。
【0086】
[漏洩判定処理]
漏洩判定装置1Aによる冷凍サイクル装置2の漏洩判定処理について説明する。ここでは、気密試験として、実施の形態1と同様に窒素加圧漏洩試験を行う場合を例にとって説明する。
【0087】
図11および図12は、本実施の形態2に係る漏洩判定装置による漏洩判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、図11および図12に示されるフローチャートにおいて、記号Bは、それぞれ対応する記号へと処理が移行することを示す。また、図7および図8に示す実施の形態1に係る漏洩判定処理と共通する処理には同一の符号を付し、ここでは詳細な説明を省略する。
【0088】
作業者によって漏洩判定装置1の操作部16が操作され、気密試験を開始するための開始ボタンなどが操作されると、気密試験が開始され、以下に示す一連の処理が実行される。ステップS1~ステップS4の処理については、実施の形態1と同様である。すなわち、これらの処理によって空気調和装置の配管に設定充填量の窒素ガスが充填されるとともに、均圧される。
【0089】
次に、均圧が完了した第1の時点において、全天日射量が日射計17によって検出される。そして、ステップS21において、情報取得部111は、日射計17で検出された全天日射量を取得する。また、第1の時点において、室外機2a内の外気温度が温度センサ14によって検出される。ステップS22において、情報取得部111は、温度センサ14で検出された外気温度を取得する。
【0090】
ステップS23において、演算部113は、情報取得部111で取得された全天日射量および外気温度に基づき、相当外気温度を算出する。そして、ステップS24において、演算部113は、算出した相当外気温度を第1温度値T1として記憶部116に記憶する。相当外気温度は、式(2)に基づき算出される。ここで、式(2)において、全天日射量[W/m]は日射計17で検出された値であり、屋外熱伝達率は5~10[W/m・K]とする。また、日射吸収率は、表面積が大きな室外熱交換器20の配管部分の日射吸収率に基づき、0.3~0.4程度とする。
相当外気温度=外気温度+(日射吸収率×全天日射量)/屋外熱伝達率
・・・(2)
【0091】
ステップS6~ステップS9の処理については、実施の形態1と同様である。すなわち、これらの処理によって第1圧力値P1が取得されるとともに、差圧計5による実測差圧値ΔPの計測が開始され、設定時間だけ待機する。
【0092】
待機が終了した第2の時点において、全天日射量が日射計17によって検出されるとともに、室外機2a内の外気温度が温度センサ14によって検出される。そして、ステップS25において、情報取得部111は、日射計17で検出された全天日射量を再度取得する。また、ステップS26において、情報取得部111は、温度センサ14で検出された外気温度を再度取得する。
【0093】
ステップS27において、演算部113は、情報取得部111で取得された全天日射量および外気温度に基づき、式(2)を用いて相当外気温度を算出する。そして、ステップS28において、演算部113は、算出した相当外気温度を第2温度値T2として記憶部116に記憶する。
【0094】
以下、このようにして得られた第1温度値T1、第2温度値T2および第1圧力値P1に基づき、実施の形態1と同様に、ステップS11~ステップS19の処理が行われる。
【0095】
以上のように、本実施の形態2に係る漏洩判定装置1Aは、全天日射量および室外機2aの外気温度に基づき得られる第1温度値T1および第2温度値T2を用いて算出される推定差圧値と、実測差圧値とを比較して、冷凍サイクル装置2における漏洩の有無を判定する。これにより、実施の形態1と同様に、冷凍サイクル装置2における流体の漏洩の有無を精度よく判定することができる。
【0096】
実施の形態3.
次に、本実施の形態3について説明する。本実施の形態3に係る漏洩判定装置1は、温度補正圧力値P2を算出する際に用いられる第1温度値T1および第2温度値T2を、冷凍サイクル装置2の温度情報を用いる点で、実施の形態1および2と相違する。なお、以下の説明において、実施の形態1および2と共通する部分には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0097】
[漏洩判定システム300の構成]
図13は、本実施の形態3に係る漏洩判定システムの構成の一例を示す概略図である。図13に示すように、漏洩判定システム300は、漏洩判定装置1B、冷凍サイクル装置2、充填ボンベ3、マスター容器4および差圧計5を含んで構成されている。この例では、実施の形態1および2と同様に、冷凍サイクル装置2として空気調和装置が用いられた場合について説明する。
【0098】
本実施の形態3において、漏洩判定装置1Bの温度入力部11は、冷凍サイクル装置2である空気調和装置の室外機2aに設けられた室外制御装置27に接続されている。漏洩判定装置1Bは、室外機2aが備える温度センサなどで検出された温度を、温度入力部11を介して取得する。
【0099】
なお、漏洩判定装置1Bは、温度入力部11に入力される温度値が室外制御装置27で取得されたものであること以外は、実施の形態1に係る漏洩判定装置1と同様である。すなわち、漏洩判定装置1Bの制御部10は、気密試験の際に、各入力部に入力される温度および圧力に関する情報に基づき、漏洩判定処理を行う。
【0100】
[漏洩判定処理]
漏洩判定装置1Bによる冷凍サイクル装置2の漏洩判定処理について説明する。ここでは、気密試験として、実施の形態1および2と同様に窒素加圧漏洩試験を行う場合を例にとって説明する。
【0101】
図14および図15は、本実施の形態3に係る漏洩判定装置による漏洩判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、図14および図15に示されるフローチャートにおいて、記号Cは、それぞれ対応する記号へと処理が移行することを示す。また、図7および図8に示す実施の形態1に係る漏洩判定処理、ならびに、図11および図12に示す実施の形態2に係る漏洩判定処理と共通する処理には同一の符号を付し、ここでは詳細な説明を省略する。
【0102】
作業者によって漏洩判定装置1の操作部16が操作され、気密試験を開始するための開始ボタンなどが操作されると、気密試験が開始され、以下に示す一連の処理が実行される。なお、漏洩判定処理における基本的な処理は、実施の形態1と同様である。ただし、本実施の形態3では、実施の形態1のステップS5(図7参照)およびステップS10(図8参照)に代えて、ステップS31およびステップS32の処理が行われる。
【0103】
ステップS31において、情報取得部111は、室外制御装置27から温度値を取得し、第1温度値T1として記憶部116に記憶する。また、ステップS32において、情報取得部111は、室外制御装置27から温度値を取得し、第2温度値T2として記憶部116に記憶する。
【0104】
以上のように、本実施の形態3に係る漏洩判定装置1Bは、室外機2aの室外制御装置27から得られる温度情報を用いて算出される推定差圧値と、実測差圧値とを比較して、冷凍サイクル装置2における漏洩の有無を判定する。これにより、実施の形態1および2と同様に、冷凍サイクル装置2における流体の漏洩の有無を精度よく判定することができる。
【符号の説明】
【0105】
1、1A、1B 漏洩判定装置、2 冷凍サイクル装置、2a 室外機、3 充填ボンベ、4 マスター容器、5 差圧計、5a 測定ポート、5b 基準ポート、5c 出力ポート、10 制御部、11 温度入力部、12 差圧入力部、13 圧力入力部、14 温度センサ、15 表示部、15a パラメータ表示部、15b 漏洩有無表示部、16 操作部、17 日射計、20 室外熱交換器、21、21a、21b 充填口、22、22a、22b 接続口、23、23a、23b 充填バルブ、24、24a、24b 接続バルブ、25 圧力センサ、26a、26b 開閉バルブ、27 室外制御装置、51 処理回路、52 プロセッサ、53 メモリ、100、200、300 漏洩判定システム、111 情報取得部、112 圧力補正部、113 演算部、114 漏洩判定部、115 指令部、116 記憶部。
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