(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】テシアム・チネンセ・ターク種子の休眠の打破方法
(51)【国際特許分類】
A01C 1/00 20060101AFI20240213BHJP
A01G 22/00 20180101ALI20240213BHJP
【FI】
A01C1/00 A
A01G22/00
(21)【出願番号】P 2022574709
(86)(22)【出願日】2022-04-20
(86)【国際出願番号】 CN2022087843
(87)【国際公開番号】W WO2022267655
(87)【国際公開日】2022-12-29
【審査請求日】2022-12-07
(31)【優先権主張番号】202110699418.6
(32)【優先日】2021-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522471216
【氏名又は名称】ジウフア フアユアン ファーマシューティカル カンパニー、リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グアン、ユエクィン
(72)【発明者】
【氏名】ジェン、ウェイビン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、チェンミン
(72)【発明者】
【氏名】ヤオ、クィシェン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、ジェン
【審査官】竹中 靖典
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 1/00 - 1/08
A01G 22/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テシアム・チネンセ・ターク種子の休眠の打破方法であって、
収集したテシアム・チネンセ・ターク種子を水浸漬処理し、水没した前記テシアム・チネンセ・ターク種子を取り出して風乾し、2℃~4℃の条件下で保存して予備用テシアム・チネンセ・ターク種子を得るステップと、
前記予備用テシアム・チネンセ・ターク種子をジベレリン溶液に浸漬処理した後に取り出して川砂と混合し、-4℃~-2℃の条件下で第1のラミネーション処理を行うステップと、
前記川砂を洗浄し、前記第1のラミネーション処理されたテシアム・チネンセ・ターク種子の緑皮及び茎を除去した後、保湿処理を行い、2℃~4℃の条件下で第2のラミネーション処理を行って破殻種子を得るステップと、
3シーム段階の破殻種子を発芽材料として、17℃~22℃の遮光条件下で培養して種子を発芽させるステップと、
を有するテシアム・チネンセ・ターク種子の休眠の打破方法。
【請求項2】
前記水浸漬処理の時間が10時間~14時間である請求項1に記載のテシアム・チネンセ・ターク種子の休眠の打破方法。
【請求項3】
前記水浸漬処理の過程で4回~6回攪拌する請求項1に記載のテシアム・チネンセ・ターク種子の休眠の打破方法。
【請求項4】
前記ジベレリン溶液による浸漬処理において、ジベレリンの濃度が750mgL
-1~1000mgL
-1である請求項1に記載のテシアム・チネンセ・ターク種子の休眠の打破方法。
【請求項5】
前記ジベレリンは、GA
3である請求項4に記載のテシアム・チネンセ・ターク種子の休眠の打破方法。
【請求項6】
前記ジベレリン溶液による浸漬処理の時間が22時間~26時間である請求項4に記載のテシアム・チネンセ・ターク種子の休眠の打破方法。
【請求項7】
前記ジベレリン溶液による浸漬処理の時間が24時間である請求項6に記載のテシアム・チネンセ・ターク種子の休眠の打破方法。
【請求項8】
前記川砂と混合して、-4℃~-2℃の条件下で第1のラミネーション処理を行うステップにおいて、前記テシアム・チネンセ・ターク種子と前記川砂の質量比が1:1であり、ラミネーション処理の時間が58日間~62日間である請求項1に記載のテシアム・チネンセ・ターク種子の休眠の打破方法。
【請求項9】
前記川砂の含水率は、「手に持ったときに球状に保持可能であり、離すとバラバラになる」ほどである請求項8に記載のテシアム・チネンセ・ターク種子の休眠の打破方法。
【請求項10】
前記2℃~4℃の条件下で第2のラミネーション処理を行って破殻種子を得るステップにおいて、6日間~8日間ごとに種子を水で洗浄し、合計で115日間~125日間のラミネーション処理を行なう請求項1から9の何れか一項に記載のテシアム・チネンセ・ターク種子の休眠の打破方法。
【請求項11】
前記2℃~4℃の条件下で第2のラミネーション処理を行って破殻種子を得るステップにおいて、7日間ごとに種子を水で洗浄し、合計で120日間のラミネーション処理を行なう請求項10に記載のテシアム・チネンセ・ターク種子の休眠の打破方法。
【請求項12】
前記保湿処理は、緑皮及び茎を除去した前記テシアム・チネンセ・ターク種子をガーゼメッシュに載せ、次に、保湿のためにプラスチックフィルムで包むことを含む請求項1から9の何れか一項に記載のテシアム・チネンセ・ターク種子の休眠の打破方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は2021年6月23日付で中国特許庁へ提出した、出願番号が202110699418.6、出願名称が「テシアム・チネンセ・ターク種子の休眠の打破方法」である中国特許出願の優先権を主張し、その内容全体は参照により本願に組み込まれる。
【0002】
本願は、テシアム・チネンセ・タークの栽培という技術分野に関し、特にテシアム・チネンセ・ターク種子の休眠を打破する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
テシアム・チネンセ・ターク(Thesium chinense Turcz.)は、白檀科の多年生半寄生植物であり、その乾燥した全草はわが国の民間でよく用いられたハーブとして、清熱除毒、夏熱解毒、補腎、いんしょう収斂などの役割を有する。現代の研究では、テシアム・チネンセ・タークは顕著な抗炎、鎮痛、広域抗菌作用があることが分かっており、「植物性抗生物質」として知られている。テシアム・チネンセ・ターク製剤の臨床応用としては、主に顆粒、錠剤、カプセルなどが挙げられ、主な作用としては清熱消炎、解咳・解痰が挙げられ、急性および慢性の咽頭炎、気管支炎、鼻炎、風邪や発熱、肺炎などの症状の治療に用いられる。
【0004】
近年、オーバーハーベスト、環境破壊及びテシアム・チネンセ・ターク半寄生の生物学的特性などのせいで、テシアム・チネンセ・ターク野生資源のホールドとマーケット供給量は年々急減し、医薬品の需要に応えられなくなり、テシアム・チネンセ・タークは近年価格上昇が最大なハーブの1種となっている。テシアム・チネンセ・タークの野生育成や人工栽培への研究が急務である。種子繁殖がテシアム・チネンセ・タークの主な手段であるが、種子が成熟した後、自然条件下では11~36カ月という非常に長い深層休眠期を有し、種子は毎年4~6月に成熟し、翌年の3~4月に発芽し始め、発芽率が低く、出穂が不揃いである。テシアム・チネンセ・ターク種子の休眠は数種の発芽阻害因子の共通作用によるものであり、環境因子(例えば、後熟作用、変温処理など)およびジベレリン(gibberellins, GAs)を変化させることにより、これら制限因子を除去することが可能である。従来、植物ホルモン処理や温度可変ラミネーションでテシアム・チネンセ・ターク種子の休眠を打破可能であるが、全体的に効率としては破殻率が低く、発芽率も低く、作業可能性が低い。
【0005】
そのため、関連技術を改良する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願の実施形態は、テシアム・チネンセ・ターク種子の休眠を打破する方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の実施形態では、下記の技術案を使用する。
【0008】
収集したテシアム・チネンセ・ターク種子を水浸漬処理し、水没したテシアム・チネンセ・ターク種子を取り出して風乾し、2℃~4℃の条件下で保存して予備用テシアム・チネンセ・ターク種子を得るステップと、
前記予備用テシアム・チネンセ・ターク種子をジベレリン溶液に浸漬処理した後に取り出して川砂と混合し、-4℃~-2℃の条件下で第1のラミネーション処理を行うステップと、
前記川砂を洗浄し、前記第1のラミネーション処理されたテシアム・チネンセ・ターク種子の緑皮及び茎を除去した後、保湿処理を行い、2℃~4℃の条件下で第2のラミネーション処理を行って破殻種子を得るステップと、
3シーム段階の破殻種子を発芽材料として、17℃~22℃の遮光条件下で培養して種子を発芽させるステップとを有するテシアム・チネンセ・ターク種子の休眠の打破方法である。
【0009】
いくつかの実施形態では、前記水浸漬処理の時間が10時間~14時間である。
【0010】
いくつかの実施形態では、前記水浸漬処理の過程で4~6回攪拌する。
【0011】
いくつかの実施形態では、前記ジベレリン溶液による浸漬処理において、ジベレリンの濃度が750mgL-1~1000mgL-1である。
【0012】
いくつかの実施形態では、前記ジベレリンは、GA3である。
【0013】
いくつかの実施形態では、前記ジベレリン溶液による浸漬処理の時間が22時間~26時間である。
【0014】
いくつかの実施形態では、前記ジベレリン溶液による浸漬処理の時間が24時間である。
【0015】
いくつかの実施形態では、前記川砂と混合して、-4℃~-2℃の条件下で第1のラミネーション処理を行うステップにおいて、テシアム・チネンセ・ターク種子と川砂の質量比が1:1であり、ラミネーション処理の時間が58日間~62日間である。
【0016】
いくつかの実施形態では、前記川砂の含水率は、「手に持ったときに球状に保持可能であり、離すとバラバラになる」ほどである。
【0017】
いくつかの実施形態では、前記2℃~4℃の条件下で第2のラミネーション処理を行って破殻種子を得るステップにおいて、6日間~8日間ごとに種子を水で洗浄し、合計で115日間~125日間のラミネーション処理を行なう。
【0018】
いくつかの実施形態では、前記2℃~4℃の条件下で第2のラミネーション処理を行って破殻種子を得るステップにおいて、7日間ごとに種子を水で洗浄し、合計で120日間のラミネーション処理を行なう。
【0019】
いくつかの実施形態では、前記保湿処理は、緑皮及び茎を除去したテシアム・チネンセ・ターク種子をガーゼメッシュに載せ、次に、保湿のためにプラスチックフィルムで包むことを含む。
【発明の効果】
【0020】
本願の実施形態に提供されるテシアム・チネンセ・ターク種子の休眠の打破方法において、収集したテシアム・チネンセ・ターク種子を水浸漬して風乾し、予備のために2℃~4℃で保存した後、この予備用テシアム・チネンセ・ターク種子を先ずジベレリン溶液で前処理し、次に、-4℃~-2℃の条件下で低温の第1のラミネーションを行い、それから、2℃~4℃の条件下で保存して第2のラミネーションを行って、更に破殻して、3シーム段階の破殻種子をスクリーニングし、この3シーム段階の破殻種子を発芽材料として培養することによって、テシアム・チネンセ・ターク種子の休眠を打破する。このような方法では、テシアム・チネンセ・ターク種子の発芽率を顕著に向上させることができる。それで、テシアム・チネンセ・ターク種子の休眠時間が自然条件での11~36カ月から150-180日間に短縮され、発芽率も97.50%と高く、応用の見込みが広い。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本願の実施形態における技術案をより明確に説明するために、以下、実施形態または例示的技術説明に使用する添付図について簡単に説明する。明らかなように、以下の説明における添付図は、本願の実施形態の一部に過ぎず、当業者にとって、創造的労働に付しなくてもこれらの添付図から別の添付図を得ることができる。
【
図1】本願の実施形態における湖北産のテシアム・チネンセ・ターク種子を第2のラミネーション処理する破殻率の統計グラフである;
【
図2】本願の実施形態における陝西産のテシアム・チネンセ・ターク種子を第2のラミネーション処理する破殻率の統計グラフである;
【
図3】本願の実施形態におけるテシアム・チネンセ・ターク種子の発芽の4段階を示すグラフである;
【
図4】本願の実施形態におけるテシアム・チネンセ・ターク種子のラミネーション処理の1シーム段階から3シーム段階までの累積数量変化を示すトレンドグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本願の目的、技術案及び利点をより明確に理解するために、以下、添付図面及び実施形態を組み合わせて本願を更に詳細に説明する。ここで例示した実施形態は本願を限定するためではなく、本願を釈明することを意図していると理解されたい。
【0023】
本願の様々な実施形態において、上述各過程の番号付けは、実行順序を制限してしなく、ステップの一部または全部は並列に実行してもよいし、順番に実行してもよく、各過程の実行順序は本願の実施形態の実施過程を全く制限しなく、その機能や固有の論理によって決まっていると理解されたい。
【0024】
本願の実施形態に使用される用語は、本願を制限することを意図するものではなく、単に特定の実施形態を説明することを目的としている。本願の実施形態および添付の特許請求の範囲で使用される「1つ」、「前記」および「この」は、文脈が明らかに示す場合を除き、複数の形式を含むことも意図する。
【0025】
本願の実施形態の明細書に言及の関連成分の重量は、各成分の具体的な含有量を指すだけでなく、各成分間の重量の比例関係を示すこともできる。そのため、本願の実施形態の明細書に従って関連成分の含有量を比例的に拡大または縮小すれば、本願の実施形態の明細書に開示の範囲内に陥る。具体的には、本願の実施形態の明細書に記載の質量は、μg、mg、g、kg等の化学分野にて知られている質量単位であってもよい。
【0026】
「第1」及び「第2」という用語は、物質などの目的を互いに区別するための記述的な目的のみに使用され、相対的な重要性を示したり教示したり、示された技術的特徴の数量を示唆するものと理解されてはいけない。例えば、本願の実施形態範囲を逸脱しない場合に、第1のXXは第2のXXとも呼ばれ、同様に、第2のXXは第1のXXとも呼ばれる。これにて、「第1」および「第2」によって限定された特徴は、1つ以上の該特徴を含むと明示または示唆してもよい。
【0027】
テシアム・チネンセ・ターク種子の破殻過程をより深く理解するために、本願では、テシアム・チネンセ・ターク種子のラミネーション処理後の種子の発芽破殻は、4つの段階、即ち、テシアム・チネンセ・ターク種子をラミネーション処理してから体積が徐々に大きくなる段階である第1の段階、つまり、膨潤吸収段階と、種子体積が大きくなった後、胚軸成長端に上から下へ1本のシームが出現し、「1シーム段階」と呼ばれ、その後、胚軸端からさらに2本のシームが出現し、皮種は3つのフラップに分かれ、「3シーム段階」と呼ばれる段階である第2の段階、つまり、発芽段階と、胚軸が発生し、種子が大きくなるにつれて、一部の種子の種皮が剥がれる段階である第3の段階、つまり、胚軸伸長段階と、子葉が成長するにつれて、完全な苗に成長する段階である第4の段階、つまり、苗木段階とに分けられる。
【0028】
本願の実施形態は、以下のステップを含む、テシアム・チネンセ・ターク種子の休眠の打破方法を提供する。
S01:収集したテシアム・チネンセ・ターク種子を水浸漬処理し、水没したテシアム・チネンセ・ターク種子を取り出して風乾し、2℃~4℃の条件下で保存して予備用テシアム・チネンセ・ターク種子を得る;
S02:予備用テシアム・チネンセ・ターク種子をジベレリン溶液に浸漬処理した後に取り出して川砂と混合し、-4℃~-2℃の条件下で第1のラミネーション処理を行う;
S03:川砂を洗浄し、第1のラミネーション処理されたテシアム・チネンセ・ターク種子の緑皮及び茎を除去した後、保湿処理を行い、2℃~4℃の条件下で第2のラミネーション処理を行って破殻種子を得る;
S04:3シーム段階の破殻種子を発芽材料として、17℃~22℃の遮光条件下で培養して種子を発芽させる。
【0029】
本願の実施形態は、テシアム・チネンセ・ターク種子の深層休眠と発芽困難の問題をよりよく克服するために、収集したテシアム・チネンセ・ターク種子を水浸漬して風乾し、予備のために2℃~4℃で保存した後、この予備用テシアム・チネンセ・ターク種子を先ずジベレリン溶液で前処理し、次に、-4℃~-2℃の条件下で低温の第1のラミネーションを行い、それから、2℃~4℃の条件下で保存して第2のラミネーションを行って、更に破殻して、3シーム段階の破殻種子をスクリーニングし、この3シーム段階の破殻種子を発芽材料として培養することによって、テシアム・チネンセ・ターク種子の休眠を打破するテシアム・チネンセ・ターク種子の休眠の打破方法を提供する。このような方法では、テシアム・チネンセ・ターク種子の発芽率を顕著に向上させることができる。それで、テシアム・チネンセ・ターク種子の休眠時間が自然条件での11~36カ月から150-180日間に短縮され、発芽率も97.50%と高く、応用の見込みが広い。テシアム・チネンセ・タークの野生から人工栽培への転換を実現するのに確かな技術的保障を提供する。
【0030】
上記ステップS01において、テシアム・チネンセ・ターク種子は、下記の通りに収集し得る。テシアム・チネンセ・タークの乾燥した全草を叩いて、落ちたテシアム・チネンセ・ターク種子を収集し、風選で夾雑物を取り除き、収集したテシアム・チネンセ・ターク種子を10時間~14時間水浸漬処理し、数回(例えば4回~6回)攪拌して、浮遊した種子を除去することにより、充実したテシアム・チネンセ・ターク種子を得ることができる。水浸漬処理後、水没したテシアム・チネンセ・ターク種子を取る。すなわち、水底に沈んだ充実したテシアム・チネンセ・ターク種子を取る。
【0031】
上記ステップS02において、テシアム・チネンセ・ターク種子をジベレリン溶液に浸漬処理し、ジベレリン溶液の濃度が750mgL-1~1000mgL-1である。ジベレリンがGA3であり、この濃度のジベレリン(GA3)による種子への前処理は、よりよい効果を有する。上記ジベレリン溶液の浸漬処理時間は22時間~26時間である。
【0032】
1つの実施形態では、上記ジベレリン溶液による浸漬処理を完了した後、テシアム・チネンセ・ターク種子を取り出し、それから、川砂と混合して、-4℃~-2℃の条件下でテシアム・チネンセ・ターク種子と川砂との質量比が1:1で、ラミネーション処理の時間が58日間~62日間である第1のラミネーション処理を行う。この条件での低温ラミネーションの方が効果的である。上記第1のラミネーション処理において、川砂の含水率は、「手に持ったときに球状に保持可能であり、離すとバラバラになる」ほどである。
【0033】
上記ステップS03において、保湿処理は緑皮及び茎を除去したテシアム・チネンセ・ターク種子をガーゼメッシュに載せ、次に、保湿のためにプラスチックフィルムで包むことを含む。このように、保湿効果がよりよくなる。
【0034】
1つの実施形態では、保湿処理後、テシアム・チネンセ・ターク種子を2℃~4℃の条件下で保存して第2のラミネーション処理を行い、更に破殻種子を得ることができる。このステップでは、6日間~8日間ごとに種子を水で洗浄し、合計で115日間~125日間のラミネーション処理を行なう。この条件下では、3シーム段階の破殻種子をよりよく得ることができる。より好ましくは、7日間ごとに種子を水で洗浄し、合計で120日間のラミネーション処理を行なう。
【0035】
本願の1つの実施形態では、陝西産テシアム・チネンセ・ターク種子を750mg.L-1のGA3、湖北産のテシアム・チネンセ・ターク種子を1000mg.L-1のGA3でそれぞれ24時間浸漬し、-4℃~-2℃で湿砂の第1のラミネーション処理を60日間行い、ネット種子に対し2℃~4℃で低温第2のラミネーション処理を120日間行う方法を利用する。累積破殻率はそれぞれ47.95%及び56.47%に達成でき、3シーム段階の破殻種子が発芽に適すると確定出来る。発芽率が97.50%に達し、テシアム・チネンセ・ターク種子の深層休眠と発芽困難の問題を解決し、テシアム・チネンセ・タークの野生から人工栽培への転換を実現するのに確かな技術的保障を提供する。
【0036】
1つの具体的な実施形態において、本願に係るテシアム・チネンセ・ターク種子の休眠の打破方法は、以下のステップを有する。
A.種子の採集:採集した湖北と陝西産のテシアム・チネンセ・ターク種子を水に12時間浸漬し、数回撹拌して、浮遊した種子を取り除き、自然風乾した後、4℃の低温倉庫に保存しておく;
B.種子の前処理:陜西と湖北産のテシアム・チネンセ・ターク種子をそれぞれ1000mg.L-1のGA3および750mg.L-1のGA3水溶液に24時間浸漬し、取り出して余分な水分を除去する;
C.低温サンドストレージラミネーション:粒子が均一な川砂を洗浄して乾燥し、ステップBの処理後のテシアム・チネンセ・ターク種子と川砂とを1:1の割合で混合し、基材含水率は、「手に持ったときに球状に保持可能であり、離すとバラバラになる」ほどであり、温度範囲が-4℃~2℃の冷蔵倉庫に放置して第1のラミネーション処理を60日間行う。冷蔵倉庫から種子を取り出し、川砂を水で洗浄し、洗浄した種子をガーゼメッシュに放置したらプラスチックバッグで覆い、4℃の冷蔵庫で第2のラミネーション処理を行う;
D.種子の破壊:種子から破殻種子を段階的に検出し、第2のラミネーション処理の120日目までの累積種子破殻率は、陜西で47.95%、湖北で56.47%である;
E.種子の発芽:ラミネーション処理における3シーム段階の破殻種子を17~22℃の暗所で培養したところ、種子の発芽率は最大97.50%である。
【0037】
本願の実施形態におけるテシアム・チネンセ・ターク種子の休眠の打破方法は、用いられた種子を川砂と混合して凍結処理+ネット種子低温ラミネーション処理した後、テシアム・チネンセ・ターク種子の休眠を効果的に打破して、発芽を促進し、休眠期間の短縮を図り、自然条件下での11~36ヵ月の休眠期間を約150日間に短縮し、種子破殻率は約50%に達しており、30%未満という従来の研究結果よりも大幅に高くなった。テシアム・チネンセ・ターク種子は3シーム段階に成長しなければ、発芽した種子としてはいけない。発芽率は97.50%に上昇したら、このような効果が68%との従来の研究結果よりも大幅に高くなる。また、本願の実施形態におけるテシアム・チネンセ・ターク種子の休眠の打破方法は、ネット種子を低温処理するので、種子処理の体積を低減するだけでなく、種子の発育状態を観察するのに非常に有利であり、要件を満たした種子を播種時期に合わせて段階的かつ一括して播種することができ、テシアム・チネンセ・タークの野生から人工栽培への転換を実現するのに確かな技術的保障を提供する。
【0038】
以下、具体的な実施形態を組み合わせて説明する。
【0039】
実施例1
一、種子の採集:
(1)テシアム・チネンセ・タークの乾燥した全草を叩いて、植物上のテシアム・チネンセ・ターク種子を収集した;(2)風選で夾雑物の一部を取り除いた;(3)種子を24時間水浸漬処理し、数回攪拌して、浮遊した種子及び夾雑物を除去すると共に、種子を揉んで緑皮及び茎を除去し、予備のために水没した種子を自然風乾した;この方法で陝西(SX)産のテシアム・チネンセ・ターク種子と湖北(HB)産のテシアム・チネンセ・ターク種子を採集した。
【0040】
二、種子前処理:
上記貯蔵した陝西(SX)産の種子と湖北(HB)産の種子を取って、室温下で流水で24時間洗浄し、種子表面水分を乾燥し、室温条件下でそれぞれ濃度が0、500、750及び1000mgL-1のジベレリンGA3溶液に24時間浸漬し、それぞれSX-0/HB-0、SX-500/HB-500、SX-750/HB-750、SX-1000/HB-1000で表される。
【0041】
三、低温ラミネーション処理:
粒子が均一な川砂を洗浄して乾燥し、前処理後のテシアム・チネンセ・ターク種子と川砂とを1:1の割合で均一に混合し、川砂基材の含水率は、「手に持ったときに球状に保持可能であり、離すとバラバラになる」ほどであり、温度範囲が-4℃~2℃の冷蔵倉庫に放置して第1のラミネーション処理を60日間行った。冷蔵倉庫から種子を取り出し、川砂を水で洗浄し、洗浄した種子をガーゼメッシュに放置したらプラスチックバッグで覆い、4℃の冷蔵庫に放置して第2のラミネーション処理を行った。7日間ごとに水で種子を洗浄し、それぞれ20日、45日、90日、120日間処理した。
【0042】
四、種子発芽
a.種子割れ率統計:第2のラミネーション処理終了後に種子300粒をランダムに選び、蒸留水できれいになるまで洗浄し、割れた種子数を数え、割れ率=割れた種子数/全種子数×100%により算出した;
b.種子発芽率統計:1シーム段階及び3シーム段階の破殻種子を、ろ紙を2枚重ねた9cmペトリ皿に入れ、蒸留水を加え、17~22℃の暗所条件下で発芽試験を行った。発芽率=発芽種子数/全種子数×100%。
【0043】
その結果、
図1および
図2(ここで、a、b、cはばらつきを表し、同じ日の結果データで文字が同じでない場合は、差が有意であることを意味する、P=0.05)に示すように、低温第2のラミネーション処理の時間の違いはテシアム・チネンセ・ターク種子の割れ率に大きな影響を与え、第2のラミネーションの時間が長くなるにつれて、種子の割れ率が徐々に高くなる。ジベレリンGA
3で処理されたテシアム・チネンセ・タークの破殻率は、ジベレリンGA
3で処理されていないコントロールよりも有意に高く、湖北産の種子を750mgL
-1および1000mgL
-1のGA
3で処理した破殻率は他の処理よりも有意に高く、後者の破殻率は最高であり、56.47%に達した。陝西産の種子を異なる濃度のGA
3で処理すると、顕著な相違がなく、750mgL
-1のGA
3で処理された破殻率が最高であり、47.95%に達した。
【0044】
テシアム・チネンセ・ターク種子のラミネーション後、テシアム・チネンセ・ターク種子の発芽は4つの段階に分けられる。
図3は、湖北(HB)産の種子の発芽段階図である。この湖北(HB)産の種子を例として、ラミネーション処理後に種子が徐々に大きくなる第1の膨潤吸収段階と、胚軸成長端に上から下へ1本のシームが出現し、「1シーム段階」と呼ばれ(
図3中のa参照)、その後、胚軸端からさらに2本のシームが出現し、皮種は3つのフラップに分かれ、「3シーム段階」と呼ばれる(
図3中のb参照)第2の発芽段階と、胚軸が発生し(
図3中のc参照)、種子が大きくなるにつれて、一部の種子の種皮が剥がれる(
図3中のd参照)第3の胚軸伸長段階と、子葉が成長するにつれて、完全な苗に成長する第4の苗木段階とを有する。土壤に抵抗がないため、種皮が落ちにくい(
図3中のe参照)。
【0045】
テシアム・チネンセ・ターク種子の1シーム段階から3シーム段階への育成は、低温(4℃)で完成したのであり、この過程は3つの段階に分けられる。
図4に示す湖北(HB)産の種子の、4℃の低温ラミネーション処理種子の1シーム段階から3シーム段階への育成の累積数量変化トレンドを例とした。第1段階:急成長期:1日目から7日目まで、3シーム段階の種子の累積比率は40%以上に達した。第2段階:プラトー期:7日目から13日目まで、3シーム段階の種子が5%弱成長し、45.7%に達した。第3段階:低成長期:15日目から41日目まで、3シーム段階の種子の累積比率は83.7%に達し、さらに16.3%が1シーム段階の種子であった。
【0046】
湖北(HB)産の種子の1シーム段階及び3シーム段階に対し発芽試験を行った:破殻種子の発芽率の統計を表1に示し、データはペアサンプルT検定を用いて分析した。データの結果、発芽率とカビ率との両方のP値は0.000<0.01であった。したがって、テシアム・チネンセ・ターク種子を3シーム段階まで育成すると、発芽率を有効に高めるとともにカビ率を低減することができる。
【0047】
【0048】
以上は、本願の選択可能な実施形態に過ぎず、本願を限定するものではない。当業者にとって、本願発明は、様々な変更及び変形が可能である。本願の精神および原則の範囲内でなされた変更、同等な代替、改良等は、いずれも本願の特許請求の範囲に含まれるべきである。