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特許7433584パラキシレンからテレフタル酸を製造する内蔵マイクロ界面酸化システム及び方法
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  • 特許-パラキシレンからテレフタル酸を製造する内蔵マイクロ界面酸化システム及び方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】パラキシレンからテレフタル酸を製造する内蔵マイクロ界面酸化システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 51/265 20060101AFI20240213BHJP
   C07C 51/44 20060101ALI20240213BHJP
   C07C 63/26 20060101ALI20240213BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240213BHJP
【FI】
C07C51/265
C07C51/44
C07C63/26 D
C07B61/00 300
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022549269
(86)(22)【出願日】2020-05-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-30
(86)【国際出願番号】 CN2020092767
(87)【国際公開番号】W WO2021196386
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-08-15
(31)【優先権主張番号】202010243427.X
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520307724
【氏名又は名称】南京延長反応技術研究院有限公司
【氏名又は名称原語表記】NANJING YANCHANG REACTION TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE CO. LTD
【住所又は居所原語表記】ZHOU, Zheng No.88, South Tuan District, Jiangbei New District Nanjing , Jiangsu 210047 China
(74)【代理人】
【識別番号】100216471
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬戸 麻希
(72)【発明者】
【氏名】張志炳
(72)【発明者】
【氏名】周政
(72)【発明者】
【氏名】張鋒
(72)【発明者】
【氏名】李磊
(72)【発明者】
【氏名】孟為民
(72)【発明者】
【氏名】王宝栄
(72)【発明者】
【氏名】楊高東
(72)【発明者】
【氏名】羅華勲
(72)【発明者】
【氏名】楊国強
(72)【発明者】
【氏名】田洪舟
(72)【発明者】
【氏名】曹宇
【審査官】柳本 航佑
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-140342(JP,A)
【文献】中国実用新案第210045219(CN,U)
【文献】中国実用新案第210045217(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2009/0005591(US,A1)
【文献】特公昭45-030812(JP,B2)
【文献】特表2013-542067(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105348067(CN,A)
【文献】特開昭62-045335(JP,A)
【文献】特開2018-127398(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 51/00-51/64
C07C 63/00-63/74
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラキシレンからテレフタル酸を製造するための内蔵マイクロ界面酸化システムであって

順次接続された第1反応器と、精留塔と、第2反応器と、を含み、
前記第1反応器の側壁に第1出口が設けられ、
前記第2反応器の側壁に第1入口が設けられ、
前記精留塔の側壁には材料入口が設けられ、
前記精留塔の底部には材料出口が設置されており、
前記第1出口は前記精留塔の材料入口に接続され、
前記第1入口は前記精留塔の材料出口に接続され、
前記第1反応器と第2反応器の内部には共にマイクロ界面ユニットが設置され、
マイクロ界面ユニットは破砕空気を分散させて気泡にし、
前記マイクロ界面ユニットは、上下に配置された第1のマイクロ界面発生器と第2のマイ
クロ界面発生器とを含み、
前記第1のマイクロ界面発生器には導気管が接続され、
前記導気管の先端は前記第1反応器の液面から伸出して空気を回収するために用いられ、
前記第1反応器の側壁にはさらに第2入口が設けられ、
前記第2入口端部は前記第2のマイクロ界面発生器内に延在し、
前記第2反応器内のマイクロ界面ユニットの構造は前記第1反応器と同じである、
内蔵マイクロ界面酸化システム。
【請求項2】
前記第1のマイクロ界面発生器は、液動式マイクロ界面発生器であることを特徴とする請
求項1に記載の内蔵マイクロ界面酸化システム。
【請求項3】
前記第2のマイクロ界面発生器は、空力式マイクロ界面発生器であることを特徴とする請
求項1に記載の内蔵マイクロ界面酸化システム。
【請求項4】
前記第1のマイクロ界面発生器は、波よけ柵を用いて前記第1の反応器及び第2の反応器
の内部に固定することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の内蔵マイクロ界
面酸化システム。
【請求項5】
前記第1反応器及び第2反応器の内部上方にはいずれも濾過網が設けられることを特徴と
する請求項1~3のいずれか1項に記載の内蔵微界面酸化システム。
【請求項6】
前記第1反応器頂部にはさらに第2出口が設けられ、前記第2出口には酸水分離器が接続
されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の内蔵マイクロ界面酸化
システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパラキシレンによるテレフタル酸製造の酸化反応分野に関し、具体的には、パラ
キシレンによるテレフタル酸製造の内蔵マイクロ界面酸化システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
テレフタル酸は重要な化学原材料であり、通常、パラキシレンと酸素含有ガスから酸化反
応によって製造される。パラキシレン酸化反応器は通常、バブリング式酸化反応器を採用
し、バブリングは直接的に通常3mm以上、乃至センチメートル級である。その物質の相
境界面積は限られており、ガス利用率が低く、反応効率が低い。気液の物質移動を強化す
るために、バブリング反応器は一般的に塔内に塔板を増設し、静的混合器などの内部部品
は混合を強化するために使用される。混合後の気泡直径は通常3~30mmであり、提供
される相境界面積と物質移動係数(液側、気側)は限られているため、反応性能は突破性
の向上を得にくく、さらに反応の全体効率に影響を与えるため、工程上は高温高圧操作を
採用せざるを得ない。気相及び/または液相の溶解度を増加させて物質移動速度を向上さ
せることにより、反応過程を強化する。しかし、パラキシレン酸化の過程は非常に複雑で
、主に4つのステップ、すなわち、パラキシレン(PX)→パラメチルベンズアルデヒド
(TALD)→p-メチル安息香酸(p-TA)→p-カルボキシベンズアルデヒド(4
-CBA)→テレフタル酸(TA)を含み、最初の2つのステップは酢酸を溶媒とし、高
温高圧を採用するべきではない。従来技術は混合の反応技術を採用し、エネルギー消費量
が高く、酢酸消費量が大きく、反応効率が低下している。
【0003】
そこで、本発明を提案する。
【発明の概要】
【0004】
発明の内容
【0005】
本発明の第1の目的は、反応器にマイクロ界面ユニットを設置し、マイクロ界面ユニット
を設置した後、空気気泡をミクロン級の気泡に砕くことができ、それによって気相と液相
の間の相境界面積を増加させ、物質移動空間を十分に満足させ、液相における空気の滞留
時間を増加させ、それによって空気の消費量を下げ、エネルギー消費を下げ、同時に操作
温度及び圧力を下げ、反応の安全性を高め、しかも段階式技術を採用し、酢酸溶媒が高温
酸化条件に耐えられない矛盾を解決し、反応効率を高めた。
【0006】
本発明の第2の目的は、上述の内蔵マイクロ界面酸化システムを用いたパラキシレンを用
いてテレフタル酸を製造する方法を提供し、この方法はエネルギー消費を減少させ、従来
技術よりも良好な反応効果を達成するのに有利である。
【0007】
本発明の上記目的を達成するために、特に以下の技術案を採用する。
【0008】
本発明はパラキシレンからテレフタル酸を製造する内蔵マイクロ界面酸化システムを提供
し、以下を含む。順に接続された第1反応器と、精留塔と、第2反応器と、を含む。前記
第1反応器の側壁に第1出口が設置され、前記第2反応器の側壁に第1入口が設置され、
前記精留塔の側壁に材料入口が設置され、前記精留塔の底に材料出口が設置される。
【0009】
前記第1出口は前記精留塔の材料入口に接続され、前記第1入口は前記精留塔の材料出口
に接続される。
【0010】
前記第1の反応器と第2の反応器の内部にはいずれも微界面ユニットが設置され、前記微
界面ユニットは破砕された空気を気泡に分散するために使用される。
【0011】
従来技術において、パラキシレンからテレフタル酸を製造する反応工程は以下の通りであ
る。
【0012】
すなわち、p-キシレン(PX)→p-メチルベンズアルデヒド(TALD)→p-メチ
ル安息香酸(p-TA)→p-カルボキシベンズアルデヒド(4-CBA)→テレフタル
酸(TA)
【0013】
【0014】
反応プロセスは一般的にバブリング式酸化反応器を採用し、生成過程において、相境界面
積が体積物質移動係数に与える影響の程度は比較的に大きく、バブリング式酸化反応器の
一般的な物質移動効率は比較的に低く、それによって反応効率において突破性のある進展
が難しく、反応効率と原材料転化率に影響を与えた。本発明の内蔵マイクロ界面酸化シス
テムは反応器内部にマイクロ界面ユニットを設置した後、空気と原材料がマイクロ界面ユ
ニットに通過した後、内部は物質移動の強化、分散破砕を実現し、破砕してマイクロ気泡
を形成し、物質移動空間を十分に満足させ、それによって空気の消費量を低減し、温度と
圧力があまり高い条件を必要としなくても、反応自体の高反応効率を保証することができ
る。また、本発明は段階式プロセスを採用し、酢酸溶媒が高温酸化条件に耐えられない矛
盾を解決し、反応効率を高めた。
【0015】
さらに、前記マイクロ界面ユニットに含まれるマイクロ界面発生器の設置方式は制限され
ず、設置位置は制限されず、数量は制限されない。より好ましくは、マイクロ界面ユニッ
トは、空気を回収するために先端に張り出した気管を接続する上下に配置された第1のマ
イクロ界面発生器と、反応中に大量の未反応の空気と一部の酢酸と水蒸気が反応器の上方
に蓄積され、十分に回収するために、導管管が再び底部に入って複数回循環反応すること
により、物質移動効率が向上する。前記第1反応器の側壁にはさらに第2入口が設けられ
、前記第2入口端は前記第2マイクロ界面発生器内に延び、前記第2反応器内のマイクロ
界面ユニット構造は前記第1反応器と同じである。
【0016】
さらに、前記第1のマイクロ界面発生器は液動式マイクロ界面発生器であり、液相物質(
反応によって得られたp-メチルベンズアルデヒド、酢酸、水、少量の未反応完全なp-
キシレン、中間生成物などを含む)を動力サイクルとして、反応器上方の大量の未反応の
空気と一部の酢酸と水蒸気を導気管を介して吸い込み、それによって気液二相間の物質移
動効果を増加させ、液面上の空気を十分に回収する。
【0017】
さらに、前記第1反応器の外側には、第1マイクロ界面発生器に動力を与える循環管が設
けられている。反応により得られたp-メチルベンズアルデヒド、酢酸、水、少量の未反
応完全なp-キシレン、中間生成物などを含む液相物を含む。前記第1マイクロ界面発生
器の頂部に一端が連通し、他端が前記第1反応器の側壁に連通する。
【0018】
また、より好ましくは、第1反応器の底部には管路が設けられ、管路中の材料は主にパラ
メチルベンズアルデヒド、酢酸、水などである。この管路は循環管路と集約された後、第
1位微界面発生器の頂部から通電し、第1微界面発生器に巻吸引力を提供し、循環物流を
形成し、それによってこの部分の材料の回収利用を実現する。循環管路には動力を提供す
る循環ポンプが設置され、前記循環ポンプのポンプハウジング内壁には金属センシングプ
ローブが設けられ、金属センシングプローブ側のポンプハウジング外壁には温度センサが
設けられ、金属センシングプローブと温度センサは導線で接続され、循環ポンプ中の通液
相材料の温度を随時監視することができる。前記循環管路には、循環物の温度を制御する
ための熱交換器が設置されており、それにより第1反応器内部の温度が安定しており、好
ましくはプレート式熱交換器であり、他の熱交換器に比べてプレート式熱交換器は熱交換
効率が高く、熱損失が小さく、高効率で省エネであり、洗浄しやすく、着脱しやすいなど
の特徴がある。
【0019】
さらに、前記第2のマイクロ界面発生器は空気圧式マイクロ界面発生器であり、空気をマ
イクロ界面発生器に通した後、反応器内の反応物質(パラキシレン、酢酸及び触媒等の混
合物を含む)と接触して破砕してマイクロ気泡を形成する方式により、物質移動効果を高
める。
【0020】
第1のマイクロ界面発生器と第2のマイクロ界面発生器の出口は向かい合って、このよう
に第1のマイクロ界面発生器の発生する気泡は下へ運動して、第2のマイクロ界面発生器
の発生する気泡は上へ運動して、両者は衝突して更に小さい気泡を発生して、更に接触面
積を増大して、反応効率を加速する。
【0021】
さらに、前記第1のマイクロ界面発生器と前記第2のマイクロ界面発生器との間には、互
いに固定するための連結ロッドが設けられている。連結ロッドは、反応器内部の液体の流
れがマイクロ界面発生器自体に衝撃を与えるのを防ぐための良好な補強作用を果たしてい
る。連結ロッドの具体的な材質、形状、数量は問わず、固定効果を奏する限り、長棒形状
が好ましい。
【0022】
本発明が採用するマイクロ界面発生器は、本発明者が先の特許において具現化したもので
あり、例えば、公開番号106215730Aの特許のように、マイクロ界面発生器の核
心は気泡破砕であり、気泡破砕器の原理は高速噴流によって運ばれた気体が互いに衝突し
てエネルギー伝達を行い、気泡を破砕することであり、マイクロ界面発生器の構造につい
ては上記特許においてその一実施例を開示し、これはこれ以上述べない。マイクロ界面発
生器と第1、第2の反応器、およびその他の機器との接続については、接続構造、接続位
置を含み、マイクロ界面発生器の構造に応じて定められるが、これは限定されない。マイ
クロ界面発生器の反応機構及び制御方法については、本発明者らは先の特許CN1075
63051Bに開示しており、これはこれ以上述べない。
【0023】
第2反応器と第1反応器の内部構造は一致している。ただし、第1反応器と第2反応器の
供給口、排出口が異なる。
【0024】
第1反応器の混合原材料入口は側壁より下に設置され、第2入口は空気を通じて、混合原
材料入口は反応混合原材料(パラキシレン、酢酸、触媒などの混合物を含む)を通じて、
第1反応器の第1出口は側壁の中上部に設置され、オーバーフローパイプを通し、生成さ
れた中間生成物(主成分はp-メチル安息香酸であり、酢酸、水、少量の未反応完全なp
-キシレン、中間生成物なども含む)は精留塔の中部に入り、精留塔で精製分離される。
【0025】
第2反応器の第1入口位置は第1反応器の第2入口位置と同じに設置され、塔底から産出
された物質(p-メチル安息香酸と水)の精留、補充された触媒(臭化水素酸)及び酸水
分離器から分離された水は共に第1入口から第2反応器に入り反応を続け、空気は第2反
応器の空気入口から入り、十分に反応した後、生成された生成物テレフタル酸溶液は、第
2反応器の側壁上部の第3出口から採取される。
【0026】
さらに、前記第1のマイクロ界面発生器は波よけ柵を用いて前記第1の反応器と第2の反
応器の内部に固定され、波よけ柵は主に泡を隔離支持と濾過除去する役割を果たす。一方
では第1のマイクロ界面反応器を反応器の内部に固定し、他方では挟み込んだ泡を除去し
て、物質移動効率を保証し、価値のある材料損失を低減し、前記波よけ柵は国産輸入の良
質材質を採用することができ、例えば:Q235、304、304L、321、316L
、F46、NS-80、ニッケル糸、チタン糸及び合金などの材質である。
【0027】
さらに、前記第1反応器と第2反応器の内部上方にはいずれも濾過網が設置され、反応器
の上方には未反応の空気と一部のガス物質が大量に蓄積され、これらのガスは導気管を通
じて第1微界面発生器の内部に入り、濾過網を設置することでガス中の不純物が第1微界
面発生器の内部に入るのを防ぐことができる。
【0028】
さらに、第1反応器の上部には、酸水分離器が接続された第2出口がさらに設けられてい
る。精留塔の塔頂部で採取された酢酸と水の一部は、第1反応器の頂部で採取された排気
ガスと共同で合流して酸水分離器に入り、分離された酢酸は再び第1反応器の内部に戻っ
て循環使用され、分離された水は一部排出され、一部は第2反応器の内部に入って循環使
用される。
【0029】
さらに、本発明に用いられる精留塔は、主に軽成分分離セグメントと再編成分離セグメン
トの組成を有し、前記軽成分分離セグメントと再編成分離セグメントの間の塔節には、第
1反応器中の酸化生成物を前記精留塔に通すための材料入口が設けられる。精留塔の材料
から入口される材料は主にp-メチル安息香酸であり、酢酸、水、少量の未反応完全なp
-キシレン、中間生成物など、p-メチル安息香酸と少量の水は材料入口の下方に位置す
る組換え分分離セグメントを経て塔底に精留分離され、酢酸と大部分の水は軽成分分離セ
グメントを経て塔頂方向に精留分離され、留出物出口から引き出す酢酸と水蒸気は凝縮さ
れ、一部は還流液として塔頂から精留塔に戻る。残りの部分は配管を通じて第1反応器中
の排気ガスと混合した後、酸水分離器に入り、塔底生成物のp-メチル安息香酸と少量の
水などの液相物を採取した後、一部は塔釜再沸騰器を経た後、還流液として再結合分離セ
グメントに戻り精留を続け、もう一部は第1入口を通じて第2反応器内に入った後、反応
を続ける。
【0030】
精留塔中の軽成分分離セグメントと再編成分離セグメントはいくつかの塔板、充填材を任
意に組み合わせて形成することができ、好ましくは塔釜に近い位置は塔板の構造を採用し
、塔頂に近い位置は充填材の構造を採用し、塔板自体の圧力降下が比較的に大きく、充填
材の圧力降下が比較的に小さいためである。
【0031】
さらに、前記精留塔の塔頂部には塔頂凝縮器が設置され、塔釜には塔釜再沸騰器が設置さ
れ、前記塔釜再沸騰器のタイプは降下膜式再沸騰器であり、このタイプの再沸騰器は通常
の再沸騰器タイプと比べて管壁が成膜され、熱交換効率が高く、滞留時間が短く、結焦し
にくく、塔釜の物質が重合して副生成物が生成するのを回避した。
【0032】
そのほか、本発明は上述の内蔵マイクロ界面酸化システムを用いたパラキシレンを用いて
テレフタル酸を製造する方法を提供し、その特徴は以下のステップを含む。
【0033】
空気は第1反応器に内蔵されたマイクロ界面ユニットを介して分散破砕される。
【0034】
反応物質が第1反応器に入って分散破砕後の空気と反応する。
【0035】
反応により得られた液相物は精留塔に入って分離する。
【0036】
精留塔から分離された物質は第2反応器に入り、分散破砕された空気と反応してテレフタ
ル酸を得た。
【0037】
さらに、前記第1反応器内の温度は120~155℃であり、圧力は0.20~0.66
MPaである。
【0038】
さらに、前記第2反応器内の温度は135~180℃、圧力は0.56~0.82MPa
である。
【0039】
本発明の有益な効果は、従来技術と比較して、以下の通りである。
【0040】
(1)本発明はマイクロ界面ユニットを設置することにより、接触面積を増大し、反応相
間の物質移動効率を高め、さらに低い圧力範囲内で反応を強化する目的を達成し、反応効
率を高め、反応過程中のエネルギー消費と生成コストを大幅に減少し、投資規模を下げ、
設備操作周期を延長し、反応過程中の本質的な安全性の差を確保し、反応製品の工業化大
規模生産を効果的に保証した。
【0041】
本発明はセグメント化プロセスを通じて、異なる反応に対して異なる反応条件を与え、パ
ラキシレンがテレフタル酸を製造する過程において、酢酸は溶媒として高温酸化条件の矛
盾に耐えられず、しかも直ちに生成物を取り出すことができ、このセグメント化酸化は投
資と消費を減少させ、既存プロセスより良い反応効果を達成するのに有利である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
以下の好ましい実施形態の詳細な説明を読むことにより、様々な他の利点及び利点が当業
者に明らかになるであろう。図面は、好適な実施形態を示す目的にのみ使用され、本発明
の限定と考えるべきではない。また、図面全体において、同じ部品を同じ参照符号で示し
ている。
【0043】
図1】本発明の実施例により提供されるパラキシレンからテレフタル酸を製造するための内蔵マイクロ界面酸化システムの構造概略図である。
【0044】
[符号の説明]
【0045】
10-第1反応器、11-第1出口、
【0046】
12-第2入口、13-第2出口、
【0047】
14-混合原材料入口、20-精留塔、
【0048】
21-材料入口、22-材料出口、
【0049】
23-留出物出口、24-軽成分分離セグメント、
【0050】
25-再編成分離セグメント、26-凝縮器、
【0051】
30-第2反応器、31-第一入口、
【0052】
32-第3出口、33-空気入口、
【0053】
34-排気ガス出口、
【0054】
40-マイクロ界面ユニット、41-第1のマイクロ界面発生器、
【0055】
42-第2のマイクロ界面反応器、43-導気管、
【0056】
50-酸水分離器、60-波止め柵、
【0057】
70-濾過網、80循環ポンプ、
【0058】
90-熱交換器、100-塔釜再沸騰器
【発明を実施するための形態】
【0059】
以下、添付図面及び具体的な実施形態に関連して本発明の技術的態様を明確に、完全に説
明する。以下に説明する実施形態は本発明の一部の実施形態であり、全ての実施形態では
なく、本発明を説明するためだけのものであり、本発明の範囲を限定するものではないこ
とを当業者は理解するであろう。本発明における実施例に基づいて、当業者が創造的な労
働を行うことなく取得した他のすべての実施例は、本発明の保護の範囲に属する。実施例
に具体的な条件が明記されていない者は、通常の条件またはメーカーが提案した条件に従
って行う。使用する試薬や機器にメーカーが明記されていない者は、市販で購入できる通
常の製品である。
【0060】
本発明の説明において、用語「中心」、「上」、「下」、「左」、「右」、「垂直」、「
水平」、「内」、「外」などが示す方位または位置関係は、図面に示す方位または位置関
係に基づくものであり、単に本発明の説明を容易にし、説明を簡略化するためのものであ
って、指定された装置または要素が特定の方位、特定の方位で構成され操作されるので、
本発明に対する制限とは理解できない。さらに、「第1」、「第2」、「第3」という用
語は、説明の目的のためだけに使用され、相対的な重要性を示す、または暗示するとは理
解されない。
【0061】
本発明の説明において、特に明確な規定と限定がない限り、用語「取り付け」、「接続」
、「連結」は広義に理解されるべきであり、例えば、固定接続であってもよく、取り外し
可能な接続であってもよく、または一体的に接続してもよく、機械的接続でもよいし、電
気的接続でもよく、直接的に接続してもよいし、中間媒体を介して間接的に接続してもよ
いし、2つの要素の内部の接続でもよい。当業者であれば、本発明における上記用語の具
体的な意味を具体的に理解することができる。
【0062】
本発明における技術的態様をより明確に説明するために、以下に具体的な実施例の形態で
説明する。
【0063】
実施例
【0064】
図1を参照すると、第1反応器10、精留塔20、第2反応器30を含む、テレキシレン
からテレフタル酸を製造するための内蔵マイクロ界面酸化システムである。
【0065】
このうち、第1反応器10の側壁には第1出口11が設けられ、側壁に対して下寄りには
第2入口12及び混合原材料入口14が設けられ、第1反応器10の頂部には第2出口1
3が設けられ、第2出口13から出てくる材料は主に酢酸と水蒸気である。
【0066】
精留塔20の側壁には材料入口21が設けられ、底部には材料出口22が設けられ、第2
反応器30の側壁の下寄りには第1入口31が設けられ、他側には空気入口33が設けら
れ、第1出口11は材料入口21に接続され、第1入口31は材料出口22に接続され、
原材料と空気を混合して第1反応器10で一次酸化反応を行い、酸化反応後の生成物(主
成分はp-メチル安息香酸、酢酸、水、少量の未反応完全なp-キシレン、中間生成物な
どを含む)は第1出口11を通って精留塔20に入り分離され、塔底で分離された生成物
(p-メチル安息香酸と水など)は材料出口22を通って第1入口31から第2反応器3
0に入り二次酸化反応を行い、二次酸化反応後の反応生成物は、第2反応器30の側壁の
第3出口32から採取収集される。
【0067】
第1反応器10及び第2反応器30の内部には、破砕された空気又は混合物を気泡に分散
するためのマイクロ界面ユニット40が設けられている。マイクロ界面ユニット40は、
上下に配置された第1のマイクロ界面発生器41と第2のマイクロ界面発生器42とを含
み、第1のマイクロ界面発生器41は導気管43が接続され、導気管43の先端は反応器
の液面を突出し、第1のマイクロ界面発生器41は液動式マイクロ界面発生器である。反
応器の上方の未反応の空気と一部のガス物質の巻き取りを実現し、同時に、第1のマイク
ロ界面発生器41の動力は、循環ポンプ80から供給された循環物(p-メチルベンズア
ルデヒド、酢酸、水、少量の未反応完全なp-キシレン、中間生成物などを含む)を介し
て与えられ、前記循環物は熱交換器90を介して熱交換された後、第1のマイクロ界面発
生器41に入ってガスを巻き取る動力を提供し、第2入口12の末端は第2のマイクロ界
面発生器42内に延び、空気は第2入口12から入った後、反応物質と微界面発生器の中
で接触し、気液相の接触面積を増大させ、物質移動効果を高める。
【0068】
また、第1反応器10の排気ガスは頂部第2出口13を通って排出され、生成物は第1出
口11を通って精留塔20内に入って分離され、精留塔20は主に軽成分分離セグメント
24と再編分分離セグメント25からなり、分離後の軽成分酢酸と水の一部は凝縮器26
を通じて還流液として塔頂部から精留塔20に戻り、他の一部の酢酸と水は、留出物出口
23を介して第2出口13から排出された排気ガスと混合されて酸水分離器50に入り、
分離された水は第2反応器30に入り、酢酸は第1反応器10内に戻って循環使用される
。精留塔20の底部材料出口22の組換え分産物(p-メチル安息香酸や水など)の一部
は、塔釜再沸騰器100を経て還流液として組換え分分離セグメント25に戻り精留を続
け、他の一部は第1入口31を通って第2反応器30内に入って二次酸化反応を行う。
【0069】
空気入口33の末端は第2反応器30内の第2マイクロ界面発生器42内に延びており、
第2反応器30内部に設置されたマイクロ界面発生器の構造は第1反応器10と同じであ
り、反応生成物のテレフタル酸は第2反応器30の上方側壁の第3出口32から採取され
、第2反応器30の頂部には排気ガス出口34が設置されており、排気ガスは出口から後
続処理段階に入り、基準に達して大気に排出される。
【0070】
上記実施例では、第1反応器10内の温度は120~155℃、圧力は0.20~0.6
6MPa、第2反応器30内の温度は135~180℃、圧力は0.56~0.82MP
aである。
【0071】
上記実施形態では、ポンプ本体の個数は特に要求されておらず、必要に応じて対応する位
置に設置することができる。また、精留塔20の塔高、塔径、塔板個数及び塔段分割方式
は、いずれも実際の必要に応じて調整することができる。
【0072】
上記実施例において、マイクロ界面発生器は個数に限らず、分散、物質移動効果を高める
ために、追加のマイクロ界面発生器を多く増設してもよく、特にマイクロ界面発生器の設
置位置は問わず、外付けでも内蔵でもよく、内蔵時に釜内の側壁に相対的に設置すること
もでき、マイクロ界面発生器の出口から出てくるマイクロ気泡の衝突を実現する。
【0073】
上記実施形態では、第1のマイクロ界面発生器41及び第2のマイクロ界面発生器42は
、いずれも波よけ柵60を用いて反応器内部に固定されている。
【0074】
上記実施形態では、第1反応器10及び第2反応器30の液面上に濾過網70を設けて、
空気と一部のガス物質を分離する。
【0075】
以下に本発明のパラキシレンによるテレフタル酸製造の内蔵マイクロ界面酸化システムの
動作過程と原理を簡単に説明する。
【0076】
パラキシレン、酢酸及び触媒(酢酸コバルト、酢酸マンガン)の混合物は混合原材料入口
14から第1反応器10内に入り、空気は第2入口12から第2微界面発生器42内に入
り分散破砕し、混合原材料と破砕後の空気は第1反応器10内で酸化反応し、反応過程中
、第1反応器10内部の原材料液は循環配管を通じて第1微界面発生器41に動力循環を
提供し、反応器上方の大量の未反応空気と一部の水蒸気は、第1のマイクロ界面発生器4
1を介して反応器底部に巻き戻されて反応に関与し続ける。
【0077】
十分に反応して得られた生成物(主成分はp-メチル安息香酸であり、酢酸、水、少量の
未反応完全なp-キシレン、中間生成物なども含む)は、第1出口11を通って精留塔2
0に入り、酢酸と水は軽成分分離セグメント24を経て塔頂方に向かって精留分離され、
精留塔20の留出物出口23から引き出した酢酸と水蒸気の一部は凝縮器26を経て精留
塔20内に再還流される。他の一部の酢酸と水は、配管を介して第2出口13から排出さ
れた排気ガスと混合されて酸水分離器50に入り、酸水分離器50で分離された水は第2
反応器30に入り、酢酸は第1反応器10内に戻って循環使用され、精留塔20の底部物
質出口22で産出された組換え生成物(p-メチル安息香酸と水など)の一部は、塔釜再
沸騰器100で再沸騰処理されて精留塔20に戻る。他の一部は第1入口31を通って第
2の反応器30内に入り、第2の反応器30の他方の側壁の空気入口33は空気を通し、
第2のマイクロ界面反応器42を経て破砕した後に組換え生成物(p-メチル安息香酸や
水など)と酸化反応を行い、第2の反応器30内部に設置されたマイクロ界面発生器の構
造は第1の反応器10と同じであり、生成物のテレフタル酸溶液は第3の出口32を通じ
て発生し、後処理精製分離プロセスに入り、排気ガスは第2反応器30の排気ガス出口3
4から採取された後、後処理段階を行い、基準に達したら大気に排出される。
【0078】
以上の各プロセスのステップは、処理システム全体をスムーズに動作させるために循環し
ている。
【0079】
最後に、以上の各実施形態は、本発明の技術的態様を説明するためにのみ使用され、それ
を制限するのではなく、上記各実施形態を参照して本発明を詳細に説明した。当業者は、
上記各実施形態に記載された技術案を修正したり、その一部または全部の技術的特徴を均
等に置き換えたりすることができ、これらの変形または置換は、対応する技術案の本質を
本発明の各実施形態の技術案の範囲から逸脱させるものではない。
図1