(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】車両用変速機
(51)【国際特許分類】
F16H 57/021 20120101AFI20240213BHJP
F16H 57/028 20120101ALI20240213BHJP
B60K 17/06 20060101ALI20240213BHJP
B60K 17/02 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
F16H57/021
F16H57/028
B60K17/06 K
B60K17/02 F
(21)【出願番号】P 2020067468
(22)【出願日】2020-04-03
【審査請求日】2023-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】更科 俊平
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 俊一
(72)【発明者】
【氏名】岩井 夏樹
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-057561(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/021
F16H 57/028
B60K 17/06
B60K 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速機ケースと、
駆動源の動力を変速して出力する変速機構と、
前記駆動源と前記変速機構の間に設けられ、回転軸を有するトルクコンバータと、
前記トルクコンバータと前記変速機構の間に設けられ、前記駆動源から前記トルクコンバータに伝達される動力を前記変速機構に伝達または遮断するクラッチと、
前記トルクコンバータにオイルを供給するオイルポンプと、
前記オイルポンプによって前記トルクコンバータに供給されるオイルを制御するバルブボディとを備えた車両用変速機であって、
前記変速機ケースは、
内部の空間を、前記トルクコンバータを収容するトルクコンバータ室と、前記クラッチを収容するクラッチ室とに仕切るように前記回転軸の軸方向と直交する方向に延び、前記回転軸を回転自在に支持する隔壁を有する第1のケースと、
前記回転軸の軸方向で第1のケースに連結され、前記変速機構を収容する変速機構室を有する第2のケースとを含んで構成されており、
前記オイルポンプは、前記トルクコンバータ室に収容され、前記トルクコンバータ室側の前記隔壁に取付けられており、
前記バルブボディは、前記回転軸の軸方向で前記オイルポンプと重なり、かつ、前記隔壁の下方に位置する前記第1のケースの壁部に取付けられており、
前記隔壁は、前記バルブボディと前記オイルポンプとを連通する油路を有
し、
前記回転軸の軸方向の前記バルブボディの一方側は、前記回転軸の軸方向で前記トルクコンバータと重なる位置で前記第1のケースの前記壁部に締結されており、
前記回転軸の軸方向の前記バルブボディの他方側は、前記回転軸の軸方向で前記クラッチと重なる位置で前記第1のケースの前記壁部に締結されていることを特徴とする車両用変速機。
【請求項2】
前記第1のケースは、第1のフランジ部を有し、
前記第2のケースは、前記第1のフランジ部に締結される第2のフランジ部を有し、
前記第1のケースの前記壁部にオイルパンが締結されており、
前記オイルパンは、前記回転軸の軸方向で前記隔壁を跨ぎ、前記第1のケースの前記壁部との間に前記バルブボディを収容するバルブボディ室を形成しており、
前記オイルパンの一部は、前記第1のフランジ部に連結されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トルクコンバータを有して車両に搭載される変速機として、特許文献1に記載される変速機が知られている。この変速機は、変速機ケースを有し、変速機ケースは、トルクコンバータを収容するケース(以下、第1のケースという)と、入力軸や遊星歯車等の変速機構を収容するケース(以下、第2のケースという)とを備えている。
【0003】
第1のケースと第2のケースは、隔壁によって仕切られており、トルクコンバータを収容する第1のケースの内部にはトルクコンバータや変速機構にオイルを供給するオイルポンプが設けられている。
【0004】
第2のケースの下部にはバルブボディが設けられており、バルブボディは、オイルポンプによってトルクコンバータや変速機構に供給されるオイルを制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の変速機にあっては、オイルポンプが設置される第1のケースと別体の第2のケースにバルブボディが設置されている上に、バルブボディが第1のケースよりも後方に離れている。
【0007】
このため、バルブボディからオイルポンプまでの油路を第1のケースと、第1のケースと別体の第2のケースに形成する必要がある。このため、第1のケースと第2のケースのそれぞれに油路を形成することや、別体のケースに形成された油路の接続を行うこと等が必要となり、油路形状が複雑になり、結果的に変速ケースの構造が複雑化するおそれがある。
【0008】
本発明は、上記のような事情に着目してなされたものであり、オイルが流れるトルクコンバータ、バルブボディおよびオイルポンプを1つのケースに集約でき、バルブボディとオイルポンプを連通する油路を有する変速機ケースを簡素化できる車両用変速機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、変速機ケースと、駆動源の動力を変速して出力する変速機構と、前記駆動源と前記変速機構の間に設けられ、回転軸を有するトルクコンバータと、前記トルクコンバータと前記変速機構の間に設けられ、前記駆動源から前記トルクコンバータに伝達される動力を前記変速機構に伝達または遮断するクラッチと、前記トルクコンバータにオイルを供給するオイルポンプと、前記オイルポンプによって前記トルクコンバータに供給されるオイルを制御するバルブボディとを備えた車両用変速機であって、前記変速機ケースは、内部の空間を、前記トルクコンバータを収容するトルクコンバータ室と、前記クラッチを収容するクラッチ室とに仕切るように前記回転軸の軸方向と直交する方向に延び、前記回転軸を回転自在に支持する隔壁を有する第1のケースと、前記回転軸の軸方向で第1のケースに連結され、前記変速機構を収容する変速機構室を有する第2のケースとを含んで構成されており、前記オイルポンプは、前記トルクコンバータ室に収容され、前記トルクコンバータ室側の前記隔壁に取付けられており、前記バルブボディは、前記回転軸の軸方向で前記オイルポンプと重なり、かつ、前記隔壁の下方に位置する前記第1のケースの壁部に取付けられており、前記隔壁は、前記バルブボディと前記オイルポンプとを連通する油路を有し、前記回転軸の軸方向の前記バルブボディの一方側は、前記回転軸の軸方向で前記トルクコンバータと重なる位置で前記第1のケースの前記壁部に締結されており、前記回転軸の軸方向の前記バルブボディの他方側は、前記回転軸の軸方向で前記クラッチと重なる位置で前記第1のケースの前記壁部に締結されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
このように上記の本発明によれば、オイルが流れるトルクコンバータ、バルブボディおよびオイルポンプを1つのケースに集約でき、バルブボディとオイルポンプを連通する油路を有する変速機ケースを簡素化できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例に係る車両用変速機の左側面図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例に係る車両用変速機の縦断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施例に係る車両用変速機の下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施の形態に係る車両用変速機は、変速機ケースと、駆動源の動力を変速して出力する変速機構と、駆動源と変速機構の間に設けられ、回転軸を有するトルクコンバータと、トルクコンバータと変速機構の間に設けられ、駆動源からトルクコンバータに伝達される動力を変速機構に伝達または遮断するクラッチと、トルクコンバータにオイルを供給するオイルポンプと、オイルポンプによってトルクコンバータに供給されるオイルを制御するバルブボディとを備えた車両用変速機であって、変速機ケースは、内部の空間を、トルクコンバータを収容するトルクコンバータ室と、クラッチを収容するクラッチ室とに仕切るように回転軸の軸方向と直交する方向に延び、回転軸を回転自在に支持する隔壁を有する第1のケースと、回転軸の軸方向で第1のケースに連結され、変速機構を収容する変速機構室を有する第2のケースとを含んで構成されており、オイルポンプは、トルクコンバータ室に収容され、トルクコンバータ室側の隔壁に取付けられており、前記バルブボディは、前記回転軸の軸方向で前記オイルポンプと重なり、かつ、隔壁の下方に位置する第1のケースの壁部に取付けられており、隔壁は、バルブボディとオイルポンプとを連通する油路を有する。
【0013】
これにより、本発明の一実施の形態に係る車両用変速機は、オイルが流れるトルクコンバータ、バルブボディおよびオイルポンプを1つのケースに集約でき、バルブボディとオイルポンプを連通する油路を有する変速機ケースを簡素化できる。
【実施例】
【0014】
以下、本発明の一実施例に係る車両用変速機について、図面を用いて説明する。
図1から
図6は、本発明の一実施例に係る車両用変速機を示す図である。
図1から
図6において、上下前後左右方向は、車両に設置された状態の車両用変速機を基準とし、車両の前後方向を前後方向、車両の左右方向(車両の幅方向)を左右方向、車両の上下方向(車両の高さ方向)を上下方向とする。
【0015】
まず、構成を説明する。
図1、
図2において、車両1には変速機2が搭載されており、変速機2は、エンジン3に接続された状態で車両1のフロアパネル1Aの下方に縦置きに設置されている。すなわち、本実施例の車両1は、後輪駆動車両である。本実施例の変速機2は、本発明の車両用変速機を構成し、エンジン3は、本発明の駆動源を構成する。
【0016】
変速機2は変速機ケース4を備えており、変速機ケース4は、フロントケース6と、センタケース7と、リヤケース8と、エクステンションケース9とを備えている。
【0017】
フロントケース6の前端部には図示しないボルトによって内燃機関としてのエンジン3が接続されている。エンジン3は、燃料の燃焼を行い、熱エネルギーを機械的エネルギーに変換する。
【0018】
図1、
図2に示すように、フロントケース6の後端部には環状のフランジ部6Aが形成されている。フロントケース6のセンタケース7側は、開口しており、センタケース7の前端部には環状のフランジ部7Aが形成されている。フランジ部6Aとフランジ部7Aは、ボルト51によって締結されており、フロントケース6とセンタケース7は、フランジ部6Aとフランジ部7Aによって連結されている。
【0019】
センタケース7の後端部にはリヤケース8の前端部が連結されており、リヤケース8の後端部にはエクステンションケース9が連結されている。本実施例のフロントケース6は、本発明の第1のケースを構成し、フロントケース6とそれぞれ別体のセンタケース7、リヤケース8およびエクステンションケース9は、本発明の第2のケースを構成する。
【0020】
また、フランジ部6Aは、本発明の第1のフランジ部を構成し、フランジ部7Aは、本発明の第2のフランジ部を構成する。
【0021】
図2に示すように、フロントケース6にはトルクコンバータ10が収容されている。トルクコンバータ10は、図示しないドライブプレートを介してエンジン3の図示しないクランク軸に連結されるフロントカバー10Aと、フロントカバー10Aに連結されたシェル10Bとを備えており、エンジン3と変速機2との間でオイルを介して動力を伝達する流体継手を構成している。
【0022】
シェル10Bの内面には、図示しないポンプインペラが固定されている。シェル10Bの内部には、図示しないタービンランナがポンプインペラに対向して設置されており、タービンランナは、タービン軸11に連結されている。ポンプインペラとタービンランナとの間には図示しないステータが設置されている。
【0023】
トルクコンバータ10において、エンジン3のクランク軸が回転すると、ドライブプレートを介してフロントカバー10A、シェル10Bおよびポンプインペラが一体で回転する。このとき、ポンプインペラの回転による遠心力によって、トルクコンバータ10の内部の流体、すなわち、オイルに、ポンプインペラからタービンランナに向かう流れが生じる。
【0024】
この流体の流れによりタービンランナが回転され、タービンランナに接続されたタービン軸11が回転する。ステータは、タービンランナからの流体の流れをポンプインペラの回転方向に沿うように変換することにより、エンジン3の動力を増幅させる。
【0025】
トルクコンバータ10には図示しないロックアップクラッチが設けられており、ロックアップクラッチは、ロックアップクラッチ締結用のオイルが供給されると、タービンランナをフロントカバー10Aに締結する。これにより、エンジン3の動力が、フロントカバー10Aから流体を介さずにタービンランナを回転させることにより、タービン軸11に伝達される。
【0026】
ロックアップクラッチは、ロックアップクラッチ解除用のオイルが供給されると、タービンランナをフロントカバー10Aから引き離す。これにより、エンジン3の動力が、フロントカバー10Aから流体を介してタービンランナを回転させることにより、タービン軸11に伝達される。
【0027】
フロントケース6には隔壁31が形成されており、隔壁31は、タービン軸11の軸方向と直交する方向に延び、フロントケース6の内部の空間を、トルクコンバータ室(以下、トルコン室という)32と、クラッチ室33とに仕切っている。
【0028】
タービン軸11は、軸受52Aを介して隔壁31に回転自在に支持されている。本実施例のタービン軸11は、本発明のトルクコンバータの回転軸を構成する。
【0029】
フロントケース6のトルコン室32にはオイルポンプ12が収容されており、オイルポンプ12は、例えば、トロコイド式のオイルポンプから構成されている。
【0030】
オイルポンプ12は、図示しないボルトによってトルコン室32側の隔壁31の壁面31fに固定されたリヤポンプケース13と、図示しないボルトによってリヤポンプケース13の前端に締結されたフロントポンプケース14とを有する。
【0031】
このように本実施例のオイルポンプ12は、トルコン室32側の隔壁31の壁面31fに取付けられており、隔壁31を介してクラッチ室33と隔離されている。
【0032】
リヤポンプケース13とフロントポンプケース14とに挟まれた内部空間にはポンプ室15が形成されており、ポンプ室15には図示しないインナロータおよびアウタロータが設けられている。インナロータは、シェル10Bと一体で回転するようにシェル10Bの一部に取付けられている。
【0033】
アウタロータは、インナロータの径方向外方に設けられており、インナロータの回転に伴って回転する。トロコイド式のオイルポンプ12は、アウタロータに形成された複数の内歯とインナロータに形成された複数の外歯とが接触することにより、外歯と内歯との間にオイルを収容する図示しない複数の作動室が形成されている。
【0034】
オイルポンプ12において、エンジン3の動力がシェル10Bによってインナロータに伝達されると、インナロータとアウタロータとが一方向に回転する。このとき、作動室の容積増加および容積減少が連続して発生することにより、オイルを図示しない吸入ポートから作動室に吸入し、作動室によって加圧されたオイルを図示しない吐出ポートから吐出する。
【0035】
タービン軸11の後端部には拡径部11Aが形成されており、拡径部11Aは、タービン軸11の前端部や中央部よりも大径に形成されている。拡径部11Aには環状のフライホイール16が取付けられており、フライホイール16は、フロントケース6に収容されている。
【0036】
フロントケース6のクラッチ室33には摩擦クラッチ17が収容されており、摩擦クラッチ17は、フライホイール16に対向するようにフライホイール16に取付けられている。
【0037】
摩擦クラッチ17は、入力軸21の前端部21aに設置されている。入力軸21は、フロントケース6、センタケース7およびリヤケース8に収容されており、車両1の前後方向に延びている。
【0038】
入力軸21は、その軸方向の前端部21a側でセンタケース7に形成された隔壁34に軸受52Bを介して回転自在に支持され、後端部21bが出力軸22に回転自在に支持されている。
【0039】
入力軸21の前端部21aは、タービン軸11の拡径部11Aの内周部に軸受52Cを介して支持されており、入力軸21は、タービン軸11と相対回転する。
【0040】
出力軸22は、入力軸21の軸方向において入力軸21に対向している。出力軸22は、リヤケース8の後端部に形成された隔壁35およびエクステンションケース9の後端部に形成された後壁36に軸受52D、52Eを介して回転自在に支持されており、入力軸21に対して相対回転する。タービン軸11、入力軸21および出力軸22は、同一軸線上に設置されている。
【0041】
摩擦クラッチ17は、入力軸21に一体回転自在、かつ入力軸21の軸方向に移動自在に設けられたクラッチディスク17Aと、クラッチディスク17Aをフライホイール16に押し付けるプレッシャプレート17Bと、プレッシャプレート17Bをフライホイール16側に付勢するダイヤフラムスプリング17Cとを備えている。
【0042】
入力軸21の前端部21aは、タービン軸11の拡径部11Aの内周部に軸受52Cを介して支持されており、タービン軸11は、軸受52Aを介して隔壁31に回転自在に支持されている。
【0043】
このため、入力軸21の前端部21aは、タービン軸11を介して隔壁31に回転自在に支持されている。本実施例の入力軸21は、摩擦クラッチ17の回転軸を構成している。
【0044】
センタケース7の隔壁34には筒状部34aが形成されており、筒状部34aは、隔壁34の径方向内端部から入力軸21の軸方向に沿って摩擦クラッチ17側に延び、前端部が開口している。ここで、径方向とは、入力軸21の軸方向に対して放射方向である。
【0045】
筒状部34aの外周部にはレリーズベアリング18が設けられている。レリーズベアリング18は、レリーズレバー19(
図3参照)によって筒状部34aに沿って入力軸21の軸方向で前方(摩擦クラッチ17側)に移動されると、ダイヤフラムスプリング17Cの中央付近(筒状部34aの周辺付近)を前方に向かって押圧する。
【0046】
これにより、ダイヤフラムスプリング17Cによるプレッシャプレート17Bへの付勢が解除され、プレッシャプレート17Bの押圧力が無くなりクラッチディスク17Aがフライホイール16から離隔される。この結果、エンジン3のクランク軸の回転が入力軸21に伝達されなくなる。
【0047】
レリーズベアリング18は、レリーズレバー19によって入力軸21の軸方向に対して後方に移動されると、ダイヤフラムスプリング17Cの中央付近(筒状部34aの周辺付近)から離れる。
【0048】
この状態では、ダイヤフラムスプリング17Cがプレッシャプレート17Bを付勢してクラッチディスク17Aをフライホイール16に押し付け、クラッチディスク17Aをプレッシャプレート17Bとフライホイール16にて挟持するので、エンジン3のクランク軸の回転を入力軸21に伝達する。
【0049】
このように摩擦クラッチ17は、エンジン3のクランク軸と入力軸21との間で動力状態を動力遮断状態に切り替える。レリーズレバー19は、図示しないシフトユニットに連結されており、シフトユニットによって操作される。
【0050】
本実施例の摩擦クラッチ17は、トルクコンバータ10と入力軸21を含んで構成される後述する変速機構60との間に設けられており、エンジン3の動力を変速機構60に伝達または遮断する。摩擦クラッチ17は、本発明のクラッチを構成する。
【0051】
センタケース7およびリヤケース8にはカウンタ軸23が収容されており、カウンタ軸23は、図示しない軸受を介して隔壁34、35に回転自在に支持されている。カウンタ軸23は、入力軸21および出力軸22に対して平行に延びている。
【0052】
隔壁34は、変速機ケース4の内部を、フロントケース6の内部の空間から構成されるクラッチ室33とセンタケース7およびリヤケース8の内部の空間から構成される変速機構室37とに仕切っている。
【0053】
変速機構室37には入力軸21と、カウンタ軸23と、入力軸21とカウンタ軸23に取付けられた変速用のギヤとが収容されている。
【0054】
入力軸21には、摩擦クラッチ17側から出力軸22に向かって、変速用のギヤを構成する4速入力ギヤ24A、3速入力ギヤ24B、2速入力ギヤ24C、1速入力ギヤ24Dおよびリバース入力ギヤ24Eが設置されている。
【0055】
4速入力ギヤ24A、3速入力ギヤ24B、2速入力ギヤ24C、1速入力ギヤ24Dおよびリバース入力ギヤ24Eは、入力軸21に相対回転自在に連結されている。
【0056】
出力軸22の前端部には5速クラッチギヤ22Aが設けられており、5速クラッチギヤ22Aは、出力軸22と一体で回転するドグから構成される。
【0057】
カウンタ軸23には、摩擦クラッチ17側から出力軸22に向かって4速カウンタギヤ26A、3速カウンタギヤ26B、2速カウンタギヤ26C、1速カウンタギヤ26Dおよびカウンタドライブギヤ26Eが設けられている。
【0058】
4速カウンタギヤ26A、3速カウンタギヤ26B、2速カウンタギヤ26C、1速カウンタギヤ26Dおよびカウンタドライブギヤ26Eは、カウンタ軸23に固定されており、カウンタ軸23と一体で回転する。
【0059】
4速カウンタギヤ26A、3速カウンタギヤ26B、2速カウンタギヤ26C、1速カウンタギヤ26Dは、それぞれ同一の変速段を構成する4速入力ギヤ24A、3速入力ギヤ24B、2速入力ギヤ24C、1速入力ギヤ24Dに噛み合っている。
【0060】
カウンタドライブギヤ26Eは、カウンタドリブンギヤ27に噛み合っている。カウンタドリブンギヤ27は、出力軸22に形成されており、出力軸22と一体で回転する。
【0061】
センタケース7およびリヤケース8には3速-4速用の同期装置41、1-2速用の同期装置42およびリバース-5速用の同期装置43が収容されている。
【0062】
3速-4速用の同期装置41は、入力軸21と一体で回転可能なハブ41Aと、ハブ41Aと一体で回転可能で、かつ、入力軸21の軸方向に移動自在に設けられたスリーブ41Bとを有する。
【0063】
3速-4速用のスリーブ41Bは、3速-4速用のシフトフォーク44A、3速-4速用のシフタ軸44Bおよび3速-4速用のシフトヨーク44Cを介してシフトアンドセレクト軸47で移動可能となっている。
【0064】
シフトアンドセレクト軸47が3速-4速用のシフトヨーク44Cを選択し、3速-4速用のシフタ軸44Bを介して3速-4速用のシフトフォーク44Aを入力軸21の軸方向に移動させると、3速-4速用のスリーブ41Bが入力軸21の軸方向に移動される。
【0065】
1速-2速用の同期装置42は、入力軸21と一体で回転可能なハブ42Aと、ハブ42Aと一体で回転可能で、かつ、入力軸21の軸方向に移動自在なスリーブ42Bとを有する。
【0066】
1速-2速用のスリーブ42Bは、1速-2速用のシフトフォーク45A、1速-2速用のシフタ軸45Bおよび図示しない1速-2速用のシフトヨークを介してシフトアンドセレクト軸47で移動可能となっている。
【0067】
シフトアンドセレクト軸47が1速-2速用のシフトヨークを選択し、1速-2速用のシフタ軸45Bを介して1速-2速用のシフトフォーク45Aを入力軸21の軸方向に移動させると、1速-2速用のスリーブ42Bが入力軸21の軸方向に移動される。
【0068】
リバース-5速用の同期装置43は、入力軸21と一体で回転可能なハブ43Aと、ハブ43Aと一体で回転可能で、かつ、入力軸21の軸方向に移動自在なスリーブ43Bとを有する。
【0069】
リバース-5速用のスリーブ43Bは、リバース-5速用のシフトフォーク46A、図示しないリバース-5速用のシフタ軸および図示しないリバース-5速用のシフトヨークを介してシフトアンドセレクト軸47で移動可能となっている。
【0070】
シフトアンドセレクト軸47がリバース-5速用のシフトヨークを選択し、リバース-5速用のシフタ軸を介してリバース-5速用のシフトフォーク46Aを入力軸21の軸方向に移動させると、リバース-5速用のスリーブ43Bが入力軸21の軸方向に移動される。
【0071】
3速-4速用の同期装置41は、3速-4速用のシフトフォーク44Aにより、3速-4速用のスリーブ41Bが中立位置から入力軸21の軸方向の前側に移動されると、4速入力ギヤ24Aがスリーブ41Bおよびハブ41Aを介して入力軸21に連結される。
【0072】
これにより、前進4速段が成立し、入力軸21の動力が4速入力ギヤ24Aおよび4速カウンタギヤ26Aを介してカウンタ軸23に伝達される。
【0073】
カウンタ軸23に伝達される動力は、カウンタドライブギヤ26Eからカウンタドリブンギヤ27を介して出力軸22に伝達される。出力軸22には図示しないプロペラ軸を介していずれも図示しないディファレンシャル装置、ドライブ軸および駆動後輪が連結されている。
【0074】
これにより、出力軸22に伝達された動力は、プロペラ軸を介してディファレンシャル装置に伝達され、ディファレンシャル装置によって左右のドライブ軸に分配された後に、駆動後輪に伝達される。この結果、車両1が走行される。なお、同期装置41、42、43によって前進1速段から前進3速段、前進5速段、後進段を成立させるための説明は省略する。
【0075】
本実施例の入力軸21、出力軸22、カウンタ軸23、4速入力ギヤ24A、3速入力ギヤ24B、2速入力ギヤ24C、1速入力ギヤ24D、リバース入力ギヤ24E、4速カウンタギヤ26A、3速カウンタギヤ26B、2速カウンタギヤ26C、1速カウンタギヤ26D、カウンタドライブギヤ26E、カウンタドリブンギヤ27は、エンジン3の動力(回転速度)を変速して出力する変速機構60を構成する。
【0076】
センタケース7の上部にはシフトケース48が設けられており、シフトアンドセレクト軸47は、シフトケース48の内部に設けられている。シフトアンドセレクト軸47は、入力軸21の延びる方向と直交する車幅方向に延びている。
【0077】
シフトアンドセレクト軸47は、シフトケース48に回転自在かつ、軸方向に移動自在に設けられており、図示しないシフトユニットによって操作される。
【0078】
図3に示すように、フロントケース6の底壁55の外周下面55aにはバルブボディ61(
図4から
図6参照)が取付けられている。フロントケース6の底壁55は、タービン軸11の軸方向に沿って延びており、本発明の壁部を構成する。
【0079】
底壁55にはオイルパン用締結部55Aが設けられている。
図6に示すように、変速機ケース4を下方から見た場合に、オイルパン用締結部55Aは、バルブボディ61を取り囲むように底壁55から下方に突出している。
【0080】
図3に示すように、バルブボディ61は、タービン軸11の軸方向でオイルポンプ12と重なるようにして底壁55の外周下面55aに取付けられている。換言すれば、バルブボディ61は、タービン軸11の軸方向と直交する方向でオイルポンプ12と並んで設置されている。
【0081】
バルブボディ61は、タービン軸11の軸方向で隔壁31を跨ぐようにして底壁55の外周下面55aに取付けられている。すなわち、バルブボディ61は、隔壁31の下方に位置する底壁55の外周下面55aに取付けられている。
【0082】
タービン軸11の軸方向のバルブボディ61の一方側、すなわち、バルブボディ61の前側は、タービン軸11の軸方向でトルクコンバータ10と重なる位置で締結部61a、61b、61n(
図6参照)によって底壁55に締結されている。
【0083】
トルクコンバータ10の下方の底壁55の部位は、後方から前方に向かって下方に傾斜する傾斜壁55tを構成しており、バルブボディ61の前側は、トルクコンバータ10の下方に潜り込むように、すなわち、傾斜壁55tの下方に潜り込むようにして底壁55に締結されている。
【0084】
タービン軸11の軸方向のバルブボディ61の他方側、すなわち、バルブボディ61の後側は、タービン軸11の軸方向で摩擦クラッチ17と重なる位置で締結部61c、61dによって底壁55に締結されている。
【0085】
換言すれば、バルブボディ61の前側は、タービン軸11の軸方向と直交する方向でトルクコンバータ10と並んでおり、バルブボディ61の後側は、タービン軸11の軸方向と直交する方向で摩擦クラッチ17と並んでいる。
【0086】
図6に示すように、バルブボディ61には締結部61a、61b、61c、61d、61m、61n、61pが設けられている。締結部61a、61bは、バルブボディ61の前部の左側に設けられており、締結部61a、61bは、図示しないボルト(ボルト53Aに相当)によって底壁55に締結されている。
【0087】
締結部61c、61dは、バルブボディ61の後端の右側と左側にそれぞれ設けられており、締結部61c、61dは、図示しないボルト(ボルト53Aに相当)によって底壁55に締結されている。
【0088】
締結部61m、61pは、バルブボディ61の前後方向の中央部で、かつ、隔壁31の下方に設けられており(
図5参照)、締結部61m、61pは、ボルト53Aによって底壁55に締結されている。
【0089】
締結部61nは、前後方向で締結部61bと締結部61pの間に設けられており、締結部61nは、ボルト53Aによって底壁55に締結されている。
【0090】
締結部61a、61b、61nと締結部61c、61dは、タービン軸11の軸方向で隔壁31に対して前後方向に離れている。このため、バルブボディ61は、タービン軸11の軸方向において隔壁31を跨いだ位置で締結部61a、61b、61nと締結部61c、61dによって底壁55に締結されている。
【0091】
すなわち、バルブボディ61は、隔壁31に対して摩擦クラッチ17側(後側)で締結部61c、61d、61nによって底壁55に締結されており、隔壁31に対してトルクコンバータ10側(前側)で締結部61a、61bによって底壁55に締結されている。
【0092】
締結部61a、61b、61c、61d、61m、61n、61pは、ボルト53Aが締結される部位を指し、バルブボディ61は、締結部61a、61b、61c、61d、61m、61n、61pがボルト53Aによって底壁55に締結されている。
【0093】
図6に示すように、オイルパン用締結部55Aの後端部は、左右方向に沿って延びている。また、
図3に示すように、オイルパン用締結部55Aの後端部は、フロントケース6のフランジ部6Aに連結されている。
【0094】
図3に示すように、フロントケース6の底壁55にはオイルパン62が締結されている。オイルパン62の外周部にはフランジ部62Aが形成されており、フランジ部62Aは、オイルパン用締結部55Aと合致するようにオイルパン62の外周縁において周方向に延びてる。
【0095】
オイルパン62は、下方からバルブボディ61を覆い、ボルト53Bによってフランジ部62Aがオイルパン用締結部55Aに締結されることにより、底壁55に締結されている。
【0096】
オイルパン用締結部55Aは、バルブボディ61を取り囲むように底壁55から下方に突出している。このため、オイルパン62は、タービン軸11の軸方向で隔壁31を跨ぐようにして底壁55に取付けられている。
【0097】
オイルパン用締結部55Aの後端部は、フロントケース6のフランジ部6Aに連結されているので、オイルパン62の後端部は、オイルパン用締結部55Aの後端部を介してフランジ部6Aに連結されている。
【0098】
オイルパン62と底壁55によって囲まれる空間は、バルブボディ61を収容するバルブボディ室63を構成しており、バルブボディ室63にはオイルが貯留されている。
【0099】
図5に示すように、隔壁31には油路31a、31b、31c、31dが形成されている。油路31a、31b、31c、31dは、バルブボディ61から隔壁31に沿って上方に直線状に延びており、バルブボディ61とオイルポンプ12とを連通している。
【0100】
バルブボディ61には油路61e、61f、61g、61hが形成されており、油路61e、61f、61g、61hは、それぞれ油路31a、31b、31c、31dに連通している。
【0101】
油路31aは、バルブボディ61の油路61eとオイルポンプ12の吸入ポートとを連通しており、油路31bは、バルブボディ61の油路61fとオイルポンプ12の吐出ポートとを連通している。
【0102】
油路31cは、バルブボディ61の油路61gとリヤポンプケース13に形成された図示しないロックアップクラッチ締結用の油路を通してシェル10Bとタービン軸11の間の油路38(
図3参照)に連通している。
【0103】
油路31dは、バルブボディ61の油路61hとリヤポンプケース13に形成された図示しないロックアップクラッチ解除用の油路を通してタービン軸11の油路11B(
図3参照)に連通している。
【0104】
バルブボディ61の内部には油路61e、61f、61g、61hに連通する油路が形成されている。また、バルブボディ61は、レギュレータ61i、ロックアップバルブ61jおよび電磁ソレノイド61k(
図4参照)等を備えている。
【0105】
オイルパン62に貯留されたオイルは、バルブボディ61の油路61eから隔壁31の油路31aを通してオイルポンプ12の吸入ポートに吸入される。
【0106】
吸入ポートに吸入されたオイルは、オイルポンプ12の作動室で加圧されて吐出ポートから隔壁31に形成された油路31bおよびバルブボディ61の油路61fを通してバルブボディ61に供給される。
【0107】
バルブボディ61に供給されたオイルは、レギュレータ61iによって調圧される。ロックアップクラッチの締結時には、電磁ソレノイド61kによってロックアップバルブ61jがロックアップクラッチ締結用の油路を選択するように切換えられる。
【0108】
このため、レギュレータ61iによって調圧されたオイルは、油路61gから隔壁31の油路31cおよびリヤポンプケース13のロックアップクラッチ締結用の油路を通して油路38に導入される。
【0109】
ロックアップクラッチは、油路38に導入されたオイルによって作動され、タービンランナをフロントカバー10Aに締結する。
【0110】
ロックアップ解除状態において、バルブボディ61は、電磁ソレノイド61kによってロックアップバルブ61jがロックアップクラッチ解除用の油路を選択するように切換えられる。
【0111】
このとき、バルブボディ61のレギュレータ61iによって調圧されたオイルは、油路61hから隔壁31の油路31dおよびリヤポンプケース13のロックアップクラッチ解除用の油路を通して油路11Bに導入される。
【0112】
ロックアップクラッチは、油路11Bに導入されたオイルによって作動され、タービンランナをフロントカバー10Aから引き離す。
【0113】
次に、本実施例の変速機2の効果を説明する。
本実施例の変速機2は、変速機ケース4と、トルクコンバータ10にオイルを供給するオイルポンプ12と、オイルポンプ12によってトルクコンバータ10に供給されるオイルを制御するバルブボディ61とを備えている。
【0114】
変速機ケース4は、内部の空間を、トルクコンバータ10を収容するトルコン室32と、摩擦クラッチ17を収容するクラッチ室33とに仕切るようにタービン軸11の軸方向に延びる隔壁31を有し、タービン軸11を回転自在に支持するフロントケース6を備えている。
【0115】
また、変速機ケース4は、タービン軸11の軸方向でフロントケース6に連結され、変速機構60を収容する変速機構室37を有するセンタケース7、リヤケース8およびエクステンションケース9を備えている。
【0116】
オイルポンプ12は、トルコン室32に収容され、トルコン室32側の隔壁31に取付けられている。
【0117】
バルブボディ61は、タービン軸11の軸方向でオイルポンプ12と重なり、かつ、隔壁31の下方に位置するフロントケース6の底壁55の外周下面55aに取付けられている。
【0118】
これに加えて、隔壁31は、バルブボディ61とオイルポンプ12とを連通する油路31a、31b、31c、31dを有する。
【0119】
これにより、オイルが流れるトルクコンバータ10、バルブボディ61およびオイルポンプ12を1つのフロントケース6に集約でき、バルブボディ61とオイルポンプ12を連通する油路31a、31b、31c、31dを有するフロントケース6の構造を簡素化できる。この結果、変速機ケース4の構造を簡素化できる。
【0120】
また、本実施例の変速機2は、油路31a、31b、31c、31dがバルブボディ61から隔壁31に沿って上方に直線状に延びているので、油路31a、31b、31c、31dを流れるオイルの流動抵抗を低減でき、オイルポンプ12からバルブボディ61を経てトルクコンバータ10にオイルを円滑に流すことができる。
【0121】
また、トルクコンバータ10や摩擦クラッチ17はエンジン3のトルク変動を受けて振動する。このため、トルクコンバータ10のタービン軸11や入力軸21の前端部21aを支持する隔壁31もトルクコンバータ10や摩擦クラッチ17の振動の影響を受けて振動するおそれがある。
【0122】
本実施例の変速機2によれば、バルブボディ61が、タービン軸11の軸方向でオイルポンプ12と重なり、かつ、隔壁31の下方に位置するフロントケース6の底壁55の外周下面55aに取付けられている。
【0123】
これにより、底壁55をバルブボディ61によって補強して、隔壁31を支持する底壁55の剛性を高くでき、隔壁31の剛性を高くできる。このため、隔壁31によるタービン軸11や入力軸21の支持剛性を高くでき、エンジン3のトルク変動等によって変速機ケース4が振動することを抑制できる。
【0124】
また、本実施例の変速機2によれば、バルブボディ61は、タービン軸11の軸方向において隔壁31を跨いだ位置において、締結部61a、61b、61c、61dによってフロントケース6の底壁55に締結されている。
【0125】
これにより、隔壁31の前後方向の底壁55の広い範囲を、剛性の高いバルブボディ61によって補強でき、隔壁31を支持する底壁55の剛性をより一層高くできる。
【0126】
このため、隔壁31によるタービン軸11や入力軸21の支持剛性をより一層高くでき、エンジン3のトルク変動等によって変速機ケース4が振動することをより効果的に抑制できる。
【0127】
また、本実施例の変速機2によれば、バルブボディ61の前側は、タービン軸11の軸方向でトルクコンバータ10と重なる位置で締結部61dによって底壁55に締結されており、バルブボディ61の後側は、タービン軸11の軸方向で摩擦クラッチ17と重なる位置で締結部61dによって底壁55に締結されている。
【0128】
これにより、バルブボディ61を、底壁55から前方に離れたトルクコンバータ10側と底壁55から後方に離れた摩擦クラッチ17側で底壁55に締結できる。このため、隔壁31の前後方向の底壁55のより一層広い範囲を、剛性の高いバルブボディ61によって補強でき、隔壁31を支持する底壁55の剛性をより一層高くできる。
【0129】
このため、隔壁31によるタービン軸11や入力軸21の支持剛性をより一層高くでき、エンジン3のトルク変動等によって変速機ケース4が振動することをより効果的に抑制できる。
【0130】
また、バルブボディ61の前側を、タービン軸11の軸方向でトルクコンバータ10と重なる位置で締結部61a、61bによって底壁55に締結しているので、トルクコンバータ10の下方に空間を有効利用できる。
【0131】
本実施例の変速機2によれば、トルクコンバータ10の下方の底壁55の部位は、後方から前方に向かって下方に傾斜する傾斜壁55tを構成しており、バルブボディ61の前側は、トルクコンバータ10の下方に潜り込むようにして底壁55に締結されている。
【0132】
このため、バルブボディ61を上下方向でトルクコンバータ10に近づけることができ、トルクコンバータ10の下方に空間を有効利用できる。
【0133】
さらに、バルブボディ61を上下方向でトルクコンバータ10に近づけることができるので、変速機2の上下方向の寸法を短くでき、変速機2の小型化を図ることができる。
【0134】
また、本実施例の変速機2によれば、フロントケース6の底壁55にオイルパン62が締結されており、オイルパン62は、タービン軸11の軸方向で隔壁31を跨ぎ、フロントケース6の底壁55との間にバルブボディ61を収容するバルブボディ室63を形成している。
【0135】
これに加えて、オイルパン62の後端部は、ボルト53Bによってフロントケース6のフランジ部6Aに連結されている。
【0136】
これにより、底壁55をバルブボディ61とオイルパン62によって補強して、隔壁31を支持する底壁55の剛性をより一層高くでき、隔壁31の剛性をより一層高くできる。このため、隔壁31によるタービン軸11や入力軸21の支持剛性をより一層高くでき、エンジン3のトルク変動等によって変速機ケース4が振動することをより効果的に抑制できる。
【0137】
また、フランジ部6Aによってオイルパン62の剛性をより一層高くできるので、隔壁31を支持する底壁55の剛性をより一層高くでき、隔壁31の剛性をより一層高くできる。
【0138】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0139】
2...変速機(車両用変速機)、3...エンジン(駆動源)、4...変速機ケース、6...フロントケース(第1のケース)、6A...フランジ部(第1のフランジ部)、7...センタケース(第2のケース)、7A...フランジ部(第2のフランジ部)、8...リヤケース(第2のケース)、9...エクステンションケース(第2のケース)、10...トルクコンバータ、11...タービン軸(回転軸)、12...オイルポンプ、17...摩擦クラッチ(クラッチ)、31...隔壁、31a,31b,31c,31d...油路、32...トルクコンバータ室、33...クラッチ室、37...変速機構室、55...底壁(第1のケースの壁部)、60...変速機構、61...バルブボディ、62...オイルパン、63...バルブボディ室